(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
H01L21/304 647A
(21)【出願番号】P 2018139165
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 正幸
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-042093(JP,A)
【文献】特開2018-056176(JP,A)
【文献】特開2017-037985(JP,A)
【文献】特表2003-511849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成されたパターンの表面に吸着する吸着物質と、前記吸着物質よりも前記パターンの表面に対する親和性が低く、前記吸着物質と溶け合う溶解物質と、を含み、凝固点が前記吸着物質の凝固点よりも低い乾燥前処理液を前記基板の表面に供給して、前記パターンの表面に前記吸着物質を吸着させる乾燥前処理液供給工程と、
前記吸着物質の凝固点よりも低い冷却温度で前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液の一部を凝固させて、前記吸着物質を含む凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成する冷却工程と、
前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記凝固膜の形成に用いられなかった余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去する余剰液除去工程と、
余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去した後に、もしくは、余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去しながら、前記凝固膜を気体に変化させることにより前記基板の表面から除去する固体除去工程とを含み、
前記冷却工程は、前記吸着物質の凝固点よりも低く、前記乾燥前処理液の凝固点以下の前記冷却温度で、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記吸着物質を含む凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成し、その後、前記吸着物質および溶解物質を含み、前記凝固膜を介して前記パターンの表面に接する凝固層を形成する工程であり、
前記余剰液除去工程は、前記凝固層の温度を、前記冷却温度よりも高く、前記吸着物質の凝固点以下の融解温度まで上昇させることにより、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら前記凝固層を融解させる融解工程と、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記凝固層の融解によって生じた前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去する液体除去工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
基板に形成されたパターンの表面に吸着する吸着物質と、前記吸着物質よりも前記パターンの表面に対する親和性が低く、前記吸着物質と溶け合う溶解物質と、を含み、凝固点が前記吸着物質の凝固点よりも低い乾燥前処理液を前記基板の表面に供給して、前記パターンの表面に前記吸着物質を吸着させる乾燥前処理液供給工程と、
前記吸着物質の凝固点よりも低い冷却温度で前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液の一部を凝固させて、前記吸着物質を含む凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成する冷却工程と、
前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記凝固膜の形成に用いられなかった余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去する余剰液除去工程と、
余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去した後に、もしくは、余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去しながら、前記凝固膜を気体に変化させることにより前記基板の表面から除去する固体除去工程とを含み、
前記冷却工程は、隣り合う2つの前記パターンの側面上にそれぞれ配置されており、前記パターンの幅方向に間隔を空けて向かい合う2つの側面膜、を含む前記凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成する工程であり、
前記余剰液除去工程は、前記基板を水平に保持しながら鉛直な回転軸線まわりに回転させることにより、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記2つの側面膜の間の前記乾燥前処理液を含む、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を除去する工程を含む、基板処理方法。
【請求項3】
基板に形成されたパターンの表面に吸着する吸着物質と、前記吸着物質よりも前記パターンの表面に対する親和性が低く、前記吸着物質と溶け合う溶解物質と、を含み、凝固点が前記吸着物質の凝固点よりも低い乾燥前処理液を前記基板の表面に供給して、前記パターンの表面に前記吸着物質を吸着させる乾燥前処理液供給工程と、
前記吸着物質の凝固点よりも低い冷却温度で前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液の一部を凝固させて、前記吸着物質を含む凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成する冷却工程と、
前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記凝固膜の形成に用いられなかった余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去する余剰液除去工程と、
余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去した後に、もしくは、余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去しながら、前記凝固膜を気体に変化させることにより前記基板の表面から除去する固体除去工程とを含み、
前記冷却工程は、隣り合う2つの前記パターンの側面上にそれぞれ配置されており、前記パターンの幅方向に間隔を空けて向かい合う2つの側面膜、を含む前記凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成する工程であり、
前記固体除去工程は、前記凝固膜を介して接する倒壊した2つの前記パターンの間から前記凝固膜を除去することにより、倒壊した前記パターンの形状を前記パターンの復元力で復元するパターン復元工程を含む、基板処理方法。
【請求項4】
前記融解工程は、前記凝固層を加熱することにより、前記凝固層の温度を前記融解温度まで上昇させる加熱工程を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記融解温度は、室温であり、
前記融解工程は、前記凝固層が融解するまで、前記凝固層を放置する放置工程を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記冷却工程は、前記吸着物質の凝固点よりも低く、前記乾燥前処理液の凝固点よりも高い前記冷却温度で、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記乾燥前処理液を前記基板の表面に残しながら、前記凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成する工程であり、
前記余剰液除去工程は、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を除去する液体除去工程を含む、請求項2または3に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記冷却工程は、前記吸着物質の凝固点よりも低く、前記乾燥前処理液の凝固点以下の前記冷却温度で、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記吸着物質を含む凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成し、その後、前記吸着物質および溶解物質を含み、前記凝固膜を介して前記パターンの表面に接する凝固層を形成する工程であり、
前記余剰液除去工程は、気体への変化によって前記凝固膜が前記基板の表面から除去されているときに、前記凝固層を気体に変化させることにより前記基板の表面から除去する相転移工程を含む、請求項2または3に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記吸着物質は、親水基および疎水基の両方を含む両親媒性分子である、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記冷却工程は、前記基板を介して前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却する間接冷却工程を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記吸着物質の凝固点は、室温以上であり、
前記乾燥前処理液の凝固点は、室温よりも低く、
前記乾燥前処理液供給工程は、室温の前記乾燥前処理液を前記基板の表面に供給する工程を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記余剰液除去工程は、前記基板を水平に保持しながら鉛直な回転軸線まわりに回転させることにより、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を除去する基板回転保持工程を含む、請求項1、3、または、請求項1もしくは3にかかる請求項4~10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記余剰液除去工程は、前記基板の表面に向けて気体を吐出することにより、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を除去する気体供給工程を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
基板に形成されたパターンの表面に吸着する吸着物質と、前記吸着物質よりも前記パターンの表面に対する親和性が低く、前記吸着物質と溶け合う溶解物質と、を含み、凝固点が前記吸着物質の凝固点よりも低い乾燥前処理液を前記基板の表面に供給して、前記パターンの表面に前記吸着物質を吸着させる乾燥前処理液供給手段と、
前記吸着物質の凝固点よりも低い冷却温度で前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液の一部を凝固させて、前記吸着物質を含む凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成する冷却手段と、
前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記凝固膜の形成に用いられなかった余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去する余剰液除去手段と、
余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去した後に、もしくは、余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去しながら、前記凝固膜を気体に変化させることにより前記基板の表面から除去する固体除去手段とを備え、
前記冷却手段は、前記吸着物質の凝固点よりも低く、前記乾燥前処理液の凝固点以下の前記冷却温度で、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記吸着物質を含む凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成し、その後、前記吸着物質および溶解物質を含み、前記凝固膜を介して前記パターンの表面に接する凝固層を形成する手段であり、
前記余剰液除去手段は、前記凝固層の温度を、前記冷却温度よりも高く、前記吸着物質の凝固点以下の融解温度まで上昇させることにより、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら前記凝固層を融解させる融解手段と、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記凝固層の融解によって生じた前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去する液体除去手段と、を含む、基板処理装置。
【請求項14】
基板に形成されたパターンの表面に吸着する吸着物質と、前記吸着物質よりも前記パターンの表面に対する親和性が低く、前記吸着物質と溶け合う溶解物質と、を含み、凝固点が前記吸着物質の凝固点よりも低い乾燥前処理液を前記基板の表面に供給して、前記パターンの表面に前記吸着物質を吸着させる乾燥前処理液供給手段と、
前記吸着物質の凝固点よりも低い冷却温度で前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液の一部を凝固させて、前記吸着物質を含む凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成する冷却手段と、
前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記凝固膜の形成に用いられなかった余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去する余剰液除去手段と、
余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去した後に、もしくは、余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去しながら、前記凝固膜を気体に変化させることにより前記基板の表面から除去する固体除去手段とを備え、
