(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】半連続的に多段階で化合物を製造するための装置および処理
(51)【国際特許分類】
C01B 32/194 20170101AFI20230224BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20230224BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20230224BHJP
C23C 16/26 20060101ALI20230224BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20230224BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230224BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
C01B32/194
C01B32/05
C01B33/02 Z
C23C16/26
C23C16/455
H01M4/36 A
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
(21)【出願番号】P 2017554517
(86)(22)【出願日】2016-04-12
(86)【国際出願番号】 US2016027140
(87)【国際公開番号】W WO2016168199
(87)【国際公開日】2016-10-20
【審査請求日】2019-04-01
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-14
(32)【優先日】2015-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503060684
【氏名又は名称】ヘムロック・セミコンダクター・オペレーションズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ジュンビン
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】正 知晃
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0282527(US,A1)
【文献】特表2014-518835(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0236575(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0160191(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
C01B 33/00-33/193
H01M 4/36
H01M 4/38
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物を製造する方法であって、
第1の反応装置内の第1の
グラフェン基板上に、制御され
たシリコン導入を行うステップと、
前記制御され
たシリコン導入を行うステップにより生成されたシリコン-
グラフェン化合物を、前記第1の反応装置から貯蔵器に移動するステップと、
前記シリコン-
グラフェン化合物が前記貯蔵器内で冷却されている間に、前記
第1の反応装置内
で第2の
グラフェン基板上に、制御され
たシリコン導入を行うステップと、
さらなるシリコン導入行うために、前記貯蔵器内のシリコン-
グラフェン化合物を、第2の反応装置に移動するステップ、または、最終製造物を得るために
、前記貯蔵器内のシリコン-グラフェン化合物を冷却するステップと、
を備え
、
前記第1及び第2の反応装置のそれぞれは、化学蒸着処理または熱蒸着処理をおこなう流動層反応装置である方法。
【請求項2】
前記
第1の反応装置からのシリコン-
グラフェン化合物は、
前記移動中に、
または、前記貯蔵器内で、集塊破壊および再混合され、
その後、さらなるシリコン導入を行うために、前記第2の反応装置に入る、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前
記シリコン-グラフェン化合物は、化学蒸着を用いて製造される、
請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前
記シリコン-グラフェン化合物は、熱蒸着を用いて製造される、
請求項
1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2015年4月12日に出願された米国仮特許出願第62/146,304号「半連続的に化合物を製造するための装置および処理」に基づく利益を主張する。該出願の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
一般に本技術は、リチウムイオン電池に関する。より具体的には本技術は、リチウムイオン電池のための改良されたアノード材料に使用されることのできる化合物材料を製造するための処理に関する。
【背景技術】
【0003】
再充電可能な電力源としてのリチウムイオン電池(LIBs)の利用は、家庭用電化製品、自動車およびエネルギー貯蔵に使われる有望な技術である。しかしながら、LIBsを家庭用電化製品、自動車およびエネルギー貯蔵などの応用に使用することには、大きな技術的課題がある。LIBsをさらに改良するためには、所望の性質を備える新たなカソード、アノードおよび電解質材料を開発する必要がある。
【0004】
シリコン―カーボン化合物は非常な大容量と長サイクル寿命を有するため、LIBsへの有望なアノード材料である。これらの材料を製造するための多数のアプローチの中でも、化学蒸着(CVD)処理を用いてシリコンをカーボンに導入することで、均一な材料構造と良好な性能とが得られる。最良の電池性能を得るためには、化合物中におけるシリコン対カーボンの比が、アノード全体で均一である必要がある。
【0005】
蒸着時間を制御し、材料中のシリコン対カーボン比を一定とするために、シリコンのカーボンへのCVDには、常にバッチタイプの反応装置、例えば流動層反応装置(FBR反応装置)、ロータリー反応装置、V-混合器などが用いられる。大で規模で実行された場合、バッチ処理は極めて非効率なものとなる。例えば、バッチ処理は冷却と再加熱とを必要とするため、長い停止時間が発生する。最終生成物が反応装置から除去され、新たな開始材料が装置に再導入できるようになる前に、各バッチの最後で装置は冷却(通常は室温まで)されなければならない。その後装置は、次のバッチ製造のための高温に再加熱される必要がある。従来技術における加熱、冷却および再加熱処理では、大量の(電気的)エネルギーが使用され、長い停止時間が発生する。
【0006】
多結晶シリコンは太陽電池のための原料であり、化学蒸着(CVD)処理によって製造される。このCVD処理において、シリコン含有プリカーサーがシリコン基板上で分解し、固体シリコンが形成される。いくつかの場合、シリコンのCVDはFBR反応装置内で実行される。
【0007】
