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特許7232524網膜疾患を処置するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】網膜疾患を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0797 20100101AFI20230224BHJP
   A61K 35/30 20150101ALN20230224BHJP
   A61P 27/02 20060101ALN20230224BHJP
   A61P 27/06 20060101ALN20230224BHJP
   A61P 9/10 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
C12N5/0797
A61K35/30
A61P27/02
A61P27/06
A61P9/10
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019219614
(22)【出願日】2019-12-04
(62)【分割の表示】P 2018149214の分割
【原出願日】2012-05-17
(65)【公開番号】P2020054363
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2019-12-04
(31)【優先権主張番号】61/487,419
(32)【優先日】2011-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー クラッセン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジン
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-521910(JP,A)
【文献】Investigative Ophthalmology & Visual Science,2009年,Vol. 50, No. 12,pp. 5901-5908
【文献】J. Neurosci. Res.,2004年,Vol. 77,pp. 334-343
【文献】Exp. Neurol.,2002年,Vol. 177,pp. 326-331
【文献】Cell Tissue Res.,2008年,Vol. 331,pp. 347-357
【文献】ARVO Annual Meeting Abstract,2005年,URL <http://iovs.arvojournals.org/article.aspx?articleid=2402684>, 検索日:2016-04-28
【文献】Cell Transplantation,2010年,Vol. 19,pp. 1291-1306
【文献】STEM CELLS,2007年,Vol. 25, No. 5,pp. 1222-1230
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/07-5/0797
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不死化されていないヒト網膜前駆細胞の集団を単離する方法であって、
網膜が形成された後であるが、該網膜全体にわたって光受容体外側セグメントが完全に形成される前で、かつ、網膜の血管新生が完了する前の段階から単離された、ヒト網膜組織試料を物理的および/または酵素的に消化させて、細胞の解離懸濁物および/または細胞クラスターを作製するステップと;
該解離懸濁物および/または細胞クラスターを、(i)10~30継代にわたって、あるいは、(ii)1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10継代にわたって、培養培地中で2%、2.5%、3%、または3.5%の酸素で培養するステップと;
それにより、該細胞集団を作製するステップと
を含み、該培養するステップの後に、該集団内の細胞の90%超によってネスチンが発現されるか、該集団内の細胞の80%超によって(性決定領域Y)-ボックス2(Sox2)が発現されるか、該集団内の細胞の70%超によって主要組織適合性複合体クラス1(MHCクラスI)が発現されるか、あるいは、その組み合わせである、
方法。
【請求項2】
前記細胞の解離懸濁物および/または細胞クラスターが3%酸素で培養される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記集団内の細胞の%~%がさらにMHCクラスIIを発現する、請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
前記集団内の細胞の30%超がさらにKi-67を発現する、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記集団内の細胞の40%~60%がさらにKi-67を発現する、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記集団内の細胞の30%超がさらにFas/表面抗原分類95(CD95)を発現する、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞の解離懸濁物および/または細胞クラスターが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10継代にわたって培養される、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒト網膜組織が、在胎12週齢~28週齢の胎児網膜に由来する、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞がさらに、ビメンチン、CD9、CD81、AQP4、CXCR4、CD15/LeX/SSEA1、GD2ガングリオシド、CD133、β3-チューブリン、MAP2、GFAP、OPN/SPP1、PTN、KDRおよびTEKからなる群より選択される1種または複数のマーカーを発現する、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞が、40%~90%のコンフルエンスで継代され、かつ、継代毎に細胞を解離するために酵素で処理され、前記培養培地が1~2日毎に交換される、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記酵素がトリプシンである、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本明細書に記載の主題は、一般に、幹細胞生物学および再生医療の分野に関する。特に、本明細書に開示の主題により、網膜前駆細胞を投与することによって、網膜疾患もしくは網膜の状態を処置する、軽減する、もしくは防止する、明所(昼間)視を改善する、視力を改善もしくは矯正する(improving or correcting visual acurity)、黄斑機能を改善する、視野を改善する、または暗所(夜間)視を改善するための組成物および方法が提供される。本明細書に記載の主題により、網膜前駆細胞を含む細胞集団およびこれを単離する方法も提供される。代替の実施形態では、本発明は、網膜疾患または網膜の状態、例えば、アッシャー病、網膜色素変性症(RP)、網膜変性疾患(degenerative retinal disease)、加齢黄斑変性症(AMD)、滲出型AMDもしくは萎縮型AMD、地図状萎縮、網膜光受容体疾患、糖尿病性網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、ブドウ膜炎、網膜剥離、網膜損傷、黄斑円孔、黄斑部毛細血管拡張症、外傷性もしくは医原性網膜損傷、神経節細胞もしくは視神経細胞疾患、緑内障または視神経症、虚血性網膜疾患、例えば、未熟児網膜症、網膜血管閉塞、もしくは虚血性視神経症を処置する、軽減する、または防止する、あるいは明所(昼間)視を改善する、あるいは矯正視力を改善する(improving correcting visual acurity)、あるいは黄斑機能を改善する、あるいは視野を改善する、あるいは暗所(夜間)視を改善するための組成物および方法を提供する。代替の実施形態では、本発明は、胎児神経網膜細胞の異種混合物、ならびにこれらを作製および使用するための方法および組成物(例えば、キット、製剤など)を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
網膜変性症は、視覚の永久喪失をもたらし、世界中で数百万の個人に影響する眼疾患の異質の群である。これらの状態の基礎をなす分子機構は様々であるが、これらは、共通のエンドポイント、すなわち、光受容細胞の不可逆的な死を共有する。失った光受容体および視覚機能を回復するのに有効な処置は、現在利用可能でなく、大部分の治療的な介入は、せいぜい疾患の進行を遅延させることだけである。
【0003】
網膜変性症を有する患者における以前の臨床試験では、胎児網膜シート移植片の使用が含まれていた。この移植ストラテジーでは、細胞突起を伸ばし、変性した宿主網膜とシナプス結合を形成する未成熟の網膜シートが利用される。これの裏にある原理は、宿主の内側網膜神経細胞がインタクトなままであり、したがって、視覚機能を回復するのに、光受容体とのシナプス結合を必要とするだけであることである。患者における網膜シート移植を調査する試験では、いくらかの主観的な視覚の改善が示されているが、移植片拒絶、組織の利用可能性、および信頼できない臨床的効力が、この手法が実行可能な処置選択肢となるのを妨げている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
幹細胞および他の多能性細胞も、網膜変性症を有する患者の処置に使用するために企図されており、胚組織、成体(adult)脳、遺伝子操作された皮膚線維芽細胞、およびさらには網膜を含めていくつかの源から単離することができる。しかし、胚細胞または幹細胞は、これまでのところ、胎児様網膜前駆細胞集団へと最初に予め分化されない限り、成体網膜中に移植されたとき、分化して網膜表現型になる能力が小さいことが示されている。さらに、その収率および生着の効率は低く、残留する腫瘍形成多能性細胞の混入が問題となっている。光受容細胞配置の分野における現在の課題は、これらの細胞の多数が、免疫反応または移植細胞の腫瘍形成表現型への形質転換のリスクが最小である最適段階で移植され得るように、細胞を光受容体分化の方向に導く発達過程を理解すること包含する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
代替の実施形態では、本発明は、網膜疾患または網膜の状態、例えば、アッシャー病、網膜色素変性症(RP)、網膜変性疾患、加齢黄斑変性症(AMD)、滲出型AMDもしくは萎縮型AMD、地図状萎縮、網膜光受容体疾患、糖尿病性網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、ブドウ膜炎、網膜剥離、網膜損傷、黄斑円孔、黄斑部毛細血管拡張症、外傷性もしくは医原性網膜損傷、神経節細胞もしくは視神経細胞疾患、緑内障または視神経症、虚血性網膜疾患、例えば、未熟児網膜症、網膜血管閉塞、もしくは虚血性視神経症を処置する、軽減する、または防止する、あるいは明所(昼間)視を改善する、あるいは矯正視力を改善する、あるいは黄斑機能を改善する、あるいは視野を改善する、あるいは暗所(夜間)視を改善するための組成物および方法を提供する。代替の実施形態では、本発明は、胎児神経網膜細胞の異種混合物、ならびにこれらを作製および使用するための方法および組成物(例えば、キット、製剤など)を提供する。
【0006】
代替の実施形態では、本発明は、
(a)(i)ヒトについて、在胎約17~18週齢、または在胎約16~19週齢、または在胎15~20週齢、または在胎14~26週齢、または在胎約14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、もしくは26週齢、あるいは非ヒト動物、必要に応じてネコ、イヌ、もしくはブタの細胞について約3、4、5、6、7、8、9、10、もしくは11週、またはネコについて6~7週、またはブタ細胞について6~9週において、または
(ii)哺乳動物網膜が明らかに形成される後であるが、光受容体外側セグメントが完全に形成され、網膜の血管新生が実質的に完了し、または完了する前の段階において、または類似の哺乳動物の胎児期(fetal staging)において、哺乳動物胎児からの複数の哺乳動物胎児神経網膜細胞を含む細胞の試料を回収するステップであって、
必要に応じて細胞の試料は、ヒトまたはネコまたはイヌの細胞を含む、ステップと、
(b)回収した細胞の試料を酵素的に解離して、細胞の解離懸濁物ならびに/または小サイズおよび中サイズ細胞群(cell cluster)を作製するステップであって、
必要に応じて回収した細胞および/または小細胞群の試料は、トリプシンもしくは均等物、またはTRYP-LE EXPRESS(商標)(TrypLE(商標)Express、Invitrogen-Life Technologies、Carlsbad CA)もしくは均等物を使用して酵素的に解離される、ステップと、
(c)無血清培地または血清を含む培地を含み、抗生物質および抗真菌薬を含み、または抗生物質も抗真菌薬も含まない滅菌環境下で、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10、またはそれ以上を超えない継代にわたって細胞および/または小細胞群を培養するステップと
を含み、
必要に応じて細胞および/または小細胞群は、ダルベッコ変法イーグル培地を含む培地:Nutrient Mixture F-12(商標)(DMEM/F12(商標))培地、またはADVANCED DMEM/F12(商標)培地(Gibco-Invitrogen-Life Technologies、Carlsbad CA))、またはULTRACULTURE(商標)培地(BioWhittaker-Lonza Walkersville,Inc.、Walkersville、MD)で、N2補充物(Invitrogen)、またはB27もしくはB27 Xeno Free(Invitrogen)、L-グルタミンもしくはGlutaMax(Invitrogen)、ならびにEGFおよびbFGFからなるヒト組換え増殖因子(Invitrogen)、または他の増殖因子と必要に応じて一緒に培養され、
必要に応じてDMEM/F12(商標)培地は、ヒト細胞に使用され、ULTRACULTURE(商標)培地は、ネコまたはイヌの細胞に使用され、
低酸素条件、または妊娠の間に発生中の胎児網膜の酸素レベルに近似するもしくは密接に模倣する酸素条件下、あるいは約2%、2.5%、3%、3.5%の酸素で必要に応じて細胞を培養し、あるいは増殖させ、
必要に応じて培地は、ビタミンCを補充され、必要に応じてビタミンCは、1日または2日毎に添加され、必要に応じてビタミンCは、約0.1mg/mlもしくは0.05mg/ml、または約0.01mg/ml~約0.5mg/mlの間の初期濃度を有する量で添加され、
必要に応じて培地は、アルブミン、またはヒトもしくはネコもしくはイヌのアルブミン、または組換えアルブミンを補充され、あるいはアルブミンは、約1.0mg/mlの初期濃度を有する量で添加され、
必要に応じて細胞の試料は、病原体、細菌、エンドトキシン、真菌、マイコプラズマ、ウイルス、肝炎ウイルス、またはHIVウイルスの存在についてスクリーニングされ、
必要に応じて細胞の試料は、正常核型の存在についてスクリーニングされ、
必要に応じて細胞の試料は、テロメラーゼ活性の上昇を呈さず、
必要に応じて細胞の試料は、生存能についてスクリーニングされ、
必要に応じて細胞の試料は、腫瘍形成能についてスクリーニングされる
方法によって作製される哺乳動物胎児神経網膜細胞の異種混合物を含む、製剤、製造産物、あるいは組成物を提供する。
【0007】
製剤、製造産物、または組成物の代替の実施形態では、胎児神経網膜細胞の異種混合物を作製するための方法は、
(a)細胞表面マーカーまたは遺伝子マーカーに基づいて胎児神経網膜細胞を選択し、培養するステップの前(将来を見越して)もしくは培養するステップの後のいずれかに、または両方で細胞を必要に応じて選択するステップであって、
必要に応じて細胞表面マーカーまたは遺伝子マーカーは、CD15/LeX/SSEA1および/またはGD2ガングリオシド、必要に応じてCD9、CD81、CD133、またはAQP4、CXCR4を含むステップ、あるいは
(b)胎児神経網膜細胞トランスクリプトームプロファイル、プロテオームプロファイル、および/またはゲノムプロファイルに基づいて胎児神経網膜細胞を選択するステップをさらに含む。
代替の実施形態では、本発明の胎児神経網膜細胞の異種混合物を作製するための方法は、
細胞に最適速度(または最適速度付近)で増殖させ、かつ/または胎児神経網膜細胞表現型もしくはトランスクリプトームプロファイルを発現させる条件下で細胞を培養するステップであって、
必要に応じて、胎児神経網膜細胞表現型プロファイルは、(必要に応じて中等度の)レベルのKi67、p21、および/もしくは、テロメラーゼならびに/または高レベルの、多分化能細胞であるが多能性細胞でない細胞に関連した1つもしくは複数の幹細胞マーカーの発現を含み、
あるいは必要に応じて、胎児神経網膜細胞表現型プロファイルは、ネスチン、ビメンチン、Ki-67、分化マーカー、β3-チューブリン、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、および/もしくはロドプシン、またはこれらの任意の組合せの(遺伝子またはメッセージ)発現を含み、
必要に応じてDach1、Lhx2、および/またはPax6メッセージが測定される
、ステップをさらに含む。
【0008】
代替の実施形態では、製剤、製造産物、または組成物は、注射、または硝子体腔もしくは網膜下腔内への注射用に製剤化される。
代替の実施形態では、本発明は、網膜疾患または網膜の状態を処置するための方法であって、
(a)本発明の製剤、製造産物、または組成物を提供するステップと、
(b)硝子体腔もしくは網膜下腔内に(a)の製剤、製造産物、または組成物を注射するステップと、
を含み、
必要に応じて硝子体腔もしくは網膜下腔は、ヒトまたはネコまたはイヌの硝子体腔もしくは網膜下腔であり、
必要に応じて標準的な眼内注射手順が使用され、
必要に応じて本方法は、前房穿刺をさらに含み、
それによって、手順の安全性を改善する、
それによって、網膜疾患または網膜の状態を処置する、方法を提供する。
【0009】
本方法の代替の実施形態では、網膜疾患または網膜の状態は、アッシャー病、網膜色素変性症(RP)、網膜変性疾患、加齢黄斑変性症(AMD)、滲出型AMDもしくは萎縮型AMD、網膜光受容体疾患、糖尿病性網膜症、網膜剥離、網膜損傷、外傷性もしくは医原性網膜損傷、神経節細胞もしくは視神経細胞疾患、緑内障または視神経症を含む。
【0010】
代替の実施形態では、本発明は、明所(昼間)視を改善するための方法であって、
(a)本発明の製剤、製造産物、または組成物を提供するステップと、
(b)硝子体腔もしくは網膜下腔内に(a)の製剤、製造産物、または組成物を注射するステップと、
を含み、
必要に応じて硝子体腔もしくは網膜下腔は、ヒトまたはネコまたはイヌの硝子体腔もしくは網膜下腔であり、
必要に応じて標準的な眼内注射手順が使用され、
必要に応じて本方法は、前房穿刺をさらに含み、
それによって、明所(昼間)視を改善する、方法を提供する。
【0011】
代替の実施形態では、本発明は、矯正視力を改善する、または黄斑機能を改善する、または視野を改善する、または暗所(夜間)視を改善するための方法であって、
(a)本発明の製剤、製造産物、または組成物を提供するステップと、
(b)硝子体腔もしくは網膜下腔内に(a)の製剤、製造産物、または組成物を注射するステップと、
を含み、
必要に応じて硝子体腔もしくは網膜下腔は、ヒトまたはネコまたはイヌの硝子体腔もしくは網膜下腔であり、
必要に応じて標準的な眼内注射手順が使用され、
必要に応じて本方法は、前房穿刺をさらに含み、
それによって、視力を矯正する、または黄斑機能を改善する、または視野を改善する、または暗所(夜間)視を改善する、方法を提供する。
【0012】
代替の実施形態では、本発明は、
(a)ヒトについて、在胎約17~18週齢、または在胎約16~19週齢、または在胎15~20週齢、または在胎14~26週齢、または在胎約14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、もしくは26週齢、あるいは非ヒト動物、必要に応じてネコ、イヌ、もしくはブタの細胞について約3、4、5、6、7、8、9、10、もしくは11週、またはネコについて6~7週、またはブタ細胞について6~9週にある、
必要に応じて細胞の試料は、ヒトまたはネコまたはイヌの細胞を含む、ステップと、
(b)回収した細胞の試料を酵素的に解離して、細胞の解離懸濁物(dissociated suspension)ならびに/または小サイズおよび中サイズ細胞群を作製するステップであって、
必要に応じて回収した細胞の試料は、トリプシンもしくは均等物、またはTRYP-LE EXPRESS(商標)(TrypLE(商標)Express、Invitrogen-Life Technologies、Carlsbad CA)もしくは均等物を使用して酵素的に解離される、ステップと、
(c)無血清培地または血清を含む培地を含み、抗生物質も抗真菌薬も含まない滅菌環境下で、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10以上を超えない継代にわたって細胞を培養するステップと
を含み、
必要に応じて細胞は、ダルベッコ変法イーグル培地を含む培地:Nutrient Mixture F-12(商標)(DMEM/F12(商標))培地(Gibco-Invitrogen-Life Technologies、Carlsbad CA)、またはULTRACULTURE(商標)培地(BioWhittaker-Lonza Walkersville,Inc.、Walkersville、MD)中で培養され、
必要に応じてDMEM/F12(商標)培地は、ヒト細胞に使用され、ULTRACULTURE(商標)培地は、ネコまたはイヌの細胞に使用され、
必要に応じて培地は、ビタミンCを補充され、必要に応じてビタミンCは、1日または2日毎に添加され、必要に応じてビタミンCは、約0.1mg/mlもしくは0.05mg/ml、または約0.01mg/ml~約0.5mg/mlの間の初期濃度を有する量で添加され、
必要に応じて培地は、アルブミン、またはヒトもしくはネコもしくはイヌのアルブミン、または組換えアルブミンを補充され、あるいはアルブミンは、約1.0mg/mlの初期濃度を有する量で添加され、
必要に応じて細胞の試料は、病原体、細菌、エンドトキシン、真菌、マイコプラズマ、ウイルス、肝炎ウイルス、またはHIVウイルスの存在についてスクリーニングされ、
必要に応じて細胞の試料は、正常核型の存在についてスクリーニングされ、
必要に応じて細胞の試料は、テロメラーゼ活性の上昇を呈さず、
必要に応じて細胞の試料は、生存能についてスクリーニングされ、
必要に応じて細胞の試料は、腫瘍形成能についてスクリーニングされる
方法によって作製される胎児神経網膜細胞の異種混合物を作製するための方法を提供する。
【0013】
代替の実施形態では、本発明は、網膜疾患もしくは網膜の状態を処置するため、または本発明の方法を実施するためのキットであって、
(a)本発明の製剤、製造産物、もしくは組成物、および/または
(b)本発明の方法によって作製された胎児神経網膜細胞の異種混合物
を含む、キットを提供する。
【0014】
代替の実施形態では、本発明は、ネスチン、Sox2、Ki67、MHCクラスI、およびFas/CD95からなる群から選択される1種または複数のマーカーを発現する哺乳動物網膜前駆細胞を含む細胞集団であって、ネスチンは、集団内の細胞の約90%超、または約95~99%によって発現され、Sox2は、集団内の細胞の約80%超、または約90~99%によって発現され、Ki-67は、集団内の細胞の約30%超、または約40~60%によって発現され、MHCクラスIは、集団内の細胞の約70%超、または約90%によって発現され、Fas/CD95は、集団内の細胞の約30%超、または約40~70%によって発現される、細胞集団を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物に由来する。
【0015】
ある特定の実施形態では、集団内の哺乳動物網膜前駆細胞は、ビメンチン、CD9、CD81、AQP4、CXCR4、CD15/LeX/SSEA1、GD2ガングリオシド、CD133、β3-チューブリン、MAP2、GFAP、OPN/SPP1、PTN、KDR、およびTEKからなる群から選択される1種または複数のマーカーをさらに発現する。
【0016】
別の態様では、哺乳動物網膜前駆細胞の集団を単離するための方法であって、後に網膜が形成されるが、光受容体外側セグメントが網膜全体にわたって完全に形成される前、かつ網膜の血管新生が実質的に完了し、または完了する前の段階で哺乳動物胎児網膜組織を回収するステップと、回収した組織を解離して、細胞および細胞群の解離懸濁物を生成するステップと、解離懸濁物を約10~30継代にわたって培養するステップであって、哺乳動物網膜前駆細胞は、ネスチン、Sox2、Ki-67、β3-チューブリン、MAP2、MHCクラスI、およびFas/CD95からなる群から選択される1種または複数のマーカーを発現し、ネスチンは、集団内の細胞の約90%超、または約95~99%によって発現され、Sox2は、集団内の細胞の約80%超、または90~99%によって発現され、Ki-67は、集団内の細胞の約30%超、または約40~60%によって発現され、MHCクラスIは、集団内の細胞の約70%超、または約90%によって発現され、Fas/CD95は、集団内の細胞の約30%超、または約40~70%によって発現される、ステップとを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、組織は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物から回収される。いくつかの実施形態では、組織は、在胎約12週齢~約28週齢の間におけるヒト胎児網膜から、または出生後もしくは新生児の網膜組織から回収される。他の実施形態では、組織は、在胎約3週齢~約11週齢の間における非ヒト胎児網膜から回収される。他の実施形態では、組織は、在胎約3週齢~11週齢の間における非ヒト哺乳動物から、または出生後もしくは新生児の網膜組織から回収される。細胞は、大気の酸素レベル、または妊娠の間に発生中の胎児網膜の酸素レベルに近似する低酸素レベル、例えば、約0.5%~約7%の間などで培養することができ、無血清または低血清細胞培養培地で培養することもでき、この培地は、追加の補充物、例えば、N2、B27、ビタミンC、およびアルブミンなどを必要に応じて含むことができる。
【0017】
他の態様では、網膜疾患または網膜の状態を処置する必要のある被験体において網膜疾患または網膜の状態を処置するための方法であって、哺乳動物網膜前駆細胞を含む有効量の組成物を被験体に投与するステップであって、哺乳動物網膜前駆細胞は、ネスチン、Sox2、Ki-67、β3-チューブリン、MAP2、MHCクラスI、およびFas/CD95からなる群から選択される1種または複数のマーカーを発現し、ネスチンは、集団内の細胞の約90%超、または約95~99%によって発現され、Sox2は、集団内の細胞の約80%超、または約90~99%によって発現され、Ki-67は、集団内の細胞の約30%超、または約40~60%によって発現され、MHCクラスIは、集団内の細胞の約70%超、または約90%によって発現され、Fas/CD95は、集団内の細胞の約30%超、または40~70%によって発現される、ステップと、被験体の視覚の変化を必要に応じて測定するステップとを含み、それによって網膜疾患または網膜の状態を処置する、方法が提供される。
【0018】
代替の実施形態では、被験体は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態では、組成物は、被験体の硝子体腔もしくは網膜下腔内への注射用に製剤化される。網膜疾患または網膜の状態は、網膜色素変性症(RP)、レーバー先天性黒内障(LCA)、シュタルガルト症、アッシャー症候群、コロイデレミア、桿体-錐体もしくは錐体-桿体ジストロフィー、繊毛障害(ciliopathy)、ミトコンドリア障害、進行性網膜萎縮、網膜変性疾患、加齢黄斑変性症(AMD)、滲出型AMD、萎縮型AMD、地図状萎縮、家族性もしくは後天性黄斑症、網膜光受容体疾患、網膜色素上皮を基礎とする疾患(retinal pigment epithelial-based disease)、糖尿病性網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、ブドウ膜炎、網膜剥離、外傷性網膜損傷、医原性網膜損傷、黄斑円孔、黄斑部毛細血管拡張症、神経節細胞疾患、視神経細胞疾患、緑内障、視神経症、虚血性網膜疾患、未熟児網膜症、網膜血管閉塞、家族性細動脈瘤(familial macroaneurysm)、網膜血管疾患、眼血管疾患、血管疾患、または虚血性視神経症を含み得る。
