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特許7232589高周波同軸ケーブル接続用コネクタ及び高周波同軸ケーブル接続用コネクタと実装基板との接続構造
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  • 特許-高周波同軸ケーブル接続用コネクタ及び高周波同軸ケーブル接続用コネクタと実装基板との接続構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】高周波同軸ケーブル接続用コネクタ及び高周波同軸ケーブル接続用コネクタと実装基板との接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/55 20110101AFI20230224BHJP
   H01R 24/42 20110101ALI20230224BHJP
   H01R 24/50 20110101ALI20230224BHJP
   H01R 4/02 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
H01R12/55
H01R24/42
H01R24/50
H01R4/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018151185
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2020027719
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003414
【氏名又は名称】東京特殊電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】中田 康平
(72)【発明者】
【氏名】宮本 直久
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0052755(US,A1)
【文献】特開2018-018654(JP,A)
【文献】特開平07-050371(JP,A)
【文献】特開2016-201234(JP,A)
【文献】特開2000-067963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 3/00-4/22
H01R 12/00-12/91
H01R 24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも実装基板とのはんだ接続部位において、中心導体ピンと、該中心導体ピンと一定の距離を空けて配置される外部導体とを有し、前記中心導体ピンが前記実装基板にはんだ接続される高周波同軸ケーブル接続用コネクタであって、
前記中心導体ピンは、はんだ濡れ性の良いはんだ接続部と、はんだ濡れ性の悪い前記はんだ接続部以外の部分とを有し、
前記はんだ接続部の外径が前記はんだ接続部以外の部分の外径よりも小さく、
前記はんだ接続部以外の部分は、前記はんだが前記はんだ接続部以外の部分にはんだ付けされるのを防ぐはんだ濡れ性の低い材料で被覆されており、
前記はんだ接続部は、金、銀、ニッケル、錫、若しくはそれらの合金等の材質から選ばれるはんだ付け性の良いめっき、又はそれらの積層めっきが設けられており、
前記はんだ接続部以外の部分は、フッ素系樹脂又は発泡樹脂で被覆されており、
前記はんだ接続部には、前記はんだ接続部以外の部分でのはんだによる外径太りを防ぐテーパ形状が、前記中心導体ピンの先端に向かって先細りしている、ことを特徴とする高周波同軸ケーブル接続用コネクタ。
【請求項2】
前記テーパ形状のテーパ角度は、前記中心導体ピンの先端に向かって60~120°の範囲内である、請求項1に記載の高周波同軸ケーブル接続用コネクタ。
【請求項3】
前記中心導体ピンのはんだ接続部は、使用周波数の1/4波長の長さ以下の長さである、請求項1又は2に記載の高周波同軸ケーブル接続用コネクタ。
【請求項4】
前記はんだ接続部以外の部分は、熱収縮したフッ素系樹脂チューブで被覆されている、請求項1~のいずれか1項に記載の高周波同軸ケーブル接続用コネクタ。
【請求項5】
