(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】コアシェル型マイクロニードル装置及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 9/00 20060101AFI20230224BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20230224BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230224BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230224BHJP
A61K 38/28 20060101ALI20230224BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230224BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230224BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230224BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20230224BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
A61K9/00
A61M37/00 505
A61M37/00 530
A61K45/00
A61P3/10
A61K38/28
A61K47/32
A61K47/24
A61K47/42
A61K47/59
A61K47/36
(21)【出願番号】P 2019529985
(86)(22)【出願日】2017-12-05
(86)【国際出願番号】 US2017064723
(87)【国際公開番号】W WO2018106696
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-10-22
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517366013
【氏名又は名称】ノース カロライナ ステート ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】NORTH CAROLINA STATE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】グ,チェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジンチャン
(72)【発明者】
【氏名】エ,ヤンチ
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/172320(WO,A1)
【文献】特表2018-513874(JP,A)
【文献】特表2010-540507(JP,A)
【文献】特表2005-526009(JP,A)
【文献】特表2016-517885(JP,A)
【文献】特表2011-508786(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0157764(US,A1)
【文献】国際公開第2014/113679(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/123492(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/085809(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/106697(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが基部及び先端部を有する複数のマイクロニードルと、
前記マイクロニードルの前記基部が取り付けられている基材と、を含む、マイクロニードルパッチであって、
前記マイクロニードルは、
第1の過酸化物感受性リンカーで架橋された第1のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第1のナノゲル内に封入された過酸化物除去酵素であって、前記第1のナノゲルは、前記第1のPVAポリマーに埋め込まれている、過酸化物除去酵素と、を含む、
シェルと、
第2の過酸化物感受性リンカーで架橋された第2のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第2のナノゲル内に封入されたグルコース応答性物質であって、前記第2のナノゲルは、前記第2のPVAポリマーに埋め込まれている、グルコース応答性物質と、
治療薬であって、前記治療薬は、第3の過酸化物感受性リンカーを用いて前記第2のPVAポリマーに共有結合している、治療薬と、を含む、
コアと、を含
み、
前記グルコース応答性物質は、高血糖レベルのグルコースへの曝露時に過酸化物を生成する、マイクロニードルパッチ。
【請求項2】
前記第1の過酸化物感受性リンカーは、ボロン酸エステルを含む、請求項1に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項3】
前記第1の過酸化物感受性リンカーは、N1-(4-ボロノベンジル)-N3-(4-ボロノフェニル)-N1,N1,N3,N3-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミニウム(TSPBA)である、請求項1又は2に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項4】
前記第2の過酸化物感受性リンカーは、ボロン酸エステルを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項5】
前記第2の過酸化物感受性リンカーは、N1-(4-ボロノベンジル)-N3-(4-ボロノフェニル)-N1,N1,N3,N3-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミニウム(TSPBA)である、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項6】
前記第3の過酸化物感受性リンカーは、ボロン酸エステルを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項7】
前記第3の過酸化物感受性リンカーは、炭酸=4-ニトロフェニル=(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(NBC)である、請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項8】
前記グルコース応答性物質は、グルコースオキシダーゼを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項9】
前記過酸化物除去酵素は、カタラーゼである、請求項1~8のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項10】
前記治療薬は、インスリンである、請求項1~9のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項11】
前記マイクロニードルは、ヒアルロン酸(HA)をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
【請求項12】
治療薬を被験体に送達する医薬製剤であって、請求項1~11のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチを含み、高血糖レベルのグルコースの存在下で前記マイクロニードルパッチから前記治療薬が放出される、前記医薬製剤。
【請求項13】
前記被験体は、糖尿病である、請求項12に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記過酸化物への曝露時に、前記第1の過酸化物感受性リンカーを前記第1のPVAポリマーから脱離する、請求項12~
13のいずれかに一項に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記過酸化物への曝露時に、前記第2の過酸化物感受性リンカーを前記第2のPVAポリマーから脱離する、請求項12~
14のいずれかに一項に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記過酸化物への曝露時に、前記第3の過酸化物感受性リンカーを前記第2のPVAポリマーから脱離する、請求項12~
15のいずれかに一項に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記第3の過酸化物感受性リンカーを前記第2のPVAポリマーから脱離することで、前記マイクロニードルパッチから前記治療薬を放出する、請求項
16に記載の医薬製剤。
【請求項18】
さらに血糖値を低下させる、請求項12~
17のいずれかに一項に記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記治療薬は、インスリンを含む、請求項12~
18のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項20】
低血糖症を引き起こす前に前記治療薬の放出が終了する、請求項12~
19のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2016年12月5日に出願された米国仮特許出願第62/430,260号の利益を主張し、その開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、治療薬(例えば、インスリン)の自己制御送達のために分解性架橋ゲルを用いる、疾患(例えば、糖尿病)を治療するためのマイクロニードル装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2016年に世界中で4億2200万人が罹患している慢性疾患である糖尿病は、内因的に産生されるインスリンの欠乏及び血糖値(BGL)の上昇を特徴とする。適切なコントロールがなされない場合、慢性的に上昇した血糖値は、手足切断、失明、腎不全及び心血管疾患につながる可能性がある。これらの糖尿病合併症を予防するために、インスリンの注射又は注入を用いる1型及び進行2型糖尿病の患者は、全般的に目標値に到達することができず、正常血糖を達成することを目的とする。しかしながら、オープンループの外因性インスリンの注射又は注入は、全般的に目標値を達成することができず、インスリンレベルが必要とされるレベルを超えるとき、低血糖のさらなるリスクを伴い、これらの低血糖エピソードは、重症となり、さらに致命的になり得る。したがって、正常血糖において基礎インスリン放出動態を維持しながら、BGLの上昇に応答して望ましい量のインスリンをインテリジェントに「分泌する」ことができる、生体模倣の「人工β細胞」システムが緊急に必要とされている。
【0004】
この目的のために、クローズドループ装置型システムが開発されており、患者に対して較正された継続的グルコースモニタリングセンサと外部インスリン注入ポンプとを一体化している。しかしながら、そのようなシステムには、アルゴリズムの正確さ及びセンサの信頼性という点で課題が残っている。したがって、周囲のBGL上昇に応答して膨潤、分解又は解離することができる、化学的に設計された配合物又は装置が、代替的な解決策としてますます注目を集めている。これらのシステムは、通常、グルコースオキシダーゼ(GOx)、フェニルボロン酸(PBA)及びグルコース結合タンパク質(GBP)を含む、3つの異なる材料のうちのいずれか1つと、それに対応する作用機序と、を用いる。GOxは、D-グルコースからD-グルコノラクトンへの酸化を触媒し、D-グルコノラクトンは、加水分解してグルコン酸となり、酸素の存在下で過酸化水素を生成する。
【化1】
【0005】
したがって、GOxを取り込んでいる酸性感受性システムは、グルコースレベルの上昇に反応して局所的な酸性環境を作り出し、インスリンの放出を引き起こすことができる。しかしながら、高速な反応を達成するために生体内で生理的pHを迅速に切り替えることは、非常に挑戦的である。高速な反応を達成するための低酸素感受性製剤は、局所酸素レベルの、酵素による消費に基づいて開発された。しかしながら、この製剤は、このシステムに残存する過酸化水素によって制約を受けており、長期の生体適合性に対する懸念を引き起こしている。さらに、インスリンと同時にGOxが放出されることが、全身毒性を引き起こす可能性がある。迅速な反応性、調製及び投与の容易さ、並びに優れた生体適合性を優先するために、次世代のスマートインスリン送達の開発を推進すべきである。
【0006】
本明細書に開示されている組成物、装置、マイクロニードルパッチ及び方法は、上記及びその他の懸念に対処するものである。
【発明の概要】
