(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】認知機能障害モデル動物の作製方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/15 20060101AFI20230224BHJP
A01K 67/027 20060101ALI20230224BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
G01N33/15 Z
A01K67/027
G01N33/50 Z
(21)【出願番号】P 2018221520
(22)【出願日】2018-11-27
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 義人
(72)【発明者】
【氏名】蓮村 卓広
(72)【発明者】
【氏名】目黒 真一
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】Behavioural Processes,2017年,Vol.138,pp.49-57
【文献】Animal Cognition,2017年,Vol.20,pp.159-169
【文献】Neurobiology of Learning and Memory,2018年,Vol.147,pp.120-127,Available online 08 December 2017
【文献】Neuroscience Letters,2011年,Vol.488,pp.41-44
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/027
G01N 33/15
G01N 33/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程a~cを含む
記憶学習機能低下の予防又は治療剤の評価又は探索方法。
a)
生後4ヶ月齢以上のゼブラフィッシュを14日以上夜間照明点灯下で飼育する工程
b)前記飼育の前、間又は後に、該
ゼブラフィッシュに試験物質を投与する工程
c)飼育された
ゼブラフィッシュの認知機能の変化を
能動回避学習法により観察する工程
【請求項2】
能動回避学習法が、1セッション30回の学習トライアルを4又は5セッション行ない、各セッションについて、回避を示したトライアル数を回避率として求める、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記飼育が集団飼育である場合における能動回避学習法による観察が、少なくとも当該試験の開始3日前から個別飼育をした後に行われる、請求項1又は2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知機能障害のモデル動物の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記憶学習機能の低下は人々のQOLを著しく低下させ、症状が進行すると介護が必要となり、医療費も含めて家族には大きな負担となる。高齢社会に伴って、この記憶学習機能低下の問題解決が今後の重要な社会課題であると考えられている。そのため、認知症の発症メカニズムやその治療法の研究が盛んに行われているが、そのような研究の遂行には適切な症状を示しかつ簡便に作製可能な実験動物モデルが必要となる。
【0003】
認知症発症の要因としては、脳内における毒性物質アミロイドβの産生・沈着によるという考え方が広く知られており、認知症を再現するモデルとして、遺伝子組み換えによるアミロイドβ過剰発現動物が作製されている。
【0004】
また、概日リズムの乱れ等の継続的な生活習慣の悪化による脳内環境の変化によって認知症が発症するという考え方も知られており、例えば睡眠を阻害されたマウスでは記憶学習機能が低下することが報告されている(非特許文献1)。
【0005】
また、夜間の光によって睡眠量が低下することが知られているゼブラフィッシュでは、明期を6時間延長した後、4分間明期、1分間暗期の5分サイクルが6時間繰り返される条件下で3日間飼育した場合に学習能力が低下すること(非特許文献2)が報告されている。しかしながら、上記方法は照明の制御が複雑であり学習能力の低下を検出するために多くの個体を必要とするため、認知機能障害を簡便な操作で再現するモデルとは言えない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Ma WP et al., Neuroscience Research, 2007, vol 59(2), p.224-230
【文献】Pinheiro-da-Silva J et al., Behavioral Processes, 2018, in Press
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、生活習慣慣の悪化より発症する認知機能障害に類似した動物モデルの作製方法、当該動物モデルを利用した認知機能障害の予防又は治療剤の評価又は探索方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、斯かる課題に鑑みて検討したところ、ゼブラフィッシュのような魚類を一定期間夜間照明点灯下で飼育した場合に学習機能が低下し、一過性の認知機能障害を発症するモデルとなり得ることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の1)~3)に係るものである。
