(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】偏光膜用二色性アゾ色素、および該二色性アゾ色素で染色された偏光膜
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230224BHJP
C09B 35/023 20060101ALI20230224BHJP
C09B 31/08 20060101ALI20230224BHJP
C09B 31/043 20060101ALI20230224BHJP
C09B 31/053 20060101ALI20230224BHJP
C09B 56/04 20060101ALI20230224BHJP
C09B 31/22 20060101ALI20230224BHJP
C09B 31/14 20060101ALI20230224BHJP
C09B 31/18 20060101ALI20230224BHJP
B29C 55/04 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
G02B5/30
C09B35/023
C09B31/08
C09B31/043
C09B31/053
C09B56/04
C09B31/22
C09B31/14
C09B31/18
B29C55/04
(21)【出願番号】P 2018105892
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391025659
【氏名又は名称】株式会社日本化学工業所
(73)【特許権者】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】高垣 英幸
(72)【発明者】
【氏名】古川 友基
(72)【発明者】
【氏名】井上 陽太郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 正樹
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-218359(JP,A)
【文献】特開2011-150162(JP,A)
【文献】特開昭54-068780(JP,A)
【文献】特開昭59-226379(JP,A)
【文献】特開平11-101964(JP,A)
【文献】特開平10-292175(JP,A)
【文献】特開昭62-079271(JP,A)
【文献】特開昭58-142968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C09B 35/023
C09B 31/08
C09B 31/043
C09B 31/053
C09B 56/04
C09B 31/22
C09B 31/14
C09B 31/18
B29C 55/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(式1)で表される、イエロー系の二色性アゾ色素Aと、
下記(式2)で表され、m=0、n=1の場合である、マゼンタ系の二色性アゾ色素Bと、
下記(式2)で表され、m=1の場合であり、さらに、n=1、および/または、Xが炭素数1~4のアルコキシ基あるいはニトロ基である、シアン系の二色性アゾ色素Cと、
下記(式3)で表されるシアン系の二色性アゾ色素D、および、
下記(式4)で表されるシアン系の二色性アゾ色素E、
からなる群から選ばれる、1種または2種以上を含有する、偏光膜用二色性アゾ色素
であって、
該偏光膜用二色性アゾ色素は、染色対象物をニュートラルグレーに染色するための偏光膜用二色性アゾ色素であり、
イエロー系の二色性アゾ色素Aと、
マゼンタ系の二色性アゾ色素Bと、
シアン系の二色性アゾ色素C、シアン系の二色性アゾ色素D、シアン系の二色性アゾ色素Eからなる群から選ばれる、1または2種以上
とを含有する、
偏光膜用二色性アゾ色素。
【化1】
(式中R
1、R
2は、それぞれ独立して水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基及び炭素数1~4のアルキル基の何れかを表す。)
【化2】
(式中Xは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ニトロ基及びシアノ基の何れかを表し、R
3、R
4、R
5はそれぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~4のアルキル基の何れかを表す。m、nはそれぞれ独立して、m=0または1、n=0または1を表す。)
【化3】
(式中Xは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基の何れかを表し、R
6、R
7はそれぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~4のアルキル基の何れかを表す。)
【化4】
(R
8、R
9は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基の何れかを表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の偏光膜用二色性アゾ色素で染色された、耐水性の樹脂フィルムから作製された偏光膜であって、
前記偏光膜用二色性アゾ色素は1種であり、
前記偏光膜は、2倍以上、10倍以下の範囲で、一軸延伸されている、偏光膜。
【請求項3】
請求項
1に記載の偏光膜用二色性アゾ色素で染色された、耐水性の樹脂フィルムから作製された、ニュートラルグレーを呈する偏光膜であって、
前記偏光膜は、2倍以上、10倍以下の範囲で、一軸延伸されている、偏光膜。
