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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】車両用電源ソケット
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/38 20110101AFI20230224BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20230224BHJP
   H01R 13/622 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
H01R24/38
H01R13/52 301C
H01R13/622
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022068089
(22)【出願日】2022-04-18
(62)【分割の表示】P 2020191413の分割
【原出願日】2017-12-16
(65)【公開番号】P2022095921
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】397052848
【氏名又は名称】東光特殊電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】岩井 尚章
(72)【発明者】
【氏名】田中 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 幸一
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-113938(JP,A)
【文献】特開平9-115598(JP,A)
【文献】国際公開第2017/125002(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3205246(JP,U)
【文献】特開平7-282891(JP,A)
【文献】実開平4-101384(JP,U)
【文献】特開2006-114266(JP,A)
【文献】特開昭63-116376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
13/40-13/72
24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケット本体、リング状弾性体及びキャップ部材からなり、プラグが挿入されて装着される車両用電源ソケットであって、
前記ソケット本体は、外周面にはネジ部を形成し、プラグ差し込み孔である第一の円筒孔と、前記第一の円筒孔の開孔端から外周方向に同軸心上の浅い第二の円筒孔と、前記第二の円筒孔から外周方向に延出するように配されたソケット端辺部とを有する二段の円筒構造を備え、
前記キャップ部材は、前記ソケット本体のネジ部と螺着可能なネジ部を内周面に形成し、直径が前記第二の円筒孔と同サイズで同軸心上の第三の円筒孔と、前記第三の円筒孔から外周方向に延出するように配されたキャップ端辺部とを備え、
前記リング状弾性体は、前記第二の円筒孔と前記第三の円筒孔との間に納置され、前記第一の円筒孔の直径と略同サイズの内径と前記第二の円筒孔の直径と略同サイズの外径を備え、
プラグが装着される際は、プラグは前記キャップ部材と前記リング状弾性体とを通貫され、前記ソケット本体に差し込まれ、前記リング状弾性体と接触し、前記ソケット端辺部と前記キャップ端辺部とは接触せず、
前記第一の円筒孔の円筒内面にはプラグ負極部が接触するアースリングが装着され、前記ソケット本体の底部にはプラグ正極部が接触するソケット正極部材が配されることを特徴とする車両用電源ソケット。
【請求項2】
前記リング状弾性体は、外周面又は内周面にスリット溝又は凹みが形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用電源ソケット。
【請求項3】
前記リング状弾性体の一方又は両方の端面部が軸心方向に傾斜した円錐台形状であり、円錐台形状の端面部が納置される側の前記第二の円筒孔又は第三の円筒孔の底部が円錐台形状に接面する円錐斜面形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用電源ソケット。
【請求項4】