【0007】
血糖値の自己調節のための生体模倣グルコース応答性治療薬(例えば、インスリン)送達システムが、本明細書に開示されている。本明細書に開示されている組成物及び方法は、1型及び進行型2型糖尿病の患者の健康及び生活の質の転帰を改善するのに望ましい。いくつかの実施形態では、迅速な応答性及び優れた生体適合性を有する治療薬のスマート送達のための分解性架橋ゲルからなる無痛性コアシェル型マイクロニードルアレイパッチが、本明細書に開示されている。このゲルベースの装置は、ゲル内に埋め込まれたグルコース特異的酵素によりグルコースの酸化中に発生するH2O2によって誘発されたとき、部分的に解離し、続いて治療薬(例えば、インスリン)を放出することができる。重要なのは、H2O2応答性マイクロニードルは、H2O2除去酵素を埋め込んだ薄層で被覆されており、したがって、ペルオキシソーム中の酵素の相補的機能を模倣して、酸化ストレスによって引き起こされる損傷から正常組織を保護する。化学的に誘発された1型糖尿病マウスモデルを利用して、生体応答性コア及び保護シェルを有するこのスマートインスリンパッチは、ごくわずかな長期にわたる副作用を伴って正常範囲内で血糖値を効果的に調節することが示される。
【0008】
いくつかの態様では、
それぞれが基部及び先端部を有する複数のマイクロニードルと、
マイクロニードルの基部が取り付けられている基材と、を含む、マイクロニードルパッチが、本明細書に開示され、
マイクロニードルは、
第1の過酸化物感受性リンカーで架橋された第1のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第1のナノゲル内に封入された過酸化物除去酵素であって、第1のナノゲルは、第1のPVAポリマーに埋め込まれている、過酸化物除去酵素と、を含む、
シェルと、
第2の過酸化物感受性リンカーで架橋された第2のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第2のナノゲル内に封入されたグルコース応答性物質であって、第2のナノゲルは、第2のPVAポリマーに埋め込まれている、グルコース応答性物質と、
治療薬であって、治療薬は、第3の過酸化物感受性リンカーを用いて第2のPVAポリマーに共有結合している、治療薬と、を含む、
コアと、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1の過酸化物感受性リンカーは、ボロン酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、第1の過酸化物感受性リンカーは、過酸化物への曝露時に第1のPVAポリマーから脱離する。いくつかの実施形態では、第1の過酸化物感受性リンカーは、N1-(4-ボロノベンジル)-N3-(4-ボロノフェニル)-N1,N1,N3,N3-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミニウム(TSPBA)である。
【0010】
いくつかの実施形態では、第2の過酸化物感受性リンカーは、ボロン酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、第2の過酸化物感受性リンカーは、過酸化物への曝露時に第2のPVAポリマーから脱離する。いくつかの実施形態では、第2の過酸化物感受性リンカーは、N1-(4-ボロノベンジル)-N3-(4-ボロノフェニル)-N1,N1,N3,N3-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミニウム(TSPBA)である。
【0011】
いくつかの実施形態では、第3の過酸化物感受性リンカーは、ボロン酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、第3の過酸化物感受性リンカーは、過酸化物への曝露時に第2のPVAポリマーから脱離する。いくつかの実施形態では、第3の過酸化物感受性リンカーは、炭酸=4-ニトロフェニル=(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(NBC)である。
【0012】
いくつかの実施形態では、グルコース応答性物質は、グルコースオキシダーゼを含む。いくつかの実施形態では、過酸化物除去酵素は、カタラーゼである。いくつかの実施形態では、治療薬は、インスリンである。いくつかの実施形態では、マイクロニードルは、ヒアルロン酸(HA)をさらに含む。
【0013】
いくつかの態様では、 本明細書に開示されているようなマイクロニードルパッチを被験体に投与することと、
高血糖レベルのグルコースの存在下でマイクロニードルパッチから治療薬を放出することと、を含む、被験体に治療薬を送達する方法が、本明細書に開示されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、被験体は、高血糖症である。
【0015】
いくつかの実施形態では、グルコース応答性物質は、高血糖レベルのグルコースへの曝露時に過酸化物を生成する。いくつかの実施形態では、方法は、過酸化物への曝露時に第1の過酸化物感受性リンカーを第1のPVAポリマーから脱離することをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、方法は、過酸化物への曝露時に第3の過酸化物感受性リンカーを第2のPVAポリマーから脱離することをさらに含む。いくつかの実施形態では、第3の過酸化物感受性リンカーを第2のPVAポリマーから脱離して、治療薬をマイクロニードルパッチから放出する。
【0017】
いくつかの実施形態では、方法は、血糖値を低下させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、治療薬は、インスリンを含む。いくつかの実施形態では、方法は、低血糖症を引き起こす前に治療薬の放出を終了させることをさらに含む。
【0018】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的及び利点は、説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付の図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、以下に記述されるいくつかの態様を例示する。
【0020】
【
図1A】
図1は、H
2O
2応答性ポリ(ビニルアルコール)-N1-(4-ボロノベンジル)-N3-(4-ボロノフェニル)-N1,N1,N3,N3-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミニウム(PVA-TSPBA)ゲルを用いるグルコース応答性インスリン送達システムの概略図である。
図1Aでは、インスリン放出は、PVA-TSPBAマイクロニードルパッチから、高血糖状態によって引き起こされ、局所性炎症は、カタラーゼ(CAT)埋め込みPVA-TSPBAシェルによって大幅に低減した。
【
図1B】炭酸=4-ニトロフェニル=(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(NBC)で修飾されたインスリン及びH
2O
2応答性放出の機構である。
【
図1C】PVA-TSPBAゲルの製造及びH
2O
2応答性である。
【
図2A】
図2は、PVA-TSPBAゲルからのインビトログルコース応答性インスリン放出である。
図2Aでは、pH7.4及びpH3.5における、10mMのH
2O
2を含むPBS中のPVA-TSPBAゲルからのインスリン放出である。
【
図2B】グルコースオキシダーゼ(GOx)の存在下での、PBS7.4中におけるグルコース濃度依存性H
2O
2生成である。GOxは、0.2mg/mLまで溶液に直接添加した。
【
図2C】GOxの存在下での、PBS7.4中におけるゲルからのグルコース濃度依存性インスリン放出である。GOxは、0.2mg/mLまで溶液に直接添加した。グルコース濃度は、0、100及び400mg/dLに設定した。
【
図2D】GOx(0.2mg/mL)を含むPBS7.4中における、ゲルのグルコース依存性変化である。
【
図2E】グルコース濃度の関数としての、自己調節インスリン放出プロファイルである。
【
図2F】グルコース濃度の関数としての、脈動性インスリン放出プロファイルである。
【
図3A】
図3は、PVA-TSPBAのマイクロニードル(MN)アレイパッチの特性評価である。
図3Aでは、ヒアルロン酸(HA)基部を有するインスリン充填MNアレイの代表的な蛍光顕微鏡画像である。ローダミンB標識されたインスリンをマイクロニードルの先端部(赤色)のPVA-TSPBAゲルに充填し、その一方で、HAベース(緑色、FITC-インスリンにより標識)は、主に底部に位置していた。
【
図3B】インスリン-FITCを充填したMNアレイパッチの代表的な蛍光画像である。スケールバーは、300μmである。
【
図3C】マイクロニードルパッチの代表的な走査型電子顕微鏡画像である。スケールバーは、300μμmである。
【
図3E】中空CAT充填MNの底面視の代表的画像である。これらの画像は、共焦点レーザ走査型顕微鏡法を用いて得られ、z方向のインテラル(interal)は、100μmに設定した。スケールバーは300μm。
【
図3F】凍結切片を用いたコアシェル型MNの断面の代表的画像である。ローダミンB標識されたCATシェル(赤色)、FITC標識されたインスリン(緑色)及びそれらの重ね合わせである。画像Jを用いて分析したところ、シェルの厚さは、10μmであった。
【
図3G】PVAメチルアクリレートゲルからのGOx又はGOxナノゲル(GOx-NG)の経時的放出である。
【
図4A】
図4は、1型糖尿病治療のためのMNアレイパッチのインビボ研究である。
図4Aでは、MNアレイパッチにより処置したマウス(左)、MNアレイパッチを挿入した皮膚を切除し、トリパンブルーを使用して染色した(右)。スケールバーは、600μmである。
【
図4B】皮膚に挿入されたコアシェル型MNの代表的画像である。ローダミンB標識されたCAT(赤色)を埋め込んだシェル、インスリン-FITC(緑色)標識されたコア及びそれらの重ね合わせである。スケールバーは、100μmである。
【
図4C】異なる種類のマイクロニードルアレイパッチにより処置した1型糖尿病マウスの血糖値である。
【
図4D】MN-CAT又はインスリン皮下注射の処置後1時間における、糖尿病マウスに対するインビボグルコース負荷試験である。健常マウスを対照として使用した。
【
図4E】ベースラインを0分における血糖測定値に設定し、120分後の曲線下面積(AUC)に基づいて応答性を計算した。
【
図4F】MNアレイパッチ又はインスリン皮下注射で処置した健常マウスの血糖値の変化である。処置は、0分に行った。
【
図4G】最初の血糖測定値と最低血糖測定値との間の差異を、最低値に達した時間で割ったものとして同定された、低血糖指数の定量化である。
【
図4H】複数のMNアレイパッチにより処置した糖尿病マウスにおける血糖値の変化である。MN-CATの投与は、青い矢印で示した(indiated)。初回を除き、毎回マウス上に2つのマイクロニードルがあり、赤い矢印で示した(indiated)ように、最後の2つのマイクロニードルは、除去した。スチューデントのt検定:**P<0.01。データ点は、平均値±SDを表す(n=5)。エラーバーは、SDを示す。
【
図5A】
図5は、糖尿病治療のためのMN-CATアレイの生体適合性に関する生インビボ研究である。
図5Aでは、マウスの処置部位における皮膚の代表的画像及びそれらに対応するH&E染色の結果である。マウスをMNゲル、MNゲル(G+I)、MNゲル(G+C+I)及びMN-CATにより処置した。スケールバーは、マウスの皮膚画像について1mm、H&E染色について300μmである。
【
図5B】MNで処置した上皮及び皮膚の厚さの統計分析である。MN-CATで処置した上皮及び皮膚は、MNゲル(G+I)で処置したものよりも、有意に少ない腫脹を示した(**P<0.01)。
【
図5C】MNゲル(G+I)、MNゲル(G+C+I)及びMN-CATで処置した皮膚の、TUNELアッセイ(緑色)及びヘキスト(青色)を用いた免疫組織学染色である。スケールバーは、150μmである。
【
図6】グルコースオキシダーゼナノゲル(GOx-NG)によるH
2O
2生成及びカタラーゼナノゲル(CAT-NG)による除去の概略図である。
【
図7A】
図7は、PBS中での酸化前後のTSPBAのH1-NMR(300MHz、D2O中)である。
図7Aでは、酸化前。
【
図8】精製インスリン-NBCのMALDI-TOF質量スペクトルである。
【
図9A】
図9は、25mmアルミニウムクロスハッチ平行プレートを備えたTA器具AR-2000応力制御レオメータを使用して測定した、25℃でゲル化する前後のPVAの動的レオロジー挙動である。全ての実験は、プレート間に500μmの間隙を有する線形粘弾性方式で行われた。
図9Aでは、PVA試料及びPVA-TSPBA試料における弾性率(G’)及び粘性率(G”)の周波数スペクトルである。PVA試料は、溶液様特性を示し、PVA-TSPBA試料は、ゲル様挙動を示す。
