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▶ プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】RAS抑制性ペプチドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20230224BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230224BHJP
   C07K 14/00 20060101ALN20230224BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N15/12 ZNA
C07K14/00
C12N15/62 Z
【請求項の数】 2
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020147272
(22)【出願日】2020-09-02
(62)【分割の表示】P 2016568400の分割
【原出願日】2015-05-21
(65)【公開番号】P2021004242
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/001,587
(32)【優先日】2014-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーダイン,グレゴリー,エル.
(72)【発明者】
【氏名】マギー,ジョン,ハニー
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-528802(JP,A)
【文献】国際公開第2003/053996(WO,A2)
【文献】国際公開第2005/044845(WO,A2)
【文献】国際公開第2005/059131(WO,A2)
【文献】国際公開第2008/133929(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2005/0287542(US,A1)
【文献】Kristen L. Huber et al.,Robust production of a peptide library using methodological synchronization.,Protein Expr. Purif.,2009年05月18日,Vol.67, No.2,p.139-147,doi: 10.1016/j.pep.2009.05.006
【文献】Stacey E. Rutledge et al.,Molecular Recognition of Protein Surfaces: High Affinity Ligands for the CBP KIX Domain.,J. Am. Chem. Soc.,2003年11月26日,Vol.125, No.47,p.14336-14347,doi: 10.1021/ja034508o
【文献】Abby M. Hodges and Alanna Schepartz,Engineering a Monomeric Miniature Protein.,J. Am. Chem. Soc.,2007年09月12日,Vol.129, No.36,p.11024-11025,doi: 10.1021/ja074859t
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00
C12N 15/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PX PX P(配列番号2)の配列を含むオリゴマー化ドメイン、
式中、X およびX がArgであり;X がArgまたはLysであり;X がTyrまたはCysである、
ならびに
131415DLX1819YX2122RLX2526YLX2930VA(配列番号3)の配列を含むαヘリックスドメイン、
式中、
13がPro、SerまたはCysであり;
14がVal、Ile、ThrまたはGluであり;
15がGluであり;
18がHisであり;
19がAla、GluまたはTrpであり;
21がTrpであり;
22がAlaであり;
25がTrpであり;
26がAsnであり;
29がTyrであり;および
30がAla、Pro、ValまたはArgである、
を含むペプチド。
【請求項2】
αヘリックスドメインは、標的タンパク質と会合する、請求項に記載のペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、米国仮特許出願である2014年5月21日出願の米国特許出願第62/001,587号の優先権を主張するものであり、その出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援
本発明は、米国立衛生研究所(NIH)により支給された助成金T32 GM007598の下で政府支援と共に行われた。米国政府は、本発明におけるある特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
従来型の治療薬は、広くは2種類:小分子および生物製剤に分類することができる。小分子は典型的には1000Da未満の質量を有し、タンパク質内の疎水性ポケットに高い親和性で結合し、多くは細胞を透過することができる。生物製剤は、他の生体分子の表面に高い親和性および特異性で結合することができるが、細胞に効率的に進入することはできない生体分子、通常はタンパク質(例えば抗体またはホルモンなど)である。ヒトタンパク質の約12%しか小分子に高い親和性で結合することができる疎水性ポケットを含有せず、ヒトタンパク質の10%未満は分泌される(すなわち、細胞の外側に輸送される)と推定されている。これら2つの群は相互排他的ではないため、ヒトタンパク質の78%超は、細胞内に存在するが疎水性結合ポケットを欠く。これらのタンパク質は、細胞内にあり御しにくい疎水性ポケットを含有する他のものと共に、しばしば「創薬が困難である(undruggable)」と称される。したがって、タンパク質標的の相互作用を抑制する分子の開発および特性化の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0004】
ヒト疾患の分子的病因の理解においては進展がなされているが、治療的利益のためにこれらの発見を利用する能力は、原因となるプロセスを標的とする薬物を作製する能力の欠如により限定されることが多い。多くの疾患は、タンパク質の異常な活性に関連付けることができ、酵素および細胞外標的の抑制剤の開発は実行可能なことが多いが、これらのタンパク質は、細胞内の全てのタンパク質の小部分しか占めない。残りのタンパク質は、ほとんどの場合、治療上御しにくいと見なされ、時に「創薬が困難である」と称される。本発明は、タンパク質標的の相互作用を抑制するため、かつタンパク質標的の相互作用を抑制するためのペプチドライブラリをスクリーニングするための方法およびシステムにおける用途のための、本明細書に記載されるペプチドを提供することによって、この問題を解決する。
【0005】
多くのタンパク質、特に高等生物におけるものは、部分的には他のタンパク質および生体分子との相互作用によってその活動を行う。こうした相互作用を特異的に妨害する能力は、さもなければ御しにくいプロセスを標的とする手段を提供し得るため、優れた治療的利益を有し得る。したがって、例えば、幅広いヒト癌の惹起および進行の両方に関連付けられるRasなどのタンパク質標的の相互作用を抑制する分子の開発および特性化が必要とされている。他のタンパク質標的としては、Myc/Maxヘテロ二量体、RalAタンパク質、βカテニン、YAP/TEAD、およびNEMO/IκBキナーゼが挙げられるが、これらに限定されない。定向進化、および結晶構造を使用した合理的ペプチド設計と連関した高スループットスクリーニングによって、Ras、Myc/Max、RalA、βカテニン、YAP/TEAD、およびNEMO/IκBキナーゼといった様々なタンパク質標的に結合し、かつその発癌活性に必要なエフェクタータンパク質を働かせるその能力を遮断する、小タンパク質(時にミニタンパク質と称される)が同定された。本明細書に記載されるペプチドは、癌などの増殖性疾患、およびRas/MAPK症候群(rasopathy)などの他の疾患の処置に有用である。
【0006】
本明細書において提供されるペプチドは、膵臓ポリペプチドファミリーの変異体に基づく。一態様では、配列:XPXPXPGDX11AX131415DLX1819YX2122RLX2526YLX2930VA(配列番号1)を含むペプチドが本明細書において提供され、式中、アミノ酸X、X、X、X、X、X11、X13、X14、X15、X18、X19、X21、X22、X25、X26、X29、およびX30は、本明細書に定義される通りであり、ペプチドは配列番号1と少なくとも93%同一である。
【0007】
別の態様では、第2のペプチドと会合した第1のペプチドを含むペプチド二量体が本明細書において提供され、第1および第2のペプチドは各々、独立して、配列番号1のペプチドを含む。本ペプチド二量体は、頭-尾配置で二量体化するペプチド単量体を含む。本ペプチド二量体は、ホモ二量体でもヘテロ二量体でもよい。
【0008】
一態様では、配列:XPXPXPGX1011AX131415DLX181920212223LX2526YLX2930VA(配列番号12)を含むペプチドが本明細書において提供され、式中、アミノ酸X、X、X、X、X、X10、X11、X13、X14、X15、X18、X19、X20、X21、X22、X23、X25、X26、X29、およびX30は、本明細書に定義される通りであり、ペプチドは配列番号12と少なくとも93%同一である。
【0009】
別の態様では、第2のペプチドと会合した第1のペプチドを含むペプチド二量体が本明細書において提供され、第1および第2のペプチドは各々、独立して、配列番号12のペプチドを含む。本ペプチド二量体は、頭-尾配置で二量体化するペプチド単量体を含む。本ペプチド二量体は、ホモ二量体でもヘテロ二量体でもよい。
【0010】
一態様では、配列:X-6-5-4-3-2-1PXPXPGX1011A X13141516LX181920212223LX2526YLX29303132(配列番号13)を含むペプチドが本明細書において提供され、式中、アミノ酸X-6、X-5、X-4、X-3、X-2、X-1、X、X、X、X、X、X10、X11、X13、X14、X15、X16、X18、X19、X20、X21、X22、X25、X26、X29、X30、31、およびX32は、本明細書に定義される通りであり、ペプチドは配列番号13と少なくとも93%同一である。
【0011】
別の態様では、第2のペプチドと会合した第1のペプチドを含むペプチド二量体が本明細書において提供され、第1および第2のペプチドは各々、独立して、配列番号13のペプチドを含む。本ペプチド二量体は、頭-尾配置で二量体化するペプチド単量体を含む。本ペプチド二量体は、ホモ二量体でもヘテロ二量体でもよい。
【0012】
一態様では、配列:XPXPXPGX10AAX1314AALHAYX21AX23LX25NYLX2930VX32(配列番号48)を含むペプチドが本明細書において提供され、式中、アミノ酸X、X、X、X、X、X10、X13、X14、X21、X23、X25、X29、X30、およびX32は、本明細書に定義される通りであり、ペプチドは配列番号48と少なくとも93%同一である。
【0013】
別の態様では、第2のペプチドと会合した第1のペプチドを含むペプチド二量体が本明細書において提供され、第1および第2のペプチドは各々、独立して、配列番号48のペプチドを含む。本ペプチド二量体は、頭-尾配置で二量体化するペプチド単量体を含む。本ペプチド二量体は、ホモ二量体でもヘテロ二量体でもよい。
【0014】
別の態様では、配列:PXPXP(配列番号2)を含むオリゴマー化ドメインを含むペプチドが本明細書において提供され、式中、X、X、およびXの各々は独立して、任意の非プロリンアミノ酸であり、Xは、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸(例えば、システイン、セレノシステイン)である。オリゴマー化ドメインは、ペプチドが別のペプチドと会合して二量体を形成することを可能にする。
【0015】
ある特定の実施形態では、配列:PXPXP(配列番号2)を含むオリゴマー化ドメインを含むペプチドであって、式中、XおよびXの各々は独立して、任意の非プロリンアミノ酸であり、XおよびXの各々は独立して、非プロリンアミノ酸、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸(例えば、システイン、セレノシステイン、Phe、Trp、Tyr、またはDap結合およびDab結合アクリルアミド残基などのアクリルアミド部分を含むアミノ酸)である、ペプチド。
【0016】
本ペプチドは、配列:X131415DLX1819YX2122RLX2526YLX2930VA(配列番号3)を含むαヘリックスドメインをさらに含み、式中、X13、X14、X15、X18、X19、X21、X22、X25、X26、X29、およびX30は、本明細書に定義される通りである。αヘリックスドメインは、タンパク質-タンパク質相互作用に関与し、標的タンパク質(例えば、Ras、Myc/Max、RalA、βカテニン、YAP/TEAD、およびNEMO/IκBキナーゼ)と会合する。
【0017】
別の態様では、配列:X131415DLX1819YX2122RLX2526YLX2930VA(配列番号3)を含むαヘリックスドメインを含むペプチドが本明細書において提供され、式中、X13、X14、X15、X18、X19、X21、X22、X25、X26、X29、およびX30は、本明細書に定義される通りである。
【0018】
配列番号1、12、および13の例示的なペプチドには、
GPRRPRCPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号4)、GPRRPRCPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYRVA(配列番号5)、GRRPRRPRCPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号6)、GPRRPRYPGDDAPVEDLIRFYNDLQQYLNVVA(配列番号7)、GCGGPRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号8)、GCGGPRRPRYPGDDACEEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号9)、GCGGPRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYRVA(配列番号10)、またはGCGGPRRPRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号11)が含まれるが、これらに限定されない。本ペプチドは、配列番号1または配列番号4~11のアミノ酸配列に対して約80%~約99%相同である配列を含んでもよい。本ペプチドは、配列番号1または配列番号4~11のアミノ酸配列と約80%~約99%同一である配列を含んでもよい。本ペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸変化(例えば、アミノ酸欠失および/または付加)を伴う、配列番号1または配列番号4~11のアミノ酸配列を含む配列を含んでもよい。例示的なペプチド、および例示的なペプチドと少なくとも80%相同または同一であるペプチドのいずれも、互いとヘテロ二量体またはホモ二量体を形成することができる。
【0019】
配列番号12、13、および48の例示的なペプチドには、
PRRPRCPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号14)、
PRRPRCPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYRVA(配列番号15)、
RRPRRPRCPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号16)、
PRRPRYPGDDAPVEDLIRFYNDLQQYLNVVA(配列番号17)、
PRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号18)、
CGGPRRPRYPGDDACEEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号19)、
PRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYRVA(配列番号20)、
PRRPRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号21)、
PRRPRCPGDDASLEDLHEYWARLWNYLYRVA(配列番号22)、
PRRPRCPGDQASLEELHEYWARLWNYLYRVA(配列番号23)、
PRRPRCPGDNASIKQLHAYWNRLYAYLAAVA(配列番号24)、
PRRPRCPGDDASIEDLHEYWQRLYAYLAAVA(配列番号25)、
PRRPRCPGDNASIKQLHAYWQRLYAYLAAVA(配列番号26)、
PRRPRCPGDNASIRQLHAYWQRLYAYLAAVA(配列番号27)、
GCGGPRRPRYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVA(配列番号28)、
PRRPRYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVA(配列番号29)、
225-H:PRRPKYPGDAASCAALHAYWARLWNYLYRVA(配列番号30)、
225-I:PRRPRYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRXA(配列番号31)、
225-J:PRRPRYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRZA(配列番号32)、
225-K:PRRPCYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVA(配列番号33)、
225-L:PRRPKCPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVA(配列番号34)、
225-M:PRRPRYPGXAASIAALHAYWARLWNYLYRVA(配列番号35)、
225-N:PRRPRYPGZAASIAALHAYWARLWNYLYRVA(配列番号36)、
225-4s1:PRRPKYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVR(配列番号37)、
291-A:PRRPKHPGHAASIAALHAYWARLWNYLYRVR(配列番号38)、
291-1:PRRPRHPGPNATISQLHHYWARLWNYLYRVR(配列番号39)、
291-H:PRRPHHPGHAASIAALHAYWARLWNYLYRVR(配列番号40)、
291-I:PRRPHYPGHAASIAALHAYWARLWNYLYRVR(配列番号41)、
291-Q3:PRRPRCPGHAASIAALHAYWARLWNYLYRVR(配列番号42)、
MY01:GPRRPRCPGDDASIRDLLKYWWRLRLYLLAVA(配列番号43)、
RL01:GPRRPRCPGDDASISDLLLYWLRLDRYLWAVA(配列番号44)、
RR01:GPRRPRCPGDDASIRDLVMYWYRLYFYLEAVA(配列番号45)、
225-1c:PRRPKYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVS(配列番号46)、
225-4d:RPRRPKYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVS(配列番号47)、
291-T:PRRPRYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVS(配列番号49)、
Q:PRRPRCPGDNASIRQLHAYWQRLYAYLAAVA(配列番号50)、および
R:PRRPRCPGDAASIAALHAYWQRLYAYLAAVA(配列番号51)が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
本ペプチドは、配列番号12~51のアミノ酸配列に対して約80%~約99%相同である配列を含んでもよい。本ペプチドは、配列番号12~51のアミノ酸配列と約80%~約99%同一である配列を含んでもよい。本ペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸変化(例えば、アミノ酸欠失および/または付加)を伴う、配列番号12~51のアミノ酸配列を含む配列を含んでもよい。例示的なペプチド、および例示的なペプチドと少なくとも80%相同または同一であるペプチドのいずれも、互いとヘテロ二量体またはホモ二量体を形成することができる。
【0021】
ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化したペプチドは、配列番号22、23、および49から選択される一次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化したペプチドは、配列番号24~27、50、および51から選択される二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化したペプチドは、配列番号22、23、および49から選択される一次的なペプチドと、配列番号24~27、50、および51から選択される二次的なペプチドとを含む。
【0022】
一態様では、細胞を透過することができるペプチドが提供される。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、低減した数の負電荷を含む。ある特定の実施形態では、ペプチドの負電荷の数は、出発ペプチドと比較して1、2、3、4、5、または6個の負電荷だけ低減される。例えば、AlaまたはSerなどの中性アミノ酸または非負荷電アミノ酸をアニオン性残基の代わりに導入すると、細胞透過の向上に役立ち得る。細胞透過を向上させるのに有用となる他の残基は、タンパク質凝集を減少させることで知られるもの(概して大きくなく、高い電荷を有せず、かつ/または過剰に疎水性でない残基)である。ある特定の実施形態では、本開示のペプチドは、X11位、X15位、および/またはX16位に、少なくとも1個、2個、もしくは3個の中性アミノ酸または非負荷電アミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、本開示のペプチドは、X11位、X15位、X16位、および/またはX19位に、少なくとも1個、2個、3個、もしくは4個の中性アミノ酸または非負荷電アミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、中性アミノ酸または非負荷電アミノ酸は、AlaまたはSerである。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、アニオン性残基の代わりにAlaを含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、アニオン性残基の代わりにSerを含む。ある特定の実施形態では、本開示のペプチドは、本明細書において開示されるペプチドのうちいずれか1つのX11位、X15位、X16位、および/またはX19位に、少なくとも1個、2個、3個、もしくは4個のAlaまたはSerを含む。
【0023】
一態様では、細胞透過前の二量体化を防止するかまたは最小限に抑えるように設計されたペプチドが、本明細書において提供される。本明細書において開示されるペプチドは、架橋を防止するために有機チオール小部分でマスクされたCysまたはSecを含んでもよい。ある特定の実施形態では、有機チオール小部分は-SRであり、ここでRは、置換または非置換のC1-5アルキルである。ある特定の実施形態では、有機チオール小部分は、t-ブチルチオールまたはエタンチオールである。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号30、33、および34からなる群から選択される配列を含み、Cysは、有機チオール小部分にジスルフィド結合している。Cysを含む前述の実施形態または本明細書における実施形態のいずれにおいても、Cysの代わりにSecも企図される。
【0024】
別の態様では、ペプチドが細胞を透過した後に別のペプチドに架橋するように設計された求電子性側鎖を含むペプチドが、本明細書において提供される。ある特定の実施形態では、本明細書において開示されるペプチドは、CysまたはSecに架橋することができる部分で修飾された残基を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、アクリルアミド部分を含むアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、L-2,4-ジアミノ酪酸(Dab)残基またはL-2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)残基を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、L-2,4-ジアミノ酪酸(Dab)残基またはL-2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)残基を含み、DabおよびDapは、アクリルアミドを含む側鎖を形成するようにアクリル酸で修飾されている。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号31、32、35、および36からなる群から選択される配列を含み、Xは、アクリルアミドに結合したL-2,4-ジアミノ酪酸(Dab)残基であり、Zは、アクリルアミドに結合したL-2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)残基である。アクリルアミドに結合したDap残基およびDab残基は、本明細書にさらに記載される。ペプチド二量体は、配列番号30、33、および34と、配列番号31、32、35、および36との任意の組み合わせから形成され得る。本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、CysがSecで置換されていてもよいことは理解される。ある特定の実施形態では、本開示のペプチドは、本明細書において開示されるペプチドのうちいずれか1つのX位、X位、および/またはX14位に、CysまたはSecを含む。ある特定の実施形態では、本開示のペプチドは、本明細書において開示されるペプチドのうちいずれか1つのX10位、X31位、および/またはX32位に、アクリルアミド部分を含むアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、本開示のペプチドは、本明細書において開示されるペプチドのいずれか1つのX10位、X31位、および/またはX32位に、DapまたはDabを含み、DapまたはDabは、アクリルアミドを含む側鎖を形成するようにアクリル酸で修飾されている。ある特定の実施形態では、第1のペプチド単量体のX位、X位、またはX14位にCysまたはSecを含む第1のペプチド単量体であって、CysまたはSecは、本明細書において提供される有機チオール小部分でマスクされている、第1のペプチド単量体と、第2のペプチドのX10位、X31位、またはX32位にDapまたはDabを含む第2のペプチド単量体であって、DapまたはDabは、アクリルアミドを含む側鎖を形成するようにアクリル酸で修飾されている、第2のペプチド単量体と、が提供される。
【0025】
さらに別の態様では、二量体のエンドソーム逃避および細胞質ゾルの接近を向上させるための選択的二量体不安定化手法が、本明細書において提供される。本明細書において提供される手法には、pH誘発性不安定化または嵩高残基(bulky residue)不安定化が含まれる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるペプチドは、反対側の単量体ペプチド上の1つ以上のカチオン性残基または1つ以上のHisに空間的に近接するようにアミノ酸位置に配置された1つ以上のHisを含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、X位、X位、および/またはX10位に配置されたHisを含む。これらの位置のうちの1つ、2つ、または3つに配置されたHisは、本明細書に記載されるペプチドのいずれにも適用可能である。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号38~41からなる群から選択される配列を含む。
【0026】
ある特定の実施形態では、二量体不安定化は、二量体化を防止するために二量体界面付近の嵩高部分を含む残基を使用して実現される。そのような嵩高部分は細胞透過後に除去され、対応する残基が自由に二量体化できる。CysまたはSecをマスクするのに有用な嵩高部分の例としては、有機チオール分子が挙げられる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるペプチドは、有機チオール分子との反応によって保護されたCysまたはSecを含む。ある特定の実施形態では、有機チオール分子は、アリールチオール、ヘテロアリールチオール、および脂肪族チオールから選択される。ある特定の実施形態では、有機チオール分子はヘテロアリールチオールである。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるペプチドは、2,2’-ジピリジルジスルフィド、4,4’-ジピリジルジスルフィド、または2,2’-ジチオビス(5-ニトロピリジン)との反応によって保護されたCysまたはSecを含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号30、33、34、および42から選択される配列を含み、Cysは、前述の有機チオール分子のいずれかによって保護されている。本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、CysがSecで置換されていてもよいことは理解される。
【0027】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるペプチドのいずれも、XにCysまたはSecを、そしてX11、X15、X16、および/またはX19のうちの1つ以上にAlaまたはSerを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるペプチドのいずれも、XにTyrを、そしてX11、X15、X16、および/またはX19のうちの1つ以上にAlaまたはSerを含む。
【0028】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるペプチドのいずれも、XにHisを、そしてXにCysまたはSecを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるペプチドのいずれも、XにCysまたはSecを、そしてX10にHisを含む。
【0029】
本明細書に記載されるペプチドが、アセチル化N末端および/またはアミド化C末端を含んでもよいことは理解される。
【0030】
さらに別の態様では、Ras、Myc/Max、RalA、βカテニン、YAP/TEAD、またはNEMO/IκBキナーゼに関連した疾患または状態の処置を必要とする対象においてそれを処置する方法であって、本明細書に記載のペプチドを対象に投与することを含む方法が、本明細書において提供される。ある特定の実施形態では、疾患または状態は、Rasに関連する。増殖性疾患の処置を必要とする対象においてそれを処置する方法であって、本明細書に記載のペプチドを対象に投与することを含む方法も、本明細書において提供される。例示的な疾患または状態には、様々な癌およびRas/MAPK症候群が含まれる。
【0031】
本明細書に記載されるペプチドは、ペプチドのライブラリをスクリーニングするための方法およびシステムにおいても有用である。一態様では、ペプチド二量体のライブラリをスクリーニングする方法およびシステムであって、第1のペプチドおよび第2のペプチドをコードするベクターでディスプレイ細胞を形質転換させるステップであって、第1および第2のペプチドが会合して、細胞壁タンパク質に融合したペプチド二量体を形成する、形質転換させるステップと、ディスプレイ細胞を第1の標識と接触させるステップであって、第1の標識は、標的タンパク質を含み、標的に対する向上した結合性を有するペプチド二量体を発現する細胞と会合し、標的に対する向上した結合性を有するペプチド二量体を発現しない細胞とは会合しない、接触させるステップと、第1の標識が会合しているディスプレイ細胞を単離させるステップと、標的に対して向上した結合性を示す第1および第2のペプチドを同定するステップと、を含む、方法およびシステムが、本明細書において提供される。代替的に、本方法は、第1のペプチドをコードする第1のベクターおよび第2のペプチドをコードする第2のベクターでディスプレイ細胞を形質転換させることを含んでもよい。
【0032】
さらなる態様では、本明細書に記載されるペプチドおよび二量体を含むキットが、本明細書において提供される。本明細書に記載されるペプチドおよび二量体をコードする核酸も提供される。それに加えて、本核酸、ペプチド、および二量体を含む宿主細胞もまた企図される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
添付の図面は縮尺通りの描写を意図しない。図面においては、明確化を目的として、全ての構成要素が全ての図面で表示されているとは限らない。
【0034】
図1】エフェクターに結合したRasの結晶構造を示す。HRas・GppNHpは右側に示され、ヌクレオチドが棒状に示されており、RalGDSのRas結合ドメイン(RBD)は左側に示される。PDB:1LFD。
図2】酵母ディスプレイ系を示す。ペプチドライブラリをコードするDNAライブラリが、Aga2p-ペプチド融合物を発現し、それを細胞表面に分泌する、酵母株EBY100に形質転換される。酵母細胞は、次いで(提示される融合タンパク質の存在量を測定するため)蛍光標識された標的タンパク質(この場合はRas)、およびエピトープタグのうちの1つに対する蛍光標識された抗体と共にインキュベートされ、次いで、蛍光活性化細胞分取(FACS)を使用してスクリーニングされる。Chao,G.,et al.Isolating and engineering human antibodies using yeast surface display.Nat Protoc 1,755-68(2006)から改変された図である。
図3】aPP-Mが野生型aPPよりも高い熱安定性を有することを示す。図3Aは、aPPおよびaPP-MのCDスペクトルを示す。図3Bは、222nmにおける熱融解プロファイルを示す。
図4】ランダム化のために選択されたライブラリ足場および残基を示す。aPPの構造が図4Aに見出され、ランダム化された残基が矢印で示されている。図4Bは、ライブラリのアミノ酸配列(配列番号XX-XX)を示す。下線が引かれたXは、任意のアミノ酸を指定する。
図5】ライブラリ断片を調製するためのPCR手法を示す。十分な重複を有する一式のプライマーが、アニーリングおよび伸展され、互いの鋳型として働く。各プライマー内の複数の縮重コドンの使用によって変異が導入され(部位飽和変異誘発)、結果として生じるライブラリにおいて高い組み合わせの多様性がもたらされる。
図6】Sfpホスホパンテテイニルトランスフェラーゼを用いたタンパク質の部位特異的標識を示す。CoAのスルフヒドリル部分を最適なマレイミド官能化標識(例えば、ビオチン)と反応させ、次いで、結果として生じる結合体を、Sfpによって標的タンパク質上のyBBrタグに移す。
図7】Rasタンパク質の精製を示す。図7Aは、コバルト樹脂からの溶離後の、Hisタグ付き(配列番号XX)KRas G12Vのゲル濾過トレースを示す。図7Bは、GDP負荷タンパク質およびGTP負荷タンパク質に対するRas結合ヌクレオチドの逆相HPLC分析を示す。GDPおよびGTP標準は、それぞれ12分および15分で溶離する。図7Cは、Sfpによる酵素的なビオチン化の前後の、RasのMALDI-MSスペクトルを示す。
図8】精製ステップ(Coomassie染料)からのRasタンパク質試料のSDS-PAGEゲルを示す。
図9】aPP足場ライブラリからの最初のヒットのフローサイトメトリー分析を示す。酵母細胞は、Rasの非存在、500nMのKRas、500nMのKRasおよび4μMのB-Raf RBD、または10%(v/v)のヒト血清を含む500nMのKRasの存在下でインキュベートした。500nMのKRas試料が、比較のためにRafプロットおよび血清プロット内で重ね合わされている。
図10】aPP足場ペプチドの定向進化を示す。各ラウンドのヒットをエラープローンPCRによって多様化させ、次いで、結果として生じた酵母ライブラリを、漸増的にストリンジェントな条件(より低い[KRas]および増加した遮断剤)下でKRasに結合する能力に関して、磁気活性化細胞分取(MACS)および蛍光活性化細胞分取(FACS)によって選択した。変異は、それらが現れる第1のラウンドでは下線が引かれており、後続のラウンドでは斜体で示されている。
図11】インビトロ研究に使用したペプチドを示す。一貫性を保つために、残基番号は、野生型aPPペプチド内の位置を使用して報告される。アラニン点変異には下線が引かれている。
図12】225ペプチドの精製を示す。発現した融合コンストラクトのコバルト親和性クロマトグラフィーおよび一晩のTEV開裂後、この反応物を逆相HPLCによって精製した(図12A)。225ペプチドを含む示されたピークを収集し、LC/MSによって分析した(図12Bおよび12C)。HPLCおよびLC/MS計器に対する異なるカラムサイズが、AとBとの保持時間の相違の主な原因である。データは、225-1ペプチド (GCGGPRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA)について示されている。
図13】aPP-Mおよび225ペプチドの円二色性スペクトルを示す。図13Aは、UV CDスペクトルを示し、図13Bは、222nmにおける融解プロファイルを示す。aPP-Mおよび225-1は、pH8.0で測定し、225-3は、pH5~10範囲内での低い可溶性のため、pH12およびpH4.5で測定した。
図14】Ras-ペプチド相互作用の蛍光偏光測定値を示す。FITC標識225-3ペプチドを、漸増する濃度のRasまたはRasファミリータンパク質と混合し、次いで蛍光偏光を読み取り、プロットした。エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)である。
図15】Ras-ペプチド相互作用の表面プラズモン共鳴測定値を示す。ビオチン化KRas(GppNHp(図15A)またはGDP(図15B)のいずれかに結合している)を、ストレプトアビジン捕捉チップ上に固定化し、次いで、遊離225-1ペプチドを漸増する濃度で注入した。相互作用の高い親和性により、注入間の再生ステップを欠き、階段のような結合曲線を生成する「単一サイクル」試験が可能となった。データは、2ステップ結合モデルを使用して当てはめた。
図16】アラニン変異誘発のために選択された位置を示す。225ペプチドの残基をaPPの結晶構造上にモデリングした(PDB:1PPT)。アラニンへの変異のために選択された位置は、矢印で示されている。結晶構造は、Blundell,T.L.,et al.X-ray analysis(1.4-A resolution)of avian pancreatic polypeptide:Small globular protein hormone.Proc Natl Acad Sci U S A 78,4175-9(1981)からのものである。
図17】225-3ペプチドの単一アラニン変異体の特性を示す。図17Aは、示される225-3アラニン変異体ペプチドおよびKRas(G12V)・GppNHpを用いて上記のように実施された蛍光偏光実験を示す。図17Bは、25℃における変異体のCDスペクトルを示し、図17Cは、222nmにおける融解プロファイルを示す。全てのCD実験は、pH12で行った。エラーバーはSEMである。
図18】225-3ペプチドが癌細胞ライセート中で内在性Rasに結合し、Rafとのその相互作用を遮断することを示す。Capan-1腺癌細胞を溶解させ、225-3ペプチドおよび/またはGSTタグ付きRaf RBDと共にインキュベートし、次いで、ペプチドまたはRafのいずれかを、示されたビーズでプルダウンした。結合した試料をSDSで沸騰させ、SDS-PAGEゲル上で泳動させ、ニトロセルロース膜に移し、pan-Ras抗体を用いてウェスタンブロッティングした。
図19】225ペプチドがRasからのヌクレオチド解離に干渉することを示す。ペプチドを、mant-GppNHpを負荷したKRas(G12V)と混合し、次いでGppNHpを625μMまで添加し、mant標識ヌクレオチドの解離を、蛍光の減少として追跡した(励起:370nm、発光:450nm)。RFU=0.37として、このデータを一相指数関数的減衰に当てはめることによって、解離定数を計算した。
図20】225-1の存在および非存在下でのRasのH-15N HSQC(TROSY)NMRスペクトルを示す。図20Aは、15N標識KRas(野生型)GDPのTROSYを示し、図20Bは、非標識225-1を含む15N標識KRasのTROSYを示し、図20Cは、スペクトルのオーバーレイを示す。
図21】225ペプチド結合部位がRasエフェクタードメインと重複することを示す。エフェクタードメイン内の残基は、エフェクターを有するHRasの共結晶構造によって定義され、ペプチド結合部位は、図20の225-1を用いたTROSY実験によって定義された。残基は、KRas(野生型)・GppNHpの結晶構造上に空の輪郭で示されている(PDB:3GFT)。
図22】Rasの存在および非存在下での225-1のH-15N HSQC(TROSY)NMRスペクトルを示す。図22Aは、15N標識225-1のTROSYを示し、図22Bは、非標識KRas(G12V)GDPを含む15N標識225-1のTROSYを示し、図22Cは、スペクトルのオーバーレイを示す。
図23】aPPペプチドの頭-尾二量体化を示す。aPPの結晶構造(PDB:1PPT)が、漫画的表現で示され(図23A)、棒(図23B)、そしてY7対が示されている(図23C)。
図24】N26A変異体が、225-1とのヘテロ二量体としてRasに結合することができることを示す。225-1または225-1 N26Aのいずれかを提示する酵母を、25μMの(遊離)225-1または225-1 N26Aペプチドと共にプレインキュベートし、次いでペレット化し、500nMのKRasと共にインキュベートした。
図25】225-1に基づく走査変異誘発ライブラリの設計を示す。ライブラリは、各サブライブラリについて個別のプライマーを使用して、本来のナイーブライブラリに関する重複延長によって調製された。Xは、NNKコドンによってコードされた。
図26】向上した親和性でRasに結合する225-1を含むヘテロ二量体を形成する225-1 S13C/I14E変異を示す。図26Aは、225-1または225-1 S13C/I14Eのいずれかを提示する酵母を、10μMの(遊離)225-1、225-1 alk(アルキル化225-1)、または225-1 N26Aのいずれかと共にプレインキュベートし、次いでペレット化し、FACSの前に5nMのKRasと共にインキュベートしたことを示す。図26Bは、ヨードアセトアミドによるシステイン側鎖のアルキル化を示す。
図27】S13およびN末端システインの位置を例示するモデルを示す。左側のペプチドは、N末端に未反応のシステインハンドルを有する225-1を表し、右側のペプチドは、S13とのパートナーを表す(これは、S13C/I14E二重変異体ではシステインである)。
図28】225-1 A30R変異体が、225-1よりもKRas(GTP)に対して選択的であることを示す。225-1または225-1 A30Rのいずれかを提示する酵母を、500nMのビオチン化KRas(GTP)および500nMのAlexa647標識KRas(GDP)と共にインキュベートし、次いで洗浄し、分取前にストレプトアビジン-フィコエリトリン(SA-PE)と共にインキュベートした。
図29】単量体225誘導体を同定するためのライブラリの設計を示す。225ペプチドからのαヘリックスは、新たなライブラリ内の対応するヘリックスの上に示されており、X4~6はランダム化ループであり、XはNNKである。下線が引かれたAは、PPIIヘリックスを以前充填した疎水性アミノ酸を置換する。
図30】解離定数を測定するための標準的アッセイである蛍光偏光による結合親和性を示す。RDA1:K=17nM、RDA2:K=8nM、RDA3:K=6nM。
図31】酸化(ジスルフィド架橋)ペプチド二量体を還元(非架橋)ペプチド単量体と区別することができるHPLCアッセイを示す。細胞環境よりも大幅に強力な還元剤であるDTTを5mMまたは50mM添加することによって、セレノシステイン含有ペプチド二量体は、それらのシステイン含有類似体とは異なり還元され得ないことを示すことができる。方法:ペプチドを緩衝液中に溶解させ、逆相HPLCによって分析する前に、0mM、5mM、または50mMのDTTと共にインキュベートした。還元したペプチドは、試料のLC/MS分析によって判定した場合に、酸化したペプチドよりも早く溶離する。
図32】Ras RDA1(配列番号4)の構造を示す。最初の図は、2.2オングストロームの解像度における全体構造を示す。次の2つは、同定された主要な結合残基と共に一次ヘリックスの近接図を示す。
図33】Ras-ペプチド相互作用の表面プラズモン共鳴測定値を示す。ビオチン化KRas(GppNHpまたはGDPのいずれかに結合している)を、ストレプトアビジン捕捉チップ上に固定化し、次いで、遊離二量体ペプチドを漸増する濃度で注入した。相互作用の高い親和性により、注入間の再生ステップを欠き、階段のような結合曲線を生成する「単一サイクル」試験が可能となった。データは、2ステップ結合モデルを使用して当てはめた。図33Aは、配列番号23および26を含むヘテロ二量体ペプチドを使用したSPR測定値を示す。図33Bは、配列番号4を含むホモ二量体ペプチドを使用したSPR測定値を示す。
図34】H358肺腺癌細胞内で、ペプチド5μMの濃度で、10%のウシ胎仔血清を補充したDMEM培地内で実施された、標識ペプチドを用いた生細胞顕微鏡法を示す。図34Aは、配列番号10を含むペプチドホモ二量体で処理された細胞を示す。図34Bは、配列番号28を含む4残基変異体ペプチドホモ二量体で処理された細胞を示す。両方のペプチドをフルオレセインで標識した。配列番号28を含む4残基変異体ペプチドは、配列番号10を含むペプチドよりも良好に細胞に進入した。図34Aの凝集物は図34Bには存在せず、これは、配列番号10と比較して配列番号28に見出される変異によって与えられる可溶性の増加の結果である。
図35】1mMまたは10mMのグルタチオンのいずれかを用いた、配列番号31のペプチドと混合した配列番号30のペプチドのLC-MS分析からのマスクロマトグラムを示す。
図36】標識ペプチド二量体を使用し、H358肺腺癌細胞内で、フルオレセイン標識ペプチド5μMの濃度で、10%のウシ胎仔血清を補充したDMEM培地内で実施された、生細胞共焦点顕微鏡法を示す。図36Aは、ヒスチジンを欠く配列番号37のペプチドを示す。図36Bは、1つの単量体当たり2つのヒスチジン(1つの二量体当たり4つのヒスチジン;「His四分子」)を含有する配列番号38のペプチドを示す。
図37】配列番号42の291-Q3ペプチドを示し、ここでは、Cysを2,2’-ジピリジルジスルフィドと反応させて、ジスルフィド保護システインを生成した。このシステインは、低レベルのグルタチオンの存在下でケージから出されて、より良好なRas結合剤であるジスルフィド結合種を形成する。図のデータは、質量分析によって検証された場合に、5mMの還元グルタチオンの添加(これは共有結合的なジスルフィド結合二量体の形成をもたらす)に際し、Ras結合性の上昇を示す。
図38】配列番号43~45のペプチドに関する、対応するタンパク質標的との酵母表面ディスプレイ結合性データを示す。図38Aは、KRasおよびRalAに対する、配列番号44のRL01ペプチドの結合性データを示す。図38Bは、KRasおよびRalAに対する、配列番号45のRR01ペプチドの結合性データを示す。図38Cは、Myc/Maxに対する、配列番号43のMY01ペプチドの結合性データを示す。
