(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】機械式駐車設備
(51)【国際特許分類】
E04H 6/06 20060101AFI20230224BHJP
E04H 6/42 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
E04H6/06 D
E04H6/06 V
E04H6/42 Z
(21)【出願番号】P 2018232896
(22)【出願日】2018-12-12
【審査請求日】2021-10-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 新明和工業株式会社が平成30年11月12日に埼玉県川口市並木4-15-6にて販売
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾城 創
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 宏之
(72)【発明者】
【氏名】為平 泰佑
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-011798(JP,A)
【文献】特開2016-065436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車を搭載するパレットと、
上下方向に張設される索状体を有しかつ、前記索状体が走行することによって前記パレットを昇降させる昇降装置と、
前記パレットと前記索状体とを係脱可能に係合させる係合装置と、を備え、
前記係合装置は、
前記索状体に取り付けられかつ前記索状体の走行により上下方向に移動すると共に、第1係合面及び第2係合面の二つの係合面を有する係合部材と、
前記パレットに取り付けられると共に、前記第1係合面に係合する第3係合面、及び、前記第2係合面に係合する第4係合面の二つの係合面を有する被係合部材と、を有し、
前記係合部材及び前記被係合部材の一方は、その断面が、向かい合う二つの係合面によって、前記索状体に対し水平方向にずれた位置で開口部が形成されるフック形状であり、
前記係合部材及び前記被係合部材の他方は、背中合わせの二つの係合面により形成されかつ、前記係合部材と前記被係合部材とが上下方向に係合する際に前記開口部に相対的に進入する進入部を有する形状であり、
前記開口部を形成する二つの係合面の少なくとも一方は、前記進入部の進入方向について前記開口部が広がるように、傾いており、
前記係合部材は、前記索状体に交差する所定の水平軸を中心に下向きに回転可能であり、
前記係合部材と前記被係合部材とが係合している状態の係合装置の断面において、前記第1係合面及び前記第3係合面の係合箇所は、前記水平軸に交差しかつ第1特定点を通る直線と、
前記第1特定点より下方の前記第1係合面及び前記第3係合面の境界の線とが成す角度が鋭角になる前記第1特定点を有し、
前記係合部材と前記被係合部材とが係合している状態の係合装置の断面において、前記第2係合面及び前記第4係合面の係合箇所は、前記水平軸に交差しかつ第2特定点を通る直線と、
前記第2特定点より上方の前記第2係合面及び前記第4係合面の境界の線とが成す角度が鋭角になる前記第2特定点を有している機械式駐車設備。
【請求項2】
自動車を搭載するパレットと、
上下方向に張設される索状体を有しかつ、前記索状体が走行することによって前記パレットを昇降させる昇降装置と、
前記パレットと前記索状体とを係脱可能に係合させる係合装置と、を備え、
前記係合装置は、
前記索状体に取り付けられかつ前記索状体の走行により上下方向に移動すると共に、第1係合面及び第2係合面の二つの係合面を有する係合部材と、
前記パレットに取り付けられると共に、前記第1係合面に係合する第3係合面、及び、前記第2係合面に係合する第4係合面の二つの係合面を有する被係合部材と、を有し、
前記係合部材は、その断面が、向かい合う二つの係合面によって、前記索状体に対し水平方向にずれた位置で開口部が形成されるフック形状であり、
前記被係合部材は、背中合わせの二つの係合面により形成されかつ、前記係合部材と前記被係合部材とが上下方向に係合する際に前記開口部に相対的に進入する進入部を有する形状であり、
前記開口部を形成する二つの係合面の少なくとも一方は、前記進入部の進入方向について前記開口部が広がるように、傾いており、
前記係合部材は、前記索状体に交差する所定の水平軸を中心に下向きに回転可能であり、
前記係合部材と前記被係合部材とが係合している係合装置の断面において、前記索状体に対し相対的に近くに位置する前記第1係合面及び前記第3係合面の係合箇所、及び、前記索状体に対し相対的に遠くに位置する前記第2係合面及び前記第4係合面の係合箇所は、関係式A1<A2を満足するよう構成されている機械式駐車設備。
・A1は、前記係合部材と前記被係合部材とが係合している状態から前記係合部材が前記水平軸を中心に下向きにφだけ回転したと仮定したときに、前記第1係合面が、静止している前記第3係合面に対し、水平方向に相対的に移動する量である。
A1={x1+|y1’-y1|tan(α1)}-x1’
但し、(x1,y1)は、前記水平軸を原点とし、水平方向をX、垂直方向をYとしたXY座標系において、前記係合部材が回転する前の、前記第1係合面及び前記第3係合面の係合箇所に含まれる点1の座標であり、(x1’,y1’)は、前記係合部材が回転した後の前記点1の座標であり、α1は、前記第1係合面及び前記第3係合面の係合箇所の、垂直方向に対する角度である。また、A1<0のとき、前記第1係合面は、前記第3係合面へ近づく方向へ移動
し、前記点1は、前記係合部材の回転時に、前記第3係合面に近づく距離が最も長い点であり、A1>0のとき、前記第1係合面は、前記第3係合面から離れる方向へ移動し、前記点1は、前記係合部材の回転時に、前記第3係合面から離れる距離が最も短い点である。
