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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20230224BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20230224BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
F01N3/24 N
F01N3/08 B
F01N3/24 E
F01N3/24 L
B01D53/94 222
B01D53/94 400
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018229840
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020056393
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】P 2018198770
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 申也
(72)【発明者】
【氏名】野垣 武裕
(72)【発明者】
【氏名】城戸 大作
(72)【発明者】
【氏名】土屋 由弘
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-194204(JP,A)
【文献】特開2015-068341(JP,A)
【文献】特開2018-071360(JP,A)
【文献】特開2014-148896(JP,A)
【文献】特開2008-144644(JP,A)
【文献】特開2017-155694(JP,A)
【文献】特開2009-024628(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0023843(US,A1)
【文献】特開2017-110556(JP,A)
【文献】特開2000-204940(JP,A)
【文献】特許第5543674(JP,B2)
【文献】独国特許出願公開第102009047547(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00-3/38
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気に含まれる特定の物質である第1物質を還元剤によって還元することにより前記排気を浄化する還元触媒を含む第1浄化部と、
前記排気が流れる経路である排気流路における前記第1浄化部の上流側に隣接して配設され前記第1浄化部へと前記排気を導くように構成された導入経路と、
前記導入経路の内部に前記還元剤を添加するように構成された還元剤添加部と、
を備える排気浄化装置であって、
前記還元剤は常温において固体又は液体である物質を含み、
稼働状態において前記導入経路の内部に前記還元剤が添加される部位である第1部位よりも下流側に形成された前記第1部位よりも高い部位である第2部位を経由して前記第1浄化部へと前記排気を導くように前記導入経路が構成されており、
管状の部材である連通管によって前記導入経路の前記第1部位から前記第2部位までの区間の少なくとも一部が構成されており、
前記連通管は前記稼働状態において前記第1部位側から前記第2部位側へ進むに従って高くなるように傾斜した状態に配置された部分である傾斜部を備え、
少なくとも前記導入経路及び前記第1浄化部を内部に支持・収容すると共に前記排気の入口及び出口を有するケーシングを更に備え、
前記内燃機関から排出される前記排気が前記入口を介して前記導入経路へと導かれ、前記第1浄化部から排出される前記排気が前記導入経路及び前記第1浄化部と前記ケーシングとの間の空間の少なくとも一部に流れた後に前記出口を介して前記ケーシングから排出されるように構成された、
排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置に関する。より具体的には、本発明は、常温において固体又は液体である物質を含む還元剤によって排気に含まれる特定の物質を還元する還元触媒を含む排気浄化装置における還元剤の滞留を低減することができる排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気には、例えば煤等からなる粒子状物質(PM)及び窒素酸化物(NOx)等の物質が含まれる。そこで、地球環境保護等の観点から、例えばPMを捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)及び選択触媒還元脱硝装置(SCR:Selective Catalytic Reduction)等の還元触媒等の排気浄化装置を内燃機関の排気流路に介装してPM及びNOx等の物質を除去することにより排気を浄化することが広く行われている。
【0003】
還元触媒は、その上流側に添加される還元剤によって排気中に含まれる特定の物質を還元して無害な物質へと変換する。例えば、選択触媒還元脱硝装置(SCR)は、その上流側に添加される還元剤(例えば、アンモニア(NH)、尿素及び尿素水等)によって排気中に含まれるNOxを無害な物質である窒素(N)へと還元する。還元剤として尿素又は尿素水を採用する場合、高温の排気との接触による尿素の熱分解の結果として生成されるNHによってNOxが還元される。従って、SCRによってNOxを効果的に除去するためには、還元剤が排気中に添加されてからSCRに到達するまでの経路を長くして、還元剤と排気とを十分に混合すると共に、尿素の熱分解にかける時間を長くすることが望ましい。
【0004】
そこで、当該技術分野においては、上流側に配設されたDPFと下流側に配設されたSCRとを屈曲した連通管によって連結することにより、還元剤が排気中に添加されてからSCRに到達するまでの経路を長くすることが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
ところが、上記のように還元剤が排気中に添加されてからSCRに到達するまでの経路を長くすればするほど、当該経路の下流側における排気の温度は低下する。従って、例えば気温等の環境条件及び/又は内燃機関の運転状況等によっては、熱分解されずに残留した尿素が還元触媒の上流側の排気流路の内壁等に付着する等して排気流路内に滞留し、例えば内燃機関の非稼働時等に冷えて析出する場合がある。その結果、尿素の析出物により排気流路の断面積が減少して排気の流れが阻害され、排気流路の圧力損失が高まる虞がある。また、排気流路の内壁等から脱落した尿素の析出物が排気によって下流へと運ばれて還元触媒に衝突して還元触媒を傷つけ、排気浄化性能を低下させる虞もある。
【0006】
上記のような問題は、尿素を含む還元剤(例えば、尿素水等)に限定されるものではなく、常温において固体である物質を含む還元剤に共通して発生し得る問題である。また、常温において液体である物質を還元剤が含む場合においても、対象となる物質の還元に使用されずに残った還元剤が排気流路に滞留して、例えば排気流路の断面積を減少させて圧力損失の上昇に繋がる虞がある。また、還元剤の構成によっては例えば寒冷時において排気流路内で還元剤が凍結して排気流路の変形及び/又は損傷を招く虞もある。
【0007】
上記のように常温において固体又は液体である物質を含む還元剤によって内燃機関から排出される排気に含まれる特定の物質を還元することにより排気を浄化する還元触媒を含む従来技術に係る排気浄化装置に(以降、「従来装置」と称呼される場合がある。)おいては、対象となる物質の還元に使用されずに排気流路に滞留した還元剤に起因して、例えば排気流路の圧力損失の上昇、還元触媒の損傷及び排気流路の損傷等の問題が生ずる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-145951号公報
【文献】特開2018-071360号公報
【文献】特開2014-148896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した課題に対処すべく想到されたものであり、常温において固体又は液体である物質を含む還元剤によって排気に含まれる特定の物質を還元する還元触媒を含む排気浄化装置における還元剤の滞留を低減することができる排気浄化装置を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記に鑑みて、本発明に係る排気浄化装置(以降、「本発明装置」と称呼される場合がある。)は、第1浄化部と、導入経路と、還元剤添加部と、を備える排気浄化装置である。第1浄化部は、内燃機関から排出される排気に含まれる特定の物質である第1物質を還元剤によって還元することにより排気を浄化する還元触媒を含む。導入経路は、排気が流れる経路である排気流路における第1浄化部の上流側に隣接して配設され第1浄化部へと排気を導くように構成されている。還元剤添加部は、導入経路の内部に還元剤を添加するように構成されている。
【0011】
上記還元剤は常温において固体又は液体である物質を含む。更に、導入経路は、本発明装置の稼働状態において第1部位よりも高い部位である第2部位を経由して第1浄化部へと排気を導くように構成されている。第1部位とは、導入経路の内部に還元剤が添加される部位である。第2部位とは、本発明装置の稼働状態において第1部位よりも下流側に形成され且つ第1部位よりも高い部位である。
【0012】
導入経路は、U字状、S字状、M字状又は螺旋状等の形状を有していてもよい。第1浄化部は還元触媒以外の浄化ユニットを含んでいてもよい。また、本発明装置は、導入経路の上流側に配設され排気を浄化する第2浄化部を更に備えていてもよい。
【0013】
更に、本発明装置は、ケーシング内に収容されていてもよく、ケーシングは内部に断熱材が充填されていてもよく或いは内部に流れる排気によって第1浄化部及び導入経路を保温するように構成されていてもよい。本発明装置は燃焼ガスを排気流路に供給する燃焼器を更に備えていてもよい。
【0014】
加えて、本発明装置は、排気流路の途中にミキシング部材及び/又はリアクターを更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述したように、本発明装置が備える導入経路は、稼働状態において導入経路の内部に還元剤が添加される部位である第1部位の下流側に第1部位よりも高い部位である第2部位を経由して第1浄化部へと排気を導くように構成されている。これにより、対象となる物質の還元に使用されずに導入経路に滞留する還元剤は重力の作用により下流側にある高い第2部位から上流側にある低い第1部位へと逆流し、新たな高温の排気によって加熱されると共に再び下流側へと押し流される(押し戻される)。この繰り返しにより、(尿素の熱分解の促進により)対象となる物質の還元に使用される還元剤が増大し導入経路の内部に滞留する還元剤が減少するので、本発明装置における還元剤の滞留を低減することができる。
