(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ナビゲーションシステム、ナビゲーション表示方法、およびナビゲーション表示プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20230224BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20230224BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20230224BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
G01C21/26 C
G08G1/0969
G09B29/00 A
G09B29/10 A
(21)【出願番号】P 2018177539
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】影山 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】林 新
(72)【発明者】
【氏名】馬場 哉也
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-139240(JP,A)
【文献】特開2000-211452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-25/00
G08G 1/00-99/00
G09B 29/00
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイに画像を表示して車両の乗員に提示するナビゲーションシステムであって、
前記ディスプレイに画像を描画する描画処理部と、
前記画像を生成するためのデータを保持する一時記憶部と、
前記描画処理部および前記一時記憶部を用いて前記ディスプレイに画像を表示する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記画像に含まれる描画要素毎に、該描画要素を生成するためのデータを
複数の情報源から取得して前記一時記憶部に格納し、
前記一時記憶部に格納されている正常に利用可能なデータのうち、
前記複数の情報源それぞれの状態に係る所定の設定に従って定まる情報源によるデータを選択し、
前記選択したデータによる描画要素を組み合わせた画像を前記描画処理部に描画させる、
ナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記設定は、情報源を順位付ける優先度であり、
前記制御部は、前記優先度に従って定まる前記情報源によるデータを前記一時記憶部から取得する、
請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記設定は、前記複数の情報源それぞれの状態と該状態の組み合わせに対応する情報源の選択方法を示し、
前記制御部は、前記複数の情報源それぞれの状態を取得し、前記状態の組み合わせに対応する情報源を前記設定に従って選択し、前記選択した情報源によるデータを前記一時記憶部から取得する、
請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記描画要素を生成するのに用いてきたデータの情報源から一時的に正常なデータが得られない状態となったとき所定時間が経過するまでは、それまで描画要素を生成するのに用いてきたデータの情報源から取得済みの正常なデータを用い、前記所定時間が経過すると、前記設定に従って定まる情報源によるデータを用いる、
請求項1に記載されたナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記情報源として、目的地までの経路算出に用いる標準精度地図と、前記標準精度地図よりもより高精度な地図情報を備えた高精度地図と、があり、前記設定が、前記高精度地図を前記標準精度地図よりも優先的に選択するように設定される、
請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項6】
前記描画要素として、前記車両が進行する車線を含む進行方向を矢印で案内表示する進行方向案内要素があり、
前記標準精度地図から算出される経路は車線の情報を含まず、
前記高精度地図は車線の情報を含み、
前記情報源として、更に、前記車両の位置を示す位置情報と、前記車両に搭載され車線を含む前方の画像を撮像する車載カメラと、前記車両の車線変更を含む自動運転を制御する自動運転制御装置とがあり、
前記設定は、前記位置情報と前記標準精度地図と前記自動運転制御装置が利用可能であ
り、前記高精度地図と前記車載カメラが利用不可であるとき、前記進行方向案内要素として前記標準精度地図から算出される経路を矢印で示す画像を用いるように設定される、
請求項5に記載のナビゲーションシステム。
【請求項7】
ディスプレイに画像を表示して車両の乗員に提示するナビゲーション表示方法であって、
制御部が、
前記画像に含まれる描画要素毎に、該描画要素を生成するためのデータを
複数の情報源から取得して一時記憶部に格納し、
前記一時記憶部に格納されている正常に利用可能なデータのうち、
前記複数の情報源それぞれの状態に係る所定の設定に従って定まる情報源によるデータを選択し、
前記選択したデータによる描画要素を組み合わせた画像を前記ディスプレイに描画する、
ナビゲーション表示方法。
【請求項8】
前記設定は、情報源を順位付ける優先度であり、
前記制御部は、前記優先度に従って定まる前記情報源によるデータを前記一時記憶部から取得する、
請求項
7に記載のナビゲーション表示方法。
【請求項9】
前記設定は、前記複数の情報源それぞれの状態と該状態の組み合わせに対応する情報源の選択方法を示し、
前記制御部は、前記複数の情報源それぞれの状態を取得し、前記状態の組み合わせに対応する情報源を前記設定に従って選択し、前記選択した情報源によるデータを前記一時記憶部から取得する、
請求項
7に記載のナビゲーション表示方法。
【請求項10】
ディスプレイに画像を表示して車両の乗員に提示するナビゲーション表示プログラムであって、
前記画像に含まれる描画要素毎に、該描画要素を生成するためのデータを
複数の情報源から取得して一時記憶部に格納し、
前記一時記憶部に格納されている正常に利用可能なデータのうち、
前記複数の情報源それぞれの状態に係る所定の設定に従って定まる情報源によるデータを選択し、
