(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】フロアパネル組立体、および暖房用フロアパネル組立体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B64C 1/18 20060101AFI20230224BHJP
B29C 70/22 20060101ALI20230224BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20230224BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20230224BHJP
B64D 11/00 20060101ALI20230224BHJP
F24D 13/02 20060101ALI20230224BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20230224BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
B64C1/18
B29C70/22
B32B5/02 Z
B64C1/00 B
B64D11/00
F24D13/02 E
F24D13/02 J
B29K105:08
B29L9:00
(21)【出願番号】P 2019114176
(22)【出願日】2019-06-20
【審査請求日】2021-12-24
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501348092
【氏名又は名称】グッドリッチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ワイナ
(72)【発明者】
【氏名】ジン フ
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー スレイン
(72)【発明者】
【氏名】ナサニエル チン
(72)【発明者】
【氏名】ガルデミール セザール ボトゥラ
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2001/017850(WO,A1)
【文献】特開平05-106750(JP,A)
【文献】特表2012-501235(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0176989(US,A1)
【文献】特表2013-511021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/22
B32B 5/02
B64C 1/00
B64D 11/00
F24D 13/02
B29K 105/08
B29L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と上面とを有するフロアパネル組立体であって、
前記底面に隣接する第1の構造層スタック、
剪断応力を吸収する、前記第1の構造層スタックに隣接するコア層、
前記コア層と前記上面との間の第2の構造層スタック、
前記コア層と前記上面との間の加温層、及び
前記加温層と前記上面との間の織物衝撃層
を備え、前記
織物衝撃層が、
高温熱可塑性織布繊維マトリックス、及び
前記
高温熱可塑性織布繊維マトリックスに浸透した樹脂
を備え
ており、
前記高温熱可塑性織布繊維マトリックスが、150~400°Cの融点を有し、
前記樹脂がエポキシ、フェノール、ビスマレイミド、またはシアネートエステル樹脂である、フロアパネル組立体。
【請求項2】
前記高温熱可塑性織布繊維マトリックスが、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート(アクリル)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリアミドイミドの織布繊維を含む、請求項1に記載の
フロアパネル組立体。
【請求項3】
前記高温熱可塑性織布繊維マトリックスが55MPa~14GPaの間の引張強度を有する、請求項1に記載のフロアパネル組立体。
【請求項4】
前記織物衝撃層が二次元に織り込まれている、請求項1に記載の
フロアパネル組立体。
【請求項5】
前記織物衝撃層が三次元に織り込まれている、請求項1に記載の
フロアパネル組立体。
【請求項6】