【0016】
また、U字状、S字状、M字状又は螺旋状等、屈曲部を有する形状の導入経路を採用することより、例えば還元剤と排気との混合の促進及び本発明装置の小型化等を達成することができる。更に、本発明装置を収容するケーシング及び/又は燃焼ガスを排気流路に供給する燃焼器を更に設けることにより、例えば(尿素の熱分解の促進により)対象となる物質の還元に使用される還元剤を増大させたり還元触媒の活性を高めたりすることができる。加えて、排気流路の途中にミキシング部材及び/又はリアクターを更に設けることにより、例えば還元剤と排気との混合を促進したり(尿素の熱分解の促進により)対象となる物質の還元に使用される還元剤を増大させたりすることができる。
【0017】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施態様に係る排気浄化装置(第1装置)の構成の一例を示す模式図である。
図2】本発明の第2実施態様に係る排気浄化装置(第2装置)の構成の具体例を示す模式図である。
図3】本発明の第3実施態様に係る排気浄化装置(第3装置)の構成の具体例を示す模式図である。
図4】本発明の第4実施態様に係る排気浄化装置(第4装置)の構成の具体例を示す模式図である。
図5】本発明の第5実施態様に係る排気浄化装置(第5装置)の構成の一例を示す模式図である。
図6】本発明の第6実施態様に係る排気浄化装置(第6装置)の構成の一例を示す模式図である。
図7】本発明の第7実施態様に係る排気浄化装置(第7装置)の構成の一例を示す模式図である。
図8】本発明の第8実施態様に係る排気浄化装置(第8装置)の構成の一例を示す模式図である。
図9】本発明の第9実施態様に係る排気浄化装置(第9装置)が備える放熱部材の構成の具体例を示す模式図である。
図10】本発明の第10実施態様に係る排気浄化装置(第10装置)が備えるミキシング部材の構成の具体例を示す模式図である。
図11】本発明の第1実施例に係る排気浄化装置(第1実施例装置)の構成の一例を示す模式図である。
図12】第1実施例装置の主要部のレイアウトを表す模式的な斜視図である。
図13】本発明の第2実施例に係る排気浄化装置(第2実施例装置)の構成の一例を示す模式的な正面図である。
図14図13に示した第2実施例装置を入口側から観察した場合における外観を示す模式的な斜視図である。
図15図14に示した第2実施例装置からケーシングの入口側の外壁のみが取り外された状態を示す模式的な斜視図である。
図16図14に示した第2実施例装置からケーシングの全ての外壁が取り外された状態を示す模式的な斜視図である。
図17図13に示した第2実施例装置を入口の反対側から観察した場合における外観を示す模式的な斜視図である。
図18図17に示した第2実施例装置からケーシングの入口の反対側の外壁のみが取り外された状態を示す模式的な斜視図である。
図19図17に示した第2実施例装置からケーシングの全ての外壁が取り外された状態を示す模式的な斜視図である。
図20】1つの変形例に係る第2実施例装置の構成の一例を示す模式図である。
図21】本発明の第3実施例に係る排気浄化装置(第3実施例装置)の構成の一例を示す模式的な正面図である。
図22図21に示した第3実施例装置を入口側から観察した場合における外観を示す模式的な斜視図である。
図23図22に示した第3実施例装置からケーシングの入口側の外壁のみが取り外された状態を示す模式的な斜視図である。
図24図22に示した第3実施例装置からケーシングの全ての外壁が取り外された状態を示す模式的な斜視図である。
図25図21に示した第3実施例装置を入口の反対側から観察した場合における外観を示す模式的な斜視図である。
図26図25に示した第3実施例装置からケーシングの入口の反対側の外壁のみが取り外された状態を示す模式的な斜視図である。
図27図25に示した第3実施例装置からケーシングの全ての外壁が取り外された状態を示す模式的な斜視図である。
図28】本発明の第4実施例に係る排気浄化装置(第4実施例装置)の構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《第1実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態に係る排気浄化装置(以降、「第1装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0020】
〈構成〉
第1装置は、第1浄化部と、導入経路と、還元剤添加部と、を備える排気浄化装置である。第1浄化部は、内燃機関から排出される排気に含まれる特定の物質である第1物質を還元剤によって還元することにより排気を浄化する還元触媒を含む。第1浄化部は、還元触媒以外の排気浄化ユニット(例えば、アンモニアスリップ触媒(ASC:Ammonia Slip Catalyst)等)を更に含んでいてもよい。また、導入経路の下流側に還元触媒が配設され且つ還元触媒を含む各浄化ユニットの排気浄化機能に適合している限り、第1浄化部に含まれる還元触媒及び他の排気浄化ユニットは如何なる順序に配置されてもよい。更に、例えば第1浄化部における圧力損失の低減等を目的として、複数の還元触媒を排気の流れにおいて並列に配設してもよい。第1浄化部が還元触媒以外の排気浄化ユニットをも含む場合、複数の当該排気浄化ユニットを並列に配設してもよい。
【0021】
導入経路は、排気が流れる経路である排気流路における第1浄化部の上流側に隣接して配設され第1浄化部へと排気を導くように構成されている。導入経路の具体的な構成は、内燃機関から排出される排気を第1浄化部へと導くことが可能である限り、特に限定されない。具体的には、導入経路は、例えば鋼管等の管状部材(パイプ)によって構成されていてもよく、又はプレス成型された複数の部材を重ね合わせる製法(所謂「モナカ製法」)によって構成されていてもよい。或いは、第1浄化部又は他の構成部材の外壁又は内壁に取り付けられた板状及び/又は樋状の部材によって導入経路を構成してもよい。更に、導入経路の圧力損失が過度に高まらない限りにおいて、導入経路の内部にラビリンス構造を設けることにより、導入経路における排気の行程(道のり)を長くしてもよい。
【0022】
還元剤添加部は、導入経路の内部に還元剤を添加するように構成されている。還元剤は常温において固体又は液体である物質を含む。還元剤添加部の具体的な構成は、導入経路の内部に還元剤を添加することが可能である限り、特に限定されない。具体的には、還元剤添加部は、例えば液状の還元剤を導入経路の内部に噴射する噴射装置を備えることができる。典型的には、第1物質は窒素酸化物であり、還元剤は尿素を含み(例えば、尿素水等)、還元触媒は選択触媒還元脱硝装置(SCR:Selective Catalytic Reduction)である。
【0023】
更に、導入経路は、第1装置の稼働状態において第1部位よりも高い部位である第2部位を経由して第1浄化部へと排気を導くように構成されている。「第1装置の稼働状態」とは、第1装置が適用される内燃機関が搭載される装置又は設備に第1装置が稼働可能に組み込まれている状態を指す。このような状態の具体例としては、例えば内燃機関が搭載された車両に第1装置が稼働可能に組み込まれている状態等を挙げることができる。
【0024】
第1部位とは、導入経路の内部に還元剤が添加される部位である。例えば、還元剤添加部が上述したように液状の還元剤(例えば尿素水等)を導入経路の内部に噴射する噴射装置を備える場合、当該噴射装置によって導入経路の内部に還元剤が噴射される部位が第1部位である。
【0025】
第2部位とは、第1装置の稼働状態において第1部位よりも下流側に形成され且つ第1部位よりも高い部位である。典型的には、第1装置の稼働状態にある導入経路は、例えば、第1部位よりも下流側に第2部位へと向かう上りの傾斜部を有する。この傾斜部は必ずしも直線状である必要は無く、例えば曲線状であってもよく、途中に屈曲部を含んでいてもよい。また、このような屈曲部を有する傾斜部の形状は二次元的であってもよく、或いは後述する実施例に示すように三次元的であってもよい。
【0026】
また、第1装置が備える導入経路は、第1装置の稼働状態において第1部位よりも下流側に形成され且つ第1部位よりも高い部位である第2部位を有する限り、必ずしも傾斜部を有する必要は無い。具体的には、例えば導入経路が階段状の形状を有する場合等のように、導入経路において第1部位と第2部位とを連通する部分の少なくとも一部が鉛直方向に延在していてもよい。
【0027】
上記のように、第1装置においては、第1部位において導入経路の内部に還元剤が添加され、排気の流れに沿って第1部位よりも高い第2部位へと押し上げられる。従って、対象となる物質の還元に使用されずに残留した還元剤は重力の作用により下流側にある高い第2部位から上流側にある低い第1部位へと逆流し、新たな高温の排気によって加熱されると共に再び下流側へと押し流される。この繰り返しにより、対象となる物質の還元に使用される還元剤が増大し導入経路の内部に滞留する還元剤が減少するので、第1装置における還元剤の滞留を低減することができる。
【0028】
図1は、第1装置の構成の一例を示す模式図である。第1装置101は、第1浄化部10と、導入経路20と、(黒塗りの矢印によって示されている)還元剤添加部30と、を備える排気浄化装置である。第1浄化部10は、図示しない内燃機関から排出される排気に含まれる特定の物質である第1物質を還元剤によって還元することにより排気を浄化する還元触媒11を含む。第1装置における排気の流れは白抜きの矢印によって示されている。導入経路20は、排気が流れる経路である排気流路における第1浄化部10の上流側に隣接して配設され第1浄化部10へと排気を導くように構成されている。尚、第1装置101に関する以下の説明においては、理解を容易にすることを目的として、第1物質が窒素酸化物(NOx)であり、還元剤が尿素水であり、還元触媒が選択触媒還元脱硝装置(SCR)である場合について述べる。
【0029】
還元剤添加部30は、導入経路20の内部に還元剤としての尿素水を添加するように構成されている。典型的には、上述したように還元剤添加部30が備える噴射装置(図示せず)によって尿素水が導入経路20の内部に噴射され、尿素の熱分解によって還元剤であるNHが生成される。更に、導入経路20は、第1装置101の稼働状態において第1部位(破線によって囲まれた領域P1)よりも高い部位である第2部位(破線によって囲まれた領域P2)を経由して第1浄化部10へと排気を導くように構成されている。
【0030】
そして、第1部位P1から第1浄化部10へと到達するまでの間に排気の熱によって尿素が熱分解されてNHが生成され、第1浄化部10に含まれる還元触媒としてのSCRにおけるNOxからNへの還元反応における還元剤として消費される。しかしながら、前述したように、例えば気温等の環境条件及び/又は内燃機関の運転状況等によっては、熱分解されずに残留した尿素が還元触媒の上流側の排気流路の内壁等に付着する等して排気流路内に滞留する場合がある。
【0031】