前記選択したデータによる描画要素を組み合わせた画像を前記ディスプレイに描画する、
ことをコンピュータに実行させる、
ナビゲーション表示プログラム。
【請求項11】
前記設定は、情報源を順位付ける優先度であり、
前記優先度に従って定まる前記情報源によるデータを前記一時記憶部から取得する、ことをコンピュータに実行させる、
請求項
10に記載のナビゲーション表示プログラム。
【請求項12】
前記設定は、前記複数の情報源それぞれの状態と該状態の組み合わせに対応する情報源の選択方法を示し、
前記複数の情報源それぞれの状態を取得し、前記状態の組み合わせに対応する情報源を前記設定に従って選択し、前記選択した情報源によるデータを前記一時記憶部から取得する、ことをコンピュータに実行させる、
請求項
10に記載のナビゲーション表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図情報を用いてディスプレイ画面に画像や文字を表示するナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車に搭載されるナビゲーションシステムにおいて、地図情報と、各種の車載センサ等の情報とを組み合わせてディスプレイ上に表示する情報を生成する技術が開示されている。特許文献1には、「車両の自動運転システムから取得した情報に基づいて、前記自動運転システムの自動運転制御に関する画像を前記車両の車載表示器の表示面に表示する画像表示装置であって、前記自動運転システムから前記自動運転制御の安定度に関する安定度情報を取得する安定度情報取得部と、前記自動運転システムから前記自動運転制御による前記車両の次の行動に関する次期行動情報を取得する次期行動情報取得部と、前記車載表示器の表示を制御する表示制御部と、を備え、前記表示制御部は、前記車両が前記自動運転制御中である場合に、前記車両及び前記車両の走行する走行道路を俯瞰して示す走行道路俯瞰画像と、前記走行道路俯瞰画像における前記車両の進行方向に位置し、前記進行方向に交差する方向に延在する長尺状の枠内で前記安定度情報に応じて変化する安定度表示画像と、前記安定度表示画像から前記進行方向に位置し、前記次期行動情報を示す次期行動テキスト画像と、を表示させる」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術は、道路を俯瞰した画像(俯瞰画像)を生成し、その俯瞰画像上に安定度を表示する画像と次期行動を示す情報とを提示するものである。しかし、特許文献1では、俯瞰画像を生成するためのデータや安定度や次期行動を算出するためのデータあるいはそれらデータの情報源に問題が生じたときに適切な表示を継続することについて考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、ナビゲーションシステムのディスプレイに適切な表示を行うことを可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のひとつの態様に係るナビゲーションシステムは、ディスプレイに画像を表示して車両の乗員に提示するナビゲーションシステムであって、前記ディスプレイに画像を描画する描画処理部と、前記画像を生成するためのデータを保持する一時記憶部と、前記描画処理部および前記一時記憶部を用いて前記ディスプレイに画像を表示する制御部と、を有し、前記制御部は、前記画像に含まれる描画要素毎に、該描画要素を生成するためのデータを1つ以上の情報源から取得して前記一時記憶部に格納し、前記一時記憶部に格納されている正常に利用可能なデータのうち、所定の設定に従って定まる情報源によるデータを選択し、前記選択したデータによる描画要素を組み合わせた画像を前記描画処理部に描画させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ナビゲーションシステムのディスプレイに適切な表示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係るナビゲーションシステムの構成例を示す図である。
【
図2】描画要素情報Pのフォーマット例を示す図である。
【
図3】道路要素の描画要素情報Pの一例を示す図である。
【
図4】建物要素の描画要素情報Pの一例を示す図である。
【
図5】交通規制要素の描画要素情報Pの一例を示す図である。
【
図6】進行方向案内要素の描画要素情報Pの一例を示す図である。
【
図9】第1の実施形態に係る処理例を示すフローチャートである。
【
図10】高精度地図配信装置を利用できない場合におけるナビゲーション画像の一例を示す図である。
【
図11】第2の実施形態に係る情報源状態管理表の一例を示す図である。
【
図12】第2の実施形態に係る、高精度地図配信装置及び車載カメラを利用できない場合のナビゲーション画像の一例を示す図である。
【
図13】第2の実施形態に係る処理例を示すフローチャートである。
【
図14】第2の実施形態に係る、高精度地図配信装置、車載カメラ及び標準精度地図情報を利用できない場合のナビゲーション画像の一例を示す図である。
【
図15】第2の実施形態に係る、一時的な遅延により、高精度地図配信装置の情報を利用できない場合のナビゲーション画像の一例を示す図である。
【
図16】第3の実施形態に係るナビゲーションシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて実施の形態を説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るナビゲーションシステム30の構成例を示す。
【0011】
車両Cは、当該車両Cに関する様々な機能を実現する車載システム40を備える。車載システム40は、ナビゲーションシステム30を有する。ナビゲーションシステム30は、車両Cに固定的又は着脱可能に設置され、車両Cの乗員に対して、経路案内等を提示する。以下、車両Cを「自車」と表現する場合がある。
【0012】
<ナビゲーションシステム>
ナビゲーションシステム30は、制御部1と、描画処理部2と、一時記憶部3と、通信部4と、標準精度地図情報5と、表示部6と、操作部7と、車両位置算出部8と、音声出力部9と、記憶部10と、を有する。
【0013】
制御部1は、コンピュータプログラムを実行し、ナビゲーションシステム30が有する各部の機能を実現する。制御部1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサである。
