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特許7232567ジスルフィド化合物、ポリスルフィド化合物及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ジスルフィド化合物、ポリスルフィド化合物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 231/20 20060101AFI20230224BHJP
   C07D 413/12 20060101ALI20230224BHJP
   A01N 43/56 20060101ALI20230224BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
C07D231/20 Z CSP
C07D413/12
A01N43/56 C
A01P7/04
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2023505872
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2022040287
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2021177271
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000169
【氏名又は名称】クミアイ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】特許業務法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川本 啓
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠祐
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/013106(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/002484(WO,A2)
【文献】特表2009-536149(JP,A)
【文献】特開平08-208620(JP,A)
【文献】Mao, Chunhui et al.,Synthesis, Crystal Structure, Insecticidal and Acaricidal Activities of Novel N-Bridged Derivatives,Chinese Journal of Organic Chemistry,2009年,Vol. 29, No.6,pp.929-935
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、A01N、A01P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2):
【化1】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
nは2以上の整数である。)
の化合物又はそれらの混合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物又はそれらの混合物であって、
が(C1-C4)アルキルであり、
が(C1-C4)パーフルオロアルキルであり、
が1~9個のフッ素原子により置換されていてもよい(C1-C4)アルキルであり、
nが2から5の整数である化合物又はそれらの混合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、
がメチルであり、
がトリフルオロメチルであり、
がジフルオロメチルであり、
nが2である化合物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物又はそれらの混合物を有効成分として含有する有害生物防除剤。
【請求項5】
式(4)の化合物の製造方法であって、以下の工程iiを含む方法:
(工程ii) 式(2)の化合物を式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する工程:
【化2】
(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
は、ハロゲン原子であり、
nは2以上の整数である。)。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、工程iiの反応が還元剤を用いて行われる方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記還元剤がアルカリ金属ヒドロキシメタンスルフィン酸塩又は水素化ホウ素化合物である方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記還元剤がヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム・二水和物又は水素化ホウ素ナトリウムである方法。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか1項に記載の方法であって、工程iiの反応が塩基の存在下で行われる方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記塩基がアルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属水酸化物である方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記塩基が炭酸カリウム又は水酸化ナトリウムである方法。
【請求項12】
請求項5から11のいずれか1項に記載の方法であって、工程iiの反応が無機硫黄化合物を用いて行われる方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記無機硫黄化合物が水硫化ナトリウムである方法。
【請求項14】
請求項5から13のいずれか1項に記載の方法であって、
が(C1-C4)アルキルであり、
が(C1-C4)パーフルオロアルキルであり、
が1~9個のフッ素原子により置換されていてもよい(C1-C4)アルキルであり、
が(C1-C4)アルキルであり、
が(C1-C4)アルキルであり、
nが2から5の整数であり、
が、塩素原子又は臭素原子である方法。
【請求項15】
請求項5から13のいずれか1項に記載の方法であって、
がメチルであり、
がトリフルオロメチルであり、
がジフルオロメチルであり、
がメチルであり、
がメチルであり、
nが2であり、
が、塩素原子又は臭素原子である方法。
【請求項16】
請求項5から15のいずれか1項に記載の方法であって、
が塩素原子である方法。
【請求項17】
請求項5から16のいずれか1項に記載の方法であって、工程iiの前に以下の工程iを更に含む、方法:
(工程i) 式(1)の化合物を硫黄化合物と反応させることを含む、式(2)の化合物を製造する工程:
【化3】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
は、ハロゲン原子であり、
nは2以上の整数である。)。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、工程iの硫黄化合物が無機硫黄化合物及び硫黄である方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記無機硫黄化合物が硫化ナトリウムである方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法であって、工程iの硫黄化合物がチオ尿素である方法。
【請求項21】
請求項17から20に記載の方法であって、
が(C1-C4)アルキルであり、
が(C1-C4)パーフルオロアルキルであり、
が1~9個のフッ素原子により置換されていてもよい(C1-C4)アルキルであり、
nが2から5の整数であり、
が、塩素原子又は臭素原子である方法。
【請求項22】
請求項17から20に記載の方法であって、
がメチルであり、
がトリフルオロメチルであり、
がジフルオロメチルであり、
nが2であり、
が、塩素原子又は臭素原子である方法。
【請求項23】
式(5)の化合物の製造方法であって、
(工程ii) 式(2)の化合物を式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する工程:
【化4】
(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
は、ハロゲン原子であり、
nは2以上の整数である。)及び
(工程iii)式(4)の化合物を酸化剤と反応させて、式(5)の化合物を製造する工程:
【化5】
(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルである。)
を含む、式(5)の化合物の製造方法。
【請求項24】
式(1)の化合物を用いて式(2)の化合物を製造する方法:
【化7】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
は、ハロゲン原子であり、
nは2以上の整数である。)。
【請求項25】
式(2)の化合物の製造方法であって、以下の工程iを含む、方法:
(工程i) 式(1)の化合物を硫黄化合物と反応させることを含む、式(2)の化合物を製造する工程:
【化8】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
は、ハロゲン原子であり、
nは2以上の整数である。)。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記式(2)の化合物及びその用途に関する。
【0002】
【化1】
(式中、R、R、R及びnは、本明細書中に記載の通りである。)
【0003】
すなわち、本発明は、新規な上記式(2)の化合物、及び式(2)の化合物を有効成分として含有する有害生物防除剤に関する。
【0004】
さらに、本発明は、上記式(2)の化合物を使用した下記式(4)の化合物及び式(5)の化合物の製造方法に関する。式(2)の化合物は、式(4)の化合物及び式(5)の化合物の有用な製造中間体である。
【0005】
【化2】

(式中、R、R、R、R及びRは、本明細書中に記載の通りである。)
【背景技術】
【0006】
農園芸分野では、様々な有害生物防除剤が使用されている。しかしながら、それらの多くは十分に満足できるとは言い難いものである。従って、新規な有害生物防除剤の開発が常に望まれている。
【0007】
U.S. Pat. No. 3,350.407(特許文献6)には、ジ[(ピラゾール-3-イル)メチル]ジスルフィド化合物が記載されているが、殺虫活性に関する記載はない。
加えて、上記の特許文献中には、本発明の式(2)の化合物は一切開示されていない。
【0008】
一方、WO2002/062770(特許文献1)は有用な除草剤を開示する。その中でも、ピロキサスルホン(Pyroxasulfone)は優れた除草活性を有する除草剤としてよく知られている。さらに、WO2004/013106A1(特許文献2)は、上記式(4)の化合物、とりわけ下記式(4-a)の化合物が、ピロキサスルホンの製造中間体として有用であることを開示する。
【0009】
WO2004/013106A1(特許文献2)には、式(4-a)の化合物の製造方法が記載されている。しかしながら、WO2004/013106A1(特許文献2)に記載の方法には、工業的な実施において課題があった。例えば、中間体の精製の機会及び方法が限られていた。
【0010】
一方で、式(4-a)の化合物の調製は、WO2005/095352A1(特許文献3)及びWO2005/105755A1(特許文献4)にも開示されており、これらを以下に示す。
【0011】
【化3】
【0012】
WO2005/095352A1(特許文献3)とWO2005/105755A1(特許文献4)に記載の方法は優れた方法である。一方、中間体(上図中のISHP)の感作性のために特殊な製造装置(密閉系の装置)を必要とするため、及び後述のように、この方法には未だ改善の余地がある。
【0013】
さらにはWO2021/002484A9(特許文献5)に記載の式(4-a)の化合物の製造方法は、特許文献3に記載の式(4-a)の化合物の調製における問題を解決した、優れた方法である。しかし、工業的規模での製造では、後述のようにさらなる改善の余地があった。
【0014】
含硫黄有機化合物は一般的に特徴的な悪臭を有する場合が多く、この悪臭の防除も工業的規模での製造に際しては配慮する必要がある。このような状況に加え、医薬・農薬化合物及びそれらの合成中間体は、活性・安全性及び安定性の面から高品質な目的化合物を製造することが要求される。製造工程で得られる中間体化合物が液体である場合、化合物の単離方法及び/又は精製方法には蒸留の選択肢しかない。含硫黄有機化合物の蒸留を工業的規模で行う際には、悪臭の周囲への拡散を防ぐための特殊な設備や複雑な操作が必要である。製造工程で得られる中間体化合物が固体であれば、単離方法及び/又は精製方法としてろ過及び/又は再結晶という選択肢が提供され、中間体化合物の品質向上及び保存安定性も期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】国際公開第2002/062770号
【文献】国際公開第2004/013106号
【文献】国際公開第2005/095352号
【文献】国際公開第2005/105755号
【文献】国際公開第2021/002484号
【文献】米国特許第3,350,407号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、有害生物に対して防除活性を有する新規な化合物を提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、式(4)の化合物の製造方法であって、安全に式(4)の化合物を製造でき、新規な工業的に好ましい製造方法とその中間体を提供することである。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、単離方法及び/又は精製方法としてろ過及び/又は再結晶という選択肢が提供される、結晶性の高い新規な中間体化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記のような状況に鑑み、本発明者らは鋭意研究した。その結果、意外にも、式(2)の化合物とその用途を提供することにより、前記課題が解決可能であることが見出された。この知見に基づき、本発明者らは本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0020】
〔1〕式(2):
【0021】
【化4】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
nは2以上の整数である。)
の化合物又はそれらの混合物。
【0022】
〔2〕 〔1〕に記載の化合物又はそれらの混合物であって、
が(C1-C4)アルキルであり、
が(C1-C4)パーフルオロアルキルであり、
が1~9個のフッ素原子により置換されていてもよい(C1-C4)アルキルであり、
nが2から5の整数である(好ましくはnが2又は3である)化合物又はそれらの混合物。
【0023】
〔3〕 〔1〕に記載の化合物であって、
がメチルであり、
がトリフルオロメチルであり、
がジフルオロメチルであり、
nが2である化合物。
【0024】
〔4〕 〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の化合物又はそれらの混合物を有効成分として含有する有害生物防除剤。
【0025】
〔5〕 式(4)の化合物の製造方法であって、以下の工程iiを含む方法:
(工程ii) 式(2)の化合物を式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する工程:
【0026】
【化5】