【
図9B】ゾルゲル転移を示すPVA-TSPBA試料における時間の関数としてのG’及びG”の変化である。実験は、5rad/sの一定周波数で行った。試料を10s-1の剪断速度で10秒間予備剪断した後に、測定を開始した。
【
図10】400mg/dLのグルコースと共にインキュベートしたゲルから放出された天然インスリン溶液及びインスリンのCDスペクトルである。
【
図11A】
図11は、CAT-NGの特性評価である。
図11Aでは、動的レーザ散乱によって測定された、CAT及びCAT-NGのサイズ分布である。
【
図11B】CAT-NGの代表的なTEM像である。
【
図12A】
図12は、GOx-NGの特性評価である。
図12Aでは、動的レーザ散乱によって測定された、GOx及びGOx-NGのサイズ分布である。
【
図12B】GOx-NGの代表的なTEM像である。
【
図13】CAT充填中空MNの代表的画像であり、側面図(
図13A)及び俯瞰図(
図13B)である。bの間隔は、マイクロニードルの底部から先端部への方向で80μmであった。
【
図14】PVAメタクリレートゲルに充填したインスリン-NBCからの、インスリンのH
2O
2依存性放出である。天然インスリンを対照として使用した。
【
図15】MNの処置後0分、5分及び120分(imn)後における皮膚穿刺痕である。スケールバーは、0.5cmである。
【
図16】MNゲル(G+I)で処置した1型糖尿病マウスの血糖値である。
【
図17】GOxあり又はなしでのインスリン-NBC充填PVA-TSPBAゲル処置後のストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病マウスにおける血糖値である。
【
図18】初期pHが7.4のPBS中のグルコース溶液(100又は400mg/dL)中にCATが異なる比率で存在する場合のGOxによるグルコースの酸化全体にわたるH
2O
2生成速度である。GOx濃度は、0.2mg/mLに設定した。
【
図19】MN-CAT、MNゲル(I)、又はMNゲル(G+I)で処置したマウスの血漿ヒトインスリン濃度である。
【
図20】皮下注射したゲル(G+I)によって誘発された、皮膚の水泡である。左図は、ゲルの注入部位であり、右図は、注入から1時間後に観察された皮膚の腫脹である。スケールバーは、1cmである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
血糖値(BGL)の上昇に対して迅速な応答性を有する、治療薬(例えば、インスリン)の自己制御送達のための分解性架橋ポリ(ビニルアルコール)(PVA)ゲルからなる、革新的なコアシェル型マイクロニードル(MN)アレイパッチが、本明細書に開示されている。
図1aに示すように、この装置のコアコンポーネントは、インスリンなどの治療薬の放出を促進するためにH
2O
2を生成するグルコースオキシダーゼ(GOx)を含み、その一方で、シェルコンポーネントは、過剰なH
2O
2を除去するためのアクティブストレーナーとして機能するカタラーゼ(CAT)が埋め込まれており、したがって、H
2O
2により引き起こされる炎症のリスクを最小化している(
図6)。
【0022】
H
2O
2応答性インスリン放出を達成するために、インスリンは、炭酸=4-ニトロフェニル=4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジルで化学修飾され(インスリン-NBCと称する、
図1b)、その後、水溶性PVAマトリックスに固定される[17]。注目すべきことに、さらにポリマーマトリックス中の遊離インスリンの輸送を促進し、かつ応答速度を高めるために、PVAもまた、H
2O
2に不安定なリンカー、N1-(4-ボロノベンジル)-N3-(4-ボロノフェニル)-N1,N1,N3,N3-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミニウム(TSPBA)によりゲル化されている(
図1c)。インスリン-NBC及びTSPBAは、両方とも、高濃度グルコース中のGOxによって産生される局所的に増加したレベルのH
2O
2に曝露されたときに酸化かつ加水分解され[18、19]、遊離インスリンの迅速な放出につながる(
図1a)。
【0023】
潜在的に有害な、GOx自体の放出を制限するため[16]、GOxをアクリル化ナノゲルに封入してサイズを大きくし(GOx-NG)[8]、ラジカル重合中にPVAメタクリレートへの共有結合で固定化する。これにより、PVAの部分的に切断不可能なネットワークを形成して更にGOx-NGの漏出を防ぐと同時に、インスリン放出の容易さを維持する。シェルコンポーネントは、カタラーゼナノゲル(CAT-NG)[8]が形成されPVA-TSPBAマイクロニードルコアの表面を覆う架橋PVA層の内側に埋め込まれている、ペルオキシソーム[20]の相補的機能を模倣するように設計されている。
【0024】
全体として、コアコンポーネントとシェルコンポーネントの設計は、1)コアにおいてグルコース応答作用を発揮するために十分なGOxの触媒作用と、2)周囲の組織に影響を与える炎症を和らげ、全身毒性を軽減するための、H2O2の効率的な除去と、を提供する。更に、インスリンをMN骨格上に搭載するために利用される直接結合法(direct conjugation method)は、インスリン充填プロセスの効率及び容量の両方を増強する。痛みを伴わない経皮投与では、この生体応答性MNパッチは、毛細血管網内の間質液中の高濃度のグルコースに曝露されると部分的に溶解し[9]、それによりインスリンを放出し、局所的な毛細血管及びリンパ網を通して急速に吸収され、その後BGLを調節する[9]。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態を説明した。それにもかかわらず、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を加えることができることが理解されよう。したがって、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載の範囲内にある。
【0026】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。以下の定義は、本明細書で使用される用語を完全に理解するために提供されている。
用語
【0027】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語及びその変形は、「含む(including)」という用語、「含む(containing)」という用語及びそれらの変形と同義語として使用され、オープンな、非限定的な用語である。本明細書では「含む(comprising)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」という用語を使用して様々な実施形態を説明したが、「含む(comprising)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」の代わりに、「から本質的になる(consisting essentially)」及び「からなる(consisting of)」という用語を使用してより具体的に実施形態を提供することができ、それらもまた開示されている。
【0028】
開示された組成物、装置及びパッチを作製するために使用されるコンポーネントは、本明細書に開示された方法の中で使用される組成物、装置及びパッチ自体と同様に開示されている。これら及び他の材料は、本明細書に開示されており、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示されているとき、これらの合成物の、それぞれの様々な、個別の及び集合的な、組み合わせ及び並べ替えへの具体的な言及は、明示的に開示されていないことがあるが、それぞれが本明細書において具体的に企図され、記載されていることが理解される。例えば、特定の組成物又は装置が開示されて論じられ、なされ得るいくつかの変形例が論じられるならば、特に反対の指摘がされない限り、あらゆる全ての可能な組み合わせ及び並べ替え、並びに変形例が具体的に考慮される。したがって、コンポーネントD、E及びFのクラスのみならずコンポーネントA、B及びCのクラスが開示され、かつ、組み合わせの例、例えばA-Dを含む組み合わせが開示されている場合、それぞれが個別に記載されていないときであっても、それぞれが個別に、かつ集合的に考慮される。つまり、組み合わせA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E及びC-Fが開示されているものと見なされる。同様に、これらのあらゆるサブセット又は組み合わせもまた開示されている。したがって、例えば、A-E、B-F及びC-Eのサブグループは、開示されているものと見なされる。この考え方は、開示された組成物、装置及びパッチを生産かつ使用する方法中の工程を含むがこれらに限定されない、本願の全ての態様に適用される。したがって、実行され得る様々な追加の工程がある場合、これらの追加の工程のそれぞれは、開示された方法のあらゆる特定の実施形態又は実施形態の組み合わせを用いて実行され得ることが理解される。
【0029】
本明細書に開示されたコンポーネント、組成物、装置及びパッチは、一定の機能を有することが理解される。本明細書に開示されているのは、開示された機能を実行するための一定の構造的な要件であり、開示された構造に関連する同じ機能を実行することができる様々な構造があり、かつ、これらの構造は、結局は同じ結果を達成することが理解される。
【0030】
別途明示的に述べられていない限り、本明細書に記載されるいずれの方法も、その工程が特定の順序で実行されることを要求していると解釈されることは、全く意図していない。したがって、方法の発明に係る請求項において、その工程が実行される順序が実際に記載されていないか又は工程が特定の順序で実行されるように限定されることとなる旨が本願の特許請求の範囲若しくは本明細書において別段具体的に述べられていない場合、いかなる点においても、順序を黙示的に示すことは、全く意図していない。これは、工程の配置又は操作フローに関する論理的な事柄、文法的な構成又は句読点から導かれる平易な意味及び本明細書に記載された実施形態の数又は種類を含む、あらゆる可能な明示的でない解釈の原則に適用される。
【0031】
本明細書及び本願の特許請求の範囲で使用されている単数形「a」、「an」及び「the」は、そうでないことが文脈から明確に示されていない限り、複数への言及を含む。例えば、「細胞(a cell)」という用語は、複数の細胞を含み、それらの混合物を含む。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「してもよい」、「任意選択的に」及び「任意選択的にしてもよい」という用語は、互換的に使用され、その状態が発生しない場合のみならず、その状態が発生する場合も含むことを意味する。したがって、例えば、製剤が「賦形剤を含んでもよい」という記載は、製剤が賦形剤を含まない場合のみならず、製剤が賦形剤を含む場合も含むことを意味する。
【0033】
「約」及び「およそ」という用語は、当業者によって理解されるように「近い」ことであると定義される。非限定的な一実施形態では、これらの用語は、10%以内であると定義される。別の非限定的な実施形態では、これらの用語は、5%以内であると定義される。さらに別の非限定的な実施形態では、これらの用語は、1%以内であると定義される。
【0034】
「生物活性」に関連するものを含むタンパク質の「活性」は、例えば、転写、翻訳、細胞内転座、分泌、キナーゼによるリン酸化、プロテアーゼによる切断及び/又は他のタンパク質への同種及び異種の結合を含む。
【0035】
「投与する」という用語は、経口、局所、静脈内、皮下、経皮、皮膚の浸透、筋肉内、関節内、非経口、細動脈内、皮内、脳室内、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻腔内、直腸内、膣内であるような、被験体への吸入によるか又は埋め込まれた貯蔵物を介した投与を指す。投与は、経皮的マイクロニードルアレイパッチを用いて実行することができる。「非経口の」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内の、注射又は注入技術を含む。
【0036】
「生体適合性」とは、レシピエントに対して一般的に無毒であり、かつ被験体に対して重大な有害作用を引き起こさないような材料及びそのあらゆる代謝産物又は分解産物を一般的に指す。
【0037】
本明細書で使用されるとき、「含む(comprising)」という用語は、組成物及び方法が、列挙された要素を含むがその他のものを除外しないことを意味することを意図する。組成物及び方法を定義するために使用される場合における「から本質的になる(consisting essentially of)」は、その組み合わせに対するあらゆる本質的な重要性をもつ他の要素を排除することを意味するものとする。したがって、本明細書で定義される要素から本質的になる組成物は、単離方法及び精製方法による微量汚染物質、並びにリン酸緩衝食塩水及び防腐剤などの薬学的に許容される担体を除外しない。「からなる(consisting of)」は、その他の微量を超える成分及び本発明の組成物を投与するための方法中における重要な工程を除外することを意味するものとする。移行のためのこれらの各用語によって定義される実施形態は、本発明の範囲内にある。