本発明の一つの実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
哺乳動物網膜前駆細胞を含む細胞集団であって、該哺乳動物網膜前駆細胞は、ネスチン、Sox2、Ki-67、MHCクラスI、およびFas/CD95からなる群から選択される1種または複数のマーカーを発現し、ネスチンは、該集団内の該細胞の90%超によって発現され、Sox2は、該集団内の該細胞の80%超によって発現され、Ki-67は、該集団内の該細胞の30%超によって発現され、MHCクラスIは、該集団内の該細胞の70%超によって発現され、Fas/CD95は、該集団内の該細胞の30%超によって発現される、細胞集団。
(項目2)
前記細胞がヒトまたは非ヒト哺乳動物に由来する、項目1に記載の細胞集団。
(項目3)
前記集団内の前記細胞が、ビメンチン、CD9、CD81、AQP4、CXCR4、CD15/LeX/SSEA1、GD2ガングリオシド、CD133、β3-チューブリン、MAP2、GFAP、OPN/SPP1、PTN、KDR、およびTEKからなる群から選択される1種または複数のマーカーをさらに発現する、項目1に記載の細胞集団。
(項目4)
哺乳動物網膜前駆細胞の集団を単離するための方法であって、
後に網膜が形成されるが、光受容体外側セグメントが該網膜全体にわたって完全に形成される前、および網膜の血管新生が実質的に完了し、または完了する前の段階で哺乳動物胎児網膜組織を回収するステップと、
該回収した組織を解離して、細胞および細胞群の解離懸濁物を生成するステップと、
該解離懸濁物を約10~30継代にわたって培養するステップであって、該哺乳動物網膜前駆細胞は、ネスチン、Sox2、Ki-67、MHCクラスI、およびFas/CD95からなる群から選択される1種または複数のマーカーを発現し、ネスチンは、該集団内の該細胞の90%超によって発現され、Sox2は、該集団内の該細胞の80%超によって発現され、Ki-67は、該集団内の該細胞の30%超によって発現され、MHCクラスIは、該集団内の該細胞の70%超によって発現され、Fas/CD95は、該集団内の該細胞の30%超によって発現される、ステップとを含む、方法。
(項目5)
前記組織が、ヒトまたは非ヒト哺乳動物から回収される、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記組織が、在胎約12週齢~約28週齢のヒト胎児網膜から、または出生後もしくは新生児の網膜から回収される、項目4に記載の方法。
(項目7)
前記組織が、在胎約3週齢~約11週齢の非ヒト胎児網膜から、または出生後もしくは新生児の網膜から回収される、項目4に記載の方法。
(項目8)
前記細胞が大気酸素レベルで培養される、項目4に記載の方法。
(項目9)
前記細胞が、約0.5%~約7%の間の酸素レベルで培養される、項目4に記載の方法。
(項目10)
前記細胞が、ビタミンCおよびアルブミンを必要に応じて含む無血清または低血清細胞培養培地で培養される、項目4に記載の方法。
(項目11)
前記集団内の前記細胞が、ビメンチン、CD9、CD81、AQP4、CXCR4、CD15/LeX/SSEA1、GD2ガングリオシド、CD133、β3-チューブリン、MAP2、GFAP、OPN/SPP1、PTN、KDR、およびTEKからなる群から選択される1種または複数のマーカーをさらに発現する、項目4に記載の方法。
(項目12)
網膜疾患または網膜の状態を処置する必要のある被験体において網膜疾患または網膜の状態を処置するための方法であって、哺乳動物網膜前駆細胞を含む有効量の組成物を該被験体に投与するステップであって、該哺乳動物網膜前駆細胞は、ネスチン、Sox2、Ki-67、MHCクラスI、およびFas/CD95からなる群から選択される1種または複数のマーカーを発現し、ネスチンは、該集団内の該細胞の90%超によって発現され、Sox2は、該集団内の該細胞の80%超によって発現され、Ki-67は、該集団内の該細胞の30%超によって発現され、MHCクラスIは、該集団内の該細胞の70%超によって発現され、Fas/CD95は、該集団内の該細胞の30%超によって発現される、ステップと、該被験体の視覚の変化を必要に応じて測定するステップとを含み、それによって該網膜疾患または網膜の状態を処置する、方法。
(項目13)
前記被験体が、ヒトまたは非ヒト哺乳動物である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記組成物が、前記被験体の硝子体腔もしくは網膜下腔内への注射用に製剤化される、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記網膜疾患または網膜の状態が、網膜色素変性症(RP)、レーバー先天性黒内障(LCA)、シュタルガルト症、アッシャー症候群、コロイデレミア、桿体-錐体もしくは錐体-桿体ジストロフィー、繊毛障害、ミトコンドリア障害、進行性網膜萎縮、網膜変性疾患、加齢黄斑変性症(AMD)、滲出型AMD、萎縮型AMD、地図状萎縮、家族性もしくは後天性黄斑症、網膜光受容体疾患、網膜色素上皮を基礎とする疾患、糖尿病性網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、ブドウ膜炎、網膜剥離、外傷性網膜損傷、医原性網膜損傷、黄斑円孔、黄斑部毛細血管拡張症、神経節細胞疾患、視神経細胞疾患、緑内障、視神経症、虚血性網膜疾患、未熟児網膜症、網膜血管閉塞、家族性細動脈瘤、網膜血管疾患、眼血管疾患、血管疾患、または虚血性視神経症を含む、項目12に記載の方法。
(項目16)
前記組成物中の前記細胞が、ビメンチン、CD9、CD81、AQP4、CXCR4、CD15/LeX/SSEA1、GD2ガングリオシド、CD133、β3-チューブリン、MAP2、GFAP、OPN/SPP1、PTN、KDR、およびTEKからなる群から選択される1種または複数のマーカーをさらに発現する、項目12に記載の方法。
(項目17)
(a)(i)ヒトについて、在胎約17~18週齢、または在胎約16~19週齢、または在胎15~20週齢、または在胎14~26週齢、または在胎約14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、もしくは26週齢、あるいは非ヒト動物、必要に応じてネコ、イヌ、もしくはブタの細胞について約3、4、5、6、7、8、9、10、もしくは11週間、またはネコについて6~7週間、またはブタ細胞について6~9週間において、
(ii)哺乳動物網膜が明らかに形成される後であるが、光受容体外側セグメントが完全に形成され、網膜の血管新生が実質的に完了し、または完了する前の段階において、または類似の哺乳動物の胎児期において、哺乳動物胎児からの複数の哺乳動物胎児神経網膜細胞を含む細胞の試料を回収するステップであって、
必要に応じて細胞の該試料は、ヒトまたはネコまたはイヌの細胞を含む、ステップと、
(b)回収した細胞の該試料を酵素的に解離して、細胞の解離懸濁物ならびに/または小サイズおよび中サイズ細胞群を作製するステップであって、必要に応じて回収した細胞および/または小細胞群の該試料は、トリプシンもしくは均等物、またはTRYP-LE EXPRESS(商標)(TrypLE(商標)Express、Invitrogen-Life Technologies、Carlsbad CA)もしくは均等物を使用して酵素的に解離される、ステップと、
(c)無血清培地または血清を含む培地を含み、抗生物質および抗真菌薬を含み、または抗生物質も抗真菌薬も含まない滅菌環境下で、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10以上を超えない継代にわたって該細胞および/または小細胞群を培養するステップと
を含み、
必要に応じて該細胞および/または小細胞群は、ダルベッコ変法イーグル培地を含む培地:Nutrient Mixture F-12(商標)(DMEM/F12(商標))培地、またはADVANCED DMEM/F12(商標)培地(Gibco-Invitrogen-Life Technologies、Carlsbad CA))、またはULTRACULTURE(商標)培地(BioWhittaker-Lonza Walkersville,Inc.、Walkersville、MD)で、N2補充物(Invitrogen)、またはB27もしくはB27 Xeno Free(Invitrogen)、L-グルタミンもしくはGlutaMax(Invitrogen)、ならびにEGFおよびbFGFからなるヒト組換え増殖因子(Invitrogen)、または他の増殖因子と必要に応じて一緒に培養され、
必要に応じて該DMEM/F12(商標)培地は、ヒト細胞のために使用され、該ULTRACULTURE(商標)培地は、ネコまたはイヌの細胞のために使用され、
低酸素条件、または妊娠の間に発生中の胎児網膜の酸素レベルに近似するもしくは密接に模倣する酸素条件下、あるいは約2%、2.5%、3%、3.5%の酸素で必要に応じて該細胞を培養し、あるいは増殖させ、
必要に応じて該培地は、ビタミンCを補充され、必要に応じて該ビタミンCは、1日または2日毎に添加され、必要に応じて該ビタミンCは、約0.1mg/mlもしくは0.05mg/ml、または約0.01mg/ml~約0.5mg/mlの間の初期濃度を有する量で添加され、
必要に応じて該培地は、アルブミン、またはヒトもしくはネコもしくはイヌのアルブミン、または組換えアルブミンを補充され、あるいはアルブミンは、約1.0mg/mlの初期濃度を有する量で添加され、
必要に応じて細胞の該試料は、病原体、細菌、エンドトキシン、真菌、マイコプラズマ、ウイルス、肝炎ウイルス、またはHIVウイルスの存在についてスクリーニングされ、
必要に応じて細胞の該試料は、正常核型の存在についてスクリーニングされ、
必要に応じて細胞の該試料は、テロメラーゼ活性の上昇を呈さず、
必要に応じて細胞の該試料は、生存能についてスクリーニングされ、
必要に応じて細胞の該試料は、腫瘍形成能についてスクリーニングされる
方法によって作製される胎児神経網膜細胞の異種混合物を含む、製剤、製造産物、あるいは組成物。
(項目18)
胎児神経網膜細胞の前記異種混合物を作製するための前記方法が、
(a)細胞表面マーカーまたは遺伝子マーカーに基づいて胎児神経網膜細胞を選択し、培養前(前向きに)もしくは培養後に、または両方で該細胞を必要に応じて選択するステップであって、
必要に応じて該細胞表面マーカーまたは遺伝子マーカーは、CD15/LeX/SSEA1および/またはGD2ガングリオシド、必要に応じてCD9、CD81、CD133、またはAQP4、CXCR4を含むステップ、あるいは
(b)胎児神経網膜細胞トランスクリプトームプロファイル、プロテオームプロファイル、および/またはゲノムプロファイルに基づいて胎児神経網膜細胞を選択するステップをさらに含む、項目17に記載の製剤、製造産物、あるいは組成物。
(項目19)
網膜疾患または網膜の状態を処置するための方法であって、
(a)項目17~18のいずれかに記載の製剤、製造産物、または組成物を提供するステップと、
(b)(a)の該製剤、製造産物、または組成物を硝子体腔もしくは網膜下腔内に注射するステップとを含み、
必要に応じて該硝子体腔もしくは網膜下腔は、ヒトまたはネコまたはイヌの硝子体腔もしくは網膜下腔であり、必要に応じて標準的な眼内注射手順が使用され、必要に応じて該方法は、前房穿刺をさらに含み、それによって該網膜疾患または網膜の状態を処置し、必要に応じて該網膜疾患または網膜の状態は、アッシャー病、網膜色素変性症(RP)、網膜変性疾患、加齢黄斑変性症(AMD)、滲出型AMD、もしくは萎縮型AMD、地図状萎縮、網膜光受容体疾患、糖尿病性網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、ブドウ膜炎、網膜剥離、網膜損傷、黄斑円孔、黄斑部毛細血管拡張症、外傷性もしくは医原性網膜損傷、神経節細胞もしくは視神経細胞疾患、緑内障、または視神経症、虚血性網膜疾患、例えば、未熟児網膜症、網膜血管閉塞、もしくは虚血性視神経症を含む、方法。
(項目20)
明所(昼間)視を改善するための、または矯正視力を改善する、または黄斑機能を改善する、または視野を改善する、または暗所(夜間)視を改善するための方法であって、
(a)項目17~18のいずれかに記載の製剤、製造産物、または組成物を提供するステップと、
(b)(a)の該製剤、製造産物、または組成物を硝子体腔もしくは網膜下腔内に注射するステップとを含み、
必要に応じて該硝子体腔もしくは網膜下腔は、ヒトまたはネコまたはイヌの硝子体腔もしくは網膜下腔であり、必要に応じて標準的な眼内注射手順が使用され、必要に応じて該方法は、前房穿刺をさらに含み、それによって該手順の安全性を改善する;それによって該明所(昼間)視を改善する、または矯正視力を改善する、または黄斑機能を改善する、または視野を改善する、方法。
【0019】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細を、添付の図面および以下の記載で示す。本発明の他の特徴、目的、ならびに利点は、その記載および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかである。
【0020】
本明細書に引用されるすべての刊行物、特許、特許出願は、すべての目的に関して、参照により本明細書に明白に組み込まれている。
【0021】
以下の詳細な記載は、例として示すが、本明細書に記載の主題を、記載した具体的な実施形態に限定することを意図しておらず、参照により本明細書に組み込まれている添付の図面と併せて理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、ネコ網膜由来前駆細胞、またはRPCの形態を例示する図である。形態は、培養を持続する過程における様々なタイムポイントで維持された。
【0023】
図2図2は、SM培地対UL培地におけるネコRPCの増殖の差異を示す増殖曲線を表すグラフである。
【0024】
図3図3は、培養中の経時的なヒトRPC(hRPC)の形態を示す図である(0日目~56日目)。
【0025】
図4図4および図5は、経時的なhRPCの増殖動態を示すグラフである。
【0026】
図5図4および図5は、経時的なhRPCの増殖動態を示すグラフである。
【0027】
図6図6Aは、N2を補充した、アドバンストDMEM/F12および基礎DMEM/F12細胞培養培地の間の増殖条件の比較を示す図である。図6Bは、N2またはB27を補充した細胞培養培地におけるhRPCの増殖を比較する実験を例示する図である。
【0028】
図7図7Aは、hRPC培養におけるビタミンC補充の効果を試験する実験を要約する図である。ビタミンCを添加すると、hRPC生存能が改善した。図7Bおよび図7Cは、hRPC培養におけるアルブミン補充の効果を試験する実験を表す図である。
【0029】
図8図8は、hRPC増殖および生存能に対する細胞培養培地の異なる容量オスモル濃度を試験する比較実験を反映する図である。
【0030】
図9図9~11は、hRPCを大気酸素の条件下で培養し、低酸素条件下で増殖させた同じ細胞と比較した実験の結果を表す図である。増殖動力学、形態、および遺伝子発現を評価した。図11は、ワーキングセルバンクを生成するのに使用した3つの異なる細胞試料の増殖特性の再現性を示す図である。
【0031】
図10図9~11は、hRPCを大気酸素の条件下で培養し、低酸素条件下で増殖させた同じ細胞と比較した実験の結果を表す図である。増殖動力学、形態、および遺伝子発現を評価した。図11は、ワーキングセルバンクを生成するのに使用した3つの異なる細胞試料の増殖特性の再現性を示す図である。
【0032】
図11図9~11は、hRPCを大気酸素の条件下で培養し、低酸素条件下で増殖させた同じ細胞と比較した実験の結果を表す図である。増殖動力学、形態、および遺伝子発現を評価した。図11は、ワーキングセルバンクを生成するのに使用した3つの異なる細胞試料の増殖特性の再現性を示す図である。
【0033】
図12図12は、hRPCに実施したステロイド毒性試験の結果を示す図である。
【0034】
図13図13A~13Dは、以前に凍結したhRPCの生存能および安定性を示すグラフである。
【0035】
図14図14は、ImmunoCytoChemistry(ICC)マーカーのネスチン、β3-チューブリン、ビメンチン、ロドプシン、Ki-67、およびGFAPによって染色したネコRPCを示す図である。
【0036】
図15図15は、ネスチン、ビメンチン、GFAP、およびPKC-αマーカー転写物のqPCRを使用した経時的なネコRPC遺伝子プロファイルを示すグラフである。
【0037】
図16図16Aは、ULおよびSM培地条件下で増殖させたRPC間のqPCR測定による遺伝子発現の差異のグラフによる例示である。図16Bは、ネコRPC対BPCを比較するグラフである。
【0038】
図17図17は、ジストロフィーのアビシニアンネコの網膜下腔内にネコRPCをin vivo移植した後の、RFP、ビメンチン、またはオプシン、エズリン、またはPKCの細胞染色を示す図である。
【0039】
図18図18は、ICCによるマーカー発現を使用したヒト細胞の形態を例示する図である。マーカーには、(A)ネスチン、(B)ビメンチン、(C)Sox2、(D)SSEA-1(CD15、LeXとしても公知)、(E)GD2-ガングリオシド、および(F)Ki-67が含まれる。
【0040】
図19図19は、ICCによるマーカー発現を使用したヒト細胞の形態を例示する図である。(A)は、β3-チューブリン染色を示し、(B)は、GFAP染色を示し、(C)は、GDNF染色を示す。
【0041】
図20図20は、定量的PCRヒートマッピングによって検出した場合のRNAレベルでのマーカー発現を表す図である。
【0042】
図21図21Aは、hRPC対ヒト線維芽細胞(hFB)において遺伝子の発現レベルを比較するqPCR分析の結果を示す図である。図21Bおよび21Cは、追加の実験からのqPCR(遺伝子発現)データを表す。
【0043】
図22図22は、異なる供与物(donation)間で一貫した挙動(hRPC対hFBにおいて)を呈する11遺伝子(使用したおよそ26のプロファイルからの)のリストを示す総括表である。
【0044】
図23図23は、培養物の諸タイムポイントでqPCR(「リアルタイム」PCR)によって検出した場合の、RNAレベルでのマーカー発現を示す図である。
【0045】
図24図24は、様々なマーカー(例えば、早期継代細胞対後期継代細胞におけるGDNF、アネキシンV、β3-チューブリン、Notch1、Six6、Ki-67、およびCD133)の発現レベルの変化を表す図である。
【0046】
図25図25は、神経幹細胞(BPC)からhRPCを区別するマイクロアレイデータの概要を表す図である。
【0047】
図26図26は、レチノイン酸(RA)で分化した後のマーカー発現を示す図である。
【0048】
図27図27は、異なる組織供与物から増殖させたhRPCの培養条件の総括表である。
【0049】
図28図28Aは、培養物における異なるタイムポイントでの、SM条件下で増殖させたqPCRによる遺伝子発現を例示する図であり、図28Bは、2つの異なるタイムポイントでの、SM-UL(最初にUL、次いでSM)条件下で増殖させたqPCRによる遺伝子発現を例示する図である。
【0050】
図29図29Aは、異なるタイムポイントにおけるSM-FBS(最初のプレーティング条件 SM+5%のFBS、次いでSM単独に変更した)条件下のqPCRによる遺伝子発現を例示する図である。図29Bは、2つの異なるタイムポイントにおけるSM単独でのqPCRによる遺伝子発現を例示する図である。図29Cは、同じ2タイムポイントにおけるSM-hS(最初のSM+ヒト血清後にSM)でのqPCRによる遺伝子発現を例示する図である。以前と同様に、GDNFのみが上昇する。
【0051】
図30図30は、図28および図29を示す、タイムポイント比較の実験結果の総括表(table summary)である。諸処置条件にわたって強く一貫した傾向を示す遺伝子を、黄色で強調している。
【0052】
図31図31は、hRPCから得たqPCRデータのヒートマップ分析を表す図である。
【0053】
図32図32は、hRPCからのqPCRデータのヒストグラムを表す図である。
【0054】
図33図33Aは、hRPCにおける新脈管形成関連遺伝子のレベルを表す図である。図33Bは、hRPCにおけるWNT経路関連遺伝子のレベルを表す図である。
【0055】
図34図34Aは、hRPC対組織および線維芽細胞の間の遺伝子発現の差異を示す主成分分析(PCA)の結果を要約するグラフである。図34Bは、0日目に胎児網膜から得たhRPC対組織の間の遺伝子発現の差異を示す別のPCAグラフである。図34Cは、細胞試料集団間の全体的な類似性および差異を表す別のPCAグラフである。
【0056】
図35図35は、3つのhRPC集団(低酸素MCB、正常酸素MCB、および低酸素WCB)対胎児網膜組織のクラスター分析を示す図である。
【0057】
図36図36は、低酸素MCB対組織における遺伝子発現の差異を比較するボルケーノプロットである。
【0058】
図37図37Aは、処置条件の関数としての、hRPC群間の差次的に発現された遺伝子の数を示すベン図である。図37Bは、継代数および処置条件の関数としての、組織に対して正規化されたhRPC群間の差次的に発現された遺伝子の数を示すベン図である。
【0059】
図38図38Aおよび図38Bは、異なるhRPC対起源の組織を比較するボルケーノプロットである。
【0060】
図39図39Aおよび図39Bは、低酸素hRPC対正常酸素hRPCを比較するボルケーノプロットである。
【0061】
図40図40は、ネコRPCについてのタイムポイント設計(time point design)を要約する表である。供与物および処置条件の表が比較されている(UL-d76の赤色下線は、細胞の増殖曲線における明らかな上向きの変曲、すなわち、可能性がある自発的不死化に対応する)。
【0062】
図41図41Aは、示したタイムポイントにおける、UL培地で増殖させたネコcRPCのqPCRによる遺伝子発現を例示する図である。図41Bは、図41Aに示していない追加のマーカーを含む。
【0063】
図42図42~44は、図41に示したのと同じ実験からの追加のデータを一括して表す図である。
図43図42~44は、図41に示したのと同じ実験からの追加のデータを一括して表す図である。
図44図42~44は、図41に示したのと同じ実験からの追加のデータを一括して表す図である。
【0064】
図45図45は、タイムポイントおよび培養条件によるネコcRPCの発現パターンの変化を示す放射状グラフである。
【0065】
図46図46は、異なる供与物および培養条件にわたってネコRPCから得たqPCRデータを要約するチャートである。
【0066】
図47図47は、正常酸素および低酸素条件下で培養したhRPCを特徴付けるELISA試験の結果を示す図である。検出したマーカーには、OPN、VEGF、SDF-1、BDNF、およびGDNFが含まれる。
【0067】
図48図48は、正常酸素および低酸素条件下で培養したhRPCのFACS分析の結果を示す図である。対象とするマーカーには、ネスチン、Sox2、Ki-67、GFAP、MHCクラスIおよびII、Fas/CD95、CXCR4、CD15、ならびにGD2ガングリオシドが含まれる。
【0068】
図49図49は、遺伝性光受容体変性モデルにおいてジストロフィーRCSラットの眼内へのhRPCのin vivo移植を使用する本発明の方法の概念実証を例示する図である。
【0069】
図50図50および図51は、hRPCを網膜下に注射した後のラット網膜の染色を示す写真である。
図51図50および図51は、hRPCを網膜下に注射した後のラット網膜の染色を示す写真である。
【0070】
図52図52および図53は、は、hRPCを硝子体内に注射した後のラット網膜の染色を示す写真である。
図53図52および図53は、は、hRPCを硝子体内に注射した後のラット網膜の染色を示す写真である。
【0071】
図54図54は、ラット網膜にhRPCを注射した後のRCS全組織標本の免疫細胞化学的染色を示す写真である。AおよびB:シャム、CおよびD:処置。
【0072】
図55図55は、hRPCでの処置を受けた患者の視力の改善を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
詳細な説明
本明細書全体にわたって記載される特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適当な様式で組み合わせることができる。例えば、本明細書全体にわたって、語句「例示的な実施形態」、「例としての実施形態」、「いくつかの実施形態」、または他の同様の言い回しを使用することにより、一実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性は、本明細書に記載の少なくとも1つの実施形態に含めることができるという事実を指す。したがって、本明細書全体にわたって、語句「例示的な実施形態」、「例としての実施形態」、「いくつかの実施形態では」、「他の実施形態では」、または他の同様の言い回しが現れることによって、すべて同じ群の実施形態を指すとは限らず、記載される特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適当な様式で組み合わせることができる。
【0074】
本開示の理解を促すために、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書で定義される用語は、本明細書に記載の主題に関連した分野における当業者によって一般に理解される意味を有する。「a」、「an」、および「the」などの用語は、単数形の実体のみを指すことが意図されているのではなく、具体例を例示のために使用することができる一般的なクラスを含む。本明細書の専門用語は、本明細書に記載の主題の具体的な実施形態を記述するのに使用されるが、これらを使用することによって、特許請求の範囲で概説されるものを除いて、主題の範囲を定めるものではない。
【0075】
本発明は、網膜疾患または網膜の状態、例えば、アッシャー病、網膜色素変性症(RP)、網膜変性疾患、加齢黄斑変性症(AMD)、滲出型AMDもしくは萎縮型AMD、網膜光受容体疾患、糖尿病性網膜症、網膜剥離、網膜損傷、外傷性もしくは医原性網膜損傷、神経節細胞もしくは視神経細胞疾患、緑内障または視神経症を処置する、軽減する、または防止する、あるいは明所(昼間)視を改善する、あるいは矯正視力を改善する、あるいは黄斑機能を改善する、あるいは視野を改善する、あるいは暗所(夜間)視を改善するための胎児神経網膜細胞の異種混合物を含み、あるいは使用する組成物および方法を提供する。代替の実施形態では、本発明は、胎児神経網膜細胞の異種混合物、ならびにこれらを作製および使用するための方法および組成物(例えば、キット、製剤など)を提供する。
【0076】
代替の実施形態では、本発明は、細胞懸濁物として調製され、網膜疾患を有する患者の硝子体腔内に注射される同種異系移植片として使用される網膜前駆細胞の培養の方法および使用を提供する。代替の実施形態では、本発明は、未熟な哺乳動物の、例えば、ヒトの網膜に由来する培養された異種細胞集団の使用を含み、またはこれからなる細胞ベース療法を提供する。
【0077】
代替の実施形態では、増殖中の哺乳動物の、例えば、ヒトの網膜細胞が、ドナー組織から増殖され、特徴付けが実施され、レシピエント、例えば、患者の全身免疫抑制を必要とすることなく、局所麻酔下で硝子体腔に直接細胞が注射される。
【0078】
代替の実施形態では、本発明の組成物および方法は、網膜疾患、例えば、網膜変性症、例えば、網膜色素変性症(RP)を処置、防止し、または軽減するのに使用される。
【0079】
本発明は、いずれの特定の作用機序によっても制限されないが、一実施形態では、ドナー胎児網膜細胞は、特に宿主の錐体を含む宿主の網膜に栄養効果をもたらす。この栄養作用は、神経保護的なものだけではなく、視覚機能の改善によって判定されるように、残留する宿主の網膜細胞に対する急速な活性化効果(revitalizing effect)も有する。一実施形態では、ドナー細胞は、網膜へと組み込むことができ、細胞分化を介して光受容体を取り替える(これは、限られた数であり得る)。全体的な効果は、これがなければ、患者を完全に盲目のままにして完全に機能不全に向かうことになる、網膜における臨床的に有意な程度の視覚機能を急速かつ持続的に回復および保持することである。したがって、一実施形態では、本発明の組成物および方法は、哺乳動物、例えば、ヒトの網膜の臨床的に有意な程度の視覚機能を急速かつ持続的に回復および保持することができる。
【0080】
