(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】バッテリー状態推定装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20230224BHJP
G01R 31/396 20190101ALI20230224BHJP
G01R 31/3835 20190101ALI20230224BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20230224BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230224BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/396
G01R31/3835
G01R31/367
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
(21)【出願番号】P 2021550686
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 KR2019016717
(87)【国際公開番号】W WO2021107220
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0156612
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0156613
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521381897
【氏名又は名称】ミンテク カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MINTECH CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】263-1, Techno 2-ro, Yuseong-Gu, Daejeon, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン ヨン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ミョン ヒ キョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェ フン
(72)【発明者】
【氏名】パク サン オン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェ キュ
(72)【発明者】
【氏名】ファン イン ジェ
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-062829(JP,A)
【文献】特開2017-073371(JP,A)
【文献】特開2003-173823(JP,A)
【文献】特開平10-054869(JP,A)
【文献】特開2017-223536(JP,A)
【文献】特開2018-063128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/36-31/44、
H01M 10/42-10/48、
H02J 7/00-7/12、
7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリー寿命状態推定装置であって、
バッテリーを構成する複数のセルの電圧均等状態値を算出し、前記電圧均等状態値が適用された前記バッテリーの寿命状態値である均等寿命状態値を推定するためのプログラムをロードするメモリ;及び、
前記メモリにロードされたプログラムに含まれた命令を実行するプロセッサ;
を含み、
前記プロセッサは、前記プログラムの実行に従って、前記バッテリーの満充電状態電圧及び放電状態電圧間の電圧差内で電圧差の許容限界値を設定し、前記セルの測定電圧値から導出された平均電圧値を基準に、前記電圧差の許容限界値を適用した許容限界範囲を1つ以上の分析区間に細分化する許容限界分位数を設定し、前記平均電圧値を基準に、前記許容限界範囲での電圧降下率を算出するが、前記電圧降下率として前記許容限界分位数に基づく分位降下率を算出し、前記許容限界分位数内で前記セルごとの測定電圧値が最初に全て含まれる分析区間の次数である分位次数を導出し、前記分位降下率及び分位次数に基づいて電圧均等状態値を算出し、前記電圧均等状態値を前記バッテリーの残存容量に基づいて算出された寿命状態値に適用して均等寿命状態値の推定を行う、バッテリー寿命状態推定装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
ユーザが前記電圧差の許容限界値及び許容限界分位数のうちの少なくとも1つを設定できるようにするユーザインターフェースを提供するものである、請求項1に記載のバッテリー寿命状態推定装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記許容限界分位当たりの電圧差である基準偏差電圧値を算出し、
前記平均電圧
値及びセルの個数に基づいて算出された標準偏差、前記基準偏差電圧値及び前記分位次数に基づいて補正因子値を算出し、
前記分位降下率及び分位次数に基づいて算出された電圧均等状態値である一次電圧均等状態値に、前記補正因子値及び分位降下率の積を加算する二次電圧均等状態値を算出し、
前記二次電圧均等状態値を前記寿命状態値に適用して前記均等寿命状態値の推定を行う、請求項1に記載のバッテリー寿命状態推定装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記二次電圧均等状態値の算出時に、
前記算出された補正因子値が負数である場合、零(0)値に変更して適用し、正数である場合、前記算出された補正因子値をそのまま適用するものである、請求項3に記載のバッテリー寿命状態推定装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記電圧差の許容限界値を、前記満充電状態電圧と前記放電状態電圧との差である使用電圧範囲値を前記複数のセルの個数で除した値より大きく、かつ前記使用電圧範囲値を2で除した値より小さく設定するものである、請求項1に記載のバッテリー寿命状態推定装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
変数である前記分位次数を、1から前記許容限界分位数までの範囲内で順次に整数単位で増加させるが、
前記平均電圧値に対して、前記電圧差の許容限界値を前記許容限界分位数で除した値に前記分位次数を乗じた値を減算した値乃至加算した値の範囲を算出し、
前記算出された範囲内に前記セルごとの測定電圧が全て含まれる最初の分位次数を導出し、
前記導出された分位次数に基づいて前記電圧均等状態値を算出する、請求項1に記載のバッテリー寿命状態推定装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
変数である前記分位次数が前記許容限界分位数まで増加する間、前記算出された範囲内に前記セルごとの測定電圧が全て含まれない場合、前記電圧均等状態値を零(0)と決定する、請求項6に記載のバッテリー寿命状態推定装置。
【請求項8】
バッテリー寿命状態推定装置によるバッテリー寿命状態推定方法であって、
複数のセルから構成されたバッテリーの満充電状態電圧及び放電状態電圧間の電圧値内で電圧差の許容限界値を設定するステップ;
前記セルの測定電圧値から導出された平均電圧値を基準に、前記電圧差の許容限界値を適用した許容限界範囲を1つ以上の分析区間に細分化する許容限界分位数を設定するステップ;
前記平均電圧値を基準に、前記許容限界範囲での電圧降下率を算出するが、前記電圧降下率として前記許容限界分位数に基づく分位降下率を算出するステップ;
前記許容限界分位数内で前記セルごとの測定電圧値が最初に全て含まれる分析区間の次数である分位次数を導出するステップ;及び、
前記分位降下率及び分位次数に基づいて電圧均等状態値を算出し、前記電圧均等状態値を前記バッテリーの残存容量に基づいて算出された寿命状態値に適用して均等寿命状態値を推定するステップ;
を含む、バッテリー寿命状態推定方法。
【請求項9】
前記電圧差の許容限界値を設定するステップを行う前に、