前記高周波同軸ケーブル接続用コネクタは、高周波同軸ケーブルが接続されるか又は接続されている接続用コネクタであって、前記高周波同軸ケーブルが装着されているもの、高周波同軸ケーブルが装着可能な端子部を含むもの、配線基板に接続可能な端子部を含むもの、又は、高周波同軸ケーブルが装着されるか若しくは装着されているプラグに接続可能なもの、で構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の高周波同軸ケーブル接続用コネクタ。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の高周波同軸ケーブル接続用コネクタと実装基板との接続構造であって、前記高周波同軸ケーブル接続用コネクタが有する中心導体ピンが、実装基板にはんだ接続されており、
前記はんだ接続部以外の部分は、前記はんだが前記はんだ接続部以外の部分にはんだ付けされておらず、前記はんだ接続部には、前記はんだ接続部以外の部分でのはんだによる外径太りが防がれて、前記中心導体ピンと前記外部導体とが一定の距離を空けて配置されている、ことを特徴とする接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にICの評価基板等の測定に使用される高周波同軸ケーブル接続用コネクタ、及びその高周波同軸ケーブル接続用コネクタと実装基板との接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波同軸ケーブルは、移動体通信機器、情報処理機器、電子計測機器、検査機器等の電子機器に用いられ、その電子機器が有する実装基板に接続用コネクタを介して接続されている。電子機器は、高い周波帯域で使用されるため、高周波同軸ケーブルと接続用コネクタとの接続構造や、接続用コネクタと実装基板との接続構造での高周波信号の反射が起こると反射損失が増大してしまう。高周波信号の反射は、接続構造部位での特性インピーダンスの変動が主に影響する。
【0003】
特性インピーダンスを低減させる技術として、例えば特許文献1の第0048段落には、多極同軸コネクタにおいて、プラグに設けた信号用コンタクト及びGND用コンタクトの弾接ばね部が、レセプタクルに設けた信号用ポストおよびGND用ポストの端子板部に対して内側から弾接するので、弾接ばね部が端子板部に外側から弾接する場合に比べて、各コンタクトの圧入片の間隔を狭くでき、圧入片間の高周波インピーダンスを低減することができることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2の第0028~0032段落には、同軸コネクタにおいて、特性インピーダンスの値が50Ωから大きく外れるのは、信号線路と接地線路との間隔で定義される導体間隔Wに特性インピーダンスが依存するため、導体間隔Wが変化している部位が存在していることが原因であると記載されている。例えば、部位(1)では、回路基板の表面にはんだが広がると、そのはんだと外部導体との導体間隔が狭くなって特性インピーダンスが変動し、部位(2)では、各中心導体同士が接している部位では中心導体の厚さの分だけ導体間隔が狭くなって特性インピーダンスが変動し、部位(3)では、外部導体の開口端と外部導体との隙間が存在する部位で、その隙間が中心導体側に表出することで導体間隔が広くなって特性インピーダンスが変動することが記載されている。
【0005】
特許文献2の第0075~0080段落では、上記課題に対し、隙間が表出しないことで開口端の近傍での導体間隔が中心導体の延在方向に沿って一定となるようにしている。例えば、(i)外部導体のバネ性で当接面に開口端を押圧させることにより、近傍において隙間が表出する余地を少くしたり、(ii)はんだを使用せずに回路基板に中心導体膜や外部導体を固定することにより、回路基板の上を濡れ広がるはんだが原因で回路基板の表面近傍で導体間隔が変動しないようにしたり、(iii)中心導体を中心導体膜に当接させることで両者を電気的に接続するが、一方の中心導体を他方で挟持しないようにすることにより、延在方向に沿って導体間隔を略一定としたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-129863号公報
【文献】特開2016-197562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、同軸コネクタの特性インピーダンスは、信号線路と接地線路との間隔で定義される導体間隔に依存する。しかしながら、特許文献1の技術は、同文献の図10に示すように、はんだ付け部分(はんだ付け端子部分)では同軸構造を有していないので、インピーダンス整合されていない。そのため、10GHzを超える高い周波数帯域では、反射が大きくなり、正確な伝送ができない。
