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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】c-METアゴニスト抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20230224BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230224BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61P9/10
A61P43/00 111
A61P43/00 105
C12N15/13
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020544090
(86)(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 CN2018112874
(87)【国際公開番号】W WO2019091306
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】201711116927.1
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520164541
【氏名又は名称】同済大学蘇州研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】房 健民
(72)【発明者】
【氏名】蒋 明
(72)【発明者】
【氏名】尹 衍新
(72)【発明者】
【氏名】郭 佳
(72)【発明者】
【氏名】干 麗華
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/135791(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、C07K、A61P、G01N、C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
c-METに結合できる抗体又はその機能的断片において、前記抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、且つ 前記重鎖は、SEQ ID NO: 9のCDR1、SEQ ID NO: 10のCDR2及びSEQ ID NO:11のCDR3の重鎖可変領域を含み、且つ 前記軽鎖は、SEQ ID NO:12のCDR1、SEQ ID NO:13のCDR2及びSEQ ID NO: 14のCDR3の軽鎖可変領域を含む、抗体又はその機能的断片。
【請求項2】
キメラ抗体又はその機能的断片、或いはヒト化抗体又はその機能的断片である、請求項1に記載の抗体又はその機能的断片。
【請求項3】
抗体-薬物コンジュゲートである、請求項1又は2に記載の抗体又はその機能的断片。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体又はその機能的断片、及び薬学的に許容される担体を含む、血管内皮障害性疾患の治療又は予防用で、該疾患が脳梗塞である医薬組成物。
【請求項5】
静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内若しくは皮下経路により投与され、又は経口経路により投与される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物は、静脈内注射剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2017年11月13日に中国特許庁へ提出された、出願番号が201711116927.1、発明の名称が「c-METアゴニスト抗体及びその用途」である中国特許出願に基づき優先権を主張し、その全内容は、援用により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、c-METアゴニスト抗体の、血管内皮細胞障害性疾患(例えば、虚血性心疾患又は血液脳関門障害性疾患を含む)を治療又は予防するための医薬の製造における使用、特に、脳梗塞又は心筋梗塞を治療又は予防するための医薬の製造における使用に関する。本発明は、さらに、具体的なc-METアゴニスト抗体に関する。
【背景技術】
【0003】
虚血組織は、血液灌流を回復させた後に、組織細胞の機能的・代謝障害及び構造的破壊の更なる悪化という病理学的過程を起こし、虚血再灌流障害(ischemia-reperfusion injury、 IR)と呼ばれる。臨床的には、様々な理由による臓器及び組織のすべての虚血及び低酸素症は、臓器移植、脳卒中、外傷性ショック、心筋梗塞、下肢虚血などの治療回復の過程でIRの問題を伴う。血管内皮細胞は、微小血管の内壁に付着した単層細胞であり、血管と組織の間のバリアを構成するだけでなく、さまざまな生理活性物質を分泌して血管緊張、血液凝固線溶バランス、炎症性免疫反応を調節することにより組織細胞の代謝を調節するハブである。脳血管内皮細胞は、さらに、血液脳関門の重要な構成要素であり、その損傷は多くの二次的な病理学的プロセスを引き起こす。最近の研究では、血管内皮細胞がIRが発生する重要な部位であることを発見している。微小血管内皮細胞を保護することは、IRを防ぐための鍵である。
【0004】
肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor、HGF)及びその受容体c-METは、保護するための効果的なターゲットであることが証明されている。HGFと受容体c-METの結合は、関連するシグナル伝達経路を活性化し、特異的に内皮細胞の増殖及び機能を促進・維持し、血管新生を促進し、さらに血管新生から側副循環を形成する。従って、HGF/c-METは、ターゲットとして血管の保護及び修復への研究に広く使用されている。中国特許出願の公開明細書CN101925362Aは、被験者の虚血性心臓組織への灌流及び心筋層中血管密度を増加し、内皮修復を強化し、並びに血管損傷又は病変血管部位への治療を提供する方法を含む、血管内皮細胞の増殖を促進するための医薬へ2種又はそれ以上のHGFアイソフォームを含む組成物の使用を提供する。
【0005】
現在、HGFは、依然としてin vivo及び臨床応用の方法論に大きな障害がある。HGFの血清半減期は非常に短く、5分間未満であるため、組換えHGFの応用が大幅に制限されている。このため、ウイルスベクターを介してHGF遺伝子を体内に直接導入する戦略を採用し、潜在的な臨床応用価値を研究するために虚血部位で内因的に持続的に発現させる。例えば、中国特許出願の公開明細書CN1502368Aは、脳虚血におけるHGF遺伝子を運ぶ組換えアデノウイルスの応用を開示しており、細胞内プラスミドの相同組換えによりヒト肝細胞増殖因子遺伝子をアデノウイルスベクターに組み込まれ、組換えアデノウイルスを得、一定量のウイルス粒子を作成し、脳虚血の動物モデル及び適当な遺伝子導入法を確立し、脳におけるアデノウイルスの発現を観察し、ヒト肝細胞増殖因子が脳虚血によって引き起こす神経細胞死を減らすことができることを示す。しかしながら、この方法は、依然として安全性及び治療効果の点を含め、満足のいくものではない。ベクターから細胞内に入り込むまではある程度の時間をかけるが、ベクター注入法を使用しても、HGFの即時発現は保証できないが、作用の迅速な開始を保証することは、血管内皮細胞の虚血性疾患または虚血性損傷(特に、脳梗塞又は心筋梗塞病)にとって特に重要である。よって、従来技術では、依然として血管内皮細胞損傷の修復を効果的に促進する方法が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、予想外に、c-METアゴニストが血管内皮細胞損傷の修復を効果的に促進でき、虚血性心疾患及び血液脳関門障害性疾患の治療に使用できることを発見している。c-METは、チロシンキナーゼ型受容体(receptor tyrosine kinase、 RTKs)に属し、2つのモノマーで構成され、各モノマーは、ジスルフィド結合で連結された二本鎖タンパク質である。c-METの活性化は、2つのモノマーの二量体化から開始し、それに伴い、チロシンキナーゼ領域は自己リン酸化し、シグナル伝達を引き起こす。抗体の二価構造により、2つのc-METモノマーを同時に結合でき、空間的に互いに接近させ、二量体化し、さらに、チロシンキナーゼの自己リン酸化が起こり、c-METを活性化する目的が達成される。
本発明者らは、c-METが血管内皮細胞を保護するための有効な標的であることを発見し、c-MET抗体がHGF/c-MET経路を活性化する役割を有することを確認した。本発明は、c-MET抗体の有益な特性を利用し、血管内皮細胞を保護する方法、及び虚血性心疾患及び血液脳関門障害性疾患におけるその応用、並びに抗体医薬品を提供することを目的とする。
従って、本発明の第1側面では、c-METアゴニストの、血液脳関門障害性疾患、特に、虚血性心疾患又は血管内皮細胞虚血性損傷を治療又は予防するための医薬の製造における使用を提供する。好ましくは、本発明に記載のc-METアゴニストは、c-METアゴニスト抗体である。当業者は、c-METアゴニスト抗体については、それは抗原に結合することができ、この結合はリガンドの受容体への結合も反映し、且つ結合後にエフェクターリガンドの活性又は能力の増加につながることを理解すべきである。
【0007】
好ましくは、前記虚血性心疾患は、脳梗塞又は心筋梗塞である。幾つかの好ましい実施態様において、前記脳梗塞の治療又は予防は、血液脳関門の透過性を低減することにより、及び/又は脳血管を保護・修復することにより、及び/又は脳梗塞体積を減少させることにより達成される。
本発明の上記使用では、前記c-METアゴニストは、c-MET抗原で動物を免疫することにより調製されたモノクローナル抗体であってもよく、免疫原性を有するc-MET完全長分子、融合タンパク質、分子断片又はポリペプチドであってもよい。好ましい実施態様において、前記c-METアゴニストは、Bリンパ球の抗体ライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができ、人工抗体ライブラリーをスクリーニングすることにより得ることもできる。他の好ましい実施態様において、前記c-METアゴニストは、遺伝子工学的に改良されたが、依然としてアゴニスト活性を保持する抗体化合物である。
本発明の使用では、前記c-METアゴニストは、完全ヒト抗体であってもよい。或いは、前記c-METアゴニストは、FR及び/又はFc断片がヒト化された抗体であってもよい。
【0008】
特に好ましい実施態様において、前記c-METアゴニストは、重鎖及び軽鎖を含む抗体分子であり、且つ
前記重鎖は、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 10及びSEQ ID NO:11から選ばれる少なくとも1つの重鎖可変領域の配列又はその突然変異配列を含み、且つ
前記軽鎖は、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13及びSEQ ID NO: 14から選ばれる少なくとも1つの軽鎖可変領域の配列又はその突然変異配列を含む。
本発明の使用では、前記c-METアゴニストは、抗体-薬物コンジュゲートであってもよい。前記薬物は、本発明に記載の抗体以外の別の知られている医薬活性成分であってもよく、例えば、IRF5阻害剤、パクリタキセル、脂質低下薬又は血管新生阻害剤であるが、これらに限定されない。
本発明の他の側面では、c-METに結合できる抗体又はその機能的断片を提供し、前記抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、且つ
前記重鎖は、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 10及びSEQ ID NO:11から選ばれる少なくとも1つの重鎖可変領域の配列又はその突然変異配列を含み、且つ
前記軽鎖は、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13及びSEQ ID NO: 14から選ばれる少なくとも1つの軽鎖可変領域の配列又はその突然変異配列を含む。
【0009】
本発明の更に他の側面では、上記抗体又はその機能的断片、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
本発明の医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内や皮下、又は経口経路を介して投与される。特に好ましくは、本発明の医薬組成物は、静脈内経路によって投与され、静脈内注射剤である。
本発明の医薬組成物において、さらに、虚血性心疾患又は血管内皮細胞虚血性損傷を治療又は予防する他の1つ又は複数の薬学的に活性な化合物を含む。前記薬学的に活性な化合物は、先行技術で知られている任意の虚血性心疾患又は血管内皮細胞虚血性損傷を治療又は予防するための化合物であることができる。
【0010】
本発明の他の側面では、c-METアゴニストを対象に投与することを含む、虚血性損傷の血管内皮細胞を保護する方法を提供する。好ましい側面では、前記c-METアゴニストは、c-MET抗体である。
好ましい実施態様において、前記c-MET抗体は、c-METの二量体化、チロシンリン酸化、及びc-METシグナル伝達経路の活性化を促進する活性を持つ。
他の好ましい実施態様において、前記c-MET抗体は、c-MET抗原で動物を免疫することにより調製されたモノクローナル抗体である。
【0011】
他の好ましい実施態様において、前記c-MET抗原は、免疫原性を有するc-MET完全長分子、融合タンパク質、分子断片又はポリペプチドである。
他の好ましい実施態様において、前記c-MET抗体は、Bリンパ球の抗体ライブラリーをスクリーニングすることにより得られる。
他の好ましい実施態様において、前記c-MET抗体は、遺伝子工学的に改良されたが、依然としてアゴニスト活性を保持する抗体である。
他の好ましい実施態様において、前記c-MET抗体は、FR、Fc断片がヒト化された抗体である。
【0012】
他の好ましい実施態様において、前記c-MET抗体は、完全ヒト抗体である。
他の好ましい実施態様において、前記c-MET抗体は、アゴニスト活性を持つポリクローナル抗体である。
他の好ましい実施態様において、前記虚血性心疾患は、脳梗塞である。
他の好ましい実施態様において、前記組成物の投与方法は、静脈内注射である。
他の好ましい実施態様において、前記組成物は、脳血管を保護及び修復するために使用される。
他の好ましい実施態様において、前記組成物は、用于降低血液脳関門の透過性を低減させるために使用される。
他の好ましい実施態様において、前記組成物は、ニューロンを保護するために使用される。
他の好ましい実施態様において、前記組成物は、脳梗塞の体積を減少させるために使用される。
他の好ましい実施態様において、前記組成物は、梗塞領域の血流を維持するために使用される。
【0013】
本発明の第3側面では、本発明の第1側面に記載の方法に従って開発された虚血性心疾患を治療するための抗体医薬を提供する。
他の好ましい実施例において、前記抗体医薬は、ハイブリドーマ細胞株により調製される。
他の好ましい実施例において、前記抗体医薬又はその抗原結合断片は、以下から選ばれる少なくとも1つのCDR領域配列又はその突然変異配列を含み、
抗体重鎖可変領域HCDR領域配列:SEQ ID NO:9、SEQ ID NO: 10又はSEQ ID NO: 11、及び
抗体軽鎖可変領域LCDR領域配列:SEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 13又はSEQ ID NO: 14。
本発明は、虚血性心疾患の治療するための、薬学的に実行可能な解決策を提供しながら、良好な薬効を有する代替医薬品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1aは、本発明の実施例1におけるレンチウイルスシャトルベクターpRRL-CMV-EDの制限酵素切断による同定を示す電気泳動図であり、図1bは、本発明の実施例1におけるc-METのキーのドメインED融合タンパク質の発現の検出結果を示す電気泳動図である。
図2図2は、本発明の実施例2における、EDタンパク質に対するc-MET抗体ハイブリドーマ細胞の上清の結合能の検出結果を示すグラフである。
図3図3は、本発明の実施例3におけるc-MET細胞外領域EDタンパク質に対するc-METモノクローナル抗体の結合能を示すグラフである。
図4図4は、本発明の実施例4におけるc-MET抗体の重鎖及び軽鎖可変領域VH及びVL遺伝子の取得結果を示すグラフである。
図5図5は、本発明の実施例5におけるレンチウイルスシャトルベクターpRRL-CMV-VH及びpRRL-CMV-VLの制限酵素切断による同定結果を示す電気泳動図である。
図6図6は、本発明の実施例6におけるc-METヒト化キメラ抗体の標的結合に対する検出結果を示すグラフである。
図7図7は、本発明の実施例7におけるc-METヒト化キメラ抗体が異なる処置時間で誘導されたBend.3細胞におけるc-MET Tyr1234のリン酸化の検出結果を示すグラフである。
図8図8は、本発明の実施例8におけるc-METヒト化キメラ抗体のin vitro 結合活性の検出結果を示すグラフである。
図9図9は、本発明の実施例9におけるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の増殖に対するc-METモノクローナル抗体の作用を示すグラフである。