【請求項4】
偏光度が90%以上、100%以下である、請求項
2に記載の、偏光膜。
【請求項5】
偏光度が99%以上、100%以下である、請求項
3に記載の、偏光膜。
【請求項6】
前記樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとのブレンド樹脂、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの共重合樹脂なる群から選ばれる、1種または2種以上を含む、請求項
2~
5の何れか1項に記載の、偏光膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産性、染着性、偏光性、耐光性に優れ、可視光全体を偏光させることが可能であり、偏光膜の染着に適した二色性アゾ色素と、該二色性アゾ色素によって染色された耐湿性及び耐熱性等の耐久性が高く、ディスプレイ、偏光眼鏡、車用サンバイザー、 及びブラインド等の用途に好適な偏光膜、特にディスプレイ用途に適した偏光膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイの普及にともない、色々な用途での利用が進められており、耐久性という観点から、特に湿度や熱、光に対する耐久性への要望が高まっているが、従来の液晶ディスプレイではヨウ素系及び水溶性染料系偏光フィルムを使用していることから湿度に対する耐久性が低い。
そこで、偏光フィルムの耐湿潤性と耐熱性を改善することで将来的に大きな需要が見込まれることから、生産性と耐久性に優れた二色性アゾ色素を用いた偏光フィルムの技術の確立が望まれている。
【0003】
従来の偏光膜には、透明性と、ヨウ素系及び水溶性染料等の親和性や延伸時における高い分子配向性に優れた、一軸延伸ポリビニルアルコール(PVA)フィルムが用いられている。
又、特許文献1には、延伸したポリエチレンテレフタレートフィルムを二色性アゾ色素で染色した偏光膜が開示されている。しかし、ヨウ素系染料は耐光性に劣り、使用されているマゼンタ系二色性アゾ色素を製造する為には、予め特殊な原料を製造する必要があって、生産性が悪いという欠点などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、汎用原料から少ない合成ステップ数で合成されて生産性に優れ、フィルムへの染着性が良好で、高い偏光度を与える、二色性アゾ色素を提供することと、
該二色性アゾ色素を用いた、耐湿性及び耐熱性等の耐久性に優れた偏光膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、種々検討の結果、特定の化学構造のマゼンタ系、シアン系及びイエロー系二色性アゾ色素が、さらには、該アゾ色素を用いて染色した偏光膜が、上記課題を解決することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.下記(式1)で表される、イエロー系の二色性アゾ色素Aと、
下記(式2)で表され、m=0の場合である、マゼンタ系の二色性アゾ色素Bと、
下記(式2)で表され、m=1の場合である、シアン系の二色性アゾ色素Cと、
下記(式3)で表されるシアン系の二色性アゾ色素D、および、
下記(式4)で表されるシアン系の二色性アゾ色素Eからなる群から選ばれる、1種または2種以上
とを含有する、偏光膜用二色性アゾ色素。
【化1】
【0008】
(式中R
1、R
2は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基及び炭素数1~4のアルキル基の何れかを表す。)
【化2】
(式中Xは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ニトロ基及びシアノ基の何れかを表し、R
3、R
4、R
5はそれぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~4のアルキル基の何れかを表す。m、nはそれぞれ独立して、m=0または1、n=0または1を表す。)
【化3】
(式中Xは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基の何れかを表し、R
6、R
7はそれぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~4のアルキル基の何れかを表す。)
【化4】
(R
8、R
9は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基の何れかを表す。)
【0009】
2.染色対象物をニュートラルグレーに染色する、偏光膜用二色性アゾ色素であって、
イエロー系の二色性アゾ色素Aと、
マゼンタ系の二色性アゾ色素Bと、
シアン系の二色性アゾ色素C、シアン系の二色性アゾ色素D、シアン系の二色性アゾ色素Eからなる群から選ばれる、1または2種以上
とを含有する、請求項1に記載の、偏光膜用二色性アゾ色素。
3.上記1に記載の偏光膜用二色性アゾ色素で染色された、耐水性の樹脂フィルムから作製された偏光膜であって、
前記偏光膜用二色性アゾ色素は1種であり、
前記偏光膜は、2倍以上、10倍以下の範囲で、一軸延伸されている、
偏光膜。
4.請求項2に記載の偏光膜用二色性アゾ色素で染色された、耐水性の樹脂フィルムから作製された、ニュートラルグレーを呈する偏光膜であって、
前記偏光膜は、2倍以上、10倍以下の範囲で、一軸延伸されている、
偏光膜。
5.偏光度が90%以上、100%以下である、上記3に記載の、偏光膜。
6.偏光度が99%以上、100%以下である、上記4に記載の、偏光膜。