・A2は、前記係合部材と前記被係合部材とが係合している状態から前記係合部材が前記水平軸を中心に下向きにφだけ回転したと仮定したときに、前記第2係合面が、静止している前記第4係合面に対し、水平方向に相対的に移動する量である。
A2=x2-{x2’+|y2’-y2|tan(α2+φ)}
但し、(x2,y2)は、前記XY座標系において、前記係合部材が回転する前の、前記第2係合面及び前記第4係合面の係合箇所に含まれる点2の座標であり、(x2’,y2’)は、前記係合部材が回転した後の前記点2の座標であり、α2は、前記第2係合面及び前記第4係合面の係合箇所の、垂直方向に対する角度である。また、A2<0のとき、前記第2係合面は、前記第4係合面から離れる方向へ移動
し、前記点2は、前記係合部材の回転時に、前記第4係合面から離れる距離が最も短い点であり、A2>0のとき、前記第2係合面は、前記第4係合面へ近づく方向へ移動し、前記点2は、前記係合部材の回転時に、前記第4係合面へ近づく距離が最も長い点である。
【請求項3】
自動車を搭載するパレットと、
上下方向に張設される索状体を有しかつ、前記索状体が走行することによって前記パレットを昇降させる昇降装置と、
前記パレットと前記索状体とを係脱可能に係合させる係合装置と、を備え、
前記係合装置は、
前記索状体に取り付けられかつ前記索状体の走行により上下方向に移動すると共に、第1係合面及び第2係合面の二つの係合面を有する係合部材と、
前記パレットに取り付けられると共に、前記第1係合面に係合する第3係合面、及び、前記第2係合面に係合する第4係合面の二つの係合面を有する被係合部材と、を有し、
前記被係合部材は、その断面が、向かい合う二つの係合面によって、前記索状体に対し水平方向にずれた位置で開口部が形成されるフック形状であり、
前記係合部材は、背中合わせの二つの係合面により形成されかつ、前記係合部材と前記被係合部材とが上下方向に係合する際に前記開口部に相対的に進入する進入部を有する形状であり、
前記開口部を形成する二つの係合面の少なくとも一方は、前記進入部の進入方向について前記開口部が広がるように、傾いており、
前記係合部材は、前記索状体に交差する所定の水平軸を中心に下向きに回転可能であり、
前記係合部材と前記被係合部材とが係合している係合装置の断面において、前記索状体に対し相対的に遠くに位置する前記第1係合面及び前記第3係合面の係合箇所、及び、前記索状体に対し相対的に近くに位置する前記第2係合面及び前記第4係合面の係合箇所は、関係式A1<A2を満足するよう構成されている機械式駐車設備。
・A1は、前記係合部材と前記被係合部材とが係合している状態から前記係合部材が前記水平軸を中心に下向きにφだけ回転したと仮定したときに、前記第1係合面が、静止している前記第3係合面に対し、水平方向に相対的に移動する量である。
A1={x1+|y1’-y1|tan(α1)}-x1’
但し、(x1,y1)は、前記水平軸を原点とし、水平方向をX、垂直方向をYとしたXY座標系において、前記係合部材が回転する前の、前記第1係合面及び前記第3係合面の係合箇所に含まれる点1の座標であり、(x1’,y1’)は、前記係合部材が回転した後の前記点1の座標であり、α1は、前記第1係合面及び前記第3係合面の係合箇所の、垂直方向に対する角度である。また、A1<0のとき、前記第1係合面は、前記第3係合面へ近づく方向へ移動
し、前記点1は、前記係合部材の回転時に、前記第3係合面に近づく距離が最も長い点であり、A1>0のとき、前記第1係合面は、前記第3係合面から離れる方向へ移動し、前記点1は、前記係合部材の回転時に、前記第3係合面から離れる距離が最も短い点である。
・A2は、前記係合部材と前記被係合部材とが係合している状態から前記係合部材が前記水平軸を中心に下向きにφだけ回転したと仮定したときに、前記第2係合面が、静止している前記第4係合面に対し、水平方向に相対的に移動する量である。
A2=x2-{x2’+|y2’-y2|tan(α2+φ)}
但し、(x2,y2)は、前記XY座標系において、前記係合部材が回転する前の、前記第2係合面及び前記第4係合面の係合箇所に含まれる点2の座標であり、(x2’,y2’)は、前記係合部材が回転した後の前記点2の座標であり、α2は、前記第2係合面及び前記第4係合面の係合箇所の、垂直方向に対する角度である。また、A2<0のとき、前記第2係合面は、前記第4係合面から離れる方向へ移動
し、前記点2は、前記係合部材の回転時に、前記第4係合面から離れる距離が最も短い点であり、A2>0のとき、前記第2係合面は、前記第4係合面へ近づく方向へ移動し、前記点2は、前記係合部材の回転時に、前記第4係合面へ近づく距離が最も長い点である。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の機械式駐車設備において、
前記係合部材は、前記被係合部材と係合していない状態
であって前記係合部材の自重により下向きに回転する前の状態、又は、前記被係合部材と係合していない状態であって前記被係合部材との係合によって下向きに回転する前の状態において、前記第1係合面及び前記第2係合面が、前記第3係合面及び前記第4係合面に対し、前記係合部材が前記水平軸を中心に上向きに回転する方向に、所定の角度分だけ傾くように構成されている機械式駐車設備。
【請求項5】
自動車を搭載するパレットと、
上下方向に張設される索状体を有しかつ、前記索状体が走行することによって前記パレットを昇降させる昇降装置と、
前記パレットと前記索状体とを係脱可能に係合させる係合装置と、を備え、
前記係合装置は、
前記索状体に取り付けられかつ前記索状体の走行により上下方向に移動すると共に、第1係合面及び第2係合面の二つの係合面を有する係合部材と、
前記パレットに取り付けられると共に、前記第1係合面に係合する第3係合面、及び、前記第2係合面に係合する第4係合面の二つの係合面を有する被係合部材と、を有し、
前記係合部材及び前記被係合部材の一方は、その断面が、向かい合う二つの係合面によって、前記索状体に対し水平方向にずれた位置で開口部が形成されるフック形状であり、
