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特許7232536投与管理装置、投与管理方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】投与管理装置、投与管理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/72 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
G01N33/72 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020538489
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2019033057
(87)【国際公開番号】W WO2020040294
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2018157561
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤川 哲也
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0128532(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0200181(US,A1)
【文献】国際公開第2014/200054(WO,A1)
【文献】特表2013-516680(JP,A)
【文献】特開2015-000109(JP,A)
【文献】国際公開第2018/229739(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の目標血色素値と、前記患者の現在の血色素値と、単位期間において赤血球造血刺激因子製剤が非投与である場合に前記患者の血色素値が低下する量を示す前記単位期間あたりの固有低下量と、前記単位期間あたりの許容最大単位量の前記赤血球造血刺激因子製剤を前記単位期間において投与した場合に前記患者の血色素値が上昇する量であって、前記単位期間において前記赤血球造血刺激因子製剤が非投与である場合における血色素値を基準とした相対的な上昇量を示す前記単位期間あたりの固有上昇量とに基づいて、前記患者に対する前記単位期間あたりの前記赤血球造血刺激因子製剤の投与量を算出する投与量算出部と、
を備える投与管理装置。
【請求項2】
前記投与量算出部は、前記目標血色素値と前記患者の現在の血色素値の差に前記単位期間あたりの固有低下量を加算した値と、前記単位期間あたりの許容最大単位量を前記単位期間あたりの固有上昇量で除して得られる前記患者の血色素値の上昇量当たりの前記赤血球造血刺激因子製剤の単位量と、を乗じることにより前記単位期間あたりの前記赤血球造血刺激因子製剤の投与量を算出する
請求項1に記載の投与管理装置。
【請求項3】
前記単位期間において過去に前記患者に対して適用された前記赤血球造血刺激因子製剤の投与量の統計値を取得する投与量統計値取得部と、
前記統計値と、前記患者の過去の前記単位期間あたりの固有低下量と、前記患者の過去の前記単位期間あたりの固有上昇量と、に基づいて前記患者の前記単位期間あたりの血色素値の変化量を算出する血色素値変化量算出部と、
前記患者の単位期間あたりの血色素値の変化量に基づいて、新たな前記単位期間あたりの固有上昇量を算出する固有上昇量算出部と、
をさらに備える請求項1または請求項2に記載の投与管理装置。
【請求項4】
前記固有上昇量算出部は、前記患者の過去の前記単位期間あたりの固有上昇量と前記新たな単位期間あたりの固有上昇量とを用いて、前記過去の前記単位期間あたりの固有上昇量に、前記新たな単位期間あたりの固有上昇量よりも多い重みづけがされる重みづけ平均値を示す固有上昇量を算出する
請求項3に記載の投与管理装置。
【請求項5】
前記血色素値変化量算出部は、前記赤血球造血刺激因子製剤の前記単位期間あたりの前記許容最大単位量に対する前記単位期間あたりの前記赤血球造血刺激因子製剤の投与量の統計値の割合に、前記単位期間あたりの固有上昇量を乗じることにより得られた値から、前記単位期間あたりの固有低下量を減じて、前記患者の前記単位期間あたりの血色素値の変化量を算出する
請求項3または請求項4に記載の投与管理装置。
【請求項6】
前記単位期間あたりの固有上昇量として、網状赤血球血色素測定の測定結果に基づいて特定された固有上昇量を取得する固有上昇量取得部と、をさらに備え、
前記投与量算出部は、取得した前記固有上昇量を用いて前記患者に対する前記単位期間あたりの前記赤血球造血刺激因子製剤の投与量を算出する
請求項1または請求項2に記載の投与管理装置。
【請求項7】
前記患者の前記単位期間あたりの前記固有上昇量を、前記患者が属する身体特性グループに応じた固有上昇量算出式に基づいて算出する固有上昇量算出部と、
をさらに備える請求項1または請求項2に記載の投与管理装置。