(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
は、ハロゲン原子であり、
nは2以上の整数である。)。
【0027】
〔6〕 〔5〕に記載の方法であって、工程iiの反応が還元剤を用いて行われる方法。
【0028】
〔7〕 〔5〕に記載の方法であって、工程iiが以下である方法:
式(2)の化合物を、還元剤を用いて、式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する工程:
【0029】
【化6】
(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
は、ハロゲン原子であり、
nは2以上の整数である。)。
【0030】
〔8〕 〔5〕に記載の方法であって、工程iiが以下である方法:
還元剤を用いて式(2)の化合物を反応させた後、塩基の存在下で式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する。
【0031】
〔9〕 〔5〕に記載の方法であって、工程iiが以下である方法:
塩基の存在下で還元剤を用いて式(2)の化合物を反応させた後、塩基の存在下で式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する。
【0032】
〔10〕 〔5〕に記載の方法であって、工程iiが以下である方法:
塩基の存在下で還元剤及び無機硫黄化合物を用いて式(2)の化合物を反応させた後、塩基の存在下で式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する。
【0033】
〔11〕 〔6〕から〔10〕のいずれか1項に記載の方法であって、工程iiの還元剤がアルカリ金属ヒドロキシメタンスルフィン酸塩又は水素化ホウ素化合物である方法。
【0034】
〔12〕 〔6〕から〔10〕のいずれか1項に記載の方法であって、工程iiの還元剤がアルカリ金属ヒドロキシメタンスルフィン酸塩である方法。
【0035】
〔13〕 〔6〕から〔10〕のいずれか1項に記載の方法であって、工程iiの還元剤が水素化ホウ素化合物である方法。
【0036】
〔14〕 〔6〕から〔10〕のいずれか1項に記載の方法であって、工程iiの還元剤がヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム・二水和物又は水素化ホウ素ナトリウムである方法。
【0037】
〔15〕 〔6〕から〔10〕のいずれか1項に記載の方法であって、工程iiの還元剤がヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム・二水和物である方法。
【0038】
〔16〕 〔6〕から〔10〕のいずれか1項に記載の方法であって、工程iiの還元剤が水素化ホウ素ナトリウムである方法。
【0039】
〔17〕 〔5〕から〔7〕のいずれか1項に記載の方法であって、工程iiの反応が塩基の存在下で行われる方法。
【0040】
〔18〕 〔8〕、〔9〕、〔10〕又は〔17〕に記載の方法であって、工程iiの塩基がアルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属水酸化物である(好ましくは、工程iiの還元剤がアルカリ金属ヒドロキシメタンスルフィン酸塩である場合は工程iiの塩基がアルカリ金属炭酸塩であり、工程iiの還元剤が水素化ホウ素化合物である場合は工程iiの塩基がアルカリ金属水酸化物である)方法。
【0041】
〔19〕 〔8〕、〔9〕、〔10〕又は〔17〕に記載の方法であって、工程iiの塩基が炭酸カリウム又は水酸化ナトリウムである(好ましくは、工程iiの還元剤がヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム・二水和物である場合は工程iiの塩基が炭酸カリウムであり、工程iiの還元剤が水素化ホウ素ナトリウムである場合は工程iiの塩基が水酸化ナトリウムである)方法。
【0042】
〔20〕 〔8〕、〔9〕、〔10〕又は〔17〕に記載の方法であって、工程iiの塩基がアルカリ金属炭酸塩である方法。
【0043】
〔21〕 〔8〕、〔9〕、〔10〕又は〔17〕に記載の方法であって、工程iiの塩基がアルカリ金属水酸化物である方法。
【0044】
〔22〕 〔8〕、〔9〕、〔10〕又は〔17〕に記載の方法であって、工程iiの塩基が炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムである方法。
【0045】
〔23〕 〔8〕、〔9〕、〔10〕又は〔17〕に記載の方法であって、工程iiの塩基が炭酸カリウムである方法。
【0046】
〔24〕 〔8〕、〔9〕、〔10〕又は〔17〕に記載の方法であって、工程iiの塩基が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである方法。
【0047】
〔25〕 〔8〕、〔9〕、〔10〕又は〔17〕に記載の方法であって、工程iiの塩基が水酸化ナトリウムである方法。
【0048】
〔26〕 〔5〕から〔9〕及び〔11〕から〔25〕のいずれか1項に記載の方法であって、工程iiの反応が無機硫黄化合物を用いて行われる方法。
【0049】
〔27〕 〔10〕又は〔26〕に記載の方法であって、工程iiの無機硫黄化合物が硫化ナトリウム、硫化カリウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、二硫化ナトリウム又は二硫化カリウムである方法。
【0050】
〔28〕 〔10〕又は〔26〕に記載の方法であって、工程iiの無機硫黄化合物が水硫化ナトリウム又は水硫化カリウムである方法。
【0051】
〔29〕 〔10〕又は〔26〕に記載の方法であって、工程iiの無機硫黄化合物が水硫化ナトリウムである方法。
【0052】
〔30〕 〔5〕から〔29〕のいずれか1項に記載の方法であって、工程iiの反応温度が10℃~60℃である方法。
【0053】
〔31〕 〔5〕から〔29〕のいずれか1項に記載の方法であって、工程iiの反応温度が40℃~70℃である方法。
【0054】
〔32〕 〔5〕から〔31〕のいずれか1項に記載の方法であって、
が(C1-C4)アルキルであり、
が(C1-C4)パーフルオロアルキルであり、
が1~9個のフッ素原子により置換されていてもよい(C1-C4)アルキルであり、
が(C1-C4)アルキルであり、
が(C1-C4)アルキルであり、
nが2から5の整数であり、
が、塩素原子又は臭素原子である方法。
【0055】
〔33〕 〔5〕から〔31〕のいずれか1項に記載の方法であって、
がメチルであり、
がトリフルオロメチルであり、
がジフルオロメチルであり、
がメチルであり、
がメチルであり、
nが2であり、
が、塩素原子又は臭素原子である方法。
【0056】
〔34〕 〔5〕から〔33〕のいずれか1項に記載の方法であって、
が塩素原子である方法。
【0057】
〔35〕 〔5〕から〔34〕のいずれか1項に記載の方法であって、工程iiの前に以下の工程iを更に含む、方法:
(工程i) 式(1)の化合物を硫黄化合物と反応させることを含む、式(2)の化合物を製造する工程:
【0058】
【化7】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
は、ハロゲン原子であり、
nは2以上の整数である。)。
【0059】
〔36〕 〔35〕に記載の方法であって、工程iが以下の工程(i-a)である方法:
(工程i-a) 式(1)の化合物を無機硫黄化合物及び硫黄と反応させて、式(2)の化合物を製造する工程:
【0060】
【化8】
(式中、R、R、R、X及びnは、〔35〕で定義した通りである。)。
【0061】
〔37〕 〔35〕に記載の方法であって、工程iの硫黄化合物が無機硫黄化合物及び硫黄である方法。
【0062】
〔38〕 〔36〕又は〔37〕に記載の方法であって、工程iの無機硫黄化合物が硫化ナトリウムである方法。
【0063】
〔39〕 〔35〕に記載の方法であって、工程iが以下の工程(i-b)である方法:
(工程i-b) 式(1)の化合物を硫黄化合物(好ましくは、チオ尿素、置換チオ尿素類、チオカルボン酸塩類、チオアミド類、チオ硫酸塩類又はキサンテート塩類、より好ましくは、チオ尿素、N,N-ジメチルチオホルムアミド、チオ酢酸カリウム又はチオ硫酸ナトリウム、更に好ましくはチオ尿素)と反応させ、そして加水分解した後に、酸化剤と反応させて、式(2)の化合物を製造する工程:
【0064】
【化9】
(式中、R、R、R、X及びnは、〔35〕で定義した通りである。)。
【0065】
〔40〕 〔35〕に記載の方法であって、工程iの硫黄化合物が、チオ尿素、置換チオ尿素類、チオカルボン酸塩類、チオアミド類、チオ硫酸塩類又はキサンテート塩類、より好ましくは、チオ尿素、N,N-ジメチルチオホルムアミド、チオ酢酸カリウム又はチオ硫酸ナトリウム、更に好ましくはチオ尿素)である方法。
【0066】
〔41〕 〔35〕から〔40〕に記載の方法であって、
が(C1-C4)アルキルであり、
が(C1-C4)パーフルオロアルキルであり、
が1~9個のフッ素原子により置換されていてもよい(C1-C4)アルキルであり、
nが2から5の整数であり、
が、塩素原子又は臭素原子である方法。
【0067】
〔42〕 〔35〕から〔40〕に記載の方法であって、
がメチルであり、
がトリフルオロメチルであり、
がジフルオロメチルであり、
nが2であり、
が、塩素原子又は臭素原子である方法。
【0068】
〔43〕 式(2)の化合物の製造方法であって、以下の工程iを含む、方法:
(工程i) 式(1)の化合物を硫黄化合物と反応させることを含む、式(2)の化合物を製造する工程:
【0069】
【化10】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
は、ハロゲン原子であり、
nは2以上の整数である。)。
【0070】
〔44〕 〔43〕に記載の方法であって、工程iが以下の工程(i-a)である方法:
(工程i-a) 式(1)の化合物を無機硫黄化合物及び硫黄と反応させて、式(2)の化合物を製造する工程:
【化11】
(式中、R、R、R、X及びnは、〔43〕で定義した通りである。)。
【0071】
〔45〕 〔43〕に記載の方法であって、工程iの硫黄化合物が無機硫黄化合物及び硫黄である方法。
【0072】
〔46〕 〔44〕又は〔45〕に記載の方法であって、工程iの無機硫黄化合物が硫化ナトリウムである方法。
【0073】
〔47〕 〔43〕に記載の方法であって、工程iが以下の工程(i-b)である方法:
(工程i-b) 式(1)の化合物を硫黄化合物(好ましくは、チオ尿素、置換チオ尿素類、チオカルボン酸塩類、チオアミド類、チオ硫酸塩類又はキサンテート塩類、より好ましくは、チオ尿素、N,N-ジメチルチオホルムアミド、チオ酢酸カリウム又はチオ硫酸ナトリウム、更に好ましくはチオ尿素)と反応させ、そして加水分解した後に、酸化剤と反応させて、式(2)の化合物を製造する工程:
【0074】
【化12】
(式中、R、R、R、X及びnは、〔43〕で定義した通りである。)。
【0075】
〔48〕 〔43〕に記載の方法であって、工程iの硫黄化合物が、チオ尿素、置換チオ尿素類、チオカルボン酸塩類、チオアミド類、チオ硫酸塩類又はキサンテート塩類、より好ましくは、チオ尿素、N,N-ジメチルチオホルムアミド、チオ酢酸カリウム又はチオ硫酸ナトリウム、更に好ましくはチオ尿素)である方法。
【0076】
〔49〕 〔43〕から〔48〕に記載の方法であって、
が(C1-C4)アルキルであり、
が(C1-C4)パーフルオロアルキルであり、
が1~9個のフッ素原子により置換されていてもよい(C1-C4)アルキルであり、
nが2から5の整数であり、
が、塩素原子又は臭素原子である方法。
【0077】
〔50〕 〔43〕から〔48〕に記載の方法であって、
がメチルであり、
がトリフルオロメチルであり、
がジフルオロメチルであり、
nが2であり、
が、塩素原子又は臭素原子である方法。
【0078】
〔51〕 〔43〕から〔50〕に記載の方法であって、
が塩素原子である方法。
【0079】
〔52〕式(5)の化合物の製造方法であって、
(工程ii) 式(2)の化合物を式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する工程:
【0080】
【化13】
(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
は、ハロゲン原子であり、
nは2以上の整数である。)及び
(工程iii)式(4)の化合物を酸化剤と反応させて、式(5)の化合物を製造する工程:
【0081】
【化14】

(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルである。)を含む、式(5)の化合物の製造方法。
【0082】
〔53〕 〔52〕に記載の方法であって、工程iiiの反応が金属触媒の存在下で行われる方法。
【0083】
〔54〕 〔52〕に記載の方法であって、工程iiiの酸化剤が過酸化水素である方法。
【0084】
上記〔6〕から〔51〕に記載の限定は、上記〔52〕から〔54〕に適用してよい。ただし、矛盾する場合を除く。
【0085】
【発明の効果】
【0086】
本発明によれば、有害生物に対して防除活性を有する新規な式(2)の化合物が提供される。
【0087】
さらに、本発明は、除草剤の製造中間体として有用である式(4)の化合物及び除草剤である式(5)の化合物(とりわけピロキサスルホン)の新規な製造方法を提供し、その中間体である式(2)の化合物を提供する。本発明の方法は安全に式(4)の化合物及び式(5)の化合物を製造でき、有用である。本発明の方法は、特殊な製造装置、特殊な反応条件及び特殊な高価な試薬を使うことなく、製造できるため、工業的製造に適している。
【0088】
特徴的な強い悪臭を有する含硫黄有機化合物と比較して、本発明の実施例4から実施例6で製造されるジスルフィド化合物は、ほとんど悪臭を有さない。さらに、このジスルフィド化合物は十分に融点が高い固体である。高い融点は、その化合物が保存に好ましいこと、並びに単離方法及び/又は精製方法として再結晶という選択肢が提供されることを意味する。
【0089】
本発明のジスルフィド化合物は、このような複数の利点を同時に持つことが見出されたのである。
【発明を実施するための形態】
【0090】
本明細書に記載された記号及び用語について説明する。
【0091】
本明細書中、以下の略語及び接頭語が使用されることがあり、それらの意味は以下の通りである。
Me:メチル
n-:ノルマル
s-及びsec-:セカンダリー
i-及びiso-:イソ
t-及びtert-:ターシャリー
c-及びcyc-:シクロ
o-:オルソ
m-:メタ
p-:パラ
【0092】
用語「ニトロ」は置換基「-NO」を意味する。
用語「シアノ」は置換基「-CN」を意味する。
用語「ヒドロキシ」は置換基「-OH」を意味する。
用語「アミノ」は置換基「-NH」を意味する。
【0093】
本明細書中、「アルキル」のような一般的用語は、ブチル及びtert-ブチルのような直鎖及び分岐鎖の両方を含むと解釈する。一方で、例えば、具体的用語「ブチル」は、直鎖の「ノルマルブチル」を意味し、分岐鎖の「tert-ブチル」を意味しない。そして「tert-ブチル」のような分岐鎖異性体は、意図した場合に具体的に言及される。
【0094】
ハロゲン原子の例は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を含む。
【0095】
(C1-C6)アルキルは、1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルを意味する。(C1-C6)アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等を含むが、これらに限定されない。
【0096】
(C1-C4)アルキルは、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルを意味する。(C1-C4)アルキルの例は、上記の(C1-C6)アルキルの例のうちの適切な例を含む。
【0097】