図10図10は、本発明の実施例10におけるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の移動に対するc-METモノクローナル抗体の作用を示すグラフである。
図11図11は、本発明の実施例11におけるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の微小管形成に対するc-MET モノクローナル抗体の作用を示すグラフである。
図12図12は、本発明の実施例13における酸素-グルコース欠乏の血管内皮細胞(Bend.3)の活性に対するc-METヒト化キメラ抗体の保護作用を示すグラフである。
図13図13は、本発明の実施例14における酸素-グルコース欠乏後の血管内皮細胞(Bend.3)のアポトーシスに対するヒト化キメラ抗体の保護作用を示すグラフである。
図14図14は、本発明の実施例15における酸素-グルコース欠乏の血管内皮細胞(Bend.3)の死後の乳酸脱水素酵素(LDH)の放出濃度に対するヒト化キメラ抗体の影響を示すグラフである。
図15図15は、本発明の実施例17における光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルの脳血管内皮細胞に対するc-METモノクローナル抗体の保護作用を示すグラフである。
図16図16は、本発明の実施例17におけるin vivoモデル(マウス MCAOモデル)において血液脳関門関連タイトジャンクションタンパク質に対するc-METヒト化キメラ抗体の影響結果を示すグラフである。
図17図17は、本発明の実施例17におけるc-METヒト化キメラ抗体によるマウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)の心筋梗塞領域の組織切片のVWF染色図である。
図18図18は、本発明の実施例18における酸素-グルコース欠乏の血液脳関門インビトロモデルに対する抗c-METヒト化キメラ抗体の作用を示すグラフである。
図19図19は、本発明の実施例18における光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルの血液脳関門透過性に対するc-METモノクローナル抗体の保護作用を示すグラフである。
図20図20は、本発明の実施例18のインビトロモデル(Bend.3細胞モデル)におけるc-METヒト化キメラ抗体の血液脳関門関連タイトジャンクションタンパク質への影響を示すグラフである。
図21図21は、本発明の実施例19における塞栓糸によるマウス脳虚血モデル(MCAO)の脳梗塞体積に対するc-METヒト化キメラ抗体の作用を示すグラフである。
図22図22は、本発明の実施例19における光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルの脳梗塞体積に対するc-METモノクローナル抗体の作用を示すグラフである。
図23図23は、本発明の実施例19におけるc-MET ヒト化キメラ抗体によるマウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)の心筋梗塞領域の組織切片のマッソン染色を示すグラフである。
図24図24は、本発明の実施例20における光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルのニューロンに対するc-METモノクローナル抗体の保護作用を示すグラフである。
図25図25は、本発明の実施例20における光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルの神経機能に対するc-METモノクローナル抗体の保護作用を示すグラフである。
図26図26は、本発明の実施例20における抗c-METヒト化キメラ抗体によるマウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)の心機能の評価を示すグラフである。
【0015】
本発明の上記図面に関する実験及びその結果の詳細な説明は以下の通りである。
図1-aは、レンチウイルスシャトルベクターpRRL-CMV-EDの制限酵素切断による電気泳動図であり、レーン1は、DNAマーカーであり、レーン2は、レンチウイルスシャトルベクターpRRL-CMV-EDがAgeI及びSalIで二重消化された
サンプルであり、制限酵素切断の結果は、7500bpのベクターのバンド及び2700bpの目的遺伝子のバンドを得ることを示し、ヒトMET細胞外領域ED断片のレンチウイルス発現プラスミドpRRL-CMV-EDの構築に成功することを証明した。
図1-bは、METのキーのドメインのED融合タンパク質の発現の検出結果を示すグラフであり、ここで、レーン1は、発現上清ストック溶液(1:5希釈)であり、レーン2は、カラム通過溶液(1:5希釈)であり、レーン3は、20mM イミダゾール溶出画分であり、レーン4~5は、50mM イミダゾール溶出画分であり、レーン6~9は、200mM イミダゾール溶出画分であり、Mは、タンパク質分子量マーカーである。ここで、レーン5~9では、105KDaのバンドのサイズは、目的バンドの予想サイズに一致することは、MET細胞外領域のED融合タンパク質が発現及び精製に成功して得られることを証明した。
図2は、本発明の実施例2におけるEDタンパク質に対するc-MET抗体ハイブリドーマ細胞の上清の結合能の検出結果であり、ここで、横軸は、c-MET抗体ハイブリドーマ上清のローディング体積(単位:μl)であり、縦軸は、波長450nmでの吸光度である。結果は、1H9D6ハイブリドーマの上清は、MET細胞外領域のED融合タンパク質に特異的に結合でき、加えた体積が増加するほど、信号が増加することを示す。
図3は、本発明の実施例3におけるc-MET細胞外領域EDタンパク質に対するc-METモノクローナル抗体の結合能を示し、ここで、横軸は、c-MET抗体の濃度(単位:ng/ml)であり、縦軸は、波長450nmでの吸光度である。結果は、c-METモノクローナル抗体は、c-MET細胞外領域のED融合タンパク質に特異的に結合でき、加えた体積が増加するほど、信号が増加し、該系の条件下で、c-METモノクローナル抗体の最小検出濃度は0.06ng/mlであることを示し、MET細胞外領域ED融合タンパク質に対するc-METモノクローナル抗体1H9D6の結合能が強いことを示す。
【0016】
図4は、本発明の実施例4におけるc-MET抗体の重鎖、軽鎖可変領域VH及びVL遺伝子の取得を示し、ここで、レーン1は、DNAマーカーであり、レーン2は、VH遺伝子のPCR産物であり、レーン3は、VL遺伝子のPCR産物であり、電気泳動の結果は、マウス由来のVH及びVL遺伝子のPCR産物は、それぞれ約351及び336bpの特異的なバンドを示し、マウス由来のVH及びVL遺伝子の取得に成功することを示す。
図5は、本発明の実施例5におけるレンチウイルスシャトルベクターpRRL-CMV-VH及びpRRL-CMV-VLの制限酵素切断による同定を示し、ここで、レーン1は、DNAマーカーであり、レーン2は、レンチウイルスシャトルベクターpRRL-CMV-重鎖がAgeI及びSalIで二重消化されたサンプルであり、レーン3は、レン
チウイルスシャトルベクターpRRL-CMV-軽鎖がAgeI及びSalIで二重消化
されたサンプルであり、制限酵素切断結果は、7500bpのベクターのバンド及び1400bp(重鎖)及び700bp(軽鎖)の目的遺伝子のバンドを得ることを示し、キメラ抗体の軽鎖、重鎖レンチウイルス発現プラスミドの構築に成功することを示す。
図6は、本発明の実施例6におけるc-METヒト化キメラ抗体の標的結合に対する検出結果を示し、ここで、横軸は、c-METヒト化キメラ抗体の濃度(単位:ng/ml)であり、縦軸は、波長450nmでの吸光度である。結果は、c-METヒト化キメラ抗体は、HGF/METの特異的結合を遮断することができ、濃度が高くなるほど、遮断効果が高くなり、該系の条件下で、c-METヒト化キメラ抗体がHGF/c-METの特異的結合に対する最大阻害率は79.7%であることを示す。
【0017】
図7は、本発明の実施例7におけるc-METヒト化キメラ抗体が異なる処置時間で誘導されたBend.3細胞におけるc-MET Tyr1234のリン酸化の検出結果を示す。
図8は、本発明の実施例8におけるc-METヒト化キメラ抗体のin vitro 結合活性の検出結果を示し、ここで、横軸は、c-METヒト化キメラ抗体のローディング濃度(単位ng/ml)であり、縦軸は、波長450nmでの吸光度である。結果は、c-METヒト化キメラ抗体はHUVEC細胞表面のc-METタンパク質に特異的に結合でき、加えた濃度が高くなるほど、信号が増加することを示す。
図9は、本発明の実施例9におけるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の増殖に対するc-METモノクローナル抗体の作用を示し、ここで、横軸は、c-METモノクローナル抗体の濃度(単位ng/ml)であり、縦軸は、波長450nmでの吸光度である。結果は、c-METモノクローナル抗体はHUVEC細胞の増殖効果を促進でき、加えた濃度が高くなるほど、効果はより顕著になることを示す。
図10は、本発明の実施例10におけるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の移動に対するc-METモノクローナル抗体の作用を示し、ここで、横軸は、c-METモノクローナル抗体の濃度(単位ng/ml)であり、縦軸は、トランスウェルチャンバーの下面にある細胞数である。結果は、c-METモノクローナル抗体は、HUVEC細胞の遊走効果を促進でき、加えた濃度が高くなるほど、効果はより顕著になることを示す。
【0018】
図11は、本発明の実施例11におけるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の微小管形成に対するc-METモノクローナル抗体の作用を示し、ここで、図11-Aは、ゲル塗布0時間後の対照群細胞の写真であり、11-Bは、ゲル塗布0時間後の1H9D6投与群細胞の写真であり、ここで、1H9D6の濃度は1μg/mlであり、図11-Cは、ゲル塗布72時間後の対照群細胞の写真であり、図11-Dは、ゲル塗布72時間後の1H9D6投与群細胞の写真であり、ここで、1H9D6の濃度は1μg/mlである。AとBを比較すると、初期細胞状態は一貫することを示し、CとDを比較すると、1H9D6(1μg/ml)で72時間作用した後、HUVEC細胞の微小管形成数が大幅に増加することを示し、c-METモノクローナル抗体はHUVEC細胞の微小管の生成を促進できることを示す。
図12は、本発明の実施例13における酸素ーグルコース欠乏の血管内皮細胞(Bend.3)の活性に対するc-METヒト化キメラ抗体の保護作用を示し、ここで、横軸は、サンプル情報であり、ここで、対照群は、酸素ーグルコース欠乏処理なしのサンプルであり、損傷群は、酸素ーグルコース欠乏処理を受けたサンプルであり、保護群の値はc-METヒト化キメラ抗体の濃度(単位ng/ml)であり、縦軸は、波長450nmでの吸光度である。結果は、c-METヒト化キメラ抗体は酸素ーグルコース欠乏の血管内皮細胞(Bend.3)に対して保護効果を有し、加えた濃度が高くなるほど、効果はより顕著になることを示す。
【0019】
図13は、本発明の実施例14におけるc-METヒト化キメラ抗体の酸素ーグルコース欠乏後の血管内皮細胞(Bend.3)のアポトーシスへの影響を示し、図13-aでは、対照群は酸素-グルコース欠乏処理なしのサンプルであり、損傷群は、酸素ーグルコース欠乏処理を受けたサンプルであり、治療群は、酸素ーグルコース欠乏処理を受けるとともに、抗c-METヒト化抗体を添加したサンプルであり、数値は抗c-METヒト化抗体の濃度(単位ng/ml)である。図13-bは、抗c-METヒト化抗体が投与された酸素-グルコース欠乏後の血管内皮細胞(Bend.3)のアポトーシス細胞数の統計結果を示す。結果は、血管内皮細胞(Bend.3)は、酸素-グルコース欠乏処理を経た後に、アポトーシス細胞数は大幅に増加し、抗c-METヒト化抗体の添加に伴い、アポトーシス細胞数は減少することを示し、c-METヒト化キメラ抗体は酸素ーグルコース欠乏後の血管内皮細胞(Bend.3)のアポトーシスに対して保護効果を有し、抗c-METヒト化抗体の添加濃度が高くなるほど、保護効果はさらに顕著になる。
図14は、本発明の実施例15におけるc-METヒト化キメラ抗体が酸素-グルコース欠乏による血管内皮細胞(Bend.3)死の指標である乳酸脱水素酵素(LDH)に与える影響を示し、ここで、横軸は、サンプルの情報であり、ここで、対照群は酸素-グルコース欠乏処理なしのサンプルであり、損傷群は酸素-グルコース欠乏処理を受けたサンプルであり、治療群の数値は、c-METヒト化キメラ抗体の濃度(単位ng/ml)であり、縦軸は、LDH濃度(単位μg/ml)である。結果は、血管内皮細胞(Bend.3)が酸素-グルコース欠乏処理を経た後、LDH濃度は大幅に増加し、抗c-METヒト化抗体の添加に伴い、LDH濃度は低減することを示し、c-METヒト化キメラ抗体は酸素-グルコース欠乏血管内皮細胞(Bend.3)のLDH濃度を低減させる効果を有し、抗c-METヒト化抗体の加入濃度が高くなるほど、低減効果はさらに顕著になること証明する。
【0020】
図15は、本発明の実施例17におけるc-METモノクローナル抗体が光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルの脳血管内皮細胞に対して保護作用を奏する脳血管内皮細胞の免疫組織化学的染色結果を示し、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、VWFは、血管内皮細胞マーカーであり、DAPIは、核染色マーカーであり、合併とは、VWF及びDAPIで染色された同一視野の写真が画像結合によって合成された画像を指す。結果は、c-METモノクローナル抗体は、光化学的損傷後の脳血管内皮細胞損傷を顕著に低減でき、血管完全性が良好であり、光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルによる脳梗塞に対して保護作用を有することを示す。
図16は、本発明の実施例17におけるin vivoモデル(マウス MCAOモデル)において血液脳関門関連タイトジャンクションタンパク質に対するc-METヒト化キメラ抗体の影響結果を示すグラフである。図16-aは、c-MET抗体の、糸塞栓法塞栓糸によるマウス脳虚血モデル(MCAO)の脳血管内皮細胞に対する影響及び密着結合タンパク質ZO-1の発現量に対する影響の結果を示し、ここで、偽手術群は、動物を抱水クロラールで麻酔し、仰臥位固定する。損傷のモデリングを行わずに、正中頸部切開を行って右総頸動脈、外頸動脈、内頸動脈を剥離する。損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群は1H9D6精製抗体を用量1mg/kgで注射し、VWFは血管内皮細胞マーカーであり、ZO-1は、密着結合タンパク質であり、合併とは、VWF及びZ0-1で染色された同一視野の写真が画像結合によって合成された画像を指す。結果は、c-METヒト化キメラ抗体群の脳梗塞虚血半影帯に微小血管の完全性は損傷群よりも優れ、ZO-1の発現量も比損傷よりも高くなることを示し、血液脳関門の破壊が少ない。図16-bは、塞栓糸によるマウス脳虚血モデル(MCAO)の脳梗塞領域組織における密着結合タンパク質ZO-1の発現量に対するc-MET抗体のウエスタンブロッティング結果であり、ここで、偽手術群は、動物を抱水クロラールで麻酔し、仰臥位固定する。正中頸部切開を行って、損傷のモデリングを行わずに右総頸動脈、外頸動脈、内頸動脈を剥離する。損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群は、1H9D6精製抗体を用量1mg/kgで注射し、β-アクチンは、ハウスキーピングタンパク質であり、WB内部標準として、ZO-1は、密着結合タンパク質である。結果は、損傷群は、ZO-1タンパク質の発現レベルが有意に低減するが、c-METヒト化キメラ抗体群は、ZO-1タンパク質の発現レベルが偽手術群と基本的に一致することを示し、マウスMCAOモデルにおけるZO-1タンパク質は有意に低減し、c-METヒト化キメラ抗体はZO-1タンパク質の発現レベルを顕著に向上でき、偽手術群の発現レベルに近くすることを示す。
図17は、本発明の実施例17におけるc-METヒト化キメラ抗体がマウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)の心筋梗塞領域の組織切片のVWFを染色するグラフを示す。ここで、対照群は、偽手術群であり、損傷群は、マウスMI心筋梗塞後、尾静脈に同量の生理食塩水を注射し、治療群は、マウスMI心筋梗塞後、尾静脈に1H9D6ヒト化抗体を3mg/kgで注射し、結果は、対照群は、VWF染色像が明瞭であり、血管構造が明瞭で完全であり、損傷群は、VWF染色像が明瞭であり、血管部位構造がひどく損傷し、MI心筋梗塞によって引き起こされる血管損傷が重篤であることを示し、治療群は、VWF染色像が明瞭であり、血管構造は依然とし比較的に完全に維持し、抗c-MET ヒト化抗体がマウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)による心臓の微小血管損傷に対して保護作用を有することを示す。
【0021】