代替の実施形態では、本発明の方法は、必要に応じて組織も足場も含めないで、胎児網膜細胞、例えば、ヒト網膜前駆細胞(hRPC)の解離懸濁物を作製するステップおよび使用するステップを含む。代替の実施形態では、これらの細胞は、硝子体腔内に注射され、この場合、必要に応じて硝子体切除または網膜下手術を必要としない。一実施形態では、細胞は、網膜下腔内に有効に移植(例えば、注射)することができ、またはこれらは、例えば、皮下または斜め挿入経路を使用して、任意の標準的な眼内注射手順を使用して眼の中に有効に移植(例えば、注射)することができる。代替の実施形態では、網膜切開術も眼内ガスもシリコン油も、必要とされない。
【0081】
代替の実施形態では、当業者によって判断される場合、状況に応じて前房穿刺を実施しても、実施しなくてもよい。代替の実施形態では、手順の間および/または手順の後に眼球を縫合する必要はない。代替の実施形態では、表面麻酔のみが使用され、例えば、局所(local)麻酔、局所(regional)麻酔、全身麻酔は使用されない。
【0082】
代替の実施形態では、抗炎症薬および/または免疫抑制は使用されないが、必要に応じて術後の滴剤としての抗炎症薬および/または免疫抑制剤による療法を含めることができる。代替の実施形態では、移植片の組織型決定および患者のマッチングは、必要とされない。
【0083】
代替の実施形態では、術後床上安静の強制および/または「うつぶせの」体位の必要はない。代替の実施形態では、本発明の方法は、外来処置で実施され、必要に応じていずれの一晩入院も必要としない。
【0084】
代替の実施形態では、本発明の組成物および方法は、網膜色素変性症(RP)、アッシャー病、または任意の網膜変性疾患例えば、AMD、または網膜剥離などの網膜光受容体疾患、または糖尿病性網膜症などの網膜疾患、または緑内障もしくは視神経症などの神経節細胞/視神経疾患を防止し、軽減し、かつ/または処置するのに使用される。
【0085】
代替の実施形態では、本発明の組成物および方法を使用することまたは実施することにより、経時的に、場合によって急速な効果をもたらして明所(昼間)視が改善され、最良に矯正される視力が上昇し、黄斑機能が改善されて、中心固視(central fixation)を保持し、または回復する可能性がもたらされ、視野が改善され、暗所(夜間)視が改善され;アッシャー症候群において聴力低下が相伴う場合、音に対する感受性の増大(改善)が報告され、かつ/またはLP視覚(LP vision)(光覚のみ)を有する患者について、処置された眼の改善が限られている場合、対側性の眼の視力が顕著に改善される。
【0086】
代替の実施形態では、本発明の組成物および方法を使用することまたは実施することにより、様々な全身の利点、例えば、概日リズム、下垂体機能、ホルモンの放出、血管緊張などに対する光の効果に関係し得る身体の改善におそらく起因する、処置された個体の外見の変化、視覚能力に対する感覚の改善、自立歩行の改善、健康に対する感覚の改善、および/または日常生活の活動の改善がもたらされる。
【0087】
代替の実施形態では、本発明の組成物および方法を使用することまたは実施することにより、望まれない細胞増殖、例えば、腫瘍が発生せず、感染がもたらされず、例えば、任意の眼内の医療手当に対するリスクである眼内炎(endopthalmitis)がなく、疾患が伝播せず(しかし、プリオンまたは狂牛病を除外することが困難である場合がある)、ブドウ膜炎および/または急性移植片拒絶がもたらされず、眼内圧が上昇せず、閉塞隅角がもたらされず、低圧がもたらされず、網膜剥離および/または新生血管形成がもたらされない。
【0088】
代替の実施形態では、本発明の組成物および方法は、必要に応じてクローン選択されていないが、必要に応じて混合されている胎児哺乳動物網膜から得られる未成熟網膜細胞の異種培養物を含み、またはこれからなる網膜前駆細胞培養物を使用する。代替の実施形態では、細胞は、前駆細胞マーカーおよび網膜マーカーを発現する。代替の実施形態では、異種由来成分汚染は、安全性問題となり得るので、細胞は、臨床用途用に異種由来成分不含有条件下で育てられる。代替の実施形態では、細胞は、完全無血清条件下で増殖され、所望の場合、血清含有条件下で増殖させることができる。
【0089】
代替の実施形態では、細胞は、不死ではなく、不死化するままにされることも、強制的に不死化されることもない。代替の実施形態では、細胞は、無期限に増殖しない。本発明の例示的な細胞培養法により、速度および継続時間を改善することができ、所与の組織供与物に対してドナー細胞収率を著しく改善することができる。
【0090】
代替の実施形態では、細胞は、それ自体幹細胞ではなく、むしろ未成熟かつ/または形成性であり、必要に応じて真の幹細胞の定義を満たさない。
【0091】
代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される細胞は、哺乳動物胎児組織から得られ、生物の寿命にわたって必要に応じて存続しない。代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される細胞は、1種の胚葉を(追加の操作なしで)生成することができず、または3種(3)の胚葉すべてを(追加の操作なしで)生成することができず、必要に応じて、これらは、網膜組織または細胞を作製するために事前に特性化される。
【0092】
代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される細胞は、近縁細胞の集団であり、単離された単細胞型ではない。代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される細胞は、多能性ではなく、必要に応じて多分化能であるように現れることができる。代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される細胞は、多能性状態で培養されたことが決してなく、したがってこれらは、より安全である。代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される細胞は、遺伝子改変されておらず、または代わりにこれらは、遺伝子改変されている(例えば、安定に、または一過性に、または誘導的に形質転換されている)。
【0093】
代替の実施形態では、本発明の組成物および方法により、病的網膜に臨床的に有意な栄養効果がもたらされ、または黄斑視覚機能および/または暗所視機能に再生効果がもたらされる。
【0094】
代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される細胞は、眼の中に、または眼の硝子体腔内に、または網膜下腔内に配置されるとき、例えば、同種移植片として低免疫原性を有する。
【0095】
代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される細胞は、神経前駆細胞および/または神経幹細胞(NSC)と区別される網膜前駆細胞(RPC)である。代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、多分化能であるが、NSCと等価でない。代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、脳に由来しないが、網膜に由来する。代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、光受容体を生成する(脳由来前駆細胞は、この点において劣っている)。代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、多分化能であるが、(NSCと異なって)乏突起膠細胞を(追加の操作なしで)生成しない。
【0096】
代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、例えば、本明細書に記載されるような定量的に異なる遺伝子プロファイルを発現し、またはこれらは、定量的に異なる可溶性因子プロファイルを発現し、またはこれらは、定量的に異なる表面マーカープロファイルを発現する。
【0097】
代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、哺乳動物胎児神経網膜に由来し、毛様体縁でも、毛様体上皮でも、RPE由来でもない。代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、分化したミュラーグリアの子孫ではなく、それ自体有糸分裂後の前駆体ではなく、それ自体幹細胞ではなく、かつ/またはそれ自体単一の単離された細胞型ではない。
【0098】
代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、固定されていない、一定でない、もしくは不変でない遺伝子プロファイルを有し、または培養において経時的に、定量的に動的に変化する遺伝子プロファイルを有する。
【0099】
代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、初期胚に、例えば、胚盤胞に見出されない。代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、正常な成熟した哺乳動物、例えば、ヒトにおいて任意の有用な存在量でも見出されない。代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、発育中の(胎児の)哺乳動物の、例えば、ヒトの網膜に、その天然存在量で見出される。代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、骨髄内に通常存在せず、これに由来しない。
【0100】
代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、増殖条件下で増殖されるとき、必要に応じて有糸分裂後細胞の少数混合物を伴って、ほとんど有糸分裂のものである。代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、多能性細胞系に人為的に由来するが、必要に応じて残留する多能性細胞型の集団を含有しない。
【0101】
代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、光受容体を含む網膜細胞を生成する(これに分化する)が、乏突起膠細胞を生成しない。
【0102】
代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、無関係の哺乳動物、例えば、ヒトにおける眼球同種移植片として免疫学的に寛容である。代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、哺乳動物またはヒトの視覚または網膜疾患の治療的または予防的療法のために硝子体腔に移植される。
【0103】
代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、腫瘍形成または他の望まれない細胞増殖のあらゆる、または実質的なリスクを伴わない。
【0104】
代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、球もしくは接着性単層として、または球として次いで単層として、または球と単層の組合せとして培養される。代替の実施形態では、球は必要とされず、あるいは細胞は、球としてではなく、解離した細胞として、または両方の混合物として移植される。代替の実施形態では、本発明を実施するのに使用される哺乳動物胎児網膜細胞またはRPC細胞は、硝子体内で合体し、必要に応じて球となり得る移植細胞を含む。
【0105】
本発明は、いずれの特定の作用機序によっても限定されないが、例示的な作用機序は、拡散性および/または栄養性である。証拠は、アポトーシスの軌道から光処理能力の再生に切り替える、瀕死の宿主錐体の栄養再プログラミング(trophic reprogramming)の概念と一致する。これは、直接的であっても間接的であってもよい。他の眼球組織の関与は、排除されない。この機構により、本発明の胎児神経網膜細胞の異種混合物の移植片の、硝子体または網膜下腔への配置が可能になる。一態様では、硝子体に配置することにより、拡散に基づく処置効果が増強される。この機構は、本発明の胎児神経網膜細胞の異種混合物の移植片を、視線から外して配置するが、それでも患者の黄斑を処置することを可能にすることができる。
【0106】
代替の実施形態では、硝子体への配置は、処置を大いに単純化するために使用される。この例示的な処置は、世界中で困窮している患者への利用可能性を増大させることができ、硝子体への配置は、血管系から離れていることによって免疫寛容に役立ち得る。本発明は、いずれの特定の作用機序によっても限定されないが、わずかな天然の抗原提示細胞を伴った相対的に無細胞の空間において、本発明の例示的な硝子体への配置は、網膜下手術の潜在的な合併症を回避し、全身麻酔のリスクを回避し、網膜内に穴(網膜切開術)を作る(これは、網膜剥離、出血のリスクを上昇させる)ことを必要とせず、かつ/または患者の網膜に局所的な剥離(局所的な剥離は、涙、出血、全体的な剥離をもたらし得、RPにおいて、病的網膜の剥離は、困難/危険な手順である)を行うことを必要としない。
【0107】
代替の実施形態では、視覚の利益は急速であり、処置後の第1週以内に発生し得る。代替の実施形態では、漸増的な利益がより長い期間にわたって発生する。
【0108】
代替の実施形態では、網膜細胞交換が可能であるが、臨床的効力にとって必要ではなく、網膜へのドナー細胞移入が可能であるが、臨床的効力にとって必要ではない。代替の実施形態では、網膜回路内へのドナー細胞の組込みが可能であるが、効力にとって必要ではなく、宿主網膜の外顆粒層/黄斑へのドナー細胞の組込みが可能であるが、効力にとって必要ではない。代替の実施形態では、網膜内へのドナー細胞の組込みが可能であるが、持続的移植片生着のために必要ではない。
【0109】
代替の実施形態では、ドナー細胞は、抗生物質を用いずに培養され、これにより細胞の変質を回避することができ、抗生物質を用いないと、不顕性の微生物汚染を排除することができるので、非常に低い継代の細胞を使用することが可能である。代替の実施形態では、低継代細胞の使用は、形質転換および/または腫瘍形成のリスクが低く、低継代細胞の使用は、発生中の網膜内に存在する天然細胞に最も近い。
【0110】
代替の実施形態では、DMEM/F12ベース培地または均等物は、ヒトRPCの増殖に優先的であり、Ultracultureベース培地または均等物は、ネコ前駆細胞の増殖に優先的である。
【0111】
本明細書に開示の主題は、規定された細胞培養法に従って単離され、特徴的なマーカーを発現する哺乳動物網膜前駆細胞を含む細胞集団に関する。細胞集団は、哺乳動物から単離され、in vitroで増殖した細胞の培養物とすることができる。例えば、培養物は、培養プレート、皿、フラスコ、またはバイオリアクター内で培養された細胞または接着細胞の懸濁物を含むことができる。試料は、同種であっても異種であってもよく、これは、本明細書に規定される1種または複数のマーカーの発現によって判定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の細胞集団は、混合細胞集団であり、未分化細胞と分化細胞の混合物を含有し得る。本明細書に規定される網膜前駆細胞に特徴的なマーカーの相対発現レベルは、集団内の細胞間で様々であり得る。
【0112】
代替の実施形態では、用語「精製された」または「富化された」は、細胞または細胞集団がその通常の組織環境から取り出され、通常の組織環境と比較してより高い濃度で存在することを示す。したがって、「精製された」または「富化された」細胞集団は、網膜前駆細胞に加えて細胞型をさらに含むことができ、追加の組織成分を含むことができ、用語「精製された」または「富化された」は、必ずしも前駆細胞のみの存在を示すとは限らず、または他の細胞型の存在を除外するとは限らない。
【0113】
代替の実施形態では、本明細書に開示の網膜前駆細胞集団は、少なくとも5%純粋、少なくとも10%純粋、少なくとも15%純粋、少なくとも20%純粋、少なくとも25%純粋、少なくとも30%純粋、少なくとも35%純粋、少なくとも40%純粋、少なくとも45%純粋、少なくとも50%純粋、少なくとも55%純粋、少なくとも60%純粋、少なくとも65%純粋、少なくとも70%純粋、少なくとも75%純粋、少なくとも80%純粋、少なくとも85%純粋、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも96%純粋、少なくとも97%純粋、少なくとも98%純粋、少なくとも99%純粋、または5%と99%の間の任意の増分で純粋であり得る。
【0114】
代替の実施形態では、「マーカー」は、観察または検出され得る任意の分子を指す。例えば、マーカーとして、それだけに限らないが、特定の遺伝子の転写物などの核酸、遺伝子のポリペプチド産物、非遺伝子産物ポリペプチド、糖タンパク質、炭水化物、糖脂質、脂質、リポタンパク質、または低分子(例えば、10,000ダルトン未満の分子量を有する分子)を挙げることができる。代替の実施形態では、網膜前駆細胞は、細胞集団内の細胞の表面上(「細胞表面マーカー」)、細胞集団内の細胞内部(すなわち、細胞の核もしくは細胞質内)で発現することができ、かつ/または「遺伝」マーカーとしてRNAまたはタンパク質レベルで発現することができる1種または複数のマーカーの存在によって特徴付けることができる。
【0115】
代替の実施形態では、用語「発現する」および「発現」は、本明細書において使用される場合、宿主細胞内の核酸配列の転写および/または翻訳を指す。宿主細胞内の対象とする所望の生成物/タンパク質の発現レベルは、本実施例と同様に、細胞内に存在する対応するmRNAの量、または選択された配列によってコードされる、対象とする所望のポリペプチド/タンパク質の量のいずれかに基づいて決定し、または「スクリーニングする」ことができる。例えば、選択された配列から転写されたmRNAは、ノーザンブロットハイブリダイゼーション、リボヌクレアーゼRNA保護、細胞のRNAへのin situハイブリダイゼーション、マイクロアレイ分析によって、または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって定量化または検出することができる。選択された配列によってコードされるタンパク質は、様々な抗体に基づく方法によって、例えば、ELISAによって、ウエスタンブロッティングによって、ラジオイムノアッセイによって、免疫沈降によって、タンパク質の生物活性をアッセイすることによって、タンパク質を免疫染色することによって(例えば、免疫組織化学検査および免疫細胞化学検査を含む)、フローサイトメトリーもしくは蛍光活性化細胞分取(「FACS」)分析によって、または均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイによって検出または定量化することができる。
【0116】
網膜前駆細胞は、細胞表面マーカーおよび非表面(「遺伝」)マーカーを含めた分子マーカーをこれらが発現することによって特徴付けることができる。細胞を特定のマーカーに「陽性」または「陰性」であると言うのが当技術分野で一般的であるが、実際の発現レベルは、定量的に決定される。細胞表面上の(または他で位置した)分子の数は、数ログ(several logs)変化し得るが、それでも「陽性」と特徴付けることができる。染色に陰性である、すなわち、マーカー特異的試薬の結合レベルが、対照、例えば、アイソタイプマッチ対照と検出可能な程度に異ならない細胞は、軽微な量のマーカーを発現し得ることも当業者によって理解されている。標識化(「染色」)のレベルを特徴付けると、細胞集団間の微細な区別が可能になる。細胞の染色強度は、レーザーが蛍光色素(これは、特異的試薬、例えば、抗体が結合した細胞表面マーカーの量に比例する)を定量的レベルで検出する、フローサイトメトリーによってモニターすることができる。フローサイトメトリーまたはFACSも、特異的試薬への結合の強度、ならびに他のパラメータ、例えば、細胞サイズおよび光散乱に基づいて細胞集団を分離するのに使用することができる。染色の絶対レベルは、特定の蛍光色素および試薬調製物によって異なり得るが、データは、対照に対して正規化することができる。
【0117】
対照に対して分布を正規化するために、各細胞は、特定の染色の強度を有するデータ点として記録される。これらのデータ点は、対数尺度によって表示することができ、この場合、測定の単位は、任意の染色強度である。例として、試料中で最も明るく染色された細胞は、未染色の細胞より4ログもの大きい強度であり得る。このようにして表示されるとき、染色強度の最高ログ内に入る細胞は、明るく、一方、最低強度内の細胞は、陰性である。「低く」陽性に染色された細胞は、アイソタイプマッチ対照の明るさより上の染色レベルを有するが、集団内で通常見つかる最も明るく染色している細胞ほど強くない。低陽性細胞は、試料の陰性細胞および明るく染色された陽性細胞と異なるユニークな性質を有する場合がある。代替の対照は、その表面上に規定密度のマーカーを有する基材、例えば、製造ビーズまたは細胞系を利用することができ、これは、強度の陽性対照をもたらす。
【0118】
マーカーの発現は、網膜前駆細胞および細胞集団が得られる網膜組織を培養する間に変化しやすい場合がある。例えば、マーカー発現の差異は、酸素レベル(すなわち、大気酸素条件、または「正常酸素」条件、または「低酸素(hypoxic)」条件としても公知の低酸素(low oxygen)条件)の培養条件によって影響され得る。当業者は、網膜前駆細胞および細胞集団のマーカー発現は、静的ではなく、1つまたは複数の培養条件、すなわち、培地、酸素レベル、継代の数、培養の時間などの関数として変化し得ることを認識することになる。
【0119】
網膜前駆細胞および細胞集団は、本明細書に規定されるマーカーの1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、20以上、25以上、30以上を、または最大50以上の間の任意の増分のマーカーを発現することができる。
【0120】
代替の実施形態では、網膜前駆細胞および網膜前駆細胞を含む細胞集団は、1種または複数のマーカー、例えば、ネスチン、ビメンチン、Sox2、Ki67、MHCクラスI、Fas/CD95、MAP2、CD9、CD81、AQP4、CXCR4、CD15/LeX/SSEA1、GD2ガングリオシド、CD133、β3-チューブリン、GFAP、OPN/SPP1、PTN、KDR、およびTEKなどの発現によって、特徴付け、またはスクリーニングされる。ある特定の実施形態では、網膜前駆細胞および細胞集団は、ネスチン、Sox2、Ki-67、MHCクラスI、およびFas/CD95からなる群から選択される1種または複数のマーカーを発現し、ネスチンは、集団内の細胞の90%超、または95~99%によって発現され、Sox2は、集団内の細胞の80%超、または90~99%によって発現され、Ki-67は、集団内の細胞の30%超、または40~60%によって発現され(すなわち、正常酸素/大気酸素条件下で増殖した細胞の60~85%、低酸素条件下で増殖した細胞の80~90%)、MHCクラスIは、集団内の細胞の70%超、または90%によって発現され、Fas/CD95は、集団内の細胞の30%超、または40~70%によって発現される。いくつかの実施形態では、網膜前駆細胞および細胞集団は、ビメンチン、CD9、CD81、AQP4、CXCR4、CD15/LexA/SSEA1、GD2ガングリオシド、CD133、β3-チューブリン、MAP2、GFAP、OPN/SPP1、PTN、KDR、およびTEKからなる群から選択される1種または複数のマーカーをさらに発現する。GFAPは、集団内の細胞の5~10%によって発現され得る。MHCクラスIIは、集団内の細胞の1~3%によって発現され得る。CXCR4は、大気酸素条件下で増殖した細胞の5~30%よって発現され得るが、低酸素条件下で増殖した細胞の90%によって発現され得る。CD15は、集団内の細胞の4~35%、すなわち、大気酸素条件下で増殖した細胞の4~8%、低酸素条件下で増殖した細胞の15~35%で発現され得る。GD2は、集団内の細胞の2~15%、すなわち、大気酸素条件下で増殖した細胞の2~4%、低酸素条件下で増殖した細胞の15%によって発現され得る。
【0121】
代替の実施形態では、網膜前駆細胞および細胞集団は、ABCA4、AIPL1、AKT3、APC2、BSN、CCNG2、CDHR1、CRX、CD24、クローディン11、CNTF、CNTFR、DACH1、DAPL1、DCX、DLG2および4、DLL4、EPHA7、EYS、FLT1、FSTL5、FZD5、FGF9、10、および14、GADD45G、GRIA2、HES5および6、HEY2、HEYL、HGF、HIF3A、IMPG1および2、JAK2および3、KLF4、MAP6、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、MYCN、Nanog、NBL1、NEFL、NEFM、NEUROD1、NEUROD4、NEUROG1、NEUROG2、NOTCH1、2、および3、NRL、NRCAM、NRSN、NRXN1、2、および3、OCT4、OLIG2、OPN1MW1および2、OPN1SW、OTX2、PAR4、PAX6、PRPH2、RAX1および2、RBP3、RCVRN、RELN、RGR、ロドプシン、RICTOR、RP1、RRH、RXRG、SIX3および6、SOX8、SLC25A27、STAT1、STAT3、SYP、SYT4、WIF1、VSX2、ならびにVSX1および2の1種または複数の低発現、微量発現、陰性発現、または発現の減少に関して特徴付けられ、またはスクリーニングされる。これらのマーカーの発現パターンを使用して、起源の組織、例えば、新たに単離された網膜組織に由来する網膜前駆細胞または細胞集団を区別することができる。
【0122】
代替の実施形態では、発現が起源の組織と比べて増大し得る他のマーカーとして、限定することなく、ADM、ANGPT1、ANGPTL2および4、ATP5D、BHLHE40、CCL2、CCNB1、CCND2、ならびにCCNDE1、CD44、CDKN2A、クローディン1、4、および6、CPA4、CTGF、CXCL12、DKK2、EMP1、FOXC2、FZD6、GADD45B、HES1、HIF1A、HOXB4、IGF1、IGFBP3、5、および7、IL1A、IL1R、IL1RAP、IL4R、IL7R、IL11、IL18、JAG1、LIF、LOX、BDNF、EGF、EGFR、FGF1、2、5、および9、KLF4、5、および12、MITF、MMP1、MYC、NCAN、NEFH、NOG、NTF3、NTRK2、NRP1および2、OSMR(IL31RA)、OTX1、PAX8、PDGFA、B、およびC、PLAU、PRRX1、RPE65、SDF-1、SFRP1および4、SIX1および4、SLC25A1、19、および20、TEK/TIE1、THBS1および2、TLR4、VEGFA、VEGFC、WNT5A、ならびにWNT7Bが挙げられる。
【0123】
代替の実施形態では、網膜前駆細胞および細胞集団は、脳前駆細胞および神経幹細胞のような他の中枢神経系前駆細胞型、ならびに脳および脊髄などの胎児CNS組織に由来し得る他のものと区別される。他のCNS前駆細胞と比べて増加し得るマーカーとしては、限定することなく、ARR3(アレスチンC)、CDF10、CDKN2A、CTGF、CXCL12/SDF1、BHLHE41、BMP2、DKK1、EGFR、EPHB2、FN1、FOSL1および2、FOXD1、GABBR1、GAS1および6、GBX2、HHEX、HOXB2、IGFBP5および7、INHBA、JAG1、KDR、KLF10LHX9、LHX2、LIF、MET、NEUROD1、NTF3、NTRK2、OPTN(オプチニューリン)、RCVRN、SAG(S-アレスチン)、SERPINF1(PEDF)、SFRP1、SOX3、TBX3、TGFB、WIF、WNT5A、ならびにWNT5Bが挙げられる。他のCNS前駆細胞と比べて減少し得るマーカーとして、限定することなく、AQP4、ASLL1、CLDN11、CDKN1B、CCL2、CCNG2、CXCR4(SDF1受容体)、DCX、DLX2および5、EMX2、EPHA3、4、および7、FABP7、FOXG1、GRIA1、2、および3、HGF、IL2、KLF4、LIFR、MNX1、NGF、NKX2-2、NOTCH1、NPY、NPY2R、OLIG2、OMG、PBX1、PDGFRA、RTN1、SCGN、SOX11、TFAP2B、TNFRSF21、ならびにWNT7Aが挙げられる。
【0124】
代替の実施形態では、細胞集団は、健康な被験体(すなわち、網膜疾患を持っていない個体)、罹患した被験体から回収することができ、新鮮な網膜細胞集団だけでなく、凍結された網膜細胞集団も含むことができる。源としては、限定することなく、眼全体、もしくは網膜組織、または胚組織、胎児組織、小児組織、もしくは成体組織から得られる他の源が挙げられる。本方法は、さらなる富化もしくは精製手順、または他の網膜前駆細胞特異的マーカーについての正の選択による細胞単離のためのステップを含むことができる。網膜前駆細胞および細胞集団は、任意の哺乳動物種または被験体、例えば、ヒト、霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、フェレット、ウサギ、げっ歯類、例えば、マウス、ラット、ハムスターなどから入手または回収することができる。