【請求項8】
前記患者の前記単位期間あたりの前記固有低下量を、前記患者が属する身体特性グループに応じた固有低下量算出式に基づいて算出する固有低下量算出部と、
をさらに備える請求項1から請求項7の何れか一項に記載の投与管理装置。
【請求項9】
前記患者の状態が良好である場合の前記赤血球造血刺激因子製剤が非投与時の臨床データを取得し、前記臨床データに基づいて、前記単位期間あたりの前記固有低下量を算出する固有低下量算出部と、
をさらに備える請求項1から請求項7の何れか一項に記載の投与管理装置。
【請求項10】
前記患者の過去の前記単位期間あたりの固有低下量と新たな前記単位期間あたりの固有低下量とを用いて、前記過去の前記単位期間あたりの固有低下量に、前記新たな単位期間あたりの固有低下量よりも多い重みづけがされる重みづけ平均値を示す固有低下量を算出する固有低下量算出部と、
をさらに備える請求項1から請求項7の何れか一項に記載の投与管理装置。
【請求項11】
投与管理装置が、
患者の目標血色素値と、前記患者の現在の血色素値と、単位期間において赤血球造血刺激因子製剤が非投与である場合に前記患者の血色素値が低下する量を示す前記単位期間あたりの固有低下量と、前記単位期間あたりの許容最大単位量の前記赤血球造血刺激因子製剤を前記単位期間において投与した場合に前記患者の血色素値が上昇する量であって、前記単位期間において前記赤血球造血刺激因子製剤が非投与である場合における血色素値を基準とした相対的な上昇量を示す前記単位期間あたりの固有上昇量とに基づいて、前記患者に対する前記単位期間あたりの前記赤血球造血刺激因子製剤の投与量を算出する
ことを含む投与管理方法。
【請求項12】
投与管理装置のコンピュータに、
患者の目標血色素値と、前記患者の現在の血色素値と、単位期間において赤血球造血刺激因子製剤が非投与である場合に前記患者の血色素値が低下する量を示す前記単位期間あたりの固有低下量と、前記単位期間あたりの許容最大単位量の前記赤血球造血刺激因子製剤を前記単位期間において投与した場合に前記患者の血色素値が上昇する量であって、前記単位期間において前記赤血球造血刺激因子製剤が非投与である場合における血色素値を基準とした相対的な上昇量を示す前記単位期間あたりの固有上昇量とに基づいて、前記患者に対する前記単位期間あたりの前記赤血球造血刺激因子製剤の投与量を算出する、
ことを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤血球造血刺激因子製剤の投与管理装置、投与管理方法、プログラムに関する。
この出願は、2018年8月24日に出願された日本国特願2018-157561を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【背景技術】
【0002】
血液透析患者の多くが腎性貧血を合併し、腎性貧血は主たる予後憎悪因子のひとつである。実臨床では患者の血色素値が目標範囲から外れた場合、主治医は、腎性貧血治療薬である赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の投与量を決定し、患者の血色素値をコントロールしている。特許文献1には赤血球寿命から患者の目標血色素値となる血色素産生速度を決定し、必要なESA投与量を決定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6190632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで上述の特許文献1の技術は1日あたりの患者の血色素値(ヘモグロビン濃度)の単位期間あたりの低下量が一定であるものとして血色素産生速度を決定し、必要なESA投与量を決定している。しかしながら血色素値の単位期間あたりの低下量は患者やその患者の身体特性毎に異なる。また赤血球造血刺激因子製剤の投与量に応じた血色素値の単位期間あたりの上昇量も患者やその患者の身体特性毎に異なり、かつ血色素値の単位期間あたりの低下量の影響を受ける。従って、患者に応じたより適切な赤血球造血刺激因子製剤の単位期間あたりの投与量を容易に把握できる技術が求められている。また、そのような技術として、網状赤血球血色素測定により確認された新規血色素産生反応を根拠とし、赤血球造血刺激因子製剤の単位期間あたりの投与量によって、血色素値の単位期間あたりの変化量を予測する技術に基づく技術が求められる。しかしながら、血色素値変化量予測技術は存在しない。
【0005】
そこでこの発明は、血色素値変化量予測技術を開発し、上述の課題を解決する投与管理装置、投与管理方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、投与管理装置は、患者の目標血色素値と、前記患者の現在の血色素値と、単位期間において赤血球造血刺激因子製剤が非投与である場合に前記患者の血色素値が低下する量を示す前記単位期間あたりの固有低下量と、前記単位期間あたりの許容最大単位量の前記赤血球造血刺激因子製剤を前記単位期間において投与した場合に前記患者の血色素値が上昇する量であって、前記単位期間において前記赤血球造血刺激因子製剤が非投与である場合における血色素値を基準とした相対的な上昇量を示す前記単位期間あたりの固有上昇量とに基づいて、前記患者に対する前記単位期間あたりの前記赤血球造血刺激因子製剤の投与量を算出する投与量算出部と、を備える。
