(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】逆走判定装置、逆走判定方法、プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230224BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G09B29/00 Z
(21)【出願番号】P 2018141184
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅基
(72)【発明者】
【氏名】米山 正剛
(72)【発明者】
【氏名】中野 具宏
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 正樹
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-081419(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149655(WO,A1)
【文献】特開2016-145839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記車両の位置に基づいて前記車両が走行する道路区間である走行道路区間を逐次特定する道路区間特定部と、
前記車両が一方通行の道路区間である一方通行道路区間を逆走しているか否かの判定を行う判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記一方通行道路区間に設けられた所定の地点
の所定距離範囲内に前記車両の位置が含まれ、前記判定の前に前記道路区間特定部により逐次特定された前記走行道路区間であって前記判定時から所定数まで遡った前記走行道路区間のうちに、前記一方通行道路区間の進行許可方向側端に接続された道路区間である設定道路区間が含まれ、且つ前記車両の位置の移動方向が前記一方通行道路区間
の逆走方向を含む所定の角度範囲に所定期間継続して含まれる場合に、前記車両が前記一方通行道路区間を逆走していると判定する、
ことを特徴とする逆走判定装置。
【請求項2】
前記一方通行道路区間及び前記設定道路区間は、各々の進行許可方向側端で互いに接続されていることを特徴とする請求項
1に記載の逆走判定装置。
【請求項3】
前記所定の地点は、前記設定道路区間と前記一方通行道路区間との接続点から前記一方通行道路区間の逆走方向に所定距離だけ離れた地点であることを特徴とする請求項
1又は2に記載の逆走判定装置。
【請求項4】
前記道路区間特定部は、複数の道路区間を含む地図データの道路区間の各々と前記車両の位置とをマッチングするマップマッチング処理を実行することにより、前記車両の走行道路区間を特定することを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1に記載の逆走判定装置。
【請求項5】
車両が逆走しているか否かの判定を行う逆走判定装置により実行される逆走判定方法であって、
前記車両の位置を取得するステップと、
取得された前記車両の位置に基づいて、前記車両が走行する道路区間である走行道路区間を逐次特定するステップと、
前記車両が一方通行の道路区間である一方通行道路区間を逆走しているか否かの判定を行う判定ステップと、
を有し、
前記判定ステップは、前記一方通行道路区間に設けられた所定の地点
の所定距離範囲内に前記車両の位置が含まれ、前記判定の前に前記道路区間特定ステップにより逐次特定された前記走行道路区間であって前記判定時から所定数まで遡った前記走行道路区間のうちに、前記一方通行道路区間の進行許可方向側端に接続された道路区間である設定道路区間が含まれ、且つ前記車両の位置
の移動方向が前記一方通行道路区間
の逆走方向を含む所定の角度範囲に所定期間継続して含まれる場合に、前記車両が前記一方通行道路区間を逆走していると判定することを特徴とする逆走判定方法。
【請求項6】
コンピュータに、
前記車両の位置を取得するステップと、
取得された前記車両の位置に基づいて、前記車両が走行する道路区間である走行道路区間を逐次特定するステップと、
前記車両が一方通行の道路区間である一方通行道路区間を逆走しているか否かの判定を行う判定ステップと、
を実行させ、
前記判定ステップは、前記一方通行道路区間に設けられた所定の地点