ユーザが前記電圧差の許容限界値及び許容限界分位数のうちの少なくとも1つを設定できるようにするユーザインターフェースを提供するステップ;及び、
前記ユーザインターフェースを介して前記電圧差の許容限界値及び許容限界分位数のうちの少なくとも1つを入力されるステップ;
をさらに含む、請求項8に記載のバッテリー寿命状態推定方法。
【請求項10】
前記均等寿命状態値を推定するステップは、
前記許容限界分位当たりの電圧差である基準偏差電圧値を算出するステップ;
前記平均電圧
値及びセルの個数に基づいて算出された標準偏差、前記基準偏差電圧値及び前記分位次数に基づいて補正因子値を算出するステップ;
前記分位降下率及び分位次数に基づいて算出された電圧均等状態値である一次電圧均等状態値に、前記補正因子値及び分位降下率の積を加算した二次電圧均等状態値を算出するステップ;及び、
前記二次電圧均等状態値を前記寿命状態値に適用して前記均等寿命状態値を推定するステップ;
を含む、請求項9に記載のバッテリー寿命状態推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーの充電状態及び寿命状態を推定することができる装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のバッテリーセルを一まとめにして外部の物理的衝撃から保護するとともに特定の役割を果たすようにしたものをバッテリーモジュール又はバッテリーパックと指称し、一般的に「バッテリー」と略して呼ぶ。例えば、バッテリーとしては、スマートフォン、無線機、ノートパソコンなどに装着された充電池が代表的であり、電動自転車や電気自動車のように高電力を消費する場合、少なくとも1、2個から多くは数十個に達するバッテリーを束ねて1つのバッテリーパック構造物を設計することも行われている。
【0003】
バッテリー寿命の減少時、バッテリーを構成するセルの電圧偏差の程度が大きくなると、一部のセルが過充電または過放電する事態を招くことになる。このようにバッテリーセルの中で過充電または過放電するセルが発生すると、安定性が大きく低下し、異常な状況で火災または爆発につながる危険がある。また、バッテリーセルの一部が上限限界電圧または下限限界電圧に到達すると、残存容量が残っているにも関わらず、使用が制限され、バッテリーの容量を最後まで使い切ることができないという限界がある。
【0004】
なお、バッテリーの充電状態、即ち、残存容量(State Of Charge、「SOC」)は、例えば、ハイブリッド車両やバッテリー式電気自動車、またはバッテリー式電気自動車などに使用される蓄電池の燃料量を表示できる尺度である。SOCが100%の場合は、蓄電池が満充電である状態を表し、0%の場合は、蓄電池が切れた状態を表す。
【0005】
このようなバッテリーにおいて、既に設定された基準に従って推定されるバッテリーの残存容量寿命(State Of Health、「SOH」)は、バッテリーの実使用による電圧不均等状態が反映された残存容量寿命とは異なる場合があり得る。即ち、バッテリーセルの電圧不均等状態によって、一部のセルが予め設定されていた上限電圧または下限電圧に先に到達する場合、全セルが上限電圧または下限電圧に到達していなくてもバッテリー作動が中止し、バッテリーの容量を使い切ることができないという問題点がある。
【0006】
従来、バッテリーのSOCを推定する方法としては、バッテリーの開路電圧(Open Circuit Voltage、「OCV」)を測定し、これを基にバッテリーのSOCを推定する技法が使用されている。しかし、このような従来の技法では、バッテリー充電状態推定の際に、上述したバッテリー電圧不均等状態による問題を解決することが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、バッテリーを構成するセルの電圧均等化程度(State Of Balanace、「SOB」)を計算し、SOBを適用することで、バッテリー寿命状態を正確に推定することができる装置及びその方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、バッテリーを構成するセルの電圧均等化程度(State Of Balanace、「SOB」)を反映することで、バッテリー充電状態(即ち、残存容量SOC)を正確に推定することができる装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するための本発明の一側面に係るバッテリー寿命状態推定装置は、バッテリーを構成する複数のセルの電圧均等状態値を算出し、前記電圧均等状態値が適用された前記バッテリーの寿命状態値である均等寿命状態値を推定するためのプログラムをロードするメモリ;及び、前記メモリにロードされたプログラムに含まれた命令を実行するプロセッサ;を含む。
【0010】
このとき、前記プロセッサは、前記プログラムの実行に従って、前記バッテリーの満充電状態電圧及び放電状態電圧間の電圧差内で電圧差の許容限界値を設定し、前記セルの測定電圧値から導出された平均電圧値を基準に、前記電圧差の許容限界値を適用した許容限界範囲を1つ以上の分析区間に細分化する許容限界分位数を設定し、前記平均電圧値を基準に、前記許容限界範囲での電圧降下率を算出するが、前記電圧降下率として前記許容限界分位数に基づく分位降下率を算出し、前記許容限界分位数内で前記セルごとの測定電圧値が最初に全て含まれる分析区間の次数である分位次数を導出し、前記分位降下率及び分位次数に基づいて電圧均等状態値を算出し、前記電圧均等状態値を前記バッテリーの残存容量に基づいて算出された寿命状態値に適用して均等寿命状態値の推定を行うことができる。
【0011】
また、前記プロセッサは、ユーザが前記電圧差の許容限界値及び許容限界分位数のうちの少なくとも1つを設定できるようにするユーザインターフェースを提供することができる。
【0012】
また、前記プロセッサは、前記許容限界分位当たりの電圧差である基準偏差電圧値を算出し、前記平均電圧及びセルの個数に基づいて算出された標準偏差、前記基準偏差電圧値及び前記分位次数に基づいて補正因子値を算出し、前記分位降下率及び分位次数に基づいて算出された電圧均等状態値である一次電圧均等状態値に、前記補正因子値及び分位降下率の積を加算した二次電圧均等状態値を算出し、前記二次電圧均等状態値を前記寿命状態値に適用して前記均等寿命状態値の推定を行うことができる。
【0013】
また、前記プロセッサは、前記二次電圧均等状態値の算出時に、前記算出された補正因子値が負数である場合は、零(0)値に変更して適用し、正数である場合は、前記算出された補正因子値をそのまま適用することができる。
【0014】
また、前記プロセッサは、前記電圧差の許容限界値を、前記満充電状態電圧と前記放電状態電圧との差である使用電圧範囲値を前記複数のセルの個数で除した値より大きく、かつ前記使用電圧範囲値を2で除した値より小さく設定することができる。
【0015】
また、前記プロセッサは、変数である前記分位次数を、1から前記許容限界分位数までの範囲内で順次に整数単位で増加させるが、前記平均電圧値に対して、前記電圧差の許容限界値を前記許容限界分位数で除した値に前記分位次数を乗じた値を減算した値乃至加算した値の範囲を算出し、前記算出された範囲内に前記セルごとの測定電圧が全て含まれる最初の分位次数を導出し、前記導出された分位次数に基づいて前記電圧均等状態値を算出することができる。
【0016】
また、前記プロセッサは、変数である前記分位次数が前記許容限界分位数まで増加する間、前記算出された範囲内に前記セルごとの測定電圧が全て含まれない場合、前記電圧均等状態値を零(0)と決定することができる。
【0017】
また、本発明の他の側面に係るバッテリー寿命状態推定装置によるバッテリー寿命状態推定方法は、複数のセルから構成されたバッテリーの満充電状態電圧及び放電状態電圧間の電圧差内で電圧差の許容限界値を設定するステップ;前記セルの測定電圧値から導出された平均電圧値を基準に、前記電圧差の許容限界値を適用した許容限界範囲を1つ以上の分析区間に細分化する許容限界分位数を設定するステップ;前記平均電圧値を基準に、前記許容限界範囲での電圧降下率を算出するが、前記電圧降下率として前記許容限界分位数に基づく分位降下率を算出するステップ;前記許容限界分位数内で前記セルごとの測定電圧値が最初に全て含まれる分析区間の次数である分位次数を導出するステップ;及び、前記分位降下率及び分位次数に基づいて電圧均等状態値を算出し、前記電圧均等状態値を前記バッテリーの残存容量に基づいて算出された寿命状態値に適用して均等寿命状態値を推定するステップ;を含む。