【0007】
上述の投与管理装置において、前記投与量算出部は、前記目標血色素値と前記患者の現在の血色素値の差に前記単位期間あたりの固有低下量を加算した値と、前記単位期間あたりの許容最大単位量を前記単位期間あたりの固有上昇量で除して得られる前記患者の血色素値の上昇量当たりの前記赤血球造血刺激因子製剤の単位量と、を乗じることにより前記単位期間あたりの前記赤血球造血刺激因子製剤の投与量を算出してよい。
【0008】
また上述の投与管理装置は、前記単位期間において過去に前記患者に対して適用された前記赤血球造血刺激因子製剤の投与量の統計値を取得する投与量統計値取得部と、前記統計値と、前記患者の過去の前記単位期間あたりの固有低下量と、前記患者の過去の前記単位期間あたりの固有上昇量と、に基づいて前記患者の前記単位期間あたりの血色素値の変化量を算出する血色素値変化量算出部と、前記患者の単位期間あたりの血色素値の変化量に基づいて、新たな前記単位期間あたりの固有上昇量を算出する固有上昇量算出部と、をさらに備えてよい。
【0009】
上述の投与管理装置において、前記固有上昇量算出部は、前記患者の過去の前記単位期間あたりの固有上昇量と前記新たな単位期間あたりの固有上昇量とを用いて、前記過去の前記単位期間あたりの固有上昇量に、前記新たな単位期間あたりの固有上昇量よりも多い重みづけがされる重みづけ平均値を示す固有上昇量を算出してよい。
【0010】
上述の投与管理装置において、前記血色素値変化量算出部は、前記赤血球造血刺激因子製剤の前記単位期間あたりの前記許容最大単位量に対する前記単位期間あたりの前記赤血球造血刺激因子製剤の投与量の統計値の割合に、前記単位期間あたりの固有上昇量を乗じることにより得られた値から、前記単位期間あたりの固有低下量を減じて、前記患者の前記単位期間あたりの血色素値の変化量を算出してよい。
【0011】
上述の投与管理装置は、前記単位期間あたりの固有上昇量として、網状赤血球血色素測定の測定結果に基づいて特定された固有上昇量を取得する固有上昇量取得部と、をさらに備え、前記投与量算出部は、取得した前記固有上昇量を用いて前記患者に対する前記単位期間あたりの前記赤血球造血刺激因子製剤の投与量を算出してよい。
【0012】
上述の投与管理装置は、前記患者の前記単位期間あたりの前記固有上昇量を前記患者が属する身体特性グループに応じた固有上昇量算出式に基づいて算出する固有上昇量算出部と、をさらに備えてよい。
【0013】
上述の投与管理装置は、前記患者の前記単位期間あたりの前記固有低下量を前記患者が属する身体特性グループに応じた固有低下量算出式に基づいて算出する固有低下量算出部と、をさらに備えてよい。
【0014】
上述の投与管理装置は、前記患者の状態が良好である場合の前記赤血球造血刺激因子製剤が非投与時の臨床データを取得し、前記臨床データに基づいて、前記単位期間あたりの前記固有低下量を算出する固有低下量算出部と、をさらに備えてよい。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、投与管理方法は、投与管理装置が、患者の目標血色素値と、前記患者の現在の血色素値と、単位期間において赤血球造血刺激因子製剤が非投与である場合に前記患者の血色素値が低下する量を示す前記単位期間あたりの固有低下量と、前記単位期間あたりの許容最大単位量の前記赤血球造血刺激因子製剤を前記単位期間において投与した場合に前記患者の血色素値が上昇する量であって、前記単位期間において前記赤血球造血刺激因子製剤が非投与である場合における血色素値を基準とした相対的な上昇量を示す前記単位期間あたりの固有上昇量とに基づいて、前記患者に対する前記単位期間あたりの前記赤血球造血刺激因子製剤の投与量を算出することを含む。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、プログラムは、投与管理装置のコンピュータに、患者の目標血色素値と、前記患者の現在の血色素値と、単位期間において赤血球造血刺激因子製剤が非投与である場合に前記患者の血色素値が低下する量を示す前記単位期間あたりの固有低下量と、前記単位期間あたりの許容最大単位量の前記赤血球造血刺激因子製剤を前記単位期間において投与した場合に前記患者の血色素値が上昇する量であって、前記単位期間において前記赤血球造血刺激因子製剤が非投与である場合における血色素値を基準とした相対的な上昇量を示す前記単位期間あたりの固有上昇量とに基づいて、前記患者に対する前記単位期間あたりの前記赤血球造血刺激因子製剤の投与量を算出する、ことを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、患者に応じたより適切な赤血球造血刺激因子製剤の単位期間あたりの投与量を算出する投与管理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による投与管理装置を含む投与管理システムの概略図である。