の所定距離範囲内に前記車両の位置が含まれ、前記判定の前に前記道路区間特定ステップにより逐次特定された前記走行道路区間であって前記判定時から所定数まで遡った前記走行道路区間のうちに、前記一方通行道路区間の進行許可方向側端に接続された道路区間である設定道路区間が含まれ、且つ前記車両の位置
の移動方向が前記一方通行道路区間
の逆走方向を含む所定の角度範囲に所定期間継続して含まれる場合に、前記車両が前記一方通行道路区間を逆走していると判定することを特徴とするプログラム。
【請求項7】
コンピュータに、
前記車両の位置を取得するステップと、
取得された前記車両の位置に基づいて、前記車両が走行する道路区間である走行道路区間を逐次特定するステップと、
前記車両が一方通行の道路区間である一方通行道路区間を逆走しているか否かの判定を行う判定ステップと、
を実行させるプログラムを記録し、
前記判定ステップは、前記一方通行道路区間に設けられた所定の地点
の所定距離範囲内に前記車両の位置が含まれ、前記判定の前に前記道路区間特定ステップにより逐次特定された前記走行道路区間であって前記判定時から所定数まで遡った前記走行道路区間のうちに、前記一方通行道路区間の進行許可方向側端に接続された道路区間である設定道路区間が含まれ、且つ前記車両の位置
の移動方向が前記一方通行道路区間
の逆走方向を含む所定の角度範囲に所定期間継続して含まれる場合に、前記車両が前記一方通行道路区間を逆走していると判定することを特徴とする記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が一方通行道路を逆走していることを判定する逆走判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速道路の入り口付近や交差点等において、許可されている進行方向とは逆の方向に走行するいわゆる「逆走」による事故が多発している。このような逆走による事故を防止するため、車両が逆走していることを検知して警告を発する装置が提案されている。例えば、車両の現在地近傍にある一方通行の道路を抽出し、抽出された道路において通行が許可されている方向と車両が走行している方向とが異なる方向であるかどうかを判定し、異なる方向であると判定されたときに音や画像を用いて車両が逆走している旨を報知する逆走判定装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のような逆走判定装置は、GPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムにより、車両の現在位置を測位する。しかし、衛星測位システムを用いた測位結果には誤差が含まれている。また、高架下やトンネルの内部等、衛星測位システムによる測位ができない場所で行われる自律航法による測位でも、測位結果には誤差が生じる。このため、測位結果の誤差が大きい状況では、車両の現在地近傍の道路として誤った道路が抽出されてしまい、逆走判定の精度が低下する場合があるという問題点があった。
【0005】
このように、本発明が解決しようとする課題としては、車両の位置を測位する際に生じた誤差により、逆走判定の精度が低下する虞があるということが課題の一例として挙げられる。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、車両の位置の測位に誤差が生じるような状況においても、精度の高い逆走判定を行うことを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、逆走判定装置であって、車両の位置を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記車両の位置に基づいて前記車両が走行する道路区間である走行道路区間を逐次特定する道路区間特定部と、前記車両が一方通行の道路区間である一方通行道路区間を逆走しているか否かの判定を行う判定部と、を備え、前記判定部は、前記判定の前に前記道路区間特定部により逐次特定された前記走行道路区間であって前記判定時から所定数まで遡った前記走行道路区間のうちに、前記一方通行道路区間に対応して設定された道路区間である設定道路区間が含まれ、且つ前記車両の位置の移動方向が前記一方通行道路区間に対する所定の条件を満たす場合に、前記車両が前記一方通行道路区間を逆走していると判定する、ことを特徴とする。