【0018】
このとき、バッテリー寿命状態推定方法は、前記電圧差の許容限界値を設定するステップを行う前に、ユーザが前記電圧差の許容限界値及び許容限界分位数のうちの少なくとも1つを設定できるようにするユーザインターフェースを提供するステップ;及び、前記ユーザインターフェースを介して前記電圧差の許容限界値及び許容限界分位数のうちの少なくとも1つを入力されるステップ;をさらに含むことができる。
【0019】
また、前記均等寿命状態値を推定するステップは、前記許容限界分位当たりの電圧差である基準偏差電圧値を算出するステップ;前記平均電圧及びセルの個数に基づいて算出された標準偏差、前記基準偏差電圧値及び前記分位次数に基づいて補正因子値を算出するステップ;前記分位降下率及び分位次数に基づいて算出された電圧均等状態値である一次電圧均等状態値に、前記補正因子値及び分位降下率の積を加算した二次電圧均等状態値を算出するステップ;及び、前記二次電圧均等状態値を前記寿命状態値に適用して前記均等寿命状態値を推定するステップ;を含むことができる。
【0020】
さらに、本発明のまた他の側面に係るバッテリー充電状態推定装置は、残存容量別にバッテリー電圧がマッチングされた電圧-残存容量の相関関係を、バッテリーの電圧均等状態に基づいて補正するためのプログラムをロードするメモリ;及び、前記メモリにロードされたプログラムに含まれた命令を実行するプロセッサ;を含む。
【0021】
このとき、前記プロセッサは、前記プログラムの実行に従って、補正の基礎となる以前電圧-残存容量の相関関係表、及び複数のセルから構成されたバッテリーの実測電圧に基づいてバッテリーの電圧均等状態が適用された充電状態を推定し、前記推定された充電状態を反映して前記以前電圧-残存容量の相関関係表上の残存容量別に対応するバッテリー電圧値の補正を行うことで新しい電圧-残存容量の相関関係表を生成することができる。
【0022】
また、前記プロセッサは、前記バッテリーセルごとの測定電圧から、セルの最高電圧、セルの最低電圧及びセルの平均電圧を導出し、前記以前電圧-残存容量の相関関係表に基づいて前記セルの最高電圧、セルの最低電圧及びセルの平均電圧にそれぞれ対応する、セルの最高残存容量、セルの最低残存容量及びセルの平均残存容量を導出し、前記セルの最高残存容量及びセルの平均残存容量に基づいて充電均等因子を算出し、前記セルの平均残存容量及びセルの最低残存容量に基づいて放電均等因子を算出し、既に設定された基準残存容量に対応する基準電圧、前記バッテリーの測定電圧、前記充電均等因子及び前記放電均等因子に基づいて前記以前電圧-残存容量の相関関係表上の残存容量別に対応するバッテリー電圧値を補正することができる。
【0023】
また、前記プロセッサは、残存容量別に既に設定された標準電圧がマッチングされた標準電圧-残存容量の相関関係表から、バッテリーの充電区間及び放電区間を区分する基準となる前記基準残存容量及び前記基準電圧を設定することができる。
【0024】
また、前記プロセッサは、ユーザが前記基準残存容量を設定できるようにするユーザインターフェースを提供することができる。
【0025】
また、前記プロセッサは、前記バッテリーの実測電圧の大きさが前記基準電圧を超過する場合、前記以前電圧-残存容量の相関関係表による充電上限段階で測定されたバッテリー電圧値に基づいて前記充電均等因子を算出し、前記実測電圧の大きさが前記基準電圧未満である場合、前記以前電圧-残存容量の相関関係表による放電下限段階で測定されたバッテリー電圧値に基づいて前記放電均等因子を算出することができる。
【0026】
また、本発明のさらに他の実施例に係るバッテリー充電状態推定方法は、バッテリーセルごとに測定された電圧に基づいて、セルの最高電圧、セルの最低電圧及びセルの平均電圧を導出するステップ;既に設定された以前電圧-残存容量の相関関係に基づいて、前記セルの最高電圧、セルの最低電圧及びセルの平均電圧にそれぞれ対応する、セルの最高残存容量、セルの最低残存容量及びセルの平均残存容量を導出するステップ;前記セルの最高残存容量及びセルの平均残存容量に基づいて、充電均等因子を算出するステップ;前記セルの平均残存容量及びセルの最低残存容量に基づいて、放電均等因子を算出するステップ;既に設定された基準残存容量に対応する基準電圧、前記バッテリーの測定電圧、前記充電均等因子及び前記放電均等因子に基づいて、前記バッテリーの電圧均等状態による充電状態を推定するステップ;及び、前記推定された充電状態を適用して前記以前電圧-残存容量の相関関係表上の残存容量別に対応するバッテリー電圧値の補正を行うことで新しい電圧-残存容量の相関関係表を生成するステップを含むことができる。
【0027】
このとき、残存容量別に既に設定された標準電圧がマッチングされた標準電圧-残存容量の相関関係表から、バッテリーの充電区間及び放電区間を区分する基準となる前記基準残存容量及び前記基準電圧を設定することができる。
【0028】
また、ユーザが前記基準残存容量を設定できるようにするユーザインターフェースを提供するステップをさらに含むことができる。
【0029】
また、前記バッテリーの実測電圧の大きさが前記基準電圧を超過する場合、前記直前電圧-残存容量の相関関係表による充電上限段階で測定されたバッテリー電圧値に基づいて前記充電均等因子を算出し、前記実測電圧の大きさが前記基準電圧未満である場合、前記直前電圧-残存容量の相関関係表による放電下限段階で測定されたバッテリー電圧値に基づいて前記放電均等因子を算出することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一実施例によれば、バッテリーセルの電圧均等化程度を常時管理でき、セルの電圧均等化程度が崩れたバッテリーが危険な状況に陥る前に、事前に予防及び措置をとることができる。
【0031】
また、本発明の他の実施例によれば、バッテリー電圧、単電池電圧、温度の測定を行ってバッテリーの充電状態を推定する電圧-SOC標準テーブルの初期値を基に、バッテリーをリアルタイムで測定した電圧データを用いて電圧-SOCのテーブルを補正し、バッテリーの残存容量寿命(State Of Health、「SOH」)を計算することで、これを基にバッテリー使用時の充電状態の推定を行うことができるため、実使用時の条件に従うバッテリー充電状態をより正確に推定して情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施例に係るバッテリー寿命状態推定装置の構成図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る電圧均等化程度に基づくバッテリー寿命推定方式を説明するためのフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施例に係るセルの電圧均等状態が反映されたバッテリー寿命推定方法を説明するためのグラフの一例である。
【
図4】複数のバッテリーセルの電圧均等状態を比較したグラフの一例である。
【
図5】本発明の一実施例に係るセルの電圧均等状態算出結果を示す一例である。
【
図6】本発明の一実施例に係るセルの電圧均等状態算出結果を示す一例である。
【
図7】本発明の他の実施例に係るバッテリー充電状態推定装置の構成図である。
【
図8】本発明の他の実施例に係る電圧均等化程度に基づくバッテリー充電推定方式を説明するためのフローチャートである。
【
図9】本発明の他の実施例に係るセルの電圧均等状態が反映されたバッテリー充電状態推定方法を説明するためのバッテリー充放電状態グラフの一例である。
【
図10】本発明の他の実施例に係るセルの電圧均等状態が反映されたバッテリー充電状態推定方法を説明するためのバッテリー充放電状態グラフの他の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の図面を参照して、本発明の装置及び方法に係る実施例を説明する。なお、本発明は、後述の実施例によって制限または限定されるものではない。また、本発明を説明する際に、公知の機能または構成についての具体的な説明は、本発明の要旨を明確にするために省略されることがある。
【0034】
図1は、本発明の一実施例に係るバッテリー寿命状態推定装置の構成図である。
【0035】