前記係合部材及び前記被係合部材の他方は、背中合わせの二つの係合面により形成されかつ、前記係合部材と前記被係合部材とが上下方向に係合する際に前記開口部に相対的に進入する進入部を有する形状であり、
前記開口部を形成する二つの係合面の少なくとも一方は、前記進入部の進入方向について前記開口部が広がるように、傾いており、
前記係合部材は、前記索状体に交差する所定の水平軸を中心に下向きに回転可能であり、
前記係合部材は、前記被係合部材と係合していない状態
であって前記係合部材の自重により下向きに回転する前の状態、又は、前記被係合部材と係合していない状態であって前記被係合部材との係合によって下向きに回転する前の状態において、前記第1係合面及び前記第2係合面が、前記第3係合面及び前記第4係合面に対し、前記係合部材が前記水平軸を中心に上向きに回転する方向に、所定の角度分だけ傾くように構成されている機械式駐車設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、機械式駐車設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機械式駐車設備が記載されている。機械式駐車設備は、自動車を搭載するパレットと、パレットを昇降する昇降装置とを備えている。パレットと昇降装置とは、係合装置によって係脱可能に係合する。昇降装置は、パレットの四隅において、上下方向に張設されたチェーンを有している。係合装置は、係合部材(係止フック81)と、係合部材に係合する被係合部材(係止部材31)とを有している。係合部材は、昇降装置の各チェーンに固定されている。被係合部材は、パレットの四隅に取り付けられている。係合部材と被係合部材とが係合した状態でチェーンが上下に走行すると、パレットが昇降する。
【0003】
特許文献2に記載されている機械式駐車設備は、チェーンに固定された係合部材(昇降レール60)を、ガイドレール65が案内するよう構成されている。ガイドレール65はチェーンに沿って上下方向に延びている。係合部材には、ガイドレール65を挟むように係合する二個一組のガイドローラ64が取り付けられている。ガイドレール65とガイドローラ64とが係合することによって、チェーンに固定された係合部材は、その姿勢を水平に維持するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-65436号公報
【文献】特開昭60-73972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者らは、特許文献1に記載されている係合装置は、パレットの昇降中に、係合部材と被係合部材との係合が外れてしまう場合があることに気づいた。
【0006】
ここに開示する技術は、機械式駐車設備において、係合装置の係合が外れることを防止する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的に、ここに開示する機械的駐車設備は、自動車を搭載するパレットと、上下方向に張設される索状体を有しかつ、前記索状体が走行することによって前記パレットを昇降させる昇降装置と、前記パレットと前記索状体とを係脱可能に係合させる係合装置と、を備える。
【0008】
前記係合装置は、前記索状体に取り付けられかつ前記索状体の走行により上下方向に移動すると共に、第1係合面及び第2係合面の二つの係合面を有する係合部材と、前記パレットに取り付けられると共に、前記第1係合面に係合する第3係合面、及び、前記第2係合面に係合する第4係合面の二つの係合面を有する被係合部材と、を有し、前記係合部材及び前記被係合部材の一方は、その断面が、向かい合う二つの係合面によって、前記索状体に対し水平方向にずれた位置で開口部が形成されるフック形状であり、前記係合部材及び前記被係合部材の他方は、背中合わせの二つの係合面により形成されかつ、前記係合部材と前記被係合部材とが上下方向に係合する際に前記開口部に相対的に進入する進入部を有する形状である。
【0009】
前記開口部を形成する二つの係合面の少なくとも一方は、前記進入部の進入方向について前記開口部が広がるように、傾いており、前記係合部材は、前記索状体に交差する所定の水平軸を中心に下向きに回転可能である。
【0010】
そして、前記係合部材と前記被係合部材とが係合している状態の係合装置の断面において、前記第1係合面及び前記第3係合面の係合箇所は、前記水平軸に交差しかつ第1特定点を通る直線と、前記第1特定点より下方の前記第1係合面及び前記第3係合面の境界の線とが成す角度が鋭角になる前記第1特定点を有し、前記係合部材と前記被係合部材とが係合している状態の係合装置の断面において、前記第2係合面及び前記第4係合面の係合箇所は、前記水平軸に交差しかつ第2特定点を通る直線と、前記第2特定点より上方の前記第2係合面及び前記第4係合面の境界の線とが成す角度が鋭角になる前記第2特定点を有している。
【0011】
詳細は後述するが、この構成によると、係合部材と被係合部材との係合が外れることが抑制される。
【0012】
ここに開示する機械式駐車設備はまた、自動車を搭載するパレットと、上下方向に張設される索状体を有しかつ、前記索状体が走行することによって前記パレットを昇降させる昇降装置と、前記パレットと前記索状体とを係脱可能に係合させる係合装置と、を備えている。
【0013】
前記係合装置は、前記索状体に取り付けられかつ前記索状体の走行により上下方向に移動すると共に、第1係合面及び第2係合面の二つの係合面を有する係合部材と、前記パレットに取り付けられると共に、前記第1係合面に係合する第3係合面、及び、前記第2係合面に係合する第4係合面の二つの係合面を有する被係合部材と、を有し、前記係合部材は、その断面が、向かい合う二つの係合面によって、前記索状体に対し水平方向にずれた位置で開口部が形成されるフック形状であり、前記被係合部材は、背中合わせの二つの係合面により形成されかつ、前記係合部材と前記被係合部材とが上下方向に係合する際に前記開口部に相対的に進入する進入部を有する形状である。
