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特許7232534画像取得チップ、物体イメージング認識設備、及び物体イメージング認識方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】画像取得チップ、物体イメージング認識設備、及び物体イメージング認識方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/13 20230101AFI20230224BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20230224BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20230224BHJP
   H04N 23/11 20230101ALI20230224BHJP
【FI】
H04N25/13
G01N21/27 A
H04N23/55
H04N23/11
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020514179
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 CN2019101772
(87)【国際公開番号】W WO2021017051
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2020-03-06
(31)【優先権主張番号】201910700328.7
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502192546
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】Tsinghua University
【住所又は居所原語表記】Tsinghua University,Haidian District,Beijing 100084,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲開▼宇
(72)【発明者】
【氏名】蔡 旭升
(72)【発明者】
【氏名】朱 ▲鴻▼博
(72)【発明者】
【氏名】黄 翊▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 巍
(72)【発明者】
【氏名】▲馮▼ 雪
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲倣▼
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/015117(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/199720(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00-25/79
G01N 21/27
H04N 23/00-23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変調層、画像センシング層、及び少なくとも2組のピクセル確認モジュールを備え、前記光変調層は前記画像センシング層の上に位置し、各組の前記ピクセル確認モジュールは、いずれも変調ユニット及び検知ユニットを備え、各前記変調ユニット及び各前記検知ユニットは、前記光変調層及び前記画像センシング層上に上下に対応して配置され、
そのうち、各前記変調ユニット内には少なくとも1つの変調サブユニットがそれぞれ設けられ、各前記変調サブユニット内には、前記光変調層内に穿設されたいくつかの変調孔がそれぞれ設けられ、同一の前記変調サブユニット内における各前記変調孔は特定の配列規則を有する2次元パターン構造に配列され
前記光変調層はシリコンベースの材料として実施され、前記光変調層は広帯域スペクトルの変調を実現し、
前記2次元パターン構造の特定の配列規則は、
同一の前記2次元パターン構造内のすべての前記変調孔は、同じ特定の断面形状を同時に有し、各前記変調孔は構造パラメーターの大きさの漸次変化順序に従ってアレイ状に配列されること、又は
同一の前記2次元パターン構造内の各前記変調孔は、特定の断面形状をぞれぞれ有し、各前記変調孔は、特定の断面形状に従って組み合わせて配列されることを含むことを特徴とする画像取得チップ。
【請求項2】
各前記変調孔は、前記特定の断面形状に従って組み合わせて配列される場合、前記配列の順序は、予定の周期順序で行ごと又は列ごとに配列されることを特徴とする請求項1に記載の画像取得チップ。
【請求項3】
各前記変調ユニットにおける同じ位置にある前記変調サブユニット内に前記変調孔が設けていないことを特徴とする請求項1に記載の画像取得チップ。
【請求項4】
前記変調孔の底部は前記光変調層を貫通し、又は前記光変調層を貫通していないことを特徴とする請求項1に記載の画像取得チップ。
【請求項5】
前記画像センシング層の下に接続され、各前記検知ユニット同士を電気的に接続する信号処理回路層を更に備えることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の画像取得チップ。
【請求項6】
前記検知ユニットは少なくとも1つの検知サブユニットを備え、各前記検知サブユニットはアレイ状に配列され、各前記検知サブユニット内には少なくとも1つの画像センサがそれぞれ設けられ、すべての前記検知サブユニット同士はそれぞれ前記信号処理回路層を介して電気的に接続されることを特徴とする請求項5に記載の画像取得チップ。
【請求項7】
前記光変調層と前記画像センシング層との間に位置する光透過媒体層を更に備えることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の画像取得チップ。
【請求項8】
イメージング対象物体にスペクトルを発射して、前記スペクトルが前記イメージング対象物体を経た後、入射光として画像取得チップ上に入射する光源と、
前記光源とともに、前記イメージング対象物体の同じ側に設置され、少なくとも2つの変調後のスペクトルを得るように、各組のピクセル確認モジュールにより、前記入射光をそれぞれ光変調し、各前記変調後のスペクトルの光強度をそれぞれ検出して、各ピクセル点をそれぞれ確定するための請求項1~7のいずれかに記載の画像取得チップとを備えることを特徴とする物体イメージング認識設備。
【請求項9】
請求項8に記載の物体イメージング認識設備に基づいて提出され、
光源によりイメージング対象物体にスペクトルを発射して、前記スペクトルが前記イメージング対象物体を経た後、入射光として画像取得チップに入射すること、
いくつかの変調後のスペクトルを得るように、前記画像取得チップの各組のピクセル確認モジュールにより、前記入射光をそれぞれ光変調し、各前記変調後のスペクトルの光強度をそれぞれ検出して、各組のピクセル点をそれぞれ確定すること、