前記織物衝撃層が、前記高温熱可塑性織布繊維マトリックスと織り合わされた金属繊維をさらに含む、請求項1に記載の
フロアパネル組立体。
【請求項7】
前記コア層がハニカム構造の高密度金属材料を含む、請求項1に記載のフロアパネル組立体。
【請求項8】
前記コア層が、発泡ハニカムポリマー、連続気泡ポリマーフォーム、または独立気泡ポリマーフォームを含む、請求項1に記載のフロアパネル組立体。
【請求項9】
前記加温層が、金属材料
、PT
Cセラミック、PTCポリマー、または炭素同素体材料を含む、請求項1に記載のフロアパネル組立体。
【請求項10】
対向する前記第1及び第2の構造層スタックが、強化ポリマーマトリックスを含む、請求項1に記載のフロアパネル組立体。
【請求項11】
前記強化ポリマーマトリックスが、構造的樹脂で含浸させた繊
維を含
み、
前記繊維が炭素繊維またはガラス繊維であり、
前記構造的樹脂がエポキシ、ポリウレタン、フェノール、シアネートエステル、またはビスマレイミドである、請求項
10に記載のフロアパネル組立体。
【請求項12】
前記加温層が前記
織物衝撃層に隣接している、請求項1に記載のフロアパネル組立体。
【請求項13】
前記加温層が前記コア層に隣接している、請求項1に記載のフロアパネル組立体。
【請求項14】
前記第1の構造層スタックと前記コア層との間
に第2の
織物衝撃層
を備え、
前
記織物衝撃層と前記第2の
織物衝撃層との間
に第3の構造層スタック
をさらに備える、請求項1に記載のフロアパネル組立体。
【請求項15】
暖房用フロアパネル組立体を製造する方法であって、
織物衝撃層、ヒータ、コア層、及び1つまたは複数の対向する構造層を整列させることと、
前記織物衝撃層、前記ヒータ、前記コア層、及び前記1つまたは複数の構造層を互いに結合することと、
を備え、
前記織物衝撃層が、樹脂で含浸させた高温熱可塑性織布繊維マトリックスを備え
ており、
前記高温熱可塑性織布繊維マトリックスが、150~400°Cの融点を有し、
前記樹脂がエポキシ、フェノール、ビスマレイミド、またはシアネートエステル樹脂である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して航空機用の暖房用フロアパネル組立体に関し、特に暖房用フロアパネル組立体の衝撃層に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房用フロアパネルは、冷たい床下の温度の影響を和らげ、快適な客室の温度を維持するのを促すために、航空機で頻≡に使用されている。フロアパネルは、典型的には、例えば格子状のパターンに構成される航空機構造物により支えられている。フロアパネルは、パネルの上に載っている人間や物体の重さを支えるのに十分な構造的完全性を有する。衝撃層は、通常、パネルの上面の表面を形成して、下にある層(例えば、重量支持層及び/または加温層)を、ハイヒールによる穿刺、落下物の切りくず、引きずった荷物に由来する引っかき傷、及び/またはフロアを通ることに関連する他の危険から保護している。
【0003】
衝撃層は、繊維マトリックスを樹脂で含浸させている、事前含浸の布で製造することができる。典型的には、繊維マトリックスは、典型的にはフェノール樹脂またはエポキシを含浸させた、ガラス繊維や炭素繊維などの目の粗い繊維でできている。難燃性、発煙性、及び毒性の要件を満たすために、樹脂は通常、添加剤で改質させている。その改質の結果、衝撃層の機械的強度が低下する。したがって、より強い樹脂含浸繊維マトリックスを有する衝撃層が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、衝撃層の機械的強度が改善されたフロアパネル組立体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、フロアパネル組立体は底面と上面を有する。フロアパネル組立体は、底面に隣接する第1の構造層スタック、第1の構造層スタックに隣接するコア層、コア層と上面との間の第2の構造層スタック、コア層と上面との間の加温層、及び加温層と上面との間の織物衝撃層を含む。コア層は剪断応力を吸収する。衝撃層は、高温熱可塑性織布マトリックスと、織布マトリックスを浸透させる樹脂とを含む。
【0006】