本明細書中、用語「1以上の置換基により置換されていてもよい」における「置換基」については、それらが化学的に許容され、本発明の効果を示す限りは、特に制限はない。
【0098】
本明細書中、「1以上の置換基により置換されていてもよい」との用語における「1以上の置換基」の例は、置換基群(a)から独立して選択される1以上の置換基(好ましくは1~3個の置換基)を含むが、これらに限定されない。
【0099】
置換基群(a)は、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、(C1-C6)アルキル及びフェニルからなる群である。
【0100】
加えて、置換基群(a)から独立して選択される1以上の置換基(好ましくは1~3個の置換基)は、それぞれ独立して、置換基群(b)から独立して選択される1以上の置換基(好ましくは1~3個の置換基)により置換されていてもよい。ここで、置換基群(b)は置換基群(a)と同じである。
【0101】
1~9個のフッ素原子により置換されていてもよい(C1-C4)アルキルの例は、フルオロメチル(すなわち、-CHF)、ジフルオロメチル(すなわち、-CHF)、トリフルオロメチル(すなわち、-CF)、2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、3-フルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、2,2,2-トリフルオロ-1-トリフルオロメチルエチル、ヘプタフルオロプロピル、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-トリフルオロメチルエチル、4-フルオロブチル、2,2,3,3,4,4,4-へプタフルオロブチル、ノナフルオロブチル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-トリフルオロメチルプロピル、2,2,2-トリフルオロ-1,1-ジ(トリフルオロメチル)エチルを含むが、これらに限定されない。
【0102】
(C1-C4)パーフルオロアルキルは、全ての水素原子がフッ素原子により置換されている、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルを意味する。(C1-C4)パーフルオロアルキルの例は、トリフルオロメチル(すなわち、-CF)、ペンタフルオロエチル(すなわち、-CFCF)、ヘプタフルオロプロピル(すなわち、-CFCFCF)、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-トリフルオロメチルエチル(すなわち、-CF(CF)、ノナフルオロブチル、(すなわち、-CFCFCFCF)、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-トリフルオロメチルプロピル(すなわち、-CF(CF)CFCF)、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-トリフルオロメチルプロピル(すなわち、-CFCF(CF)及び2,2,2-トリフルオロ-1,1-ジ(トリフルオロメチル)エチル(すなわち、-C(CF)である。
【0103】
本明細書中、置換基(例えば、R、R、R、R、R、X及びX等)に言及するときの用語「本明細書中に記載の通り」及び類似の用語は、本明細書中の置換基の全ての定義並びにもしあれば全ての例、好ましい例、より好ましい例、さらに好ましい例及び特に好ましい例等を参照することにより取り込む。
【0104】
そうでないと明示しない限り、本明細書において用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本開示が属する当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。
【0105】
本明細書中、非限定的な用語「含む(comprise(s)/comprising)」は、限定的な語句「からなる(consist(s) of/consisting of)」にそれぞれ任意に置き換えることができる。
【0106】
本明細書中、矛盾しない限り、「を用いて」は、「の存在下で」に任意に置き換えることができる。
本明細書中、矛盾しない限り、「の存在下で」は、「を用いて」に任意に置き換えることができる。
【0107】
別段に示されない限り、本明細書で使用される量、大きさ、濃度、反応条件などの特徴を表す数字は、用語「約」によって修飾されると理解される。いくつかの態様では、開示された数値は、報告された有効数字の桁数と、通常の丸め手法を適用して解釈される。いくつかの態様では、開示された数値は、それぞれの試験測定方法に見られる標準偏差から必然的に生じる誤差を含むと解釈される。
【0108】
「有害生物防除剤」とは、農園芸分野、家畜及びペット等の動物、家庭用或いは防疫用の殺虫剤、殺ダニ剤、殺センチュウ剤等を意味する。
【0109】
本発明の化合物について説明する。下記式(2)の化合物は、有害生物に対して防除活性を有し、有害生物防除剤の有効成分として有用である。
【0110】
【化15】
【0111】
化合物の有用性の観点から、式(2)中、Rは、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、好ましくは(C1-C4)アルキルであり、より好ましくはメチルである。
は、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、好ましくは(C1-C4)パーフルオロアルキルであり、より好ましくはトリフルオロメチルである。
は、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、好ましくは1~9個のフッ素原子により置換されていてもよい(C1-C4)アルキルであり、より好ましくジフルオロメチルである。
nは1以上の整数であり、好ましくは2から5の整数であり、より好ましくは2又は3であり、さらに好ましくは2であるが、これらに限定されない。
式(2)の化合物は、n=2のジスルフィド化合物及びn=3以上のポリスルフィド化合物の混合物であってもよく、当該混合物は本発明の範囲である。例えば、式(2)の化合物は、nが1以上の任意の整数である化合物群の任意の混合物であってもよく、nが2から5の任意の整数である化合物群の任意の混合物であってもよく、nが2及び3である化合物群の任意の混合物であってもよい。当該混合物は本発明の範囲である。
【0112】
式(2)の化合物の好ましい具体的な例は以下を含むが、これに限定されない:
【0113】
【化16】
【0114】
式(2)の化合物の製造方法を説明する。さらに、式(2)の化合物を使用した式(4)の化合物の製造方法を説明する。
【0115】
本発明における式(2)の化合物の製造方法は、以下のとおりである:
式(1)の化合物から式(2)の化合物を製造する方法、言い換えれば、式(1)の化合物を用いて式(2)の化合物を製造することを含む方法:
【0116】
【化17】
【0117】
(式中、R、R、R、X及びnは、本明細書中に記載の通りである。)。
【0118】
(工程i)
工程iについて説明する。
【0119】
工程iは、式(2)の化合物の製造方法の一つである。
【0120】
工程iは、式(1)の化合物を硫黄化合物と反応させて式(2)の化合物を製造する工程である。
【0121】
【化18】
(ここで、R、R、R及びnは本明細書中に記載の通りであり、Xはハロゲン原子である。)
【0122】
(工程iの原料:式(1)の化合物)
工程iの原料として、式(1)の化合物を用いる。
式(1)の化合物は公知の化合物であるか、又は公知の化合物から公知の方法(例えば、WO2004/013106A1又はWO2021/002484A9)に準じて製造することができる。
【0123】
生成物の有用性、経済効率等の観点から、式(1)中、
、R及びRは、式(2)で定義した通りである。式(1)中、R、R及びRの例、好ましい例、より好ましい例及び特に好ましい例等は、もしあれば、それぞれ上記した式(2)中のそれらと同じである。
はハロゲン原子であり、好ましくは塩素原子又は臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。
【0124】
式(1)の化合物の好ましい具体的な例は以下を含むが、これらに限定されない:
【0125】
【化19】
【0126】
経済効率等の観点から、化合物(1-a)がより好ましい。
【0127】
(工程iの生成物:式(2)の化合物)
【0128】
工程iの生成物は、原料として用いた式(1)の化合物に対応する式(2)の化合物である。
【0129】
式(2)の化合物は上記の通りであるが、工程iにおいて製造される生成物は、式(2)の化合物である。工程iにおいて製造される生成物は、式(2)におけるn=2のジスルフィド化合物である。しかしながら、n=3以上のポリスルフィド化合物も生成する場合もある。すなわち、工程iにおいて製造される生成物は、式(2)におけるn=2以上の化合物の混合物として得られてもよい。n=2のジスルフィド化合物及びn=3以上のポリスルフィド化合物は、次工程の工程iiにより同じ生成物である式(4)の化合物(例えば、ISFP)を与えるであろう。従って、n=2のジスルフィド化合物及びn=3以上のポリスルフィド化合物の混合物は、そのまま、それぞれを単離精製せずに、次の工程iiの原料として使用することができるであろう。一方、一般的に、精製が必要な場合に、塩にはその水溶性のために、水洗による精製がしにくいとの難点がある。しかしながら、式(2)の化合物は水洗による精製が可能である。さらに、一般的に塩には保存時における潮解性の懸念があるが、式(2)の化合物にはそのような懸念がないという利点がある。加えて、本発明においては、抽出、結晶洗浄などの当業者によく知られた後処理操作により、すなわち、簡単な操作により、高い純度の生成物を得ることができる。さらに、式(2)の化合物、とりわけ式(2-a)の化合物は保存安定性に優れているとの特性を有し得る。
式(2)のジスルフィド化合物の好ましい具体的な例は、以下を含むが、これに限定されない:
【0130】
【化20】
【0131】
(工程iの硫黄化合物)
工程iの硫黄化合物の例は、無機硫黄化合物、硫黄、無機硫黄化合物及び硫黄、又はチオ尿素、置換チオ尿素類、チオカルボン酸塩類、チオアミド類、チオ硫酸塩類又はキサンテート塩類であるが、これらに限定されない。
【0132】
工程iは、工程i-aであってもよく、工程i-bであってもよい。
【0133】
(工程i-a)
工程i-aは、式(1)の化合物を無機硫黄化合物と反応させて、式(2)の化合物を得る工程である。
工程i-aは、好ましくは、式(1)の化合物を無機硫黄化合物及び硫黄と反応させて、式(2)の化合物を得る工程である。
【0134】
(工程i-aの無機硫黄化合物)
一つの態様では、工程i-aの無機硫黄化合物の例は、硫化ナトリウム、硫化カリウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、二硫化ナトリウム、二硫化カリウム及びそれらの混合物を含み、好ましくは硫化ナトリウム及び二硫化ナトリウムを含み、より好ましくは硫化ナトリウムであるが、これらに限定されない。別の態様では、好ましい工程i-aの無機硫黄化合物の例は、硫化ナトリウム、硫化カリウム又はそれらの混合物であり、より好ましくは硫化ナトリウムである。
【0135】
工程i-aの無機硫黄化合物は、1種類又は2種類以上の組み合わせで使用することができるが、硫黄との組み合わせで使用することが好ましい。工程i-aの無機硫黄化合物の量は、例えば、式(1)の化合物(原料)1モルに対して、0.5~5モル、好ましくは0.5~2モルである。硫黄の量は、例えば、式(1)の化合物(原料)1モルに対して、0.25~5モル、好ましくは0.5~2モル、更に好ましくは0.5~1モルである。工程i-aの無機硫黄化合物の形態は、反応が進行する限りは、いずれの形態でもよい。工程i-aの無機硫黄化合物の形態の例は、それのみの固体及び任意の濃度(例えば、10~50%)の水溶液を含む。工程i-aの無機硫黄化合物は水和物であってもよい。工程i-aの硫黄の形態は、反応が進行する限りは、いずれの形態でもよい。工程i-aの硫黄の形態の例は、固体、粘稠性液体及び液体を含む。
【0136】
(工程i-b)
工程i-bは、式(1)の化合物を硫黄化合物と反応させ、そして加水分解した後に、酸化剤と反応させて、式(2)の化合物を製造する工程である:
【0137】
【化21】
(式中、R、R、R、X及びnは、本明細書中に記載の通りである。)。
【0138】
例えば、工程i-bは、式(1)の化合物をチオ尿素と反応させ、その後加水分解した後に、酸化剤と反応させて、式(2)の化合物を得る工程である:
【0139】
【化22】
【0140】
(式中、R、R、R、X及びnは、本明細書中に記載の通りである。)。
【0141】
工程i-bの硫黄化合物の例は、以下を含むが、これらに限定されない:
チオ尿素;
置換チオ尿素類、好ましくはN,N’-ジアルキルチオ尿素類、N-モノアルキルチオ尿素類(例えば、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、N-メチルチオ尿素、N-エチルチオ尿素、N-フェニルチオ尿素);
チオカルボン酸塩類、好ましくはチオ酢酸類(例えば、チオ酢酸カリウム、チオ酢酸ナトリウム);
チオアミド類(例えば、N,N-ジメチルチオホルムアミド、チオベンズアミド、ジチオオキサミド);
チオ硫酸塩類(例えば、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム);
キサンテート塩類(例えば、エチルキサントゲン酸カリウム、エチルキサントゲン酸ナトリウム、メチルキサントゲン酸カリウム、メチルキサントゲン酸ナトリウム)。
【0142】
硫黄化合物との反応で得られてもよい中間体の例は、以下を含むが、これらに限定されない:
下図中、Rは、(C1-C6)アルキル、又は(C1-C6)アルキル及びハロゲン原子(好ましくは塩素原子)から選択される1個以上(好ましくは1~2個の、より好ましくは1個)により置換されていてもよいフェニルであり;
は、水素、(C1-C6)アルキル、又は(C1-C6)アルキル及びハロゲン原子(好ましくは塩素原子)から選択される1個以上(好ましくは1~2個の、より好ましくは1個)により置換されていてもよいフェニルである。
【0143】
【化23】
【0144】
工程i-bの上記硫黄化合物(例えば、チオ尿素)の量は、例えば、式(1)の化合物(原料)1モルに対して、1~2モル、好ましくは1.0~1.5モルである。
【0145】
例えば、加水分解は好ましくは塩基の存在下で行われる。塩基の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムを含み、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムを含むが、これらに限定されない。水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムがより好ましく、水酸化ナトリウムが更に好ましい。塩基の量は、例えば、式(1)の化合物(原料)1モルに対して、2~5モル、好ましくは2~3モルである。
【0146】
例えば、塩基による加水分解の後、反応混合物を酸により中和した後、酸化剤との反応(すなわち、酸化)を行うことが好ましい。酸の例は、塩酸、硫酸、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、リン酸を含み、好ましくは塩酸及び硫酸を含むが、これらに限定されない。塩酸がより好ましい。酸の量は、当業者が適切に調整することができる。
【0147】
工程i-bの酸化剤の例は、過酸化水素、次亜塩素酸塩、過酸化物過マンガン酸塩、二酸化マンガン、空気等を含む酸素を含み、好ましくは過酸化水素を含むが、これらに限定されない。酸化剤の量は、例えば、式(1)の化合物(原料)1モルに対して、0.2~1.5モル、好ましくは0.3~1.0モルである。安全性、危険性、経済効率等を考慮して、工程i-bにおける過酸化水素の形態の好ましい例は、10~70wt%過酸化水素水溶液、より好ましくは25~65wt%過酸化水素水溶液を含む。
