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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】アコチアミドの改善された製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 277/56 20060101AFI20230224BHJP
   A61K 31/426 20060101ALN20230224BHJP
   A61P 1/04 20060101ALN20230224BHJP
   A61P 1/10 20060101ALN20230224BHJP
   A61P 1/00 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
C07D277/56
A61K31/426
A61P1/04
A61P1/10
A61P1/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018199883
(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公開番号】P2019077680
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】10-2017-0139331
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515311291
【氏名又は名称】ヘキサファーマテック カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】#301,315,Banwol Hitech Village,278 Sandan-ro,Danwon-gu,Ansan-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ハン,シン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ナリ
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第96/036619(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0010079(KR,A)
【文献】特開2012-246291(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1251625(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0051246(KR,A)
【文献】Org.Process Res. Dev.,2015年,Vol.19,pp.2006-2011
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)と2-アミノ-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチルとを、塩基の存在下で、反応させて、2-[(2,4,5-トリメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチルを製造する工程;
(b)前記2-[(2,4,5-トリメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチルの脱メチル化反応を行って、2-[(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチルを製造する工程;および
(c)前記2-[(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチルとN,N-ジイソプロピルエチレンジアミンとを反応させて、アコチアミドを製造する工程を含む、アコチアミドまたはアコチアミド塩酸塩3水和物の製造方法。
【請求項2】
前記2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)が、2,4,5-トリメトキシ安息香酸と2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)とを、トリフェニルホスフィンの存在下で、反応させることによって得られることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記反応が、トリフェニルホスフィンと2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)とを反応させて、トリフェニルホスフィンおよび2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)の縮合体を形成させた後、2,4,5-トリメトキシ安息香酸を反応させることによって行われることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記反応が、0ないし20℃で行われることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記反応が、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、およびアセトニトリルからなる群から選択される有機溶媒中で行われることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
工程(a)の反応で使用される塩基が、KCO、NaCO、およびLiCOからなる群から選択されるアルカリ金属炭酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
工程(a)の反応が、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、およびアセトニトリルからなる群から選択される有機溶媒中で行われることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