CVD処理に基づくFBRによるポリシリコン製造は、本質的にはバッチ処理である従来のシーメンスタイプのCVD処理と比べ、高いスループットを実現する。この高スループットは、少なくとも部分的には、CVD処理により、シリコンプリカーサーの連続的供給、および、最終生成物の開始シリコン種からの連続的分離が実現されることによる。いくつかの実施形態では、シリコンプリカーサーガスは1つ以上のSiH4(モノシリコン)、Si2H6(ジシリコン)、Si3H8(トリシリコン)、SiH2Cl2(ジクロロシラン)、SiHCl3(トリクロロシラン)、SiH2Br2(ジブロモシラン)、SiHBr3(トリブロモシラン)、SiH2I2(ジヨードシラン)、SiHI3(トリヨードシラン)、SiI4(四ヨウ化ケイ素)を含んでよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
FBR-CVD処理では、シリコン含有プリカーサーの化学分解中に、小さなシリコン種がシリコン蒸着の基板として供給される。シリコン粒子の大きさは、シリコン蒸着により徐々に大きく成長する。大きなシリコン粒子と小さなシリコン種は粒子サイズと重さが異なるため、これらをFBR反応装置内で空気力学的に分離することができる。より大きなシリコン粒子ほどFBRチャンバの底部に落ち込み、チャンバから除去されることができるだろう。代替的にこれらの粒子は、ふるい分けにより、反応装置から除去され分離されてもよい。このような分離技術を用いたとしても、結果生成物は、蒸着中に反応装置内で著しく異なる滞留時間を経た粒子を含む。しかしながら、組成には変化がないため、これがポリシリコン生成物の実用性に影響することはない。シリコンのカーボン蒸着が著しく異なる蒸着時間を有する場合、シリコン対カーボン比に混在が生じるが、これはリチウムイオン電池のアノード材料として使用する場合、有害なものとなる。
【0009】
シリコン―カーボン化合物を製造するためのCVD処理には、ポリシリコン製造に使われる反応装置と同様のFRB反応装置を用いることができる。しかしながら、シリコン対カーボン比を一定に保つことと、最終生成物を開始カーボン粉末から分離することとにはさらなる課題がある。一般にシリコン―カーボン化合物系化合物は、形状、粒子サイズ、および密度が、開始カーボン粒子に類似している。従って、現在ポリシリコン製造用のFBR CVD処理で使われているものと同じ分離処理で、シリコン―カーボン化合物とカーボン粉末とを分離することは困難である。このような反応装置を連続モードで、すなわち継続的なグラファイト材料追加と連続的な生成物除去を行うモードで使用すると、シリコン対カーボン比が一定でない粗悪な生成物が生成されることとなる。シリコン―カーボン化合物製造に使用されるための、改良されたポリシリコン処理用FBR-CVD処理が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本技術は、流動層反応装置内で、化学蒸着処理により、半連続ベースでシリコン―カーボン化合物材料を製造する。開始材料と最終生成物とが同様の密度と形状を持つ化合物粒子を、半連続ベースで製造することを可能とする処理が開示される。半連続的処理および装置は、シリコン―カーボン化合物を製造してよく、シリコン粒子の過剰成長を防ぐために、カーボン材料中のシリコンの形状を早期に制御することができる。本技術により製造されるシリコン―カーボン化合物は、FBR-CVD処理により製造されるポリシリコンに対して、完全に異なる形状および性質を持つ。シリコン―カーボン化合物はまた、ポリシリコンと異なる応用がされる。
【0011】
高温流動層反応装置および処理により、シリコン(Si)化合物アノード材料が製造される。このシリコン(Si)化合物アノード材料は、リチウムイオン電池の比容量を、現在大半のリチウム電池で使われている一般的なグラファイトカソード材料(375mAh/gr)に比べ、著しく向上(2,000mAh/gr+)するために利用できる。シリコン粒子は装置内で、グラファイト/グラフェンベースの多層ナノプレートレットに蒸着および結合され、均一に埋め込まれる。その結果、安定的かつ商用的に拡張性のあるシリコン化合物アノード材料が形成される。このシリコン化合物アノード材料は、家庭用電化製品、電気自動車、および再生可能エネルギーのためのエネルギー貯蔵システムなどのリチウム電池に利用できる。本技術の装置、処理および材料は、エネルギー密度を劇的に改善し、セルのサイズおよび重量を縮小し、リチウム電池の均等化コストを低減する大きな可能性を示した。
【0012】
実施形態は、化合物を生成する方法を含んでよい。この方法は、反応装置内の第1のカーボン基板上に、制御された仕方でシリコン導入を行うステップを含んでよい。カーボン基板は、反応装置から貯蔵器に移動されてよい。第1のカーボン基板が貯蔵器内で冷却されている間に、反応装置内の第2のカーボン基板上に、制御された仕方でシリコン導入が行われてよい。
【0013】
実施形態は、化合物を生成する装置を含んでよい。この装置は、反応装置と、貯蔵器と、を備えてよい。反応装置は、第1のカーボン基板を生成するために、シリコン化学蒸着処理を行ってよい。貯蔵器は、第1のカーボン基板を受け入れ、第1のカーボン基板が貯蔵器内で冷却されている間、反応装置が、第2のカーボン基板を生成するために、第2のシリコン化学蒸着処理を行えるようにしてもよい。
【0014】
実施形態は、化合物構造を含んでよい。この化合物構造は、複数のグラフェン層と、複数のシリコン粒子と、を含んでよい。複数のグラフェン層は、2つ以上のギャップを形成してよい。ここでギャップの各々は、前記グラフェン層の、それぞれの上部グラフェン層と、それぞれの下部グラフェン層とによって形成される。複数のシリコン粒子は、複数のグラフェン層によって形成されたギャップの各々の内部に埋め込まれてよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】シリコン―カーボン化合物を製造するための装置を示すブロック図である。
【
図2】シリコン―カーボン化合物を生成する方法を示す図である。
【
図3】半連続的CVDプロセスを実行するための装置を示すブロック図である。
【
図4】半連続的蒸着処理を実行するための反応装置のブロック図である。
【
図5】複数段階の特性を備える容器を示すブロック図である。
【
図6】複数段階の特性を備える代替的な容器を示すブロック図である。
【
図7A】シリコングラフェンの微視的構造を示す図である。
【
図7B】シリコングラフェンの巨視的構造を示す図である。
【
図8A】FBR反応装置によって生成されたシリコン―グラフェン化合物の図である。
【
図8B】FBR反応装置によって生成された別のシリコン―グラフェン化合物を示す図である。
【
図9】本技術に用いるコンピュータ環境を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