【0008】
また、特許文献2では、はんだ接続を行わない方法を提案しているが、はんだ接続を行わない方法、特に押圧による接続方法では、圧力による点接触となるために接触安定性が悪くなり易く、特性が不安定になり易いという問題がある。特に押圧による接続方法を多極コネクタに適用した場合は、各コネクタで接触バラツキが多く発生するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、高周波同軸ケーブル接続用コネクタが有する中心導体ピンと実装基板とのはんだ付け接続において、はんだ付けに起因する中心導体ピンと外部導体(GND導体)との距離が変化せずに特性インピーダンスを安定にすることができるとともに、配線パターンとの接触抵抗が安定し、機械的強度を保つことができる高周波同軸ケーブル接続用コネクタ、及びその高周波同軸ケーブル接続用コネクタと実装基板との接続構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る高周波同軸ケーブル接続用コネクタは、少なくとも実装基板とのはんだ接続部位において、中心導体ピンと、該中心導体ピンと一定の距離を空けて配置される外部導体とを有し、前記中心導体ピンが前記実装基板にはんだ接続される高周波同軸ケーブル接続用コネクタであって、前記中心導体ピンは、はんだ濡れ性の良いはんだ接続部と、はんだ濡れ性の悪い前記はんだ接続部以外の部分とを有し、前記はんだ接続部の外径が前記はんだ接続部以外の部分の外径よりも小さい、ことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、中心導体ピンは、はんだ濡れ性の良いはんだ接続部と、はんだ濡れ性の悪いはんだ接続部以外の部分とを有し、はんだ接続部の外径がはんだ接続部以外の部分の外径よりも小さいので、はんだ濡れ性の良いはんだ接続部にはんだが付着した場合に、はんだ付け後のはんだ接続部と外部導体との距離が、はんだ接続部以外の部分と外部導体との距離と同じ又は略同じになる。その結果、中心導体ピンと外部導体との距離が変化せずに特性インピーダンスを安定にすることができ、反射特性の悪化を防止できる。また、はんだ接続するので、実装基板との接触抵抗が安定し、機械的強度を保つことができる。
【0012】
本発明に係る高周波同軸ケーブル接続用コネクタにおいて、前記はんだ接続部は、前記中心導体ピンの先端に向かって先細りするテーパー形状である。
【0013】
この発明によれば、そのテーパー形状の先端部にはんだが接合されるので、はんだ濡れ性の良いはんだ接続部にはんだが付着した場合でも、テーパー形状によって外形が太くなりすぎることがない。また、テーパー形状となっているので、本体部でのはんだによる外径太りを防ぐことができるとともに、テーパー先端部のはんだ細りも防止できる。
【0014】
本発明に係る高周波同軸ケーブル接続用コネクタにおいて、前記はんだ接続部が、金、銀、ニッケル、錫、若しくはそれらの合金等の材質から選ばれるはんだ付け性の良いめっき、又はそれらの積層めっきが設けられている。
【0015】
この発明によれば、はんだ付け性のよいめっきではんだ濡れ性を高めているので、はんだ接続部に選択的にはんだ付けされる。
【0016】
本発明に係る高周波同軸ケーブル接続用コネクタにおいて、前記中心導体ピンのはんだ接続部は、使用周波数の1/4波長の長さ以下の長さであることが好ましい。
【0017】
この発明によれば、中心導体ピンのはんだ接続部の長さを、使用周波数の1/4波長の長さ以下としたので、反射特性を良好なものとすることができる。例えば110GHzの1/4の波長は約0.68mmであるので、はんだ接続部の長さを0.68mm以下とすることが反射特性の観点から好ましい。
【0018】
本発明に係る高周波同軸ケーブル接続用コネクタにおいて、前記はんだ接続部以外の部分は、はんだ濡れ性の低い材料で構成され又は被覆されている。
【0019】
この発明によれば、はんだ接続部以外の部分が、樹脂膜、樹脂パイプ、酸化膜、はんだ濡れ性の悪いめっき膜等であるので、その部分にはんだ付けされるのを防ぐことができる。特に特性インピーダンスへの影響が小さい比誘電率の低いフッ素系樹脂等を薄く設けること等が好ましい。