【0035】
定義
「ペプチド」は、ペプチド(アミド)結合によって一緒に連結されたアミノ酸残基のポリマーを含む。ペプチドという用語は、本明細書において、ペプチド単量体およびペプチド二量体の両方を概して指すように使用される。これらの用語は、本明細書において使用される場合、任意の大きさ、構造、または機能のタンパク質、ミニタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを指す。これらの用語は、ペプチドの二量体またはオリゴマーを指す場合もある。これらの用語は、本明細書において使用される場合、ステープルド、非ステープルド、ステッチド(stitched)、および非ステッチド(unstitched)のポリペプチドを含み得る。典型的には、ペプチドは、少なくとも3アミノ酸長である。ペプチドは、個別のペプチドまたはペプチドの一群を指してもよい。発明的ペプチドは、好ましくは天然アミノ酸のみを含み得るが、あるいは、当該分野で公知のように、非天然アミノ酸(すなわち、自然には発生しないがペプチド鎖に組み込まれ得る化合物)および/またはアミノ酸類似体を代替的に用いてもよい。ペプチド内のアミノ酸のうちの1つ以上は、例えば、炭水化物基、ヒドロキシル基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、パルミトイル、ゲラニルゲラニル、ラウリル、脂肪酸基、結合、官能化、または他の修飾のためのリンカーなどの化学物質の添加によって修飾されてもよい。ペプチドは、自然発生のタンパク質またはペプチドのほんの断片であってもよい。ペプチドまたはポリペプチドは、自然発生、組換え、もしくは合成、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0036】
「アミノ酸」という用語は、アミノ基およびカルボキシル基の両方を含有する分子を指す。ある特定の実施形態では、アミノ酸はαアミノ酸である。ある特定の実施形態では、アミノ酸は天然アミノ酸である。ある特定の実施形態では、アミノ酸は非アミノ酸である。公知の非天然アミノ酸は多く存在し、そのいずれも本発明のペプチド内に含まれ得る。例えば、S.Hunt,The Non-Protein Amino Acids:In Chemistry and Biochemistry of the Amino Acids(G.C.Barrett,ChapmanおよびHallにより編集、1985年)を参照されたい。
【0037】
例示的なアミノ酸としては、ペプチド内に見出される20種の一般的な自然発生αアミノ酸のD-異性体およびL-異性体などの天然αアミノ酸、20種の一般的な自然発生のアミノ酸ではない天然アミノ酸、および非天然αアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のペプチドの構築に使用されるアミノ酸は、有機合成によって調製されても、例えば、天然源の分解または天然源からの単離などの他の経路によって得られてもよい。アミノ酸は、市販のものでも、合成されてもよい。疎水性側鎖を有するアミノ酸には、Gly、Pro、Ala、Ile、Leu、Val、Phe、Met、Trp、およびTyrが含まれる。ある特定の実施形態では、疎水性側鎖を有するアミノ酸には、Ala、Ile、Leu、およびValが含まれる。極性中性側鎖を有するアミノ酸には、Asn、Cys、Gln、Met、Ser、およびThrが含まれる。芳香族側鎖を有するアミノ酸には、Phe、Trp、Tyr、およびHisが含まれる。疎水性芳香族側鎖を有するアミノ酸には、Phe、Typ、およびTyrが含まれる。荷電側鎖を有するアミノ酸には、Asp、Glu、Arg、His、およびLysが含まれる。負荷電側鎖には、AspおよびGluが含まれる。正荷電側鎖には、Arg、His、およびLysが含まれる。非負荷電アミノ酸は、Ala、Ser、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Trp、Met、Gly、Thr、Cys、Tyr、Asn、およびGlnからなる群から選択される。
【0038】
本明細書において使用される場合、「ペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸」には、共有結合および非共有結合で架橋させるアミノ酸が含まれる。例えば、共有結合架橋させることができる残基としては、Cys、Sec、アクリルアミドを含む側鎖を形成するようにアクリル酸で修飾されたDapおよびDabなどのアクリルアミド部分を含むアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。そのようなDabおよびDap結合アクリルアミド残基は、CysまたはSec残基に架橋することができる。ペプチドを非共有結合で架橋させることができるアミノ酸残基としては、His、Phe、Trp、Tyrが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
アミノ酸は、ジスルフィド結合、ジセレン結合、スルフィド-セレン結合、炭素-炭素結合、アミド結合、エステル結合、水素結合、塩橋、パイスタッキング相互作用、または非極性疎水性相互作用を介して架橋され得る。ある特定の実施形態では、2つのペプチドは、ジスルフィド結合を介して会合している。ある特定の実施形態では、2つのペプチドは、ジセレン結合を介して会合している。ある特定の実施形態では、2つのペプチドは、水素結合、塩橋、または非極性疎水性相互作用を介して会合している。ある特定の実施形態では、2つのペプチドは、パイスタッキング相互作用を介して会合している。例えば、1つのペプチド上のチロシンは、パイスタッキングを介して、別のペプチド上の別のチロシンと相互作用する。
【0040】
「相同性」という用語は、本明細書において使用される場合、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列のレベルで高度に関連する核酸またはタンパク質に言及する、当該分野で理解されている用語である。互いに相同である核酸またはタンパク質は、相同体と称される。相同性は、2つの配列(すなわち、ヌクレオチド配列またはアミノ酸)間の配列類似性の度合いを指してもよい。本明細書において言及される相同性割合の値は、2つの配列間で可能な最大の相同性、すなわち、マッチする(相同性の)位置が最も多くなるように2つの配列が整列しているときの相同性パーセントを反映する。相同性は、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988、Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993、Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987、Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994、およびSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991(これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる)に記載される方法などの公知の方法によって容易に計算することができる。配列間の相同性を判定するために一般的に用いられる方法としては、参照により本明細書に組み込まれるCarillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J Applied Math.,48:1073(1988)に開示されている方法が挙げられるが、それらに限定されない。相同性を判定するための技法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムに成文化されている。2つの配列間の相同性を判定するための例示的なコンピュータソフトウェアとしては、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research,12(1),387(1984))、BLASTP、BLASTN、およびPASTA(Atschul,S.F.et al.,J Molec.Biol.,215,403(1990))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「相同性」という用語は、本明細書において使用される場合、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列のレベルで高度に関連する核酸またはポリペプチドに言及する、当該分野で理解されている用語である。互いに相同である核酸またはポリペプチドは、「相同体」と称される。
【0042】
「相同性」という用語は、2つの配列間の比較に言及する。2つのヌクレオチド配列は、それらがコードするポリペプチドが、少なくとも20個のアミノ酸の少なくとも1つの区間(stretch)にわたって少なくとも約50~60%同一、好ましくは約70%同一である場合に、相同であると見なされる。好ましくは、相同性のヌクレオチド配列は、少なくとも4~5個の一意的に指定されたアミノ酸の一区間をコードする能力も特徴とする。ヌクレオチド配列を相同と見なすには、これらのアミノ酸の同一性、およびそれらの互いに対するおおよその間隔の両方を考慮しなくてはならない。60ヌクレオチド長未満のヌクレオチド配列については、相同性は、少なくとも4~5個の一意的に指定されたアミノ酸の一区間をコードする能力によって判定される。
【0043】
本明細書において使用される場合、「同一性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子および/またはRNA分子)間、および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。2つの核酸配列の同一性パーセントの計算は、例えば、最適な比較の目的のために2つの配列を整列させることによって実施することができる(例えば、最適な配列比較のために、第1および第2の核酸配列の一方または両方にギャップを導入してもよく、非同一配列は、比較目的で無視してよい)。ある特定の実施形態では、比較目的で整列される配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。これで、対応するヌクレオチド位置におけるヌクレオチドが比較される。第1の配列内のある位置が、第2の配列内の対応する位置と同じヌクレオチドで占められているとき、それらの分子はその位置において同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適な配列比較のために導入される必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮した、配列が共有する同一位置の数の関数である。配列の比較、および2つの配列間の同一性パーセントの判定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。例えば、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988、Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993、Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987、Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994、およびSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991(これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる)に記載される方法などの方法を使用して判定され得る。例えば、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、PAM120重量残基表、12のギャップ長さペナルティ、および4のギャップペナルティを用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているMeyersおよびMillerのアルゴリズム(CABIOS,1989,4:11-17)を使用して判定されてもよい。2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、代替的に、NWSgapdna.CMPマトリックスを用いて、GCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラムを使用して判定されてもよい。配列間の同一性パーセントを判定するために一般的に用いられる方法としては、参照により本明細書に組み込まれるCarillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J Applied Math.,48:1073(1988)に開示されている方法が挙げられるが、それらに限定されない。同一性を判定するための技法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムに成文化されている。2つの配列間の相同性を判定するための例示的なコンピュータソフトウェアとしては、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research,12(1),387(1984))、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Atschul,S.F.et al.,J.Molec.Biol.,215,403(1990))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書において使用される場合、ペプチドを「架橋させること」は、ペプチドを共有結合で架橋させること、またはペプチドを非共有結合で架橋させることのいずれかを指す。ある特定の実施形態では、ペプチドは、共有結合で会合している。共有結合相互作用とは、2つのペプチドが天然または非天然のアミノ酸側鎖などのリンカー基を介して共有結合しているときである。他の実施形態では、ペプチドは、非共有結合で会合している。非共有結合相互作用としては、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁性相互作用、および静電気的相互作用が挙げられる。本明細書におけるペプチドは、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸(例えば、システイン、セレノシステイン、アクリルアミド部分を含むアミノ酸、Dap結合アクリルアミド、Dab結合アクリルアミド)を含む。ペプチド二量体の場合、本ペプチド二量体は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させるアミノ酸を含む。本ペプチドは、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる天然または非天然のアミノ酸を含んでもよい。本ペプチド二量体は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させる天然または非天然のアミノ酸を含んでもよい。
【0045】
「ペプチドステープリング」は、ペプチド内(イントラペプチド(intrapeptide))または異なるペプチド間(インターペプチド(interpeptide))で架橋させるための1つの方法である。ペプチドステープリングは、架橋を形成するために閉環メタセシス(RCM)反応を使用して1つのペプチドまたは複数の異なるペプチド内に存在する2つのオレフィン含有側鎖が共有結合で連結される(「ステープルされる」)合成方法論を表す(J.Org.Chem.(2001)vol.66,issue 16の表紙絵(αヘリックスペプチドのメタセシスに基づく架橋を表している)、Blackwell et al.、Angew Chem.Int.Ed.(1994)37:3281、および米国第7,192,713号を参照されたい)。「ペプチドステッチング」は、複数回ステープルされた(「ステッチされた」としても知られる)ポリペプチドを提供するための、単一のポリペプチド鎖内の複数の「ステープリング」事象を伴う(例えば、Walensky et al.,Science(2004)305:1466-1470、米国特許第7,192,713号、米国特許第7,786,072号、米国特許第8,592,377号、米国特許第7,192,713号、米国特許出願公開第2006/0008848号、米国特許出願公開第2012/0270800号、国際公開第WO 2008/121767号、および国際公開第WO 2011/008260号を参照されたい)。全炭化水素架橋を使用したペプチドのステープリングは、特に生理学的に関連性のある障害において、ペプチドの天然の高次構造および/または二次構造を維持するのに役立つことが示されている(Schafmiester et al.,J.Am.Chem.Soc.(2000)122:5891-5892、Walensky et al.,Science(2004)305:1466-1470を参照されたい)。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるペプチド内に見出される非天然アミノ酸は、閉環メタセシス(RCM)反応などの架橋反応を使用し、オレフィン部分を用いて共有結合で連結される(すなわち、「一緒にステープルされる」)ことができる側鎖を含む。関連するペプチドステープリングまたはペプチドステッチングの追加の説明は、国際公開第2010/011313号、国際公開第2012/040459号、国際公開第2012/174423号、ならびにPCT/US出願第2013/062004号、米国特許出願第61/478845号、同第61/478862号、同第61/705950号、同第61/789157号、および同第61/708371号に見出すことができ、これらは全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
「Ras」という用語は、Rasタンパク質ファミリーまたはその変異体を指す。Rasタンパク質は、いくつかのシグナル伝達経路内で機能し、Rasエフェクタードメインを介した結合によっていくつかの下流タンパク質(エフェクター)を活性化させることができる、小型細胞質GTPアーゼである。Rasタンパク質は、上流因子によって、グアノシン三リン酸(GTP、「オン」)状態とグアノシン二リン酸(GDP、「オフ」)状態との間で切り替えられる。ヒトには、3つのRasアイソフォーム:KRas、HRas、およびNRasが存在し、KRasには2つのスプライスバリアント、すなわちKRas4AおよびKRas4Bがある。活性Rasタンパク質は、脂質(典型的にはファルネシルまたはゲラニルゲラニル基)の翻訳後結合によって膜に局在化し、典型的には、エフェクタータンパク質のRas結合ドメイン(RBD)に結合することによってそれらを活性化させ、それによってそれらを膜に動員し、ここでそれらは様々な機構を介して活性化される。
【0047】
本明細書において使用される場合、「疾患」および「障害」という用語は、互換的に使用される。
【0048】
投与が企図される「対象」としては、ヒト(すなわち、任意の年齢群の男性または女性、例えば、小児科の対象(例えば、乳児、小児、青年)または成人対象(例えば、若年成人、中年成人、または高齢成人))、ならびに/または他の非ヒト動物、例えば哺乳動物(例えば、霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル)、商業的に関連のある哺乳動物、例えばウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、および/またはイヌなど)、トリ(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、および/またはシチメンチョウなどの商業的に関連のあるトリ)、爬虫類、両生類、および魚が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、非ヒト動物は哺乳動物である。非ヒト動物は雄でも雌でもよく、いずれの発達段階にあってもよい。非ヒト動物はトランスジェニック動物であってもよい。
【0049】
本明細書において使用される場合、かつ別段の記載がない限り、「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、および「処置(treatment)」という用語は、対象が障害を患っている間に行われる、障害の重症度を低減させる行為、または障害の進行を遅延もしくは減速させる行為(「治療的処置」)を企図し、また、対象が障害を患い始める前に行われ、かつ障害の重症度を抑制もしくは低減させる行為(「予防的処置」)も企図する。
【0050】
概して、ペプチドの「有効量」は、所望の生物学的応答、すなわち、障害の処置を誘起するのに十分な量を指す。当業者には理解されるように、本発明のペプチドの有効量は、所望の生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、処置される障害、投与形態、および年齢、健康状態、および対象などの要因に応じて変動し得る。有効量は、治療的処置および予防的処置を包含する。
【0051】
本明細書において使用される場合、かつ別段の記載がない限り、ペプチドの「治療有効量」は、障害の処置において治療的利益を提供するため、または障害に関連する1つ以上の症状を遅延させるかもしくは最低限に抑えるために十分な量である。ペプチドの治療有効量は、単独または他の療法との組み合わせで、障害の処置において治療的利益を提供する治療的薬剤の量を意味する。「治療有効量」という用語は、全体的な療法を改善するか、障害の症状もしくは病因を低減または回避するか、あるいは別の治療的薬剤の治療有効性を向上させる量を包含してもよい。
【0052】
本明細書において使用される場合、かつ別段の記載がない限り、ペプチドの「予防的有効量」は、障害もしくは障害に関連する1つ以上の症状を防止するため、またはその再発を防止するために十分な量である。ペプチドの予防的有効量は、単独または他の薬剤との組み合わせで、障害の防止において予防的利益を提供する治療的薬剤の量を意味する。「予防的有効量」という用語は、全体的な予防法を改善するか、または別の予防的薬剤の予防的有効性を向上させる量を包含してもよい。
【0053】
「Ras/MAPK症候群」(単数または複数)という用語は、Ras/マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路の構成要素または制御因子をコードする遺伝子内の生殖細胞系列変異によって引き起こされる医学的遺伝症候群の臨床的に定義された群である。これらの障害には、神経線維腫症1型、Noonan症候群、多発性黒子を伴うNoonan症候群、毛細血管奇形-動静脈奇形症候群、Costello症候群、心臓-顔-皮膚(CFC)症候群、およびLegius症候群が含まれる。根底にある共通のRas/MAPK経路調節不全のため、Ras/MAPK症候群は、多くの重複する表現型特徴を示す。Ras/MAPK経路は、細胞周期ならびに細胞の成長、分化、および老化の制御において必須の役割を果たし、これらは全て、正常な発達に非常に重要である。したがって、Ras/MAPK経路調節不全は、発達の胎生期および後期の両方に深刻な有害作用を及ぼす。Ras/MAPK経路は癌において研究されており、様々な悪性腫瘍を処置するための小分子抑制の標的である。
【0054】
「脂肪族」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および炭素環基を指す。同様に、「ヘテロ脂肪族」という用語は、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、および複素環基を指す。
【0055】
「アルキル」という用語は、1~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐状の飽和炭化水素基のラジカル(「C1-10アルキル」)を指す。一部の実施形態では、アルキル基は、1~9個の炭素原子を有する(「C1-9アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1~8個の炭素原子を有する(「C1-8アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1~7個の炭素原子を有する(「C1-7アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1~6個の炭素原子を有する(「C1-6アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1~5個の炭素原子を有する(「C1-5アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1~4個の炭素原子を有する(「C1-4アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1~3個の炭素原子を有する(「C1-3アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1~2個の炭素原子を有する(「C1-2アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1個の炭素原子を有する(「Cアルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、2~6個の炭素原子を有する。(「C2-6アルキル」)。C1-6アルキル基の例としては、メチル(C)、エチル(C)、プロピル(C)(例えば、n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(C)(例えば、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチル)、ペンチル(C)(例えば、n-ペンチル、3-ペンタニル、アミル、ネオペンチル、3-メチル-2-ブタニル、三級アミル)、およびヘキシル(C)(例えば、n-ヘキシル)が挙げられる。アルキル基の追加の例としては、n-ヘプチル(C)、n-オクチル(C)などが挙げられる。別段の記載がない限り、アルキル基の各事例は、独立して、非置換(「非置換アルキル」)であるか、または1つ以上の置換基(例えば、Fなどのハロゲン)で置換されている(「置換アルキル」)。ある特定の実施形態では、アルキル基は、非置換C1-10アルキル(例えば、非置換C1-6アルキル、例えば、-CH(Me)、非置換エチル(Et)、非置換プロピル(Pr、例えば、非置換n-プロピル(n-Pr)、非置換イソプロピル(i-Pr))、非置換ブチル(Bu、例えば、非置換n-ブチル(n-Bu)、非置換tert-ブチル(tert-Buまたはt-Bu)、非置換sec-ブチル(sec-Bu)、非置換イソブチル(i-Bu)など)である。ある特定の実施形態では、アルキル基は、置換C1-10アルキル(例えば、置換C1-6アルキル、例えば、-CF、Bnなど)である。
【0056】
「アリール」という用語は、6~14個の環炭素原子および0個のヘテロ原子が芳香環系内に提供されている、単環式または多環式(例えば、二環式または三環式)4n+2芳香環系の(例えば、環状アレイ内で共有される6個、10個、または14個のπ電子を有する)ラジカル(「C6-14アリール」)を指す。一部の実施形態では、アリール基は、6個の環炭素原子を有する(「Cアリール」、例えばフェニル)。一部の実施形態では、アリール基は、10個の環炭素原子を有する(「C10アリール」、例えば、1-ナフチルおよび2-ナフチルなどのナフチル)。一部の実施形態では、アリール基は、14個の環炭素原子を有する(「C14アリール」、例えばアントラシル)。「アリール」には、上記に定義されたアリール環が1つ以上のカルボシクリル基またはヘテロシクリル基と縮合しており、ラジカルまたは結合点がアリール環上にある環系も含まれ、そのような事例では、炭素原子の数が、続いてアリール環系内の炭素原子の数を指定する。別段の記載がない限り、アリール基の各事例は、独立して、非置換(「非置換アリール」)であるか、または1つ以上の置換基で置換されている(「置換アリール」)。ある特定の実施形態では、アリール基は、非置換C6-14アリールである。ある特定の実施形態では、アリール基は、置換C6-14アリールである。
【0057】
「ヘテロアリール」という用語は、環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子が芳香環系内に提供されている(ここで各ヘテロ原子は、独立して、窒素、酸素、および硫黄から選択される)、5~14員の単環式または多環式(例えば、二環式、三環式)4n+2芳香環系の(例えば、環状アレイ内で共有される6個、10個、または14個のπ電子を有する)ラジカル(「5~14員ヘテロアリール」)を指す。1つ以上の窒素原子を含有するヘテロアリール基では、結合点は、結合価が許す限り、炭素または窒素原子であってもよい。ヘテロアリール多環式環系は、一方または両方の環内に1つ以上のヘテロ原子を含み得る。「ヘテロアリール」には、上記に定義されたヘテロアリール環が1つ以上のカルボシクリル基またはヘテロシクリル基と縮合しており、結合点がヘテロアリール環上にある環系が含まれ、そのような事例では、環員の数が、続いてヘテロアリール環系内の環員の数を指定する。「ヘテロアリール」には、上記に定義されたヘテロアリール環が1つ以上のアリール基と縮合しており、結合点がアリールまたはヘテロアリール環のいずれかの上にある環系も含まれ、そのような事例では、環員の数が、縮合多環式(アリール/ヘテロアリール)環系内の環員の数を指定する。1つの環がヘテロ原子を含有しない多環式ヘテロアリール基(例えば、インドリル、キノリル、カルバゾリルなど)結合点は、いずれの環、すなわち、ヘテロ原子を保有する環(例えば、2-インドリル)またはヘテロ原子を含有しない環(例えば、5-インドリル)のいずれの上にあってもよい。
【0058】
一部の実施形態では、ヘテロアリール基は、環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子が芳香環系内に提供されている(ここで各ヘテロ原子は、独立して、窒素、酸素、および硫黄から選択される)、5~10員芳香環系(「5~10員ヘテロアリール」)である。一部の実施形態では、ヘテロアリール基は、環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子が芳香環系内に提供されている(ここで各ヘテロ原子は、独立して、窒素、酸素、および硫黄から選択される)、5~8員芳香環系(「5~8員ヘテロアリール」)である。一部の実施形態では、ヘテロアリール基は、環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子が芳香環系内に提供されている(ここで各ヘテロ原子は、独立して、窒素、酸素、および硫黄から選択される)、5~6員芳香環系(「5~6員ヘテロアリール」)である。一部の実施形態では、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~3個の環ヘテロ原子を有する。一部の実施形態では、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~2個の環ヘテロ原子を有する。一部の実施形態では、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、および硫黄から選択される1個の環ヘテロ原子を有する。別段の記載がない限り、ヘテロアリール基の各事例は、独立して、非置換(「非置換ヘテロアリール」)であるか、1つ以上の置換基で置換されている(「置換ヘテロアリール」)。ある特定の実施形態では、ヘテロアリール基は、非置換5~14員ヘテロアリールである。ある特定の実施形態では、ヘテロアリール基は、置換5~14員ヘテロアリールである。
【0059】
1個のヘテロ原子を含有する例示的な5員ヘテロアリール基としては、ピロリル、フラニル、およびチオフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。2個のヘテロ原子を含有する例示的な5員ヘテロアリール基としては、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、およびイソチアゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。3個のヘテロ原子を含有する例示的な5員ヘテロアリール基としては、トリアゾリル、オキサジアゾリル、およびチアジアゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。4個のヘテロ原子を含有する例示的な5員ヘテロアリール基としては、テトラゾリルが挙げられるが、これに限定されない。1個のヘテロ原子を含有する例示的な6員ヘテロアリール基としては、ピリジニルが挙げられるが、これに限定されない。2個のヘテロ原子を含有する例示的な6員ヘテロアリール基としては、ピリダジニル、ピリミジニル、およびピラジニルが挙げられるが、これらに限定されない。3個または4個のヘテロ原子を含有する例示的な6員ヘテロアリール基としては、それぞれトリアジニルおよびテトラジニルが挙げられるが、これらに限定されない。1個のヘテロ原子を含有する例示的な7員ヘテロアリール基としては、アゼピニル、オキセピニル、およびチエピニルが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な5,6-二環式ヘテロアリール基としては、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイソフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンズチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンズチアジアゾリル、インドリジニル、およびプリニルが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な6,6-二環式ヘテロアリール基としては、ナフチリジニル、プテリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キノキサリニル、フタラジニル、およびキナゾリニルが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な三環式ヘテロアリール基としては、フェナントリジニル、ジベンゾフラニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、およびフェナジニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
「チオール」という用語は、-SH基(例えば、Cys側鎖に見出される)、-SR基、または-S-S-部分を含む分子を指す。例えば、「有機チオール分子」には、2,2’-ジピリジルジスルフィド、4,4’-ジピリジルジスルフィド、または2,2’-ジチオビス(5-ニトロピリジン)などの分子が含まれる。「有機チオール小部分」という表現は、硫黄を含む有機基、例えば-SRなどを含み、ここでRは、置換または非置換のC1-5アルキルである。そのような部分は、それぞれジスルフィド結合またはセレン-スルフィド結合を介して、他のチオールまたはセレン部分に結合することができる。例えば、t-ブチルチオールに結合したCys側鎖は、以下の構造を有する。
【化1】
【0061】
本明細書で使用される略語の一覧を以下に提供する。
【表1】
【発明を実施するための形態】
【0062】
ヒト疾患の分子機構の理解においては進展がなされているが、治療的利益のためにこれらの発見を利用する能力は、疾患の原因となるプロセスを標的とする薬物を作製する能力の欠如により限定されることが多い。多くの疾患は、タンパク質の異常な活性に関連付けることができ、酵素および細胞外標的の抑制剤の開発は実行可能なことが多いが、これらのタンパク質は、全てのタンパク質の小部分しか占めない。残りのタンパク質は、ほとんどの場合、治療上御しにくいと見なされ、時に「創薬が困難である」と称される。「創薬が困難な」タンパク質標的の一例はRasであり、Rasは、癌などの幅広いヒト疾患の惹起および進行の両方に関連付けられるが、未だ現代の治療学の範疇外である。これは主に、このタンパク質を生物製剤に接近不能にするRasの細胞内局在、および典型的には細胞に進入することができる小分子に対するそれらの抵抗性の結果である。Rasの1つの疎水性ポケット(ヌクレオチド結合部位)を標的とする試みは、グアニンヌクレオチドに対するRasタンパク質の極端に高い(ピコモルの)親和性、および細胞内のこれらのヌクレオチドの比較的高い存在量を主因として、成功していない。多くのペプチド治療薬は、細胞に進入する能力が限定されている。しかしながら、ある特定の小タンパク質(ペプチド)は、適切な化学修飾により細胞に進入することができる。ペプチドは多くの場合、タンパク質表面に結合するのに十分に大きく、それらのタンパク質標的に対して高い親和性および特異性を有するように修飾された場合、インビボでタンパク質-タンパク質相互作用の有効な抑制剤として働くことが示されている。
【0063】
従来型の療法では現在処置できないタンパク質標的のタンパク質-タンパク質相互作用を抑制するペプチドが、本明細書において提供される。本ペプチドは、αヘリックスドメインを含む足場に基づく。αヘリックスは、タンパク質における最も一般的な二次構造であり、αヘリックスは、非常に重要なタンパク質-タンパク質相互作用に関与することが多い。したがってαヘリックスは、特に、疾患の原因となるタンパク質-タンパク質相互作用を妨害するために使用され得るため、潜在的な治療薬として魅力的である。
【0064】
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、ポリプロリンII型ヘリックスドメイン、リンカードメイン、およびαヘリックスドメインを含む。これらのタンパク質は、タンパク質標的に結合し、それによってタンパク質-タンパク質相互作用を妨害し得る。発明的タンパク質の標的の例としては、Ras腫瘍性タンパク質が挙げられる。本ペプチドは、それらの標的の表面に結合し、標的の活性(例えば、Rasの発癌活性)に必要とされるパートナー分子との主要な相互作用を遮断する。他の標的としては、Myc/Maxヘテロ二量体およびRalAタンパク質が挙げられる。
【0065】
本明細書において提供されるペプチドは、膵臓ポリペプチドファミリーに基づく。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、トリ、ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌの膵臓ポリペプチド、およびそれらの変異体に基づく。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるペプチドは、トリ膵臓ポリペプチド(aPP)、ならびにその誘導体および変異体に基づく。本明細書において提供されるペプチドは、ポリプロリンII型ヘリックスドメイン、リンカードメイン、およびC末端αヘリックスドメインを含み、本ペプチドは、ペプチドを別のペプチドに架橋させることができる部分を含む。一般的なペプチド二量体の一例は図23に示される。ポリプロリンII型ヘリックスドメイン、リンカードメイン、およびC末端αヘリックスドメインを各々が含む2つのペプチドのペプチド二量体も本明細書において提供され、ここで各ペプチドは、別のペプチド単量体と共有結合または非共有結合で架橋することができる部分を含む。本ペプチド二量体は、ホモ二量体でもヘテロ二量体でもよい。
【0066】
「ペプチド」という用語は、本明細書において、ペプチド単量体およびペプチド二量体の両方を指すように使用される。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、化学的に安定化され、かつ/または細胞浸透性である。化学的安定化の例としては、本明細書に記載される架橋、ペプチドステープリング、ペプチドステッチング、またはペプチド環化(例えば、N末端およびC末端がアミド結合で結合して連続的なアミド骨格を形成する、またはN末端上の側鎖がC末端上の側鎖に架橋する)が挙げられる。タンパク質分解への抵抗は、D-アミノ酸の組み込み、個別のペプチド単量体のエンドキャッピングまたは環化を含むがこれらに限定されない様々な方法を使用して達成することができる。ある特定の実施形態では、環化は、頭-尾環化によるものである。これは、本発明者らの結晶構造に見られるように、N末端およびC末端が空間的に近接しているという事実を利用する。これは、アミド結合を形成するようにN末端およびC末端をカップリングすることによって、または、N末端およびC末端であるか、もしくはそれらに近接している2個の残基の側鎖をカップリングすることによって達成することができる。ステープルドペプチドまたはステッチドペプチドは、例えば、Walensky et al.,Science(2004)305:1466-1470、米国特許第8,592,377号、米国特許第7,192,713号、米国特許出願公開第2006/0008848号、米国特許出願公開第2012/0270800号、国際公開第WO 2008/121767号、および国際公開第WO 2011/008260号に記載されており、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
タンパク質標的、例えばRas、Myc/Max、RalA、または他の標的などに対する向上した結合性について、ディスプレイ技術(例えば、酵母細胞ディスプレイ、細菌細胞ディスプレイ、またはファージディスプレイ)を使用して、ペプチド二量体のライブラリをスクリーニングする方法が、本明細書においてさらに提供される。タンパク質-タンパク質相互作用の抑制剤として有用なペプチドを含む薬学的組成物、方法、使用、およびキットも本明細書において提供される。一部の場合では、ペプチドを含む本薬学的組成物、方法、使用、およびキットは、Ras腫瘍性タンパク質などの従来型の療法およびエフェクター分子とのその相互作用では現在標的とすることができない、タンパク質-タンパク質相互作用の抑制剤として有用である。本明細書に記載されるペプチドで防止および/または処置され得る例示的な疾患としては、増殖性疾患(例えば、癌)および他の疾患、障害、または状態(例えば、Ras/MAPK症候群)が挙げられる。
【0068】
ペプチド
本ペプチドは、aPP足場であるGPSQPTYPGDDAPVEDLIRFYNDLQQYLNVVA(配列番号49)に基づき、タンパク質標的に結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、Ras、Myc/Max、および/またはRalAに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチドはRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチドはMyc/Maxに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチドはRalAに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチドはKRasおよびRalAの両方に結合する。
【0069】
ある特定の実施形態では、配列:XPXPXPGX1011AX131415DLX1819YX2122RLX2526YLX2930VA(配列番号1)を含むペプチドが本明細書において提供され、本ペプチドは、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる1~2個のアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸は、共有結合架橋させることができる。第2のペプチドと会合した第1のペプチドを含むペプチド二量体であって、第1および第2のペプチドは各々、独立して、配列番号1のペプチドを含み、第1および第2のペプチドは各々、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させる1~2個のアミノ酸を含む、ペプチド二量体も提供される。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、共有結合で架橋している。Xは、Gly、Arg、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、Xは、配列番号1に存在しない。X、X、およびXは各々、独立して、荷電アミノ酸である。X10は荷電アミノ酸である。X11は、荷電アミノ酸、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。Xは、Tyr、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。X13は、Ser、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。X14は、IleまたはGluである。X15は、Glu、Asp、Gln、またはGlyである。X18は、芳香族アミノ酸または疎水性アミノ酸である。X19は、Glu、Asp、Gln、Ala、またはTrpである。X21、X25、およびX29は各々、独立して、Tyr、Phe、Trp、His、またはシクロヘキシル側鎖を有するアミノ酸であり、Tyr、Phe、Trp、またはシクロヘキシル側鎖は、1つ以上のフッ素で置換されていてもよい。X22は、Ala、Gly、Ser、またはValである。X26は、Asn、Leu、Ile、またはHisである。X30は、AlaまたはArgである。
【0070】
ある特定の実施形態では、配列:XPXPXPGX1011AX131415DLX181920212223LX2526YLX2930VA(配列番号12)を含むペプチドが本明細書において提供され、本ペプチドは、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる1~2個のアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸は、共有結合架橋させることができる。第2のペプチドと会合した第1のペプチドを含むペプチド二量体であって、第1および第2のペプチドは各々、独立して、配列番号12のペプチドを含み、第1および第2のペプチドは各々、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させる1~2個のアミノ酸を含む、ペプチド二量体も提供される。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、共有結合で架橋している。Xは、Gly、Arg、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、Xは、配列番号12に存在しない。X、X、およびXは各々、独立して、荷電アミノ酸である。X10は荷電アミノ酸である。X11は、荷電アミノ酸、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。Xは、Tyr、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。X13は、Ser、Pro、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。X14は、Ile、Glu、またはValである。X15は、Glu、Asp、Gln、またはGlyである。X18は、芳香族アミノ酸または疎水性アミノ酸である。X19は、Glu、Asp、Gln、Ala、Trp、またはArgである。X20は、TyrまたはPheである。X21は、Tyr、Phe、Trp、His、またはシクロヘキシル側鎖を有するアミノ酸であり、Tyr、Phe、Trp、シクロヘキシル側鎖は、1つ以上のフッ素で置換されていてもよい。X22は、Ala、Gly、Ser、Val、またはAsnである。X23は、ArgまたはAspである。X25は、Tyr、Phe、Trp、His、Gln、またはシクロヘキシル側鎖を有するアミノ酸であり、Tyr、Phe、Trp、シクロヘキシル側鎖は、1つ以上のフッ素で置換されていてもよい。X26は、Asn、Leu、Ile、His、またはGlnである。X29は、Tyr、Phe、Trp、His、Asn、またはシクロヘキシル側鎖を有するアミノ酸であり、Tyr、Phe、Trp、シクロヘキシル側鎖は、1つ以上のフッ素で置換されていてもよい。X30は、Ala、Arg、またはValである。