高温流動層反応装置および処理により、シリコン(Si)化合物アノード材料が製造される。このシリコン(Si)化合物アノード材料は、リチウムイオン電池の比容量を、現在大半のリチウム電池で使われている一般的なグラファイトカソード材料(375mAh/gr)に比べ、著しく向上(2,000mAh/gr+)するために利用できる。シリコン粒子は装置内で、グラファイト/グラフェンベースの多層ナノプレートレットに蒸着および結合され、均一に埋め込まれる。その結果、安定的かつ商用的に拡張性のあるシリコン化合物アノード材料が形成される。このシリコン化合物アノード材料は、家庭用電化製品、電気自動車、および再生可能エネルギーのためのエネルギー貯蔵システムなどのリチウム電池に利用できる。本技術の装置、処理および材料は、エネルギー密度を劇的に改善し、セルのサイズおよび重量を縮小し、リチウム電池の均等化コストを低減する大きな可能性を示した。
【0017】
本技術は、流動層反応装置内で、化学蒸着処理または熱蒸着処理により、半連続ベースでシリコン―カーボン化合物材料を製造する。開始材料と最終生成物とが同様の密度と形状を持つ化合物粒子を、半連続ベースで製造することを可能とする処理が開示される。半連続的処理および装置は、シリコン―カーボン化合物を製造してよく、シリコン粒子の過剰成長を防ぐために、カーボン材料中のシリコンの形状を早期に制御することができる。本技術により製造されるシリコン―カーボン化合物は、FBR-CVD処理により製造されるポリシリコンに対して、完全に異なる形状および性質を持つ。シリコン―カーボン化合物はまた、ポリシリコンと異なる応用がされる。
【0018】
図1は、シリコン―カーボン化合物を製造するための装置のブロック図を示す。この装置は、流動層反応装置120と、貯蔵器150と、を含む。反応装置120は、反応ガス入口110と、ガス清浄入口115と、カーボン固体入口125と、流出ガス出口130と、反応装置120と貯蔵器150との間の接続機構135と、真空ライン140と、清浄ガス入口ライン145と、化合物出口160と、流動化ガス入口165と、シリコンプリカーサーガス入口170と、を含む。反応装置および貯蔵器は、シリコン―カーボン化合物を製造するための半連続的処理を実現してよく、得られるシリコン粒子の過剰成長を防ぐために、グラファイト/グラフェンおよびその誘導体中のシリコンの形状を制御してよい。
【0019】
反応装置120および貯蔵器150は、1つ以上のコンピュータ装置により、完全にまたは部分的に制御されてよい。反応装置120および貯蔵器150によって行われる処理のすべてまたは一部がコンピュータで制御されることにより、すべてが手動で行わる場合に比べ、処理はより正確かつより効率的なものとなる。
図1のシステムには示されていないが、反応装置120および貯蔵器150はいずれも、1つ以上のコンピュータと通信可能に接続され、該コンピュータによって制御される。さらに、
図2に関連して議論されるステップの各々は、反応装置120および貯蔵器150に結合された、および/または、これらを制御する、1つ以上のコンピュータによって実行および制御される。
【0020】
図2は、シリコン―カーボン化合物を生成するための方法を示す。この方法は、半連続ベースでシリコン―カーボン化合物を製造してよく、
図1の装置により実現されてよい。ステップ210で、カーボン粉末がFBR内に導入される。粉末は、カーボン固体入口125を通して、FERのチャンバ内に導入されてよい。
【0021】
ステップ215で、不活性ガスが供給されてよい。不活性ガスは、チャンバ内部の微量の空気を除去するために、流動化ガス入口165を通して供給されてよい。ステップ220で、FBRは、不活性ガスが流動中に加熱されてよい。加熱は、所望の温度、例えばセ氏800―1000度まで行われてよい。ステップ225で、不活性ガスの流率が増加されてよい。ガスの流率は、カーボン粉末が流動化され、安定な流動状態が得られるように、増加されてよい。
【0022】
ステップ230で、反応ガスがシリコンプリカーサーガスとともに導入される。反応ガスは、反応ガス入口110を通して導入される。シリコンプリカーサーガスは、シリコンプリカーサーガス入口170を通して導入される。これらの導入されたガスにより、シリコンガスプリカーサーは、固体シリコンに分解反応する。
【0023】
ステップ235で、反応が所定の時間発生する。反応は、シリコンの制御された仕方での導入および固体カーボン基板上での形状を得るために発生する。カーボン基板は、シリコン―カーボン化合物またはスズ―カーボン化合物を含んでよい。ステップ240で、反応ガスおよびシリコンプリカーサーガスが、FBRから除去される。ガスの除去は、反応ガスおよびシリコン含有ガスがFBRチャンバからすべて除去されるために十分な時間、反応ガスおよびシリコンプリカーサーガスが遮断されること含んでよい。ステップ245で、貯蔵器が、貯蔵器から空気を除去して清浄される。貯蔵器から空気を清浄するために、真空ライン140および清浄ガス入口ライン145が使われる。ステップ250で、化合物が、FBRから貯蔵器に移動される。化合物は、接続機構135を通して移動される。接続機構135は、チューブ、パイプ、またはその他の化合物のFBRから貯蔵器への移動を実現する構造を含んでよい。移動は、流出ガス出口を閉鎖し、真空ラインを通して蒸気を抜き、清浄ライン115および165からガスをパージすることによって実現される。
【0024】
ステップ255で、FBRは、次の使用のために設定される。設定は、FBRチャンバからすべての化合物が除去された後、接続機構を閉鎖することを含んでよい。ステップ260で、化合物が、貯蔵機から取り出される。化合物は、室温まで冷却された後に取り出されてよい。
【0025】
本技術は、高温で製造された化合物を保管するために貯蔵器を使用し、固定層または流動層内の該化合物が、不活性ガスの保護下で室温まで冷却されることを可能とする。貯蔵器は、化合物の冷却中(これには長時間を要する)に、FBRチャンバが化合物を保管することから解放する。これにより、化合物製造のためのFBRチャンバの半連続的な使用が可能となる。
【0026】
FBR反応装置と他の部品を接続する弁(これは、高温の塩素含有ガスにさらされ、オン―オフの動作が必要である)を保護するために、不活性ガスのエアロックが用いられてよい。
【0027】
いくつかの例では、本技術は、1つ以上のコンピュータシステムとともに使用されてよい。コンピュータシステムは、本FBRおよび貯蔵器のために特化されたものであってよく、改良された化合物を半連続的処理で与えるために機能してよい。例えば、装置は、FBR内の化合物の流動化や空虚度を観測するために特別に設計された監視システムを採用してよい。コンピュータシステムは、
図3のシステムによって実現されてよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、供給材料(「グリッド」)は、加圧容器内への粉末として、半連続的に供給されてよい。グリッドは、グラファイト/グラフェンおよびその誘導体を含んでよく、フワフワとしており、粘着性があり、塊になりやすい。塊でないグリッドは、加圧容器内に輸送するのが困難となり得る。本技術は、例えばスクリュー、らせん歯処理、空気圧法、多段階供給容器などを用いて、この目的を達成する。
【0029】