1)魚類を14日以上夜間照明点灯下で飼育する工程を含む、認知機能障害モデル動物の作製方法。
2)1)の方法により作製された認知機能障害モデル動物。
3)以下の工程a~cを含む認知機能障害の予防又は治療剤の評価又は探索方法。
a)魚類を14日以上夜間照明点灯下で飼育する工程
b)前記飼育の前、間又は後に、該魚類に試験物質を投与する工程
c)飼育された魚類の認知機能の変化を観察する工程
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、生活習慣の悪化により発症する認知機能障害に類似する動物モデルを簡便に提供することができる。この動物は、認知機能障害のメカニズムの解明や、認知機能障害を予防又は改善するための食品や医薬品の開発に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】2週間のLLによる能動回避学習への影響。(a)各sessionにおける回避率とその変化の様子を示す。(b)1st sessionから各sessionに対する回避率の変化量を示す。Error bars: mean±SEM, *: P<0.05( Student’s T Test)
【
図3】夜間光刺激の継続期間による能動回避学習への影響変化。(a)LD群、1day LL群、3day LL群における能動回避学習の際の回避率変化。(b)LD群、1w LL群、2w LL群における能動回避学習の際の回避率変化。Error bars: mean±SEM, *: P<0.05( Student’s T Test)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において用いられる魚類としては、日中行動し夜間睡眠をとるものであればその種は限定されないが、省コスト及び省スペースでの飼育が可能である点、世代交代期間が短い点、様々な目的の科学研究用に従来から用いられている点から、ゼブラフィッシュ、メダカ、金魚が好ましい。中でもゼブラフィッシュ(Danio rerio)は、ゲノム情報が整備されていること、ヒトを含む哺乳類と同等の遺伝子組成,器官・組織を備えていること、特にヒトと同様の脳部位が存在し、アルツハイマー病に関連する遺伝子が既に解明され、脳の神経活動を可視化できる点において、本発明の魚類として好ましい。
【0013】
本発明において用いられる魚類は、その性別、月齢、大きさ等は特に制限はないが、認知機能を評価する上で、ゼブラフィッシュであれば、生後3~20ヶ月齢、好ましくは生後4~18ヶ月齢、より好ましくは生後4~12ヶ月齢の性成熟した成魚を用いることが好ましい。
【0014】
本発明の認知機能障害モデル動物は、上記の魚類を14日以上夜間照明点灯下で飼育することにより作製される。
「夜間照明点灯下での飼育」とは、一日の明暗サイクルにおける、暗期(夜間)に、明期と同様の、所定の照明による光刺激付与下で魚類を飼育することを意味する。例えば、一日の明暗サイクルを明期14時間、暗期10時間とした場合に、暗期10時間を照明点灯下で飼育することが挙げられる。尚、明暗サイクルは、任意に設定できるが、暗期が8~12時間、好ましくは9~11時間にするのが好ましい。
【0015】
ここで用いられる照明としては、魚類の生存に適した光を照射し得る照明である。魚類の生存に適した光とは、少なくとも魚類が安静でいられるような照度を与えるような強さの光である。当該光は、光の3原色の波長成分を含んだ白色光であってよいが、特定の波長成分だけを選択してもよい。
魚類が好む照度は、魚類の種類によっても異なるが、例えば、ゼブラフィッシュでは、水面から30mmの高さで50~2000ルクス、好ましくは100~1000ルクスである。
上記光を照射するための照明手段は、蛍光灯、白熱電球、LED、光ファイバによる外光の導入など、適宜選択すればよい。
【0016】
飼育は、用いる魚類に適合する環境で飼育されればよいが、例えばゼブラフィッシュの場合、水温を26~29℃に設定し、循環式水質浄化システムを用いて行うのが好ましい。
【0017】
本発明において、「夜間照明点灯下での飼育」は、少なくとも14日以上行われる。1~3日のような短期間では、記憶・学習機能の低下が認められず、認知機能障害のモデルにはなり得ない。飼育期間は、14日以上であればよいが、好ましくは60日以下、より好ましくは30日以下である。
【0018】
斯くして、夜間照明点灯下で飼育された魚類は、記憶・学習機能の低下が認められる。
記憶・学習機能の低下は、例えば参照記憶課題を用いた記憶学習機能評価法を用いて評価することができる。参照記憶とは課題解決に寄与する情報・知識についての意味記憶であって、その情報・知識は課題解決の中において共通して有効である成分を含む。参照記憶課題とは、試行間に渡って上記のような情報・知識から共通な法則を見出し、行動を変化させる記憶学習機能を評価するために提供される課題であり、能動回避学習法、8方向放射状迷路、T字型迷路等が挙げられるが、好ましくは、能動回避学習法である。