【0071】
ある特定の実施形態では、配列:
X-X-X-X-X-X-PXPXPGX1011AX13141516LX181920212223LX2526YLX29303132(配列番号13)を含むペプチドが本明細書において提供され、本ペプチドは、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる1~2個のアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸は、共有結合架橋させることができる。第2のペプチドと会合した第1のペプチドを含むペプチド二量体であって、第1および第2のペプチドは各々、独立して、配列番号13のペプチドを含み、第1および第2のペプチドは各々、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させる1~2個のアミノ酸を含む、ペプチド二量体も提供される。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、共有結合で架橋している。XおよびXは各々、独立して、中性アミノ酸または荷電アミノ酸である。Xは、荷電アミノ酸、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。Xは、Tyr、His、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。X10は、Pro、荷電アミノ酸、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。X11は、Ala、Ser、中性アミノ酸もしくは荷電アミノ酸、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。X13は、Ser、Pro、Thr、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。X14は、Ile、Glu、Val、Leu、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。X15は、Glu、Lys、Arg、Ala、Ser、Asp、Gln、またはGlyである。X16は、Asp、Glu、Gln、Ala、またはSerである。X18は、芳香族アミノ酸または疎水性アミノ酸である。X19は、Glu、Lys、Leu、Met、His、Asp、Gln、Ala、Ser、Trp、またはArgである。X20は、TyrまたはPheである。X21は、Gln、Tyr、Phe、Trp、His、またはシクロヘキシル側鎖を有するアミノ酸であり、Tyr、Phe、Trp、シクロヘキシル側鎖は、1つ以上のフッ素で置換されていてもよい。X22は、Ala、Gln、Trp、Leu、Tyr、Gly、Ser、Val、またはAsnである。X23は、Arg、Asp、Leu、またはAlaである。X25は、Gln、Tyr、Phe、Trp、His、Asp、またはシクロヘキシル側鎖を有するアミノ酸であり、Tyr、Phe、Trp、シクロヘキシル側鎖は、1つ以上のフッ素で置換されていてもよい。X26は、Asn、Ala、Leu、Arg、Phe、Ile、His、またはGlnである。X29は、Ala、Leu、Glu、Asn、Gln、Tyr、Phe、Trp、His、またはシクロヘキシル側鎖を有するアミノ酸であり、Tyr、Phe、Trp、シクロヘキシル側鎖は、1つ以上のフッ素で置換されていてもよい。X30は、Ala、Arg、またはValである。X31は、V、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。X32は、V、Ala、Arg、Ser、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。
【0072】
配列番号13の任意選択の残基は、X-6、X-5、X-4、X-3、X-2、X-1、およびXである。X-6が存在する場合、X-6はGlyであり、X-5~Xは存在する。X-5が存在する場合、X-5はCysまたはSecであり、X-4~Xは存在する。X-4が存在する場合、X-4はGlyであり、X-3~Xは存在する。X-3が存在する場合、X-3はGlyであり、X-2~Xは存在する。X-2が存在する場合、X-2はPro、Cys、Sec、またはGlyであり、X-1およびXは存在する。X-1が存在する場合、X-1はArgまたはGlyであり、Xは存在する。Xが存在するとき、XはGly、Arg、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。Xの追加の実施形態が本明細書に記載される。
【0073】
配列番号13のある特定の実施形態では、X-6~Xは存在せず、X11、X15、X16、X19は各々、AlaまたはSerであり、X18はHisであり、X20はTyrであり、X26はAsnである。配列番号13のある特定の実施形態では、X-6~Xは存在せず、X11、X15、X16、X19は各々、Alaであり、X18はHisであり、X20はTyrであり、X26はAsnである。
【0074】
ある特定の実施形態では、配列:XPXPXPGX10AAX1314AALHAYX21AX23LX25NYLX2930VX32(配列番号48)を含むペプチドが本明細書において提供され、本ペプチドは、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる1~2個のアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸は、共有結合架橋させることができる。Xは任意選択により存在する。存在するとき、Xは、Gly、Arg、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。X、X、およびXは各々、独立して、中性アミノ酸または正荷電アミノ酸である。Xは、Tyr、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。X10は、Aspまたは中性アミノ酸である。X13は、Ser、Thr、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。X14は、IleまたはLeuである。X21、X25、X29は各々、独立して、Tyr、Phe、Trp、His、またはシクロヘキシル側鎖を有するアミノ酸であり、Tyr、Phe、Trp、シクロヘキシル側鎖は、1つ以上のフッ素で置換されていてもよい。X23は、Arg、Leu、またはAlaである。X30は、AlaまたはArgである。X32は、Ala、Ser、またはArgである。
【0075】
ある特定の実施形態では、11位、15位、16位、および19位における1つ以上のAlaがSerで置換されていることを除いて配列番号48の配列を含むペプチドが提供される。
【0076】
ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体はホモ二量体である。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体はヘテロ二量体である。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、共有結合架橋による二量体である。例えば、アクリル酸で修飾されたCys、Sec、Dap、またはアクリル酸で修飾されたDabが、共有結合架橋剤として使用される。アクリルアミド、ビニルスルホンアミド、ヨードアセトアミド部分を含む他のアミノ酸、または他の公知のMichael受容体が、架橋に有用である。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、非共有結合架橋による二量体である。例えば、His、Tyr、Phe、またはTrpが、非共有結合架橋剤として使用される。
【0077】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7の配列を含まない。ある特定の実施形態では、本ペプチド単量体は、同じペプチド単量体とホモ二量体化することはできないが、異なるペプチド単量体とヘテロ二量体化することができる。これは、例えば、1つのペプチド内の残基が(例えば、立体的または別様に好ましくない相互作用に起因して)同じペプチドを有する二量体内には収容され得ないが、第2のペプチドを有する二量体内には収容され得る、「バンプ-ホール(bump-hole)」システムの使用により達成され得る。同じことが第2のペプチドにも当てはまり、このようにして、いずれのペプチドもホモ二量体を形成することができないが、ヘテロ二量体化することはできる。
【0078】
例示的なペプチド単量体には、
RDA1:GPRRPRCPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号4)、
RDA2:GPRRPRCPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYRVA(配列番号5)、
RDA3:GRRPRRPRCPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号6)、
aPP-M:GPRRPRYPGDDAPVEDLIRFYNDLQQYLNVVA(配列番号7)、
225-1:GCGGPRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号8)、
225-1 S13C/I14E:GCGGPRRPRYPGDDACEEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号9)、
225-1 A30R:GCGGPRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYRVA(配列番号10)、
225-3:GCGGPRRPRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号11)、
PRRPRCPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号14)、
PRRPRCPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYRVA(配列番号15)、
RRPRRPRCPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号16)、
PRRPRYPGDDAPVEDLIRFYNDLQQYLNVVA(配列番号17)、
PRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号18)
CGGPRRPRYPGDDACEEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号19)
PRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYRVA(配列番号20)
PRRPRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号21)
PRRPRCPGDDASLEDLHEYWARLWNYLYRVA(配列番号22)、
PRRPRCPGDQASLEELHEYWARLWNYLYRVA(配列番号23)、
PRRPRCPGDNASIKQLHAYWNRLYAYLAAVA(配列番号24)、
PRRPRCPGDDASIEDLHEYWQRLYAYLAAVA(配列番号25)、
PRRPRCPGDNASIKQLHAYWQRLYAYLAAVA(配列番号26)、
PRRPRCPGDNASIRQLHAYWQRLYAYLAAVA(配列番号27)、
GCGGPRRPRYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVA(配列番号28)、
PRRPRYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVA(配列番号29)、
225-H:PRRPKYPGDAASCAALHAYWARLWNYLYRVA(配列番号30)、
225-I:PRRPRYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRXA(配列番号31)、
225-J:PRRPRYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRZA(配列番号32)、
225-K:PRRPCYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVA(配列番号33)、
225-L:PRRPKCPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVA(配列番号34)、
225-M:PRRPRYPGXAASIAALHAYWARLWNYLYRVA(配列番号35)、
225-N:PRRPRYPGZAASIAALHAYWARLWNYLYRVA(配列番号36)、
225-4s1:PRRPKYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVR(配列番号37)、
291-A:PRRPKHPGHAASIAALHAYWARLWNYLYRVR(配列番号38)、
291-1:PRRPRHPGPNATISQLHHYWARLWNYLYRVR(配列番号39)、
291-H:PRRPHHPGHAASIAALHAYWARLWNYLYRVR(配列番号40)、
291-I:PRRPHYPGHAASIAALHAYWARLWNYLYRVR(配列番号41)、
291-Q3:PRRPRCPGHAASIAALHAYWARLWNYLYRVR(配列番号42)、
MY01:GPRRPRCPGDDASIRDLLKYWWRLRLYLLAVA(配列番号43)、
RL01:GPRRPRCPGDDASISDLLLYWLRLDRYLWAVA(配列番号44)、
RR01:GPRRPRCPGDDASIRDLVMYWYRLYFYLEAVA(配列番号45)、
225-1c:PRRPKYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVS(配列番号46)、
225-4d:RPRRPKYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVS(配列番号47)、
291-T:PRRPRYPGDAASIAALHAYWARLWNYLYRVS(配列番号49)、
Q:PRRPRCPGDNASIRQLHAYWQRLYAYLAAVA(配列番号50)、および
R:PRRPRCPGDAASIAALHAYWQRLYAYLAAVA(配列番号51)が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、二量体を安定化させる目的のために単量体間に架橋するアミノ酸を含む。単量体間に架橋するアミノ酸は、配列番号1、12、13、または48のいずれの位置にあってもよい。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1、12、13、または48の1位に、単量体間に架橋するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1、12、13、または48の6位に、単量体間に架橋するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1、12、13、または48の7位に、単量体間に架橋するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1、12、13、または48の10位に、単量体間に架橋するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1、12、13、または48の11位に、単量体間に架橋するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1、12、13、または48の13位に、単量体間に架橋するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1、12、13、または48の31位に、単量体間に架橋するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1、12、13、または48の32位に、単量体間に架橋するアミノ酸を含む。
【0080】
ある特定の実施形態では、第1のペプチド内の配列番号1、12、13、または48の特定の位置における架橋アミノ酸は、第2のペプチドの同じ位置における架橋アミノ酸に架橋する。ある特定の実施形態では、第1のペプチド内の配列番号1、12、13、または48の特定の位置における架橋アミノ酸は、第2のペプチドの異なる位置における架橋アミノ酸に架橋する。ある特定の実施形態では、第1のペプチド内の配列番号1、12、13、または48の7位における架橋アミノ酸は、第2のペプチドの7位における架橋アミノ酸に架橋する。ある特定の実施形態では、第1のペプチド内の配列番号1、12、13、または48の1位における架橋アミノ酸は、第2のペプチドの11位または13位における架橋アミノ酸に架橋する。
【0081】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1、12、13、または48の-2位に、単量体間に架橋するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、第1のペプチド内の配列番号1、12、13、または48の-2位における架橋アミノ酸は、第2のペプチドの11位または13位における架橋アミノ酸に架橋する。
【0082】
ある特定の実施形態では、単量体間に架橋するアミノ酸は、システインである。ある特定の実施形態では、単量体間に架橋するアミノ酸は、セレノシステインである。ある特定の実施形態では、単量体間に架橋するアミノ酸は、ジスルフィド結合を形成することができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、単量体間に架橋するアミノ酸は、ジセレニド結合を形成することができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、単量体間に架橋するアミノ酸は、CysまたはSecと結合を形成することができるアミノ酸である。例えば、求電子性部分、例えばアクリルアミド、ビニルスルホンアミド、ヨードアセトアミド部分を有するもの、または他の公知のMichael受容体。
【0083】
向上させるべきペプチド特性は、結合親和性、安定性、および細胞浸透性を含み、例えば、1つ以上のペプチドドメイン内の1つ以上のアミノ酸残基を変異させることによって達成され得る。本ペプチドは、細胞透過性ペプチド(例えばTAT、アンテナペディア、トランスポータン、およびポリアルギニンなど)またはステープルドペプチドとの結合によって細胞浸透性にすることができる。ペプチド特性を改善させる他の方法、例えば、組織特異性標的の目的もしくは効力増大に有用である薬物-抗体結合体などの他の薬物とペプチドを連結させること、または、半減期を向上させ腎クリアランスを減速させるように、ポリエチレングリコールまたは同様の分子とペプチドを連結させることなどは、当業者に公知である。ある特定の実施形態では、ポリプロリンII型ヘリックスドメインは、改善した特性を有するように操作されている。ある特定の実施形態では、ループ/リンカードメインは、改善した特性を有するように操作されている。ある特定の実施形態では、ループ/リンカードメインはI型βターンである。ある特定の実施形態では、C末端αヘリックスドメインは、改善した特性を有するように操作されている。ある特定の実施形態では、ペプチド上の電荷は、細胞浸透性を改善するように操作されている。例えば、負荷電(Asp、Glu)残基の数が減少され、正荷電(Arg、Lys、His)残基の数が減少され、かつ/または疎水性(Tyr、Trp、Phe、Leu、Ile、Met)残基の数が減少される。本明細書においてさらに開示されるように、ある特定の実施形態では、本ペプチドのある特定の残基は、Alaおよび/またはSerに変異させられる。例えば、X11、X15、X16、およびX19から選択される少なくとも1個、2個、3個、または4個の残基が、Alaおよび/またはSerに変異させられてもよい。ある特定の実施形態では、負荷電残基がAlaおよび/またはSerに変異させられる。ある特定の実施形態では、X11位、X15位、X16位、およびX19位における少なくとも1個、2個、3個、または4個の負荷電残基残基が、Alaおよび/またはSerに変異させられる。ある特定の実施形態では、血清タンパク質に結合する本ペプチドの能力は、薬物動態を改善するように操作されている。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、ナノ粒子を使用して送達される。
【0084】
ある特定の実施形態では、第2の標的に結合する本ペプチドの能力は、第2の標的をRasに動員するように操作されている。ペプチドまたはペプチドライブラリは、PPIIヘリックス、ループ、および/または第1の標的への結合に関与しないαヘリックスの部分上に、変異またはランダム化した残基を有する。変異またはランダム化した残基は、ヘテロ二量体の第1または第2の単量体の両方に使用され得る。ある特定の実施形態では、ループ/リンカードメインはI型βターンである。ある特定の実施形態では、本明細書において使用されるペプチドは、選択的組織標的に有用である。第2の標的の例としては、血清アルブミンおよび血清レチノイド結合タンパク質などの血清タンパク質、CD-20などのADC結合の標的であるリサイクリング受容体、組織標的のためのトランスフェリン受容体およびインスリン受容体、肝臓送達のための肝臓GalNAc受容体、ならびに新生児Fc受容体が挙げられる。
【0085】
第1のペプチドおよび第2のペプチドは、共有結合で会合していてもよい。第1のペプチドおよび第2のペプチドはまた、非共有結合で会合していてもよい。いかなる共有結合または非共有結合相互作用も、本二量体の形成に使用され得る。ある特定の実施形態では、第1のペプチドおよび第2のペプチドは、ジスルフィド結合、ジセレニド結合、炭素-炭素結合、アミド結合、エステル結合、水素結合、塩橋、パイスタッキング相互作用、または非極性疎水性相互作用を介して会合している。ある特定の実施形態では、第1のペプチドおよび第2のペプチドは、ジスルフィド結合を介して会合している。ある特定の実施形態では、第1のペプチドおよび第2のペプチドは、ジセレニド結合を介して会合している。ある特定の実施形態では、第1のペプチドおよび第2のペプチドは、炭素-炭素結合、アミド結合、エステル結合、水素結合、塩橋、パイスタッキング相互作用、または非極性疎水性相互作用を介して会合している。
【0086】
本ペプチドは、各々、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる1個のアミノ酸を含み得る。本ペプチドは、各々、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる2個のアミノ酸を含んでもよい。本ペプチド二量体は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させる1個のアミノ酸を各々含む、第1および第2のペプチドを含んでもよい。本ペプチド二量体は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させる2個のアミノ酸を各々含む、第1および第2のペプチドを含んでもよい。ある特定の実施形態では、架橋は共有結合性である。ある特定の実施形態では、架橋は非共有結合性である。
【0087】
ある特定の実施形態では、Xは、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、Xは、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、Xは、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、Xは、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、Xは、Cys、Sec、Phe、Trp、またはTyrである。ある特定の実施形態では、Xは、Cys、Secである。ある特定の実施形態では、XはCysである。ある特定の実施形態では、XはSecである。ある特定の実施形態では、Xは、Phe、Trp、またはTyrである。
【0088】
ある特定の実施形態では、X、X、およびXの各々は独立して、荷電アミノ酸である。ある特定の実施形態では、X、X、およびXの各々は独立して、荷電側鎖を有する塩基性アミノ酸である。ある特定の実施形態では、X、X、およびXの各々は独立して、正荷電アミノ酸である。ある特定の実施形態では、X、X、およびXの各々は独立して、Arg、Lys、またはHisである。ある特定の実施形態では、X、X、およびXの各々は独立して、Argである。ある特定の実施形態では、X、X、およびXの各々は独立して、Lysである。ある特定の実施形態では、X、X、およびXの各々は独立して、Hisである。ある特定の実施形態では、X、X、およびXの各々は、同じアミノ酸でも異なるアミノ酸でもよい。ある特定の実施形態では、X、X、およびXの各々は、同じアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X、X、およびXの各々は、異なるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X、X、およびXの各々は、そのペプチド内の他のアミノ酸または別のペプチド内のアミノ酸との静電気作用などを介して安定性を提供するアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X、X、およびXは各々、独立して、負荷電アミノ酸である。ある特定の実施形態では、X、X、およびXの各々は独立して、AspまたはGluである。
【0089】
ある特定の実施形態では、Xは、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、Xは、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、Xは、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、Xは、Cys、Sec、Phe、Trp、またはTyrである。ある特定の実施形態では、XはCysまたはSecである。ある特定の実施形態では、XはCysである。ある特定の実施形態では、XはSecである。ある特定の実施形態では、Xは、Phe、Trp、またはTyrである。
【0090】
ある特定の実施形態では、XはCysまたはSecであり、XはTyrである。
【0091】
ある特定の実施形態では、Xは、Tyr、または第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、Xは、Tyr、His、または第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、XはTyrである。ある特定の実施形態では、XはHisである。ある特定の実施形態では、Xは、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、Xは、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、Xは、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、Xは、正荷電アミノ酸または負荷電アミノ酸である。ある特定の実施形態では、Xは、Cys、Sec、Phe、Trp、またはTyrである。ある特定の実施形態では、Xは、Cys、Sec、Tyr、またはHisである。ある特定の実施形態では、XはCysである。ある特定の実施形態では、XはSecである。ある特定の実施形態では、Xは、Phe、Trp、またはTyrである。ある特定の実施形態では、XはYであり、XはCysまたはSecである。
【0092】
ある特定の実施形態では、X10は、荷電側鎖を有するアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X10は負荷電アミノ酸である。ある特定の実施形態では、X10はGluまたはAspである。ある特定の実施形態では、X10は、Glu、Asp、またはAlaである。ある特定の実施形態では、X10はGluである。ある特定の実施形態では、X10はAspである。ある特定の実施形態では、X10はAlaである。ある特定の実施形態では、X10は正荷電アミノ酸である。ある特定の実施形態では、X10は、Arg、His、またはLysである。ある特定の実施形態では、X10は、Asp、His、またはProである。ある特定の実施形態では、X10は、Asp、His、Pro、またはアクリルアミド部分を含むアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X10はArgである。ある特定の実施形態では、X10はHisである。ある特定の実施形態では、X10はLysである。ある特定の実施形態では、X10はProである。ある特定の実施形態では、X10は、アクリルアミド部分を含むアミノ酸である。ある特定の実施形態では、アクリルアミド部分を含むアミノ酸は、DabおよびDap結合アクリルアミド残基である。
【0093】
ある特定の実施形態では、X10は、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X10は、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X10は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X10は、Cys、Sec、Phe、Trp、またはTyrである。ある特定の実施形態では、X10はCysである。ある特定の実施形態では、X10はSecである。ある特定の実施形態では、X10は、Phe、Trp、またはTyrである。ある特定の実施形態では、X10は、本明細書にさらに記載されるように、アクリルアミドに結合したL-2,4-ジアミノ酪酸(Dab)、またはアクリルアミドに結合したL-2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)である。
【0094】
ある特定の実施形態では、X11は、荷電側鎖を有するアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X11は負荷電アミノ酸である。ある特定の実施形態では、X11はGluまたはAspである。ある特定の実施形態では、X11はGluである。ある特定の実施形態では、X11はAspである。ある特定の実施形態では、X11は正荷電アミノ酸である。ある特定の実施形態では、X11はArg、His、またはLysである。ある特定の実施形態では、X11はArgである。ある特定の実施形態では、X11はHisである。ある特定の実施形態では、X11はLysである。ある特定の実施形態では、X11は中性アミノ酸である。ある特定の実施形態では、X11は、疎水性側鎖を有するアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X11は、Asp、Gln、Asn、Ala、またはSerである。ある特定の実施形態では、X11は、Ala、Ile、Leu、Valである。ある特定の実施形態では、X11はAlaである。ある特定の実施形態では、X11はSerである。ある特定の実施形態では、X11はAspまたはAlaである。ある特定の実施形態では、X11は、Asp、または第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X11はAspである。ある特定の実施形態では、X11は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X11は、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X11は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X11は、Cys、Sec、Phe、Trp、またはTyrである。ある特定の実施形態では、X11はCysである。ある特定の実施形態では、X11はSecである。ある特定の実施形態では、X11は、Phe、Trp、またはTyrである。
【0095】
ある特定の実施形態では、X13は、Ser、Pro、またはThrである。ある特定の実施形態では、X13はSerである。ある特定の実施形態では、X13はProである。ある特定の実施形態では、X13はThrまたはAlaである。ある特定の実施形態では、X13は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X13は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X13は、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X13は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X13は、Cys、Sec、Phe、Trp、またはTyrである。ある特定の実施形態では、X13はCysである。ある特定の実施形態では、X13はSecである。ある特定の実施形態では、X13は、Phe、Trp、またはTyrである。
【0096】
ある特定の実施形態では、X14はIleまたはGluである。ある特定の実施形態では、X14はIleである。ある特定の実施形態では、X14はGluである。ある特定の実施形態では、X14はLeuまたはAspである。ある特定の実施形態、X14は、Ile、Val、Glu、Leu、または第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X14はCysである。ある特定の実施形態では、X14はSecである。
【0097】
ある特定の実施形態では、X15は、Glu、Asp、Gln、またはGlyである。ある特定の実施形態では、X15は、Glu、Lys、Arg、Ser、Asp、Gln、Gly、またはAlaである。ある特定の実施形態では、X15はGluである。ある特定の実施形態では、X15はAspである。ある特定の実施形態では、X15はGlnである。ある特定の実施形態では、X15はGlyである。ある特定の実施形態では、X15はAlaである。
【0098】
ある特定の実施形態では、X16は、Asp、Glu、Gln、Ala、またはSerである。ある特定の実施形態では、X16はAspである。ある特定の実施形態では、X16はGluである。ある特定の実施形態では、X16はGlnである。ある特定の実施形態では、X16はAlaである。ある特定の実施形態では、X16はSerである。
【0099】
ある特定の実施形態では、X18は芳香族アミノ酸である。ある特定の実施形態では、X18は疎水性アミノ酸である。ある特定の実施形態では、X18は、His、Phe、Tyr、Trp、Ala、Val、Leu、Ile、またはMetである。ある特定の実施形態では、X18はHisである。ある特定の実施形態では、X18は、Phe、Tyr、またはTrpである。ある特定の実施形態では、X18は、Ala、Val、Leu、Ile、またはMetである。ある特定の実施形態では、X18は、Ala、Val、Leu、またはIleである。ある特定の実施形態では、X18はMetである。ある特定の実施形態では、X18はAlaである。ある特定の実施形態では、X18はValである。ある特定の実施形態では、X18はLeuである。ある特定の実施形態では、X18はIleである。
【0100】
ある特定の実施形態では、X19は、Glu、Asp、Gln、Ala、またはTrpである。ある特定の実施形態では、X19は、Glu、Asp、Gln、Ala、Ser、Trp、Arg、Lys、Leu、Met、またはHisである。ある特定の実施形態では、X19は、Glu、Asp、Gln、Ala、Trp、Arg、またはHisである。ある特定の実施形態では、X19はGluである。ある特定の実施形態では、X19はAspである。ある特定の実施形態では、X19はGlnである。ある特定の実施形態では、X19はAlaである。ある特定の実施形態では、X19はSerである。ある特定の実施形態では、X19はTrpである。ある特定の実施形態では、X19はArgである。ある特定の実施形態では、X19はLysである。ある特定の実施形態では、X19はLeuである。ある特定の実施形態では、X19はMetである。ある特定の実施形態では、X19はHisである。
【0101】
ある特定の実施形態では、X20はTyrまたはPheである。ある特定の実施形態では、X20はTyrである。ある特定の実施形態では、X20はPheである。
【0102】
ある特定の実施形態では、X21、X25、およびX29は各々、疎水性かつ/または大型のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X21はTrpである。ある特定の実施形態では、X21はTyrである。ある特定の実施形態では、X21はPheである。ある特定の実施形態では、X21はHisである。ある特定の実施形態では、X21はGlnである。ある特定の実施形態では、X25はTrpである。ある特定の実施形態では、X25はTyrである。ある特定の実施形態では、X25はHisである。ある特定の実施形態では、X25はPheである。ある特定の実施形態では、X25はHisである。ある特定の実施形態では、X29はTyrである。ある特定の実施形態では、X29はTrpである。ある特定の実施形態では、X29はPheである。ある特定の実施形態では、X29はHisである。ある特定の実施形態では、X21、X25、X29の各々は、独立して、Tyr、Trp、Phe、His、またはシクロヘキシル側鎖を有するアミノ酸であってもよく、ここでTyr、Phe、Trp、またはシクロヘキシル側鎖は、任意選択によりフッ素化されている。ある特定の実施形態では、X25は、Tyr、Phe、Trp、His、Gln、Arg、またはAspである。ある特定の実施形態では、X29は、Tyr、Phe、Trp、His、Gln、Arg、Asp、Asn、Ala、Leu、またはGluである。
【0103】
ある特定の実施形態では、X22は小型アミノ酸である。ある特定の実施形態では、X22はAlaである。ある特定の実施形態では、X22は、Gly、Ser、またはValである。ある特定の実施形態では、X22は、Gly、Ser、Val、またはAsnである。ある特定の実施形態では、X22はGlyである。ある特定の実施形態では、X22はSerである。ある特定の実施形態では、X22はValである。ある特定の実施形態では、X22は、Ala、Gly、Ser、Val、Asn、Gln、Trp、Leu、またはTyrである。
【0104】
ある特定の実施形態では、X23はArgまたはAspである。ある特定の実施形態では、X26は、Asn、Leu、Ile、またはHisである。ある特定の実施形態では、X26は、Asn、Leu、Ile、His、Gln、Arg、Phe、またはAlaである。ある特定の実施形態では、X26はAsnである。ある特定の実施形態では、X26はLeuである。ある特定の実施形態では、X26はIleである。ある特定の実施形態では、X26はHisである。
【0105】
ある特定の実施形態では、X30はAlaまたはArgである。ある特定の実施形態では、X30は、Ala、Arg、またはValである。ある特定の実施形態では、X30はArgである。ある特定の実施形態では、X30はAlaである。ある特定の実施形態では、X30はValである。
【0106】
ある特定の実施形態では、X31は、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X31は、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X31は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X31は、Val、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X31は、Cys、Sec、Phe、Trp、またはTyrである。ある特定の実施形態では、X31はCysである。ある特定の実施形態では、X31はSecである。ある特定の実施形態では、X31は、Phe、Trp、またはTyrである。ある特定の実施形態では、X31は、Dap結合アクリルアミドである。ある特定の実施形態では、X31は、Dab結合アクリルアミドである。
【0107】
ある特定の実施形態では、X32は、Ala、Arg、Serである。ある特定の実施形態では、X32はAlaである。ある特定の実施形態では、X32はArgである。ある特定の実施形態では、X32はSerである。ある特定の実施形態では、X32は、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X32は、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X32は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X32は、Cys、Sec、Phe、Trp、またはTyrである。ある特定の実施形態では、X32はCysである。ある特定の実施形態では、X32はSecである。ある特定の実施形態では、X32は、Phe、Trp、またはTyrである。ある特定の実施形態では、X32はArgまたはAlaである。ある特定の実施形態では、X32は、DabまたはDap結合アクリルアミドである。
【0108】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、本明細書において提供されるアミノ酸配列に対して約80%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、本明細書において提供されるアミノ酸配列に対して約84%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、本明細書において提供されるアミノ酸配列に対して約87%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、本明細書において提供されるアミノ酸配列に対して約90%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、本明細書において提供されるアミノ酸配列に対して約93%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、本明細書において提供されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%相同である配列を含む。
【0109】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、本明細書において提供されるアミノ酸配列と約80%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、本明細書において提供されるアミノ酸配列と約84%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、本明細書において提供されるアミノ酸配列と約87%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、本明細書において提供されるアミノ酸配列と約90%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、本明細書において提供されるアミノ酸配列と約93%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、本明細書において提供されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一である配列を含む。
【0110】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して約80%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して約85%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して約90%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して約95%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して約97%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して約98%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%相同である配列を含む。前述の値は、配列番号12、13、および48に適用可能である。
【0111】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列と約80%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列と約84%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列と約87%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列と約90%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列と約93%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列と約96%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ配列と少なくとも約80%、84%、87%、90%、93%、または96%同一である配列を含む。前述の値は、配列番号12、13、および48に適用可能である。
【0112】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列とは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列とは1アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列とは2アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列とは3アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列とは4アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列とは5アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列とは6アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列とは7アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列とは8アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列とは9アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列とは10アミノ酸異なる配列を含む。前述の差異は、配列番号12、13、および48にも適用可能である。