【0008】
請求項8に記載の発明は、車両が逆走しているか否かの判定を行う逆走判定装置により実行される逆走判定方法であって、前記車両の位置を取得するステップと、取得された前記車両の位置に基づいて、前記車両が走行する道路区間である走行道路区間を逐次特定するステップと、前記車両が一方通行の道路区間である一方通行道路区間を逆走しているか否かの判定を行う判定ステップと、を有し、前記判定ステップは、前記判定の前に前記道路区間特定ステップにより逐次特定された前記走行道路区間であって前記判定時から所定数まで遡った前記走行道路区間のうちに、前記一方通行道路区間に対応して設定された道路区間である設定道路区間が含まれ、且つ前記車両の位置の前記判定以前の移動方向が前記一方通行道路区間に対する所定の条件を満たす場合に、前記車両が前記一方通行道路区間を逆走していると判定することを特徴とする。
【0009】
請求項9に記載の発明は、プログラムであって、コンピュータに、前記車両の位置を取得するステップと、取得された前記車両の位置に基づいて、前記車両が走行する道路区間である走行道路区間を逐次特定するステップと、前記車両が一方通行の道路区間である一方通行道路区間を逆走しているか否かの判定を行う判定ステップと、を実行させ、前記判定ステップは、前記判定の前に前記道路区間特定ステップにより逐次特定された前記走行道路区間であって前記判定時から所定数まで遡った前記走行道路区間のうちに、前記一方通行道路区間に対応して設定された道路区間である設定道路区間が含まれ、且つ前記車両の位置の前記判定以前の移動方向が前記一方通行道路区間に対する所定の条件を満たす場合に、前記車両が前記一方通行道路区間を逆走していると判定することを特徴とする。
【0010】
請求項10に記載の発明は、記録媒体であって、コンピュータに、前記車両の位置を取得するステップと、取得された前記車両の位置に基づいて、前記車両が走行する道路区間である走行道路区間を逐次特定するステップと、前記車両が一方通行の道路区間である一方通行道路区間を逆走しているか否かの判定を行う判定ステップと、を実行させるプログラムを記録し、前記判定ステップは、前記判定の前に前記道路区間特定ステップにより逐次特定された前記走行道路区間であって前記判定時から所定数まで遡った前記走行道路区間のうちに、前記一方通行道路区間に対応して設定された道路区間である設定道路区間が含まれ、且つ前記車両の位置の前記判定以前の移動方向が前記一方通行道路区間に対する所定の条件を満たす場合に、前記車両が前記一方通行道路区間を逆走していると判定することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施例の逆走判定装置の構成を示すブロック図である。
【
図2A】道路リンク、ノード及び逆走判定地点の関係を示す図である。
【
図2B】判定開始領域及び判定角度の例を示す図である。
【
図3】地図データに含まれる情報を情報テーブルとして示す図である。
【
図4】開始判定処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【
図5A】車両の位置情報及びマップマッチングの結果の例を示す図である。
【
図5C】判定開始領域及び判定角度と車両の位置との関係の例を示す図である。
【
図6】逆走判定処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
【0013】
図1は、本実施例の逆走判定装置10の構成を示すブロック図である。逆走判定装置10は、例えば道路を走行する車両等の移動体(以下、単に車両と称する)に搭載されている。逆走判定装置10は、測位部11、記憶部12、制御部13及び出力部14を有する。
【0014】
測位部11は、例えば衛星測位システムであるGPS(Global Positioning System)によって位置を測定するGPSセンサから構成されている。測位部11は、複数のGPS衛星から送信された電波を受信し、受信した電波に基づいて各GPS衛星からの距離を算出することにより、位置情報を取得する。上記の通り、本実施例の逆走判定装置10は車両に搭載されているため、測位部11が取得する位置情報は車両の現在位置を示す位置情報となる。測位部11は、位置情報の取得を毎秒行う。
【0015】