【0020】
本発明に係る高周波同軸ケーブル接続用コネクタは、高周波同軸ケーブルが接続されるか又は接続されている接続用コネクタであって、前記高周波同軸ケーブルが装着されているもの、高周波同軸ケーブルが装着可能な端子部を含むもの、配線基板に接続可能な端子部を含むもの、又は、高周波同軸ケーブルが装着されるか若しくは装着されているプラグに接続可能なもの、で構成されている。
【0021】
この発明によれば、上記した種々の構造形態の接続用コネクタとして応用することができる。
【0022】
(2)本発明に係る高周波同軸ケーブル接続用コネクタと実装基板との接続構造は、上記本発明に係る高周波同軸ケーブル接続用コネクタが有する中心導体ピンが、実装基板にはんだ接続される、ことを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、上記本発明に係る高周波同軸ケーブル接続用コネクタが有する中心導体ピンが実装基板にはんだ接続されるので、はんだ付けに起因する中心導体ピンと外部導体との距離が変化せずに特性インピーダンスを安定にすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高周波同軸ケーブル接続用コネクタが有する中心導体ピンと実装基板とのはんだ付け接続部位において、はんだ付けに起因する中心導体ピンと外部導体(GND導体)との距離が変化せずに特性インピーダンスを安定にすることができるとともに、配線パターンとの接触抵抗が安定し、機械的強度を保つことができる。特に信号用コンタクトとなる中心導体ピンと実装基板の配線パターンとのはんだ付け部において、特性インピーダンスの不連続点がなく、反射特性の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る高周波同軸ケーブル接続用コネクタと実装基板との接続構造の一例を示す説明図である。
図2】本発明に係る高周波同軸ケーブル接続用コネクタと実装基板との接続構造の他の例を示す説明図であり、(A)は高周波同軸ケーブルが既に接続されて一体化した接続用コネクタであり、(B)は配線基板と実装基板との間に配置される接続用コネクタであり、(C)は(B)に示し接続用コネクタに配線基板が接続した形態である。
図3】中心導体ピンの先端に向かって先細りするテーパー形状の説明図である。
図4】中心導体ピンと実装基板の配線パターンとをはんだ接続した場合に、はんだ接続部だけにはんだ付けされている本発明に係る実施形態を示す説明図であり、(A)はテーパー角度が90°の場合であり、(B)はテーパー角度が60°の場合であり、(C)はテーパー角度が120°の場合である。
図5】中心導体ピンと実装基板の配線パターンとをはんだ接続した場合に、はんだ接続部以外の部分にまではんだが付いてしまっている形態を示す説明図であり、(A)はテーパー角度が90°の場合であり、(B)はテーパー角度が60°の場合であり、(C)はテーパー角度が120°の場合である。
図6】中心導体ピンと実装基板の配線パターンとをはんだ接続した場合に、はんだ接続部だけにはんだ付けされている本発明に係る高周波同軸ケーブル接続用コネクタの特性インピーダンスのシミュレーションをするためのモデル図である。
図7】中心導体ピンと実装基板の配線パターンとをはんだ接続した場合に、はんだ接続部以外の部分にまではんだ付けされている高周波同軸ケーブル接続用コネクタの特性インピーダンスのシミュレーションをするためのモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の記載や図面のみに限定されるものではない。
【0027】
[高周波同軸ケーブル接続用コネクタ]
本発明に係る高周波同軸ケーブル接続用コネクタ10(以下「接続用コネクタ」と略すことがある。)は、図1及び図2に示すように、少なくとも実装基板とのはんだ接続部位において、中心導体ピン1と、その中心導体ピン1と一定の距離を空けて配置される外部導体11(以下「GND導体11」ともいう。)とを有し、中心導体ピン1が実装基板20にはんだ接続される接続用コネクタである。この接続用コネクタ10において、図3及び図4に示すように、中心導体ピン1は、はんだ濡れ性の良いはんだ接続部2と、はんだ濡れ性の悪いはんだ接続部以外の部分3(以下「本体部3」ともいう。)とを有し、そのはんだ接続部2の外径がはんだ接続部以外の部分3の外径よりも小さいことを特徴とする。