前記冷却手段は、隣り合う2つの前記パターンの側面上にそれぞれ配置されており、前記パターンの幅方向に間隔を空けて向かい合う2つの側面膜、を含む前記凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成する手段であり、
前記余剰液除去手段は、前記基板を水平に保持しながら鉛直な回転軸線まわりに回転させることにより、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記2つの側面膜の間の前記乾燥前処理液を含む、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を除去する手段を含む、基板処理装置。
【請求項15】
基板に形成されたパターンの表面に吸着する吸着物質と、前記吸着物質よりも前記パターンの表面に対する親和性が低く、前記吸着物質と溶け合う溶解物質と、を含み、凝固点が前記吸着物質の凝固点よりも低い乾燥前処理液を前記基板の表面に供給して、前記パターンの表面に前記吸着物質を吸着させる乾燥前処理液供給手段と、
前記吸着物質の凝固点よりも低い冷却温度で前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液の一部を凝固させて、前記吸着物質を含む凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成する冷却手段と、
前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記凝固膜の形成に用いられなかった余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去する余剰液除去手段と、
余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去した後に、もしくは、余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去しながら、前記凝固膜を気体に変化させることにより前記基板の表面から除去する固体除去手段とを備え、
前記冷却手段は、隣り合う2つの前記パターンの側面上にそれぞれ配置されており、前記パターンの幅方向に間隔を空けて向かい合う2つの側面膜、を含む前記凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成する手段であり、
前記固体除去手段は、前記凝固膜を介して接する倒壊した2つの前記パターンの間から前記凝固膜を除去することにより、倒壊した前記パターンの形状を前記パターンの復元力で復元するパターン復元手段を含む、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象の基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板に対して必要に応じた処理が行われる。このような処理には、薬液やリンス液などの処理液を基板に供給することが含まれる。処理液が供給された後は、処理液を基板から除去し、基板を乾燥させる。
基板の表面にパターンが形成されている場合、基板を乾燥させるときに、基板に付着している処理液の表面張力に起因する力がパターンに加わり、パターンが倒壊することがある。その対策として、IPA(イソプロピルアルコール)などの表面張力が低い液体を基板に供給したり、パターンに対する液体の接触角を90度に近づける疎水化剤を基板に供給したりする方法が採られる。しかしながら、IPAや疎水化剤を用いたとしても、パターンを倒壊させる倒壊力が零にはならないので、パターンの強度によっては、これらの対策を行ったとしても、十分にパターンの倒壊を防止できない場合がある。
【0003】
近年、パターンの倒壊を防止する技術として昇華乾燥が注目されている。たとえば特許文献1には、昇華乾燥を行う基板処理方法および基板処理装置が開示されている。特許文献1に記載の昇華乾燥では、昇華性物質の融液が基板の表面に供給され、基板上のDIWが昇華性物質の融液に置換される。その後、基板上の昇華性物質の融液が冷却され、昇華性物質の凝固体が形成される。その後、基板上の昇華性物質の凝固体を昇華させる。これにより、昇華性物質の融液が基板から除去され、基板が乾燥する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、隣り合う2つの凸状パターンの間だけでなく、パターンの上方にも昇華性物質の融液がある状態で、昇華性物質の融液を凝固させる。液体が極めて狭い空間に配置されると、凝固点降下が発生する。半導体ウエハなどの基板では、隣り合う2つのパターンの間隔が狭いので、パターンの間に位置する昇華性物質の凝固点が降下してしまう。したがって、パターンの間に位置する昇華性物質の凝固点は、パターンの上方に位置する昇華性物質の凝固点よりも低い。
【0006】
パターンの間に位置する昇華性物質の凝固点だけが低いと、昇華性物質の融液の表層、つまり、昇華性物質の上面(液面)からパターンの上面までの範囲に位置する液体層が先に凝固し、パターンの間に位置する昇華性物質の融液が凝固せずに液体のまま残る場合がある。この場合、固体(昇華性物質の凝固体)と液体(昇華性物質の融液)の界面がパターンの近傍に形成され、パターンを倒壊させる倒壊力が発生することがある。パターンの微細化によってパターンがさらに脆弱になると、このような弱い倒壊力でも、パターンが倒壊してしまう。
【0007】
また、パターンの間に位置する昇華性物質の融液が凝固していない状態でパターンが倒壊すると、隣り合う2つのパターンの先端部同士が互いに接触する場合がある。この場合、昇華性物質の凝固体を昇華させても、パターンの先端部同士が互いに接触した接着状態が維持され、パターンが垂直状態に戻らないことがある。したがって、昇華乾燥を行ったとしても、パターンの強度によっては、十分にパターンの倒壊を防止できない場合がある。
【0008】
そこで、本発明の目的の一つは、昇華乾燥で基板を乾燥させたときに発生するパターンの倒壊を減らし、パターンの倒壊率を低下させることができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、基板に形成されたパターンの表面に吸着する吸着物質と、前記吸着物質よりも前記パターンの表面に対する親和性が低く、前記吸着物質と溶け合う溶解物質と、を含み、凝固点が前記吸着物質の凝固点よりも低い乾燥前処理液を前記基板の表面に供給して、前記パターンの表面に前記吸着物質を吸着させる乾燥前処理液供給工程と、前記吸着物質の凝固点よりも低い冷却温度で前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液の一部を凝固させて、前記吸着物質を含む凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成する冷却工程と、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記凝固膜の形成に用いられなかった余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去する余剰液除去工程と、余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去した後に、もしくは、余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去しながら、前記凝固膜を気体に変化させることにより前記基板の表面から除去する固体除去工程とを含む、基板処理方法を提供する。冷却工程は、基板上の乾燥前処理液を凝固させる凝固工程および凝固膜を含む凝固体を形成する凝固体形成工程の一例である。凝固膜は、乾燥前処理液が固化した固化膜に相当する。
【0010】
この構成によれば、吸着物質と溶解物質とを含む乾燥前処理液を基板の表面に供給する。吸着物質は、溶解物質よりもパターンの表面に対する親和性が高く、溶解物質よりもパターンの表面に吸着し易い。乾燥前処理液に含まれる吸着物質は、基板に形成されたパターンの表面に吸着する。したがって、パターンの表面と乾燥前処理液との界面を表す固液界面で乾燥前処理液中の吸着物質の濃度が増加する。そのため、固液界面付近の乾燥前処理液の凝固点は、吸着物質の凝固点に近い温度まで上昇する。
【0011】
乾燥前処理液を基板の表面に供給した後は、吸着物質の凝固点よりも低い冷却温度で基板の表面上の乾燥前処理液を冷却する。固液界面付近の乾燥前処理液の凝固点が上昇しているので、基板上の乾燥前処理液を冷却温度で冷却すると、乾燥前処理液が固液界面およびその近傍で凝固する。これにより、吸着物質を含む凝固膜がパターンの表面に沿って形成される。その後、基板上の凝固膜を気体に変化させる。これにより、凝固膜が基板の表面から除去される。
【0012】
凝固膜がパターンの表面に沿って形成されるので、凝固膜を除去するまでの間に隣り合う2つのパターンが互いに近づく方向に倒壊したとしても、この2つのパターンは、直接的に接するのではなく、凝固膜を介して接する。したがって、パターンが塑性変形や破損していなければ、凝固膜を除去すると、倒壊したパターンは、パターンの復元力で垂直状態に戻る。言い換えると、凝固膜を除去するまでの間にパターンが倒壊しても、凝固膜を除去した後には、パターンが垂直状態に戻る。これにより、パターンの強度が高い場合だけでなく、パターンの強度が低い場合も、最終的なパターンの倒壊率を改善することができる。
【0013】
パターンは、単一の材料で形成された構造物であってもよいし、基板の厚み方向に積層された複数の層を含む構造物であってもよい。パターンの表面は、基板の厚み方向に直交する基板の平面に対して垂直または概ね垂直な側面と、基板の平面と平行または概ね平行な上面とを含む。凝固膜は、たとえば、パターンの表面と平行または概ね平行な表面を有する薄膜である。凝固膜がパターンの表面全域に形成される場合、凝固膜の表面は、パターンの上面と平行または概ね平行な上面と、パターンの側面と平行または概ね平行な側面とを含む。パターンの表面全域ではなく、パターンの表面の一部だけが、凝固膜に覆われてもよい。凝固膜の厚みは、パターンの高さより小さくてもよいし、隣り合う2つのパターンの間隔(隣り合う2つのパターンの側面の間隔)より小さくてもよい。
【0014】
溶解物質が吸着物質よりもパターンの表面に対する親和性が低いとは、吸着物質が溶解物質よりもパターンの表面に吸着し易いことを意味する。吸着物質と溶解物質とを含む乾燥前処理液を基板の表面に供給すると、乾燥前処理液に含まれる吸着物質がパターンの表面に吸着し、固液界面付近の乾燥前処理液中の吸着物質の濃度が高まる。固液界面付近の乾燥前処理液中の吸着物質の濃度は、基板に供給される前の乾燥前処理液中の吸着物質の濃度よりも高い。溶解物質が吸着物質よりもパターンの表面に対する親和性が低いとは、固液界面付近の乾燥前処理液中の吸着物質の濃度がこのようになる関係を意味する。
【0015】
前記基板処理方法は、前記凝固膜が形成されてから前記基板の表面から除去されるまで、前記凝固膜を前記吸着物質の凝固点以下の温度に維持する温度維持工程をさらに含んでいてもよい。この場合、室温、つまり、基板が配置されるチャンバーの中の温度が吸着物質の凝固点以下であれば、基板上の凝固膜を強制的に冷却せずに吸着物質の凝固点以下の温度に維持できる。室温が吸着物質の凝固点より高ければ、基板に接するクーリングプレートや室温よりも低温の冷却流体を用いて、基板上の凝固膜を強制的に冷却すればよい。
【0016】
前記一実施形態において、以下の特徴の少なくとも1つを、前記基板処理方法に加えてもよい。
前記固体除去工程は、前記凝固膜を介して接する倒壊した2つの前記パターンの間から前記凝固膜を除去することにより、倒壊した前記パターンの形状を前記パターンの復元力で復元するパターン復元工程を含む。
この構成によれば、前述のように、隣り合う2つのパターンが互いに近づく方向に倒壊したとしても、この2つのパターンは、直接的に接するのではなく、凝固膜を介して接する。したがって、パターンが塑性変形や破損していなければ、凝固膜を除去すると、倒壊したパターンが弾性回復力で回復する。これにより、パターンの強度が低い場合であっても、最終的なパターンの倒壊率を改善することができる。
【0017】
凝固膜を除去する前は、凝固膜の一部が倒壊した2つのパターンの間に介在する。凝固膜を除去した後に倒壊したパターンの形状が元に戻るのであれば、倒壊した2つのパターンの一部が、凝固膜を除去する前に直接的に接していてもよい。このような場合でも、凝固膜を除去すると、2つのパターンを倒壊状態に維持する接着力が弱まるので、パターンが塑性変形や破損していなければ、倒壊したパターンは、パターンの復元力で垂直状態に戻る。
【0018】
前記吸着物質は、親水基および疎水基の両方を含む両親媒性分子である。
この構成によれば、親水基および疎水基の両方が吸着物質の分子に含まれている。したがって、パターンの表面が親水性または疎水性であっても、もしくは、親水性の部分と疎水性の部分とがパターンの表面に含まれていても、吸着物質は、パターンの表面に吸着する。これにより、固液界面付近の乾燥前処理液中の吸着物質の濃度が高まり、乾燥前処理液の凝固点が吸着物質の凝固点に近い温度まで上昇する。これにより、吸着物質を含む凝固膜をパターンの表面に沿って形成できる。
【0019】
前記冷却工程は、前記基板を介して前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却する間接冷却工程を含む。
この構成によれば、基板の表面上の乾燥前処理液を直接的に冷却するのではなく、基板を冷却することにより基板の表面上の乾燥前処理液を間接的に冷却する。したがって、基板の表面上の乾燥前処理液のうち基板の表面(パターンの表面を含む)に接する底層が効率的に冷却される。これにより、固液界面付近の乾燥前処理液を優先的に冷却でき、凝固膜を効率的に形成できる。
【0020】
前記吸着物質の凝固点は、室温以上であり、前記乾燥前処理液の凝固点は、室温よりも低く、前記乾燥前処理液供給工程は、室温の前記乾燥前処理液を前記基板の表面に供給する工程を含む。
この構成によれば、室温の乾燥前処理液を基板に供給する。吸着物質の凝固点が室温以上である一方で、乾燥前処理液の凝固点は室温よりも低い。吸着物質の融液を基板に供給する場合は、吸着物質を液体に維持するために吸着物質を加熱する必要がある。これに対して、乾燥前処理液を基板に供給する場合は、乾燥前処理液を加熱しなくても乾燥前処理液を液体に維持できる。これにより、基板の処理に要するエネルギーの消費量を減らすことができる。
【0021】