すべての前記ピクセルデータを統合して出力画像を構成することを含むことを特徴とするイメージング対象物体認識方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2019年7月31日に提出された、出願番号が201910700328.7、発明の名称が「画像取得チップ、物体イメージング認識設備、及び物体イメージング認識方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その全体が参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本公開は、イメージング、及び物体認識設備技術の分野に関し、特に、画像取得チップ、物体イメージング認識設備、及び物体イメージング認識方法に関する。
【背景技術】
【0003】
イメージング分光学
イメージング分光学は、スペクトル検出及びイメージングを有機的に組み合わせた技術であり、ある物体に対して、異なるスペクトルでのイメージングを行い、被検出物体の幾何学的形状情報及びスペクトル特徴を同時に取得することができ、電磁波の紫外、可視光、近赤外および中赤外の領域で、多くの非常に狭く且つスペクトルの連続した画像データを取得する技術である。30年以上の発展を経て、イメージング分光技術は、地球観測と深宇宙探査の重要な手段となり、農業、畜産及び林業の生産、鉱物資源の探査、文化遺産の検出、海洋のリモートセンシング、環境のモニタリング、災害の防止と軽減、及び軍事偵察などの分野で広く使用されている。
【0004】
小型衛星や無人航空機などの小型プラットフォームのようなキャリングプラットフォームの段階的な小型化、および野外への応用の耐久性要件により、画像取得機器の小型化と軽量化の需要がますます顕著になっている。従来の画像取得装置は、通常、イメージング分光計であり、イメージング分光計には3つのイメージング方法があり、そのうち、オプトメカニカルスキャン型は可動部を備えるため、重くて体積が大きく、プッシュブルームイメージング型は光学系が複雑であり、凝視イメージング型は空間分解能及びスペクトルチャンネルの数が制限されている。三者はいずれも小型化と軽量化のニーズを満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本公開の実施例は、既存の画像取得設備におけるイメージング分光計は小型化と軽量化のニーズを満たすことができない欠陥を解決するために、画像取得チップ、物体イメージング認識設備、及び物体イメージング認識方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本公開は、上記技術課題を解決するために、画像取得チップを提供し、当該画像取得チップは、光変調層、画像センシング層、及び少なくとも2組のピクセル確認モジュールを備え、前記光変調層は画像センシング層の上に位置し、各組の前記ピクセル確認モジュールは、いずれも変調ユニット及び検知ユニットを備え、各前記変調ユニット及び各前記検知ユニットは、前記光変調層及び画像センシング層に上下に対応して配置され、そのうち、各前記変調ユニット内には少なくとも1つの変調サブユニットがそれぞれ設けられ、各前記変調サブユニット内には、前記光変調層内に穿設されたいくつかの変調孔がそれぞれ設けられ、同一の前記変調サブユニット内における各前記変調孔は特定の配列規則を有する2次元パターン構造に配列される。
【0007】
一部の実施例において、前記2次元パターン構造の特定の配列規則は、
同一の前記2次元パターン構造内のすべての前記変調孔は、同じ特定の断面形状を同時に有し、各前記変調孔は構造パラメーターの大きさの漸次変化順序に従ってアレイ状に配列されること、及び/又は
同一の前記2次元パターン構造内の各前記変調孔は、特定の断面形状をぞれぞれ有し、各前記変調孔は、特定の断面形状に従って組み合わせて配列されることを含む。
【0008】
一部の実施例において、各前記変調孔は、特定の断面形状に従って組み合わせて配列される場合、前記配列の順序は、予定の周期順序で行ごと又は列ごとに配列される。
【0009】
一部の実施例において、各前記変調ユニットにおける同じ位置にある前記変調サブユニット内に変調孔が設けていない。
【0010】
一部の実施例において、前記変調孔の底部は前記光変調層を貫通し、又は前記光変調層を貫通していない。
【0011】
一部の実施例において、前記画像センシング層の下に接続され、各前記検知ユニット同士を電気的に接続する信号処理回路層を更に備える。
【0012】
一部の実施例において、前記検知ユニットは少なくとも1つの検知サブユニットを備え、各前記検知サブユニットはアレイ状に配列され、各前記検知サブユニット内には少なくとも1つの画像センサがそれぞれ設けられ、すべての前記検知サブユニット同士はそれぞれ前記信号処理回路層を介して電気的に接続される。
【0013】
一部の実施例において、前記光変調層前記画像センシング層との間に位置する光透過媒体層を更に備える。
【0014】
本公開は、物体イメージング認識設備を更に提供し、当該物体イメージング認識設備は、
イメージング対象物体にスペクトルを発射して、前記スペクトルが前記イメージング対象物体を経た後、入射光として画像取得チップに入射する光源と、
前記光源とともに、前記イメージング対象物体の同じ側に設置され、少なくとも2つの変調後のスペクトルを得るように、各組のピクセル確認モジュールにより、前記入射光をそれぞれ光変調し、各前記変調後のスペクトルの光強度をそれぞれ検出して、各ピクセル点をそれぞれ確定するための上記の画像取得チップとを備える。
【0015】
本公開は、上記の物体イメージング認識設備に基づいて提出されたイメージング対象物体認識方法を更に提供し、当該イメージング対象物体認識方法は、
光源によりイメージング対象物体にスペクトルを発射して、前記スペクトルが前記イメージング対象物体を経た後、入射光として画像取得チップに入射すること、
いくつかの変調後のスペクトルを得るように、前記画像取得チップの各組のピクセル確認モジュールにより、前記入射光をそれぞれ光変調し、各前記変調後のスペクトルの光強度をそれぞれ検出して、各組のピクセル点をそれぞれ確定すること、
すべての前記ピクセルデータを統合して出力画像を構成することを含む。
【発明の効果】
【0016】
本公開の上記技術方案は以下の有益効果を有する。
【0017】
1、本公開に係る画像取得チップは、光変調層、画像センシング層、及び少なくとも2組のピクセル確認モジュールを備え、光変調層は画像センシング層の上に位置し、各組のピクセル確認モジュールは、いずれも変調ユニット及び検知ユニットを備え、各変調ユニット及び各検知ユニットは、光変調層及び画像センシング層に上下に対応して配置され、各組のピクセル確認モジュールによりスペクトルに対して光強度の検出を行うことで、各ピクセル点のピクセルデータを決定して、すべてのピクセルデータを統合して、最終的な出力画像を構成する。当該画像取得チップは、既存の物体イメージング認識設備における複雑且つ精密な分光素子及び多すぎる画像センサに取って代わって、変調ユニット及び検知ユニットを利用してそれぞれスペクトルを変調して光強度を検出することができ、これにより、正確な画像再構築の過程が実現され、画像取得チップは、格子、プリズム、ミラー、又は他の類似する空間分光素子を必要せずに光強度の検出作動を行うことができ、そして、物体イメージング認識設備の体積を大幅に減らすとともに、光強度検出の精密性を向上させることができ、物体イメージング認識設備は、高い測定精度、優れた携帯性、リアルタイムのオンライン検出、簡単な操作、安定した性能、低い製造コスト等の利点を有するようになる。当該チップは、小型衛星や無人航空機などの小型プラットフォームへの応用に幅広い見通しがある。