【0014】
前記開口部を形成する二つの係合面の少なくとも一方は、前記進入部の進入方向について前記開口部が広がるように、傾いており、前記係合部材は、前記索状体に交差する所定の水平軸を中心に下向きに回転可能である。
【0015】
そして、前記係合部材と前記被係合部材とが係合している係合装置の断面において、前記索状体に対し相対的に近くに位置する前記第1係合面及び前記第3係合面の係合箇所、及び、前記索状体に対し相対的に遠くに位置する前記第2係合面及び前記第4係合面の係合箇所は、関係式A1<A2を満足するよう構成されている。
【0016】
ここで、A1は、前記係合部材と前記被係合部材とが係合している状態から前記係合部材が前記水平軸を中心に下向きにφだけ回転したと仮定したときに、前記第1係合面が、静止している前記第3係合面に対し、水平方向に相対的に移動する量である。
【0017】
A1={x1+|y1’-y1|tan(α1)}-x1’
但し、(x1,y1)は、前記水平軸を原点とし、水平方向をX、垂直方向をYとしたXY座標系において、前記係合部材が回転する前の、前記第1係合面及び前記第3係合面の係合箇所に含まれる点1の座標であり、(x1’,y1’)は、前記係合部材が回転した後の前記点1の座標であり、α1は、前記第1係合面及び前記第3係合面の係合箇所の、垂直方向に対する角度である。また、A1<0のとき、前記第1係合面は、前記第3係合面へ近づく方向へ移動し、前記点1は、前記係合部材の回転時に、前記第3係合面に近づく距離が最も長い点であり、A1>0のとき、前記第1係合面は、前記第3係合面から離れる方向へ移動し、前記点1は、前記係合部材の回転時に、前記第3係合面から離れる距離が最も短い点である。
【0018】
また、A2は、前記係合部材と前記被係合部材とが係合している状態から前記係合部材が前記水平軸を中心に下向きにφだけ回転したと仮定したときに、前記第2係合面が、静止している前記第4係合面に対し、水平方向に相対的に移動する量である。
【0019】
A2=x2-{x2’+|y2’-y2|tan(α2+φ)}
但し、(x2,y2)は、前記XY座標系において、前記係合部材が回転する前の、前記第2係合面及び前記第4係合面の係合箇所に含まれる点2の座標であり、(x2’,y2’)は、前記係合部材が回転した後の前記点2の座標であり、α2は、前記第2係合面及び前記第4係合面の係合箇所の、垂直方向に対する角度である。また、A2<0のとき、前記第2係合面は、前記第4係合面から離れる方向へ移動し、前記点2は、前記係合部材の回転時に、前記第4係合面から離れる距離が最も短い点であり、A2>0のとき、前記第2係合面は、前記第4係合面へ近づく方向へ移動し、前記点2は、前記係合部材の回転時に、前記第4係合面へ近づく距離が最も長い点である。
【0020】
詳細は後述するが、この構成によると、係合部材と被係合部材との係合が外れることが抑制される。尚、点1は、後述する接触点1を含む。点2は、後述する接触点2を含む。
【0021】
ここに開示する機械式駐車設備はさらに、自動車を搭載するパレットと、上下方向に張設される索状体を有しかつ、前記索状体が走行することによって前記パレットを昇降させる昇降装置と、前記パレットと前記索状体とを係脱可能に係合させる係合装置と、を備えている。
【0022】
前記係合装置は、前記索状体に取り付けられかつ前記索状体の走行により上下方向に移動すると共に、第1係合面及び第2係合面の二つの係合面を有する係合部材と、前記パレットに取り付けられると共に、前記第1係合面に係合する第3係合面、及び、前記第2係合面に係合する第4係合面の二つの係合面を有する被係合部材と、を有し、前記被係合部材は、その断面が、向かい合う二つの係合面によって、前記索状体に対し水平方向にずれた位置で開口部が形成されるフック形状であり、前記係合部材は、背中合わせの二つの係合面により形成されかつ、前記係合部材と前記被係合部材とが上下方向に係合する際に前記開口部に相対的に進入する進入部を有する形状である。
【0023】
前記開口部を形成する二つの係合面の少なくとも一方は、前記進入部の進入方向について前記開口部が広がるように、傾いており、前記係合部材は、前記索状体に交差する所定の水平軸を中心に下向きに回転可能である。
【0024】
そして、前記係合部材と前記被係合部材とが係合している係合装置の断面において、前記索状体に対し相対的に遠くに位置する前記第1係合面及び前記第3係合面の係合箇所、及び、前記索状体に対し相対的に近くに位置する前記第2係合面及び前記第4係合面の係合箇所は、関係式A1<A2を満足するよう構成されている。
【0025】
ここで、A1は、前記係合部材と前記被係合部材とが係合している状態から前記係合部材が前記水平軸を中心に下向きにφだけ回転したと仮定したときに、前記第1係合面が、静止している前記第3係合面に対し、水平方向に相対的に移動する量である。
【0026】
A1={x1+|y1’-y1|tan(α1)}-x1’
但し、(x1,y1)は、前記水平軸を原点とし、水平方向をX、垂直方向をYとしたXY座標系において、前記係合部材が回転する前の、前記第1係合面及び前記第3係合面の係合箇所に含まれる点1の座標であり、(x1’,y1’)は、前記係合部材が回転した後の前記点1の座標であり、α1は、前記第1係合面及び前記第3係合面の係合箇所の、垂直方向に対する角度である。また、A1<0のとき、前記第1係合面は、前記第3係合面へ近づく方向へ移動し、前記点1は、前記係合部材の回転時に、前記第3係合面に近づく距離が最も長い点であり、A1>0のとき、前記第1係合面は、前記第3係合面から離れる方向へ移動し、前記点1は、前記係合部材の回転時に、前記第3係合面から離れる距離が最も短い点である。
【0027】
また、A2は、前記係合部材と前記被係合部材とが係合している状態から前記係合部材が前記水平軸を中心に下向きにφだけ回転したと仮定したときに、前記第2係合面が、静止している前記第4係合面に対し、水平方向に相対的に移動する量である。
【0028】
A2=x2-{x2’+|y2’-y2|tan(α2+φ)}