図2】本発明の一実施形態による投与管理装置のハードウェア構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による投与管理装置の機能ブロック図である。
図4】本発明の一実施形態による投与管理装置の処理フローを示す第一の図である。
図5】本発明の一実施形態による投与管理装置の処理フローを示す第二の図である。
図6】投与管理装置の変形例の機能ブロック図である。
図7】本発明の一実施形態による固有低下量、固有上昇量を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態による投与管理装置を図面を参照して説明する。
図1は本実施形態による投与管理装置1を含む投与管理システム100の概略図である。
図1で示すように投与管理装置1はコンピュータである。投与管理装置1は電子カルテサーバ2と通信接続し、患者の電子カルテ情報を取得することができてよい。投与管理装置1と電子カルテサーバ2とが通信接続することにより投与管理システム100が構成される。
【0020】
本実施形態による投与管理装置1は、患者の目標血色素値と、患者の現在の血色素値と、単位期間において赤血球造血刺激因子製剤(Erythropoiesis Stimulating Agents)が非投与である場合に患者の血色素値が低下する量を示す単位期間あたりの固有低下量とを取得する。また投与管理装置1は、単位期間あたりの許容最大単位量の赤血球造血刺激因子製剤を単位期間において投与した場合における患者の現在の血色素値を基準とした患者の血色素値が上昇する量と単位期間あたりの固有低下量との合計である単位期間あたりの固有上昇量を取得する。そして投与管理装置1は、これら患者の目標血色素値と、患者の現在の血色素値と、患者の単位期間あたりの固有低下量、患者の単位期間あたりの固有上昇量とを用いて、患者に対する単位期間あたりの赤血球造血刺激因子製剤の投与量を算出する。固有低下量および固有上昇量という文言における「固有」は、低下量および上昇量が患者(または、その患者の属するグループ)毎に固有であることを意味している。
【0021】
図2は本実施形態による投与管理装置1のハードウェア構成を示す図である。
図2が示すように投与管理装置1はCPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、通信モジュール105等の各ハードウェアを備えたコンピュータである。
【0022】
図3は投与管理装置1の機能ブロック図である。
投与管理装置1は電源が投入されると起動し、予め記憶する投与管理プログラムを実行する。これにより投与管理装置1には、制御部11、投与量統計値算出部12、血色素値変化量算出部13、固有上昇量算出部14、固有低下量算出部15、投与量算出部16、投与スケジュール管理部17の各機能が備わる。
【0023】
制御部11は、投与管理装置1の各機能部を制御する。
投与量統計値算出部12は、患者の血色素値を目標血色素値とするために単位期間において行われた赤血球造血刺激因子製剤の患者に対する過去の単位期間の投与量の統計値を算出する。
血色素値変化量算出部13は、赤血球造血刺激因子製剤の患者に対する過去の単位期間あたりの投与量の統計値と、過去の単位期間あたりの固有低下量と、過去の単位期間あたりの固有上昇量と、に基づいて患者の単位期間あたりの血色素値の変化量の予測値を算出する。
固有上昇量算出部14は、患者ごとの単位期間あたりの固有上昇量を算出する。
固有低下量算出部15は、患者ごとの単位期間あたりの固有低下量を算出する。
投与量算出部16は、患者の目標血色素値と、患者の現在の血色素値と、患者の単位期間あたりの固有低下量、患者の単位期間あたりの固有上昇量とを用いて、患者に対する単位期間あたりの赤血球造血刺激因子製剤の投与量を算出する。
投与スケジュール管理部17は、患者に対する単位期間あたりの赤血球造血刺激因子製剤の投与量に基づいて、その患者に対する赤血球造血刺激因子製剤の投与スケジュール情報を生成する。
【0024】
図4は投与管理装置1の処理フローを示す第一の図である。
次に投与管理装置1の処理フローについて順を追って説明する。
医師は例えば透析患者の透析を行う際に透析患者の血液を採取する。医師は透析患者の血液を検査業者に渡す。これにより検査業者は患者の血液の成分から現在の患者の血色素値を計測する。業者は血色素値を医師に伝える。医師は患者の現在の血色素値を投与管理装置1に入力する。投与管理装置1は患者の現在の血色素値を取得する(ステップS101)。
【0025】