能動回避学習法は、例えば、赤色ランプが点灯後しばらくすると電気ショックが与えられるが、赤色ランプ点灯中に反対の部屋に移動することができれば電気ショックを回避できる、というような危険を知らせるシグナルに対して、回避行動を学習する実験である(
図1参照)。
【0019】
斯かる認知機能障害が誘発された魚類は、睡眠障害のような生活習慣の悪化により発症する認知機能障害のモデル動物となり得ると考えられる。
ここで、「認知機能」とは、記憶、学習、理解、判断、思考、言語、計算などを含む脳機能を言うが、好ましくは、記憶力、学習力、理解力、判断力及び思考力であり、より好ましくは記憶力及び学習力である。
【0020】
本発明の方法により作製された認知機能障害モデル動物は、認知機能障害の発症メカニズムの解明や認知機能障害の予防又は治療法の研究、例えば認知機能障害の予防又は治療剤の評価又は探索に用いることができる。
【0021】
本発明のモデル動物を用いた認知機能障害の予防又は治療剤の評価又は探索は、例えば、以下の工程a~cを含むことにより成される。
a)魚類を14日以上夜間照明点灯下で飼育する工程
b)前記飼育の前、間又は後に、該魚類に試験物質を投与する工程
c)飼育された魚類の認知機能の変化を観察する工程
【0022】
上記評価又は探索方法において、a工程の魚類の夜間照明点灯下での飼育は、上述したとおりである。また、上記方法において、試験物質の投与(b工程)は、夜間照明点灯下での飼育(a工程)の前や途中、或いは後に行われる。すなわち、試験物質の投与は一定期間であり得るが、その開始時又は終了時は、夜間照明点灯下での飼育の前や途中、或いは後のいずれであってもよい。なお、a工程の飼育期間後の投与は、認知機能の変化を観察するc工程が終了するまでであれば、当該工程の途中であってもよい。一態様として、試験物質の投与は、1)a工程の前に開始され且つ終了すること、2)a工程の前に開始されa工程の期間中又は期間後に終了すること、3)a工程の期間中に開始されa工程の期間中又は期間後に終了すること、4)a工程の開始と同時に開始されa工程の終了と同時に終了すること、5)a工程の後に開始され、c工程の前、途中或いは当該工程の終了と同時に終了すること、等が挙げられる。
また、試験物質の投与は、魚類の食餌に当該試験物質を添加してもよく、又は水槽に当該試験物質を添加してもよい。
【0023】
上記試験物質としては、認知機能の向上が所望される物質であれば、特に制限されない。当該試験物質は、天然に存在する物質であっても、化学的又は生物学的方法等で人工的に合成した物質であってもよく、また化合物であっても、組成物もしくは混合物であってもよい。
【0024】
認知機能の変化の観察は、上述した参照記憶課題を用いた記憶学習機能評価法を用いて行うことできる。好適な一態様として、認知機能の変化の観察は、上述した能動回避学習実験における回避率の変化などを観察することにより行われ、これを試験群と対照群との間で比較することにより、認知機能に対する効果が評価される。対照群との比較は、統計学的に行われるのが好ましく、例えば、試験群における能動回避学習実験における回避率が、対照群に対して統計学的に有意に増加していれば、当該試験物質を認知能障害の予防剤又は改善剤として評価又は選択することができる。
尚、ここで、「予防」とは、個体における疾患若しくは症状の発症の防止若しくは遅延、又は個体の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。また、「改善」とは、疾患、症状若しくは状態の好転若しくは緩和、疾患、症状若しくは状態の悪化の防止若しくは遅延、又は疾患、症状若しくは状態の進行の逆転、防止若しくは遅延をいう。
【0025】
上述した実施形態に関し、本発明においてはさらに以下の態様が開示される。
<1>魚類を14日以上夜間照明点灯下で飼育する工程を含む、認知機能障害モデル動物の作製方法。
<2>魚類がゼブラフィッシュである、<1>の方法。
<3>ゼブラフィッシュが生後4ヶ月齢以上の個体である、<2>の方法。
<4>認知機能障害が、記憶学習機能の低下である、<1>~<3>のいずれかの方法。
<5><1>~<4>のいずれかの方法により作製された認知機能障害モデル動物。
<6>以下の工程a~cを含む認知機能障害の予防又は治療剤の評価又は探索方法。
a)魚類を14日以上夜間照明点灯下で飼育する工程
b)前記飼育の前、間又は後に、該魚類に試験物質を投与する工程
c)飼育された魚類の認知機能の変化を観察する工程
<7>認知機能の変化の観察が参照記憶課題を用いた記憶学習機能評価法を用いてなされる、<6>の方法。
<8>参照記憶課題を用いた記憶学習機能評価法が能動回避学習法である、<7>の方法。
【0026】
<9>夜間照明点灯下で飼育が、好ましくは60日以下、より好ましくは30日以下である、<1>~<4>のいずれかの方法。
<10>ゼブラフィッシュが生後4~12ヶ月齢の個体である、<3>の方法。
【実施例】
【0027】
実施例1 2週間の継続的な夜間光刺激による能動回避学習への影響
(1)方法
1)個体の準備
水温を26~29℃に設定し、循環式水質浄化システムを用いてゼブラフィッシュの成魚を10~12ヶ月齢となるまで飼育した。明暗サイクルは、明期14時間、暗期10時間を1サイクルとした。給餌は、市販のゼブラフィッシュ用飼料(商品名:おとひめB2、日清丸紅飼料社製)を用い1日に朝夕の計2回行った。飼育後、ゼブラフィッシュを平均体重が同程度となるように、LD群(対照群)と夜間に明期と同様の光刺激(照明点灯)を与えるLL群の2群に8匹ずつ分け、それぞれ1ケージに1匹ずつ個別に準備をした。
