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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】流量圧力制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018245778
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020107113
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186750
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健司
(72)【発明者】
【氏名】松本 篤諮
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐之
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 隆
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-004644(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180745(WO,A1)
【文献】特開昭63-123108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通過する流体流路と、
前記流体流路を通過する流体の流量を制御するコントロールバルブと、
前記流体流路の前記コントロールバルブの2次側に設けられ、前記流体流路の圧力Pを検出する圧力センサと、
前記流体流路の前記圧力センサの2次側に設けられ、前記流体流路を通過する流体の流量を絞る絞り部と、
前記流体流路の前記絞り部の1次側から分岐して、前記絞り部の2次側で前記流体流路に合流するバイパス流路と、
前記バイパス流路を開閉する開閉バルブと、
前記コントロールバルブ及び前記開閉バルブを制御する制御部と、
を有し、
前記圧力センサから前記バイパス流路を経由して前記流体流路の2次側出口に至る経路には、絞り部がなく、
前記制御部は、
前記開閉バルブを閉じた状態で、前記圧力に基づいて流体の流量Qcを演算し、前記流量Qcが設定流量Qsに等しくなるように前記コントロールバルブの開度を制御する流量制御と、
前記開閉バルブを開いた状態で、前記圧力が設定圧力Psに等しくなるように前記コントロールバルブの開度を制御する圧力制御と、
を選択的に実施する、流量圧力制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記流量制御において、前記圧力から流体の流量をQc=KP(但しKは比例定数)として演算する、請求項1に記載の流量圧力制御装置
【請求項3】
流体が通過する流体流路と、
前記流体流路を通過する流体の流量を調整するコントロールバルブと、
前記流体流路の前記コントロールバルブの2次側に設けられ、前記流体流路の圧力Pを検出する第1の圧力センサと、
前記流体流路の前記第1の圧力センサの2次側に設けられ、前記流体流路を通過する流体の流量を絞る絞り部と、
前記流体流路の前記絞り部の1次側から分岐して、前記絞り部の2次側で前記流体流路に合流するバイパス流路と、
前記バイパス流路を開閉する開閉バルブと、
前記流体流路の前記絞り部の2次側に設けられ、前記流体流路の圧力Pを検出する第2の圧力センサと、
前記コントロールバルブ及び前記開閉バルブを制御する制御部と、
を有し、
前記第1の圧力センサから前記バイパス流路を経由して前記流体流路の2次側出口に至る経路には、絞り部がなく、
前記制御部は、
前記開閉バルブを閉じた状態で、前記圧力及びPの少なくとも一方に基づいて流体の流量Qcを演算し、前記流量Qcが設定流量Qsに等しくなるように前記コントロールバルブの開度を制御する流量制御と、
前記開閉バルブを開いた状態で、前記圧力又はPが設定圧力Psに等しくなるように前記コントロールバルブの開度を制御する圧力制御と、
を選択的に実施する、流量圧力制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記流量制御において、前記圧力とPから流体の流量をQc=KP (P-P(但しKは比例定数、mとnは定数)として演算することを特徴とする、請求項3に記載の流量圧力制御装置
【請求項5】
前記制御部は、前記圧力又は外部の圧力検出手段から入力された下流側の圧力が、設定圧力Psに近づいたか否かを判定する圧力判定部を有し、