工程(b)の脱メチル化が、前記2-[(2,4,5-トリメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチルにピリジン塩酸塩を反応させることによって行われることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
工程(c)の反応が、溶媒を使用せずに、2-[(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチルの1当量に対して、N,N-ジイソプロピルエチレンジアミンの2ないし5当量を反応させることによって行われることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
工程(c)で製造されるアコチアミドを、その塩酸塩3水和物に転換する工程をさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アコチアミドの改善された製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、新規の中間体である、2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)を使用したアコチアミドまたはアコチアミド塩酸塩3水和物の製造方法に関する。本発明は、また、前記新規の中間体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アコチアミド(Acotiamide)は過敏性腸症候群、便秘、腸アトニーなどの大腸運動不全の改善作用を有する化合物として知られている。アコチアミドの化学名は、N-[2-(ジイソプロピルアミノ)エチル]-2-[(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボキサミドであり、下記化学式1の構造を有する(WO96/36619)。
<化学式1>
【0003】
アコチアミドは、下記化学式1’の構造を有する塩酸塩3水和物(hydrochloride trihydrate)の形態で、臨床で使用されている。
<化学式1’>
【0004】
アコチアミドの代表的な製造方法は、WO96/36619に開示されており、下記反応式1の通りである。
<反応式1>
【0005】
前記反応式1による製造方法は、2,4,5-トリメトキシ安息香酸(化学式6の化合物)と塩化チオニルとを反応させて、2,4,5-トリメトキシベンゾイルクロリド(化学式5’の化合物)を製造する工程;前記化学式5’の化合物と2-アミノ-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化学式4の化合物)とを反応させて、2-[(2,4,5-トリメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化学式3の化合物)を製造する工程;前記化学式3の化合物の脱メチル化反応を行って、2-[(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化学式2の化合物)を製造する工程;および前記化学式2の化合物とN,N-ジイソプロピルエチレンジアミンとを反応させてアコチアミド(化学式1の化合物)を製造する工程を含む。
【0006】
すなわち、従来のアコチアミドの製造方法は、中間体として2,4,5-トリメトキシベンゾイルクロリド(化学式5’の化合物)を経由し、前記化学式5’の化合物の製造工程は化学式6の化合物と塩化チオニルとの反応を含む。前記化学式6の化合物と塩化チオニルとの反応は、反応過程で、二酸化硫黄(SO)ガスおよび塩酸(HCl)ガスが生成される。しかし、二酸化硫黄ガスは、気候変動枠組条約(UNFCCC)によって、地球温暖化問題を引き起こす物質に指定されており、その生成を回避する必要が当業界に存在する。また、化学式6の化合物と塩化チオニルとの反応は、約80℃での加温反応を介して行われるので、塩酸ガスの生成は、製造現場での爆発の危険性があり、産業的規模の大量生産に適していない問題がある。また、化学式5’の化合物と化学式4の化合物との反応は、73ないし83%の低い収率を示す問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、塩化チオニルの使用に起因する地球温暖化問題および製造現場での爆発の危険性を効果的に回避することができるアコチアミドの改善された製造方法を開発するために、様々な研究を行った。その結果、本発明者らは、塩化チオニルの使用を回避することができる新規の中間体、すなわち、2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)(化学式5の化合物)を経由して、アコチアミドの中間体(すなわち、化学式3の化合物)を製造し、それをアコチアミドに転換する場合、二酸化硫黄/塩酸ガス生成に起因する問題を根本的に回避することができるだけでなく、高収率および高純度でアコチアミドを製造することができることを発見した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、新規の中間体である、2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)(化学式5の化合物)の使用を含む、アコチアミドまたはアコチアミド塩酸塩3水和物の製造方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の別の目的は、前記新規の中間体である、2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)(化学式5の化合物)及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によって、(a)2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)(化学式5の化合物)と2-アミノ-