図1に示されたバッテリー寿命状態推定装置100は、少なくとも1つのプロセッサにより動作するコンピューティング装置であり得る。また、バッテリー寿命装置100は、本発明に係る動作を実行するように記述された命令等(instructions)が含まれたプログラムを実行することができる。
【0036】
図1に示されるように、バッテリー寿命状態推定装置100のハードウェアは、少なくとも1つのプロセッサ110、メモリ120、ストレージ130、通信インターフェース140を含み、各構成は、バスで連結され得る。そのほかにも、バッテリー寿命状態推定装置100は、別途に入力装置や出力装置などのハードウェアをさらに含むことができる。
【0037】
また、バッテリー寿命状態推定装置100は、プログラムを実行できるオペレーティングシステムをはじめとした各種のソフトウェアがストレージ130のような格納装置に搭載され得る。
【0038】
プロセッサ110は、コンピューティング装置100の動作を制御する装置であって、プログラムに含まれた命令の処理を行うための種々のプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、MCU(Micro Controller Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)などであり得る。
【0039】
メモリ120は、本発明に係る動作を実行するように記述された命令がプロセッサ110により処理されるように当該プログラムをロードすることができる。例えば、メモリ120は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などであり得る。
【0040】
ストレージ130は、本発明に係る動作の実行に要求される各種のデータやプログラムなどを格納することができる。なお、ストレージ130は、プログラムの実行に従って処理された結果データ及び事前に連動または連結されている装置(例えば、バッテリーマネジメントシステム(Battery Management System、「BMS」など)を介して入力された測定データを各バッテリーごとにマッチングさせ、データベース化して格納することができる。
【0041】
通信インターフェース140は、コンピューティング装置100の各構成要素間の通信、及び外部連動装置との通信を処理する有線・無線通信モジュールであり得る。
【0042】
図2は、本発明の一実施例に係るバッテリー寿命状態推定装置が、バッテリーセルの電圧均等化程度に基づいて、正確なバッテリーの寿命を推定する過程を説明するためのフローチャートである。また、
図3は、本発明の一実施例に係るセルの電圧均等状態が反映されたバッテリー寿命推定方法を説明するためのグラフの一例である。
【0043】
本発明の一実施例に係るバッテリー寿命状態推定装置100は、バッテリーセルの電圧均等状態(State Of Balance by voltage、「SOBvoltage」)を計算し、バッテリーに関する熱力学的基準容量(即ち、State Of Charge、「SOC」)による基準寿命状態(State Of Health、「SOHcapacity」)にバッテリーセルの電圧均等状態(SOBvoltage)を適用した均等寿命状態(SOHbalance)を計算することができる。
【0044】
複数の単電池(即ち、セル)からなるバッテリーにおいて、電圧均等状態(SOB)は、単電池間の電圧均等化程度を表すファクターである。即ち、任意の時点において、バッテリーの単電池ごとの電圧状態が平均電圧からどの程度差があるかを確認できる値である。
【0045】
実際単電池間の電圧均等状態が適用された均等寿命状態SOHbalanceを計算することで、実使用環境下でより正確なバッテリー寿命の推定を行うことができる。即ち、従来、バッテリー寿命を推定する際、単純にセルの電圧平均値及び標準偏差などの情報にのみ限定されていたが、本発明の一実施例に係るバッテリー寿命状態推定方法では、バッテリーセルの電圧均等状態が安定的なバッテリー運用が可能な状態であるかまでを適用してバッテリー寿命の推定を行うことができる。
【0046】
図2を参照すると、プロセッサ110は、プログラムに含まれた一連の命令を実行して後述の動作を処理することができ、これによって、バッテリーセルの電圧均等状態が反映されたバッテリーの均等寿命状態(SOH
balance)を推定して出力することができる。
【0047】
まず、ストレージ140に格納されているバッテリーセル別の情報のうち、基本情報と実際に測定された測定情報とに基づいて、既に設定されたパラメータの値を導出する(S201)。
【0048】
なお、既に設定されたパラメータには、バッテリーの単電池に適用される「満充電状態電圧Vcha」、バッテリーの単電池に適用される「放電状態電圧Vdis」、バッテリーの単電池のそれぞれの測定電圧のうちの「最大電圧Vmax」、バッテリーの単電池のそれぞれの測定電圧のうちの「最小電圧Vmin」、バッテリーの単電池の測定電圧に関する「平均電圧Vavg」、バッテリーを構成する単電池の「個数n」、バッテリーの最大「動作電圧範囲Vf」、バッテリーの単電池に関する「電圧標準偏差σn」が含まれている。
【0049】
具体的に、バッテリーを使用できる電圧範囲、即ち、最大動作電圧範囲V
fは、次の数学式1のように定義される。
【数1】
【0050】
上述のように、Vchaは、バッテリーを構成する単電池の満充電状態電圧であり、Vdisは、単電池の放電状態電圧である。即ち、バッテリーの最大充電電圧と最大放電電圧との間の差を、バッテリーを使用可能な電圧範囲の値(Vf)と定義することができる。
【0051】
上述のように定義された使用電圧範囲Vfを算出する。
【0052】
例えば、
図3を参照すると、任意のリチウムイオン電池において、満充電状態電圧V
chaが4.2Vと設定され、放電状態電圧V
disが3.0Vと設定された場合、使用電圧範囲V
fは、1.2と算出され得る。
【0053】
このように導出された各パラメータに基づいて、当該バッテリーの単電池に関する電圧均等状態値SOBを推定するため、次の両パラメータdV及びXを決定する(S202)。
【0054】
上記で決定された使用電圧範囲Vf内で、単電池間の電圧差の最大許容限界、即ち、電圧差の許容限界dVを決定する。このような電圧差の許容限界dVは、適切な電圧均等状態(SOB)の範囲設定のためにユーザが指定することもできるパラメータであり、その範囲の値は限定されない。
【0055】
なお、プロセッサ110は、ユーザ(例えば、バッテリー検診者またはバッテリー使用システム設計者など)が電圧差の許容限界dVを選択できるようにするユーザインターフェースを提供することができる。プロセッサ110により提供されるユーザインターフェースは、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を含む概念である。
【0056】
このようにプロセッサ110により提供されるユーザインターフェースを介して電圧差の許容限界dVの値をリアルタイムまたは事前に入力することができ、このようなユーザインターフェースには、電圧差の許容限界dVの推薦値が含まれており、これによって、ユーザが、推薦されたdVのうち、希望するバッテリーセルの電圧均等程度に適したdV値を選択することもできる。
【0057】
このような電圧差の許容限界dVは、次の数学式2の条件によって決定される。
【数2】
【0058】
即ち、バッテリーの単電池間の電圧差の許容限界dVは、使用電圧範囲Vfを単電池の個数nで除した値以上であるが、使用電圧範囲の0.5倍を超過しないように設定することもできる。
【0059】
図3の例示に係るリチウムイオン電池の場合、使用電圧範囲V
fが1.2Vであり、電圧差の許容限界dVの値を電圧差の許容限界範囲のうちの最大値である「1.2V/2=0.6V」と決定したことが示されている。
図3には、dVが最大値であるV
f/2であることが例として示されているが、これに限定されず、平均電圧V
avgを基準にdVを適用した許容限界範囲は、より狭く設定されるほど電圧均等状態を適用する効率がより上昇することもある。
【0060】
図3を参照すると、単電池ごとの測定電圧から導出される平均電圧V
avgは、3.6Vであり、平均電圧V
avgを基準に、負方向に0.6V、正方向に0.6Vまでの範囲を、それぞれ電圧差の許容限界範囲と決定することができる。
【0061】
次に、電圧差の許容限界範囲内の散布の均等精度を決定するため、電圧差の許容限界範囲内の分析区間の数である許容限界分位数Xを決定する。