前記圧力判定部の判定に基づいて、前記流量制御から前記圧力制御への切り替えを行う、請求項1~4のいずれかに記載の流量圧力制御装置
【請求項6】
前記開閉バルブとして、エアオペレートバルブを用いた、請求項1~5のいずれかに記載の流量圧力制御装置
【請求項7】
前記開閉バルブとして、電磁弁を用いた、請求項1~5のいずれかに記載の流量圧力制御装置
【請求項8】
複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、
前記複数の流体機器は、請求項1~7のいずれかに記載の流量圧力制御装置を含む、流体制御装置。
【請求項9】
密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に請求項1~7のいずれかに記載の流量圧力制御装置又は請求項に記載の流体制御装置を用いる、半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量圧力制御装置、流体制御装置、及び半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造プロセス、特に原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)等の微細プロセスにおいては、微量のプロセスガスの精密な流量制御や圧力制御が要求される。
このようなプロセスガスの流量制御装置として、マスフローコントローラ(質量流量制御装置)が用いられており、従来から実績のあるサーマル式マスフローコントローラと、ガスの種類の制約が少なくレスポンスの速い圧力式マスフローコントローラが広く用いられている(例えば、特許文献1、2)。
一方、圧力制御装置としては、圧力センサと制御バルブを備えた自動圧力制御装置が使用され、プロセスチャンバにおける圧力制御や、特にサーマル式マスフローコントローラの動作安定化のための供給圧制御に用いられている(例えば、特許文献3)。
このような、流量制御装置や圧力制御装置は、流体制御装置として統合され、成膜装置やエッチング装置などの半導体製造装置に組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-33856号公報
【文献】特許第4856905号
【文献】特開2017-182415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、半導体基板の大型化やプロセスの均一性要求のために、プロセスガス等を処理チャンバへの複数箇所へ独立して供給するケースが増えたこと等の理由により、より多くの流量制御装置が必要になってきている。流量制御には専用の流量制御器、圧力制御に専用の圧力制御器を使用すると、制御機器の台数が増加し、流体制御装置や半導体製造装置の小型化の要求に応えることができなくなる。
【0005】
本発明の目的は、このような課題を解決して、流体制御装置や半導体製造装置の小型化の要求に応えるべく、1つの機器で流量制御と圧力制御が可能な制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る流量圧力制御装置は、
流体が通過する流体流路と、
前記流体流路を通過する流体の流量を調整するコントロールバルブと、
前記流体流路の前記コントロールバルブの2次側に設けられ、前記流体流路の圧力Pを検出する圧力センサと、
前記流体流路の前記圧力センサの2次側に設けられ、前記流体流路を通過する流体の流量を絞る絞り部と、
前記流体流路の前記絞り部の1次側から分岐して、前記絞り部の2次側で前記流体流路に合流するバイパス流路と、
前記バイパス流路を開閉する開閉バルブと、
前記コントロールバルブ及び前記開閉バルブを制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記開閉バルブを閉じた状態で、前記検出圧力Pに基づいて流体の流量Qcを演算し、該流量Qcが設定流量Qsに等しくなるように前記コントロールバルブの開度を制御する流量制御と、
前記開閉バルブを開いた状態で、前記圧力センサの検出圧力Pが設定圧力Psに等しくなるように前記コントロールバルブの開度を制御する圧力制御と、
を選択的に実施することを特徴とする。
【0007】
好ましくは、前記制御部は、前記流量制御において、前記検出圧力Pから流体の流量をQc=KP(但しKは比例定数)として演算する、構成を採用できる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る流量圧力制御装置は、