【0148】
工程iの反応、すなわち、工程i-aの反応(無機硫黄化合物との反応、無機硫黄化合物及び硫黄との反応)及び工程i-bの反応(チオ尿素等の上記硫黄化合物と反応、加水分解、酸化)における反応溶媒、反応温度、反応時間等について説明する。いずれも以下の通りである。
【0149】
(工程iの反応溶媒)
工程iの反応は、溶媒の非存在下又は存在下で行うことができる。工程iの反応で溶媒を用いるか否かは、当業者が適切に決定することができる。工程iの反応で溶媒を使用する場合は、反応が進行する限りは、工程iの反応の溶媒は当業者が適切に選択することができる。工程iの反応の溶媒の例は、以下を含むが、これらに限定されない:水、芳香族炭化水素誘導体類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン(EDC))、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、tert-ブタノール(tert-ブタノールはtert-ブチルアルコールとも言う))、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチル-tert-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジグリム(diglyme))、アミド類(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP))、ウレア類(例えば、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、テトラメチル尿素)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO))、及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ。反応溶媒は、原料溶液中及び反応剤溶液中の溶媒を含むと理解してよい。言い換えれば、原料溶液中及び反応剤溶液中の溶媒は「反応の溶媒」であると理解してよい。例えば、反応に使用した水酸化ナトリウム水溶液中の水は反応溶媒と理解してよい。別の例として、反応に使用した過酸化水素水溶液中の水は反応溶媒と理解してよい。
【0150】
好ましい工程i-aの反応の溶媒の例は、ハロゲン化脂肪族炭化水素類と水の組み合わせ、又はアミド類と水の組み合わせである。アミド類と水の組み合わせがより好ましい。ここで、ハロゲン化脂肪族炭化水素類は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、又はそれらの混合物である。ここで、アミド類は、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)又はそれらの混合物であり、より好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。特に好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドと水の組み合わせである。
【0151】
好ましい工程i-bの反応の溶媒の例は、アルコール類と水の組み合わせ、又はニトリル類と水の組み合わせである。ここで、アルコール類は、好ましくはメタノール、エタノール、2-プロパノール又はそれらの混合物であり、より好ましくはメタノール、エタノール又はそれらの混合物である。ここで、ニトリル類は、好ましくはアセトニトリルである。
【0152】
工程iの反応、すなわち、工程i-aの反応(無機硫黄化合物との反応、無機硫黄化合物及び硫黄との反応)及び工程i-bの反応(チオ尿素等の上記硫黄化合物と反応、加水分解、酸化)における溶媒の使用量について説明する。いずれの反応溶媒も上記の通りである。工程iの反応の溶媒の使用量は、反応系の撹拌が十分にできる限りは、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iの反応の溶媒の使用量は、例えば、式(1)の化合物(原料)1モルに対して、0(ゼロ)L~10L、好ましくは0.1L~10L、より好ましくは0.2L~5Lである。2種以上の溶媒の組み合わせを用いるときは、2種以上の溶媒の割合は、反応が進行する限りは、いずれの割合でもよい。
【0153】
(工程iの反応温度)
工程iの反応温度は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iの反応温度は、例えば、-10℃(マイナス10℃)~100℃、好ましくは0(ゼロ)℃~80℃、より好ましくは0℃~70℃、更に好ましくは10℃~70℃である。
【0154】
(工程iの反応時間)
工程iの反応時間は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iの反応時間は、例えば、0.5時間~48時間、好ましくは0.5時間~24時間である。反応時間は、当業者が適切に調整することができる。
【0155】
工程iの生成物である式(2)の化合物、とりわけ化合物(2-a)は、工程iiの原料として使用することができる。
【0156】
(工程ii)
工程iiについて説明する。
【0157】
工程iiは、式(2)の化合物を式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する工程である:
【0158】
【化24】
【0159】
(式中、R、R、R、R、R、X及びnは、本明細書中に記載の通りである。)。
【0160】
本明細書中、「式(2)の化合物を式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する」及び類似の表現は、「式(2)の化合物と式(3)から、式(4)の化合物を製造する」に置き換えることができる。本発明は「式(2)の化合物と式(3)から、式(4)の化合物を製造する方法」を包含する。
【0161】
一つの態様では、工程iiは、式(2)の化合物を、還元剤の存在下で、式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する工程である。別の態様では、工程iiは、式(2)の化合物を、還元剤を用いて、式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する工程である。
【0162】
一つの態様では、工程iiの反応は、より好ましくは還元剤及び塩基の存在下で行われる。別の態様では、工程iiの反応は、より好ましくは還元剤を用いて、塩基の存在下で行われる。
【0163】
更に別の態様では、工程iiの反応は、還元剤又は塩基の存在下で行われる。
【0164】
一つの態様では、工程iiの反応は、さらに好ましくは還元剤、無機硫黄化合物及び塩基の存在下で行われる。別の態様では、工程iiの反応は、より好ましくは還元剤を用いて及び無機硫黄化合物を用いて塩基の存在下で行われる。
【0165】
(工程iiの原料:式(2)の化合物)
式(2)の化合物は上記の通りであるが、工程iiにおいて使用される原料は、式(2)の化合物であり、工程iにおいて製造される生成物を使用することができる。n=2のジスルフィド化合物及びn=3以上のポリスルフィド化合物は、工程iiにおいて同じ生成物である式(4)の化合物を与えるであろう。従って、n=2のジスルフィド化合物及びn=3以上のポリスルフィド化合物は混合物のまま、それぞれを単離せずに、工程iiの原料として使用することができるであろう。
【0166】
(工程iiの原料:式(3)の化合物)
工程iiの原料として、式(3)の化合物を用いる。
【0167】
生成物の有用性、経済効率等の観点から、式(3)中、
は、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、好ましくは(C1-C4)アルキルであり、より好ましくはメチルである。
は、1以上の置換基により置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、好ましくは(C1-C4)アルキルであり、より好ましくはメチルである。
はハロゲン原子であり、好ましくは塩素原子又は臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。
【0168】
式(3)の化合物は公知の化合物であるか、又は公知の化合物から公知の方法に準じて製造することができる。例えば、式(3)の化合物の調製は、WO2006/068092A1、参考例1及び2に記載されているか、又は類似の方法で行うことができる。
【0169】
生成物の有用性等の観点から、式(3)の化合物の好ましい具体的な例は、以下を含むが、これらに限定されない;3-クロロ-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a、CIO)、3-ブロモ-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-b、BIO)等。経済効率等の観点から、3-クロロ-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a、CIO)がより好ましい。
【0170】
(工程iiの原料:式(3)の化合物の使用量)
工程iiの式(3)の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。工程iiの式(3)の使用量は、当業者が適宜調整することができる。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iiの式(3)の化合物の使用量は、例えば、式(2)の化合物(原料)1モルに対して、2~4モル、好ましくは2~3モルである。
【0171】
(工程iiの生成物:式(4)の化合物)
【0172】
工程iiの生成物は、原料として用いた式(2)の化合物及び式(3)の化合物に対応する式(4)の化合物である。
【0173】
式(4)中、R、R及びRは、式(1)で定義した通りである。式(4)中、R4及びRは、式(3)で定義した通りである。式(4)中、R、R、R、R4及びR5の例、好ましい例、より好ましい例及び特に好ましい例は、もしあれば、それぞれ上記した式(1)及び式(3)中のそれらと同じである。
【0174】
式(4)の化合物の特に好ましい具体的な例は下記の通りである:
【0175】
【化25】
【0176】
(工程iiの還元剤)
工程iiにおいて使用される還元剤は、反応が進行する限りはいずれの還元剤でもよい。工程iiにおいて使用される還元剤としては、例えば、水素化ホウ素化合物(例えば、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウム)、アルカリ金属硫化物(例えば、硫化ナトリウム、硫化カリウム)、アルカリ金属亜硫酸塩(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム)、アルカリ金属亜硫酸水素塩(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム)、アルカリ金属ヒドロキシメタンスルフィン酸塩(例えば、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム)、次亜硫酸塩(例えば、亜ジチオン酸ナトリウム)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい工程iiの還元剤の例は、アルカリ金属ヒドロキシメタンスルフィン酸塩又は水素化ホウ素化合物、より好ましくはヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム又は水素化ホウ素ナトリウムを含む。
【0177】
ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムは、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートともいう。ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムは、反応が進行する限りは無水物であっても水和物であってもよいが、反応性、入手性及び取り扱いの容易さ等の観点から、二水和物のヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム・二水和物(商品名:ロンガリット)が好ましい。
【0178】
工程iiの還元剤は、単独で又は任意の割合の2種以上の組み合わせで使用してもよい。工程iiの還元剤の形態は、反応が進行する限りはいずれの形態でもよい。当業者は、還元剤の形態を適宜に選択できる。工程iiの還元剤の形態の例は、そのものの固体及び任意の濃度の水溶液(例えば5%~50%水溶液)を含む。工程iiの還元剤は水和物であってもよい。
【0179】
(工程iiの還元剤の使用量)
工程iiの還元剤の使用量は、反応が進行する限りはいずれの量でもよい。収率、副生成物抑制及び経済効率等の観点から、一つの態様では、例えば、式(2)の化合物1モルに対して、通常0.1~10モル、好ましくは1~8モル、より好ましくは2~6モル、更に好ましくは2~4モル、特に好ましくは2~3モルである。
【0180】
(工程iiの無機硫黄化合物)
一つの態様では、工程iiの反応は、無機硫黄化合物の存在下で行われることが好ましい。別の態様では、工程iiの反応は、無機硫黄化合物を用いて行われることが好ましい。反応が進行する限りは、無機硫黄化合物はいずれの無機硫黄化合物でもよい。
【0181】
無機硫黄化合物の例は、硫化ナトリウム、硫化カリウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、二硫化ナトリウム、二硫化カリウム及びそれらの混合物を含み、好ましくは水硫化ナトリウム、水硫化カリウム及びそれらの混合物であり、より好ましくは水硫化ナトリウムであるが、これらに限定されない。
【0182】
無機硫黄化合物は、1種類で又は任意の割合の2種類以上の組み合わせで使用することができる。工程iiの無機硫黄化合物の形態は、反応が進行する限りは、いずれの形態でもよい。工程iiの無機硫黄化合物の形態の例は、固体及び任意の濃度の水溶液を含む。工程iiの無機硫黄化合物は水和物であってもよい。工程iiの無機硫黄化合物の純度(言い換えれば、濃度)の例は、10%~100%、好ましくは50%~100%である。無機硫黄化合物の量は、例えば、式(2)の化合物(原料)1モルに対して、0.5~5モル、好ましくは1~2モルである。
【0183】
(工程iiの塩基)
工程iiの反応は、塩基の存在下で行われることが好ましい。反応が進行する限りは、塩基はいずれの塩基でもよい。工程iiの塩基の例は、以下を含むが、これらに限定されない:
アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム)、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム)、アルカリ金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、アルカリ土類金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素カルシウム)、リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム)、リン酸水素塩(例えば、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素カルシウム)等、アミン類(例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデカ-7-エン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)-ピリジン(DMAP))、アンモニア等、及びそれらの混合物。好ましい工程iiの塩基の例は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物及びそれらの混合物、より好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びそれらの混合物、更に好ましくは炭酸カリウム又は水酸化ナトリウムを含む。