【0062】
例えば、許容限界分位数Xは、次の数学式3の条件によって決定される。
【数3】
【0063】
数学式3のように、許容限界分位数Xは、3以上かつ単電池個数nの二乗以下の数と設定することができる。
【0064】
なお、プロセッサ110は、ユーザ(例えば、バッテリー検診者またはバッテリー使用システム設計者など)が許容限界分位数Xの個数を選択できるようにするユーザインターフェースを提供することができる。
【0065】
プロセッサ110により提供されるユーザインターフェースは、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を含む概念である。このように、プロセッサ110により提供されたユーザインターフェースを介して許容限界分位数Xの値をリアルタイムまたは事前に入力することができ、このようなユーザインターフェースには、許容限界分位数Xの推薦値が含まれており、これによって、ユーザが、推薦されたXのうち、希望する精度に適したX値を選択することができる。
【0066】
このように、電圧差の許容限界範囲dV及び許容限界分位数Xが決定された状態で、分位降下率Yを決定する(S203)。分位降下率Yとは、平均電圧を基準に、許容限界範囲内での電圧降下率を意味する。
【0067】
例えば、分位降下率Yは、次の数学式4のように定義される。
【数4】
【0068】
図3の例示に係るリチウムイオン電池において、許容限界分位数Xが25と決定された場合、分位降下率Yは、4となる。
【0069】
また、
図3の例示に係るリチウムイオン電池において、使用電圧範囲V
fが1.2Vであり、電圧差の許容限界dVが0.6Vであるため、許容限界分位当たりの電圧差を意味する基準偏差電圧dV/Xは、「0.6/25=0.024」と計算される。
【0070】
次に、バッテリーの単電池V1~Vnのそれぞれの測定電圧値Vcellに基づいて、平均電圧Vavgと標準偏差σnを計算する。
【0071】
例えば、標準偏差σnは、次の数学式5を用いて算出される。
【数5】
【0072】
図3の例示に係るリチウムイオン電池において、各セル(即ち、単電池)について測定された測定電圧V
cellに基づいて算出された平均電圧V
avgは、3.6Vであるため、標準偏差σnは、0.187と計算される。
【0073】
次に、測定された各セルの全ての電圧値が含まれる分位次数Nを計算する(S205)。分位次数Nとは、1から許容限界分位数Xまで順次に増加する整数を意味する。
【0074】
このとき、分位次数Nは、次の数学式6を用いて決定される。
【数6】
【0075】
数学式6でのように、分位次数Nは、単電池の電圧平均値Vavgと基準偏差電圧dV/Xとに基づいて決定される。
【0076】
図3の例示に係るリチウムイオン電池において、平均電圧V
avgが3.6Vであり、基準偏差電圧dV/Xが0.024である時、全セルの測定電圧が含まれる最初の分位次数Nは、5であり得る。
【0077】
具体的に、全セルごと(即ち、単電池)の電圧値が含まれる最初の分位次数Nは、変数である分位次数Nを1からXまで順次に整数単位で増加させる際、次の数学式7の条件を満たすV
cellの個数を算出することで求められる。
【数7】
【0078】
前記数学式6での結果値をnに対する百分率で表記する時に最初に100となる(即ち、全単電池の測定電圧が範囲内に含まれる)分位次数Nを導出することができる。即ち、分位次数Nを1ずつ増加させて分位を行う間に、平均電圧Vavgから決定された許容限界dVまでの範囲内に全単電池の測定電圧が含まれる最初の分位次数Nを決定する。
【0079】
次に、前記数学式6及び7により計算された分位次数Nに基づいて単電池に関する電圧均等状態値SOBvoltageを計算する(S206)。
【0080】
一次電圧均等状態値であるSOB1
voltageは、次の数学式8を用いて計算される。
【数8】
【0081】
参考に、変数である分位次数NがXになるまでnに対する百分率で表記する時に最初に100となる分位次数が出ない場合、SOB1voltageは、0と決定される。
【0082】
その反面、変数である分位次数NがXになるまでnに対する百分率で表記する時に最初に100となる分位次数Nが1~Xのうちのいずれか1つの値である場合、SOB1voltageは、数学式8でのように100-Y*Nにて計算され、Y=100/Xである。
【0083】
図3の例示に係るリチウムイオン電池において、分位次数Nは、10であり、Yは、25であるため、SOB1
voltageは、「100-4*10」であるところ、60と算出される。
【0084】
次に、標準偏差σnと基準偏差電圧dV/Xとから、分位内均等補正因子Aを計算し(S207)、補正因子Aを用いて二次電圧均等状態値SOB2voltageを計算する(S208)。
【0085】
次の数学式9を用いて補正因子Aを求め、また、数学式10を用いて二次電圧均等状態値SOB2
voltageを求めることができる。
【数9】
【0086】
補正因子Aは、各分位の均等補正因子である。
【0087】
図3の例示に係るリチウムイオン電池において、分位次数Nは、10であり、基準偏差電圧dV/Xは、0.024であり、標準偏差σnは、0.187であるため、補正因子Aは、「(10*0.024-0.187)/(10*0.024)」であるところ、0.22と決定される。
【数10】
【0088】
数学式10でのように、二次電圧均等状態値SOB2voltageは、一次電圧均等状態値SOB1voltageの値と、補正因子Aと分位降下率Yとの積とに基づいて算出される。このとき、補正因子Aが負数である場合は、A’は、0と設定し、Aの値が正数である場合は、A’をAの値と設定する。
【0089】
図3の例示に係るリチウムイオン電池において、補正因子Aは、正数である0.22であるところ、A’は、0.22と設定され、その結果、二次電圧均等状態値SOB2
voltageは、「60+4*0.22」から「60.88」と決定される。
【0090】
次に、二次電圧均等状態値SOB2voltageを用いて、バッテリーの寿命状態SOH(State Of Health)を補正することにより、電圧均等状態が適用された均等寿命状態SOHbalanceを計算する(S209)。
【0091】
バッテリーの電圧均等状態が適用されたバッテリー寿命SOH
balanceは、次の数学式11を用いて計算される。
【数11】
【0092】
このとき、SOHcapacityは、バッテリー残存容量(SOC)基準の寿命を示し、SOHbalanceは、バッテリー残存容量基準の寿命に電圧均等状態を適用した寿命を示す。
【0093】
図3の例示に係るリチウムイオン電池において、当該リチウムイオン電池(即ち、バッテリー)の熱力学的基準容量(即ち、残存容量SOC)に基づく寿命状態SOH
capacityが90%である場合、補正因子Aが反映された最終の電圧均等状態値であるSOB2
voltageは、60.88であるため、均等寿命状態SOH
balanceは、「60.88*90/100」であるところ、「54.79%」と計算される。
【0094】
上述のように、平均値及び標準偏差だけでは、当該バッテリーセルの均等状態を正確に表現できないため、ユーザが希望する正確度及び精度の水準に見合う基準偏差を設定し、当該基準偏差内の分位を設定することで、より正確な電圧均等状態が適用されたバッテリー寿命状態の推定を行うことが可能である。
【0095】
図4は、複数のバッテリーセルの電圧均等状態を比較したグラフの一例である。
【0096】
図4を参照すると、第1~第4のバッテリーセルの電圧均等状態1~4を確認でき、電圧均等状態SOBは、第2のバッテリーセルの電圧均等状態2、第1のバッテリーセルの電圧均等状態1、第4のバッテリーセルの電圧均等状態4、第3のバッテリーセルの電圧均等状態3の順に、より高い値、即ち、より安定性及び効率性の高い電圧均等状態であることがわかる。
【0097】
具体的に、
図4において、第1の電圧均等状態1は、平均電圧V
avgに近接したバッテリーセルの数が多いように見えるが、第2の電圧均等状態2の分位次数Nより高い分位次数Nを有することがわかる。即ち、第1の電圧均等状態1は、第2の電圧均等状態2に比べて、電圧差の許容限界dV内で平均電圧V
avgからさらに離れた測定電圧を持つバッテリーが存在することがわかる。
【0098】