グラファイト/グラフェン、その誘導体、その他の、本技術のCVD処理での使用に好適な黒鉛状材料は、小さな粒子サイズを有する、従ってGeldartのC型粒子である。粒子サイズのグラフェンおよびその誘導体は、フワフワとしており、粘着性があり、取扱中に凝集して塊となりやすい。これが原因で、グラファイトおよびその誘導体をシリコン蒸着反応装置に供給するのに使われる従来の供給メカニズム、例えばロックホッパー、スクリュー供給機、あるいはロータリー供給機などは、故障を起こしやすい。しかしながら本技術は、こうした反応装置をグラフェンおよびその誘導体材料に使用するための新たな処理を含む。
【0030】
従来技術のスクリュー供給機には開放型と閉鎖型があり得るが、気密圧縮プラグを形成することで、粉末を圧力勾配に抗して供給するためには、閉鎖型供給機が使われてきた。これは実験的には可能であるが、形成されたプラグが流動化層で分解するのは極めて難しい。従ってこの技術は、何らかの追加的なプラグ分解機構がなければ、実用的ではない。開放型および閉鎖型スクリュー供給機はいずれもプラグを必要としないため、圧力勾配なしに、容器間の供給に使用することが可能である。しかしながら、このような供給機は、供給の制御はできるが圧力密閉ができないロータリー供給機に似ている。
【0031】
従来技術のロータリーエアロック供給機は、圧力密閉を与えるために利用できるが、シリコンをシリコン蒸着反応装置へ追加供給するには通常許容できない漏れ流量を有する。漏れ流量が許容できないのは、可燃性で有毒のガスが使用するためである。いくつかの実施形態において、本技術の蒸着反応装置は、反応装置が空の状態で窒素上で動作しているとき、すなわちサイクルとサイクルの間に供給を受けることができる。従って、本技術の装置および処理のいずれにおいても、ロータリー供給機が使用することができる。なぜなら密閉は、圧縮された黒鉛状材料によってではなく、エラストマーによって与えられるからである。しかしながら弾性エラストマーは、温度に敏感であり、本発明の反応装置は蒸着中に高温で動作する。従って、動作中に密閉を反応装置の高温ガスから保護するため、冷却、清浄ガス流動、および/または、追加の弁などの設計技術が適用されてもよい。
【0032】
従来技術においても、シリコン蒸着反応装置を含む加圧反応装置内に固体を吹き込むために、様々な空気式供給機が使われている。このような供給機は、反応装置内のガスと混合できるガス、例えば水素を使用する必要がある。これは、安全上の理由から、システムが大気に開放されて再充填ができるようになる前に、水素除去を目的に、追加的な窒素清浄ガスが使われるなければならないことを意味する。前述のように、いくつかの実施形態において、本技術の持つ半連続的特性により、充填処理中は窒素のみを使うことができる。従って空気式供給機は、水素と窒素の両方を供給することは必要としないだろう。その結果空気式供給機は、従来技術のシリコン蒸着反応装置のものより使いやすくなるだろう。このような供給機は、固体流を空気式伝達チューブ内に導く円錐状の底部を持つことができ、黒鉛状材料は円錐内に凝集されプラグを形成する。こうして、空気式供給器を使うために、スクリュー供給機やロータリー供給機のような有用な供給メカニズムを利用することができる。
【0033】
多段階供給容器やロックホッパーは、固体を加圧反応容器内に供給するための非常に一般的な手段であるが、これらは2つのガス密閉に依存している。1つは反応装置と反応装置供給容器との間にある。もう1つは反応装置供給容器と固体受入容器との間にあり、定期的に大気に開放される。通過する固体が存在することと、反応容器内に可燃性および/または有毒のガスが存在することとにより、これらの密閉を維持するのは困難である。通常、空気式供給器には、複数のガス清浄システムが必要である。本技術の半連続的処理では、こうした複数ガス清浄システムは不要である。これは、本技術が半連続的特性を持つことと、反応装置が半連続的サイクルの空位置にあって窒素上で動作している間、固体充填のための安全な大気開放が可能なことによる。
【0034】
図3は、半連続的なCVD/熱蒸着処理を実行するための装置のブロック図を示す。閉鎖可能な開口302を備える容器301には、固体供給機303、導管304、気密弁305、および反応装置310に接続する導管306が与えられる。また反応装置310には、ガス入口311およびガス出口312が与えられる。反応装置310は、半連続的な仕方で循環的に運転される。この運転中には、供給メカニズムを動作させるのに適したサイクル部分が存在する。このサイクル部分は、蒸着が停止し、反応装置内の固体粒子が窒素などの不活性ガス(これは、ガス入口311を通って流入し、ガス出口312を通って流出する)により流動化されている期間に存在する。このとき、気密弁305が閉じており、固体供給機は閉じた状態にあり、清浄窒素の、ライン307を介したチャンバ301内への流入と、ライン308を介した排出とが可能である。排出ライン308を介した排出後、窒素ライン307が閉じ、その後頂部の開口302が開き黒鉛状材料が注入される。開口302が閉じ、排出ライン308が開き、ライン307を通って流入した窒素が排出ライン308に向けて流れる。ライン307および308は、チャンバ301を孤立させるために閉じる。反応装置の生成物が空になると、新たな材料を反応装置内に置くことができるようになる。第1気密弁305が開いた後、固体供給機303は、新たな材料を導管306内に導入し、制御された速度で反応措置内に供給し始める。これらの固体流は、詰まりの原因となる導管306の逆流が発生しないように制御される。固体流の最大値は、最小制限における導管の径によって決定される。
【0035】
半連続的CVD処理の実行後、得られたシリコン―グラフェン化合物生成物は、原材料から除去され分離されてよい。得られたシリコン―グラフェン化合物は、開始グラフェンと同様の物理的形状を有する。従って、ポリシリコン製造で通常使われる方法でこれらを分離することは、ほぼ不可能である。
【0036】
蒸着後、シリコン―グラフェン化合物は内部に分散したシリコンを持つが、その外見的形状や粒子径が大きく変化することはない。これとは対照的に、従来技術のシリコン粒子への連続的シリコン蒸着では、粉砕によって付加または生成されるシリコン粒子種は、その径が成長する。従って、反応容器内で長時間大量のシリコン蒸着を受けたシリコン粒子種は大きく、粒子のサイズに応じた分離技術(例えば、ふるい、または選択的流動化による分離など)により、蒸着時間がより短いものから分離することができる。従来技術におけるふるいの例は、米国特許第6,827,786号(’786特許)「粒状シリコンを製造するための機械」明細書における
図1aの部品14のシリコンふるいに記載されている。流動分離の一例は、米国特許第4,818,495号(’495特許)「流動層シラン蒸着のための反応装置」明細書における
図4の分離器18および収集器20に記載されている。
【0037】
これらの分離技術は、得られたシリコン―グラフェン化合物には有用ではない。なぜなら、反応装置内のシリコン蒸着と粒子サイズとの間には、有用な相関が存在しないからである。シリコン化合物の有用な特性は、バルク材料における比ではなく、個々の粒子のシリコン対グラフェン比に依存する。従って、粒子間に大きな不均衡が生じないように、粒子ごとのシリコン蒸着は慎重に制御されなければならない。なぜなら、こうした不均衡を持つ粒子を電池の電極製造に使用すると、問題が発生し得るからである。グラファイト/グラフェンおよびその誘導体のバッチ処理は、各粒子が同じ被蒸着時間を持つように進められる必要がある。