【0113】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、GPRRPRCPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号4)の配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、GPRRPRCPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYRVA(配列番号5)の配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、GRRPRRPRCPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号6)の配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、GPRRPRYPGDDAPVEDLIRFYNDLQQYLNVVA(配列番号7)の配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、GCGGPRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号8)の配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、GCGGPRRPRYPGDDACEEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号9)の配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、GCGGPRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYRVA(配列番号10)の配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、GCGGPRRPRRPRYPGDDASIEDLHEYWARLWNYLYAVA(配列番号11)の配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号14~51の配列を含む。
【0114】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列に対して約80%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列に対して約85%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列に対して約90%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列に対して約95%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列に対して約97%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列に対して約98%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%相同である配列を含む。前述の値は、配列番号14~51に適用可能である。
【0115】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列と約80%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列と約84%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列と約87%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列と約90%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列と約93%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列と約96%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ配列と少なくとも約80%、84%、87%、90%、93%、または96%同一である配列を含む。前述の値は、配列番号14~51に適用可能である。
【0116】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列とは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列とは1アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列とは2アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列とは3アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列とは4アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列とは5アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列とは6アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列とは7アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列とは8アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列とは9アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列とは10アミノ酸異なる配列を含む。前述の値は、配列番号14~51に適用可能である。
【0117】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して約80%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して約85%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して約90%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して約95%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して約97%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して約98%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%相同である配列を含む。
【0118】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列と約80%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列と約84%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列と約87%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列と約90%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列と約93%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列と約96%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ配列と少なくとも約80%、84%、87%、90%、93%、または96%同一である配列を含む。
【0119】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列とは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列とは1アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列とは2アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列とは3アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列とは4アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列とは5アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列とは6アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列とは7アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列とは8アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列とは9アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列とは10アミノ酸異なる配列を含む。
【0120】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列に対して約80%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列に対して約85%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列に対して約90%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列に対して約95%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列に対して約97%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列に対して約98%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%相同である配列を含む。
【0121】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列と約80%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列と約84%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列と約87%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列と約90%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列と約93%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列と約96%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ配列と少なくとも約80%、84%、87%、90%、93%、または96%同一である配列を含む。
【0122】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列とは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列とは1アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列とは2アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列とは3アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列とは4アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列とは5アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列とは6アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列とは7アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列とは8アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列とは9アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列とは10アミノ酸異なる配列を含む。
【0123】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7に対して少なくとも約80%~99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列に対して約85%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列に対して約90%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列に対して約95%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列に対して約97%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列に対して約98%~約99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%相同である配列を含む。
【0124】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7に対して少なくとも約80%~99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列と約85%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列と約90%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列と約95%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列と約97%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列と約98%~約99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一である配列を含む。
【0125】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列とは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列とは1アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列とは2アミノ酸.異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列とは3アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列とは4アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列とは5アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列とは6アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列とは7アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列とは8アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列とは9アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列とは10アミノ酸異なる配列を含む。
【0126】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8に対して少なくとも約80%~99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8に対して少なくとも約90%~99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8に対して少なくとも約94%~99%相同である配列を含む。
【0127】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8と少なくとも約80%~99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8と少なくとも約90%~99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8と少なくとも約94%~99%同一である配列を含む。
【0128】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列とは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列とは1アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列とは2アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列とは3アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列とは4アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列とは5アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列とは6アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列とは7アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列とは8アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列とは9アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列とは10アミノ酸異なる配列を含む。
【0129】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9に対して少なくとも約80%~99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9に対して少なくとも約90%~99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9に対して少なくとも約94%~99%相同である配列を含む。
【0130】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9と少なくとも約80%~99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9と少なくとも約90%~99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9と少なくとも約94%~99%同一である配列を含む。
【0131】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列とは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列とは1アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列とは2アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列とは3アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列とは4アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列とは5アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列とは6アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列とは7アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列とは8アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列とは9アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列とは10アミノ酸異なる配列を含む。
【0132】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10に対して少なくとも約80%~99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10に対して少なくとも約90%~99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10に対して少なくとも約94%~99%相同である配列を含む。
【0133】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10と少なくとも約80%~99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10と少なくとも約90%~99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10と少なくとも約94%~99%同一である配列を含む。
【0134】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列とは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列とは1アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列とは2アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列とは3アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列とは4アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列とは5アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列とは6アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列とは7アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列とは8アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列とは9アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列とは10アミノ酸異なる配列を含む。
【0135】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11に対して少なくとも約80%~99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11に対して少なくとも約90%~99%相同である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11に対して少なくとも約94%~99%相同である配列を含む。
【0136】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11と少なくとも約80%~99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11と少なくとも約90%~99%同一である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11と少なくとも約94%~99%同一である配列を含む。
【0137】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列とは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列とは1アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列とは2アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列とは3アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列とは4アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列とは5アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列とは6アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列とは7アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列とは8アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列とは9アミノ酸異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列とは10アミノ酸異なる配列を含む。
【0138】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1の9位、10位、12位、16位、17位、20位、23位、24位、27位、28位、31位、または32位におけるアミノ酸のうちのいずれか1つが任意の天然または非天然のアミノ酸である配列を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1の配列を含み、ここで、9位、10位、12位、16位、17位、20位、23位、24位、27位、28位、31位、または32位における、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、または12個のアミノ酸は変更されてもよい。
【0139】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、第2のペプチドと会合して、標的タンパク質に結合するペプチド二量体を形成する第1のペプチドである。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、標的タンパク質に結合する。ある特定の実施形態では、標的タンパク質はRasである。Rasの例としては、NRas、HRas、ならびにKRas4AおよびKRas4Bを含むKRasが挙げられる。ある特定の実施形態では、標的タンパク質はRas変異体である。ある特定の実施形態では、Ras変異体は、以下の変異:G12D、G12S、G12V、G12C、G12R、G12A、G12D、G13R、G13V、G13S、G13C、G13A、Q61L、Q61R、Q61K、もしくはQ61Hのうちの1つ以上を有する、NRas、HRas、またはKRasである。ある特定の実施形態では、標的タンパク質はMax/Mycである。ある特定の実施形態では、標的タンパク質はRalAである。ある特定の実施形態では、標的タンパク質はRasおよびRalAである。
【0140】
ある特定の実施形態では、第2のペプチドは、第1のペプチドの配列と同じ配列を含む。ある特定の実施形態では、第2のペプチドは、第1のペプチドの配列とは異なる配列を含む。ある特定の実施形態では、第2のペプチドは、配列番号1の配列を含む。ある特定の実施形態では、第2のペプチドは、配列番号1、12、13、または48の配列を含む。ある特定の実施形態では、第2のペプチドのX21またはX25は、Tyr、Phe、Trp、His、またはシクロヘキシル側鎖を有するアミノ酸であり、Tyr、Phe、Trp、またはシクロヘキシル側鎖は、任意選択によりフッ素化されている。ある特定の実施形態では、第2のペプチドのX21はTrpである。ある特定の実施形態では、第2のペプチドのX25はTyrである。ある特定の実施形態では、第1のペプチドのX25はTrpである。ある特定の実施形態では、第2のペプチドのX25はTyrであり、第1のペプチドのX25はTrpである。ある特定の実施形態では、第2のペプチドのX18はHisであり、X21およびX25の各々はTrpである。ある特定の実施形態では、第1のペプチドおよび第2のペプチドは、ジスルフィド結合、ジセレニド結合、炭素-炭素結合、アミド結合、エステル結合、水素結合、塩橋、パイスタッキング相互作用、または非極性疎水性相互作用を介して会合している。ある特定の実施形態では、第1のペプチドおよび第2のペプチドは、ジスルフィド結合またはジセレン結合を介して会合している。ある特定の実施形態では、2つのペプチドは、パイスタッキング相互作用を介して会合している。例えば、1つのペプチド上のチロシンは、パイスタッキングを介して、別のペプチド上の別のチロシンと相互作用する。
【0141】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、それらの標的(例えば、Rasタンパク質)に、中度から低度のナノモル結合親和性で結合する。この理論に束縛されることを望むものではないが、本ペプチドは、Rasエフェクタードメインに直接結合し、Rasがその発癌活性に必要なエフェクタータンパク質に結合することを遮断する。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、頭-尾二量体としてRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、頭-尾ホモ二量体としてRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、頭-尾ヘテロ二量体としてRasに結合する。
【0142】
標的(例えば、Rasタンパク質)に対する本明細書に記載されるペプチドの結合親和性は、当該分野で公知の方法(例えば、蛍光偏光測定)を使用して、本明細書に記載されるペプチドおよび標的の解離定数(K)によって測定され得る。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ500nM、200nM、150nM、140nM、130nM、120nM、110nM、100nM、90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、2nM、1nM、または0.5nM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ400pM、200pM、150pM、140pM、130pM、120pM、110pM、100pM、90pM、80pM、70pM、60pM、50pM、40pM、30pM、20pM、10pM、9pM、8pM、7nM、6nM、または5nM未満の解離定数(K)でRasに結合する。前述のK値は、ペプチドホモ二量体とヘテロ二量体との両方に適用可能である。
【0143】
ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ500nM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ150nM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ150nM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ60nM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ40nM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ20nM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ10nM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ5nM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ10nM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ5nM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ1nM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ1nM未満の解離定数(K)でRasに結合する。
【0144】
ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ400pM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ200pM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ150pM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ100pM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ80pM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ60pM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ40pM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ20pM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ10pM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ5pM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ1pM未満の解離定数(K)でRasに結合する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、およそ1pM未満の解離定数(K)でRasに結合する。
【0145】
ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、非発癌型よりも発癌型の標的タンパク質に対して高い結合親和性を有する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、Ras・GDPよりもRas・GTPに対して高い結合親和性を有する。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、Ras・GDPに対する結合親和性よりもおよそ1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍、高い、Ras・GTPに対する結合親和性を有する。
【0146】
Ras抑制は、細胞生存率アッセイ(例えば、MTTまたはCellTiterGlo)、カスパーゼ開裂アッセイ(例えば、定量的ウェスタンブロッティングまたはカスパーゼ3/7 Gloによる)、例えば、全タンパク質と比べてリン酸化タンパク質を測定することによるRas経路活性化(例えば、MAPK経路、PI3K/Akt経路、Ral経路の活性化)の定量的ウェスタンブロッティングなどの方法を使用して測定され得る。
【0147】
ある特定の実施形態では、ペプチド単量体は、最少3,000Da、最大9,000Daである。ある特定の実施形態では、ペプチド単量体は、最少3,000Da、最大6,000Daである。ある特定の実施形態では、ペプチド単量体は、最少6,000Da、最大9,000Daである。ある特定の実施形態では、ペプチド二量体は、最少6,000Da、最大18,000Daである。ある特定の実施形態では、ペプチド二量体は、最少6,000Da、最大12,000Daである。ある特定の実施形態では、ペプチド二量体は、最少12,000Da、最大18,000Daである。
【0148】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1~11のN末端に追加のアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号1~11のC末端に追加のアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、追加のアミノ酸は、配列番号1~5および7のN末端におけるX-2GまたはGRを含む。ある特定の実施形態では、追加のアミノ酸は、配列番号1~5および7のN末端におけるGCGを含む。本明細書において使用される場合、下付き文字として負数を有するXは、配列番号1のXに対してN末端側に位置するアミノ酸残基の位置を表す。
【0149】
ある特定の実施形態では、X-2は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X-2は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X-2は、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X-2は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させる天然または非天然のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、X-2は、Cys、Sec、Phe、Trp、またはTyrである。ある特定の実施形態では、X-2はCysである。ある特定の実施形態では、X-2はSecである。ある特定の実施形態では、X-2は、Phe、Trp、またはTyrである。
【0150】
ある特定の実施形態では、X13はCysまたはSecであり、X14はGluである。ある特定の実施形態では、X18はHisであり、X25およびX21の各々はTrpである。
【0151】
ある特定の実施形態では、XはGlyであり、X、X、およびXの各々はArgであり、XはCysである。ある特定の実施形態では、XはGlyであり、X、X、およびXの各々はArgであり、XはCyであり、X30はAlaである。ある特定の実施形態では、XはGlyであり、X、X、およびXの各々はArgであり、XはCysであり、X30はArgである。ある特定の実施形態では、X-2はGlyであり、X-1はArgであり、XはArgであり、X、X、およびXの各々はArgであり、XはCysであり、X30はAlaである。前述の実施形態の各々において、SecがCysの代わりに使用されることも企図される。
【0152】
ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、一次的なペプチドおよび二次的なペプチドを含む。一次的なペプチドは、Rasとの接点の大部分を形成する。
【0153】
ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化したペプチドは、配列番号22、23、および49から選択される一次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化したペプチドは、配列番号24~27、50、および51から選択される二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号22の一次的なペプチド、および配列番号24の二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号22から選択される一次的なペプチド、および配列番号25の二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号22の一次的なペプチド、および配列番号26の二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号22の一次的なペプチド、および配列番号27の二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号22の一次的なペプチド、および配列番号50の二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号22の一次的なペプチド、および配列番号51の二次的なペプチドを含む。
【0154】
ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号23の一次的なペプチド、および配列番号24の二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号23の一次的なペプチド、および配列番号25の二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号23の一次的なペプチド、および配列番号26の二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号23の一次的なペプチド、および配列番号27の二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号23の一次的なペプチド、および配列番号50の二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号23の一次的なペプチド、および配列番号51の二次的なペプチドを含む。
【0155】
ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号49の一次的なペプチド、および配列番号24の二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号49の一次的なペプチド、および配列番号25の二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号49の一次的なペプチド、および配列番号26の二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号49の一次的なペプチド、および配列番号27の二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号49の一次的なペプチド、および配列番号50の二次的なペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ヘテロ二量体化ペプチドは、配列番号49の一次的なペプチド、および配列番号51の二次的なペプチドを含む。
【0156】
一態様では、細胞透過前の二量体化を防止するかまたは最小限に抑えるように設計されたペプチドが、本明細書において提供される。本明細書において開示されるペプチドは、マスクされたCysまたはSecを含んでもよい。ジスルフィド形態またはセレン-スルフィド形態の硫黄は求核性ではないため、細胞透過前に、ペプチド単量体内のシステインまたはセレノシステイン残基は、架橋を防止するように、有機チオール小部分にジスルフィド結合またはセレン-スルフィド結合していてもよい。ある特定の実施形態では、ペプチド単量体は、有機チオール小部分にジスルフィド結合しているシステインを含む。ある特定の実施形態では、ペプチド単量体は、有機チオール小部分にセレン-スルフィド結合しているセレノシステインを含む。ある特定の実施形態では、有機チオール小部分は、脂肪族チオール部分である。ある特定の実施形態では、脂肪族チオールは、アルキルチオール部分である。ある特定の実施形態では、アルキルチオールは、C1-5アルキルチオールである。ある特定の実施形態では、有機チオール小部分はSRであり、ここでRは、置換または非置換のC1-5アルキルである。ある特定の実施形態では、Rは、置換C1-5アルキルである。ある特定の実施形態では、Rは、非置換C1-5アルキルである。ある特定の実施形態では、有機チオール小部分は、t-ブチルチオールである。ある特定の実施形態では、有機チオール小部分は、エタンチオールである。本明細書に記載される、単量体である発明的ペプチドは、ジスルフィド結合していないCysまたはジスルフィド結合しているCysのいずれを含んでもよい。ある特定の実施形態では、発明的ペプチドは、ジスルフィド結合していないCysを含む単量体である。ある特定の実施形態では、発明的ペプチドは、ジスルフィド結合しているCysを含む単量体である。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号30、33、および34からなる群から選択される配列を含み、Cysは、ジスルフィド結合していない。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号30、33、および34からなる群から選択される配列を含み、Cysは、有機チオール小部分にジスルフィド結合している。前述の実施形態のいずれにおいても、Cysの代わりにSecも企図される。
【0157】
細胞透過後、ペプチド単量体のジスルフィド結合システインは、細胞質環境で還元され、システイン残基の遊離チオールが、チオール求核剤と反応することができる求電子性側鎖を含む第2のペプチド単量体に架橋することが可能となる。この手法は、架橋のための求核剤として機能し得るセレノシステインを含むペプチドにも適用可能である。例えば、求電子性側鎖には、アクリルアミド、ビニルスルホンアミド、ヨードアセトアミド部分を有するものが含まれる。CysまたはSecと反応することができる他のMichael受容体もまた、ペプチドの架橋に適用可能であり、当該分野で公知である。例えば、本ペプチドは、CysまたはSecに架橋することができる部分で修飾された残基を含んでもよい。例えば、アクリルアミド部分を含むアミノ酸側鎖。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、アクリルアミド部分を含むアミノ酸側鎖を含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、L-2,4-ジアミノ酪酸(Dab)残基またはL-2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)残基を含む。本明細書において使用される場合、残基XはL-2,4-ジアミノ酪酸(Dab)残基であり、残基ZはL-2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)残基である。
【化2】
【0158】
ある特定の実施形態では、DabまたはDap残基は、ペプチド骨格α炭素からアクリルアミドを分離させる1個または2個のいずれかの炭素を有するアクリルアミド側鎖を形成するように、側鎖窒素に連結したアクリル酸を有する。アクリルアミドを含む側鎖を形成するようにアクリル酸に連結したDapおよびDab残基の側鎖は、以下に示される。そのようなDapまたはDab修飾残基は、DabおよびDap結合アクリルアミド残基と称される。
【化3】
【0159】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号31、32、35、および36からなる群から選択される配列を含み、Xは、L-2,4-ジアミノ酪酸(Dab)残基であるか、または、Zは、アクリルアミドに結合したL-2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)残基である。
【0160】
ある特定の実施形態では、L-2,4-ジアミノ酪酸(Dab)残基またはL-2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)残基を含むペプチドは、アクリル酸と共にDapまたはDabの側鎖窒素に連結されて、アクリルアミドを含む側鎖を形成する。
【0161】
ペプチド二量体は、配列番号30、33、および34と、配列番号31、32、35、および36との任意の組み合わせから形成され得る。
【0162】
選択的二量体不安定化手法も本明細書において提供される。エンドソーム内で二量体を不安定化させると、二量体のエンドソーム逃避、ひいては細胞質ゾルの接近を向上させることができる。単量体は、エンドソームの逃避において、二量体と比較してより効率的であると考えられている。二量体不安定化は、pH誘発性であっても、嵩高残基で誘発されてもよい。pH誘発性二量体不安定化は、ヒスチジン残基が反対側の単量体上のカチオン性残基または他のヒスチジンに空間的に近接するように、ヒスチジン残基を1つのペプチド単量体に配置することを伴う。通常の細胞質ゾルのpH(約7.4)において、これらのヒスチジンはエンドソーム内(pH約5~6)よりも正電荷が低く、したがって二量体はエンドソーム内で選択的に不安定化され、より効率的な逃避につながる。6.0~6.5のヒスチジンのpKaにより、ヒスチジンは細胞質ゾルのpH値(pH7.2~7.4)において大部分は中性になるが、エンドソーム内のプロトン化がもたらされ、これは、典型的には約pH6.0で開始し、エンドソームがリソソームに遷移するにつれてpH5.0以下まで進行する。反対側の単量体上の正電荷付近のヒスチジン残基の配置は、エンドソーム内への進入に当たり2つのペプチド単量体間の静電反発を生じさせ、これは、単量体状態を好む二量体を不安定化させる。