【0014】
描画処理部2は、画像を高速に描画する。描画処理部2は、例えば、GPU(Graphical Processing Unit)などの描画専用プロセッサである。
【0015】
一時記憶部3は、データを高速に読み書きが可能な記録領域を提供する。一時記憶部3は、例えば、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリである。
【0016】
通信部4は、ネットワークに接続し、外部の機器との通信を制御する。
【0017】
標準精度地図情報5は、標準精度の地図情報であり、出発地から目的地までの経路を探索する場合、及び、ナビゲーション画像を生成する場合などに用いられる。
【0018】
表示部6は、制御部1及び描画処理部2によって生成されたナビゲーション画像を表示する。表示部6は、例えば、液晶ディスプレイである。当該ナビゲーション画像は、車両Cの乗員に対して様々な情報を提供する。
【0019】
操作部7は、ナビゲーションシステム30の操作機構を提供する。操作部7は、例えば、ボタン又はタッチパネルである。操作部7は、車両Cの乗員からの操作(入力)を検出し、制御部1へ通知する。
【0020】
車両位置算出部8は、車両Cの現在位置、及び/又は、車両Cの進行方向、走行速度及び加速度などを算出する。例えば、車両位置算出部8は、全球測位衛星システム(GPS)を利用して、これらを算出する。或いは、車両位置算出部8は、通信部4を介して外部の機器から位置情報を取得し、これらを算出する。
【0021】
音声出力部9は、車両Cの乗員に対して、案内音声、警告音声、アラーム及び音楽等の様々な音を出力する。音声出力部9は、例えば、スピーカである。
【0022】
記憶部10は、制御部1によって実行されるコンピュータプログラム及びデータを記憶する。記憶部10は、例えば、フラッシュメモリ又はHDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性メモリである。
【0023】
<車載システム>
車載システム40は、ナビゲーションシステム30と、車載器ネットワーク11と、車外通信ネットワーク12と、他車間通信ネットワーク13と、高精度地図配信装置14と、自動運転制御装置15と、車載カメラ16と、メータ17と、リアモニタ18と、ヘッドアップディスプレイ19と、を有する。
【0024】
車載機器ネットワーク11は、車載システム40が備える各機器を接続するためのネットワークである。車載機器ネットワーク11は、有線通信及び無線通信の何れであってもよい。通信媒体又は通信プロトコルは、単一であってもよいし、複数であってもよい。車載機器ネットワーク11は、複数のネットワークがゲートウェイ機器によって相互に接続された大きなネットワークであってもよい。ナビゲーションシステム30の通信部4は、当該車載機器ネットワーク11に接続しており、車載システム40が備える各機器と通信できる。
【0025】
車外通信ネットワーク12は、車載システム40の外部の機器又はサーバ等と通信を行うための無線通信ネットワークである。車外通信ネットワーク12は、例えば、モバイル通信キャリアネットワークである。例えば、車載システム40は、道路上に設置された、無線通信装置(無線基地局)にアクセスし、モバイル通信キャリアネットワークを介して、サーバと通信を行う。
【0026】
他車間通信ネットワーク13は、他の車両と通信を行うための無線通信ネットワークである。例えば、車載システム40は、他車間通信ネットワーク13を介して、所定の通信プロトコルを用いて、他の車両が保持する情報を受信したり、自車両Cの車載システム40が保持する情報を他の車両に送信したりする。
【0027】
高精度地図配信装置14は、高精度地図情報を配信する装置である。高精度地図情報は、例えば高精度な道路形状の情報などを含み、自動運転など、高精度な地図情報を要求する運転操作などに用いられる。高精度地図配信装置14は、車載機器ネットワーク11を介して、車載システム40の機器へ高精度地図情報を提供する。
【0028】
自動運転制御装置15は、車両Cに搭載された各種車載カメラ16及びセンサ等から取得した情報、ナビゲーションシステム30から取得した情報、及び/又は、高精度地図配信装置14から取得した情報などを用いて、自動運転に必要な車両制御を計画し、制御信号を生成する。
【0029】
車載カメラ16は、車両Cに搭載され、当該車両Cの周囲の状況を撮影し、撮影画像を生成する。車載カメラ16は、可視光線及び/又は赤外線の撮像機能を有してよい。車載カメラ16は、撮影画像から、車両Cの周辺の状況を認識する機能を有してもよい。例えば、車載カメラ16は、道路上の車線の位置、形状及び種別、及び/又は、周辺を走行する他の車両の位置及び形状などを認識する。
【0030】
メータ17は、車両Cに搭載され、車両Cの走行速度等の情報を表示する。メータ17は、画像表示によって実現されてもよいし、機械式によって実現されてもよい。リアモニタ18は、車両Cの後部座席の乗員に対して情報を提供する。リアモニタ18は、例えば液晶ディスプレイで構成される。ヘッドアップディスプレイ19は、運転手又は乗員の前方窓に情報を提示する。ヘッドアップディスプレイ19は、例えば液晶ディスプレイで構成される。
【0031】
道路情報配信システム20は、車外通信ネットワーク12を介して、道路情報をナビゲーションシステム30に配信する。道路情報は、例えば、道路の混雑状況、道路の規制情報などを含む。
【0032】
近傍車両車外通信装置21は、車両Cに備えられ、他車間通信ネットワーク13を介して、その車両Cが保持している情報を周辺の他の車両に提供する。また、車両Cのナビゲーションシステム30の通信部4は、周辺の他の車両が備える近傍車両車外通信装置21から送信される当該他の車両が保持している情報を、他車間通信ネットワーク13を介して受信する。
【0033】
ナビゲーションシステム30は、車両Cの乗員に対して、ナビゲーション画像を提供する。ナビゲーション画像は、例えば次のように生成される。制御部1が、必要な情報を収集して一時記憶部3に格納する。そして、制御部1が、描画処理部2に対して、ナビゲーション画像の描画を指示する。描画処理部2が、一時記憶部3に格納された各種の描画要素情報に基づいてナビゲーション画像を描画し、出力する。描画要素情報に含まれる各情報は、1又は複数の情報源から構成される。
【0034】