【0038】
本技術の実行により、生成物はFBRから除去される。生成物をEBRから除去する方法は、装置からの吹き飛ばし、パルスガスを用いた底部からの排出、SMLアソシエイト社(カリフォルニア州エンシニタス)製の特殊バルブなどを含むが、これらに限定されない。
【0039】
シリコンをシリコン粒子上に蒸着する従来技術に関しては、シリコン粒子除去のための様々な手段が存在する。これらの手段は、すべての粒子層を除去可能な技術と、層の一部のみを除去する技術とに分類できる。グラフェンおよびその誘導体のバッチ処理での必要性から、上記の技術のうちすべての層を除去する技術のみが、シリコン―グラフェン化合物除去に利用することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、FBRは、反応装置と、1つ以上の入口クーラーと、ビーズおよびガスヒータと、ビーズクーラーと、を含んでよい。製造された生成物は、底部から、ビーズクーラーを通して、シリコンふるいの中に除去されてよい。除去は底部で行われるため、粒子のすべての層は、ビーズクーラーを通して除去されることができる。いくつかの実施形態では、層の一部を選択的に除去してこれを再循環することが望まれないため、ふるいは有害であってこれを省略することができる。同様に生成物もまた底部から除去することはできるが、層中の大きい粒子だけを生成物として選択的に除去することは望まれないため、分離器を省略することもできる。こうして本技術のFBRは、シリコン―グラフェン化合物生成物をチャンバの底部またはその近辺から除去するが、このFBRはまた、例えば材料のすべての層を除去することにより、シリコン―グラフェン化合物を除去することにも利用することができる。
【0041】
シリコン―グラフェン化合物材料をFBRの頂部またはその近辺から除去する技術のいくつかは、連続的処理の一部としてシリコン―グラフェン生成物を除去することには適さない。連続的な頂部除去技術を、連続的な完全層除去を目的に改良することはできない。しかしながら、本発明の半連続的処理は、サイクルの蒸着期間中に微粒子を除去することにより、半連続的な頂部除去を行うことを可能とする。そして、この微粒子を生成物から分離し、蒸着サイクルの最後に流動化ガスを短時間大きく増加することにより、この微粒子を吹き飛ばすことができる。
【0042】
底部除去の考え方は、シリコン蒸着で一般的である。しかし実際のシリコン―グラフェン化合物生成物の除去は、シリコン化合物の除去とはかなり異なる。なぜなら、シリコン―グラフェン化合物材料の特性は、シリコン化合物の特性と異なるからである。特に、シリコン―グラフェン化合物は、より凝集性が大きく、塊になりやすく、より密度が小さい。従って、シリコン―グラフェン化合物は、異なった仕方で反応し、異なる振る舞いをする。このため、シリコン粒子のような材料を除去するために設計された技術では、シリコン―グラフェンを効果的に除去することはできない。よって、典型的なFBR底部除去メカニズムや頂部除去メカニズムは、シリコン―グラフェン化合物材料の分離には適さない。
【0043】
生成物の底部除去はすべて、ある種の導管、すなわちFBRチャンバの底部に配置されて、ある種のコンテナに接続された導管を必要とする。この導管は、蒸着中は、固体の下向きの流れを防ぐのに十分な大きさの上向きのガス流を持つ必要がある。しかしながらこのガス流は、底部除去が必要となったときは、固体の下への流れを許すように減少されてもよい。反応ガス導入と微粒子生成物除去を兼ねる管の付与、環状除去装置の使用、水素の非反応ガスが上向きに流れる分離管の使用などを含む、様々な手段が提案されてきた。上向きのガス流は何らかの方法で加熱される必要があり、反応装置内の反応ガスを希釈する。従って、固体が流れることができるもののうち、できるだけ小さい径のものを使うことが望ましい。その他のシリコン―グラフェン化合物材料を除去する試み、例えば生成物除去導管を用いるものは、導管の詰まりを生じる。
【0044】
排出流の制御は、パルスガスのオン―オフサイクルの制御とその流れによって実現することができる。蒸着中は反応装置を孤立させることが望ましい。しかしシリコン粒子が摩滅的しやすいという性質は問題であり、これには清浄や特別な改良といった格別の予防措置が必要である。従来技術における純度に対する要求もまた、金属材料の使用、従ってクォーツ等セラミック材料の使用が制限される原因となる。
【0045】
シリコン―グラフェン化合物材料の温度は、本技術の貯蔵器の中で冷却することにより下げることができる。これは、貯蔵器自体を持たない従来技術のシリコン蒸着技術とは異なる。冷却は、環状の取外し可能な装置を用いて行うことができる。この装置は、管の内壁を通した流入シリコン反応ガスへの熱交換により生成物を冷却する。冷却はまた、水冷ジャケットへの熱交換によって行うこともできる。これらの方法の両方が、蒸着チャンバを離れて貯蔵器に入った生成物の冷却に用いることができる。なぜなら、流入シリコン蒸着ガスはビーズ除去チューブに接しているからである。貯蔵器からのビーズの最終冷却は、水冷ジャケットの手法を用いて、より簡単に行うことができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、本技術は、分離流動層内の生成物を冷却するために貯蔵器を使用する。これは従来技術に比べ、いくつかの利点を持つ。一般にこれらの従来技術は、冷却速度に制限を受ける。これは、表面積に限界があることと、流動する固体(液体に比べ、熱質量、および内部熱流に対する抵抗が極めて大きい)を冷却するのが困難なこととによる。一般に流動固体の冷却カラムの内部は、中心部が非常に高温で、壁面は低温である。微粒子固体は、粒子間の伝導度が低いからである。これとは対照的に、粒子に対する流動層の熱伝導度は、はるかに大きい。冷却ガスは粒子のすべての外部領域と直接接触し、粒子は壁面とほぼ接触するところまで物理的に移動するからである。従って、流動層としての冷却用分離貯蔵器に関する本技術は、本質的にはるかにより高速でかつ、冷却壁や冷却インターナル(典型的にはコイル)などの一般的な流動層熱交換技術を使えるために有利である。シリコン―グラフェン化合物生成物は、金属汚染に対して敏感でないため、貯蔵器は金属で製造することができる。これにより、構造を著しく単純化し、FBRのコストを削減することができる。貯蔵器は、冷却壁およびインターナルを備えるように設計することができる。このインターナルもまた、蒸着反応装置に由来する高温のシリコン―グラフェン化合物材料から、壁を保護する。冷却は、熱媒体のストレージを用いた、または相互位相不一致な複数の反応装置・貯蔵器システムの操作による半連続的なものであるが、このようなシステムから貴重な熱を回復することができる。従来技術のシリコン上へのシリコン蒸着システムでは、熱回復は望ましいものではあるが、実現するのは難しい。従来技術のシステムでは、生成物はサイクロンクーラーに引き継がれ得るが、熱を除去するのは難しい。なぜなら、純度の制約上、クォーツ等のセラミックは粒子を含む必要があるが、このようなセラミックは圧力容器に使うには十分な強度を持たないからである。
【0047】