従来装置においては、上記のように滞留した尿素が内燃機関の非稼働時等に冷えて析出し、排気流路の断面積が減少して排気の流れが阻害され、排気流路の圧力損失が高まる虞がある。また、排気流路の内壁等から脱落した尿素の析出物が排気によって下流へと運ばれて還元触媒に衝突して還元触媒を傷つけ、排気浄化性能を低下させる虞もある。
【0032】
しかしながら、第1装置101においては、図1に示したように、第1部位P1において導入経路20の内部に還元剤(尿素水)が添加され、排気の流れに沿って第1部位P1よりも高い第2部位P2へと押し上げられる。従って、上記のように熱分解されずに残留した尿素が導入経路20の内部に滞留しても、重力の作用によって相対的に高い第2部位P2から相対的に低い第1部位P1に向かって尿素(又は尿素水)が戻される(下流側から上流側へと逆流する)(図1における破線の矢印を参照。)。
【0033】
これにより、対象となる物質としてのNOxの還元に使用されずに導入経路20に残留した尿素は重力の作用により下流側にある高い第2部位から上流側にある低い第1部位へと逆流し、新たな高温の排気によって加熱されると共に再び下流側(第2部位P2側)へと押し流される。この繰り返しにより、尿素の熱分解が促進されNOxの還元に使用される尿素が増大し導入経路20の内部に滞留する尿素が減少するので、第1装置101における尿素の滞留を低減することができる。
【0034】
〈効果〉
上記のように、第1装置が備える導入経路は、稼働状態において導入経路の内部に還元剤が添加される部位である第1部位の下流側に第1部位よりも高い部位である第2部位を経由して第1浄化部へと排気を導くように構成されている。これにより、対象となる物質の還元に使用されずに導入経路に残留した還元剤は重力の作用により下流側にある高い第2部位から上流側にある低い第1部位へと逆流し、新たな高温の排気によって加熱されると共に再び下流側へと押し流される。
【0035】
上記の繰り返しにより、対象となる物質の還元に使用される還元剤が増大し導入経路の内部に滞留する還元剤が減少するので、第1装置における還元剤の滞留を低減することができる。その結果、対象となる物質の還元に使用されずに残留した還元剤が排気流路に滞留して、例えば排気流路の圧力損失の上昇、還元触媒の損傷及び排気流路の損傷等の問題が生ずる可能性を低減することができる。
【0036】
《第2実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第2実施形態に係る排気浄化装置(以降、「第2装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0037】
上述したように、第1装置の稼働状態にある導入経路は、例えば、第1部位よりも下流側に第2部位へと向かう上りの傾斜部を有していてもよく、この傾斜部は必ずしも直線状である必要は無く、例えば曲線状であってもよく、途中に屈曲部を含んでいてもよい。
【0038】
また、例えば、本発明装置が適用される内燃機関が搭載される装置若しくは設備(例えば、車両等)の構成及び/又は本発明装置の構成等によっては、当該装置若しくは設備及び/又は本発明装置を構成する他の部材と導入経路との干渉を避けること等を目的として、導入経路そのものを屈曲させる必要がある場合も想定される。つまり、第1装置が備える導入経路は少なくとも1つの屈曲部を含んでいてもよい。
【0039】
〈構成〉
そこで、第2装置は、上述した第1装置であって、少なくとも1つの屈曲部を導入経路が有する排気浄化装置である。第2装置が備える導入経路に形成される屈曲部は、上述した傾斜部に限らず、導入経路の何れの箇所に形成されていてもよい。
【0040】
図2は、第2装置の構成の具体例を示す模式図である。(a)に示す第2装置102aにおいては、第1部位P1よりも上流側に他の部材M1が存在するため、導入経路20を第1部位P1の上流側において屈曲させることにより当該部材M1と導入経路20との干渉を回避している。一方、(b)に示す第2装置102bにおいては、導入経路20の傾斜部を直線状とした場合に傾斜部と干渉する位置に他の部材M2が存在するため、図面に向かって下側に傾斜部を屈曲させて曲線状とすることにより当該部材M2と傾斜部との干渉を回避している。
【0041】
更に、(c)に示す第2装置102cにおいては、第1部位P1よりも下流側に他の部材M3が存在するため、(b)に示した例よりも大きく図面に向かって下側に傾斜部を屈曲させて曲線状とすることにより当該部材M3と傾斜部との干渉を回避している。その結果、第2装置102cにおいては、導入経路20における第1部位P1と第2部位P2との間に第1部位P1よりも低い部位Pbが形成されている。
【0042】
(C)に示したような構成においては、対象となる物質の還元に使用されずに残った還元剤が当該部位Pbに滞留しがちである。また、前述したように排気流路の下流側に進むほど排気の温度は低下するので、部位Pbの位置が排気流路の下流側になるほど上述したような還元剤の滞留に起因する問題が発生する可能性が高まる。従って、(C)に示したように第1部位P1よりも低い部位Pbを導入経路に形成する場合は、できるだけ上流側(即ち、第1部位の近傍)に部位Pbを形成することが望ましい。具体的には、例えば、還元剤が尿素を含む場合、できるだけ上流側(即ち、第1部位の近傍)に部位Pbを形成することにより、部位Pbに滞留した尿素と接触する排気の温度をより高めることができ、結果として尿素の熱分解によるNHの生成が促進される。
【0043】
〈効果〉
以上のように、第2装置によれば、導入経路を屈曲させることにより、導入経路と他の部材との干渉を回避しつつ、対象となる物質の還元に使用されずに排気流路に滞留する還元剤を低減することができる。その結果、本発明装置が適用される内燃機関が搭載される装置若しくは設備への本発明装置の組み込みの自由度が高まる。また、屈曲部において排気の流れに乱れが生じ、排気と還元剤との混合及び/又は高温の排気との接触による還元剤の加熱が促進される。
【0044】
《第3実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第3実施形態に係る排気浄化装置(以降、「第3装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0045】
ところで、排気と還元剤との混合及び/又は高温の排気との接触による還元剤の加熱を促進する観点からは、還元剤が排気中に添加されてから第1浄化部に到達するまでの経路を長くすることが望ましい。しかしながら、当該経路を単純に長くすると本発明装置が全体として長くなってしまい、本発明装置が適用される内燃機関が搭載される装置若しくは設備への本発明装置の組み込みが困難となる場合がある。
【0046】
〈構成〉
そこで、第3装置は、上述した第2装置であって、U字状、S字状、M字状及び螺旋状からなる群より選ばれる少なくとも1つの形状を導入経路が有する排気浄化装置である。尚、ここで言う「U字状」、「S字状」、「M字状」及び「螺旋状」なる文言は、これらの文字又は構造に必ずしも厳密に合致することを規定するものではなく、これらの文言によって表される形状に概ね合致していればよい。また、第3装置が備える導入経路がU字状、S字状、又はM字状の形状を有する場合であっても、当該導入経路の軸線は必ずしも1つの平面内に含まれる必要は無い。即ち、第3装置が備える導入経路の形状は二次元的であってもよく、或いは後述する実施例に示すように三次元的であってもよい。
【0047】
図3は、第3装置の構成の具体例を示す模式図である。(a)に示す第3装置103aはU字状の形状を有する導入経路20を備え、(b)に示す第3装置103bはS字状の形状を有する導入経路20を備え、(c)に示す第3装置103cはM字状の形状を有する導入経路20を備える。尚、図3においては、第1浄化部10に含まれる還元触媒11は省略されている。また、図示しないが、第3装置が備える導入経路は、螺旋状の形状を有していてもよい。更に、第3装置が備える導入経路は、U字状、S字状、M字状及び螺旋状からなる群より選ばれる2つ以上の形状を組み合わせたものであってもよい。
【0048】
〈効果〉
上述したように、第3装置が備える導入経路はU字状、S字状、M字状及び螺旋状からなる群より選ばれる少なくとも1つの形状を有する。従って、第3装置が適用される内燃機関が搭載される装置若しくは設備の構成に応じて適切な形状を有する導入経路を採用することにより、所望の長さを有する導入経路を備える第3装置を限られたスペースに組み込むことができる。その結果、排気と還元剤との混合及び/又は高温の排気との接触による還元剤の加熱を促進することができる。
【0049】
但し、前述したように排気流路の下流側に進むほど排気の温度は低下するので、第3装置が過度に長い導入経路を備える場合、導入経路の下流側に配設される第1浄化部に含まれる還元触媒を排気によって十分に加熱することが困難となり、排気の浄化に必要とされる触媒活性を達成することが困難となる場合がある。従って、導入経路の長さは、排気と還元剤との混合及び/又は高温の排気との接触による還元剤の加熱を促進しつつ排気熱により還元触媒の触媒活性を十分に達成することができるように適宜定める必要がある。
【0050】
《第4実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第4実施形態に係る排気浄化装置(以降、「第4装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0051】
前述したように、本発明装置が備える第1浄化部は、還元触媒以外の排気浄化ユニット(例えば、アンモニアスリップ触媒(ASC)等)を更に含んでいてもよい。更に、本発明装置は、第1浄化部以外の浄化部を更に備えていてもよい。
【0052】
〈構成〉
そこで、第4装置は、上述した第1装置乃至第3装置を始めとする種々の実施形態に係る本発明装置であって、排気流路における導入経路の上流側に配設され排気を浄化する第2浄化部を更に備える排気浄化装置である。第2浄化部は、第4装置が適用される内燃機関から排出される排気に含まれる物質の種類に応じて当該技術分野において使用される多種多様な排気浄化ユニットの中から選ばれる排気浄化ユニットを含むことができる。このような排気浄化ユニットの具体例としては、例えば、ディーゼル酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)及びDPF等を挙げることができる。
【0053】
尚、各浄化ユニットの排気浄化機能に適合している限り、第4装置が備える第2浄化部に含まれる排気浄化ユニットは如何なる順序に配置されてもよい。例えば、ディーゼルエンジンに第4装置を適用する場合、後述する実施例に示すように、導入経路の上流側に配設される第2浄化部にはDOC及びDPFを設け、導入経路の下流側に配設される第1浄化部にはSCR及びASCを設けてもよい。更に、例えば第2浄化部における圧力損失の低減等を目的として、複数の排気浄化ユニットを並列に配設してもよい。
【0054】