但し、(x2,y2)は、前記XY座標系において、前記係合部材が回転する前の、前記第2係合面及び前記第4係合面の係合箇所に含まれる点2の座標であり、(x2’,y2’)は、前記係合部材が回転した後の前記点2の座標であり、α2は、前記第2係合面及び前記第4係合面の係合箇所の、垂直方向に対する角度である。また、A2<0のとき、前記第2係合面は、前記第4係合面から離れる方向へ移動し、前記点2は、前記係合部材の回転時に、前記第4係合面から離れる距離が最も短い点であり、A2>0のとき、前記第2係合面は、前記第4係合面へ近づく方向へ移動し、前記点2は、前記係合部材の回転時に、前記第4係合面へ近づく距離が最も長い点である。
【0029】
前記係合部材は、前記被係合部材と係合していない状態であって前記係合部材の自重により下向きに回転する前の状態、又は、前記被係合部材と係合していない状態であって前記被係合部材との係合によって下向きに回転する前の状態において、前記第1係合面及び前記第2係合面が、前記第3係合面及び前記第4係合面に対し、前記係合部材が前記水平軸を中心に上向きに回転する方向に、所定の角度分だけ傾くように構成されている、としてもよい。
【0030】
こうすることで、詳細は後述するが、係合部材と被係合部材とが係合する際に、係合部材と被係合部材とを、適切に係合させることができる。その結果、係合装置の係合が外れることが抑制される。
【0031】
ここに開示する機械式駐車設備はさらに、自動車を搭載するパレットと、上下方向に張設される索状体を有しかつ、前記索状体が走行することによって前記パレットを昇降させる昇降装置と、前記パレットと前記索状体とを係脱可能に係合させる係合装置と、を備えている。
【0032】
前記係合装置は、前記索状体に取り付けられかつ前記索状体の走行により上下方向に移動すると共に、第1係合面及び第2係合面の二つの係合面を有する係合部材と、前記パレットに取り付けられると共に、前記第1係合面に係合する第3係合面、及び、前記第2係合面に係合する第4係合面の二つの係合面を有する被係合部材と、を有し、前記係合部材及び前記被係合部材の一方は、その断面が、向かい合う二つの係合面によって、前記索状体に対し水平方向にずれた位置で開口部が形成されるフック形状であり、前記係合部材及び前記被係合部材の他方は、背中合わせの二つの係合面により形成されかつ、前記係合部材と前記被係合部材とが上下方向に係合する際に前記開口部に相対的に進入する進入部を有する形状である。
【0033】
前記開口部を形成する二つの係合面の少なくとも一方は、前記進入部の進入方向について前記開口部が広がるように、傾いており、前記係合部材は、前記索状体に交差する所定の水平軸を中心に下向きに回転可能である。
【0034】
そして、前記係合部材は、前記被係合部材と係合していない状態であって前記係合部材の自重により下向きに回転する前の状態、又は、前記被係合部材と係合していない状態であって前記被係合部材との係合によって下向きに回転する前の状態において、前記第1係合面及び前記第2係合面が、前記第3係合面及び前記第4係合面に対し、前記係合部材が前記水平軸を中心に上向きに回転する方向に、所定の角度分だけ傾くように構成されている。
【0035】
この構成によると、前述したように、係合部材と被係合部材とが係合する際に、係合部材と被係合部材とを、適切に係合させることができる。その結果、係合装置の係合が外れることが抑制される。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、前記の機械式駐車設備は、パレットの昇降中に、係合部材と被係合部材との係合が外れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、機械式駐車設備を例示する正面図である。
【
図3】
図3は、チェーンに取り付けられた係合部材とパレットに取り付けられた被係合部材とが係合した状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、構成例1の係合装置の断面図、及び、拡大図を示す図である。
【
図5】
図5は、構成例2の係合装置の断面図であり、係合部材が被係合部材に対し所定角度だけ回転したと仮定したときの接触点1及び接触点2の座標を示す図である。
【
図8】
図8は、係合部材の開口部を回転させた構成を例示する断面図である。
【
図9】
図9は、係合部材の取付孔の位置をずらした構成を例示する断面図である。
【
図12】
図12は、従来の係合装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、機械式駐車設備、及び、機械式駐車設備に用いられている係合装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下に示す機械式駐車設備は、一例である。
図1は、機械式駐車設備1の正面図である。
図2は、機械式駐車設備1の側面図である。
【0039】
(機械式駐車設備の全体構成)
図1に例示する機械式駐車設備1は、地上Gに設けられた地上乗入型である。機械式駐車設備1は、上下方向に4段で左右方向に5列であり、20箇所の格納スペース40を備えている。20箇所の格納スペース40の1箇所は空きスペース41である。自動車Vを搭載するパレット30は19個であり、機械式駐車設備1は、19台の自動車Vを格納することができる。
【0040】
機械式駐車設備1は、前後位置で鉛直に設けられた柱材2を備えている。
図1に例示する機械式駐車設備1は、1段目における全ての列が入出庫部42である。これらの入出庫部42には、各柱材2の間に個別に開閉させることができる可動柵43がそれぞれ設けられている。
【0041】
機械式駐車設備1の1段目と4段目とでは、横行装置90(
図2参照)が、各パレット30を個別に矢印Wで示すように横行することができる。また、機械式駐車設備1の各列では、昇降装置80が、その列の全てのパレット30を一緒(同時)に矢印Hで示すように昇降することが可能である。横行装置90及び昇降装置80は、制御装置44によって制御される。