【0038】
「対照」は、比較目的で実験に使用される、代替の被験体又は試料である。対照は、「陽性」又は「陰性」であり得る。
【0039】
本明細書で使用されるとき、「コンジュゲートされた(conjugated)」とは、非可逆的結合相互作用を指す。
【0040】
本明細書で使用されるとき、「リンカー」は、隣接する分子を結合する分子を指す。全般的に、リンカーは、隣接する分子を結合すること又はそれらの間の最小距離若しくはその他の空間的関係を保つこと以外には、特定の生物学的活性を有さない。いくつかの場合において、リンカーは、分子の折り畳み、実効電荷又は疎水性など、隣接する分子のいくつかの特性に影響を及ぼすか又は安定化するように選択することができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、過酸化水素などの過酸化物への曝露時に脱離する(例えば、化学的に切断される)ことができる。他の実施形態では、リンカーは、過酸化水素などの過酸化物への曝露時にも依然として損なわれないままであり得る。
【0041】
「ペプチド」、「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、あるアミノ酸のカルボキシル基によって別のアミノ酸のアルファアミノ基に結合した2個以上のアミノ酸を含む、天然分子又は合成分子を指すために互換的に使用される。
【0042】
「担体」又は「薬学的に許容される担体」という用語は、一般に安全かつ無毒である、医薬組成物又は治療用組成物を調製するために有用な、獣医学的なかつ/又はヒト用の、薬学的な又は治療用の使用に許容される担体を含む、担体又は賦形剤を意味する。本明細書で使用されるとき、「担体」又は「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝食塩水、水、エマルジョン(油/水エマルジョン又は水/油エマルジョンなど)及び/又は様々な種類の湿潤剤を含み得る。本明細書で使用されるとき、「担体」という用語は、あらゆる賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、脂質、安定剤又はその他の材料であって医薬製剤に使用するために当該技術分野で周知であり、かつ、以下で更に説明するものを包含する。
【0043】
本明細書で使用されるとき、「ポリマー」という用語は、その構造を小単位であるモノマーの反復によって表すことができる、天然又は合成の分子量が比較的大きい有機化合物(例えば、ポリエチレン、ゴム、セルロース)をいう。合成ポリマーは、通常、モノマーの付加重合又は縮合重合によって形成される。本明細書で使用されるとき、「コポリマー」という用語は、2種類以上の異なる繰り返し単位(モノマー残基)から形成されたポリマーを指す。限定としてではなく例として、コポリマーは、交互コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーであり得る。特定の態様では、ブロックコポリマーの種々のブロックセグメントは、それ自体がコポリマーを含み得ることもまた考慮される。
【0044】
本明細書において、範囲は、「約」を用いたある特定の値から及び/又は「約」を用いた別の特定の値までとして表現することができる。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、ある特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行する「約」を使用することにより値が近似値として表される場合、その特定の値は別の実施形態を成すことが理解されよう。更に、各範囲の端点は、他の端点との関係においても、他の端点とは無関係なものとしても、その両方において重要であることが理解されよう。本明細書に開示されたいくつかの値があり、それぞれの値はまた、その値自体に加えて、「約」を用いたその特定の値としても、本明細書に開示されていることもまた理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。
【0045】
「治療する」、「治療している」、「治療」という用語及びその文法的変形は、本明細書で使用されるとき、障害若しくは状態の1つ以上の付随する症状の強度を、部分的に、若しくは完全に遅延、軽減、緩和若しくは減少し及び/又は障害若しくは状態の1つ以上の原因を軽減し、緩和し、若しくは妨げることを含む。本発明による治療は、防御的に、予防的に、緩和的に又は治療的に適用することができる。予防的治療は、発症前に(例えば、がんの明白な徴候の前に)、早期の発症中に(例えば、がんの初期の徴候及び症状の際に)又はがんの発症が確定した後に被験体に施される。予防的投与は、感染症の症状が現れる前の数日間から数年間にわたって実施され得る。
【0046】
治療薬の「有効量」という用語は、所望の効果を提供するための、毒性はないが十分な量の有益な薬剤を意味する。「有効」である有益な薬剤の量は、被験体の年齢及び全身状態、並びに個別の1種類又は複数種類の有益な薬剤などに応じて、被験体ごとに異なるであろう。したがって、厳密な「有効量」を特定することは必ずしも可能ではない。しかしながら、あらゆる被験体の場合における適切な「有効」量は、日常的な実験によって当業者が決定するものであってよい。また、本明細書で使用されるとき、別途具体的に述べられていない限り、有益な「有効量」はまた、治療有効量及び予防有効量の両方をカバーする量を指すことができる。
【0047】
治療効果を達成するために必要な薬物の「有効量」は、被験体の年齢、性別及び体重などの要因によって異なってもよい。投与方式は、最適な治療反応をもたらすように調整することができる。例えば、数回に分けた用量を毎日投与してもよいか又は治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例的に減らしてもよい。
【0048】
本明細書で使用されるとき、治療薬の「治療有効量」とは、所望の治療結果を達成するために有効な量を指し、治療薬の「予防有効量」とは、望ましくない生理学的状態を予防するために有効な量を指す。所与の治療薬の治療有効量及び予防有効量は、通常、治療される障害又は疾患の種類及び重症度、並びに被験体の年齢、性別及び体重などの要因に関して異なるであろう。
【0049】
「治療有効量」という用語はまた、所望の治療効果を促進するために有効な、治療薬の量又は治療薬の放出速度(例えば、経時的な量)を指すこともできる。正確な所望の治療効果は、治療されるべき状態、被験体の耐性、投与されるべき薬物及び/又は薬物製剤(例えば、治療薬(薬物)の効力、製剤中の薬物の濃度など)、並びに当業者によって認識される様々なその他の要因に応じて異なるであろう。
【0050】
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される」という用語に関し、「薬学的に許容される」コンポーネントは、生物学的に又は他の点で望ましくないものではないコンポーネントを指すものであり得る。すなわち、そのコンポーネントは、いずれの重大な望ましくない生物学的作用も引き起こすことなく、かつ、それが含まれる製剤中のいずれの他のコンポーネントとも有害な形で相互作用することなく、本発明の医薬製剤に含有させ、本明細書に記述したように被験体に投与することができる。「薬学的に許容される」という用語が賦形剤を指すために使用される場合、一般に、そのコンポーネントが毒性試験及び製造試験において要求される基準を満たしていること又はそのコンポーネントが米国食品医薬品局が作成する不活性成分ガイドに掲載されていることを、黙示的に意味する。
【0051】
また、本明細書で使用されるとき、「薬理学的に活性な」誘導体又は類似体という表現におけるような「薬理学的に活性な」(又は単に「活性な」)という用語は、誘導体又は類似体(例えば、塩、エステル、アミド、コンジュゲート、代謝産物、異性体、フラグメントなど)であって、親化合物と同一の種類の薬理活性を有し、かつ、その程度において近似的に同等であるものを指すことができる。
【0052】
本明細書で使用されるとき、用語「被験体」とは、哺乳動物などの生物を指し、ヒト、家畜、イヌ、ネコ及びその他の哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない。治療薬の投与は、被験体の治療に有効な投薬量及び期間で行うことができる。いくつかの実施形態では、被験体は、ヒトである。
マイクロニードル装置(パッチ)
【0053】
治療薬(例えば、インスリン)を放出するための革新的な自己制御型マイクロニードル(MN)パッチが、本明細書に開示されている。
【0054】
いくつかの態様では、
それぞれが基部及び先端部を有する複数のマイクロニードルと、
マイクロニードルの基部が取り付けられている基材と、を含む、マイクロニードルパッチが、本明細書に開示され、
マイクロニードルは、
第1の過酸化物感受性リンカーで架橋された第1のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第1のナノゲル内に封入された過酸化物除去酵素であって、第1のナノゲルは、第1のPVAポリマーに埋め込まれている、過酸化物除去酵素と、を含む、
シェルと、
第2の過酸化物感受性リンカーで架橋された第2のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第2のナノゲル内に封入されたグルコース応答性物質であって、第2のナノゲルは、第2のPVAポリマーに埋め込まれている、グルコース応答性物質と、
治療薬であって、治療薬は、第3の過酸化物感受性リンカーを用いて第2のPVAポリマーに共有結合している、治療薬と、を含む、
コアと、を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、第1の過酸化物感受性リンカーは、ボロン酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、第1の過酸化物感受性リンカーは、過酸化物への曝露時に第1のPVAポリマーから脱離する。いくつかの実施形態では、第1の過酸化物感受性リンカーは、N1-(4-ボロノベンジル)-N3-(4-ボロノフェニル)-N1,N1,N3,N3-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミニウム(TSPBA)である。
【0056】
いくつかの実施形態では、第2の過酸化物感受性リンカーは、ボロン酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、第2の過酸化物感受性リンカーは、過酸化物への曝露時に第2のPVAポリマーから脱離する。いくつかの実施形態では、第2の過酸化物感受性リンカーは、N1-(4-ボロノベンジル)-N3-(4-ボロノフェニル)-N1,N1,N3,N3-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミニウム(TSPBA)である。
【0057】
いくつかの実施形態では、第3の過酸化物感受性リンカーは、ボロン酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、第3の過酸化物感受性リンカーは、過酸化物への曝露時に第2のPVAポリマーから脱離する。いくつかの実施形態では、第3の過酸化物感受性リンカーは、炭酸=4-ニトロフェニル=(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(NBC)である。
【0058】
いくつかの実施形態では、過酸化物感受性リンカーは、炭酸=4-ニトロフェニル=(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(NBC)又はN1-(4-ボロノベンジル)-N3-(4-ボロノフェニル)-N1,N1,N3,N3-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミニウム(TSPBA)を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、グルコース応答性物質は、グルコースオキシダーゼを含む。いくつかの実施形態では、過酸化物除去酵素は、カタラーゼである。いくつかの実施形態では、グルコース応答性物質は、ナノゲル内に封入されている。いくつかの実施形態では、グルコース応答性物質は、ナノゲルに共有結合している。いくつかの実施形態では、過酸化物除去酵素は、ナノゲル内に封入されている。いくつかの実施形態では、過酸化物除去酵素は、ナノゲルに共有結合している。いくつかの実施形態では、マイクロニードルは、過酸化物除去酵素で被覆されている。
【0060】