【0125】
脊椎動物の胚発生において、網膜および視神経は、発生中の脳の派生物として発生し、したがって、網膜は、中枢神経系(CNS)の一部とみなされ、実際に脳組織である。網膜は、シナプスによって相互に連絡した数層の神経細胞を伴った層状構造である。硝子体から最も近い箇所から最も遠い箇所に、すなわち、頭の前部外側に最も近い箇所から頭の内側および後部に向かって、網膜層は、ミュラー細胞あぶみ骨底(footplate)から構成される内境界膜、神経節細胞核の軸索を含有する神経線維層、軸索が視神経線維となる神経節細胞の核を含有する神経節細胞層、双極細胞軸索と神経節細胞およびアマクリン細胞の樹状突起との間にシナプスを含有する内網状層、双極細胞の核および周囲細胞体(細胞質(perikarya))を含有する内顆粒層、それぞれ桿体小球および錐体茎(cone pedicle)で終わる桿体および錐体の投射路(projection)を含有する外網状層、桿体および錐体の細胞体を含有する外顆粒層、光受容体の内側セグメント部分をその細胞核から分離する外境界膜、光受容体層、ならびに立方細胞の単層である網膜色素上皮(RPE)を含む。光に直接感受性である神経細胞は、2つのタイプ、すなわち、桿体および錐体から主に構成される光受容細胞である。桿体は、主に薄暗い所で機能し、白黒視覚をもたらし、一方、錐体は、昼間視力および色の知覚を支える。第3のタイプの光受容体は、光感受性神経節細胞であり、明るい昼光に対する反射的反応に重要である。
【0126】
いくつかの実施形態では、細胞は、後に網膜が形成されるが、光受容体外側セグメントが網膜全体にわたって完全に形成される前、かつ網膜血管新生が実質的に完了し、または完了する前の段階で哺乳動物胎児網膜から回収される。この段階は一般に、ヒトの胎児において胎児の在胎約12週齢~約28週齢の間である。ネコまたはブタの網膜前駆細胞などのより大きい哺乳動物に由来する非ヒト細胞については、この段階は一般に、胎児の在胎約3週齢~約11週齢の間である。例えば、The Retina and Its Disorders、Besharse, J.およびBok, D.、Academic Press、(2001年)におけるAnand-Apte, B.およびHollyfield, J.G.、「Developmental Anatomy of the Retinal and Choroidal Vasculature.」を参照。しかし、本明細書に開示の主題は、出生後または新生児の哺乳動物組織からの細胞の回収も含む。
【0127】
代替の実施形態では、網膜前駆細胞は、組織試料の処理後または処理と同時に他の組織成分から精製される。一実施形態では、前駆細胞は、組織試料が細胞増殖に適した条件下で、細胞を培養皿に接着させるのに十分な時間にわたって培養された後、他の細胞および組織成分から精製される。ある特定の実施形態では、細胞の精製は、培養中に組織試料から遊走し、培地中に存在し、あるいはフィブロネクチンもしくは他の基材、または支持細胞層に緩く接着している細胞を得るステップを含む。これらの細胞は、慣例的な方法、例えば、培地を取り出し、遠心分離して、その中の細胞をペレット化するステップ、およびリン酸緩衝食塩水(PBS)またはハンクス平衡塩溶液などの溶液で培養皿中に残っている細胞を洗浄して、接着細胞層として緩く付着した細胞を取り出すステップによって得ることができる。次いでこの洗浄液も、遠心分離して細胞を得ることができる。いくつかの実施形態では、網膜前駆細胞および細胞集団の精製は、脂質などの残留組織材料を含めたある特定の不溶性組織成分から細胞を分離するステップをさらに含む場合がある。細胞は、例えば、密度勾配の使用、遠心分離、フローサイトメトリーもしくは磁気細胞分離(MACS)による分取、および濾過、またはこれらの組合せを含めた、当技術分野で公知であり、利用可能な任意の手段によって他の組織成分から分離することができる。細胞を精製する特定の方法の例は、当技術分野、例えば、米国特許第6,777,231号において公知であり、記載されている。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の特定のタイプの細胞を取り出すために、ネガティブ分離法が使用される。
【0128】
ある特定の実施形態では、組織は、処理され、または「解離される」。解離は、物理的解離ならびに/または他の組織成分からの細胞の放出を促進して細胞および/もしくは細胞群の「解離懸濁物」を作り出す酵素調製物への曝露によって実施することができる。このような酵素の例としては、マトリックスメタロプロテイナーゼ、クロストリパイン、パパイン、トリプシン、トリプシン様、ペプシン、ペプシン様、中性プロテアーゼタイプ、およびコラゲナーゼが挙げられる。適当なタンパク質分解酵素は、米国特許第5,079,160号、同第6,589,728号、同第5,422,261号、同第5,424,208号、および同第5,322,790号に記載されている。いくつかの実施形態では、酵素調製物は、トリプシンを単独で、または1つもしくは複数の追加の酵素と組み合わせて含む。酵素による解離は、望まれない細胞または結合組織を除去するために、例えば、ミンチ化、ピペット操作、切り刻み、均質化、粉砕、凍結融解、浸透圧衝撃による物理的解離と併せて実施することができ、最終的に単細胞培養物をもたらし得、またはサイズ、すなわち、「小さい」、「中程度」、および「大きい」によって定義され得る細胞群を含めることができる。細胞群サイズは、主観的であり、本明細書に開示の主題の実施において変化し得る。
【0129】
細胞培養は、細胞が、一般にその自然環境の外で、制御された条件下で増殖されるプロセスを記述する。代替の実施形態では、細胞集団は、当技術分野で公知の任意の細胞培養培地で増殖または培養される。代替の実施形態では、本発明で使用する「基本培地」は、細胞増殖を支えることができる任意の培地を指す。基本培地は、標準的な無機塩、例えば、亜鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、およびカリウム、ビタミン、グルコース、緩衝系、ならびに重要なアミノ酸を供給する。本発明で使用することができる基本培地としては、それだけに限らないが、最小必須培地イーグル、ADC-1、LPM(ウシ血清アルブミン不含)、F10(Ham)、F12(Ham)、DCCM1、DCCM2、RPMI1640、BGJ培地(Fitton-Jackson改変有りおよび無し)、基本培地イーグル(アールの塩ベース( Earle’s salt base)を添加したBME)、ダルベッコ改変イーグル培地(血清を含まないDMEM)、Yamane、IMEM-20、グラスゴー改変イーグル培地(GMEM)、リーボビッツL-15培地、マッコイ5A培地、培地M199(アールの塩ベースを含むM199E)、培地M199(ハンクの塩ベースを含むM199H)、最小必須培地イーグル(アールの塩ベースを含むMEM-E)、最小必須培地イーグル(ハンクの塩ベースを含むMEM-H)、および最小必須培地イーグル(非必須アミノ酸を含むMEM-NAA)が挙げられ、多数の他の培地の中には、培地199、CMRL1415、CMRL1969、CMRL1066、NCTC135、MB75261、MAB8713、DM145、Williams’G、Neuman&Tytell、Higuchi、MCDB301、MCDB202、MCDB501、MCDB401、MCDB411、MDBC153、およびUltracultureが挙げられる。本明細書に開示の網膜前駆細胞の培養に使用するのに好適な培地は、アドバンストDMEM/F12およびUltracultureである。いくつかのこれらの培地は、Methods in Enzymology、LVIII巻、「Cell Culture」、62~72頁に要約されている。
【0130】
代替の実施形態では、「馴化培地」は、基礎培地または基本培地と比較して変更されている培地を指す。例えば、培地の馴化により、栄養分および/または増殖因子などの分子を、基礎培地で見出される元のレベルから追加し、または除去させることができる。いくつかの実施形態では、培地は、ある特定のタイプの細胞をある特定の条件下で、ある特定の期間にわたって培地で増殖させ、または維持することができるようにすることによって馴化される。例えば、培地は、規定温度で規定数の時間にわたって、規定組成の培地で網膜前駆細胞を増やし、分化させ、または維持することができるようにすることによって馴化することができる。当業者によって理解されるように、細胞、培地の種類、継続時間、および環境条件の多数の組合せを使用して、馴化培地のほぼ無限のアレイを生成することができる。
【0131】
細胞培養補充物または添加剤の例には、限定することなく、細胞生存または増殖を支えることにおける血清の役割にある程度または完全に取って代わるための成分が含まれる。代替の実施形態では、これには、インスリン、トランスメタロプロテイン(transmetalloprotein)、微量元素、ビタミン、または他の因子が含まれる。これらの因子は一般に、基本培地中に含まれないが、細胞の培養で一般に使用される血清によってもたらされる。補充物または添加剤は、細胞増殖を支える以下の成分の少なくとも1種または複数を含むことができる:1つもしくは複数のインスリンまたはこれらの代替品、1つもしくは複数のトランスメタロプロテインまたはこれらの代替品、1種または複数の微量元素(例えば、セレン、鉄、亜鉛、銅、コバルト、クロム、ヨウ素、フルオリド、マンガン、モリブデン、バナジウム、ニッケル、スズ)、1種または複数のビタミン(例えば、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンB-群)、1種または複数の塩(例えば、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、またはリン酸塩)、1種または複数の緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水、HEPES緩衝液)、1種または複数のアミノ酸(例えば、L-グルタミン)、1種または複数のホルモン、ホルモン様化合物もしくは増殖因子(例えば、トランスフェリン、EGF、NGF、ECGF、PDGF、FGF、IGF、LIF、インターロイキン、インターフェロン、TGF、および/またはVEGF、グルカゴン、コルチコステロイド、バソプレッシン、プロスタグランジンなど)、血清アルブミンまたはこれらの代替品、1種または複数の炭水化物(グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、リボース、糖分解代謝産物)、1種または複数の抗生物質および/または抗真菌剤(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、ファンギゾン)、ならびに1種または複数の脂質(例えば、遊離脂肪酸およびタンパク質結合脂肪酸、トリグリセリド、リン脂質、コレステロール、エタノールアミン)。多くの商品化された血清代替添加剤、例えば、KnockOut血清代替物(KOSR)、N2、B27、StemPro、インスリン-トランスフェリン-セレン補充物(ITS)、およびG5が当業者に周知であり、容易に入手可能である。これらの添加剤は、明確に規定された成分によって特徴付けられ、したがって、その成分の濃度は、培地中のその比率に基づいて決定することができる。
【0132】
代替の実施形態では、哺乳動物網膜前駆細胞の培養物は、低血清を含有する培地中で、または血清を含有しない培地で生成することができる。血清の例として、とりわけ、ウシ胎仔血清、子ウシ血清、新生仔子ウシ血清、ヤギ血清、ウマ血清、ヒト血清、ウサギ血清、ラット血清、マウス血清が挙げられる。ある特定の培養条件下で、血清濃度は、約0.05%v/v~約20%v/vの範囲とすることができる。例えば、いくつかの分化プロセスでは、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、約2%(v/v)未満、約3%(v/v)未満、約4%(v/v)未満、約5%(v/v)未満、約6%(v/v)未満、約7%(v/v)未満、約8%(v/v)未満、約9%(v/v)未満、約10%(v/v)未満、約15%(v/v)未満、または約20%(v/v)未満とすることができる。いくつかの実施形態では、網膜前駆細胞および網膜前駆細胞を含む細胞集団は、血清を用いずに(「血清不含」)、血清代替物を用いずに、かつ/またはいずれの補充物も用いずに増殖する。
【0133】
いくつかの実施形態では、網膜前駆細胞または網膜前駆細胞を含む細胞集団は、「異種由来成分不含有」条件下で培養される。「異種由来成分不含有(xeno-free)」または「異種由来成分不含有(xenogen-free)」は、ある特定の種の細胞(例えば、ヒト細胞)が、ヒトの産物または補充物(例えば、ヒト血清アルブミン、ヒト血清)のみが存在するが、他の種に由来する産物の非存在下で増殖または培養される条件を指す。これは、ヒトへの移植に使用される細胞にとって特に重要である。様々な未確定の動物由来産物に曝された細胞は、移植片拒絶、免疫反応、およびウイルス感染症のしくは細菌感染症、プリオン、およびまだ未同定の人畜共通感染症のリスクが増大するために、これらを臨床用途に望ましくないものにする。さらに、ヒトへの使用または非ヒト哺乳動物への使用(例えば、家畜への使用)を含むすべての哺乳動物への使用について、細胞は、正常核型、または例えば、マイコプラズマ、グラム陰性菌(例えば、エンドトキシン試験)、真菌などによる感染もしくは汚染の存在についてスクリーニングされる。細胞は、テロメラーゼ活性アッセイ、hTERT遺伝子発現、および軟寒天中での増殖、またはヌードマウスでの腫瘍形成によって、腫瘍形成能またはがんの表現型への形質転換についてもスクリーニングすることができる。このようなアッセイは、当技術分野で公知であり、十分に当業者の範囲内である。
【0134】
代替の実施形態では、網膜前駆細胞または網膜前駆細胞を含む細胞集団は、支持細胞層(例えば、胚性線維芽細胞もしくは成体線維芽細胞)上で、または細胞外マトリックス足場もしくは基材、例えば、コラーゲン、エンタクチン、ヘパリン硫酸プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、ゼラチン、もしくはマトリゲルの存在下で培養することができる。例えば、PURECOL(登録商標)コラーゲンは、純度(99.9%超のコラーゲン含量)、機能性、および入手可能な最も天然様のコラーゲンに関してすべてのコラーゲンの標準として公知である。PURECOL(登録商標)コラーゲンは、残りがIII型コラーゲンで構成された約97%のI型コラーゲンであり、細胞を培養し、または固体ゲルとして使用するために、表面を被覆し、薄層を調製するのに理想的である。当技術分野で公知である足場または基材の別の例は、CELLstart(Invitrogen)である。
【0135】
代替の実施形態では、細胞培養条件は、37℃、5%のCOに設定されたインキュベーター内での細胞の増殖を包含することができる。網膜前駆細胞または網膜前駆細胞を含む細胞集団は、正常酸素または大気(20%)下で培養することができ、妊娠中の発育中の胎児網膜の酸素レベルに近い条件、すなわち、「低い」または「低酸素の」条件、例えば、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、もしくは7%の酸素、またはそれらの間での任意の増分下で増殖させることができる。
【0136】
プレーティング密度は、培地の体積当たりの細胞数、または接着培養における1cm当たりの細胞数を指す。この状況における同様の用語は、「コンフルエンス」であり、これは、細胞培養皿またはフラスコ内の細胞数の尺度として一般に使用され、細胞による皿またはフラスコのカバー率を指す。例えば、100パーセントのコンフルエンシーは、皿が細胞によって完全に覆われており、したがって、細胞が増殖するための余地がないことを意味し、一方、50パーセントのコンフルエンシーは、皿のおおよそ半分が覆われており、細胞が増殖するための余地が依然としてあることを意味する。
【0137】
継代すること(継代培養または細胞の分割としても公知)では、少数の細胞が新しい容器内に移されることを包含する。代替の実施形態では、細胞は、定期的に分割される場合、それにより長期の高細胞密度に関連する老化が回避されるので、より長い期間にわたって培養される。懸濁培養は、より大きい体積の新鮮な培地で希釈された少ない細胞を含有する少量の培養物で容易に継代される。接着培養については、細胞は、最初に引き離される必要がある。これは、トリプシン-EDTAなどの酵素の混合物、または細胞解離緩衝液(Cell Dissociation Buffer)のような非酵素溶液を用いて一般に行われるが、様々な酵素または非酵素混合物または調製物が、この目的のために利用可能である。次いで、少数の引き離された細胞を使用して、新しい培養物を播種することができる。
【0138】
最も初期の細胞培養物は、寿命が限られており、無期限に増殖しない。ある特定の数の集団倍加(ヘイフリック限界と呼ばれる)の後、細胞は、一般に生存能を保持しながら、老化のプロセスを受け、分裂を停止する。代替の実施形態では、網膜前駆細胞および細胞集団は、10継代以下にわたって培養することができ、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10継代にわたって継代される。代替の実施形態では、細胞は、10回超、例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれを超える継代などで継代することができる。ある特定の実施形態では、網膜前駆細胞および細胞集団は、約10~30継代にわたって培養される。代替の実施形態では、網膜前駆細胞およびこれらを含む細胞集団は、好ましくは、不死ではなく、不死化するままにされることも、強制的に不死化されることもない。本明細書に記載の細胞は、未成熟前駆細胞とみなされるが、網膜前駆細胞を含む細胞集団は、それ自体「多分化能」幹細胞とみなすことができる細胞を含有してもよく、ここでこのような細胞は一般に、ある特定の培養条件下で分化して網膜前駆細胞を含む網膜組織または網膜細胞になることができる。代替の実施形態では、「多分化能」は、自己再生する能力を有するが、分化する能力が限られており、特定の細胞型を生成するように本質的に関係付けられている、未成熟、未分化(undifferentiated)および/または未分化(unspecialized)細胞を指す。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の細胞および細胞集団は、近縁細胞を含むが、必ずしも単細胞型を示すものではない。
【0139】
代替の実施形態では、網膜前駆細胞は、対象とする1つまたは複数の異種または外因性核酸配列を発現するように遺伝子改変されている。核酸配列は、「外因性」であることができ、これは、核酸配列が、ベクターが導入される細胞とは無関係であること、またはその配列が、細胞内の配列と同種であるが、その配列が通常見出されない、宿主細胞核酸内の位置にあることを意味する。核酸配列としては、プラスミド、単位複製配列、cDNA、mRNA、アンチセンスRNA、siRNAが挙げられるが、これらの例に限定されない。用語「遺伝子」は、機能タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドコード核酸単位を指す。当業者によって理解されるように、この機能的用語は、ゲノム配列、cDNA配列、ならびにタンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質、および突然変異体を発現し、または発現するように適合され得る、より小さい操作された遺伝子セグメントを含む。
【0140】
組織を遺伝的に変更するのに、当技術分野で公知の任意の方法を使用することができる。一例示的方法は、組換えウイルスベクターを用いて組織の細胞内に遺伝子を挿入することである。いくつかの異なるベクター、例えば、当技術分野で公知のウイルスベクター、プラスミドベクター、線状DNAなどのいずれか1つを使用して、標的細胞および/または組織内に、治療剤をコードする外因性核酸断片を導入することができる。例えば、感染、トランスダクション、トランスフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、電気穿孔、リポソーム媒介トランスフェクション、微粒子銃遺伝子送達、融合性およびアニオン性リポソーム(これらは、カチオン性リポソームの使用の代替である)を使用するリポソーム遺伝子送達、直接注入、受容体媒介取込み、磁気穿孔(magnetoporation)、超音波、ならびに当技術分野で公知の他のもののいずれかを使用して、これらのベクターを挿入することができる。
【0141】
代替の実施形態では、「ベクター」は、核酸配列をこれが複製され得る細胞内に導入するために挿入することができるキャリア核酸分子を指すのに使用される。ベクターとしては、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、ならびに人工染色体(例えば、YAC)が挙げられる。当業者は、Sambrookら(1989年)Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、NY;Ausubelら(1987年)Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publ. Assoc. & Wiley-Intersciencesに記載されている標準的な組換え技法によってベクターを構築する知識を十分に身に付けているはずである。改変ポリペプチドをコードすることに加えて、ベクターは、タグまたは標的化分子などの非改変ポリペプチド配列をコードすることができる。このような融合タンパク質をコードする有用なベクターとして、後に精製および分離または切断するためのグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)可溶性融合タンパク質の生成に使用するための、pINベクター、ヒスチジンのストレッチをコードするベクター、およびpGEXベクターが挙げられる。
【0142】
代替の実施形態では、本発明のベクターは、主に「作動可能に連結した」または1つまたは複数の制御配列の制御下にある遺伝子などの異種核酸分子を細胞内に導入するように設計される。「プロモーター」は、RNAポリメラーゼIIおよび他の転写活性化因子タンパク質の開始部位の周囲にクラスター形成する1つまたは複数の転写制御モジュールを指す。任意のプロモーター/エンハンサーの組合せ(真核生物プロモーターデータベースEPDBによる)も対象とする(すなわち、構成的、誘導性、抑制性、組織特異的)核酸分子の発現を推進するのに使用することができる。また、ベクターは、in vitroまたはex vivoでのこれらの操作を促進するための選択可能マーカーを含有し得る。ベクターは、ポリアデニル化シグナルを含有することもでき、これは、ヒト成長ホルモン(hGH)遺伝子、ウシ成長ホルモン(BGH)遺伝子、またはSV40から得ることができる。さらに、ベクターは、多重遺伝子メッセージまたはポリシストロン性メッセージを作り出すのに使用される内部リボソーム結合部位(IRES)エレメントも含有することができる。IRESエレメントは、5-メチル化(methylatd)キャップ依存性翻訳のリボソーム走査モデルを迂回し、内部部位から翻訳を開始することができる(Pelletier, J.およびSonenberg, N.(1988年)Nature、334巻(6180号):320~325頁)。IRESエレメントは、異種オープンリーディングフレームに連結され得る。IRESによって各々分離されている、複数のオープンリーディングフレームが一緒に転写され、ポリシストロン性メッセージを作り出すことができる。IRESエレメントによって、各オープンリーディングフレームは、効率的な翻訳のために、リボソームにアクセス可能である。単一のメッセージを転写するための単一のプロモーター/エンハンサーを使用して、複数の遺伝子を効率的に発現させることができる。
【0143】
代替の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。当技術分野で公知のウイルスベクターとしては、限定することなく、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポリオーマウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ラブドウイルスベクター、レンチウイルスベクター、エプスタイン-バーウイルスベクター、ピコルナウイルスベクター、またはヘルペスウイルスベクターが挙げられる。
【0144】
他の実施形態では、核酸配列をリポソームまたは脂質製剤中に封入することができる。リポソームは、リン脂質二重層膜および内側の水性媒体によって特徴付けられる小胞構造物である。多重膜リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。これらは、リン脂質が過剰の水溶液中に懸濁されると自発的に形成する。脂質成分は、閉じた構造物を形成する前に自己再構成を起こし、脂質二重層間に水および溶解した溶質を封入する(Ghosh, P.C.およびBachhawat, B.K.(1991年)Targeted Diagn. Ther. 4巻:87~103頁)。市販リポソームまたは脂質製剤の一例は、リポフェクタミン(Invitrogen)である。他のものとして、FuGENE(Promega)、PromoFectin(PromoKine)、Affectene(Qiagen)、Polyfect(Qiagen)、Superfect(Qiagen)、およびTransMessenger(Qiagen)が挙げられる。
【0145】
本明細書に開示の主題は、哺乳動物網膜前駆細胞を含む細胞集団を含む組成物を、網膜疾患または網膜の状態の処置を必要とする被験体の硝子体腔もしくは網膜下腔内へと、該被験体に投与するステップ、および必要に応じて該被験体の視覚の変化または改善を測定するステップによって、該被験体において網膜疾患または網膜の状態を処置する方法も提供する。
【0146】
代替の実施形態では、本発明に関してその様々な文法形式における用語「処置すること」は、疾患状態、疾患進行、疾患原因物質、または他の異常な状態の有害な作用の治癒、逆転、減弱、緩和、最小化、抑制、または停止を指す。例えば、処置には、疾患の一症状(すなわち必ずしもすべての症状ではない)を緩和し、または疾患の進行を減弱することを包含することができる。代替の実施形態では、用語「防止すること」は、疾患状態または疾患原因物質の作用が、本明細書に開示のものなどの作用物質(agent)の投与に起因して未然に防がれていることを意味する。この状況における同様の用語は、「予防」である。
【0147】
「患者」または「被験体」は、本明細書で互換的に使用され、処置のレシピエントを指す。哺乳動物および非哺乳動物被験体が含まれる。いくつかの実施形態では、被験体は、哺乳動物、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、マウス、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、またはヤギである。いくつかの実施形態では、被験体はヒトである。
【0148】
本明細書に記載の細胞集団および関連組成物は、様々な異なる手段によって被験体または患者に施すことができる。ある特定の実施形態では、これらは、局所的に、例えば、実際の、または潜在的な傷害または疾患の部位に施される。いくつかの実施形態では、これらは、可能性がある、または実際の傷害または疾患の部位に組成物を注射するためにシリンジまたは針を使用して施される。他の実施形態では、これらは、全身的に施され、すなわち、静脈内または動脈内の血流に投与される。特定の投与経路は、処置または防止される疾患または傷害の位置および性質に主に依存する。したがって、本明細書に記載の主題は、それだけに限らないが、経口、非経口、静脈内、動脈内、鼻腔内、および筋肉内投与を含めた、任意の公知かつ利用可能な方法または経路を介して本発明の細胞集団または組成物を施すことを含む。適当な投与量および処置レジメンの決定は、当技術分野で一般に公知の情報に基づいて容易に実現し、医師によって得ることができる。処置は、単一の処置を含んでも複数の処置を含んでもよい。特に、防止目的で、本発明の精製細胞集団が、網膜損傷を潜在的に引き起こし得るストレスの後に投与されることが、ある特定の実施形態において企図されている。他の実施形態では、細胞集団および組成物は、被験体の硝子体腔もしくは網膜下腔への単回注射として局所的に投与される場合がある。あるいは、組成物または細胞集団は、本明細書で提供される方法の実施において、2回、3回、4回、または任意の回数投与することができる。