図18は、本発明の実施例18における酸素-グルコース欠乏血液脳関門インビトロモデルに対する抗c-METヒト化キメラ抗体の作用結果を示し、ここで、横軸は、サンプルの情報であり、ここで、対照群は、酸素-グルコース欠乏処理なしのサンプルであり、損傷群は、酸素-グルコース欠乏処理を受けたサンプルであり、損傷群の数値は、抗c-METヒト化キメラ抗体の濃度(単位ng/ml)であり、縦軸は、波長450nmでの吸光度である。結果は、血管内皮細胞(Bend.3)は酸素-グルコース欠乏処理を経た後、細胞層の完全性が損なわれ、細胞層を透過するマウスの末梢血中のリンパ球の数は有意に増加し、抗c-METヒト化キメラ抗体は酸素-グルコース欠乏後の血液脳関門インビトロモデルに対して保護効果を有し、透過したマウスの末梢血中のリンパ球の数は減少し、加えた濃度が高くなるほど、効果はより顕著になることを示す。
図19は、本発明の実施例18における光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルの血液脳関門透過性に対するc-MET抗体の保護作用を示し、ここで、図19-aは、動物の脳組織の写真を示し、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、図19-bは、統計後のエバンスブルー含有量の結果を示す。横軸は、群分けの状況を示し、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、縦軸はエバンスブルー含有量(単位:脳組織でμg/g)であり、結果は、c-METモノクローナル抗体は、光化学的損傷後動物脳組織におけるエバンスブルー含有量を有意に低減でき、光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルによる血液脳関門の透過性に対して修復作用を有することを示す。
【0022】
図20は、本発明の実施例18におけるインビトロモデル(Bend.3細胞モデル)においてc-METヒト化キメラ抗体が血液脳関門関連タイトジャンクションタンパク質に与える影響の結果を示す。図20-a及び20-bは、それぞれBend.3酸素-グルコース欠乏モデルにおける密着結合タンパク質であるクローディン-5及びZO-1の蛍光定量PCRの結果を示し、ここで、図20-aは、密着結合タンパク質クローディン-5の結果であり、図20-bは、密着結合タンパク質ZO-1の結果である。ここで、対照群は、酸素-グルコース欠乏処理なしの細胞サンプルであり、損傷群は、酸素-グルコース欠乏処理を受けた、c-METヒト化キメラ抗体を添加しない細胞サンプルであり、治療群は、酸素-グルコース欠乏処理を受けた、c-METヒト化キメラ抗体(濃度は10000ng/ml)を添加した細胞サンプルである。ここで、横軸は、サンプルの情報であり、縦軸は、各遺伝子のmRNAの相対的な転写レベルの結果であり、対照群の目的遺伝子のmRNA転写レベルを1.0とする。結果は、酸素-グルコース欠乏後の血管内皮細胞(Bend.3)のクローディン-5及びZO-1タンパク質のmRNA転写レベルは有意に低減し、c-METヒト化キメラ抗体の添加に伴い、クローディン-5及びZO-1タンパク質のmRNA転写レベルは有意に高くなり、対照群の発現レベルを超えることを示す。このように、c-METヒト化キメラ抗体は酸素-グルコース欠乏血管内皮細胞における密着結合タンパク質のmRNA転写レベルは有意に改善することが分かる。
図21は、本発明の実施例19における塞栓糸によるマウス脳虚血モデル(MCAO)の脳梗塞体積に対するc-METヒト化キメラ抗体の作用を示し、図21-aは、動物の脳組織剖面の写真を示し、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群は、c-METヒト化キメラ抗体を用量1mg/kgで注射し、図21-bは、統計後の脳梗塞体積の結果である。横軸は、群分けの状況であり、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METヒト化キメラ抗体を用量1mg/kgで注射し、縦軸は、脳梗塞の体積(単位mm3)である。結果は、c-METヒト化キメラ抗体は塞栓糸によるマウス脳虚血モデル(MCAO)の動物脳梗塞の体積を顕著に低減でき、SDラット塞栓糸によるマウス脳虚血モデル(MCAO)による脳梗塞に対して保護作用を有することを示す。
図22は、本発明の実施例19における光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルの脳梗塞体積に対するc-MET抗体の作用を示し、ここで、図22-aは、動物脳組織剖面の写真であり、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、図22-bは、統計後の脳梗塞体積の結果である。横軸は、群分けの状況であり、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、縦軸は、脳梗塞体積(単位mm3)であり、結果は、c-METモノクローナル抗体は、光化学的損傷後の動物脳梗塞体積を顕著に低減でき、光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルによる脳梗塞に対して保護作用を有することを示す。
【0023】
図23は、本発明の実施例19におけるc-METヒト化キメラ抗体によるマウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)の心筋梗塞領域の組織切片のマッソン染色結果を示す。ここで、図23-aは、マッソン染色の結果であり、ここで、コラーゲン線維は緑色として現れ、筋線維は赤色として現れ、赤血球はオレンジ色として現れ、ここで、対照群は偽手術群であり、損傷群の0mg/kg群は、マウスMI心筋梗塞後に、尾静脈に同量の生理食塩水を注射した単独損傷群であり、損傷群の1mg/kg及び3mg/kg群は、2つの治療群であり、それぞれ1mg/kg及び3mg/kgのc-METヒト化キメラ抗体を注射し、図23-bは、梗塞領域の分布比(コラーゲン線維/筋線維)の結果であり、ここで、横軸は、各群の記号であり、ここで、対照群は偽手術群であり、損傷群の0mg/kg群は、マウスMI心筋梗塞後に尾静脈に同量の生理食塩水を注射した単独損傷群であり、損傷群の1mg/kg及び3mg/kg群は、2つの治療群であり、それぞれ1mg/kg及び3mg/kgのc-METヒト化キメラ抗体を注射し、縦軸は、マウス心臓コラーゲン線維/筋線維の割合(単位%)である。結果は、対照群では、コラーゲン線維の陽性染色はほとんどなく、損傷群のコラーゲン線維染色は明瞭であり、MI心筋梗塞によって引き起こされる心筋線維化が重篤であることを示し、治療群心肌組織の線維化程度が顕著に軽減し、c-METヒト化キメラ抗体濃度が高くなるほど、線維化程度はさらに顕著に軽減し、c-METヒト化キメラ抗体がマウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)による心臓線維化に対して抑制作用を有することを示す。
図24は、本発明の実施例20における光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルのニューロンに対するc-MET抗体の保護作用を示し、図24-aは、脳梗塞領域のニューロンの免疫組織化学的染色の結果であり、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、活性化カスパーゼ-3は、細胞アポトーシスマーカーであり、NeuNは、ニューロン細胞マーカーであり、合併とは、活性化カスパーゼ-3及びNeuNで染色された同一視野の写真が画像結合によって合成された画像を指し、図24-bは、統計後の単一視野内のアポトーシスのニューロン細胞数の結果である。横軸は群分けの状況であり、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、縦軸はアポトーシスのニューロン細胞数である。結果は、c-METモノクローナル抗体は光化学的損傷後の脳梗塞領域のニューロン細胞の損傷を顕著に低減でき、神経細胞の死細胞数は顕著に低減し、光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルによる脳梗塞に対して保護作用を有することを示す。
【0024】
図25は、本発明の実施例20における光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルの神経機能に対するc-METモノクローナル抗体の保護作用を示し、横軸は群分けの状況であり、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、縦軸は、神経機能スコアであり、スコア基準は以下の通りである。
0点、神経学的欠損の症状なし;
1点、軽度の神経学的欠損であり、左前足を完全に伸ばすことができない;
2点、中等度の局所神経学的欠損であり、歩行中に左に曲がる;
3点、重篤な局所神経学的欠損であり、左側に倒れる;
4点、自発的な歩行出来ない、意識レベルが低下する;
結果は、c-METモノクローナル抗体は、光化学的損傷後の動物神経機能を顕著に改善でき、光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルによる脳梗塞に対して保護作用を有することを示す。
図26は、本発明の実施例20におけるc-METヒト化キメラ抗体によるマウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)の心機能の評価結果を示し、心エコー検査を使用して評価する。ここで、図26-aは、心室駆出率(EF)の結果であり、ここで、横軸は、各群の記号であり、ここで、対照群は偽手術群であり、損傷群の0mg/kg群はマウスMI心筋梗塞後に尾静脈に同量の生理食塩水を注射した単独損傷群であり、損傷群の1mg/kg及び3mg/kg群は、2つの治療群であり、それぞれ1mg/kg及び3mg/kgのc-METヒト化キメラ抗体を注射し、縦軸は、マウスの心室駆出率(EF)(単位%)である。図26-bは、左室内径短縮率(FS)の結果であり、横軸の記号は図26-aと同じ、縦軸は、左室内径短縮率(FS)(単位%)である。図26-cは、左室拡張末期容量(EDV)の結果であり、横軸の記号は図26-aと同じ、縦軸は、左室内径短縮率(FS)(単位μl)である。図26-dは、左室収縮末期容量(ESV)の結果であり、横軸の記号は図26-aと同じ、縦軸は、左室収縮末期容量(ESV)(単位μl)である。結果は、損傷群のEF値はいずれも40%未満であり、心筋梗塞モデルの構築に成功し、1mg/kg/3dのc-METヒト化キメラ抗体を尾静脈に注射した後に、EF値は回復の傾向があり、3mg/kg/3dのc-METヒト化キメラ抗体を尾静脈に注射した後、EF値の回復はさらに明らかになり、FS値、EDV値及びESV値は、いずれも同様の傾向があり、c-METヒト化キメラ抗体がマウスMI心筋梗塞モデルの心機能に対して保護効果を有することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語は、当業者によって理解されるのと同じ意味を有する。当分野の定義及び用語は、当業者は具体的にはCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel)を参照できる。アミノ酸残基の略語は、当分野で使用される20個の通常のL-アミノ酸の1つの標準の3文字及び/又は1文字略号を指す。特に、本明細書に記載の用語の意味は、中国特許出願201110131029.Xにも記載されている。
本発明の広い範囲に示される数値範囲及びパラメータ近似値であるが、具体的な実施例に示される数値は、可能な限り正確に記載される。しかしながら、いずれの数値には必ずしもそれぞれの測定値の標準偏差による一定の誤差が含まれる。また、本明細書に開示されるすべての範囲は、それに含まれる任意及びすべてのサブ範囲をカバーすると理解されるべきである。例えば、「1~10」という範囲には最小値1から最大値10(端点を含む)までの任意及びすべてのサブ範囲を含むことを理解すべきであり、つまり、最小値1又はそれ以上からのサブ範囲、例えば、1~6.1が挙げられ、及び最大値10又はそれ以下までのサブ範囲、例えば、5.5~10が挙げられる。また、「本明細書に組み込まれる」と呼ばれるあらゆる参照文献は、その全体として組み込まれることを理解すべきである。
また、本明細書で使用されるように、明確かつ明示的に1つの対象に限定されない限り、単数形はそれが指す対象の複数形を含む。「又は」という用語は、文脈から別に明示されない限り、「及び/又は」という用語と互換的に使用される。
【0026】
本明細書で使用される「可溶性」タンパク質という用語は、生物学的に関連する温度、pHレベル及び浸透圧で水溶液に溶解できるタンパク質を意味する。ある実施態様において、本発明の融合タンパク質は、可溶性タンパク質である。本明細書で使用される「可溶性融合タンパク質」とは、該融合タンパク質に膜貫通領域及び細胞内領域を含まないことを意味する。
本明細書で使用されるように、「単離された」という用語とは、(1)最初に生成される場合(自然環境にある及び/又は試験装置にある)にそれに関連する少なくとも幾つかの成分から単離され、及び/又は(2)人工生産、調製及び/又は製造により得られた物質及び/又は実体を指す。単離された物質及び/又は実体は、その最初に関連する他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、約99%、ほとんど100%又は100%から単離されることができる。ある実施態様において、本発明の融合タンパク質は、単離された融合タンパク質である。
「部分」及び「断片」という用語は、互換可能にポリペプチド、核酸又は他の分子構築物の一部を指す。
本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒトのような哺乳類動物を指すが、他の動物、例えば、ペット(例えば、犬、猫など)、家畜(例えば、牛、羊、豚、馬など)又は実験動物(例えば、サル、ラット、マウス、ウサギなど)も含まれる。
【0027】
本明細書で使用される「一致性」、「パーセント一致性」、「相同性」又は「同一性」という用語は、2つのアミノ酸配列間又は核酸配列間の配列同一性を指す。2つの配列を比較することによりパーセント一致性を確定することができ、パーセント一致性とは、比較される配列が同一な位置を共有する残基(即ち、アミノ酸又はヌクレオチド)の数を意味する。当技術分野の標準アルゴリズム(例えば、Smith and Waterman、 1981、 Adv. Appl . Math. 2:482; Needleman and Wunsch、 1970、 J. MoI. Biol. 48:443; Pearson and Lipman、 1988、 Proc. Natl. Acad. Sci., USA、 85:2444)又はこれらのアルゴリズムのコンピューター化されたバージョン(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、 Genetics Computer Group、 575 Science Drive、 Madison、 WI)により配列のアライメント及び比較を行い、前記コンピューター化されたバージョンは、BLAST及びFASTAとして本開示に用いられる。また、アメリカ国立衛生研究所(Bethesda MD)から入手できるENTREZにより配列の比較に使用できる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを使用する場合には、各々のプログラム(例えば、BLASTN、米国立バイオテクノロジー情報センターのインターネットサイトで入手可能な)のデフォルトパラメータパラメータを使用できる。1つの実施態様において、ギャップ重みが1のGCGを使用して2つの配列の百分率同一性を決定でき、各アミノ酸のギャップには、2つの配列間の単一のアミノ酸ミスマッチであるかのように重みが付けられる。或いは、GCG(Accelrys、San Diego、CA)の配列解析ソフトウェアパッケージの一部とするALIGN プログラム(バージョン2.0)を利用できる。
組成物
本発明は、さらに、有効量の本発明の抗体又はその機能的断片、及び薬学的に許容される担体を含む医薬品組成物を提供する。好ましくは、前記抗体又はその機能的断片は、c-METに結合することができ、前記抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、且つ
前記重鎖は、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 10及びSEQ ID NO:11から選ばれる少なくとも1つの重鎖可変領域の配列又はその突然変異配列を含み、且つ
前記軽鎖SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13及びSEQ ID NO: 14から選ばれる少なくとも1つの軽鎖可変領域の配列又はその突然変異配列を含む。
【0028】
好ましくは、上記突然変異領域の配列とは、元の配列に対して少なくとも80%の配列同一性、又は少なくとも85%の配列同一性、又は少なくとも90%の配列同一性、又は少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも97%、98%や99%の配列同一性を有する配列を指す。