投与管理装置1の制御部11は患者のID(識別情報)、現在の血色素値、日時、等の情報を電子カルテサーバ2に送信する。電子カルテサーバ2では患者のIDに紐づけて、現在の血色素値、過去の採血日ごとの血色素値、過去に一回または複数回患者に投与した単位期間あたりの赤血球造血刺激因子製剤(以下、ESAと呼ぶ)の各投与量、過去に一回または複数回算出した単位期間あたりのその患者の各固有低下量、過去に一回または複数回算出した単位期間あたりのその患者の各固有上昇量、年齢、性別、体重、身体特性に基づく患者の属するグループの識別情報(グループID)などの情報を記憶している。グループIDは例えば、ユーザの身体特性のうち、腎性貧血の度合、年齢、性別、体重等に基づいて設定されたグループの識別情報であってよい。
【0026】
本実施形態においてESAの一例はエリスロポエチン(EPO)であり、その場合、単位期間は1週間とする。なお、ESAの種類により単位期間は異なってよい。例えば、長い期間持続して赤血球造血刺激効果のあるESAでは2~4週間といった長めの単位期間が設定される。単位期間あたりの固有低下量は、単位期間においてESAが非投与である場合に患者の血色素値が低下する量を示す。単位期間あたりの固有上昇量は、単位期間あたりの許容最大単位量のESAを単位期間において投与した場合に患者の血色素値の固有低下量が無いと仮定した場合の上昇量(固有低下量+血色素値の計測開始時点からの上昇量)を示す。すなわち、単位期間あたりの固有上昇量は、単位期間あたりの許容最大単位量のESAを単位期間において投与した場合に患者の血色素値が上昇する量であって、単位期間において赤血球造血刺激因子製剤が非投与である場合における血色素値を基準とした相対的な上昇量を示す。これら固有低下量や固有上昇量は患者個人ごとに異なる。例えば、固有低下量や固有上昇量は患者個人ごとの年齢、性別、体重、血液量、赤血球寿命、造血能、透析回路内残血、採血量・採血頻度などにより異なる指標となる。ESAがEPOである場合には単位期間あたりに透析施行中の腎性貧血患者に投与できる許容最大単位量は日本国においては、9000IU(IU=国際単位)である。つまり医師は日本国において単位期間、すなわち1週間のうち0~9000IUのEPOを患者に投与することが許されている。
【0027】
投与管理装置1は患者の現在の血色素値の入力を受け付け、投与量の算出開始の指示が医師から与えられると、その指示の入力を検知する(ステップS102)。投与管理装置1の制御部11は、電子カルテサーバ2から投与量の算出処理に必要な情報を取得する(ステップS103)。例えば投与管理装置1は電子カルテサーバ2から患者IDに基づいて、過去の採血日ごとの血色素値、過去に一回または複数回患者に投与した単位期間あたりのESAの各投与量、過去に一回または複数回算出した単位期間あたりのその患者の各固有低下量、過去に一回または複数回算出した単位期間あたりのその患者の各固有上昇量、年齢、性別、体重、グループIDを取得する。
【0028】
そして投与管理装置1は患者に対する単位期間あたりのESAの新たな投与量の算出を開始する(ステップS104)。具体的には、まず、患者の目標血色素値を特定する(ステップS105)。例えば目標血色素値は医師が投与管理装置1に入力することにより制御部11が目標血色素値を取得して特定する。目標血色素値は予め投与管理装置1が記憶しておいてもよい。一例として目標血色素値は10.5g/dlである。また制御部11は医師により入力された現在の血色素値を特定する(ステップS106)。また制御部11は固有上昇量算出部14に患者の単位期間あたりの固有上昇量の算出を指示する。制御部11は固有低下量算出部15に患者の単位期間あたりの固有低下量の算出を指示する。以下、固有低下量と固有上昇量を血色素値変化量から求める場合について説明する。固有低下量と固有上昇量を血色素値変化量から求めることにより、精度が高く固有低下量と固有上昇量を求めることができる。
【0029】
固有上昇量算出部14は患者のグループIDに紐づいて記憶する固有上昇量算出式を取得する(ステップS107)。固有上昇量算出部14は固有上昇量算出式を用いて患者の固有上昇量を算出する(ステップS108)。固有上昇量算出式は、グループIDが示す患者の身体特性グループにおける各患者の情報(固有上昇量、単位期間あたり平均EPO投与量など)から統計処理を用いて特定された算出式である。一例として固有上昇量算出式は、以下の式(1)により示される。この算出式はグループに応じて変化する。
【0030】
【数1】
【0031】
固有低下量算出部15は患者のグループIDに紐づいて記憶する固有低下量算出式を取得する(ステップS109)。固有低下量算出部15は固有低下量算出式を用いて患者の固有低下量を算出する(ステップS110)。固有低下量算出式は、グループIDが示す患者の身体特性グループにおける各患者の情報(固有低下量、単位期間あたり平均EPO投与量など)から統計処理を用いて特定された算出式である。一例として固有低下量算出式は、以下の式(2)により示される。その算出式はグループに応じて変化する。
【0032】
【数2】
【0033】