【0028】
本発明に係る接続用コネクタ10と実装基板20との接続構造50は、上記本発明に係る接続用コネクタ10が有する中心導体ピン1が、実装基板20にはんだ接続されることを特徴とする。
【0029】
この接続用コネクタ10及び接続構造50では、はんだ濡れ性の良いはんだ接続部2にはんだ5が付着した場合に、はんだ付け後のはんだ接続部2と外部導体11との距離Aが、はんだ接続部以外の部分3と外部導体11との距離Bと同じ又は略同じになる。その結果、中心導体ピン1と外部導体11との距離A,Bが変化せずに特性インピーダンスを安定にすることができ、反射特性の悪化を防止できる。また、中心導体ピン1が実装基板20の配線パターン21にはんだ接続するので、実装基板20との接触抵抗が安定し、機械的強度を保つことができる。なお、「少なくともはんだ接続部位において」としたのは、中心導体ピン1の長手方向Yには、はんだ接続部での外部導体11の他、はんだ接続部以外の部分にも外部導体として作用する導体を外部導体11とともに含むスリーブ12を設けてもよいことから、「少なくとも」としている。
【0030】
以下、各構成要素を詳しく説明する。
【0031】
(接続用コネクタ)
接続用コネクタ10(高周波同軸ケーブル接続用コネクタ)は、図1及び図2に示すように、実装基板20に接続され、接続用コネクタ10が有する中心導体ピン1と、実装基板20の配線パターン21とがはんだ接続されるものである。この接続用コネクタ10は、少なくとも実装基板20とのはんだ接続部位において、中心導体ピン1と、その中心導体ピン1と一定の距離を空けて配置される外部導体11とを有している。
【0032】
接続用コネクタ10の構造形態としては、種々の形態を挙げることができ、特に限定されない。例えば、高周波同軸ケーブル15が装着されているもの、高周波同軸ケーブル15が装着可能な端子部を含むもの、配線基板30に接続可能な端子部18を含むもの、又は、高周波同軸ケーブル15が装着されるか若しくは装着されているプラグ16に接続可能なもの等を挙げることができる。具体例としては、図1に示すように、高周波同軸ケーブル15(単に「同軸ケーブル」ともいう。)が装着されたプラグ16に着脱可能なレセプタクル構造の筐体構造体17を有する接続用コネクタ10であってもよい。また、図2(A)に示すように、同軸ケーブル15が既に接続されて一体化した接続用コネクタ10であってもよい。また、図2(B)に示すように、配線基板30と実装基板20との間に配置される接続用コネクタ10であってもよい。なお、図2(C)は、図2(B)に示した接続用コネクタ10に配線基板30が接続した例である。
【0033】
接続用コネクタ10は、図1及び図2に例示するように、実装基板20に実装される例えば矩形状の筐体構造体17になっている。接続用コネクタ10の筐体構造を樹脂等の絶縁性材料で構成した場合、接続用コネクタ10は、中心導体ピン1と同心円状の円筒型スリーブ12とで主に構成された同軸構造を単位として1又は2以上備えている。一方、接続用コネクタ10の筐体構造体17を金属等の導電性材料で構成した場合、接続用コネクタ10は、中心導体ピン1と、同心円状の筐体構造体内壁面とで主に構成された同軸構造を単位として1又は2以上備えている。このように、接続用コネクタ10は、中心導体ピン1と、中心導体ピン1に対して特性インピーダンスに配慮した距離で同心円状の外部導体(スリーブ12や筐体構造体内壁面)と、で構成された同軸構造を有している。なお、外部導体11をスリーブ12で構成する場合は、通常、円筒状のスリーブで構成され、その形態は、長手方向Yで同じ直径であってもよいが、図1に示すように、中心導体ピン支持体14の装着用段差や、同軸ケーブル15の接続端子雄着用段差等を必要に応じて有していてもよい。材質としては、アルミニウム、銅、真ちゅう等を挙げることができる。また、筐体構造体17を金属等の導電性材料で構成した場合は、スリーブ12を省略することができる。
【0034】
中心導体ピン1は、少なくとも実装基板側に向かって突出形成されて、中心導体ピン支持体14の嵌合穴内に挿入される棒状の金属ピンである。上記したスリーブ12や筐体構造内壁面は、その中心導体ピン1と一定の距離を空けて設けられている。一方、はんだ付けする側の逆側の中心導体ピン1の先端形状は特に限定されず、接続可能な種々の形状とすることができる。