7.前記樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとのブレンド樹脂、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの共重合樹脂なる群から選ばれる、1種または2種以上を含む、上記3~6の何れかに記載の、偏光膜。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、汎用原料から少ない合成ステップ数で合成されて生産性に優れ、フィルムへの染着性が良好で、高い偏光度と耐光性を与える、二色性アゾ色素を得られる。
そして、該二色性アゾ色素を用いて染色した偏光膜は、染着度が良好で、高い二色性比と偏光度、及び耐光性を発揮し、また、偏光膜がニュートラルグレーに染着されていることによって、可視光全体を偏光させることが可能であり、ディスプレイ、偏光眼鏡、車用サンバイザー、 及びブラインド等の用途の偏光膜として好適であり、特にディスプレイ用途の偏光膜として好適であり、実用性に優れる。
【0011】
また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、およびそれらのブレンド樹脂または共重合樹脂を含む樹脂フィルムに、該二色性アゾ色素を染着して偏光膜を作製することで、従来の水溶性のポリビニルアルコールを使用した偏光膜では不可能であった高湿度の環境下でも使用可能な、耐湿性及び耐熱性等の耐久性に優れた偏光膜が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体例を挙げながら説明するが、本発明は記載された具体例に限定されるものではない。
なお、本発明において「偏光膜」とは、偏光フィルムと偏光シートを包含するものである。
【0013】
<偏光膜用二色性アゾ色素>
本発明の偏光膜用二色性アゾ色素(以下、単に「二色性アゾ色素」、または「アゾ色素」とも表記する。)は、下記(式1)で表されるイエロー系の二色性アゾ色素A、下記(式2)で表されるマゼンタ系の二色性アゾ色素Bまたはシアン系の二色性アゾ色素C、下記(式3)で表されるシアン系の二色性アゾ色素D、下記(式4)で表されるシアン系の二色性アゾ色素Eからなる群から選ばれる、1種または2種以上を含有する、偏光膜用二色性アゾ色素である。
【0014】
それぞれの二色性アゾ色素A~Eは、汎用原料から、少ない合成ステップ数によって合成することが可能であり、生産性に優れる。
特にジスアゾ骨格の二色性アゾ色素は合成ステップ数が少なく、トリスアゾ骨格の二色性アゾ色素以上に、長波長側に吸収極大がある等のメリットがある。
【0015】
(式1)で示されるイエロー系の二色性アゾ色素Aは、従来よりも、フィルムへの染着が良好であり、高い偏光度を有する。
(式2)で示される、マゼンタ系の二色性アゾ色素Bまたはシアン系の二色性アゾ色素Cは、マゼンタ系の二色性アゾ色素とシアン系の二色性アゾ色素とを、類似骨格構造にす
ることによって、原料、中間製品、工程を共有でき、生産性に優れる。
【0016】
更に、本発明の偏光膜用二色性アゾ色素は、上記の二色性アゾ色素A~Eからなる群から、イエロー系+マゼンタ系+シアン系という構成になるように二色性アゾ色素を選択して用いることで、染色対象物をニュートラルグレーに染色することができる。
具体的には、イエロー系としては二色性アゾ色素Aを用い、マゼンタ系としては二色性アゾ色素Bを用い、シアン系としては、二色性アゾ色素C、二色性アゾ色素D、二色性アゾ色素Eからなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
染色対象物への染着性は、二色性アゾ色素A~Eのそれぞれで異なり、さらには染色対象物の組成や態様によっても大きく異なる。このため、染色対象物をニュートラルグレーに染色するための偏光膜用二色性アゾ色素中の二色性アゾ色素A~Eの好ましい比率は、染色対象物によって大きく異なり、染色後の染色対象物の色が、偏光膜用二色性アゾ色素の色と一致するものでもない。
例えば、染色対象物がポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとのブレンド樹脂からなる樹脂フィルムをニュートラルグレーに染色する場合には、イエロー系の二色性アゾ色素Aが1質量部に対して、マゼンタ系の二色性アゾ色素Bが0.5~4質量部、シアン系の、二色性アゾ色素C、二色性アゾ色素D、二色性アゾ色素Eなる群から選ばれる1種又は2種以上の合計が、0.5~8質量部が好ましい。
【0018】
[二色性アゾ色素A]
下記(式1)で示される二色性アゾ色素Aは、スチルベン・ジスアゾ型の化学構造を有し、イエロー系の色を呈する。
【化5】
(式中R
1、R
2は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基及び炭素数1~4のアルキル基の何れかを表す。)
【0019】
具体例としては、下記(式1a)~(式1d)で示される二色性アゾ色素1a~1dが挙げられる。
【化6】
【0020】
[二色性アゾ色素Bと二色性アゾ色素C]
下記(式2)で示される二色性アゾ色素は、mの値によって、名称と色が異なる。
m=0の場合に、二色性アゾ色素Bであって、ベンゾチアゾール・ジスアゾ型の化学構造を有し、マゼンタ系の色を呈する。
m=1の場合に、二色性アゾ色素Cであって、ベンゾチアゾール・トリスアゾ型の化学構造を有し、シアン系の色を呈する。
【0021】
【化7】
(式中Xは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ニトロ基及びシアノ基の何れかを表し、R
3、R
4、R
5はそれぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~4のアルキル基の何れかを表す。m、nはそれぞれ独立して、m=0または1、n=0または1を表す。)
【0022】
具体例としては、下記(式2a)~(式2k)で示される二色性アゾ色素2a~2kが挙げられる。
【化8】
【0023】
【0024】
[二色性アゾ色素D]
下記(式3)で示される二色性アゾ色素Dは、ベンゾチアゾール・ジスアゾ型の化学構造を有し、シアン系の色を呈する。
【化10】
(式中Xは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基の何れかを表し、R
6、R
7はそれぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~4のアルキル基の何れかを表す。)
【0025】
具体例としては、下記(式3a)~(式3d)で示される二色性アゾ色素3a~3dが挙げられる。
【化11】
【0026】
[二色性アゾ色素E]
下記(式4)で示される二色性アゾ色素Eは、ニトリル・ジスアゾ型の化学構造を有し、シアン系の色を呈する。
【化12】
(R
8、R
9は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基の何れかを表す。)
【0027】
具体例としては、下記(式4a)で示される二色性アゾ色素4aが挙げられる。
【化13】
【0028】
<二色性アゾ色素の合成方法>
上記の(式1)、(式2)、(式3)、(式4)で表される各二色性アゾ色素A~Eは、それぞれの構造に応じて、下記の方法で合成することができる。
【0029】
[スチルベン・ジスアゾ型二色性アゾ色素の合成]
(式1)で示されるスチルベン・ジスアゾ型二色性アゾ色素は、例えば、下記方法で合成することができる。
4,4’-ジアミノスチルベンを亜硝酸ナトリウムでジアゾ化し、2-メトキシフェノールとカップリングすることで、スチルベン・ジスアゾ型二色性アゾ色素を得られる。
【0030】
[ベンゾチアゾール・ジスアゾ型二色性アゾ色素の合成]
(式2)においてm=0の場合、及び(式3)で示されるベンゾチアゾール・ジスアゾ型二色性アゾ色素は、例えば、下記方法で合成することができる。
2-アミノベンゾチアゾール誘導体をニトロシル硫酸でジアゾ化し、アニリノメタンスルホン酸ナトリウムとカップリングし、その後、加水分解してモノアゾアミン中間体を得る。
このモノアゾアミン中間体を更にニトロシル硫酸でジアゾ化し、3-ジエチルアミノフェノール又は、1,8-ジブチルアミノナフタレンとカップリングすることで、ベンゾチアゾール・ジスアゾ型二色性アゾ色素を得られる。
【0031】
[ベンゾチアゾール・トリスアゾ型二色性アゾ色素の合成]
(式2)においてm=1の場合で示されるベンゾチアゾール・トリスアゾ型二色性アゾ色素は、例えば、下記方法で合成することができる。
2-アミノベンゾチアゾール誘導体をニトロシル硫酸でジアゾ化し、アニリノメタンスルホン酸ナトリウムとカップリングし、その後、加水分解してモノアゾアミン中間体を得る。
このモノアゾアミン中間体を更にニトロシル硫酸でジアゾ化し、α-ナフチルアミンとカップリングしてジスアゾアミン中間体を得る。この得られたジスアゾアミン中間体を更にニトロシル硫酸3-ジエチルアミノフェノールとカップリングすることで、ベンゾチアゾール・トリスアゾ型二色性アゾ色素を得られる。
【0032】
[ニトリル・ジスアゾ型二色性アゾ色素の合成]
(式4)で示されるニトリル・ジスアゾ型二色性アゾ色素は、例えば、下記方法で合成することができる。
アミノベンゾニトリルを亜硝酸ナトリウムでジアゾ化し、アニリノメタンスルホン酸ナトリウムとカップリングし、その後、加水分解して、モノアゾアミン中間体を得る。
このモノアゾアミン中間体を更に亜硝酸ナトリウムでジアゾ化し、ペリミジン誘導体とカップリングすることでニトリル・ジスアゾ二色性アゾ色素を得られる。
【0033】
<樹脂フィルム>
本発明の偏光膜を作製するための樹脂フィルムは、本発明の二色性アゾ色素によって染色され得るものであって、一軸延伸され得るものであればよい。
樹脂フィルムは、染色時に、二色性アゾ色素を含む水溶液からなる染色浴に浸けられる為に、耐水性と耐熱性が求められる。ここで、耐水性とは、水に溶解したり、水や水蒸気によって膨潤したりしないことを指す。
従来の偏光膜で多用されているポリビニルアルコール(PVA)は、耐水性及び耐熱性が悪い為に、そのままでは用いることが出来ず、酢酸セルロース(TAC)フィルムを両面に貼り付けて用いる必要があり、3層となる為に薄膜化が困難となる。また、TACフィルムは高価であり、低価格化ができない。
【0034】
上記を満たす樹脂フィルムとしては、ポリエステル系樹脂、特に芳香族ポリエステル系樹脂を含む樹脂フィルムが好適である。
芳香族ポリエステル系樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとのブ
レンド樹脂、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの共重合樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。
本願発明においては、上記の芳香族ポリエステル系樹脂を含む樹脂フィルムを用いることが好ましい。樹脂フィルムが上記の芳香族ポリエステル系樹脂を含むことによって、偏光膜は、高い耐湿性と耐熱性を有することができる。
【0035】