別の実施形態では、暖房用フロアパネル組立体を製造する方法は、織物衝撃層、ヒータ、コア層、及び1つまたは複数の対向する構造層を整列させること、及び衝撃層、ヒータ、コア層、及び1つまたは複数の構造層を互いに結合することを含む。織物衝撃層は、樹脂で含浸させた高温熱可塑性織布マトリックスを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】異なる実施形態における暖房用フロアパネル組立体の概略図である。
【
図3】フロアパネル組立体用の高温熱可塑性繊維マトリックスを有する二次元織物衝撃層の概略図である。
【
図4】フロアパネル組立体用の複合繊維マトリックスを有する二次元織物衝撃層の概略図である。
【
図5】フロアパネル組立体用の高温熱可塑性繊維マトリックスを有する三次元織物衝撃層の概略図である。
【
図6】フロアパネル組立体用の高温熱可塑性繊維マトリックスを有する三次元織物衝撃層の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、複合パネルを対象とし、より詳細には、樹脂を含浸させた、高温熱可塑性織布マトリックスまたは複合織布マトリックスを含有する織物衝撃層を有する加温パネルを対象とする。パネルは、構造層と、組立体を支持するコア層と、加温素子を含む加温層とをさらに含む。
【0009】
図1は、底面12及び上面14を有する暖房用フロアパネル組立体10の概略図である。組立体10は、第1の構造層スタック16、コア層18、第2の構造層スタック20、加温層22、及び衝撃層24を含む。
【0010】
組立体10の底面12は航空機に取り付けられるが、上面14は航空機の客室の内側または加温する必要がある他のフロア領域に面している。構成要素16、18、20、22、及び24は、底面12と上面14との間に配置されている。第1の構造層スタック16は底面12に取り付けられている。コア層18は底面12の反対側に来るように、第1の構造層スタック16に取り付けられている。第2の構造層スタック20は、第1の構造層スタック16の反対側に来るように、コア層18に取り付けられている。加温層22は、コア層18の反対側に来るように、第2の構造層スタック20に取り付けられている。衝撃層24は、第2の構造層スタック20の反対側に来るように、加温層22に取り付けられている。衝撃層24は、上面14に面している。
【0011】
構造層スタック16及び20は、組立体10を補強する。構造層スタック16及び20は、強化ポリマー、例えばエポキシ、ポリウレタン、フェノール、シアネートエステル、ビスマレイミド、または他の適切な樹脂などの樹脂系を含浸させた炭素繊維またはガラス繊維とすることができる。構造層16及び20の各スタックは、例えば、構造層を形成するために選択された材料、または補強のための特定の必要性に応じて、単一の層、または層のスタックを含むことができる。他の実施形態では、追加の及び/または代替の構造層も追加することができる。
【0012】
コア層18は、組立体10に耐衝撃性を付与し、剛性フロアパネル組立体10に剪断荷重をかける。コア層18は、例示的な実施形態では、アルミニウム合金、ステンレス鋼、またはチタンなどの高密度金属材料から形成することができ、さらにハニカム構造に配置することができる。あるいは、コア層18は、発泡ハニカムポリマー、例えば樹脂を注入したアラミド(例えば、Kevlar(登録商標)またはNomex(登録商標))、樹脂を注入した炭素繊維またはガラス繊維、熱可塑性チューブ、ならびに連続気泡または独立気泡ポリマーフォームから形成できる。注入樹脂は、エポキシ、フェノール、またはシアネートエステルであってよい。一般に、金属コア層はポリマーコア層よりも大きな熱伝導率を備える。
【0013】
加温層22は、加温層22の上または中に埋め込まれた電気加温素子(図示せず)を含むことができる。加温素子は、例えば金属材料、正温度制御(PTC)セラミック、PTCポリマー、または炭素ナノチューブ(CNT)ヒータなどの炭素同素体材料から形成された抵抗加温素子とすることができる。加温素子は、エッチングされた箔、ワイヤ、または印刷インキ要素として配置することができる。本明細書では他の適切な加温素子が考えられる。加温層22は、組立体10の上面14の温度を制御するために使用することができ、それは例えば航空機の客室または操縦室に設置することができる。特定の実施形態では、加温素子は、加温層22の全領域にわたって延在することができる。他の実施形態では、加温素子は、組立体10の縁部に沿ってこぼれた流体や損傷から素子を保護するために、加温層22の縁部からある程度の距離にはめ込むことができる。加温素子は、電極またはワイヤを介して、電源に電気的に接続させている。