【0184】
工程iiの塩基は、単独で又は任意の割合の2種以上の組み合わせで使用してもよい。工程iiの塩基の形態は、反応が進行する限りは、いずれの形態でもよい。工程iiの塩基の形態の例は、塩基のみの固体及び任意の濃度の水溶液等を含む。塩基の形態の具体的な例は、フレーク、ペレット、ビーズ、パウダー及び10~50%水溶液、好ましくは20~50%水溶液(例えば、25%水酸化ナトリウム水溶液及び48%水酸化ナトリウム水溶液、好ましくは48%水酸化ナトリウム水溶液)等を含むが、これらに限定されない。工程iiの塩基の形態は、当業者が適切に選択することができる。
【0185】
工程iiの塩基の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iiの塩基の使用量は、例えば、式(2)の化合物(原料)1モルに対して、0(ゼロ)~15モル、好ましくは1~15モル、より好ましくは3~10モル、更に好ましくは3~5モルである。
【0186】
(工程iiの仕込み方法)
原料、還元剤、塩基、無機硫黄化合物、及び溶媒等を仕込む順番は、特に制限されない。反応が進行する限りは、それらの添加順序は、いずれの順序でもよい。いずれか2種以上を加え、反応させた後、残りのものを加え、反応させてもよい。本発明において好ましい方法が見出された。それらは本明細書中に記載の通りである。
【0187】
(工程iiの反応溶媒)
反応の円滑な進行等の観点から、工程iiの反応は溶媒の存在下で行うことが好ましい。
工程iiの反応の溶媒は、反応が進行する限りは、いずれの溶媒でもよい。
【0188】
工程iiの反応の溶媒の例は、以下を含むが、これらに限定されない:
芳香族炭化水素誘導体類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン(EDC))、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、tert-ブタノール(tert-ブタノールはtert-ブチルアルコールとも言う))、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル及びその異性体、酢酸ペンチル及びその異性体)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチル-tert-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジグリム(diglyme))、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルイソブチルケトン(MIBK))、アミド類(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP))、ウレア類(例えば、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、テトラメチル尿素)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO))、スルホン類(例えば、スルホラン)、水、及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ。
好ましい例は、アルコール類、アミド類と水の組み合わせ、アルコール類と水の組み合わせ、又はアミド類と水の組み合わせである。ここで、アルコール類は、好ましくはメタノール、エタノール、2-プロパノール又はそれらの混合物であり、より好ましくはメタノール、エタノール又はそれらの混合物である。ここで、アミド類は、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)又はそれらの混合物であり、より好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。一つの態様では、特に好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドと水の組み合わせである。
還元剤として水素化ホウ素化合物を使用する際は、アルコール類を使用することが好ましい。この場合、アルコール類は他の溶媒との組み合わせで使用してもよい。
反応溶媒は、原料溶液中及び反応剤溶液中の溶媒を含むと理解してよい。言い換えれば、原料溶液中及び反応剤溶液中の溶媒は「反応の溶媒」であると理解してよい。
【0189】
いずれの場合も、反応が進行する限りは、溶媒は単層でもよく、2層に分離してもよい。
【0190】
工程iiの反応の溶媒の使用量は、反応系の撹拌が十分にできる限りは、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iiの反応の溶媒の使用量は、例えば、式(2)の化合物(原料)1モルに対して、0(ゼロ)L~10L、好ましくは0.2L~8L、より好ましくは0.5L~8L、更に好ましくは1L~8Lである。2種以上の溶媒の組み合わせを用いるときは、2種以上の溶媒の割合は、反応が進行する限りは、いずれの割合でもよい。
【0191】
(工程iiの反応温度)
工程iiの反応温度は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iiの反応温度は、例えば、-10(マイナス10)℃~100℃、好ましくは0(ゼロ)℃~90℃、より好ましくは10℃~70℃である。一つの態様では、それはさらに好ましくは10℃~60℃である。別の態様では、それはさらに好ましくは40℃~70℃、さらに好ましくは40~60℃である。
【0192】
(工程iiの反応時間)
工程iiの反応時間は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iiの反応時間は、例えば、1時間~48時間、好ましくは2時間~48時間、より好ましくは4時間~36時間である。反応時間は、当業者が適切に調整することができる。
【0193】
(工程iii)
工程iiiについて説明する。
【0194】
工程iiiは、式(5)の化合物の製造方法の一つであり、式(4)の化合物から公知の方法(WO2021/0002484A1、WO2022/191292A1、WO2022/138781A1)に準じて製造することができるが、これらに限定されない。例えば、工程iiiは以下の通りである。
【0195】
(工程iii) 式(4)の化合物を酸化剤と反応させて、式(5)の化合物を製造する工程:
【0196】
【化26】
【0197】
(式中、R、R、R、R及びRは、本明細書中に記載の通りである。)
【0198】
(工程iiiの原料:式(4)の化合物)
工程iiiの原料として、式(4)の化合物を用いる。式(4)の化合物は上記のとおりである。
【0199】
式(4)中、R、R及びRは、式(1)で定義した通りである。式(4)中、R4及びRは、式(3)で定義した通りである。式(4)中、R、R、R、R4及びR5の例、好ましい例、より好ましい例及び特に好ましい例は、もしあれば、それぞれ上記した式(1)及び式(3)中のそれらと同じである。
式(4)の化合物の特に好ましい具体的な例は下記の式(4-a)の化合物である。
【0200】
【化27】
【0201】
(工程iiiの生成物:式(5)の化合物)
【0202】
工程iiiの生成物は、原料として用いた式(4)の化合物に対応する式(5)の化合物である。
【0203】
式(5)中、R、R及びRは、式(1)で定義した通りである。式(5)中、R4及びRは、式(3)で定義した通りである。式(5)中、R、R、R、R4及びRの例、好ましい例、より好ましい例及び特に好ましい例は、それぞれ上記した式(1)及び式(3)中のそれらと同じである。
【0204】
式(5)の化合物の特に好ましい具体的な例は下記の通りである:
【0205】
【化28】
【0206】
(工程iiiの酸化剤:過酸化水素)
工程iiiの反応では、酸化剤として次亜塩素酸塩(例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム)、過酸化物(例えば、過酸化水素、過硫酸水素ナトリウム、過硫酸ナトリウム(ペルオキソ二硫酸ナトリウム)、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸水素カリウム(ペルオキシ一硫酸カリウム、オキソン(登録商標)))、過マンガン酸塩、二酸化マンガン、クロム酸等を用いることができる。好ましくは、過酸化水素を用いる。
【0207】
安全性、危険性、経済効率等を考慮して、工程iiiにおける過酸化水素の形態の好ましい例は、10~70wt%過酸化水素水溶液、より好ましくは25~65wt%過酸化水素水溶液を含む。
【0208】
工程iiiの過酸化水素の使用量は、収率、副生成物抑制、経済効率、安全性、危険性等の観点から、工程iiiの過酸化水素の使用量は、例えば、式(4)の化合物(原料)1モルに対して、2モル以上、好ましくは2~8モルである。
【0209】
(工程iiiの触媒:金属触媒)
工程iiiの反応は、金属触媒の存在下又は非存在下で行うことができる。金属触媒を使用する場合は、反応が進行する限りは、金属触媒はいずれの金属触媒でもよい。工程iiiの金属触媒の例は、以下を含むが、これらに限定されない:タングステン触媒(例えば、タングステン酸、タングステン酸塩(例えば、タングステン酸ナトリウム(タングステン酸ナトリウム二水和物等を含む)、タングステン酸カリウム、タングステン酸アンモニウム)、金属タングステン、酸化タングステン、炭化タングステン、塩化タングステン)、モリブデン触媒(例えば、モリブデン酸、モリブデン酸塩(例えば、モリブデン酸ナトリウム(モリブデン酸ナトリウム二水和物を含む)、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸アンモニウム(モリブデン酸アンモニウム四水和物を含む))、金属モリブデン、酸化モリブデン、塩化モリブデン)、ニオブ触媒(例えば、炭化ニオブ、塩化ニオブ(V)、ニオブ(V)ペンタエトキシド)。好ましい金属触媒の例は、タングステン触媒、モリブデン触媒であり、より好ましい例はタングステン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウムである。
【0210】
金属触媒を使用する場合は、工程iiiの金属触媒の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、その使用量は、例えば、式(4)の化合物(原料)1モルに対して、0.001~0.1モル、好ましくは0.01~0.05モルである。
【0211】
工程iiiの反応は、硫酸又はリン酸フェニル等の酸触媒の存在下で行ってもよい。更に、工程iiiの反応は、硫酸水素テトラブチルアンモニウム等の相間移動触媒の存在下で行ってもよい。その使用量は、例えば、式(4)の化合物(原料)1モルに対して、0(ゼロ)~0.3モル、0.001~0.1モル、0.01~0.05モル、又はそれらの上限と下限の任意の組み合わせであるが、限定されない。
【0212】
工程iiiの反応は、上記金属触媒の存在下又は非存在下で、且つ酸性条件下で行ってもよい。この場合は、硫酸又はカルボン酸類(例えば、酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸)を用いることが好ましい。カルボン酸類は溶媒として用いてもよい。硫酸及びカルボン酸類は、それらの塩であってもよい。にそれらの使用量は、例えば、式(4)の化合物(原料)1モルに対して、0(ゼロ)~100モル、0.001~10モル、0.01~5モル、又はそれらの上限と下限の任意の組み合わせであるが、限定されない。
【0213】
工程iiiの反応は、金属触媒の非存在下で、且つ塩基性条件下で行ってもよい。この場合は、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)又はアルカリ金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)を用いることが好ましい。それらの使用量は、例えば、式(4)の化合物(原料)1モルに対して、0(ゼロ)~10モル、0.01~5モル、0.1~1モル、又はそれらの上限と下限の任意の組み合わせであるが、限定されない。
【0214】
工程iiiの反応は、酸性条件下の反応と塩基性条件下の反応の組み合わせであってもよい。
【0215】
(工程iiiの反応溶媒)
反応の円滑な進行等の観点から、工程iiiの反応は有機溶媒の存在下で行うことが好ましい。工程iiiの反応の有機溶媒の例は、以下を含むが、これらに限定されない:
アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、tert-ブタノール(tert-ブタノールはtert-ブチルアルコールとも言う))、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル及びその異性体、酢酸ペンチル及びその異性体)、アミド類(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP))、カルボン酸類(例えば、酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸)及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ。加えて、工程iiiの反応は有機溶媒と水溶媒の存在下で行うことがより好ましいが、これに限定されない。有機溶媒は、原料溶液中及び反応剤溶液中の有機溶媒を含む。水溶媒は、原料溶液中及び反応剤溶液中の水(例えば、過酸化水素水溶液中の水)を含む。
【0216】
いずれの場合も、反応が進行する限りは、溶媒は単層でもよく、2層に分離してもよい。
【0217】
工程iiiの反応の溶媒の全使用量は、反応系の撹拌が十分にできる限りは、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iiiの反応の溶媒の使用量は、例えば、式(4)の化合物(原料)1モルに対して、0.1L~10L、好ましくは0.3L~5Lである。2種以上の溶媒の組み合わせを用いるときは、2種以上の溶媒の割合は、反応が進行する限りは、いずれの割合でもよい。
【0218】
(工程iiiの反応温度)
工程iiiの反応温度は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iiの反応温度は、例えば、0(ゼロ)℃~100℃、好ましくは50℃~90℃である。
【0219】
(工程iiiの反応時間)
工程iiiの反応時間は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程iiの反応時間は、例えば1時間~48時間、好ましくは4時間~24時間である。反応時間は、当業者が適切に調整することができる。
【0220】
本発明の全ての工程における反応は、それぞれ独立して、バッチ式で行ってもよく、フロー式で行ってもよい。
【0221】
本発明の有害防除剤には、必要に応じ、農薬製剤に通常用いられる添加成分(担体)を含有することもでき、有効成分及び農薬上許容される担体を含有してなる農薬組成物とすることができる。
この添加成分としては、固体担体又は液体担体等の担体、界面活性剤、結合剤や粘着付与剤、増粘剤、着色剤、拡展剤、展着剤、凍結防止剤、固結防止剤、崩壊剤、分解防止剤等が挙げられ、その他必要に応じ、防腐剤や、植物片等を添加成分に用いてもよい。又、これらの添加成分は1種用いてもよいし、又、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0222】
上記の添加成分について説明する。
固体担体としては、例えば、パイロフィライトクレー、カオリンクレー、硅石クレー、タルク、珪藻土、ゼオライト、ベントナイト、酸性白土、活性白土、アタパルガスクレー、バーミキュライト、パーライト、軽石、ホワイトカーボン(合成ケイ酸、合成ケイ酸塩等)、二酸化チタン等の鉱物系担体;木質粉、トウモロコシ茎、クルミ殻、果実核、モミガラ、オガクズ、フスマ、大豆粉、粉末セルロース、デンプン、デキストリン、糖類等の植物性担体;炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類担体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、尿素-アルデヒド樹脂等の高分子担体等を挙げることができる。