図4は、第4装置の構成の具体例を示す模式図である。図4の(a)乃至(c)に示す第4装置104a乃至第4装置104cは、図3の(a)乃至(c)に示した第3装置103a乃至第3装置103cにそれぞれ対応し、導入経路20の上流側に第2浄化部40を更に備える点において第3装置103a乃至第3装置103cと異なっている。尚、例えば、図1及び図2に示したような導入経路を備える本発明装置及び螺旋状の形状を有する導入経路を備える本発明装置等、様々な構成を有する本発明装置についても、導入経路の上流側に第2浄化部を設けることができることは言うまでもない。
【0055】
また、前述したように排気流路の下流側に進むほど排気の温度は低下するので、排気と還元剤との混合及び/又は高温の排気との接触による還元剤の加熱を促進する観点から、第1部位は第2浄化部のできるだけ直近の下流側に設けることが望ましい。更に、本発明装置は稼働状態において第1部位よりも第2部位の方が高くなるように設置され、第2部位よりも低い部位である第1部位の上流側に第2浄化部が設けられる。従って、典型的には第2浄化部は第1浄化部よりも低い位置に配設される。
【0056】
〈効果〉
上記のように、第4装置によれば、第4装置が適用される内燃機関から排出される排気に含まれる物質の種類に応じて、当該技術分野において使用される多種多様な排気浄化ユニットの中から選ばれる排気浄化ユニットを第2浄化部に含むことにより、排気浄化装置としての機能をより高めることができる。
【0057】
《第5実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第5実施形態に係る排気浄化装置(以降、「第5装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0058】
ところで、当業者に周知であるように触媒の活性は触媒の温度に大きく依存する。内燃機関から排出される排気の浄化に用いられる還元触媒を始めとする種々の排気浄化触媒においても、排気浄化性能を十分に発揮させるためには、それぞれの触媒の温度を触媒活性温度以上に維持することが重要である。また、例えば上述した尿素の熱分解によるNHの生成等、対象となる物質の還元に還元剤を有効に使用する観点からは、導入経路の温度もまた所定の温度以上に維持することが望ましい。
【0059】
本発明装置が備える第1浄化部及び導入経路(並びに本発明装置が第2浄化部を備える場合は第2浄化部)は内部に流れる排気によって加熱されるので、当該浄化部に含まれる排気浄化ユニットを構成する触媒及び導入経路もまた排気によって加熱される。しかしながら、本発明装置から周囲環境への放熱の程度によっては、このような排気による加熱のみによっては本発明装置を構成する触媒及び導入経路の温度を十分に高い温度に維持することが困難な場合がある。
【0060】
〈構成〉
そこで、第5装置は、上述した第1装置乃至第4装置を始めとする種々の実施形態に係る本発明装置であって、少なくとも導入経路及び第1浄化部を内部に支持・収容すると共に排気の入口及び出口を有するケーシングを更に備える。導入経路及び第1浄化部をケーシングの内部に支持するための構成は特に限定されず、例えばステー等の支持部材を介して導入経路及び第1浄化部をケーシングの内壁に固定してもよい。或いは、後述する実施例に示すようにケーシングの内部が仕切板によって複数の領域に区切られている場合は、導入経路及び第1浄化部を仕切板によってケーシングの内壁に固定してもよい。また、第5装置が第2浄化部を備える場合は、ケーシングの内部に第2浄化部が支持・収容されていてもよく、或いはケーシングの外部に第2浄化部が配置されていてもよい。
【0061】
更に、第5装置は、内燃機関から排出される排気がケーシングの入口を介して導入経路へと導かれ、第1浄化部から排出される排気がケーシングの出口を介してケーシングから排出されるように構成されている。第5装置が第2浄化部を備え且つケーシングの内部に第2浄化部が支持・収容されている場合、内燃機関から排出される排気は、ケーシングの入口を介して第2浄化部へと導かれ、第2浄化部から排出される排気が導入経路を経由して第1浄化部へと導かれ、第1浄化部から排出される排気がケーシングの出口を介してケーシングから排出されるように構成される。
【0062】
図5は、第5装置の構成の一例を示す模式図である。図5に示す第5装置105は、図4の(b)に示した第4装置104bに対応し、第1浄化部10、導入経路20及び第2浄化部40を内部に支持・収容すると共に排気の入口51及び出口52を有するケーシング50を更に備える点において第4装置104bと異なっている。第5装置105は、図示しない内燃機関から排出される排気が入口51を介して第2浄化部40へと導かれ、第2浄化部40から排出される排気が導入経路20を経由して第1浄化部10へと導かれ、第1浄化部10から排出される排気が出口52を介してケーシング50から排出されるように構成されている。
【0063】
〈効果〉
上記のように、第5装置においては、少なくとも導入経路及び第1浄化部がケーシングの内部に支持・収容されている。従って、このようなケーシングを備えない本発明装置に比べて、少なくとも導入経路及び第1浄化部については周囲環境への放熱が低減される。その結果、第1浄化部に含まれる還元触媒等の排気浄化ユニット及び導入経路の温度を十分に高い温度に維持することがより容易となり、排気浄化ユニットの排気浄化性能を高め、対象となる物質の還元に還元剤をより有効に使用することができる。尚、第5装置が第2浄化部を備え且つケーシングの内部に第2浄化部が支持・収容されている場合、第2浄化部についても同様の効果が達成される。
【0064】
また、図5に示した第5装置105はあくまでも一例であり、上述した第1装置乃至第4装置を始めとする種々の実施形態に係る本発明装置の何れかに上述したケーシングを更に設けることによって第5装置を構成することができる。
【0065】
〈変形例〉
ところで、第5装置が備える第1浄化部(又は第5装置が第2浄化部を備える場合は第2浄化部)はDPFを含み得るが、DPFのタイプによっては、排気浄化装置からDPFを取り外して内部に溜まった煤を取り除く必要がある場合がある。従って、このようなタイプのDPFを第5装置が備える場合は、第5装置が適用される内燃機関が搭載される装置又は設備に第5装置が稼働可能に組み込まれている状態のまま、DPFを脱着することが可能であることが望ましい。
【0066】
このような変形例に係る第5装置は、ケーシングの内部に支持・収容されたディーゼルパティキュレートフィルタを更に備え、且つ、稼働状態にある排気浄化装置からディーゼルパティキュレートフィルタを脱着することが可能であるように構成されている。具体的には、ケーシングの内部に支持・収容されたDPFを取り出したり、ケーシングの内部にDPFを組み込んだりすることができるように、ケーシングの外壁の一部に脱着可能に固定された蓋又はカバーを設けてもよい。
【0067】
《第6実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第6実施形態に係る排気浄化装置(以降、「第6装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0068】
上述した第5装置においては、少なくとも導入経路及び第1浄化部がケーシングの内部に支持・収容されているので、少なくとも導入経路及び第1浄化部については周囲環境への放熱が低減され、排気からの受熱を有効に活用することができる。しかしながら、排気からの受熱をより有効に活用する観点からは、ケーシングを介する周囲環境への放熱を低減することが望ましい。
【0069】
〈構成〉
そこで、第6装置は、上述した第5装置であって、少なくとも導入経路及び第1浄化部とケーシングとの間の空間の少なくとも一部に断熱材が充填されている排気浄化装置である。断熱材は、少なくとも導入経路及び第1浄化部とケーシングとの間における熱伝導を妨げ且つ第6装置の使用環境及び使用条件(例えば、温度及び振動等)に耐え得るものである限り、特に限定されない。断熱材の具体例としては例えばグラスウール等をあげることができる。また、少なくとも導入経路及び第1浄化部とケーシングとの間の空間の全ての領域に断熱材が充填されていてもよい。或いは、例えば導入経路及び第1浄化部をケーシングの内部に支持するための部材との干渉回避等を目的として、当該空間の一部に断熱材が充填されていない領域が存在してもよい。
【0070】
尚、第6装置が第2浄化部を備え且つケーシングの内部に第2浄化部が支持・収容されている場合は、少なくとも第2浄化部、導入経路及び第1浄化部とケーシングとの間の空間の少なくとも一部に断熱材が充填されていることが望ましい。当然のことながら、ケーシングを介する周囲環境への放熱を低減する観点からは、ケーシングの内部に収容される全ての構成部材とケーシングとの間の空間の全ての領域に断熱材が充填されていることが望ましい。
【0071】
図6は、第6装置の構成の一例を示す模式図である。図6に示す第6装置106は、図5に示した第5装置105に対応し、第1浄化部10、導入経路20及び第2浄化部40とケーシング50との間の空間に断熱材53が充填されている点において第5装置105と異なっている。
【0072】
〈効果〉
上記のように、第6装置においては、少なくとも導入経路及び第1浄化部とケーシングとの間の空間の少なくとも一部に断熱材が充填されている。従って、当該空間に断熱材が充填されていない第5装置に比べて、ケーシングによる保温効果がより高く、ケーシングを介する周囲環境への放熱が更に低減される。その結果、第1浄化部に含まれる還元触媒等の排気浄化ユニット及び導入経路の温度を十分に高い温度に維持することが更に容易となり、より確実に、排気浄化ユニットの排気浄化性能を高め、対象となる物質の還元に還元剤をより有効に使用することができる。尚、第6装置が第2浄化部を備え且つケーシングの内部に第2浄化部が支持・収容されている場合、第2浄化部についても同様の効果が達成される。
【0073】
《第7実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第7実施形態に係る排気浄化装置(以降、「第7装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0074】
上述した第5装置及び第6装置においては、それぞれケーシング及びケーシングと断熱材との組み合わせにより、周囲環境への放熱が低減され、これらの排気浄化装置が備える排気浄化ユニット及び導入経路が保温される。しかしながら、排気浄化ユニット及び導入経路の温度をより高い温度に維持する観点からは、これらの排気浄化装置(が備える第1浄化部)から排出される排気の熱(排熱)を利用することが望ましい。
【0075】
〈構成〉
そこで、第7装置は、上述した第5装置であって、第1浄化部から排出される排気が導入経路及び第1浄化部とケーシングとの間の空間の少なくとも一部に流れた後にケーシングの出口を介してケーシングから排出されるように構成された排気浄化装置である。第7装置が第2浄化部を備え且つケーシングの内部に第2浄化部が支持・収容されている場合は、第2浄化部、導入経路及び第1浄化部とケーシングとの間の空間の少なくとも一部に第1浄化部から排出される排気が流れることが望ましい。