【0014】
衝撃層24は、織布マトリックスと樹脂の両方を含む。衝撃層24の織布マトリックスは、高温熱可塑性物質で作ることができる。衝撃層24の樹脂はフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、またはシアネートエステル樹脂である。繊維強度は55MPaと14GPaの間にあるべきである。
【0015】
高温熱可塑性物質(高性能熱可塑性樹脂としても知られている)は、最高150~400°Cの間の作働温度を有し、物理的特性、寸法安定性、及び高温での電気的特性の著しい保持を備える。したがって、高温熱可塑性物質は、より高い熱変形温度、ガラス転移温度、及び連続使用温度を有する。さらに、高温熱可塑性物質はまた、他の大半のポリマーよりも優れた耐薬品性を付与する。高温熱可塑性物質は、強化された機械的特性、損傷に対する耐性を有し、リサイクル可能であることが知られている。
【0016】
例として、PEEKは、高温の用途において優れた機械的耐性及び化学的耐性を含む。PEEKは、90~200MPaの引張係数強度、343°Cの融解温度、及び1.32g/cm3の密度を有する。同様に、PEIは優れた高い耐熱性、高強度、剛性及び耐薬品性をもたらす。PEIは、96~190MPaの引張係数強度、217°Cを超える融解温度、及び1.27g/cm3の非晶質密度を有する。同様に、PTFE繊維(Gore(登録商標)繊維など)は、適切に加工した場合、最大13GPaの引張強度、340°Cの融解温度、及び2.2g/cm3の密度を有することができる。
【0017】
高温熱可塑性物質は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリアミドイミドとすることができる。あるいは、衝撃層24の織布マトリックスは、高温熱可塑性繊維と、共に織られる金属繊維との両方を含む複合マトリックスであり得る。織物衝撃層を作り出すべく、繊維は二次元に織るのでも、三次元に織るのでもよい。
【0018】
高温熱可塑性樹脂を使用することで、高温熱可塑性樹脂の靭性に起因して、組立体10がより厳格な可燃性、発煙性及び毒性(FST)の要件を満たすことが可能になる。米国連邦航空局(FAA)は、14C.F.R.25.853下、航空機の客室の構成要素に、厳格なFSTの特性を求めている。一般に、ピーク発熱量(1平方メートル当たりのキロワット)及び総発熱量(1分間あたりの、1平方メートル当たりのキロワット)として報告され、FAA規制のピーク/総要求数は、65kW/m2のピーク発熱量、及び65kW/m2の総発熱量である。高温熱可塑性樹脂は、これらの要求を上回る、煙試験での低い煙の放出、及び低い可燃性を備える。
【0019】
高温熱可塑性物質はまた、高い機械的強度、高レベルの靭性、強度、剛性、耐疲労性及び延性を備え、パネル組立体を穿刺または損傷から十分に保護する。さらに、高温熱可塑性物質は、化学薬品、溶剤、放射線及び熱に対する抵抗性の増大を示しており、曝されたときに崩壊したりその形態を失ったりしない。
【0020】
図2は、異なる実施形態における暖房用フロアパネル組立体26の概略図である。組立体26は、
図1の組立体10と同じ構成要素を多く有する。しかし、異なる構成で配置されている。
【0021】
ここで、組立体10としては、組立体10の底面12は航空機に固定され、一方で上面14は航空機の客室の内側、または暖める必要がある他のフロア領域に面する。構成要素16、18、20、22、及び24は、底面12と上面14との間に配置されている。第1の構造層スタック16は底面12に取り付けられている。コア層18は、底面12の反対側に来るように、第1の構造層スタック16に取り付けられている。
【0022】
しかし、加温層22は、第1の構造層スタック16の反対側に来るように、コア層18に取り付けられている。このため、第2の構造層スタック20は、コア層18の反対側に来るように、加温層22に取り付けられ、衝撃層24は直接第2の構造層スタック20に取り付けられる。衝撃層24は上面14に面している。
【0023】
図3は、フロアパネル組立体用の高温熱可塑性繊維マトリックスを有する二次元織物衝撃層30の概略図である。織物衝撃層30は、第1のx繊維32、y繊維34、及び樹脂38を含む。織るパターンは、平織り、綾織り、サテン、ジャージーニット、またはインターロックニットであり得る。
【0024】