過酸化物(H2O2)除去酵素の例としては、カタラーゼ、フェノール酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸)及び1,2,3-トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)が挙げられるが、これらに限定されない。H2O2除去酵素は、当技術分野において公知の任意の手段によってマイクロニードルに組み込むことができ、H2O2除去酵素のナノゲルへの組み込み(例えば、ペルオキシソームカタラーゼナノゲル)が挙げられる。
【0061】
いくつかの実施形態では、第1のナノゲルは、メタクリレートナノゲルを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、第1のナノゲルは、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)メタクリレートを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、第2のナノゲルは、メタクリレートナノゲルを含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、第2のナノゲルは、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)メタクリレートを含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているナノゲルは、架橋PVAポリマー内に埋め込まれている。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているナノゲルは、架橋PVAポリマーに共有結合している。いくつかの実施形態では、第1のナノゲルは、第1のPVAポリマーに埋め込まれている。
【0067】
いくつかの実施形態では、第1のナノゲルは、第1のPVAポリマーに共有結合している。
【0068】
いくつかの実施形態では、第2のナノゲルは、第2のPVAポリマーに埋め込まれている。
【0069】
いくつかの実施形態では、第2のナノゲルは、第2のPVAポリマーに共有結合している。
【0070】
いくつかの実施形態では、共有結合は、切断不可能な共有結合を介している。
【0071】
いくつかの実施形態では、治療薬は、インスリンである。いくつかの実施形態では、マイクロニードルは、ヒアルロン酸(HA)をさらに含む。
【0072】
いくつかの態様では、
それぞれが基部及び先端部を有する複数のマイクロニードルと、
マイクロニードルの基部が付着又は一体化されている基材と、を含む、被験体の生物学的障壁を越えて物質を輸送するための装置が、本明細書に開示され、
マイクロニードルは、
第1の過酸化物感受性リンカーで架橋された第1のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第1のナノゲル内に封入された過酸化物除去酵素であって、第1のナノゲルは、第1のPVAポリマーに埋め込まれている、過酸化物除去酵素と、を含む、
シェルと、
第2の過酸化物感受性リンカーで架橋された第2のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第2のナノゲル内に封入されたグルコース応答性物質であって、第2のナノゲルは、第2のPVAポリマーに埋め込まれている、グルコース応答性物質と、
治療薬であって、治療薬は、第3の過酸化物感受性リンカーを用いて第2のPVAポリマーに共有結合している、治療薬と、を含む、
コアと、を含む。
【0073】
さらなる態様では、
それぞれが基部及び先端部を有する複数のマイクロニードルと、
マイクロニードルの基部が付着又は一体化されている基材と、を含む、生物学的障壁を越えて治療薬(例えば、インスリン)を送達するための部品のキットが、本明細書に開示され、
マイクロニードルは、
第1の過酸化物感受性リンカーで架橋された第1のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第1のナノゲル内に封入された過酸化物除去酵素であって、第1のナノゲルは、第1のPVAポリマーに埋め込まれている、過酸化物除去酵素と、を含む、
シェルと、
第2の過酸化物感受性リンカーで架橋された第2のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第2のナノゲル内に封入されたグルコース応答性物質であって、第2のナノゲルは、第2のPVAポリマーに埋め込まれている、グルコース応答性物質と、
治療薬であって、治療薬は、第3の過酸化物感受性リンカーを用いて第2のPVAポリマーに共有結合している、治療薬と、を含む、
コアと、を含む。
【0074】
インスリンなどの治療薬に加えて、レシピエントに送達されることとなる薬剤はまた、予防薬又は診断薬であり得る。例えば、作用物質は、ペプチド、タンパク質、炭水化物、核酸分子、脂質、有機分子、生物学的に活性な無機分子及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。例えば、本マイクロニードル装置及び方法を用いた送達のために多様な薬物を処方してもよい。本明細書中で使用されるとき、「薬物」又は「薬物製剤」という用語は、任意の予防薬、治療薬、もしくは診断薬、又は、医薬品賦形剤及び入れ墨用の物質を含む生物学的組織への導入に好適であってもよい他の物質、化粧品などを指すために、広義に使用される。薬物は、生物学的活性を有する物質であり得る。薬物製剤は、溶液、ゲル、固体粒子(例えば、微粒子、ナノ粒子)、又はそれらの組み合わせなどの様々な形態を含んでもよい。薬物は、小分子、大(すなわち、マクロ)分子、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。非限定的ではない代表的な実施形態では、薬物は、免疫学的アジュバント(例えば、モノホスホリルリピドA(MPLA)、アルミニウム塩(ミョウバン)、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN))、アミノ酸、ワクチン、抗ウイルス剤、遺伝子送達ベクター、インターロイキン阻害剤、免疫調節剤、神経向性因子、神経保護剤、抗新生物剤、化学療法剤、多糖類、抗凝固剤、抗生物質、鎮痛剤、麻酔剤、抗ヒスタミン薬、抗炎症剤及びウイルスの中から選択することができる。薬物は、天然産、合成又は組み換え生成されたものであり得る好適なタンパク質、ペプチド及びそれらのフラグメントから選択されてもよい。
【0075】
組成物及び/又は薬物製剤は、当技術分野において公知であるpH調整剤、粘度調整剤、希釈剤などを含む1つ以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよい。
【0076】
一実施形態では、マイクロニードルは、ヒアルロン酸を含む。ヒアルロン酸に加えて、マイクロニードルはまた、金属、セラミック、半導体、有機物、ポリマー、複合材料、又はそれらの組み合わせを含む様々な材料を含んでもよい。一般的な構成材料としては、医薬品グレードのステンレス鋼、金、チタン、ニッケル、鉄、スズ、クロム、銅、パラジウム、白金、これら又は他の金属の合金、ケイ素、二酸化ケイ素及びポリマーが挙げられる。代表的な生分解性ポリマーとしては、乳酸及びグリコール酸ポリラクチドなどのヒドロキシ酸のポリマー、ポリグリコリド、ポリラクチド-co-グリコリド、並びにPEGとのコポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ酪酸、ポリ吉草酸及びポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)が挙げられる。
【0077】
マイクロニードルは、生物学的障壁に挿入されている間、最大数日間その場にとどまっている間及び除去されている間、無傷のままであるような機械的強度を有するべきである。いくつかの実施形態では、マイクロニードルは、その意図された目的(例えば、治療薬の送達)を果たすためにマイクロニードルが少なくとも十分に長い間無傷のままでなければならない。
【0078】
マイクロニードルは、真っ直ぐな又は先細のシャフトを有することができる。一実施形態では、マイクロニードルの直径は、マイクロニードルの基部で最大であり、基部から遠位の端部の点まで先細になる。マイクロニードルはまた、真っ直ぐな(テーパの付いていない)部分と先細の部分の両方を含むシャフトを有するように製造することができる。針はまた、先細の端部を全く有さなくてもよい、すなわち、針は、単に丸い又は平らな先端を有する円柱であってもよい。
【0079】
マイクロニードルは、基材に対して垂直又はある角度で配向することができる。一実施形態では、マイクロニードルは、基材に対して垂直に配向されているため、基材の単位面積当たりでより高密度のマイクロニードルを提供することができる。マイクロニードルのアレイは、マイクロニードルの向き、高さ、又は他のパラメータの混合を含むことができる。
【0080】
マイクロニードルは、垂直に円形の断面を有するシャフトを用いて形成することができるか、又は、断面は、非円形であり得る。例えば、マイクロニードルの断面は、多角形(例えば、星形、正方形、三角形)、長円形、又は他の形状であり得る。断面寸法は、約1μm~1000μmであり得るため、基部は、約100~500μmであり得、先端部は、1~20μmであり得る。一実施形態では、マイクロニードルは、基部でおよそ300μm、先端部でおよそ5μmであり得る。
【0081】
マイクロニードルの長さは、一般的には約10μm~1mm、好ましくは400μm~1mmである。一実施形態では、マイクロニードルの長さ(又は高さ)は、約600μmである。長さは、挿入部分及び未挿入部分の両方を考慮して、特定の用途に合わせて選択される。マイクロニードルのアレイは、例えば、様々な長さ、外径、内径、断面形状及びマイクロニードル間の間隔を有するマイクロニードルの混合を含むことができる。一実施形態では、マイクロニードルは、600μmのチップ間間隔で15×15のアレイに配置されている。一実施形態では、マイクロニードルは、600μmのチップ間間隔で20×20の配列で配置されている。
【0082】
マイクロニードルのシェルは、被験体と接触するマイクロニードルの外側部分と見なすことができる。コア又はマイクロニードルは、それぞれのマイクロニードルの中心に向かって位置するマイクロニードルの部分と見なすことができ、マイクロニードルのシェル部分によって被験体の皮膚との接触から分離されている。
【0083】
一実施形態では、グルコース応答性物質は、グルコースオキシダーゼ(GOx)である。グルコースオキシダーゼは、血糖をグルコン酸に変換する。これは、過酸化物(過酸化水素)の生成及びpHの低下をもたらす。
治療方法
【0084】
いくつかの態様では、
治療を必要とする被験体にマイクロニードルパッチを投与することであって、マイクロニードルパッチは、
それぞれが基部及び先端部を有する複数のマイクロニードルと、
マイクロニードルの基部が取り付けられている基材と、を含む、マイクロニードルパッチであって、
マイクロニードルは、
第1の過酸化物感受性リンカーで架橋された第1のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第1のナノゲル内に封入された過酸化物除去酵素であって、第1のナノゲルは、第1のPVAポリマーに埋め込まれている、過酸化物除去酵素と、を含む、
シェルと、
第2の過酸化物感受性リンカーで架橋された第2のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第2のナノゲル内に封入されたグルコース応答性物質であって、第2のナノゲルは、第2のPVAポリマーに埋め込まれている、グルコース応答性物質と、
治療薬であって、治療薬は、第3の過酸化物感受性リンカーを用いて第2のPVAポリマーに共有結合している、治療薬と、を含む、
コアと、を含む、ことと、
高血糖レベルのグルコースの存在下でマイクロニードルパッチから治療薬を放出することと、を含む、被験体に治療薬を送達する方法が、本明細書に開示されている。
【0085】
いくつかの態様では、
マイクロニードルパッチを被験体に提供することを含む、治療を必要とする被験体において疾患を治療するための方法もまた本明細書に開示され、マイクロニードルパッチは、
それぞれが基部及び先端部を有する複数のマイクロニードルと、
マイクロニードルの基部が取り付けられている基材と、を含み、
マイクロニードルは、
第1の過酸化物感受性リンカーで架橋された第1のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第1のナノゲル内に封入された過酸化物除去酵素であって、第1のナノゲルは、第1のPVAポリマーに埋め込まれている、過酸化物除去酵素と、を含む、
シェルと、
第2の過酸化物感受性リンカーで架橋された第2のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第2のナノゲル内に封入されたグルコース応答性物質であって、第2のナノゲルは、第2のPVAポリマーに埋め込まれている、グルコース応答性物質と、