【0223】
液体担体としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等の一価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;プロピレン系グリコールエーテル等の多価アルコール誘導体類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、セロソルブ、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ノルマルパラフィン、ナフテン、イソパラフィン、ケロシン、鉱油等の脂肪族炭化水素類;トルエン、C-C10アルキルベンゼン、キシレン、ソルベントナフサ、アルキルナフタレン、高沸点芳香族炭化水素等の芳香族炭化水素類;1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、ジイソプロピルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、アジピン酸ジメチル等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物類;大豆油、ナタネ油、綿実油、ヤシ油、ヒマシ油等の植物油、前記植物油由来の脂肪酸の低級アルキルエステル;水等を挙げることができる。
【0224】
界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルキルポリオキシエチレンポリプロピレンブロックポリマーエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン脂肪酸ビスフェニルエーテル、ポリアルキレンベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル、アセチレンジオール、ポリオキシアルキレン付加アセチレンジオール、ポリオキシエチレンエーテル型シリコーン、エステル型シリコーン、フッ素系界面活性剤、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等の非イオン性界面活性剤;アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物の塩、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物の塩、脂肪酸塩、ポリカルボン酸塩、N-メチル-脂肪酸サルコシネート、樹脂酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩等のアニオン性界面活性剤;ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、オレイルアミン塩酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、ステアリルアミノプロピルアミン酢酸塩、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンザルコニウムクロライド等のアルキルアミン塩等のカチオン界面活性剤;ジアルキルジアミノエチルベタイン、アルキルジメチルベンジルベタイン等のベタイン型、ジアルキルアミノエチルグリシン、アルキルジメチルベンジルグリシン等アミノ酸型等の両性界面活性剤等を挙げることができる。
結合剤や粘着付与剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースやその塩、デキストリン、水溶性デンプン、キサンタンガム、グアーガム、蔗糖、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、天然燐脂質(例えばセファリン酸、レシチン等)等を挙げることができる。
【0225】
増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル系ポリマー、デンプン誘導体、多糖類のような水溶性高分子;高純度ベントナイト、ホワイトカーボンのような無機微粉、有機ベントナイト等の有機微粉等を挙げることができる。
【0226】
着色剤としては、例えば、酸化鉄、酸化チタン、プルシアンブルーのような無機顔料;アリザリン染料、アゾ染料、金属フタロシアニン染料のような有機染料等を挙げることができる。
【0227】
拡展剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、セルロース粉末、デキストリン、加工デンプン、ポリアミノカルボン酸キレート化合物、架橋ポリビニルピロリドン、マレイン酸/スチレン共重合体、メタアクリル酸共重合体、多価アルコールのポリマーとジカルボン酸無水物とのハーフエステル、ポリスチレンスルホン酸の水溶性塩、ポリオキシエチレンアルカンジオール類、ポリオキシエチレンアルキンジオール類、アルキンジオール類等を挙げることができる。
【0228】
展着剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の種々の界面活性剤;パラフィン、テルペン、ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸塩、ポリオキシエチレン、ワックス、ポリビニルアルキルエーテル、アルキルフェノールホルマリン縮合物、合成樹脂エマルション等を挙げることができる。
【0229】
凍結防止剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類等を挙げることができる。
【0230】
固結防止剤としては、例えば、デンプン、アルギン酸、マンノース、ガラクトース等の多糖類;ポリビニルピロリドン、ホワイトカーボン、エステルガム、石油樹脂等を挙げることができる。
【0231】
崩壊剤としては、例えば、トリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、ステアリン酸金属塩、セルロース粉末、デキストリン、メタクリル酸エステルの共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアミノカルボン酸キレート化合物、スルホン化スチレン・イソブチレン・無水マレイン酸共重合体、デンプン・ポリアクリロニトリルグラフト共重合体等を挙げることができる。
【0232】
分解防止剤としては、例えば、ゼオライト、生石灰、酸化マグネシウムのような乾燥剤;フェノール系、アミン系、硫黄系、リン酸系等の酸化防止剤;サリチル酸系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0233】
防腐剤としては、例えば、ソルビン酸カリウム、1,2-ベンゾチアゾール-3(2H)-オン等があげられる。
【0234】
植物片としては、例えば、おがくず、やしがら、トウモロコシ穂軸、タバコ茎等があげられる。
【0235】
一方、本発明の有害生物防除剤において、上記添加成分を含有させる場合、その含有割合については、質量基準で、固体担体又は液体担体等の担体では通常5~95%、好ましくは20~90%の範囲で選ばれ、界面活性剤では通常0.1%~30%、好ましくは0.5~10%の範囲で選ばれ、その他の添加剤は0.1~30%、好ましくは0.5~10%の範囲で選ばれる。
【0236】
本発明の有害生物防除剤は、粉剤、粉粒剤、粒剤、水和剤、水溶剤、顆粒水和剤、錠剤、ジャンボ剤、乳剤、油剤、液剤、フロアブル剤、エマルジョン剤、マイクロエマルジョン剤、サスポエマルジョン剤、微量散布剤、マイクロカプセル剤、くん煙剤、エアロゾル剤、ベイト剤、ペースト剤等の任意の剤型に製剤化して使用される。
【0237】
これらの製剤の実際の使用に際しては、そのまま使用するか、又は、水等の希釈剤で所定濃度に希釈して使用することができる。本発明の化合物を含有する種々の製剤又はその希釈物の施用は、通常一般に行われている施用方法、即ち、散布(例えば、噴霧、ミスティング、アトマイジング、散粉、散粒、水面施用、箱施用等)、土壌施用(例えば、混入、潅注等)、表面施用(例えば、塗布、粉衣、被覆等)、種子処理(例えば、塗沫、粉衣処理等)、浸漬、毒餌、くん煙施用等により行うことができる。又、家畜に対して前記有効成分を飼料に混合して与え、その排泄物での有害虫、特に有害昆虫の発生、成育を防除することも可能である。
【0238】
本発明の有害生物の防除方法は、前記した施用方法で本発明の化合物(2-a)で表される複素環化合物又はその農業上許容される塩の有効成分量を使用することにより行うことができる。
【0239】
本発明の有害生物防除剤における有効成分の配合割合(質量%)については、必要に応じて適宜選ばれる。例えば、粉剤、粉粒剤、微粒剤等とする場合は0.01~20%、好ましくは0.05~10%の範囲から適宜選ぶのがよく、粒剤等とする場合は0.1~30%、好ましくは0.5~20%の範囲から適宜選ぶのがよく、水和剤、顆粒水和剤等とする場合は1~70%、好ましくは5~50%の範囲から適宜選ぶのがよく、水溶剤、液剤等とする場合は1~95%、好ましくは10~80%の範囲から適宜選ぶのがよく、乳剤等とする場合は5~90%、好ましくは10~80%の範囲から適宜選ぶのがよく、油剤等とする場合は1~50%、好ましくは5~30%の範囲から適宜選ぶのがよく、フロアブル剤等とする場合は5~60%、好ましくは10~50%の範囲から適宜選ぶのがよく、エマルジョン剤、マイクロエマルジョン剤、サスポエマルジョン剤等とする場合は5~70%、好ましくは10~60%の範囲から適宜選ぶのがよく、錠剤、ベイト剤、ペースト剤等とする場合は、1~80%、好ましくは5~50%の範囲から適宜選ぶのがよく、くん煙剤等とする場合は、0.1~50%、好ましくは1~30%の範囲から適宜選ぶのがよく、エアロゾル剤等とする場合は、0.05~20%、好ましくは0.1~10%の範囲から適宜選ぶのがよい。
【0240】
これらの製剤は、適当な濃度に希釈して散布するか、又は、直接施用する。
【0241】
本発明の有害生物防除剤の施用は、希釈剤で希釈して使用する場合には、一般に0.1~5000ppmの有効成分濃度で行う。製剤をそのまま使用する場合の単位面積あたりの施用量は、有効成分化合物として1ha当り0.1~5000gで使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0242】
尚、本発明の有害生物防除剤は、本発明の化合物を単独で有効成分としても十分有効であることはいうまでもないが、必要に応じて他の肥料、農薬、例えば、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、共力剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、誘引剤、除草剤、植物生長調整剤などと混用、併用することができ、この場合に一層優れた効果を示すこともある。
【0243】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されない。
【0244】
本明細書中、実施例、比較例及び参考例の各物性と収率の測定には、次の機器及び条件を用いた。加えて、当業者に知られた常法により同定された。
【0245】
(HPLC分析:高速液体クロマトグラフィー分析)
(HPLC分析条件)
機器:株式会社島津製作所製LC2010シリーズ又はこれに準ずるもの
カラム:YMC-Pack, ODS-A, A-312 (150mmx6.0mmID, S-5μm, 120A)
溶離液:
【0246】
【表1】
【0247】
流速:1.0 ml/min
検出:UV 230nm
カラム温度:40℃
注入量:5 μL
【0248】
HPLC分析方法に関しては、必要に応じて、以下の文献を参照することができる。
文献(a):(社)日本化学会編、「新実験化学講座9 分析化学 II」、第86~112頁(1977年)、発行者 飯泉新吾、丸善株式会社
文献(b):(社)日本化学会編、「実験化学講座20-1 分析化学」第5版、第130~151頁(2007年)、発行者 村田誠四郎、丸善株式会社
【0249】
(LC-MS:液体クロマトグラフ質量分析)
ポンプ:Agilent 1260 Infinity,検出器:Agilent 6120 Quadropole,カラム:CERI L-column ODS(4.6×250mm),L-C18,5μm,12nm
【0250】
H核磁気共鳴スペクトル(H-NMR))
Varian Mercury-300
溶媒:CDCl及び/又はDMSO-d
内部基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
(pHの測定方法)
pHはガラス電極式水素イオン濃度指示計により測定した。ガラス電極式水素イオン濃度指示計としては、例えば、東亜ディーケーケー株式会社製、形式:HM-30Pが使用できる。
(融点の測定方法)
DSC示差走査熱量計により測定した。示差走査熱量分析は、機種:DSCvesta(株式会社リガク社製)を用いて、10~200℃の温度範囲において10℃/minの加熱速度で行われた。示差走査熱量測定方法に関しては、必要に応じて、以下の文献を参照することができる。
(a):(社)日本化学会編、「第4版実験化学講座4 熱、圧力」、第57~93頁(1992年)、発行者 海老原熊雄、丸善株式会社
(b):(社)日本化学会編、「第5版実験化学講座6 温度・熱、圧力」、第203~205頁(2005年)、発行者 村田誠四郎、丸善株式会社
【0251】
(収率及び純度)
特に指定しない限り、本発明における収率は、原料化合物(出発化合物)のモル数に対する、得られた目的化合物のモル数から計算することができる。
すなわち、用語「収率」は、「モル収率」を意味する。
従って、収率は、以下の式により表される:
収率(%)=(得られた目的化合物のmol数)/(出発化合物のmol数)×100
【0252】
しかしながら、例えば、目的物の反応収率、不純物の収率、及び生成物の純度等の評価においては、HPLC面積百分率分析又はGC面積百分率分析を用いてもよい。
【0253】
本明細書中、室温及び常温は10℃から30℃である。
【0254】
本明細書中、用語「一晩(over night)」は、8時間から16時間を意味する。
【0255】
本明細書中、「熟成(age/aged/aging)」の操作は、当業者に知られた常法により、混合物が撹拌されていることを含む。
【実施例
【0256】
[実施例1]
(工程ii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルチオ]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物4-a、ISFP)の製造
【0257】
【化29】
【0258】
窒素気流下、反応フラスコに1,2-ビス[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチル]ジスルフィド(2-a、ジスルフィド化合物、0.12g、純度:89%、0.20mmol、2-aとして100mol%、ピラゾール部分として200mol%)を加え、ジメチルホルムアミド0.99mlに溶解した。混合物に3-クロロ-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a、CIO、0.34g、純度:25%、0.64mmol、310mol%、メタノール0.26gを含む)、炭酸カリウム(0.22g、1.6mmol、780mol%)及びロンガリット水溶液(0.43g、純度:28%、0.78mmol、380mol%、水0.31gを含む)を順次加え、50℃で5時間30分間撹拌した。
反応混合物のHPLC分析の結果、目的生成物である、3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルチオ]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物4-a、ISFP)は、64%(HPLC面積百分率;230nm)であった。