流体が通過する流体流路と、
前記流体流路を通過する流体の流量を調整するコントロールバルブと、
前記流体流路の前記コントロールバルブの2次側に設けられ、前記流体流路の圧力Pを検出する第1の圧力センサと、
前記流体流路の前記第1の圧力センサの2次側に設けられ、前記流体流路を通過する流体の流量を絞る絞り部と、
前記流体流路の前記絞り部の1次側から分岐して、前記絞り部の2次側で前記流体流路に合流するバイパス流路と、
前記バイパス流路を開閉する開閉バルブと、
前記流体流路の前記絞り部の2次側に設けられ、前記流体流路の圧力Pを検出する第2の圧力センサと、
前記コントロールバルブ及び前記開閉バルブを制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記開閉バルブを閉じた状態で、前記検出圧力P及びPの少なくとも一方に基づいて流体の流量Qcを演算し、該流量Qcが前記設定流量Qsに等しくなるように前記コントロールバルブの開度を制御する流量制御と、
前記開閉バルブを開いた状態で、前記検出圧力P又はPが設定圧力Psに等しくなるように前記コントロールバルブの開度を制御する第2の圧力制御と、
を選択的に実施することを特徴とする、流量圧力制御装置。
【0009】
前記第2の態様において、好ましくは、前記制御部は、前記流量制御において、前記検出圧力PとPから流体の流量をQc=KP (P-P(但しKは比例定数、mとnは定数)として演算する、構成を採用できる。
【0010】
前記制御部は、前記検出圧力P又は外部の圧力検出手段から入力された下流側の圧力が、設定圧力Psに近づいたか否かを判定する圧力判定部を有し、前記圧力判定部の判定に基づいて、前記流量制御から前記圧力制御への切り替えを行う、構成を採用できる。
【0011】
好ましくは、前記開閉バルブとして、エアオペレートバルブを用いた構成を採用できる。
【0012】
代替的には、前記開閉バルブとして、電磁弁を用いた構成を採用できる。
【0013】
本発明の流体制御装置は、複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、
前記複数の流体機器は、上記いずれかの流量圧力制御装置を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の半導体製造装置は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に上記いずれかの流体制御装置を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧力式流量制御装置(MFC)において、絞り部であるオリフィスをバイパスするバイパス流路と、該バイパス流路に開閉バルブを設けて、該開閉バルブを閉じた状態では圧力式流量制御を行い、該開閉バルブを開いた状態では、圧力制御制御を行うようにしたので、1台の制御装置で流量制御と圧力制御が可能になる。
それにより、流体制御装置や半導体製造装置の小型化の要求に応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る流量圧力制御装置を示す構成図。
図2図1の装置の流量制御動作を示す説明図。
図3図1の装置の圧力制御動作を示す説明図。
図4】本発明の第2の実施形態に係る流量圧力制御装置を示す構成図。
図5図4の装置の流量制御動作を示す説明図。
図6図4の装置の圧力制御動作を示す説明図。
図7】本発明の実施形態に係る流体制御装置と半導体製造装置を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態の流量圧力制御装置について図面を参照して説明する。
本実施形態は、圧力センサをオリフィスの1次側のみに設け、バイパス流路の開閉バルブにエアオペレートバルブを用いた形態である。
図1に本実施形態の流量圧力制御装置の構成図を示す。
【0018】
本実施形態の流量圧力制御装置1は、流体流路10と、コントロールバルブ20と、圧力センサ30と、絞り部であるオリフィス40と、バイパス流路11と、開閉バルブ50と、制御部70を主に備える。
【0019】
流体流路10は、流体を通過させるものである。
【0020】
コントロールバルブ20は、前記流体流路を通過する流体の流量を調整するものである。本実施形態では、流量制御範囲の広い、ソレノイドアクチュエータで駆動されるダイヤフラムバルブを用いる。
【0021】
圧力センサ30は、流体流路10のコントロールバルブ20の2次側(オリフィス40の1次側)に設けられ、流体流路10の圧力Pを検出するものである。