治療薬であって、治療薬は、第3の過酸化物感受性リンカーを用いて第2のPVAポリマーに共有結合している、治療薬と、を含む、
コアと、を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、方法は、高血糖レベルのグルコースの存在下でマイクロニードルパッチから治療薬を放出することをさらに含む。
【0087】
本明細書中で使用されるとき、「高血糖レベルのグルコース」とは、臨床的高血糖症を引き起こすか、又は引き起こす危険性があるグルコースの濃度を指す。高血糖、正常血糖及び低血糖の厳密なカットオフ値は、特に糖尿病の形態又は重症度の程度が異なる被験体間で異なり得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、高血糖レベルのグルコースは、100mg/dL超のグルコースを含む。いくつかの実施形態では、高血糖レベルのグルコースは、125mg/dL以上、150mg/dL以上、175mg/dL以上、又は200mg/dL以上のグルコースを含む。逆に、「正常血糖レベルのグルコース」は、一般的/正常であり、血糖不均衡の臨床状態(又は重度の臨床状態)に関連することが通常は知られていないグルコースの濃度を指す。
【0089】
いくつかの実施形態では、正常血糖レベルのグルコースは、約70mg/dLグルコーから200mg/dL未満までのグルコースを含む。いくつかの実施形態では、正常血糖レベルのグルコースは、約70mg/dLグルコース~約175mg/dLグルコース、約70mg/dLグルコース~約150mg/dLグルコース、約70mg/dLグルコース~約125mg/dLグルコース、又は約70mg/dLグルコース~約100mg/dLグルコースを含む。「低血糖レベルのグルコース」は、臨床的低血糖症を引き起こすか、又は引き起こす危険性があるグルコースの濃度を指す。
【0090】
いくつかの実施形態では、低血糖レベルのグルコースは、70mg/dL以下のグルコースを含む。いくつかの実施形態では、低血糖レベルのグルコースは、60mg/dL以下、50mg/dL以下、40mg/dL以下、又は30mg/dL以下のグルコースを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、高血糖レベルのグルコースは、200mg/dL以上のグルコースを含み、正常血糖レベルのグルコースは、約70mg/dLグルコースから200mg/dL未満までのグルコースを含み、低血糖レベルのグルコースは、約70mg/dL未満のグルコースを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、被験体は、高血糖症である。いくつかの実施形態では、被験体は、糖尿病又は他の何らかのグルコース調節疾患である。いくつかの実施形態では、被験体は、糖尿病である。いくつかの実施形態では、被験体は、I型糖尿病である。いくつかの実施形態では、被験体は、II型糖尿病である。
【0093】
いくつかの実施形態では、グルコース応答性物質は、高血糖レベルのグルコースへの曝露時に過酸化物を生成する。いくつかの実施形態では、方法は、過酸化物への曝露時に第1の過酸化物感受性リンカーを第1のPVAポリマーから脱離することをさらに含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、方法は、過酸化物への曝露時に第3の過酸化物感受性リンカーを第2のPVAポリマーから脱離することをさらに含む。いくつかの実施形態では、第3の過酸化物感受性リンカーを第2のPVAポリマーから脱離して、治療薬をマイクロニードルパッチから放出する。
【0095】
いくつかの実施形態では、方法は、血糖値を低下させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、血糖値は、正常血糖値以上にまで低下する。いくつかの実施形態では、治療薬は、インスリンを含む。いくつかの実施形態では、方法は、低血糖症を引き起こす前に治療薬の放出を終了させることをさらに含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、疾患は、糖尿病である。いくつかの実施形態では、疾患は、I型糖尿病である。いくつかの実施形態では、疾患は、II型糖尿病である。
【0097】
いくつかの実施形態では、第1の過酸化物感受性リンカーは、ボロン酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、第1の過酸化物感受性リンカーは、過酸化物への曝露時に第1のPVAポリマーから脱離する。いくつかの実施形態では、第1の過酸化物感受性リンカーは、N1-(4-ボロノベンジル)-N3-(4-ボロノフェニル)-N1,N1,N3,N3-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミニウム(TSPBA)である。
【0098】
いくつかの実施形態では、第2の過酸化物感受性リンカーは、ボロン酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、第2の過酸化物感受性リンカーは、過酸化物への曝露時に第2のPVAポリマーから脱離する。いくつかの実施形態では、第2の過酸化物感受性リンカーは、N1-(4-ボロノベンジル)-N3-(4-ボロノフェニル)-N1,N1,N3,N3-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミニウム(TSPBA)である。
【0099】
いくつかの実施形態では、第3の過酸化物感受性リンカーは、ボロン酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、第3の過酸化物感受性リンカーは、過酸化物への曝露時に第2のPVAポリマーから脱離する。いくつかの実施形態では、第3の過酸化物感受性リンカーは、炭酸=4-ニトロフェニル=(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(NBC)である。
【0100】
いくつかの実施形態では、グルコース応答性物質は、グルコースオキシダーゼを含む。いくつかの実施形態では、過酸化物除去酵素は、カタラーゼである。いくつかの実施形態では、治療薬は、インスリンである。いくつかの実施形態では、マイクロニードルは、ヒアルロン酸(HA)をさらに含む。
【0101】
さらなる態様では、
マイクロニードルパッチを被験体に提供することであって、マイクロニードルパッチは、
それぞれが基部及び先端部を有する複数のマイクロニードルと、
マイクロニードルの基部が取り付けられている基材と、を含み、
マイクロニードルは、
第1の過酸化物感受性リンカーで架橋された第1のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第1のナノゲル内に封入された過酸化物除去酵素であって、第1のナノゲルは、第1のPVAポリマーに埋め込まれている、過酸化物除去酵素と、を含む、
シェルと、
第2の過酸化物感受性リンカーで架橋された第2のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第2のナノゲル内に封入されたグルコース応答性物質であって、第2のナノゲルは、第2のPVAポリマーに埋め込まれている、グルコース応答性物質と、
治療薬であって、治療薬は、第3の過酸化物感受性リンカーを用いて前記第2のPVAポリマーに共有結合している、治療薬と、を含む、
コアと、を含む、ことと、
マイクロニードルを生物学的障壁に挿入し、高血糖レベルのグルコースが存在することにより治療薬をマイクロニードルパッチから放出することと、を含む、治療を必要とする被験体において疾患を治療するための方法もまた本明細書に開示されている。
【0102】
別の態様では、治療を必要とする被験体において高血糖を治療するための方法であって、先の態様又は実施形態のマイクロニードルパッチを被験体に投与することを含む方法が本明細書に開示されている。いくつかの実施形態では、高血糖は糖尿病の症状である。
【0103】
高血糖状態への迅速な応答性を備えた革新的な設計により、コアシェル型パッチは、血糖値を効果的に正常範囲内でコントロールすることができる。さらに、開示されているマイクロニードルパッチは、天然インスリンと比較して低血糖のリスクを回避することができる。現在のグルコースオキシダーゼ(GOx)ベースのグルコース応答性インスリン放出システムは、pH感受性材料からなるマトリックスを主に利用しており、その応答速度は極めて遅く(生理学的緩衝システムではpHレベルを効率的に低下させることが難しいため)、そのため依然として臨床への移行が困難なままである。本開示において、酵素により生成されたH2O2は、マトリックスの解離及びインスリンの脱離の両方に基づいて、自己調節インスリン放出のトリガーとして直接適用される。これは、生体内及び生体外の両方の研究において、グルコースレベルの変化に対して、著しく、より速く、かつ、より鋭い応答性につながる。
【0104】
本明細書に開示されているマイクロニードルパッチはまた、優れた生体適合性を有する。いくつかの実施形態では、マイクロニードルパッチの基部及びマイクロニードルのマトリックスは、それぞれヒアルロン酸(HA)及びポリ(ビニルアルコール)(PVA)から作製され、これらは高度の生体適合性があり、更に調整することができる。HA及びPVAは両方とも、優れた生体適合性及び生分解性のために、非常に多くのFDA承認治療用製剤又は医療機器に、広く適用されてきた。加えて、以前に適用された、応答速度を高めるための低酸素応答システムは、長期使用においてH2O2による重度の炎症を引き起こした。本開示において、グルコースの酸化によって生成された過剰なH2O2は、表面被覆膜によってマイクロニードルの空間内に制限され、表面被覆膜は、正常組織をH2O2による損傷から保護することができる。
【0105】
本明細書に開示されているマイクロニードルパッチはまた、好都合に投与することができる。架橋ゲルとマイクロニードルアレイパッチとの一体化は、痛みのない、使い捨ての投与様式を利用可能にする。更に、インスリン投与量及び応答速度は、個人の要求に応じて容易に調整することができる。このプラットフォームはまた、埋め込まれた針/電極又はその他の針-注射システムを有する、インスリンポンプと比較してはるかに便利である。
【実施例】
【0106】
以下の実施例は、開示された主題による組成物、装置、方法及び結果を説明するために以下に示される。これらの実施例は、本明細書に開示されている主題の全ての態様を含むことを意図するものではなく、むしろ代表的な方法及び結果を説明することを意図している。これらの実施例は、当業者に明らかである本発明の等価物及び変形を排除することを意図していない。
【0107】
実施例1:自己制御インスリン放出のためのコアシェル型マイクロニードルゲル
結果
【0108】
TSPBAは、過剰の4-(ブロモメチル)フェニルボロン酸とのN1,N1,N3,N3-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミンの四級化反応によって合成した(スキーム1)。TSPBA上の第四級アンモニウム基は、その水溶性を非常に高め(約100mg/mL)、この水溶性は、有機溶媒を用いないPVA水溶液とのゲル形成を促進する。10mMのH
2O
2の存在下で酸化すると、TSPBAのうちの70%は、p-キノンメチド(p-ヒドロキシルメチレンフェノール)を放出し、H1-NMR(
図7)で明示されたように、2時間で第3級アミンとなった[18]。インスリン-NBCは、DMSO及び10mMのNaHCO3水溶液からなる混合溶媒中、やや過剰のNBCの存在下で調製した[19]。生成物を分取規模の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)[13]を用いて精製し、MALDI-TOF質量分析法によって、1個のNBCによって修飾された1個のインスリンのコンジュゲートであることを分子量から確認した(
図8)。重要なことには、インスリン-NBCは、天然インスリンよりもpH7.4ではるかに高い水溶性(>100mg/mL)を有し、この水溶性は、高負荷容量のインスリンを有するMNゲルを調製するために重要であった。インスリン-NBCのフェニルボロン酸エステルは、水溶液中で加水分解することができ、この反応は、ジオールの存在下で促進される[19]。その後、インスリン-NBCは、フェニルボロン酸とPVA中のシス-1,3-ジオールとの間の動的エステル結合を介してPVA鎖にコンジュゲートすることができた[21]。この反応溶液にTSPBAを添加すると、弾性率(G’)が急激に上昇し、60秒でPVA鎖間にネットワークが形成された(
図9)[22]。TSPBAによるPVAのゲル化は、感水性材料からなるシェル構造の完全性を維持するために重要であり、コアを調製するときに水溶液へのその溶解を特異的に防止する。
【0109】
【0110】
H
2O
2感受性インスリン放出を10mMのH
2O
2の存在下、PBS中、pH7.4で評価した。インスリンを、H
2O
2を添加して形成したゲルから一定速度で放出させた。半分を超えるインスリンが2時間以内に放出された(