例えば、描画処理部2は、道路の描画要素情報に含まれる、道路形状を示す座標情報、及び/又は、道路の車線種別を示す情報などを用いて、ナビゲーション画像の一部を構成する道路を描画する。
【0035】
例えば、描画処理部2は、建物の描画要素情報に含まれる、地図上の建物の位置及び形状を示す座標情報、建物の高さ及び外形を示す情報、及び/又は、建物の外観を示すテクスチャ情報などを用いて、ナビゲーション画像の一部を構成する建物を描画する。なお、建物の種類(例えば商業施設又は公共施設など)毎に異なる描画を行うために、建物の描画要素情報には、建物の属性を示す情報が含まれてもよい。
【0036】
例えば、描画処理部2は、交通規制の描画要素情報に含まれる、各道路リンクの制限速度を示す情報、及び/又は、一方通行などの通行規制を示す情報などを用いて、ナビゲーション画像の一部を構成する交通規制の情報を描画する。
【0037】
例えば、描画処理部2は、進路制御の描画要素情報に含まれる、自動運転車両がどの地点で進路変更の制御を行うかを示す情報などを用いて、ナビゲーション画像の一部を構成する、自動運転車両がどの地点で進路変更を行うかを示す情報を描画する。
【0038】
表示部6は、描画処理部2から出力されたナビゲーション画像を表示する。これにより、乗員は、ディスプレイに表示されたナビゲーション画像を確認できる。また、他の表示装置は、通信部4及び車載機器ネットワーク11を介して送信されたナビゲーション画像を表示する。他の表示装置は、例えば、メータ17、リアモニタ18、及びヘッドアップディスプレイ19である。この場合、他の表示装置は、それぞれ、当該表示装置のサイズ及び形状に応じて、ナビゲーション画像に対して、拡大縮小、部分的な切り出し及び/又は画像フィルタなどの加工を施して表示してよい。
【0039】
図2は、描画要素情報Pのフォーマットの例を示す。各種の描画要素情報Pは、このフォーマットに従って、一時記憶部3に格納される。
【0040】
描画要素情報Pは、描画要素属性100と、描画要素内容110とを有する。
【0041】
描画要素属性100は、描画要素情報Pの種別ごとに定義される属性情報である。描画要素属性100は、描画要素種別101と、情報源リスト102と、処理優先度103と、例外処理種別104とを有する。
【0042】
描画要素種別101は、描画要素属性100が対応する描画要素情報Pの種別を示す情報である。描画要素種別101は、例えば、道路要素、建物要素、交通規制要素、及び、進行方向案内要素などである。
【0043】
情報源リスト102は、描画要素情報Pを構成するために必要な情報源のリストを示す情報である。例えば、道路形状を示す描画要素情報Pは、情報源リスト102として、標準精度地図情報5と、高精度地図配信装置14と、車載カメラ16とを含む。
【0044】
処理優先度103は、情報源リスト102に同種の情報を取得できる複数の情報源が存在する場合において、描画処理部2による各情報源の利用の優先度を示す情報である。例えば、或る情報源から取得した情報が、描画対象の描画要素に対して、一時的又は恒常的に利用できない場合、描画処理部2は、当該情報源を利用対象から外し、同種の情報を得られる他の利用可能な情報源の中で最も優先度の高い情報源を利用対象とする。
【0045】
本実施の形態に係る図面上では、
図3に示すように、(1)、(2)、(3)の数字を用いて優先度の高さを示す。なお、本実施の形態では、数字が小さいほうを高い優先度とする。
【0046】
例外処理種別104は、描画対象の描画要素について、情報源リスト102の全ての情報源が一時的又は恒常的に利用できない場合における処理方法を示す情報である。
【0047】
描画要素内容110は、描画の基本単位のフォーマットである。描画要素内容110は、描画要素種別111と、識別子112と、情報源別データリスト113とを有する。
【0048】
描画要素種別111は、描画要素の種別を示す情報である。識別子112は、描画要素を一意に識別できる情報である。情報源データリスト113は、情報源リスト102に示された各情報源に対応する情報源別データ114を有する。
【0049】
情報源別データ114は、描画に必要なデータであり、情報源種別115と、描画用データ116とを含む。情報源種別115は、描画用データ116の情報源を示す。描画用データ116は、情報源種別115の情報源から収集された、識別子112に対応する範囲における描画用のデータである。つまり、情報源別データ114は、情報源種別115で指定された情報源から収集された、識別子112に対応する範囲における描画用の単位情報である。例えば、描画要素種別101が道路要素の場合、描画処理部2は、描画要素内容110に従って道路の線分に対応する複数の描画要素を連結し、一本の道路を描画する。
【0050】
【0051】
道路要素の描画要素情報Pに係る描画要素属性200は、例えば次の情報を有する。
【0052】
描画要素種別201として、描画要素属性200の種別が「道路要素」であることを示す情報を有する。情報源リスト202として、標準精度地図情報5、高精度地図配信装置14、及び、車載カメラ16が情報源であることを示す情報を有する。処理優先度203として、1番目が車載カメラ16、2番目が高精度地図配信装置14、3番目が標準精度地図情報5であることを示す情報を有する。例外処理種別204として、「エラー通知生成」を示す情報を有する。
【0053】
道路要素の描画要素情報Pに係る描画要素内容210は、例えば次の情報を有する。
【0054】
描画要素種別201として、描画要素内容210の種別が「道路要素」であることを示す情報を有する。識別子212として、道路を一意に識別できる道路IDを有する。この道路IDは、標準精度地図情報5又は高精度地図配信装置14における管理方式に従うものであってよい。
【0055】
情報源別データ213において、情報源種別115として、車載カメラ16を示す情報を有し、描画用データ116として、車載カメラ16で認識された、道路IDに対応する範囲の道路の形状及び車線の種別を示す情報を有する。
【0056】
情報源別データ214において、情報源種別115として、高精度地図配信装置14を示す情報を有し、描画用データ116として、高精度地図配信装置14から受信した、道路IDに対応する範囲の車線毎の高精度な道路の形状及び車線の種別を示す情報を有する。
【0057】
情報源別データ215において、情報源種別115として、標準精度地図情報5を示す情報を有し、描画用データ116として、標準精度地図情報5から受信した、道路IDに対応する範囲の道路の大まかな形状を示す情報を有する。