【0022】
オリフィス40は、流体流路10の圧力センサ30の2次側に設けられ、流体流路10を通過する流体の流量を絞るものであり、それにより、本装置を圧力式流量制御装置として機能させるものである。オリフィス40は、流体流路10内の障壁に設けた微小な貫通孔で形成されている。
本実施形態では、オリフィス40の1次側の圧力Pと2次側の圧力Pとの圧力比P/Pが約0.5以下の臨界膨張条件で流量制御を実施する。この場合、オリフィスを通過する流体の流速が音速になり、2次側の圧力Pの変動が上流側に伝搬せず、流体流量は、上流側の気体の圧力Pに正比例して変化する(特許文献1)。これにより、オリフィス40の1次側の圧力センサ30の検出圧力Pのみに基づいて圧力制御ができる、したがって、オリフィス径は、上記臨界条件を満たすように選択される。
【0023】
バイパス流路11は、流体流路10のオリフィス40の1次側から分岐して、オリフィス40の2次側で流体流路10に合流している。このバイパス流路11は、圧力制御の際、流体がオリフィス40をバイパスして流れるようにするものである。この流路には、流体の流量を絞るオリフィス等は設けず、後述する開閉バルブ50が開のときは、流体が抵抗なく流れるようになっている。
【0024】
開閉バルブ50は、バイパス流路11に設けられ、該バイパス流路を開閉するものである。本実施形態では、エアオペレートバルブ50を用いており、電磁弁60を通して供給される駆動エアによりON/OFFするようになっている。
この電磁弁60は、三方弁であり、OFF(非通電時)のときは、駆動エアの供給源からの駆動エアをストップし、エアオペレートバルブ50の圧力室への供給ラインを大気開放することにより、エアオペレートバルブ50を閉にする。
一方、電磁弁60は、ON(通電時)のときは、駆動エアの供給源からの駆動エアをエアオペレートバルブ50の圧力室へ供給することにより、エアオペレートバルブ50を開にする。
これにより、電磁弁60の少ない動作電力で、エアオペレートバルブによりバイパス流路11を開閉できるとともに、開状態では大流量の流体の通過も可能になる。
【0025】
制御部70は、外部から設定流量Qsと設定圧力Psを入力可能で、また圧力センサ30の検出圧力Pを入力可能であり、コントロールバルブ20を制御するとともに、電磁弁60を制御することにより開閉バルブ50を制御するものである。
本実施形態では、所定のプログラムを実行するCPUを含むマイコン、外部との通信インターフェース、コントロールバルブ20や電磁弁60を駆動するドライバ回路、圧力センサ30の圧力信号を入力する入力インターフェース等を含む。
この他に、コントロールバルブ20の1次側には、流体中のパーティクル等を除去するフィルタ12が設けられている。
【0026】
次に、このように構成された第1の実施形態の流量圧力制御装置1の動作について、説明する。
【0027】
(流量制御動作)
図2は、本実施形態の流量圧力制御装置1の流量制御動作を示す説明図である。
上記のように、本実施形態では、オリフィス40の1次側の圧力Pと2次側の圧力Pとの圧力比P/Pが約0.5以下の臨界膨張条件で流量制御を実施する。本流量圧力制御装置1の1次側の圧力Pは、オリフィス40の1次側の圧力Pより、フィルタ12とコントロールバルブ20の圧力損失分僅かに高くする必要があるため、本装置の1次側の圧力Pと2次側の圧力Pとの圧力比P/Pが約0.5未満の条件で使用する必要がある。
制御部70に対し、外部のコントローラ(半導体製造装置のコントローラ等)から、動作モードとして流量制御動作を指定し、設定流量Qsを指定する。尚、この動作モードは、デフォルトで選択されるようにしてもよく、または、装置の設定スイッチで指定できるようにしてもよい。
この動作を設定されると、制御部70は、電磁弁60をOFF(非通電状態)にし、開閉バルブ50を閉じた状態にする。これにより、本流量圧力制御装置1を通過する流体は全てオリフィス40を通過するようになる。
制御部70は、圧力センサ30の検出圧力Pを読み込み、該検出圧力P1に基づいて流体の流量Qcを演算する。このとき、オリフィス40の1次側と2次側の圧力比P/Pが上記臨界膨張条件を満たしていると、流量をQc=KP(但しKは比例定数)として演算できる。
制御部70は、前記流量Qcが前記設定流量Qsに等しくなるように、流量Qcと設定流量Qsとの差分Qyに応じて前記コントロールバルブ20の開度を制御する流量制御を実施する。この制御は、差分Qyに基づく比例制御でもよいが、差分Qyの積分値と微分値も考慮したPID制御が好ましい。
【0028】
(圧力制御動作)