ここで、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの共重合樹脂とは、ポリエチレンテレフタレートを重合する為の原料とポリエチレンナフタレートを重合する為の原料が混合された状態から重合された、ランダムまたはブロック共重合体を指す。
【0036】
上記のブレンド樹脂または共重合樹脂において、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートの比率に特に制限は無いが、質量比1/9以上、9/1以下が好ましく、質量比1.5/8.5以上、3/7以下がより好ましい。
さらに、樹脂フィルムは、単層であっても、2層以上の多層であってもよい。多層の場合には、各層が同一の組成であっても、異なる組成であってもよい。
樹脂フィルムの厚さには特に制限は無いが、30μm以上、300μm以下が好ましく、75μm以上、150μm以下がより好ましい。
【0037】
<偏光膜>
本発明の偏光膜は、上記の一般式(式1)、(式2)、(式3)、(式4)で示される二色性アゾ色素A~Eからなる群から選ばれる、1種または2種以上を含有する偏光膜用二色性アゾ色素によって染色された樹脂フィルムから作製されるものである。
【0038】
さらに、偏光膜は、上記の偏光膜用二色性アゾ色素を用いて染色されことによって、ニュートラルグレーを呈することができる。
偏光膜は、単層であっても、2層以上の多層であってもよい。多層の場合には、各層が同一の組成であっても、異なる組成であってもよい。
偏光膜の厚さには特に制限は無いが、3μm以上、150μm以下が好ましく、7μm以上、75μm以下がより好ましい。
【0039】
<偏光膜の製造方法>
偏光膜の製造方法は、染色工程と、延伸工程を含む。
延伸工程は、染色工程の前、後の何れか一方のみ、あるいは前後両方に実施することができるが、染色工程の後のみに実施することが好ましい。
染色工程を先に、延伸によって偏光膜の嵩が多くなる前の状態で、実施することによって、染色工程での染色浴の量を低減でき、染色浴を適切な染色温度まで昇温するための時間と熱量を節約できることで省力化が可能となり、経済的メリットを得ることができる。
さらに、染色後に延伸した場合の方が、性能の高い偏光膜が得られる。
【0040】
[延伸工程]
延伸工程の温度は、樹脂フィルムの軟化点以下の温度が好ましい。樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとのブレンド樹脂、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの共重合樹脂等を含む場合には、通常は、60℃以上、180℃以下が好ましく、80℃以上、160℃以下がより好ましい。
延伸速度は、通常は、60mm/min以上、600mm/min以下が好ましく、200mm/min以上、550mm/min以下がより好ましい。
延伸倍率は、同一方向の一軸延伸において、通常は、2倍以上、10倍以下が好ましく、2倍以上、8倍以下がより好ましく、4倍以上、7倍以下が更に好ましい。
【0041】
[染色工程]
(二色性アゾ色素分散液の調製)
本発明の二色性アゾ色素は、溶媒中に分散させた分散液の形態で用いることが好ましい。複数の二色性アゾ色素を混合して、ニュートラルグレー用の分散液を調製することもできる。
分散液に使用する溶媒には、二色性アゾ色素や樹脂フィルムを変質させたりせず、樹脂フィルムを溶解させたりしないもの等であれば、特に制限無く用いることができる。
例えば、水や各種有機溶媒を用いることが可能であり、有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド、N-メチル-2-ピロリドン、酢酸エチル等を用いることができる。
【0042】
さらに、アゾ色素の分散液には、アゾ色素の分散を促進させるように、界面活性剤、例えば、ノニオン性または、カチオン性、アニオン性の界面活性剤を含有させてもよい。
【0043】
(染色濃度)
偏光膜を染色するための二色性アゾ色素分散液(染色浴)中の二色性アゾ色素の含有量(染色濃度)は、染色対象のフィルムの質量に対して、0.5質量%以上、4質量%以下が好ましく、1質量%以上、3質量%以下がより好ましい。
上記範囲よりも少ないと、充分な染色が効率的には得られ難く、上記範囲よりも多いと、二色性アゾ色素の使用料が多い割には染色の効率は向上し難く、コスト的に不利になる。
(染色条件)
染色工程においては、常圧下で、90~100℃の温度で染色することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例によって、本発明の評価結果を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<アゾ色素の合成>
[アゾ色素1aの合成]
水500mlに4,4’-ジアミノスチルベン25.2質量部を添加して、次いで、濃塩酸65質量部を加えて30分攪拌した。
次いで、10~15℃で40%亜硝酸ナトリウム液41質量部を1時間要して滴下し、更に同温度で1時間攪拌した後、過剰の亜硝酸をスルファミン酸で除去して、ジアゾ液を得た。
そして、別途、水300mlに2-メトキシフェノール29質量部とソーダ灰15質量部を添加して攪拌し、カップル溶液を調製した。
【0045】
このカップル溶液を10℃以下に保ちながら、上記で得られたジアゾ液を、上記で得たカップル溶液219質量部を用いてpH9~10に調整しながら、1.5時間要して滴下し、更に同温度で1時間攪拌して、沈殿物を得た。
反応液から生成した沈殿物を濾過して採取、圧搾して湿ケーキを得て、更に乾燥して、20質量部の下記(式1a)で示されるアゾ色素1aを得た。
【化14】
【0046】
[アゾ色素2dの合成]