【0042】
昇降装置80は、前後の柱材2の位置に設けられている。昇降装置80は、パレット30の前後左右の四隅の位置それぞれに設けられている。昇降装置80は、索状体としてのチェーン81と、チェーン81を上下方向に張設させるスプロケット82とを有している。前後左右位置に設けられたチェーン81は、同期して走行する。
【0043】
パレット30は、係合装置100によってチェーン81と係合する。係合装置100は、パレット30とチェーン81とを係脱可能に係合させる。係合装置100は、係合部材5と被係合部材6とによって構成されている。
【0044】
図3に示すように、係合部材5は、チェーン81に取り付けられている。チェーン81には、複数の係合部材5が所定の等間隔を空けて固定されている。
図3の構成例において、係合部材5は、上向きに口が開いた開口部53を有するフック形状である。
【0045】
被係合部材6は、開口部53に進入する進入部63を有している。進入部63は、パレット30から、外方に延びている。
【0046】
係合部材5は、静止しているパレット30の被係合部材6に対し、下から上へと相対的に移動する。被係合部材6の進入部63が係合部材5の開口部53に進入することにより、係合部材5と被係合部材6とが互いに係合する。パレット30は、前後左右の四隅が係合装置100によって支持された状態で、昇降装置80により昇降する。
【0047】
この構成の機械式駐車設備1によれば、制御装置44が横行装置90と昇降装置80とを制御することにより、空きスペース41を利用して任意のパレット30を全ての格納スペース40に配置することができる。つまり、空きスペース41に向けて1つ又は複数のパレット30を1ピッチ(格納スペース40の1つ分)ずつ昇降または横行させ、新たに生じた空きスペース41に向けて同様の動作を繰り返すことで、任意のパレット30を任意の格納スペース40に配置することができる。
【0048】
尚、
図1には、地上階の入出庫部42が最下段である1段目となった機械式駐車設備1の配置例を説明したが、例えば、機械式駐車設備1の2段目、3段目又は4段目を地上階の入出庫部42にすることも可能である。
【0049】
(係合装置の構成)
<係合装置の係合が外れる原因>
図3に示すように、係合装置100の係合部材5は、チェーン81に固定されている。チェーン81は、複数のプレートをピンにより回転可能に結合した構造上、水平方向に変位することが可能である。チェーン81は、係合部材5の姿勢を完全には拘束せず、係合部材5の姿勢は、ある程度、変更可能である。この機械式駐車設備1は、例えば特許文献2に記載されているような、係合部材5の姿勢を水平に維持するためのガイドレールを設けてない。
【0050】
本願発明者らは、機械式駐車設備1の開発中に、パレット30を昇降している途中で、係合部材5と被係合部材6との係合が外れてしまう場合があることに気づいた。そこで、本願発明者らは、係合部材5と被係合部材6との係合が外れる原因を調べた。
【0051】
図12は、従来の係合装置10を例示している。
図12は、
図3のA-A断面に相当する。尚、
図12では、理解を容易にするために、係合部材50には、断面を示すハッチングを省略している。これは、後述する
図13、
図4、
図5、
図8、
図9、及び
図10でも同様である。
【0052】
従来の係合装置10は、係合部材50と被係合部材60との係合が外れてしまった係合装置である。係合部材50は、前述したように、上下方向に張設されたチェーン81に固定されている。より詳細に、係合部材50は、フランジ部505に設けた上下二箇所の取付孔506に、ピン507が挿入されることにより、チェーン81に固定されている。
【0053】
係合部材50は、水平方向に向かい合う第1係合面501と第2係合面502とを有している。この第1係合面501と第2係合面502とによって、上向きに開口する開口部503が形成されている。開口部503の位置は、チェーン81に対し水平方向にずれている。係合部材50において第1係合面501は、垂直方向に沿っている。第2係合面502は、垂直方向に対し傾斜している。開口部503は、被係合部材60の進入方向(つまり、上下方向)について広がっている。
【0054】
被係合部材60は、係合部材50の第1係合面501に係合する第3係合面601と、第2係合面502に係合する第4係合面602とを有している。第3係合面601は、垂直方向に沿っている。第4係合面602は、垂直方向に対し傾斜している。第2係合面502の傾斜角度と第4係合面602の傾斜角度とは同じである。第3係合面601と第4係合面602とによって、被係合部材60の進入部603の横断面は下向きに先細りに構成されている。
【0055】
前述したように、停止しているパレット30の被係合部材60に対して、係合部材50が下から上に上昇することにより、被係合部材60が開口部503に進入をする。そして、係合部材50の第1係合面501と被係合部材60の第3係合面601との少なくとも一部が互いに当接すると共に、係合部材50の第2係合面502と被係合部材60の第4係合面602との少なくとも一部が互いに当接することにより、係合部材50及び被係合部材60が互いに係合する(
図12の実線参照)。
【0056】
ここで、一つのパレット30を支持している四つのチェーン81のうち、いずれかのチェーン81又は係合部材5にパレット30からの外力が作用することにより、
図12に白抜きの矢印で示すように、係合部材50は、上側のピン507を中心として、
図12における反時計回り方向に(つまり、下向きに)回転しようとする場合がある。上側のピン507の軸は、チェーン81に交差しかつ、係合部材50の回転中心となる水平軸を構成している。係合部材50が回転しようとしたときにパレット30は残り三つのチェーン81に支持されているため、水平の姿勢を維持する。係合部材50が回転しようとしたときに、パレット30に取り付けられた被係合部材60は回転せずに止まったままである。