図3は、本実施形態の流量圧力制御装置1の圧力制御動作を示す説明図である。
制御部70に対し、外部のコントローラ(半導体製造装置のコントローラ等)から、動作モードとして圧力制御動作を指定し、設定圧力Psを指定する。尚、この動作モードは、装置の設定スイッチで指定できるようにしてもよい。
この動作を設定すると、制御部70は、電磁弁60をON(通電状態)にし、開閉バルブ(エアオペレートバルブ)50を開いた状態にする。
これにより、本流量圧力制御装置1を通過する流体の大部分は、バイパス流路11を通過するようになる。開閉バルブ50を含むバイパス流路11の管路抵抗は極めて小さいので、圧力センサ30で検出する圧力Pは、本装置1の2次側の圧力Pと略等しくなる。
この状態で、制御部70は、圧力センサ30の検出圧力Pを読み込み、該検出圧力Pが前記設定圧力Psに等しくなるように、圧力Pと設定圧力Psとの差分Pyに応じて前記コントロールバルブ20の開度を制御する圧力制御を実施する。この制御は、差分Pyに基づく比例制御でもよいが、差分Pyの積分値と微分値も考慮したPID制御が好ましい。
【0029】
第1の実施形態の流量圧力制御装置1では、上記のように、圧力センサ30を1つだけ用いるシンプルな構成で、流量制御と圧力制御と選択的に実施することができる。
また、コントロールバルブ20にソレノイドアクチュエータ駆動のダイヤフラムバルブを用い、開閉バルブ50にエアオペレートバルブを用いたので、広い流量範囲の流量制御及び圧力制御が可能になる。
【0030】
(第2の実施形態)
本実施形態は、圧力センサをオリフィスの1次側と2次側に設け、バイパス流路の開閉バルブに電磁弁を用いた形態である。
【0031】
図4に本実施形態の流量圧力制御装置の構成図を示す。
本実施形態の流量圧力制御装置2は、流体流路10と、コントロールバルブ20と、第1の圧力センサ30と、絞り部であるオリフィス40と、第2の圧力センサ80と、バイパス流路11と、開閉バルブ90と、制御部70を主に備える。
【0032】
流体流路10は、流体を通過させるものである。
【0033】
コントロールバルブ20は、前記流体流路10を通過する流体の流量を調整するものである。本実施形態では、応答性に優れた、ピエゾアクチュエータで駆動されるダイヤフラムバルブを用いる。
【0034】
第1の圧力センサ30は、流体流路10のコントロールバルブ20の2次側(オリフィス40の1次側)に設けられ、流体流路10の圧力Pを検出するものである。
【0035】
オリフィス40は、流体流路10の第1の圧力センサ30の2次側に設けられ、流体流路10を通過する流体の流量を絞るものであり、それにより、本装置を圧力式流量制御装置として機能させるものである。オリフィス40は、流体流路10内の障壁に設けた微小な貫通孔で形成されている。
本実施形態の流量圧力制御装置2は、第1の実施形態と異なり、臨界膨張条件以外でも流量制御動作するので、オリフィス径は、上記臨界条件を満たすようにすることは必ずしも必要ない。本実施形態では、オリフィス40の1次側の圧力Pのみならず、2次側の圧力Pも考慮して流量Qcを演算するので、2次側の圧力Pが無視できない非臨界膨張条件でも流量Qcを算出できるからである。
【0036】
バイパス流路11は、第1の実施形態と同様に、流体流路10のオリフィス40の1次側から分岐して、オリフィス40の2次側で流体流路10に合流している。このバイパス流路11は、圧力制御の際、流体がオリフィス40をバイパスして流れるようにするものである。この流路には、流体の流量を絞るオリフィス等は設けず、後述する開閉バルブ90が開のときは、流体が抵抗なく流れるようになっている。
【0037】
第2の圧力センサ80は、流体流路10のオリフィス40の2次側に設けられ、流体流路10の圧力Pを検出するものである。
【0038】
開閉バルブ90は、バイパス流路11に設けられ、該バイパス流路11を開閉するものである。本実施形態では、応答性に優れた、ピエゾアクチュエータで駆動されるダイヤフラムバルブを用いている。
【0039】
制御部70は、外部から設定流量Qsと設定圧力Psを入力可能で、また第1及び第2の圧力センサ30、80の検出圧力Pを入力可能であり、コントロールバルブ20及び開閉バルブ90を制御するものである。
本実施形態では、所定のプログラムを実行するCPUを含むマイコン、外部との通信インターフェース、コントロールバルブ20や開閉バルブ90を駆動するドライバ回路、第1及び第2の圧力センサ30、80の圧力信号を入力する入力インターフェース等を含む。
この他に、コントロールバルブ20の1次側には、流体中のパーティクル等を除去するフィルタ12が設けられている。