上述のように、バッテリーセルの中で電圧充放電能力が良好なセルが多数存在しても、当該セルに比べて電圧差が大きいバッテリーセルが少数でも存在している場合、バッテリーセルの電圧充放電能力は多少劣るが、セル間の電圧差が一様に分布する(即ち、電圧均等化程度が高い)バッテリーに比べて相対的に電圧均等状態SOBが低くなることがあり得る。
【0099】
図5及び
図6は、それぞれ本発明の一実施例に係るセルの電圧均等状態の算出結果を示す一例である。
【0100】
図5及び
図6は、互いに異なるバッテリーの電圧均等状態値を導出した結果を比較できるように示されている。
【0101】
なお、
図5中の第1のバッテリー及び
図6中の第2のバッテリーは、それぞれセル(即ち、単電池)の個数が10個であり、ユーザが許容限界差dVを0.6Vと設定し、許容限界分位数Xを50と設定した様態が例として示されている。
【0102】
まず、
図5及び下記表1を参照して、第1のバッテリーの電圧均等状態SOBを見てみる。
【表1】
【0103】
表1に示されるように、第1のバッテリーのセルごとの測定電圧において、最大電圧V
maxと最小電圧V
minとの間の差は、0.0013であって、全セルの測定電圧は、分位区間のうち第1の区間に全て含まれていることがわかる。上記で
図2~
図4に関して述べた方式を適用すると、一次電圧均等状態SOB1は、98と計算され、このようなSOB1に補正因子が適用されたSOB2は、99.6922と計算される。これによって、第1のバッテリーの残存容量に基づく寿命状態SOHの99.69%の値が、平均寿命状態SOH
balanceとして推定され得る。
【0104】
図5を参照すると、第1のバッテリーのバッテリーセルは、平均電圧を基準にして全てが狭い範囲内に存在することが確認され、電圧均等状態が非常に高いことがわかる。
【0105】
次に、
図6及び下記表2を参照して、第2のバッテリーの電圧均等状態SOBを見てみる。
【表2】
【0106】
表2に示されるように、第2のバッテリーのセルごとの測定電圧において、最大電圧V
maxと最小電圧V
minとの間の差は、0.33であって、上述した第1のバッテリーの最大電圧V
maxと最小電圧V
minとの差である0.0013に比べて非常に大きいことがわかる。また、第2のバッテリーの全セルの測定電圧は、分位区間のうち区間48になって初めて全て含まれていることがわかる。上記で
図2~
図4に関して述べた方式を適用すると、一次電圧均等状態SOB1の値は、4と計算され、このようなSOB1に補正因子が適用されたSOB2は、4.94625と計算される。これによって、第2のバッテリーの残存容量に基づく寿命状態SOHの約4.95%の値が、平均寿命状態SOH
balanceとして推定され得る。
【0107】
図6を参照すると、第2のバッテリーのセルごとの測定電圧は、平均電圧を基準にして非常に広い範囲にわたって存在することが確認され、これによって、電圧均等状態が非常に低い状態であることがわかる。
【0108】
結果的に、第2のバッテリーには、満充電電圧Vchaである4.2Vに近接した4.1Vの電圧充電能力を有するバッテリーセルが多数存在し、第1のバッテリーには、相対的に満充電電圧Vchaである4.2Vより多少低い電圧である3.712Vの電圧充電能力を有するバッテリーが存在する。しかし、第2のバッテリーのセルは、第1のバッテリーに比べて相対的にセルの電圧均等化程度が非常に低いため、実際にバッテリー寿命状態の効率は、バッテリーセルの電圧均等化程度が高い第1のバッテリーに比べてかなり劣ることがわかる。
【0109】
図7は、本発明の他の実施例に係るバッテリー充電状態推定装置の構成図である。
【0110】
図7に示されたバッテリー充電状態推定装置100’は、少なくとも1つのプロセッサにより動作するコンピューティング装置であり得る。また、バッテリー寿命装置100’は、本発明に係る動作を実行するように記述された命令等(instructions)が含まれたプログラムを実行することができる。
【0111】
図7に示されるように、バッテリー充電状態推定装置100’のハードウェアは、少なくとも1つのプロセッサ110’、メモリ120’、ストレージ130’、通信インターフェース140’を含み、各構成は、バスで連結され得る。そのほかにも、バッテリー充電状態推定装置100’は、別途に入力装置や出力装置などのハードウェアをさらに含むことができる。
【0112】
また、バッテリー充電状態推定装置100’は、プログラムを実行できるオペレーティングシステムをはじめとした各種のソフトウェアがストレージ130’のような格納装置に搭載され得る。
【0113】
プロセッサ110’は、コンピューティング装置100’の動作を制御する装置であって、プログラムに含まれた命令の処理を行うための種々のプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、MCU(Micro Controller Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)などであり得る。
【0114】
メモリ120’は、本発明に係る動作を実行するように記述された命令がプロセッサ110’により処理されるように当該プログラムをロードすることができる。例えば、メモリ120’は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などであり得る。
【0115】
ストレージ130’は、本発明に係る動作の実行に要求される各種のデータやプログラムなどを格納することができる。なお、ストレージ130’は、プログラムの実行に従って処理された結果データ及び事前に連動または連結されている装置(例えば、電圧/電流/温度センサ、バッテリーマネジメントシステム(Battery Management System、「BMS」など)を介して入力された測定データを各バッテリーごとにマッチングさせ、データベース化して格納することができる。なお、ストレージ130’には、各バッテリーごとに測定されたバッテリー電圧が該当する残存容量(State Of Charge、「SOC」)値を確認できる「電圧-SOCの相関関係表」が格納されている。
【0116】
通信インターフェース140’は、コンピューティング装置100’の各構成要素間の通信、及び外部連動装置との通信を処理する有線・無線通信モジュールであり得る。
【0117】
図8は、本発明の他の実施例に係るバッテリー充電状態推定装置が、バッテリーセルの電圧均等化程度に基づいて、正確なバッテリーの充電状態を推定する過程を説明するためのフローチャートである。また、
図9は、本発明の他の実施例に係るセルの電圧均等状態が反映されたバッテリー充電状態推定方法を説明するためのグラフの一例である。また、
図10は、本発明の他の実施例に係るセルの電圧均等状態が反映されたバッテリー充電状態推定方法を説明するためのグラフの他の一例である。
【0118】
本発明の他の実施例に係るバッテリー充電状態推定装置100’は、バッテリーの電圧、バッテリーセルごとの電圧及び温度を測定してバッテリー充電状態の推定を行った結果データを標準充電状態テーブルに格納し、このような標準テーブルの初期値を基に、バッテリーセルの電圧均等化程度を適用して充電状態テーブルを補正する。
【0119】
これによって、バッテリーについて実使用の条件が反映されたバッテリー充電状態を正確に推定し、ユーザが確認できるように表示することが可能である。参考に、バッテリー充電状態推定装置100’は、バッテリーのSOC情報によるバッテリー使用予想期間を確認できるようにSOCを所定の単位に分割して表示することができる。このようなバッテリー使用予想期間の単位に基づいて当該バッテリーの再充電を行うまでバッテリーを安定的に使用することができる。
【0120】
バッテリーの反復使用によって、バッテリーの寿命(即ち、使用可能容量)が減少し、バッテリーのSOC情報による製品使用予想時間が、新品に比べて不正確さが増大することになる。特に、バッテリー寿命の減少時に、バッテリーセルの電圧偏差程度が大きくなると、バッテリーの使用可能容量が満充電(full charge)される前に充電が中断されるか、バッテリーの使用可能容量が完全に放電される前に放電が中断される現象が発生することがある。これによって、SOC情報によるバッテリー使用予想期間の不正確さが増大し、SOC情報とバッテリー使用予想期間が信頼できなくなる。
【0121】