【0149】
代替の実施形態では、本発明の方法は、ドナー組織から回収され、培養物中で増殖され、被験体または患者に投与するために製剤化された哺乳動物網膜前駆細胞およびかかる細胞を含む組成物の単離ならびに特徴付けを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、被験体の全身免疫抑制を必要とすることなく、硝子体腔に直接、表面麻酔下で組成物を投与するステップを含む。代替の実施形態では、患者または被験体に対する移植片の組織型決定およびマッチングは、必要とされないが、所望の場合実施してもよい。組織型決定およびマッチング技法は、当業者に周知である。
【0150】
本発明を実施するのに使用される網膜前駆細胞および細胞集団は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、経鼻的に、局所的に、髄腔内に、髄腔内に、脳内に、硬膜外に、頭蓋内に、または経直腸的にを含めて、任意のまたは様々な手段によって投与するための組成物として製剤化することができる。本明細書に開示の組成物および製剤は、薬学的または獣医学的に許容される液体、キャリア、アジュバント、およびビヒクルを含むことができ、液剤、錠剤、カプセル剤、インプラント、エアゾール剤、ゲル剤、リポソーム、ナノ粒子などの形態であり得る。
【0151】
いくつかの実施形態では、網膜前駆細胞および細胞集団は、薬学的組成物または獣医学的組成物の形態で被験体に投与することができる。語句「薬学的に許容される」は、動物またはヒトに投与されるとき、有害反応、アレルギー反応、または他のやっかいな(untoward)反応を生じない分子実体および組成物を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容されるキャリア」には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適当な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを含む、任意およびすべての水性および非水性キャリアが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材を使用することによって、分散物の場合に必要とされる粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、維持することができる。これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントも含有することができる。微生物の存在の防止は、滅菌手順によって、かつ様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸などを含めることによって保証することができる。組成物中に糖、塩化ナトリウムなどのような等張剤を含めることが望ましい場合もある。さらに、注射用医薬品形態の吸収の延長は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる作用物質を含めることによって生じさせることができる。これは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。薬学的活性物質のためにこのような媒体および作用物質を使用することは、当技術分野で周知である。
【0152】
ある特定の実施形態では、有効量の網膜前駆細胞または細胞集団が、被験体に投与されなければならない。「有効量」または「治療有効量」は、所望の効果を生じる組成物の量を指す。有効量は、例えば、送達される分子または作用物質(ここでは網膜前駆細胞または細胞集団)、治療剤が使用されている適応症、投与経路、ならびにサイズ(体重、体表または臓器サイズ)、ならびに被験体または患者の状態(年齢および全体的な健康)に部分的に依存する。したがって、臨床家または医師は、最適な治療効果を得るために、投与量を設定し(titer)、投与経路を修正することができる。具体的な目的のための特定の作用物質の有効量は、当業者に周知の方法を使用して決定することができる。本明細書に規定の任意の組成物について、有効量は、細胞培養アッセイ、またはマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ブタ、もしくはサルなどの動物モデルのいずれかにおいて最初に推定することができる。動物モデルは、適切な濃度範囲および投与経路を決定するのにも使用することができる。次いでこのような情報を使用して、ヒトに投与するための有用な用量および経路を決定することができる。
【0153】
本明細書に記載の組成物の有効量の例には、5μl、10μl、15μl、20μl、25μl、50μl、100μl、150μl、200μl、250μl、300μl、350μl、400μl、450μl、500μl、または最大5000μl(5ml)までの間の任意の増分の体積での細胞懸濁物が含まれる。体積の下限および上限は、送達システムおよび/または方法によって制限される。例えば、Kayikcuiglu, O.R.ら(2006年)Retina 26巻(9号):1089~90頁を参照。例えば、硝子体切除術なしで投与される場合の体積の上限は、眼内圧の上昇のために約200μlである。硝子体切除術を施して硝子体腔内に投与される場合の体積の上限は、硝子体腔の容積によって制限され、最大5ml以上を含むことができる。網膜下注射についての上限は、網膜剥離のために最大200μlであり得る。代替の実施形態では、これらの体積は、1用量当たり1000~1000万細胞の間のいずれか、または1用量当たり1000~2000細胞、1用量当たり2000~3000細胞、1用量当たり3000~4000細胞、1用量当たり400~5000細胞、1用量当たり5000~6000細胞、1用量当たり6000~7000細胞、1用量当たり7000~8000細胞、1用量当たり8000~9000細胞、1用量当たり9000~10,000細胞、1用量当たり10,000~15,000細胞、1用量当たり15,000~20,000細胞、1用量当たり20,000~25,000細胞、1用量当たり25,000~30,000細胞、1用量当たり30,000~35,000細胞、1用量当たり35,000~40,000細胞、1用量当たり40,000~45,000細胞、1用量当たり45,000~50,000細胞、1用量当たり50,000~55,000細胞、1用量当たり55,000~60,000細胞、1用量当たり60,000~65,000細胞、1用量当たり65,000~70,000細胞、1用量当たり70,000~75,000細胞、1用量当たり75,000~80,000細胞、1用量当たり80,000~85,000細胞、1用量当たり85,000~90,000細胞、1用量当たり90,000~95,000細胞、1用量当たり95,000~100,000細胞、1用量当たり100,000~125,000細胞、1用量当たり125,000~150,000細胞、1用量当たり150,000~200,000細胞、1用量当たり200,000~250,000細胞、1用量当たり250,000~300,000細胞、1用量当たり300,000~350,000細胞、1用量当たり350,000~400,000細胞、1用量当たり400,000~450,000細胞、1用量当たり450,000~500,000細胞、1用量当たり500,000~550,000細胞、1用量当たり550,000~600,000細胞、1用量当たり600,000~650,000細胞、1用量当たり650,000~700,000細胞、1用量当たり700,000~750,000細胞、1用量当たり750,000~800,000細胞、1用量当たり800,000~850,000細胞、1用量当たり850,000~900,000細胞、1用量当たり900,000~950,000細胞、1用量当たり950,000~1,000,000細胞、または1用量当たり1000細胞と最大1000万細胞の間の任意の増分で含む。投与量は、もちろん、投与の頻度および継続時間によって変化し得る。代替の実施形態では、本明細書に記載の組成物中の細胞の投与量は、例えば、100μl当たり50万細胞などの、小体積中に多数の細胞を含有する。細胞数は、当技術分野で公知の任意の方法、例えば、血球計数器、分光光度法、コールターカウンター、フローサイトメトリーなどによって計数することができる。投薬は、1回施すことができ、またはいくつかの処置の過程にわたって施してもよい。
【0154】
代替の実施形態では、本発明の組成物は、経強膜送達によって、あるいは例えば、米国特許第7,585,517号に記載されている経強膜送達;米国特許第7,883,717号に記載されている患者の眼の内側に送達するための徐放送達デバイス;米国特許第5,378,475号もしくは同第5,466,233号に記載されている眼の硝子体領域内に挿入するためのデバイス;または例えば、米国特許出願公開第20110112470号もしくは同第20100256597号(患者の眼への標的化投与のための微細針を記載)に記載されているとおりの皮下注射器もしくは斜め挿入経路を使用することによって;または例えば、米国特許出願公開第20100209478号に記載されているとおりの涙点(puncta lacrimali)を通過する寸法を有する親水性ポリマーヒドロゲルを介して;または例えば、米国特許出願公開第20100191176号に記載されているとおりのヒトの眼の網膜下腔へのアクセスをもたらすデバイスを含めた当技術分野で公知の任意の方法またはプロトコールによって、眼(特に硝子体腔あるいは網膜下腔内に)、硝子体腔もしくは網膜下腔、網膜、脳、神経、あるいはCNSへの非経口投与用に製剤化することができる。前房穿刺も、当業者によって判断される場合実施することができる。代替の実施形態では、諸方法は、特に硝子体内留置について、手順の間および/または後に眼球の縫合を必要としない。しかし、これは、例えば、網膜下腔内に細胞を置く場合、硝子体切除術の手順を利用する方法には、必要である場合がある。
【0155】
本明細書に開示の組成物は、注射経路による、しかし様々な注入技法も含めて、例えば、米国特許出願公開第200500480021号に記載されているように、髄腔内、脳内、硬膜外、皮下、静脈内、筋肉内および/または動脈内投与用にも製剤化することができる。投与は、カテーテル、またはポンプ、例えば、髄腔内ポンプ、または移植可能医療用デバイスを使用することによって実施され得る。代替の実施形態では、本発明の方法は、米国特許第7,388,042号、同第7,381,418号、同第7,379,765号、同第7,361,332号、同第7,351,423号、同第6,886,568号、同第5,270,192号、および米国特許出願公開第20040127987号、同第20080119909号、同第20080118549号、同第20080020015号、同第20070254005号、同第20070059335号、同第20060128015号に記載されているものなどの、本明細書に開示の網膜前駆細胞、細胞集団、または組成物を含むインプラント、および人工臓器、バイオリアクターシステム、細胞培養システム、プレート、皿、管、瓶、およびフラスコなどを投与または移植を包含することもできる。
【0156】
代替の実施形態では、本明細書で提供される方法は、網膜疾患または網膜の状態、例えば、限定することなく、網膜色素変性症(RP)、レーバー先天性黒内障(LCA)、シュタルガルト症、アッシャー症候群、コロイデレミア、桿体-錐体もしくは錐体-桿体ジストロフィー、繊毛障害、ミトコンドリア障害、進行性網膜萎縮、網膜変性疾患、加齢黄斑変性症(AMD)、滲出型AMD、萎縮型AMD、地図状萎縮、家族性もしくは後天性黄斑症、網膜光受容体疾患、網膜色素上皮を基礎とする疾患、糖尿病性網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、ブドウ膜炎、網膜剥離、外傷性網膜損傷、医原性網膜損傷、黄斑円孔、黄斑部毛細血管拡張症、神経節細胞疾患、視神経細胞疾患、緑内障、視神経症、虚血性網膜疾患、未熟児網膜症、網膜血管閉塞、家族性細動脈瘤(familial macroaneurysm)、網膜血管疾患、眼血管疾患、血管疾患、または虚血性視神経症を処置する、軽減する、または防止する、あるいは明所(昼間)視を改善する、あるいは矯正視力を改善する、あるいは黄斑機能を改善する、あるいは視野を改善する、または暗所(夜間)視を改善するのに使用することができる。
【0157】
代替の実施形態では、本発明の治療方法は、表面麻酔を利用するが、任意の局所(local)麻酔、局所(regional)麻酔または全身麻酔を、投与する間に使用することができる。本明細書に開示の方法で使用するのに適した局所麻酔薬の例としては、限定することなく、メプリカイン(mepricaine)、プロパラカイン、プリロカイン、ロピバカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、ピクリン酸ブタンベン、クロルプロカイン、コカイン、ジブカイン、ジメチソキン、ジクロニン、エチドカイン、ヘキシルカイン、ケタミン、リドカイン、メピバカイン、プラモキシン、プロカイン、テトラカイン、サリチレート、ならびにこれらの誘導体、エステル、塩、および混合物が挙げられる。
【0158】
網膜前駆細胞または細胞集団を含む組成物は、1種または複数の薬物と必要に応じて共投与することができる。薬物の例として、抗新脈管形成剤、例えば、アンギオスタチン、酢酸アネコルタブ、トロンボスポンジン、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、ならびに抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)薬、例えば、ラニビズマブ、およびベバシズマブ、ペガプタニブ、スニチニブ、およびソラフェニブ、ならびに抗新脈管形成効果を有する様々な公知の低分子および転写阻害剤のいずれか;以下を含めた諸クラスの公知の眼用薬物:緑内障薬、例えば、アセブトロール(acetbutolol)、アテノロール、ビソプロロール、カルベジロール、エスモロール(asmolol)、ラベタロール、ナドロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、メチプラノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボベタキソロール、レボブノロール、およびチモロールなどのβブロッカー剤を含めたアドレナリン作動性アンタゴニストなど;アドレナリン作動性アゴニストまたは交感神経様作用薬、例えば、エピネフリン、ジピベフリン、クロニジン、アプラクロニジン(aparclonidine)、およびブリモニジン;副交感神経作動薬またはコリン作動性アゴニスト(cholingeric agonist)、例えば、ピロカルピン、カルバコール、ホスホリンヨウ素(phospholine iodine)、およびフィゾスチグミン、サリチレート、塩化アセチルコリン、エゼリン、フルオロリン酸ジイソプロピル、臭化デメカリウム;ムスカリン作用薬;局所および/または全身性作用物質を含めた炭酸脱水酵素阻害剤、例えば、アセトゾラミド、ブリンゾラミド、ドルゾラミド、およびメタゾラミド、エトキスゾラミド、ダイアモックス、およびジクロルフェンアミド;散瞳-毛様体筋麻痺作用剤、例えば、アトロピン、シクロペントレート、スクシニルコリン、ホマトロピン、フェニレフリン、スコポラミン、およびトロピカミド;プロスタグランジン、例えば、プロスタグランジンF2α、抗プロスタグランジン、プロスタグランジン前駆体、またはプロスタグランジン類似体作用物質、例えば、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト、およびウノプロストンを挙げることができる。
【0159】
薬物の他の例として、例えば、糖質コルチコイドおよびコルチコステロイド、例えば、ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン21-ホスフェート、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21-ホスフェート、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロン、フルオロメトロン(fluroometholone)、ロテプレドノール、メドリゾン、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルオロメトロン、フルチカゾン、フルドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、リメキソロンを含めた抗炎症剤、ならびに例えば、アスピリン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ブロムフェナク、ネパフェナク、およびケトロラク、サリチレート、インドメタシン、ナキソプレン、ピロキシカム、およびナブメトン、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナメート、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダク、およびトルメチンを含めた非ステロイド性抗炎症剤;セレコキシブ、ロフェコキシブ、およびバルデコキシブのようなCOX-2阻害剤;例えば、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフイソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウム、アミノグリコシド、例えば、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、およびストレプトマイシンを含めた抗生物質などの抗感染症薬または抗微生物剤;フルオロキノロン、例えば、シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン;バシトラシン、エリスロマイシン、フシジン酸、ネオマイシン、ポリミキシンB、グラミシジン、トリメトプリム、およびスルファセタミド;抗真菌薬、例えば、アンホテリシンB、カスポファンギン、クロトリマゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ボリコナゾール、テルビナフィン、ナイスタチン、およびミコナゾール;抗マラリア剤、例えば、クロロキン、アトバコン、メフロキン、プリマキン、キニジン、およびキニーネ;抗マイコバクテリウム剤、例えば、エタンブトール、イソニアジド、ピラジナミド、リファンピン、およびリファブチン;抗寄生虫剤、例えば、アルベンダゾール、メベンダゾール、チアベンダゾール(thiobendazole)、メトロニダゾール、ピランテル、アトバコン、ヨードキノール(iodoquinaol)、イベルメクチン、パロマイシン、プラジカンテル、およびトリメトレキセート(trimatrexate)も挙げることができる。
【0160】
薬物の他の例として、抗ウイルス剤、例えば、イドクスウリジン、トリフルオロサイミジン、アシクロビル、シドフォビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビダラビン、トリフルリジン、およびフォスカーネット;プロテアーゼ阻害剤、例えば、リトナビル、サキナビル、ロピナビル、インジナビル、アタザナビル、アンプレナビル、およびネルフィナビル;ヌクレオチド/ヌクレオシド/非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、例えば、アバカビル、ddl、3TC、d4T、ddC、テノホビル、およびエムトリシタビン、デラビルジン、エファビレンズ、およびネビラピン;他の抗ウイルス剤、例えば、インターフェロン、リバビリン、およびトリフルリジン(trifluridiene);エルタペネム、イミペネム、およびメロペネムのようなカルバペネム(cabapenem)を含めた抗菌剤;セファロスポリン、例えば、セファドロキシル、セファゾリン、セフジニル、セフジトレン、セファレキシン、セファクロル、セフェピム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフォテタン、セフォキシチン、セフポドキシム、セフプロジル、セフタキシジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、およびロラカルベフ;他のマクロライドおよびケトライド、例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、およびテリスロマイシン;アモキシシリン、アンピシリン、ピバンピシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、オキサシリン、ピペラシリン、およびチカルシリンを含めたペニシリン(クラブラネートとともに、およびこれを伴わずに);テトラサイクリン、例えば、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、およびテトラサイクリン;他の抗菌薬、例えば、アズトレオナム、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リネゾリド、ニトロフラントイン、およびバンコマイシンも挙げることができる。
【0161】
薬物の他の例として、例えば、クロモグリク酸ナトリウム(sodium chromoglycate)、アンタゾリン、メタピリレン(methapyriline)、クロルフェニラミン、セチリジン(cetrizine)、ピリラミン、プロフェンピリダミンを含めた抗アレルギー薬などの免疫調節剤;アルデスロイキン、アダリムマブ、アザチオプリン、バシリキシマブ、ダクリズマブ、エタネルセプト、ヒドロキシクロロキン、インフリキシマブ、レフルノミド、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、およびスルファサラジン;抗ヒスタミン剤、例えば、アゼラスチン、エメダスチン、ロラタジン、デスロラタジン、セチリジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、デキスクロルフェニラミン、クレマスチン、シプロヘプタジン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、プロメタジン、およびレボカバスチン;免疫学的薬剤(ワクチンおよび免疫刺激剤など);MAST細胞安定剤、例えば、クロモリンナトリウム、ケトチフェン、ロドキサミド、ネドクロミル(nedocrimil)、オロパタジン、およびペミロラストなど;毛様体削摩剤(ciliary body ablative agent)、例えば、ゲンタマイシン(gentimicin)およびシドフォビル;ならびに他の眼科用剤、例えば、ベルテポルフィン、プロパラカイン、テトラカイン、シクロスポリン、およびピロカルピン;細胞表面糖タンパク質受容体の阻害剤;うっ血除去薬、例えば、フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン(tetrahydrazoline);脂質または降圧脂質;ドーパミン作動性アゴニストおよび/またはアンタゴニスト、例えば、キンピロール、フェノルドパム、およびイボパミン;血管れん縮阻害剤;血管拡張剤;降圧剤;アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;オルメサルタンなどのアンギオテンシン-1受容体アンタゴニスト;微小管阻害剤;分子モーター(ダイニンおよび/またはキネシン)阻害剤;アクチン細胞骨格制御因子、例えば、サイトカラシン(cyctchalasin)、ラトランクリン、スウィンホリドA、エタクリン酸、H-7、およびRho-キナーゼ(ROCK)阻害剤;リモデリング阻害剤;細胞外マトリックスのモジュレーター、例えば、tert-ブチルヒドロ-キノロンおよびAL-3037A;アデノシン受容体アゴニストおよび/またはアンタゴニスト、例えば、N-6-シクロヘキシルアデノシン(cylclophexyladenosine)および(R)-フェニルイソプロピルアデノシン;セロトニンアゴニスト;ホルモン剤、例えば、エストロゲン、エストラジオール、黄体ホルモン、プロゲステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ペプチド、およびバソプレッシン視床下部放出因子;例えば、上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β、ソマトトロピン(somatotrapin)、フィブロネクチン、結合組織増殖因子、骨形態形成タンパク質(BMP)を含めた増殖因子アンタゴニストまたは増殖因子;インターロイキンなどのサイトカイン、CD44、コクリン、および血清アミロイドAなどの血清アミロイドも挙げることができる。
【0162】
他の治療剤として、ルベゾール(lubezole)、ニモジピン、および関連化合物などの、および血流エンハンサー、ナトリウムチャネル遮断薬、メマンチンなどのグルタメート阻害剤、神経栄養因子、一酸化窒素合成酵素阻害剤を含めた神経保護剤;フリーラジカルスカベンジャーまたは抗酸化剤;キレート化化合物;アポトーシス関連プロテアーゼ阻害剤;新規タンパク質合成を低減する化合物;放射線治療剤;光線力学的療法剤;遺伝子療法剤;遺伝子モジュレーター;ならびにドライアイ薬、例えば、シクロスポリンA、粘滑薬(delmulcent)、およびヒアルロン酸ナトリウム;α遮断剤、例えば、ドキサゾシン、プラゾシン、およびテラゾシン;カルシウムチャネル遮断薬、例えば、アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、およびベラパミル;他の降圧剤、例えば、クロニジン、ジアゾキシド、フェノルドパム(fenoldopan)、ヒドララジン、ミノキシジル、ニトロプルシド、フェノキシベンザミン、エポプロステロール、トラゾリン、トレプロスチニル、およびニトレート系薬剤;ヘパリン類およびヘパリノイド、例えば、ヘパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、チンザパリン、およびフォンダパリヌクスを含めた抗凝固剤;他の抗凝固剤、例えば、ヒルジン、アプロチニン、アルガトロバン、ビバリルジン、デシルジン、レピルジン、ワルファリン、およびキシメラガトラン;抗血小板薬、例えば、アブシキシマブ、クロピドグレル、ジピリダモール、エプチフィバチド(optifibatide)、チクロピジン、およびチロフィバンを挙げることができる。
【0163】
他の治療剤として、プロスタグランジンPDE-5阻害剤および他のプロスタグランジン剤、例えば、アルプロスタジル、カルボプロスト、シルデナフィル、タダラフィル、およびバルデナフィル;トロンビン阻害剤;抗血栓剤;抗血小板凝集剤;血栓溶解剤および/または線維素溶解薬、例えば、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、レテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ、およびウロキナーゼ;抗増殖剤、例えば、シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、パクリタキセル、およびミコフェノール酸;レボチロキシン、フルオキシメステロン(fluoxymestrone)、メチルテストステロン、ナンドロロン、オキサンドロロン、テストステロン、エストラジオール、エストロン、エストロピペート、クロミフェン、ゴナドトロピン、ヒドロキシプロゲステロン、レボノルゲストレル、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、ミフェプリストン、ノルエチンドロン、オキシトシン、プロゲステロン、ラロキシフェン、およびタモキシフェンを含めたホルモン関連薬;アルキル化剤、例えば、カルムスチン、ロムスチン、メルファラン、シスプラチン、フルオロウラシル3、およびプロカルバジンを含めた抗新生物薬;抗生物質様剤(antibiotic-like agent)、例えば、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、マイトマイシン、およびプリカマイシン;抗増殖剤(1,3-cisレチノイン酸、5-フルオロウラシル、タキソール、ラパマイシン、マイトマイシンC、およびシスプラチンなど);代謝拮抗剤、例えば、シタラビン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、メルカプトプリン、および5-フルオロウラシル(flurouracil)(5-FU);免疫調節剤、例えば、アルデスロイキン、イマチニブ、リツキシマブ、およびトシツモマブ;有糸分裂阻害剤、ドセタキセル、エトポシド、ビンブラスチン、およびビンクリスチン;ストロンチウム-89などの放射性作用物質;ならびに他の抗新生物薬、例えば、イリノテカン、トポテカン、およびミトタンを挙げることができる。