光刺激は、LED照明を用い、水面から30mmの高さで200ルクスとした。
【0028】
2)夜間の光刺激
個別ケージで3日間馴化させた後、LL群は明期24時間、暗期0時間の明暗サイクル下で2週間飼育した。LD群、LL群共に給餌は前記スケジュールに従った。
【0029】
3)能動回避学習による記憶・学習機能評価
ゼブラフィッシュの記憶・学習機能は能動回避学習によって評価した。能動回避学習は、中央のダムで2つの領域に区切られた試験水層を用い、1個体ずつ行う。区切られた領域はダムの中央部にある窪みを利用して個体が自由に行き来することが出来る。それぞれの領域は予め設置されたランプによって点灯される。
能動回避学習は10分の馴化期間とそれに続く30trialの学習機会によって1sessionが構成されており、これを連続で5session行う。馴化期間が終わると、試験個体が存在する試験水層の領域でランプを点灯させる。10秒後、そのランプの点灯が継続されるのと並行して、ランプが点灯している領域に軽い電気刺激(交流2.5V)が与えられる。この時試験個体がその領域に留まった場合電気刺激開始から10秒後に同時にランプの消灯と電気刺激の停止を行う。試験個体が他方の領域に移動した場合はその時点から5秒間、移動前にいた領域にランプの点灯と軽い電気刺激を同時に行う。この期間内に試験個体が移動した領域からランプが点灯している領域に戻った場合は軽い電気刺激を受けることになるが、その後ランプが点灯する領域に留まっても、所定期間の延長はされず、初めに移動した際に開始された期間が終了後、ランプの消灯と同時に電気刺激を中止する。馴化期間後のこれら1連の操作を1trialとし、各trialの間には無刺激のインターバル期間(7.5~22.5秒、平均15秒)がある。このtrialが繰り返し行われることによって試験個体はランプの点灯後に電気刺激が発生することを記憶し、電気刺激が発生する前に他方の領域に移動するという学習行動を示すようになる。この、ランプの点灯後、電気刺激が発生する前に他方に移動することを「回避」と定義し、各sessionの30trial中に回避を示したtrial数の割合を「回避率」と定義し、1st sessionから回避率が上昇するほど個体の記憶・学習機能が優れていると判断した。回避率が5sessionを通して回避率が0.3を超えることの無かった個体は、能動回避学習を評価するために十分な学習機会を得ることが出来なかったとして評価からは除外した(
図1参照)。
【0030】
(2)結果
2週間のLL群は、4th sessionにおいてLD群に対し有意に低い回避率を示した(
図2(a))。また、1st sessionから各sessionにおける回避率変化は、2nd session、4th sessionにおいてLD群に対しLL群で有意に小さかった(
図2(b))。このことから、2週間の継続的な夜間光刺激はゼブラフィッシュに記憶・学習機能低下を誘導する可能性が示唆された。
【0031】
実施例2 夜間光刺激の継続期間による能動回避学習への影響変化
(1)方法
1)個体の準備
前記実施例1と同様にゼブラフィッシュ成魚を4ヶ月齢となるまで飼育した。試験の為に、(1-1)LD群(8匹)、(1-2)1day LL群(8匹)、(1-3)3day LL群(8匹)の3群、また(2-1)LD群(12匹)、(2-2)1w LL群(8匹)、(2-3)2w LL群(12匹)の3群に、各3群間で体重が同程度となるように群分けを行った。(2-1)、(2-3)は1ケージ6匹、それ以外は1ケージ8匹で飼育した。
【0032】
2)夜間の光刺激
1day LL群は1日、3day LL群は3日、1w LL群は7日、2w LL群は14日、明期24時間、暗期0時間の明暗サイクルの下で飼育を行い、その後能動回避学習を評価した。各群は群分け後、明期14時間、暗期10時間の通常明暗サイクル下で、集団の状態で3日以上飼育し、馴化を行った。また能動回避学習試験の3日前からは個別で飼育を行った。各群共に給餌は前記スケジュールに従った。
【0033】
3)能動回避学習による記憶・学習機能評価
能動回避学習とそれを用いた評価は、前記実施例1において記載の方法に従った。
【0034】
(2)結果
(1-1)LD群(8匹)、(1-2)1day LL群(8匹)、(1-3)3day LL群(8匹)において能動回避学習を評価したところLD群のものに対し1day LL群、3day LL群の1st sessionから各sessionに対する回避率の変化量は少なくなったが、有意な差は認められなかった(
図3(a))。(2-1)LD群(12匹)、(2-2)1w LL群(8匹)、(2-3)2w LL群(12匹)に対し能動回避学習を評価したところ、LD群に対して1w LL群では回避率の変化量が少ないものの有意な差は認められなかった。一方で、2w LL群ではLD群に対し3rd sessionで有意傾向に、4th sessionで有意にその変化量が少なくなった(
図3(b))。これらの結果より、ゼブラフィッシュに対し記憶・学習機能の低下を誘導するためには2週間以上の継続的な夜間光刺激が有用であると考えられる。