【0018】
2、当該画像取得チップでは、各変調ユニット内には少なくとも1つの変調サブユニットがそれぞれ設けられ、各変調サブユニット内にはいくつかの光変調層に穿設された変調孔がそれぞれ設けられ、同一の変調サブユニット内における各変調孔は特定の配列規則を有する2次元パターン構造に配列される。当該チップは、オプトロニクスにおける変調ユニットアレイに基づいて異なる波長の光に対する変調作用を実現でき、且つ各変調ユニットには複数の変調サブユニットが対応してネストされているので、複数のスペクトルのイメージング対象の物体画像情報を同時に取得することができ、スペクトル認識率が大幅に向上し、誤認識率が減少する。当該チップは、虹彩認識に使用でき、複数の波長での虹彩画像の情報を取得することにより、認識率を向上させることができ、偽造防止のための生体検知に役立て、解読や偽造の困難性を高めるとともに、コンタクトレンズ、美容レンズ、さまざまな照明条件に引き起こされる干渉を減らすことができる。当該チップは、既存の物体イメージング認識設備が高価で小型化できないという問題を克服した。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の実施例又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明する。勿論、以下に説明する図面は、本発明のいくつかの実施例であり、当業者にとって、創造的な労働を要しない前提で、更にこれら図面に基づいてその他の図面を得ることができる。
【0020】
図1図1は本公開の実施例に係る物体イメージング認識設備のイメージング原理図である。
図2図2は本公開の実施例に係る物体イメージング認識設備が虹彩をイメージングする作動原理図である。
図3図3は本公開の実施例1に係る画像取得チップの構造模式図である。
図4図4は本公開の実施例1に係る画像取得チップの断面図である。
図5図5は本公開の実施例1に係る光変調層の模式図である。
図6図6は本公開の実施例1に係る画像センシング層の構造模式図である。
図7図7は本公開の実施例2に係る光変調層の構造模式図である。
図8図8は本公開の実施例3に係る光変調層の構造模式図である。
図9図9は本公開の実施例4に係る光変調層の構造模式図である。
図10図10は本公開実施例5に係る画像取得チップの断面図である。
図11図11は本公開の実施例6に係る画像取得チップの断面図である。
図12図12は本公開の実施例7に係る画像取得チップの構造模式図である。
図13図13は本公開の実施例7に係る光変調層の構造模式図である。
図14図14は本公開の実施例1~実施例7に係る画像取得チップの変調孔の加工製造方法のプロセス模式図である。
図15図15は本公開の実施例1~実施例7に係る画像取得チップの変調孔の加工製造方法のプロセス模式図である。
【符号の説明】
【0021】
100 光源、200 イメージング対象物体、300 画像取得チップ、1’ 基板、1 光変調層、2 画像センシング層、3 信号処理回路層、4 光透過媒体層、5 変調ユニット、6 変調孔、7 検知ユニット、8 隙間、9 検知サブユニット、11 第1の変調ユニット、12 第2の変調ユニット、13 第3の変調ユニット、14 第4の変調ユニット、15 第5の変調ユニット、16 第6の変調ユニット、110 第1の変調サブユニット、111 第2の変調サブユニット、112 第3の変調サブユニット、113 第4の変調サブユニット。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本公開の具体的な実施形態を詳細に説明する。以下の実例は、本公開を説明するためのものに過ぎず、本公開の範囲を制限するためのものではない。特に明記しない限り、本公開に言及されたチップはいずれも画像取得チップの略語である。
【0023】
本公開の各実施例は画像取得チップを提供し、当該チップは、既存の物体イメージング認識設備における複雑且つ精密な分光素子及び多すぎる画像センサに取って代わって、変調ユニット及び検知ユニットを利用してそれぞれ複数のスペクトルを同時に変調して光強度を検出することができ、これにより、正確な画像再構築の過程が実現され、画像取得チップは、格子、プリズム、ミラー、又は他の類似する空間分光素子を必要せずに光強度の検出作動を行うことができ、そして、物体イメージング認識設備の体積を大幅に減らすとともに、光強度検出の精密性を向上させることができ、物体イメージング認識設備は、高い測定精度、優れた携帯性、リアルタイムのオンライン検出、簡単な操作、安定した性能、低い製造コスト等の利点を有するようになる。
【0024】
具体的には、図1図13に示すように、当該チップ300は、光変調層1、画像センシング層2、及び少なくとも2組のピクセル確認モジュールを備える。光変調層1は画像センシング層2の上に位置し、光変調層1は、入射光を受信して当該入射光を変調するためのものであり、画像センシング層2は、変調後のスペクトルの光強度を検出して、異なる波長のスペクトルの光強度に対して対応する画像ピクセル点のデータを決定するためのものである。各組のピクセル確認モジュールはいずれも変調ユニット5及び検知ユニット7を備え、それに対応して、各組の変調ユニット5及び検知ユニット7は、光変調層1及び画像センシング層2に上下に対応して配置され、これにより、各変調ユニット5及び各検知ユニット7は、少なくとも1組の画像ピクセル点のデータを対応して決定することができる。すべての画像ピクセル点のデータを統合すると、元の出力画像を再構築することができる。
【0025】
本実施例において、各変調ユニット5内には少なくとも1つの変調サブユニットがそれぞれ設けられ、各変調サブユニット内には、光変調層1内に穿設されたいくつかの変調孔6がそれぞれ設けられ、同一の変調サブユニット内における各変調孔6は特定の配列規則を有する2次元パターン構造に配列される。本実施例に係る画像取得チップ300は、既存の物体イメージング認識設備における精密光学部品に取って代わり、入射光に対する精密な変調及びピクセルの再構築を実現することができ、そして、当該画像取得チップ300により、異なる波長の光に対する変調作用を柔軟に実現することができ、当該変調作用は、光の散乱、吸収、投射、反射、干渉、表面プラズモン、及び共鳴などの作用を含むが、これらに限定されない。異なる領域間のスペクトル応答の相違性を向上させ、それにより画像取得チップ300の分析精度を向上させることができる。また、当該チップ300は、各変調ユニット5における1つ又は複数の2次元パターン構造により異なる波長の光に対する変調作用を実現し、2次元パターン構造の区別により、異なる領域間のスペクトル応答の相違性をも向上させ、それにより画像取得チップ300の分析精度を向上させることができる。