図2a)。フェニルボロン酸とジオールとの間のエステルは、酸性溶液中では不安定であるが[23]、PVAとフェニルボロン酸との間で形成されるゲルは、酸性環境中で安定である[21]。pH3.5では、ゲルは、高い安定性を示し、インスリンは、pH7.4と比較してかなり遅い速度で放出された。
【0111】
次に、インスリンの放出速度を、一般的な高血糖レベル(400mg/dL)、正常血糖レベル(100mg/dL)及び対照レベル(0mg/dL)を含む3つの異なるグルコース濃度で、GOxの存在下、初期pH7.4のPBS中で評価した。H
2O
2生成率は、蛍光過酸化水素アッセイキットを用いて測定した(24)。高血糖グルコース濃度400mg/dLでは、H
2O
2生成は、効率的であり、30分以内に6mMの高さに達した(
図2b)。高血糖溶液と比較すると、H
2O
2は、100mg/dLグルコースの正常血糖溶液中では、はるかに遅い速度で生成された。インスリン放出は、インスリン放出速度が100mg/dLのグルコース濃度と比較して400mg/dLのグルコース濃度の下で劇的に促進されるように、H
2O
2放出に対応したが、対照溶液中でゲルをインキュベートしたときには、ごくわずかなインスリン放出が観察され(
図2c)、ゲルの形態変化と一致した(
図2d)。
【0112】
さらに、試験溶液のグルコース濃度を正常血糖条件から高血糖条件に徐々に増加させたとき、PVA-TSPBAゲルからのインスリン放出速度は、定常的に増加し、グルコース濃度を100~400mg/dLに増加したとき、インスリン放出速度の最大15倍の差異が2時間で達成された(
図2e)。正常血糖でのインスリンの制限された放出は、インビボ用途のための重要な安全性の特徴である。さらに、正常血糖条件と高血糖条件との間でグルコース濃度を交互に変化させることによってインスリンの脈動性速度論的放出プロファイルを数サイクルにわたってモニターし、インスリンの脈動性放出プロファイルは、ゲルが正常血糖レベル及び高血糖レベルに交互に曝露されるときに達成された(
図2f)。要するに、これらの知見は、架橋ゲルの解離は、高血糖状態でのみ起こり、PVA-TSPBAゲルは、グルコース濃度依存的挙動でインスリンを放出することを示唆している。最後に、ゲルからの天然及び放出されたインスリンの遠紫外円偏光二色性(CD)スペクトル(1mg/mL)は類似しており、放出されたインスリンがαヘリックス二次構造及び生物活性を保持していることを示唆する(
図10)。
【0113】
コアシェル型MNゲルを製造するために、マイクロ金型アプローチを用いてPVA-TSPBAゲルをMNアレイパッチに一体化した[9]。「溶液ゲル化」法は、架橋ゲルをMNに都合よく充填し、コアシェル型構造を形成するために開発された。手短に言えば、低粘度のPVA、TSPBA及びCAT-NG(
図11)の希釈水溶液を調製し、混合し、シリコーン金型中に堆積させた。混合溶液を30分間真空下で金型内に保持し、次いで1時間500rpmで遠心分離して金型上に「シェル」を形成した。PVA、TSPBA及びGOx-NG(
図12)の別のラウンドの希釈水溶液を金型に充填し、この手順を所定量のインスリン充填ゲルが達成されるまで数回繰り返した。このプロセス中に、アクリル化PVA及びラジカル開始剤を未処理PVA水溶液に添加して、部分的に非分解性のネットワークを形成した。最後に、ヒアルロン酸(HA)水溶液を流し込み、真空下で乾燥させて、機械的支持のための基部を得た[9]。得られた装置を10×10mm2パッチ上の20×20MNアレイに配置した。針は、円錐形で、基部直径が300μm、先端部で5μm、高さが600μmであった(
図3a)。MNの構造は、SEM及び蛍光顕微鏡法で確認された(
図3b、
図3c)。MNの機械的強度は、2N/針と決定され(
図3d)、この機械強度は、破損することなく皮膚挿入を十分に可能にした(25)。MNアレイ上にCAT層を被覆することの実現可能性を検証するために、ローダミンB標識CAT-NG充填PVA-TSPBAゲルのシェルによって構築された中空MNアレイパッチを調製した。これらの中空MNは、底面図、側面図又は俯瞰図で完全なシェル構造を示した(
図3e及び
図13)。さらに、このCAT-NG充填シェルの完全性は、コア部分を調製するときに影響を受けなかったことが見出された(
図3f)。まとめると、これらの結果は、CAT-NGを埋め込んだシェルに加えて、コアにインスリン及びGOx-NGを充填したコアシェル型MNアレイを調製することの実現可能性を実証した。メタクリル化PVA形成ゲルは、GOx-NGよりもインスリンを選択的に放出することが示された(
図3g及び
図14)。GOx-NGの放出は、インスリンよりもはるかに大きいサイズ(~12nm)及び共有結合により防止された可能性が高く、それによってGOxの潜在的な局所毒性及び全身毒性が低減する[16]。
【0114】
ストレプトゾトシン(STZ)によって誘発された1型糖尿病のマウスモデルにおいて、コアシェル型MNアレイパッチのインビボ性能を評価した。マウスを以下の6つの群に分けた。1)シェルしたCAT-NGGOx-NG及びインスリン-NBC充填ゲルのMNアレイパッチ(MN-CAT)による処置。2)ヒト組換えインスリンの皮下注射による処置。3)GOx-NG及びインスリン-NBCを充填したゲル(MNゲル(G+I))のMNアレイパッチをシェルなしで処置。4)マイクロニードルアレイパッチ充填ブランクゲル(MNゲル)のみによる処置。5)インスリン-NBC充填ゲル(MN-ゲル(I))のMNアレイパッチによる処置。6)GOx及びインスリン並びにCAT-NGを充填したゲル(MNゲル(G+C+I))のMNアレイパッチによる処置した群。インスリン投与量は、全てのMNベースのインスリン処置について50mg/kgに設定した。トリパンブルーによる染色は、切除された皮膚においてMNの浸透の成功を示した(
図4a、
図4b)[26]。さらに、MNによって引き起こされた皮膚上の一時的なマイクロチャネルは、処置後2時間以内に迅速に回復した(
図15、補足資料)。
【0115】
投与後、マウスのBGLを経時的にモニターした。MNゲル(G+I)(
図16)及びMN-CAT(
図4c)で処置したマウスのBGLの急速な減少は、投与後30分で観察され、その後、BGLは、約100mg/dLまでゆっくりと減少し、皮下注射されたインスリンよりもはるかに長く、ほぼ6時間にわたって200mg/dL近くを維持した(
図4c)。これは、GOx存在下でのグルコースの酸化によるH
2O
2の迅速な局所生成及びH
2O
2に対してゲルが高感度であることに起因する。対照的に、MNゲル(I)、MNゲル(G+C+I)及びMNゲルで処置したマウスでは、明らかなBGLの減少が観察されなかった。これらの結果は、GOxの有無にかかわらずPVA-TSPBAゲルを皮下注射した糖尿病マウスで観察された結果と一致した(
図17)。まとめると、これらの観察は、インスリンの放出におけるH
2O
2の本質的な役割及び生理学的環境におけるPVA-TSPBA中のインスリンの高い安定性を裏付けた。インビトロでは、CATは、正常血糖時(100mg/dL)に効率的に、H
2O
2を優先的に分解することができる(
図18)。しかしながら、BGLを減少させるMNゲル(G+C+I)の能力は、著しく制限されており(
図4c)、安定したレベルのH
2O
2を局所的に確立するために、シェル層でCATを分離する必要性を示している。さらに、MN-CAT及びMNゲル(G+I)で処置したマウスにおける血漿ヒトインスリンレベルは、MNゲル(I)で処置したマウスよりも顕著に高かった(
図19)。
【0116】
腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)を、MN又はインスリンの投与後1時間にさらに実施した。IPGTT後、全ての群でBGLの急増が観察された(
図4d)。しかしながら、健常マウス及びMN-CATのみが短期間で血糖値を正常血糖値に回復することができ、MG-CATで処置したマウスは、グルコース負荷に対して顕著に増加した耐糖能を示した(
図4e)。MN-CATによる処置に関連付けられた低血糖のリスクを評価するために、MNアレイパッチで処置した健常マウスのBGLを観察した。インスリンで処置したマウスのBGLは、顕著な減少を示したが、MN-CATで処置したマウスのBGLは、わずかな減少しか示さず、正常血糖状態でゲルからインスリンがゆっくり放出されることと一致した(
図4f)。さらに、MN-CAT処置群は、インスリンよりも顕著に低い低血糖指数を示し(
図4g)、MN-CATが臨床応用に安全であることを示唆している。さらに、MNのインビボグルコース制御能力を評価するために、40時間の長さの連続的なMN投与を実施した(
図4h)。この時間の間、BGLは、100~250mg/dLの狭い範囲で維持されており、重大な低血糖は、記録されなかった。
【0117】
フェニルボロン酸とH
2O
2との間の反応は、発生したH
2O
2の周囲の組織に対する有害性を軽減する。しかしながら、いかなる過剰の未反応H
2O
2も、依然として有害となる可能性がある。MNゲルで処置した皮膚と比較すると(
図5a)、MNゲル(G+I)で処置したマウスでは明らかな炎症が観察された。直接皮下注射したゲルで処置した皮膚についても同様の現象が観察された(
図20)。これとは著しく対照的に、MN-CAT及びMNゲル(G+C+I)で処置したマウスの皮膚には、目視できる炎症がほとんど観察されなかった(
図5a)。これらの所見は、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色結果において補強された。MNゲルで処置した皮膚と比較すると、MNゲル(G+I)で処置した皮膚サンプルは、明らかな好中球浸潤を示し、生成されたH
2O
2によって誘導される病態生理学的反応及び組織損傷を示している[27]。しかしながら、MNゲル(G+C+I)及びMN-CATで処置したマウスの皮膚では、好中球の浸潤が大幅に低減した。CAT-MN及びMNゲル(G+C+I)の両方で処置したマウスの表皮の厚さ及び皮膚の厚さは、ブランクMNで処置した皮膚の厚さと同等であったが、MNゲル(G+I)で処置したマウスでの厚さよりも顕著に薄かった(
図5b)[28]。さらに、in situ TUNELアッセイで染色された皮膚組織は、MNゲル(G+I)で処置した皮膚サンプルにおける細胞アポトーシスを明らかに示したが、CAT充填又は被覆MNで処置した皮膚組織では、ごくわずかな細胞死が観察された。(
図5c)。
【0118】
要約すると、グルコース応答性スマートインスリン送達のためのコアシェル型ゲル化MNアレイパッチが開示されている。MNゲルは、希釈溶液の層ごとの堆積を含む「溶液ゲル化」法によって調製された。インビトロ実験では、この架橋ゲルが、高血糖条件においてGOxが生成したH2O2によって誘発されたときに、インスリンを迅速に放出することができたことが示された。H2O2の局所レベルの上昇は、ゲルマトリックスからのインスリンの脱離およびマトリックス自体の分解の両方を促進し、効果的なグルコース応答性に寄与する。インビボ実験では、低血糖の重大な危険性を避けると同時に、MN-CATがBGLの調節及び正常血糖の維持に非常に有効であることが示された。重要なことに、CAT被覆の利用は、生成されたH2O2によって引き起こされる炎症を顕著に排除することが期待される。この生体反応性コアシェル型MNアレイパッチは、生理的因子制御様式及び増強された生体適合性を有する経皮薬物送達のための幅広いプラットフォームを提供する。
材料
【0119】
4-(ブロモメチル)フェニルボロン酸及び4-(ヒドロキシメチル)フェニルボロン酸は、Boron Molecularから購入した。N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン(TMPA)、4-ニトロベンゾイル=クロリド、トリエチルアミン、PVA(89~98KDa、99%加水分解)は、Sigma-Aldrichから購入した。炭酸=4-ニトロフェニル=(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(NBC)は、文献[29]に従って合成した。TSPBAは、TMPAと4-(ブロモメチル)フェニルボロン酸とから合成した。PVAメタクリレートは、PVAと無水メタクリル酸との間のエステル化反応から合成された。インスリン-NBCは、DMSOとNaHCO3水溶液との混合溶媒中でインスリンとNBCとから合成した。
方法
【0120】
TSPBAの合成 4-(ブロモメチル)フェニルボロン酸(1g、4.6mmol)及びN,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン(0.2g、1.5mmol)をDMF(40mL)中で混合し、60℃で24時間撹拌した。混合物をTHF(100mL)に注ぎ入れ、ろ過し、THF(3×20mL)で洗浄した。一晩真空乾燥した後、純粋なTSPBA(0.6g、収率70%)を得た。1H-NMR(300MHz,D2O,δ):7.677(d,4H),7.395(d,4H),4.409(s,4H),3.232(t,4H),2.936(s,6H),2.81(m,2H).