記憶部12は、ハードディスク、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置から構成されている。記憶部12は、地図データ格納部12A及び情報保持部12Bを含む。
【0016】
地図データ格納部12Aは、各々が道路区間を示す複数の道路リンクと、各々の道路リンクの端部であって道路リンク同士の接続点を示すノードと、から構成される道路網データを含む地図データを格納する。当該地図データには、各道路リンクにおいて進行が許可されている方向(以下、進行許可方向と称する)の情報と、道路リンク上に設けられた逆走判定の基準となる地点である逆走判定地点の情報とが対応付けて記録されている。
【0017】
図2Aは、地図データに含まれる道路リンク、ノード、進行許可方向、及び逆走判定地点の情報を視覚的に示す図である。例えば、道路リンクL01は、ノードN01及びノードN02を両端部とする一方通行の道路区間であり、ノードN01からノードN02に向かう方向が進行許可方向として規定されている。
【0018】
道路リンクL01と略平行に延伸するように、道路リンクL11が設けられている。道路リンクL11は、道路リンクL01の進行許可方向とは逆方向の進行許可方向を有する。
【0019】
道路リンクL01は、ノードN02を介して道路リンクL02及び道路リンクL21と接続されている。道路リンクL01及び道路リンクL02は、1本の道路を形成する連続した道路区間である。道路リンクL21は、ノードN21及びノードN02を両端部とする道路区間であり、ノードN21からノードN02に向かう方向が進行許可方向として規定されている。
【0020】
また、道路リンクL01上には、逆走判定地点R1が設けられている。道路リンクL21上には、逆走判定地点R2が設けられている。各逆走判定地点には、当該逆走判定地点が設けられた道路リンクに接続された道路リンクのうち、接続点であるノードが逆走判定地点R1よりも進行許可方向側に位置しているリンクが、前方リンクとして対応付けて記録されている。前方リンクは、逆走判定地点が設けられた一方通行の道路区間である道路リンク上を逆走判定地点に向かって進入するために走行しなければならない道路リンクであり、当該一方通行の道路区間に対応して設定された設定道路区間である。
【0021】
例えば、道路リンクL21は、道路リンクL01との接続点であるノードが道路リンクL01上において逆走判定地点R1よりも進行許可方向側に位置しているため、道路リンクL01の前方リンクとして、逆走判定地点R1と対応付けて記録されている。仮に道路リンクL21からノードN02を通って道路リンクL01に進入し、逆走判定地点R1に向かって走行した場合、道路リンクL01を逆走(すなわち、進行許可方向とは逆方向に走行)したことになる。
【0022】
また、逆走判定地点の各々には、逆走判定装置10による逆走判定のトリガとなる判定開始領域と、逆走判定において車両の移動方向との比較に用いる判定角度と、が設定されている。判定開始領域は、例えば逆走判定地点から所定の距離範囲内の領域として設定されている。判定角度は、例えば逆走判定地点が設けられた道路リンクの進行許可方向とは逆方向の角度を含む所定の角度範囲として設定されている。
【0023】
図2Bは、逆走判定地点R1における判定開始領域及び判定角度を示す図である。判定開始領域SA1は、例えば逆走判定地点R1を中心とした円形状の領域として設定されている。また、判定角度は、逆走判定地点R1を中心とした扇形の領域DAの中心角であって、道路リンクL01の進行許可方向とは逆方向の角度を含む所定の角度範囲として設定されている。
【0024】
図3は、地図データに記録されている情報の例を示す情報テーブルである。地図データには、逆走判定地点が設けられた道路リンク、逆走判定地点の緯度及び経度、道路リンクの端部であるノード、道路リンクの進行許可方向、前方リンク、判定開始領域、及び判定角度の情報が、逆走判定地点の情報と対応付けて記録されている。
【0025】
例えば、逆走判定地点R1が設けられた道路リンクL01の情報と対応付けて、逆走判定地点R1の緯度及び経度、道路リンクL01の端部がノードN01及びノードN02であること、進行許可方向がノードN01からノードN02に向かう方向であること、及び前方リンクが道路リンクL21であることが記録されている。同様に、逆走判定地点R2が設けられた道路リンクL21の情報と対応付けて、逆走判定地点R2の緯度及び経度、道路リンクL21の端部がノードN21及びノードN02であること、進行許可方向がノードN21からノードN02に向かう方向であること、及び前方リンクが道路リンクL21であることが記録されている。また、判定開始領域の情報は、例えば逆走判定地点を中心とした半径××の範囲(図中では、Rad=××として示す)として記録されている。また、判定角度の情報は、例えば道路リンクの逆走方向を中心とした±××°の角度範囲として記録されている。