前記冷却工程は、前記吸着物質の凝固点よりも低く、前記乾燥前処理液の凝固点よりも高い前記冷却温度で、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記乾燥前処理液を前記基板の表面に残しながら、前記凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成する工程であり、前記余剰液除去工程は、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を除去する液体除去工程を含む。
【0022】
この構成によれば、基板の表面上の乾燥前処理液を、吸着物質の凝固点よりも低く、乾燥前処理液の凝固点よりも高い冷却温度で冷却する。冷却温度が吸着物質の凝固点よりも低いので、固液界面付近の乾燥前処理液が凝固し、凝固膜が形成される。その一方で、冷却温度が乾燥前処理液の凝固点よりも高いので、固液界面から離れた位置では、乾燥前処理液は、凝固せずに液体に維持される。
【0023】
凝固しなかった乾燥前処理液を除去するときに、乾燥前処理液の上面(液面)が隣り合う2つのパターンの間に移動し、パターンが倒壊したとしても、この2つのパターンは、直接的に接するのではなく、凝固膜を介して接する。したがって、パターンが塑性変形や破損していなければ、凝固膜を除去すると、倒壊したパターンは、自身の復元力で垂直状態に戻る。これにより、パターンの強度が低い場合であっても、最終的なパターンの倒壊率を改善することができる。
【0024】
前記冷却工程は、前記吸着物質の凝固点よりも低く、前記乾燥前処理液の凝固点以下の前記冷却温度で、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記吸着物質を含む凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成し、その後、前記吸着物質および溶解物質を含み、前記凝固膜を介して前記パターンの表面に接する凝固層を形成する工程であり、前記余剰液除去工程は、気体への変化によって前記凝固膜が前記基板の表面から除去されているときに、前記凝固層を気体に変化させることにより前記基板の表面から除去する相転移工程を含む。
【0025】
この構成によれば、基板の表面上の乾燥前処理液を、吸着物質の凝固点よりも低く、乾燥前処理液の凝固点以下の冷却温度で冷却する。冷却温度が吸着物質の凝固点よりも低いので、固液界面付近の乾燥前処理液が凝固し、凝固膜が形成される。さらに、冷却温度が乾燥前処理液の凝固点以下であるので、固液界面から離れた位置でも、乾燥前処理液が凝固する。これにより、凝固膜を介してパターンの表面に接する凝固層が形成される。凝固層は、凝固膜が基板の表面から除去されているときに気体に変化し基板の表面から除去される。
【0026】
隣り合う2つのパターンの間隔が狭いので、凝固層が形成されるときに、固体と液体の界面がパターンの近傍に形成され、パターンを倒壊させる倒壊力が発生することがある。この倒壊力でパターンが倒壊したとしても、パターンが倒壊する前に凝固膜が形成されているので、隣り合う2つのパターンは、直接的に接するのではなく、凝固膜を介して接する。したがって、パターンが塑性変形や破損していなければ、凝固膜を除去すると、倒壊したパターンは、自身の復元力で垂直状態に戻る。これにより、パターンの強度が低い場合であっても、最終的なパターンの倒壊率を改善することができる。
【0027】
前記冷却工程は、前記吸着物質の凝固点よりも低く、前記乾燥前処理液の凝固点以下の前記冷却温度で、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記吸着物質を含む凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成し、その後、前記吸着物質および溶解物質を含み、前記凝固膜を介して前記パターンの表面に接する凝固層を形成する工程であり、前記余剰液除去工程は、前記凝固層の温度を、前記冷却温度よりも高く、前記吸着物質の凝固点以下の融解温度まで上昇させることにより、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら前記凝固層を融解させる融解工程と、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記凝固層の融解によって生じた前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去する液体除去工程と、を含む。
【0028】
この構成によれば、基板の表面上の乾燥前処理液を、吸着物質の凝固点よりも低く、乾燥前処理液の凝固点以下の冷却温度で冷却する。冷却温度が吸着物質の凝固点よりも低いので、固液界面付近の乾燥前処理液が凝固し、凝固膜が形成される。さらに、冷却温度が乾燥前処理液の凝固点以下であるので、固液界面から離れた位置でも、乾燥前処理液が凝固する。これにより、凝固膜を介してパターンの表面に接する凝固層が形成される。
【0029】
凝固層が形成された後は、凝固層の温度を、冷却温度よりも高く、吸着物質の凝固点以下の融解温度まで上昇させる。これにより、基板上の凝固層が融解し、乾燥前処理液に戻る。凝固層の融解によって生じた乾燥前処理液は、凝固膜を基板の表面に残しながら、基板の表面から除去される。これにより、凝固膜の形成に用いられなかった余剰の乾燥前処理液が除去される。
【0030】
凝固層の融解によって生じた乾燥前処理液を除去するときに、乾燥前処理液の上面が隣り合う2つのパターンの間に移動し、パターンが倒壊したとしても、この2つのパターンは、直接的に接するのではなく、凝固膜を介して接する。したがって、パターンが塑性変形や破損していなければ、凝固膜を除去すると、倒壊したパターンは、自身の復元力で垂直状態に戻る。これにより、パターンの強度が低い場合であっても、最終的なパターンの倒壊率を改善することができる。
【0031】
前記融解工程は、前記凝固層を加熱することにより、前記凝固層の温度を前記融解温度まで上昇させる加熱工程を含む。
この構成によれば、基板上の凝固層が強制的に加熱され融解する。これにより、凝固層を短時間で乾燥前処理液に戻すことができる。
【0032】
前記融解温度は、室温であり、前記融解工程は、前記凝固層が融解するまで、前記凝固層を放置する放置工程を含む。
この構成によれば、基板上の凝固層を室温の空間で放置する。融解温度は室温である。したがって、基板上の凝固層を放置すると、凝固層の温度は緩やかに融解温度に近づく。そして、凝固層の温度が融解温度(室温)に達すると、凝固層が融解し乾燥前処理液に戻る。したがって、基板上の凝固層を強制的に加熱しなくても融解させることができる。
【0033】
前記液体除去工程は、前記基板を水平に保持しながら鉛直な回転軸線まわりに回転させることにより、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を除去する基板回転保持工程を含む。
この構成によれば、凝固膜の表面上に乾燥前処理液がある状態で、基板を水平に保持しながら鉛直な回転軸線まわりに回転させる。基板上の乾燥前処理液は、遠心力によって基板から排出される。それと同時に、基板上の乾燥前処理液の一部は、基板の回転によって生じる気流によって蒸発する。これにより、凝固膜を基板の表面に残しながら、余剰の乾燥前処理液を基板の表面から除去できる。
【0034】
前記液体除去工程は、前記基板の表面に向けて気体を吐出することにより、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を除去する気体供給工程を含む。
この構成によれば、凝固膜の表面上に乾燥前処理液がある状態で、基板の表面に気体を吹き付ける。基板上の乾燥前処理液は、気体の圧力で基板から排出される。それと同時に、基板上の乾燥前処理液の一部は、気体の供給によって蒸発する。これにより、凝固膜を基板の表面に残しながら、余剰の乾燥前処理液を基板の表面から除去できる。
【0035】
前記固体除去工程は、前記凝固膜を含む凝固体を昇華させる昇華工程と、前記凝固体の分解(たとえば熱分解や光分解)により前記凝固体を固体または液体から気体に変化させる分解工程と、前記凝固体の反応(たとえば酸化反応)により前記凝固体を固体または液体から気体に変化させる反応工程と、前記凝固体にプラズマを照射するプラズマ照射工程と、のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0036】
前記昇華工程は、前記基板を水平に保持しながら鉛直な回転軸線まわりに回転させる基板回転保持工程と、前記凝固体に気体を吹き付ける気体供給工程と、前記凝固体を加熱する加熱工程と、前記凝固体に接する雰囲気の圧力を低下させる減圧工程と、前記凝固体に光を照射する光照射工程と、前記凝固体に超音波振動を与える超音波振動付与工程と、のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0037】
本発明の他の実施形態は、基板に形成されたパターンの表面に吸着する吸着物質と、前記吸着物質よりも前記パターンの表面に対する親和性が低く、前記吸着物質と溶け合う溶解物質と、を含み、凝固点が前記吸着物質の凝固点よりも低い乾燥前処理液を前記基板の表面に供給して、前記パターンの表面に前記吸着物質を吸着させる乾燥前処理液供給手段と、前記吸着物質の凝固点よりも低い冷却温度で前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液の一部を凝固させて、前記吸着物質を含む凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成する冷却手段と、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記凝固膜の形成に用いられなかった余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去する余剰液除去手段と、余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去した後に、もしくは、余剰の前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去しながら、前記凝固膜を気体に変化させることにより前記基板の表面から除去する固体除去手段とを備える、基板処理装置を提供する。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
前記他の実施形態において、前記基板処理装置は、次の特徴を有していてもよい。具体的には、前記冷却手段は、前記吸着物質の凝固点よりも低く、前記乾燥前処理液の凝固点以下の前記冷却温度で、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却することにより、前記吸着物質を含む凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成し、その後、前記吸着物質および溶解物質を含み、前記凝固膜を介して前記パターンの表面に接する凝固層を形成する手段であり、前記余剰液除去手段は、前記凝固層の温度を、前記冷却温度よりも高く、前記吸着物質の凝固点以下の融解温度まで上昇させることにより、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら前記凝固層を融解させる融解手段と、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記凝固層の融解によって生じた前記乾燥前処理液を前記基板の表面から除去する液体除去手段と、を含む。
前記他の実施形態において、前記基板処理装置は、次の特徴を有していてもよい。具体的には、前記冷却手段は、隣り合う2つの前記パターンの側面上にそれぞれ配置されており、前記パターンの幅方向に間隔を空けて向かい合う2つの側面膜、を含む前記凝固膜を前記パターンの表面に沿って形成する手段であり、前記余剰液除去手段は、前記基板を水平に保持しながら鉛直な回転軸線まわりに回転させることにより、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記2つの側面膜の間の前記乾燥前処理液を含む、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を除去する手段を含む。
前記他の実施形態において、前記基板処理装置は、次の特徴を有していてもよい。具体的には、前記固体除去手段は、前記凝固膜を介して接する倒壊した2つの前記パターンの間から前記凝固膜を除去することにより、倒壊した前記パターンの形状を前記パターンの復元力で復元するパターン復元手段を含む。
【0038】
前記冷却手段は、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を直接的に冷却する直接冷却手段と、前記基板を介して前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を冷却する間接冷却手段と、のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
前記余剰液除去手段は、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を除去する液体除去手段と、気体への変化によって前記凝固膜が前記基板の表面から除去されているときに、前記凝固層を気体に変化させることにより前記基板の表面から除去する相転移手段と、前記凝固層の温度を、前記冷却温度よりも高く、前記吸着物質の凝固点以下の融解温度まで上昇させることにより、前記凝固膜を前記基板の表面に残しながら前記凝固層を融解させる融解手段と、のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0039】
前記融解手段が前記余剰液除去手段に含まれる場合、前記融解手段は、前記凝固層を加熱することにより、前記凝固層の温度を前記融解温度まで上昇させる加熱手段と、前記凝固層が融解するまで、前記凝固層を放置する放置手段と、のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る基板処理装置を上から見た模式図である。
【
図1B】基板処理装置を側方から見た模式図である。
【
図2】基板処理装置に備えられた処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
【
図3】制御装装置のハードウェアを示すブロック図である。
【
図4】基板処理装置によって行われる基板の処理の一例(第1処理例)について説明するための工程図である。
【
図5A】
図4に示す処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図5B】
図4に示す処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図5C】