当技術分野でよく知られているように、「同一性パーセント」という用語は、配列を比較することにより測定された2つ又はそれ以上のポリペプチド配列又は2つ又はそれ以上のポリヌクレオチド配列間の関係を意味する。当技術分野では、「同一性」は、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も指し、具体的な状況に応じて決定され、例えば、これらの配列ストリング間の一致によって決定される。「同一性」及び「相似性」は、以下に説明する方法で容易に計算できる。前記方法は、Computational Molecular Biology (Lesk、A.M.ディター) Oxford University Press、New York(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects (Smith、D.W.ディター)Academic Press、New York(1993);Computer Analysis of Sequence Data、Part I (Griffin、A.M.&Griffin、H.G.ディター)Humana Press、New Jersey(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology (vonHeinje、G.ディター) Academic Press (1987);及びSequence Analysis Primer (Gribskov、M.&Devereux、J.ディター) Stockton Press、New York(1991)を含むが、これらに限定されない。同一性を決定する好ましい方法は、決定された配列間で最良の一致が得られるように設計される。同一性及び相似性を決定する方法は、一般に入手可能なコンピュータープログラムに書き込まれる。シーケンスアラインメント及び同一性パーセントはシーケンス分析ソフトウェア(例えば、LASERGENE バイオインフォマティクス演算スイート(DNASTARInc.,Madison、WI)のMegalignプログラム)により計算することができる。
本発明の医薬品組成物において、前記抗体は、治療有効量の範囲で含まれ、例えば、前記抗体又はその機能的断片は、重量比で、前記医薬品組成物に対して0.000001wt%~50wt%、好ましくは0.00001wt%~20wt%、より好ましくは0. 0001wt%~10wt%である。特に好ましくは、前記抗体又はその機能的断片は、重量比で、前記医薬品組成物に対して0.001wt%~5wt%である。
【0029】
本発明の組成物は、血管内皮細胞の修復・増殖を促進するために直接使用することができる、特に血管損傷性疾病に用いられる。さらに、同時に他の治療剤又は補助治療剤と併用することができる。好ましくは、前記医薬品組成物は、さらに、1つ又は複数の虚血性心疾患又は血管内皮細胞虚血性損傷を治療又は予防するための薬学的に活性な化合物を含む。
通常、本発明のc-METアゴニストは、非毒性で不活性の薬学的に許容される水性媒体に配合されることができ、ここで、pHは、通常、約5~9であり、好ましくはpHが約6~8である。
本明細書で使用されるように、「含む」という用語は、本発明の混合物又は組成物に各成分を一緒に適用できることを意味する。従って、「主に……からなる」及び「……からなる」という用語は、「含む」という用語に含まれる。本明細書で使用されるように、「有効量」又は「有効用量」という用語は、ヒト及び/又は動物に機能又は活性を生み出すことができ、ヒト及び/又は動物が許容できる量を指す。
【0030】
本明細書で使用されるように、「医薬的に許容される」又は「薬学的に許容される」成分は、ヒト及び/又は哺乳類動物に適用し、過度の有害な副作用(毒性、刺激、及びアレルギーなど)のないもの、即ち、合理的な利益/リスク比を持つ物質を指す。「薬学的に許容される担体」という用語は、様々な賦形剤及び希釈剤を含む、治療剤の投与のための担体を指す。
本発明の組成物は、安全かつ有効な量のc-MET抗体及び薬学的に許容される担体を含む。そのような担体は、生理食塩水、緩衝液、グルコース、水、グリセリン、エタノール、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。通常、医薬品製剤は投与方法に対応し、本発明の医薬品組成物は、注射剤の形態で調製されることができ、例えば、生理食塩水、又はグルコース及び他の補助治療剤を含む水溶液を使用し、常法により調製することができる。前記医薬品組成物が無菌条件下で製造されるのは適当である。活性成分の投与量は、治療有効量である。本発明の医薬品製剤は、徐放性製剤とすることもできる。
本発明に係るc-MET抗体の有効量は、投与方法及び治療される疾患の重症度に応じて異なり得る。好ましい有効量の選択は、様々な要因に基づいて(例えば、臨床試験を通じて)当業者により決定され得る。前記要因は、前記c-MET抗体の薬物動態パラメータ、例えば、バイオアベイラビリティ、代謝、半減期など;患者の治療される疾患の重症度、患者の体重、患者の免疫状態、投与経路などを含むが、これらに限定されない。通常、本発明のc-MET抗体は、約0.00001mg~50mg/kg動物体重(好ましくは0.0001mg~l0mg/kg動物体重)の用量で毎日投与される場合には、満足させる効果を得ることができる。例えば、治療状况の切迫した要求に応じて、いくつかの分割された用量を毎日与えることができるか、または用量を比例的に減らすことができる。
【0031】
本発明の好ましい態様としては、本発明の抗体は、ヒト化c-MET抗体であり、0.1~500mg/kg動物体重で毎日投与する場合には、良い效果を有し、好ましくは、0.5~200mg/kg動物体重で毎日投与し、より好ましくは、1~100mg/kg動物体重で毎日投与する。
本発明のc-MET抗体の投与方法は、特に限定されなく、全身的であっても局所的であってもよい。例えば、本発明のc-MET抗体は、脳内定位注射、腹腔内注射、静脈内注射、経口投与、皮下注射、皮内注射などにより動物に投与することができ、より好ましくは、静脈内注射である。
前記c-MET抗体の用途を知見した後に、当技術分野でよく知られている様々な方法を使用して前記c-MET抗体又はそのコードする遺伝子、又はその医薬品組成物を動物又はヒトに投与することができる。好ましくは、c-MET抗体の組換えタンパク質は、注射などの方法により対象に投与することができる。一方、このc-MET抗体遺伝子を含む発現ベクター(例えば、ウイルス又はプラスミドなど)を標的臓器に送達し、in vivoでc-MET抗体タンパク質を発現させ、遺伝子治療の目的に達する。
【0032】
本明細書で使用される「医薬品組成物」、「併用医薬品」及び「医薬品の組み合わせ」という用語は、互換的に使用され、特定の目的を達成するために一緒に組み合わされた少なくとも1つの薬物及び任意薬学的に許容される担体又はアジュバントの組み合わせを意味する。ある実施態様において、前記医薬品組成物は、本発明の目的を達成するために一緒に作用することができる限り、時間及び/又は空間において分離されている組み合わせを含む。例えば、前記医薬品組成物に含まれる成分(例えば、本発明による抗体、核酸分子、核酸分子の組み合わせ及び/又はコンジュゲート)は、全体として別々に対象に投与することができ、または別々に対象に投与することができる。医薬組成物に含まれる成分が対象に別々に投与される場合には、成分は、対象に同時にまたは逐次的に投与することができる。好ましくは、前記薬学的に許容される担体は、水、緩衝水溶液、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)などの等張な塩溶液、グルコース、マンニトール、デキストロース、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、炭酸マグネシウム、0.3%グリセリン、ヒアルロン酸、エタノール、又はポリプロピレングリコール、トリグリセリドなどのポリアルキレングリコールである。使用される薬学的に許容される担体のタイプは、特に、本発明の組成物が経口、経鼻、皮内、皮下、筋肉内または静脈内投与用に調製されるかどうかに依存する。本発明の組成物は、添加剤として湿潤剤、乳化剤または緩衝物質を含むことができる。
本発明の医薬組成物は、当技術分野で知られている任意の方法を使用して所望の部位に送達することができる。使用される送達装置の実例は、カテーテル(例えば、バルーンカテーテル、注入カテーテル、スティレットカテーテル(Stilettocatheter)、針、無針注射器、ステント、注入スリーブ、ネット、心臓ハーネス(cardiacharness)、シャント、ペースメーカー、植込み型除細動器、縫合糸、釘、血管周囲ラップ(perivascularwrap)、創傷部位の輪郭に実質的に適合できる柔軟なシート又はフィルム、チューブ、グラフト、及びポンプを含むが、これらに限定されない。HGFアイソフォームを送達する方法の具体的な実例は、冠状静脈洞に流入する静脈(例えば、大心臓静脈、中部心臓静脈、左心室後部静脈、前心室間静脈、または他の任意の分岐)に設けられるバルーンカテーテルによる送達;1つまたは複数の冠状動脈(例えば、右冠状動脈または左冠状動脈など)の内腔に通じているカテーテルによる送達、ここで、HGFアイソフォームがその部位で膨らんだバルーンにコーティングされているか、又はカテーテルの先端から注入され;開心術または心臓移植中の針による送達(例えば、左心房、右心房、左心室や右心室への送達);開心手術またはマイクロインターベンショナル手術により内部入口により左心房、右心室や左心室を通って心膜腔への送達又は外部入口により心膜領域への送達、或いは注射、カテーテル挿入、レーザー誘発灌流チャネル、スリーブによる チューブ挿入、パーティクルガンまたはポンプを使用して形成された経皮注入口を介する心膜領域への送達;順行性灌流を介して組織に血液を送達するチューブに配置されたカテーテルからの送達、または逆行性灌流を介して組織から血液を受け取るチューブに配置されたカテーテルからの送達;或いは、血管の開存性を維持するための管腔内デバイスまたは血管内プロテーゼ(例えば、ステント、グラフト、ステントグラフト、大静脈フィルター)による送達を含むが、これらに限定されない。1つの実施態様において、前記装置は、生分解性であるため、不要になった後に装置を取り外す必要はない。ある実施態様において、前記2つのHGFアイソフォームは、ステントを使用して送達される。他の実施態様において、前記ステントは、ポリマーベースではないステンレス鋼ステント、ポリマーベースのステンレス鋼ステント、ポリマーベースではないコバルトクロムステント、及びポリマーベースのコバルトクロムステントから選択される。
【0033】
本発明の医薬組成物は、任意の適切な経路によって投与することができ、例えば、経口、経鼻、皮内、皮下、筋肉内または静脈内に投与することができる。
本明細書で使用される「治療剤」という用語は、治療作用(例えば、疾患及び/又は病状の治療、予防、緩和又は抑制)を果たす可能な任意の物質又は実体(entity)を意味し、それは、化学治療剤、放射線療法剤、免疫治療剤、温熱治療剤(thermally therapeutic agent)などを含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用される「CDR領域」又は「CDR」とは、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の超可変領域を意味し、例えば、Kabat et al.によって定義される(Kabat et al.、 Sequences of proteins of immunological interest、 5th Ed.、 U.S. Department of Health and Human Services、 NIH、 1991、 及び後のバージョン)。3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRがある。場合に応じて、本明細書で使用されるCDR又はCDRsという用語は、これらの領域の1つ、またはこれらの領域のいくつかや全部でさえも示すために使用され、この領域は、抗原またはその認識エピトープに対する抗体の親和性を介した結合に関与するアミノ酸残基のほとんどを含む。
【0034】
本発明は、2つの核酸又はアミノ酸配列間の「一致性」、「同一性」又は「相似性」とは、最適なアラインメント(最もよいアラインメント)後に得られたものであり、比較される2つの配列間で同じヌクレオチド又は同じアミノ酸残基の百分率を指し、該百分率は、純粋に統計的であり、且つ2つの配列間の差異はランダムに分布し、それらの全長をカバーする。2つの核酸又はアミノ酸配列間的配列比較は、通常、最適な方法でそれらを照合した後に行われ、前記比較セクションまたは「比較ウィンドウ」で実行できる。シーケンスを比較するための最適なアラインメントは、手動で実装できることに加えて、Smith&Waterman(1981) [Ad. App. Math. 2:482]の局地的相同性アルゴリズム、Neddleman&Wunsch(1970) [J. MoI. Biol. 48:443]の局地的相同性アルゴリズム、Pearson&Lipman(1988) [Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444)の類似性検索方法、これらのアルゴリズムを使用するコンピューターソフトウェア(GAP、BESTFIT、FASTA&TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package、 Genetics Computer Group、 575 Science Dr.、 Madison、 WI、 又はBLAST N or BLAST P比較ソフトウェア)により実施される。
本明細書で使用される「治療有効量」又は「有効量」とは、投与される対象に利益を示すのに十分な用量を指す。投与される実際量、速度及び時間経過は、個体の状態及び重症度に依存する。治療の処方(例えば、用量の決定など)は、最終的に一般開業医及び他の医師の責任であり、通常は治療される疾患、個々の患者の状態、送達部位、投与方法、その他の要因が考慮される。
本明細書で使用される「対象」という用語とは、ヒトなどの哺乳類動物であるが、他の動物、例えば、野生動物(サギ、コウノトリ、クレーンなど)、家畜(アヒル、ガチョウなど)又は実験動物(オランウータン、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、マーモット、ジリスなど)も指す。
【0035】
「抗体」という用語は、完全抗体及びその任意の抗原結合フラグメント(「抗原結合部分」)または一本鎖を指す。「完全抗体」とは、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含むタンパク質を指す。各重鎖は、一つの重鎖可変領域(略語はVH)及び一つの重鎖定常領域を含む。該重鎖定常領域には、3つのドメイン(domain)であるCH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は、一つの軽鎖可変領域(略語はVL)及び一つの軽鎖定常領域を含む。該軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)を含む。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる高い変動性を持つ複数の領域にさらに分割でき、さらにその間にフレーム領域(FR)と呼ばれる保存された領域が散在する。各VH及びVLは、いずれも3つのCDR及び4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端に向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置されている。重鎖及び軽鎖のこれらの可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系第1成分(Clq)を含む、宿主の組織又は因子への免疫グロブリンの結合を仲介する。キメラ抗体又はヒト化抗体も本発明の抗体に含まれる。
「ヒト化抗体」という用語は、抗体において非ヒト抗体に由来するCDR領域を含み、且つその抗体分子の他の部分は1つ(又は複数)のヒト抗体に由来する抗体を指す。しかも、結合親和性を保持するために、フレーム(FRと呼ばれる)セグメントの一部の残基を修飾することができる(Jones et al.、 Nature、 321:522-525、 1986; Verhoeyen et al.、 Science、 239:1534-1536、 1988; Riechmann et al. Nature、 332:323-327、 1988)。本発明のヒト化抗体又はその断片は、当業者に知られている技術によって調製することができる(例えば、Singer et al.、 J. Immun. 150:2844-2857、 1992; Mountain et al.、 Biotechnol. Genet. Eng. Rev.、 10:1-142、 1992; 又は Bebbington et al.、 Bio/Technology、 10:169-175、 1992を参照)。
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体を指し、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体である。本発明のキメラ抗体又はその断片は、遺伝子組換え技術により調製される。例えば、前記キメラ抗体は、プロモーター、本発明の非ヒト、特に、マウスモノクローナル抗体の可変領域をコードする配列、及びヒト抗体定常領域をコードする配列を含む組換えDNAをクローニングすることにより作製することができる。このような組換え遺伝子でコードされる本発明のキメラ抗体は、例えば、マウス-ヒトキメラ抗体であり、該抗体の特異性は、マウスDNAに由来する可変領域によって決定され、そのアイソタイプはヒトDNAに由来する定常領域によって決定される。キメラ抗体の作製方法については、例えば、Verhoeyn et al.(BioEssays、 8:74、 1988)を参照する。