【0026】
なお、前方リンクとして地図データに記録される道路リンクは、逆走判定地点が設けられた道路リンクに直接接続されているリンクに限られない。例えば、
図2A及び
図2Bに示す道路リンクL20のように、道路リンクL01に間接的に接続されている道路リンクが、道路リンクL21とともに前方リンクとして記録されていてもよい。すなわち、前方リンクとして設定される設定道路区間は、逆走判定地点が設けられた一方通行の道路区間である道路リンクに対し、当該一方通行の道路区間の逆走判定地点よりも進行許可方向側で直接又は間接に接続された道路リンクであればよい。
【0027】
再び
図1を参照すると、情報保持部12Bは、例えばRAMから構成され、制御部13の処理に必要なデータ及び処理において発生するデータを適宜記憶する。例えば、情報保持部12Bは、測位部11により取得された車両の位置情報を逐次記憶する。
【0028】
制御部13は、中央演算処理装置(CPU(Central processing Unit))等から構成され、逆走判定装置10の各部の制御及び逆走判定のための各種の処理を行う。制御部13は、道路区間特定部13A及び逆走判定部13Bを含む。
【0029】
道路区間特定部13Aは、測位部11により取得された車両の位置情報と、地図データ格納部12Aから読み出した地図データと、に基づいてマップマッチング処理を実行し、車両が走行する道路区間(以下、走行道路区間と称する)を逐次特定する。なお、特定された走行道路区間の情報は、記憶部12の情報保持部12Bに記憶される。
【0030】
逆走判定部13Bは、道路区間特定部13Aにより特定された走行道路区間の情報と、測位部11により取得された車両の位置情報と、地図データ格納部12Aから読み出した地図データに含まれる逆走判定地点、判定開始領域及び判定角度の情報と、に基づいて、車両が逆走しているか否か判定する逆走判定処理を実行する。
【0031】
具体的には、逆走判定部13Bは、道路区間特定部により特定された走行道路区間の履歴のうち、判定時から遡って所定数(例えば3つ)の中に、逆走判定の対象である道路リンク(すなわち、逆走判定地点が設けられた道路リンク)に対応付けられた前方リンクが含まれるか否かを判定する。そして、前方リンクが含まれると判定した場合、逆走判定部13Bは、当該道路リンクにおける判定角度と判定時の直前から判定時までの車両の位置の移動方向とを1秒ごとに比較し、判定角度内に車両の位置の移動方向が所定回数(例えば3回)含まれると判定した場合に、車両が逆走していると判定する。
【0032】
なお、逆走判定部13Bは、車両が判定開始領域に進入したことを契機として逆走判定の判定処理を開始する。また、逆走判定部13Bは、車両が逆走しているといったん判定した場合、逆走状態からの回復時に何度も逆走判定がされることを防ぐため、「逆走検知停止フラグ」をONに設定し、所定時間の間、逆走判定処理の実行を停止する。
【0033】
また、逆走判定処理部13Bが逆走判定処理を実行する道路属性やエリアを、判定処理の前に予め設定しておくことが可能である。例えば、高速道路でのみ逆走判定処理を実行するように設定した場合、逆走判定処理部13Bは高速道路上の逆走判定地点についてのみ逆走判定処理を実行する。このように設定しておくことで、細かい路地等、逆走による危険度が低いにもかかわらず誤判定が生じやすいエリアを避けることができる。一方、幹線道路や高速道路のように中央分離帯で車線が区切られていている道路では、逆走判定の必要性が大きいため、このようなエリアでのみ逆走判定を行うように設定することにより、車両の逆走による危険の発生を防止することが可能となる。
【0034】
出力部14は、液晶ディスプレイ等の表示パネルやスピーカ等の音声出力装置から構成されている。出力部14は、逆走判定部13Bにより車両が逆走したと判定されると、その旨を報知する警告表示を表示パネルに表示し、警告音を出力する。
【0035】