【0035】
同軸接続構造体13において、中心導体ピン支持体14は、中心導体ピン1を保持する絶縁性部材であり、その配置位置は特に限定されず、図1の例では同軸接続構造体の長手方向Yの略中央に配置されている。なお、中心導体ピン支持体14の長手方向Yの下方には、中央に中心導体ピン1を備えた誘電体層(空気層を含む)19が設けられている。誘電体層19は、誘電率の低い絶縁性樹脂(例えば、低い比誘電率の多孔質PTFE樹脂等)であることが好ましく、空気層であってもよい。
【0036】
同軸接続構造体13への同軸ケーブル15の接続形態は特に限定されないが、例えば図1図2(A)に示す態様で接続されている。同軸ケーブル15の構造はここでは詳しく説明しないが、公知の構造形態であればよく、特に限定されない。例えば、同軸ケーブル15は、径方向の中心にある中心導体と、中心導体の径方向の外側には誘電体、外部導体、シースがその順で設けられている。こうした同軸ケーブル15の先端には、同軸ケーブル15を筐体構造体17に接続するための接続端子15’が設けられていてもよい。プラグ16は、接続端子15’を備えた同軸ケーブル15を1又は2以上備え、筐体構造体17に接続するための接続部材である。
【0037】
なお、その他の構成部材の構造形態も任意であり、例えば図2(B)に示す配線基板接続用端子部18は、配線基板30に接続可能に端子部が設計されている。
【0038】
(はんだ接続部)
中心導体ピン1の先端の構造形態は本発明の特徴部分であり、実装基板20とのはんだ接続部位において、中心導体ピン1と、中心導体ピン1と一定の距離を空けて配置される外部導体11とを有している。そして、その中心導体ピン1は、はんだ濡れ性の良いはんだ接続部2と、はんだ濡れ性の悪いはんだ接続部以外の部分3とを有し、そのはんだ接続部2の外径がはんだ接続部以外の部分3の外径よりも小さいことを特徴とする。
【0039】
はんだ接続部位では、はんだ接続部2とはんだ接続部以外の部分(本体部ともいう。)3とで区分けされる中心導体ピン1と、中心導体ピン1と一定の距離を空けて配置される外部導体11とを有している。中心導体ピン1は上述したとおりである。外部導体11は、上述したスリーブ12や導電性筐体構造内壁面と同様の作用(GND導体としての作用)を有している。外部導体11の形状は特に限定されないが、金属等の導電材料で形成された円筒状部材等であることが好ましい。筐体構造体17を金属等の導電性材料で構成した場合、実装基板20の外部導体に対応する配線パターン22に筐体構造体17を直接はんだ付けすることにより外部導体11を省略できる。
【0040】
はんだ接続部2は、図3図5に示すように、中心導体ピン1の先端に向かって先細りするテーパー形状である。このテーパー形状の先端部にはんだ5が接合されることにより、はんだ濡れ性の良いはんだ接続部2にはんだ5が付着した場合でも、テーパー形状によって外形が太くなりすぎることがない。また、テーパー形状となっているので、はんだ5が中心導体ピン1の本体部3へ濡れ上がるのを防止でき、本体部3でのはんだによる外径太りを防ぐことができるとともに、テーパー先端部のはんだ細りも防止できる。なお、このテーパー形状のテーパー角度は、60~120°の範囲内であればよく、はんだ接続強度の観点からは、はんだ接続部2が長くなる60~90°であることが好ましい。この角度範囲にすることにより、その部位にはんだ5が残留し易くなって、はんだ接続部2の外径と本体部3の外径とを同等にし易くできる。
【0041】
はんだ接続部2は、はんだ濡れ性の良い部分である。はんだ濡れ性は、金、銀、ニッケル、錫、若しくはそれらの合金等の材質から選ばれるはんだ付け性の良いめっき、又はそれらの積層めっきを設けることによって達成している。はんだ付け性のよいめっきは、はんだ濡れ性を高めるので、はんだ接続部に選択的にはんだ付けされる。めっき厚はめっきの種類にも関係するので特に限定されないが、例えば0.01~10μmの範囲内で設けることができる。
【0042】
はんだ接続部2は、長手方向Yの長さで、使用周波数の1/4波長の長さ以下であることが好ましい。中心導体ピン1のはんだ接続部2の長さを、使用周波数の1/4波長の長さ以下とすることにより、反射特性を良好なものとすることができる。例えば110GHzの1/4の波長は約0.68mmであるので、はんだ接続部の長さを0.68mm以下とすることが反射特性の観点から好ましい。