従って、バッテリーセルの実際の電圧偏差の程度を適用してSOC判断基準を補正し、補正されたSOC基準に関する情報と、それに基づくバッテリー使用予想期間とを再表示することで、ユーザの不便を軽減することができる。
【0122】
図8を参照すると、プロセッサ110’は、プログラムに含まれた一連の命令を実行して以下の動作を処理することができ、これによって、バッテリーセルの電圧均等状態が反映されたバッテリー充電状態(SOC)を推定して出力することができる。
【0123】
具体的には、
図8に示されるように、プロセッサ110’は、以下の動作を処理する。
【0124】
n個のセル(即ち、単電池)で構成されたバッテリーの電圧Vbattと各セルの電圧Vcellをリアルタイムで測定する(S801)。このとき、バッテリー電圧Vbattとセル電圧Vcellの値は、それぞれバッテリーマネジメントシステム(BMS)から獲得することができる。
【0125】
そして、セルごとの測定電圧(即ち、Vcell)に基づいて、複数のセルの中で測定電圧値が最も高いセルの電圧であるセルの最高電圧Vcell.max及び測定電圧値が最も小さいセルの電圧であるセルの最低電圧Vcell.minを導出し、複数のセルごとの測定電圧値に基づいて算出されたセルの平均電圧Vcell.avgを計算する(S802)。
【0126】
次に、セルの最高電圧Vcell.max、セルの最低電圧Vcell.min及びセルの平均電圧Vcell.avgの値に基づき、各値に対応するセルの最高残存容量SOCcell.max、セルの最低残存容量SOCcell.min及びセルの平均残存容量SOCcell.avgを導出する(S803)。
【0127】
このとき、既に設定された複数の標準セル電圧別に該当する残存容量がマッチングして格納されている「標準セル電圧-残存容量の相関関係表」から、セルの最高電圧Vcell.max、セルの最低電圧Vcell.min及びセルの平均電圧Vcell.avgのそれぞれにマッチングされたセルの最高残存容量SOCcell.max、セルの最低残存容量SOCcell.min及びセルの平均残存容量SOCcell.avgを導出することができる。
【0128】
一例として、下記表3には、「標準電圧-残存容量の相関関係表」が含まれている。即ち、表3中、0から100までの残存容量(SOC)値別に「Vbatt標準」項目のバッテリー電圧値がマッチングされた相関関係表が「標準電圧-残存容量の相関関係表」であり得る。なお、表3のように「Vbatt標準」項目で残存容量(SOC)値別にマッチングされたバッテリー電圧値は、予め設定された理想電圧、即ち、標準電圧を意味することができる。
【0129】
参考に、残存容量の区間は、例えば、表3のように10単位(例えば、パーセンテージ%)で区間を区切ることができ、残存容量の区間及び各区間毎に対応するバッテリー電圧のリアルタイムな変化状態は、ユーザが直観的に把握できるように視覚化して出力することができる。このため、プロセッサ110’は、バッテリーのリアルタイム残存容量状態を表示するユーザインターフェースを提供することができ、これは、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を含む概念である。
【0130】
一方、表3には、バッテリーについて既に設定された標準電圧及び残存容量の相関関係だけでなく、バッテリーの出荷当時を0次と設定し、逐次バッテリー電圧測定次数(即ち、1次、2次など)を増やすにつれて変化した電圧-残存容量の相関関係表がさらに含まれている。表3中、2次までのバッテリー電圧測定次数別の変化した相関関係が例示として示されているが、電圧-残存容量の相関関係表における次数は、限定されない。
【表3】
【0131】
このように表3に含まれた「電圧-残存容量の相関関係表」に基づき、セルの最高電圧Vcell.max、セルの最低電圧Vcell.min及びセルの平均電圧Vcell.avgのそれぞれにマッチングされたセルの最高残存容量SOCcell.max、セルの最低残存容量SOCcell.min及びセルの平均残存容量SOCcell.avgを導出することができる。例えば、表3で説明する任意のバッテリー(例えば、リチウムイオン電池)は、8つの単電池が直列に接続されたバッテリーモジュールであり得る。
【0132】
このとき、バッテリーの出荷(即ち、1次)当時に測定されたバッテリーセルの最高電圧Vcell.maxが3.63である場合、バッテリーの測定電圧Vbattは、「3.63*8=29.04」であるところ、直前電圧-残存容量の相関関係表(即ち、補正以前の標準電圧-残存容量の相関関係表)から、残存容量が40と導出され、セルの最高残存容量SOCcell.maxの値は、40と設定される。また、同一のバッテリーについて、出荷当時に測定されたセルの最低電圧Vcell.minが3.57である場合、バッテリーの測定電圧Vbattは、「3.57*8=28.56」であるところ、標準電圧-残存容量の相関関係表から、残存容量が25と導出され、セルの最低残存容量SOCcell.minの値は、25と設定される。また、同一のバッテリーについて、出荷当時に測定されたセルの平均電圧Vcell.avgが3.62である場合、バッテリーの測定電圧Vbattは、「3.62*8=28.96」であるところ、標準電圧-残存容量の相関関係表から、残存容量が35と導出され、セルの平均残存容量SOCcell.avgの値は、35と設定される。即ち、同一の測定次数であれば、一つのバッテリーにおいてセルの電圧均等化程度、即ち、電圧均等状態(SOB)が非常に低くなることがわかる。
【0133】
次に、バッテリーの電圧が上昇する充電区間及びバッテリーの電圧が下降する放電区間を区分するが、バッテリーの電圧測定次数別に残存容量及び電圧の固定された基準を設定するための基準残存容量SOCstdを設定する(S804)。そして、「標準セル電圧-残存容量の相関関係表」上で、基準残存容量SOCstdに対応する標準電圧を導出し、基準電圧Vstdと設定する(S804)。
【0134】
このとき、基準残存容量SOCstdは、電圧測定1次で充放電区間が変わる地点の残存容量値に設定され、例えば、残存容量40または50のように中心値に設定され得るが、これに限定されない。なお、プロセッサ110’は、ユーザがバッテリー測定次数毎に固定された基準電圧を適用する基準残存容量SOCstdを直接設定できるようにするユーザインターフェースを提供することができる。
【0135】
図9には、基準残存容量SOC
stdを40と設定したことが例として示されており、これによって、表3の標準電圧-残存容量の相関関係表上でバッテリー電圧V
battの値は、29.03と設定される。
【0136】
バッテリーの使用時、既に設定された放電状態電圧V
disから満充電状態電圧V
chaまでのバッテリー使用範囲内で、各セルの電圧が変化する。即ち、バッテリーの使用によって、
図9及び
図10のように、バッテリーの電圧変化状態(即ち、充放電状態)がグラフの形で表示され得る。
【0137】
なお、
図9を参照すると、基準残存容量SOC
std及び基準バッテリー電圧の測定次数の増加に伴い、バッテリーの電圧均等状態(State Of Balance、「SOB」)が変化し、これによって、次数別に同一の残存容量(SOC)に関するバッテリー充放電グラフの値(即ち、測定電圧)が変化することがわかる。即ち、バッテリーの電圧均等状態(SOB)の低下によって、基準残存容量SOC
stdを基準に、充電区間において同一の残存容量(SOC)に関するバッテリー測定電圧V
battの値が低くなり、放電区間において同一の残存容量区間(SOC)に関するバッテリー測定電圧V
battの値が高くなることがあり得る。
【0138】
次に、充電均等因子C及び放電均等因子Dを計算する(S805)。
【0139】
充電均等因子C及び放電均等因子Dは、バッテリー電圧測定次数毎に、上述のような電圧均等状態(SOB)の変化を、残存容量(SOC)の推定時に適用し、電圧-残存容量の補正を行うための因子である。
【0140】
充電均等因子Cは、バッテリーの現在の電圧均等状態(SOB)を充電区間に適用するためのものであって、次の数学式12によって算出される。
【数12】
【0141】
充電均等因子Cとは、セルの最高電圧Vcell.maxの値とセルの平均電圧Vcell.avgの値とからそれぞれ導出されたセルの最高残存容量SOCcell.maxとセルの平均残存容量SOCcell.avgとの割合を意味する。このとき、充電均等因子Cは、0≦C≦1の条件を満たすことができる。