そして投与量算出部16は、目標血色素値と患者の現在の血色素値の差に患者の単位期間あたりの固有低下量を加算した値と、患者の許容最大単位量を患者の固有上昇量で除して得られる患者の血色素値の上昇量当たりのESA単位量と、を乗じる(式(3)参照)。これにより投与量算出部16は、患者の単位期間あたりのESA(EPO)の投与量を算出する(ステップS111)。患者の血色素値の上昇量当たりのESA単位量は、過去の患者の固有上昇量とESA投与量の複数の関係を一次直線で近似した値としてもよい。
【0034】
【数3】
【0035】
以上の処理により、患者に対する単位期間あたりのESAの投与量を算出することができる。この投与量は、患者の身体特性に基づいて特定されるグループについて特定された血色素値の単位期間あたりの固有低下量と固有上昇量に基づいて算出される単位期間あたりの投与量である。従って投与管理装置1は患者に応じたより適切なESAの単位期間あたりの投与量を算出することができる。またその投与量を投与管理装置1のモニタに表示することにより、医師は、患者に応じたより適切なESAの単位期間あたりの投与量を容易に把握することができる。
【0036】
図5は投与管理装置1の処理フローを示す第二の図である。
上述の処理においては、患者が身体特性により属するグループに応じた算出式を用いて固有上昇量や固有低下量を算出しているが、他の手法により固有上昇量や固有低下量を特定または算出してもよい。この場合の処理フローについて図5を用いて説明する。
【0037】
ステップS101~ステップS106までの処理は図4で示した処理フローと同様である。そして次に投与量統計値算出部12(投与量統計値取得部)が、患者の血色素値を目標血色素値とするために単位期間において過去に患者に対して適用されたESAの投与量の統計値を取得する(ステップS207)。投与量統計値算出部12がこの統計値を算出してもよい。または投与量統計値算出部12は予め電子カルテサーバ2で算出されたこの統計値を電子カルテサーバ2から取得してもよい。投与量の統計値の算出は例えば、1または複数の過去の単位期間あたりの投与量の平均値であってよい。
【0038】
そして血色素値変化量算出部13は、ESA(EPO)の患者に対する過去の単位期間あたりの投与量の統計値と、患者の過去の単位期間あたりの固有低下量と、患者の過去の単位期間あたりの固有上昇量とを取得する。これらの情報は電子カルテサーバ2から取得した情報に含まれる。
【0039】
血色素値変化量算出部13は、ESAの単位期間あたりの許容最大単位量に対する単位期間あたりのESA投与量の統計値の割合に、単位期間あたりの固有上昇量を乗じ、またその値から単位期間あたりの固有低下量を減じて、患者の単位期間あたりの血色素値の変化量を算出してもよい。つまり、血色素値変化量算出部13は、それら投与量の統計値、固有低下量、固有上昇量を用いて式(4)により、目標血色素値となるようESAを患者に投与した後の単位期間あたりの血色素値変化量を算出することができる(ステップS208)。
【0040】
【数4】
【0041】
より具体的には式(4)はESAがEPOの場合、式(5)で表すことが出来る。
【0042】
【数5】
【0043】
そして固有上昇量算出部14は、患者の単位期間あたりの実測した血色素値の変化量(投与後血色素値変化量)や、上記式(5)により算出した血色素値の変化量(投与後血色素値変化量)に基づいて、新たな単位期間あたりの固有上昇量を算出する(ステップS209)。固有上昇量算出部14は、多くの場合は、実測した血色素値の変化量(投与後血色素値変化量)に基づいて固有上昇量を算出する。具体的にはESA(EPO)投与量とその投与量の投与時の単位期間あたりの血色素値の変化量がわかるため、式(6)により新たな単位期間あたりの固有上昇量を算出することができる。この固有上昇量は患者特有の固有上昇量である。
【0044】
【数6】
【0045】
図6に示すように、投与管理装置1は固有上昇量算出部14の代わりに固有上昇量取得部141を備え、固有上昇量取得部141が電子カルテサーバ2から患者IDに紐づいて記録されている固有上昇量の値を取得してもよい。例えば固有上昇量は、網状赤血球血色素測定の測定結果に基づいて特定された値が電子カルテサーバ2に記録されていてよい。
【0046】
なお網状赤血球血色素測定では新規の産生血色素量が測定でき、造血刺激が無いときを基底血色素生産量とし、造血刺激があるときの基底血色素産生量からの相対的な増加量を反応性血色素生産量とする。反応性血色素生産量はESA濃度に高度に相関する。通常の血色素値検査で求まる固有低下量は、基底血色素生産量と逆相関する。通常の血色素値検査における、固有低下量に対するESA投与による相対的な血色素増加量は、反応性血色素生産量に相当し、ESA投与量に高度に相関する。この相対的な血色素増加量は、許容最大単位量の赤血球造血刺激因子製剤を単位期間において投与した場合は、固有上昇量と一致する。固有上昇量と固有低下量は単回測定では誤差が生じる。このため、固有上昇量および固有低下量を繰り返し測定し平均化することで誤差の影響を減らすことができる。
【0047】