【0121】
インスリン-NBCの合成。インスリン(100mg)を撹拌しながら0.1M NaHCO3緩衝液(5mL、pH=8.5)に溶解した。上記溶液に、20mgのNBCを含有する5mLのDMSO溶液を添加した。次に反応混合物を室温で一晩撹拌し、続いてpH調整してインスリン-NBCを沈殿させた。高速液体クロマトグラフィー(HPLC、Agilent)を用いて生成物を分取精製した。
【0122】
PVAメタクリレートの合成。PVA(1g)及び無水メタクリル酸(1g)を、トリエチルアミン(1g)を含有するDMSO(20mL)に溶解した。溶液を室温で一晩撹拌した。THFを添加してPVAメタクリレートを沈殿させ、3回洗浄した。生成物を真空乾燥した。
【0123】
ローダミンB又はFITCで標識したインスリン又はCAT。DMSO(1mL)に溶解したイソチアン酸ローダミンB(0.5mg)を,NaHCO3(10mM、1mL)に溶解したインスリン(20mg)に添加した。混合物を一晩撹拌し、DI H2O(3×2L)に対して透析した。得られた溶液を凍結乾燥して、ローダミンB標識インスリンを得た。他の蛍光標識タンパク質も同じ方法で得た。蛍光標識インスリン又はCATを、未標識のものと同じ方法で使用し、蛍光画像を蛍光顕微鏡法(Olympus,IX71)で撮影した。
【0124】
PVAメタクリレートゲルからのインスリン放出。インスリン又はインスリン-NBCを、PVAメタクリレートを含有するH2Oに溶解し、光開始剤(Irgacure 2959、5%wt/vol)を添加した。この溶液を3つのチューブに割り当て、ゲル化のために30秒間UV光(360nm)に露光した。30秒のゲル化の後、さらに1mLのPBS及び所定量のH2O2を添加した。所定の時間間隔で、溶液(それぞれのチューブ10μL)を取り出し、クマシーブルー(200μL)で染色した。595nmにおける吸光度をInfinite 200 PROマルチモードプレートリーダー(TecanGroup Ltd.)で検出した。インスリン含有量は、標準曲線によって較正した。
【0125】
PVAメタクリレートゲルからのGOx-NG放出。天然GOx又はGOx-NGを、PVAメタクリレートを含有するH2Oに溶解し、開始剤(Irgacure 2959、5%wt/vol)を添加した。この溶液を3つのチューブのうちの1つに割り当て、UV光(360nm)に30秒間露光した。次に、さらに1mLのPBSを添加した。所定の時間間隔で、溶液(それぞれのチューブ10μL)を取り出し、クマシーブルー(200μL)に添加した。595nmにおける吸光度をInfinite 200 PROマルチモードプレートリーダー(TecanGroup Ltd.)で検出した。GOx濃度は、標準曲線によって較正した。
【0126】
GOx存在下でのグルコース溶液中のH2O2生成速度アッセイ。H2O2濃度は、製造元のプロトコル(Sigma-Aldrich)に従って蛍光過酸化水素アッセイキットを用いて決定した。GOx(0.2mg/mL)を含有するグルコース溶液(100又は400mg/dL)を37℃でインキュベートした。試料(それぞれのチューブ10μL)を取り出し、指定した時間間隔で希釈し、蛍光強度を検出した。
【0127】
インスリン-NBC充填PVA-TSPBAゲルの調製。PVA-TSPBAゲルは、PVAとTSPBAとを一緒に混合することによって調製した。PVA(H2O中10重量%、100μL)及びインスリン-NBC(H2O中10重量%、30μL)を最初に混合し、続いてTSPBA(H2O中10重量%、30μL)を添加して、頑丈なゲルを製造した。インビトロでのインスリン放出実験の間に、このゲルを小片に切断し、異なる条件下でインキュベートした。
【0128】
PVA-TSPBAゲルからのインビトロインスリン放出。インスリン-NBC充填PVA-TSPBAゲルを、pH7.4の1mLの10mMのPBSを含む遠心分離管に等分した。様々な量のグルコース(0、100又は400mg/dLの最終濃度)及びGOx(0.2mg/mL)を溶液に添加した。所定の時間間隔で、溶液(それぞれのチューブ10μL)を取り出し、クマシーブルー(200μL)で染色し、595nmにおける吸光度をInfinite 200 PROマルチモードプレートリーダー(Tecan Group Ltd.)で検出した。インスリン濃度は標準曲線によって較正した。
【0129】
マイクロニードルアレイパッチの製造(例としてMN-CATを使用)。この研究における全てのMNは、Blueacre Technology Ltd.製の5つの均一シリコーン金型を用いて製造された。それぞれのMNは、直径300μmの円形基部を有し、約5μmの先端半径まで600μmの高さにわたって先細になっている。MNは、600μmのチップ-チップ間隔で20×20のアレイに配置された。最初に、PVA(H2O中3.5重量%、450μL)、TSPBA(H2O中3.5重量%、150μL)及びCAT-NG(400μLのH2O中1mg)の希釈水溶液を調製し、一緒に混合した。シリコーン金型内に堆積させた後、溶液を30分間減圧下に保ち、次いでHettich Universal 32R遠心分離機に移し、500rpmで20分間、ゲル溶液をMNキャビティ内に圧縮して金型上に膜を形成した。次に、PVA、メタクリル化PVA、TSPBA、GOx-NG及び光開始剤(Irgacure 2959、5%wt/vol)の希釈水溶液を金型に投入し、所定量のインスリン-NBCゲルを投入するまでこの手順を数回繰り返した。最後に、2mLのHA(H2O中4重量%)を銀接着テープで囲まれたそれぞれのマイクロ金型に充填し、2日間真空乾燥した。乾燥後、MNアレイをシリコーン金型から注意深く分離し、MNを短時間のUV照射(365nmの波長)を介して架橋重合させた。MNの形態は、FEI Verios 460L電界放出走査型電子顕微鏡で特徴評価した。
【0130】
機械的強度試験。応力-ひずみゲージを有するマイクロニードルの機械的強度は、MTS 30G引張試験機上でステンレス鋼プレートをマイクロニードルに押し付けることによって決定された。マイクロニードルの先端とプレートとの間の初期ゲージは、2.00mmであり、ロードセル容量は、10.00Nであった。マイクロニードルに接近するプレートの速度は、0.1mm/sに設定した。マイクロニードルの破壊力は、針が座屈し始める力として記録された。
【0131】
インビトロ皮膚浸透試験。MNのインビトロ皮膚浸透能を評価するために、MNをマウスの皮膚に10分間挿入した。光学顕微鏡(Leica EZ4 D実体顕微鏡)による撮像の前に、皮膚を10分間トリパンブルーで染色した。
【0132】
検出力分析によって計算された標本サイズ:G*power3.1。実験は、無作為化の方法を使用しなかった。研究者らは、実験及び結果評価の間、割り当てを盲検化されなかった。
【0133】
ストレプトゾトシン誘発糖尿病マウスを用いたインビボ研究。糖尿病治療のためのMNアレイパッチ及びゲルの両方のインビボ有効性をストレプトゾトシン誘発性成体糖尿病マウス(オスC57B6、8週齢、Jackson Laboratory)で評価した。動物実験プロトコルは、ノースカロライナ州立大学の施設内動物管理使用委員会及びノースカロライナ大学チャペルヒル校に承認された。血漿グルコースをClarity GL 2 Plusグルコースメーター(Clarity Diagnostics)を用いてマウスの尾静脈血サンプル(~3μL)から測定した。薬物投与の前にマウスグルコースレベルを2日間モニターした。それぞれの群につき5匹のマウスを、MN又は天然インスリンを用いて処置するために選択した。それぞれのマウスのグルコースレベルを安定化するまでモニターした。インスリン-NBC充填ゲルで処置したマウスについては、PVA(H2O中10重量%)、インスリン-NBC(10μLのH2O中50μg)及びGOx-NG((5μLのH2O中3μg)、TSPBA(H2O中10重量%)を連続的に皮下注射して、in situでゲルを形成させた。
【0134】
統計分析。処置群と対照群との間の血糖値の差は、対応のないスチューデントのt検定によって決定した。両側P値が0.05未満であれば、結果が統計的に有意であると見なした。統計的アプローチは、全ての分析を通して一貫していた。
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【0162】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、開示された発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で引用した刊行物及びそれらが引用されている資料は、参照により具体的に組み込まれる。
【0163】
当業者であれば、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識し、又は日常的な実験のみを用いて確かめることができるであろう。そのような等価物は、添付の特許請求の範囲によって包含されることを意図している。
本発明は、次の態様にも関する。
(1)それぞれが基部及び先端部を有する複数のマイクロニードルと、
前記マイクロニードルの前記基部が取り付けられている基材と、を含む、マイクロニードルパッチであって、
前記マイクロニードルは、
第1の過酸化物感受性リンカーで架橋された第1のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第1のナノゲル内に封入された過酸化物除去酵素であって、前記第1のナノゲルは、前記第1のPVAポリマーに埋め込まれている、過酸化物除去酵素と、を含む、
シェルと、
第2の過酸化物感受性リンカーで架橋された第2のポリ(ビニルアルコール)(PVA)ポリマーと、
第2のナノゲル内に封入されたグルコース応答性物質であって、前記第2のナノゲルは、前記第2のPVAポリマーに埋め込まれている、グルコース応答性物質と、
治療薬であって、前記治療薬は、第3の過酸化物感受性リンカーを用いて前記第2のPVAポリマーに共有結合している、治療薬と、を含む、
コアと、を含む、マイクロニードルパッチ。
(2)前記第1の過酸化物感受性リンカーは、ボロン酸エステルを含む、上記(1)に記載のマイクロニードルパッチ。
(3)前記第1の過酸化物感受性リンカーは、N1-(4-ボロノベンジル)-N3-(4-ボロノフェニル)-N1,N1,N3,N3-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミニウム(TSPBA)である、上記(1)又は(2)に記載のマイクロニードルパッチ。
(4)前記第2の過酸化物感受性リンカーは、ボロン酸エステルを含む、上記(1)~(3)のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
(5)前記第2の過酸化物感受性リンカーは、N1-(4-ボロノベンジル)-N3-(4-ボロノフェニル)-N1,N1,N3,N3-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミニウム(TSPBA)である、上記(1)~(4)のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
(6)前記第3の過酸化物感受性リンカーは、ボロン酸エステルを含む、上記(1)~(5)のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
(7)前記第3の過酸化物感受性リンカーは、炭酸=4-ニトロフェニル=(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(NBC)である、上記(1)~(6)のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
(8)前記グルコース応答剤は、グルコースオキシダーゼを含む、上記(1)~(7)のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
(9)前記過酸化物除去酵素は、カタラーゼである、上記(1)~(8)のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
(10)前記治療薬は、インスリンである、上記(1)~(9)のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
(11)前記マイクロニードルは、ヒアルロン酸(HA)をさらに含む、上記(1)~(10)のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチ。
(12)上記(1)~(11)のいずれか一項に記載のマイクロニードルパッチを前記被験体に投与することと、
高血糖レベルのグルコースの存在下で前記マイクロニードルパッチから前記治療薬を放出することと、を含む、治療薬を被験体に送達する方法。
(13)前記被験体は、糖尿病である、上記(12)に記載の方法。
(14)前記グルコース応答剤は、高血糖レベルのグルコースへの曝露時に過酸化物を生成する、上記(12)又は(13)に記載の方法。
(15)前記方法は、前記過酸化物への曝露時に前記第1の過酸化物感受性リンカーを前記第1のPVAポリマーから脱離することをさらに含む、上記(12)~(14)のいずれかに一項に記載の方法。
(16)前記方法は、前記過酸化物への曝露時に前記第2の過酸化物感受性リンカーを前記第2のPVAポリマーから脱離することをさらに含む、上記(12)~(15)のいずれかに一項に記載の方法。
(17)前記方法は、前記過酸化物への曝露時に前記第3の過酸化物感受性リンカーを前記第2のPVAポリマーから脱離することをさらに含む、上記(12)~(16)のいずれかに一項に記載の方法。
(18)前記第3の過酸化物感受性リンカーを前記第2のPVAポリマーから脱離することで、前記マイクロニードルパッチから前記治療薬を放出する、上記(17)に記載の方法。
(19)前記方法は、血糖値を低下させることをさらに含む、上記(12)~(18)のいずれかに一項に記載の方法。
(20)前記治療薬は、インスリンを含む、上記(12)~(19)のいずれか一項に記載の方法。
(21)前記方法は、低血糖症を引き起こす前に前記治療薬の放出を終了することをさらに含む、上記(12)~(20)のいずれか一項に記載の方法。