【0142】
放電均等因子Dは、バッテリーの現在の電圧均等状態(SOB)を放電区間に適用するためのものであって、次の数学式13によって算出される。
【数13】
【0143】
放電均等因子Dとは、セルの最低電圧Vcell.minの値とセルの平均電圧Vcell.avgの値とからそれぞれ導出されたセルの最低残存容量SOCcell.minとセルの平均残存容量SOCcell.avgとの割合を意味する。このとき、放電均等因子Dは、0≦D≦1の条件を満たすことができる。
【0144】
次に、上記で算出された各パラメータを適用し、現在測定されたバッテリー電圧による電圧均等状態が適用されたバッテリー充電状態(SOC)の推定を行う(S806)。これによって、直前「電圧-残存容量の相関関係表」におけるバッテリー電圧を、現在測定されたバッテリーの電圧均等状態(SOB)によって補正し、均等電圧-残存容量の相関関係表を生成及び提供する(S807)。
【0145】
このとき、バッテリーの現在の電圧均等状態(SOB)を適用して各残存容量SOCに対応するバッテリー電圧を修正するため、次の数学式14を適用することができる。
【数14】
【0146】
数学式14において、VXとは、SOCXでの電圧値を意味する。
【0147】
このとき、測定されたバッテリー電圧VXが既に設定された基準電圧Vstdを超過する場合(即ち。VX>Vstdの場合)は、バッテリーの充電区間であって残存容量SOCXに対応する直前電圧-残存容量の相関関係表上でのバッテリー電圧VXを、基準電圧Vstd及び充電均等因子Cを適用して均等バッテリー電圧V’Xに補正(即ち、変更)する。
【0148】
また、測定されたバッテリー電圧VXが既に設定された基準電圧Vstd未満である場合(即ち、VX<Vstdの場合)は、バッテリーの放電区間であって残存容量SOCXに対応する直前電圧-残存容量の相関関係表上でのバッテリー電圧VXを、基準電圧Vstd及び放電均等因子Dを適用して均等バッテリー電圧V’Xに補正(即ち、変更)する。
【0149】
例えば、
図10は、表3に含まれた各電圧-残存容量の相関関係表によるデータを示したグラフである。
【0150】
表3及び
図10を参照すると、バッテリーの出荷時(即ち、1次)に測定されたセルの最高電圧V
cell.maxが3.63であり、セルの最低電圧V
cell.minが3.57であり、セルの平均電圧V
cell.avgが3.62である場合、直前電圧-残存容量の相関関係表(即ち、標準電圧-残存容量の相関関係表)から導出されたセルの最高残存容量SOC
cell.max、セルの最低残存容量SOC
cell.min及びセルの平均残存容量SOC
cell.avgは、それぞれ、SOC40、SOC25、及びSOC35である。
【0151】
これによって、数学式1及び2を用いると、当該バッテリー測定次数における充電均等因子Cは、「(40-35)/100=0.05」であり、放電均等因子Dは、「(35-25)/100=0.1」である。このとき、バッテリーの測定電圧Vbattが28.96である場合、直前電圧-残存容量の相関関係表(即ち、標準電圧-残存容量の相関関係表)において対応する残存容量SOCは、35であるところ、SOCXは、35であり、VXは、28.88と導出され得る。
【0152】
上記によるSOCX=35、VX=28.88、C=0.05、及びD=0.1の条件を数学式3に適用すると、「V’X=29.03+(1-0.1)(28.88-29.03)=28.89」であるため、残存容量SOC35から、バッテリー電圧28.88は、28.89と補正される。
【0153】
即ち、出荷時(1次)の電圧-残存容量の相関関係表において、SOC35に対応する電圧が28.89に変更される。このような方式で補正された出荷時(1次)の電圧-残存容量の相関関係表における各SOC毎の電圧値は、充電均等因子C及び放電均等因子Dが適用された(即ち、電圧均等状態が反映された)均等電圧-残存容量の相関関係表の通りであり、次回(即ち、2次)の電圧-残存容量の相関関係表の補正を行う際、初期値として使用され得る。
【0154】
図9には、標準電圧-残存容量の相関関係表に対応するバッテリーの電圧均等状態SOBを100とする時、バッテリー電圧測定1次(即ち、出荷時)における電圧均等状態SOBは96であり、バッテリー電圧測定2次における電圧均等状態SOBは90である様態が例として示されている。
【0155】
このように、バッテリー測定1次では、電圧均等状態SOBが以前に比べて96と低くなり、標準電圧-残存容量の相関関係表上の残存容量SOC100に対応する電圧値が、第1の電圧(P100)まで低くなるため、結果的に、補正された均等電圧-残存容量の相関関係表では、標準電圧-残存容量の相関関係表と比較して、充電上限が低くなる。
【0156】
また、標準電圧-残存容量の相関関係表上の残存容量SOC0に対応する電圧値が、第2の電圧(P20)まで高くなるため、結果的に、補正された均等電圧-残存容量の相関関係表では、標準電圧-残存容量の相関関係表と比較して、放電下限が高くなる。
【0157】
一方、設定された基準残存容量SOCstdを中心にして区分される充電区間(即ち、VX>Vstd)及び放電区間(即ち、VX<Vstd)のそれぞれにおいて測定されたバッテリー電圧に基づき、充電均等因子C及び放電均等因子Dを算出することができる。
【0158】
つまり、出荷後に最終的に補正された電圧-残存容量の相関関係表においてバッテリー電圧がSOC100に既に設定された範囲以内に近い段階、即ち、充電上限段階で測定されたバッテリー電圧値に基づいて算出された充電均等因子Cを使用して均等電圧-残存容量の相関関係表を再補正することができる。
【0159】
さらに、最終電圧-残存容量の相関関係表においてバッテリー電圧がSOC0に既に設定された範囲以内に近い段階、即ち、放電下限段階で測定されたバッテリー電圧値に基づいて算出された放電均等因子Dを使用して均等電圧-残存容量の相関関係表を再補正することができる。
【0160】
このように、充電均等因子C及び放電均等因子Dを、それぞれ充電上限段階及び放電下限段階で測定されたバッテリー電圧値に従って算出することで、より正確なバッテリー充電状態の推定を行うことができる。
【0161】
なお、上述した電圧均等状態(SOB)を適用してバッテリー充電状態を推定するステップ(S807)前に、基準均等因子Sを計算するステップをさらに行うことができる。
【0162】
基準均等因子Sとは、基準残存容量SOCstdと各SOCとの間の均等度合いを意味し、基準残存容量SOCstdを基準に算出された電圧均等状態(SOB)に対して重み付けを与えるために使用することができる。
【0163】
このとき、基準均等因子Sは、次の数学式15によって算出される。
【数15】
【0164】
例えば、基準残存容量SOCstdが50に設定された場合、基準均等因子Sは、0.5であり、基準残存容量SOCstdが30に設定された場合、基準均等因子Sは、0.3であり得る。
【0165】
このとき、放電区間、即ち、SOC
0~SOC
stdにおけるバッテリー電圧均等状態をSOB
lowと呼び、充電区間、即ち、SOC
std~SOC
100におけるバッテリー電圧均等状態をSOB
highとする時、バッテリーの電圧均等状態(SOB)は、次の数学式16によって算出される。
【数16】
【0166】
上述した本発明の実施例に係るバッテリー状態推定方法は、コンピュータにより実行されるプログラムモジュールのようなコンピュータにより実行可能な命令語を含む記録媒体の形態で実現することもできる。コンピュータ読み取り可能な媒体としては、コンピュータによりアクセス可能な任意の可用媒体であることができ、揮発性及び不揮発性媒体、分離型及び非分離型媒体をすべて含む。また、コンピュータ読み取り可能な媒体は、コンピュータ格納媒体を含むことができ、コンピュータ格納媒体としては、コンピュータ読み取り可能な命令語、データ構造、プログラムモジュールまたはその他のデータのような情報を格納するための任意の方法又は技術で実現された揮発性及び不揮発性、分離型及び非分離型媒体をすべて含む。
【0167】
以上、本発明を、本発明の原理を例示するための好適な実施例を挙げて図示及び説明してきたが、本発明は、上述のように図示及び説明されたとおりの構成及び作用に限定されるものではない。当業者であれば、添付された特許請求の範囲の思想や範囲を逸脱することなく、本発明を様々に変更または修正して実施できることが理解できるだろう。