【0164】
本明細書に記載の使用および方法により、それだけに限らないが、明所(昼間)視の改善、最良矯正視力の増大、黄斑機能の改善、中心固視の保持または復帰、視野の改善、暗所(夜間)視の改善、音に対する感受性の増大または改善、および対側性の眼の視力の改善を含めて、哺乳動物被験体の網膜の視覚機能を臨床的に有意な程度に急速に、持続的に回復させ、かつ/または保持することができる。他の変化として、様々な全身の利点、例えば、概日リズム、下垂体機能、ホルモンの放出、血管緊張に対する光の効果に関係し得る身体の改善に起因する外見の変化、視覚能力に対する感覚の改善、自立歩行の改善、健康の感覚の改善、および/または日常生活の活動の改善を挙げることができる。視覚のこのような変化は、当技術分野で公知の方法によって測定することができる。視覚の利益は、処置後第1週以内に発生し得るが、より長い期間にわたって漸増性の利益も発生し得る。網膜細胞交換および/または網膜、網膜回路、または外顆粒層または黄斑へのドナー細胞移入を行うことができるが、臨床的効力にとって必要ではなく、網膜内へのドナー細胞移入が可能であるが、臨床的効力にとって必要ではない。
【0165】
本明細書に開示の網膜前駆細胞組成物を用いた処置から生じる視覚の改善を含めた視覚の変化の測定は、それだけに限らないが、眼底検査、最良矯正視力(BCVA)、IOP、細隙灯検査、蛍光眼底血管造影(FA)、光干渉断層法(OCT)、ステレオ眼底写真撮影、網膜電図検査(ERG)、錐体フリッカー網膜電図検査、視野測定(視野)、微小視野測定、暗順応、迷路通り抜け技能(maze negotiating skill)、視動性/視運動応答、瞳孔反射、視覚誘発電位(VIP)、および補償光学走査型レーザー検眼鏡検査(AOSLO)を含めた標準的な眼科検査技法を使用して実現することができる。
【0166】
キットおよび指示
本発明は、組成物(例えば、胎児神経網膜細胞の異種混合物)、および本発明の方法(例えば、網膜疾患または網膜の状態の処置、または胎児神経網膜細胞の異種混合物の作製)を、これらを使用するための指示を含めて、含むキットを提供する。代替の実施形態では、本発明は、本発明の組成物、製造産物、または細胞の混合物もしくは細胞の培養物(例えば、胎児神経網膜細胞の異種混合物)を含むキットであって、本発明の方法を実施するための指示を必要に応じてさらに含む、キットを提供する。
【0167】
本発明は、新鮮な、もしくは凍結された培養物中の細胞として提供される、または被験体に投与するための組成物として製剤化された、本明細書に記載の哺乳動物網膜前駆細胞を含む細胞集団を含むキットを提供する。キットは、本発明の方法を実施するための指示をさらに含むことができる。このようなキットは、本明細書に記載の網膜前駆細胞の1種または複数のマーカーに結合する作用物質(例えば、抗体またはオリゴヌクレオチドプライマー)、および基本培地または馴化培地をさらに含むことができる。例えば、キットは、1種または複数のマーカーに特異的な抗体を含む第1の容器であって、前記抗体は、例えば、蛍光マーカーまたは磁気ビーズにコンジュゲートされることによって単離または検出されるのに適している、第1の容器、および基本培地または馴化培地を含む第2の容器を含むことができる。様々な関連実施形態では、キットは、本発明の細胞集団の調製に有用な1つまたは複数の追加の試薬、例えば、細胞培養培地、細胞外マトリックスで被覆された細胞培養皿、および組織処理に適した酵素などをさらに含む場合がある。キットは、組織試料から得られる網膜前駆細胞または細胞集団を精製し、増やすためのその使用に関する指示も含む場合がある。他の実施形態では、キットは、患者もしくはドナーから組織試料を得るための手段、および/または得られた組織試料を収容するための容器をさらに含んでもよい。
【0168】
獣医学用途
代替の実施形態では、本発明の組成物および方法は、獣医学的用途に使用することができ、例えば、本発明は、ネコRPCの増殖の最初の成功、ならびにジストロフィーのネコや他の動物、例えば、任意の哺乳動物ペット、一般的な飼いならされた、および希有な野生哺乳動物種、動物園動物、家畜、スポーツ(例えば、競走用イヌまたはウマ)動物などにおける網膜の最初の治療用途を実証するものである。
【0169】
大規模な近親交配の結果として失明を引き起こす遺伝子を持ついくつかの家畜が存在する。これらは、ネコ、イヌ、およびウマ、ならびにおそらく他の種を含んでいた。野生および家庭動物に発生する網膜の疾患および傷害があり、これらは、本発明の組成物および方法を使用する処置から恩恵を得ることになる。
【0170】
製造品、インプラント、および人工臓器
本発明は、胎児神経網膜細胞の異種混合物を含む本発明の1種または複数の製剤または医薬品を含むインプラント、および人工臓器、バイオリアクターシステム、細胞培養システム、プレート、皿、管、瓶、およびフラスコなども提供する。
【0171】
代替の実施形態では、本発明は、胎児神経網膜細胞の異種混合物を含むバイオリアクター、インプラント、ステント、人工臓器、または同様のデバイス、例えば、米国特許第7,388,042号;同第7,381,418号;同第7,379,765号;同第7,361,332号;同第7,351,423号;同第6,886,568号;同第5,270,192号;および米国特許出願公開第20040127987号;同第20080119909号(耳介インプラントを記載);同第20080118549号(眼のインプラントを記載);同第20080020015号(生理活性創傷包帯材を記載);同第20070254005号(心臓弁バイオプロテーゼ、血管移植片、半月板インプラントを記載);同第20070059335号;同第20060128015号(肝臓インプラントを記載)に類似の、またはこれらに記載されたインプラントを提供する。
【0172】
本発明を、以下の実施例を参照してさらに記載するが、本発明は、かかる実施例に限定されないことが理解されるべきである。
【実施例
【0173】
(実施例1)
網膜前駆細胞の単離および培養
約16~19週の妊娠期間(GA)の胎児の胎児眼全体を、ドナーから得、L-グルタミンを含むRPMI-1640培地(BioWhittaker)を含有する15mlの管内に入れた。眼は、4.5時間~約21.5時間の期間にわたって氷上で発送した。同時に、上記ドナーから血液試料を抜き取り、外来性物質への曝露についての試験に送った。到着時に、各眼球を検査して、角膜が透明であり、通常の形状のものであることを確認し、次いで滅菌条件下の層流フード下に置いた。胎児眼全体を、別個の50mlの管内で、抗生物質を含有する冷リン酸緩衝食塩水(PBS)40ml中で3回すすいだ。次いで視神経および残った間葉組織を解剖によって取り出した。網膜分離物(retinal isolate)が非網膜起源の望まれない細胞で汚染される可能性を回避するために、この手法を採用した。解剖後、抗生物質を含有する冷PBS中で眼をさらに1回すすいだ。
【0174】
双眼解剖顕微鏡下で、25-5/8ゲージの注射針が取り付けられた1mlの「TB」型シリンジを使用して、外科的輪部(surgical limbus)において各眼に穴を穿刺した。次いで眼球を、縁に沿って精巧なハサミで切断することによって、円周方向に開いた。前部構造物(角膜、レンズ)およびあらゆる残った硝子体を、眼杯から取り出した。次いで網膜を、網膜色素上皮(RPE)から慎重にそぐことによって離し、冷DMEM/F12培地約2mlを含有する小ペトリ皿内に移した。ペトリ皿内で1mlのチップで穏やかに粉砕することによって、網膜組織を手作業で小片へと壊した。網膜の塊を、15mlの冷コニカルボトムチューブ(conical bottom tube)内に懸濁物で移し、あらゆる残った組織を、冷DMEM/F12 1ml中で2~3回ペトリ皿をすすぎ、これを15mlの管に加えることによって収集した。1000rpm(179×g)で5分間遠心分離することによって組織を沈降させ、上清を廃棄した。
【0175】
次いで組織を、TrypLE Express原液(Invitrogen)0.8ml中で、室温で40秒間インキュベートすることによって酵素消化にかけた。次いで、トリプシン処理された組織を、1mlのピペットチップによって上下させた。冷新鮮無血清細胞培養培地10mlを引き続いて添加することによってトリプシンを中和し、1000rpm(179×g)で4分間遠心分離することによって混合物を収集した。上清を除去し、ペレットを冷新鮮細胞培養培地中に再懸濁し、次いで細胞生存能および細胞数をトリパンブルー(Invitrogen)色素排除によって求め、Countess(Invitrogen)を使用して、または手作業で計数した。約10×10個の細胞群が得られ、ここで、約80%が小さい/中程度のクラスターであり、約9~18%が単細胞であり、約1~2%が大きいクラスターであった。この技法により、約92%の細胞生存能がもたらされた。
【0176】
次いで、ヒト(異種由来成分不含有)フィブロネクチンで予め被覆された2つのT75培養フラスコ内に細胞を播種した。ヒト血漿フィブロネクチン(Invitrogen)をいくつかの実験で使用した。他の実験では、オルニチン、ポリリシン、ラミニン、またはマトリゲルを使用した。次いで、37℃で、5%のCOおよび大気酸素下で、または代わりに3%のO中で、LowOxインキュベーターを使用して細胞をインキュベートした。培養中、細胞が引き続いて継代される際の早すぎる分化を防止するために、トリプシン処理および/または粉砕によってクラスターをさらに解離するように注意を払った。1日または2日毎に、細胞培養培地の90%を交換し、37℃で5~6分間、TrypLE Expressを使用して、60~80%のコンフルエンス、必要に応じて40~90%のコンフルエンスで細胞を継代させた。冷培地または冷PBS 10mlを添加することによってトリプシン処理を停止した。細胞生存能をトリパンブルー染色によって求め、細胞数を計数した。解離した細胞を、新しいフィブロネクチン被覆フラスコまたはプレート内に、1~6.7×10/cmの密度で引き続いて播種した。
【0177】
細胞を、TrypLE Expressでこれらを最初に回収することにより、凍結するために調製した。1000rpm(179×g)で5分間遠心分離することによって細胞を収集した。上清を除去し、細胞ペレットを新鮮培地または冷PBS中で再懸濁させた。細胞生存能および細胞数を求めた。1000rpmで5分間、細胞を引き続いて再び沈降させ、クライオバイアル1つ当たり0.5~5×10細胞でアリコートして、細胞凍結保存用培地(90%の新鮮な完全培地、10%のDMSO)中に再懸濁させた。クライオバイアルを冷凍容器内に1℃で置き、次いで、-80℃のフリーザー、液体窒素タンク、または他の持続的低温貯蔵庫に移動させた。
【0178】
細胞を解凍するために、クライオバイアルを液体窒素/貯蔵庫から取り出し、氷晶が消失するまで、37℃の水浴中に2~3分間置いた。次いで解凍した細胞を、1mlのピペットチップを使用して直ちに15mlの冷コニカルチューブに移し、バイアルを冷新鮮培地で2回すすいだ。冷新鮮培地10ミリリットルを、15mlの管内に穏やかに振盪しながら液滴で添加した。次いで、800rpm(115×g)で3分間遠心分離することによって細胞を収集し、上清を廃棄し、得られた細胞ペレットを新鮮培地に再懸濁させた。細胞数および生存能を本明細書に記載したように求め、次いで細胞を新しいフィブロネクチン被覆フラスコ内に播種し、上記した条件下でインキュベートした。
【0179】
ネコ網膜由来前駆細胞の形態を図1に示す。この図から分かるように、形態は、培養を持続する過程の異なるタイムポイントで維持された。図2は、2つの異なるタイプの細胞培養培地で増殖したネコRPCの増殖曲線を例示する。SM中のネコRPCは、継代10日目(P10)で老化し、一方UL中の同じ細胞は、増殖し続けた。P14後に、増殖の上向きの変曲があった。
【0180】
図3中のヒト細胞の形態は、最初に認められた細胞の小クラスターを示し、これらは、第1週の最後までに接着性単細胞培養物に系統的に変換された。これは、上記した継代手順の間の解離によって実現した。一般に、小サイズまたは中サイズのクラスターを最初に使用すると、細胞生存能が増進され、これは、血清の完全な非存在下で有利であった。相対的に高い細胞密度を維持しながら引き続いて完全に解離すると、分化を回避しながら増殖を促進することができる。
【0181】
図4および図5において、hRPCの増殖動態が認められる。供与物に由来する細胞を、P4で臨床的に使用した。大気酸素下で認められる増殖は相当であり、少なくとも10継代(P10)にわたって持続したが、増殖は無限ではなかった。無制限の増殖特性は、多能性、不死化、および腫瘍形成のリスクの増大を示し得るので、禁忌である。
【0182】
DMEM/F12(標準、Advanced and KnockOut;Invitrogen)、Neurobasal(Invitrogen)、Ultraculture(Lonza)、およびReNcell(Chemicon)を含めた様々な無血清細胞培養培地および異種由来成分不含有細胞培養培地を試験して、RPC繁殖の最適条件を求めた。RPCの培養で使用した細胞培養培地は、最初の2週間にわたって、N2補充物(Invitrogen)、B27(Invitrogenまたは他のブランド)、Stempro(Invitrogen)、ビタミンC、アルブミン、組換えヒト上皮増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、GlutaMAX I、L-グルタミン、および/またはペニシリン-ストレプトマイシン(Invitrogen)を時折補充した。本明細書で示す「SM」は、DMEM/F12に基づく標準増殖培地を指す。「UL」は、基礎培地としてUltracultureを使用する増殖培地として本明細書で指す。無血清培地を抗生物質の非存在下で、または抗生物質とともに、最初の2週間使用し、その後、抗生物質不含培地を約6週間使用した。抗真菌剤は、使用しなかった。図5は、RPCの最適培地を求めるために行った実験結果を示す。基礎培地、標準DMEM/F12について、N2補充物、増殖因子、グルタミンもしくはGLUTAMAX(商標)(GlutaMax(商標))を補充した培地を、同様に補充した「アドバンストDMEM/F12」と比較した。図6Aで分かるように、補充のビタミンCおよびアルブミンも含有する「アドバンスト」バージョンは、より有効であることを証明し、hRPCの収率を18~29%増大させた。
【0183】
細胞培養物補充の効果も探索した。そのために、N2補充物もB27異種由来成分不含有補充物と比較した。図6Bは、B27異種由来成分不含有を補充すると、RPCの収率が確かに増大することを示す。N2により収率が適度に増大し、これらの量は、治療効力について十分である。追加のビタミンCの効果も試験した。ビタミンC補充物を2日毎に培地に添加した。図7Aは、ビタミンCが、hRPCの収率を約30%改善することを示す。アドバンストDMEM/F12は、追加されたビタミンCを含有するが、追加の補充によってもたらされるレベルがより高いと(0.05mg/ml~0.1mg/ml)、hRPC増殖に有用であることが明白である。2日毎に新鮮なビタミンCを追加することで十分であり、毎日の添加は、必要であると認められなかった。最後に、アルブミンの補充を試験した。異種由来成分不含有ヒト組換えアルブミンを1.0mg/mlで培地に添加し、標準DMEM/F12ベース培地に添加したとき、増殖の増強が観察された(最大27%)が、この情況で好都合な基礎培地である(かつ既に追加されたアルブミンを含有する)アドバンストDMEM/F12ベース培地に追加のアルブミンを添加したとき、検出可能な改善は観察されなかった。図7Bおよび図7Cを参照。
【0184】
細胞培養培地の容量オスモル濃度も、異なる市販の補充物と組み合わせて、異なる容量オスモル濃度(osm)の培地を使用することによって検査した。図8を参照。低osm培地(KnockOut DMEM/F12;276 mOsm/kg)は、一般に使用される神経細胞用補充物(neural supplement)N2またはB27にとって有益でなく、いくつかの場合では、通常のosm培地(DMEM/F12;300~318mOsm/kg)と比較して著しく低い収率をもたらした。あまり一般的ではない補充物を組合せて使用した場合(STEMPRO(商標)キット、Invitrogen、データを示さず)、低osmに利益の徴候があった。
【0185】
%生存能および増殖速度に加えて、「落下までの時間」と本明細書で呼ぶ、最初の回収の最適な(例えば、in vitroで)結果を予言する追加の測定基準を策定した。「落下までの時間」は、解離した細胞がインキュベートされた増殖培地でフラスコの底に沈殿するまでの時間を特に指す。懸濁物の保持(落下の欠如)は、単離プロセスによる損傷から生じる細胞の傷害または非生存能と関連する場合があり、しかも細胞による自己修復が成功すると、膜恒常性、通常の容量オスモル濃度などを回復し、それによって、負の浮力およびしたがって「落下」を回復する能力の観察と関連する。自己修復が遅延すると、細胞にとってストレスが多くなり、あまり活性でない/あまり健康でない培養物をもたらす。報告判定基準として約90%の落下(集団の%に基づいて)を使用して、輸送時間が21.5時間であった組織からの細胞について約6時間の落下時間が観察され、輸送時間が4.5時間であった組織からの細胞で約1.5時間に短縮した。直ちに蒔かれたネコRPCおよび脳前駆細胞は、1時間の落下時間をもたらした。約1時間以下の落下時間は、ヒト細胞で達成可能であった。
【0186】
RPを用いたヒトにおける視覚の改善を実証するのに使用する細胞を、大気酸素の条件下で培養した。妊娠の間に発生中の胎児網膜の酸素レベルをより密接に模倣する低酸素条件、この場合、3%の酸素(「lowOx」)下の増殖中のRPCの分枝(ramification)を探索した。図9が示すように、3%の酸素(「lowOx」)により、hRPCの増殖が顕著に改善されるとともに増殖がより長く持続し(56日目、P10で)、所与の供与物からの全体的な細胞収率が大いに増大した。大気酸素(20%)下での増殖特性は、比較のために示されており、活発性が著しく低い増殖速度、および増殖のより早期の老化(47日目、P7)、および劣った全収率を露呈する。図9は、lowOxにおけるhRPCの増殖の加速に対応する変曲点も示し、これは、約40%のコンフルエンスレベルで起こり、最適なhRPC増殖に対する高密度培養条件の重要性を強調している。同様の結果が、低酸素条件下で増殖した細胞において認められる(図10)。低酸素条件下で増殖したWCB細胞の増殖特性は、再現可能であった(図11)。
【0187】
ステロイドは、移植の時点で患者に使用されることが多いので、細胞をステロイド毒性試験にもかけた。図12は、眼科用途において、しかし予想される臨床的利用を超えるレベルでのみ一般に使用されるステロイドのトリアムシノロンアセトニドのhRPCに対する毒性を示す。臨床用量のトリアムシノロンアセトニドは、細胞増殖に影響するようではなかったが、用量が多いと(予期される臨床用量の約10倍超)、ドナー細胞生存能を低下させ得る。
【0188】
液体窒素中で以前に凍結された細胞を解凍し、生存能について試験した。図13は、凍結融解実験の結果を示す。これらの以前に凍結された細胞は、低酸素および正常酸素細胞培養条件の両方の下で生存可能であった。細胞の生存能は、両酸素条件について約94%であることが判明した。解凍後の細胞は、連続培養条件下で維持されたhRPCと同様の増殖動態を呈した。
【0189】
(実施例2)
RPCの特徴付け
免疫細胞化学検査
細胞を解離し、4または8ウェルチャンバースライド上で1~3日間増殖させ、次いで4%のパラホルムアルデヒド中で15分間固定し、PBS中で3回洗浄した。スライドを、5%のロバ血清および/または0.3%のTriton X-100を含有する溶液中で1時間ブロッキングし、その後、別のPBSで洗浄した。次いで抗体のパネルを4℃で一晩インキュベートして、前駆細胞によって発現された抗原を検出した。これらは、抗ネスチン(Chemicon 1:200)、抗ビメンチン(Sigma 1:200)、抗Sox2(Santa Cruz 1:400)、抗SSEA-1(BD 1:200)、抗GD2(Chemicon 1:100)、抗Ki-67(BD 1:200)、抗β3-チューブリン(Chemicon 1:400)、抗GFAP(Chemicon 1:400)、および抗GDNF(Santa Cruz 1:200)を含んでいた。これを、その後、抗マウスAlexa546(Invitrogen 1:400)、抗ヤギAlexa488(Invitrogen 1:400)、または抗ウサギFITC(Chemicon 1:800)二次抗体とともにインキュベートした。蛍光を、Leica逆顕微鏡(converse microscopy)を使用して検出し、Metamorphソフトウェアによって視覚化した。DAPIを使用して総細胞数を求めて、6つのランダムに選択した視界内で特異的な免疫反応性を発現するプロファイルを計数することによって、陽性プロファイル率を計算した。
【0190】
RNA抽出
トータルRNAを、製造者の指示に従って、RNeasyミニキット(Qiagen、CA、USA)を使用することによって抽出し、DNase Iで処理した。分光光度計(ND-1000;NanoDrop Technologies Inc.、Wilmington、DE)により、260nm/280nmにおける光学密度(OD) 1.90~2.10および260nm/230nmにおける光学密度(OD) 1.90~2.20を測定することによって、RNAを定量化した。
【0191】
マイクロアレイ分析
すべての出発トータルRNA試料の品質を評価した後、RNA 6000 Nano LabChip上に少量の各試料(一般に25~250ng/ウェル)を流すことによって標的調製/処理ステップを開始し、Agilent Bioanalyzer 2100(Agilent Technologies、Palo Alto、CA)で評価した。GeneChip WT cDNA Synthesis Kit(Affymetrix,Inc.、Santa Clara、CA)、およびT7プロモーター配列でタグを付けたランダム六量体を使用して、単離したトータルRNA中に存在するポリ(A)+mRNAから二本鎖cDNAを合成した。一般に、トータルRNA出発原料100ngを、各試料の反応に使用した。次いで、二本鎖cDNAを鋳型として使用することによって、Affymetrix Genechip WT cDNA Amplification Kitを使用して、T7 RNAポリメラーゼの存在下で16時間in vitroで転写反応させることにより、アンチセンスcRNAの多数のコピーを生成した。cRNA 10マイクログラムを、センス配向で一本鎖DNAを生成するように逆転写されたランダム六量体との第2サイクルのcDNA反応に使用した。
【0192】
定められたプロトコール(Affymetrix GeneChip WT Sense Target Labeling Assay Manual)に従って、一本鎖DNA試料を断片化して(WT Terminal Labeling Kit、Affymetrix)60塩基(40~70bpの範囲)の平均鎖長にした。断片化した一本鎖DNAを、組換えターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、およびビオチンに共有結合的に連結されたAffymetrix専売DNA Labeling Reagentで引き続いて標識した。推奨手順に従って、この断片化した一本鎖標的cDNA 0.54μgを、Affymetrixヒト遺伝子1.0 STアレイ上に存在するプローブセットに、回転させながら45℃で17時間ハイブリダイズした(Affymetrix GeneChip Hybridization Oven 640)。Affymetrix Fluidics Station 450(FluidicsプロトコールFS450_007)において、GeneChipアレイを洗浄し、次いでストレプトアビジン-フィコエリトリンで染色した。GeneChip Scanner 3000 7GおよびGeneChip Operating Software v1.4を使用してアレイをスキャンすることによって、CEL強度ファイルを生成した。
【0193】
付随したソフトウェアアルゴリズム内に分位数正規化プロトコールを含む、プローブ対数強度誤差(probe logarithmic intensity error)(PLIER)推定法を使用して正規化を実施した。簡単に言えば、上記で生成したプローブセル強度ファイル(*.CEL)を、PLIERアルゴリズムを使用する、Affymetrix Expression Console ソフトウェアv1.1を使用して分析することによって、プローブ-レベル要約ファイル(*.CHP)を生成した。使用したアルゴリズムは、PLIER v2.0(定量化の目盛り:線形;定量化のタイプ:信号および検出 p値;バックグラウンド:PM-GCBG;正規化方法:スケッチ(sketch)-分位数)からのものであった。次いで、JMP Genomics 4.1(SAS Americas)を使用してマイクロアレイデータを評価した。事後t検定とともに一元配置ANOVAによってデータを分析し、FDR α<0.05を使用して得られたp値を補正した。得られたデータ表をアノテートした。ANOVAの結果からのボルケーノプロットに加えて、デフォルトの高速Ward法を使用する、JMPソフトウェアも使用することによって、主成分分析、ベン図、ならびに階層クラスターおよびヒートマップを生成した。
【0194】
リアルタイムqPCRアッセイ
候補マーカーの選択は、本試験の潜在的な適切性ならびに、このタイプの細胞での以前の仕事の結果に基づいた。神経系列の未熟細胞に関連するマーカー、ならびに神経分化およびグリア分化についての選択したマーカーを特に重視した。試料調製物からのトータルRNA 2マイクログラムを、製造者の指示に従って、Omniscriptase Reverse Transcriptaseキット(Qiagen、CA、USA)および10μMのランダムプライマー(Sigma、MO、USA)を用いて逆転写した。Power SYBRグリーン(Applied Biosystems、Irvine、USA)またはTaqman遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)を使用して、7500 fast Real-Time PCR System(Applied Biosystems、Irvine、USA)を使用して、定量的PCRを実施した。
【0195】
非特異的生成物増幅からの対象とする生成物の弁別は、SYBRグリーン法を使用するときの融解曲線分析によって実現した。β-アクチンまたはGDNPHを内在性コントロールとして使用して、遺伝子発現を正規化した。以下の一般的なリアルタイムPCRプロトコールを使用した:変性プログラム(95℃ 10分間)、40サイクル繰り返した定量化プログラム(95℃ 15秒間および60℃ 130分間)、融解曲線プログラム(連続的に蛍光を測定して、95℃ 15秒間および60℃ 1分間)、ならびに最後に40℃での冷却プログラム。各反応を三つ組で実施した。ΔΔC法(7500 Fastシステムソフトウェア1.4およびDataAssist 2.0、Applied Biosystems、Irvine、USA)ならびにJMPソフトウェア4.1(SAS Americas)によって、グラフをプロットし、分析を実施した。すべてのデータ点を平均値±標準誤差(SE)で表す。統計的差異は、t検定を使用して求めた。データは、p<0.05であるとき、有意であるとみなした。
【0196】
細胞毒性試験
Cell Counting Kit-8(CCK-8;Dojindo Molecular Technologies Inc.、Gaithersburg、MD)を使用して、RPCの細胞毒性を判定した。このキットはWST-8を使用し、これは、電子キャリア1-メトキシPMSの存在下で生物学的還元されると、水溶性着色ホルマザンを生成する。1ウェル当たり細胞懸濁物90μlを含有する96ウェルプレートに、CCK-8事前パッケージ(pre-packaged)溶液10μlを接種した。プレートを2時間インキュベートし、上清のOD450を測定した。各実験を、少なくとも3つの別個の実験で、四つ組で実施した。
【0197】
免疫細胞化学(ICC)マーカーによって染色したネコRPC細胞は、ビメンチンの高レベルの発現を示した。図14を参照。同じことがヒトRPCで観察された。ネスチン、ビメンチン、Ki-67、β3-チューブリン、グリア細胞原線維タンパク質(GFAP)、およびロドプシンを含む系列マーカーにより、神経細胞、光受容体、グリアの存在が明らかになり、RPC培養物の多能性および異種性の保持が実証される。マーカー転写物のqPCRを使用して経時的にネコRPC遺伝子プロファイルを観察した。ヒトRPCでも認められるような、発現プロファイルの動的変化:培養における経時的なマーカー発現の下向きの定量的変化の一般底な傾向。例えば、図15を参照。遺伝子発現は、qPCRによってUL細胞培養培地条件とSM細胞培養培地条件との間でも比較した(図16A)。ネコ前駆細胞(RPCおよびBPCの両方)の増殖は、SM培養物であまり持続的でなかったので、調査を比較による遺伝子発現にした。13日目のSMを比較のベースラインとして使用して(「1.0」に設定)、SMおよびUL中で増殖したネコRPCを31日目の培養で比較した。検査したほとんどのマーカーは、培養において経時的に発現の減少を示したが、SM培養物において、GFAP発現の顕著な上昇を示し、このことは、多分化能の進行性消失およびグリア系列に沿って制限に向かう傾向と一致した。UL培地中の細胞は、これを示さなかった。