【0163】
配列番号38~41は、このヒスチジンpH誘発性不安定化手法を例示する。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、HisがX位、X位、および/またはX10位に配置されている配列を含む。これらの位置のうちの1つ、2つ、または3つに配置されたHisは、本明細書に記載されるペプチドのいずれにも適用可能である。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、配列番号38~41からなる群から選択される配列を含む。図36Aおよび36Bは、生細胞顕微鏡法を使用して、同濃度の配列番号37(これはヒスチジンを含まない)を含む細胞と、配列番号38(これはヒスチジンを含む)を含む細胞を比較する。
【0164】
二量体不安定化は、二量体化を防止するために二量体界面付近の嵩高部分を含む残基を使用して実現することもできる。細胞内に進入すると、残基の嵩高部分が除去され、二量体化、およびRas、Myc/Max、またはRalAなどのタンパク質標的への結合が可能になる。この手法は、本明細書に記載されるCysまたはSecを含むいずれのペプチドにも適用可能である。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、チオール分子により保護されたCysまたはSecを含む。例えば、本明細書に記載される発明的ペプチドは、ある特定の位置(例えば、X)における、かつ、例えば、還元チオールを2,2’-ジピリジルジスルフィド、4,4’-ジピリジルジスルフィド、2,2’-ジチオビス(5-ニトロピリジン)、または同様の試薬と反応させることによる、有機チオールへのジスルフィド結合によって保護されている、CysまたはSecを含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、有機チオール分子への結合によって保護されたCysまたはSecを含む。ある特定の実施形態では、有機チオール分子は、アリールチオール、ヘテロアイル(heteroayl)チオール、または脂肪族チオールである。ある特定の実施形態では、有機チオール分子はヘテロアリールチオールである。ある特定の実施形態では、有機チオール分子は、2,2’-ジピリジルジスルフィド、4,4’-ジピリジルジスルフィド、および2,2’-ジチオビス(5-ニトロピリジン)から選択される。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、試薬2,2’-ジチオビス(5-ニトロピリジン)で保護されたSecを含む。エンドソームから細胞質ゾルへの逃避に当たり、このジスルフィド結合は細胞環境により還元され、二量体化が可能になる。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、2,2’-ジピリジルジスルフィドへのジスルフィド結合によって保護されたCysを含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、4,4’-ジピリジルジスルフィドへのジスルフィド結合によって保護されたCysを含む。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、2,2’-ジチオビス(5-ニトロピリジン)へのジスルフィド結合によって保護されたCysを含む。この手法を示す配列には、配列番号30、33、34、および42が含まれる。本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、CysがSecで置換されていてもよいことは理解される。
【0165】
以前に考察したように、Ras以外の他の標的が企図される。配列番号43は、Myc/Maxヘテロ二量体に結合する。配列番号44は、RalAタンパク質に結合する。配列番号45は、RalAおよびKRasの両方に結合する。配列番号43~45は、ジスルフィド結合を使用して二量体化する、7位にCysを含むペプチドである。
【0166】
ペプチドが別のペプチドと会合して二量体を形成することを可能にするオリゴマー化ドメインを含むペプチドが本明細書においてさらに提供され、ここでオリゴマー化ドメインは、配列:PXPXP(配列番号2)を含み、X、X、およびXの各々は、任意の非プロリンアミノ酸であり、Xは、ペプチドを別のペプチドに架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、XおよびXの各々は独立して、任意の非プロリンアミノ酸であり、XおよびXの各々は独立して、任意の非プロリンアミノ酸、またはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸(例えば、システイン、セレノシステイン)である。ある特定の実施形態では、XおよびXの各々は独立して、任意の非プロリンアミノ酸であるが、各々は、ペプチドを別のペプチドに架橋させることができるアミノ酸ではない。オリゴマー化ドメインを含むペプチドは、タンパク質-タンパク質相互作用の抑制剤として有用である。オリゴマー化ドメインを含むペプチドは、RasまたはRas変異体などの標的タンパク質の結合および抑制に有用である。
【0167】
ある特定の実施形態では、本二量体の第1のペプチド内の架橋アミノ酸は、第2のペプチドのPXPXPモチーフ内の付随する架橋アミノ酸への架橋を形成する。ある特定の実施形態では、第1および第2のペプチド内のPXPXPモチーフは、逆平行構成にある。ある特定の実施形態では、PXPXPモチーフは、PPIIヘリックス構成をとる。ある特定の実施形態では、PXPXPモチーフは、各々、それらのN末端またはC末端のいずれかにおいてαヘリックスに結合し、αヘリックスを逆平行構成で安定化させる。
【0168】
ある特定の実施形態では、Xは、Cys、Sec、Phe、Trp、またはTyrである。ある特定の実施形態では、Xは、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、XはCysまたはSecである。ある特定の実施形態では、XはCysである。ある特定の実施形態では、XはSecである。
【0169】
ある特定の実施形態では、Xは、Cys、Sec、Phe、Trp、またはTyrである。ある特定の実施形態では、Xは、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、XはCysまたはSecである。ある特定の実施形態では、XはCysである。ある特定の実施形態では、XはSecである。
【0170】
ある特定の実施形態では、Xがペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸であるとき、Xはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸ではない。ある特定の実施形態では、Xがペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸であるとき、Xはペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸ではない。
【0171】
ある特定の実施形態では、本ペプチドは配列番号2を含み、XおよびXは各々Argである。ある特定の実施形態では、本ペプチドは配列番号2を含み、XはArgであり、XはCysである。ある特定の実施形態では、本ペプチドは配列番号2を含み、XはArgであり、XはTyrである。ある特定の実施形態では、本ペプチドは配列番号2を含み、XはLysであり、XはTyrである。ある特定の実施形態では、本ペプチドは配列番号2を含み、XはCysであり、XはTyrである。ある特定の実施形態では、本ペプチドは配列番号2を含み、XはLysであり、XはCysである。ある特定の実施形態では、本ペプチドは配列番号2を含み、XはLysであり、XはHisである。ある特定の実施形態では、本ペプチドは配列番号2を含み、XはArgであり、XはHisである。ある特定の実施形態では、本ペプチドは配列番号2を含み、XはHisであり、XはHisである。ある特定の実施形態では、本ペプチドは配列番号2を含み、XはHisであり、XはTyrである。ある特定の実施形態では、本ペプチドは配列番号2を含み、XおよびXは各々Argであり、XおよびXの各々は、前述の一般的な実施形態および特定の実施形態のうちのいずれかを有する。
【0172】
配列番号2の実施形態のいずれにおいても、X、X、X、およびXは、それぞれ、本明細書に記載されるX、X、X、およびXに対応する。
【0173】
本ペプチドは、配列:X131415DLX1819YX2122RLX2526YLX2930VA(配列番号3)を含むαヘリックスドメインをさらに含み、式中、X13、X14、X15、X18、X19、X21、X22、X25、X26、X29、およびX30は、本明細書に定義される通りである。
【0174】
配列:X131415DLX1819YX2122RLX2526YLX2930VA(配列番号3)を含むαヘリックスドメインを含むペプチドが本明細書においてさらに提供され、式中、X13、X14、X15、X18、X19、X21、X22、X25、X26、X29、およびX30は、本明細書に定義される通りである。
【0175】
ある特定の実施形態では、発明的ペプチドは、水性培地内で可溶性である。ある特定の実施形態では、発明的ペプチドは、細胞を透過することができる。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、低減した数の負電荷を含む。ある特定の実施形態では、ペプチドの負電荷の数は、出発ペプチドと比較して1、2、3、4、5、または6個の負電荷だけ低減される。例えば、AlaまたはSerをアニオン性残基の代わりに導入すると、細胞透過の向上に役立ち得る。ある特定の実施形態では、本開示のペプチドは、X11位、X15位、および/またはX16位に、少なくとも1個、2個、または3個の非負荷電アミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、本開示のペプチドは、X11位、X15位、X16位、および/またはX19位に、少なくとも1個、2個、3個、または4個の非負荷電アミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、本開示のペプチドは、X11位、X15位、X16位、およびX19位に、4個の非負荷電アミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、非負荷電アミノ酸は中性アミノ酸である。ある特定の実施形態では、非負荷電アミノ酸は、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Trp、Met、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、およびGlnからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、非負荷電アミノ酸は正荷電アミノ酸である。ある特定の実施形態では、正荷電アミノ酸は、Lys、Arg、およびHisからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、アミノ酸位置X11、X15、X16、およびX19にAlaを含む。
【0176】
ある特定の実施形態では、本開示のペプチドは、X11位、X15位、X16位、および/またはX19位に、少なくとも1個、2個、3個、もしくは4個のAlaおよび/またはSerを含む。ある特定の実施形態では、本開示のペプチドは、X11位、X15位、および/またはX16位に、少なくとも1個、2個、または3個のAlaを含む。ある特定の実施形態では、本開示のペプチドは、X11位、X15位、X16位、および/またはX19位に、少なくとも1個、2個、3個、または4個のAlaを含む。ある特定の実施形態では、本開示のペプチドは、X11位、X15位、X16位、およびX19位にAlaを含む。X11位、X15位、および/またはX16位のAlaに関する前述の実施形態は、X11位、X15位、および/またはX16位のSerにも適用可能である。
【0177】
発明的ペプチドの調製方法
発明的ペプチドの合成は、第1に、所望の配列、および非天然アミノ酸を含むいくつかのアミノ酸の選択を伴う。一旦アミノ酸が選択されたら、発明的ペプチドの合成は、標準的な脱保護およびカップリング反応を使用して実現することができる。ペプチド結合の形成およびポリペプチド合成は、当業者に周知の技法であり、固相法および溶液相法の両方を包含する(概して、各々の全内容が参照により本明細書に組み込まれる、Bodanszky and Bodanszky,The Practice of Peptide Synthesis,Springer-Verlag,Berlin,1984、Atherton and Sheppard,Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press at Oxford University Press Oxford,England,1989、およびStewart and Young,Solid phase Peptide Synthesis,2nd edition,Pierce Chemical Company,Rockford,1984を参照されたい)。溶液相技法および固相技法の両方において、保護基の選択、ならびに用いられる特定のカップリング技法を考慮しなければならない。溶液相反応および固相反応でのペプチド合成技法の詳細な考察については、全内容が参照により本明細書に組み込まれる、Hecht,Bioorganic chemistry:Peptides and Proteins,Oxford University Press,New York:1998を参照されたい。
【0178】
ある特定の実施形態では、本方法は、米国公開第US 2012/0270800号および国際出願第PCT/US2010/001952号(これらは同様に参照により本明細書に組み込まれる)に記載される手法に従って、発明的ステープルドペプチドを別のポリペプチドまたはタンパク質に連結することによって発明的ステープルドペプチドを会合させることを含む。ある特定の実施形態では、連結される他方のポリペプチドは、ステープルされているか、またはステッチされている。
【0179】
ある特定の実施形態では、本方法は、発明的ペプチドの溶液相合成を含む。上述の溶液相合成は、ポリペプチドの構築のための周知の技法である。例示的な溶液相合成は、(1)N末端においてアミノ保護基で保護されているアミノ酸を提供するステップ、(2)C末端において酸素保護基で保護されているアミノ酸を提供するステップ、(3)N保護アミノ酸をC保護アミノ酸にカップリングするステップ、(4)カップリング反応の生成物をN末端またはC末端のいずれかにおいて脱保護するステップ、および(5)所望のポリペプチドが得られるまでステップ(3)~(4)を繰り返すステップを含み、上記のステップのいずれかにおいてカップリングされるアミノ酸のうち少なくとも2つは、各々、少なくとも1つの末端不飽和アミノ酸側鎖、および、任意選択により、2つの末端不飽和アミノ酸側鎖を含むアミノ酸を含む。上記の合成の過程中、アミノ酸の立体化学、および用いられるアミノ酸残基を含むがこれらに限定されない、様々なパラメータは多様であってよい。
【0180】
ある特定の実施形態では、本方法は、発明的ペプチドの固相合成を含む。上述の固相合成は、ポリペプチドの構築のための周知の技法である。例示的な固相合成は、(1)樹脂結合アミノ酸を提供するステップ、(2)樹脂結合アミノ酸を脱保護するステップ、(3)脱保護された樹脂結合アミノ酸にアミノ酸をカップリングするステップ、(4)所望のペプチドが得られるまでステップ(3)を繰り返すステップを含む。
【0181】
上記の合成の過程中、側鎖を有するアミノ酸の配置、アミノ酸の立体化学、側鎖長および機能性、ならびに用いられるアミノ酸残基を含むがこれらに限定されない、様々なパラメータは多様であってよい。
【0182】
ある特定の実施形態では、合成ペプチドは、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸を含有する。例えば、このアミノ酸は、ステープリング(または複数回ステープリング)を促進する特定の触媒と接触するとペプチドがステープルされて、ペプチドのステープルドバージョンを提供して、高次構造的に安定化されたペプチドの提供を可能にすることができる。そのようなアミノ酸には、末端不飽和アミノ酸側鎖を有するものが含まれる。
【0183】
他の修飾としては、ペプチド足場上のどこか(例えば、ペプチドのN末端、ペプチドのC末端、ペプチドのアミノ酸側鎖上など)の、細胞浸透剤、治療活性剤、標識、または診断薬とのペプチドの結合を挙げることができる。そのような修飾は、細胞、組織、または器官へのペプチドまたは治療活性剤の送達において有用であり得る。そのような修飾は、ある特定の実施形態では、特定の型の細胞または組織を標的とすることを可能にし得る。
【0184】
ある特定の実施形態では、ペプチド内のアミノ酸のうちの1つ以上は、例えば、炭水化物基、ヒドロキシル基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、パルミトイル、ゲラニルゲラニル、ラウリル、脂肪酸基、結合、官能化、または他の修飾のためのリンカーなどの化学物質の添加によって修飾されてもよい。脂質の使用は、Rasが局在化する細胞膜にペプチドが局在化することを助け得る。
【0185】
ある特定の実施形態では、発明的ペプチドはD-アミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、発明的ペプチドは、最大10%のD-アミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、発明的ペプチドは、最大20%のD-アミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、発明的ペプチドは、最大30%のD-アミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、発明的ペプチドは、最大40%のD-アミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、発明的ペプチドは、最大50%のD-アミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、発明的ペプチドは、最大60%のD-アミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、発明的ペプチドは、最大70%のD-アミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、発明的ペプチドは、最大80%のD-アミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、発明的ペプチドは、最大90%のD-アミノ酸を含む。
【0186】
ある特定の実施形態では、発明的ペプチドは、全体的にD-アミノ酸である。そのような「鏡像」タンパク質は、対応する鏡像高次構造へと折り重なることができ、L-アミノ酸を含む発明的ペプチドと同じPPII-ループ-αヘリックス高次構造、ならびに二量体化する(かつ前述の位置におけるジスルフィドまたはジセレニドを介して架橋する)能力を有すると予想される。ある特定の実施形態では、標的に対する結合剤を発見するためにコンピュータによる方法が使用される。ある特定の実施形態では、酵母、ファージなどが提示される「鏡像ディスプレイ」技術が、D-アミノ酸標的タンパク質と共に使用される。ある特定の実施形態では、本明細書において開示されるRas結合ペプチドは、D-アミノ酸を含まない。
【0187】
他のペプチド、またはステープルドもしくはステッチドペプチドへのペプチドの結合
本明細書に記載されるペプチドは、ステープルもしくはステッチされている別のペプチド、または細胞透過性ペプチドである別のペプチド(例えば、TAT)に結合していてもよい。ステープルドもしくはステッチドペプチド、または細胞透過性ペプチドは、本明細書において提供されるペプチドが細胞に浸透することを可能にする。ステープルドペプチドまたはステッチドペプチドは、例えば、Walensky et al.,Science(2004)305:1466-1470、米国特許第8,592,377号、米国特許第7,192,713号、米国特許出願公開第2006/0008848号、米国特許出願公開第2012/0270800号、国際公開第WO 2008/121767号、および国際公開第WO 2011/008260号に記載されており、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。細胞透過性ペプチドは、例えば、Margus,et al.,Cell-penetrating peptides as versatile vehicles for oligonucleotide deliveryMol Ther.(2012);20(3):525-33に記載されている。
【0188】
二量体ディスプレイ技術
本明細書において提供されるスクリーニング方法は、様々なインビトロディスプレイ方法と共に使用され得る。高スループットスクリーニング方法は、標的タンパク質に結合するペプチドを同定するのに有用である。多数のタンパク質(またはペプチド)を調製し、結合活性についてそれらを評価するためにはいくつかの方法が存在し、それらは集合的に「ディスプレイ」技術と称される。これらの技術のほとんどは、タンパク質の配列をコードするDNA鋳型に基づいてタンパク質を合成する生合成の仕組み(すなわち、細胞内またはインビトロのいずれかのリボソーム)、および発現されたタンパク質をそれをコードするDNAに物理的に連結させる何らかの手段に依存する。この後者の特徴は、PCRおよび十分に確立されたDNA配列決定技術を使用して、活性について選択されたタンパク質の同一性を判定する容易な手段を提供し、これにより、DNAの単一の分子の増幅および分析ですら可能になる。一旦タンパク質が発現され、それらのコーディングDNAに連結されると、所望の特性を有するものは様々な技法を使用して残りから単離され得、その技法は、概して「スクリーン」(この技法では各個別種が1つずつ評価される)または「セレクション」(この技法では分子がまとめて評価される)のいずれかである。ディスプレイ技術は、ナイーブライブラリから結合剤を同定するため、および所望の活性を既に有するタンパク質の特性を改善するための両方に使用され得る。この後者の方法は、典型的には、本来のタンパク質の変異体ライブラリを調製すること、最良のバリアントを単離すること、およびこれらのステップを繰り返すことを伴い、「定向進化」と称される。定向進化は、例えば、Dougherty and Arnold,Directed evolution:new parts and optimized function.Curr Opin Biotechnol.(2009);20(4):486-91において査読されている。
【0189】
例示的なディスプレイ技法の1つはファージディスプレイであり、これは、M13ファージからコートタンパク質への融合物として目的のタンパク質を発現させることを伴う。大きなファージライブラリは、適切なライブラリDNAを大腸菌(E.coli)に形質転換することによって調製され得、一旦生成されると、ライブラリの活性なメンバーが、典型的には「パンニング」セレクションによって単離され得る(パンニングセレクションでは、標的結合タンパク質を固定化し、ファージを表面上で洗い、活性バリアントに結合させる)。ファージディスプレイは最も一般的に使用されているディスプレイ技術であり、多様な生物学的標的ならびに非生物学的標的に結合するタンパク質およびペプチドを同定するために使用されている(Levin,A.M.and Weiss,G.A.Optimizing the affinity and specificity of proteins with molecular display.Mol Biosyst 2,49-57(2006))。
【0190】
酵母表面ディスプレイは、Boder and Wittrup,Yeast surface display for screening combinatorial polypeptide libraries,Nat Biotechnol 15,553-7(1997)および米国特許第6,300,065号にさらに記載されている。概して、酵母表面ディスプレイ方法は、DNAライブラリを細胞(出芽酵母(S.cerevisiae)など)に形質転換することを伴い、提示されたタンパク質は、酵母表面タンパク質であるAga2pに融合される(図2)。酵母細胞は、1時間当たり10個超の細胞を評価することができ、かつ複数の蛍光シグナルに基づいて細胞を分取することができる、蛍光活性化細胞分取(FACS)によるスクリーニングを可能にするのに十分に大きい。これは多パラメータ分取を可能にし、細胞の(例えば、蛍光標識された標的タンパク質に対する)絶対結合性のみに基づいてではなく、異なるフルオロフォアの比に基づいて、細胞が選択されることが可能となる。これは、ファージなどの一部の他のディスプレイ細胞では可能となり得ない細胞の選択を可能にする;例えば、融合タンパク質上のエピトープに対する標識抗体が使用される場合、標的結合シグナルは発現レベルに正規化され得る、あるいは、細胞は、別様に標識された標的と比べた1つの標識標的タンパク質に対する嗜好性に基づいて選択され得る。発現に対する正規化は、提示されるタンパク質に対して強い発現傾向を有することが多いファージでは可能でないため、特に有用である。
【0191】
酵母ディスプレイの追加の特徴は、提示されるタンパク質が酵母分泌系を通過し、これがジスルフィド結合(および大腸菌に関する一般的な折り畳み構造)の形成を促進することである。この特徴は、活性のために適切に形成されたジスルフィド結合を必要とするタンパク質にとって有利である(一部のジスルフィド含有タンパク質およびペプチドはファージ上で成功裏に提示されているが、多くは適切に形成されることができない)。
【0192】
酵母表面ディスプレイに加えて、細胞表面タンパク質への融合体としてタンパク質を提示する類似した細菌系が開発されている。この方法は酵母表面ディスプレイの利点の一部を有し、原理上は(ファージよりは小さいが)酵母よりも大きなライブラリサイズを実現することができるが、酵母系の折り畳み能力およびジスルフィド形成能力を有しない。最後に、DNA鋳型を作製し、無細胞翻訳抽出物内でタンパク質を生成することを伴う、いくつかのインビトロディスプレイ方法がある。これらの方法は、形質転換が必要とされないため最大の理論的ライブラリサイズに適応することができ、単離されたヒットを増幅させるためにPCRが典型的に使用されるため、単一の配列の活性を検出できることが多い。ある特定の実施形態では、mRNAディスプレイまたはリボソームディスプレイが、ペプチドライブラリを提示するために使用されてもよい。
【0193】
ペプチド二量体のライブラリをスクリーニングする方法が、本明細書において提供される。本方法は、第1のペプチドおよび第2のペプチドをコードするベクターでディスプレイ細胞を形質転換させることであって、第1および第2のペプチドが会合して、細胞壁タンパク質に融合したペプチド二量体を形成する、形質転換させることと、ディスプレイ細胞を第1の標識と接触させることであって、第1の標識は、標的タンパク質を含み、標的に対する向上した結合性を有するペプチド二量体を発現する細胞と会合し、標的に対する向上した結合性を有するペプチド二量体を発現しない細胞とは会合しない、接触させることと、第1の標識が会合しているディスプレイ細胞を単離させることと、標的に対して向上した結合性を示す第1および第2のペプチドを同定することと、を含む。代替的に、本方法は、第1のペプチドをコードする第1のベクターおよび第2のペプチドをコードする第2のベクターでディスプレイ細胞を形質転換させることを含んでもよい。
【0194】
ペプチドライブラリは、PCRなどの方法を使用して作製され得る(図5参照)。例えば、鋳型配列のランダム変異誘発(エラープローンPCR)が使用され得る。十分な重複を有する一式のプライマーが、鋳型にアニーリングされ、伸展され、それによって互いの鋳型として働く。各プライマー内の複数の縮重コドンの使用によって変異が導入され(部位飽和変異誘発)、結果として生じるライブラリにおいて高い組み合わせの多様性がもたらされる。ライブラリを作製する別の方法は、プライマー合成中に三量体ホスホロアミダイトの混合物と共にプライマー内に組み込まれる、いくつかのコドン(各アミノ酸につき1つ)の規定された混合物で出発することである。
【0195】
ペプチドライブラリは、膵臓ポリペプチドファミリーに基づく任意のペプチドから設計されることができる。ある特定の実施形態では、ライブラリを設計するために使用されるペプチドは、トリ、ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌの膵臓ポリペプチド、またはそれらの変異体に基づく。ある特定の実施形態では、ライブラリを設計するために使用されるペプチドは、トリ膵臓ポリペプチド(aPP)またはその変異体に基づく。ペプチドライブラリは、膵臓ポリペプチドファミリーの足場を含む任意のペプチドから設計されてもよい。ペプチドライブラリは、PPIIヘリックスドメインおよびαヘリックスドメインを含む任意のペプチドから設計されてもよい。ペプチドライブラリは、PPIIヘリックスドメイン、ループドメイン、およびαヘリックスドメインを含む任意のペプチドから設計されてもよい。ある特定の実施形態では、ループドメインはI型βターンである。ある特定の実施形態では、ライブラリを設計するために使用されるペプチドは、配列番号1または4~11に基づく。ある特定の実施形態では、ライブラリを設計するために使用されるペプチドは、配列番号1に基づく。ある特定の実施形態では、ペプチドライブラリは、配列番号1または4~11に対して80%~99%の相同性を有する任意のペプチドから設計されてもよい。ある特定の実施形態では、ペプチドライブラリは、配列番号1または4~11に対して80%~99%同定するを有する任意のペプチドから設計されてもよい。ある特定の実施形態では、ペプチドライブラリは、配列番号2を含む任意のペプチドから設計されてもよい。ある特定の実施形態では、ペプチドライブラリは、配列番号3を含む任意のペプチドから設計されてもよい。
【0196】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される発明的ペプチド/二量体は、αヘリックス構造を各々が備える2つのペプチドのペプチドホモ二量体である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される発明的ペプチド/二量体は、ポリプロリンII型高次構造を各々が備える2つのペプチドのペプチドホモ二量体である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される発明的ペプチド/二量体は、ループドメインによってポリプロリンII型高次構造に接続されたαヘリックス構造を各々が備える2つのペプチドのペプチドホモ二量体である。ある特定の実施形態では、ループ/リンカードメインはI型βターンである。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される発明的ペプチド/二量体は、αヘリックス構造を各々が備える2つのペプチドのペプチドヘテロ二量体である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される発明的ペプチド/二量体は、ポリプロリンII型高次構造を各々が備える2つのペプチドのペプチドヘテロ二量体である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される発明的ペプチド/二量体は、ループによってポリプロリンII型高次構造に接続されたαヘリックス構造を各々が備える2つのペプチドのペプチドヘテロ二量体である。
【0197】
ある特定の実施形態では、2つのペプチドは、共有結合している。ある特定の実施形態では、2つのペプチドは、非共有結合している。ある特定の実施形態では、2つのペプチドは、ジスルフィド結合、ジセレン結合、炭素-炭素結合、アミド結合、エステル結合、水素結合、塩橋、パイスタッキング相互作用、または非極性疎水性相互作用を介して会合している。ある特定の実施形態では、2つのペプチドは、ジスルフィド結合を介して会合している。ある特定の実施形態では、2つのペプチドは、ジセレン結合を介して会合している。ある特定の実施形態では、2つのペプチドは、水素結合、塩橋、または非極性疎水性相互作用を介して会合している。ある特定の実施形態では、2つのペプチドは、パイスタッキング相互作用を介して会合している。例えば、1つのペプチド上のチロシンは、パイスタッキングを介して、別のペプチド上の別のチロシンと相互作用する。
【0198】
ある特定の実施形態では、2つのペプチドの各々は独立して、配列番号1~配列番号11の配列、または、少なくともおよそ80%、85%、90%、95%、98%、または99%相同もしくは同一であるそれらの配列を含む。ある特定の実施形態では、2つのペプチドの各々は、ペプチドを別のペプチドと架橋させることができるアミノ酸である部分を含む。ある特定の実施形態では、2つのペプチドの各々は、2つのペプチドを互いに架橋させる部分を含む。ある特定の実施形態では、架橋させることができるアミノ酸は、CysまたはSecである。
【0199】
ある特定の実施形態では、架橋させることができる部分は、第1のペプチドを第2のペプチドと架橋させることができる非天然アミノ酸である。ある特定の実施形態では、ディスプレイ細胞は、哺乳動物細胞、細菌細胞、またはファージである。ある特定の実施形態では、ディスプレイ細胞は酵母細胞である。ある特定の実施形態では、ディスプレイ細胞は出芽酵母である。ある特定の実施形態では、本ペプチド二量体は、酵母表面タンパク質に融合している。ある特定の実施形態では、酵母表面タンパク質はAga2pである。
【0200】
ある特定の実施形態では、標的タンパク質は非対称である。ある特定の実施形態では、標的タンパク質は、RasまたはRas変異体である。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、Ras・GDPよりもRas・GTPに対して高い選択性を有する。ある特定の実施形態では、本ペプチドは、Ras・GDPよりもRas・GTPに対して少なくともおよそ1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍選択的である。
【0201】
第1の標識は、標的タンパク質を標識するために使用され、次いでディスプレイ細胞と共にインキュベートされる。ある特定の実施形態では、第1の標識は、標的タンパク質に結合した蛍光標識である。ある特定の実施形態では、第1の標識は、Rasに結合したビオチンである。フィコエリトリン、アロフィコシアニン、Alexa647、Alexa488、およびFITCなどの他のフルオロフォアを、標的タンパク質を標識するために使用してもよい。
【0202】
任意選択の第2の標識を使用して、ディスプレイ細胞上に提示される融合タンパク質の存在量を測定してもよい。第2の標識は、蛍光標識されている抗体、または第1の標識に結合することができるマイクロビーズであってもよい。結合した標的タンパク質を含有するディスプレイ細胞を分取するのに有用な例示的な方法としては、蛍光活性化細胞分取(FACS)および磁気活性化細胞分取(MACS)が挙げられる。
【0203】
使用および処置の方法
Rasに関連した疾患または状態の処置を必要とする対象においてそれを処置する方法であって、有効量の本明細書に記載されるペプチドを対象に投与することを含む方法が、本明細書において提供される。Rasに関連した疾患または状態の処置を必要とする対象においてそれを処置する方法であって、有効量の本明細書に記載されるペプチドを対象に取り込むように対象に指示することを含む方法が、本明細書において提供される。Rasに関連した疾患または状態の処置を必要とする対象においてそれを処置する際に使用するためのペプチドも、本明細書において提供される。
【0204】
ある特定の実施形態では、Rasに関連した疾患は、増殖性疾患である。本明細書において使用される場合、増殖性の疾患、状態、または障害には、癌、造血性腫瘍障害、良性腫瘍(すなわち、腫瘍)、糖尿病性網膜症、リウマチ性関節炎、黄斑変性症、肥満、およびアテローム性動脈硬化症が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、増殖性疾患は癌である。例示的な癌としては、細胞腫、肉腫、または転移性障害、乳癌、卵巣癌、結腸癌、肺癌、線維肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌(gastric cancer)、食道癌、直腸癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮癌、頭頸部癌、皮膚癌、脳癌、胃癌(stomach cancer)、扁平上皮細胞癌、皮脂腺癌(sebaceous gland carcinoma)、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、リンパ腫、およびカポジ肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0205】
例示的な造血性腫瘍障害としては、造血性起源の(例えば、骨髄、リンパ系、または赤血球系統から生じる)増生細胞/腫瘍性細胞、またはそれらの前駆体細胞が関わる障害が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、障害は、低分化の急性白血病、例えば、赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病から生じる。追加の例示的な骨髄疾患としては、限定されないが、急性前骨髄白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)が挙げられ、リンパ系腫瘍としては、限定されないが、B系統ALLおよびT系統ALLを含む急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、有毛細胞性白血病(HLL)、ならびにヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)が挙げられる。悪性リンパ腫の追加の形態としては、非ホジキンリンパ腫およびその変種、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン病、ならびにReed-Stemberg病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0206】
ある特定の実施形態では、Rasに関連した疾患は、非増殖性疾患である。ある特定の実施形態では、Rasに関連した疾患は、Ras/MAPK症候群である。ある特定の実施形態では、Rasに関連した疾患は、CFC症候群、毛細血管奇形-動静脈奇形症候群、Costello症候群、Legius症候群、神経線維腫症1型、Noonan症候群、または多発性黒子を伴うNoonan症候群(以前はLEOPARD症候群)である。
【0207】
薬学的組成物
本明細書に記載されるペプチドおよび薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物が、本明細書において提供される。薬学的組成物は、治療的使用のための組成物を含む。そのような組成物は、任意選択により、1つ以上の追加の治療活性剤を含んでもよい。一部の実施形態によると、発明的組成物を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する方法が提供される。一部の実施形態では、発明的組成物は、ヒトに投与される。本発明では、「活性成分」は概して、本明細書に記載されるペプチドを指す。
【0208】
本明細書において提供される薬学的組成物の説明はヒトへの投与のための薬学的組成物を主に対象とするが、そのような組成物があらゆる種類の動物への投与に概して好適であることは、当業者には理解されるであろう。様々な動物への投与のための薬学的組成物の改変は十分に理解されており、獣医学的薬理学の当業者であれば、あったとしても単なる通常の実験を用いて、そのような改変を設計および/または実施することができる。
【0209】
本明細書に記載される薬学的組成物は、薬理学の分野で公知であるかまたは今後開発される、任意の方法によって調製され得る。概して、そのような調製方法は、活性成分を賦形剤および/または1つ以上の他の補助成分と会合させるステップ、そして、必要かつ/または望ましい場合は、その生成物を付形および/または梱包して所望の単一用量または複数用量単位にするステップを含む。
【0210】
本発明の薬学的組成物は、まとめて、単一単位用量として、かつ/または複数の単一単位用量として、調製、梱包、および/または販売されてもよい。本明細書において使用される場合、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む薬学的組成物の個別の量である。活性成分の量は概して、対象に投与される活性成分の薬用量、および/または、そのような薬用量の簡便な一部分、例えば、そのような薬用量の1/2もしくは1/3などと等しい。
【0211】
本発明の薬学的組成物内の活性成分、薬学的に許容される賦形剤、および/または任意の追加の成分の相対量は、処置される対象の同一性、サイズ、および/または障害に応じて、またさらに、本組成物が投与される経路に応じて変動する。例として、本組成物は、0.1%~100%(w/w)の活性成分を含んでもよい。
【0212】
本明細書において使用される場合、薬学的に許容される賦形剤には、所望される特定の薬用量形態に適した、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散もしくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤もしくは乳化剤、防腐剤、固形結合剤、滑沢剤などが含まれる。RemingtonのThe Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.Gennaro(Lippincott,Williams & Wilkins,Baltimore,MD,2006)は、薬学的組成物の製剤化に使用される様々な賦形剤、およびその調製のための公知の技法を開示している。いかなる従来型の担体媒体も、望まれない生物学的作用をもたらすこと、ないしは薬学的組成物の他の構成成分(複数可)のいずれかと有害な様式で相互作用することなどにより、物質またはその誘導体と不適合である場合を除いて、その使用は本発明の範囲内であることが企図される。
【0213】
一部の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%純粋である。一部の実施形態では、賦形剤は、ヒトにおける使用および獣医学的使用に認可されている。一部の実施形態では、賦形剤は、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)によって認可されている。一部の実施形態では、賦形剤は、薬学的グレードである。一部の実施形態では、賦形剤は、米国薬局方(USP)、ヨーロッパ薬局方(EP)、英国薬局方、および/または国際薬局方の基準を満たす。
【0214】
薬学的組成物の製造に使用される薬学的に許容される賦形剤としては、不活性希釈剤、分散剤および/もしくは造粒剤、界面活性剤および/もしくは乳化剤、崩壊剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、滑沢剤、ならびに/または油類が挙げられるが、これらに限定されない。そのような賦形剤は、任意選択により、発明的製剤に含まれてもよい。調合者の判断により、カカオバターおよび坐薬型ワックスなどの賦形剤、着色剤、コーティング剤、甘味剤、風味剤、ならびに香料が組成物中に存在してもよい。
【0215】
例示的な希釈剤としては、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウムラクトース、スクロース、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、トウモロコシデンプン、粉糖、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0216】
例示的な造粒剤および/または分散剤としては、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、アルギン酸、グアーガム、柑橘類の果肉、寒天、ベントナイト、セルロースおよび木製品、海綿、カチオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニル-ピロリドン)(クロスポビドン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(デンプン1500)、微結晶デンプン、非水溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)、ラウリル硫酸ナトリウム、四級アンモニウム化合物、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0217】
例示的な界面活性剤および/または乳化剤としては、天然乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガント、コンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ワックス、およびレシチン)、コロイド粘土(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]およびVeegum[ケイ酸アルミニウムマグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、トリアセチンモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、モノステアリン酸グリセリル、およびプロピレングリコールモノステアレート、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、およびカルボキシビニルポリマー)、カラゲナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート[Tween 20]、ポリオキシエチレンソルビタン[Tween 60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート[Tween 80]、ソルビタンモノパルミテート[Span 40]、ソルビタンモノステアレート[Span 60]、ソルビタントリステアレート[Span 65]、モノオレイン酸グリセリル、ソルビタンモノオレエート[Span 80])、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート[Myrj 45]、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、およびSolutol)、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、Cremophor)、ポリオキシエチレンエーテル、(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[Brij 30])、ポリ(ビニル-ピロリドン)、モノラウリン酸ジエチレングリコール、オレイン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、Pluronic F 68、ポロクサマー188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドクサートナトリウム、ならびに/またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0218】