【0058】
【0059】
建物要素の描画要素情報Pに係る描画要素属性300は、例えば次の情報を有する。
【0060】
描画要素種別301として、描画要素属性300の種別が「建物要素」であることを示す情報を有する。情報源リスト302として、標準精度地図情報5、及び、高精度地図配信装置14が情報源であることを示す情報を有する。処理優先度303として、1番目が高精度地図配信装置14、2番目が標準精度地図情報5であることを示す情報を有する。例外処理種別304として、「表示スキップ」を示す情報を有する。
【0061】
建物要素の描画要素情報Pに係る描画要素内容310は、例えば次の情報を有する。
【0062】
描画要素種別301として、描画要素内容210の種別が「建物要素」であることを示す情報を有する。識別子312として、建物を一意に識別できる建物IDを有する。この建物IDは、標準精度地図情報5又は高精度地図配信装置14における管理方式に従うものであってよい。
【0063】
情報源別データ313において、情報源種別115として、高精度地図配信装置14を示す情報を有し、描画用データ116として、高精度地図配信装置14から受信した、建物IDに対応する建物の形状及び建物の種別の情報を有する。
【0064】
情報源別データ314において、情報源種別115として、標準精度地図情報5を示す情報を有し、描画用データ116として、標準精度地図情報5から受信した、建物IDに対応する建物の形状及び建物の種別の情報を有する。
【0065】
【0066】
交通規制要素の描画要素情報Pに係る描画要素属性400は、例えば次の情報を有する。
【0067】
描画要素種別401として、描画要素属性400の種別が「交通規制要素」であることを示す情報を有する。情報源リスト402として、標準精度地図情報5、高精度地図配信装置14、及び、車載カメラ16が情報源であることを示す情報を有する。処理優先度403として、1番目が車載カメラ16、2番目が高精度地図配信装置14、3番目が標準度地図情報5であることを示す情報を有する。例外処理種別404として、「エラー通知生成」を示す情報を有する。
【0068】
交通規制要素の描画要素情報Pに係る描画要素内容410は、例えば次の情報を有する。
【0069】
描画要素種別401として、描画要素内容410の種別が「交通規制要素」であることを示す情報を有する。
【0070】
識別子412として、交通規制情報を一意に識別できる規制区間IDを有する。この規制区間IDは、標準精度地図情報5又は高精度地図配信装置14における管理方式に従うものであってよい。
【0071】
情報源別データ413において、情報源種別115として、車載カメラ16を示す情報を有し、描画用データ116として、車載カメラ16によって標識から認識された、規制区間IDに対応する範囲の交通規制情報を有する。
【0072】
情報源別データ414において、情報源種別115として、高精度地図配信装置14を示す情報を有し、描画用データ116として、高精度地図配信装置14から受信した、規制区間IDに対応する範囲の交通規制情報を有する。
【0073】
情報源別データ415において、情報源種別115として、標準精度地図情報5を示す情報を有し、描画用データ116として、標準精度地図情報5から受信した、規制区間IDに対応する範囲の交通規制情報を有する。
【0074】
図6は、進行方向案内要素の描画要素情報の一例を示す。
【0075】
進行方向案内要素の描画要素情報Pに係る描画要素属性500は、例えば次の情報を有する。
【0076】
描画要素種別501として、描画要素属性500の種別が「進行方向案内要素」であることを示す情報を有する。情報源リスト502として、自動運転制御装置15及び標準精度地図情報5が情報源であることを示す情報を有する。処理優先度503として、1番目が自動運転制御装置15、2番目が標準精度地図情報5であることを示す情報を有する。例外処理種別504として、「表示スキップ」を示す情報を有する。
【0077】
進行方向案内要素の描画要素情報Pに係る描画要素内容510は、例えば次の情報を有する。
【0078】
描画要素種別501として、描画要素内容510の種別が「進行方向案内要素」であることを示す情報を有する。識別子512として、進行方向案内を一意に識別できる進行方向案内IDを有する。この進行方向案内IDは、自動運転制御装置15における管理方式に従うものであってよい。
【0079】
情報源別データ513において、情報源種別115として、自動運転制御装置15を示す情報を有し、描画用データ116として、進行方向案内IDに対応した進行方向案内を示す情報を有する。進行方向案内を示す情報は、例えば、自動運転中の右左折を示す情報、又は、車線変更のポイントを示す座標情報、若しくは相対位置情報などである。
【0080】
情報源別データ514において、情報源種別115として、標準精度地図情報5を示す情報を有し、描画用データ116として、進行方向案内IDに対応する経路情報に従って進行方向を案内する情報を有する。経路情報は、標準精度地図情報5を用いて事前に算出されてよい。
【0081】
次に、描画要素情報Pを利用して、ナビゲーション画像を生成する方法について説明する。
【0082】
図7は、ナビゲーション画像700の一例である。次に、
図7に示すナビゲーション画像700を構成する描画要素について説明する。
【0083】
自車画像701は、画像上の自車(車両C)の位置を示す画像である。中央線画像702は、自車が走行中の道路の中央線を示す画像である。左側線画像703は、自車が走行中の道路の左側線を示す画像である。右側線画像704は、自車が走行中の道路の右側線を示す画像である。
【0084】
左レーン分離線画像705は、自車が走行中の道路の左レーン分離線を示す画像である。右レーン分離線画像706は、自車が走行中の道路の右レーン分離線を示す画像である。
【0085】
左近傍車両画像707は、自車の左側を走行している車両を示す画像である。対向近傍車両画像708は、対向車線を走行している車両を示す画像である。建物画像710、建物画像711、及び建物画像712は、それぞれ、自車の近傍の建物の画像である。交通規制情報720は、自車が走行中の道路の規制に関する情報を示す画像である。
【0086】
図8は、
図7に示すナビゲーション画像700を生成するために参照される地図情報の例を示す。
【0087】
地図情報800は、自車(車両C)の近傍の地図情報である。地図情報800は、標準精度地図情報5と、高精度地図配信装置14から取得した高精度地図情報とに基づいて構成される。