【0036】
「モノクローナル抗体」という用語は、単一の分子組成の抗体分子調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、体分子の準備を指す。モノクローナル抗体組成は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す。
「誘導体」という用語は、指在N末端、C末端、主鎖、ペプチド結合及び/又は側鎖残基でアミノ酸/アミノ酸鎖を(化学的)修飾されたものを指す。この用語は、アミノ酸鎖におけるアミノ酸の追加、置換又は欠失を指すことを意図していない。そのようなL-アミノ酸又はL-アミノ酸エナンチオマーの(化学)誘導体には、これらのアミノ酸の天然または非天然の誘導体が一般に含まれるが、即ち、上記に定義されるアミノ酸は、翻訳後修飾又は合成修飾を含み、ここで、アセチル化((ポリ)ペプチド配列のN末端、リジン残基など)、脱アセチル化、メチル化、エチル化などのアルキル化など(好ましくは(ポリ)ペプチド配列のリジン又はアルギニン残基)、脱メチル化、脱エチル化などの脱アルキル化、アミド化(好ましくは(ポリ)ペプチド配列のC末端)、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グルタミル化(glutamylation)、グリコシル化(好ましくは(ポリ)ペプチド配列中のアスパラギン、リジン、ヒドロキシリジン、セリンまたはスレオニン残基など)、ヘムまたはヘモグロビン部分の増加、ヒドロキシル化、ヨウ素化、イソプレニル化によるファルネシルまたはゲラニルゲラニオール(geranylgeraniol)などのイソプレノイド部分の増加、イソプレニル化、ミリストイル化、ファルネシル化、ゲラニルゲル化(geranylgernaylation)などのGPIアンカーの形成などのリポイル化(lipoylation)(リポ酸官能基の連結)、酸化、リン酸化(例えば、(ポリ)ペプチド配列中のセリン、チロシン、スレオニン、またはヒスチジン部分など)、硫酸化(例えば、チロシンの硫酸化)、セレン化(selenoylation)、硫酸化などを含むが、これらに限定されない。
投与
本発明の融合タンパク質は、単独で投与することができるが、好ましくは、計画された投与方法に従って選択された適切な医薬賦形剤、希釈剤または担体を一般に含む医薬組成物として投与される。融合タンパク質は、任意の適切な方法で治療を必要とする患者に適用することができる。正確な計量は、融合タンパク質の正確な性質を含む複数の要因に依存する。
【0037】
いくつかの適切な使用方法は、経口、直腸、経鼻、局所(経口及び舌下を含む)、皮下、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内及び硬膜外)投与を含むが、これらに限定されない。
静脈内注射及び疼痛部位への注射は、有効成分は非経口的に許容される水溶液の態様とし、熱源が含まれなく、適切なpH、等張性及び安定性を持つ。
当業者は、適切な溶媒または製剤を使用して、融合タンパク質を製剤化することができる。例えば、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、乳酸リンゲル注射液などの等張性賦形剤が挙げられる。必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝液、抗酸化剤及び/又は他の添加剤を加えることができる。経口投与用の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、経口液剤などの形態であってもよい。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバントなどの固体担体を含み得。液体医薬組成物は一般に、水、石油、動物または植物油、鉱油または合成油などの液体担体を含む。生理食塩水、グルコースまたは他の糖溶液またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールも含むことができる。
上記の技術及び方案の例、及び他の本発明で使用される技術及び方案は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、 16th edition、 Oslo、 A.(ed)、 1980.に見出すことができる。
【0038】
本発明のc-MET抗体は、天然に存在するものであってもよく、例えば、ヒトまたは哺乳動物のBリンパ球または形質細胞から単離または精製されたものである。前記c-MET抗体は、人工作製で取得されることもでき、例えば、動物をc-MET抗原で免疫し、ハイブリドーマ技術によりモノクローナル抗体を取得することができる。
前記c-MET抗原は、完全長c-METタンパク質、組換え断片又はポリペプチド、又はそれらの組み合わせであってもよい。前記動物は、一般的に使用される実験動物であってもよく、例えば、マウスを免疫してマウス抗c-MET抗体を取得し、さらに、抗体工学技術により抗体のヒト化修飾を行い、医薬品に適するモノクローナル抗体を作製する。c-MET抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニック動物を免疫することによっても取得でき、完全ヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術によって直接取得できる。一方、c-MET抗体は、Bリンパ球抗体ライブラリーをスクリーニングすることでも取得でき、最も一般的に使用される手法は、ファージ抗体ディスプレイ技術を使用して完全なヒト抗体を取得することができ、他のディスプレイ技術、例えば、リボソームディスプレイ技術、DNAディスプレイ技術、酵母ディスプレイ技術などにより完全なヒト抗体を取得することもできる。本発明は、組換えc-MET タンパク質を利用して動物を免疫してモノクローナル抗体を取得する。前記c-METタンパク質のアミノ酸配列は、GenBank 番号AAI30421.1に示される配列に従って取得できる。
本発明は、タンパク質及び細胞レベルのスクリーニングプラットフォームと組み合わされたハイブリドーマ技術を通じてアゴニストc-MET抗体を取得し、遺伝子クローニングによって抗体のアミノ酸配列を取得し、具体的な方法は実施例2を参照する。前記アゴニストc-MET抗体を作製するための前記ハイブリドーマ細胞株は、中国典型培養物保蔵センター(武漢大学、湖北省武漢市武昌区八一路No.299)に寄託され、寄託日は2017年10月17日であり、登録番号はCCTCC NO.C2017124である。前記c-MET抗体のCDR領域のアミノ酸配列は、配列SEQ ID NO:9~SEQ ID NO:14に示される。
【0039】
その配列には1つ又は複数のアミノ酸残基的置換、欠失又は追加があれば、抗体の功能が依然として維持される可能性があることを指摘すべきである。該c-MET抗体又はその生物学的に活性な断片は、保存的アミノ酸置換配列の一部を含み、前記アミノ酸で置換された配列はその活性に影響を与えないか、又はその活性の一部を保持する。アミノ酸又は断片の適切な置換は、当技術分野で周知の技術であり、容易に実施でき、得られる分子が抗原の結合、活性化または阻害活性を変化させないことを確保する。これらの技術に基づいて、当業者は、一般に、抗体の非必須領域の単一のアミノ酸を変化させても生物活性は実質的に変化しないので、これらの抗体の変異体は本発明に含まれないことを理解する。
本発明では、いずれか1つのc-MET抗体の機能的断片(生物学的活性断片)を使用することができる。ここで、c-MET抗体の機能的断片とは、遺伝子工学的に改変された抗体断片を意味し、完全長c-MET抗体の機能の全部又は一部を維持することができ。通常、前記機能的断片は、完全長c-MET抗体の活性の少なくとも50%を維持する。より好ましい条件下で、前記機能的断片は、完全長c-MET抗体の活性の60%、70%、80%、90%、95%、99%、又は100%を維持することができる。
本発明は、修飾又は改良されたc-MET抗体、例えば、それらの半減期、有効性、代謝、及び/又はタンパク質効力を促進するために修飾または改良されたc-MET抗体を使用することもできる。
【0040】
本発明は、他の同種断片を含むc-METキメラ抗体又は修飾抗体を使用することができ、例えば、ヒト異種性を低減させるために改良されたc-METヒト化抗体を使用することもできる。
修飾又は改良されたc-MET抗体は、天然に存在するc-MET抗体との共通点が少ないものであってもよいが、損傷した血管内皮細胞の修復、増殖を促進することもでき、且つ他の悪影響又は毒性を引き起こすことはない。つまり、本発明では、c-MET抗体の生物活性に影響を及ぼさない任意のバリエーションを使用することができる。
本発明の好ましい態様としては、前記c-MET抗体には、ヒト化抗体、CDR修飾キメラ抗体、FR修飾キメラ抗体、Fc修飾キメラ抗体を含むが、これらに限定されない。
c-MET抗体のアミノ酸配列に基づいて、対応するヌクレオチドコード配列を簡単に取得できる。
【0041】
本発明の好ましい態様としては、前記c-MET抗体は、細胞に移された後にc-MET抗体を発現する(好ましくは過剰発現する)ことができる発現ベクター又は発現構築物を含むが、これらに限定されない。通常、前記発現ベクターは、c-MET抗体をコードする遺伝子及びそれに作動可能に連結される発現制御配列を含む遺伝子カセットを含む。前記「作動的に連結される」又は「作動可能に連結される」とは、線状DNA配列の特定の部分が同じ線状DNA配列の他の部分の清浄度を調節または制御できる状況を指す。例えば、プロモーターが配列の転写を制御する場合には、コード配列に作動可能に連結されるものである。
本発明では、c-MET抗体配列が組換え発現ベクターに含まれることができる。宿主体内で複製及び安定化できる限り、任意のプラスミド及びベクターを本発明で使用することができる。発現ベクターの重要な特徴は、通常、複製起点、プロモーター、マーカー遺伝子及び翻訳制御エレメントを含む。
当業者に周知の方法を使用して、c-MET抗体のDNA配列及び適切な転写/翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、インビトロ組換えDNA技術、DNA合成技術、in vivo組換え技術などを含む。前記DNA配列は、mRNA合成をガイドするために、発現ベクターの適切なプロモーターに効果的に連結されることができる。形質転換ベクターには、翻訳開始のためのリボソーム結合部位及び転写ターミネーターも含まれる。
【0042】
本発明の実施形態としては、前記c-MET抗体を組換え発現させ、大規模生産を達成することができる。生産の目的に達するために、c-MET抗体をコードする遺伝子は、分子生物学的方法で適切なベクター(従来の原核又は真核の発現プラスミド又はウイルス等)にクローニングし、前記ベクターを前記c-MET抗体を発現できる細胞に導入し、前記の細胞にc-MET抗体を発現させ、c-MET抗体の発現を達成することができる。発現用細胞は、多くの種類があり、真核細胞であってもよく、原核細胞であってもよい。該抗体に最高の生物学的活性を持たせるためには、哺乳類動物細胞を使用して発現させることが好ましく、CHO細胞が最も好ましい。
【実施例
【0043】
以下、本発明を具体的な実施例によりさらに説明する。
第一部分:アゴニストc-MET抗体のスクリーニング及び作製
本発明は、まず、ハイブリドーマ技術によりc-MET抗体モノクローナル抗体を取得し、さらに、ヒト化してキメラ抗体とした。標的に対するc-MET抗体の結合能及びc-METのリン酸化促進活性によりアゴニストc-MET抗体をスクリーニングした。
【0044】
実施例1.c-MET抗原のクローニング及び発現
c-METの細胞外領域は、ガンド認識部位として肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor、 HGF)を認識してそれに結合し、その後の一連の生物学的応答調節効果において重要な役割を果たすため、c-MET細胞外領域が抗原として使用される。GenBankのヒトc-METの遺伝子配列(配列番号:NM_001127500.1)に基づいてPCRプライマーを設計し、上游プライマーP1(5’-3’):TATACCGGTCGCCACCATGAAGGC CCCCGCTGTGCTTGCACCTG(SEQ ID NO: 1)、下游プライマーP2(5’-3’):CGCGTCGACCTA GTGATGGTGA TGATGGTGTG TGAAATTCTG ATCTGGTTG ACATA(SEQ ID NO:2)とし、増幅させて約2800bpのc-MET細胞外領域断片を得た。得られたDNA断片は、AgeI及びSalIの2つの制限酵素切断部位でレンチウイルス発現ベクターpRRL-CMVに挿入され、アガロースゲル電気泳動で検証した結果を図1aに示した。図1aでは、レーン1はDNAマーカーであり、レーン2はレンチウイルスシャトルベクターpRRL-CMV-EDがAgeI及びSalIで二重消化されたサンプルであり、制限酵素消化の結果は、7500bpのベクターのバンド及び2700bpの目的遺伝子のバンドが得られることを示し、ヒトMET細胞外領域のED断片のレンチウイルス発現プラスミドpRRL-CMV-EDの構築に成功することを証明した。図1bに示すようにポリアクリルアミドゲル電気泳動検出結果に供した。発現プラスミド及びパッケージングプラスミドをHEK293T細胞に同時トランスフェクションし、細胞発現上清をニッケルカラムで精製し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った検出結果は図1bに示した。図1bでは、レーン1:発現上清ストック溶液(1:5希釈);レーン2:カラム通過溶液(1:5希釈);レーン3:20mM イミダゾール溶出画分;レーン4~5:50mM イミダゾール溶出画分;レーン6~9:200mM イミダゾール溶出画分;M:タンパク質分子量マーカー。ここで、レーン5~9での105KDaのバンドのサイズは、目的とするバンドの予想サイズと一致し、MET細胞外領域のED融合タンパク質は発現に成功するとともに精製取得されることを証明した。
精製後に、c-MET細胞外領域タンパク質は、免疫又はスクリーニングに用いられた。
クローンによって発現されたDNA 配列は、SEQ ID NO:3で表される、ヒトc-MET細胞外領域DNAをコードする配列であり、そのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4で表される。
【0045】
実施例2.c-METモノクローナル抗体の作製
組換え発現されたc-MET細胞外領域は、PBS(Hyclone、Cat No.:SH30256.01B)で1mg/mlに希釈され、フロイントアジュバント(初回免疫は完全フロイントアジュバントを、追加免疫は不完全フロイントアジュバントを用いる)と乳化された後、Balb/Cマウス(各群5匹)を皮下注射して接種し、各マウスに100μgの抗原を接種し、2週間間隔で免疫を追加した。初回の追加免疫から、毎回追加免疫後7~10日以内にマウスの血清を収集し、ELISAにより力価を測定した。
免疫後に血清力価が1:10000超えるマウスを選択すて細胞融合を行った。マウスB細胞及び骨髄腫細胞(SP2/0-Ag14、中国科学院の細胞バンク)を別々に無菌的に作製してカウントし、2つの細胞をSP2/0:B細胞=1:5の割合で混合した後に遠心し(1000r/min、10min)、上清を廃棄し、50%ポリエチレングリコール(Roche、REF:10783641001)1mlを加え、その後、無血清RPMI1640(hyclone、Cat No.:SH30809.01)20mlで終了し、10min遠心し、上清を廃棄し、血清(BI、REF:04-001-1ACS)及びHAT(Gibco、REF:21060-017)を含有するRPMI1640で沈澱を再懸濁し、各ウェルあたり105個のB細胞でプレートに加え、各ウェルあたり200μl、次に各ウェルに105個のマウス腹腔マクロファージを加え、37℃の細胞培養装置で培養し、7日後にHT(Gibco、REF:11067-030)及び血清(BI、REF:04-001-1ACS)を含有するRPMI1640に取り替え、各ウェルあたり200μl、7~10日後にELISAにより陽性クローニングを検出し、結果は図2に示し、ここで、横軸は、c-MET抗体ハイブリドーマ上清のローディング体積(単位μl)であり、縦軸は、波長450nmでの吸光度である。結果は、大量のハイブリドーマクローニング上清は、c-METタンパク質に特異的に結合でき、加えた上清体積の増加に伴い、ELISA結合シグナルも増加し、より優れた用量反応関係を示した。
【0046】
実施例3.ターゲットに対するc-METモノクローナル抗体の結合実験(ELISA)
本発明のc-MET抗体の標的c-METに対する認識及び結合能を検出するために、酵素結合免疫吸着測定法により抗体(ハイブリドーマ上清又は組換え発現されたモノクローナル抗体などを含む)がインビトロで抗原への親和性を検出した。