【0076】
図7は、第7装置の構成の一例を示す模式図である。図7に示す第7装置107は、図5に示した第5装置105に対応し、第1浄化部から排出される排気が、第1浄化部10、導入経路20及び第2浄化部40とケーシング50との間の空間に排出され、当該排気が当該空間に流れた後に、出口52から排出されるように構成されている点において第5装置105と異なっている。
【0077】
尚、第1浄化部10、導入経路20及び第2浄化部40とケーシング50との間の空間における圧力損失が過度に高まらない限りにおいて、ラビリンス構造を当該空間に設けることにより、第1浄化部から排出される排気が特定の領域に偏ること無く当該空間の全体に亘って均等に流れるようにしてもよい。或いは、後述する実施例に示すようにケーシングの内部が仕切板によって複数の領域に区切られている場合は、仕切板に貫通孔を形成して、これら複数の領域に排気が流れることができるようにしてもよい。
【0078】
〈効果〉
上記のように、第7装置は、第1浄化部から排出される排気が導入経路及び第1浄化部とケーシングとの間の空間の少なくとも一部に流れた後にケーシングの出口を介してケーシングから排出されるように構成されている。第1浄化部から排出される排気は、第7装置に導入されて少なくとも導入経路及び第1浄化部を通過した後に第1浄化部から排出される。従って、第1浄化部から排出される排気の温度は、内燃機関から排出されて第7装置に流入する排気の温度よりも低い。しかしながら、第1浄化部から排出される排気の温度は、第7装置の周囲環境(例えば、大気等)の温度よりも高い。従って、第1浄化部から排出される排気を導入経路及び第1浄化部とケーシングとの間の空間に流すことにより、当該空間に当該排気が流されない第5装置に比べて、ケーシングによる保温効果をより高めて、ケーシングを介する周囲環境への放熱を更に低減することができる。
【0079】
《第8実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第8実施形態に係る排気浄化装置(以降、「第8装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0080】
上述した第5装置及び第6装置においては、それぞれケーシング及びケーシングと断熱材との組み合わせにより、周囲環境への放熱が低減され、これらの排気浄化装置が備える排気浄化ユニット及び導入経路が保温される。また、上述した第7装置においては、ケーシングに収容される構成部材とケーシングとの間の空間に第1浄化部から排出される排気を流すことにより、周囲環境への放熱が更に低減され、当該排気浄化装置が備える排気浄化ユニット及び導入経路がより確実に保温される。
【0081】
しかしながら、本発明装置に流れる排気の温度を積極的に高めて、本発明装置が備える排気浄化ユニット及び導入経路の温度をより高い温度に維持してもよい。
【0082】
〈構成〉
そこで、第8装置は、上述した第1装置乃至第7装置を始めとする種々の実施形態に係る本発明装置であって、燃料の燃焼によって燃焼ガスを発生させる燃焼室及び燃焼室と連通し且つ排気流路における第1浄化部よりも上流側に燃焼ガスを供給する燃焼ガス供給部を有する燃焼器を更に備える排気浄化装置である。燃焼ガス供給部の配設箇所は、第1浄化部よりも上流側である限り特に限定されず、第1部位よりも上流側の導入経路であってもよく、或いは第1部位よりも下流側の導入経路であってもよい。また、第8装置が第2浄化部を備える場合は第2浄化部よりも上流側の排気流路に燃焼ガス供給部を配設してもよい。更に、第8装置がケーシングを備える場合はケーシングよりも上流側の排気流路に燃焼ガス供給部を配設してもよい。尚、導入経路における第1部位の下流側の近傍に燃焼ガス供給部を配設して、高温の燃焼ガスとの接触による還元剤の加熱を促進して例えば尿素の熱分解によるNHの生成を促進してもよい。
【0083】
燃焼器の構成は、燃料の燃焼によって生成される燃焼ガスを排気流路における第1浄化部よりも上流側に供給することが可能である限り、特に限定されない。例えば、燃焼器は、燃料供給装置及び給気装置によって燃料及び空気を燃焼室に供給し、着火装置(例えば、グロープラグ等)によって燃料を着火させて、燃焼室において燃料を燃焼させるように構成される。これにより、燃料の燃焼によって生成された高温の燃焼ガスは、例えば給気装置による空気の供給圧力及び燃焼に伴う体積膨張に起因する圧力等により、燃焼室から燃焼ガス供給部へと導かれ、排気流路における第1浄化部よりも上流側に供給される。
【0084】
尚、燃焼器の構成要素を形成する材料及びこれらの構成要素の構造等は、第8装置の使用環境及び使用条件において想定される温度、圧力及び振動等を考慮して適宜選択及び設計することができる。但し、燃焼器の詳細については、当業者に周知であるので、これ以上の説明は省略する(例えば、特許文献2を参照。)。
【0085】
図8は、第8装置の構成の一例を示す模式図である。図8に示す第8装置108は、図4の(b)に示した第4装置104bに対応し、燃料の燃焼によって燃焼ガスを発生させる燃焼室61及び燃焼室61と連通し且つ排気流路における第1浄化部10よりも上流側に燃焼ガスを供給する燃焼ガス供給部62を有する燃焼器60を更に備える点において第4装置104bと異なっている。尚、第8装置108においては、導入経路20における第1部位P1の下流側の近傍に燃焼ガス供給部62が配設されている。
【0086】
〈効果〉
上記のように、第8装置においては、排気流路における第1浄化部よりも上流側に高温の燃焼ガスが供給される。従って、第8装置に流れる排気の温度を積極的に高めて、第8装置が備える第1浄化部に含まれる還元触媒等の排気浄化ユニット及び導入経路の温度をより高い温度へと容易に高めることができる。その結果、燃焼器を備えない本発明装置に比べて、排気浄化ユニットの排気浄化性能を更に高め、対象となる物質の還元に還元剤を更に有効に使用することができる。
【0087】
尚、上述したように、燃焼ガス供給部は、導入経路の途中(第1部位よりも上流側でも下流側でもよい)、ケーシングよりも上流側、及び第2浄化部よりも上流側の何れに配設されていてもよい。従って、第8装置が第2浄化部を備え且つ排気流路における第2浄化部よりも上流側に燃焼ガス供給部によって高温の燃焼ガスが供給される場合は、第2浄化部に含まれる排気浄化ユニットについても上記と同様に排気浄化性能を更に高めることができる。
【0088】
また、図8に示した第8装置108はあくまでも一例であり、上述した第1装置乃至第7装置を始めとする種々の実施形態に係る本発明装置の何れかに上述した燃焼器を更に設けることによって第8装置を構成することができる。
【0089】
《第9実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第9実施形態に係る排気浄化装置(以降、「第9装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0090】
上述した第8装置においては、排気流路における第1浄化部よりも上流側に高温の燃焼ガスを供給する燃焼器により排気流路に流れる排気の温度が積極的に高められ、還元触媒等の排気浄化ユニット及び導入経路の温度がより高い温度に維持される。燃焼室における燃料の燃焼に伴って発生する熱を効率的に排気に伝えることができれば、このような燃焼器による排気の加熱効率を更に高めることができる。
【0091】
〈構成〉
そこで、第9装置は、上述した第8装置であって、排気流路における第1浄化部よりも上流側において排気に接触し且つ燃焼ガス供給部と熱伝導可能に構成された放熱部材を更に備える排気浄化装置である。放熱部材の配設箇所は、第1浄化部よりも上流側である限り特に限定されず、第1部位よりも上流側の導入経路であってもよく、或いは第1部位よりも下流側の導入経路であってもよい。また、第9装置が第2浄化部を備える場合は第2浄化部よりも上流側の排気流路に放熱部材を配設してもよい。更に、第9装置がケーシングを備える場合はケーシングよりも上流側の排気流路に放熱部材を配設してもよい。尚、燃焼室における燃料の燃焼に伴って発生する熱を効率的に排気に伝える観点からは、燃焼ガス供給部に近接するように放熱部材を配設することが望ましい。
【0092】
放熱部材の構成は、燃焼室における燃料の燃焼に伴って発生する熱を排気に伝えることが可能である限り、特に限定されない。例えば、放熱部材は、排気流路内に露出又は突出した燃焼ガス供給部の一部(例えば、先端等)であってもよく、或いは燃焼ガス供給部と熱伝導可能に配設された放熱板等の別部材であってもよい。
【0093】
尚、放熱部材を形成する材料及び放熱部材の構造等は、第9装置の使用環境及び使用条件において想定される温度、荷重及び振動等を考慮して適宜選択及び設計することができる。燃焼室における燃料の燃焼に伴って発生する熱を効率的に排気に伝える観点からは、高い熱伝導率を有する材料(例えば金属等)によって放熱部材が形成されていることが望ましい。
【0094】
図9は、第9装置が備える放熱部材の構成の具体例を示す模式図である。図9の(a)に示す例においては、導入経路20の内部に突出した燃焼ガス供給部62の先端に屈曲した板状の放熱部材63が配設されている。図示しない燃焼室における燃料の燃焼に伴って発生する熱が、燃焼ガス供給部62を介して放熱部材63へと伝わり、放熱部材63を介して導入経路20の内部に流れる排気へと伝わる。
【0095】
〈効果〉
上記のように、第9装置は、排気流路における第1浄化部よりも上流側において排気に接触し且つ燃焼ガス供給部と熱伝導可能に構成された放熱部材を更に備える。これにより、燃焼器が有する燃焼室における燃料の燃焼に伴って発生する熱を排気に効率的に伝えることができる。従って、第9装置に流れる排気の温度をより効率的に高めて、第9装置が備える第1浄化部に含まれる還元触媒等の排気浄化ユニット及び導入経路の温度をより高い温度に維持することができる。その結果、排気浄化ユニットの排気浄化性能を更に高め、対象となる物質の還元に還元剤を更に有効に使用することができる。
【0096】
〈変形例〉
尚、排気流路の内部に流れる排気に過大な圧力損失を生じさせることは内燃機関の出力性能を維持する観点から望ましくない。従って、放熱部材には1つ以上の貫通孔が形成されていることが望ましい。これにより、放熱部材による圧力損失の増大を軽減することができる。このような放熱部材の具体例としては、例えば、パンチング板及びメッシュ板等を挙げることができる。尚、図9の(b)に示す例に放熱部材63はパンチング板であり、複数の貫通孔64が形成されている。
【0097】