次に、本実施例の逆走判定装置10が実行する各種処理の処理動作について説明する。なお、以下の説明では、車両の位置情報が測位部11によって毎秒取得されていることを前提とする。
【0036】
[開始判定処理ルーチン]
まず、逆走判定処理を開始するか否かを判定するための開始判定処理の処理動作について、
図4のフローチャート及び
図5Aを参照して説明する。
【0037】
制御部13は、逆走判定停止フラグがOFFとなっているか否かを判定する(STEP101)。逆走判定停止フラグがOFFになっていない(すなわちONになっている)と判定すると(STEP101:No)、最初のステップに戻り、逆走判定停止フラグがOFFになるのを待つ。
【0038】
一方、逆走判定停止フラグがOFFになっていると判定すると(STEP101:Yes)、制御部13は、車両が走行中であるか否かを判定するため、車両に設けられた速度センサから速度情報を取得し、車両の速度が所定速度以上であるか否かを判定する(STEP102)。車両の速度が所定速度未満であると判定すると(STEP102:No)、最初のステップに戻り、車両の速度が所定速度以上になるのを待つ。
【0039】
一方、車両の速度が所定速度以上であると判定すると(STEP102:Yes)、制御部13の道路区間特定部13Aは、測位部11によって毎秒取得された車両の位置情報と地図データ格納部12Aから読み出した地図データとに基づいて、マップマッチング処理を実行する(STEP103)。これにより、車両が走行する道路リンク(すなわち、走行道路区間)が特定される。
【0040】
図5Aは、マップマッチング処理の結果の例を示す図である。図中の黒点は、測位部11により位置情報として取得された車両の位置PDを示している。黒点と黒点とを結ぶ破線は、車両の位置情報に基づいて得られた車両の移動の軌跡を示している。一方、図中の道路リンク上に断続的に設けられた複数の三角形は、マップマッチング処理によって算出された車両の走行位置MDを示している。
【0041】
なお、測位部11によって取得された車両の位置情報には誤差があるため、
図5Aに示すように、生の位置情報から得られた車両の位置PDの移動の軌跡と、マップマッチング処理によって得られた車両の走行の軌跡MDとの間にはズレが生じ得る。例えば、車両が実際には道路リンクL21から道路リンクL01に進入した場合であっても、マップマッチング処理の結果では車両が道路リンクL21からL11に進入したと判定される場合がある。このため、マップマッチング処理のみによっては逆走判定を正確に行うことが出来ず、以下の各ステップによる処理が必要となる。
【0042】
再び
図4を参照すると、制御部13は、マッチング先の道路が存在するか否かを判定する(STEP104)。例えば、車両が駐車場等の道路ではないエリアに位置している場合、マッチング先の道路がないと判定される。また、逆走判定処理を高速道路でのみ実行するように設定されている場合、一般道を走行している車両もマッチング先の道路がないと判定される。
【0043】
マッチング先の道路がないと判定すると(STEP104:No)、後述する逆走判定処理の処理ステップにおいて判定される、車両が判定開始領域内に存在する回数及び車両の移動方向が判定角度内である回数をリセットし(STEP105)、最初のステップに戻る。
【0044】
一方、マッチング先の道路があると判定すると(STEP104:Yes)、逆走判定部13Bは、逆走判定処理を開始する。
【0045】
[逆走判定処理ルーチン]
次に、逆走判定処理の処理動作について、
図6のフローチャートと、
図5B及び
図5Cとを参照して説明する。
【0046】
逆走判定部13Bは、測位部11により取得された位置情報に基づいて、車両が判定開始領域内に位置しているか否かを判定する(STEP201)。ここでは、測位部11によって車両の位置情報が毎秒取得されることから、車両が判定開始領域内に位置しているか否かの判定も1秒ごとに繰り返し行う。
【0047】
車両が判定開始領域内に位置していないと判定すると(STEP201:No)、逆走判定部13Bは、車両が判定開始領域内に位置していると連続して判定された回数(以下、連続回数(領域)と称する)が所定の閾値以上(例えば、3回以上)であるか否かを判定する(STEP202)。
【0048】
連続回数(領域)が閾値未満であると判定すると(STEP202:No)、連続回数(領域)を初期化して処理を終了し(STEP203)、開始判定処理ルーチンの最初のステップ(