【0088】
自車位置801は、車両位置算出部8が算出した自車(車両C)の位置を示す座標である。描画範囲802は、自車位置801の前方の視界の一定範囲を示す情報である。この描画範囲802に含まれる描画要素が、ナビゲーション画像の描画対象となる。
【0089】
道路リンク803は、描画範囲802に含まれる、自車(車両C)が走行中の道路の線分である。この線分の単位は、標準精度地図情報5のフォーマットに従って定義される。道路リンク804は、描画範囲802に含まれる、道路の線分である。この線分の単位は、標準精度地図情報5のフォーマットに従って定義される。
【0090】
建物805、建物806、及び建物807は、描画範囲802に含まれる建物の情報である。建物808は、描画範囲802に含まれない建物の情報である。
【0091】
目的地809は、標準精度地図情報5に基づいて予め生成された経路情報における目的地を示す情報である。
【0092】
図9は、第1の実施形態に係る、ナビゲーション画像700を生成する処理の例を示すフローチャートである。制御部1は、記憶部10に記録されたプログラムに従い、
図9に示す処理フローを実行する。
【0093】
ステップ901:制御部1は、車両位置算出部8が算出した車両Cの現在位置と車両Cの向きとを取得する。
【0094】
ステップ902:制御部1は、車両Cの現在位置と車両Cの向きに基づき、描画範囲802を決定する。
【0095】
ステップ903:制御部1は、既に生成済みの描画要素を参照し、描画範囲802を描画するために不足している描画要素の有無を判定する。フローは、不足している描画要素が有る場合、ステップ904へ移行し、不足している描画要素が無い場合、ステップ905へ移行する。
【0096】
ステップ904:描画範囲802を描画するために必要であるが未生成である描画要素が有る場合、制御部1は、各種別の情報源リスト102を参照して、情報源リスト102に記載されている各情報源から情報を収集し、描画用データ116として、一時記憶部3に格納する。例えば、制御部1は、
図8に示す地図情報800における道路リンク803のIDと道路リンク804のIDとを、それぞれ、識別子212に設定し、2つの描画要素210を生成する。また、制御部1は、描画範囲802に含まれる建物805、建物806、及び建物807について、それぞれ、描画要素310を生成する。また、制御部1は、車両Cが走行中の道路リンク803に対応する規制情報に基づいて、描画要素410を生成する。また、制御部1は、自動運転制御装置15から取得した最新の情報に基づいて、描画要素510を生成する。
【0097】
ステップ905:制御部1は、描画範囲802の外側の描画要素が、既に生成済みの描画要素として存在する場合、その描画範囲802の外側の描画要素を、一時記憶部3から削除する。つまり、制御部1は、不要な描画要素を一時記憶部3から削除する。
【0098】
ステップ906:制御部1は、描画処理部2に対して、次のことを指示する。つまり、描画処理部2は、描画対象の描画要素のそれぞれについて、その描画要素が属する描画要素属性100の処理優先度103を参照し、優先度の高い情報源に対応する描画用データ116を利用して描画する。
【0099】
制御部1は、
図9に示す処理フローを所定の周期で繰り返すことにより、ナビゲーション画像700を生成する。例えば、制御部1は、人間の視覚に対して十分に高速に
図9に示す処理フローを繰り返すことにより、ナビゲーション画像700をアニメーションのように表現できる。
【0100】
図10は、高精度地図配信装置14を利用できない場合におけるナビゲーション画像1000の例を示す。
【0101】
高精度地図配信装置14を利用できない場合、制御部1は、高精度地図情報に含まれる車線別の道路形状情報を利用できない。この場合、
図10に示すナビゲーション画像1000には、
図7に示すナビゲーション画像700と比較して、車線未表示区間1101に示すような遠方の車線が表示されない。なお、この場合、ナビゲーション画像1000のその他の部分については、
図7に示すナビゲーション画像700と同等に描画されてよい。
【0102】
図10に示すナビゲーション画像1000は、
図9に示す処理フローの一部を次のように変形することにより、生成される。すなわち、ステップ906において、制御部1は、高精度地図配信装置14を利用できなかった場合、車両Cの近傍の描画要素210では、車載カメラ16に対応する描画用データ116を参照して車線を含む描画を継続する。一方、制御部1は、車両Cから比較的遠方である、車載カメラ16の認識範囲外の描画要素210については、高精度地図配信装置14と車載カメラ16の両方を参照できないため、標準精度地図情報5を参照して描画する。標準精度地図情報5は車線レベルの情報を含まないため、制御部1は、車線未表示区間1101において車線を描画しない。
【0103】
このように、制御部1は、処理優先度103に基づいて各情報源から描画用データ116を取得し、その取得した描画用データ116の利用方法を、描画要素110ごとに判定する。これにより、ナビゲーションシステム30は、一部の情報源が利用できない場合でも、大きな破綻無く、ナビゲーション画像を提供し続けることができる。
【0104】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、制御部1が、情報源状態管理表に基づいて情報源状態を管理する例について説明する。なお、他の構成については、第1の実施形態と同様であってよい。
【0105】
図11は、情報源状態管理表600の例を示す。情報源状態管理表600は、情報源状態を管理するための表である。情報源状態管理表600は、データ項目として、条件番号601と、位置情報状態602と、標準精度地図情報状態603と、高精度地図配信装置状態604と、車載カメラ状態605と、自動運転装置状態606と、描画方針607とを有する。
【0106】
条件番号601は、各条件を区別するための番号である。位置情報状態602は、制御部1が、車両位置算出部8から自車位置情報を取得できるか否かを示す情報である。
【0107】
標準精度地図情報状態603は、制御部1が、標準精度地図情報5から描画に必要な情報を取得可能か否かを示す情報である。高精度地図配信装置状態604は、制御部1が、高精度地図配信装置14から描画に必要な情報を取得可能か否かを示す情報である。
【0108】