また、排気流路の内部に流れる排気に過大な圧力損失を生じさせない限りにおいて、放熱部材に1つ以上の貫通孔、突起及び/又はフィンを形成してもよい。即ち、放熱部材をミキサーとして機能させてもよい。これにより、放熱部材と排気との接触面積の増大及び(排気の流れに乱流若しくは旋回流を生じさせることによる)放熱部材の下流側における排気と還元剤との混合の促進等の効果が達成される。
【0098】
更に、導入経路において第1部位よりも下流側に放熱部材を配設することにより、放熱部材に還元剤を衝突させて還元剤を排気中に分散させたり、放熱部材の表面に還元剤を広がらせて導入経路に流れる排気及び放熱部材との接触により還元剤の加熱を促進したりしてもよい。これによれば、例えば尿素の熱分解によるNHの生成が促進される。即ち、放熱部材をリアクターとして機能させてもよい。
【0099】
《第10実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第10実施形態に係る排気浄化装置(以降、「第10装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0100】
ところで、当該技術分野においては、例えば排気流路における排気と還元剤との混合の促進等を目的として、所謂「ミキシング部材」を排気流路内に設けて、排気の流れに乱流又は旋回流(スワール)を生じさせることが知られている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0101】
〈構成〉
そこで、第10装置は、上述した第1装置乃至第9装置を始めとする種々の実施形態に係る本発明装置であって、排気流路における第1浄化部よりも上流側において排気の流れに乱流又は旋回流を生じさせるように構成されたミキシング部材を更に備える排気浄化装置である。ミキシング部材の配設箇所は、第1浄化部よりも上流側である限り特に限定されず、第1部位よりも上流側の導入経路であってもよく、或いは第1部位よりも下流側の導入経路であってもよい。また、第10装置が第2浄化部を備える場合は第2浄化部よりも上流側の排気流路にミキシング部材を配設してもよい。更に、第10装置がケーシングを備える場合はケーシングよりも上流側の排気流路にミキシング部材を配設してもよい。
【0102】
尚、ミキシング部材を形成する材料及びミキシング部材の構造等は、第10装置の使用環境及び使用条件において想定される温度、荷重及び振動等を考慮して適宜選択及び設計することができる。ミキシング部材の具体例としては、例えば、排気流路を画定する部材から内側に突出した邪魔板、突起及びフィン、並びに排気流路に介装され且つ1つ以上の貫通孔、突起及び/又はフィンが形成された板状部材等を挙げることができる。尚、ミキシング部材の詳細については、当業者に周知であるので、これ以上の説明は省略する(例えば、特許文献3を参照。)。
【0103】
図10は、第10装置が備えるミキシング部材の構成の具体例を示す模式図である。この例に示すミキシング部材70においては、基板としての円板状のプレート71に形成された切り込み部が折り曲げられることによって複数のフィン72及び貫通孔73がされている。図10の(a)はミキシング部材70の全容を示す斜視図であり、(b)はミキシング部材70をフィン72の突出側から観察した場合における正面図であり、(c)はミキシング部材70の側面図である。
【0104】
図10に示したミキシング部材70はプレート71によって排気の流れが妨げられるように排気流路内に配設され、それぞれの貫通孔73を通過した排気が互い違いの向きに折り曲げられたフィン72によって偏向されて乱流を生ずる。これにより、例えばミキシング部材70の下流側における排気と還元剤との混合の促進等の効果を達成することができる。尚、それぞれの貫通孔73を通過した排気が排気流路の軸を中心とする同じ向きの旋回流を生ずるようにフィン72を構成することにより、ミキシング部材70を所謂「スワラー」として構成することもできる。
【0105】
〈効果〉
上記のように、第10装置は、排気流路における第1浄化部よりも上流側において排気の流れに乱流又は旋回流を生じさせるように構成されたミキシング部材を更に備えるので、例えばミキシング部材の下流側における排気と還元剤との混合の促進等の効果を達成することができる。
【0106】
〈変形例〉
尚、導入経路において第1部位よりも下流側にミキシング部材を配設することにより、ミキシング部材に還元剤を衝突させて還元剤を排気中に分散させたり、ミキシング部材の表面に還元剤を広がらせて導入経路に流れる排気及びミキシング部材との接触により還元剤の加熱を促進したりしてもよい。これによれば、例えば尿素の熱分解によるNHの生成が促進される。即ち、ミキシング部材をリアクターとして機能させてもよい。この場合、排気流路に流れる排気からの熱を還元剤に効率的に伝える観点からは、高い熱伝導率を有する材料(例えば金属等)によってミキシング部材が形成されていることが望ましい。
【0107】
また、第10装置が燃焼器を備える場合は、ミキシング部材を燃焼ガス供給部と熱伝導可能に構成して、上述した放熱部材としてミキシング部材を利用してもよい。
【実施例1】
【0108】
図11は本発明の第1実施例に係る排気浄化装置(以降、「第1実施例装置」と称呼される場合がある。)の構成の一例を示す模式図である。(a)は稼働状態(具体的には、車両に搭載された状態)における第1実施例装置の模式的な上面図(平面図)である。(b)は同じく稼働状態における第1実施例装置を側面方向(α)から見た図であり、紙面上方(β)が稼働状態(車両搭載状態)における上方(天方向)となる。但し、(a)においては導入経路の配置及び排気の流れを見易くすることを目的としてケーシング50の中央付近にずらして第2浄化部40が描かれているので、(a)と(b)との間で第2浄化部40の配置が異なっている。以下、図11を参照しながら第1実施例装置201について説明する。
【0109】
ステンレス鋼によって形成された箱型のケーシング50の側壁には入口51及び出口52が設けられている。具体的には、入口51及び出口52のそれぞれにケーシング50の内外を連通する管状部材が全周溶接によって気密に固定されている。以降、入口51及び出口52に固定されている管状部材は、それぞれ入口管51及び出口管52と称呼される場合がある。また、還元剤添加部30としての尿素水噴射装置(以降、「噴射装置30」と略称される場合がある。)がケーシング50を画定する壁に挿通され、図示しない螺合手段によって気密に固定されている。ケーシング50の内部は、第1仕切板56及び第2仕切板57によって3つの領域に気密に区画され、図11の左方から順に、第1室50a、第2室50b、及び第3室50cがそれぞれ形成されている。
【0110】
入口管51はコーン部(「テーパ部」とも称呼される場合がある。)54を介して円筒状の第2浄化部40の一端に接続されている。第2浄化部40の他端は、ケーシング50に当接した状態にて固定され閉塞されると共に、第1室50aの内部に位置する部分には、第2浄化部40の内部から排気が排出されるように、複数個の排出穴40aが周壁上に穿設されている。第2浄化部40の内部にはディーゼル酸化触媒(DOC)41及びディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)42が上流側及び下流側にそれぞれ保持されている。
【0111】
上記のような構成により、入口管51に流入した排気は、実線の矢印によって示すように、コーン部54を通過した後、DOC41による酸化及びDPF42による濾過を経て排出穴40aから流出し、第1室50aの内部へと拡散する。そして、第1室50aの内部へと拡散した排気は、連通管21の入口部21aの周壁に穿設された連通穴21bを経て、連通管21の内部へと流入する。即ち、第1実施例装置201においては、第1室50aは、後述する第2反転室23が占める領域を除き、排気の流れを反転させつつ第2浄化部40から連通管21へと排気を導く第1反転室22として機能している。連通管21は、入口部21a及び連通穴21bを有する第1直管部21c、第1屈曲部21d、中間直管部21e、第2屈曲部21f、出口部21gを有する第2直管部21hの順に一体的に構成されている。
【0112】
図11の(b)から明らかであるように、第1実施例装置201においては、略U字状の連通管21が、入口部21aよりも出口部21gの方が高くなるように傾斜した状態に配置されている。尚、第1実施例装置201においては上記のように別部材として形成された各部を連結することにより一本の連通管21が構成されているが、例えば、一本のパイプを略U字状に屈曲させることにより連通管21が形成されていてもよい。
【0113】
連通管21の入口部21a側の端部は、ケーシング50の壁の一部である取付壁部55の内面に当接した状態にて固定され、閉塞されている。そして、取付壁部55に挿通するように固定された噴射装置30の先端が入口部21aの内部に同軸状に位置されている。これにより、噴射装置30によって噴射(添加)された尿素水等の還元剤は、連通管21の内部へと放出され、連通穴21bから流入した排気と混ざり合って気化し拡散される。そして、気化した還元剤は連通管21の内部を下流へと流れる過程において排気の熱を受け、熱分解反応によってアンモニア(NH)へと変換(転化)される。この際、略U字状の連通管21の内部における長い流路により、上記熱分解のために十分に長い反応時間を確保することができる。このようにして生成されたNHは、排気と共に出口部21gから第2反転室23の内部へと排出される。このような尿素からNHへの転化時における本発明の作用については、図12に示す模式図を参照しながら後述する。
【0114】
略三角断面を有する第2反転室23は、薄い奥行(厚み)を有する容積体であって、第1室50a内に配設されている。第2反転室23の側面には、連通管21の下流側の端部である出口部21g及び第1浄化部10の上流側の端部が、それぞれ嵌装され固定されている。これにより、出口部21gから吐出された排気が第2反転室23の内部において反転及び拡散し、第1浄化部10へと均等に流入する。このように第2反転室23はチャンバとしても機能する。ここまでの排気の流れは、図11において太い実線の矢印によって示されている。
【0115】
以上の説明から明らかであるように、連通管21、第1反転室22及び第2反転室23は、本発明装置が備える導入経路20を構成している。また、噴射装置30によって還元剤としての尿素水が噴射される連通管21の入口部21aは本発明装置における第1部位P1に該当し、連通管21の入口部21aよりも高い位置に配設されている出口部21gは本発明装置における第2部位P2に該当する。
【0116】
NHと共に第1浄化部10へと流入した排気に含まれる窒素酸化物(NOx)は、選択触媒還元脱硝装置(SCR)11によって窒素(N)へと還元され、その後、余剰のNHはアンモニアスリップ触媒(ASC)12によってN及び水(HO)等へと酸化される。このようにして種々の浄化処理を経た排気は、第1浄化部10から第2室50bの内部へと吐出される。尚、第2仕切板57には図示しない大きな貫通孔(大開口)が穿設されており、第2室50bと第3室50cとの間を排気が自由に行き来できるように構成されている。