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化学式4の化合物)とを、塩基の存在下で、反応させて、2-[(2,4,5-トリメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化学式3の化合物)を製造する工程;(b)前記2-[(2,4,5-トリメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化学式3の化合物)の脱メチル化反応を行って、2-[(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化学式2の化合物)を製造する工程;および(c)前記2-[(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化学式2の化合物)とN,N-ジイソプロピルエチレンジアミンとを反応させて、アコチアミド(化学式1の化合物)を製造する工程を含む、アコチアミドまたはアコチアミド塩酸塩3水和物の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の別の一態様によって、2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)(化学式5の化合物)が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の態様によって、2,4,5-トリメトキシ安息香酸(化学式6の化合物)と2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)とを、トリフェニルホスフィンの存在下で、反応させることを含む、2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)(化学式5の化合物)の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアコチアミドまたはアコチアミド塩酸塩3水和物の製造方法は、新規の中間体である、2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)(化学式5の化合物)の使用を含む。したがって、塩化チオニルを使用して製造される中間体である、2,4,5-トリメトキシベンゾイルクロリドの使用を回避することができるので、二酸化硫黄の生成に起因する地球温暖化問題および製造現場での爆発の危険性を効果的に回避することができる。また、本発明に係る製造方法は、アコチアミドまたはアコチアミド塩酸塩3水和物を高収率および高純度で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、下記の工程を含む、アコチアミドまたはアコチアミド塩酸塩3水和物の製造方法を提供する:
(a)2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)(化学式5の化合物)と2-アミノ-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化学式4の化合物)とを、塩基の存在下で、反応させて、2-[(2,4,5-トリメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化学式3の化合物)を製造する工程;
(b)前記2-[(2,4,5-トリメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化学式3の化合物)の脱メチル化反応を行って、2-[(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化学式2の化合物)を製造する工程;および
(c)前記2-[(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化学式2の化合物)とN,N-ジイソプロピルエチレンジアミンとを反応させて、アコチアミド(化学式1の化合物)を製造する工程。
【0015】
本発明の製造方法を全体的な反応式で表すと、下記反応式2の通りである。
<反応式2>
【0016】
前記反応式2に示すように、好ましくは、前記2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)(化学式5の化合物)は、2,4,5-トリメトキシ安息香酸(化学式6の化合物)と2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)とを、トリフェニルホスフィンの存在下で、反応させることによって得られることができる。前記反応は、トリフェニルホスフィンと2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)とを反応させて、トリフェニルホスフィンおよび2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)の縮合体を形成させた後、2,4,5-トリメトキシ安息香酸(化学式6の化合物)を反応させることによって好ましく行うことができる。トリフェニルホスフィンと2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)は、化学式6の化合物の1当量に対して、1.0ないし2.0当量、好ましくは1.1ないし1.5当量、より好ましくは1.1ないし1.2当量の割合で使用してもよい。前記反応は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、およびアセトニトリルからなる群から選択される有機溶媒中で行われてもよく、好ましくは、ジクロロメタンの中で行われてもよい。また、前記反応は、0ないし20℃、好ましくは5ないし10℃で行われてもよい。前記反応は、使用される溶媒、反応温度などにより異なるが、約1ないし3時間行われてもよい。
【0017】