例示的な結合剤としては、デンプン(例えば、トウモロコシデンプンおよびデンプンペースト)、ゼラチン、糖類(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール)、天然ガムおよび合成ガム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモスエキス、パンワールガム(panwar gum)、ガティガム(ghatti gum)、イサポール(isapol)皮粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニル-ピロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)、およびカラマツアラボガラクタン(larch arabogalactan))、アルギン酸塩、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、無機カルシウム塩、ケイ酸、ポリメタクリレート、ワックス、水、アルコール、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0219】
例示的な防腐剤としては、抗酸化剤、キレート剤、抗菌性防腐剤、抗真菌性防腐剤、アルコール防腐剤、酸性防腐剤、および他の防腐剤を挙げることができる。例示的な抗酸化剤としては、αトコフェロール、アスコルビン酸、アコルビルパルミテート(acorbyl palmitate)、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、およびエデト酸三ナトリウムが挙げられる。例示的な抗菌性防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、およびチメロサールが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な抗真菌性防腐剤としては、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、およびソルビン酸が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアルコール防腐剤としては、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾエート、およびフェニルエチルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な酸性防腐剤としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、βカロテン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、およびフィチン酸が挙げられるが、これらに限定されない。他の防腐剤としては、トコフェロール、酢酸トコフェロール、デテロキシムメシレート(deteroxime mesylate)、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエンd(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、Glydant Plus、Phenonip、メチルパラベン、Germall 115、Germaben II、Neolone、Kathon、およびEuxylが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、防腐剤は抗酸化剤である。他の実施形態では、防腐剤はキレート剤である。
【0220】
例示的な緩衝剤としては、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、二塩基性リン酸カルシウム、リン酸、三塩基性リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム(calcium hydroxide phosphate)、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張生理食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0221】
例示的な滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、グリセリルベハネート(glyceryl behanate)、硬化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0222】
例示的な油類としては、アーモンド油、キョウニン油、アボカド油、ババス油、ベルガモット油、黒潮種子油、ルリジサ油、ジュニパータール油、カモミール油、キャノーラ油、カラウェー油、カルナバ油、ヒマシ油、ケイヒ油、カカオバター、ヤシ油、タラ肝油、コーヒー油、トウモロコシ油、綿実油、エミュー油、ユーカリ油、月見草油、魚油、アマニ油、ゲラニオール、ウリ油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、ヒソップ油、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ油、ククイの実油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、リツェアクベバ油、マカデミアナッツ油、ゼニアオイ油、マンゴー種子油、メドウフォーム種子油、ミンク油、ナツメグ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラフィー油、パーム油、パーム核油、トウニン油、ピーナッツ油、ケシ種子油、カボチャ種子油、ナタネ油、米ぬか油、ローズマリー油、サフラワー油、ビャクダン油、サスクアナ油(sasquana)、セイボリー油、シーバックソーン油、ゴマ油、シアバター、シリコーン、大豆油、ヒマワリ油、ティーツリー油、アザミ油、ツバキ油、ベチベル油、クルミ油、および小麦胚種油が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な油類としては、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱物油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0223】
薬学的薬剤の製剤化および/または製造における概論は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins,2005に見出すことができる。
【0224】
本明細書において提供される発明的ペプチドは、典型的に、投与の容易さおよび薬用量の均一性のために、薬用量単位形態で製剤化される。しかしながら、本発明の組成物の1日の合計使用量が、健全な医学的判断の範囲内で担当医により決定されることは理解されるであろう。いかなる特定の対象に対する特定の治療有効用量レベルも、疾患、障害、または処置される障害、および障害の重症度、用いられる特定の活性成分の活性、用いられる特定の組成物、対象の年齢、体重、全体的健康、性別、および食事、用いられる特定の活性成分の投与時間,投与経路,および排泄速度、処置の持続期間、用いられる特定の活性成分と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、ならびに医学分野で周知の同様の要因といった、様々な要因に依存する。
【0225】
本明細書において提供されるペプチドまたはその薬学的組成物は、任意の経路によって投与されてよい。一部の実施形態では、本ペプチドまたはその薬学的組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、皮下、脳室内、経皮、皮内、直腸、腟内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、クリーム、および/または点滴薬などによる)、粘膜、経鼻、頬側、腸内、舌下を含む様々な経路によって、気管内注入、気管支注入、および/もしくは吸入によって、ならびに/または口腔スプレー、鼻腔スプレー、および/もしくはエアロゾルとして、投与される。特に企図される経路は、全身静脈注入、血液および/もしくはリンパ供給を介する局所投与、ならびに/または患部への直接投与である。概して、最も適切な投与経路は、薬剤の性質(例えば、胃腸管の環境内でのその安定性)、および対象の障害(例えば、対象が経口投与に耐えることができるかどうか)を含む、様々な要因に依存する。現在のところ、肺および/または呼吸器系に治療的薬剤を直接送達するためには、口腔スプレーおよび/もしくは鼻腔スプレーならびに/またはエアロゾル経路が最も一般的に使用されている。しかしながら、本発明は、薬物送達の科学において起こり得る進展を考慮して、任意の適切な経路による発明的な薬学的組成物の送達を包含する。
【0226】
ある特定の実施形態では、本ペプチドまたはその薬学的組成物は、所望の治療効果を得るために、1日に1回以上、1日当たり約0.001mg/kg~約100mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.1mg/kg~約40mg/kg、約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、または約1mg/kg~約25mg/kg(対象の体重)の、送達に十分な薬用量レベルで投与され得る。所望の薬用量は、1日3回、1日2回、1日1回、2日毎、3日毎、1週間毎、2週間毎、3週間毎、または4週間毎に送達されてもよい。ある特定の実施形態では、所望の薬用量は、複数投与(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、またはそれ以上の投与)を使用して送達されてもよい。
【0227】
本明細書に記載される用量範囲は、提供される薬学的組成物を成人に投与するための指針を提供することが理解されるであろう。例えば、小児または青年に投与される量は医師または当業者によって決定され得、成人に投与される量より低くても同じであってもよい。有効量を実現するために必要とされる発明的ペプチドの正確な量は、例えば、対象の種、年齢、および全体的な障害、副作用または障害の重症度、特定の化合物(複数可)の同一性、投与形態などに応じて、対象それぞれで異なる。
【0228】
一部の実施形態では、本発明は、発明的ペプチドを含む「治療薬カクテル」を包含する。一部の実施形態では、発明的ペプチドは、複数の標的に結合することができる単一種を含む。一部の実施形態では、異なる発明的ペプチドは異なる標的部分種を含み、異なる標的部分種の全てが、同じ標的に結合することができる。一部の実施形態では、異なる発明的ペプチドは異なる標的部分種を含み、異なる標的部分種の全てが、異なる標的に結合することができる。一部の実施形態では、そのような異なる標的は、同じ細胞型に関連し得る。一部の実施形態では、そのような異なる標的は、異なる細胞型に関連し得る。
【0229】
本発明の発明的ペプチドおよび薬学的組成物が併用療法で用いられ得ることは理解されるであろう。併用レジメンで用いるべき療法(治療薬または手技)の特定の組み合わせは、所望の治療薬および/または手技、ならびに実現されるべき所望の治療効果を考慮に入れるものである。用いられる療法が、同じ目的に関して所望の作用を実現してもよく(例えば、腫瘍を検出するのに有用な発明的結合体は、腫瘍を検出するのに有用な別の薬剤と同時に投与されてもよく)、または異なる作用(例えば、有害作用の制御)を実現してもよいことは理解されるであろう。
【0230】
本発明の薬学的組成物は、単独または1つ以上の治療活性剤との組み合わせのいずれで投与されてもよい。「との組み合わせで」とは、それらの薬剤が一緒に送達されるために同時に投与および/または製剤化されなければならないことを暗示するものではないが、これらの送達方法は本発明の範囲内である。本組成物は、1つ以上の他の所望の治療薬または医学的手技と同時に、その前に、またはその後に投与されてもよい。概して、各薬剤は、その薬剤に関して決定された用量および/またはタイムスケジュールで投与される。さらに、本発明は、発明的な薬学的組成物の生体利用能を向上させ、発明的な薬学的組成物の代謝を低減および/もしくは改変し、発明的な薬学的組成物の排泄を抑制し、かつ/または体内における発明的な薬学的組成物の分配を改変し得る薬剤と組み合わせた、発明的な薬学的組成物の送達を包含する。この組み合わせで用いられる治療活性剤および発明的ペプチドが、単一の組成物で一緒に投与されてもよく、または異なる組成物で別々に投与されてもよいことは、さらに理解されるであろう。
【0231】
併用レジメンで用いられる特定の組み合わせは、治療活性剤および/または手技と、発明的ペプチドおよび/または実現されるべき所望の治療効果との適合性を考慮に入れるものである。用いられる組み合わせが、同じ障害に関して所望の作用を実現してもよく(例えば、発明的ペプチドは、同じ障害を処置するために使用される別の治療活性剤と同時に投与されてもよく)、かつ/または異なる作用(例えば、有害作用の制御)を実現してもよいことは理解されるであろう。
【0232】
本明細書において使用される場合、「治療活性剤」は、障害の処置、防止、遅延、低減、または寛解のための医薬として使用される任意の物質を指し、かつ、予防的処置および治療的処置を含む療法に有用である物質を指す。治療活性剤はまた、例えば、発明的ペプチドの効力を増進させるか、またはその有害作用を低減させることにより、別の化合物の作用または有効性を向上させる化合物を含む。
【0233】
ある特定の実施形態では、治療活性剤は、抗癌剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗HIV剤、抗寄生虫剤、抗原虫剤、麻酔薬、抗凝固薬、酵素抑制剤、ステロイド剤、ステロイド性もしくは非ステロイド性の抗炎症剤、抗ヒスタミン薬、免疫抑制剤、抗悪性腫瘍剤、抗原、ワクチン、抗体、うっ血除去薬、鎮静薬、オピオイド、鎮痛薬、解熱薬、受胎調節剤、ホルモン、プロスタグランジン、プロゲステロン作用薬、抗緑内障剤、点眼剤、抗コリン薬、鎮痛薬、抗うつ薬、抗精神病薬、神経毒、催眠薬、精神安定薬、抗痙攣薬、筋弛緩薬、抗パーキンソン病薬、鎮痙薬、筋収縮薬(muscle contractant)、チャネル遮断薬、縮瞳剤、抗分泌剤、抗血栓剤、抗凝固薬、抗コリン薬、βアドレナリン遮断薬、利尿薬、心血管作用剤、血管作用剤、血管拡張剤、降圧剤、血管新生剤、細胞-細胞外マトリックス相互作用の調節薬(例えば、細胞成長抑制剤および抗接着分子)、またはDNA、RNA、タンパク質-タンパク質相互作用、タンパク質-受容体相互作用の抑制剤/干渉物質である。
【0234】
一部の実施形態では、発明的な薬学的組成物は、癌の1つ以上の症状または特徴を処置し、緩和し、寛解させ、軽減させ、その発症を遅延させ、その進行を抑制し、その重症度を低減させ、かつ/またはその発生率を低減させるために有用である、任意の治療活性剤または手技(例えば、手術、放射線療法)と組み合わせて投与されてもよい。
【0235】
キット
本発明のペプチドのうちの1つ以上を含む様々なキットが、本明細書において提供される。例えば、本発明は、発明的ペプチドおよび使用のための説明書を含むキットを提供する。キットは、複数の異なるペプチドを含んでもよい。キットは、いくつかの追加の構成要素または試薬のうちのいずれを、任意の組み合わせで含んでもよい。様々な組み合わせの全てを明示的に記載はしないが、各組み合わせが本発明の範囲内に含まれる。
【0236】
本発明のある特定の実施形態によると、キットは、例えば、(i)1つ以上の発明的ペプチド、および、任意選択により、送達されるべき1つ以上の特定の治療活性剤、(ii)それを必要とする対象への投与に関する説明書を含んでもよい。
【0237】
キットは典型的に、例えば、発明的ペプチドの生成、それを必要とする対象への発明的ペプチドの投与、新規の発明的ペプチドの設計に関するプロトコルを含み、かつ/または障害を説明してもよい説明書を含む。キットは概して、個別の構成要素および試薬の一部または全部が別々に収容され得るように、1つ以上のベッセルすなわち容器を含む。キットはまた、商業的販売のために個別の容器を比較的狭く閉ざされた状態で封入するための手段、例えば、プラスチックの箱を含んでもよく、その中に説明書、スタイロフォームなどの梱包材料が封入されてもよい。識別子、例えば、バーコード、無線周波数識別(ID)タグが、キット内またはその上、あるいは、キット内に含まれるベッセルすなわち容器のうちの1つ以上の中またはに存在してもよい。識別子は、例えば、品質管理、在庫管理、追跡、ワークステーション間の移動の目的で、キットを一意的に識別するために使用され得る。
【0238】
本明細書に記載される本発明がより十分に理解され得るように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は例示のみを目的とするものであり、本発明をいかようにも限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【実施例
【0239】
本明細書に記載される本発明がより十分に理解され得るように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は例示のみを目的とするものであり、本発明をいかようにも限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0240】
実験方法
一般的方法。オリゴヌクレオチドプライマーは、Eurofins MWG OperonまたはIntegrated DNA Technologiesから発注した。三量体ホスホロアミダイト含有プライマーをYale Keck Oligo施設から発注し、三量体ホスホロアミタイド(phosphoroamitide)構成要素(Glen Research)と合成した。LongAmp Taqポリメラーゼ(New England Biolabs)を用いてPCRを実施し、PCR精製キット(Qiagen)で精製した。プラスミドを標準方法により大腸菌内で増殖させ、Miniprep Kit(Qiagen)を使用して精製した。吸光測定は、NanoDrop 2000C分光光度計(Thermo Scientific)を用いて実施した。HPLCは、Supelcoの250×10mm C18カラムを備えたAgilent 1200シリーズの計器を用いて実施した。LC/MSは、Agilent 1100シリーズの四重極型MSDに接続されたAgilentの150×2.1mm C18カラムを備えたAgilent 1260シリーズの計器を用いて実施した。ゲル濾過および脱塩は、Akta FPLC(Amersham/GE Healthcare)で実施した。
【0241】
ペプチド合成。ペプチドは、典型的には30μmolスケールでRinkアミド樹脂を使用して、標準的なフルオレニルメチルオキシカルボニルクロリド(Fmoc)法によって、固相で合成した。この樹脂結合ペプチドのN末端Fmoc保護基を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中25%のピペリジンでの10分間の処理2回、続いてNMPでの4回の洗浄によって除去した。Fmoc保護アミノ酸(0.19Mの最終濃度で6当量)を、PyClock(5.7当量)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、12当量)と事前混合し、樹脂と共に窒素下で1時間バブリングした。カップリングが困難であると予想されたため(例えば、α,α-二置換アミノ酸、β分岐アミノ酸、およびプロリンの後)1時間のカップリング反応を2回連続的に行った。カップリング後、この樹脂をNMP中で4回洗浄し、前述同様に脱保護した。1,2-ジクロロエタン(DCE)中10mMのグラブスI触媒での2時間の処理を2回用い、オレフィンメタセシスを行った。NMP中10%(v/v)のDIEAと共に30mg/mlのFITC中で一晩樹脂をバブリングすることによって、FITCをペプチドN末端に付加した。この合成後、ペプチドを、95%のトリフルオロ酢酸(TFA)、2.5%のトリイソプロピルシラン(TIS)、および2.5%のHO中で脱保護し開裂させ、次いで、0.1%のTFAを含むHO中で10%から100%までのアセトニトリル勾配を使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製した。収集した画分を、SpeedVacおよび凍結乾燥によって乾燥させた。
【0242】
円二色性分光法。CD測定は、PTC-348W温度制御器を備えたJasco J-710分光光度計で行った。試料(約190μl)を、別段の記載がない限り50mMのリン酸ナトリウム(pH8)中20~80μMで、(パラフィルムで密閉した)1mmの石英キュベットに入れた。スペクトルについては、CDは、25℃で0.1nmの増分間隔で20nm/分の走査速度で、260nmから190nmまで走査した。融解曲線については、222nmでCDを記録しながら、温度を2℃/分の速度で10℃から90℃に上昇させた。生曲線(raw curve)は、Savitzky-Golayフィルタを使用して平滑化した。
【0243】
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化。MALDIは、WatersのMALDI Micro MXで実施した。200pmolのタンパク質を、0.1%のTFAを含有する水中で20μlに増やし、次いでZipTipのμC18チップに結合させ、水+0.1%TFAで洗浄し、次いで50%MeCN+0.1%TFAで溶離させた。シナピン酸の40%MeCN+0.1%TFA飽和溶液で予めスポッティングされている金属製のMALDIプレートに試料を加え、次いで分析前に空気乾燥させた。
【0244】
酵母へのライブラリ形質転換。酵母ディスプレイプロトコルは概して、Wittrupおよび共同研究者らによって説明されているように行った1、2。酵母密度を吸光度によって数量化し(1 AU600=10細胞/ml)、細胞を(1.5mlのエッペンドルフ管内で)約45秒15,000×gで、または(より大きな体積については)3分間2,500×gでペレット化した。直線化したpCTCON2(1μg)をPCRインサート(4μg)と混合し、水中で100μlに増やし、2μlのPelletPaint(Novagen)、続いて10μlの4M NHAcを添加し、混合し、次いで200μlのエタノールを添加し、5分間インキュベートすることによって沈殿させた。このDNAをペレット化し、200μlの70%エタノールで洗浄し、次いで100%エタノールで洗浄し、空気乾燥させた。このDNAを2μlの水に再懸濁させ、形質転換まで4℃で保管した。出芽酵母株EBY100(K.Dane Wittrup(Massachusetts Institute of Technology)から入手)を、225rpmで振盪しながら30℃のYPD培地で成長させた。細胞を形質転換前に2回継代培養して、健康な培養物を確保した。形質転換の日、細胞を110mlのYPD培地内で0.1のOD600まで希釈し、OD600=1.4まで成長させ、その時点で1mlのトリス-DTT緩衝液(1Mトリス中2.5MのDTT、pH8)を添加した。さらに15分間の振盪の後、これらの細胞をペレット化し、50mlの10mMトリス、270mMスクロース、1mM MgCl(pH7.5)中に再懸濁させ、再度ペレット化し、さらに25mlの同じ緩衝液で洗浄した。これらの細胞を、緩衝液で約600μlの最終体積まで再懸濁させ、次いで沈殿したライブラリDNA(50μlの細胞当たり1μgのベクター/4μgのインサート)と混合し、GenePulser II電気穿孔器(Bio-Rad)において0.54kV、25μFで電気穿孔する前に10分間インキュベートした。細胞を、30℃に予熱した30mlのYPD中に直ちに取り出し、30℃のシェーカーに60分間移し、次いでペレット化し、アンピシリンおよびカナマイシンを補充したSDCAA培地内に再懸濁させた。一連の希釈物をSDCAAプレート上に蒔いて、ライブラリ形質転換効率を判定した。エラープローンPCRを使用したライブラリ鋳型の作製については、dPTPおよび8-オキソ-dGTPを用いるZaccoloらの方法を、Chao et al.に記載されているように使用した。
【0245】
MACSによる酵母ライブラリのスクリーニング。酵母ライブラリをSDCAA培地内で成長させ、次いで分取の20~24時間前にSGCAA培地に継代培養した。酵母(最大5*10細胞)をペレット化し、MACS緩衝液(15mMのリン酸ナトリウム(pH7.4)、150mMのNaCl、5mMのKCl、0.5%w/vのBSA)で洗浄し、次いで、室温で10細胞/mlの密度においてビオチン化Rasと共に45~60分間インキュベートし、その後ペレット化し、緩衝液で洗浄し、1mlの緩衝液中に再懸濁させた。抗ビオチンマイクロビーズ(50μl、Miltenyi)を添加し、これらの細胞を4℃で30分間回転させ、次いでPossel_sプログラムを使用してAutoMACS計器(Miltenyi)で分離させた。溶離した細胞をSDCAA中に再懸濁させ、1/100希釈物をSDCAA上に蒔いて、保持された細胞の数を推定した。
【0246】
FACSによる酵母ライブラリのスクリーニング。酵母ライブラリをSDCAA培地内で成長させ、次いで分取の20~24時間前にSGCAA培地に継代培養した。酵母細胞をペレット化し、FACS緩衝液(15mMのリン酸ナトリウム(pH7.4)、150mMのNaCl、5mMのKCl、0.1%w/vのBSA)で洗浄し、次いで、室温でビオチン化Rasと共に45~60分間インキュベートし、その後ペレット化し、緩衝液で洗浄し、10個の細胞当たり100μlの緩衝液中に再懸濁させた。Rasインキュベーションは10細胞/mlの密度で行ったが、ただし[Ras]の濃度が100nM未満に低下した場合は除き、この場合は、1個の酵母細胞当たり少なくとも500,000個のRas分子が存在するように結合量を選択した(Chaoらの指針による)。次いで二次的な試薬(1:200の希釈度における抗HA Alexa488、および1:100の希釈度におけるSA-PE、SA-APC、またはNA-PEのいずれか)を添加し、ペレット化、洗浄、および再度ペレット化する前に、4℃で10分間にわたり暗所でインキュベートした。分取の直前に、これらの細胞を、およそ2*10細胞/mlの密度まで、FACS緩衝液中に再懸濁させた。
【0247】
Rasタンパク質の発現および精製。Rasタンパク質を、C末端HisタグおよびyBBrタグと共に大腸菌BL21 Rosetta I pLysS細胞内で組換え発現させた。このプラスミド骨格の同一性は未知である(親KRasベクターは元々Johannes Yehから入手した)が、おそらくはpET由来であり、アンピシリン抵抗性を伴う。これらの細胞を、30℃で5時間にわたり0.3mMのIPTGで誘発してOD600=0.7まで成長させ、次いで採取し、液体窒素中で急速凍結させる前に、4℃の50mMトリス(pH7.5)、300mM NaCl、10mMイミダゾール、5mM MgCl中に再懸濁させた。精製のために、このペレットを解凍し、同じ緩衝液中で40mlに増やし、RocheのComplete EDTA非含有プロテアーゼ抑制剤タブレットと混合した。これらの細胞をチップソニケーター(VirSonic、出力レベル6.5で10秒オン、15秒オフの6サイクル)で溶解させ、次いで30分間30,000×gでペレット化し、1.2μMのSupor膜(Pall Corporation)を通して濾過した。この澄ましたライセートを、溶解緩衝液で平衡化されている2mlのHisPurコバルト樹脂(Thermo Pierce)に添加し、重力によって排液した。このカラムを20mlの緩衝液で洗浄し、次いで、タンパク質を、150mMのイミダゾールを含有する約5mlの緩衝液で溶離させた。カラムからの溶出の直後、約1mMの最終濃度になるようにDTTを添加し、(溶解ステップから確保した)少量のプロテアーゼ抑制剤を添加した。このタンパク質をCentriprep YM-10(Millipore)において2mlまで濃縮し、Superdex 75 10/300カラム(GE Healthcare)上でのゲル濾過によって、50mMのトリス(pH7.4)、100mMのNaCl、5mMのMgCl、1mMのDTT中に精製した。長期保管のために、タンパク質を100μM超まで濃縮し、10%までグリセロールと混合し、液体窒素中で急速凍結させ、-80℃で保管した。
【0248】
同じプロトコルに従って、Rap1a、RalA、およびRab25を発現させ、精製した。Rap1aおよびRalAをRasタンパク質に関して同一の(His/yBBrタグ付き)ベクター内にクローンし、Hisタグ付きRab25をpETベクターから発現させた。
【0249】
仔ウシ腸管アルカリホスファターゼとのヌクレオチド交換。酵素的なヌクレオチド交換のために、Rasタンパク質を、Superdex 75 10/300カラム上でのゲル濾過によって、32mMのトリス(pH8)、200mMの(NHSO、1mMのDTT、0.5mMのNaN、1μMのZnCl中に緩衝液交換した。このタンパク質を100μM超まで濃縮し、次いで0.5~1.0mMまでGppNHpまたはGppCpと混合し、続いて10~20ユニットの仔ウシ腸管アルカリホスファターゼ(New England Biolabs)と混合した。このタンパク質を室温で30分間インキュベートし、次いで5mMまでMgClを添加し、このタンパク質を、50mMのトリス(pH7.4)、100mMのNaCl、5mMのMgCl、1mMのDTT中に前述同様にゲル濾過した。その後のGTPまたはGDPへの交換のために、GppCpを負荷したRasタンパク質を、10mM EDTAの存在下にて30分間室温で、50~100倍過剰量の所望のヌクレオチドと共にインキュベートし、その後、20mMまでMgClを添加し、過剰のヌクレオチドを通常通りゲル濾過によって除去した。
【0250】
HPLCによるヌクレオチド負荷の数量化。Rasタンパク質(約2nmol)を超純水で150μlまで増やし、次いで150μlの100mMリン酸カリウム(pH6.5)、10mM臭化テトラブチルアンモニウムと混合した。試料を、100mMのリン酸カリウム(pH6.5)、10mMの臭化テトラブチルアンモニウム、7.5%のアセトニトリル中で20分間の均一濃度の泳動を使用した逆相HPLC(Supelcoのセミ分取C18カラム)によって分析した。GDP、GTP、およびGppNHpの溶出時間は、純粋なヌクレオチド(Sigma Alrich)を用いて判定した。
【0251】
B-Raf RBDの精製。Raf RBDを、N末端グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグと共に大腸菌BL21 Rosetta I pLysS細胞内で組換え発現させた。このRBDの遺伝子を、Johannes YehによるpGEX-5Xプラスミド(GE Healthcare)内にサブクローニングした。これらの細胞を、30℃で5時間にわたり0.3mMのIPTGで誘発してOD600=0.7まで成長させ、次いで採取し、液体窒素中で急速凍結させる前に、溶解緩衝液(PBS+1mM DTTおよび0.5mM EDTA)中に再懸濁させた。精製のために、このペレットを解凍し、同じ緩衝液中で40mlに増やし、RocheのComplete EDTA非含有プロテアーゼ抑制剤タブレットと混合した。これらの細胞をチップソニケーター(VirSonic、出力レベル6.5で10秒オン、15秒オフの6サイクル)で溶解させ、次いで30分間30,000×gでペレット化し、1.2μMのSupor膜(Pall Corporation)を通して濾過した。この澄ましたライセートを、溶解緩衝液で平衡化されている2mlの固定化グルタチオン樹脂(Thermo Pierce)に添加し、重力によって排液した。このカラムを20mlの緩衝液で洗浄し、次いで、タンパク質を、50mMのトリス(pH8.0)、10mMの還元グルタチオン、1mMのDTT、0.5mMのEDTAで溶離させた。この試料をCentriprep YM-10(Millipore)において2mlまで濃縮し、Superdex 200 10/300カラム(GE Healthcare)上でのゲル濾過によって、50mMのトリス(pH7.4)、100mMのNaCl、5mMのMgCl、1mMのDTT中に精製した。長期保管のために、タンパク質を100μM超まで濃縮し、10%までグリセロールと混合し、液体窒素中で急速凍結させ、-80℃で保管した。
【0252】
Sfpホスホパンテテイニルトランスフェラーゼの精製。Sfpを、大腸菌BL21細胞内で、Christopher Walsh(Harvard Medical School)から入手したpET29-Sfpベクターから組換え発現させた。これらの細胞を、25℃で6時間にわたり1mMのIPTGで誘発してOD600=0.7まで成長させ、採取し、液体窒素中で急速凍結させる前に、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.5)、300mMのNaCl、10mMのイミダゾール中に再懸濁させた。このタンパク質を、Rasタンパク質に関して上に記載したようにコバルト親和性クロマトグラフィーによって精製した。この精製タンパク質を、Superdex 75 10/300カラム(GE Healthcare)上で、10mMのトリス(pH7.5)、1mMのEDTA、10%のグリセロール中にゲル濾過した。約15mlにおけるピークで溶離する画分をプールし、アリコートに分割し、液体窒素中で急速凍結させ、-80℃で保管した。
【0253】
ビオチン-CoA(LK04)の合成。補酵素A(Sigma-Aldrich、ダルベッコリン酸緩衝食塩水中10mM)を、1当量のビオチン-Peg-マレイミド(Thermo Pierce、50mMトリス中20mM、pH7)、続いて0.2当量のTCEP(Sigma-Aldrich、水中0.5M)と混合した。この反応物を室温で2時間インキュベートし、次いで、0.1%のTFAを含む水中で0%から40%まで20分間のMeCN勾配を使用したHPLCによって精製した。
【0254】
Alexa647-CoA(LK06)の合成。補酵素A(Sigma-Aldrich、ダルベッコリン酸緩衝食塩水中10mM)を、50mMのトリス(pH7)中で5mMまで希釈し、次いでTCEPを7.5mMまで添加した(3μlの500mMストック)。5分後、1mgのAlexa647-C2-マレイミド(Life Technologies)を、34μlのDMSO中に溶解させ、反応物に添加し、室温で45分間にわたり暗所でインキュベートし、その後この反応物を500μlのMilliQで希釈し、0.1%のTFAを含む水中で0%から60%まで20分間のMeCN勾配を使用したHPLCによって精製した。
【0255】
Sfpホスホパンテテイニルトランスフェラーゼによるタンパク質標識。精製したRasを、Superdex 75 10/300カラム上で、64mMのトリス(pH7.5)、5mMのMgCl、1mMのDTT中にゲル濾過した。Ras(50~150μM)を、1.0~1.3当量のCoAリンカー(LK04またはLK06)、続いてSfpと3~5μMまで混合した。この反応物を室温で1時間インキュベートし、次いで50mMのトリス(pH7.4)、100mMのNaCl、5mMのMgCl、1mMのDTT中に前述同様にゲル濾過した。
【0256】
225ペプチドの組換え生成。pET30a(Novagen)をNcoI-HFおよびXhoI(New England Biolabs)で消化し、5’NcoI部位および3’XhoI部位を有するペプチド配列を含むPCR断片と連結した。このORFを(発現株適合性の理由のため)アンピシリン抵抗性プラスミドにシャトリングするため、このプラスミドをXbaIおよびXhoI(New England Biolabs)で消化し、インサートをpET19bベクター(Novagen)にサブクローニングした。結果として生じたプラスミドを、アラビノース誘導性プロモーターの制御下で、dnaK、dnaJ、grpE、GroEL、およびGroESシャペロンを保有するpG-KJE8プラスミド(Clontech)を含有するBL21細胞に形質転換させた。細胞を、37℃のLB培地内で約0.7のOD600まで成長させ、次いで500μMのIPTGおよび200mgのアラビノースと共に30℃で5時間インキュベートした。これらの細胞を、15分間5,000×gでペレット化し、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.5)、1000mMのNaCl、10mMのイミダゾール中に再懸濁させ、急速凍結させた。後続のステップは全て4℃で実施した。このペレットを解凍し、EDTA非含有プロテアーゼ抑制剤(Roche)と混合し、チップソニケーター(VirSonic、出力レベル6.5で10秒オン、15秒オフの6サイクル)で溶解させ、次いで30分間30,000×gでペレット化し、1.2μMのフィルタを通して濾過した。この澄ましたライセートを、2mlのコバルト樹脂(Thermo Pierce)と共に30分間揺動させ、次いでカラムに移し、重力によって排液した。この樹脂を約20mlの溶解緩衝液で洗浄し、次いでこの融合タンパク質を、350mMのイミダゾールを含有する溶解緩衝液で溶離させた。DTTおよびEDTAを、それぞれ1mMおよび0.5mMの濃度まで、プロテアーゼ抑制剤(Roche)と共に添加した。この溶離したタンパク質を2mlまで濃縮し、5mlのHiTrap脱塩カラム(GE Healthcare)を2本直列で使用して、50mMのトリス(pH8)、250mMのNaCl、1mMのDTT、0.5mMのEDTA中に緩衝液交換し、次いでTEVプロテアーゼを用いて一晩室温で開裂させた。この開裂反応物を、2本直列のSepPak Classic C18カートリッジ(Waters)に移してペプチドに結合させ、このカートリッジを水+0.1%TFAで洗浄し、次いでこのペプチドを75%MeCN+0.1%TFAで溶離させた。SpeedVacによる濃縮の後、このペプチドを、0.1%のTFAを含むHO中で10から100%までのアセトニトリル勾配を使用したHPLCによって精製した。収集した画分を、SpeedVacおよび凍結乾燥によって乾燥させた。
【0257】
FITCを用いたペプチドの標識。HPLC精製したペプチドを、DMSO中で250~500μMまで希釈し、次いで50mMのトリス(pH7)中5mMのTCEPストックから2当量のTCEPを添加した。室温で5分間のインキュベーションの後、2当量のN-(5-フルオレセニル)マレイミドを、DMSO中2.5mMのストックから添加し、この反応物を室温で30分間にわたり暗所でインキュベートした。この試料を、50%MeCN+0.1%TFAを添加することによって反応停止させ、次いで非標識のペプチドに関してHPLCによって精製した。
【0258】
ビオチンを用いたペプチドの標識。HPLC精製したペプチドを、DMSO中で250~500μMまで希釈し、次いで50mMのトリス(pH7)中50mMのTCEPストックから2当量のTCEPを添加した。室温で5分間のインキュベーションの後、2当量のビオチン-PEG-マレイミド(Thermo Pierce)を、50mMのトリス(pH7)中20mMのストックから添加し、この反応物を室温で30分間にわたり暗所でインキュベートした。この試料を、50%MeCN+0.1%TFAを添加することによって反応停止させ、次いで非標識のペプチドに関してHPLCによって精製した。
【0259】
蛍光偏光。FITC標識したペプチドを、50mMのトリス(pH7.4)、100mMのNaCl、5mMのMgCl、1mMのDTT中で30nMまで希釈し、次いで、384ウェルの黒色マイクロプレート(Corning)に分注した40μlの2×タンパク質ストック(同じ緩衝液中)に添加した。このプレートを室温で45分間静置し、次いで、励起485nm、発光525nm、カットオフ515nm、PMT高、読み取り100回、低いキャリッジ速度、および整定時間500ミリ秒とし、SpectraMax M5(Molecular Devices)で蛍光異方性を記録した。各濃度点は3連で作成し、各ウェルは2回読み取った(そして平均した)。データは、Prism(Graphpad)を使用してプロットし、ヒル係数を用いて一部位特異結合モデルに当てはめた。
【0260】
mantヌクレオチドの合成。mGppNHpおよびmGDPの合成を、Hiratsukaによって説明されているように実施した。20μmolのグアノシン5’-[β,γ-イミド]三リン酸三ナトリウム塩水和物(GppNHp)またはグアノジン二リン酸(Guanodine diphosphate)(GDP)(Sigma)を、丸底フラスコ内の1000μlの超純水中に溶解させ、1MのNaOHでpHを約9.5に調整した。この溶液を水浴中で38℃に加熱し、撹拌下で1MのNaOHでpHを9~10に維持しながら、N-メチルイサト酸無水物(65μmol、3.25当量、Aldrich、微粉末状に粉砕)を4回に分けて1時間かけて添加した。3時間後、1MのHClを添加してpHを約7に低下させ、反応を終了させ、この管を氷上でインキュベートして過剰のN-メチルイサト酸無水物を沈殿させ、次いで最大速度で5分間にわたり遠心分離した。この上清を除去し、次いでこの粗生成物を、0.1%のTFAを含むHO中で0から60%までのアセトニトリル勾配を使用したHPLCによって精製した。収集した画分を、SpeedVacおよび凍結乾燥によって乾燥させ、吸光度によって数量化した(pH7においてε252=21500)。これらのヌクレオチドを、それらの非標識の対応物に関して上に記載したようにアルカリホスファターゼを使用して、Rasタンパク質上に負荷した。
【0261】
mantGppNHpの合成のための一般的スキームを以下に提供する。GppNHpを38℃の超純水中に溶解させ、NaOHでpHを約9.5に調整し、次いで、NaOHを定期的に添加してpHを9~10に維持しながら、N-メチルイサト酸無水物(3当量)を少量ずつ添加した。3時間後、この反応をHClで終了させ、この生成物をHPLCによって精製する前に氷上で沈殿させた。
【化4】
【0262】
Mantヌクレオチド解離実験。黒色の96ウェルプレート(Corning)のウェルに、2μMのRafまたはペプチドを含有する100μlの緩衝液(50mMのトリス(pH7.4)、100mMのNaCl、5mMのMgCl、1mMのDTT)、続いて50μlの2μM mantヌクレオチド負荷Rasタンパク質を添加した。室温の暗所で10分間インキュベートした後、非標識ヌクレオチドの50μlの2.6mMストックを、Ras 500nM、Rafまたはペプチド1μM、および非標識ヌクレオチド0.65mMの最終濃度まで添加した。マルチチャネルピペットを使用してウェルを混合し、次いでSpectraMax M5(Molecular Devices)を用いて2時間にわたってmant蛍光を追跡し、30秒毎に6回の読み取りを記録した(励起370nm、発光450nm、カットオフ435nm)。
【0263】
表面プラズモン共鳴法。ビオチン化KRas(GppNHpまたはGDP)を、Biacore泳動緩衝液(50mMのトリス(pH7.4)、100mMのNaCl、5mMのMgCl、2mMのDTT+0.02%のTriton X-100、濾過および脱気済み、GppNHp含有タンパク質試料については1μMのGppNHpを含む)中で50nMまで希釈し、緩衝液で3回プライミングされ、かつCAPture再生溶液での3×60秒の処理で馴化されているBiacore X100 SPRシステム(GE Healthcare)を用いて、Streptavidin CAPtureチップ上に固定化した。180秒の結合および900秒の安定化を伴う単一サイクル試験を記録し、分析ステップに先行する各再生ステップの後に緩衝液洗浄を行った。カスタムパラメータは次の通りであった:捕捉1:2μl/分において300秒、安定化120秒;捕捉2:5μl/分において45秒、安定化180秒、試料:30μl/分、再生:10μl/分において120秒、安定化60秒。1つの始動サイクルと、バックグラウンド除去のための2つのブランクサイクルとから開始し、次いで、5mMのNaOH中に新鮮に溶解させ数量化した225-3の試料から調製した225-3ペプチドの、1.23nM、3.7nM、11nM、33nM、および100nMにおける試料注入を行った。試料は全て、キャップなしのBiacore管(GE Healthcare)内で調製した。データは、2ステップ結合モデルを使用し、計器のソフトウェアによって処理および分析した。
【0264】
Capan-1細胞ライセートにおけるプルダウンアッセイ。Capan-1腺癌細胞をAmerican Type Culture Collectionから入手し、75cmの培養フラスコ(Falcon)を使用して、20%のウシ胎仔血清および1×抗生物質/抗真菌薬(Anti-Anti、Gibco)を含むイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)内で37℃(CO5%の加湿雰囲気)で培養した。2つのフラスコの細胞を約90%コンフルエンスまで成長させ、15分間37℃でトリプシン処理し、ペレット化し、冷PBSで洗浄し、次いで、50mMのHEPES(pH7.5)、100mMのNaCl、10mMのMgCl、1mMのEDTA、5mMのDTT、1%(v/v)のTriton X-100、および5×HALTプロテアーゼ抑制剤(Thermo)中で10分間インキュベートすることによって溶解させた。これらの細胞を、卓上遠心分離機内で10分間16,000×gでペレット化し、次いでこの上清を急速凍結させ、-80℃で保管した。プルダウンの日に、このライセートを解凍し、0.01%(v/v)のTriton X-100のみを含有する溶解緩衝液中で10倍に希釈した(高い洗浄剤の濃度はRas-ペプチド相互作用に干渉する)。後続のステップは全て4℃で実施した。ペプチドプルダウンについては、このライセートをモックまたはRaf RBD(3μM)と共に10分間プレインキュベートし、その後、ビオチン化225-3(5μM)を添加し、45分間インキュベートし、続いて、0.1mg/mlのBSAを含有するダルベッコPBSで10分間室温でブロッキングされている50μlのStreptavidin MyOne T1 Dynabeads(Life Technologies)を添加した。これらの試料を30分間回転させ、次いでビーズを磁石で収集し、0.1%(v/v)のTriton X-100を含有する3×400μlの溶解緩衝液で洗浄した。これらの試料を、SDSローディング緩衝液中で5分間沸騰させ、次いで卓上遠心分離機において16,000×gでペレット化することによって、ビーズから溶出させた。Raf RBDプルダウンについては、このライセートをモックまたはペプチド(10μM)と共に10分間プレインキュベートし、その後、GSTタグ付きRaf RBD(5μM)および50μlのグルタチオンアガロースビーズ(Thermo)を添加し、60分間回転させた。この上清を、フィルタカラム(Thermo)を通して回転させることによって除去し、0.1%(v/v)のTriton X-100を含有する3×400μlの溶解緩衝液でビーズを洗浄した。これらの試料を、SDSローディング緩衝液中に5分間浸漬させ、次いで卓上遠心分離機において16,000×gでペレット化し、5分間沸騰させることによって、ビーズから溶出させた。150Vで45分間にわたり、10%のSDS-PAGEゲル上で試料を泳動させ、次いで、50Vで45分間にわたり、ウェスタンブロッティングチャンバ(Invitrogen)を使用して、15mMのトリス、192mMのグリシン、20%のメタノール中で0.45μmのニトロセルロース膜(Whatman)に移した。この膜を、0.1%(v/v)のTween-20(TBS/T)を含むトリス緩衝生理食塩水中で5%の乾燥脱脂乳で1時間ブロッキングし、TBS/Tで洗浄し、次いで、1:1000希釈の抗RasウサギmAb(Cell Signaling、#3339)を含むTBS/T中で5%のBSAにおいて4℃で一晩インキュベートした。翌日、この膜をTBS/Tで洗浄し、抗ウサギHRP結合体(Cell Signaling)と共に室温で1時間インキュベートし、もう1回洗浄し、次いで、SuperSignal West Pico化学発光造影試薬(Thermo)およびBioMax Lightフィルム(Kodak/Carestream Health)を用いて可視化した。
【0265】
核磁気共鳴法。15N標識KRasまたはペプチドを調製するために、1g/lの15NHClを含有する最少培地内で細胞を成長させ、非標識タンパク質に関して発現させた。KRasおよび225-1を上に記載したように精製し、次いでNMR緩衝液(50mMのHEPES(pH7.4)、50mMのNaCl、2mMのMgCl、2mMのTCEP、0.1mMのEDTA、0.02%のNaN)中に緩衝液交換した。Rasおよびペプチドを、凝集を回避するために50μM未満で混合し、次いで100~200μMまで濃縮し、1/19体積のDOと混合し(5%の最終濃度)、0.45μmの膜を通して濾過し、次いでShigemi BMS-3 NMR試験管に加えた。NMR実験は、(クライオプローブを備えた)700MHz Bruker上でTROSYを使用し、298Kで実施した。データは、NMRpipeを用いて処理し、NMRviewを使用して可視化した。
【0266】
還元試験。ペプチドを緩衝液中に溶解させ、逆相HPLCによって分析する前に、0mM、5mM、または50mMのDTTと共にインキュベートした。還元したペプチドは、試料のLC/MS分析によって判定した場合に、酸化したペプチドよりも早く溶離する。
【0267】