プラグ正極部に接する前記ソケット正極部材が凹形状であることを特徴とする請求項1ないし請求項3記載の車両用電源ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や大型スクーター等の車両に、ポータブルナビゲーション装置やドライブレコーダー装置、レーダー探知機等の車両用電気機器を設ける際、車両用電気機器のプラグを車両用電源ソケット(シガーライターソケット)に差し込んで、車両電源(バッテリー)から電力を得ている。
【0003】
車両に標準装備の電源ソケットだけでは電力分配をまかなえないため、拡張ケーブル付き電源ソケットが販売され広く利用されている。係る電源ソケットにおいては、特許文献1又は特許文献2のようなプラグ挿入時の抜け落ちを防止するため、ロック機構付きの電源ソケットが提案されている。
【0004】
いずれの文献のロック機構において、ソケット本体は開口側の外周部に切り欠けを設けた構造であって、前記切り欠け部の弾性による縮径作用もってプラグ外周面とソケットを圧接する。該圧接によりソケットとプラグ間の摩擦をもって、プラグ挿入状態を保持し車両の振動等によるプラグの抜け落ちを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3190274号
【0006】
【文献】実用新案登録第3205246号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記ロック機構においては、プラグとソケット本体とが部分的な接触による摩擦を利用していることから、プラグ抜けに対抗する摩擦力が十分発揮できない場合もある。
【0008】
また、部材間のクリアランスがあることから、水や塵埃の進入によるプラグとソケット内の電極部に接触不良が生じえる。他方、ソケットの構造が切り欠けを設けるように複雑に形成されれば、強度が影響され過度な圧接に耐えられない場合がある。
【0009】
以上の課題を鑑みて、本発明は、プラグの挿入及び解除を容易にしつつ車両の振動、衝撃によるプラグの抜けを確実に防止して、十分な耐久性と防塵性及び防滴性を有する電源ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ソケット本体、リング状弾性体及びキャップ部材からなり、プラグが挿入されて装着される車両用電源ソケットであって、前記ソケット本体は、外周面にはネジ部を形成し、プラグ差し込み孔である第一の円筒孔と、前記第一の円筒孔の開孔端から外周方向に同軸心上の浅い第二の円筒孔と、前記第二の円筒孔から外周方向に延出するように配されたソケット端辺部とを有する二段の円筒構造を備え、前記キャップ部材は、前記ソケット本体のネジ部と螺着可能なネジ部を内周面に形成し、直径が前記第二の円筒孔と同サイズで同軸心上の第三の円筒孔と、前記第三の円筒孔から外周方向に延出するように配されたキャップ端辺部とを備え、前記リング状弾性体は、前記第二の円筒孔と前記第三の円筒孔との間に納置され、前記第一の円筒孔の直径と略同サイズの内径と前記第二の円筒孔の直径と略同サイズの外径を備え、プラグが装着される際は、プラグは前記キャップ部材と前記リング状弾性体とを通貫され、前記ソケット本体に差し込まれ、前記リング状弾性体と接触し、前記ソケット端辺部と前記キャップ端辺部とは接触せず、前記第一の円筒孔の円筒内面にはプラグ負極部が接触するアースリングが装着され、前記ソケット本体の底部にはプラグ正極部が接触するソケット正極部材が配されることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記リング状弾性体は、外周面又は内周面にスリット溝又凹みを形成することで、弾性体の弾性変形に係るひずみ膨張を緩やかに生起させて、キャップ部材の回動をスムーズにする特長を備える。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記リング状弾性体の端面部の一方または両方が軸心方向に傾斜した円錐台形状とし、円錐台形状の端面部が納置される側の前記第二の円筒孔又は第三の円筒孔の底部が円錐台形状に接面する円錐斜面形状である特徴を有し、強い摩擦力を生起する構造を備える。
【0013】
請求項4に係る発明は、プラグ正極部に接する前記ソケット正極部材を凹形状に形成して、電極接触の安定性を高める構造を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リング状弾性体の弾性変形が、プラグ外周面と強い摩擦力を生じせしめ、該摩擦力によりプラグの装着状態を安定して保持する。これにより車両の振動によるプラグの抜け又は抜け方向への移動による電気的な接触不良を確実に防止することができる。