【0026】
本実施例に係るチップ300は信号処理回路層3を更に備え、信号処理回路層3は画像センシング層2の下に接続され、各検知ユニット7同士を電気的に接続しているため、各組のピクセル確認モジュールに検出された光強度に基づいて差分応答を測定することができ、各検知ユニット7内のセンサは、いずれも検出された光強度に基づいて1つのピクセル点を構成することできるため、アルゴリズムにより1つのピクセル点での各波長の強度分布を得ることができる。当該差分応答とは、光変調層による変調を経って得られた応答スペクトルの信号と元のスペクトルの信号との差を求めること、又は各変調ユニット5による変調を経って得られた応答スペクトルの信号同士の差を求めること、又は各変調サブユニットによる変調を経って得られた応答スペクトルの信号同士の差を求めることである。元のスペクトルとは、光変調層1に入射する入射光スペクトルである。
【0027】
さらに、各検知ユニット7は少なくとも1つの検知サブユニット9を備え、各検知サブユニット9はアレイ状に配列され、各検知サブユニット9内には少なくとも1つの画像センサがそれぞれ設けられ、すべての検知サブユニット9同士は信号処理回路層3を介して電気的に接続されて、異なる組の変調ユニット5及び検知ユニット7において構成されるピクセル点をより細かく区別するようになる。これにより、各組の同じ位置の変調サブユニット及び対応する検知サブユニット9によって生成された複数のピクセル点を使用して複数の分光分析情報を含む画像を構成する。
【0028】
図1に示すように、本公開に係る各実施例は光源100及び画像取得チップを含む物体イメージング認識設備を提供する。光源100は、イメージング対象物体200にスペクトルを発射して、スペクトルがイメージング対象物体200を経た後、入射光として画像取得チップ300に入射する。画像取得チップ300は、光源100とともに、イメージング対象物体200の同じ側に設置される。当該画像取得チップ300は、少なくとも2つの変調後のスペクトルを得るように、各組のピクセル確認モジュールにより、入射光をそれぞれ光変調し、各変調後のスペクトルの光強度をそれぞれ検出して、各ピクセル点をそれぞれ確定し、最終的にすべてのピクセル点のデータを統合して、画像を構成するためのものである。
【0029】
光源100のスペクトルを簡単にイメージング対象物体200に通過させて、形成された反射光をチップ300の入射光とするように、好ましくは、光源100と画像取得チップ300は、イメージング対象物体200の同じ側に同時に設置される。図2に示されるものを例とすると、光源100と画像取得チップ300がイメージング対象物体200の下側に同時に設置され、光の反射原理により、光源100によって生成された可視-近赤外光のスペクトルは測定対象200内に侵入することができ、そして、反射作用により、全てのスペクトルは、画像取得チップ300中に入射する入射光を形成する。当該構造の設置は測定空間を拡大して、物体イメージング及び認識の使用利便性を向上させることができる。
【0030】
図2は、本公開に係る物体イメージング認識設備が虹彩210のイメージングに応用されるイメージング原理図である。理解できるように、本公開に係る画像取得チップ300及び物体イメージング認識設備は、虹彩210をイメージング認識することができるだけでなく、ほかのいずれかのイメージング対象物体200をイメージング認識することもでき、イメージングの必要に応じて、画像取得チップ300の各変調ユニット5の体積及び入射光の対応する波長等のパラメートを調整すればよい。
【0031】
以下、虹彩210をイメージング対象として例を挙げて、具体的には、いくつかの実施例により本公開の画像取得チップ300及び物体イメージング認識設備を詳細に説明する。下記の各実施例に係るチップ300はいずれも上記の物体イメージング認識設備に適している。
【0032】
(実施例1)
図3及び図4に示すように、本実施例1に係る画像取得チップ300では、光変調層1は複数の変調ユニット5を備える。当該変調ユニット5におけるすべての変調孔6はいずれも光変調層1を貫通する。各変調ユニット5内において複数の変調孔6からなる2次元画像構造はいずれも同じ特定の断面形状を有し、本実施例1は図2に示される楕円形変調孔6アレイからなる6つの変調ユニット5を例として説明する。各変調ユニット5におけるすべての変調孔6はいずれも同じ規則の構造パラメーターの大きさの漸次変化順序に従って2次元パターン構造を形成するようにアレイ状に配列される。当該2次元パターン構造では、すべての変調孔6はアレイ状に配列され、そしてすべての変調孔6は長軸の長さ、短軸の長さ及び回転角度の小さい順に昇順に行ごとかつ列ごとに配列される。
【0033】
理解できるように、図5に示すように、本実施例のすべての変調孔6はいずれも同じ配列規則に従って配列されており、即ち、長軸の長さ、短軸の長さ、及び回転角度の構造パラメーターの小さい順に昇順に、行ごと、列ごとに漸次変化して配列されているため、当該光変調層1におけるすべての変調孔6は、全体として変調ユニット5とみなされてもよく、任意にいくつかの変調ユニット5に分割されてもよい。任意に分割された変調ユニット5は、スペクトルに対して、いずれも異なる変調作用を持っており、理論的には、無数組の変調後のスペクトルサンプルを取得でき、これにより、元のスペクトルを再構築するためのデータの量が大幅に増加して、広帯域スペクトルのスペクトルパターンの復元に役立つ。そうすると、各変調ユニット5における変調孔6の構造パラメータ特性に従って、異なる波長の光に対する当該変調ユニット5の変調作用の効果を決定すればよい。当該再構築の過程は、データ処理モジュールによって実施され、データ処理モジュールはスペクトルデータ前処理、及びデータ予測モデルを含む。そのうち、スペクトルデータ前処理は上記の求めた差分応答データに存在する騒音を前処理することであり、当該スペクトルデータ前処理に採用される処理方法は、フーリエ変換、微分、及びウェーブレット変換等を含むが、これらに限定されない。データ予測モデルには、スペクトルデータ情報から、イメージング対象物体200のパターンパラメートに対する予測を得ることを含み、使用されるアルゴリズムは、最小二乗法、主成分分析、及び人工ニューラルネットワークを含むが、これらに限定されない。
【0034】
理解できるように、本実施例では、検知ユニット7内の画像センサを利用して当該変調ユニット5が受信したスペクトルを1つのピクセル点として構成するように、各変調ユニット5と1つの検知ユニット7は上下に対応して設置され、そして、アルゴリズムにより1つのピクセル点での強度分布を得ることができる。異なる組のピクセル確認モジュールに対応して構成された複数のピクセル点を統合すると、複数のスペクトル情報を含む画像を構成することができる。
【0035】
さらに、各変調ユニット5内に仕切られた異なる領域(変調サブユニット)の構造パラメーターが異なるため、異なる波長の光に対する各変調サブユニットの変調作用が異なり、変調作用は、散乱、吸収、透射、反射、干渉、エキシマー等の作用を含むが、これらに限定されない。変調作用の最終効果は、異なる波長の光が各変調ユニット5の異なる変調サブユニット領域を通過する時における透過スペクトルが異なると、同一の入力スペクトルに対して同一の2次元画像構造における異なる領域を通過する透過スペクトルが異なることを確定することである。