x繊維32及びy繊維34は、パターンに従って一緒に織られた高温熱可塑性繊維である。繊維32、34は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート(アクリル)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリアミドイミドであり得る。高温熱可塑性材料は、煙試験における煙の放出が少なく、可燃性が低い。
【0025】
繊維マトリックスの織り方の性質により、機械的に安定した衝撃層が創出される。樹脂38は、衝撃層30の織り目の中で、x繊維32、y繊維34、及び固定用繊維32、34の周りに、織物衝撃層30全体に含浸される。樹脂38は、衝撃層30が織り込まれた後、または衝撃層30の製織中に加えられるエポキシまたはフェノール樹脂であってよい。
【0026】
図4は、フロアパネル組立体用の複合繊維マトリックスを有する二次元織物衝撃層40の概略図である。織物衝撃層40は、x繊維42、y繊維44、及び樹脂48を含む。x繊維42、y繊維44、及び樹脂48は、
図3の対応する構成要素と同じ方法で繋げられる。
【0027】
図3と同様に、x繊維42は高温熱可塑性繊維であり、樹脂48はフェノール樹脂またはエポキシ樹脂である。しかし、y繊維44は金属繊維である。したがって、衝撃層40は複合層である。代替の実施形態では、x繊維は金属性であり得、y繊維は高温熱可塑性物質であり得る。一般に、衝撃層40の重量を減らすために、金属繊維はマトリックス内の繊維の50%以下にするべきである。さらに、x繊維及びy繊維は、高温熱可塑性物質と金属繊維との間で交互にすることができる。繊維の糸のサイズで、織物マトリックスの金属繊維の正確な割合が決まる。
【0028】
金属のy繊維44は、ステンレス鋼、チタン合金、またはニッケル合金などの金属で作ることができる。典型的には、金属のy繊維44は、ナイフでの切断に耐えるであろう硬質金属材料である。衝撃層40に金属のy繊維44を加えることで、純粋に高温の熱可塑性繊維マトリックスと比較して、衝撃層40の機械的強度が増大する。
【0029】
図5は、フロアパネル組立体用の高温熱可塑性繊維マトリックスを有する三次元織物衝撃層50の概略図である。織物衝撃層50は、x繊維52、y繊維54、z繊維56、及び樹脂58を含む。衝撃層50は、縫合されていても、繊維を2軸または3軸すべてに織り込んでいてもよい。例えば、三次元織物衝撃層50は、互いに積み重ねてz繊維56で縫合させた複数の衝撃層(
図4の衝撃層40など)を含むことができる。
【0030】
繊維52、54、及び56は、パターンに従って一緒に織られた高温熱可塑性繊維である。繊維52、54、56は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート(アクリル)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリアミドイミドであり得る。高温熱可塑性材料は、煙試験における煙の放出が少なく、可燃性が低い。
【0031】
共に織られた後、それらは樹脂58で浸透させる。繊維マトリックスの織り方の性質で、機械的に安定した衝撃層が創出される。樹脂38は、衝撃層50の製織において、織物衝撃層50にわたって、x繊維52、y繊維54、z繊維56、及び固定用繊維52、54、56の周囲に含浸されている。樹脂58は、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂であり得る。
【0032】
図6は、フロアパネル組立体用の高温熱可塑性繊維マトリックスを有する三次元織物衝撃層60の概略図である。織物衝撃層60は、x繊維62、y繊維64、z繊維66、及び樹脂68を含む。
【0033】
衝撃層50と同様に、x繊維62及びy繊維64は高温熱可塑性繊維であり、樹脂68はフェノール樹脂またはエポキシ樹脂である。しかし、z繊維66は金属繊維である。したがって、衝撃層60は複合層である。代替の実施形態では、x繊維及び/またはy繊維は金属性であってよく、z繊維は高温熱可塑性物質であってよい。
【0034】
フロアパネル組立体の必要性に応じて、2:1の高温熱可塑性繊維対金属繊維、または1:2の高温熱可塑性繊維対金属繊維比のいずれかを用いることができる。金属繊維は、必要に応じて3つの方向(x,y,z)のいずれにも使用できる。一般に、衝撃層60の重量を減らすために、金属繊維はマトリックス内の繊維の66%以下にするべきである。