図4のSTEP101)に戻る。
【0049】
STEP201において、車両が判定開始領域内に位置していると判定すると(STEP201:Yes)、逆走判定部13Bは、連続回数(領域)の情報を更新し、回数をインクリメントする(STEP204)。
【0050】
STEP202において連続回数(領域)が閾値以上であると判定された場合(STEPS202:Yes)、又はSTEP204において連続回数(領域)のインクリメントが行われると、逆走判定部13Bは、情報保持部12Bを参照して、開始判定ルーチンのマップマッチング処理(
図4のSTEP103)において特定された走行道路区間の履歴のうち、判定時から遡って直近の3つの走行道路区間に、逆走判定の対象である道路リンク(すなわち、逆走判定地点が設けられた道路リンク)に対応付けられた前方リンクが含まれるか否かを判定する(STEP205)。
【0051】
図5Bは、車両の走行道路区間の履歴の例を示す図である。
図2A及び
図2Bに示すように、逆走判定地点R1に対応付けられた前方リンクはL21であるため、直近の3つの走行道路区間に前方リンクが含まれていると判定される。
【0052】
再び
図6を参照すると、直近の3つの走行道路区間に前方リンクが含まれていると判定すると(STEP205:Yes)、逆走判定部13Bは、車両の移動方向のベクトルが、逆走判定の対象である道路リンクにおける判定角度の範囲内であるか否かを判定する(STEP206)。
【0053】
図5Cは、図中に黒点で示す車両の位置PDが判定開始領域SA1に3回連続して含まれ、且つ判定開始領域内における車両の移動方向のベクトル(黒点と黒点とを結ぶ破線部分)が判定角度の範囲内である場合を示している。図に示すように、隣接する黒点同士を結ぶ破線の傾きが、斜線で示す扇形の領域DAの中心角の角度範囲に含まれる場合に、車両の移動方向が判定角度に含まれると判定される。
【0054】
再び
図6を参照すると、車両の移動方向が判定角度の範囲内であると判定すると(STEP206:Yes)、逆走判定部13Bは、車両の移動方向が判定角度内に含まれると連続して判定された回数(以下、連続回数(角度)と称する)の情報を更新し、回数をインクリメントする(STEP208)。
【0055】
一方、STEP205において直近の3つの走行道路区間に前方リンクが含まれていないと判定された場合(STEP205:No)、及びSTEP206において車両の移動方向が判定角度の範囲内ではないと判定された場合(STEP206:No)、連続回数(領域)及び連続回数(角度)を初期化して処理を終了し(STEP208)、開始判定処理ルーチンの最初のステップ(
図4のSTEP101)に戻る。
【0056】
STEP207における連続回数(角度)のインクリメントの後、逆走判定部13Bは、連続回数(角度)が閾値以上であるか否かを判定する(STEP209)。連続回数(角度)が閾値未満であると判定すると(STEP209:No)、逆走処理を終了し、開始判定処理ルーチンの最初のステップ(
図4のSTEP101)に戻る。
【0057】
連続回数(角度)が閾値以上であると判定すると(STEP209:Yes)、逆走判定部13Bは、車両が逆走していると判定する。そして、制御部11は、出力部14を制御して、車両が逆走している旨の警告を報知させる。出力部14は、表示パネルに警告を表示し、スピーカから警告音を出力する(STEP210)。
【0058】
なお、車両の位置が複数の判定開始領域に含まれ且つ開始判定処理による開始判定がなされた場合、それぞれの判定開始領域について逆走判定処理を行い、いずれか一方でも逆走していると判定された場合には、警告を出力する。
【0059】
以上のように、本実施例の逆走判定装置10は、車両の位置及びその判定時までの移動方向が所定の条件(判定開始領域、判定角度)を満たすかどうかに加えて、マップマッチング処理により特定された走行道路区間に、逆走判定の対象となる道路リンクの前方リンクが含まれるか否かを逆走判定の条件としている。したがって、測位部11により取得された車両の位置に誤差が生じているような場合であっても、逆走判定を正確に行うことができる。
【0060】
例えば、測位部11によって取得された車両の位置情報には誤差があるため、