図4に示す処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図5D】
図4に示す処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図6】基板処理装置によって行われる基板の処理の一例(第2処理例)について説明するための工程図である。
【
図7A】
図6に示す処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図7B】
図6に示す処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図7C】
図6に示す処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図8】基板処理装置によって行われる基板の処理の一例(第3処理例)について説明するための工程図である。
【
図9A】
図8に示す処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図9B】
図8に示す処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図9C】
図8に示す処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図9D】
図8に示す処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
以下の説明において、基板処理装置1内の気圧は、特に断りがない限り、基板処理装置1が設置されるクリーンルーム内の気圧(たとえば1気圧またはその近傍の値)に維持されているものとする。
図1Aは、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1を上から見た模式図である。
図1Bは、基板処理装置1を側方から見た模式図である。
【0042】
図1Aに示すように、基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板Wを収容するキャリアCを保持するロードポートLPと、ロードポートLP上のキャリアCから搬送された基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体で処理する複数の処理ユニット2と、ロードポートLP上のキャリアCと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットと、基板処理装置1を制御する制御装置3とを備えている。
【0043】
搬送ロボットは、ロードポートLP上のキャリアCに対して基板Wの搬入および搬出を行うインデクサロボットIRと、複数の処理ユニット2に対して基板Wの搬入および搬出を行うセンターロボットCRとを含む。インデクサロボットIRは、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送し、センターロボットCRは、インデクサロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。センターロボットCRは、基板Wを支持するハンドH1を含み、インデクサロボットIRは、基板Wを支持するハンドH2を含む。
【0044】
複数の処理ユニット2は、平面視でセンターロボットCRのまわりに配置された複数のタワーTWを形成している。
図1Aは、4つのタワーTWが形成されている例を示している。センターロボットCRは、いずれのタワーTWにもアクセス可能である。
図1Bに示すように、各タワーTWは、上下に積層された複数(たとえば3つ)の処理ユニット2を含む。
【0045】
図2は、基板処理装置1に備えられた処理ユニット2の内部を水平に見た模式図である。
処理ユニット2は、基板Wに処理液を供給するウェット処理ユニット2wである。処理ユニット2は、内部空間を有する箱型のチャンバー4と、チャンバー4内で1枚の基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック10と、回転軸線A1まわりにスピンチャック10を取り囲む筒状の処理カップ21とを含む。
【0046】
チャンバー4は、基板Wが通過する搬入搬出口5bが設けられた箱型の隔壁5と、搬入搬出口5bを開閉するシャッター7とを含む。FFU6(ファン・フィルター・ユニット)は、隔壁5の上部に設けられた送風口5aの上に配置されている。FFU6は、クリーンエアー(フィルターによってろ過された空気)を送風口5aからチャンバー4内に常時供給する。チャンバー4内の気体は、処理カップ21の底部に接続された排気ダクト8を通じてチャンバー4から排出される。これにより、クリーンエアーのダウンフローがチャンバー4内に常時形成される。排気ダクト8に排出される排気の流量は、排気ダクト8内に配置された排気バルブ9の開度に応じて変更される。
【0047】
スピンチャック10は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース12と、スピンベース12の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン11と、スピンベース12の中央部から下方に延びるスピン軸13と、スピン軸13を回転させることによりスピンベース12および複数のチャックピン11を回転させるスピンモータ14とを含む。スピンチャック10は、複数のチャックピン11を基板Wの外周面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース12の上面12uに吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0048】
処理カップ21は、基板Wから外方に排出された処理液を受け止める複数のガード24と、複数のガード24によって下方に案内された処理液を受け止める複数のカップ23と、複数のガード24および複数のカップ23を取り囲む円筒状の外壁部材22とを含む。
図2は、4つのガード24と3つのカップ23とが設けられており、最も外側のカップ23が上から3番目のガード24と一体である例を示している。
【0049】
ガード24は、スピンチャック10を取り囲む円筒部25と、円筒部25の上端部から回転軸線A1に向かって斜め上に延びる円環状の天井部26とを含む。複数の天井部26は、上下に重なっており、複数の円筒部25は、同心円状に配置されている。天井部26の円環状の上端は、平面視で基板Wおよびスピンベース12を取り囲むガード24の上端24uに相当する。複数のカップ23は、それぞれ、複数の円筒部25の下方に配置されている。カップ23は、ガード24によって下方に案内された処理液を受け止める環状の受液溝を形成している。
【0050】
処理ユニット2は、複数のガード24を個別に昇降させるガード昇降ユニット27を含む。ガード昇降ユニット27は、上位置から下位置までの任意の位置にガード24を位置させる。
図2は、2つのガード24が上位置に配置されており、残り2つのガード24が下位置に配置されている状態を示している。上位置は、ガード24の上端24uがスピンチャック10に保持されている基板Wが配置される保持位置よりも上方に配置される位置である。下位置は、ガード24の上端24uが保持位置よりも下方に配置される位置である。
【0051】
回転している基板Wに処理液を供給するときは、少なくとも一つのガード24が上位置に配置される。この状態で、処理液が基板Wに供給されると、処理液が遠心力で基板Wから振り切られる。振り切られた処理液は、基板Wに水平に対向するガード24の内面に衝突し、このガード24に対応するカップ23に案内される。これにより、基板Wから排出された処理液が処理カップ21に集められる。
【0052】
処理ユニット2は、スピンチャック10に保持されている基板Wに向けて処理液を吐出する複数のノズルを含む。複数のノズルは、基板Wの上面に向けて薬液を吐出する薬液ノズル31と、基板Wの上面に向けてリンス液を吐出するリンス液ノズル35と、基板Wの上面に向けて乾燥前処理液を吐出する乾燥前処理液ノズル39と、基板Wの上面に向けて置換液を吐出する置換液ノズル43とを含む。
【0053】
薬液ノズル31は、チャンバー4内で水平に移動可能なスキャンノズルであってもよいし、チャンバー4の隔壁5に対して固定された固定ノズルであってもよい。リンス液ノズル35、乾燥前処理液ノズル39、および置換液ノズル43についても同様である。
図2は、薬液ノズル31、リンス液ノズル35、乾燥前処理液ノズル39、および置換液ノズル43が、スキャンノズルであり、これら4つのノズルにそれぞれ対応する4つのノズル移動ユニットが設けられている例を示している。
【0054】
薬液ノズル31は、薬液ノズル31に薬液を案内する薬液配管32に接続されている。薬液配管32に介装された薬液バルブ33が開かれると、薬液が、薬液ノズル31の吐出口から下方に連続的に吐出される。薬液ノズル31から吐出される薬液は、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤の少なくとも1つを含む液であってもよいし、これ以外の液体であってもよい。
【0055】
図示はしないが、薬液バルブ33は、薬液が流れる内部流路と内部流路を取り囲む環状の弁座とが設けられたバルブボディと、弁座に対して移動可能な弁体と、弁体が弁座に接触する閉位置と弁体が弁座から離れた開位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他のバルブについても同様である。アクチュエータは、空圧アクチュエータまたは電動アクチュエータであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。制御装置3は、アクチュエータを制御することにより、薬液バルブ33を開閉させる。
【0056】
薬液ノズル31は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に薬液ノズル31を移動させるノズル移動ユニット34に接続されている。ノズル移動ユニット34は、薬液ノズル31から吐出された薬液が基板Wの上面に着液する処理位置と、薬液ノズル31が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間で薬液ノズル31を水平に移動させる。
【0057】
リンス液ノズル35は、リンス液ノズル35にリンス液を案内するリンス液配管36に接続されている。リンス液配管36に介装されたリンス液バルブ37が開かれると、リンス液が、リンス液ノズル35の吐出口から下方に連続的に吐出される。リンス液ノズル35から吐出されるリンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:DIW(Deionized Water))である。リンス液は、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0058】
リンス液ノズル35は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方にリンス液ノズル35を移動させるノズル移動ユニット38に接続されている。ノズル移動ユニット38は、リンス液ノズル35から吐出されたリンス液が基板Wの上面に着液する処理位置と、リンス液ノズル35が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間でリンス液ノズル35を水平に移動させる。
【0059】
乾燥前処理液ノズル39は、乾燥前処理液ノズル39に乾燥前処理液を案内する乾燥前処理液配管40に接続されている。乾燥前処理液配管40に介装された乾燥前処理液バルブ41が開かれると、乾燥前処理液が、乾燥前処理液ノズル39の吐出口から下方に連続的に吐出される。同様に、置換液ノズル43は、置換液ノズル43に置換液を案内する置換液配管44に接続されている。置換液配管44に介装された置換液バルブ45が開かれると、置換液が、置換液ノズル43の吐出口から下方に連続的に吐出される。
【0060】
乾燥前処理液は、パターンP1(
図5A参照)の表面に吸着する吸着物質と、吸着物質と溶け合う溶解物質とを含む。乾燥前処理液は、吸着物質および溶解物質が均一に溶け合った溶液である。吸着物質および溶解物質のいずれが溶質であってもよい。吸着物質および溶解物質と溶け合う溶媒が乾燥前処理液に含まれる場合は、吸着物質および溶解物質の両方が溶質であってもよい。
【0061】
乾燥前処理液の凝固点(1気圧での凝固点。以下同様。)は、吸着物質の凝固点よりも低い。同様に、溶解物質の凝固点は、吸着物質の凝固点よりも低い。乾燥前処理液の凝固点は、室温(23℃またはその近傍の値)よりも低い。乾燥前処理液の凝固点は、室温以上であってもよい。吸着物質は、溶解物質よりもパターンP1の表面に対する親和性が高い物質である。吸着物質は、親水基および疎水基の両方を含む両親媒性分子であってもよい。吸着物質の蒸気圧は、溶解物質の蒸気圧より低くてもよいし、溶解物質の蒸気圧より高くてもよい。溶解物質の蒸気圧は、水の蒸気圧より高くてもよい。
【0062】
吸着物質は、常温または常圧で液体を経ずに固体から気体に変化する昇華性物質であってもよいし、昇華性物質以外の物質であってもよい。同様に、溶解物質は、昇華性物質であってもよいし、昇華性物質以外の物質であってもよい。乾燥前処理液に含まれる昇華性物質の種類は2つ以上であってもよい。つまり、吸着物質および溶解物質の両方が昇華性物質であり、吸着物質および溶解物質とは種類の異なる昇華性物質が乾燥前処理液に含まれていてもよい。
【0063】
昇華性物質は、たとえば、2-メチル-2-プロパノール(別名:tert-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール)やシクロヘキサノールなどのアルコール類、フッ化炭化水素化合物、1,3,5-トリオキサン(別名:メタホルムアルデヒド)、しょうのう(別名:カンフル、カンファー)、ナフタレン、ヨウ素、およびシクロヘキサンのいずれかであってもよいし、これら以外の物質であってもよい。
【0064】
溶媒は、たとえば、純水、IPA、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、アセトン、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル、1-エトキシ-2-プロパノール)、エチレングリコール、およびハイドロフルオロカーボン(hydrofluorocarbon)からなる群より選ばれた少なくとも1種であってもよい。もしくは、昇華性物質が溶媒であってもよい。
【0065】
以下では、吸着物質がターシャリーブチルアルコールであり、溶解物質がHFEである例について説明する。吸着物質および溶解物質の組み合わせは、ターシャリーブチルアルコールおよびHFEの組み合わせ以外に、ターシャリーブチルアルコールおよび純水であってもよいし、シクロヘキサノールおよびHFEであってもよいし、樟脳およびシクロヘキサン(室温で液体)であってもよい。