複合体形成、結晶化、およびデータ収集。K-Ras/RDA複合体を、20mMのトリス(pH8.0)、50mMのNaCl、5mMのMgCl中でK-Rasが25μMの濃度で、K-Rasを1.2倍過剰モルのRDAペプチドと混合することによって形成した。1時間のインキュベーションの後、この複合体をサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。0.5μlの複合体(20mMのトリス(pH8.0)、50mMのNaCl、5mMのMgCl中で9mg/ml)と、0.3Mの塩化カルシウムおよび23%(w/v)のPEG 3350を含有する0.5μlのリザーバ液とを混合した後、RDA1とGMP-PNPとの複合体中のK-Rasの結晶を成長させた。K-Ras/RDA2/GMP-PNP複合体を、0.1~0.2Mの硫酸アンモニウム、20~22%のPEG 3350を含有する1μlのリザーバ液と混合した0.5μlの複合体(11.5mg/ml)を使用して結晶化させた。結晶は全て、シッティングドロップ蒸気拡散法により20℃で成長させた。凍結保護については、採取した結晶全てを、液体窒素中で急速冷凍する前に20%のグリセロールを補充したリザーバ液中で手短にインキュベートした。回析データは全て、Advanced Photon Sourceにおいて24-IDビームラインで収集し、XPDおよびHKL2000スイートで処理した。
【0268】
構造決定および精密化。K-Ras/RDA1/GMP-PNP複合体は、P21の空間群において結晶化し、非対称ユニット内に4つの分子を有した。K-Ras/RDA2/GMP-PNP複合体もまた、P21の空間群において結晶化したが、非対称ユニット内に単一の分子を有した。両方の構造は、検索モデルとして以前に決定されたK-Ras構造(PDBアクセス3GFT)を使用し、PHASERを用いた分子置換によって決定した。COOTにおけるマニュアルモデル構築の反復サイクル、およびREFMACを使用した構造精密化によって、RDAペプチドモデルを構築した。最終モデルは、それぞれ2.15Åおよび1.7ÅでPHENIXを使用して細密化し、MolProbityによって検証した。
【0269】
生細胞共焦点顕微鏡法。ヒト腫瘍細胞株(例えば、H358またはHPAF-II)を、LabTek II培養チャンバ内で10%のウシ胎仔血清を補充したDMEM培地内に播種し、標準的な細胞培養条件下で37℃で一晩成長させた。翌日、培地を、5μMのフルオレセイン標識ペプチドを含有する培地と交換し、37℃で4時間インキュベートした。これらの細胞を洗浄し、NucBlue Hoechst 33342およびDextran 10k Alexa647で染色し、次いで共焦点顕微鏡で撮像した。蛍光ペプチドを488nmのレーザーで可視化し、図34Aおよび34Bに緑色で示す。
【0270】
実施例1:Ras結合ペプチドの特性化およびRas-ペプチド結晶構造
結合親和性。K-Rasに対するペプチドの結合親和性を、蛍光偏光実験によって判定した。以下は、使用したペプチドの配列と、それらの測定された解離定数である。
【表2】
【0271】
還元試験。これは、酸化(ジスルフィド架橋)ペプチド二量体を還元(非架橋)ペプチド単量体と区別することができるHPLCアッセイである。細胞環境よりも大幅に強力な還元剤であるDTTを5mMまたは50mM添加することによって、セレノシステイン含有ペプチド二量体は、それらのシステイン含有類似体とは異なり還元され得ないことが観察された(図31参照)。
【0272】
Ras-RDA構造。図32は、2.2オングストロームの解像度における全体構造を示す。図32はまた、同定された一次ヘリックスおよび主要な結合残基も示す。
【0273】
実施例2:Ras結合ペプチドのための酵母ディスプレイスクリーン
Rasエフェクタードメインに結合するペプチドを同定するために2つの手法を探求し、その両方が、酵母表面ディスプレイによる大きなペプチドライブラリのスクリーニングを伴った。第1の方策は、Rasに結合する能力が未知である小さなペプチド足場に基づくナイーブライブラリをスクリーニングすることであった。これらのライブラリは、依然として安定した高次構造にありながら可能な限り高い構造多様性を含むように設計された。第2の方策は、Rasエフェクタードメインに結合することが知られるタンパク質のドメインに基づいてライブラリをスクリーニングすることであった。この場合、スクリーンの目標は、その親タンパク質により提供される足場の非存在下でRasに結合することができるドメインの安定化した変異体を同定することであった。
【0274】
ライブラリ足場セレクション。ナイーブライブラリの足場候補を同定するために、X線または核磁気共鳴(NMR)構造のいずれかが利用可能であった1000~5000Daの質量を有するポリペプチドに関して、Protein Data Bankを検索した。結果を手作業で精選して、非共有結合の相互作用または共有結合の相互作用(例えば、ジスルフィド結合)によって提供されるかを問わず、構造安定性の基準でペプチドを選択した。らせん形のトリ膵臓ポリペプチド(aPP、PDB:1PPT)を予備研究のために選択した。
【0275】
トリ膵臓ポリペプチド(aPP)は、元々はニワトリの膵臓から単離した32-アミノ酸ミニタンパク質である。その構造は、N末端ポリプロリンII型(PPII)ヘリックス、I型βターン、およびC末端αヘリックスからなる。aPPは、ヘリックスおよびループの両方からの残基間の分子間接触によって安定化され、溶液中で頭-尾ホモ二量体を形成する。PPIIとαヘリックスとの間の分子内の疎水性相互作用は、aPP単量体を比較的高い安定性(融解転移(T)≒62℃)を有する明確に定義された折り畳み構造へと安定化させ、これは、高い熱安定性が一部のタンパク質の進化性を向上させることが示されているため、足場に関して魅力的な特性である。Schepartzおよび共同研究者らは、様々なタンパク質のαヘリックスからの残基をaPP αヘリックスの露出面にグラフトして、本来のタンパク質の標的に結合する能力を保持するキメラタンパク質を得ることができると実証した。例えば、Zondloらは、酵母転写因子GCN4のDNA結合ドメインからの残基をaPP足場にグラフトして、低いナノモル親和性でGCN4ハーフサイト(half-site)に結合することができるミニタンパク質を作製した。別の事例では、Kritzerらは、p53のhDM2結合ドメインからの残基をaPPにグラフトし、次いで変異誘発およびスクリーニングを適用して、結果として生じたペプチドの親和性を向上させた。
【0276】
Schepartzおよび共同研究者らはまた、一部の状況では細胞取り込みを増進させることで知られるアルギニンで複数の残基を置換することによって、aPPに細胞透過特性を与えることができることも実証した。一事例では、Danielsらは、PPIIヘリックスおよびβターンからの残基をアルギニンで置換して、1μMの濃度でHeLa細胞を透過し、エンドソーム内に捕捉されなかったペプチドを得た。別個の研究では、Smithらが、αヘリックスからの残基をアルギニンで置換して、ペプチドの相当の部分がエンドソームに局在化したままであったにもかかわらず、同様に1μMでHeLa細胞を透過したペプチドを生成した。こうした細胞透過の潜在性は、安定した二次構造および操作の確立された例と共に、aPPをRas標的ライブラリのスクリーニングおよび進化に魅力的な足場にした。
【0277】
これらの細胞透過研究の重要な注意点は、aPP変異体は、円二色性(CD)分光法によって判定された場合にそれらのaPP折り畳み構造を保持した一方で、アルギニンの導入によって不安定化したということである。足場の安定性が低いと、その折り畳み構造が失われる前に許容される変異がより少なくなると予測されるため、結果として生じるライブラリのうち明確な高次構造を有する部分はより小さくなるであろう。したがって、細胞浸透性を与えることが示されているが足場内の安定性を損なわなかったアルギニン置換の一部を組み込んだ、aPP変異体の同定を試みた。本発明者らの狙いはαヘリックス表面をランダム化に使用することであったため、6つのアルギニン変異を含んだ、PPII提示アルギニン系列のうち最も細胞透過性のペプチドに焦点を当てた。aPP結晶構造の検査は、変異残基のうち3つが、ペプチド内で他のアミノ酸と潜在的に安定化作用のある接点を形成することを示唆した。これらの残基が不安定化の大部分に寄与したという仮説を試験するため、これらの位置を未変化(野生型)のまま残しつつ、残りの3つをアルギニンに変異させたaPP変異体、すなわちaPP-Mを合成した(図4の配列参照)。このペプチドの安定性を査定するため、aPPのものと一緒にそのCDスペクトルおよび融解プロファイルを記録した(図3)。αヘリックスの末端である第32のアミノ酸の後で両方のペプチドを切断した。25℃におけるCDスペクトルは、2つのペプチドに関してほぼ同一であり、文献で発表されたものと一致しており、全体的な高次構造が未変化のままであったことを示した。予想外なことに、aPP-MのTは、64.5℃から77℃超と、aPPと比べて上昇した。このさらなる安定性の起源は完全には明らかでないが、アルギニンがPPIIヘリックスとの関連で安定化作用があり得ることは知られている。その向上した安定性およびアルギニン含量のため、aPP-M変異体を酵母ディスプレイライブラリの足場として使用した。
【0278】
細胞内のジスルフィド結合の不安定性に対処する最も実用的な方法は、ジスルフィドをより安定したリンカーで置換することである。1つの可能性はジセレニド結合を組み込むことであり、ジセレニド結合は、ジスルフィドと等電子性であるが、それをヒト細胞の還元性環境に対して安定させる酸化還元電位を有する。Craikおよび共同研究者らは、そのような置換が、コノトキシンの構造を撹乱させることなくその安定性を向上させることができると示している。第2の選択肢は、「ステープルドペプチド」に使用される全炭化水素架橋などの非天然リンカーでジスルフィドを置換することであろう。これは(還元され得ないため)潜在的にジスルフィドまたはジセレニドよりも安定であり得、細胞透過に寄与し得るが、さほど等電子性にはならない。さらに、β構造をそのようなリンカーで安定化させる前例は発表されておらず、そのため、合成、反応条件、リンカーの長さおよび組成などを最適化する方法の開発に対する必要性がおそらく存在するであろう。
【0279】
標的タンパク質の調製。標的タンパク質は、細胞表面上で検出され得るように、酵母ディスプレイ研究のために標識されなければならない。これは典型的には、標的タンパク質をビオチン化すること、および磁気活性化細胞分取(MACS)のためのストレプトアビジンビーズ、またはFACSのためのストレプトアビジン-フルオロフォア結合体を使用することによって達成される。この方策の1つの欠点は、ストレプトアビジンに結合することができるペプチドが偽陽性物質を生成し得、偽陽性物質は、その親和性が十分に高ければ真の標的結合剤に競り勝ち得ることである。これらの二次的結合配列のセレクションは、異なるビオチン結合剤を用いること、例えば、抗ビオチン抗体に接合されたビーズを用いてMACSを実施し、続いてFACSのためにニュートラアビジン-フィコエリトリン(NA-PE)とストレプトアビジン-アロフィコシアニン(SA-PE)とを交互に用いることによって、部分的に抑制され得る。本発明者らの最初のライブラリスクリーンおよび定向進化の取り組みでは、複数の機会で二次的結合剤からの汚染を経験したが、この方策を採用した。本発明者らのより最近の酵母ディスプレイ研究では、付随する二次的なステップを伴わずに小分子フルオロフォアに直接接合されたRasタンパク質を用いてFACSを実施することによって、この問題の回避を試みた。
【0280】
標的タンパク質を調製するために、ヒトKRasの残基1~177の遺伝子(G12V)を、未変性のN末端ならびにC末端HisタグおよびyBBrタグと共に、pET発現ベクター内にサブクローニングした。Hisタグにより、ニッケル-NTAまたはコバルト樹脂を用いた標準的な固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)法を使用して、細胞ライセートから融合タンパク質を精製することが可能になる。yBBrペプチドは、補酵素A(CoA)からペプチド内の2位におけるセリン残基の側鎖ヒドロキシルへのホスホパンテテイニル基の共有結合的付加を触媒することができる、Sfpホスホパンテテイニルトランスフェラーゼの最適化された11アミノ酸基質配列(DSLEFIASKLA)である。この反応は概して、CoAのスルフヒドリル末端における置換を許容するため、高い選択性でCoAとビオチン、フルオロフォアなどとの結合体に融合タンパク質を結合させるために使用することができる(図6)。本発明者らは、この手法を、例えばアミンまたはチオール反応性プローブを使用した非特異的標識(これは、エフェクタードメイン内またはその近位に位置するリジンおよびシステイン残基を修飾することによってRasの天然構造を撹乱させる潜在性があり得る)と比べて好ましいと見なした。KRasのG12V変異体は、ヒト癌に見出される最も一般的な発癌性変異のうちの1つであり、野生型よりも低いGTP加水分解のバックグラウンド率を有するため、これをこれらの研究に選択した。
【0281】
T7リゾチームおよびRosetta Iプラスミド(これは、コドンがヒト遺伝子内で一般的に見出されるが大腸菌内には存在しない6つのtRNAを保有する)を含有する大腸菌(DE3)細胞内でKRasコンストラクトを発現させた。pET発現系は、(T7プロモーターを有する)組換えタンパク質およびT7 RNAポリメラーゼの両方を、lacリプレッサーによって恒常的に抑制されているlacオペレーターの制御下に置くことによって機能する。イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG、アロラクトース類似体)の添加は、これらの2つのタンパク質の抑圧を軽減させ、T7 RNAポリメラーゼの発現、ひいては組換えタンパク質の発現を可能にする。細胞がおよそ0.7の光学密度(OD)に達するまで、37℃の溶原性ブロス(LB)培地内で細胞を成長させ、次いで30℃のIPTGで融合タンパク質の発現を誘発した。これらの細胞を超音波処理によって溶解させ、遠心分離によって澄まし、コバルト樹脂を使用してRasを精製した。この粗製タンパク質をゲル濾過によってさらに精製し(図7A)、所望のグアニンヌクレオチドで酵素負荷をかけ(図7B)、次いで、Yin,J.,et al.Site-specific protein labeling by Sfp phosphopantetheinyl transferase.Nat Protoc 1,280-5(2006)に詳述されているようにSfpを使用して、ビオチンまたはフルオロフォアで標識した(図6)。Sfp反応の前後に、タンパク質のマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI-MS)によって標識を検証した(図7C)。
【0282】
GTPアーゼは典型的には高い親和性でグアニンヌクレオチドに結合し、HRasの場合、解離定数(K)は低ピコモル範囲内である。そのような高い親和性は、組換え発現されたRasタンパク質が、精製プロセス全体にわたり、典型的にはGDP結合状態およびGTP結合状態の混合物中で、そのヌクレオチドを保持することを意味する。Rasの野生型形態は、GAPタンパク質の非存在下であってもGTPをGDPにゆっくりと加水分解するが、本発明者らの研究に使用されたG12Vなどの変異体は、非常にゆっくりと加水分解する傾向がある。この不均一混合物は、Rasの高次構造および結合特性が2つのヌクレオチド状態間で著しく異なるため、酵母ディスプレイまたは生化学的アッセイには理想的でない。高いヌクレオチド結合親和性は、操作の観点からの課題を呈する:単に大過剰の所望のヌクレオチドを提供することによってタンパク質に負荷をかけることはできず、アルカリホスファターゼなどの酵素は、酵素のKを大幅に下回る濃度の溶液中で遊離しているため、ヌクレオチドを効率的に分解することができない。
【0283】
均一に負荷されたRasタンパク質を調製するために、2つの手法が開発されている。第1の手法は、Mg2+イオンをキレートし、それらをヌクレオチド結合ポケットから除去するEDTAを精製タンパク質に添加することを伴う。これにより、Ras-ヌクレオチド相互作用の親和性が低下し、また、大過剰(典型的には100倍)の所望のヌクレオチドを添加し、室温でインキュベートすることによるヌクレオチドの交換が可能となる34。本発明者らの経験上、この方法は、最大85~90%のレベルまでタンパク質に負荷をかけることができ、本発明者らの早期の酵母ディスプレイおよび生化学的実験のためのタンパク質を調製するために使用された。第2の方策は、アルカリホスファターゼおよび非加水分解性GTP類似体、例えばグアノシン5’-[β,γ-イミド]三リン酸(GppNHp)またはβ,γ-メチレングアノシン5’-三リン酸(GppCp)なとを、Mg2+非含有の緩衝液中に交換されているRasタンパク質に添加することである。これらの条件下では、Ras-ヌクレオチド親和性は、最初のヌクレオチドと非加水分解性の類似体との交換を可能にするのに十分に低く、Rasが十分に(100μM超に)濃縮されていれば、加水分解性ヌクレオチドの濃度は、アルカリホスファターゼによって効率的に分解されるために十分に高くなる33。GppCpが使用される場合、GDPまたはGTPはホスファターゼ除去後にタンパク質上に効率的に再度負荷され得、これは、GppCpが100倍低い親和性を有し、過剰の天然ヌクレオチドによって容易に打ち負かされるためである35。この方法は、所望のヌクレオチドが負荷されたRasタンパク質へのほぼ定量的な変換を実現するために使用され得、本発明者らのより最近の研究に使用された。7.5%のアセトニトリルおよび100mMの臭化テトラブチルアンモニウムを含有するリン酸緩衝液で平衡化した逆相(C18)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムに精製タンパク質を注入することによって、Rasヌクレオチド状態を判定した。テトラブチルアンモニウムイオンは、リン酸基の数に比例した化学量論でグアニンヌクレオチドに結合し、それにより、GTPは、GDPよりも親油性のカチオンと複合体を形成し、したがってより疎水性の分子として挙動する。均一濃度条件下でカラムを展開することにより、GDPとGTPとの明確な分離が得られ(図7B)、その保持時間は、精製ヌクレオチド標準を使用して判定され得る。
【0284】
酵母ディスプレイスクリーニング。Chao,G.,et al.Isolating and engineering human antibodies using yeast surface display.Nat Protoc 1,755-68(2006)に記載されているように、酵母ディスプレイプロトコルを行った。まず、ビオチン化KRas(G12V)-GTPを標的として使用して、aPPライブラリを用いた最初のパイロットスクリーンを実施した。ライブラリのサイズが、FACSによって簡便に評価され得る細胞の数よりも大きかったため、MACSステップからスクリーンを開始した。1μMのRas濃度で2*10個の細胞をスクリーニングし、およそ190,000個の細胞を単離した。結果として生じたライブラリを、1ラウンド1.8μM、次いで3ラウンド550nMのFACSによって分取した。この5回の分取により、550nMにおいてRasに対する強力な結合を示した細胞集団が得られた(図9)。提示されたペプチドがRasエフェクタードメインに結合するかどうかを試験するため、大過剰のBRafのRBDと事前混合されているKRasと共に酵母をインキュベートした。見かけ上のRas結合は減少したが、一部は依然として結合しているようであった。単離した集団を配列決定し、3つの密接に関連したペプチド配列を見出した(図10および以下の考察を参照されたい)。
【0285】
aPP足場ペプチドの定向進化。図10は、進化の過程で同定されたペプチドの一覧を提供する。予備研究は、aPP変異体ライブラリから誘導された、221-1、221-2、および221-3と名付けられた3つのヒットに焦点を当てた。3つ全てが、共通のランダム化残基:H18、W21、W25、N26、およびY29のうちいくつかを共有した(図10)。残りの位置では、強いコンセンサスはなかった(残基15においてE/G、残基19においてA/E/W、そして残基23においてA/Q)。R6における221-3のリジンへの偶発変異も観察された。これらの配列において疎水性残基の保有率が比較的高かったことも注目され、観察された結合は特異性の弱い疎水性相互作用に起因することが示唆された。この可能性を査定するため、タンパク質の不均一混合物を含有し、相互作用が主に疎水性相互作用によって推進される場合にRas-ペプチド結合を低下させると予測されるヒト血清の存在および非存在下において、aPPヒット集団に酵母表面結合アッセイを実施した。FACSプロットは、血清が10%(v/v)まで添加されたときでさえ、結合性の変化を本質的に示さず(図9)、Ras-ペプチド相互作用が非特異性競合相手に強いことが示された。
【0286】
aPPヒットの親和性を向上させるために、定向進化を使用した。最初にMACSラウンド、続いて低いKRas濃度でFACSを使用して、酵母ディスプレイを前述同様に行った。さらに、非特異的結合に対する選択圧を維持するために、5%(v/v)のヒト血清および100μg/mlの非特異性DNA(一本鎖、サケ精子由来)の存在下での進化の実施を決定した。条件およびそれらの結果として生じた配列の概要が図10に示され、色分けは、変異が最初に現れたラウンドを示す。
【0287】
(223ペプチドをもたらした)第2のラウンドについては、エラープローンPCRによって第1のラウンドからの3つの221ヒットを多様化させ、次いで100nMのKRas濃度でMACSを実施した。結果として生じた集団を、KRas 50nMにおけるFACSによる5ラウンドのスクリーニングにわたって富化させ、各々追加の変異(223-1についてはX23R、および223-2についてはVI4I)と共に、共通の2つの変異(P13SおよびV30A)を共有した、2つの一意的配列を得た。ヌクレオチド配列の検査により、223-1が221-2から誘導されたこと、および223-2が221-1から誘導されたことを見出した。これらの変異の全てが有益であると想定することはできないことに留意するのが重要である;好ましいものへの遺伝連鎖によって選択された中性または有害な変異が存在する可能性がある。これら2つの配列の場合では、S13およびA30は独立して異なる親配列から生じ、進化の後続のラウンドにおいて(1つを例外として)固定されたままであったことから、それらが好ましいと結論付けることが合理的と考えられる。
【0288】
(224ペプチドをもたらした)第3のラウンドでは、エラープローンPCRによって第2のラウンドからの2つの223ヒットを多様化させ、次いで25nMのKRas濃度でMACSを実施した。結果として生じたライブラリを、KRas 25nMにおけるFACSによって2回スクリーニングし、3つの一意的配列を得た。ヌクレオチド分析は、224-1、224-2、および224-3が223-1から誘導されたこと、ならびに224-4が223-2から誘導されたことを示した。224-1、224-2、および224-3ペプチドは共通のY7C変異を共有し(以下参照)、224-1は追加のF20Y変異を保有し、224-2は、223-2で以前に観察されたVI4I変異を保有する。224-4の配列は、PPIIヘリックスの始めに挿入された追加のPRRを例外として、223-2と同一である。この一見好ましい変異は、おそらくaPPペプチドの直前にある配列が反復している(GSGSG)ため、PCRの間のプライマースライディングによってライブラリに導入された可能性が最も高い。
【0289】
本発明者らは初め、(PPIIヘリックス内の)このシステインが、KRas内の表面露出システイン残基のうちの1つとジスルフィド結合を形成することによってペプチドの見かけ上の親和性を向上させていたと想定し、224-1、224-2、および224-3に見出されたY7C変異を人為的結果と見なした。この想定は不正確であったと後に判明したが(第2章を参照のこと)、225ペプチドをもたらした後続の(第4の)ラウンドでは、この変異とPRR延長との両方を親ライブラリ鋳型から削除することを決定した。このライブラリは、上記(図5)の重複延長法によって調製した合成鋳型のエラープローンPCRによって調製された。この鋳型は、Y7CおよびPRR延長を例外として、第3のラウンドで見出された変異の全てを、シャッフル(コンビナトリアル)形式で含んだ。また、Y7C変異を含む稀なクローンを富化させ得る過度にストリンジェントな条件を回避するため、KRasの濃度を100nMまで上昇させた。100nMにおける1ラウンドのMACSおよび2ラウンドのFACSの後、11個中9個のクローンが225-1配列に対応し、単一クローンがE19A変異を含み(225-5)、単一クローンがA30P変異を含んだ(225-6)。記録管理エラーのため、このラウンドでの番号付けは非経時的であることに留意されたい。Y7C変異を含んだクローンは存在しなかった。
【0290】
(226ペプチドをもたらした)第5かつ最終のラウンドでは、ヒット鋳型のエラープローンPCRによって前述同様にライブラリを調製した。KRas 100nMにおける1ラウンドのMACSの後、100nMから開始し、次いで50nMに進み、最終的に20nMまで低下するKRas濃度を用いて、3ラウンドのFACSを実施した。この集合は7つの一意的配列を含み、そのうち5つは、224-1と同一なもの(226-4)を含め、Y7C変異を含んだ。残りの2つのうち、一方は225-1と同一であり(226-1)、他方はI14V復帰を除いて同一であった。これらの配列に基づいて、本発明者らのエラープローン変異誘発方策で利用可能なライブラリの多様性を少なくとも所与とすると、親和性の向上にはシステインの獲得が必要であると思われる点に到達したと結論付けられた。ここで進化を停止させ、本発明者らのペプチドをインビトロでより徹底的に特性化することを決定した。225-1配列が225ラウンドにおいて最も一般的なクローンであり、226ラウンドでシステインを含まずに再度現れたため、これをこれらの研究のための代表的なペプチドとして選択した。また、向上した親和性および潜在的に細胞透過を提供し得るという理由で、224-4に見出されたPRR延長を含んだバージョンの225-1を試験することを決定した。このペプチドを225-3と名付けた。
【0291】
実施例3:Ras結合ペプチドのインビトロの特性化
定向進化の取り組みから、さらなる研究のために2つのaPP由来ペプチド、すなわち225-1および225-3を選択した。これらのペプチドは、酵母ディスプレイ系においてナノモル濃度でKRasに結合し、Raf結合に関してRasと競合し、遮断剤(DNAおよび血清)の存在に対して顕著な耐性を示した。この実施例は、大腸菌内でのこれらのペプチドの組換え生成、それらのインビトロの結合特性の特性化、Ras表面上のそれらの結合部位の定義に向けた初期の取り組みを説明する。
【0292】
225ペプチドの発現および精製。定向進化実験の過程中、Schepartzおよび共同研究者らによって彼らの研究のために行われたように、固相ペプチド合成を使用して少数のaPPペプチド(大部分は223および224系列に由来)を調製した(Daniels,D.S.and Schepartz,A.Intrinsically cell-permeable miniature proteins based on a minimal cationic PPII motif.J Am Chem Soc 129,14578-9(2007)、Kritzer,J.A.,et al.Miniature protein inhibitors of the p53-hDM2 interaction.Chembiochem 7,29-31(2006)、Smith,B.A.,et al.Minimally cationic cell-permeable miniature proteins via alpha-helical arginine display.J Am Chem Soc 130,2948-9(2008)を参照されたい)。しかしながら、これらの配列の長さ、およびカップリングの観点(例えば、RPおよびRR)から困難である残基対の保有率に起因して、これらの合成は多くの労力とコストを要し、複数ラウンドのHPLC精製後であってもクリーンな試料を得るのが困難な場合があった。これらのペプチドが全体的に自然発生のアミノ酸からなることを所与として、本発明者らのaPPペプチドを大腸菌内で過剰産生させるための組換え発現系の開発を試みた。この方策は、収率が十分である限り、この長さの配列に関するいくつかの利点を有する:細菌内でのタンパク質発現は概して、固相合成よりも費用および時間がかからず、翻訳エラーの比較的低い比率は、精製除去されなければならない無関係の細胞タンパク質が多く存在するが、密接に関連する副生成物の存在率が低いようなものである。225-1および225-3ペプチドをコードする大腸菌コドン最適化断片(配列は図11を参照のこと)を、N末端HisタグおよびS-タグを含むpET30a発現ベクター内にサブクローニングし、タバコエッチプロテアーゼ(TEV)開裂部位を、このペプチド配列の始まりの直前に配置した。このペプチドのN末端に、(効率的なタンパク質分解を促進するように)TEV部位とPPIIヘリックスの始まりとの間で可動性リンカーとして働き、かつハンドル(システイン-SH基)を提供するGCGトリペプチドを付加して、後続の実験のためにフルオロフォアおよびビオチンを用いたペプチドの標識を可能にした。
【0293】
これらのコンストラクトをBL21 Rosetta pLysS細胞に形質転換させ、これを抗生物質と共にLB内で成長させてプラスミドを維持し、Rasタンパク質の精製に関して記載されているように、IPTGを使用して30℃で発現を誘発した。誘発後、遠心分離によって細胞を採取し、それらを超音波処理によって溶解させ、コバルト親和性クロマトグラフィーを使用して、Hisタグ付きペプチド融合物を精製した。溶離したタンパク質をTEVの添加によって開裂させ、結果として生じた反応物をHPLCによって精製した。
【0294】
225-1ペプチドの精製に関する代表的データは図12に示される。225ペプチドは、2個のトリプトファンおよび4個のチロシン残基に起因して280nmにおいて強力に吸光し、TEV反応のHPLCトレースは、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)によって分析したとき(図12Bおよび12C)、11分において明らかな汚染のない開裂ペプチドを含む強力なピークを示した(図12A)。精製後、このペプチドをジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解させ、アミノ酸配列から予測された消衰係数と、この特定の溶媒の組み合わせについて実験的に決定した補正率(0.91)とを使用して、50%のDMSOと50%のリン酸緩衝液(pH7.5)との混合物中のA280を測定することによって、ペプチドの濃度を判定した。
【0295】
この発現系を用いて得られた225-1および225-3の収量は中程度、すなわち典型的には2リットルの調製物に対して約50nmol(約220μg)ほどであり、これは予備研究には十分な材料であった。しかしながら、アラニン走査のために点変異体を発現する本発明者らの後続の取り組み(III.E節参照)は、大幅に乏しく発現し、時に6リットル超の培養物を必要とし、一部の変異体の場合では一切の発現をもたらさなかった。配列の比較的疎水性の本質のため、分子シャペロンとの同時発現がペプチド収率を向上させるかもしれないと仮定した。したがって、本発明者らのコンストラクトを、アラビノース誘導性プロモーターの制御下でdnaK、dnaJ、grpE、GroEL、およびGroESシャペロンを保有する改変形態のpG-KJE8プラスミド(Clontech)を保有するBL21細胞内で発現させた。200mg/lのアラビノースと併せてIPTGを用いた誘発は、試験した変異体ペプチドのほとんどの収率を劇的に向上させ、生化学研究のために十分な量のアラニン点変異体全種を調製することを可能にした。シャペロンとの同時発現はまた、225-1ペプチドの収率も向上させ(より中程度ではあったが)、この方策は、後続のペプチド全ての生成のために採用された。
【0296】
機能化ペプチドを必要とした実験については、マレイミド結合体(例えば、FITC-マレイミドまたはビオチン-PEG-マレイミド)を用いてN末端付近のシステインを標識した。まず、この精製225ペプチドを、チオールを欠き、マレイミドなどのスルフヒドリル反応性分子と反応する可能性が低い還元剤であるトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)で処理した。次いでこのペプチドを、適切なマレイミド結合体を用いて室温で標識し、続いてHPLCによる精製、そして非標識ペプチドについてはLC/MSによる特性化を行った。典型的には、反応物質の可溶性を補助し、pHがシステインによるマレイミド基の選択的標識の助けになることを確実にするために、これらの反応はDMSOとpH7緩衝液との混合物中で実施した。
【0297】
225-1および225-3ペプチドを緩衝液中に溶解させようと試みたところ、225-1は比較的良好な可溶性(中性pHにおいて最大約100~200μM)を有したが、225-3ペプチドは中性pHにおいて可溶性でなく、低pH(5未満)または高pH(11超)においてマイクロモル濃度でしか可溶化され得なかったことが見出された。しかしながら、予備試験は、225-3ペプチドが225-1よりも強い結合親和性を保有し、いくらか細胞浸透性でもあったことを示した。したがって、225-3を使用して以降の実験の大部分を実施し、中性pHで高濃度が必要とされる事例(例えば、NMR)では225-1のみを使用した。これら2つのペプチド配列間の差異は比較的わずかであるため、また、それらは同様の結合親和性、CDスペクトル、およびRasからのヌクレオチド解離の抑制を示すため、それらを概して225ペプチドと称する。
【0298】
円二色性によるペプチド二次構造の特性化。225ペプチドは、aPP-Mと比べて12個、そしてaPPと比較して15個のアミノ酸置換を含む。これらの変化のほとんどは(結晶構造の検査に基づいて)aPPの折り畳みへの寄与が予測されない残基内で発生するが、アミノ酸の半分近くがaPPから225ペプチドに変異したため、それらの高次構造が同じになることは明らかではなかった。225ペプチドの二次構造に関する初期見識を得るため、225-1および225-3のCDスペクトルを記録した。225-1ペプチドは、pH8のリン酸緩衝液中では容易に溶解できなかったが、225-3ペプチドは、pH5未満およびpH11超のCD研究のために十分に高い濃度でしか調製され得なかった(上記参照)。したがって、pH4.5およびpH12における225-3に関するCDを記録した。そのデータは図13に示される。225ペプチドは、aPP-MのCDスペクトルと同様のCDスペクトルを有するが、(典型的にαヘリックスに対して208nmおよび222nmにおける)2つの最小値は、aPP-Mと比較して225ペプチドに対してわずかに赤方偏移しているようであった。それに加えて、最小値の相対強度は異なる:aPP-Mが208nmおよび222nmにおいてほぼ同一のCDを有する一方で、225ペプチドは210と比較して225においてより強いCDを有する。αヘリックスとの関連で、高い[θ222]/[θ208]比が、非コイル状ヘリックスからコイルドコイル構造への転移にしばしば関連する。こうしたデータは、225ペプチドが溶液中で同様の種類の構造を形成し得ることを示唆する;1つの可能性は、225ペプチドが、(aPPに関して報告されているように)それらのaPP-M親よりも頭-尾ホモ二量体を形成しやすいということである。
【0299】
225ペプチドの安定性に関する見識を得るため、10℃~90℃で222nmにおけるCDを記録した。融解曲線は、試験した3つの225ペプチド試料に関するシグモイド転移を示す;225-3については、pH4.5(57℃のT)と比較して、pH12(46.2℃のT)が折り畳み構造を不安定化させるようであり、中性pHでは、225-1は66.6℃のTを有する。225-1に関するこのTは、aPP-M親のもの(77℃超のT)より低いが、野生型aPPのもの(64.5℃のT)よりは依然として高い。この比較的高い融解転移は、225ペプチドが熱的に安定していることを示唆する。ペプチド高次構造を詳細に理解するには、より直接的な(例えば、NMRまたはX線結晶構造解析からの)構造情報が必要だが、これらのCDデータは、aPPの折り畳みに寄与することが知られる残基のほとんど全てが本発明者らによる進化の過程中に保存された事実と併せて、225ペプチドがそれらのaPP親と同様の構造をおそらく共有することを示唆する。
【0300】
蛍光偏光によるRas-ペプチド結合親和性の数量化。酵母ディスプレイ系により、225ペプチドが中度から低度のナノモル濃度でRasタンパク質に結合することができることが示唆された。Ras-ペプチド結合親和性のより定量的な測定値を得るために、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識されている225ペプチドを用いて蛍光偏光(FP)アッセイを実施した。このアッセイは、溶液中で比較的遅く転回するFITC標識ペプチドが、早く転回するものよりも高い異方性を示すように、励起光に対して平行な面と、励起光に対して直角の面との両方で蛍光を測定することに依存する。225ペプチドはRasタンパク質よりも著しく小さいため(21kDaと比較して4.5kDa)、溶液中で遊離しているペプチドからRas結合ペプチドへの転移は、蛍光偏光の増加を示すと予測される。225-3ペプチドのFPを様々なKRas(G12V)・GppNHp濃度で測定し、20nMの解離定数(K)を判定した(図14)。この親和性はB-Raf RBDに対するHRasの親和性と比較可能であり、B-Raf RBDに対するKRasの親和性の2倍強力である。この結合曲線に関するヒル係数は1.0であり、結合が非協同性であることが示唆された。これらのFP実験は決まって乱雑データを生成し、クリーンな曲線を得るために多くの複製が必要であったが、親和性は再現性よく本明細書に報告される範囲内であったことが注目された。これは、225-1系列からのペプチド(すなわち、N末端PRR延長を欠いたもの、第I章参照)に特に当てはまった。したがって、継続して、225-3およびその誘導体を用いたFP実験の残部を実施した。
【0301】
次に、225-3ペプチドおよびGDP形態のKRas(G12V)、ならびにGppNHpおよびGDP形態のKRas(野生型)に関する結合曲線を測定した。Rasの変異状態はペプチド結合親和性に強い影響を及ぼさないように見えたが、GppNHpヌクレオチド状態は、両方のタンパク質に関してGDP状態よりもわずかに好ましかった。これらのペプチドについて観察されたヌクレオチド選択性は、典型的にはGTP状態に対して100倍超の選択性を示す、自然発生のRas結合タンパク質のものよりも著しく低い。しかしながら、本発明者らの初期の定向進化の取り組みの間に明示的な選択性要件が含まれなかったのに反して、これらのタンパク質は、この特性を保有するように進化した。より最近の酵母ディスプレイ実験では、KRas・GDPと比べてKRas・GTPに対して高い結合比を有するペプチドをスクリーニングすることによって、ヌクレオチド選択性を向上させようと試みた(第3章参照)。
【0302】
3つのRasタンパク質は全て、Raf RBDに対する親和性にほんのわずかな差異があるが、ほとんどのRasエフェクターに結合することができる。225-3ペプチドのアイソフォーム選択性を判定するために、KRas、HRas、およびNRasのGppNHp結合形態を用いてFPを実施した(図14)。KRasに対する225-3のK(20nM)は、HRasおよびNRasに対するもの(45nM)よりわずかに高いだけで、3つのRasアイソフォーム全てが同様の親和性で225-3ペプチドに結合することを示す。
【0303】
Rasタンパク質は、GTPアーゼの大きなファミリーに属し、その一部は、Rasに対して著しい構造および配列の類似性を共有する。これらのタンパク質のいくつかは、多くの細胞型にまたがるハウスキーピング機能に関与しているため、Ras抑制剤の重要な特性の1つは、Rasタンパク質とそれらの密接なファミリーメンバーとを差別する能力である。225ペプチドの選択性を判定するために、全てがRasタンパク質と同じGTPアーゼ折り畳み構造を共有するGppNHp結合Rap1a、RalA、およびRab25を用いて、FPアッセイを実施した。Rap1aおよびRalAは、一次配列においてRasタンパク質に最も近い2つのタンパク質であり、一方でRab25は、Rasに対して30%未満の配列同一性を有する遠縁のRabタンパク質ファミリーに属するため、Rap1aおよびRalAを選択した。Rap1aは、Raf RBDを含む一部のRasエフェクターに結合することができ、同様に一部のRapエフェクタータンパク質はRasに結合することができるため、Rap1aは本発明者らにとって特別な関心の対象であった。RalAおよびRap25は、認識可能な程度には225-3に結合せず、Kは、Rab25に関しては約10μM、そしてRalAに関しては10μM超であった(図14)。Rap1aは、わずかに高い親和性(3.5μM)で225-3に結合するようであったが、依然としてRasよりも100倍超弱かった。これらのデータは、225-3ペプチドが、進化実験中の特異性に関する明示的な選択の欠如にもかかわらず、密接に関連するファミリーメンバーよりもRasタンパク質に対して顕著な特異性を有することを示唆する。
【0304】
SPRによるRas-ペプチド結合親和性の数量化。Ras-ペプチド結合親和性の独立した測定値を得るために、表面プラズモン共鳴法(SPR、しばしばBiacoreと称される)を使用した結合アッセイを実施した。このアッセイは、目的の分子を金の薄板の表面上に固定化し、プリズムを通してこの薄板に偏光を導くことを伴う。これは、全内部反射の条件下で行われ、ここで、表面から反射される光の強度は、金表面のいずれかの側にある材料の屈折率に依存する。表面における比較的小さな変化、例えば固定化したリガンドへの生体分子の結合などは、屈折率を変化させ、反射光の強度の変化をもたらす。SPRシステムは、目的の分子を金の薄板上に固定化し、次いで、反射光を連続的に記録しながら第2の分子をチップ上に流すことによって機能する。固定化分子と「自由」分子との間の結合事象が共鳴単位(RU)の増加として検出され、これを使用して結合事象の動態学的パラメータおよび熱力学的パラメータの両方を測定することができる。この方法の利点の1つは、「自由」分子は純粋にその質量によって検出され、したがっていかなる標識も必要としないということである。固定化分子は、チップ上で共有結合的に(例えば、アミノまたはチオール基の非特異性カップリングによって)捕捉されても、非共有結合的に(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン対を用いて)捕捉されてもよい。
【0305】
本発明者らの初期方策は、225ペプチドをチップ表面上に固定化し、遊離した非標識のRasタンパク質をその上に流すことであった。この設定の利点は、SPRシステムによって検出されるRUシグナルは質量にほぼ比例することから、Rasタンパク質は、ペプチドよりも質量において約5倍大きいため、結合するとより強力なシグナルを生成すると予想されるということである。ストレプトアビジン官能化金チップを選択し、システインハンドル(上記参照)においてビオチン化されている225-3ペプチドを固定化した。このペプチドは、基線RUシグナルの増加によって判定した場合に成功裏にチップ上に捕捉されたが、非標識Rasタンパク質を添加すると、結合シグナルの認識可能な増加は観察されなかった。この原因は直ちに明らかにはならなかった;本発明者らの最初の想定は、ビオチン化により何らかの理由でペプチドがRasに結合できないようになったか、またはRas-ペプチド結合がビオチン-ストレプトアビジン結合と(例えば、立体的理由で)適合しなかったということであった。しかしながら、この説明は、ストレプトアビジンビーズを使用し、同じビオチン化225-3ペプチドを使用して、細胞ライセートからの精製KRasおよびRasの両方の結合に成功したプルダウンアッセイと一致しなかった(図18参照)。
【0306】
現在の知識を所与として、ペプチド二量体モデルに関するこれらの観察を説明することができる:ビオチン化ペプチドをストレプトアビジンチップに導入すると、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用の極端に高い親和性(約50fM)10が、ビオチン部分の全ての固定化を引き起こした。ストレプトアビジンは、4つのビオチン結合部位を有するホモ四量体タンパク質であり、結晶構造の検査により、2つのペプチドが、依然として頭-尾aPP様ホモ二量体構造にありながら、隣接するビオチン結合部位にうまく結合することができなかったのは明らかであった。ビオチン-ストレプトアビジン相互作用は、これらの実験の時間尺度では本質的に不可逆的であるため、ホモ二量体は、ストレプトアビジンチップに導入されると効果的に引き裂かれ、したがってRasタンパク質に結合することができない状態で固定化された可能性がある。この説明により以下の予測が立つことが注目される:ビオチン化ペプチドの固定化、続いて非標識ペプチドとのインキュベーションは、チップ表面上でRasに結合することができる二量体の形成をもたらすはずである。
【0307】
これらの実験の際、この現象の原因は未解決のままであり、Rasタンパク質を固定化し表面上に遊離ペプチドを流す代替のSPR手法を進めた。酵母ディスプレイに関して第I章に記載したSfpビオチン化Rasタンパク質を使用し、GppNHp結合状態およびGDP結合状態の両方を試験した。Rasタンパク質はチップ上に安定して捕捉され得、非標識225-3ペプチドに対して安定した結合を示した(図15)。SPR親和性実験は、典型的には、2つの方法、すなわち「複数サイクル」試験(この試験では、タンパク質が固定化され、単回注入のリガンドが表面上に流され、その後チップが再生され、その結果、タンパク質およびリガンドの新たなバッチが導入され得る)、および「単一サイクル」試験(この試験では、タンパク質が固定化され、複数回の注入が連続して実施される)のうち1つで実施した。単一サイクル試験は、複数サイクル試験よりも高速でコスト効果が高く、結合事象のオフ速度がオン速度と比べて遅い限り(すなわち、結合親和性が高いときに)正確なデータをもたらすものであり、本発明者らの研究に使用された方法であった。
【0308】
GppNHp状態およびGDP状態の両方が高い親和性で225-3に結合し、それぞれ2.5nMおよび0.46nMの解離定数をもたらした。曲線の目視検査および計算される動態学的パラメータの両方から、GTPよりもGDP状態のRasに対して解離が遅いことは明らかであり、この観察は、酵母ディスプレイを使用して実施されたオフレートセレクション実験と一致する。両方の曲線が2ステップ結合モデルによって最もよく当てはめられたことが見出され、このことは本発明者らの予想に反し、これらの実験の結果は、蛍光偏光からの結果ともいくらか食い違った:計算された親和性は、FPによって見出されたものよりも1桁高く、ヌクレオチド選択性は逆転していた。
【0309】
これらの相違の正確な原因は本発明者らにとって完全に明らかではないが、このペプチド二量体モデルは、システム内に複数の相互依存的な平衡が存在するはずであると予測するため、何らかの見識を提示し得る。ペプチドは様々な濃度(1~100nM)で調製され固定化チップ上に注入されるので、ペプチドの濃度がより高ければ、より高い割合のペプチドが二量体(Ras結合)状態で存在することになるため、Rasに対するより強力な有効Kが認められるであろう。このことは、添加されるペプチドの濃度が、Rasに結合するために利用可能なペプチド二量体の有効濃度を正確に反映しない場合があるため、結合曲線およびデータ当てはめの歪曲をもたらし得る。FP実験では、ペプチドは一定濃度に保たれ、そのためこの作用の影響をより受けにくい場合があるが、単量体ペプチド、二量体ペプチド、およびRas-ペプチド二量体複合体についてはFPが異なると予想されるため、複数の状態がバルクFPシグナルに寄与している可能性もある。したがって、これらの結合アッセイの両方が、それらから導かれ得る結論を制限する注意点を保有し、単にペプチド-Ras相互作用は中度から低度のナノモル範囲内にあると主張するのが、おそらく最も安全である。
【0310】