【0036】
本実施例では、各変調ユニット5の下方にはそれぞれ1つの検知ユニット7が対応して設置され、各検知ユニット7内にはそれぞれ複数のセンサが設けられ、図6に示すように、同一の検知ユニット7内の各センサは、それぞれ同一の変調ユニット5内の異なる領域に対応し、このように、各センサ及びその対応する領域はそれぞれ1つのピクセル点を構成するため、各組のピクセル確認モジュール内においてそれぞれ1つを超えるピクセル点を構成することができ、アルゴリズムにより1つのピクセル点での各波長の強度分布を得ることができる。その一方、異なる組のピクセル確認モジュールでは同じ位置に対応して構成された複数のピクセル点を統合すると、複数のスペクトル情報を含む画像を構成することができる。
【0037】
理解できるように、上記の変調孔6の特定の断面形状は、円形、楕円形、十字形、正多角形、星形、又は矩形等を含み、上記各形状の任意の組み合わせであってもよい。それに対応して、上記の変調孔6の構造パラメーターは、内径、長軸の長さ、短軸の長さ、回転角度、角の数、又は辺の長さ等を含む。
【0038】
本実施例1に係る物体イメージング認識設備に適する光源100は可視光から近赤外光バンドまでの光源でり、光源100の波長範囲は400nm~1100nmである。光変調層1の厚さは60nm~1200nmであり、光変調層1と画像センシング層2は、直接接続され、又は光透過媒体層4を介して接続される。画像センシング層2と信号処理回路層3は電気的に接続される。そのうち、図5に示すように、光検出層には合計6つの変調ユニット5が設けられ、すべての変調ユニット5はアレイ状に配列され、各変調ユニット5におけるすべての変調孔6はいずれも楕円形であり、すべての楕円形変調孔6の短軸の長さはそれぞれ行ごと、列ごとに増大し、且つ図5における水平方向を横軸とし、垂直方向を縦軸とすると、各変調ユニット5におけるすべての楕円形変調孔6は、行ごと、列ごとに縦軸から横軸へ回転し、その回転角度が徐々に増大する。各変調ユニット5におけるすべての変調孔6は、それぞれ、同じ2次元パターン構造を構成し、当該2次元パターン構造は全体としてマトリックス構造であり、当該マトリックス構造の面積範囲は200μm2~40000μm2である。
【0039】
本実施例に係る画像取得チップ300を製造する際には、製造プロセスの加工上で優れた適合性が得られるように、シリコンベースの材料を同時に光変調層1及び画像センシング層2の材料に採用する。光変調層1を製造する際には、画像センシング層2上に光変調層1を直接生成してもよいし、製造された光変調層1を画像センシング層2に転移してもよい。
【0040】
具体的には、光変調層1の直接生成方法は、画像センシング層2上に図5に示すような構造に従って配列された光変調層1を直接堆積生成すること、或いは、まず画像センシング層2上にシリコンベースの材料で製造された基板を装着し、次に基板に、図5に示すような構造に従ってマイクロナノ加工して開孔して、光変調層1を得ることを含む。
【0041】
上記の直接堆積生成の過程は、以下の通りである。第1のステップでは、スパッタリング、化学気相堆積等の方法によってシリコン平板を画像センシング層2に堆積する。第2のステップでは、フォトリソグラフィ、電子ビーム露光等のパターン転写方法によってその上に必要な2次元パターン構造を作成する。構造は図6に示される。当該2次元パターン構造は、具体的に、楕円形の変調孔6の短軸及び回転角度のみを漸次変化調整し、楕円の長軸は200nm~1000nmにおける固定値、例えば500nmを取り、短軸の長さは、120nm~500nmの範囲内に変化し、楕円の回転角度は0°~90°の範囲内に変化し、楕円の配列周期は、200nm~1000nmにおける固定値、例えば500nmである。変調ユニット5のパターン全体は面積範囲が200μm2 ~40000μm2である矩形アレイ構造である。第3のステップでは、反応性イオンエッチング、誘導結合プラズマエッチング及びイオンビームエッチング等の方法によってシリコン平板をエッチングして、所望の光変調層1を取得できる。最後に、光変調層1及び画像センシング層2を、全体として信号処理回路層3に電気的に接続すればよい。
【0042】
上記の光変調層1の転移製造方式は、具体的には、まず、製造された光変調層1を得るために、図5に示される構造に従って基板にマイクロナノ加工によって開孔し、次に当該製造された光変調層1を画像センシング層2上に転移することである。具体的には、光変調層1の転移方法の過程は、まず、上記のパラメートに従ってシリコンシート又はSOI(シリコン-絶縁体-シリコンシートの構造)上に光変調層1を製造して取得し、次に、転移の方法によって画像センシング層2上に転移し、最後に、光変調層1及び画像センシング層2を、全体として信号処理回路層3に電気的に接続すればよい。
【0043】
図14及び図15に示すように、本実施例は、他の画像取得チップ300の製造過程を更に提供し、具体的には、画像センシング層2内には、III-V族検出器、具体的にGaAs/InGaAsの量子井戸検出器が取り付けられる。図14に示すように、検出器が逆さまにして置いてCMOS回路に結合され、検出器は、GaAs基板1’ 及びInGaAs量子井戸画像センシング層2を含む。図15に示すように、直接、基板1’を薄くした後、さらに基板1’にマイクロナノ加工を行い、2次元パターン構造を持たせるように光変調層1を形成すればよい。当該製造過程と上記のマイクロナノ加工開孔との区別は、検出器からなる画像センシング層2の上表面を直接マイクロナノ加工の基板1’とすることのみであり、これにより、加工製造された光変調層1と画像センシング層2との間の緊密な接続が保証され、ギャップが形成されて光の変調作用の効果に影響を与えることを回避する。
【0044】
本実施例に係る物体イメージング認識設備の、画像に対する取得と再構築の完全なフローは、以下の通りである。図2に示すように、まず、可視光から近赤外までの広域スペクトル光源100が人眼虹彩210に照射して、入射光が虹彩210に吸収されてチップ300に反射し、虹彩210からチップ300への反射光はチップ300の入射光である。次に、当該入射光は光変調層1に入射して各変調ユニット5の光変調作用を経つ。この過程では、各変調ユニット5における異なる領域の変調作用が異なるため、透過スペクトルも異なり。更に、各変調ユニットの下方には、それぞれ、画像センシング層2上での複数の検知ユニット7が対応して設置され、図4及び図5から分かるように、複数組のピクセル確認モジュールが対応して作用することで、図4における各変調ユニット5における各領域は、それぞれ、図5における各検知ユニット7における各検知サブユニット9と対応し、このように各検知サブユニット9が得る透過スペクトルは異なるため、各変調サブユニットと各検知サブユニット9はそれぞれ1組のピクセル確認サブモジュールを構成することができ、各サブモジュールは1つのピクセル点内の一部分のスペクトル情報をそれぞれ認識することができ、従って、各領域のサブモジュールを統合すると、1つのピクセル点の複数のスペクトル情報を取得することができる。更に各ピクセル点を統合すると、当該画像のすべてのピクセル点を取得してこれに基づいて虹彩画像を再構築して得ることができる。理解できるように、各検知サブユニット9に対応する変調ユニットにおける2次元パターン構造は同じであるため、画像の異なる空間位置の光が同じ変調作用を経た後の応答を取得し、同一の周波数での虹彩画像を取得することができる。