【0117】
第1浄化部10から吐出された処理済みの排気の大部分は、第1浄化部10の出口に対向する第2仕切板57の大開口を通過して第3室50cの内部へと流入して拡散する。これに伴い、連通管21(具体的には、第1屈曲部21d、中間直管部21e及び第2屈曲部21f)並びにコーン部54の外面が高温の排気によって加熱される。このような排気による加熱の効果についても、図12に示す模式図を参照しながら後述する。尚、第1浄化部10から吐出された排気の一部は、第2仕切板57の大開口を通過せずに第2室50bの内部へと拡散される。
【0118】
そして、第3室50cの内部を循環した排気は、第2仕切板57の大開口を再び通過して第2室50bへと戻る。そして、第2室50bの内部を循環する排気は、やがて出口管52を通過してケーシング50の外部へと排出される。この際、第2室50bの内部を循環する排気により、第1直管部21c、第2直管部21h及び第2浄化部40についても、それぞれ外面から加熱される。
【0119】
以上のような構成を有する第1実施例装置201における本発明の作用につき、図12を用いて説明する。図12は、第1実施例装置201の主要部である噴射装置30、連通管21及び選択触媒還元脱硝装置(SCR)11の3次元的なレイアウトを模式的に表す斜視図であり、紙面における上方が稼働状態における上方(天方向)となる。
【0120】
上述したように、噴射装置30から噴射(添加)された還元剤の噴霧31は連通管21の内部へと放出され、連通穴21bから流入した排気と混ざり合って気化・拡散し、連通管21の内部を下流へと流れる過程において、熱分解によりNHへと転化される。しかしながら、例えば雰囲気温度、排気流量及び還元剤添加量等の諸条件によっては、気化・拡散されずに連通管21の内壁に付着する還元剤(以降、「残留還元剤」と称呼される場合がある。)が僅かながら発生してしまう場合がある。第1実施例装置においては、第1屈曲部21d乃至第2屈曲部21fの内壁面に残留還元剤が付着し易い。
【0121】
しかしながら、第1実施例装置201においては、第1屈曲部21d側よりも第2屈曲部21f側が高くなるように第1屈曲部21d乃至第2屈曲部21fが傾斜している。従って、第1屈曲部21d乃至第2屈曲部21fの内壁面に付着した還元剤は重力の作用により下方(第1直管部21c側)に向かって移動する。即ち、残留還元剤は下流側から上流側へと逆流する。一方、図示しない内燃機関から排出される排気は常に上流側から下流側へと流れるので、上記のように逆流してきた残留還元剤は排気の圧力によって上方(第2直管部21h側)へと押し上げられる(押し戻される)。
【0122】
上記のような残留還元剤の逆流と順流との繰り返しにより、結果として残留還元剤と排気との接触時間が増大するので、残留還元剤の気化及びNHへの転化が促進される。その結果、第1実施例装置201においては、連通管21の内部における残留還元剤の析出が低減され、還元剤のNHへの転化が促進され、選択触媒還元脱硝装置(SCR)11におけるNOxの還元処理が促進される。
【0123】
更に、第1実施例装置201においては、上述したように第1浄化部10から吐出された高温の排気が、ケーシング50の第2室50b及び第3室50cを流れた後に出口管52から排出される。これに伴い、連通管21(具体的には、第1直管部21c、第1屈曲部21d、中間直管部21e、第2屈曲部21f及び第2直管部21h)、第2浄化部40並びにコーン部54の外面が高温の排気によって加熱される。このような排気による加熱によっても、残留還元剤の気化、拡散又は熱分解が促進される。
【実施例2】
【0124】
図13乃至図19は本発明の第2実施例に係る排気浄化装置(以降、「第2実施例装置」と称呼される場合がある。)の構成の一例を示す模式図である。図13は、ケーシング50の入口51側の外壁である第1端板50pを取り外した第2実施例装置202を入口51側から観察した場合における第2実施例装置202の模式的な正面図である。図14は、第2実施例装置202をケーシング50の入口51側から観察した場合における第2実施例装置202の外観を示す模式的な斜視図である。図15は、図14に示した第2実施例装置202からケーシング50の第1端板50pのみが取り外された第2実施例装置202の模式的な斜視図である。但し、図15においては、ケーシング50の内部空間を区切る第1仕切板56は省略され且つケーシング50の内部に収容されている部分が破線によって表されている。図16は、図15に示した第2実施例装置202からケーシング50の略角筒形の側壁50r及び入口51とは反対側の外壁である第2端板50qが更に取り外された第2実施例装置202の模式的な斜視図である。但し、図16においては、ケーシング50の内部空間を区切る第1仕切板56は省略されず且つ第2仕切板57の陰に隠れている部分が破線によって表されている。
【0125】
図17は、第2実施例装置202をケーシングの入口51の反対側から観察した場合における第2実施例装置202の外観を示す模式的な斜視図である。図18は、図17に示した第2実施例装置202からケーシング50の入口51の反対側の外壁である第2端板50qのみが取り外された第2実施例装置202の模式的な斜視図である。但し、図18においては、ケーシング50の内部空間を区切る第1仕切板56及び第2仕切板57は省略され且つケーシング50の内部に収容されている部分が破線によって表されている。図19は、図18に示した第2実施例装置202からケーシング50の略角筒形の側壁50r及び入口51側の外壁である第1端板50pが更に取り外された第2実施例装置202の模式的な斜視図である。但し、図19においては、ケーシング50の内部空間を区切る第1仕切板56及び第2仕切板57は省略されず且つ第1仕切板56及び第2仕切板57の陰に隠れている部分が破線によって表されている。
【0126】
図14及び図17等に示すように、ケーシング50は、第1端板50p及び第2端板50qによって略角筒形の側壁50rの両端の開口が閉塞されてなる構造を有する。第1端板50p及び第2端板50qによって側壁50rの両端の開口を閉塞・固定するための手法は、第2実施例装置202の使用環境及び使用条件(例えば、温度、圧力及び振動等)に耐え得る限り特に限定されない。このような手法の具体例としては、例えば溶接、カシメ、並びに図示しないボルト及びナット等による螺合等を挙げることができる。
【0127】
尚、図17及び図18に示す第2実施例装置202のケーシング50の側壁50rに形成されている四角形の断面を有する孔は、例えば差圧センサ及び温度センサ等のセンサを取り付けるためのセンサ取付部50sである。
【0128】
第2実施例装置202もまた、上述した第1実施例装置201と同様に、上流側から順に、第2浄化部40、導入経路20、第1浄化部10を備え、これらがケーシング50の内部に支持・収容されている。また、ケーシング50の内部空間は第1仕切板56及び第2仕切板57によって、ケーシング50の入口51側とは反対側の外壁である第2端板50qから順に、第1室、第2室、第3室に区画されている。更に、第1浄化部10から排出される排気は、第2仕切板57に形成された大開口57aを介して互いに連通された第2室及び第3室を流れた後にケーシング50の出口52から外部へと排出される。加えて、第2実施例装置202においても、第1実施例装置201と同様に、略U字状の連通管が、入口部21aよりも出口部21gの方が高くなるように傾斜した状態に配置されている。
【0129】
但し、第2実施例装置202が備える連通管は、入口部21aの周壁に穿設された連通穴21bを備えず、入口部21aを有する第1直管部21c、第1屈曲部21d、中間直管部21e、第2屈曲部21f、出口部21gを有する第2直管部21hの順に一体的に構成されている。また、第1実施例装置201においては、上述したように、第2反転室23が占める領域を除く第1室50aが、排気の流れを反転させつつ第2浄化部40から連通管へと排気を導く第1反転室22として機能していた。しかしながら、第2実施例装置202においては、第2浄化部40から連通管の入口部21aへと排気を導く第1反転室22が第1室の内部に別途形成されている。更に、第1実施例装置201においては、図11に示したように、連通管の出口部21gから第1浄化部10へと排気を導く第2反転室23が第1室50aの内部に形成されていた。しかしながら、第2実施例装置202においては、ケーシング50の入口51とは反対側の外壁である第2端板50qの外側に膨出するように第2反転室23が形成されている。
【0130】
これらの点を除き、基本的には、第2実施例装置202もまた、第1実施例装置201と同様の構成を有する。従って、第2実施例装置202もまた、第1実施例装置201と同様の効果を達成することができる。具体的には、第1実施例装置201について述べたような残留還元剤の逆流と順流との繰り返しにより残留還元剤と排気との接触時間が増大するので、残留還元剤の気化及びNHへの転化が促進される。その結果、連通管の内部における残留還元剤の析出が低減され、還元剤のNHへの転化が促進され、SCR11におけるNOxの還元処理が促進される。
【0131】
更に、第2実施例装置202においてもまた、第1浄化部10から吐出された高温の排気が、ケーシング50の第2室及び第3室を流れた後に出口管52から排出されるので、連通管の第2室及び第3室を通る部分、第2浄化部40及びコーン部54の外面が高温の排気によって加熱される。このような排気による加熱によっても、残留還元剤の気化、拡散又は熱分解が促進される。
【0132】
〈変形例〉
ところで、前述したように、DPFのタイプによっては、排気浄化装置からDPFを取り外して内部に溜まった煤を取り除く必要がある場合がある。従って、このようなタイプのDPFを第2実施例装置が備える場合は、第2実施例装置が適用される内燃機関が搭載される装置又は設備に第2実施例装置が稼働可能に組み込まれている状態のままでDPFを脱着することが可能であることが望ましい。
【0133】
図20は、このような変形例に係る第2実施例装置202aの構成の一例を示す模式図である。(a)は第2実施例装置202aを入口51の反対側から観察した場合における外観を示す模式的な斜視図である。(a)に示すように、ケーシング50の入口51とは反対側の外壁である第2端板50qの図示しない第2浄化部に対向する領域にカバー50gが設けられている。
【0134】
第2実施例装置202aにおいては、(b)の断面図に示すように、(DPFケースとしての)第2浄化部40の全体が脱着可能に構成されている。具体的には、ケーシング50は第2浄化部40を保持するための保持ケース50hを備えており、保持ケース50hの入口51の反対側の端部は第2端板50qから外部へ突出しており、その周縁部にはフランジ50fが形成されている。また、(DPFケースとしての)第2浄化部40の入口51の反対側の端部にもフランジが形成されている。第2浄化部40を保持ケース50hに挿入し、カバー50gと第2浄化部40のフランジと保持ケース50hのフランジとをボルトとナットとを螺合させて共締めとすることにより、DPFを含む第2浄化部40を第2実施例装置202aに強固且つ気密に組み込むことができる。一方、第2実施例装置202aからDPFを取り外して清掃する場合には、上記と逆の手順にて、第2実施例装置202aから第2浄化部40を取り出すことができる。