【0040】
次に、このように構成された第2の実施形態の流量圧力制御装置2の動作について説明する。
【0041】
(流量制御動作)
図5は、本実施形態の流量圧力制御装置2の流量制御動作を示す説明図である。
上記のように、第1の実施形態と異なり、臨界膨張条件以外でも流量制御動作するので、使用条件として上記臨界条件を満たすようにすることは必ずしも必要ない。
第1の実施形態と同様に、制御部70に対し、外部のコントローラ(半導体製造装置のコントローラ等)から、動作モードとして流量制御動作を指定し、設定流量Qsを指定する。
この動作を設定すると、制御部70は、開閉バルブ90をOFFにし閉じた状態にする。
これにより、本装置1を通過する流体は全てオリフィス40を通過するようになる。
制御部70は、第1の圧力センサ30の検出圧力Pと第2の圧力センサ80の検出圧力Pとを読み込み、該検出圧力PとPに基づいて流体の流量Qcを演算する。このとき、例えば、非臨界膨張条件下において検出圧力PとPから流体の流量をQc=KP (P-P(但しKは比例定数、mとnは定数)として演算することができる。
この式による演算により、臨界膨張条件のみならず、2次側の圧力Pが無視できない非臨界膨張条件でも流量Qcを算出でき(特許文献2の[0007]など)、流量制御に使用できる。
制御部70は、前記流量Qcが前記設定流量Qsに等しくなるように、流量Qcと設定流量Qsとの差分Qyに応じて前記コントロールバルブ20の開度を制御する流量制御を実施する。この制御は、差分Qyに基づく比例制御でもよいが、差分Qyの積分値と微分値も考慮したPID制御が好ましい。
尚、本実施形態の流量圧力制御装置2を臨界膨張条件でのみ使用する場合であれば、制御部70は、第1の実施形態と同様に、オリフィスの1次側の検出圧力Pのみに基づく流量制御を実施してもよい。
【0042】
(圧力制御動作)
図6は、本実施形態の流量圧力制御装置2の圧力制御動作を示す説明図である。
第1の実施形態と同様に、制御部70に対し、外部のコントローラ(半導体製造装置のコントローラ等)から、動作モードとして、動作モードとして圧力制御動作を指定し、設定圧力Psを指定する。
この動作を設定すると、制御部70は、開閉バルブ90をONにし開いた状態にする。
この状態で、制御部70は、第2の圧力センサ80の検出圧力Pを読み込み、該検出圧力Pが前記設定圧力Psに等しくなるように、圧力Pと設定圧力Psとの差分Pyに基づいて前記コントロールバルブ20の開度を制御する圧力制御を実施する。この制御は、差分Pyに基づく比例制御でもよいが、差分Pyの積分値と微分値も考慮したPID制御が好ましい。
尚、制御部70は、第2の圧力センサ80の検出圧力Pの替わりに、第1の実施形態と同様に第1の圧力センサ30の検出圧力Pに基づいて上記圧力制御を実施してもよいが、本流量圧力制御装置2を通過する流体の流量によっては、開閉バルブ90で若干の圧力降下が発生しうるので、第2の圧力センサ80の検出圧力Pを用いることが好ましい。
【0043】
(流量制御・圧力制御の自動切り替え動作)
制御部70に対し、設定圧力Psと設定流量Qsを指定して、上述した流量制御と圧力制御を自動で切り替える動作モードを指定することができる。
この動作を設定すると、制御部70はまず上述の流量制御動作と同様に、設定流量Qsを流す動作を始める。並行して、制御部70内の圧力判定部71で、第2の圧力センサ80の検出圧力Pが設定圧力Psに近づいたか否かの判定を常時行う。圧力判定部71の判定が正の場合、制御部70の動作を上述の圧力制御動作と同様の設定圧力Psを保持する動作に切り替える。
圧力判定部71の判定処理は、所定の値Δに対して、Ps-P<Δ の条件で判定される。この条件を用いる理由は、下流側の検出圧力Pが低い状態でこの動作モードが動作し始める、という想定による。
【0044】
第2の実施形態の流量圧力制御装置2では、上記のように、2つの圧力センサ30、80を用いた構成で、流量制御と圧力制御と選択的に実施することができ、臨界膨張条件下のみならず、非臨界膨張条件下でも流量制御ができる。
また、コントロールバルブ20及び開閉バルブ50にピエゾアクチュエータ駆動のダイヤフラムバルブを用いたので、応答性の高い流量制御及び圧力制御が可能になる。