【0035】
金属のz繊維64は、ステンレス鋼、チタン合金、またはニッケル合金などの金属で作ることができる。典型的には、金属のz繊維64は、ナイフでの切断に耐えるであろう硬質金属材料である。衝撃層60に金属のz繊維64を加えることで、純粋に高温の熱可塑性繊維マトリックスと比較して、衝撃層40の機械的強度が増大する。
【0036】
高温熱可塑性繊維マトリックスを含有する織物衝撃層により、火炎、発煙、及び毒性の要件を満たす加温されたフロアパネル組立体の機械的強度を高めることが可能になる。最後に、高温熱可塑性物質ベースの衝撃層は、環境に優しい。高温熱可塑性物質は、幾度か再成形する能力を保持しており、大きさの完全性や引張強度を依然として維持しながら、リサイクルまたは再使用することができる。
【0037】
(可能な実施形態の説明)
以下は、本発明の可能な実施形態の非排他的な説明である。
【0038】
フロアパネル組立体は、底面と上面とを有する。フロアパネル組立体は、底面に隣接する第1の構造層スタック、第1の構造層スタックに隣接するコア層、コア層と上面との間の第2の構造層スタック、コア層と上面との間の加温層、及び加温層と上面との間の織物衝撃層を含む。コア層は剪断応力を吸収する。衝撃層は、高温熱可塑性織布繊維マトリックス(woven high temperature thermoplastic fiber matrix)と、織布繊維マトリックスに浸透した樹脂とを含む。
【0039】
前段落の組立体は、任意選択で、追加として及び/または代替として、以下の特徴、構成、及び/または追加の構成要素のうちの任意の1つまたは複数を含むことができる。
【0040】
高温熱可塑性織布マトリックスは、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート(アクリル)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリアミドイミドの織布を含む。
【0041】
高温熱可塑性樹脂は、150~400°Cという融点の間の融点を有する。
【0042】
高温熱可塑性樹脂は、55MPa~14GPaの間の引張強度を有する。
【0043】
樹脂は、エポキシ、フェノール、ビスマレイミド、またはシアネートエステル樹脂である。
【0044】
織物衝撃層が二次元に織り込まれている。
【0045】
織物衝撃層が三次元に織り込まれている。
【0046】
織物衝撃層が、高温熱可塑性織布マトリックスと織り合わされた金属繊維をさらに含む。
【0047】
コア層は、ハニカム構造の高密度金属材料を含む。
【0048】
コア層は、発泡ハニカムポリマー、連続気泡ポリマーフォーム、または独立気泡ポリマーフォームを含む。
【0049】
加温層は、金属材料、正温度制御(PTC)セラミック、PTCポリマー、または炭素同素体材料を含む。
【0050】
対向する第1及び第2の構造層スタックが、強化ポリマーマトリックスを含む。
【0051】
強化ポリマーマトリックスは、構造的樹脂で含浸させた繊維マトリックスを含む。
【0052】
繊維マトリックスは、炭素繊維またはガラス繊維である。
【0053】
構造的樹脂は、エポキシ、ポリウレタン、フェノール、シアネートエステル、またはビスマレイミドである。
【0054】
加温層は衝撃層に隣接している。
【0055】
加温層はコア層に隣接している。
【0056】
フロアパネル組立体は、第1の構造層スタックとコア層との間の第2の衝撃層、及び第1の織物衝撃層と第2の衝撃層との間の第3の構造層スタックを備える。
【0057】
暖房用フロアパネル組立体を製造する方法は、
織物衝撃層、ヒータ、コア層、及び1つまたは複数の対向する構造層を整列させること、及び衝撃層、ヒータ、コア層、及び1つまたは複数の構造層を互いに結合することを含む。織物衝撃層は、樹脂で含浸させた高温熱可塑性織布マトリックスを含む。
【0058】
本発明を例示的な実施形態(複数可)を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えて均等物をその要素に置き換えてもよいことは、当業者に理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、多くの修正を加えることができる。したがって、本発明は開示された特定の実施形態(複数可)に限定されず、本発明は添付の特許請求の範囲に当てはまるすべての実施形態を含むことを意図している。