実験手順:抗原(c-MET細胞外領域、実施例1)をコーティング溶液(CBS)(0.05M Carbonate-Bicarbonate、 pH9.6)で2μg/mlに希釈し、100μl/ウェルで96ウェルマイクロプレート(Costar 9018、CatNo.:03113024)に加え、4℃で一晩インキュベートした。抗原でコーティングされた96 ウェルマイクロプレートを翌日室温に戻し、洗浄液PBS+0.05 % Tween 20 (Sigma、Cat No.: P1379)で2回洗浄した。次いで、200μl/ウェルブでロッキング液(PBS+1% BSA (sigma、Cat No.: V900933)を加え、37℃で2時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄した。テストされる抗体c-MET抗体を96ウェルマイクロプレートに加え、室温で2時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄した。ブロッキング液で5000倍に希釈された二次抗体(Goatanti-MouseIgG (H+L)(HRP)(杭州華安、カタログ番号:HA1006)を100μl/ウェルで96ウェルマイクロプレートに加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄した。100μl/ウェルで発色液TMB(碧云天、カタログ番号:P0209)を96ウェルマイクロプレートに加えた。50μl/ウェルで停止液(2M H2SO4)を96ウェルマイクロプレートに加えた。マイクロプレートリーダー(Bio-Rad、iMark)を使用して450nmでプレートを読み取った。
結果は図3に示すように、ここで、横軸はc-MET抗体の濃度(単位ng/ml)であり、縦軸は波長450nmでの吸光度である。結果は、c-MET抗体はMET細胞外領域ED融合タンパク質に特異的に結合でき、加えた体積が増加するほど、信号が増加し、該系の条件下で、c-METモノクローナル抗体の最小検出濃度は0.06ng/mlであり、c-MET抗体1H9D6はMET細胞外領域ED融合タンパク質との結合能が強いことを示した。
【0047】
実施例4.c-METモノクローナル抗体配列のクローニング
実施例3で得られた良好な活性を有する単細胞株c-MET抗体1H9D6については、cDNA配列をクローニングし、その後、モノクローナル抗体を組換え発現させ、活性測定を行った。本発明は、逆転写PCRを使用して抗体遺伝子の重鎖及び軽鎖可変領域を増幅し、ベクターに連結して配列決定し、モノクローナル抗体の軽鎖・重鎖配列を得た。まず、TRIzol法によりc-METを分泌するハイブリドーマ細胞株のc-MET抗体から全細胞RNAを抽出し、cDNAに逆転写した。次いで、合成されたcDNAをテンプレートとして使用し、マウス抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子の完全なセットを取得し、縮退プライマーによりマウスのc-METモノクローナル抗体の重鎖、軽鎖可変領域VH及びVL遺伝子を増幅した。重鎖上流プライマーVH-F:SAR GTR MAG CTG MAG SAG TC(SEQ ID NO:5)、下流プライマー:Mouse IgG1 R: AATTTTCTTGTCCACCTTGGTGCTGCT(SEQ ID NO:6)、軽鎖上流プライマーMouse Vκ-F: GAY ATT GTD MTS ACM CAR WCT(SEQ ID NO:7)、下流プライマーMouse Cκ-R:GGATACAGTTGGTGCAGCATCAGCCC(SEQ ID NO:8)の電気泳動の結果は、図4に示し、ここで、レーン1はDNAマーカーであり、レーン2はVH遺伝子のPCR産物であり、レーン3はVL遺伝子のPCR産物は、電気泳動の結果は、マウス由来のVH及びVL遺伝子のPCR産物はそれぞれ約351及び336bpの特異的なバンドが現れることを示し、マウス由来のVH及びVL遺伝子の取得に成功することを示した。
【0048】
最後に、増幅されたPCR産物は、PCR-Bluntベクターにクローニングされ、配列決定された。IMGTデータベースのアラインメントにより、本発明のマウス由来のCDR配列は、表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例5.c-METヒト化キメラ抗体の構築
c-MET抗体重鎖及び軽鎖可変領域は、オーバーラップエクステンションPCR法によりヒトIgG1重鎖定常領域遺伝子Cγ1及びヒト軽鎖定常領域遺伝子Cκにそれぞれ連結され、c-MET抗体キメラ抗体を構築した。1.5%アガロースゲルの結果は、マウス由来のVH及びVL遺伝子のPCR産物はそれぞれ約351及び336bpの特異的なバンドが現れ、ヒトCγ1及びCκ遺伝子のPCR産物は約1000及び350bpの特異的なバンドが現れ、サイズはいずれも理論値と一致する。SOE-PCR産物は、AgeI及びSalIで二重消化されてレンチウイルス発現ベクターpRRL-CMVに連
結し、電気泳動の結果は図5に示した。ここで、レーン1はDNAマーカーであり、レーン2はレンチウイルスシャトルベクターpRRL-CMV-重鎖がAgeI及びSalI
で二重消化されたサンプルであり、レーン3は、レンチウイルスシャトルベクターpRRL-CMV-軽鎖がAgeI及びSalIで二重消化されたサンプルであり、制限酵素切
断の結果は、7500bpのベクターのバンド、1400bp(重鎖)及び700bp(軽鎖)の目的遺伝子のバンドを取得し、c-METヒト化キメラ抗体の軽鎖・重鎖レンチウイルス発現プラスミドの構築に成功することを示した。
【0051】
実施例6.c-METヒト化キメラ抗体の標的検出
本発明のヒト化キメラ抗体が標的c-METに対するターゲティング及び特異性を有し、c-MET天然リガンドHGFを使用して競合的結合実験を行った。
実験手順:抗原(c-MET細胞外領域、実施例1)をコーティング溶液(CBS)( 0.05 M Carbonate-Bicarbonate、 pH 9.6)で2μg/mlに希釈し、100μl/ウェルで96ウェルマイクロプレート(Costar 9018、CatNo.: 03113024)に加え、4℃で一晩インキュベートした。抗原でコーティングされた96ウェルマイクロプレートを翌日室温に戻し、洗浄液(PBS+0.05 % Tween 20 (Sigma、Cat No.: P1379)で2回洗浄した。次いで、200μl/ウェルでブロッキング液(PBS+1 % BSA (sigma、Cat No.: V900933)を加え、37℃で2時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄した。テストされるc-METヒト化キメラ抗体を96ウェルマイクロプレートに加え、室温で1.5時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄した。ブロッキング液で希釈された最終濃度が15ng/mlのHGF(RD、294-HG)100μl/ウェルでを加え、37℃で2時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄した。ブロッキング液で2000倍に希釈されたHGF抗体(RD、AF276)を100μl/ウェルで96ウェルマイクロプレートに加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄した。ブロッキング液で2000倍に希釈されたストレプトアビジン-HRP酵素標識二次抗体(CST、#3999)を100μl/ウェルで96ウェルマイクロプレートに加え、室温で0.5時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄した。100μl/ウェルで発色液TMB(碧云天、カタログ番号:P0209)を96ウェルマイクロプレートに加えた。50μl/ウェルで停止液(2M H2SO4)を96ウェルマイクロプレートに加えた。マイクロプレートリーダー(Bio-Rad、iMark)を使用して450nmでプレートを読み取った。
c-METヒト化キメラ抗体に対するHGFの競合的結合は図6に示し、ここで、横軸はc-METヒト化キメラ抗体の濃度(単位ng/ml)であり、縦軸は波長450nmでの吸光度である。結果は、c-METヒト化キメラ抗体は、HGF/METの特異的結合を遮断することができ、加えた濃度が高くなるほど、遮断効果が増強し、該系の条件下で、HGF/c-MET特異的結合に対するc-METヒト化キメラ抗体の最大遮断率は79.7%である。HGFは抗原へのc-METキメラ抗体の結合を効果的に阻害できることがわかり、キメラc-MET抗体が標的c-METをターゲットとすることを示した。
【0052】
実施例7.c-METヒト化キメラ抗体の標的への二量化及びリン酸化活性の検証
本発明のc-MET抗体、特に、ヒト化キメラ抗体標的の、c-METに対する活性化能を検出するために、ウェスタンブロット法により抗体が標的チロシンキナーゼ領域を二量体化した後に自己リン酸化する効果を検出した。
実験手順:Bend.3細胞をFBSを含まない培地で24hインキュベートし、その後、20μg/mlでc-METヒト化キメラ抗体を加え、37℃でそれぞれ1min、5min、10min、30min、60min及び120minインキュベートし、SDSライセートで細胞を溶解させ、ウェスタンブロット法によりライセートでのTyr1234リン酸化METを検出した。
結果は図7に示すように、c-METヒト化キメラ抗体は、c-METのリン酸化を活性化し、リン酸化活性化効果は5minで現れ始め、30minで最大に達し、減衰せずに120minまで持続することをわかり、c-METヒト化キメラ抗体は活性化抗体であることを示した。
【0053】
第二部分:血管内皮システムの再構築及び修復活性を持つc-MET抗体のスクリーニング
血管内皮細胞の損傷は、多くの疾患の病理過程における重要なリンクであり、生物活性を高めることができる物質をスクリーニングすることで、血管損傷条件下で新しい血管の形成を促進し、損傷した血管を保護する可能で潜在的な医薬品先の前駆体を得る。研究により、c-METは血管内皮細胞で高い発現レベルを示し、血管内皮細胞の損傷による疾患で有効な標的であることを証明した。従って、本発明は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をモデルとしてc-MET抗体をスクリーニングし、その潜在的な治療能力を評価した。
【0054】
実施例8.標的細胞へのc-METヒト化キメラ抗体の結合活性の検出
本発明の抗体が標的細胞への結合活性を有するか否かを検出するために、ELISAによりc-MET高発現細胞HUVECへの表面結合能を検出した。
実験手順:対数増殖期のHUVEC細胞を採取し、消化してカウントし、細胞を20000細胞/ウェルの密度であらかじめポリオルニチン(PRON)でプレコートされた96ウェル細胞培養プレートに播種され、翌日PBSで1回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定され、室温で30min、PBSで洗浄された後、室温で60minブロッキングし(ブロッキング液:1% FBS/PBS(v/v))、次いで、8つの濃度(20μg/mlから5倍濃度勾配希釈)のc-METヒト化キメラ抗体を対応するウェルに入れ、最後に、最終容量は100μlであり、室温で1時間インキュベートした。PBSで洗浄し、3回繰り返した。5000倍に希釈された二次抗体(山羊抗マウスIgG (H+L)(HRP)(杭州華安、カタログ番号:HA1006)100μlを各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートし、PBSで3回洗浄した。100μl/ウェルで発色液TMB(KPL Catalog No.53-00-01)を96ウェルマイクロプレートに加えた。50μl/ウェルで停止液(2M H2SO4)を96ウェルマイクロプレートに加えた。マイクロプレートリーダー(Bio-Rad、iMark)を使用して450nmでプレートを読み取った。
c-METヒト化キメラ抗体とHUVEC表面でのc-MET抗原の結合は図8に示し、ここで、横軸はc-MET抗体的ローディング濃度(単位ng/ml)であり、縦軸は波長450nmでの吸光度である。結果は、c-METモノクローナル抗体はHUVEC細胞表面にあるc-METタンパク質と特異的に結合でき、加えた濃度が高くなるほど、信号が増加することが分かった。ヒト化抗体はHUVECに有意に結合できることを示した。上記結果は、c-MET抗体は生きている細胞表面の抗原標的に対する結合能を有することを示した。
【0055】
実施例9.ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の増殖に対するc-METモノクローナル抗体の効果
本発明のc-METモノクローナル抗体の機能を検出するために、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をモデルとし、内皮細胞増殖の促進に対するc-METモノクローナル抗体の効果を評価した。
実験原理:c-MET抗体とc-METとの結合は、c-MET分子の二量体化及びチロシンリン酸化を促進でき、さらにc-MET下流シグナル伝達経路を活性化するため、血管内皮細胞を増殖した。
実験手順:ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)1×105個の細胞/mLを50μl/ウェルで96ウェル細胞培養プレート(costar、#3799)に加え、培地はHUVEC基本培地(Allcells、Cat No.:H004B)+1%ウシ胎児血清(FBS)(BI、REF:04-001-1ACS)である。24h細胞培養後に50μl/ウェルでc-MET 被験抗体を加え、37℃のインキュベーター(Thermo、3111)で3日間培養した。細胞増殖検出用キット(CCK8)(DOJINDO、CK04)を使用し、キットの説明書に従って細胞増殖を検出した。マイクロプレートリーダー(Bio-Rad、iMark)を使用して450nmでプレートを読み取り、細胞カウントを行った。
細胞カウントの結果は、図9に示し、ここで、横軸はc-METモノクローナル抗体の濃度(単位ng/ml)であり、縦軸は波長450nmでの吸光度である。結果は、c-METモノクローナル抗体はHUVEC細胞の増殖効果を促進でき、加えた濃度が高くなるほど、効果はより顕著になることが分かった。HUVECはc-MET抗体の作用下でさらに顕著に増殖することが分かった。上記結果は、c-METモノクローナル抗体は血管内皮細胞の増殖を引き起こすことができ、血管を保護する潜在的な能力を有することを示した。
【0056】
実施例10.ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)移動に対するc-METモノクローナル抗体の作用
本発明のc-MET抗体の血管形成を促進する機能を検出するために、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をモデルとし、c-MET抗体の内皮細胞移動を促進する作用を評価した。
実験原理:c-MET抗体とc-METとの結合は、c-MET分子の二量体化及びチロシンリン酸化を促進でき、さらにc-MET下流シグナル伝達経路を活性化するため、血管内皮細胞の移動を促進した。
実験手順:ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)2×105個の細胞/mLを500μl/ウェルでトランスウェルチャンバー(BD、353097)の上部チャンバーに加え、下部チャンバーに異なる濃度の被験抗体を含む培地750μlを加え、培地はHUVEC基本培養液(Allcells、Cat No.:H004B)+1%ウシ胎児血清(FBS)(BI、REF:04-001-1ACS)である。細胞を16h培養後にクリスタルバイオレットで染色し、下部チャンバーの細胞を顕微鏡下でカウントした。
細胞カウントの結果は図10に示し、ここで、横軸はc-METモノクローナル抗体の濃度(単位ng/ml)であり、縦軸はトランスウェルチャンバーの下面にある細胞数である。結果は、c-METモノクローナル抗体はHUVEC細胞の遊走効果を促進でき、加えた濃度が高くなるほど、効果はより顕著になることを示した。HUVECはc-MET 抗体の作用下でさらに顕著に移動することが分かった。上記結果は、c-METモノクローナル抗体は血管内皮細胞の移動を引き起こして血管内皮組織を形成させることができ、血管を保護する潜在的な能力を有することを示した。
【0057】
実施例11.ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の微小管形成に対するc-METモノクローナル抗体の作用
本発明c-MET抗体の血管形成を促進する機能を検出するために、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をモデルとして使用し、c-MET抗体の内皮細胞微小管形成を促進する作用を評価した。
実験原理:c-MET抗体とc-METとの結合は、c-MET分子の二量体化及びチロシンリン酸化を促進でき、さらにc-MET下流シグナル伝達経路を活性化するため、血管内皮細胞分化及び微小管形成を促進する。該過程は損傷した血管の再構築及び修復の重要なリンクである。
実験手順:ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)2×105個の細胞/mLを100μl/ウェルでpoly-D-lysine(sigma、P7280)でプレコートされた96ウェル細胞培養プレート(costar、#3799)に加え、培地はHUVEC完全培地(Allcells、Cat No.:H004)である。24h細胞培養後に50μl/ウェルでマトリゲル(BD、354234)を加え、37℃で30minインキュベートした後、200μl/ウェルでc-MET被験抗体を加え、培地はHUVEC基本培地(Allcells、Cat No.:H004B)である。37℃のインキュベーター(Thermo、3111)で3日間培養し、それぞれ24h、48h及び72hで微小管形成を観察し、微小管の数に従って被験抗体がHUVEC細胞の微管形成に対する活性を評価した。