【0045】
(実施例2)
本実施例2に係る画像取得チップ300及び物体イメージング認識設備の構造、原理、物体イメージング認識方法、及びチップ製造方法は、いずれも実施例1と基本的に同じであり、同じ点についてここで説明しない。相違点は次の通りである。
【0046】
図7に示すように、本実施例に係る画像取得チップ300では、光変調層1に設けられる各変調ユニット5では、各2次元パターン構造内のすべての変調孔6は、各々の特定の断面形状をぞれぞれ有しており、各変調孔6は、特定の断面形状に従って自由に組み合わせて配列される(即ち、規則がないランダム配列)。具体的には、当該2次元パターン構造内において、一部の変調孔6の特定の断面形状は同じであり、同じ特定の断面形状を有する各変調孔6は複数の変調孔6の群を構成し、各変調孔6の群の特定の断面形状は互いに異なり、且つすべての変調孔6は自由に組み合わされている。
【0047】
理解できるように、当該変調ユニット5は、全体として、1種の特定の波長のスペクトルを変調するものと見なされてもよく、光変調の柔軟性と多様性を高めるために、複数種の異なる波長のスペクトルを変調できるように、いくつかのマイクロナノ変調サブユニットに自由に分割されてもよい。
【0048】
(実施例3)
本実施例3に係る画像取得チップ300及び物体イメージング認識設備の構造、原理、物体イメージング認識方法、及びチップ製造方法は、いずれも実施例2と基本的に同じであり、同じ点についてここで説明しない。相違点は次の通りである。
【0049】
本実施例に係る画像取得チップ300の光変調層1には、2つ又は2つ以上の変調ユニット5が配列されている。各変調ユニット5において、更に少なくとも2つの変調サブユニットに分割される。各変調サブユニット内におけるすべての変調孔6は、それぞれ、特定の断面形状に従って組み合わせて配列され、かつその配列の順序は、予定の周期順序で行ごと又は列ごとに配列され、各変調ユニット5の同じ領域の変調サブユニットにおける変調孔6の断面形状及び配列周期は同じである。これにより、各変調ユニット5の異なる位置の変調サブユニットは、同一の入射光に対していずれも異なる変調作用を有する。変調の必要に応じて、変調ユニット5における変調孔6の構造パラメーターの漸次変化順序及び/又は変調孔6の特定の断面形状を変更すると、現在の変調ユニット5の変調作用及び/又は変調対象を変更することができる。
【0050】
具体的には、図8に示すように、光変調層1の光変調層上には6つの変調ユニット5が分布し、3つの変調ユニット5ごとに一行であり、合計2行であり、具体的には、それぞれ、第1行の第1の変調ユニット11、第2の変調ユニット12、第3の変調ユニット13、及び対応して第2行に配列されている第4の変調ユニット14、第5の変調ユニット15、第6の変調ユニット16である。各変調ユニットは、それぞれ同じ構造比に従って、さらに4つの変調サブユニットに分割され、具体的には、それぞれ、ユニットアレイの左上角に位置する第1の変調サブユニット110、ユニットアレイの右上角に位置する第2の変調サブユニット111、ユニットアレイの左下角に位置する第3の変調サブユニット112、及びユニットアレイの右下角に位置する第4の変調サブユニット113である。
【0051】
そのうち、各変調ユニット5の同じ領域の変調サブユニットにおける変調孔の構造パラメーター及び配列周期はいずれも同じである。具体的には、第1の変調サブユニット110及び第2の変調サブユニット111内における変調孔6はいずれも円形であるが、変調孔6の内径が異なる。このように、第1の変調サブユニット110は入力スペクトルに対して第1種の変調方式を有し、第2の変調サブユニット111は入力スペクトルに対して第2種の変調方式を有する。第3の変調サブユニット112における変調孔6はいずれも楕円形であり、当該第3の変調サブユニット112は入力スペクトルに対して第3種の変調方式を有し、第4の変調サブユニット113における変調孔6はいずれも三角形であり、当該第4の変調サブユニット113における各変調孔6は構造パラメーターの大きさに応じて行ごと、列ごとに周期的に配列され、このように、当該第4の変調サブユニット113は入力スペクトルに対して第4種の変調方式を有する。このように、異なる変調ユニット5における同じ位置の変調サブユニットの構造は同じであるが、異なる位置の変調サブユニットは互いに異なるため、同一の入射光に対する各変調サブユニットの変調作用が異なる。各変調サブユニットはそれぞれ画像センシング層2での1つの検知サブユニットに対応する。
【0052】
理解できるように、本実施例に係る「異なる波長の光に対してある種類の変調方式を有する」ことは、散乱、吸収、透射、反射、干渉、表面プラズモン、共鳴等の作用を含むが、これらに限定されない。第1種、第2種、及び第3種の光変調方式は互いに異なる。変調ユニット5内における変調孔6の構造に対する設置により、異なるユニット間のスペクトル応答の相違を向上させることができ、ユニットの数を増やすことにより、異なるスペクトル間の相違に対する感度を向上させることができる。
【0053】
理解できるように、異なる入射スペクトルを測定する場合、各変調ユニット5内における変調孔6の構造パラメーターを変更することにより変調作用を変更することができ、構造パラメーターの変更は、2次元パターン構造の変調孔の配列周期、変調孔の半径、及び変調ユニットの辺の長さ、デューティ比、及び厚さ等の各パラメートのうちの1種及びこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。そのうち、デューティ比とは、変調ユニット5の総面積に対する変調孔6の面積の比をいう。
【0054】
本実施例では、光変調層1は、厚さが200nm~500nmの窒化ケイ素平板からなる。光変調層1には、合計で1000~250000個の変調ユニット5が設けられ、各変調ユニット5の面積範囲は200μm2 ~40000μm2である。各変調ユニット5の内部では、変調孔6の特定の断面形状として、様々な幾何学的形状が採用され、各変調ユニット5内では、同一の形状で周期に配列され、そのデューティ比が10%~90%である。その他の構造は、実施例1又は実施例2と同じである。
【0055】
各変調ユニット5は、それぞれその下方の検知ユニットと共に1つのピクセル点を構成する。アルゴリズムにより1つのピクセル点での各波長の強度分布を得ることができる。異なるユニットの同じ位置のサブモジュールを統合してピクセル点での同一の変調方式下での画像を構成して、複数のピクセル点が複数のスペクトル情報を含む画像を構成する。
【0056】
(実施例4)