図5Aに示すように、生の位置情報から得られた車両の位置PDの移動の軌跡と、マップマッチング処理によって得られた車両の走行の軌跡MDとの間にはズレが生じる場合がある。例えば、車両が実際には道路リンクL21から道路リンクL01に進入した場合であっても、マップマッチング処理の結果によっては、車両が道路リンクL21からL11に進入したと判定されてしまう。
【0061】
しかし、本実施例の逆走判定装置10では、特定された走行道路区間のうちの所定数(例えば直近の3つ)遡った走行道路区間に基づいて、走行道路区間に前方リンクが含まれるか否かを判定する。したがって、測位部11により取得された位置情報とマップマッチング処理により特定された走行道路の位置にずれが生じた場合であっても、逆走判定を正確に行うことができる。
【0062】
また、本実施例の逆走判定装置10では、一方通行の道路区間を示す道路リンク上に逆走判定地点が設けられ、その道路リンクに接続された道路リンクのうち、接続点であるノードが逆走判定地点R1よりも進行許可方向側に位置しているリンクが、前方リンクとして設定されている。そして、地図データには、当該逆走判定地点の位置情報と、前方リンクの識別情報とが対応付けて記憶されている。このような地図データよれば、複数のデータベースにアクセスしたり、通信等によりこれらのデータをその都度取得したりすることなく、短時間で逆走判定を行う事が可能となる。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施例では、判定時から遡って直近の3つの走行道路区間に前方リンクが含まれているか否かを判定する場合を例として説明した。しかし、対象とする走行道路区間の数は3つに限られず、判定時から所定数まで遡った走行道路区間のうちに前方リンクが含まれているか否かを判定するものであればよい。
【0064】
また、上記実施例では、判定時から遡って所定数の走行道路区間に逆走判定の対象である道路区間に対応付けて設定された設定道路区間である前方リンクが含まれるか否かを判定した後、車両の位置の移動方向が、判定角度の範囲内に所定の回数連続して(すなわち、所定期間継続して)含まれるか否かを判定することにより、車両の逆走判定を行う例について説明した。しかし、これらの順番は逆であってもよい。すなわち、車両の位置の移動方向が、判定角度の範囲内に所定の回数連続して含まれるか否かを判定した後、判定時から遡って所定数の走行道路区間に前方リンクが含まれるか否かを判定することにより、逆走判定を行ってもよい。
【0065】
また、地図データに記録される情報は、
図3に示す情報に限られない。例えば、緯度や経度の情報の情報に加えて、逆走判定地点の高さを特定する情報を含んでいてもよい。また、高速道路か一般道路かを示す道路リンクの属性情報や、道路幅、制限速度等の情報を含んでいてもよい。また、必ずしも
図3に示す情報の全てが地図データに記録されている必要はなく、少なくとも、一方通行の道路区間を示す道路リンク上の1の点である逆走判定地点の位置情報と、前方リンクの識別情報とが、対応付けて記録されていればよい。この場合、逆走判定装置10の制御部13が、地図データに記録された逆走判定地点の位置情報に基づいて判定開始領域を設定し、一方通行の道路区間の進行許可方向に基づいて判定角度の範囲の範囲を設定することとする。
【0066】
また、上記実施例では、測位部11がGPSセンサから構成されている場合を例として説明した。しかし、測位部11は車両の位置情報を取得することが可能であればよく、上記実施例で示したものに限られない。例えば、測位部11は逆走判定装置10の外部に設けられたGPSセンサ等から車両の位置情報を取得するものであってもよい。そして、上記実施例では、測位部11が車両の位置情報を毎秒取得する場合を例として説明したが、これに限られず、所定の時間間隔で車両の位置情報を取得するものであればよい。
【0067】
また、車両の位置情報をより精緻に取得するため、逆走判定装置10が上記実施例で示した構成に加えて、例えば車両の加速度を検出する加速度センサや角速度を検出する角速度センサ等を有していてもよい。
【0068】
また、上記実施例で説明した一連の処理は、例えばROMなどの記録媒体に格納されたプログラムに従ったコンピュータ処理により行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
10 逆走判定装置
11 測位部
12 記憶部
12A 地図データ格納部
12B 情報保持部
13 制御部
13A 道路区間特定部
13B 逆走判定部
14 出力部