【0066】
ターシャリーブチルアルコールの凝固点は、25℃またはその近傍の値である。HFEの凝固点は、水の凝固点(0℃)よりも低い。ターシャリーブチルアルコールの分子式は、C4H10Oであり、メチル基とヒドロキシル基とがターシャリーブチルアルコールの分子に含まれる。ターシャリーブチルアルコールは、界面活性剤の一例である。ターシャリーブチルアルコールは、水やアルコールに均一に溶ける一方で、HFEは、水に殆ど溶けない。HFEの表面張力は、水の表面張力よりも低い。ターシャリーブチルアルコールおよびHFEの溶液の凝固点は、室温よりも低い。基板処理装置1は、室温に維持されたクリーンルーム内に配置されている。したがって、乾燥前処理液を加熱しなくても、乾燥前処理液を液体に維持できる。
【0067】
後述するように、置換液は、リンス液の液膜で覆われた基板Wの上面に供給され、乾燥前処理液は、置換液の液膜で覆われた基板Wの上面に供給される。置換液は、リンス液および乾燥前処理液の両方と溶け合う液体である。置換液は、たとえば、IPAまたはHFEである。置換液は、IPAおよびHFEの混合液であってもよいし、IPAおよびHFEの少なくとも一方とこれら以外の成分とを含んでいてもよい。IPAおよびHFEは、水およびフッ化炭化水素化合物の両方と溶け合う液体である。HFEは難溶解性だが、IPAに混ざるため、基板W上のリンス液をIPAで置換した後、HFEを基板Wに供給してもよい。
【0068】
リンス液の液膜で覆われた基板Wの上面に置換液が供給されると、基板W上の殆どのリンス液は、置換液によって押し流され、基板Wから排出される。残りの微量のリンス液は、置換液に溶け込み、置換液中に拡散する。拡散したリンス液は、置換液とともに基板Wから排出される。したがって、基板W上のリンス液を効率的に置換液に置換できる。同様の理由により、基板W上の置換液を効率的に乾燥前処理液に置換できる。これにより、基板W上の乾燥前処理液に含まれるリンス液を減らすことができる。
【0069】
乾燥前処理液ノズル39は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に乾燥前処理液ノズル39を移動させるノズル移動ユニット42に接続されている。ノズル移動ユニット42は、乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液が基板Wの上面に着液する処理位置と、乾燥前処理液ノズル39が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間で乾燥前処理液ノズル39を水平に移動させる。
【0070】
同様に、置換液ノズル43は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に置換液ノズル43を移動させるノズル移動ユニット46に接続されている。ノズル移動ユニット46は、置換液ノズル43から吐出された置換液が基板Wの上面に着液する処理位置と、置換液ノズル43が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間で置換液ノズル43を水平に移動させる。
【0071】
処理ユニット2は、スピンチャック10の上方に配置された遮断部材51を含む。
図2は、遮断部材51が円板状の遮断板である例を示している。遮断部材51は、スピンチャック10の上方に水平に配置された円板部52を含む。遮断部材51は、円板部52の中央部から上方に延びる筒状の支軸53によって水平に支持されている。円板部52の中心線は、基板Wの回転軸線A1上に配置されている。円板部52の下面は、遮断部材51の下面51Lに相当する。遮断部材51の下面51Lは、基板Wの上面に対向する対向面である。遮断部材51の下面51Lは、基板Wの上面と平行であり、基板Wの直径以上の外径を有している。
【0072】
遮断部材51は、遮断部材51を鉛直に昇降させる遮断部材昇降ユニット54に接続されている。遮断部材昇降ユニット54は、上位置(
図2に示す位置)から下位置までの任意の位置に遮断部材51を位置させる。下位置は、薬液ノズル31などのスキャンノズルが基板Wと遮断部材51との間に進入できない高さまで遮断部材51の下面51Lが基板Wの上面に近接する近接位置である。上位置は、スキャンノズルが遮断部材51と基板Wとの間に進入可能な高さまで遮断部材51が退避した離間位置である。
【0073】
複数のノズルは、遮断部材51の下面51Lの中央部で開口する上中央開口61を介して処理液や処理ガスなどの処理流体を下方に吐出する中心ノズル55を含む。中心ノズル55は、回転軸線A1に沿って上下に延びている。中心ノズル55は、遮断部材51の中央部を上下に貫通する貫通穴内に配置されている。遮断部材51の内周面は、径方向(回転軸線A1に直交する方向)に間隔を空けて中心ノズル55の外周面を取り囲んでいる。中心ノズル55は、遮断部材51とともに昇降する。処理液を吐出する中心ノズル55の吐出口は、遮断部材51の上中央開口61の上方に配置されている。
【0074】
中心ノズル55は、中心ノズル55に不活性ガスを案内する上気体配管56に接続されている。基板処理装置1は、中心ノズル55から吐出される不活性ガスを加熱または冷却する上温度調節器59を備えていてもよい。上気体配管56に介装された上気体バルブ57が開かれると、不活性ガスの流量を変更する流量調整バルブ58の開度に対応する流量で、不活性ガスが、中心ノズル55の吐出口から下方に連続的に吐出される。中心ノズル55から吐出される不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外のガスであってもよい。
【0075】
遮断部材51の内周面と中心ノズル55の外周面は、上下に延びる筒状の上気体流路62を形成している。上気体流路62は、不活性ガスを遮断部材51の上中央開口61に導く上気体配管63に接続されている。基板処理装置1は、遮断部材51の上中央開口61から吐出される不活性ガスを加熱または冷却する上温度調節器66を備えていてもよい。上気体配管63に介装された上気体バルブ64が開かれると、不活性ガスの流量を変更する流量調整バルブ65の開度に対応する流量で、不活性ガスが、遮断部材51の上中央開口61から下方に連続的に吐出される。遮断部材51の上中央開口61から吐出される不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外のガスであってもよい。
【0076】
複数のノズルは、基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出する下面ノズル71を含む。下面ノズル71は、スピンベース12の上面12uと基板Wの下面との間に配置されたノズル円板部と、ノズル円板部から下方に延びるノズル筒状部とを含む。下面ノズル71の吐出口は、ノズル円板部の上面中央部で開口している。基板Wがスピンチャック10に保持されているときは、下面ノズル71の吐出口が、基板Wの下面中央部に上下に対向する。
【0077】
下面ノズル71は、加熱流体の一例である温水(室温よりも高温の純水)を下面ノズル71に案内する加熱流体配管72に接続されている。下面ノズル71に供給される純水は、加熱流体配管72に介装された下ヒータ75によって加熱される。加熱流体配管72に介装された加熱流体バルブ73が開かれると、温水の流量を変更する流量調整バルブ74の開度に対応する流量で、温水が、下面ノズル71の吐出口から上方に連続的に吐出される。これにより、温水が基板Wの下面に供給される。
【0078】
下面ノズル71は、さらに、冷却流体の一例である冷水(室温よりも低温の純水)を下面ノズル71に案内する冷却流体配管76に接続されている。下面ノズル71に供給される純水は、冷却流体配管76に介装されたクーラー79によって冷却される。冷却流体配管76に介装された冷却流体バルブ77が開かれると、冷水の流量を変更する流量調整バルブ78の開度に対応する流量で、冷水が、下面ノズル71の吐出口から上方に連続的に吐出される。これにより、冷水が基板Wの下面に供給される。
【0079】
下面ノズル71の外周面とスピンベース12の内周面は、上下に延びる筒状の下気体流路82を形成している。下気体流路82は、スピンベース12の上面12uの中央部で開口する下中央開口81を含む。下気体流路82は、不活性ガスをスピンベース12の下中央開口81に導く下気体配管83に接続されている。基板処理装置1は、スピンベース12の下中央開口81から吐出される不活性ガスを加熱または冷却する下温度調節器86を備えていてもよい。下気体配管83に介装された下気体バルブ84が開かれると、不活性ガスの流量を変更する流量調整バルブ85の開度に対応する流量で、不活性ガスが、スピンベース12の下中央開口81から上方に連続的に吐出される。
【0080】
スピンベース12の下中央開口81から吐出される不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外のガスであってもよい。基板Wがスピンチャック10に保持されているときに、スピンベース12の下中央開口81が窒素ガスを吐出すると、窒素ガスは、基板Wの下面とスピンベース12の上面12uとの間をあらゆる方向に放射状に流れる。これにより、基板Wとスピンベース12との間の空間が窒素ガスで満たされる。
【0081】
図3は、制御装置3のハードウェアを示すブロック図である。
制御装置3は、コンピュータ本体3aと、コンピュータ本体3aに接続された周辺装置3bとを含む、コンピュータである。コンピュータ本体3aは、各種の命令を実行するCPU91(central processing unit:中央処理装置)と、情報を記憶する主記憶装置92とを含む。周辺装置3bは、プログラムP等の情報を記憶する補助記憶装置93と、リムーバブルメディアMから情報を読み取る読取装置94と、ホストコンピュータ等の他の装置と通信する通信装置95とを含む。
【0082】
制御装置3は、入力装置96および表示装置97に接続されている。入力装置96は、ユーザーやメンテナンス担当者などの操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置97の画面に表示される。入力装置96は、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置96および表示装置97を兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられていてもよい。
【0083】
CPU91は、補助記憶装置93に記憶されたプログラムPを実行する。補助記憶装置93内のプログラムPは、制御装置3に予めインストールされたものであってもよいし、読取装置94を通じてリムーバブルメディアMから補助記憶装置93に送られたものであってもよいし、ホストコンピュータなどの外部装置から通信装置95を通じて補助記憶装置93に送られたものであってもよい。
【0084】
補助記憶装置93およびリムーバブルメディアMは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリーである。補助記憶装置93は、たとえば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。リムーバブルメディアMは、たとえば、コンパクトディスクなどの光ディスクまたはメモリーカードなどの半導体メモリーである。リムーバブルメディアMは、プログラムPが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体の一例である。リムーバブルメディアMは、一時的ではない有形の記録媒体である。
【0085】
補助記憶装置93は、複数のレシピを記憶している。レシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順を規定する情報である。複数のレシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順の少なくとも一つにおいて互いに異なる。制御装置3は、ホストコンピュータによって指定されたレシピにしたがって基板Wが処理されるように基板処理装置1を制御する。以下の各工程は、制御装置3が基板処理装置1を制御することにより実行される。言い換えると、制御装置3は、以下の各工程を実行するようにプログラムされている。
【0086】
次に、基板Wを処理する3つの例について説明する。
処理される基板Wは、たとえば、シリコンウエハなどの半導体ウエハである。基板Wの表面は、トランジスタやキャパシタ等のデバイスが形成されるデバイス形成面に相当する。基板Wは、パターン形成面である基板Wの表面にパターンP1(
図5A参照)が形成された基板Wであってもよいし、基板Wの表面にパターンP1が形成されていない基板Wであってもよい。後者の場合、後述する薬液供給工程でパターンP1が形成されてもよい。
【0087】
第1処理例
最初に、基板W上の乾燥前処理液の一部を凝固させた後、凝固した乾燥前処理液を残しながら、凝固しなかった乾燥前処理液を基板Wから除去する例について説明する。
図4は、基板処理装置1によって行われる基板Wの処理の一例(第1処理例)について説明するための工程図である。
図5A~
図5Dは、
図4に示す処理が行われているときの基板Wの状態を示す模式図である。以下では、
図2および
図4を参照する。
図5A~
図5Dについては適宜参照する。
【0088】
基板処理装置1によって基板Wが処理されるときは、チャンバー4内に基板Wを搬入する搬入工程(
図4のステップS1)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、全てのガード24が下位置に位置しており、全てのスキャンノズルが待機位置に位置している状態で、センターロボットCR(
図1A参照)が、基板WをハンドH1で支持しながら、ハンドH1をチャンバー4内に進入させる。そして、センターロボットCRは、基板Wの表面が上に向けられた状態でハンドH1上の基板Wを複数のチャックピン11の上に置く。その後、複数のチャックピン11が基板Wの外周面に押し付けられ、基板Wが把持される。センターロボットCRは、基板Wをスピンチャック10の上に置いた後、ハンドH1をチャンバー4の内部から退避させる。
【0089】
次に、上気体バルブ64および下気体バルブ84が開かれ、遮断部材51の上中央開口61およびスピンベース12の下中央開口81が窒素ガスの吐出を開始する。これにより、基板Wと遮断部材51との間の空間が窒素ガスで満たされる。同様に、基板Wとスピンベース12との間の空間とが窒素ガスで満たされる。その一方で、ガード昇降ユニット27が少なくとも一つのガード24を下位置から上位置に上昇させる。その後、スピンモータ14が駆動され、基板Wの回転が開始される(