しかしながらシリコン―グラフェン化合物材料の場合、摩滅は大きく低減され、金属腐食は問題とならないため、通常の弁を使うことができる。いくつかの実施形態では、弁の詰まりを防ぐために、また上へのガス流が弁によって完全に遮断された場合に入口ラインから弁への詰まりを防ぐために、弁と弁との間にパージを備える2つの弁を利用してよい。頂部の弁は、上向きのガス流は許すが、下向きの固体流は防ぐような固体制御弁であってよい。第2の弁は、ガス流を密閉することができる。これにより、貯蔵器が作動圧力を受けている間、生成物コンテナを生成物貯蔵器から、安全に下から取り外すことができる。固体流制御弁には、スライド弁、ピンチ弁またはロータリー弁などの様々な弁が適用される。ガス制御弁は、プラグやボール弁といった同様の範囲の弁から選択することができる。これらは、開放時には固体流の自由な弁通過を許し、閉鎖時にはガス圧から密閉する。ゴム状シートを備えたボール弁はよい選択であることが分かっている。
【0048】
いくつかの実施形態では、形成された化合物は、開始固体材料と同様の密度および形状を持つ。従って、ポリシリコン製造で使われる方法で、この化合物材料を開始材料から分離することは困難である。
【0049】
図4は、半連続的蒸着処理を実行する反応装置のブロック図を示す。蒸着反応装置400は、粒子層401を内蔵し、固体入口402と、ガス出口403と、ガス入口404と、ガス分配器405と、固体出口406と、を備える容器である。蒸着反応装置400は、外部ヒータ408によって加熱される。蒸着反応装置400の動作はサイクリックである。サイクルの始めに、窒素のような不活性ガス流が、ガス入口404を通して導入される。その後この不活性ガス流は、ガス分配器405を通って上に流れ、コンテナ内に流入する。固体が固体出口に落下しないように、さらなるガス流が、固体清浄ライン407から上向きに導入され、固体出口406を通して上方に流される。粒子層401を形成するために、固体が、固体入口402を通して蒸着反応装置400内部に導入される。層が形成されると、固体供給は停止される。そして2つの不活性ガス流は、粒子層401を流動化させるのに十分な流率を持った水素流に変換される。ヒータ408が、層の温度を所望の蒸着温度、すなわち800-1000℃まで上昇させるために使われる。流動が所望の撹拌レベルに維持されるように、層の温度が上昇するにつれ、最初の水素流は減少される。
【0050】
蒸着温度および水素流率が確立された後、例えばモノシリコンSiH4やトリクロロシランSiHCl3などの蒸着ガスが、ガス入口404を通って流入する水素流に追加される。その後蒸着が、所望の量の蒸着を得るのに十分な時間続く。例えば蒸着は、30分から5時間続いてよい。蒸着を停止するために、シリコン蒸着ガスが、ガス入口404を通って流入する水素から除去される。そして流動化を維持するのに十分な、さらなる水素が追加される。粒子層内の材料がシリコンで蒸着されると、この材料は貯蔵器420に移動される準備が整う。この移動が行われる前に、出口ジャケットクーラー409を通る冷却流が確立される必要がある。出口ジャケットクーラー409での冷却は、冷却材入口410から流入し、冷却材出口411から流出する冷却材の流れによって行われる。
【0051】
貯蔵器420は、粒子層421を内蔵し、固体入口422と、ガス出口423と、ガス入口424と、ガス分配器425と、固体出口426と、を備える容器である。貯蔵器420は、外部ジャケット428および内部コイル431によって冷却される。貯蔵器420の動作もまたサイクリックである。サイクルの始めに、水素、アルゴンまたは窒素のような非反応ガス流が、ガス入口424を通って導入される。その後このガス流は、ガス分配器425を通って上に流れ、容器420内に流入する。固体が固体出口に落下しないように、さらなるガス流が、弁清浄ライン427から上向きに導入され、固体出口426を通して上方に流される。この固体の移動の前に、貯蔵器ジャケットクーラー428および貯蔵器内部コイル431を通る冷却流が確立される必要がある。貯蔵器ジャケットクーラー428での冷却は、冷却材入口429から流入し、冷却材出口430から流出する冷却材の流れによって行われる。また内部冷却コイ431での冷却は、冷却材入口432から流入し、冷却材出口433から流出する冷却材の流れによって行われる。
【0052】
次のステップは、固体入口422を通した、蒸着反応装置400からの固体の導入である。これにより、粒子層421が形成される。蒸着反応装置400が空になると、固体供給は停止される。そして2つの不活性ガス流は、粒子層421を流動化させるのに十分な流率に変換される。さらに、冷却用ジャケット428および冷却用コイル431が、層の温度を所望の出口温度、すなわち10-150℃まで下降させるために使われる。流動が所望の撹拌レベルに維持されるように、層の温度が下降するにつれ、最初のガス流は増加される。所望の温度に到達した後、固体は生成物コンテナ440に移動される準備が整う。この移動の前に、出口ジャケットクーラー434を通る冷却流が確立される必要がある。出口ジャケットクーラー434での冷却は、冷却材入口435から流入し、冷却材出口436から流出する冷却材の流れによって行われる。生成物コンテナ440は、固体を受け入れる準備を整えられる必要がある。生成物コンテナ440は、粒子層441を内蔵し、固体入口442と、ガス出口443と、ガス入口424と、ガス入口444と、を備える気密容器である。固体を受け入れるために、サイクルの始めに、アルゴンまたは窒素のような不活性ガス流が、ガス入口444を通って導入される。その後このガス流は、容器440を通って上に流れ、ガス出口443から流出する。最初に気密弁438を開き、次に固体弁437および固体隔離弁445(もしあれば)を開くことにより、固体の流れが導入される。生成物コンテナ440への固体の流れが所望の量まで移動されると、固体弁437が閉じられ、その後気密弁438が閉じられる。その後生成物材料は、ガス入口444を通って流入しガス出口443を通って流出する不活性ガス流により、一定時間清浄されてよい。材料が不活性ガスブランケットの下に維持されるのが望ましい場合は、隔離弁がコンテナ上に与えられる。このような弁は、固体隔離弁445、ガス出口隔離弁446、およびガス入口隔離弁447として示される。その後これらの弁445、446および447は閉じられ、弁への接続は解除され、生成物コンテナは取り外されて空のコンテナに交換される。
【0053】
いくつかの実施形態では、半連続的処理は、複数ステップ処理として実現されてよい。これは様々な仕方で実現することができる。最初の蒸着容器と貯蔵容器のペアの後に、1つ以上の蒸着容器と貯蔵容器のペアが続いてもよい。このときの動作は、第1の容器で蒸着が行われ、第1の貯蔵容器で最初の生成物が冷却され、この生成物が蒸着を続けるために第2の反応装置に移動され、第2の貯蔵容器でこの生成物が冷却される、といった具合である。容器間の移動に起因して、混合とある種の集塊粉砕が発生するが、これは次のステップでのより均一な流動化と蒸着のために有利だろう。いくつかの実施形態では、さらなる集塊粉砕や、より均一な粒子サイズを与えるための追加的装置、例えば容器と容器の間にふるいなどが与えられてもよい。ある種のタイプの集塊破壊装置は冷却された材料を必要とするため、第1の貯蔵器の後に置かれるだろう。
【0054】