【0057】
本願発明者らの検討によると、従来の係合装置10は、係合部材50が相対的に回転すると、同図に拡大して示すように、係合部材50の第1係合面501が、被係合部材60の第3係合面601から離れるように移動すると共に、係合部材50の第2係合面502が、被係合部材60の第4係合面602から離れるように移動することがわかった。第1係合面501と第3係合面601との係合状態が解除されかつ、第2係合面502と第4係合面602との係合状態が解除される結果、従来の係合装置10は、係合部材50と被係合部材60との係合が外れてしまう。つまり、従来の係合装置10は、第1係合面501と第3係合面601との間の摩擦と、第2係合面502と第4係合面602との間の摩擦とによって、係合部材50と被係合部材60との係合が維持されているに過ぎない。このため、摩擦が破綻するような外力(例えば振動のような力)が加わった場合に、従来の係合装置10は係合が外れてしまうことが、本願発明者らの検討により新たにわかった。
【0058】
本願発明者らは、係合が外れてしまう係合部材50及び被係合部材60の形状について、さらに検討を行った。
図13は、
図12に示した従来の係合装置10において、係合部材50の第1係合面501及び第2係合面502と、被係合部材60の第3係合面601及び第4係合面602との関係を説明する図である。
【0059】
先ず、係合部材50と被係合部材60とが係合している状態の従来の係合装置10の横断面において、チェーン81に対し相対的に遠くに位置する第2係合面502及び第4係合面602の係合箇所について説明する。
図12及び
図13に示す従来の係合装置10において、係合部材50の第2係合面502と被係合部材60の第4係合面602との係合箇所のうち、係合部材50の回転時に、第2係合面502と第4係合面602との離間量が最も少ない箇所は、接触点2である。接触点2は、
図13において、第2係合面502と第4係合面602との係合箇所における最も下の点である。
図13の円C2は、係合部材50の回転中心Oを中心としかつ、回転中心Oから接触点2までを半径とする円である。
【0060】
第2係合面502において接触点2よりも上側の箇所は、円C2の外側に位置している。係合部材50が、
図13における反時計回り方向に回転したときに、第2係合面502における接触点2よりも上側の箇所は、第4係合面602から離れていくことがわかる。
【0061】
また、接触点2は、係合部材50が回転したときに、円C2の円周に沿って移動する。接触点2も、係合部材50が回転したときに、第4係合面602から離れていく。
【0062】
ここで、破線Ln21は、被係合部材60の第4係合面602に沿って引いた直線である。破線Ln22は、回転中心Oを通りかつ、破線Ln21に直交する直線である。円C2を、破線Ln22を基準にして四つの円弧Ar21、Ar22、Ar23、及びAr24に等分したときに、
図12及び
図13に示す係合部材50の接触点2は、第1円弧Ar21に位置している。
図14に拡大して示すように、第1円弧Ar21上の接触点2は、円C1の円周に沿って反時計回り方向に移動すると、破線Ln21から離れる方向に移動する(破線の矢印参照。尚、破線の矢印は、理解を容易にするために、接触点2が破線Ln21から離れる向きを誇張して描いている)。つまり、第1円弧Ar21上の接触点2は、被係合部材60の第4係合面602から離れる方向に移動する。
【0063】
これに対し、
図14に白丸で示すような第2円弧Ar22上の点は、円C1の円周に沿って反時計回り方向に移動すると、破線Ln21に近づく方向に移動する(白抜きの矢印参照。尚、白抜きの矢印も、理解を容易にするために、白丸の点が破線Ln21に近く付く向きを誇張して描いている)。
【0064】
図12~
図14の従来の係合装置10とは異なり、係合部材の第2係合面と被係合部材の第4係合面との係合箇所における少なくとも一点(つまり、第2特定点)が、第2円弧Ar22上の点となるように第2係合面及び第4係合面を形成すれば、係合部材が反時計回り方向に回転したときに、当該第2特定点は被係合部材の第4係合面に近づく方向に移動する。この構成の係合装置は、係合部材が回転しようとしても、第2係合面と第4係合面とは係合状態を維持することができる。
【0065】
図12~
図14の従来の係合装置10において、第2係合面502及び第4係合面602の係合箇所の接触点2は、係合部材50の回転中心Oを通りかつ接触点2を通る線Ln23と、被係合部材60の第4係合面602に沿う線、言い替えると第2係合面502及び第4係合面602の境界の線Ln21とがなす角度θ2が90°を超える鈍角になる点である。
【0066】
第2係合面と第4係合面との係合箇所における少なくとも一点(つまり、第2特定点)が第2円弧Ar22上の点となるには、係合部材の回転中心Oを通りかつ第2特定点を通る線Ln23と、第2係合面及び第4係合面の境界の線Ln21とが成す角度θ2が90°未満の鋭角になる第2特定点が、第2係合面と第4係合面との係合箇所に存在することが必要である。つまり、係合部材と被係合部材とが係合している状態の係合装置の横断面において、チェーン81に対し相対的に遠くに位置する、係合部材の第2係合面及び被係合部材の第4係合面の係合箇所は、係合部材の回転中心軸に交差しかつ第2特定点を通る直線(Ln23)と、第2係合面及び第4係合面の境界の線(Ln21)とが成す角度θ2が鋭角になる第2特定点を有していると、第2係合面と第4係合面とが係合状態を維持する。
【0067】
次に、チェーン81に対し相対的に近くに位置する係合部材50の第1係合面501と、被係合部材60の第3係合面601との係合箇所も、前述した第2係合面502と第4係合面602の係合箇所と同様である。係合部材50の第1係合面501と被係合部材60の第3係合面601との係合箇所のうち、係合部材50が回転したときに、第1係合面501と第3係合面601との離間量が最も小さい箇所は、接触点1である。接触点1は、