図4のステップS2)。これにより、基板Wが液体供給速度で回転する。
【0090】
次に、薬液を基板Wの上面に供給し、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜を形成する薬液供給工程(
図4のステップS3)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット34が薬液ノズル31を待機位置から処理位置に移動させる。その後、薬液バルブ33が開かれ、薬液ノズル31が薬液の吐出を開始する。薬液バルブ33が開かれてから所定時間が経過すると、薬液バルブ33が閉じられ、薬液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット34が薬液ノズル31を待機位置に移動させる。
【0091】
薬液ノズル31から吐出された薬液は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、薬液が基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜が形成される。薬液ノズル31が薬液を吐出しているとき、ノズル移動ユニット34は、基板Wの上面に対する薬液の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、着液位置を中央部で静止させてもよい。
【0092】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面に供給して、基板W上の薬液を洗い流すリンス液供給工程(
図4のステップS4)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット38がリンス液ノズル35を待機位置から処理位置に移動させる。その後、リンス液バルブ37が開かれ、リンス液ノズル35がリンス液の吐出を開始する。純水の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも一つのガード24を鉛直に移動させてもよい。リンス液バルブ37が開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ37が閉じられ、リンス液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット38がリンス液ノズル35を待機位置に移動させる。
【0093】
リンス液ノズル35から吐出された純水は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の薬液は、リンス液ノズル35から吐出された純水に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成される。リンス液ノズル35が純水を吐出しているとき、ノズル移動ユニット38は、基板Wの上面に対する純水の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、着液位置を中央部で静止させてもよい。
【0094】
次に、リンス液および乾燥前処理液の両方と溶け合う置換液を基板Wの上面に供給し、基板W上の純水を置換液に置換する置換液供給工程(
図4のステップS5)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット46が置換液ノズル43を待機位置から処理位置に移動させる。その後、置換液バルブ45が開かれ、置換液ノズル43が置換液の吐出を開始する。置換液の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも一つのガード24を鉛直に移動させてもよい。置換液バルブ45が開かれてから所定時間が経過すると、置換液バルブ45が閉じられ、置換液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット46が置換液ノズル43を待機位置に移動させる。
【0095】
置換液ノズル43から吐出された置換液は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の純水は、置換液ノズル43から吐出された置換液に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆う置換液の液膜が形成される。置換液ノズル43が置換液を吐出しているとき、ノズル移動ユニット46は、基板Wの上面に対する置換液の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、着液位置を中央部で静止させてもよい。また、基板Wの上面全域を覆う置換液の液膜が形成された後、置換液ノズル43に置換液の吐出を停止させながら、基板Wをパドル速度(たとえば、0を超える20rpm以下の速度)で回転させてもよい。
【0096】
次に、乾燥前処理液を基板Wの上面に供給して、乾燥前処理液の液膜を基板W上に形成する乾燥前処理液供給工程(
図4のステップS6)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット42が乾燥前処理液ノズル39を待機位置から処理位置に移動させる。その後、乾燥前処理液バルブ41が開かれ、乾燥前処理液ノズル39が乾燥前処理液の吐出を開始する。乾燥前処理液の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも一つのガード24を鉛直に移動させてもよい。乾燥前処理液バルブ41が開かれてから所定時間が経過すると、乾燥前処理液バルブ41が閉じられ、乾燥前処理液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット42が乾燥前処理液ノズル39を待機位置に移動させる。
【0097】
乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の置換液は、乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆う乾燥前処理液の液膜が形成される。乾燥前処理液ノズル39が乾燥前処理液を吐出しているとき、ノズル移動ユニット42は、基板Wの上面に対する乾燥前処理液の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、着液位置を中央部で静止させてもよい。
【0098】
図5Aは、乾燥前処理液が、吸着物質としてのターシャリーブチルアルコールと、溶解物質としてのHFEとを含む例を示している。
図5Aでは、ターシャリーブチルアルコールをTBAと表記している。この例では、ターシャリーブチルアルコールの単分子膜FmがパターンP1の表面を含む基板Wの表面に沿って形成されている。ターシャリーブチルアルコールの分子には、メチル基(
図5A中の黒丸)とヒドロキシル基とが含まれる。メチル基は、疎水基であり、ヒドロキシル基は、親水基である。
【0099】
図5Aの例では、ターシャリーブチルアルコールのヒドロキシル基が基板Wの表面側に配置されており、ターシャリーブチルアルコールのメチル基がターシャリーブチルアルコールの基板Wの表面に対してターシャリーブチルアルコールのヒドロキシル基とは反対側に配置されている。この例では、ターシャリーブチルアルコールのヒドロキシル基が基板Wの表面に位置するヒドロキシル基に引き寄せられ、ターシャリーブチルアルコールの分子が基板Wの表面に吸着している。同様の現象が基板Wの表面のあらゆる場所で起こり、乾燥前処理液に含まれるターシャリーブチルアルコールが基板Wの表面の各部に吸着している。
【0100】
乾燥前処理液に含まれるターシャリーブチルアルコールが基板Wの表面の各部に吸着すると、基板Wの表面と乾燥前処理液との界面を表す固液界面で乾燥前処理液中のターシャリーブチルアルコールの濃度が増加し、固液界面から離れた位置で乾燥前処理液中のターシャリーブチルアルコールの濃度が低下する。固液界面付近の乾燥前処理液の主成分はターシャリーブチルアルコールであるため、固液界面付近の乾燥前処理液の凝固点は、ターシャリーブチルアルコールの凝固点またはこれに近い温度まで上昇する。その一方で、固液界面から離れた位置では、ターシャリーブチルアルコールの濃度が低下しているので、凝固点降下の度合いが軽減され、乾燥前処理液の凝固点がHFEの凝固点に近づく。
【0101】
乾燥前処理液の液膜を形成した後は、基板W上の乾燥前処理液の一部を除去して、基板Wの上面全域が乾燥前処理液の液膜で覆われた状態を維持しながら、基板W上の乾燥前処理液の膜厚(液膜の厚み)を減少させる膜厚減少工程(
図4のステップS7)が行われる。
具体的には、遮断部材昇降ユニット54が遮断部材51を上位置から下位置に下降させる。これにより、遮断部材51の下面51Lが基板Wの上面に近接する。そして、遮断部材51が下位置に位置している状態で、スピンモータ14が基板Wを膜厚減少速度で回転させる。膜厚減少速度は、液体供給速度と等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0102】
基板W上の乾燥前処理液は、乾燥前処理液の吐出が停止された後も、遠心力によって基板Wから外方に排出される。そのため、基板W上の乾燥前処理液の液膜の厚みが減少する。基板W上の乾燥前処理液がある程度排出されると、単位時間当たりの基板Wからの乾燥前処理液の排出量が零または概ね零に減少する。これにより、基板W上の乾燥前処理液の液膜の厚みが基板Wの回転速度に応じた値で安定する。
【0103】
次に、基板W上の乾燥前処理液を冷却して、乾燥前処理液を凝固させる冷却工程(
図4のステップS8)が行われる。
具体的には、遮断部材51が下位置に位置しており、基板Wが液体供給速度で回転している状態で、冷却流体バルブ77が開かれ、下面ノズル71が冷水の吐出を開始する。下面ノズル71から上方に吐出された冷水は、基板Wの下面中央部に着液した後、回転している基板Wの下面に沿って外方に流れる。これにより、冷水が基板Wの下面全域に供給される。そして、冷却流体バルブ77が開かれてから所定時間が経過すると、冷却流体バルブ77が閉じられ、冷水の吐出が停止される。
【0104】
冷水の温度は、室温よりも低い。冷水の温度は、乾燥前処理液に含まれる吸着物質の凝固点よりも低く、基板Wに供給される前の乾燥前処理液の凝固点よりも高い。したがって、基板W上の乾燥前処理液は、冷水によって、基板Wを介して均一に冷却される。特に、基板W上の乾燥前処理液を直接冷却するのではなく、基板Wを介して乾燥前処理液を冷却するので、基板Wの表面と乾燥前処理液との界面を表す固液界面付近の乾燥前処理液が優先的に冷却される。
【0105】
前述のように、乾燥前処理液を基板Wに供給すると、乾燥前処理液に含まれる吸着物質が、パターンP1の表面を含む基板Wの表面の各部に吸着し、固液界面で乾燥前処理液中の吸着物質の濃度が増加する。固液界面付近の乾燥前処理液の凝固点は、吸着物質の凝固点に近い温度まで上昇する。その一方で、固液界面から離れた位置では、乾燥前処理液の凝固点が溶解物質の凝固点に近づく。
【0106】
吸着物質の凝固点よりも低く基板Wに供給される前の乾燥前処理液の凝固点よりも高い冷却温度で、基板W上の乾燥前処理液を冷却すると、乾燥前処理液が固液界面およびその近傍で凝固する。その一方で、乾燥前処理液の凝固点が冷却温度よりも低いので、固液界面から離れた位置では、乾燥前処理液は、凝固せずに液体に維持される。そのため、
図5Bに示すように、吸着物質を含む凝固膜101が基板Wの表面に沿って形成され、凝固しなかった乾燥前処理液と基板Wの表面との間に介在する。
【0107】
凝固膜101は、最終的に基板Wから除去される犠牲膜に相当する。
図5Bは、凝固膜101を含む凝固体の断面の一例を示している。パターンP1の表面を含む基板Wの表面は、凝固膜101で覆われている。凝固膜101は、パターンP1の側面Psを覆う側面膜101sと、パターンP1の上面Puを覆う上面膜101uと、基板Wの底面(基板Wの平面Ws)を覆う底面膜101bとを含む。側面膜101sの上端部と上面膜101uとは、パターンP1の先端部を覆う先端膜を構成している。
【0108】
図5Bに示す例では、凝固膜101の厚みT1は、パターンP1の高さHpよりも小さい。凝固膜101の厚みT1は、パターンP1の幅Wpより小さくてもよいし、隣り合う2つのパターンP1の間隔G1より小さくてもよい。凝固膜101の2つの側面膜101sは、パターンP1の幅方向(
図5Bの左右方向)に間隔を空けて向かい合っている。凝固しなかった乾燥前処理液は、パターンP1の上方だけでなく、隣り合う2つのパターンP1の間にも位置している。この乾燥前処理液は、パターンP1の表面に直接接しているのではなく、凝固膜101を介してパターンP1の表面に接している。
【0109】
凝固膜101が乾燥前処理液中に形成された後は、凝固膜101を基板Wの上面に残しながら、余剰の乾燥前処理液を基板Wの上面から除去する液体除去工程(
図4のステップS9)が行われる。
乾燥前処理液の除去は、回転している基板Wの上面に向けて窒素ガスを吐出することにより行ってもよいし、基板Wを回転方向に加速することにより行ってもよい。もしくは、窒素ガスの吐出および基板Wの加速の両方を行ってもよい。乾燥前処理液の冷却によって凝固膜101が形成された後に、余剰の乾燥前処理液が基板Wから除去されるのであれば、乾燥前処理液の除去は、乾燥前処理液の冷却を開始する前または後に開始されてもよいし、乾燥前処理液の冷却を開始するのと同時に開始されてもよい。
【0110】
窒素ガスの吐出によって余剰の乾燥前処理液を排出する場合、遮断部材51が下位置に位置している状態で、上気体バルブ57を開いて、中心ノズル55に窒素ガスの吐出を開始させる。中心ノズル55から下方に吐出された窒素ガスは、基板Wの上面と遮断部材51の下面51Lとの間の空間を放射状に流れる。中心ノズル55からの窒素ガスの吐出に加えてまたは代えて、流量調整バルブ65の開度を変更して、遮断部材51の上中央開口61から吐出される窒素ガスの流量を増加させてもよい。いずれの場合も、基板W上の余剰の乾燥前処理液は、放射状に流れる窒素ガスの圧力を受けて基板W上を外方に流れる。それと同時に、基板W上の乾燥前処理液の一部は、窒素ガスの供給によって蒸発する。これにより、余剰の乾燥前処理液が基板Wから除去される。
【0111】
基板Wの加速によって余剰の乾燥前処理液を排出する場合、スピンモータ14は、基板Wの回転速度を膜厚減少速度よりも大きい液体除去速度まで増加させて、液体除去速度に維持する。液体除去速度は、液体供給速度と等しくてもよいし、異なっていてもよい。基板W上の余剰の乾燥前処理液は、基板Wの回転によって発生する遠心力を受けて基板W上を外方に流れる。それと同時に、基板W上の乾燥前処理液の一部は、窒素ガスの供給によって蒸発する。これにより、余剰の乾燥前処理液が基板Wから除去される。したがって、窒素ガスの吐出と基板Wの加速の両方を行えば、余剰の乾燥前処理液を速やかに基板Wから除去できる。