【0015】
また、弾性変形が部材間の密着性を高めることで高い防塵性、防滴性を実現し、電極接触部の劣化を抑える。またスムーズな圧接操作がプラグ挿入及び解除を容易にし、部品の傷または破損を抑え耐久性を高めるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】プラグの挿入待機の実施形態を示す分解側面図である。
図2】プラグが挿入された状態の断面側面図である。
図3】リング状弾性体の各実施例における正面図および側面図であって、(a)は実施例1の形状を示す図である。(b)は実施例2の形状を示す図である。(c)は実施例3の形状を示す図である。(d)は実施例1から3の特徴を備えた形状を示す図である。
図4】実施例1及び2に係る図2のAの圧縮構造の要部を拡大した模式図であって、(a)は長方体形状のリング状弾性体の納置状態を示す図である。(b)は螺進圧縮した弾性変形の状態を示す図である。
図5】実施例3に係る図2のAの圧縮構造の要部を拡大した模式図であって、(a)は円錐体形状の端面部を有するリング状弾性体の納置状態を示す図である。(b)は螺進圧縮した弾性変形の状態を示す図である。
図6】本発明に係るバリエーションを示す圧縮構造の要部の断面模式図であって、(a)は凹形状の断面を有するリング状弾性体の例を示す図である。(b)は角辺部のないキャップ部材の例を示す図である。(c)は円錐台形状のリング状弾性体端面部がソケット本体側の第二の円筒孔側に納置される形態例を示す図である。(d)は円錐台形状がリング状弾性体の両方の端面部に形成された形態例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<概要>
本発明は、リング状弾性体が適度な弾性変形が生じる簡易な圧縮構造とリング状弾性体の形状に特徴を有するものである。実施形態は、図1から図3に示し、作用効果は図4から図6に基づいて説明する。なお、図1及び図2は後記する実施例に係るすべての特徴を備えた形態で示している。
【0018】
<構造>
ソケット本体10、キャップ部材20及びリング状弾性体30からなる車両用電源ソケットであって、車両用電気機器のプラグ40は、キャップ部材20とリング状弾性体30を通貫し、ソケット本体10に差し込まれ、キャップ部材20を回動することでソケット本体と螺合して装着される。
【0019】
前記ソケット本体10は、絶縁性樹脂製の有底円筒体であり、外周面にはソケットネジ部11(雄)を形成し、プラグ差し込み孔である第一の円筒孔12と、前記第一の円筒孔12の開孔端から外周方向に同軸心上の浅い第二の円筒孔13を有する二段の円筒体構造を備える。
【0020】
前記キャップ部材20は、プラグ40が差し込まれるプラグ開孔口を有し、ソケットネジ部11と螺合可能なキャップネジ部21(雌)を内周面に形成して、直径が第二の円筒孔13と同サイズで同軸心上の第三の円筒孔22を備える。
【0021】
前記リング状弾性体30は、第二の円筒孔13と第三の円筒孔22との間に納置され、キャップ部材20が回動して螺進することで圧縮される(以下、螺進圧縮と略す)。
【0022】
ここで、リング状弾性体30は、内径が第一の円筒孔12の直径と略同サイズであって、外径が第二の円筒孔13の直径と略同サイズであるリング厚みを有する。弾性体であることからサイズが変動しても差し障りが少なく、後記する弾性変形に係るひずみ膨張を吸収するクリアランスを確保するため、納置空間より僅少であってもよい。
【0023】
また、螺進圧縮する際、ソケット本体10とキャップ部材20が螺合した状態において、ソケット端辺部16とキャップ部材底部のキャップ端辺部23が接触しない状態で(すなわち、ネジを締め切っていない)、リング状弾性体30は圧縮して縮小可動する幅L(図3、以下螺進可動幅と略す)を有する。
【0024】
電力は、典型的には板バネ弾性を有するプラグ負極部41がソケット本体10の第一の円筒孔12の円筒内面に装着された金属製のアースリング15と接触し、ばね構造を有する先端の突起したプラグ正極部42が、ソケット本体10の底部のソケット正極部材14に弾発付勢して接触し供給を受ける。ソケット本体10の底部内では、アースリング15とソケット正極部材14に接続した電気配線部材が設けられ、ソケット本体10の底部から外部に導出され車両電源(バッテリー)に接続される。