また、流量制御・圧力制御の自動切り替え動作を使うことで、真空状態のチャンバを流量圧力制御装置2の下流側に接続して、このチャンバにガスを導入して所定の圧力に保ちたい場合においても、ガスを入れ始めた際の圧力の上昇カーブを同一に保つことができ、製品のばらつき(例えば、コントロールバルブ20の流量特性のばらつき)による圧力上昇カーブへの影響を最小限に抑えることができる。下流側の圧力、つまりチャンバの圧力、が設定圧力Psに近づいた後は、圧力制御動作に切り替わって開閉バルブ90が開く。そのため、コントロールバルブ20の動作がオリフィス部の影響なしに素早くチャンバ圧力に影響を及ぼすようになり、より精度の高いフィードバック制御が可能になる。
【0045】
尚、上記各実施形態では、コントロールバルブ20や開閉バルブ50,90として用いるバルブとして各種バルブを記載したが、本発明においては、これらの機能が発揮できるバルブであればいずれでもよく、上記記載以外の種類のバルブでもよい。
【0046】
また、上記各実施形態では、流量制御の際における流量Qcの計算式として、Qc=KP1(但しKは比例定数)やQc=KP (P-P(但しKは比例定数、mとnは定数)を用いた。しかし、本発明において、流量Qcを求める計算式は、これらの計算式に限られず、少なくともPを考慮するものであればよい。また、温度センサをさらに設けて、検知した温度Tも考慮して流量Qcを求めてもよい。また、圧力判定部71が判定に用いる圧力センサは流量圧力制御装置に設けられたものでなくても良く、チャンバに取り付けられた圧力センサなどの外部から入力される圧力値であっても良い。また、絞り部は流量測定に用いるための圧力損失を生む素子であればオリフィス以外であってもよく、例えばノズル構造を使うことができる。
【0047】
(適用例)
次に、上記流量圧力制御装置を用いた本発明の流体制御装置及び半導体製造装置について説明する。
図7は、本発明の実施形態に係る流体制御装置と半導体製造装置を示す構成図である。
半導体製造装置200は、半導体基板に処理(成膜、エッチング等の処理)を行う2つのチャンバCH1,CH2を有し、チャンバCH1については、処理の実施時に供給するプロセスガスの圧力制御を行い、チャンバCH2については、処理実施時に供給するプロセスガスの流量制御を行う。各処理チャンバは、排気ポンプ120a,120bにより真空引きされている。各チャンバCH1,CH2と排気ポンプ120a,120bの間にはそれぞれ、バタフライ弁や絞り弁などの図示しないバルブを含む。
【0048】
本発明の流体制御装置100は、半導体製造装置200に組み込まれ、チャンバCH1とCH2にプロセスガスやパージガスを供給するガス供給系を成すもので、プロセスガス又はパージガスの供給ライン上に設けられた本発明の流量圧力制御装置1又2と、その下流で分岐した各分岐ラインに設けられた開閉バルブ110a、110bを含む。開閉バルブ110a、110bの2次側の配管は、チャンバCH1,CH2に接続されている。
【0049】
このように構成された本発明の流体制御装置100及び半導体製造装置200の動作について説明する。
チャンバCH1内のプロセスガスの圧力制御を行う場合は、半導体製造装置の200のコントローラ(図示省略)は、開閉バルブ110aを開け、開閉バルブ110bを閉じて、本発明の流量圧力制御装置1又は2を圧力制御動作させる。
チャンバCH2に供給するガスの流量制御を行う場合は、前記コントローラは、開閉バルブ110aを閉じ、開閉バルブ110bを開けて、本発明の流量圧力制御装置1又は2を流量制御動作させる。
これにより、流体制御装置100及び半導体製造装置200は、少ない台数の制御機器で、圧力制御と流量制御を実施することができる。
【0050】
上記の実施形態では圧力制御と流量制御を時間的に切り替えて使う方法を示したが、流量制御・圧力制御の自動切り替え動作を使ったり、通常動作時には圧力制御だけを使うよう設定したりしていても良い。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 :流量圧力制御装置
2 :流量圧力制御装置
10 :流体流路
11 :バイパス流路
12 :フィルタ
20 :コントロールバルブ
30 :圧力センサ(第1の圧力センサ)
40 :オリフィス
50 :開閉バルブ(エアオペレートバルブ)
60 :電磁弁
70 :制御部
71 :圧力判定部
80 :第2の圧力センサ
90 :開閉バルブ
100 :流体制御装置
110a:開閉バルブ
110b:開閉バルブ
120a:排気ポンプ
120b:排気ポンプ
200 :半導体製造装置
CH1 :チャンバ
CH2 :チャンバ
:圧力
:圧力、検出圧力
:圧力、検出圧力
Ps :設定圧力
Py :差分
Qc :流量
Qs :設定流量
Qy :差分


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7