本発明の製造方法において、工程(a)の反応に使用される塩基は、KCO、NaCO、およびLiCOからなる群から選択されるアルカリ金属炭酸塩であってもよく、好ましくはKCOであってもよい。また、工程(a)の反応は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、およびアセトニトリルからなる群から選択される有機溶媒中で行われてもよく、好ましくは、トルエンの中で行われてもよい。また、工程(a)の反応は、使用される溶媒の還流温度で行われてもよく、例えば80ないし150℃、好ましくは約110℃で行われてもよい。前記反応は、使用される溶媒、反応温度などにより異なるが、約4時間行われてもよい。
【0018】
本発明の製造方法において、工程(b)の脱メチル化は、従来のアコチアミドの製造方法において使用される脱メチル化の方法にしたがって行われてもよい。例えば、工程(b)の脱メチル化は、前記2-[(2,4,5-トリメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチルにピリジン塩酸塩を反応させることによって行われてもよい。工程(b)の脱メチル化は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒中で行われてもよく、好ましくは、N,N-ジメチルホルムアミドを使用してもよい。工程(b)の脱メチル化反応は、使用される溶媒の還流温度で行われてもよく、例えば80ないし180℃、好ましくは約150℃で行われてもよい。
【0019】
本発明の製造方法において、工程(c)の化学式2の化合物のアコチアミドへの転換は、従来のアコチアミドの製造方法で使用される転換方法にしたがって行われてもよい。例えば、工程(c)の反応は、溶媒を使用せずに、2-[(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化学式2の化合物)の1当量に対して、N,N-ジイソプロピルエチレンジアミンを過量(例えば、2ないし5当量)で反応させることによって行われてもよい。工程(c)の反応は、80ないし120℃、好ましくは約120℃で行われてもよい。工程(c)の反応は、使用される溶媒、反応温度などにより異なるが、約0.5ないし3時間行われてもよい。
【0020】
本発明の製造方法は、アコチアミドを、その塩酸塩3水和物の形態に転換する工程をさらに含んでもよい。すなわち、本発明の製造方法は、工程(c)で製造されたアコチアミドを、その塩酸塩3水和物に転換する工程をさらに含んでもよい。前記塩酸塩3水和物への転換は、従来の方法にしたがって行われてもよい。例えば、前記塩酸塩3水和物への転換は、水、C~Cアルコール、または水とC~Cアルコールとの混合溶媒、好ましくは水とイソプロピルアルコールの混合溶媒中で、アコチアミドと塩酸水溶液とを反応させることによって行われてもよい。
【0021】
本発明は、また、アコチアミドの製造のための新規の中間体、すなわち、2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)(化学式5の化合物)を提供する。
【0022】
本発明は、また、前記新規の中間体の製造方法を提供する。すなわち、本発明は、2,4,5-トリメトキシ安息香酸(化学式6の化合物)と2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)とを、トリフェニルホスフィンの存在下で、反応させることを含む、2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)(化学式5の化合物)の製造方法を提供する。
【0023】
前記化学式5の化合物の製造方法は、トリフェニルホスフィンと2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)とを反応させて、トリフェニルホスフィンおよび2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)の縮合体を形成させた後、2,4,5-トリメトキシ安息香酸(化学式6の化合物)を反応させることによって好ましく行うことができる。トリフェニルホスフィンと2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)は、化学式6の化合物の1当量に対して、1.0ないし2.0当量、好ましくは1.1ないし1.5当量、より好ましくは1.1ないし1.2当量の割合で使用しもよい。前記反応は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、およびアセトニトリルからなる群から選択される有機溶媒中で行われるてもよく、好ましくは、ジクロロメタンの中で行われてもよい。また、前記反応は、0ないし20℃、好ましくは5ないし10℃で行われてもよい。前記反応は、使用される溶媒、反応温度などにより異なるが、約1ないし3時間行われてもよい。
【0024】
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲はそれらによって制限されるものではない。
【0025】
実施例1.2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)(化合物5)の製造
トリフェニルホスフィン(68g、0.26mol)およびジクロロメタン(500mL)の混合物を、窒素雰囲気下で、5℃で攪拌しながら、2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)(86.2g、0.26mol)を加えた。反応混合物を、同じ温度である、5℃で1時間攪拌した後、2,4,5-トリメトキシ安息香酸(50g、0.24mol)を加えた。反応混合物を5℃で1時間攪拌した後、約30℃で減圧濃縮した。メタノール(300mL)を加え、室温で約3時間攪拌して、沈殿物を形成した。反応混合物を濾過して沈殿物を得た後、冷たいメタノール(50mL)で洗浄し、40℃で18時間真空乾燥して、表題化合物80.4gを得た。(収率:94.4%)
HPLC純度:99.3%
融点:125~129℃
IR(ATR)cm-1:3717、3238、1718