【0025】
<弾性体材料の選定>
リング状弾性体30の材料は、摩擦係数、耐久性や耐候性等を考慮して、工業用ゴム製品として幅広く使用されている硬質のエチレン・プロピレンジエン・ゴムを基準的に採用している。弾性材料は、多様なものが存在するが、本採用を基準に弾性体の特性を考慮しつつ、実験的な試行によって他品種の選定も可能である。
【0026】
以下、各実施例の特徴とその作用を説明する。
【実施例1】
【0027】
本例は、リング状弾性体30が、図3(a)に示すように長方形をなす簡易な形状とする実施例である。図4は、図2の圧縮構造の要部Aを拡大した模式図である。本例は、リング状弾性体30がキャップ部材20に当接する端面は垂直であって、対面のソケット本体側も垂直になる(図4(a))。
【0028】
リング状弾性体30は、図4(a)の圧縮前の納置状態から螺進圧縮により圧縮力Wがかかり、図4(b)のように弾性変形する。
【0029】
螺進圧縮の当初は、対面側からの垂直抗力が対抗力となって、弾性体の内部応力(図4(b)黒矢印)と均衡しながら、ひずみ膨張が部材間のクリアランスを埋めていく。なお、圧縮力Wとは、螺進圧縮による弾性反発に対する圧縮面からの垂直抗力が相当する。
【0030】
螺進圧縮がさらに加えられれば、弾性変形に係るひずみ膨張はキャップ部材20及びソケット本体10の内部壁面で抑止され、内部応力の増加に対する壁面から受ける抗力と均衡する。なお、図4(b)の例では、螺進可動幅Lはネジ1回転の幅だけ縮小することを示しており、Lは適切な幅を確保する範囲で設計変更が可能である。
【0031】
ここで、リング状弾性体30のリング内面側のひずみ膨張は、プラグ外周面に接触する面積を広げて、内部応力の増加に係る圧力をプラグ外周面に加える。前記圧力は、高い摩擦係数を有するリング状弾性体30と圧接面積の拡大とが相まって、プラグ外周面との間で摩擦力を生起させる。リング状弾性体とプラグとの間で摩擦力を生起させる構造をもってプラグ挿入を安定して保持する。
【0032】
他方、リング外周面側のひずみ膨張は、ソケット端辺部16とキャップ端辺部23の間にある空隙に誘引され、応力集中により大きく生じる(図4(b))。キャップ部材20は、角辺部24がひずみ膨張と係合しながら、摺り合って螺進していく。ただし、ひずみ膨張が高まると角辺部24の係合力も増加し、キャップ部材20が螺進できない限界に達する場合がある。縮小可動幅Lの調整、弾性材料の選択等を考慮して解消できるが、螺進圧縮が制限されるという課題が残る。
【実施例2】
【0033】
前記課題から、本例は、図3(b)に示すようにリング弾性体の外周面の幅方向に四角体形のスリット状の溝31(以下、スリット溝と略す)を形成したものである。スリット溝は幅方向に8つの形成した例を示している。
【0034】
本形状によれば、図示していないが、(1)リング状弾性体30の外周面方向へのひずみ膨張は、スリット溝31の内面にも誘引され、緩和される。(2)キャップ部材の角辺部24は、溝部分とは係合せず係合力自体も弱くなる。(3)リング状弾性体30の圧縮方向の体積が小さくなって弾性反発が低減する。よって、螺進圧縮が緩やかになる。
【0035】
以上の作用によって、実施例1の長方体断面のリング弾性体と比較して螺進圧縮がスムーズとなり圧縮調整が良好に行なえるという効果を奏する。
【0036】
スリット溝31の数、大きさは変更可能であって、四角体形状でなくとも半円筒体等の形状を採用できる。図6(a)は、リング状弾性体30の1つのバリエーションを示す形態であって、リング状弾性体30の外周面が凹形状である。また外周面に部分的に形成しても良い。係る凹みがひずみ膨張を緩和して上記と同様な効果を得る。
【0037】
なお、凹み底辺部の応力集中を考慮すれば、耐久性の観点からリング状弾性体30の端面から幅方向に形成するスリット溝が好適である。スリット溝31はリング状弾性体30の内周面側に形成しても、上記と同様な作用効果を得ることができる。ただし、内周面のスリット溝は、プラグ外周面との間にクリアランスを生じさせることから、防塵性または防滴性は外周面にスリット溝を形成する方が良好となる。
【0038】
また、角辺部24において、角を切り落す又は丸みを持たせた形状としても、ひずみ膨張との係合力を弱めることも可能である(図6(b))。
【実施例3】
【0039】