【0259】
[実施例2]
(工程ii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルチオ]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物4-a、ISFP)の製造
【0260】
【化30】
【0261】
窒素気流下、反応フラスコに1,2-ビス[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチル]ジスルフィド(2-a、ジスルフィド化合物、0.10g、純度:98%、0.188mmol、2-aとして100mol%、ピラゾール部分として200mol%)を加え、ジメチルホルムアミド0.80mlに溶解した。炭酸カリウム(0.106g、0.767mmol、409mol%)、水硫化ナトリウム(0.026g、純度:65%、0.30mmol、160mol%)及びロンガリット水溶液(0.467g、純度:13%、0.394mmol、210mol%、水0.406gを含む)を順次加え、室温で2時間撹拌した。混合物に3-クロロ-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a、CIO、0.267g、純度:23%、0.450mmol、240mol%、ジメチルホルムアミド0.207gを含む)を加え、50℃でさらに5時間撹拌した。
反応混合物のHPLC分析の結果、目的生成物である、3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルチオ]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物4-a、ISFP)は、69%(HPLC面積百分率;230nm)であり、収率は53%(HPLC絶対検量線法)であった。
【0262】
[実施例3]
(工程ii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルチオ]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物4-a)の製造
【0263】
【化31】
窒素気流下、反応フラスコに1,2-ビス[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチル]ジスルフィド(2-a、ジスルフィド化合物、0.10g、純度:98%、0.19mmol、2-aとして100mol%、ピラゾール部分として200mol%)を加え、エタノール0.66mlに溶解した。水酸化ナトリウム水溶液(0.120g、純度:25%、0.750mmol、400mol%、水0.090gを含む)及び水素化ホウ素ナトリウム(0.043g、1.1mmol、600mol%)を室温で順次加え、室温で2時間撹拌した。混合物に3-クロロ-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a、CIO、0.241g、純度:25%、0.451mmol、240mol%、メタノール0.181gを含む)を加え、室温でさらに25時間撹拌した。
反応混合物のHPLC分析の結果、目的生成物である、3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルチオ]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物4-a、ISFP)は、73%(HPLC面積百分率;230nm)であり、収率は57%(HPLC絶対検量線法)あった。
【0264】
[実施例4]
1,2-ビス[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチル]ジスルフィド(2-a-ジスルフィド化合物)の製造
【0265】
(原料1-aの調製)
【0266】
【化32】
【0267】
窒素気流下、反応フラスコに5-ジフルオロメトキシ-4-ヒドロキシメチル-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール(FMTP、9.86g、純度:97%、38.9mmol、100mol%)を加え、アセトニトリル16.0mlに溶解した。混合物に塩化チオニル(5.35g、45mmol、116mol%)を内温15~20℃で25分間かけて滴下し、内温20℃~25℃に保ちながら1時間30分間撹拌した。
窒素ガスを1時間バブリングさせた後、酢酸エチル40mlで希釈した。混合物を炭酸ナトリウム水溶液30ml、水30ml及び飽和食塩水30mlで順次洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた有機層を減圧留去し、4-クロロメチル-5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール(1-a、CMTP、11.14g、純度:92%、38.7mmol、ほぼ定量的)を黄色油状物質として得た。
【0268】
(工程i)、(工程i-b)
【0269】
【化33】
反応フラスコに4-クロロメチル-5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール(1-a、CMTP、7.94g、純度:92%、27.5mmol、100mol%)を加え、エタノール17.5mlに溶解した。混合物にチオ尿素(2.33g、30.6mmol、111mol%)を加え、内温50℃で3時間撹拌した。
混合物から溶媒を減圧留去して得た油状物質に対し、ヘキサン-酢酸エチル混合溶媒(9:1)を加えて結晶化を行った。得た結晶をヘキサン-酢酸エチル混合溶媒(4:1)で洗浄後、ろ取し、[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチル]チオカルボキサミジン塩酸塩(TMTP-HCl、9.46g、チオ尿素を含む)を淡黄色結晶として得て、そして得られた9.46gのうち8.52gを次の反応に用いた。
反応フラスコに上記の[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチル]チオカルボキサミジン塩酸塩(8.52g、チオ尿素を含む)を加え、アセトニトリル17.1mlに溶解した。混合物に48%水酸化ナトリウム水溶液(4.20g、50.4mmol)を内温15~20℃で15分間かけて滴下し、室温で3時間撹拌した。48%水酸化ナトリウム水溶液(1.40g、16.8mmol)を追加した後、さらに室温で3時間撹拌した。
混合物のアセトニトリル層を、別のアセトニトリル22.9mlを用いてデカンテーションにより別の反応フラスコに移した後、得られたアセトニトリル溶液に水3.30mlを加え、36%塩酸を滴下してpH6.02とした。35%過酸化水素水(1.01g、10.4mmol)を内温17~19℃で15分間かけて滴下し、内温19~21℃で1時間撹拌した。水を加え、トルエンで抽出した後、チオ硫酸ナトリウム水溶液、続いて飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。
得られた有機層を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1~1:1)で精製し、無色結晶4.14gを得た。その結晶2.07gに対し、ヘキサン―酢酸エチル混合溶媒(9:1)により再結晶を行い、ジスルフィド化合物1.07gを無色針状結晶として得た。ろ液を減圧濃縮して得た結晶をヘキサン―酢酸エチル混合溶媒(9:1)で洗浄し、ジスルフィド化合物0.23gを無色結晶として得た。さらに、残りの結晶2.07gをヘキサン-酢酸エチル混合溶媒(9:1)で洗浄し、ジスルフィド化合物1.30gを無色結晶として得た。ジスルフィド化合物を合計2.60g(純度:97%、4.83mmol、収率39%(1-a、CMTPから3工程))得た。
【0270】
(ジスルフィド化合物のH-NMRシフト)
H-NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm,TMS基準):6.66(t,J=71.7Hz,2H),3.82(s,6H),3.79(s,4H)
【0271】
(ジスルフィド化合物の融点)
融点:72.5℃
【0272】
(LC-MS分析)
ジスルフィド化合物:M+H=523.05
【0273】
[実施例5]
(工程i)、(工程i-a)
1,2-ビス[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチル]ジスルフィド(2-a、ジスルフィド化合物)の製造
【0274】
【化34】
窒素気流下、反応フラスコに硫化ナトリウム(0.121g、1.55mmol、157mol%)、硫黄(0.018g、0.56mmol、57mol%)、水0.36mlを加え、内温50℃で40分間撹拌した。室温まで放冷した後、4-クロロメチル-5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール(1-a、CMTP)のクロロホルム溶液(0.90g、純度:29%、0.99mmol、クロロホルム0.62gを含む、100mol%)を40分間かけて滴下し、室温で15時間30分間撹拌した。
反応混合物のHPLC分析の結果、目的生成物である、ジスルフィド化合物(2-a)は、46.9%(HPLC面積百分率;230nm)であった。
反応混合物をLC-MSにより分析したところ、ジスルフィド化合物に加えて、トリスルフィド化合物が確認された。
【0275】
(LC-MS分析)
ジスルフィド化合物:M+H=523.05;トリスルフィド化合物:M+H=555.05
【0276】
【化35】
【0277】
[実施例6]
(工程i)、(工程i-a)
1,2-ビス[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチル]ジスルフィド(2-a、ジスルフィド化合物)の製造
【0278】
【化36】
窒素気流下、反応フラスコに硫黄(0.008g、0.25mmol、50mol%)、水0.81ml、硫化ナトリウム(0.029g、0.37mmol、74mol%)を順次加え、50℃で1時間撹拌した。室温まで放冷した後、4-クロロメチル-5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾールのジメチルホルムアミド溶液(1-a、CMTP、0.885g、純度:15%、0.50mmol、ジメチルホルムアミド0.752gを含む、100mol%)を1時間かけて滴下し、室温で1時間30分撹拌した。
反応混合物のHPLC分析の結果、目的生成物である、ジスルフィド化合物は、94%(HPLC面積百分率;230nm)であり、収率は87%(HPLC絶対検量線法)であった。
【0279】
[実施例7]
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0280】
【化37】
【0281】
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)の酢酸ブチル溶液(87.2g、純度:41%、100mmol、100mol%、酢酸ブチル51.3g(0.6L/mol)を含む)、水10ml(0.1L/mol)及びタングステン酸ナトリウム二水和物(1.6g、5mmol、5mol%)を加えた。混合物を内温70℃~80℃に加温した。そこに35%過酸化水素水溶液(27.2g、280mmol、280mol%、水17.7g(0.2L/mol)を含む)を内温70℃~80℃で1時間かけて滴下し、混合物を内温75℃~80℃に保ちながら7時間熟成した。
反応混合物に20%亜硫酸ナトリウム水溶液(31.5g、50mmol、50mol%)を加え、混合物を内温60℃~70℃で30分間撹拌した。得られた混合物を有機層と水層に分離した。得られた有機層に水50ml(0.5L/mol)を加え、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物にイソプロパノール133.5ml(1.7L/mol)を加え、室温で結晶を濾別した。得られた結晶をイソプロパノール12.4ml(0.2L/mol)及び水10ml(0.1L/mol)で順次洗浄した。その結果、収率93%で目的物(化合物5-a)の結晶を得た。
H-NMR値(CDCl/TMS δ(ppm)):6.83(1H,t,J=71.9Hz)、4.60(2H,s)、3.88(3H,s)、3.11(2H,s)、1.52(6H,s)
【0282】
[実施例8]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0283】
反応式は実施例7と同じである。
【0284】
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)(3.05g、純度:100%、8.5mmol、100mol%)、メタノール6.7g(1.0L/mol))、水0.9ml(0.1L/mol)及びタングステン酸ナトリウム二水和物(0.084g、0.3mmol、3mol%)、硫酸(0.087g、0.85mmol、10mol%)を加えた。混合物を内温65℃~70℃に加温した。そこに35%過酸化水素水溶液(4.13g、42.5mmol、500mol%、水2.7g(0.3L/mol)を含む)を内温65℃~70℃で1時間かけて滴下し、混合物を内温65℃~70℃に保ちながら6時間熟成した。
反応混合物にアセトニトリルを加え均一とした。HPLC外部標準法により分析した結果、収率96%で目的物(5-a)を得た。
【0285】
[実施例9]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0286】
反応式は実施例7と同じである。
【0287】
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)のアセトニトリル溶液(86.2g、純度:42%、100mmol、100mol%、アセトニトリル50.3g(0.6L/molを含む))、水10ml(0.1L/mol)及びタングステン酸ナトリウム二水和物(1.6g、5mmol、5mol%)を加えた。混合物を内温70℃~80℃に加温した。そこに35%過酸化水素水溶液(24.3g、250mmol、250mol%、水15.8g(0.2L/mol)を含む)を内温70℃~80℃で1時間かけて滴下し、混合物を内温75℃~80℃に保ちながら5時間熟成した。
反応混合物に20%亜硫酸ナトリウム水溶液(31.5g、50mmol、50mol%)を加え、混合物を内温60℃~70℃で30分間撹拌した。得られた混合物を有機層と水層に分離した。得られた有機層に水50ml(0.5L/mol)を加え、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物にイソプロパノール117.8ml(1.5L/mol)を加え、室温で結晶を濾別した。得られた結晶をイソプロパノール12.4ml(0.2L/mol)及び水10ml(0.1L/mol)で順次洗浄した。その結果、収率95%で目的物(化合物5-a)の結晶を得た。
【0288】
[実施例10]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0289】
反応式は実施例7と同じである。
【0290】
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)(0.9g、純度:100%、2.5mmol、100mol%、)、ジメチルホルムアミド2mL(0.8L/mol)及びタングステン酸ナトリウム二水和物(41mg、0.125mmol、5mol%)を加えた。混合物を内温75℃~80℃に加温した。そこに35%過酸化水素水溶液(0.85g、8.75mmol、300mol%、水0.55g(0.2L/mol)を含む)を加え6時間熟成した。
この時点で分析した結果、目的物(5-a)は、97%(HPLC面積百分率;230nm)であった。
[実施例11]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0291】
反応式は実施例7と同じである。
【0292】