【0112】
余剰の乾燥前処理液を基板Wから除去する前は、乾燥前処理液の上面(液面)が、パターンP1の上方に位置している。乾燥前処理液の上面は、乾燥前処理液が減るにしたがってパターンP1に近づく。基板W上の乾燥前処理液がある程度まで減ると、乾燥前処理液の上面が隣り合う2つの凸状パターンP1の間に移動する。つまり、気体と液体(乾燥前処理液)との界面がパターンP1の間に移動し、乾燥前処理液の表面張力に起因する倒壊力が凝固膜101でコーティングされたパターンP1に加わる。
【0113】
乾燥前処理液の表面張力に起因する倒壊力がパターンP1に加わると、パターンP1の強度によっては、パターンP1が倒壊することがある。
図5Cは、余剰の乾燥前処理液の除去によってパターンP1が倒壊した状態を示している。凝固膜101には、複数のパターンP1の先端部をそれぞれ覆う複数の側面膜101sが含まれる。隣り合う2つのパターンP1が互いに近づく方向に倒壊すると、2つの側面膜101sは、互いに離れた状態から互いに接した状態に変化する。したがって、倒壊した2つのパターンP1の先端部は、直接的に接するのではなく、凝固膜101を介して接する。
【0114】
倒壊したパターンP1は、パターンP1の復元力(弾力)で基板Wの底面(基板Wの平面Ws)に対して垂直な垂直状態に戻ろうとする。その一方で、倒壊した2つのパターンP1の先端部をそれぞれ覆う2つの側面膜101sが互いに接触すると、2つの側面膜101sの間に接着力が発生する。この接着力がパターンP1の復元力より強い場合、倒壊したパターンP1は、垂直状態に戻らずに、基板Wの底面に対して傾いた倒壊状態に維持される。
【0115】
余剰の乾燥前処理液を基板Wから除去した後は、基板W上の凝固膜101を昇華させて、基板Wの上面から除去する昇華工程(
図4のステップS10)が行われる。
具体的には、遮断部材51が下位置に位置している状態で、スピンモータ14が基板Wを昇華速度で回転させる。昇華速度は、液体供給速度と等しくてもよいし、異なっていてもよい。上気体バルブ57が閉じられている場合は、上気体バルブ57を開いて、中心ノズル55に窒素ガスの吐出を開始させる。上気体バルブ57が開かれている場合は、流量調整バルブ58の開度を変更して、中心ノズル55から吐出される窒素ガスの流量を増加させてもよい。昇華速度での基板Wの回転が開始されてから所定時間が経過すると、スピンモータ14が止まり、基板Wの回転が停止される(
図4のステップS11)。
【0116】
昇華速度での基板Wの回転等が開始されると、基板W上の凝固膜101は、液体を経ずに気体に変化する。凝固膜101から発生した気体(吸着物質を含む気体)は、基板Wと遮断部材51との間の空間を放射状に流れ、基板Wの上方から排出される。これにより、凝固膜101が基板Wの上面から除去される。さらに、凝固膜101の昇華を開始する前に、純水などの液体が基板Wの下面に付着していたとしても、この液体は基板Wの回転によって基板Wから除去される。これにより、凝固膜101などの不要な物質が基板Wから除去され、基板Wが乾燥する。
【0117】
図5Cに示すように、余剰の乾燥前処理液を除去したときにパターンP1が倒壊したとしても、凝固膜101を除去すると、
図5Dに示すように、倒壊した2つのパターンP1の先端部の間から凝固膜101がなくなる。これにより、2つのパターンP1を倒壊状態に維持する接着力が弱まる。パターンP1が塑性変形や破損していなければ、倒壊したパターンP1は、パターンP1の復元力(
図5D中の黒色の矢印参照)で垂直状態に戻る。したがって、余剰の乾燥前処理液を除去したときにパターンP1が倒壊しても、凝固膜101を除去した後には、パターンP1が垂直状態に戻る。これにより、パターンP1の強度が低い場合であっても、最終的なパターンP1の倒壊率を改善することができる。
【0118】
凝固膜101を除去した後は、基板Wをチャンバー4から搬出する搬出工程(
図4のステップS12)が行われる。
具体的には、遮断部材昇降ユニット54が遮断部材51を上位置まで上昇させ、ガード昇降ユニット27が全てのガード24を下位置まで下降させる。さらに、上気体バルブ64および下気体バルブ84が閉じられ、遮断部材51の上中央開口61とスピンベース12の下中央開口81とが窒素ガスの吐出を停止する。その後、センターロボットCRが、ハンドH1をチャンバー4内に進入させる。センターロボットCRは、複数のチャックピン11が基板Wの把持を解除した後、スピンチャック10上の基板WをハンドH1で支持する。その後、センターロボットCRは、基板WをハンドH1で支持しながら、ハンドH1をチャンバー4の内部から退避させる。これにより、処理済みの基板Wがチャンバー4から搬出される。
【0119】
第2処理例
次に、基板W上の乾燥前処理液の一部だけを凝固させるのではなく、基板W上の全ての乾燥前処理液を凝固させる例について説明する。
図6は、基板処理装置1によって行われる基板Wの処理の一例(第2処理例)について説明するための工程図である。
図7A~
図7Cは、
図6に示す処理が行われているときの基板Wの状態を示す模式図である。
図7Bは、凝固膜101と凝固層102との間に明確な境界があるように描かれているが、実際にはこのような境界は存在しない。これは後述する
図9Aについても同様である。
【0120】
以下では、
図2および
図6を参照する。
図7A~
図7Cについては適宜参照する。以下では、冷却工程が開始されてから昇華工程が終了するまでの流れを説明する。それ以外の工程は、第1処理例と同様であるので、その説明を省略する。
乾燥前処理液が基板Wに供給された後は、基板W上の乾燥前処理液を冷却して、乾燥前処理液を凝固させる冷却工程(
図6のステップS13)が行われる。
【0121】
具体的には、遮断部材51が下位置に位置しており、基板Wが液体供給速度で回転している状態で、冷却流体バルブ77が開かれ、下面ノズル71が液体窒素などの冷却液の吐出を開始する。下面ノズル71から上方に吐出された冷却液は、基板Wの下面中央部に着液した後、回転している基板Wの下面に沿って外方に流れる。これにより、冷却液が基板Wの下面全域に供給される。そして、冷却流体バルブ77が開かれてから所定時間が経過すると、冷却流体バルブ77が閉じられ、冷却液の吐出が停止される。
【0122】
冷却液の温度は、室温よりも低い。冷却液の温度は、乾燥前処理液に含まれる吸着物質の凝固点よりも低く、基板Wに供給される前の乾燥前処理液の凝固点以下である。したがって、基板W上の乾燥前処理液は、冷却液によって、基板Wを介して均一に冷却される。特に、基板W上の乾燥前処理液を直接冷却するのではなく、基板Wを介して乾燥前処理液を冷却するので、基板Wの表面と乾燥前処理液との界面を表す固液界面付近の乾燥前処理液が優先的に冷却される。
【0123】
前述のように、乾燥前処理液を基板Wに供給すると、乾燥前処理液に含まれる吸着物質が、パターンP1の表面を含む基板Wの表面の各部に吸着し、基板Wの表面と乾燥前処理液との界面を表す固液界面で乾燥前処理液中の吸着物質の濃度が増加する。固液界面付近の乾燥前処理液の凝固点は、吸着物質の凝固点に近い温度まで上昇する。その一方で、固液界面から離れた位置では、乾燥前処理液の凝固点が溶解物質の凝固点に近づく。
【0124】
固液界面付近の乾燥前処理液の凝固点は、固液界面から離れた位置の乾燥前処理液の凝固点よりも高い。したがって、基板W上の乾燥前処理液を冷却すると、固液界面付近で乾燥前処理液の凝固が始まり、その後、固液界面から離れた位置で乾燥前処理液の凝固が始まる。そのため、
図7Aに示すように、吸着物質を含む凝固膜101が先に形成される。その後、
図7Bに示すように、吸着物質および溶解物質を含む凝固層102が形成される。これにより、基板W上の全てまたは殆ど全ての乾燥前処理液が凝固する。
【0125】
図7Aに示すように、凝固層102が形成される前は、凝固膜101の2つの側面膜101sの間だけでなく、凝固膜101の上面膜101uの上方にも乾燥前処理液が存在している。パターンP1の間隔が狭いので、パターンP1の間に位置する乾燥前処理液の凝固点が降下する。パターンP1の間に位置する乾燥前処理液の凝固点は、パターンP1の上方に位置する乾燥前処理液の凝固点よりも低い。したがって、凝固層102が形成される過程で、固体(凝固層102)と液体(乾燥前処理液)の界面が2つの側面膜101sの間に形成される場合がある。この場合、乾燥前処理液の表面張力に起因する倒壊力が側面膜101sを介してパターンP1に加わり、パターンP1が倒壊することがある。
【0126】
しかしながら、パターンP1の表面が凝固膜101で覆われているので、隣り合う2つのパターンP1が互いに近づく方向に倒壊したとしても、
図7Bに示すように、この2つのパターンP1の先端部は、直接的に接するのではなく、凝固膜101を介して接する。そして、この状態で凝固層102が形成される。したがって、パターンP1および凝固膜101は、凝固層102によって移動が規制される。そのため、凝固層102が形成された後は、倒壊したパターンP1は、垂直状態に戻らずに倒壊状態に維持される。
【0127】
基板W上の乾燥前処理液を凝固させた後は、基板W上の凝固膜101を昇華させて、基板Wの上面から除去する昇華工程(
図6のステップS14)が行われる。
具体的には、遮断部材51が下位置に位置している状態で、スピンモータ14が基板Wを昇華速度で回転させる。昇華速度は、液体供給速度と等しくてもよいし、異なっていてもよい。上気体バルブ57が閉じられている場合は、上気体バルブ57を開いて、中心ノズル55に窒素ガスの吐出を開始させる。上気体バルブ57が開かれている場合は、流量調整バルブ58の開度を変更して、中心ノズル55から吐出される窒素ガスの流量を増加させてもよい。昇華速度での基板Wの回転が開始されてから所定時間が経過すると、スピンモータ14が止まり、基板Wの回転が停止される(
図6のステップS11)。
【0128】
凝固膜101は、吸着物質を含む薄膜である。凝固層102は、吸着物質および溶解物質を含む薄膜である。吸着物質がターシャリーブチルアルコールであり、溶解物質がHFEである場合、昇華速度での基板Wの回転等が開始されると、凝固層102が融解し、乾燥前処理液に戻る。乾燥前処理液に含まれるHFEは、蒸発によって基板W上からなくなる。そのため、乾燥前処理液からターシャリーブチルアルコールの結晶が析出する。この結晶と凝固膜101は、液体を経ずに気体に変化する。これにより、
図7Cに示すように、凝固膜101および凝固層102を含む凝固体が基板Wの上面から除去される。
【0129】
吸着物質および溶解物質が種類の互いに異なる昇華性物質である場合は、昇華速度での基板Wの回転等が開始されると、基板W上の凝固層102は、液体を経ずに気体に変化する。このとき、基板W上の凝固膜101も、液体を経ずに気体に変化する。発生した気体は、基板Wと遮断部材51との間の空間を放射状に流れ、基板Wの上方から排出される。これにより、
図7Cに示すように、凝固膜101および凝固層102を含む凝固体が基板Wの上面から除去される。
【0130】
凝固膜101および凝固層102を形成したときや、凝固層102を除去するときに、パターンP1が倒壊したとしても、凝固膜101を除去すると、
図7Cに示すように、倒壊した2つのパターンP1の先端部の間から凝固膜101がなくなる。これにより、2つのパターンP1を倒壊状態に維持する接着力が弱まる。パターンP1が塑性変形や破損していなければ、倒壊したパターンP1は、パターンP1の復元力(
図7C中の黒色の矢印参照)で垂直状態に戻る。したがって、凝固膜101を除去する前にパターンP1が倒壊していても、凝固膜101を除去した後には、パターンP1が垂直状態に戻る。これにより、パターンP1の強度が低い場合であっても、最終的なパターンP1の倒壊率を改善することができる。
【0131】
第3処理例
次に、基板W上の乾燥前処理液を凝固させた後に、凝固した乾燥前処理液を融解させる例について説明する。
図8は、基板処理装置1によって行われる基板Wの処理の一例(第3処理例)について説明するための工程図である。
図9A~
図9Dは、
図8に示す処理が行われているときの基板Wの状態を示す模式図である。
【0132】
以下では、
図2および
図8を参照する。
図9A~
図9Dについては適宜参照する。以下では、凝固膜101および凝固層102を形成する冷却工程が終了してから昇華工程が終了するまでの流れを説明する。それ以外の工程は、第1処理例と同様であるので、その説明を省略する。
基板W上の乾燥前処理液の冷却によって凝固膜101および凝固層102が形成された後は(
図9A参照)、
図9Bに示すように、凝固膜101を残しながら凝固層102を融解させる融解工程(
図8のステップS15)が行われる。
【0133】
凝固層102の融解は、凝固層102を融解させる融解ガスを基板Wの上面に向けて吐出してもよいし、基板Wの上方に配置されたヒータを発熱させてもよいし、基板Wの上方に配置された加熱ランプに発光させてもよい。融解ガスを用いる場合、下気体バルブ84を開いて、室温よりも高温もしくは室温の窒素ガスを基板Wの上面に向けて下中央開口81に吐出させてもよい。凝固層102が室温で融解するのであれば、凝固層102の融解は、凝固層102を一定時間放置することにより行ってもよい。これらの2つ以上を行ってもよい。
【0134】
いずれの場合も、凝固膜101の温度は、冷却温度から融解温度に変化する。融解温度は、冷却温度よりも高く、吸着物質の凝固点(融点)よりも低い温度である。したがって、
図9Bに示すように、凝固膜101が基板Wの表面に残ったまま、凝固層102が乾燥前処理液に戻る。凝固膜101の少なくとも一部が基板Wの表面に残るのであれば、凝固層102を融解させるときに、凝固膜101の一部も融解してもよい。
【0135】
図9Cに示すように、凝固層102を融解させた後は、凝固膜101を基板Wの上面に残しながら、融解した乾燥前処理液を基板Wの上面から除去する液体除去工程(
図8のステップS16)が行われる。乾燥前処理液の除去は、回転している基板Wの上面に向けて窒素ガスを吐出することにより行ってもよいし、基板Wを回転方向に加速することにより行ってもよい。もしくは、窒素ガスの吐出および基板Wの加速の両方を行ってもよい。
【0136】
窒素ガスの吐出によって余剰の乾燥前処理液を排出する場合、遮断部材51が下位置に位置している状態で、上気体バルブ57を開いて、中心ノズル55に窒素ガスの吐出を開始させる。中心ノズル55から下方に吐出された窒素ガスは、基板Wの上面と遮断部材51の下面51Lとの間の空間を放射状に流れる。中心ノズル55からの窒素ガスの吐出に加えてまたは代えて、流量調整バルブ65の開度を変更して、遮断部材51の上中央開口61から吐出される窒素ガスの流量を増加させてもよい。いずれの場合も、基板W上の余剰の乾燥前処理液は、放射状に流れる窒素ガスの圧力を受けて基板W上を外方に流れる。それと同時に、基板W上の乾燥前処理液の一部は、窒素ガスの供給によって蒸発する。これにより、余剰の乾燥前処理液が基板Wから除去される。