2-アミノ-6-メチルベンズチアゾール16質量部を、85%リン酸35mlに添加して80℃に加熱して溶解させた。
次いで、10~20℃に保ちながら、40%ニトロシル硫酸3.7質量部を30分要して滴下し、更に、同温度で1時間撹拌した後に、過剰のニトロシル硫酸をスルファミン酸で除去して、ジアゾ液を得た。
そして、別途、氷水2000質量部にアニリノメタンスルホン酸ナトリウム83.6質量部を加え、5℃以下に保ちながら、上記で得たジアゾ液を1時間要して滴下し、更に、同温度で時間攪拌した。反応終了後、飽和食塩水180mlを加え、濾過を行い、沈殿物からなるモノアゾ中間体の湿ケーキを得た。
【0047】
得られたモノアゾ中間体の湿ケーキを、3%ソーダ灰水溶液680mlに15%苛性ソーダ水溶液160mlを加えて、90~95℃で2時間攪拌した後、室温まで放冷して濾過、水洗し、乾燥して、モノアゾアミン中間体20質量部を得た。
得られたモノアゾアミン中間体の10質量部をN-メチル-2-ピロリドン30質量部に加えて溶解させて、5℃以下に冷却した。
そして、5℃以下に保ちながら、40%ニトロシル硫酸14質量部を滴下し、滴下終了後も同温度で1時間攪拌した後、過剰のニトロシル硫酸をスルファミン酸で除去して、モノアゾジアゾ液を得た。
【0048】
エチルアルコール50質量部にm-ジエチルアミノフェノール12質量部を加えて溶解して5℃以下に冷却した後に、上記で得たモノアゾジアゾ液を流入し、苛性ソーダ水溶液でpH4.5付近に調製して、10℃以下に保ちながら攪拌した。
そして、反応液を濃塩酸でpH1以下に調製し、次いで水で希釈後、濾過して沈殿物を採取して、水洗し、乾燥して、9質量部の下記(式2d)で示されるアゾ色素2dを得た。
【化15】
【0049】
[アゾ色素2bの合成]
2-アミノ-6-エトキシベンズチアゾール10質量部を85%リン酸180mlに加えて加熱溶解させた。そして、10~20℃に保ちながら、40質量%ニトロシル硫酸9質量部を15分要して滴下し、更に同温度で1時間攪拌した後、過剰のニトロシルをスルファミン酸で除去して、ジアゾ液を得た。
氷水300質量部にアニリノメタンスルホン酸ナトリウム30質量部を加えて溶解し、5℃以下に保ちながら、上記で得たジアゾ液を30分要して滴下し、同温度で1時間攪拌して、沈殿物を得た。反応終了後、濾過して、モノアゾ中間体の湿ケーキ35質量部を得た。
上記で得られたモノアゾ中間体の湿ケーキ30質量部と5%苛性ソーダ溶液を用いて、85℃で加熱加水分解して、濾過、乾燥して、モノアゾアミン中間体14質量部を得た。
【0050】
N-メチル-2-ピロリドン300mlに、上記で得たモノアゾアミン中間体10質量部を仕込み、加熱溶解させた後に10℃以下に冷却した。
そして、10℃以下に保ちながら、40質量%ニトロシル硫酸13質量部を滴下し、更
に同温度で30分間撹拌した後に、過剰のニトロシル硫酸をスルファミン酸で除去して、モノアゾジアゾ液を得た。
【0051】
エチルアルコール50質量部にN,N’-ジエチルアニリン8.5質量部を加え、10℃以下に保ちながら、上記で得たモノアゾジアゾ液を添加した。
更に、20%苛性ソーダ水溶液を添加してpH4~5に調整して、反応を進行させた。
次いで、塩酸を加えて酸性にして塩析させ、濾過、乾燥して12質量部の下記のアゾ色素2bを得た。
【化16】
【0052】
[アゾ色素2hの合成]
氷酢酸66質量部とプロピオン酸16質量部の混合液に、2-アミノ-6-エトキシベンズチアゾール4.7質量部を加えて溶解させ、10℃以下に冷却した。
そして、10℃以下に保ちながら、40%ニトロシル硫酸9.2質量部を15分要して滴下し、更に同温度で1時間撹拌した後、過剰のニトロシル硫酸をスルファミン酸で除去して、ジアゾ液を得た。
【0053】
氷水100mlにm-トルイジン5.7質量部、濃塩酸8.4質量部を加えて、10℃以下に保ちながら、上記で得たジアゾ液を滴下した。
滴下後、20%苛性ソーダ水溶液を添加して反応を進行させ、沈殿物を得た。濾過して、得られたモノアゾ中間体の湿ケーキを希塩酸中で加熱撹拌し、濾過、乾燥してモノアゾアミン中間体6.2質量部を得た。
【0054】
N-メチル-2-ピロリドン90質量部に、上記で得たモノアゾアミン中間体6質量部を仕込み、加熱溶解させた。
得られた溶液を10℃以下に冷却し、40%ニトロシル硫酸6.3質量部を10℃以下で滴下し、更に同温度で1時間撹拌した後、過剰のニトロシル硫酸をスルファミン酸で除去して、モノアゾジアゾ液を得た。
【0055】
エチルアルコール20質量部にm-ジエチルアミノフェノール3.6質量部を加えて、10℃以下に保ちながら、上記で得たモノアゾジアゾ液を添加した。
添加後、20%苛性ソーダ水溶液を添加してpH4~5に調整し、反応を進行させた。
次いで、塩酸を加えて酸性にして塩析させ、濾過、乾燥して、6.5質量部の下記のアゾ色素2hを得た。
【化17】
【0056】
[アゾ色素2jの合成]
氷450質量部に85%リン酸290質量部を加え、次いで、2-アミノ-6-メトキ
シベンゾチアゾール20質量部を加えて、80℃まで昇温して完全に溶解した後、室温まで放冷した。
その後、5~15℃に冷却して同温度を保ちながら、40%ニトロシル硫酸9.2質量部を30分要して滴下し、更に同温度で1時間攪拌した後に、過剰のニトロシル硫酸をスルファミン酸で除去して、ジアゾ液を得た。
【0057】
氷水300質量部にアニリノメタンスルホン酸ナトリウム30質量部を加えて溶解し、5℃以下に保ちながら、上記で得たジアゾ液を30分要して滴下し、更に同温度で1時間攪拌して、沈殿物を得た。そして、濾過して、モノアゾ中間体の湿ケーキ40質量部を得た。
得られたモノアゾ中間体の湿ケーキ40質量部を5%苛性ソーダ溶液、85℃で加熱加水分解して、濾過、乾燥して、モノアゾアミン中間体15質量部を得た。