固有低下量算出部15は上述した式(2)を用いて新たな単位期間あたりの固有低下量を算出する(ステップS210)。
【0048】
固有低下量算出部15は固有低下量を実臨床において観察した値の入力を受け付けて、この受け付けた固有低下量を用いてもよい。例えば患者の状態が良好な場合にはESA投与時に血色素値の単位期間あたりの上昇量も比較的多いことが想定されるため、医師はその患者へのESA投与を一時中断するという判断もあり得る。この時にESAを非投与として単位期間あたりの血色素値の低下量を観察し、その値を固有低下量と推定してもよい。この実臨床の観察結果による固有低下量は患者特有の固有低下量である。別法として、固有低下量算出部15は状態が良くESA投与が中止された患者の日々の血色素値を含む臨床データを取得し、この臨床データに基づいて単位期間あたりの固有低下量を算出してもよい。
【0049】
固有上昇量算出部14や固有低下量算出部15は、患者の過去の単位期間あたりの固有上昇量や固有低下量と、新たな単位期間あたりの固有上昇量や固有低下量とを用いて、過去の単位期間あたりの固有上昇量や固有低下量に、新たな単位期間あたりの固有上昇量や固有低下量よりも多い重みづけがされる重みづけ平均を算出して、これらの値を新たな患者の単位期間あたりの固有上昇量や固有低下量としてもよい。この場合、例えば固有上昇量算出部14は、式(7)により新たな単位期間あたりの固有上昇量を算出する。
【0050】
【数7】
【0051】
または例えば固有低下量算出部15は、式(8)により新たな単位期間あたりの固有低下量を算出する。
【0052】
【数8】
【0053】
固有上昇量算出部14は、修正移動平均(MMA)の手法を用いて式(9)により新たな単位期間あたりの固有上昇量を算出してもよい。
【0054】
【数9】
【0055】
固有低下量算出部15は、修正移動平均(MMA)の手法を用いて式(10)により新たな単位期間あたりの固有低下量を算出してもよい。
【0056】
【数10】
【0057】
図7は固有低下量、固有上昇量を説明する図である。
ある時点Aでの現在の患者の血色素値が目標血色素値を下回る場合、医師は、時点Aから単位期間1週間後の時点Bにおいて血色素値が目標血色素値となるようにESAを投与する。この投与により図7中矢印L1で示すように単位期間において患者の血色素値が向上し目標血色素値に達することが望ましい。図7中の矢印L1は一例であり、患者の体調が悪い場合や血色素値と目標血色素値の乖離が大きい場合には患者の血色素値はより早期に目標血色素値付近に達することが望ましい。また図7には記載されていないが、患者の血色素値が目標血色素値を大きく上回る場合には、ESAの投与を中断するなどの処置がとられる。
【0058】
単位期間においてESAが非投与である場合の患者の血色素値の推移の一例をL2に示す。その非投与時に単位期間の始点である時点Aから単位期間後の時点Bまでの間に低下した血色素値の量を固有低下量とする。
また単位期間あたりの許容最大単位量のESAを投与した場合の患者の血色素値の推移の一例をL3に示す。単位期間あたりの許容最大単位量のESAを投与した場合に、単位期間の始点である時点Aから単位期間後の時点Bまでの間に上昇した血色素値の量と、固有低下量の値を加算した量が固有上昇量となる。
固有上昇量算出部14や、固有低下量算出部15は、上述の何れかの手法により固有上昇量や固有低下量を求め、過去の固有上昇量や固有低下量や最新の固有上昇量や固有低下量を用いて、個人間差、個人内差を反映し、機械学習により各患者の固有上昇量や固有低下量を算出するようにしてもよい。
【0059】
投与量算出部16は、目標血色素値と患者の現在の血色素値の差に患者の単位期間あたりの固有低下量を加算した値と、患者の許容最大単位量を患者の固有上昇量で除して得られる患者の血色素値の上昇量当たりのESA単位量と、を乗じる(式(3)参照)。これにより投与量算出部16は、患者に関する今後の新たな単位期間あたりのESA(EPO)の投与量を算出する(ステップS111)。そして投与管理装置1は新たに電子カルテサーバ2等に蓄積されたデータに基づいて、ESAの投与量の算出時に上述の処理を繰り返す。
【0060】
投与量算出部16は、算出した投与量が単位期間あたり許容最大単位量9000IUを超える場合には、許容最大単位量9000IUを今後の患者の単位期間あたりのESA(EPO)と特定する。
【0061】
投与量算出部16は、算出した投与量が患者個人に設定されている最低投与量未満となる場合には、最低投与量を今後の患者の単位期間あたりのESA(EPO)の投与量と特定してもよい。
【0062】
投与管理装置1の制御部11は入力された現在の血色素値が目標血色素値を基準とする所定範囲に含まれるような目標血色素に近似している場合には、患者に関する今後の新たな単位期間あたりのESA(EPO)の投与量を算出しなくてもよい。この場合、投与管理装置1の制御部11は、前回、患者について算出した投与量を、患者に関する今後の単位期間あたりのESA(EPO)の投与量と特定してもよい。
【0063】