225-3ペプチドのアラニン走査変異誘発。次に、Ras-ペプチド相互作用のより詳細な理解を得ようと試みた。上で考察したように、本発明者らのCDおよび進化結果は、225ペプチドはaPPの全体的な折り畳み構造を保持したが、Ras結合に関与するペプチド残基は容易に明らかではなかったことを示唆した。aPPライブラリはαヘリックスの外向きの面で多様化されたため、また、進化中に現れた変異の本質的に全てがこの領域内に位置していたため、225ペプチドは、そのαヘリックス上の残基を主に介してRasに結合すると推測したいところである。この仮説を試験するため、各々が単一のアラニン点変異を含んだ225-3のバリアントを試験することによってアラニン走査変異誘発を実施した。アラニンは、小さいにもかかわらず、ほとんどのアミノ酸の高次構造の嗜好性を模倣するため、この種類の実験で使用される最も一般的なアミノ酸である。アラニンは、225ペプチド二次構造の大部分を構成すると思われるPPIIおよびαヘリックスの両方で概して安定化作用があるため、特にこのペプチドに関してとりわけ好適である。
【0311】
変異誘発のために、10個の残基:PPIIヘリックス内で2個、ループ内で2個、そしてαヘリックス内で6個を選択した(図16参照)。これらの変異体のプラスミドは、部位特異的変異誘発PCRを使用して構築し、上記のように発現させ精製した。これらのうち9つが発現および精製され得たが、これらの一部は、シャペロンとの同時発現に絶対的に依存した。1つの変異体、すなわちE15Aのみ、シャペロンの存在下でも発現され得なかった。この残基はαヘリックス上にあり、外向きであると予測され、このペプチド二量体モデルは、この残基と近隣のペプチド上の残基との間のいかなる相互作用も予測しないため、この乏しい発現の理由は現在明らかではない。
【0312】
一旦精製したら、アラニン変異体をFITCで標識し、FPによって試験した(図17)。アラニン走査に典型的に期待されることは、研究される特性に影響する一部の変異体、およびほとんどまたは全く影響を及ぼさない他の変異体を見出すことである。予想外なことに、試験した全ての変異体が、結合を少なくとも4倍妨害し、ほとんどが、測定された親和性の少なくとも10倍の低減を引き起こした。これらの変異のうちの3つ(I14A、W21A、およびW25A、全てαヘリックス上)が、CDによって査定された場合に、ペプチド二次構造に対して著しい不安定化作用を及ぼすようであった。これらのデータに関する本発明者らの初期解釈は、他の7個の残基全てがRasへの結合に関与していたというものであり、これは、ペプチドが、αヘリックスを介するだけでなく、PPIIとα-ヘリックスとの両方からの接点を有するペプチドの1つの「側面」を提示することにもよってRasに結合することを示唆した。このペプチド二量体モデルに照らすと、これらのデータは、試験した残基の一部はRasに接触するが、その他は二量体の安定化に関与するという、代替的な説明を示唆する。実際に、aPP二量体構造(図23)の検査は、試験した残基のうちのいくつかは、単量体間の接点の形成におそらく関与することを示す:(結合を安定化させるように見えた2つのアルギニンを含む)PPIIヘリックスは、反対側のペプチド上の酸性残基のパッチに近接しており、W21残基対(これらはaPPにおいてTyrである)は、πスタッキングのために互いから適切な距離にあるようである。したがって、アラニン走査の解釈は、これらのデータを所与として、Rasに直接結合する残基と、ペプチド-ペプチド二量体化を安定化させる残基とを区別する能力の欠如によって、いくらか複雑化されている。さらに、ペプチドがホモ二量体内にあるため、アラニン走査変異体は、単一の残基ではなくむしろ一対の残基の役割を調べたということに留意されたい。
【0313】
生物活性分子を用いたアッセイを実施する際、活性化合物に可能な限り類似していながら標的活性の一部または全てが欠如した陰性対照分子を有することが有益である。本発明者らの研究に関しては、これは理想的には、ペプチド構造を破壊することなくRasへの結合を抑止する単一変異を有する225ペプチドである。アラニン走査系列からは、3つのペプチド、すなわちW21A、W25A、およびN26Aが、5μMを超えるK値を有した。上で考察したように、トリプトファン変異体の両方が、CDによって判断した場合に、225-3親と比較して不安定化されたようであった。しかしながら、N26A変異体は、225-3と比較して未変化であったCDプロファイルを有し、したがって、このペプチドを、本発明者らの後続の研究において陰性対照として使用するために選択した。
【0314】
癌細胞ライセートにおけるプルダウンアッセイ。このように、これまでのデータは、225ペプチドがナノモル親和性および良好な特異性でRasタンパク質に結合することを示す。しかしながら、これらの実験は全て、組換え発現されたRasタンパク質を用いて実施されたものであり、これらのタンパク質が(翻訳後修飾、折り畳み構造の差異、パートナータンパク質の関与などに起因して)生細胞内のRasの性質を正確に反映しなかったという可能性が残った。225ペプチドが癌細胞内の内在性Rasタンパク質に結合することができたかどうか、そして225ペプチドがこうした内在性タンパク質とエフェクターとの結合を妨害することができたかどうかを試験するために、変異型のRas(G12V)を保有し、かつ生存のためにRas活性に依存することが示されているCapan-1膵臓腺癌細胞株のライセートにおいて、プルダウンアッセイを実施した。
【0315】
これらの細胞を標準的方法で成長させ、それらを非変性条件下(1%(v/v)の非イオン性洗浄剤Triton X-100を含有する緩衝液、追加の詳細については「方法」を参照のこと)で溶解させた。このライセートを、ビオチン化225-3ペプチド、ビオチン化225-3 N26Aペプチド、またはDMSO対照と共にインキュベートし、次いで、このペプチドを磁性ストレプトアビジンコーティングビーズで捕捉し、これらの試料を、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)ゲル上に泳動させ、続いてニトロセルロース膜に移し、Rasに関するウェスタンブロッティングを行った。これらのペプチドがRasエフェクターと競合することができたかどうかを試験するため、過剰のRaf RBDと共にプレインキュベートされているライセートを用いて、同じ実験一式を並行して実施した。この処理は、ほぼ全てのRas分子が(高いRas-Raf親和性に起因して)Rafに結合することにつながると予想され、Rafおよび225ペプチドが結合部位を共有する場合、ペプチドによってプルダウンされるRasの量は減少すると予測される。
【0316】
この実験の結果は図18Aに示される。このライセートは、インプットレーンによって判断した場合に著しい量のRasを含有したが、Rasは、ビーズ単独によっても、225-3のN26A変異体の存在下のビーズによってもプルダウンされなかった。225-3の活性型はRasをプルダウンしたが、ライセートをRaf RBDと共にプレインキュベートしたときはプルダウンしなかった。これらのデータは、225ペプチドがヒト癌細胞株において内在性Rasに結合することができること、およびペプチドがRafとの結合部位を共有するようであることを実証し、225ペプチドが、インビボのRasエフェクター結合を抑制する能力を有し得ることを示唆する。
【0317】
この見かけ上の競合は、Rafおよび225-3が重複する結合部位を共有することの結果ではなく、むしろ、Rasを凝集させて捕捉したり、あるいはビーズ上のビオチン結合部位を遮断したりするRafの能力に起因したという可能性がある。対照実験として、このプルダウン手法を逆転させ、代わりに、グルタチオンビーズを使用して、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)でタグ付けされているRaf RBDを捕捉した。GTP結合形態のRasしか認識可能な親和性でRafに結合することができないため、このアッセイは、癌細胞内のRas活性状態を判定するためにしばしば使用される14。Rasは、グルタチオンビーズ単独によってプルダウンされなかったが、GSTタグ付きRafの存在下ではプルダウンされ、225-3のN26A変異体とのプレインキュベーションはこのプルダウンを妨害しなかったが、225-3はそれを完全に抑止した(図18B)。これは、II-9Aの結果を裏付け、225ペプチドが内在性Rasへの結合のために基準のRasエフェクターと競合することができることを示す。
【0318】
Ras上の225結合部位の同定。上に示されるプルダウンデータは、225ペプチドはRas結合のためにRafタンパク質と競合することができるため、225ペプチドはRasエフェクタードメインまたはその付近で結合することを示唆する。しかしながら、この競合は、Rafおよび225ペプチドが非重複部位に結合するが、他のリガンドが同時に結合することを防止するのに十分に異なるRasの明確に異なる高次構造に結合する、アロステリック機構の結果であるという可能性もある。したがって、Ras表面上の正確な225ペプチド結合部位を定義しようと試みた。Rasエフェクタータンパク質の特徴の1つは、Ras上のヌクレオチド結合ポケットからのグアニンヌクレオチドの解離に干渉するその能力である。225ペプチドがこの特性を共有するかどうかを査定するために、グアニンヌクレオチドの蛍光類似体に依存する、Johnおよび共同研究者ら15によって元々は報告されたRasヌクレオチド解離アッセイを実施した。Rasに結合すると蛍光が増加することで知られる、GppNHpのN-メチルアントラニロイルエステル(mantGppNHp)を合成した。
【0319】
ヌクレオチド解離抑制アッセイを、「熱い」ヌクレオチドと結合したタンパク質に「冷たい」ヌクレオチドを加えることを伴う古典的な32P標識ヌクレオチド実験と同様の様式で実施した。Ras・GppNHpに関して記載されているようにアルカリホスファターゼを使用して、KRasにmantGppNHpを負荷し、次いで、大過剰のGppNHpを添加する前に、ペプチドもしくはRaf RBDと共に、または何も用いずにインキュベートした。この過剰の非標識ヌクレオチドは、mantGppNHpの解離を効果的に不可逆的にし、したがって、曲線を指数関数的減衰に当てはめることによって、解離速度定数が測定され得る(図19)。
【0320】
追加の「冷たい」ヌクレオチドの非存在下では、蛍光レベルは比較的安定しており、光退色、タンパク質アンフォールディングなどが、実験の時間経過を通してシグナルの著しい低減につながらなかったことが示された。過剰のGppNHpを添加すると、蛍光は指数関数的な様式で減少し、これは、以前に報告されているように15、Raf RBDの導入によって抑止された。225-1または225-3のいずれの添加も同様の作用を有し、ヌクレオチド解離の見かけ速度をRaf RBDのものと比較可能なレベルまで減速させたが、225-1 N26Aまたは225-3 N26Aの添加は、解離の速度を減少させず、この作用がRasへの結合に依存したことが示された。このように、225ペプチドは、Rasからのヌクレオチドの解離を抑制するようであり、それらの結合部位がヌクレオチド結合ポケットと重複すること、または、ペプチド結合が、タンパク質がより低いヌクレオチド親和性を有する高次構造に接近することを制限するということのいずれかが示唆される。
【0321】
Ras-ペプチド相互作用のより詳細な理解を発展させるため、溶液NMR実験を実施して、各分子上の結合に関与した残基を同定した。本発明者らが使用した方法は、分子内の化学的に明確に異なるN-H結合(タンパク質の場合、主にアミドN-H結合)を検出し、N-H対におけるプロトンおよび窒素原子の個別のシフトに従って位置付けられるクロスピークの2Dプロットを生成するNMR技法である、H-15N異核量子スピン相関(HSQC)分光法であった(例えば、図20参照)。タンパク質全体の化学環境における可変性のため、ほとんどのN-H結合は適切な条件下で互いと区別することができ、いくつかの追加の測定法(例えばH-13C HSQC、HCCH TOCSYなど)の助けを借りて、H-15N HSQC クロスピークをタンパク質内の特定の残基に割り当てることができる。こうした割当が既知であれば、リガンドの存在下および非存在下のHSQCスペクトルを比較し、シフトするクロスピークを同定することによって、リガンドに結合する際のタンパク質高次構造の変化を、タンパク質内の特定の部位にマッピングすることができる。
【0322】
KRas(野生型)GDPに関する割当は2012年に発表され、新規のRasタンパク質の割当なしにHSQC研究を実施することが可能となった。KRasタンパク質を前述同様に大腸菌内で発現させたが、15NHClを唯一の窒素源として含む最少合成培地を使用した。このタンパク質を精製し、NMR割当に関して報告された緩衝液中に交換し、次いで、クライオプローブを備えたBruker 700MHz NMR分光計でH-15N HSQC測定を実施した。これらの研究については、比較的大きなタンパク質からのHSQCシグナルの質を向上させる標準的なH-15N HSQC実験の変種である、横緩和最適化分光法(TROSY)を使用した。
【0323】
15N標識KRasのH-15N HSQCスペクトルは図20Aに示される。この測定は、以前に報告されたスペクトルと良好に対応する、明瞭で明確に異なるクロスピークをもたらした。ペプチド結合の際に化学環境の変化を経験したKRas上の残基を同定するため、15Nを欠くためにHSQCスペクトル内で可視的でない非標識225-1ペプチドの存在下で、同じ測定を記録した。上で考察したように、225-3は、これらのNMR試料の調製に必要とされる濃度(100μM超)で可溶性でないため、これらの実験には225-1を使用した。2~3当量のペプチドが(本発明者らの吸光度に基づく数量化によると)飽和の実現に必要であったことが見出され、この観察は、当時は意味をなさなかったが、現在は、1:2のRas:ペプチドの結合化学量論を予測するペプチド-二量体モデルによって説明することができる。Ras-ペプチド複合体のHSQCスペクトルが図20Bに示され、自由なRasおよびRas-ペプチドのスペクトルが図20Cに重ね合わされている。
【0324】
この重ね合わせは、「自由」スペクトルと結合スペクトルとの間でシフトする多数のクロスピークによって証明されるように、Rasに結合すると著しい数の残基が化学環境の変化を経験することを示す。(13Cおよび場合によりH標識を必要とする)さらなる測定なしにRas-ペプチドスペクトル内のピークの同一性を知ることは不可能であるが、シフトする自由スペクトル内の(割り当てられた)ピークを同定することにより、ペプチド結合の際にどの残基が影響を受けるかに関する初期観念を発展させることができる。ペプチドへの結合に際してシフトした自由スペクトル内のクロスピークを手作業で表にし、次いで、発表された割当を使用して、それらをRasの結晶構造にマッピングした(図21)。これらの残基は、エフェクタータンパク質と複合したRasの共結晶構造によって定義されるように、Rasエフェクタードメインと相当な重複を共有したRasの1つの面上で、明確に定義されたクラスター内に位置していたことが見出された。Rasタンパク質上の他の箇所の残基は、HSQCスペクトル内のそれらに対応するクロスピークが認識可能な程度にシフトしなかったことから、影響されなかったようであった。このように、これらのデータは、225ペプチドがRas表面上の特定の結合部位に結合すること、および、エフェクター結合を遮断する225ペプチドの能力と一致して、この部位がエフェクタードメインと重複することを示唆する。
【0325】
次に、非標識Rasの存在下または非存在下で15N標識225のHSQCスペクトルを比較することにより、類似のNMR実験を225ペプチドに対して実施しようと試みた。このタンパク質に対するクロスピーク割当は当然確立されていないが、ペプチドの比較的小さなサイズ(225-1については35アミノ酸)を所与として、これらの割当の実施は単純であることが見込まれた。まず、KRasに関しては15N含有最少培地内で225-1ペプチドを発現させ、Ras実験に使用したものと同じ緩衝液中で遊離ペプチドのHSQCスペクトルを記録した。これにより、互いと重複するようであったクロスピークをいくつか含んだが、比較的クリーンなスペクトルが得られた(図22A)。次いで、KRasの存在下で15N標識225-1ペプチドのHSQCスペクトルを記録した。予想外なことに、このスペクトルは、ペプチド単独試料の2倍の数のピークを含んだ(図22B)。
【0326】
この観察は、KRasは非標識であり(15Nの天然存在量は全窒素の0.5%未満である)、新たなクロスピークのほとんどは自由スペクトルまたはペプチド結合Rasスペクトルのいずれとも重なり合わなかったことから、タンパク質からの汚染シグナルによって説明され得ない。これらのデータはまた、ペプチド単独スペクトル内に存在するピークの多くがRas-ペプチドスペクトルには存在しなかったことから、部分飽和とも一致しない。別の説明は、ペプチドが2つの高次構造でRasに結合することができるというものである。これは形式上可能だが、Ras-ペプチドスペクトル内のクロスピークの全てに対して強度がかなり均一に見えることを所与とすると、可能性は低い。これは、2つの高次構造がおよそ等しい割合で高密度である場合にのみ観察されるであろうが、それにはそれらが同様のエネルギーをもつことが必要であり、これは、明確に異なるHSQCスペクトルを生じさせるのに十分に異なる2つの状態では見込みがない。
【0327】
代替的な説明は、Rasタンパク質が、225ペプチドに対して同時に占有され得る2つの明確に異なる結合部位を含むというものである。これは、各アミノ酸につき2つのクロスピークの存在と一致し、少なくとも2当量のペプチドがRasを飽和させるのに必要とされるという観察とも適合する。Ras HSQC実験が単一の結合部位を示唆し、FPアッセイが1.0のヒル係数を有する典型的なシグモイド結合曲線を示したことから、このモデルは見込みがないと最初は見なされた。しかしながら、aPPおよびその類縁体の一部は溶液中で頭-尾二量体を形成することができることを思い起こし(図23、225ペプチドが二量体としてRasに結合したという可能性を考慮した。これは、15N標識ペプチドHQSCスペクトルと一致する:頭-尾ホモ二量体は対称的であり、したがって2つの単量体は、同一の化学環境を経験し、ひいては同一のH-15Nクロスピークを保有すると予測される。しかしながら、Rasは対称的ではないため、Rasに結合すると、ペプチド二量体の対称性が破壊され、2つの単量体は異なる環境を経験し、スペクトルの分割が引き起こされる。
【0328】
二量体として結晶化するaPPの結晶構造が図23に示される。このモデルに照らすと、本章の前節で考察された、これまでの混乱させるいくつかの観察が意味をなす。特に興味深いのは、定向進化の取り組み中のY7C変異の再発であった:aPP構造内の対応するチロシンの検査により(図23C)、反対側の単量体上のY7残基が密接状態(aPPの場合はπスタッキング)になることが明らかであり、この位置におけるシステインの存在が、ペプチド二量体を安定化させるジスルフィド結合の形成につながり、それによってRasに対するその親和性が上昇するということがもっともらしい。
【0329】
タンパク質複合体の構造特性化のための代表的基準はX線結晶構造解析であり、これは、原子分解において詳細かつ完全な構造を提供することができる。Verdine研究室の結晶学者(Seung-joo LeeおよびRou-Jia Sung)と協力して、NMRによって研究されたKRas-225-1複合体に関して記載されているように調製した、KRas-225およびHRas-225複合体の結晶化を試みた。今までのところ成功は収められていないが、この分野における本発明者らの取り組みは継続中である。
【0330】
このペプチド二量体モデルが意味することの1つは、225ペプチドが、Rasに対する結合のために十分に最適化されていないということである。これは、Rasタンパク質は非対称であるのに反して、各残基(ひいては進化中に試験された各変異)は、Ras結合二量体内の2つの位置で現れなければならないという、ペプチドホモ二量体によって課される制約の結果である。したがって、好ましいアミノ酸変異が、ペプチド二量体を横断して対応する部位に関して適合性でないために禁止される位置が、Ras-ペプチド結合界面内に複数存在する可能性がある。これは、ペプチドヘテロ二量体が、225ホモ二量体に対して親和性を得る能力を有し得ることを予測する。
【0331】
実施例4:225ペプチドの親和性および特異性の向上
第II章で提唱したペプチド二量体の仮説は、Rasが非対称であり、したがってペプチドホモ二量体内の同じアミノ酸であるように制約される接触残基に対して明確に異なる嗜好性をおそらく有することから、225ペプチドがRasに対する結合のために十分に最適化され得ないことを示唆する。本章では、酵母表面ディスプレイを使用して二量体の仮説を試験するため、また、225-1とヘテロ二量体化し、225-1ホモ二量体と比べて向上した親和性でRasに結合することができるペプチド変異体を同定するための、本発明者らの予備的な取り組みを考察する。また、225ペプチドと比べて向上したRas・GTP対Ras・GDPに対する選択性を保有するペプチド変異体を同定するための本発明者らの取り組みも考察する。
【0332】
酵母表面上のN26A変異体の補完。ペプチド二量体の仮説が正しければ、1つ予測されることは、ホモ二量体では不可能である最適化された接触に起因して、Rasに対する向上した結合性を有するペプチドヘテロ二量体が存在するはずだということである。例えば、Ras表面上の1つのペプチド結合ハーフサイトとの関連で非常に重要な接点を形成するいくつかの残基が225ペプチド内に存在する可能性がある。この接点に、この部位におけるいかなる変異も結合を抑止するほど十分な安定化作用がある場合、パートナーペプチド上の対応する残基は、異なるアミノ酸が好ましかったとしても、同じアミノ酸であるように制約されるであろう。この事実の結果が、最も強力なペプチドホモ二量体はおそらく、各ハーフサイトにおけるアミノ酸嗜好性間の最良の妥協点を表す配列であるというものである。これが事実である場合、225ペプチドは、ホモ二量体として結合することの制約に起因して、潜在的に好ましい相互作用を犠牲にしている場合がある。
【0333】
この概念を表す代替的な方法は、ペプチド内の有害変異はおそらく、1つのハーフサイトに関して他よりも強力な作用を有するというものである。例えば、N26A変異がRasに対する結合を少なくとも100倍抑止することを示したが、(Rasは非対称であるため)ホモ二量体内の2つのN26残基が異なる環境を経験し、明確に異なる残基に結合しなければならないことを所与とすると、それらがこの作用に等しく寄与する可能性は低い。ただし、この変異が225ペプチドの実際の二量体化を妨害しないとすれば、N26A変異が1つのハーフサイトにおいて著しい不安定化作用を有し、その他においては弱性、中性、またはさらには陽性の作用を有するということが、よりもっともらしい。これが事実である場合、225-1および225-1 N26Aのヘテロ二量体は、N26Aホモ二量体と比べて著しく向上したRasへの結合性を有するはずであると予測される。
【0334】
ペプチドヘテロ二量体のライブラリをスクリーニングするための方法は、より強力なRas結合剤を同定する能力を大幅に向上させるであろう。225ホモ二量体化の動態および熱力学は現在知られていないが、本発明者らは、単量体交換が十分に急速であれば、(酵母表面上で提示された)225変異体と(トランスで供給され、提示された変異体と共にヘテロ二量体に交換させられた)225-1ペプチドとの間のヘテロ二量体を用いた酵母表面ディスプレイを実施することが可能となるかもしれないと思い当たった。225-1および225-1 N26Aは225-1 N26ホモ二量体よりも良好にRasに結合することができるはずであるという予測に照らして、225-1または225-1 N26Aのいずれかを発現する酵母細胞を使用し、トランスで遊離225-1または225-1 N26Aペプチドを提供して、この考えの試験を試みた。いくらかの最適化の後、酵母細胞を中マイクロモル濃度の遊離ペプチドと共にプレインキュベートし、続いて(過剰のペプチドを除去するために)ペレット化し、その後Rasと共にインキュベートすることによって、ヘテロ二量体形成が可能なようであることを見出した(図24)。
【0335】
KRas、およびこの結合は、遊離225-1または225-1 N26Aとのプレインキュベーションによる影響を比較的受けなかったようであった。225-1 N26Aを発現する酵母細胞は、インビトロデータ(第II章)と一致して、検出可能なレベルでRasと結合せず、遊離225-1 N26Aと共にプレインキュベートされたときにも結合しなかった。しかしながら、遊離225-1と共にプレインキュベートされたとき、これらの細胞は、225ペプチドが二量体としてRasに結合するという仮説と一致して、Rasに対して強力な結合を示した。これらのデータは、Rasに結合する225-1 N26A変異体の能力の部分救済しか示さず、したがって、N26A変異体が両方のハーフサイトに対して等しく有害であるという可能性を正式に否定し得ないということに留意するのが重要である。しかしながら、本発明者らの二量体交換技法は不完全に起こる可能性がある:酵母によって提示されるペプチドは細胞表面に制約され、したがってこれらのペプチドの局所濃度は高く、これは、提示されたペプチドのホモ二量体化は、溶液中の遊離ペプチドとのヘテロ二量体化と比べて強く好まれるはずだということを意味する。表面提示ペプチドのどの部分がヘテロ二量体形態と対比してホモ二量体形態で存在するかを判定することはできないため、表面提示225-1 N26Aペプチドを遊離225-1と共にインキュベートすると観察される結合性の上昇を定量的に解釈するのは困難である。しかしながら、表面提示225-1ペプチドが225-1 N26Aと共にプレインキュベートされるときに結合性の著しい減少はなく、これは、ヘテロ二量体が225-1ホモ二量体よりも著しく弱い場合には予想されないであろう。ヘテロ二量体形成がこの特定の事例において特に非効率的であった可能性が残るが、ペプチドが逆実験で使用したものと同一であることを所与とすると、この可能性は低いと考えられる。このように、これらの実験は、225ペプチドは、ヘテロ二量体内で結合したとき、N26A変異の機能損失を少なくとも部分的に補完することができると主張する。
【0336】
上昇した親和性でRasに結合するヘテロ二量体の同定。酵母表面ディスプレイを使用してヘテロ二量体を提示することができるという観察に励まされ、225-1ホモ二量体よりも高い親和性でRasに結合する変異体/225-1ヘテロ二量体を同定するために、補完スクリーンを実施した。実験的方策は、N26A補完研究に関して記載されている通りであり、225-1と共に酵母細胞をプレインキュベートし、Rasを添加する前にペレット化した。225-1に対して非常に弱い結合をもたらす、5nMのRas濃度を選択した(図26)。この実験では、配列全体にわたって隣接する残基対を系統的に変動させた225-1ペプチドに基づく走査変異誘発ライブラリを使用した(図25)。このライブラリの理論的ライブラリサイズは(アミノ酸多様性の観点から)およそ12,400メンバーであり、これは、酵母に形質転換され得るライブラリサイズと比べて小さい。しかしながら、エラープローンPCRによって設計されたライブラリは、ある特定の置換に対して偏る傾向があり、あらゆる位置のあらゆるアミノ酸変異、ましてや隣接部位における可能性のあるあらゆるアミノ酸対を網羅する見込みがないのに対して、この方策は、配列全体にわたる変異の系統的評価を可能にする。したがって、この手法は、この実験のための配列空間の試験に優れた方法であると見なした。
【0337】
走査変異誘発ライブラリを使用して、KRas・GTP 5nMで補完スクリーンを実施し、3ラウンドの分取後、遊離225-1とのプレインキュベーションに依存する様式で、225-1よりも強力にRasに結合するように見えた集団を単離した(図26A)。この集団の配列決定により、それが、S13C/I14E二重変異を有する単一クローンから主になっていることが明らかになった。225-1と比べて向上した特性を有するペプチド変異体が、以下に提供される。一貫性を保つために、残基番号は、aPPペプチド内の位置を使用して報告される。変異には下線が引かれている。
【表3】
【0338】
この変異が興味深いのは、システイン残基の出現がいま一度見られるからである。本発明者らの初期進化研究において見出された(単量体間のジスルフィド結合の形成に関与していると仮定される)Y7C変異に関する本発明者らの先の仮説に照らして、この変異が二量体を安定化させることによってRas結合親和性も向上させている可能性があるかどうかに疑問を抱いた。この変異体は、225-1ペプチドと共にプレインキュベートされたとき5nMでしかRasに結合することができず、したがって、このシステインが、二量体を横断して対応するシステインとのジスルフィド形成に関与している可能性は低い。実際に、aPP二量体の構造の検査は、これらの残基が遠く離れており、形成される二量体という状況で相互作用するものとは期待されないことを実証する。しかしながら、これらの補完研究で使用された遊離225-1ペプチドがそのN末端に(標識目的で)遊離システインを含有したこと、また、aPP二量体モデルが、この残基には提示された変異体内のC13残基と相互作用する能力があり得ると予測することを思い起こした(図27)。したがって、向上した結合性に関する1つの説明は、S13C/I14E二重変異がジスルフィド安定化ヘテロ二量体を形成するというものである。
【0339】
この仮説が正しければ、遊離225-1ペプチド上のシステインを遮断すると、結合性の向上が解消されるはずである。これを試験するため、225-1ペプチド上のシステインをヨードアセトアミド(チオールに対して良好な選択性を有する有機小分子、図26B参照)でアルキル化し、次いで補完実験を繰り返した。本発明者らの予測と一致して、Rasに対する結合性の向上は、非標識225-1と比較すると、このペプチドによってほぼ完全に解消された。これは、S13C/I14E二重変異体が実際に、225-1とジスルフィド安定化ヘテロ二量体を形成することによって、Rasに対する結合性の向上を示し得ることを示唆する。この作用は、ジスルフィド形成に起因するものではなく、むしろアルキル化によって225-1構造を撹乱させることの結果である可能性が残る。しかしながら、ヨードアセトアミドは比較的小さな分子であり、225-1上のN末端システインは以前、活性を消失させることなくビオチンおよびフルオロフォアで修飾されたため、この説明はふさわしくないと考えられる。
【0340】
225ペプチドのヌクレオチド特異性の向上。以前に考察されたように、Ras・GDPと対比してRas・GTPに対する225ペプチドの選択性は比較的乏しかった(そして使用された結合アッセイに応じて異なった)ことが見出された。Ras・GTPが生物学的関連性の標的であるため、Ras・GTPに対して向上した選択性を示す225-1変異体が存在するかどうかに疑問を抱いた。酵母表面ディスプレイの利点の1つは、複数の蛍光チャネル、ひいては複数の結合剤を使用する能力であり、これにより多パラメータ分取が可能になる。したがって、酵母ディスプレイスクリーンを実施し、ここでは、Ras・GTPおよびRas・GDPを添加し、異なるフルオロフォアで標識した(Ras・GTPはビオチン化し、SA-PEで検出し、Ras・GDPはAlexa647で直接標識した)。225-1を提示する細胞を各々500nMのRas・GTPおよびRas・GDPで標識したとき、225-1が比較可能な親和性で両方のヌクレオチド状態に結合することができるという観察と一致して、2つの蛍光チャネル間の直線関係が観察された(図28)。同様のプロファイルが、走査変異誘発ライブラリについて観察された。次いで、スクリーンを実施し、GTP選択性領域(示されるゲートを参照のこと)内の225-1集団の限界を超えて存在した細胞を選択した。2ラウンドの分取後、225-1親よりも選択的にRas・GTPに結合するように見えた集団を単離した(図28)。この集団の配列決定により、ペプチドのC末端付近の、単一の保存されたA30Rの変異が明らかになった。この置換の理論的根拠は明白ではなく、その理解にはRas-ペプチド複合体のより詳細な構造データが必要であるが、Ras・GTPとRas・GDPとの明らかな差異の1つがRas・GTP内にある追加のリン酸塩の存在であることから、アルギニンがこのアニオン性基と静電気的相互作用を生じさせている可能性があると推測したいところである。
【0341】
225ペプチドを改善する手段。本プロジェクトの最終目標は、小ペプチドを用いてRasエフェクタードメインを働かせる新たな方法を同定すること、そして理想的には、癌細胞内のRas活性を抑制することができる分子を開発することである。中度から低度のナノモル親和性でRas表面に結合し、エフェクタードメインを直接標的にしそうであるペプチドを同定するために、酵母ディスプレイおよび定向進化を使用してきた。現在、225(ホモ二量体)ペプチドは、癌細胞の処置のために使用されたとき、Ras抑制活性を保有しないように思われ、これが事実であり得る理由にはいくつかの可能性が存在する。本ペプチドは弱細胞浸透性であるように思われるが、それらが実現し得る細胞内濃度は、それらの親和性および/またはRasタンパク質の細胞内存在量を所与とすると低すぎる場合があり、そのため、本ペプチドの親和性の浸透性のいずれかの向上が活性のために必要とされ得る可能性がある。また、一旦細胞内に入ると、225ペプチドは、非Rasタンパク質によって捕捉されるか、または活性Rasが位置する細胞膜の内葉から離れるという可能性もある。実際に、FITC標識225ペプチドを用いた予備的な結果は、おそらくペプチドの一部分が核局在化シグナル(NLS)として認識されるために、ペプチドが主に核に局在化し得ることを示唆する。225ペプチドのPPIIヘリックスは、プロリンおよび塩基性アミノ酸に富んだ分裂酵母(S.pombe)内で同定されたNLSとの類似性をいくらか有するが、本発明者らが知る限りでは、ヒト細胞内の等価のシグナルは未だ特性化されていない。これが事実であると判明した場合、アルギニン残基を除去するPPIIヘリックスの変異体を試験することによって、例えば、それらをaPP内に見出されるアミノ酸に復帰させることによって、そのような局在化を弱化させることが可能となり得る。最後に、225ペプチドは、ヒト細胞に進入すると急速に分解され、その結果、それらがRasシグナル伝達に対する効果を発揮し得る前に清掃されるという可能性がある。
【0342】
現在、本発明者らは、仮想のジスルフィド安定化二量体(すなわち、Y7Cホモ二量体およびS13C/I14E-225-1ヘテロ二量体)の活性を評価している。原理上、これらの分子は、225-1ホモ二量体と比べてより強力な親和性および向上した安定性を保有し得、インビトロで有望な結果が得られれば、生細胞内のそれらの活性が試験され得る。ジスルフィド結合は概してヒト細胞内で安定でないが、それでもなおペプチド-Ras複合体の安定性に寄与し得るのは、それらが二量体化およびRas結合に厳密に必要とされないことが明らかであるためである。また、第I章で考察したように、得られる非還元性バリアントを期待して、対応するセレノシステインペプチドの調製も想像することができる。
【0343】
225ペプチドの生物活性を向上させるさらなる手法の1つは、それらに、活性Rasタンパク質が局在化する細胞内コンパートメント、すなわち細胞膜の内葉を標的とさせることである。これを実現するための明らかな方法の1つは、単にRasタンパク質を模倣し、ペプチドをファルネシルまたはヘキサデシル部分などの親油性基に結合させることである。原理上は、これにより、225ペプチドの比較的高い局所濃度を経験するRasタンパク質がもたらされるはずであり、このことは、概して膜に係留されないエフェクターと競合する225ペプチドの能力を向上させ得る。本発明者らは、225ペプチドが二量体として働くことを発見する前に、それらを用いてこの手法の初期試験を実施し、得られた陰性結果はおそらく、膜アンカリングの際の二量体破壊の結果である(ストレプトアビジンSPRチップに固定化されたとき、ビオチン化ペプチドがRasに結合できないことに類似する)。ジスルフィド安定化二量体が安定していると判明すれば、そのようなペプチドが細胞内のRas活性を抑制することができるかどうかを試験するために、(脂質付加反応中に準化学量論的当量の標識を使用した)単脂質付加(mono-lipidated)二量体の調製を試みる。
【0344】
Rasプロジェクトの将来の方向性。このペプチド二量体の仮説が正しければ、Ras結合225種のサイズはおよそ9kDaである。これは、導入において考察された細胞透過活性ペプチドと比較するとやや大きく、その分子量は著しく低いことが好ましいであろう。ペプチド二量体上のどの残基がRas表面への結合に関与しているかは現在分かっていないが、αヘリックスがライブラリのためにランダム化されたペプチド面であったことを所与とすると、それらが主にαヘリックス上に局在化するのはふさわしいと考えられる(225ペプチドが、全てのライブラリメンバーに対して同じであったPPIIヘリックスを介してRasに結合したならば、稀で特異的なαヘリックスコンセンサスが結合に必要されるとは予想されないであろう)。さらに、αヘリックスは、二量体安定化に関与していると仮定されるシステイン変異体を例外として、定向進化中に生じた変異のほぼ全ての部位であった。αヘリックスが225ペプチド二量体のRas相互作用領域を実際に含む場合、本発明者らが二量体を安定化させる代替的手段を同定することができれば、PPIIヘリックスは不必要となり得る。二量体モデルの頭-尾配向は、これに対して可能性のある解決策を示唆する:各αヘリックスのN末端およびC末端は近接しているため、1つのαヘリックスに(未知の組成の)ループ、次いで第2のαヘリックスが続く単量体内に分子を凝縮させることが可能であり得る(図29)。
【0345】
原理上は、この方策は、分子量が225二量体の分子量のほぼ半分であるペプチドをもたらし得る。しかしながら、主要な問題の1つは、ヘリックス間のループの長さおよび組成である。aPP二量体の検査は、4~6個のアミノ酸のループ長が理想的であり得ると示唆するが、特に、本発明者らが225二量体の実際の構造を保有しないことを所与とすると、最適な長さは予測が困難である。ループ組成も同様に予測が困難である。幸運にも、この問題は酵母表面ディスプレイによく適している:Ras-ペプチド相互作用の本発明者らのモデルの大部分が正しい限り、2つの225 αヘリックス間に4~6アミノ酸のランダム化ループを有するライブラリを構築することにより、2つのヘリックスをRas結合性の高次構造に安定化させるループを同定することが可能となるはずである。本発明者らは、そのようなライブラリ(図29)を、ヘリックスを横断するジスルフィド架橋の可能性を許すコンストラクトのN末端およびC末端におけるシステイン残基の特徴を加えて設計した。これら2つの残基間の最適距離もまた予測が困難であるため、このライブラリは、(グリシン残基を挿入することにより)合計4つの可能な組み合わせで各システインにつき2つの異なる位置が可能になるように合成した。さらに、225ペプチドの「内部」上のいくつかの疎水性αヘリックス残基がPPIIヘリックスの充填に関与するため、それらのアラニンでの置換またはそれらのランダム化のいずれかを行った。
【0346】
本発明者らはこのライブラリを準備し、間もなくそのスクリーニングを開始することを計画している。これがヒットをもたらした場合は、225ペプチドを特性化するために使用したインビトロアッセイの同じバッテリーを実施して、新たな配列が合理的な親和性および特異性でRasエフェクタードメインに結合するかどうかを判定する。次いでペプチドの特性を向上させるために定向進化を使用する場合があり、最終的には細胞内でのそれらの活性を試験することを目指す。ジスルフィド結合はヒト細胞内で概して安定でないため、本発明者らの新たなペプチドが活性のためにジスルフィド結合に依存することが判明すれば、ペプチドを安定化させる代替的な手段を開発する必要が生じる。可能性の1つは、システイン残基をセレノシステインで置換することであろう。化学的合成またはインテイン手法のいずれかによって、頭-尾骨格環化ペプチドを調製することも可能であり得る。最後に、新たなペプチドがαヘリックス結合性高次構造の大部分を保持すれば、それらは全炭化水素ステープリングのための好適な候補となり得る。本発明者らは、酵母ディスプレイスクリーンからヒットが出現すればこれらの手段を探求する予定である。
【0347】
実施例5:共有結合なペプチド二量体の形成
t-ブチルで保護されたシステインを含むペプチド単量体(配列番号30)と、アクリルアミドを含むペプチド単量体(配列番号31)とを、50mMのトリス-Cl(pH8)中で、各ペプチドについて5μMの最終濃度で一緒に混合した。これらの試料に、1mMまたは10mMのいずれかの還元グルタチオンを添加し、これらの試料を室温で45分間インキュベートし、その後、80μlの反応物を10μlの1%トリフルオロ酢酸に添加し、C18カラム、および0.1%のトリフルオロ酢酸を含む水中で10から100%までのアセトニトリル勾配を使用したLC-MSによって分析した。
【0348】
図35は、低レベルのグルタチオン(1mM)(これは、t-ブチルチオール保護システインを効果的に還元することができない)、またはより高いレベルのグルタチオン(10mM)(これは、示されるイオンの外観から分かるように、配列番号30のペプチドと配列番号31のペプチドとの間に共有結合架橋をもたらす)のいずれかを用いた、配列番号31のペプチド単量体と混合した配列番号30のペプチド単量体のLC-MS分析からのマスクロマトグラムを示す。
【0349】
実施例6:選択的二量体不安定化
生細胞共焦点顕微鏡法を標識ペプチドを用いて実施し、H358肺腺癌細胞内で、フルオレセイン標識ペプチド5μMの濃度で、10%のウシ胎仔血清を補充したDMEM培地内で実施した。図36Aは、ヒスチジンを欠く配列番号37のペプチドを示す。図36Bは、1つの単量体当たり2つのヒスチジン(1つの二量体当たり4つのヒスチジン;「His四分子」)を含有する配列番号38のペプチドを示す。
【0350】
実施例7:嵩高部分を使用した二量体不安定化
図37は配列番号42のペプチドを示し、ここでは、Cysを2,2’-ジピリジルジスルフィドと反応させて、ジスルフィド保護システインを生成した。このシステインは、低レベルのグルタチオンの存在下でケージから出されて、より良好なRas結合剤であるジスルフィド結合種を形成する。以下のデータは、質量分析によって検証された場合に、5mMの還元グルタチオンの添加(これは共有結合的なジスルフィド結合二量体の形成をもたらす)に際し、Ras結合性の上昇を示す。これらの実験は、図19に関して記載されているものと同様である。
【0351】
実施例8:追加の標的に結合するペプチド
図38A~Cは、配列番号43~45のペプチドに関する、それらに対応するタンパク質標的との酵母表面ディスプレイ結合性データを示す。酵母ディスプレイアッセイの実験は、図9に関して使用されたものと同様である。配列番号43のMY01ペプチドは、図38Cに示される高結合性集団に対応する。RalAタンパク質の精製は、以前に考察したKRasコンストラクトのために使用した方法と同様であった。
【0352】
Myc/Maxタンパク質の精製は次のように行った。His-yBBr-TEV-Myc(残基353~434)およびタグなしMax(残基22~102)を含む2シストロン性pETベクターを、化学的に適格性のあるBL21細胞に形質転換させた。これらの細胞を、30℃で5時間にわたり0.25mMのIPTGで誘発してOD600=0.7まで成長させ、次いで採取し、液体窒素中で急速凍結させる前に、溶解緩衝液(20mMのHEPES(pH7.5)、500mMのKCl、5%のグリセロール)中に再懸濁させた。精製のために、このペレットを解凍し、同じ緩衝液中で40mlに増やし、RocheのComplete EDTA非含有プロテアーゼ抑制剤タブレットと混合した。これらの細胞をチップソニケーター(VirSonic、出力レベル6.5で10秒オン、15秒オフの6サイクル)で溶解させ、次いで30分間30,000×gでペレット化し、0.45μMのTuffryn膜(Pall Corporation)を通して濾過した。この澄ましたライセートを、同じ緩衝液で平衡化されている2mlのHisPur Ni-NTA樹脂(Thermo Pierce)に添加し、重力によって排液した。このカラムを20mlの緩衝液で洗浄し、次いで、タンパク質を、150mMのイミダゾールおよび何らかのプロテアーゼ抑制剤を含有する緩衝液で溶離させた。カラムからの溶出の直後、EDTAを0.5mMまで添加した。このタンパク質を、Centriprep YM-10(Millipore)内で2mlまで濃縮させ、Superdex 75カラムを使用して、20mMのHEPES(pH7.5)、150mMのKCl、1mMのEDTA、5%のグリセロール中にゲル濾過した。このタンパク質を、Rasタンパク質に関して上に記載したようにAlexa647で標識した。
【0353】
等価物および範囲
特許請求の範囲において、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、別段の記載があるか、または別様に文脈から明白である場合を除いて、1つまたは2つ以上を意味し得る。一群の1つ以上の要素間に「または」を含む請求項または説明は、別段の記載があるか、または別様に文脈から明白である場合を除いて、その群の要素の1つ、2つ以上、または全てが、所与の生成物もしくはプロセス内に存在するか、用いられているか、または別様にそれらに関連する場合に成立すると見なされる。本発明には、一群の要素の1つのみが、所与の生成物もしくはプロセス内に存在するか、用いられているか、または別様にそれらに関連する実施形態が含まれる。本発明には、一群の要素の2つ以上または全てが、所与の生成物もしくはプロセス内に存在するか、用いられているか、または別様にそれらに関連する実施形態が含まれる。
【0354】
さらに、本発明は、列挙される請求項のうちの1つ以上における1つ以上の制限、要素、条項、および説明的用語が別の請求項に導入される、全ての変形、組み合わせ、および並べ替えを包含する。例えば、別の請求項に従属するいかなる請求項が、同じ基本請求項に従属するいかなる他の請求項に見出される1つ以上の制限を含むように修正されてもよい。要素が一覧として(例えばマーカッシュ群形式で)提示される場合、要素の各小群も開示され、いかなる要素(複数可)がその群から削除されてもよい。本発明または本発明の態様が特定の要素および/または特徴を含むものと称される場合、本発明のある特定の実施形態または本発明の態様は、そのような要素および/または特徴からなるか、あるいはそれらから本質的になることを理解されたい。簡素化を目的として、そうした実施形態は、本明細書においてその通りの言葉で具体的に記載されていない。また、「含む(comprising)」および「含有する(containing)」という用語は無制限であるよう意図され、追加の要素またはステップの包含を許すことにも留意されたい。範囲が与えられている場合、終点が含まれる。さらに、別段の記載があるか、または別様に文脈および当業者の理解から明白である場合を除いて、範囲として表される値は、本発明の異なる実施形態において、文脈による明確な別段の記載がない限り、その範囲の下限の単位の1/10まで、記載される範囲内にあるいかなる特定の値または部分的範囲をとることができる。
【0355】
本出願は、様々な交付済み特許、公開特許出願、学術論文、および他の刊行物を参照し、それら全てが参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参考文献のいずれかと本明細書との間に矛盾がある場合、本明細書が優先する。それに加えて、本発明のいかなる特定の実施形態が先行技術の範囲内にある場合、任意の1つ以上の請求項から明示的に除外され得る。そのような実施形態は当業者に公知であると見なされるため、それらは、除外が本明細書に明示的に記載されていなくとも除外され得る。本発明のいかなる特定の実施形態も、先行技術の存在に関連するか否かを問わず、任意の理由で、任意の請求項から除外されてよい。
【0356】
当業者であれば、日常と同程度の実験を使用して本明細書に記載される特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、またはそれらを確認することができるであろう。本明細書に記載される本実施形態の範囲は、上記の発明を実施するための形態に限定されるよう意図されるものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載される通りである。次の特許請求の範囲に定義される本発明の主旨または範囲から逸脱することなく、本明細書に様々な変更および修正がなされ得ることは、当業者であれば理解するであろう。
図1
図2-1】
図2-2】
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14-1】
図14-2】
図15A
図15B
図16
図17A-1】
図17A-2】
図17B
図17C
図18A-B】
図19
図20A
図20B
図20C
図21
図22A
図22B
図22C
図23A
図23B-C】
図24
図25
図26A
図26B
図27
図28
図29
図30
図31
図32-1】
図32-2】
図33A
図33B
図34A
図34B
図35A
図35B
図36A
図36B
図37
図38A
図38B
図38C
【配列表】
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