得られたモノアゾアミン中間体14質量部をN-メチル-2-ピロリドン400mlに加えて溶解し、10℃以下に冷却して同温度を保ちながら、40%ニトロシル硫酸20質量部を投入し、同温度で1時間攪拌した後、過剰のニトロシル硫酸をスルファミン酸で除去して、モノアゾジアゾ液を得た。
【0058】
エチルアルコール400mlに1-ナフチルアミン8質量部を加えて溶解し、10℃以下に保ちながら、上記で得たモノアゾジアゾ液を15分要して滴下し、更に同温度で1時間攪拌して、沈殿物を得た。そして、濾過、乾燥して、ジスアゾアミン中間体12質量部を得た。
N-メチル-2-ピロリドン600mlに、上記で得たジスアゾアミン中間体9質量部を溶解し、10℃以下に保ちながら、濃塩酸30質量部を加えて、40%亜硝酸ナトリウム溶液12質量部を加えて、同温度で2時間攪拌した後、過剰の亜硝酸をスルファミン酸で除去して、ジスアゾジアゾ液を得た。
エチルアルコール1500mlにm-ジエチルアミノフェノール4.8質量部を加えて溶解し、10℃以下に保ちながら、10%酢酸ナトリウム水溶液を加えてpH1~4に調整しながら、上記で得たジスアゾジアゾ液を30分要して滴下し、更に同温度で1時間攪拌し、濾過して沈殿物を採取し、乾燥して、7質量部の下記のアゾ色素2jを得た。
【化18】
【0059】
[アゾ色素2kの合成]
2-アミノ-6-エトキシベンズチアゾール10質量部を85%リン酸180mlに加え、加熱溶解させた後に10~20℃に冷却した。
そして、同温度に保ちながら、40%ニトロシル硫酸9質量部を15分要して滴下し、更に同温度で1時間攪拌した後、過剰のニトロシル硫酸をスルファミン酸で除去して、ジアゾ液を得た。
氷水300質量部にアニリノメタンスルホン酸ナトリウム30質量部を加えて溶解し、5℃以下に保ちながら、上記で得たジアゾ液を30分要して滴下し、更に同温度で1時間攪拌して沈殿物を得た。
【0060】
そして、濾過して、沈殿物からなるモノアゾ中間体の湿ケーキ35質量部を得た。
得られたモノアゾ中間体の湿ケーキ35質量部を5%苛性ソーダ溶液、85℃で加熱加水分解して、濾過して沈殿物を採取し、乾燥して、モノアゾアミン中間体14質量部を得
た。
【0061】
N-メチル-2-ピロリドン300mlに、上記で得たモノアゾアミン中間体10質量部を加えて加熱溶解させた後に10℃以下に冷却した。
同温度を保ちながら、40%ニトロシル硫酸13質量部を滴下し、更に10℃以下で30分間保持撹拌した後、過剰のニトロシル硫酸をスルファミン酸で除去して、モノアゾジアゾ液を得た。
【0062】
エチルアルコール250mlに1-ナフチルアミン2.5質量部を仕込み、10℃以下に冷却した。10℃以下を保ちながら、上記で得たモノアゾジアゾ液を加えた。
そして、反応終了後に、濾過、乾燥して、ジスアゾアミン中間体5.5質量部を得た。
【0063】
N-メチル-2-ピロリドン100mlに、上記で得たジスアゾアミン中間体5質量部を加え、加熱溶解した後、10℃以下に冷却した。
そして、濃塩酸15質量部を添加し、30分攪拌した。
その後、40%亜硝酸ナトリウム液8質量部を加えて、10℃以下を保ちながら2時間攪拌した後、過剰の亜硝酸をスルファミン酸で除去して、ジスアゾジアゾ液を得た。
【0064】
エチルアルコール25質量部にm-ジエチルアニリン3.8質量部を加えて、10℃以下を保ちながら、上記で得たジスアゾジアゾ液を添加した。
次いで、20%苛性ソーダ水溶液を添加してpH4~5に調整し、反応を進行させて。
そして、塩酸を加えて酸性にし、塩析、濾過、乾燥して、7質量部の下記アゾ色素2kを得た。
【化19】
【0065】
[アゾ色素3bの合成]
2-アミノ-6-エトキシベンズチアゾール10質量部を85%リン酸180mlに加え、加熱溶解させた後に、10~20℃に冷却した。
同温度に保ちながら、40%ニトロシル硫酸9質量部を15分要して滴下し、更に同温度で1時間攪拌した後に、過剰のニトロシル硫酸をスルファミン酸で除去して、ジアゾ液を得た。
【0066】
氷水300質量部にアニリノメタンスルホン酸ナトリウム30質量部を加えて溶解し、5℃以下に保ちながら、上記で得たジアゾ液を30分要して滴下し、更に同温度で1時間攪拌して沈殿物を得た。そして、濾過して、沈殿物からなるモノアゾ中間体の湿ケーキ35質量部を得た。
得られたモノアゾ中間体の湿ケーキ40質量部を、5%苛性ソーダ溶液によって、85℃で加熱加水分解して、濾過、乾燥して、モノアゾアミン中間体14質量部を得た。
【0067】
N-メチル-2-ピロリドン300mlに、上記で得られたモノアゾアミン中間体10質量部を加えて、加熱溶解させた後に、10℃以下に冷却した。
同温度を保ちながら、40%ニトロシル硫酸13質量部を滴下した後に、過剰のニトロシル硫酸をスルファミン酸で除去して、モノアゾジアゾ液を得た。
【0068】
エタノール500mlに、1,8-ビス(ブチルアミノ)ナフタレン(公知の方法、例えば特許公報平1-44218で合成)13質量部を加えて溶解させて、10℃以下に冷却して、上記で得たモノアゾジアゾ液を滴下した。
そして、酢酸ソーダの水溶液でpH5~6に調製し、次いで濃塩酸でpH1以下に調製して、塩析、濾過、乾燥して、7質量部の下記のアゾ色素3bを得た。
【化20】
【0069】
[アゾ色素4aの合成]
水35mlに4-アミノベンゾニトリル5.9質量部と35%塩酸14.1質量部を加えて、5℃以下まで冷却した。
その後、同温度を保ちながら、40%亜硝酸ナトリウム水溶液9質量部を10分要して滴下し、更に同温度で1時間攪拌した後に、過剰の亜硝酸をスルファミン酸で除去して、ジアゾ液を得た。
【0070】