【実施例3】
【0135】
ところで、前述したように、本発明装置が適用される内燃機関が搭載される装置若しくは設備(例えば、車両等)の構成及び/又は本発明装置の構成等によっては、当該装置若しくは設備及び/又は本発明装置を構成する他の部材と導入経路との干渉を避けること等を目的として、導入経路を屈曲させてもよい。本発明の第3実施例に係る排気浄化装置(以降、「第3実施例装置」と称呼される場合がある。)は、このような理由により、上述した第2実施例装置よりも屈曲部を多く含む導入経路を備える排気浄化装置である。
【0136】
図21乃至図27は第3実施例装置の構成の一例を示す模式図である。図21は、ケーシング50の入口51側の外壁である第1端板50pを取り外した第3実施例装置203を入口51側から観察した場合における第3実施例装置203の模式的な正面図である。図22は、第3実施例装置203をケーシング50の入口51側から観察した場合における第3実施例装置203の外観を示す模式的な斜視図である。図23は、図22に示した第3実施例装置203からケーシング50の第1端板50pのみが取り外された第3実施例装置203の模式的な斜視図である。但し、図23においては、ケーシング50の内部空間を区切る第1仕切板56は省略され且つケーシング50の内部に収容されている部分が破線によって表されている。図24は、図23に示した第3実施例装置203からケーシング50の略角筒形の側壁50r及び入口51とは反対側の外壁である第2端板50qが更に取り外された第3実施例装置203の模式的な斜視図である。但し、図24においては、ケーシング50の内部空間を区切る第1仕切板56は省略されず且つ第2仕切板57の陰に隠れている部分が破線によって表されている。
【0137】
図25は、第3実施例装置203をケーシングの入口51の反対側から観察した場合における第3実施例装置203の外観を示す模式的な斜視図である。図26は、図25に示した第3実施例装置203からケーシング50の入口51の反対側の外壁である第2端板50qのみが取り外された第3実施例装置203の模式的な斜視図である。但し、図26においては、ケーシング50の内部空間を区切る第1仕切板56及び第2仕切板57は省略され且つケーシング50の内部に収容されている部分が破線によって表されている。図27は、図26に示した第3実施例装置203からケーシング50の略角筒形の側壁50r及び入口51側の外壁である第1端板50pが更に取り外された第3実施例装置203の模式的な斜視図である。但し、図27においては、ケーシング50の内部空間を区切る第1仕切板56及び第2仕切板57は省略されず且つ第1仕切板56及び第2仕切板57の陰に隠れている部分が破線によって表されている。
【0138】
図21乃至図27に示すように、第3実施例装置203は、上述した第2実施例装置202と基本的には同様の構成を有する。但し、第3実施例装置203は、連通管を構成する各部のうち、第1屈曲部21dと中間直管部21eとの間に更なる屈曲部である第3屈曲部21kが介在する点において第2実施例装置202と異なる。第2実施例装置202においては、図13に示したように、連通管の第1直管部21cから第2直管部21hへと向かう上りの傾斜部は直線状である。しかしながら、第3実施例装置203においては、図21に示すように、第3屈曲部21kにより、連通管の第1直管部21cから第2直管部21hへと向かう上りの傾斜部は下に凸の曲線状となっている。
【0139】
上記により、例えば、第3実施例装置203が適用される内燃機関が搭載される車両の構成及び/又は第3実施例装置203の構成等により、当該車両及び/又は第3実施例装置203を構成する他の部材と導入経路との干渉を回避することが可能である。
【0140】
尚、第3実施例装置203においては、第3屈曲部21kの介在により、導入経路20における噴射装置30によって還元剤が噴射される部位(第1部位P1)と第1部位P1よりも下流側の第1部位よりも高い部位(第2部位P2)との間に第1部位P1よりも低い部位(Pb)が形成されている。このような構成においては、前述したように、対象となる物質の還元に使用されずに残った還元剤が当該部位Pbに滞留しがちである。また、排気流路の下流側に進むほど排気の温度は低下するので、部位Pbの位置が排気流路の下流側になるほど上述したような還元剤の滞留に起因する問題が発生する可能性が高まる。
【0141】
しかしながら、第3実施例装置203においては、図21及び図24に示すように、第1部位P1よりも低い部位Pbが第1部位P1の近傍に形成されている。その結果、部位Pbに滞留した尿素と接触する排気の温度をより高めることができ、結果として尿素の熱分解によるNHの生成が促進される。
【実施例4】
【0142】
ところで、上述した実施例1乃至実施例3に係る排気浄化装置は何れもケーシングを備え且つケーシングの内部空間に排気を流すことにより導入経路及び第1浄化部を加熱するように構成されている。例えば商用車等の大型車両においては、スペース面に比較的余裕があるので、このようにケーシングを備える排気浄化装置の搭載も比較的容易である。しかしながら、例えば自家用車等の小型車両においては、スペース面に比較的余裕が無いため、上記のようにケーシングを備える排気浄化装置の搭載は比較的困難である。
【0143】
そこで、本発明装置を内燃機関の近傍に配設することにより内燃機関からの輻射熱等を利用すれば、上述した実施例1乃至実施例3に係る排気浄化装置のようにケーシングを備え且つケーシングの内部空間に排気を流すこと無く、導入経路及び第1浄化部を加熱することができる。
【0144】
図28は、本発明の第4実施例に係る排気浄化装置(第4実施例装置)の構成の一例を示す模式図である。第4実施例装置204は、第1浄化部10、導入経路20、還元剤添加部(噴射装置)30及び第2浄化部40を備え、ケーシングは備えない本発明装置である。従って、上述した第1実施例装置乃至第3実施例装置のようにケーシングの内部空間に排気を流すことにより導入経路及び第1浄化部を加熱することはできない。
【0145】
しかしながら、図28に示すように、第4実施例装置204は、内燃機関90の近傍(具体的には、車両の進行方向に向かって右側面)に配設されるので、内燃機関からの排熱により、第4実施例装置204全体を高温に維持することができる。尚、図28の右上に示す白抜きの矢印は、内燃機関90が搭載される車両(図示せず)の進行方向を表している。
【0146】
内燃機関90の各気筒から排出される排気は、エキゾーストマニホールド91によって集合され、過給器92(例えば、ターボチャージャー及びスーパーチャージャー等)に送られる。過給器92から排出された排気は上流側排気管93を介して第4実施例装置204の第2浄化部40へと導入され、第2浄化部40に含まれるDOC及びDPFによって対象となる物質が除去される。
【0147】
第2浄化部40から排出された排気は、クランク状の導入経路20を介して第1浄化部10へと送られる。導入経路20は入口よりも出口の方が高くなるように配設されており、導入経路20の入口付近に配設された還元剤添加部(噴射装置)30により尿素水が導入経路20の内部に噴射される。尿素水に含まれる尿素は、導入経路20の内部に流れる排気及び内燃機関からの受熱により熱分解されてNHに転化され、第1浄化部10に含まれるSCRにおけるNOxの還元反応に利用される。このようにして対象となる物質が浄化された排気は、下流側排気管94を介して外部へと排出される。尚、典型的には、第1浄化部10は、SCRの下流側にASCを含む。
【0148】
上記のように、第4実施例装置204においても、還元触媒を含む第1浄化部へと排気を導く導入経路における低い位置(第1部位P1)において還元剤が排気に添加され、その後、排気は第1部位P1より高いも高い位置(第2部位P2)へと流れる。従って、上記のように熱分解されずに残った還元剤(残留還元剤)が生じても、前述したように、重力の作用及び排気の圧力による残留還元剤の逆流と順流とが繰り返されて、還元剤の熱分解が促進される。その結果、残留還元剤に起因する前述したような問題(排気流路の断面積の減少及び還元触媒の損傷等)を低減することができる。
【0149】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及びそれらの変形例並びに実施例及びそれらの変形例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及びそれらの変形例並びに実施例及びそれらの変形例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
【0150】
例えば、本発明装置は複数の第1浄化部を備えることができる。本発明装置が第2浄化部を備える場合は、本発明装置は複数の第2浄化部を備えることができる。また、これらの複数の浄化部を平行ではなく相対角度を付けて配置してもよい。更に、第1浄化部及び第2浄化部に含まれる触媒及び/又はフィルター等の排気浄化ユニットの種類及び/又は数もまた任意である。加えて、導入経路の構成についても第1部位と第2部位との位置関係を満たす限り特に限定されず、例えば入口及び出口の向き及び形状等は本発明装置の構成等に応じて適宜設計され得る。
【符号の説明】
【0151】
10…第1浄化部、11…還元触媒(SCR)、12…排気浄化ユニット(ASC)、20…導入経路、21…連通管、21a…入口部、21b…連通穴、21c…第1直管部、21d…第1屈曲部、21e…中間直管部、21f…第2屈曲部、21g…出口部、21h…第2直管部、30…還元剤添加部(噴射装置)、31…還元剤の噴霧、40…第2浄化部、41…排気浄化ユニット(DOC)、42…排気浄化ユニット(DPF)、50…ケーシング、50a…第1室、50b…第2室、50c…第3室、50f…フランジ、50g…カバー、50h…保持ケース、50p…第1端板、50q…第2端板、50r…側壁、50s…センサ取付部、51…入口(入口管)、52…出口(出口管)、53…断熱材、54…コーン部、55…取付壁部、56…第1仕切板、57…第2仕切板、57a…大開口、60…燃焼器、61…燃焼室、62…燃焼ガス供給部、63…放熱部材、64…貫通孔、70…ミキシング部材、71…プレート、72…フィン、73…貫通孔、90…内燃機関、91…エキゾーストマニホールド、92…過給器、93…上流側排気管、94…下流側排気管、101,102a,102b,102c,103a,103b,103c,104a,104b,104c,105,106,107,108,201,202,202a,203,204…排気浄化装置。
図1
図2
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