微管形成の結果は、図11に示し、ここで、図11-Aは、ゲル塗布0時間後の対照群細胞写真であり、11-Bはゲル塗布0時間後のc-METモノクローナル抗体投与群の細胞写真であり、ここで、c-METモノクローナル抗体の濃度は1μg/mlであり;図11-Cは、ゲル塗布72時間後の対照群細胞写真であり、図11-Dはゲル塗布72時間後のc-METモノクローナル抗体投与群の細胞写真であり、ここで、c-METモノクローナル抗体の濃度は1μg/mlである。AとBを比較すると、初期細胞状態が一致することが分かり、CとDを比較すると、c-METモノクローナル抗体(1μg/ml)投与後72時間、HUVEC細胞の微小管形成の数は有意に増加することを示し、c-METモノクローナル抗体はHUVEC細胞の微小管形成を促進できることを証明した。
c-MET抗体の作用下でHUVECが形成した微小管の数はさらに顕著であることが分かった。上記結果は、c-METモノクローナル抗体が起血管内皮細胞に微小管を分化、形成させることができ、血管損傷下で新生血管を保護又は形成する潜在的な能力を有することを示した。
【0058】
第三部分:内皮細胞損傷及びアポトーシスに対するc-MET抗体の保護作用
血液脳血管内皮細胞の酸化は、損傷の主要な病理学的要因であり、ここで、脳微小血管内皮細胞の虚血再灌流は表面の密着結合タンパク質の発現に変化を引き起こし、血液脳関門の透過性の増加に直接つながり、脳虚血の損傷を悪化した。本発明は、血管内皮細胞の損傷に対するc-METアゴニストの保護作用を研究し、虚血再灌流(I-R)による脳血管内皮細胞アポトーシス及び損傷をモデルとして損傷内皮細胞に対するc-MET抗体の保護作用を評価した。
【0059】
実施例12.血管内皮細胞の酸素ーグルコース欠乏モデル(I-R)の確立
血管内皮細胞(Bend.3)培地は、DMEM基本培養液(hyclone、SH30243.01)+10% ウシ胎児血清(FBS)(BI、REF:04-001-1ACS)である。24h細胞培養後に、DMEM基本培養液を交換し、異なる濃度のc-METヒト化キメラ抗体を加え、37℃のインキュベーター(Thermo、3111)で16h培養した。その後、嫌気槽(三菱化学、C31)内で嫌気性バッグ(三菱化学、C1)を使用して低酸素環境を作り、酸素ーグルコース欠乏損傷を6h行い、培地はDMEMグルコース欠乏培養液(Gibco、11966-025)であり、異なる濃度のc-METヒト化キメラ抗体を加えた。その後、DMEM基本培養液を交換し、異なる濃度のc-MET ヒト化抗体を加え、37℃のインキュベーター(Thermo、3111)で1.5h培養した。
【0060】
実施例13.内皮細胞損傷後細胞活性に対するc-METヒト化キメラ抗体の保護作用の検出
実施例12のようにBend.3酸素ーグルコース欠乏モデルが確立された。8×104個の細胞/mLを100μl/ウェルで細胞培養プレート(costar、#3799)に加え、96ウェルプレートを使用し、群分け処理を行った後、細胞増殖検出用キット(CCK8)(DOJINDO、CK04)を使用し、キットの説明書に従って細胞生存率を検出した。マイクロプレートリーダー(Bio-Rad、iMark)を使用して450nmでプレートを読み取った。
酸素ーグルコース欠乏血管内皮細胞(Bend.3)に対するc-METヒト化キメラ抗体の保護作用による細胞カウント結果を図12に示し、ここで、横軸は、サンプルの情報であり、その内、対照群は酸素ーグルコース欠乏処理なしのサンプルであり、損傷群は酸素ーグルコース欠乏処理を受けたサンプルであり、保護群の数値はc-METヒト化キメラ抗体の濃度(単位ng/ml)であり、縦軸は波長450nmでの吸光度である。結果は、c-METヒト化キメラ抗体が酸素ーグルコース欠乏後の血管内皮細胞(Bend.3)に対して保護効果を有し、加えた濃度が高くなるほど、効果はより顕著になることを示した。c-METヒト化キメラ抗体は、酸素ーグルコース欠乏血管内皮細胞に対して保護作用を有することが分かった。
【0061】
実施例14.内皮細胞アポトーシスに対するc-METヒト化キメラ抗体の保護作用の検出
実施例12のようにBend.3酸素ーグルコース欠乏モデルが確立された。血管内皮細胞(Bend.3)1×105個の細胞/mLを2mlでカバーガラス付き35mm細胞培養皿に加え、細胞スライドを行い、群分け処理を行った後、スライドガラス上での血管内皮細胞(Bend.3)をTUNEL細胞アポトーシス検出用キット(南京諾唯賛生物科技有限公司、A112-01)で検出し、アポトーシス細胞数に従って酸素ーグルコース欠乏後の血管内皮細胞(Bend.3)のアポトーシスに対する被験抗体の作用を評価した。
対照群:酸素ーグルコース欠乏処理なしの細胞サンプル;
損傷群:酸素ーグルコース欠乏処理を受けた細胞サンプル;
保護群:数値は抗c-METヒト化抗体の濃度(単位ng/ml)である。
細胞アポトーシスの写真は図13-aに示し、アポトーシス細胞数の統計結果を図13-bに示し、結果は、血管内皮細胞(Bend.3)が酸素ーグルコース欠乏処理を経た後、アポトーシス細胞数は有意に増加し、抗c-METヒト化抗体の添加に伴い、アポトーシス細胞数は減少することを示し、抗c-METヒト化抗体は酸素ーグルコース欠乏後の血管内皮細胞(Bend.3)のアポトーシスに対して保護効果を有し、抗c-METヒト化抗体添加濃度が高くなるほど、保護効果はさらに顕著になることを証明した。
【0062】
実施例15.内皮細胞の死細胞指標LDHに対するc-METヒト化キメラ抗体の影響
血管内皮細胞(Bend.3)8×104個の細胞/mLを0.1ml/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに加え、実施例12のようにBend.3酸素ーグルコース欠乏モデルが確立された。血管内皮細胞(Bend.3)の上清を、LDH検出キット(南京建成、A020-2)で検出した。
対照群:酸素ーグルコース欠乏処理なしの細胞サンプル;
損傷群:酸素ーグルコース欠乏処理を受けた細胞サンプル;
保護群:数値は抗c-METヒト化抗体の濃度(単位ng/ml)である。
細胞の上清のLDH濃度は図14に示し、結果は、血管内皮細胞(Bend.3)が酸素ーグルコース欠乏処理を経た後、LDH濃度は有意に増加し、c-METヒト源キメラ化抗体の添加に伴い、LDH濃度は低減することを示し、抗c-METヒト化抗体は酸素ーグルコース欠乏血管内皮細胞(Bend.3)のLDH濃度を効果的に低減させる効果を有し、c-METヒト化キメラ抗体添加濃度が高くなるほど、低減効果はさらに顕著になることを証明した。表面c-MET抗体は、I/R環境下での内皮細胞の死亡率を大幅に低減させることができる。
【0063】
第四部分:各種虚血性疾患に対するc-MET抗体の効果
病理学的条件下での内皮細胞に対するc-MET抗体の保護効果及び関連する病理学的プロセスの役割をさらに検証するために、本発明は、細胞及び全体として2つのレベルの病理学的モデルを使用し、脳虚血(脳梗塞)、心筋虚血(心筋梗塞)でのc-MET抗体の薬理学的効果を研究し、内皮細胞損傷による血液脳関門透過性の変化及びその続発性ニューロンアポトーシスなどの病理学的プロセスに対するc-MET抗体の影響を説明した。
【0064】
実施例16.虚血性損傷のインビトロモデルの構築
1) 冷光源光化学的に誘発された局所脳梗塞ラットモデル:
このモデルの基本原理は、光に敏感な物質であるローズベンガルが静脈内に注入され、循環系により微小血管に到達した後、特定の強度の光源の照射下で光化学反応が起こり、局所的な脳浮腫及び血小板微小血栓が脳の照射された局所に発生し、局所脳梗塞を形成した。このモデルの早い段階で、血液脳関門の開放、重度の血管性脳浮腫、微小血管血栓症が発生する可能性があるため、脳梗塞後の微小血管損傷及び血液脳関門の変化の病態生理学的研究に使用でき、虚血半影帯の病理学的特徴をよりよくシミュレートできた。
実験手順:実験動物に10%抱水クロラールで腹腔内に3mL/kgの体重で麻酔をかけ、麻酔に成功した後、尾静脈に5%ローズベンガルB 1.5mL/kgをゆっくりと注入した。ラット定位固定器具で実験動物を固定し、頭髪を切り取り、通常のヨウ素アルコールで消毒し、両眼の線の中点後の5mmから両耳の線の中点前の5mmまで正中切開し、皮膚及び皮下を切開し、右側の骨膜を慎重に剥がし、電気凝固で血を止めた。右頭蓋骨の一部を露出させ、矢状縫合と冠状縫合の交差部分であるブレグマを露出させた。完全な硬膜を保持しながら、ブレグマの後ろ2.0mm、右側の2.0mmでの直径約5mmの範囲に頭蓋骨を削除した。レーザーは、脳組織から約1cm離れ、穴径約4mmの遮光紙で覆われ、光強度は10~12KLUXであり、照射時間は5minである。手術後、頭皮を縫合した。照射中に体温を維持するために温度計を使用し、ラットのバイタルサインは安定化した。
偽手術群:手術中の放射線照射なし。
治療群:20min照射後、c-MET抗体1mg/kgを尾静脈内に注入する。
損傷群:同量の生理食塩水を尾静脈内に注入する。
【0065】
2) マウス脳虚血MCAOモデル
右中大脳動脈閉塞(middle cerebralartery occlusion、MCAO)モデルである。マウスの体重を秤量し、体積分率10%の抱水クロラール溶液(質量分率は300mg/kg)を腹腔内に注入して麻酔し、仰臥位に固定した。正中頸部切開を行って右総頸動脈、外頸動脈、内頸動脈を剥離した。3-0ナイロン糸を外頸動脈の切開部に挿入し、ゆっくりと内頸動脈の頭蓋内方向に進め、中大脳動脈をブロックして、局所的な脳虚血をもたらした。1.5h後、ナイロン糸を引き出し、24h再灌流した。
偽手術群:手術中にナイロン糸が挿入されない。
治療群:ナイロン糸挿入後、c-MET抗体1mg/kgを尾静脈内に注入する。
損傷群:同量の生理食塩水を尾静脈内に注入する。
【0066】
3) マウス心筋梗塞モデル
マウスの体重を量り、1%ペントバルビタールナトリウムを50mg/kgで腹腔内に注入して麻酔し、仰臥位に固定した。グースネックランプ下で気管チューブを挿入し、第2肋骨と第3肋骨の間の皮膚を横方向に切開し、斜め大胸筋を持ち上げ、内側縦小胸筋を引き抜き、胸腔を露出させた。第2肋骨と第3肋骨の間の筋肉を切開し、持ち上げ、肋骨スプレッダーに入れ、肺に触れないように心臓を露出させた。鋭いピンセットで心膜を取り外し、左手で心臓を固定し、心耳を露出させ、針ホルダーを右に持ち、心耳の下端の3~5mmLADで8~0のナイロン糸で結紮し、左心室結紮下の色の変化及び鼓動を観察した。肋骨、筋肉、皮膚を5~0の縫合糸で縫合し、自発呼吸が回復するまでマウスの状態を観察し、呼吸カテーテルを引き出した。
偽手術群:手術は結紮せずに行われた。
治療群:c-METモノクローナル抗体1mg/kg及び3mg/kgを尾静脈内に注入し、合計2群、3日1回注射し、30日間持続し、合計10回投与した。
損傷群:対照として同量の生理食塩水を尾静脈内に注入した。
【0067】
実施例17.虚血環境での内皮細胞に対するc-MET抗体の保護作用
1)光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルの脳血管内皮細胞に対するc-METモノクローナル抗体のin vivo保護効果
本発明のc-MET抗体がin vivoでc-METに結合した後に血管内皮細胞に対して実質的な保護効果を有するか否かを検出するために、以下の各群マウスの局所的虚血部位に免疫組織化学的検出を行い、血管の損傷及び修復を評価した。
実施例16のように局所脳虚血光化学モデルで構築され、群分け、モデリング、投与、動物麻酔を行った後、まず、37℃のPBSで心臓を灌流し、その後、4℃の4%PFA(パラホルムアルデヒド)で灌流固定し、最後に、脳組織を取り出し、組織をすぐにOCT(凍結切片包埋剤)で包埋した後、凍結切片し、切片厚さは、通常12~16μmであり、凍結切片を5%正常ヒツジ血清で室温、1時間ブロッキングし、次いで、5%正常ヒツジ血清で希釈された一次抗体を加え、4℃で一晩静置し、翌日PBSで3回洗浄した後、対応する蛍光二次抗体のように暗所で1時間インキュベートし、PBSで3回洗浄した後、封入剤で固定した後に蛍光顕微鏡で観察した。
脳微小血管内皮細胞染色の結果は図15に示し、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、VWFは血管内皮細胞マーカーであり、DAPIは核染色マーカーであり、合併とはVWF及びDAPIで染色された同一視野の写真が画像結合によって合成された画像である。
結果は、c-METモノクローナル抗体は光化学的損傷後の脳血管内皮細胞損傷を有意に低減させることができ、血管完全性がよく、光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルによる脳梗塞に対して保護作用を有することを示した。
c-METモノクローナル抗体群は、微小血管損傷の程度が対照群より低いことが分かった。上記結果は、c-METモノクローナル抗体は脳血管内皮系を効果的に保護できることを示した。
【0068】
2)塞栓糸によるマウス脳虚血モデル(MCAO)の脳血管内皮細胞に対するc-METヒト化キメラ抗体のin vivo保護効果
実施例16のように塞栓糸によるマウス脳虚血モデル(MCAO)構築され、群分け、モデリング、投与、動物麻酔を行った後、まず、37℃のPBSで心臓を灌流し、その後、4℃の4%PFA(パラホルムアルデヒド)で灌流固定し、最後に、脳組織を取り出し、組織をすぐにOCT(凍結切片包埋剤)に包埋した後、凍結切片し、切片厚は、通常12~16μmであり凍結切片を5%正常ヒツジ血清で室温、1時間ブロッキングし、次いで、5%正常ヒツジ血清で希釈された一次抗体を加え、4℃で一晩静置し、翌日PBSで3回洗浄した後、対応する蛍光二次抗体のように暗所で1時間インキュベートし、PBSで3回洗浄した後、封入剤で固定した後に蛍光顕微鏡で観察した。
脳微小血管内皮細胞染色の結果は図16-aに示し、ここで、損傷群は生理食塩水を注射し、治療群はc-METヒト化キメラ抗体を用量1mg/kgで注射し、VWF(血管内皮細胞マーカー)抗体及び抗ZO-1(密着結合タンパク質)抗体については、合併とはVWF及びZO-1で染色された同一視野の写真が画像結合によって合成された画像である。損傷部位でのZO-1発現のウエスタンブロット結果を図16-bに示した。
結果は、c-METヒト化キメラ抗体はMCAOの脳血管内皮細胞損傷を大幅に低減させることができ、血管完全性がよく、MCAOモデルによる内皮系の損傷に対して保護作用を有することを示した。
c-METヒト化キメラ抗体群は、微小血管損傷の程度が対照群より低いことが分かった。上記結果は、c-METヒト化キメラ抗体は脳血管内皮系を効果的に保護できることを示した。
【0069】
3)マウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)の血管内皮細胞に対するc-METヒト化キメラ抗体の保護作用
実施例16に記載のように立マウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)を構築し、群分けを行った。心臓をすばやく取り出し、4%パラホルムアルデヒドに入れて固定した後、パラフィン包埋し、LAD結紮糸の下部から3mmの位置で切片を作り、切片厚さは3mmであり、VWF染色を行い、まず、VWF抗体を使用して切片をインキュベートし、抗体希釈率は1:50であり、室温で120分間インキュベートし、PBSで3回洗浄し、HRP標識抗ウサギ二次抗体を加え、抗体希釈率は1:500であり、室温で30分間インキュベートし、PBSで3回洗浄し、各切片に新鮮に調製されたDAB溶液1滴を加え、顕微鏡下で5分間観察し、0.1%HClで分別し、水道水で濯ぎ、青色に染色し、切片をアルコールで勾配脱水して乾燥させ、キシレンで透徹させ、中性樹脂で封入され、風乾後、顕微鏡で観察した。
評価指標:VWFは、血管内皮細胞マーカーであり、VWFへの免疫組織化学染色により血管内皮細胞の分布及び状態を観察し、血管の完全性を反映し、マウスMI心筋梗塞モデルの心臓微小血管に対するc-METヒト化キメラ抗体の影響を評価した。
結果は、心臓組織切片のVWF染色結果は図17に示し、ここで、損傷群は、同量の生理食塩水を注射し、治療群は、c-METヒト化キメラ抗体3mg/kgを注射した。対照群は偽手術群である。結果は、対照群は、VWF染色像は明瞭であり、血管構造が明瞭で完全であり、損傷群は、VWF染色像は明瞭であり、血管部位構造の損傷はひどく、MI心筋梗塞によって引き起こされる血管損傷がひどいことを示し、治療群はVWF染色像は明瞭であり、血管構造は比較的完全に維持し、抗c-MET ヒト化抗体はマウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)による心臓微小血管損傷に対して保護作用を有することを証明した。
【0070】
実施例18.虚血による血液脳関門の透過に対するc-MET抗体の保護作用の研究
血液脳関門の透過性の増加は、脳血管内皮細胞損傷後の重要な病理学的関連であり、脳組織の続発性損傷につながる可能性がある。従って、本発明は、各種のモデルを使用して血液脳関門を保護するためのc-MET抗体の機能を検証した。
1)酸素ーグルコース欠乏後の単層Bend.3血液脳関門モデルへの影響