【0137】
基板Wの加速によって余剰の乾燥前処理液を排出する場合、スピンモータ14は、基板Wの回転速度を膜厚減少速度よりも大きい液体除去速度まで増加させて、液体除去速度に維持する。液体除去速度は、液体供給速度と等しくてもよいし、異なっていてもよい。基板W上の余剰の乾燥前処理液は、基板Wの回転によって発生する遠心力を受けて基板W上を外方に流れる。それと同時に、基板W上の乾燥前処理液の一部は、窒素ガスの供給によって蒸発する。これにより、余剰の乾燥前処理液が基板Wから除去される。したがって、窒素ガスの吐出と基板Wの加速の両方を行えば、余剰の乾燥前処理液を速やかに基板Wから除去できる。
【0138】
融解した乾燥前処理液を基板Wから除去した後は、基板W上の凝固膜101を昇華させて、基板Wの上面から除去する昇華工程(
図8のステップS17)が行われる。
具体的には、遮断部材51が下位置に位置している状態で、スピンモータ14が基板Wを昇華速度で回転させる。昇華速度は、液体供給速度と等しくてもよいし、異なっていてもよい。上気体バルブ57が閉じられている場合は、上気体バルブ57を開いて、中心ノズル55に窒素ガスの吐出を開始させる。上気体バルブ57が開かれている場合は、流量調整バルブ58の開度を変更して、中心ノズル55から吐出される窒素ガスの流量を増加させてもよい。昇華速度での基板Wの回転が開始されてから所定時間が経過すると、スピンモータ14が止まり、基板Wの回転が停止される(
図8のステップS11)。
【0139】
昇華速度での基板Wの回転等が開始されると、基板W上の凝固膜101は、液体を経ずに気体に変化する。凝固膜101から発生した気体(吸着物質を含む気体)は、基板Wと遮断部材51との間の空間を放射状に流れ、基板Wの上方から排出される。これにより、凝固膜101が基板Wの上面から除去される。さらに、凝固膜101の昇華を開始する前に、純水などの液体が基板Wの下面に付着していたとしても、この液体は基板Wの回転によって基板Wから除去される。これにより、凝固膜101などの不要な物質が基板Wから除去され、基板Wが乾燥する。
【0140】
図9Cに示すように、凝固層102を形成するときや余剰の乾燥前処理液を除去したときにパターンP1が倒壊したとしても、凝固膜101を除去すると、
図9Dに示すように、倒壊した2つのパターンP1の先端部の間から凝固膜101がなくなる。これにより、2つのパターンP1を倒壊状態に維持する接着力が弱まる。パターンP1が塑性変形や破損していなければ、倒壊したパターンP1は、パターンP1の復元力(
図9D中の黒色の矢印参照)で垂直状態に戻る。したがって、凝固層102を形成するときや余剰の乾燥前処理液を除去したときにパターンP1が倒壊しても、凝固膜101を除去した後には、パターンP1が垂直状態に戻る。これにより、パターンP1の強度が低い場合であっても、最終的なパターンP1の倒壊率を改善することができる。
【0141】
以上のように本実施形態では、吸着物質と溶解物質とを含む乾燥前処理液を基板Wの表面に供給する。吸着物質は、溶解物質よりもパターンP1の表面に対する親和性が高く、溶解物質よりもパターンP1の表面に吸着し易い。乾燥前処理液に含まれる吸着物質は、基板Wに形成されたパターンP1の表面に吸着する。したがって、パターンP1の表面と乾燥前処理液との界面を表す固液界面で乾燥前処理液中の吸着物質の濃度が増加する。そのため、固液界面付近の乾燥前処理液の凝固点は、吸着物質の凝固点に近い温度まで上昇する。
【0142】
乾燥前処理液を基板Wの表面に供給した後は、吸着物質の凝固点よりも低い冷却温度で基板Wの表面上の乾燥前処理液を冷却する。固液界面付近の乾燥前処理液の凝固点が上昇しているので、基板W上の乾燥前処理液を冷却温度で冷却すると、乾燥前処理液が固液界面およびその近傍で凝固する。これにより、吸着物質を含む凝固膜101がパターンP1の表面に沿って形成される。その後、基板W上の凝固膜101を気体に変化させる。これにより、凝固膜101が基板Wの表面から除去される。
【0143】
凝固膜101がパターンP1の表面に沿って形成されるので、凝固膜101を除去するまでの間に隣り合う2つのパターンP1が互いに近づく方向に倒壊したとしても、この2つのパターンP1は、直接的に接するのではなく、凝固膜101を介して接する。したがって、パターンP1が塑性変形や破損していなければ、凝固膜101を除去すると、倒壊したパターンP1は、パターンP1の復元力で垂直状態に戻る。言い換えると、凝固膜101を除去するまでの間にパターンP1が倒壊しても、凝固膜101を除去した後には、パターンP1が垂直状態に戻る。これにより、パターンP1の強度が高い場合だけでなく、パターンP1の強度が低い場合も、最終的なパターンP1の倒壊率を改善することができる。
【0144】
本実施形態では、親水基および疎水基の両方が吸着物質の分子に含まれている。したがって、パターンP1の表面が親水性または疎水性であっても、もしくは、親水性の部分と疎水性の部分とがパターンP1の表面に含まれていても、吸着物質は、パターンP1の表面に吸着する。これにより、固液界面付近の乾燥前処理液中の吸着物質の濃度が高まり、乾燥前処理液の凝固点が吸着物質の凝固点に近い温度まで上昇する。これにより、吸着物質を含む凝固膜101をパターンP1の表面に沿って形成できる。
【0145】
本実施形態では、基板Wの表面上の乾燥前処理液を直接的に冷却するのではなく、基板Wを冷却することにより基板Wの表面上の乾燥前処理液を間接的に冷却する。したがって、基板Wの表面上の乾燥前処理液のうち基板Wの表面(パターンP1の表面を含む)に接する底層が効率的に冷却される。これにより、固液界面付近の乾燥前処理液を優先的に冷却でき、凝固膜101を効率的に形成できる。
【0146】
本実施形態では、室温の乾燥前処理液を基板Wに供給する。吸着物質の凝固点が室温以上である一方で、乾燥前処理液の凝固点は室温よりも低い。吸着物質の融液を基板Wに供給する場合は、吸着物質を液体に維持するために吸着物質を加熱する必要がある。これに対して、乾燥前処理液を基板Wに供給する場合は、乾燥前処理液を加熱しなくても乾燥前処理液を液体に維持できる。これにより、基板Wの処理に要するエネルギーの消費量を減らすことができる。
【0147】
第1処理例では、基板Wの表面上の乾燥前処理液を、吸着物質の凝固点よりも低く、乾燥前処理液の凝固点よりも高い冷却温度で冷却する。冷却温度が吸着物質の凝固点よりも低いので、固液界面付近の乾燥前処理液が凝固し、凝固膜101が形成される。その一方で、冷却温度が乾燥前処理液の凝固点よりも高いので、固液界面から離れた位置では、乾燥前処理液は、凝固せずに液体に維持される。
【0148】
凝固しなかった乾燥前処理液を除去するときに、乾燥前処理液の上面が隣り合う2つのパターンP1の間に移動し、パターンP1が倒壊したとしても、この2つのパターンP1は、直接的に接するのではなく、凝固膜101を介して接する。したがって、パターンP1が塑性変形や破損していなければ、凝固膜101を除去すると、倒壊したパターンP1は、自身の復元力で垂直状態に戻る。これにより、パターンP1の強度が低い場合であっても、最終的なパターンP1の倒壊率を改善することができる。
【0149】
第2処理例では、基板Wの表面上の乾燥前処理液を、吸着物質の凝固点よりも低く、乾燥前処理液の凝固点以下の冷却温度で冷却する。冷却温度が吸着物質の凝固点よりも低いので、固液界面付近の乾燥前処理液が凝固し、凝固膜101が形成される。さらに、冷却温度が乾燥前処理液の凝固点以下であるので、固液界面から離れた位置でも、乾燥前処理液が凝固する。これにより、凝固膜101を介してパターンP1の表面に接する凝固層102が形成される。凝固層102は、凝固膜101が基板Wの表面から除去されているときに気体に変化し基板Wの表面から除去される。
【0150】
隣り合う2つのパターンP1の間隔が狭いので、凝固層102が形成されるときに、固体と液体の界面がパターンP1の近傍に形成され、パターンP1を倒壊させる倒壊力が発生することがある。この倒壊力でパターンP1が倒壊したとしても、パターンP1が倒壊する前に凝固膜101が形成されているので、隣り合う2つのパターンP1は、直接的に接するのではなく、凝固膜101を介して接する。したがって、パターンP1が塑性変形や破損していなければ、凝固膜101を除去すると、倒壊したパターンP1は、自身の復元力で垂直状態に戻る。これにより、パターンP1の強度が低い場合であっても、最終的なパターンP1の倒壊率を改善することができる。
【0151】
第3処理例では、凝固層102が形成された後は、凝固層102の温度を、冷却温度よりも高く、吸着物質の凝固点以下の融解温度まで上昇させる。これにより、基板W上の凝固層102が融解し、乾燥前処理液に戻る。凝固層102の融解によって生じた乾燥前処理液は、凝固膜101を基板Wの表面に残しながら、基板Wの表面から除去される。これにより、凝固膜101の形成に用いられなかった余剰の乾燥前処理液が除去される。
【0152】
凝固層102の融解によって生じた乾燥前処理液を除去するときに、乾燥前処理液の上面が隣り合う2つのパターンP1の間に移動し、パターンP1が倒壊したとしても、この2つのパターンP1は、直接的に接するのではなく、凝固膜101を介して接する。したがって、パターンP1が塑性変形や破損していなければ、凝固膜101を除去すると、倒壊したパターンP1は、自身の復元力で垂直状態に戻る。これにより、パターンP1の強度が低い場合であっても、最終的なパターンP1の倒壊率を改善することができる。
【0153】
第3処理例において、基板W上の凝固層102を強制的に加熱する場合は、凝固層102を短時間で乾燥前処理液に戻すことができる。基板W上の凝固層102を室温の空間で放置する場合は、凝固層102の温度は緩やかに融解温度に近づく。そして、凝固層102の温度が融解温度(室温)に達すると、凝固層102が融解し乾燥前処理液に戻る。したがって、基板W上の凝固層102を強制的に加熱しなくても融解させることができる。
【0154】
第1および第3処理例では、凝固膜101の表面上に乾燥前処理液がある状態で、基板Wを水平に保持しながら鉛直な回転軸線まわりに回転させる。基板W上の乾燥前処理液は、遠心力によって基板Wから排出される。それと同時に、基板W上の乾燥前処理液の一部は、基板Wの回転によって生じる気流によって蒸発する。これにより、凝固膜101を基板Wの表面に残しながら、余剰の乾燥前処理液を基板Wの表面から除去できる。
【0155】
第1および第3処理例では、凝固膜101の表面上に乾燥前処理液がある状態で、基板Wの表面に気体を吹き付ける。基板W上の乾燥前処理液は、気体の圧力で基板Wから排出される。それと同時に、基板W上の乾燥前処理液の一部は、気体の供給によって蒸発する。これにより、凝固膜101を基板Wの表面に残しながら、余剰の乾燥前処理液を基板Wの表面から除去できる。
【0156】
他の実施形態
本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
たとえば、第1~第3処理例の少なくとも一つにおいて、基板W上の乾燥前処理液を液体に維持するために、乾燥前処理液の凝固点よりも高く、乾燥前処理液の沸点よりも低い液体維持温度に、基板W上の乾燥前処理液を維持する温度保持工程を行ってもよい。
【0157】
乾燥前処理液の凝固点と室温との差が小さいと、基板W上の乾燥前処理液を意図的に冷却する前に、凝固体が形成される場合がある。このような意図しない凝固体の形成を防止するために、基板Wに対する乾燥前処理液の供給を開始してから、基板W上の乾燥前処理液の冷却を開始するまでの期間において、温度保持工程を行ってもよい。たとえば、加熱した窒素ガスを基板Wの上面または下面に向けて吐出してもよいし、温水などの加熱液を基板Wの下面に向けて吐出してもよい。
【0158】
純水などの基板W上のリンス液を乾燥前処理液で置換できる場合は、基板W上のリンス液を置換液に置換する置換液供給工程を行わずに、乾燥前処理液供給工程を行ってもよい。
遮断部材51は、円板部52に加えて、円板部52の外周部から下方に延びる筒状部を含んでいてもよい。この場合、遮断部材51が下位置に配置されると、スピンチャック10に保持されている基板Wは、円筒部に取り囲まれる。
【0159】
遮断部材51は、スピンチャック10とともに回転軸線A1まわりに回転してもよい。たとえば、遮断部材51が基板Wに接触しないようにスピンベース12上に置かれてもよい。この場合、遮断部材51がスピンベース12に連結されるので、遮断部材51は、スピンベース12と同じ方向に同じ速度で回転する。
遮断部材51が省略されてもよい。ただし、基板Wの下面に純水などの液体を供給する場合は、遮断部材51が設けられることが好ましい。基板Wの外周面を伝って基板Wの下面から基板Wの上面の方に回り込んだ液滴や、処理カップ21から内方に跳ね返った液滴を遮断部材51で遮断でき、基板W上の乾燥前処理液に混入する液体を減らすことができるからである。
【0160】
凝固膜101は、ウェット処理ユニット2wとは異なる処理ユニット2で除去されてもよい。凝固膜101を除去する処理ユニット2は、基板処理装置1の一部であってもよいし、基板処理装置1とは異なる基板処理装置の一部であってもよい。つまり、ウェット処理ユニット2wが備えられた基板処理装置1と、凝固膜101を除去する処理ユニット2が備えられた基板処理装置とが、同じ基板処理システムに設けられており、凝固膜101を除去する前に、基板処理装置1から別の基板処理装置に基板Wを搬送してもよい。
【0161】
基板処理装置1は、円板状の基板Wを処理する装置に限らず、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
基板処理装置1は、枚葉式の装置に限らず、複数枚の基板Wを一括して処理するバッチ式の装置であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0162】
乾燥前処理液ノズル39は、乾燥前処理液供給手段の一例である。下面ノズル71は、冷却手段、間接冷却手段、および加熱手段の一例である。中心ノズル55およびスピンモータ14は、余剰液除去手段および液体除去手段の一例である。中心ノズル55およびスピンモータ14は、固体除去手段、相転移手段、および融解手段の一例でもある。制御装置3は、放置手段の一例である。
【符号の説明】
【0163】
1 :基板処理装置
2 :処理ユニット
3 :制御装置
10 :スピンチャック
14 :スピンモータ
39 :乾燥前処理液ノズル
55 :中心ノズル
59 :上温度調節器
66 :上温度調節器
71 :下面ノズル
75 :下ヒータ
79 :クーラー
86 :下温度調節器
101 :凝固膜
102 :凝固層
A1 :回転軸線
Hp :パターンの高さ
P1 :パターン
Ps :パターンの側面
Pu :パターンの上面
T1 :凝固膜の厚み
W :基板
Wp :パターンの幅