そして投与スケジュール管理部17は、算出した今後の患者の単位期間あたりのESAの投与量を示す投与スケジュール情報を生成し、投与管理装置1のモニタに出力する。これにより医師は今後の患者の単位期間あたりのESAの投与量を確認し、その単位期間あたりのESAの投与量に基づくESA投与を医師の判断の下で行うことができる。
【0064】
以上の処理によれば、患者個人の固有上昇量や固有低下量に基づく適切な単位期間あたりのESAの投与量を算出して出力することができる。また医師はこの投与スケジュール情報を確認して患者に応じた単位期間あたりのESAの投与量に基づくESA投与を容易に行うことができる。
【0065】
また上述の投与管理装置の処理によれば、特別な追加検査を必要とせず、ESA投与量を算出し提示することができる。
過不足の無い投与量によるESA投与により血色素値が安定化することで、ESA投与量の調整頻度が低下し、患者の予後向上、医師や看護スタッフ等の診療業務を軽減することができる。
また上述のような処理により投与量の計算ミスや電子カルテ等への記録ミスを減らすことができる。
また患者に応じた投与量の適切な算出により、過剰投与を防ぐことができ、ESA投与量の削減により医療費削減が期待できる。
【0066】
投与スケジュール管理部17は、上述の処理により算出した患者に関する今後の新たな単位期間あたりのESA(EPO)の投与量に基づいて、その配分量を決定する。例えば、ESAの薬液が含まれる容器は異なる大きさで管理され、それぞれの薬液の容量が異なる。医師は患者に対する単位期間あたりの投与量と、単位期間あたりの予定来院回数、患者の現在の血色素値と目標血色素値との差に基づいて、どの大きさの容器をいつ利用して患者に投与するかを決定する必要がある。通常、その容器に含まれる薬液は、1回の患者の来院時に全て投与される。
【0067】
このような場合において、投与スケジュール管理部17は、例えば、患者の現在の血色素値とその目標血との差に基づいて患者の状態が良いか悪いかを判定する。投与スケジュール管理部17は、患者の現在の血色素値とその目標血色素値との差が所定閾値以上であれば患者の状態が悪いと判定してよい。また、現在の血色素値と予測血色素値が所定閾値以上であれば、同様に患者の状態が悪いと判定して良い。投与スケジュール管理部17は、患者の状態が悪いと判定した場合には、アラートを出すとともに、単位期間における投与量を来院予定回数に配分するとともに、早期に多くのESAの量を投与するよう配分してもよい。
【0068】
投与スケジュール管理部17は所定の投与量の配分管理算出式を用いて、単位期間あたりの予定来院回数ごとに利用する薬液容器の大きさを決定する。投与スケジュール管理部17は、週3回の血液透析治療を受ける場合は、1日または2日おきのESA投与となるよう投与スケジュール情報を生成する。しかしながら投与スケジュール管理部17は、この投与スケジュール情報の生成において、投与間隔が長くなる場合、その間に血色素値が低下しないように間隔が空く前の予定来院日に投与量が多くなるよう薬液容器の大きさを決定してもよい。
【0069】
投与スケジュール管理部17は患者の現在の血色素値に基づいて状態が悪くないと判定場合には、各来院予定日ごとに同量のESAが投与できるように薬液容器の大きさを決定してもよい。また投与スケジュール管理部17は、早期に目標血色素値に達するために先に多めのESAが投与できるように投与量が傾斜配分となるよう設定してもよい。各来院予定日ごとに決定する薬液容器の大きさは、ESAの種類によって、単位期間あたりの投与量、薬液容器の容量、計算時の患者の状態、単位期間あたりの予定来院回数など組み合わせにより、様々であるが、所定のアルゴリズムを用いて各来院時の薬液容器の大きさを決定する。
【0070】
上述の投与管理装置1は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、投与管理装置1に上述した各処理を行わせるためのプログラムは、その投与管理装置1のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムを投与管理装置1のコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータがそのプログラムを実行するようにしても良い。
【0071】
また、上記プログラムは、前述した各処理部の機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、赤血球造血刺激因子製剤の投与管理装置、投与管理方法、及びプログラムに適用しても良い。
【符号の説明】
【0073】
1・・・投与管理装置
2・・・電子カルテサーバ
11・・・制御部
12・・・投与量統計値算出部
13・・・血色素値変化量算出部
14・・・固有上昇量算出部
15・・・固有低下量算出部
16・・・投与量算出部
17・・・投与スケジュール管理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7