血管内皮細胞(Bend.3)4×104個の細胞/mLを500μl/ウェルでトランスウェルチャンバー(BD、353097)の上部チャンバーに加え、下部チャンバーに培地750μlを加え、培地はDMEM基本培養液(hyclone、SH30243.01)+10% ウシ胎児血清(FBS)(BI、REF:04-001-1ACS)である。72h細胞培養後にDMEM基本培養液を交換し、異なる濃度のc-Metヒト化抗体を加え、37℃のインキュベーター(Thermo、3111)で16h培養した。その後、嫌気槽(三菱化学、C31)内で嫌気性バッグ(三菱化学、C1)を使用して低酸素環境を作り、酸素ーグルコース欠乏損傷6hを行い、培地はDMEM无糖培養液(Gibco、11966-025)であり、治療群は、異なる濃度のc-METヒト化キメラ抗体を加えた。次いで、DMEM完全培養液を交換し、DMEM基本培養液(hyclone、SH30243.01)+10% ウシ胎児血清(FBS)(BI、REF:04-001-1ACS)であった。異なる濃度のc-METヒト化キメラ抗体を加え、上部チャンバーに1×106個のマウス末梢血リンパ球/ウェルを加え、37℃のインキュベーター(Thermo、3111)で24h培養した。下部チャンバーの底部でのマウス末梢血リンパ球をクリスタルバイオレットで染色し、血管内皮細胞(Bend.3)の血液脳関門インビトロモデルに対する被験抗体の作用を細胞数で評価した。
対照群:酸素ーグルコース欠乏処理なしの細胞サンプル;
損傷群:酸素ーグルコース欠乏処理を受けた細胞サンプル;
治療群:酸素ーグルコース欠乏条件下で異なる濃度のc-METヒト化キメラ抗体によって処置された細胞サンプル。
カウント結果は図18に示し、結果は、血管内皮細胞(Bend.3)が酸素ーグルコース欠乏処理を経た後、細胞層の完全性が損なわれ、細胞層に透過したマウス末梢血中のリンパ球の数が有意に増加し、c-METヒト化キメラ抗体は酸素ーグルコース欠乏後の血液脳関門インビトロモデルに対して保護効果を有し、透過したマウスの末梢血中のリンパ球の数が減少し、加えた濃度が高くなるほど、効果はより顕著になる。
【0071】
2)光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルの血液脳関門透過性に対するc-MET モノクローナル抗体の保護作用
本発明のc-MET抗体がin vivoでc-METに結合した後、血液脳関門に対して実質的な保護作用を有するか否かを検出するために、実施例16に記載のように冷光源光光化学的に誘発された局所脳梗塞ラットモデルを構築し、群分けし、各群マウス血液脳関門透過性を検出し、血液脳関門の維持に対するその効果を評価した。
実施例16に記載のように冷光源光化学的に誘発された局所脳梗塞ラットモデルを構築し、群分けし、投与を行い、エバンスブルー浸出液で血液脳関門の破壊を観察し、対応する時点で試験動物を屠殺する1時間前に尾静脈に2%エバンスブルー生理食塩水溶液(4mL/kg体重)を注入した。開胸して灌流し、右心耳からの液体が基本的に透明な場合には、脳を断頭し、梗塞した大脳半球を取り出し、秤量した後、3mLホルムアミド溶液に入れ、50℃の恒温水槽で72hインキュベートし、20min(4000r/min)遠心し、上清を採取し、マイクロプレートリーダー(波長632nm)で吸光度を測定し、EBによって描かれた標準曲線に従ってEB含有量を計算し、結果はμg/g脳組織で表された。
脳組織へのEB浸潤の状況を図19に示し、ここで、図19-aは、動物脳組織写真であり、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、図19-bは、統計後のエバンスブルー含有量を示した。横軸は群分けの状況であり、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、縦軸は、エバンスブルー含有量(単位はμg/g脳組織)である。
結果は、c-METモノクローナル抗体は光化学的損傷後の動物脳組織におけるエバンスブルーの含有量を顕著に低減させ、光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルによる血液脳関門の透過性増加に対して修復作用を有することを示した。
c-METモノクローナル抗体群は、EB浸潤が対照群よりも有意に低いことが分かった。上記結果は、c-METモノクローナル抗体は血液脳関門を保護できることを示した。
【0072】
3)内皮細胞損傷後の密着結合タンパク質発現に対するc-MET抗体の影響
in vitro検出
実施例12に記載のようにin vitro酸素ーグルコース欠乏モデルを構築した後、細胞上清を廃棄し、細胞から全RNAを抽出し、異なる密着結合タンパク質のプライマーを使用して目的遺伝子の蛍光定量PCR解析を行い、各群サンプルでの目的遺伝子のmRNA転写レベルを取得した。
対照群:酸素ーグルコース欠乏処理なしの細胞サンプル。
損傷群:酸素ーグルコース欠乏処理を受け、c-METヒト化キメラ抗体を添加しない細胞サンプル。
治療群:酸素ーグルコース欠乏処理を受け、c-METヒト化キメラ抗体(濃度10000ng/ml)を添加する細胞サンプル。
蛍光定量PCR結果は図20-a及び20-bに示し、ここで、横軸は、サンプルの情報であり、縦軸は各遺伝子のmRNA相対的な転写レベルであり、対照群の目的遺伝子のmRNA転写レベルを1.0とした。ここで、図20-aは密着結合タンパク質ZO-1の結果を示し、図20-bは密着結合タンパク質クローディン-5の結果を示した。結果は、酸素ーグルコース欠乏後の血管内皮細胞(Bend.3)のクローディン-5及びZO-1タンパク質のmRNA転写レベルは有意に低減し、c-METヒト化キメラ抗体の添加に伴い、クローディン-5及びZO-1タンパク質のmRNA転写レベルは有意に向上し、対照群の発現レベルを超えた。c-METヒト化キメラ抗体は酸素ーグルコース欠乏血管内皮細胞での密着結合タンパク質のmRNA転写レベルを顕著に向上させることを示した。
【0073】
in vivo検出:
実施例16に記載のように、マウス脳虚血MCAOモデルを構築し、群分け処理した後、マウスの脳を取り出し、1mm間隔で切片にした後、脳切片に間接免疫蛍光二重染色を施し、抗VWF(内皮細胞マーカー)抗体及び抗ZO-1(密着結合タンパク質)抗体をそれぞれ加え、脳梗塞の虚血半影帯の微小血管を染色し、血液脳関門の完全性に与える影響、及び密着結合タンパク質ZO-1の発現レベルに対するc-METヒト化キメラ抗体の影響を評価した。染色結果は図16-aに示し、c-METヒト化キメラ抗体群は、脳梗塞虚血の半影帯の微小血管の完全性が損傷群よりもよく、ZO-1の発現量も損傷群よりも高く、血液脳関門の破壊が少ないことを証明した。
マウスの脳を取り出し、脳梗塞領域からサンプルを採取し、液体窒素で研磨し、サンプルを調製し、ZO-1タンパク質へのウエスタンブロッティング解析を行った。ウエスタンブロッティング結果は図16-bに示し、損傷群は、ZO-1タンパク質の発現レベルは有意に低減し、c-METヒト化キメラ抗体群は、ZO-1タンパク質の発現レベルが偽手術群と基本的に一致しており、ZO-1タンパク質がマウスMCAOモデルにおいて顕著に低減し、c-METヒト化キメラ抗体は、ZO-1タンパク質の発現レベルを有意に向上でき、発現レベルを偽手術群に近づけることを証明した。
【0074】
実施例19.虚血モデル組織梗塞に対するc-MET抗体の影響
本発明のc-MET抗体がin vivoでc-METに結合した後に梗塞巣に実質的な保護効果をもたらすか否かを検出するために、実施例12に記載の各群マウスの局所的虚血部位の脳梗塞体積を評価した。
1)塞栓糸によるマウス脳虚血モデル(MCAO)の脳梗塞に対するc-METヒト化キメラ抗体の保護作用
実施例16に記載のように、塞栓糸によるマウス脳虚血モデル(MCAO)を構築し、群分けを行った。処理済みに、マウスの脳を取り出し、2mm間隔で切片にした後、脳切片を2% 2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC、0.9%生理食塩水中)で染色し、梗塞領域のサイズを決定した。
脳梗塞体積は図21に示し、ここで、図21-aは、動物脳組織剖面の写真であり、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群は、c-METヒト化キメラ抗体を用量1mg/kgで注射し、図21-bは、統計後の脳梗塞体積結果である。横軸は群分けの状況であり、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METヒト化キメラ抗体を用量1mg/kgで注射し、縦軸は、脳梗塞体積(単位mm3)であり、結果は、c-METヒト化キメラ抗体は塞栓糸によるマウス脳虚血モデル(MCAO)の動物脳梗塞体積を顕著に低減でき、SDラット塞栓糸によるマウス脳虚血モデル(MCAO)によって引き起こされる脳梗塞に対して保護作用を有することを示した。
c-METヒト化キメラ抗体群は、脳梗塞体積が対照群よりも明らかに小さくなることを示した。上記結果は、c-METヒト化キメラ抗体は脳梗塞組織の損傷を軽減できることを示した。
【0075】
2)光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルの脳組織に対するc-METモノクローナル抗体の保護作用
実施例16に記載のように、光化学脳梗塞モデルを構築し、群分け処理を行い、手術後、マウスの脳を取り出し、2mm間隔で切片にした後、脳切片を2% 2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC、0.9%生理食塩水中)で染色し、梗塞領域のサイズを決定した。
脳梗塞体積は図22に示し、ここで、図22-aは、動物脳組織剖面の写真であり、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、図22-bは統計後の脳梗塞体積の結果を示した。横軸は群分けの状況であり、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、縦軸は脳梗塞体積(単位mm3)であり、結果は、c-METモノクローナル抗体は光化学的損傷後の動物脳梗塞体積を顕著に低減でき、光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルによる脳梗塞に対して保護作用を有することを示した。
上記結果は、c-METモノクローナル抗体は脳梗塞組織の損傷を軽減できることを示した。
【0076】
3)マウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)の心筋線維化に対するc-METヒト
化キメラ抗体の保護作用
実施例16に記載のようにマウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)を構築し、群分け処理を行った後、心臓をすばやく取り出し、4%パラホルムアルデヒドに入れて固定した後、パラフィン包埋し、LAD結紮糸の下部から3mmの位置で切片を作り、切片厚さは3mmであり、マッソン染色を行い、まず、マッソン複合染色液を使用して5分間染色し、0.2%酢酸水溶液で1回洗浄した後、5%リンタングステン酸で5~10分間処理し、0.2%酢酸水溶液で2回洗浄した後、鮮やかな緑色の染色液で5分間染色し、0.2%酢酸水溶液で2回洗浄し、無水エタノールで脱水し、キシレンで透徹させ、中性樹脂に封入し、顕微鏡で観察して写真を撮った。
評価指標:マッソン染色法により心筋梗塞領域の線維化レベルを評価し、マウスMI心筋梗塞モデルの心筋線維化に対するc-MET抗体の影響を観察した。
結果:心臓切片のマッソン染色結果は図23に示し、ここで、図23-aはマッソン染色結果を示し、図23-bは、梗塞領域の分布比(コラーゲン線維/筋線維)結果を示し、ここで、損傷群は同量の生理食塩水を注射し、治療群は、合計2群であり、それぞれc-METヒト化キメラ抗体1mg/kg及び3mg/kgを注射した。対照群は、偽手術群である。結果は、対照群では、コラーゲン線維の陽性染色はほとんどなく、損傷群のコラーゲン線維の染色は明らかであり、MI心筋梗塞後によって引き起こされる心筋線維化は重篤であることを示し、治療群は、心肌組織線維化の程度は顕著に減少し、c-METヒト化キメラ抗体濃度が高くなるほど、線維化の程度はより著しく弱まり、c-MET ヒト化キメラ抗体はマウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)による心肌組織の線維化に対して阻害作用を有することを証明した。
【0077】
実施例20.虚血モデルの生理機能に対するc-MET抗体の影響
1)光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルに対するc-MET モノクローナル抗体のニューロン保護作用
本発明のc-MET抗体がin vivoでc-METに結合した後、ニューロンに対して実質的な保護効果を有するか否かを検出するために、実施例8に記載の各群マウスの梗塞領域の末梢神経細胞に免疫組織化学的検出を行い、ニューロンに対するその保護作用を評価した。
実施例16に記載のようにラット局所脳虚血光化学モデルを構築し、群分け、投与、動物麻酔を行った後、まず、37℃のPBSで心臓を灌流し、その後、4℃の4%PFA(パラホルムアルデヒド)で灌流固定し、最後に、脳組織を取り出し、組織をすぐにOCT(凍結切片包埋剤)で包埋した後、凍結切片し、切片厚さは、通常12~16μmであり、凍結切片を5%正常ヒツジ血清で室温、1時間ブロッキングし、次いで、5%正常ヒツジ血清で希釈された一次抗体を加え、4℃で一晩静置し、翌日PBSで3回洗浄した後、対応する蛍光二次抗体のように暗所で1時間インキュベートし、PBSで3回洗浄した後、封入剤で固定した後に蛍光顕微鏡で観察した。
ニューロン染色結果は図24に示し、ここで、図24-aは、脳梗塞領域のニューロンの免疫組織化学的染色の結果であり、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、活性化カスパーゼ-3は細胞アポトーシスマーカーであり、NeuNは、ニューロン細胞マーカーであり、合併とは、活性化カスパーゼ-3及びNeuNで染色された同一視野の写真が画像結合によって合成された画像である。図24-bは、統計後の単一視野内でのアポトーシスのニューロン細胞数の結果を示した。横軸は、群分けの状況であり、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、縦軸は、アポトーシスのニューロン細胞数である。
結果は、c-METモノクローナル抗体は光化学的損傷後の脳梗塞領域ニューロン細胞損傷を顕著に軽減でき、神経細胞の死細胞数は有意に低減し、光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルによる脳梗塞に対して保護作用を有することを示した。c-METモノクローナル抗体群は、ニューロン損傷の程度が対照群よりも低いことが分かった。上記結果は、c-METモノクローナル抗体はニューロンを保護できることを示した。
【0078】
2)光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルの神経行動学的症状に対するc-MET モノクローナル抗体の作用
ラット脳梗塞後に対するc-MET抗体の神経保護作用を検出するために、実施例16に記載の各群マウスの神経機能及び神経行動を評価した。Longaらの5レベル4点法の基準を参照し、マウスが覚醒した後に神経機能スコアを行った。
スコア基準は、以下の通りである。
0点、神経学的欠損症状なし;
1点、軽度の神経学的欠損であり、左前足を完全に伸ばすことができない;
2点、中等度の局所神経学的欠損であり、歩行中に左に曲がる;
3点、重篤な局所神経学的欠損であり、左側に倒れる;
4点、自発的な歩行出来ない、意識レベルが低下する;
神経行動学的評価の結果は、図25に示し、ここで、横軸は群分けの状況であり、ここで、損傷群は、生理食塩水を注射し、治療群はc-METモノクローナル抗体を用量1mg/kgで注射し、縦軸は、神経機能スコアであり、結果は、c-METモノクローナル抗体は光化学的損傷後の動物神経機能を顕著に改善させ、光化学的に誘発されたSDラット局所脳虚血モデルによる脳梗塞症状に対して保護作用を有することを示した。
c-METモノクローナル抗体群は、行動能力は対照群よりも有意に優れたことが分かった。上記結果は、c-METモノクローナル抗体は脳梗塞の臨床症状を改善できることを示した。
【0079】
3)マウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)に対するc-METヒト化キメラ抗体の心機能保護作用
実施例16に記載のようにマウス心不全モデル(MI心筋梗塞モデル)を構築し、群分けを行った。評価指標:心機能指数を心エコー検査により評価し、マウスMI心筋梗塞モデルの心機能に対するc-METヒト化キメラ抗体の保護効果を観察した。
結果は、心エコー検査評価結果は図26に示し、ここで、図26-aは心室駆出率(EF)の結果を示し、図26-bは、左室内径短縮率(FS)の結果を示し、図26-cは、左室拡張末期容量(EDV)の結果を示し、図26-dは,左室収縮末期容量(ESV)の結果を示し、ここで、損傷群は同量の生理食塩水を注射し、治療群は合計2群、それぞれc-METヒト化キメラ抗体1mg/kg及び3mg/kgを注射した。結果は、損傷群は、EF値はいずれも40%未満であり、心筋梗塞モデルの構築に成功し、1mg/kg/3dのc-METヒト化キメラ抗体を尾静脈内に注射した後、EF値は回復の傾向があり、3mg/kg/3dのc-METヒト化キメラ抗体を尾静脈に注射した後、EF値の回復はさらに明らかになり、FS値、EDV値及びESV値は、いずれも同様の傾向があり、c-METヒト化キメラ抗体がマウスMI心筋梗塞モデルの心機能に対して保護効果を有することを示した。
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