水200質量部にアニリノメタンスルホン酸ナトリウム10.4質量部を加えて、完全に溶解させ、5℃以下まで冷却した。
次いで、上記で得たジアゾ液を10分要して滴下して、更に同温度で1時間攪拌した。
そして、酢酸ナトリウムを加えてpH4.5に調整して反応を進行させ、沈殿物を得て、濾過して、得られたモノアゾ中間体の湿ケーキ35質量部と5%苛性ソーダ溶液を用いて85℃で加熱加水分解して、濾過、乾燥して、モノアゾアミン中間体7.6質量部を得た。
【0071】
水30mlに、上記で得たモノアゾアミン中間体6.7質量部を加えて超音波分散し、濃塩酸11質量部を加えた。
そして、40~50℃に保ちながら、40%亜硝酸ナトリウム水溶液6質量部を15分要して滴下し、更に同温度で4時間攪拌した後に、過剰の亜硝酸をスルファミン酸で除去して、モノアゾジアゾ液を得た。
エチルアルコール45mlに2,3-ジヒドロ-2-(ペンタ-3-イル)-1Hペリミジン(公知の方法、例えば特許公開2015-129307で合成)7.6質量部を溶解して、10℃以下に冷却し、同温度を保ちながら、上記で得たモノアゾジアゾ液を30分要して滴下して、反応を進行させて、沈殿物を得て、濾過、乾燥して、5.4質量部の下記のアゾ色素4aを得た。
【化21】
【0072】
実施例で用いられた部材は下記の通りである。
[樹脂フィルム]
・フィルム1:ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートの2/8質量比ブレンド樹脂から作製された無延伸フィルム。40mm×50mm×厚み100μm。耐
湿性と耐熱性に優れる。
・フィルム2:無延伸PVA(ポリビニルアルコール)フィルム。40mm×50mm×厚み100μm。PVAなので、耐水性と耐熱性に劣る。
【0073】
[実施例1]
試験片として用いる樹脂フィルムに対して2質量%のアゾ色素1aを秤量して、溶剤DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)に加熱溶解させて、DMF溶液を得た。
水158質量部に、ノニオン界面活性剤であるInvalon NA(ハンツマン社製)2質量部を加えて均質化し、上記で得たDMF溶液を添加して、超音波で分散し、次いで、水を追加して、200mlの染色浴を調製した。
上記で調製した染色浴に、フィルム1を投入して、常圧下、95℃で、染色した。
染色後、フィルム1を洗浄して、100℃で乾燥し、染色済みフィルム1を得た。
【0074】
上記で得た染色済みフィルム1を、恒温槽付自動一軸延伸装置(株式会社井元製作所製)にセットして、130℃で1分間保持した後、540mm/minの延伸速度で5倍に一軸延伸して、偏光膜を得て、各種評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0075】
[実施例2~11]
用いるアゾ色素の種類と染色濃度を、表1、2に記載された内容に変更した以外は、実施例1と同様に操作して、偏光膜を得て、評価した。評価結果を表1、2に示す。
【0076】
[比較例1、2]
樹脂フィルムの種類と、アゾ色素の種類と染色濃度を、表2に記載された内容に変更した以外は、実施例1と同様に操作して、偏光膜を得て、評価した。評価結果を表2に示す。
【0077】
<結果まとめ>
本発明の偏光膜用二色性アゾ色素を用いた全実施例は、良好なフィルムへの染着性を示し、作製された偏光膜は高い透過度、二色性比、偏光度を示した。
特に、実施例10~12の偏光膜はニュートラルグレーを呈し、特に良好な透過度、二色性比、偏光度を示した。
さらに、樹脂フィルムに、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートのブレンド樹脂を用いていることにより、優れた耐湿性と耐熱性を示し、上記光学特性と、耐湿性、耐熱性との優れたバランスを示した。
しかしながら、従来のヨウ素系色素とPVAフィルムを用いた比較例1と2は、耐湿性と耐熱性に劣り、特に比較例2は、アゾ色素の染色浴で染色した際にPVAフィルムの一部が短時間で溶解したために、染色済みフィルムを得られず、以降の評価を実施できなかった。
【0078】
<評価方法>
[染色済みフィルムの透過度測定]
紫外可視分光光度計U-2910((株)日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、380~780nmにおける吸収極大波長λmaxと透過度を測定した。
透過度が10%以上の場合を合格とした。
【0079】
[二色性比・偏光度測定]
位相差フィルム・光学材料検査装置RETS-100(大塚電子株式会社製)を用いて、波長380~780nmにおける吸収軸方向の透過率T0、透過軸方向の透過率T90を測定した。
二色性比Rdが2.5以上、偏光度Vが90%以上の場合を合格とした。
偏光度V(%)は、下記式から算出した。
V(%)={(T0-T90)/(T0+T90)}1/2×100
【0080】
また、単体透過率Ts(%)、平行透過率Tp(%)および直交透過率Tc(%)はそれぞれ下記式で表される。
Ts=(T0+T90)/2
Tp=(T0
2+T90
2)/2
Tc=T0×T90
ここで、
a=Ts/100、b=V/100
として、二色性比Rdを下記式によって算出した。
Rd=log{a(1-b)}/log{a(1+b)}
【0081】
[耐湿性]
偏光膜を、60℃、90%RHの環境下500時間放置して、外観の変化を目視によって観察した。
部分的にでも溶解、または膨潤していた場合は不合格とした。
【0082】
[耐熱性]
偏光膜を、100℃のオーブン内に1時間放置して、外観の変化を目視によって観察した。
部分的にでも溶解、変形していた場合は不合格とした。
【0083】
【0084】