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)(100.1g、純度:35%、100mmol、100mol%、2-プロパノール62.5g(0.8L/mol)を含む))、水10ml(0.1L/mol)及びモリブデン酸アンモニウム四水和物(1.23g、1mmol、1mol%)を加えた。混合物を内温75℃~80℃に加温した。そこに35%過酸化水素水溶液(29.2g、300mmol、300mol%、水12.8g(0.12L/mol)を含む)を内温75℃~80℃で1時間かけて滴下し、混合物を内温75℃~80℃に保ちながら5時間熟成した。さらに、35%過酸化水素水溶液(19.5g、200mmol、200mol%、水19g(0.19L/mol)を含む)を滴下し、混合物を内温75℃~80℃に保ちながら5時間熟成した。
反応混合物を撹拌し室温まで冷却し、室温で結晶を濾別した。得られた結晶をイソプロパノール10ml(0.1L/mol)及び水10ml(0.1L/mol)で順次洗浄した。その結果、収率93%で目的物(5-a)の結晶を得た。
【0293】
次に、以上のようにして製造された本発明の複素環化合物又はその農業上許容される塩を使用した、本発明の有害生物防除剤の製剤例について具体的に説明する。但し、化合物、添加剤の種類及び配合比率は、これのみに限定されることなく広い範囲で変更可能である。又、以下の説明において「部」は質量部を意味する。
【0294】
[実施例12]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0295】
反応式は実施例7と同じである。
【0296】
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)(0.90g、純度:100%、2.5mmol、100mol%)、酢酸(2.69g、44.8mmol、1790mol%、1.0L/mol)、タングステン酸ナトリウム二水和物(0.025g、0.075mmol、3mol%)を加えた。そこに30%過酸化水素水溶液(0.71g、6.25mmol、250mol%、水0.50g(0.2L/mol)を含む)を内温50℃~55℃で20分かけて滴下した。混合物を内温50℃~55℃で攪拌し、2時間熟成したところで、結晶が析出し、混合物は懸濁液となった。さらに2時間、内温50℃~55℃で熟成した。反応混合物にアセトニトリルを加え均一な溶液にした。HPLC外部標準法による分析の結果、目的物(5-a)の収率は90.0%であった。
【0297】
[実施例13]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0298】
反応式は実施例7と同じである。
【0299】
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)(3.05g、純度:100%、8.5mmol、100mol%)、酢酸(17.7g、295mmol、3470mol%、2L/mol)、タングステン酸ナトリウム二水和物(0.084g、0.26mmol、3mol%)を加えた。そこに35%過酸化水素水溶液(2.48g、25.5mmol、300mol%、水1.6g(0.2L/mol)を含む)を内温25℃~30℃で1時間かけて滴下した。混合物を内温25℃~30℃で攪拌し、24時間熟成した。反応混合物にアセトニトリルを加え均一な溶液にした。HPLC外部標準法による分析の結果、目的物(5-a)の収率は93.0%であった。
【0300】
[実施例14]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0301】
反応式は実施例7と同じである。
【0302】
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)(0.90g、純度:100%、2.5mmol、100mol%)、アセトニトリル2.94g(1.5L/mol)、硫酸(0.77g、7.50mmol、300mol%)、35%過酸化水素水溶液(0.81g、7.12mmol、285mol%、水0.57g(0.2L/mol)を含む)を加え、75℃で攪拌し、6時間熟成した。反応混合物にアセトニトリルを加え、反応混合物を均一な溶液に溶解した。HPLC外部標準法により分析した結果、収率86%で目的物(5-a)を得た。
【0303】
[実施例15]
アセトニトリルの量を0.5L/molに、硫酸の量を50mol%に、及び熟成時間を18時間に変更した以外は、実施例14と同じように反応と分析を行った。分析の結果、収率90%で目的物(5-a)を得た。
【0304】
[実施例16]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0305】
反応式は実施例7と同じである。
【0306】
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)(0.90g、純度:100%、2.5mmol、100mol%)、トルエン2.94g(1.5L/mol)、硫酸(0.77g、7.50mmol、300mol%)、30%過酸化水素水溶液(0.81g、7.12mmol、285mol%、水0.57g(0.2L/mol)を含む)を加え、75℃で攪拌し、15時間熟成した。反応混合物にアセトニトリルを加え、反応混合物を均一な溶液に溶解した。HPLC外部標準法により分析した結果、収率91%で目的物(5-a)を得た。
【0307】
[実施例17]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0308】
反応式は実施例7と同じである。
【0309】
フラスコに化合物(4-a)8.98g、純度:100%、25.0mmol、100mol%)、アセトニトリル29.6g(1.5L/mol)、硫酸(7.51g、75.0mmol、300mol%)、35%過酸化水素水溶液(6.92g、71.3mmol、285mol%、水4.50g(0.18L/mol)を含む)を氷浴中で混合した。混合液を全量シリンジに充填し、シリンジポンプにて0.2mL/分で移送した。移送された混合物は、80℃のオイルバス中に沈めた内管径2.4mm、長さ15mのテフロン製管内を通過し、別のフラスコ内に貯めていった。流通開始から2時間後の時点の反応混合物を分取し、分析したところ、目的物(5-a)は90%(HPLC面積百分率;230nm)であった。さらに流通を継続し4時間後の時点の反応液を分取し、分析したところ、目的物(5-a)は95%(HPLC面積百分率;230nm)であった。
【0310】
[実施例18]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0311】
反応式は実施例7と同じである。
【0312】
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)(0.90g、純度:100%、2.5mmol、100mol%)、酢酸3.93g(1.5L/mol))、30%過酸化水素水溶液(0.81g、7.12mmol、285mol%、水0.57g(0.2L/mol)を含む)を加え、50℃で攪拌し12時間熟成した。反応混合物にアセトニトリルを加え、反応混合物を均一な溶液に溶解した。HPLC外部標準法により分析した結果、収率94%で目的物(5-a)を得た。
【0313】
[実施例19]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0314】
反応式は実施例7と同じである。
【0315】
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)(0.90g、純度:100%、2.5mmol、100mol%)、ジクロロ酢酸(5.85g、45.4mmol、1815mol%、1.5L/mol)、35%過酸化水素水溶液(0.69g、7.13mmol、285mol%、水0.45g(0.18L/mol)を含む)を加え、内温50℃~55℃で攪拌し、1時間熟成した。反応開始から反応終了まで混合物は均一であった。反応混合物にアセトニトリルを加えた。HPLC外部標準法により分析した結果、収率88%で目的物(5-a)を得た。
【0316】
[実施例20]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0317】
反応式は実施例7と同じである。
【0318】
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)(0.90g、純度:100%、2.5mmol、100mol%)、トリクロロ酢酸(3.79g、23.2mmol、929mol%、0.93L/mol)、35%過酸化水素水溶液(0.69g、7.13mmol、285mol%、水0.45g(0.18L/mol)を含む)を加え、内温50℃~55℃で攪拌し、1時間熟成した。反応開始から反応終了まで混合物は均一であった。反応混合物にアセトニトリルを加えた。HPLC外部標準法により分析した結果、収率91%で目的物(5-a)を得た。
【0319】
[実施例21]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0320】
反応式は実施例7と同じである。
【0321】
フラスコに化合物(4-a)(3.59g、純度:100%、10.0mmol、100mol%)、アセトニトリル7.88g(1.0L/mol)、トリフルオロ酢酸(3.42g、30.0mmol、300mol%)、35%過酸化水素水溶液(2.77g、28.5mmol、285mol%、水1.80g(0.18L/mol)を含む)を室温で混合した。混合液をプランジャーポンプにて0.1mL/分で移送した。移送された混合液は、90℃の湯浴中に沈められた内管径4mm、長さ3.6mmの管内を通過し、別のフラスコ内に貯めていった。流通開始から2時間後の時点の反応混合物を分取し、分析したところ、目的物(5-a)は91%(HPLC面積百分率;230nm)であった。
【0322】
[実施例22]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0323】
反応式は実施例7と同じである。
【0324】
反応フラスコに化合物(4-a)(0.90g、純度:100%、2.5mmol、100mol%)をアセトニトリル3.14g(1.6L/mol)で溶解し、温度50-60℃で攪拌した。そこに0.6М炭酸カリウム水溶液2ml(0.8L/mol、48mol%)と35%過酸化水素水溶液(1.22g、12.5mmol、500mol%、水0.79g(0.3L/mol)を含む)を5時間かけて同時に滴下した後、60℃で撹拌し1時間熟成した。反応混合物にアセトニトリルを加え、反応混合物を均一な溶液に溶解した。HPLC外部標準法により分析した結果、収率82%で目的物(5-a)得た。
【0325】
[実施例23]
過酸化水素の量を350mol%に、過酸化水素の滴下時間を1時間に、炭酸カリウム(48mol%)を炭酸水素ナトリウム(36mol%)に変更した以外は、実施例19と同じように反応と分析を行った。分析の結果、収率91%で目的物(5-a)を得た。
【0326】
[実施例24]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0327】
反応式は実施例7と同じである。
【0328】
窒素気流下、反応フラスコに化合物(4-a)(0.90g、純度:100%、2.5mmol、100mol%)、アセトニトリル2.94g(1.5L/mol)、硫酸(0.023g、0.225mmol、9mol%)、30%過酸化水素水溶液(0.81g、7.12mmol、285mol%、水0.57g(0.2L/mol)を含む)を加え、75℃で攪拌し、6時間熟成した。
その後、反応混合物を室温まで冷却し、この時のpHは-0.05であった。
【0329】
反応混合物を室温下で攪拌しながら、30%過酸化水素水溶液(0.61g、5.37mmol、215mol%、水0.43g(0.17L/mol)を含む)、0.6M炭酸カリウム水溶液(3.0g、1.80mmol、72mol%) を加え、室温下で攪拌し、0.5時間熟成した。このときのpHは9.31であった。反応混合物にアセトニトリルを加え、反応混合物を均一な溶液に溶解した。HPLC外部標準法により分析した結果、収率80%で目的物(5-a)を得た。
【0330】
[実施例25]
(工程iii)
3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール(化合物5-a)の製造
【0331】
反応式は実施例7と同じである。
【0332】
反応フラスコに化合物(4-a)(0.45g、純度:100%、1.25mmol、100mol%)、アセトニトリル0.83g(0.85L/mol)、水3.19g(2.55L/mol)、45%過硫酸水素カリウム(1.88g、1.38mmol、110mol%)を加え、80℃で攪拌し、3時間熟成した。目的物(5-a)は、この時点で95.7%(HPLC面積百分率;230nm)であった。
【0333】
[製剤例1] 水和剤
本発明化合物式(2-a) 10部
ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩 0.5部
ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル 0.5部
珪藻土 24部
クレー 65部
以上を均一に混合粉砕して水和剤とした。
【0334】
次に本発明の有害生物防除剤の奏する効果について、試験例をもって説明する。
[試験例1]オオタバコガ殺虫活性試験
製剤例1に準じて調製した水和剤を、有効成分として500ppmの濃度に水で希釈した。その薬液にキャベツ葉を浸漬し、風乾後、プラスチックカップに入れた。その中にオオタバコガ孵化幼虫5頭を放ち、蓋をした。その後、25℃の恒温室に置き、6日後に死虫数を調査し、数1の計算式により補正死虫率を求めた。試験は2連制で行った。
【0335】
【数1】
【0336】
本発明化合物式(2-a)は、この試験により75%の補正死虫率を示した。
一方、米国特許第3,350,407号明細書に記載のジ[(ピラゾール-3-イル)メチル]ジスルフィド化合物(式A)を用いて同じ試験を行った結果、その補正死虫率は44%であった。同時に、本発明の化合物(2-a)の再試験を行い、この試験により89%の補正死虫率を示した。
その結果、本発明の化合物(2-a)は、式(A)の化合物より高い防除活性を示した。
【0337】
(式Aの化合物のH-NMRシフト)
H-NMR値(CDCl/TMS δ(ppm)):7.68(2H,s)、5.96(2H,s)、3.80(4H,s)、2.29(6H,s)
(比較化合物の融点)
融点:79.7℃
【0338】
本発明の化合物は、有害生物に対して防除活性を有し、有害生物防除剤の有効成分として有用である。
【0339】
本明細書に記載のすべての出版物、特許、及び特許出願は、本明細書の説明に関連して使用される可能性のある、当該出版物、特許、及び特許出願に記載されている方法を説明及び開示する目的のために、参照により本明細書にその全体が完全に組み込まれる。本発明の開示を理解又は完了するために必要な程度まで、本明細書に記載の全ての刊行物、特許、及び特許出願が、各々が個々に組み入れられたかのように同程度まで、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。上記及び本明細書全体で論じられているすべての出版物、特許、及び特許出願は、本出願の出願日前の開示のためにのみ提供されている。
【0340】
本明細書に記載されるのと同様又は等価ないずれの方法及び試薬も、本発明の方法及び実施において用いることができる。従って、本発明は、前記の説明によって制約されるものではなく、しかし特許請求の範囲及びその均等物によって定義されることを意図するものである。それら均等物は添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内に入る。


【要約】
式(2)の化合物とその用途。式(2)の化合物は有害生物防除剤として有用である。さらに、式(2)の化合物は除草剤、とりわけピロキサスルホンの製造中間体として有用である。

【選択図】なし