1H-NMR (400MHz、CDCl3) δ 3.91 (3H、s)、3.98 (3H、s)、4.05 (3H、s)、6.55 (1H、s)、7.42 (1H、td、J=7.6、1.0Hz)、7.49 (2H、td、J=8、1.4Hz)、7.94 (2H、d、J=8Hz)、8.04 (2H、d、J=7.6Hz)
【0026】
実施例2.2-[(2,4,5-トリメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化合物3)の製造
窒素雰囲気下で、2,4,5-トリメトキシ安息香酸S-(ベンゾチアゾール-2-イル)(80.4g、0.22mol)、2-アミノ-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(38.3g、0.22mol)、炭酸カリウム(30.8g、0.24mol)、およびトルエン(1.2L)の混合物を、4時間還流した。反応混合物を約5℃で3時間攪拌して、沈殿物を形成した。反応混合物を濾過して沈殿物を得た後、トルエン(80mL)で洗浄し、50℃で20時間送風乾燥して、粗(crude)生成物143.5gを得た。得られた粗生成物と蒸留水(800mL)との混合物を20~25℃の室温で5時間攪拌し、濾過して沈殿物を得て、得られた沈殿物を蒸留水で洗浄した後、50℃で20時間送風乾燥して、表題化合物74.1gを得た。(収率:90.9%)
HPLC純度:99.3%
融点:241~247℃
IR(ATR)cm-1:3300、3131、1721、1659
1H-NMR (400MHz、CDCl3) δ 1.35 (3H、t、J=4Hz)、3.84 (3H、s)、3.91 (3H、s)、4.02 (3H、s)、4.35 (2H、q、J=4Hz)、6.50 (1H、s)、7.69 (1H、s)、7.78 (1H、s)、11.05 (1H、s)
【0027】
実施例3.2-[(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(化合物2)の製造
窒素雰囲気下で、2-[(2,4,5-トリメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(12g、32.8mmol)、ピリジン塩酸塩(11.6g、98.3mmol)、ピリジン(2.6mL、32.8mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド(36mL)の混合物を、8時間還流した。反応混合物を約50℃に冷却し、蒸留水(100mL)を加え、20時間室温で撹拌して、沈殿物を形成した。反応混合物を濾過して沈殿物を得た後、蒸留水(3mL)で洗浄し、60℃で20時間真空乾燥して、表題化合物10.5gを得た。(収率:91%)
HPLC純度:97.4%
融点:220~228℃
IR(ATR)cm-1:3129、1722、1635
1H-NMR (400MHz、DMSO-d6) δ 1.32 (3H、t、J=4Hz)、3.77 (3H、s)、3.81 (3H、s)、4.28 (2H、q、J=4Hz)、6.58 (1H、s)、7.62 (1H、s)、8.08 (1H、s)、12.37 (1H、br)
【0028】
実施例4.N-[2-(ジイソプロピルアミノ)エチル]-2-[(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボキサミド(アコチアミド、化合物1)の製造
窒素雰囲気下で、2-[(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸エチル(10g、28.4mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチレンジアミン(10mL、56.8mmol)の混合物を、120℃で3時間攪拌した。反応混合物を約50℃まで冷却し、飽和塩化ナトリウム水溶液(30mL)およびジクロロメタン(50mL)を使用して抽出した。有機層を蒸留水(5mL)で2回洗浄した後、硫酸マグネシウム(5g)上で乾燥し、ジクロロメタン(10mL)で洗浄し、減圧乾燥して、表題化合物11.4gを得た。(収率:89.1%)
HPLC純度:98.9%
1H-NMR (400MHz、DMSO-d6) δ 1.15 (12H、d、J=6.4Hz)、2.93 (2H、m)、3.4 (4H、m)、3.71 (3H、s)、3.73 (3H、s)、6.44 (1H、s)、7.40 (1H、s)、7.60 (1H、s)、8.36 (1H、br)
【0029】
実施例5.N-[2-(ジイソプロピルアミノ)エチル]-2-[(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシベンゾイル)アミノ]-1,3-チアゾール-4-カルボキサミド塩酸塩3水和物(化合物1’)の製造
実施例4で製造したアコチアミド(11g、24.4mmol)、イソプロピルアルコール(30mL)、および35%塩酸水溶液(2.2mL)の混合物を、加温攪拌して溶解した。得られた溶液を約5℃まで冷却し、1時間攪拌して、沈殿物を形成した。反応混合物を濾過して沈殿物を得て、得られた沈殿物をイソプロピルアルコール(6mL)で洗浄し、真空乾燥して、粗生成物11g(23mmol)を得た。得られた組生成物、イソプロピルアルコール(9mL)、および蒸留水(35mL)の混合物を加温攪拌して溶解した後、約5℃まで冷却し、1時間攪拌して、沈殿物を形成した。反応混合物を濾過して沈殿物を得て、30%イソプロピルアルコール(10mL)で洗浄して、表題化合物10.3gを得た。(収率:78%)
HPLC純度:99.8%
K/F:10.01~10.23%
融点:190~196℃
IR(ATR)cm-1:3396、1658、1518、1267
1H-NMR (400MHz、DMSO-d6) δ 1.31 (12H、m)、3.15 (2H、m)、3.40 (9H、s)、3.62 (4H、m)、3.76 (3H、s)、3.80 (3H、s)、6.86 (1H、s)、7.48 (1H、s)、7.89 (1H、s)、8.72 (1H、t、J=6Hz)、9.64 (1H、br)、11.78 (1H、s)、12.08 (1H、br)