車載カメラ状態605は、制御部1が、車載カメラ16から描画に必要な情報を取得可能か否かを示す情報である。自動運転装置状態606は、制御部1が、自動運転制御装置15から描画に必要な情報を取得可能か否かを示す情報である。
【0109】
描画方針607は、各状態の条件の組み合わせが現状に合致した場合におけるナビゲーション画像の描画方針を示す情報である。例えば、描画方針「A」は、第1の実施形態と同様に、描画要素ごとに優先度を判断する描画方針を示す。描画方針「B」は、自動運転制御装置15から情報を取得できる状態であっても、自動運転制御装置15から取得した情報ではなく、標準精度地図情報5から算出した経路情報を用いて、進行方向案内を描画する描画方針を示す。描画方針「C」は、車載カメラ16からの情報のみを用いて描画する描画方針を示す。描画方針「D」は、描画の継続が困難であるために、通常の描画を行わず、エラーの通知画面を描画する描画方針を示す。描画方針Eは、一時的な通信障害による情報不足と判断し、一定時間、対象の描画要素の描画を行わずに待機し、不足している情報の取得を待機する描画方針を示す。
【0110】
図12は、第2の実施形態に係るナビゲーションシステム30において、情報源として高精度地図配信装置14および車載カメラ16を同時に利用できない場合のナビゲーション画像1200の例を示す。
【0111】
図13は、第2の実施形態に係るナビゲーション画像(例えば
図12)を生成する処理例を示すフローチャートである。第2の実施形態に係る制御部1は、
図9に示す処理フローではなく、
図13に示す処理フローを実行する。
【0112】
第2の実施形態に係る制御部1は、
図9に示すステップ901からステップ905の処理を実行する。そして、制御部1は、
図9に示すステップ906の処理に代えて、次のステップ1301の処理を実行する。
【0113】
ステップ1301において、制御部1は、情報源状態管理表600を参照して、条件に合致するパターンを探す。例えば、高精度地図配信装置14および車載カメラ16を同時に利用できない場合は、
図11に示す情報源状態管理表600において、条件番号601「7」に合致する。よって、この場合、制御部1は、描画方針607「B」を選択する。描画方針「B」は、自動運転制御装置15から取得した情報では進行方向案内の描画を行わないという描画方針である。
【0114】
制御部1は、他の描画要素についてステップ906と同様の処理を行う。また、道路の描画に関して詳細な形状を取得できないため、制御部1は、標準精度地図情報5から取得できる精度で、道路を描画する。
【0115】
高精度な描画に必要な地図情報が不足していると、
図10のように自動運転制御装置15から取得したレーン移動などの詳細な進行方向を描画しても、情報の精度が地図の描画と揃わないため、有用な情報を提供できない。これに対して、上述の処理によれば、
図12に例示するように、高精度な描画に必要な地図情報が不足している場合は、描画1201に示すように、進行方向案内が描画されない。よって、本実施の形態によれば、有用な情報を提供できない不統一な表示を回避し、統一感のある表示を提供できる。
【0116】
図14は、本実施の形態を適用した場合において、情報源として高精度地図配信装置14、車載カメラ16および標準精度地図情報5を同時に利用できない場合のナビゲーション画像1300の例を示す。
【0117】
高精度地図配信装置14、車載カメラ16および標準精度地図情報5を同時に利用できない場合、制御部1は、ステップ1301の処理において、条件番号601「13」に対応する描画方針607「D」を選択する。描画方針「D」は、各要素の描画処理を行わず、エラー表示1301を描画する描画方針である。これにより、有用な情報の提供が困難な場合において、不要な描画を行わずに、エラー状態を乗員に通知できる。
【0118】
図15は、本実施の形態を適用した場合において、一時的な遅延により、情報源として高精度地図配信装置14の情報を利用できない場合のナビゲーション画像1400の例を示す。
【0119】
例えば、描画要素内容310以外の描画要素内容210、410、510に関しては高精度地図配信装置14の情報を参照できたが、描画要素内容310に関しては高精度地図配信装置14の情報を一時的に取得できなかった場合、制御部1は、ステップ1301の処理において、条件番号601「17」に対応する描画方針607「E」を選択する。
【0120】
図15のナビゲーション画像1400に示すように、制御部1は、描画方針「E」に従い、ナビゲーション画像1000と比較して、経路表示1401と経路表示1402に対して、一定時間、建物を描画しない。制御部1は、一定時間の経過後、高精度地図配信装置14の情報が利用可能になった場合、
図13に示す処理フローを行う。これにより、制御部1は、ステップ1301の処理において条件番号601「1」を選択し、
図7に示すナビゲーション画像1000を表示できる。
【0121】
仮に、制御部1が、描画方針Eの方針に従わず、処理優先度303に従い、経路表示1401と経路表示1402に対して、標準精度地図情報5を用いて標準精度の建物を描画した場合、一度標準精度の建物を描画した後に、高精度地図配信装置14の情報が利用可能になり、高精度の建物を上書き描画することになる。建物の形状の描画精度が短時間に切り替わると、ナビゲーション画像を見る者にとって、建物の形状が変わってしまったように見える可能性がある。
【0122】
これに対して、本実施の形態に示すように、高精度地図配信装置14からの情報の取得が少し遅れるような状況が想定される場合は、描画方針「E」を適用することにより、描画対象の形状が短時間に切り替わりナビゲーション画像を見る者が混乱を招く状況を回避できる。
【0123】
このように、情報源状態管理表600を利用して描画処理を行うことにより、処理優先度103のみを用いて描画を行う場合と比較して、特定の条件において、不自然な描画がなされることを回避し、自然な描画を実現できる。また、描画の継続が困難か否かについても、高い精度で判断し、ナビゲーション画像を生成できる。
【0124】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、ナビゲーションシステム30が高精度地図配信装置14に相当する機能を内蔵する場合と、通信制御装置23を用いて車外との通信機能を実現する場合とにおいても、第1の実施形態又は第2の実施形態を実現できることを説明する。
【0125】
図16は、第3の実施形態に係るナビゲーションシステム30の構成例を示す。