【0043】
本体部(はんだ接続部以外の部分)3は、はんだ濡れ性の低い材料で構成され又は被覆されている。はんだ濡れ性の低い材料としては、はんだ接続部2であるテーパー部以外の本体部3が、樹脂膜、樹脂パイプ、酸化膜、はんだ濡れ性の悪いめっき膜等を挙げることができる。これらの材料で構成され又は被覆されることにより、図4に示すように、本体部3にはんだ付けされるのを防ぐことができる。特に比誘電率の低いフッ素系樹脂や発泡樹脂等を採用することが、特に特性インピーダンスへの影響の観点で好ましい。具体的には、厚さ0.03mmの熱収縮性のフッ素系樹脂チューブ(例えばPFA)を中心導体ピン1の本体部3に被せて熱収縮させることにより、中心導体ピン1との隙間をなくすることができる。一方、本体部3がはんだ濡れ性の低い材料で構成され又は被覆されていない場合には、図5に示すように、はんだ5が中心導体ピン1の本体部3へ濡れ上がるのを防止できない。
【0044】
[シミュレーション結果]
最初に、モデル化してシミュレーションをしたときの特性インピーダンスと反射の関係を検討した。図6は、中心導体ピン1と実装基板20の配線パターン21とをはんだ接続した場合に、はんだ接続部2だけにはんだ付けされている本発明に係る接続用コネクタ10の特性インピーダンスのシミュレーションをするための実施例1のモデル図である。図7は、中心導体ピン1と実装基板20の配線パターン21とをはんだ接続した場合に、はんだ接続部以外の部分3にまではんだ付けされている接続用コネクタの特性インピーダンスのシミュレーションをするための比較例1のモデル図である。
【0045】
図6及び図7のモデル図において、A部、B部、C部、D部、E部、F部は空気(比誘電率1.0)とし、それぞれの部位の特性インピーダンスを表1に示す。表1に示すように、比較例1では、本体部3にまではんだが濡れ上がることにより、インピーダンス不連続箇所(E部、F部)が増えて、反射が多くなっていることがわかる。
【0046】
【表1】
【0047】
表1の値からVSWRはすぐに求まるが、周波数対VSWRの総和は複雑な計算を含むため、シミュレーションした結果を表2に示した。表2の結果より、実施例1よりも比較例1のほうがVSWRが大きくなっており、反射が多くなっていることがわかる
【0048】
【表2】
【0049】
さらに、図5(A)~(C)に示すように、特性インピーダンスは信号線路(中心導体ピン1)と接地線路(外部導体11)との間隔で定義される導体間隔に依存し、部分的に見るとそれらの比が一定値ならば変わらない。しかし、実際には長手方向で見ると、形状的に段差が生じるため、そこでインピーダンス不連続点が発生し、高周波の信号が反射してしまう。それ故、中心導体ピン1の径と、基板パターン幅とを同じにすることが好ましい。
【0050】
以上のように、本発明では、接続用コネクタ10が有する中心導体ピン1と実装基板20とのはんだ接続部位において、はんだ付けに起因する中心導体ピン1と外部導体11との距離が変化せずに特性インピーダンスを安定にすることができるとともに、配線パターン21との接触抵抗が安定し、機械的強度を保つことができる。特に信号用コンタクトとなる中心導体ピン1と実装基板20の配線パターン21とのはんだ付け部において、特性インピーダンスの不連続点がなく、反射特性の悪化を防止することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 中心導体ピン
2 はんだ接続部(先端部、テーパー部)
3 はんだ接続部以外の部分(本体部)
3’ 本体部
5 はんだ
10 高周波同軸ケーブル接続用コネクタ
11 外部導体
12 スリーブ
13 同軸接続構造体
14 中心導体ピン支持体
15 同軸ケーブル
15’ 接続端子
16 プラグ
17 筐体構造体
18 配線基板接続用端子部
19 誘電体層(空気層を含む)
20 実装基板
21 中心導体ピンに対応する配線パターン
22 外部導体に対応する配線パターン
30 配線基板
50 接続構造
A 中心導体ピンのはんだ接続部と外部導体との距離
B 中心導体ピンの本体部(はんだ接続部以外の部分)と外部導体との距離
D1 はんだ接続部の外径
D2 はんだ接続部以外の部分の外径
Y 長手方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7