図5は、複数ステップ機能を持つ容器のブロック図である。説明と例示の目的で、
図5の容器は、通常こうした容器の内部に実装される部品、例えば
図4のブロック図に示された入出力接続などをすべて省いて示される。
【0055】
容器500は第1の蒸着反応装置であり、導管501により、第1の貯蔵容器502に接続される。第1の貯蔵容器502は、出口導管504を有する。容器500、502および導管501、504、生成物コンテナは、
図4の半連続的なブロック図に似ている。しかし
図5の容器は、集塊破壊装置505を含む。集塊破壊装置は、ふるい、その他の、蒸着中または取扱中に形成され得る集塊を破壊することのできる任意の装置を含む。集塊破壊装置は、集塊を破壊するために動作することができ、また固体を混合する。固体は、集塊破壊され混合された後、導管506を通って、第2の蒸着反応装置507に送られる。第2の蒸着反応装置で、さらなる蒸着が行われる。その後固体は、最終冷却のために導管508を通って第2の貯蔵容器509に進み、導管510を通って生成物コンテナ511に排出される。
【0056】
複数ステップ蒸着のための容器は、蒸着処理の途中で、シリコン―グラフェン化合物を混合し集塊破壊するという利点を持つ。これにより、特にシリコン対グラファイト比および粒子レベルに関して、蒸着の品質制御が改善される。これは特に、高いシリコン対グラファイト比(この性質は、電池の電極に望ましい)を持つシリコン―グラフェン化合物粒子を製造する場合に有用だろう。
【0057】
複数段階の設計では、最初の蒸着ステップが、理想的な蒸着のために必要な部分である。部分的に処理された材料は、除去され貯蔵装置に送られた後、さらなる蒸着のために別の蒸着反応装置段階に供給される。こうした複数ステップの処理は、より高精度の蒸着制御のために有利であり、スケールアップに適したより連続性のある処理に近づく。
【0058】
第1段階の貯蔵器もまた、第2段階の蒸着反応装置のために役立つ。複数の蒸着段階は、高温のシリコン―グラフェン化合物生成物を、単一の貯蔵段階に供給することができる。このような設計の場合、蒸着後に集塊破壊を行う装置は、高温で機能する必要があるだろう。このような複数段階システムは、複数段階反応装置のための単一の容器に統合することができ、最終生成物貯蔵器がこれに続く。
図6は、こうした可能性の2つを示す模式的な図である。
【0059】
図6は、複数段階機能を持つ代替的な容器のブロック図である。基本的な半連続的処理の他の異なる組み合わせを持つことも可能である。これは、バッチ蒸着が持つ品質上の利点も維持しながら、冷却されたシリコン―グラフェン化合物生成物のより連続的な製造を可能とする。すべての可能な組み合わせを描くことはできないため、
図6では2つの基本的な組み合わせを説明する。当業者は、他の組み合わせを導出することができる。
【0060】
図6は、高温集塊破壊装置を用いた半連続的処理の複数ステップ応用の模式図である。高温集塊装置は、2つの蒸着反応装置の間に直列に置かれる。高温集塊破壊装置は、
図5で用いられた冷却貯蔵器および低温集塊破壊装置に代えて設置され、単一の貯蔵器に供給を行う並列的な蒸着反応装置に接続され使用される。複数段階処理のレイアウトの明確な理解のため、容器は、
図5に示されたすべての必要な入出力接続を省いて示される。
【0061】
容器610は第1の蒸着反応措置であり、導管611により、第1の集塊破壊装置612に接続される。第1の集塊破壊装置612は、出口導管613を有する。このステップで、通常は貯蔵器によって行われる冷却が行われることなく、集塊破壊され、固体が混合される。集塊破壊され混合された固体は、その後導管613を通って、第2の蒸着反応装置614に送られる。第2の蒸着反応装置614で、さらなる蒸着が行われる。その後固体は、導管615を通って、単一の貯蔵器630に送られる。単一の貯蔵器630で最終冷却が行われ、固体は導管631を通って生成物コンテナ640に排出される。これらの蒸着反応装置と平行に、第3の蒸着反応装置620、第2の集塊破壊装置622、および第4の蒸着反応装置624が存在する。蒸着反応装置620は第3の蒸着反応装置であり、導管621により、第2の集塊破壊装置622に接続される。第2の集塊破壊装置622は、出口導管623を有する。このステップでもまた、通常は貯蔵器によって行われる冷却が行われることなく、集塊破壊され、固体が混合される。集塊破壊され混合された固体は、その後導管623を通って、第4の蒸着反応装置624に送られる。第4の蒸着反応装置624で、さらなる蒸着が行われる。その後固体は、導管625を通って、単一の貯蔵器630に送られる。単一の貯蔵器630で最終冷却が行われ、固体は導管631を通って生成物コンテナ640に排出される。
【0062】
図6に示され説明されたように、本技術の実施形態により、蒸着は直列に配置された2つ以上の反応装置に分離される。これらの反応装置は集塊破壊装置に接続されてよく、その後に最終のシリコン―グラフェン化合物生成物を冷却するための貯蔵器が続く。本技術の実施形態により、並列に配置された2つ以上の蒸着反応装置であって、各々が同じシリコン―グラフェン化合物生成物を生成し、生成物を共通の冷却貯蔵器に排出する反応装置が与えられる。平行な反応装置のサイクルが互いに位相不一致な仕方で制御されると、より連続的ベースで貯蔵器に供給を行うことができ、冷却サイクルを安定化することができる。これにより、より連続的な動作、従って、安定的な熱回復源と安定的な冷却生成物供給の両方が可能となる。いくつかの実施形態では、貯蔵器クーラーを複数の容器に分割することができるが、これは熱回復のために有利だろう。
【0063】
ポリシリコン製造のための複数段階反応装置では、一般に第1の反応装置は、低温(600℃から700℃)でのポリシリコン蒸着のためのものである。これに続けて、第2段階での反応装置で、結晶化のための高温後処理が行われる。ポリシリコン内の含有水素は、高温処理により低減することができる。処理は、流動層内の化学蒸着により生成されたビーズ状ポリシリコン粒子上で行われることが好ましい。熱処理は、温度1020℃―1200℃で、およそ6時間から1時間(これは、含有水素を低減するのに十分で、処理された材料が集塊化するには不十分な時間である)行われることが好ましい。採用された処理温度で粒子が集塊化する傾向を削減する目的で、流動層は、脱水素中運動し続けることが好ましい。処理により生成された生成物は、30ppm以下の含有水素を持つことが好ましい。これらの改良された生成物は、半導体デバイス製品のための単結晶シリコンの製造ために利用することができる。
【0064】
図7Aは、シリコン―グラフェン化合物の微視的構造を示す。
図7Aの微視的構造は、グラフェン層710およびシリコン粒子720を含む。シリコンアイランド粒子(すなわちシリコン粒子)は、グラフェン層により形成されたギャップの内部に埋め込まれてよい。シリコン粒子は、均一に分散され、結合され、グラフェン層710により形成されたグラフェンマトリックスに埋め込まれてよい。シリコンアイランド粒子は、長さが2nmから2ミクロンであってよい。従って、化合物構造はナノ化合物を含む。複数のグラフェン層および複数のシリコン粒子は、埋め込まれた導電性マトリックスを形成する。