【0198】
ネコRPC対脳前駆細胞(BPC)も比較した。図16Bを参照。ネコRPCは、BPCと比べていくつかのマーカーの相対的に増大した発現を示し、これらは、網膜の特殊化(specification)および発達に関与する転写因子であるDach1、Lhx2、およびPax6を含んでいた。同様に転写因子Hes1およびHes5も網膜発達に関与した。CD133、ネスチン、Sox2、ビメンチンは、一般的なCNS前駆細胞マーカーであり、一方、β3-チューブリン、Map2、およびPKCαは、系列マーカーである。
【0199】
ネコRPCを、ジストロフィーのアビシニアンネコの網膜下腔に移植し、単離した移植後の細胞を染色にかけた。図17を参照。細胞は、網膜下腔への移植を生き延び、さらに、レシピエントの網膜内に遊走する能力を示した。移植された細胞は、形態学的に、かつビメンチン標識化によってミュラーグリアのようであるものに分化する能力を示した。ミュラー細胞は、網膜に特異的であり、網膜の全層にわたって広がって構造的安定化をもたらすグリアである。これらは、神経細胞の生存を含めた多数の網膜機能に重要である。
【0200】
ICCによるマーカー発現を使用するヒトRPCの形態を求めた。図18および図19は、培養集団内のある特定の重要なマーカーの発現の百分率を示す。ネスチンの発現が確認された。これは、神経幹細胞/前駆細胞、およびRPCに関連すると考えられる。ビメンチンは、この集団によって非常に大量に発現されたが、その発現は、RPCに非特異的であると考えられた。Sox2は、神経発達にも関連する転写因子であり、hRPCにも存在した。SSEA-1(CD15、LeXとしても公知)は、ES細胞における多能性と関連付けられており、研究により、多能性でない、多分化能の脳前駆細胞および網膜前駆細胞(RPC)のサブセットによるこのマーカーの発現が示された。GD2-ガングリオシドの発現も、hRPCに認められた。Ki-67は、活発な増殖のマーカーであり、本実施形態の細胞が、臨床用途の時点で、増殖性で有糸分裂的に活性であることを確認するのに使用した。このマーカーの存在により、hRPCが有糸分裂後の前駆体の集団と区別される(Surani, M.A.およびMcLaren A.(2006年)Nature 443巻(7109号):284~285頁)。OCT4発現の相対的非存在下でのKi-67は、RPCを、さらなる分化を受けなければ移植にとって安全ではない有糸分裂的に活性な多能性幹細胞(ES、iPS)と区別する。Ki-67活性のレベルはまた、単離されるhRPC培養物の品質(健康および適性)のモニタリングを可能にした。β3-チューブリンは、神経細胞発達のマーカーである。これは、培養物で中等度のレベルで発現されることが判明し、このことにより、神経系列決定および神経細胞への分化の潜在性が示唆される。神経細胞形成は、高い継代数で失われる傾向があるので、このマーカーの発現により、培養物による多分化能の保持を確認することができる。GFAPは、グリア分化、特に星状細胞と一般に関連するマーカーであるが、様々な摂動の後に、または培養中に網膜ミュラー細胞によっても発現される。やはり、認められるGFAP発現の百分率が低いことは、グリア細胞への自発的分化の割合を示唆し、培養物による多分化能の保持を確認するのに役立つが、GFAPは、未熟前駆細胞によっても同様に発現されることが公知である。GDNFは、いくつかの動物モデルにおいて、光受容体を含めた神経細胞の救済に関連した神経栄養因子であり、本明細書に記載されるように単離されるhRPC集団は、ICCによってこの因子を発現することができるが、陰性のELISAデータは、この因子は、必ずしも分泌されないことを示す。追加の因子は、RPC媒介光受容体救済に、より重要である可能性がある。
【0201】
特に、hRPCは、RNAレベルでのマーカー発現によって示されるように、線維芽細胞(hFB)と区別され得る。図20を参照。この図は、ビメンチンが、線維芽細胞ではなくhRPCによって非常に高度に発現されるが、培養において、経時的に相対的なプロファイルの発現の動的変化をさらにあらわすマーカーであることを実証するqPCRヒートマップを示す。図21A~21Cは、hRPC対hFBを比較し、マーカー検出を拡張するqPCR実験の結果を示す。RPCでより多い(AQP4、CD133、GFAP、MAP2、MASH1、ネスチン、Notch1、リカバリン(recoverin)、SIX6、SOX2)複数の遺伝子、およびより少ない(したがってhFBでより多い)1つ(KLF4)が同定されている。発現レベルは、培養において経時的に変化するが、細胞型間で相対的に優勢であることは、かなり一貫しているようである。図22は、異なる供与物間で一貫した挙動(hRPC対hFBにおいて)を呈する11遺伝子(使用した約26のプロファイルから)のリストを含む。3つすべての供与物にわたって一貫した遺伝子は、黄色で強調されており、以下の通り、すなわち、KLF4(RPC<FB)、ならびにGFAP、MAP2、ネスチン、リカバリン、SIX6、およびSOX2(RPC>FB)である。
【0202】
選択したマーカーの発現レベルを、リアルタイムqPCRによって培養における時間の関数として追跡した。図23に示したように、高度に発現されるマーカーは、経時的にピーク発現レベルから緩和する傾向がある。例えば、Ki-67は、経時的に低下する傾向があり、それは、前駆細胞状態および不死化の欠如と一致する。MHCおよびGDNF発現は、培養において、経時的に中程度の増大を示す。早期対後期継代細胞におけるマーカーの発現レベルの変化を試験した。その結果を図24に示す。細胞周期遺伝子およびSix6(網膜発達に決定的な転写因子)は、後期継代細胞において最も強く下方制御されている。反対に、神経保護因子GDNFは、おそらく細胞ストレスの結果として、後期継代で上方制御される傾向がある。
【0203】
(ヒト)RPCを神経幹細胞(BPC)と区別するマイクロアレイデータの概要を図25に示す。主成分分析により、BPC(3)からのRPCデータセット(3)の明らかな分離が示され、それは細胞集団型としてののRPCは、BPCなどの類似の脳由来細胞型と、これらのトランスクリプトームに基づいて区別され得るということを実証している。ボルケーノプロットは、BPCと比較してRPCで著しく上方制御される1000に近い転写物、および著しく下方制御される約600の転写物の形態におけるこの差異の基礎を示す。特定の遺伝子カテゴリーによる転写物の樹状図を使用してこの比較をさらに表わし、特定の遺伝子を同定する。例えば、転写因子BHLHE41(ベーシックヘリックス-ループ-ヘリックスファミリー、メンバーe41)は、RPCによって高度に発現され、BPCによって非常に低く発現される。この遺伝子は、ベーシックヘリックス-ループ-ヘリックス因子のヘアリー/エンハンサーオブスプリットサブファミリー(Hairy/Enhancer of Split subfamily)に属する転写因子をコードする。コードされるタンパク質は、転写抑制因子として機能する。BPCよりもRPCによって優先的に発現される他の転写因子としては、HHEX、SOX3およびSOX13、HOXB2、LHX2、KLF10、TLE4、MYCBP、TFAP2A、FOSL1および2、FOXD1、NHLH1、GBX2、NEUROD、METなどが挙げられる。シグナル伝達分子の観点から、WNT5AおよびB、KDR、LIF、CALB1、RGS4、CAV2、IL11、IL1R1、IL1RAP、IL4R、IL21R、CXCL6および12、CXCR7、DKK1、HBEGF、SMAD7、BMP2などを含めて、多数の転写物が、BPC/神経幹細胞内より著しく高いレベルでRPCによって発現されることが示される。同様に、ECMマトリックス遺伝子のフィブロネクチン、LUM、ALCAM、TGFBI、ECM1、PARVA、およびコラーゲン:4A1、4A2、5A1、5A2、7A1、9A2、13A1、18A1、および様々な他のECM遺伝子も、RPCによって優先的に発現される。
【0204】
hRPCにおいてレチノイン酸(RA)を用いて分化させた後のマーカー発現を試験する実験を行った。結果を図26に示す。標準増殖培地(SM)で増殖させたhRPCの遺伝子プロファイルを、RAベースの分化条件(GFを含まないSM+RA)と比較した。増殖マーカーKi-67は、ビメンチンと同様に減少し、一方、腫瘍抑制遺伝子p21は、AIPL-I、MAP2、NRL、CRALBP、GFAP、およびリカバリンのような系列マーカーとともに上昇する。グリアマーカーおよび神経細胞マーカーの両方における増大は、培養RPC集団の多分化能と一致する。hRPC細胞を同定するために本発明を実施するのに使用することができる他のマーカーは、米国特許第7,419,825号に記載されている。
【0205】
さらに、大気Oxと比較してlowOx条件下で増殖させたhRPCの遺伝子発現を試験した(図27)。データは、遺伝子発現の検出可能な変化があり、表面マーカーCD9およびCD73は上方制御されたが、腫瘍抑制遺伝子p21、ならびに系列マーカーCRALBP、GFAP、MAP2、NRL、およびリカバリンを含めてほとんど、遺伝子の下方制御が観察されたことを示す。これらの変化は、細胞がこれらの許容的な条件下で、持続的様式で増殖する際の非必須遺伝子の発現の減少と最も一致する。GDNFも、おそらくオートクリン神経保護の必要性の減少のために下方制御される。
【0206】
異なるドナーから得、様々な細胞培養培地条件およびタイムポイントで培養したhRPC間の遺伝子発現の差異を試験した。結果を図28~30に示す。図28Aは、異なるタイムポイントで、SM条件でqPCRによって遺伝子発現を検出した実験の結果を示し、図28Bは、異なるタイムポイントにおけるSM-UL(最初のUL、次いでSM)条件でのqPCRによる遺伝子発現を例示し、図29Aは、異なるタイムポイントにおけるSM-FBS(最初のSM+FBS、次いでSM)条件でのqPCRによる遺伝子発現を例示する。図29Bは、SM単独、2つの異なるタイムポイントでのqPCRによる遺伝子発現を例示する。試験したマーカーのほとんどは、培養中に、経時的に発現の減少を示した一方、いくつかは、おおよそのレベルのままである。特に、試験したマーカーのうちで、GDNF発現のみが培養中に、経時的に増大した。図29Cは、SM(最初のSM+FBS後)の同じ2つのタイムポイントでのqPCRによる遺伝子発現を例示する。図29Bに示したように、GDNFのみが上昇する。図30は、これらのタイムポイントの比較の概要を表す。
【0207】
qPCRは、増殖因子経路に関してhRPCをさらに特徴付けるために使用し、分泌因子の相対的発現を対象とした。特定のパネルは、新脈管形成およびWNTシグナル伝達経路を含んでいた。これらの実験に使用した細胞は、正常酸素(20%の酸素)および低酸素(3%の酸素)条件下で増殖した低継代のhRPCから、低酸素条件下で増殖したより高い継代のhRPCを含むワーキングセルバンクから、またはhRPCのベースライン起始部を代表する0日目(供与日)におけるヒト胎児網膜組織から得た。ヒト胎児RPE(hRPE)細胞およびヒト胎児線維芽細胞(hFB)を比較のために使用した。
【0208】
図31は、増殖因子経路試験についてのqPCRデータのヒートマップ分析である。各縦の列は、異なる細胞型または処理条件である。ヒト胎児RPEおよび線維芽細胞をコンパレーターとして使用した(最初の2つの列)。右の3つの列はhRPCである。3つのhRPCバンクのうち2つで発現が特に高く、他のバンクにおいて中程度であるが、RPEまたはFBによって発現されていない1つのサイトカインは、SPP1(オステオポンチン、OPN)であり、これは現在、栄養作用機序因子(trophic mechanism of action factor)の一次候補である。別の候補は、PTN(プレイオトロフィン)であり、これも高度に発現されるが、この因子は、SPP1(OPN)より特異的でないようである。発現レベルに関して、このデータからの他の潜在的な候補は、MDK(ミッドカイン)、TGFB1(TGFβ1)、JAG1、VEGFA(VEGF A)、PGK1(ホスホグリセリン酸キナーゼ1)であり、使用される判定基準に応じて、GDF11、DKK1、PPIA(ペプチジルプロリルイソメラーゼA)、およびLIFなどのような様々な範囲まで他の候補を主張することができる。また、B2M(β2-ミクログロブリン、MHCクラスIの成分)は、それ自体サイトカインではないが、hRPCによって強く発現され、MHCクラスIの成分である。
【0209】
特異性が強調される場合、樹状図クラスター化は、HBEGF(ヘパリン結合性EGF様増殖因子、HB-EGF)、JAG1、からSPP1(OPN)に至るまで列挙されるものはすべて、胎児hRPEおよび胎児hFBよりもhRPCに対して全般的特異性を示し、したがって、異種「カクテル」効果に寄与し得ることを示す。これは、PTN、および低レベルのIL1B(インターロイキン1β)を含む。20%のMCBが最大の栄養有効性を有することもあり得、この場合、MDKからLEFTY2に至るまで列挙される因子が対象とするものである。UBC(ユビキチンC)も検出された。GDF11、レフティ、ノーダル、DKK1、LIFなどを含めたいくつかのこれらの遺伝子は、網膜発達に役割を果たすことが公知である。多くが、SPP1、NTF3、HB-EGFを含めて神経栄養性であり、または、例えばミッドカイン、ニューレグリン(NRG1、3)、JAGなど、神経発達に関係することが公知である。
【0210】
増殖因子経路試験からのqPCRデータの別の一覧を図32に示す。ここではヒストグラムとして示される。ヒト胎児RPE細胞を比較のために使用した。発現レベルに関して定量的に検査すると、hRPCによって特に高い発現を示した、分泌された遺伝子には、FGF9、GDF10、IL-1A(インターロイキン1α)、PTN、およびSPP1(オステオポンチン、OPN)が含まれた。これらの遺伝子のすべては、上記の、ヒートマップの相対的にhRPC特異的なクラスターであるようであるものにおいてグループ化することが判明したので、栄養機構を媒介するための候補と考えられる。より低い相対的な発現であるが、依然として高い発現を示す他の遺伝子には、BMP2、FGF7、13、14、レフティ1、2、ノーダル、NTF3、トロンボポエチン、および潜在的にVEGF A、Cが含まれる。hRPEと比べてhRPCによって優先的に下方制御された遺伝子は、JAG2、NGF、インヒビンβ B(INHBB)、およびIL-10であった。
【0211】
RPCは、網膜脈管形成期間の前および間に活性であり、したがって、特にこれらが分化し始める際に、新脈管形成において役割を果たすことが予期され得る。新脈管形成を調節する分子経路に関与する因子および受容体も、変性網膜の状況で潜在的に神経栄養性であり得る。また、これらの経路の活性化または阻害は、有利に、または望まれない副作用として、AMDを含めた一連の網膜状態において重要となり得る。
【0212】
図33Aに示したすべての遺伝子は、少なくとも10倍、RPEと比較して上方制御された。100倍超上方制御された遺伝子には、VEGF受容体KDR、コンドロモジュリン/LECT1(低酸素条件のみ)、転写因子PROX1、および受容体TEK(TIE2)が含まれた。RPEと比べて発現が最高であった因子は、プレイオトロフィン(PTN)であり、低酸素hRPCについて10,000倍超であり、正常酸素細胞について10,000倍に近かった。
【0213】
新脈管形成関連遺伝子の発現の増大の明らかな証拠、および高レベルのPTN発現の追加の確認、上位栄養因子候補遺伝子の1つが検出された。ともに以前のスクリーニングで同定された表面マーカーKDRおよびTEKの発現の上昇もここで確認された。VEGF受容体KDRは、他の細胞型に対してRPCにおいて上昇することが一貫して見出された。マイクロアレイデータも、hBPC(脳前駆細胞)より80倍hRPCにおいて、かつBPCより106倍ブタRPCにおいてKDR発現を示した。したがって、KDRは、RPCの同定および富化に潜在的に有用な表面マーカーであり、RPCをBPC(神経幹細胞)と区別する方法であり、RPCの機能に重要でありそうなものである。
【0214】
WNT経路は、神経細胞およびグリアの分化を含めて、CNS全体にわたって、かつ網膜を含めて、神経発達に重要であると考えられている。ゲノム試験により、WNT、「フリズルド(frizzled)」受容体、およびWIF(WNT阻害因子)を含めたWNT関連遺伝子の遺伝子発現レベルに基づいてhRPCにおけるWNT経路活性のかなりの証拠が以前に特定されている。図33Bでは、示したすべての遺伝子が、少なくとも10倍、RPEと比較して上方制御された。100倍超上方制御された遺伝子には、FRZB、SFRP4(正常酸素)、TLE2(低酸素のみ)、およびWNT7B(正常酸素)が含まれた。SFRP4(低酸素)およびWNT7B(低酸素)はともに、1000超のレベルで上方制御された。10,000倍の変化にかろうじて到達したのは、約10,000倍の発現の変化を示したWIF1(低酸素のみ)であった。
【0215】
要約すると、WNT阻害遺伝子の顕著な発現を含めたWNT経路遺伝子発現の明らかな証拠が、マイクロアレイ分析によって観察された。前のマイクロアレイデータは、WIF1は、hBPC(脳)より45倍hRPCによって優先的に発現されることをすでに示していた。SFRP4および特にWIF1(これらの両方は、FRZB活性化から生じ得る)の顕著な上方制御は、低酸素条件下で増殖したhRPCに特徴的であるようである。これは、hRPCが未成熟状態をより良好に維持し、低酸素条件下で長期間増殖し、それによって、成長することが困難なこれらの細胞の収率を大いに増大させる、hRPCの能力に関係する。上記に提示したqPCRデータは、マイクロアレイから得た前の結果と有意義に交差する。これらは、LIFは、hBPC(脳)より65倍、HB-EGFは30倍、DKK1(dickkopf 1)は23倍、オステオポンチン(SPP1、OPN)は6倍、TGF β1およびBMP2は5倍、かつJAG1は3倍、hRPCにおいて優先的に発現されることを示した。これらの遺伝子のそれぞれは、KDRが、さらにより大きい程度に(80倍)寄与するように、またWIF(45倍)が寄与するように、類似の脳幹細胞/前駆細胞(神経幹細胞)と比べてhRPCの組成/素性に寄与する。
【0216】
マイクロアレイデータからの主(principle)成分分析(PCA)データは、全体的な遺伝子発現パターンに基づいて細胞集団(治療的、非治療的/対照)を区別する能力を示す。これは、試料がどの程度密接に関係しているか、および世代(培養中の時間)および培養条件(正常酸素対低酸素)が発現パターンに影響する程度を示すことによって、hRPCの特徴付けにも関係する。
【0217】
3対の胎児の眼(生物学的な複製物)を同日に入手し、0日目にRNAを供給し(網膜組織)、RPC(正常酸素および低酸素)、ならびに強膜線維芽細胞を増殖させるのにも使用した。RNAを培養細胞集団から後に抽出し、すべてを同時マイクロアレイ分析に送った。
【0218】
図34Aは、PCAデータを表し、これは、培養RPCは、これらが由来した胎児網膜組織と遺伝子発現が異なるが、強膜線維芽細胞とも遺伝子発現が異なることを明確に示す。RPCは、線維芽細胞がそうであるよりも、胎児網膜により近い。さらに、正常酸素および低酸素RPCは、区別することができるが、これらは、一端でより若い細胞および他端でより古い細胞を伴った連続体を形成するようである。図34Bでは、hRPCは、起源のP0網膜組織と明確に区別されている。
【0219】
培養中の時間の影響は、最古の細胞(低酸素症WCB)が他のより若い試料から区別され得るという点で明白である。正常酸素条件と低酸素条件との差異は、強い分離を示していない。
【0220】
hRPCが起源の組織(胎児網膜)とどの程度異なり、肉眼的に障害を受けた危険な腫瘍形成性類似体、すなわち、網膜芽細胞腫(RB)とどの程度異なるかを含めて、他の細胞型と比べてhRPCの組成を特徴付けるために、全ゲノムマイクロアレイ試験を行なった。また、正常酸素hRPC培養物と低酸素hRPC培養物との間の類似性および差異を表すための試験を行なった。細胞集団の全体的な遺伝子発現をAffymetrixヒト遺伝子チップで比較した。
【0221】
主成分分析(PCA)は、細胞試料集団間の全体的な類似性および差異を即時に3次元で視覚化するものである。図34Cを参照。同様の試料(全て同じ色、三つ組のすべて)を一緒に分類することにより、データの信頼性が実証される。胎児網膜組織(「網膜」)間の明らかな分離が、4つの異なるhRPC試料と比較して認められた。RPCは、各処理条件の間で幾分異なったが、試験した他の眼の細胞型、すなわち、胎児RPE、胎児FB、およびRBと分別する。神経網膜および神経網膜由来細胞(左)を非神経網膜細胞(右上)と分離するのに線を引くことができる。最後に、正常酸素および低酸素hRPCは、互いに相対的に近いが、これらをある程度区別することが可能であり得、これらは、密接に関係しているようである。示したデータは、これらの異なる細胞型の相対的な類似性/差異に関する前のデータと一致する。図35は、3つのhRPC集団(順番に:低酸素MCB、正常酸素MCB、低酸素WCB)対胎児網膜組織(各集団に使用した三つ組)のクラスター分析を示す。図35は、低酸素MCBと組織との間の比較実験結果を示すボルケーノプロットである。データは、hRPC集団が、元の組織集団と区別可能であることを示す。ほとんど例外なく、組織で赤色として認められる遺伝子(右列)は、RPCで緑色であり、逆の場合も同様である。
【0222】
図37Aは、hRPC群間で異なって発現された遺伝子の数を処理条件の関数として示す(胎児網膜組織をコンパレーターとして使用した)。差異の大部分は、組織に対する変化によって占められ(11、706、中心、灰色)、これらは、RPC集団の中で共有され、その一方で個々が重なり、差異が図の周辺で認められる。各hRPC集団は、約1300~2100の間の別個の遺伝子を発現する。hRPC群間で異なって発現された遺伝子の数を、継代および処理条件の関数として測定した。図37Bを参照。正常酸素条件下で増殖させた細胞も比較した。低酸素MCBは、正常酸素MCB(同じ継代数)と、後の継代数におけるものである低酸素WCBが異なるほど異なっていない。したがって、培養中の時間は、hRPCにおける遺伝子発現に対して実証できる影響を確かに有するが、これは、細胞型間、またはhRPCと起源の組織との間よりはるかに低い。
【0223】
図38Aおよび図38Bは、異なるhRPC対起源の組織を示すボルケーノプロットであり、一方、図39Aおよび図39B中のボルケーノプロットは、低酸素hRPC対正常酸素hRPCを示す。「ボルケーノ」は、倍率変化(上または下、X軸)および統計的有意性(p値の関数、Y軸)に対してプロットされた、各遺伝子をデータ点として示すプロットのスタイルを表し、いくつの遺伝子が、どの程度およびどの方向に(上対下)変化しているかの概要をもたらす。結果は、より多数の遺伝子が、hRPC条件間より、組織からhRPCに進んで一貫して変化することを示す。前者では、おそらく、組織中に存在するより多くの分化細胞型が、より多くの原始的な増殖性の型によって培養中に失われ、または異常増殖するために、より多くの遺伝子が上方制御されるより下方制御される。しかし、低酸素と正常酸素を比較すると、より多くの遺伝子が、正常酸素に対して低酸素条件において上方制御される。
【0224】
特定の遺伝子および経路をマイクロアレイ分析によって同様に検査した。hRPC、胎児網膜組織(0日目)、およびヒト胎児線維芽細胞(正常酸素)を比較した。アドレノメデュリンは、組織に対してhRPCで上方制御された。プレイオトロフィンは、組織およびhFBに対してhRPCで上方制御されることが判明した。オステオポンチンは、hFBに対してhRPCで上方制御された。新脈管形成経路も上方制御されることが判明した。アンジオポエチンは一般に、組織に対してhRPCで上昇し、hFBにおいてより低い程度に上昇した。ANGPTL4は、組織に対してhRPCで30~60倍上方制御され、hFBに対して約20倍上方制御される。BAI3(阻害剤)は、組織に対してhRPCで約30分の1に減少して下方制御される。トロンボスポンジン1は、組織に対してhRPCで約100倍上方制御され、一方トロンボスポンジン2は、組織に対してhRPCで約40倍上方制御される。マトリックスメタロペプチダーゼ1は、組織に対してhRPCで約200倍上方制御される。接着分子NCAN(ニューロカン)は、組織に対してhRPCで16~21分の1に下方制御される。発がん遺伝子/増殖関連遺伝子MYC、MYCN、およびNBL1も測定した。MYCは、組織に対してhRPCで8~9倍上方制御され、hRPCの増殖と一致する。MYCN(v-myc関連、神経芽細胞腫)は、組織に対してhRPCで25~40分の1に下方制御される。NBL1は、3~4分の1に下方制御される。ATP合成酵素Hトランスポーターおよび溶質キャリアファミリー25を含めた広範囲のミトコンドリア/代謝関連遺伝子は、すべて一般に、組織に対してhRPCで2~4倍上方制御されたが、SLC25A27(メンバー27)は、約20分の1に下方制御された。これらのデータは、培養hRPCは、起源の胎児網膜組織における細胞より代謝的に活性で、増殖性であるという概念と一致する。
【0225】
増殖因子発現も検査した。CTGF(結合組織増殖因子)は、組織に対してhRPCで強く(70倍超)上方制御される。LIF(白血病抑制因子)は組織に対してhRPCで同様に上方制御される。BDNFおよびEGFは、組織に対してhRPCで中程度に(2~14倍)上方制御される。CNTFは、組織に対してhRPCで約25分の1に下方制御される。前の試験に基づいて候補栄養因子であるFGF9は、hFBに対してhRPCで上方制御された(4~6倍)が、組織に対して14~25分の1に減少することが確認される。FGF5は、組織と比較してhRPCで最も強く上方制御される(20~40倍)ファミリーメンバーであるが、発現は、hFBに対してより低い。FGF14は、組織に対して16~38分の1に、最も下方制御される。HGF(肝細胞成長因子)は、hFBに対して30分の1に下方制御される。インスリン様成長因子結合タンパク質ファミリーのメンバー、すなわち、IGFBP3、-5、および-7は、一般に、組織に対してhRPCで上方制御される。メンバー3、5、7はすべて、強く上方制御される(15~110倍)。IGFBP3および5は、特に低酸素細胞(MCB、WCB)で最も強く上方制御される。候補因子のNTF3は、組織に対して上昇しなかったが、hFBに対して正常酸素hRPCで8倍上昇した。NTRK2(神経栄養性チロシンキナーゼ、受容体、2型)は、組織に対して低酸素hRPCで中程度に上方制御され、hFBに対してすべてのhRPCで強く上方制御された(50~180倍)。別の候補栄養因子のPDGFC(血小板由来増殖因子C)は、組織に対して20倍上方制御された。VEGFA(VEGF A)は、低酸素hRPCによって中程度に上方制御された。DACH1は、hFBに対して中程度により高かったが、組織に対してhRPCで強く下方制御された。DLG2(シナプスマーカー)も、組織に対してhRPCで強く下方制御された。KLFファミリーメンバーは、hFBに対してKLF4の下方制御(3~4倍)、組織に対してKLF5の上方制御(4~5倍)を示した。
【0226】
NeuroD1(分化に関連した転写因子)は、NeuroD4ならびにニューロゲニン1(および2)、ならびにニューロナチン(2~10分の1)が下方制御されたのと同様に、組織に対して非常に強く下方制御された(300分の1未満)。発生運命特定関連因子のNOG(ノギン)は、組織に対してhRPCによって強く発現される(10~21倍)。OTX2(眼の転写因子)は、組織に対してhRPCで非常に強く下方制御された。PAX6、SIX3、SIX6、RAX、RAX2(眼の転写因子)は、組織に対してhRPCで中程度にのみ下方制御された。PAX6は、少なくともいくつかのRPCによって発現されることが少なくとも公知である。
【0227】
DCX(有糸分裂後神経芽細胞マーカー)および遊走性神経芽細胞マーカーのRELN(リーリン)は、組織に対して強く下方制御された(後者は低酸素hRCで)。重要な神経発生転写因子のSOX2は、組織に対して変化しなかったが、hFBに対してhRPCで非常に強く上方制御された(100倍超)。成体網膜シナプスマーカーのバスーン(basoon)およびリカバリン(成体網膜細胞マーカー)は、組織に対して強く、または非常に強く下方制御された(それぞれ、20分の1および50~450分の1)。
【0228】