図16において、ナビゲーションシステム30は、高精度地図配信装置14に相当する機能を内蔵し、通信制御装置23を用いて車外との通信機能を実現する。以下、
図1に示す構成との相違点についてのみ説明する。
【0126】
高精度地図情報22は、
図1において高精度地図配信装置14が提供するものと同等の高精度な地図情報である。描画要素属性100及び描画要素内容110における参照先の指定を、高精度地図配信装置14から高精度地図情報22に変更することにより、第1の実施形態と同等の処理を実現である。
【0127】
また、制御部1は、高精度地図情報22を参照し、高精度地図配信装置14と同等の機能を、車載機ネットワーク11に接続されている機器に対して提供する。これにより、
図1と
図16との間の構成の相違を吸収できる。
【0128】
通信制御装置23は、車載機ネットワーク11に接続され、車外通信ネットワーク12、及び、他車間通信ネットワーク13との通信を仲介する。通信部4は、車載機ネットワーク11を介して通信制御装置23と通信し、第1の実施形態又は第2の実施形態における通信情報と同等の通信情報を取得できる。
【0129】
図16に例示する構成によれば、手順を変更することなく、第1の実施形態又は第2の実施形態で説明した処理を実現でき、第1の実施形態又は第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ナビゲーションシステム30が高精度地図配信装置14を内蔵することにより、同様の効果を得つつ、ハードウェアのコストを低減することができる。また、通信制御装置23を用いることにより、同様の効果を得つつ、車載機ネットワーク11に接続された機器で通信機能を共有することができる。
【0130】
<まとめ>
上記の各実施形態の一部又は全部は以下のようにまとめることもできる。ただし、本発明がこれらに限定されるものではない。
ディスプレイに画像を表示して車両の乗員に提示するナビゲーションシステム30は、ディスプレイに画像を描画する描画処理部2と、画像を生成するためのデータを保持する一時記憶部3と、描画処理部2および一時記憶部3を用いてディスプレイに画像を表示する制御部1と、を有する。制御部1は、画像に含まれる描画要素毎に、該描画要素を生成するためのデータを1つ以上の情報源から取得して一時記憶部3に格納し、一時記憶部3に格納されている正常に利用可能なデータのうち、所定の設定に従って定まる情報源によるデータを選択し、選択したデータによる描画要素を組み合わせた画像を描画処理部3に描画させる。
【0131】
これにより、ナビゲーションシステム30は、所定の設定に従って選択した情報源からのデータによる描画要素を組み合わせた画像をディスプレイに表示するので、状況に応じて適切な画像を表示することができる。
【0132】
上記設定は、情報源を順位付ける処理優先度103であってよい。そして、制御部1は、処理優先度103に従って定まる情報源によるデータを一時記憶部3から取得してよい。
【0133】
これにより、制御部1は、描画要素を生成するためのデータを処理優先度103に従って選択するので、利用可能でかつ優先度の高いデータを用いた画像を表示することができる。
【0134】
上記設定は、複数の情報源それぞれの状態と該状態の組み合わせに対応する情報源の選択方法を示す情報源状態管理表600であってよい。そして、制御部1は、複数の情報源それぞれの状態を取得し、状態の組み合わせに対応する情報源を情報源状態管理表600に従って選択し、当該選択した情報源によるデータを一時記憶部から取得してよい。
【0135】
これにより、制御部1は、描画要素を生成するためのデータを情報源の状態に従って選択するので、利用可能でかつ好適なデータを用いた画像を表示することができる。
【0136】
制御部1は、描画要素を生成するのに用いてきたデータの情報源から一時的に正常なデータが得られない状態となったとき、所定時間が経過するまでは、それまで描画要素を生成するのに用いてきたデータの情報源から取得済みの正常なデータを用い、当該所定時間が経過すると、上記設定に従って定まる情報源によるデータを用いてよい。
【0137】
これにより、制御部1は、利用中の情報源からのデータが短時間だけ得られなくなったときに、利用中の情報源から取得済みの正常なデータで生成した描画要素による画像の表示を継続するので、ディスプレイの画像の態様が短時間に頻繁に切り替わるのを防止することができる。
【0138】
情報源としては、目的地までの経路算出に用いる標準精度地図と、標準精度地図よりもより高精度な地図情報を備えた高精度地図と、がある。そして、上記設定は、高精度地図を標準精度地図よりも優先的に選択するように設定されてよい。
【0139】
これにより、制御部1は、経路算出に用いる標準精度地図よりも高精度な高精度地図が利用可能なときには高精度地図を優先的に選択するので、高精度地図が利用可能なときには精度の高い画像を表示することができる。
【0140】
描画要素としては、車両Cが進行する車線を含む進行方向を矢印で案内表示する進行方向案内要素がある。また、標準精度地図から算出される経路は車線の情報を含まず、高精度地図は車線の情報を含んでよい。そして、情報源として、車両Cの位置を示す位置情報と、車両Cに搭載され車線を含む前方の画像を撮像する車載カメラ16と、車両Cの車線変更を含む自動運転を制御する自動運転制御装置15とがある。上記設定は、位置情報と標準精度地図と自動運転制御装置15とを利用可能であり、高精度地図と車載カメラ16が利用不可であるとき、進行方向案内要素として標準精度地図から算出される経路を矢印で示す画像を用いるように設定されてよい。
【0141】
これにより、自動運転制御装置15により車両Cが進行する車線の情報が得られる場合でも、車線の画像を撮像可能な車載カメラ16と車線を表示するための高精度地図とが利用可能でないときには、進行方向案内要素として車線の情報を含まない標準精度地図による経路を表示するので、車線が表示されていないのに車線変更が矢印で示されるという不自然な表示を防止することができる。
【0142】
上述した実施の形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲を実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0143】
1…制御部、2…描画処理部、3…一時記憶部、4…通信部、5…標準精度地図情報、30…ナビゲーションシステム、40…車載システム