図7Aの微視的構造で、図示された微視的構造部分は、長さが約10ミクロンであってよい。いくつかの実施形態では、小塊その他のシリコングラファイト微視的構造部分は、長さが0.05―40ミクロンの範囲であってよい。図示されたグラフェン層間のシリコン粒子は、サイズを忠実に再現しておらず、実際のサイズは
図7Aに示されるスケールより小さかったり大きかったりすることがある。
図7Aのシリコン―グラフェン化合物の微視的構造および
図7Bの巨視的構造は、流動層反応装置によって形成されてよく、電気化学的装置、例えば電池、電池セル、その他の動力源に使用されてよい。
【0065】
シリコン―グラフェンの微視的構造は、
図7Bに示される巨視的構造を形成してよい。シリコン―グラフェンの巨視的構造は、シリコン―グラフェン化合物材料の結晶状の群からなる形状を形成してよい。シリコン―グラフェンの巨視的構造は、集塊化されたシリコン―グラフェン化合物の2次構造を形成する。いくつかの実施形態では、シリコン―グラフェンの巨視的構造は、直径が5-100ミクロンの球形状または小塊で形成されてよい。いくつかの実施形態では、シリコングラファイトの巨視的構造は、直径が2-40ミクロンの球形状または小塊で形成されてよい。埋め込まれたシリコン粒子を備える複数のグラフェン層は、結合された導電性材料の1つ以上の小塊を形成してよい。シリコン―グラフェンの巨視的構造は、2次元の巨大なシリコン―グラフェンシートの球状構造または小塊へのトロールアップにより形成されてよい。化合物構造は、集塊化されたシリコン―グラフェン化合物粒子を形成する。
【0066】
いくつかの実施形態では、前述のユニークなシリコン―グラフェン化合物は、シリコン粒子とマトリックスとの間に強い結合力を持つ。マトリックス中の粒子は、シリコンを含んでよく、シリコン粒子に加えてまたはこれに代えて1つ以上のSn、Pb、Al、Au、Pt、Zn、Cd、Ag、MgまたはMoであってもよい。マトリックス材料は、リチウム電池環境内で安定な導電性材料であってよく、炭素質の剥離シートを含むが、これに限られない。
【0067】
図8Aは、FBR反応装置によって生成されたシリコン―グラフェン化合物を示す。シリコン―グラフェン化合物は、シリコン―グラフェンの微視的構造で形成された結晶810の形状を持つ。微視的構造は、均一に分散され、結合され、グラフェンマトリックスに埋め込まれたシリコン粒子を含む。
図8Aの巨視的構造はまた、2つの2次元シリコン―グラフェンシートの球状構造へのトロールアップを示す。
図8Bは、FBR反応装置によって生成された別のシリコン―グラフェン化合物を示す。
図8Bのシリコン―グラフェン化合物は、グラフェン層830内の可視的なシリコン粒子820を示す。
【0068】
図9は、本技術に使用するコンピュータデバイスを実現するのに利用可能な、典型的なコンピュータシステム900を示す。コンピュータデバイスは、粒子を生成し、
図1-8Bに関連して説明した処理を自動的に制御するために、容器とともに使用してよい。
図9のコンピュータシステムは、1つ以上のプロセッサ910およびメモリ920を含む。メインメモリ920は部分的に、プロセッサ910により実行される命令およびデータを保存する。メインメモリ920は、動作中に実行コードを保存することができる。
図9のシステムはさらに、大容量ストレージ装置930、携帯ストレージ媒体ドライブ940、出力装置950、ユーザ入力装置960、表示装置970、および周辺装置980を含む。
【0069】
図9に示される部品は、単一のバスを介して接続されているように描かれている。しかし、部品は1つ以上のデータ伝達手段を介して接続されてもよい。例えば、プロセッサユニット910とメインメモリ920とは、ローカルマイクロプロセッサバスを介して接続されてもよい。また大容量ストレージ装置930、周辺装置980、 携帯ストレージ装置940,および表示システム970は、1つ以上の入力/出力(I/O)バスを介して接続されてもよい。
【0070】
大容量ストレージ装置930は、磁気ディスクまたは光ディスクで実現されてよく、プロセッサユニット910で使われるデータおよび命令を保存する不揮発性のストレージである。大容量ストレージ930は、本技術の実施形態を実現するためのシステム・ソフトウェアを、メインメモリ920にロードするために保存することができる。
【0071】
携帯ストレージ装置940は、
図9のコンピュータシステム900へ出力する(から入力する)データおよびコードをフロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(登録商標)、デジタルビデオディスク(登録商標)などの不揮発性の携帯ストレージ媒体とともに動作する。本技術の実施形態を実現するためのシステム・ソフトウェアはこのような携帯媒体に保存されてよく、携帯ストレージ装置940を介してコンピュータシステム900に入力されてよい。
【0072】
入力装置960は、ユーザインタフェース部分を提供する。入力装置960は、英数字その他の情報を入力するキーボード等の英数字キーパッド、あるいはマウス、トラックボール、スタイラス、方向キーなどのポインティングデバイスを含んでよい。さらに
図9に示されるシステム900は、出力装置950を含む。適切な出力装置の例は、スピーカ、プリンタ、ネットワークインタフェースおよびモニタを含む。
【0073】
表示システム970は、液晶ディスプレイ(LCD)その他の適切なディスプレイ装置を含んでよい。表示システム970は、文字や図形の情報を受信し、ディスプレイ装置に出力するために当該情報を処理する。
【0074】
周辺装置980は、コンピュータシステムに付加機能を追加するための、任意のタイプのコンピュータ支援装置を含んでよい。例えば周辺装置980は、モデムやルータを含んでよい。
【0075】
このように
図9のコンピュータシステム900に含まれる部品は、本発明の実施形態での使用に適したコンピュータシステムに典型的に見られるもので、当業者に既知のコンピュータ部品を広範囲に表すことが意図されている。従って、
図9のコンピュータシステム900は、パーソナルコンピュータ、携帯型計算装置、電話、モバイルコンピュータ装置、ワークステーション、サーバ、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、その他の任意のコンピュータ装置であってよい。コンピュータはまた、異なるバス配置、ネットワークプラットフォーム、マルチプロセッサプラットフォーム等を含んでよい。UNIX(登録商標)、Linux(登録商標)、Windows(登録商標)、Android(登録商標)OS、iOS(登録商標)、その他の適切な任意のオペレーションシステムを含む種々のオペレーションシステムが使われてよい。
【0076】
上記の技術に関する前述の詳細な説明は、説明と例示を目的になされた。これは包括的であることを意図せず、開示された厳密な形で本技術を限定することも意図しない。前述の範囲内で、様々な改良や変形が可能である。前述の実施形態は、本技術の原理を最もよく説明する目的で選択された。従って当業者は、種々の実施形態で本技術を最良の形で利用するために、他の実施形態に実用的に応用することや、期待される特定の使用に最適なように様々に変形することが可能である。本技術の範囲は、請求項で定義されることが意図されている。