本実施例4に係る画像取得チップ300、及び物体イメージング認識設備の構造、原理、物体イメージング認識方法、及びチップ製造方法は、いずれも実施例3と基本的に同じであり、同じ点についてここで説明しない。相違点は次の通りである。各変調ユニット5には、それぞれ同じ領域での変調サブユニット内に任意の変調孔6が設けられていない。図9に示されるものを例として、第1の変調サブユニット110、第2の変調サブユニット111、及び第3の変調サブユニット112は、それぞれ、ある特定波長の光に対して狭帯域フィルタリング作用を有し、第4の変調サブユニット113には変調孔6が設けられていないため、入射光は当該第4の変調サブユニット113の領域を直接通過する。
【0057】
それに対応して、各変調サブユニットの下方には対応する検知サブユニットがそれぞれ設けられ、このように、光は、第1の変調サブユニット110、第2の変調サブユニット111、及び第3の変調サブユニット112の各々の狭帯域フィルタリングを経た後、それぞれ対応する検知サブユニット内の光センサにより光強度が検出され、第4の変調サブユニット113を通過した光について、狭帯域フィルタリング作用が有しないため、その対応する検知サブユニット9が検出された光強度を比較項とすることができる。前の3組の光強度をそれぞれ第4の組光強度と差分処理することで、各波長の狭帯域フィルタリングを経た後の光強度を得ることができる。また、設置された第4の変調サブユニット113は、物体の境界を特定することにも使用できる。
【0058】
理解できるように、本実施例に係るマイクロ統合画像取得チップ300では、実施例1に係る変調ユニット5、又は実施例2に係る変調ユニット5、又は実施例3に係る変調ユニット5、又は実施例1、実施例2及び実施例3に係る変調ユニット5の任意の組み合わせを使用することができる。
【0059】
(実施例5)
本実施例5は、上記のいずれかの実施例に係る画像取得チップ300及び物体イメージング認識設備の構造、原理、物体イメージング認識方法、及びチップ製造方法に基づいて、画像取得チップ300、物体イメージング認識設備、及び物体イメージング認識方法を提供する。本実施例5と前述の各実施例との同じ点についてここで説明しない。相違点は次の通りである。
【0060】
図10に示すように、本実施例5に係る画像取得チップ300は、光変調層1と画像センシング層2との間に位置する光透過媒体層4を更に備える。具体的には、当該光透過媒体層4は、厚さが50nm~1μm、材料がシリカであってもよい。
【0061】
本実施例に係るマイクロ統合画像取得チップ300では、光変調層1を製造する際には直接堆積成長のプロセスを採用すると、化学気相堆積、スパッタリング、及びスピンコーティング等の方式により当該光透過媒体層4を画像センシング層2に被覆してから、光変調層1の一部をその上に堆積及びエッチングすればよい。転移プロセスの方式を採用すると、シリカを光変調層1の製造基板とし、基板の上半分に対する直接マイクロナノ開孔加工で光変調層1を製造してから、シリカ基板の下半分を直接光透過媒体層4とし、製造された光変調層1と光透過媒体層4の2つの部分を全体として画像センシング層2に転移すればよい。
【0062】
理解できるように、本実施例に係る光透過媒体層4は、画像センシング層2上方の光変調層1を全体として、画像センシング層2に対してぶら下がり状態になるように、外部支持構造を介して支持するように設置されてもよく、こうすると、光変調層1と画像センシング層2との間の空气部分は光透過媒体層4である。
【0063】
(実施例6)
本実施例6は、上記のいずれかの実施例に係る画像取得チップ300及び物体イメージング認識設備の構造、原理、物体イメージング認識方法、及びチップ製造方法に基づいて、画像取得チップ300、物体イメージング認識設備及び物体イメージング認識方法を更に提供する。本実施例6と上記各実施例との同じ点についてここで説明しない。相違点は次の通りである。
【0064】
図11に示すように、本実施例6に係る画像取得チップ300では、各変調孔6はいずれも光変調層を貫通していない。理解できるように、変調孔6が光変調層を貫通しているかどうかにかかわらず、光変調層1の変調作用に悪影響を与えない。これは、光変調層1に用いられるシリコンベース材料又は他の材料がいずれも透光材料であり、スペクトルが光変調層1に入射すると、各変調ユニット5の構造に影響されて変調作用が生じるが、変調孔6の底部がスペクトル変調に悪影響を与えないからである。
【0065】
本実施例に係る画像取得チップ300では、光変調層1の変調孔6の底部から光変調層の底部までの厚さは60nm~1200nm、光変調層全体の厚さは120nm~2000nmである。
【0066】
(実施例7)
本実施例7は、上記のいずれかの実施例に係る画像取得チップ300及び物体イメージング認識設備の構造、原理、物体イメージング認識方法、及びチップ製造方法に基づいて、画像取得チップ300、物体イメージング認識設備、及び物体イメージング認識方法を更に提供する。本実施例7と上記各実施例との同じ点についてここで説明しない。相違点は次の通りである。
【0067】
図12及び図13に示すように、本実施例7に係る画像取得チップ300中では、光変調層1の光変調層上には、6つの変調ユニット55が分布し、それぞれ第1の変調ユニット11、第2の変調ユニット12、第3の変調ユニット13、第4の変調ユニット14、第5の変調ユニット15、及び第6の変調ユニット16であり、そのうち、第1の変調ユニット11、第3の変調ユニット13、及び第4の変調ユニット14は、実施例3に係る変調ユニット5の周期的構造を用いて設置されているが、第2の変調ユニット12、第5の変調ユニット15、及び第6の変調ユニット16は、実施例1に係る変調ユニット5の漸次変化の構造を用いて設置されている。
【0068】
理解できるように、スペクトル変調の必要に応じて、対応する位置の変調ユニット5は、実施例1から実施例4のいずれかの適切な変調ユニット5の構造を用いて設置されればよい。これで分かるように、本実施例7に係る光変調層1は、異なるユニット間の異なる変調孔6の特定の断面形状の区別、及び同一のユニット内における特定の変調孔6の配列方式により、変調孔6の特定の断面形状、変調孔6の構造パラメーター、及び変調孔6の配列周期を変更することで異なる波長のスペクトルに対して異なる変調作用を与えることを実現する。
【0069】
理解できるように、実施例1と実施例2の漸次変化式アレイの変調ユニット5の構造に対して、その任意に分割された変調ユニット5は、スペクトルに対して、いずれも異なる変調効果を持っており、理論的には、無数組の変調後のスペクトルサンプルを取得でき、これにより、元のスペクトルを再構築するためのデータの量が大幅に増加して、広帯域スペクトルのスペクトルパターンの復元に役立つ。
【0070】
実施例3及び実施例4に係る周期式変調ユニット5の構造に対して、その周期構造は2次元周期の分散、共鳴作用を生じさせることができ、共鳴作用は、フォトニック結晶のエネルギーバンド制御、及び2次元格子の共鳴等の原理を含むが、これらに限定されない。共鳴作用により、特定の波長に対する検出の精度を高めることができる。
【0071】