本例は、図3(c)に示すようにリング状弾性体30の弾性体端面部32が軸心方向に傾斜した円錐台形状に形成されており、納置されるキャップ部材20の第三の円筒孔の底部は、円錐台形状に接面する円錐斜面形状に形成したことを特徴とする。
【0040】
図5は、本例の作用を示す模式図であって、図5(a)はリング状弾性体30の圧縮前の納置状態を示す。ここで、螺進圧縮による圧縮力W(図5(b))は弾性体端面部32の斜面に加えられ、斜面に対して水平方向の力W2と法線方向の力w1に分解される。力w1,w2による圧縮に対する内部応力は、ひずみ膨張を生じさせつつ部材間のクリアランスを埋めていく。
【0041】
ひずみ膨張がプラグ40の外周面とリング状弾性体30の間のクリアランスを埋め尽くすと、リング状弾性体30はプラグ40の外周面に密接する。前記密接面において、力W1は垂直方向の力yと水平方向の力xに分解することができるが(図5(b))、前記yに相当する圧力がプラグ外周面に直接加わり、プラグ40の外周面とリング状弾性体30との間に強い摩擦力を生起させる。よって、プラグ挿入状態がより安定して保持される。
【0042】
図3(d)は、前記実施例1、2及び3の特徴を備えたリング状弾性体の形状を示すものであって最も好適である。なお、本実施例3は、円錐台形状の弾性体端面部32がキャップ部材20側に納置される例である。図6(c)に示すように円錐台形状の弾性体端面部32がソケット本体10の第二の円筒孔13側に納置される形態、または図6(d)のように円錐台形状の弾性体端面部32の両方が円錐台形状とする形態であっても、上記と同様な作用効果が得られる。
【実施例4】
【0043】
本例は、ソケット正極部材14を凹形状したものである。(図1図2)。プラグ正極部41との接触面積を広げて、電気的な接触不良を低減させる。リベット状金属部材が好適である。
【0044】
螺進圧縮中、リング状弾性体30が圧縮縮小してプラグ40の外周面と密着すれば、プラグ40を押し込む方向に作用する。プラグ正極部は弾発付勢によって押し込む方向に反発しているが、密着状態におけるプラグ40の外周面との摩擦が該反発に対する抗力となって、プラグの正極部の位置ずれを抑えて電気的接触を良好にする。装着時の手ぶれによる接触ミスを低減することになる。
【0045】
以上の実施例に示すように、弾性変形が摩擦を生起させプラグ挿入を保持する効果に加え、プラグを挿入する円筒孔において、ソケット本体10、キャップ部材20及びプラグ40の間のクリアランスが、リング状弾性体30の弾性変形により解消されることで、高い防滴性と防塵性が実現される。
【0046】
また、過度な螺進圧縮があっても弾性変形により吸収され、部材の物理的損傷(傷、破損等)が低減し耐久性が向上する。さらに、部品点数の少ない簡素な構造であって、ソット本体10は複雑な成形を要しないことから、製造コストが削減できるという効果を奏する。
【0047】
<引き抜き力の計測>
本発明に係る試作品と類似品におけるプラグの抜去力を比較した実験において、類似品では約70~100N、試作品は約150Nの抜去力であることが確認した。なお、試作品は、図4(d)に示すスリット溝31と円錐台形状の弾性体端面部32とする形態を適用し、プラグの挿入締め付けは80~90Nのトルクを与え、抜去速度は2mm/sとしている。被試験対象のプラグは3品種を選択し、前記抜去力の計測値は3品種の平均である。類似品の抜去力がプラグ品種に拠ってばらつくのに対して、本試作品では安定した数値を示した。
【0048】
なお、ソケット本体10及びキャップ部材20の外径は、螺合するネジ部を有していれば、円筒形状に限らず、多角筒形状等に自由に設計変更でき、外周面に凹凸状等の滑り止めを形成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 ソケット本体
11 ソケットネジ部
12 第一の円筒孔
13 第二の円筒孔
14 ソケット正極部材
15 アースリング
16 ソケット端辺部
20 キャップ部材
21 キャップネジ部
22 第三の円筒孔
23 キャップ端辺部
24 角辺部
30 リング状弾性体
31 スリット溝
32 弾性体端面部
40 プラグ
41 プラグ負極部
42 プラグ正極部
A 圧縮構造の要部
W 圧縮力
w1 Wが分解された法線方向の力
x w1が分解された水平方向の力
y w1が分解された垂直方向の力
w2 Wが分解された斜面方向の力
L 圧縮可動幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6