表面糖タンパク質のCD44は、組織に対してhRPCで6倍上方制御された。CCL2ケモカイン(MCP-1)は、組織に対してhRPCで強く上方制御された(68~105倍)。CXCL12(SDF-1)は、(非特異的な)hRPC表面マーカーCXCR4のリガンドである。SDF-1は、hFBと比較して下方制御され、したがって発現は低い(ELISAから分かるように)が、これは、組織に対してhRPCで4~12倍上昇する。CXCR4は、hRPCの表面マーカーであり、hFBに対してhRPCで明らかに上方制御された。組織との比較は、正常酸素MCBが、組織より低かったが、低酸素細胞は同様であったという点で重要であった。これにより、両hRPC条件によりCXCR4が発現され、低酸素でより多く発現し、網膜組織は低酸素細胞と同様であることが確認される。
【0229】
IL-11およびIL-18は、組織に対して上方制御された。IL-1A(IL-1α)は、組織に対して上方制御されたが、低酸素MCBでは「上方制御されなかった」。いくつかのIL受容体、最も顕著にはIL-7R(60~105倍)、IL-31RA(28~80倍)、およびIL-4R(18~40倍)は、組織に対して上方制御された。これらはすべて、起源の組織に対してhRPCの潜在的な陽性マーカーを代表する。
【0230】
組織に対して上方制御されたWNT経路遺伝子には、WNT7B、およびSFRP4を含めて、qPCRによって以前に同定されたいくつかが含まれていた。DKK2、FZD6、SFRP1、WNT5Aも組織に対してhRPCで上方制御された。WIF1は、hFBに対して強く上方制御された(低酸素について)が、組織に対して強く下方制御された(正常酸素について)。Notch経路遺伝子は、Jag1を除いて、組織に対して下方制御され、または変化しなかった。Jag1は、候補hRPC栄養マーカーであり、上方制御された(8~13倍)。DLL4およびHEYLが最も強く下方制御された。
【0231】
JAK-STAT遺伝子は、FBに対して低酸素について変化しなかったSTAT3を除いて、hFBに対して中程度であるが均一に下方制御された(2~5分の1)。これらは、組織に対して変化しなかった。アポトーシス遺伝子は、混ざったもの(mixed)であった。組織に対して最も上昇されたのは、GADD45Bであった。GADD45GおよびDAPL1は、より顕著に下方制御された(20~56分の1)。BMP2(候補)は、hFBに対して上方制御されたが、組織に対して変化は認められなかった。他のBMPは一般に、FBに対して減少し、やはり組織に対して変化しなかった。TGFβ遺伝子は、全体にわたって変化しなかった。
【0232】
HIF1A(HIF1α)は、組織に対して中程度に減少した(4分の1)。ニューロピリン1および特に2は、増大するようである(低酸素MCBを除く)。RICTORは、組織に対して中程度に減少した(2分の1)。トール様受容体3~7、および9は、組織に対して変化しなかった。DCXは、いくつかの他の神経マーカーがより低い程度に下方制御されたのと同様に、組織に対して強く下方制御され、NRXN1(ニューレキシン1、25分の1未満)が次に最も下方制御された。GFAPは、hFBに対して明らかに上方制御され、胎児網膜組織に対してそれほど明らかでなく上方制御された。多数の網膜関連遺伝子は、起源の胎児網膜組織に対してhRPCによって強く下方制御される。これらには、CRX、EYS、IMPG1、2;NRL、リカバリン、RGR、RP1、およびVSX1、2が含まれる。検査した98の低分子非コードRNA(SNORD)のうちで、114~6、49B、75、および78を除いて、場合によって大量に、ほとんどすべてが組織に対して下方制御され、114~2、44、49A、74、79、96Aは、示唆的であるが、条件間で幾分矛盾していた。とにかく、上方制御は、高レベルまでではなかった。
【0233】
要約すると、データは、CTGFがhRPCマーカーであり、治療有効性の基礎をなす栄養機構を判定するのに有用となり得ることを示す。他のこのようなマーカーとしては、SPP1(OPN)、PTN、LIF、FGF9、JAG1、IL-1A、IL-11、IL-18、およびノギンが挙げられる。NTRK2ニューロトロフィン受容体は、インターロイキン受容体IL7R、IL-31RA、およびIL-4Rがそうであるように、hRPC表面マーカーである。特に、HGFは、hRPCについての、または代わりに汚染細胞型を検出するための方法における陰性マーカーとしての潜在性を有するようである。眼の転写因子DACH1、OTX2、CRX、NRL、VSX1、2、ならびに分化転写因子NeuroD1(および4)、有糸分裂後芽細胞マーカーダブルコルチン(DCX)、シナプスマーカーDLG2、多くのnotch経路遺伝子、ニューレキシン1、ならびに成体網膜マーカーリカバリン、ならびに光受容体間マトリックス遺伝子IMPG1、2の下方制御も、培養hRPCを起源の組織と区別するのに有用である。これらのマーカーを発現する細胞は、より特定されており、成熟しており、あまり増殖性でなく、したがって増殖性hRPC培養物におけるものよりはるかに少ない。CPA4は、高度に上方制御され、一方、PAR4および多くのSNORDは、下方制御される。
【0234】
同様のデータをネコRPCについて得た。図40において、経時的に細胞培養条件を試験する実験の表形式の概要を示す。図41~44は、様々なタイムポイントで、UL培地でqPCRによってネコRPCにおける遺伝子発現を測定する実験の結果を示す。特に、UL培地で、試験したマーカーは下方制御され、前駆細胞マーカーネスチンおよびビメンチンは、0日目のベースラインに対して発現の上昇を示した。サイクリンD2は、0日目のベースライン後のタイムポイントで、UL中で上昇した。ネコcRPCについて試験したプロファイル内の発現の変化のパターンを、図45に放射状グラフとして提示する。高コピー数を有する遺伝子は、グラフの中心に向かっており、一方、より低い発現を有する遺伝子は、周辺にある。前駆細胞マーカーは、12時のネスチンから時計回りに(放射状グラフ上で)約6:30のビメンチンまで列挙されている。系列マーカーも示されている。発現は、0日目(紺青色)でマーカー全体にわたって最も高く、すべてではないがいくつかのマーカーについて、経時的に減少する傾向があることに留意されたい。発現の最大の減少は、0日目から測定した培養中の最初のタイムポイント(31日目)までに起こるようである。発現の減少は、系列マーカーおよび前駆細胞マーカーの両方のサブセットにおいて認められる。ネコRPCの発現データを要約するチャートを、異なるドナーおよび培養条件にわたるqPCRデータを表す図46に提示する。
【0235】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を、hRPCおよび潜在的な作用機序(すなわち、神経保護)を特徴付ける目的で実施した。これらの試験は、マルチプレックスアッセイまたはサンドイッチELISAによって実施した。マルチプレックスELISAアッセイについては、アッセイ緩衝液を96ウェルフィルタープレートに添加し、プレートをシェーカー上に10分間置いた。次いでプレートを真空によってきれいにし、アッセイ緩衝液または他の適切な緩衝液25μlを各ウェルに添加し、標準物質/試料/対照25μlを適切なウェルに添加した。次いで、ビーズにコンジュゲートされた、要求されたサイトカインを含有する混合物25μl(1:50の希釈)を添加した。次いでプレートを4℃で一晩シェーカー上に置いた。次いでプレートを3回洗浄した。検出抗体を添加し、プレートを室温で1時間シェーカー上に置いた。次いでフィコエリトリン25μl(1:25希釈)をシェーカー上の各ウェルに30分間にわたって添加した。次いでプレートを3回洗浄し、シース液(Sheath Fluid)150μlを各ウェルに添加した。次いでLuminex100リーダーおよびSoftmax Proソフトウェアを使用してプレートを読み取った。MilliporeのBeadLyte Softwareを使用してデータを計算した。
【0236】
サンドイッチELISAについては、ビオチン-ストレプトアビジン(strepavidin)-ペルオキシダーゼ検出を使用する2抗体ELISAによってマーカーを測定した。捕捉抗体で、25℃で一晩ポリスチレンプレートを被覆した。プレートを、50mMのTris、0.2%のTween-20、pH7.0~7.5で4回洗浄し、次いでアッセイ緩衝液を用いて25℃で90分間ブロッキングした。プレートを4回洗浄し、アッセイ緩衝液50μlを、アッセイ緩衝液で調製した試料または標準物質50μlとともに各ウェルに添加した。次いでプレートを37℃で2時間インキュベートした。プレートを4回洗浄し、アッセイ緩衝液中のビオチン化検出抗体100μlを添加し、25℃で1時間インキュベートした。プレートを4回洗浄した後、カゼイン緩衝液中のストレプトアビジン-ペルオキシダーゼポリマー(RDI)を添加し、25℃で30分間インキュベートした。プレートを4回洗浄し、商業的に調製された基質(TMB;Neogen)100μlを添加し、25℃で約10~30分間インキュベートした。2NのHCl 100μlで反応を停止し、A450(-A650)をマイクロプレートリーダー(Molecular Dynamics)で読み取った。コンピュータープログラム(SoftPro;Molecular Dynamics)を使用して標準物質に対して曲線をフィッティングし、各試料中のサイトカイン濃度を検量線式から計算した。データは、平均した試料からのタンパク質分泌を反映する。5つの候補栄養因子GDNF、BDNF、VEGF、OPN、およびSDF-1の発現を、標準的な正常酸素(20%のO)および低酸素(3%のO)条件下で評価した。
【0237】
図47において、GDNF発現は、分泌タンパク質のレベルで検出不可能(0.1ピコグラム/ml未満)であることが判明した。BDNF発現は、低い側の範囲外(OOR)であったが、正常酸素条件について1.58pg/mlおよび低酸素条件について0.55pg/mlの平均濃度でかろうじて検出可能であった。VEGFは、正常酸素(20%のO)条件について低い側のOORであったが、92pg/mlの平均濃度で低酸素(3%のO)について検出可能であった。OPN(オステオポンチン、SPP1)発現は、両条件下で強く陽性であり(ピコグラムの代わりにナノグラムの範囲)、低酸素に対して正常酸素について約2倍であった(平均=それぞれ31.3ng/mlに対して72.2ng/ml)。これらは、両例において注目すべきレベルであり、この公知の神経保護/抗アポトーシス因子の役割を示唆する。SDF-1(間質細胞由来因子1)は、低い側のOORであったが、正常酸素培養および低酸素培養の両方について約48pg/mlの平均濃度で検出可能であった。
【0238】
オステオポンチン(OPN、SPP1)は、hRPCによって高度に発現され、生理学的に有意な濃度であると予測される濃度で周囲の培地中に分泌される。他の発現データは、他の細胞型に対してこの遺伝子の差次的発現を示した。総合すると、これらのデータは、OPNがhRPCの神経保護/錐体再活性化効果に役割を果たし得ることを示唆する。試験した他の因子は、このような役割を果たす可能性は低い(これらが、硝子体/変性網膜の微小環境に応答して移植後に大規模に上方制御されることが起こらない限り、これは可能性が低い)。
【0239】
hRPCを特徴付け、集団内のマーカー発現の程度を明らかにするために蛍光活性化細胞分取を実施した。培養細胞または解離した網膜単細胞を、コンジュゲートされた表面抗体マーカー/アイソタイプ対照(BD)によって染色するか、または固定および透過処理し、その後、コンジュゲートされた細胞内抗体マーカー/アイソタイプ対照(BD)染色するかのいずれかを室温で30分間行う。染色緩衝液(BD)中で3回洗浄した後、細胞をBD Aria II Sorterにかけた。データを、マイクロアレイ試験に使用した同じ3つの同時に供与された胎児の眼から得た。
【0240】
図48は、正常酸素(20%)条件または低酸素(3%)条件下で増殖させた培養hRPCと比較した、0日目の網膜組織における系列に関連した、または潜在的に関連した表面マーカーもしくは遺伝子マーカーのいずれかである10種のマーカーの発現を示す。データは、起源の網膜組織と培養RPCとの差異、Fas(CD95)の大きな増加を伴った、MHCクラスIIではなく、特にMHCクラスIの大規模な上方制御を示す。GFAPは、低いがより少ない程度に増加する。他のマーカーは、様々な程度で変化する。
【0241】
(実施例3)
RPCのIn vivo効力
RPCを、TrypLE Expressを用いて最初に回収し、1000rpmで5分間遠心分離して収集することによって移植用に調製した。細胞をHBSS中で1回洗浄し、次いで冷HBSS中で再懸濁して細胞生存能および細胞数を求めた。ヒトへの移植のために、HBSS 100μl中0.5×10細胞を使用した。ラットへの移植のために、HBSS 2μl中4000~75,000細胞の範囲の様々な用量を使用した。
【0242】
ヒトRPCを、ジストロフィーを罹患した(hooded)RCSラットの硝子体または網膜下腔に懸濁物として移植した。異種移植片の拒絶反応を回避するために、ラットをシクロスポリンAおよびステロイドで維持した。ビヒクル単独からなるシャム(sham)注射(網膜下、硝子体内)を対照の眼に投与した。視運動反応(OR)を定量化するために設計された市販器具を使用して、移植された動物を拘束のない覚醒状態で機能的に試験した。動物のサブセットを視野全体にわたる輝度閾値について試験した。これは、対側性の上丘において細胞外記録法を介して電気生理によって行った。試験の最後に眼を収集し、固定し、宿主光受容体救済およびドナー細胞生存の証拠について組織学的に分析した。
【0243】
図49は、in vivo移植で使用する本発明の方法の概念実証を例示する。hRPC(またはビヒクル単独、「シャム」)をジストロフィーRCSラット(遺伝性光受容体変性のモデル)の眼に注射した。注射は、硝子体または網膜下腔のいずれかに行った。いずれかの位置にhRPC移植片を有する動物は、生後60日で、シャムまたは未処置対照より有意に良好に行動した。そのタイムポイントの組織診断では、広範囲の救済が示され、これは、網膜下注射の領域に位置し(図50~51)、または硝子体内移植の場合では網膜全体に広がっていた(図52~53)。対側性の上丘における電気生理学的記録を使用して、視野全体にわたる生後90日の輝度閾値について、いくつかの場合をさらに検査した。移植片を有する動物は、シャムまたは未処置対照と比較して、感度の有意な改善を呈した。90日における組織診断により、宿主光受容体の持続的な高レベルの救済が示された。図54~55は、RCS全標本に実施した免疫細胞化学検査の結果を示す。
【0244】
in vivoデータにより、hRPC移植が、ラットモデルにおいて機能的および解剖学的レベルで成功していることが確認および実証される。このデータは、ある特定の状況では、硝子体内注射は、救済される宿主網膜の程度に関して、網膜下移植に対して利点を有し得ることも示す。RPCはまた、網膜下に配置される場合、たとえより制限された様式であっても有効である(救済のこのような制限は、様々な研究者が全部ではないがほとんどの非悪性細胞を使用した網膜下配置にも当てはまる)。
【0245】
(実施例4)
患者におけるhRPC移植の臨床試験
予備安全性データを得るための、網膜疾患を有する患者におけるRPCの眼内注射の前向き、非盲検、実施可能性試験を実施した。細胞および組織を安全性について最初に評価した後、臨床試験を開始した。組織は、Advanced Bioscience Resources,Inc.(ABR)から供給された。この会社は、この技術に基づいてCGMPマスターセルバンクを確立する基礎を形成することが期待されるGTPレベルの組織試料を提供することもできる。外来性物質(例えば、HIV、B型肝炎およびC型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス)への曝露についてのドナー試料の病理検査および血液試験を実施し、エンドトキシン、マイコプラズマ、および真菌についての試験、例えば、エンドトキシン検出のためのカブトガニアメーバ様細胞溶解物(LAL)試験(動的比濁法)、および真菌汚染の検出のためのFungitell動的色素法(kinetic chromogenic method)、または直接接種(inobulation)による最終容器滅菌性試験(final container sterility test)を培養ドナー試料に対して実施した。細胞培養培地は、LookOutマイコプラズマPCR検出キット(Sigma)またはMycoAlertマイコプラズマ検出キット(Lonza)を使用して、本発明者らの研究所またはマイコプラズマコアサービスで収集および測定した。培養ドナー試料は、腫瘍形成能について試験するために軟寒天アッセイにもかけた。異なる供与物および異なるタイムポイントからの0.2×10細胞または1.0×10細胞の細胞懸濁物を、0.35%の寒天を含有する増殖培地中に播種し、次いで0.7%の寒天ゲル上においた。28日間インキュベートした後、コロニーを0.005%のクリスタルバイオレットで染色し、陽性および陰性対照と比べて増殖についてスコアを付けた。移植用の細胞は、テロメラーゼ活性についての試験にもかけた。培養における異なる供与物および異なるタイムポイントからの細胞タンパク質1マイクログラムを、製造者の指示に従って、TITANIUM Taq DNA Polymerase(BD Clontech)とともにTRAPEZE RT Telomerase Detection Kit(Chemicon)を使用して試験した。さらに、細胞は、いずれの異常の存在についても検出するために第三者企業によって核型決定された。その理由は、これらの異常の存在が培養前駆細胞の自発的不死化およびがん性挙動を示し得るためである。最後に、細胞生存能および細胞数を、トリパンブルー(Invitrogen)染色によって、Countess自動細胞計数器(Invitrogen)によって、または血球計数器(Fisher Scientific)を使用して手作業で計数して求めた。
【0246】
臨床検査室の結果は、ドナーからの血液試料は、致死性ウイルスおよび他の外来性物質に対して陰性であることを示した。移植用細胞は、エンドトキシン、マイコプラズマ、および真菌感染に対しても同様に陰性であった。さらに、移植用に調製した細胞は、軟寒天中でコロニーを形成せず、これらが腫瘍形成能を欠いていることを示した。核型分析も実施して、培養hRPC(確立したFDAの評価の高い供給業者のCell Line Geneticsに外注した)の臨床的安全性を保証した。核型決定によっても異常はまったく現れなかった。細胞生存能および細胞数に関して、回収した細胞を、様々な長さの時間にわたって、インキュベーターの外の氷上で移植培地中に放置した。サブセットも27gの皮下針によって排出して、生存に対するその効果を評価した。皮下組織を通じた排除では、検出可能な効果がなかった。予想される実際の手順時間は、1時間未満である。インキュベーターの外での生存は、2.5時間で認め得るほどに低下し始めたが、3.5時間まで90%超(許容される)残った。これにより、臨床移植手順には、ドナー細胞生存に対する重大な効果がないことが示唆された。
【0247】
移植用に調製した細胞は、低いまたは中等度であるが高いレベルでないレベルのテロメラーゼ活性を呈する。テロメラーゼ活性は一般に、有効に不死であるはずであり、無期限に伝達されるはずである生殖系列の細胞を含むある特定の細胞内を除いて、初期胚発生を越えた哺乳動物細胞内で下方制御される。テロメラーゼ活性の通常の喪失は、生物の寿命の制限に関連するが、腫瘍形成能の低い確率も示唆する。テロメラーゼ活性の増大は、哺乳動物がん細胞、および多能性幹細胞、および培養中の不死化されたヒト細胞において認められる。悪性活性との強い関連は、これが、テロメラーゼレベルが上昇した移植細胞にとって潜在的に危険であることを意味する。安全性試験は、移植用細胞を調製するための条件が、97日までの培養中の一連のタイムポイントにわたって(すなわち、現在の使用可能な限界を越えて)、テロメラーゼ活性の上昇を誘導しないことを示す。実際に、テロメラーゼ活性は、経時的に低下する傾向があり、それは発達「老化」と一致する。言い換えれば、細胞は、最終的に老化状態になり、増殖する能力を失う。
【0248】
適格患者に細胞を片側性に与えた。適格性は、重度の末期の網膜もしくは視神経疾患、補正レンズを使用して20/200以下の芳しくない残留中心視力、および/または陰鬱な視覚予後のいずれか1つを有する患者を選択することによって判定した。患者はまた、立体眼底撮影を可能にするような適切な瞳孔拡張および透明な中間透光体、21mmHg以下の眼内圧、ならびに広い前房隅角を有していなければならない。患者は、狭い前房隅角、前房癒着または新生血管形成、閉塞隅角緑内障の履歴や、処置、眼底検査、視力の測定、毒性の一般的な評価の間に観察を妨げる著しい既存の中間透光体混濁(media opacity)、試験に入る前の3カ月以内の同じ眼における任意の眼内手術;血管造影に使用されるフルオレセイン色素に対する公知の深刻なアレルギーを有すること;重度の心疾患(NYHA機能クラスIIIまたはIV)、6カ月以内の心筋梗塞、または処置の継続を必要とする心室頻拍性不整脈、または不安定狭心症の前歴または証拠を呈した場合除外した。
【0249】
網膜疾患(すなわち、網膜色素変性症)、および視覚の改善の予後不良とともに20/200以下の視力を有する3人の法律上失明している患者を選択した。登録した患者は、46~57の年齢の範囲であり、二人が女性であり、一人が男性であり、彼らのすべてがRPの診断を伴った。二人はIOLを有し、一人は白内障を有していた。
【0250】
早期継代胎児ヒト網膜前駆細胞を転写物およびタンパク質発現プロファイルによって特徴付け、正常核型について試験した。細胞はまた、真菌、細菌(エンドトキシン)、マイコプラズマに対して陰性であった。組織は、外来性ウイルスについてもスクリーニングし、HIV1およびHIV2抗体、B型肝炎抗原、C型肝炎抗体、梅毒、単純ヘルペスウイルスIgM抗体、ウエストナイルウイルスTMA:シングレット、およびEBV IgM VCA抗体に対して陰性であることが判明した。細胞懸濁物100μlの用量(これは、眼に約50万細胞を送達した)での硝子体内の(intravitral)ボーラス注射用に細胞を調製した。
【0251】
0日目の前に3日間、患者は、家で、局所的抗生物質滴下で自己処置した。0日目に、患者を、眼底写真撮影を含むベースライン臨床検査にかけた。眼を洗浄し、局所的に抗生物質を投与し、次いで瞳孔を拡大させ、局所麻酔薬(anesthesic )滴下を施した。覚醒した、鎮静剤を投与されていない患者に、滅菌手術条件下で外科用顕微鏡によって直接視覚化した下で、セルフシール入口通路を作り、移植片の逆流を回避するために標準的な斜め侵入手法を使用して、硝子体腔内に「外科的輪部」のレベルで眼球の壁を通じて細胞を1回注射した。眼内圧の医原性上昇を防止するために前房穿刺を実施した。免疫抑制療法、縫合や創傷閉鎖手順は必要としなかった。注射後の抗生物質をその後投与し、眼内圧を慎重にモニターした。すべての患者を同伴者とともに同日に解放し、入院の必要はなかった。黄斑上に細胞が大量に集合するのを回避するために、注射後に少なくとも45度で少なくとも2時間、頭を上げた状態に保つように患者にアドバイスした。病院から解放する前に、患者に、注射後2~3日間頭をわずかに上げて家で眠るように指示した。
【0252】
臨床経過観察を、処置後1日、3日、1週間、1カ月、2カ月、3カ月、6カ月、1年、および5年間毎年するように指定した。眼の有害事象の発生率および重症度を、眼底検査、最良矯正視力(BCVA)、IOP、細隙灯検査、蛍光眼底血管造影(FA)、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)、ステレオ眼底写真撮影、および錐体フリッカー網膜電図検査(electroetinography)(ERG)応答を含めた標準的な眼科検査技法によって特定した。
【0253】
すべての患者の経過観察の細隙灯検査により、移植片の細胞は、硝子体内で視覚化することができ、一部は凝固して鎖様構造になり、移植細胞が、眼に入り、そこに留まることが裏付けられ、硝子体配置により硝子体細胞の集合がもたらされることが明らかになった。特に、これにより、理論的に起こり得るような視線が遮光されること(眼から被験体の視界を遮断すること)に起因して視覚の改善は打ち消されなかった。
【0254】
経過観察のBスキャンを実施し、超音波デバイスにより術後4カ月における硝子体細胞を追跡した。結果は、眼内に腫瘍形成がないことおよび前方眼窩(眼の裏)内に腫瘍形成がないことを示す。移植片細胞の持続(および視覚改善の持続)は、移植細胞を受けた患者に慣例的な免疫抑制の必要がないことを示唆する。腫瘍、血管の合併症や網膜剥離の証拠は、検査でも眼底撮影によっても認められなかった。特に、手順に起因した視覚の喪失を経験した患者はなく、すべての患者で視覚の検出可能な改善が報告された。改善は、疾患の重症度に関係し、初期の視覚が悪いほど改善がより制限され、初期の視覚が良好であるほど改善はより大きく、より急速であった。ハンドモーションビジョン(hand motion vision)を有する一人の患者(002)は、4カ月目で再び視力検査表を見ることができた。別の患者(003)は、中心固視およびある程度の黄斑機能(これは、20/200より良好な視力を実現するのに必要とされる)を再獲得した。患者003は、視力検査表で「20文字」の視力の改善を実現した。これは、非常に大きく、有意な改善である。視覚の改善は維持され、視力の獲得は、少なくとも1.5年まで持続した。患者は、より良好な一般的な視覚機能および日常生活の活動の改善も報告した。
【0255】
患者間の傾向を比較するのに使用した視力試験の結果を図55に示す。いずれの目盛りも正確に線形ではない。視覚の急速な改善の証拠が、3例すべてで第1週以内に観察され、宿主網膜に対する臨床的に有意な栄養作用とほとんど一致した。また、生着および網膜細胞交換を含み得るさらなる改善への傾向が1カ月後に認められた。患者に伴ったいくつかの問題は、データの傾向におけるある特定の明らかな偏向に対応する。患者002(青色)は、術後の滴剤滴下に準拠せず、前部ブドウ膜炎を発症し、これは、標準的な術後薬物療法で急速に解決した。特に、彼女の長期間進展は、改善を示す。患者001(桃色)は、既存の白内障を有しており、これは、おそらく手技に起因して移植後最初の数カ月にわたって悪化し、彼女の視覚の二次的低下に関係した可能性がある(しかし視覚は初期レベルよりも改善された)。hRPCの移植に関連したIOPの異常は見い出されなかった(表1を参照)。
【表1】
【0256】
視野試験において、3人すべての患者は、末期網膜色素変性症に起因する黄斑機能の喪失に関連した芳しくない視力のために、処置前に中心固視を失っていた。患者003は、3日目に中心固視を再獲得し、自動視野試験を実施することができ、これにより、20DB感度を伴った小2度範囲(small 2-degree area)(正常)が明らかになった。この患者の視覚感度も、中心窩固視点(foveal fixation point)の鼻側の別の範囲で上昇した。この患者は、中心固視を再獲得したので、自動視野測定(HVF)を使用して彼の視野を試験することが可能であった。この試験は、彼が、中心窩領域内で小さいが高感度の視覚の島を再獲得していたことを示した。データは、この処置が、硝子体を通じて網膜に分布した移植細胞からの急速な栄養作用を伴い、残留する宿主の錐体に機能を回復させるようであるという概念を支持する。暗視の改善(複数の患者)およびERG性能の改善(患者003)の報告は、桿体光受容体機能の改善の役割も同様に支持する。これらの改善は、宿主網膜への機能的な細胞集積にも起因し得る。他の網膜検査、例えば、網膜トポグラフィー、RNFL、OCTなども実施した。腫瘍形成または免疫学的組織拒絶反応の証拠は認められなかった。
【0257】
要約すると、臨床試験におけるすべての患者は、処置により視力の改善を経験した。視覚の利益は、注射後、少なくとも20カ月間持続した。少なくとも一人の患者は、中心固視の復帰に特徴付けられる視野の改善を有した。免疫抑制をしなかったまたは免疫抑制薬の投与をしなかったにもかかわらず、術後合併症や免疫拒絶の証拠は観察されなかった。すべての臨床検査、すなわち、細隙灯、間接検眼鏡検査、眼および眼窩の超音波(Bスキャン)、ならびに眼底写真に基づいて、in vivoで有意なドナー細胞増殖は認められなかった。腫瘍形成は、最大少なくとも20カ月間、認められなかった。
【0258】
いくつかのバリエーションを上記で詳細に説明してきたが、他の改変または付加も可能である。特に、さらなる機能および/またはバリエーションを、本明細書に示したものに加えてもたらすことができる。例えば、上記に記載の実施は、開示した特徴の組合せおよびサブコンビネーションならびに/または上記に開示したいくつかのさらなる特徴の組合せおよびサブコンビネーションを対象とする場合がある。さらに、添付の図面に表し、かつ/または本明細書に記載したロジックフローは、望ましい結果を実現するのに、示した特定の順序または連続した順序を必要としない。他の実施形態も以下の特許請求の範囲の範囲内となり得る。
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