上記の実施例1、実施例2、実施例3、及び実施例4における変調ユニット5をチップ300に同時に応用する場合、上記2種の利点を組み合わせることができる。かつ、光変調層のサイズ範囲をアッパーカットする場合、上記の3つの実施例に係る画像取得チップ300は、いずれもミクロンオーダーまたはそれより小さい構造に製造されることができ、これは、マイクロ統合画像取得チップ300の小型化・微型化生産及び使用にとって重要な意義を有する。チップ300の全体サイズはカメラモジュールと同等であり、 1cm×1cm×0.4cmより小さい様式にすることができ、当該チップ300は、携帯電話、スマートウォッチ等の携帯用モバイル設備に搭載することができる。また、上記の光変調層1は、異なる画像検知器からなる画像センシング層2と組み合わせて、原則として、全帯域のスペクトル検出を実現することができ、それにより画像取得チップ300の広域スペクトルの検出性能を更に向上させる。
【0072】
(実施例8)
本実施例8は、上記のいずれかの実施例に係る画像取得チップ300及び物体イメージング認識設備の構造、原理、物体イメージング認識方法、及びチップ製造方法に基づいて、微型スペクトルイメージングチップ300、スペクトルイメージング設備、及びスペクトルイメージング方法を更に提供する。ターゲット物体2は任意の物体に拡張できる。図1に示すように、まず、可視光から近赤外までの広域スペクトル光源100がターゲット物体200に照射し、その後反射光が画像取得チップ300に取得される。或いは、光源100を省略して、直接、ターゲット物体200から光が画像取得チップ300に照射して取得される。その後、図3及び図4に示すように、当該入射光は光変調層1に入射して各変調ユニット5の光変調作用を経つ。この過程では、各変調ユニット5における異なる領域の変調作用が異なるため、透過スペクトルも異なる。更に、各変調ユニットの下方には、それぞれ、画像センシング層2上での複数の検知ユニット7が対応して設置され、図4及び図5から分かるように、複数組のピクセル確認モジュールに対応して作用することで、図4における各変調ユニット5における各領域は、それぞれ、図5における各検知ユニット7における各検知サブユニット9と対応し、このように各検知サブユニット9が得る透過スペクトルは異なるため、各変調サブユニットと各検知サブユニット9はそれぞれ1組のピクセル確認サブモジュールを構成することができ、各サブモジュールは1つのピクセル点内の一部分のスペクトル情報をそれぞれ認識することができ、従って、各領域のサブモジュールを統合すると、1つのピクセル点の複数のスペクトル情報を取得することができる。更に各ピクセル点を統合すると、当該画像のすべてのピクセル点を取得してこれに基づいてターゲット物体画像を再構築して得ることができる。理解できるように、各検知サブユニット9に対応する変調ユニットにおける2次元パターン構造は同じであるため、画像の異なる空間位置の光が同じ変調作用を経た後の応答を取得し、同一の周波数でのターゲット物体画像を取得することができる。
【0073】
以上のように、本公開の各実施例に係る画像取得チップ300は、光変調層1、画像センシング層2、及び少なくとも2組のピクセル確認モジュールを備え、光変調層1は画像センシング層2の上に位置し、各組のピクセル確認モジュールは、いずれも変調ユニット5及び検知ユニット7を備え、各変調ユニット5及び各検知ユニット7は、光変調層1及び画像センシング層2に上下に対応して配置され、各組のピクセル確認モジュールによりスペクトルに対して光強度の検知を行うことで、各ピクセル点のピクセルデータを決定して、すべてのピクセルデータを統合して、最終的な出力画像を構成する。当該画像取得チップ300は、既存の物体イメージング認識設備における複雑且つ精密な分光素子及び多すぎる画像センサに取って代わって、変調ユニット5及び検知ユニット7を利用してそれぞれスペクトルを変調して光強度を検出することができ、これにより、正確な画像再構築の過程が実現され、画像取得チップ300は、格子、プリズム、ミラー、又は他の類似する空間分光素子を必要せずに光強度の検出作動を行うことができ、そして、物体イメージング認識設備の体積を大幅に減らすとともに、光強度検出の精密性を向上させることができ、物体イメージング認識設備は、高い測定精度、優れた携帯性、リアルタイムのオンライン検出、簡単な操作、安定した性能、低い製造コスト等の利点を有するようになる。
【0074】
当該画像取得チップ300では、各変調ユニット内には少なくとも1つの変調サブユニットがそれぞれ設けられ、各変調サブユニット内にはいくつかの光変調層1に穿設された変調孔6がそれぞれ設けられ、同一の変調サブユニット内における各変調孔6は特定の配列規則を有する2次元パターン構造に配列される。当該チップ300は、オプトロニクスにおける変調ユニット5アレイに基づいて異なる波長の光に対する変調作用を実現でき、且つ各変調ユニット5には複数の変調サブユニットが対応してネストされているので、複数のスペクトルの物体画像情報を同時に取得することができ、スペクトル認識率が大幅に向上し、誤認識率が減少する。虹彩認識に使用されると、偽造防止のための生体検知に役立て、解読や偽造の困難性を高めるとともに、コンタクトレンズ、美容レンズ、さまざまな照明条件に引き起こされる干渉を減らすことができ、既存の物体イメージング認識設備が高価で小型化できないという問題を克服した。
【0075】
本公開の実施例は、例示、説明するためのものであり、網羅的なものではなく、又は本公開を開示された形態に限定するものではない。多くの修正及び変更は当業者にとって明らかである。実施例は、本公開の原理及び実際の応用をよりよく説明し、当業者が本公開を理解して特定の用途に適した様々な修正を与えた様々な実施例を設計できるようにするために選択して説明された。
【0076】
本公開の説明において、特に明記しない限り、「複数」及び「いくつか」とはいずれも二つ又は二つ以上を意味し、特に明記しない限り、「ノッチ状」とは平らな断面以外の形状を意味する。「上」、「下」、「左」、「右」、「内」、「外」、「前端」、「後端」、「ヘッド」、「テール」等の用語で示す方位又は位置関係は、図示に基づく方位又は位置関係であり、本公開を便利に又は簡単に説明するためのものだけであり、示された装置又は素子が必ず特定の方位にあり、特定の方位で構造され、操作されると指示又は暗示するものではないため、本公開に対する限定と理解されるべきではない。また、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、説明するためのものに過ぎず、比較的な重要性を指示又は暗示すると理解されるべきではない。
【0077】
本公開の説明において、明確な規定と限定がない限り、「取り付け」、「互いに接続」、「接続」等の用語の意味は広く理解されるべきであり、例えば、固定接続や、着脱可能な接続や、あるいは一体的な接続でも可能であり、機械的な接続や、電気的な接続でも可能であり、直接互いに接続することや、中間媒体を介して間接に互いに接続することも可能である。当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の本公開での具体的な意味を理解することができる。
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