図13において、第1係合面501と第3係合面601との係合箇所における最も上の点である。
図13の円C1は、係合部材50の回転中心Oを中心としかつ、回転中心Oから接触点1までを半径とする円である。
【0068】
第1係合面501において接触点1よりも下側の箇所は、円C1の外側に位置している。係合部材50が、
図13における反時計回り方向に回転したときに、第1係合面501における接触点1よりも下側の箇所は、被係合部材60の第3係合面601から離れていくことがわかる。
【0069】
また、接触点1は、係合部材50が反時計回り方向に回転したときに、円C1の円周に沿って移動する。接触点1も、係合部材50が反時計回り方向に回転したときに、第3係合面601から離れていく。
【0070】
破線Ln11は、被係合部材60の第3係合面601に沿って引いた直線である。破線Ln12は、回転中心Oを通りかつ、破線Ln11に直交する直線である。円C1を、破線Ln12を基準にして四つの円弧Ar11、Ar12、Ar13、及びAr14に等分したときに、
図12及び
図13に示す係合部材50の接触点1は、第2円弧Ar12に位置している。
図15に拡大して示すように、第2円弧Ar12上の接触点1は、円
C1の円周に沿って反時計回り方向に移動すると、破線Ln11から離れる方向に移動する(破線の矢印参照)。つまり、第2円弧Ar12上の接触点1は、被係合部材60の第3係合面601から離れる方向に移動する。
【0071】
これに対し、
図15に白丸で示すような第1円弧Ar11上の点は、円C1の円周に沿って反時計回り方向に移動すると、破線Ln11に近づく方向に移動する(白抜きの矢印参照)。
【0072】
図12、
図13、及び
図15の従来の係合装置10とは異なり、係合部材の第1係合面と被係合部材の第3係合面との係合箇所における少なくとも一点(つまり、第1特定点)が、第1円弧Ar11上の点となるように第1係合面及び第3係合面を形成すれば、係合部材が反時計回り方向に回転したときに、当該第1特定点は被係合部材の第3係合面に近づく方向に移動する。この構成の係合装置は、係合部材が回転しようとしても、第1係合面と第3係合面とは係合状態を維持することができる。
【0073】
図12、
図13、及び
図15の従来の係合装置10において、第1係合面501及び第3係合面601の係合箇所の接触点1は、係合部材50の回転中心Oを通りかつ接触点1を通る線Ln13と、被係合部材60の第3係合面601に沿う線、言い替えると第1係合面501及び第3係合面601の境界の線Ln11とがなす角度θ1が90°を超える鈍角になる点である。
【0074】
第1係合面と第3係合面との係合箇所における少なくとも一点(つまり、第1特定点)が第1円弧Ar11上の点となるには、係合部材の回転中心Oを通りかつ第1特定点を通る線Ln13と、第1係合面及び第3係合面の境界の線Ln11とが成す角度θ1が90°未満の鋭角になる第1特定点が、第1係合面と第3係合面との係合箇所に存在することが必要である。つまり、係合部材と被係合部材とが係合している状態の係合装置の横断面において、チェーン81に対し相対的に近くに位置する、係合部材の第1係合面及び被係合部材の第3係合面の係合箇所は、係合部材の回転中心軸に交差しかつ第1特定点を通る直線(Ln13)と、第1係合面及び第3係合面の境界の線(Ln11)とが成す角度θ1が鋭角になる第1特定点を有していると、第1係合面と第3係合面とが係合状態を維持する。
【0075】
<係合装置の構成例1>
図4は、ここに開示する技術が適用された係合装置100の構成例を示している。係合装置100は、前述したように、係合部材5と、被係合部材6を有している。
【0076】
係合部材5は、
図4では図示を省略するが、フランジ部55に設けた上下二箇所の取付孔56にピン57が挿入されることによって、チェーン81に固定されている。係合部材5は、上側のピン57を中心として、
図4における反時計回り方向に(つまり、下向きに)回転しようとする場合がある。
【0077】
係合部材5は、水平方向に向かい合う第1係合面51と第2係合面52とを有している。第1係合面51及び第2係合面52は、
図4の構成例においては平面である。この第1係合面51と第2係合面52とによって、上向きに開口する開口部53が形成されている。開口部53の位置は、チェーン81に対し水平方向にずれている。係合部材5において第1係合面51は、垂直方向に沿っている。第2係合面52は、垂直方向に対し傾斜している。開口部53は、被係合部材6の進入方向(つまり、上下方向)について広がっている。第1係合面51と第2係合面52とは、底面59を介してつながっている。尚、底面59の形状は、特定の形状には限定されない。
【0078】
係合部材5には、第1係合面51よりも上側に、傾斜した案内面54が形成されている。案内面54は、第1係合面51に連続すると共に、上方に向かうに従い外向きに傾斜している。尚、案内面54は省略することも可能である。
【0079】
被係合部材6は、係合部材5の第1係合面51に係合する第3係合面61と、第2係合面52に係合する第4係合面62とを有している。第3係合面61は、垂直方向に沿っている。第4係合面62は、垂直方向に対し傾斜している。第2係合面52の傾斜角度と、第4係合面62の傾斜角度とは、この構成例においては同じである。第3係合面61と第4係合面62とによって、被係合部材6の進入部63の横断面は下向きに先細りに構成されている。
【0080】
被係合部材6には、第3係合面61の下側に、傾斜した案内面64が形成されている。案内面64は、第3係合面61に連続すると共に、下方に向かうに従い内向きに傾斜している。係合部材5の案内面54と、被係合部材6の案内面64とは、係合部材5と被係合部材6とが係合する際に、被係合部材6の進入部63を、係合部材5の開口部53へと案内することができる。尚、案内面64は省略することも可能である。
【0081】
この係合装置100の第1係合面51と第3係合面61との係合箇所において、最も上の点である接触点1は、第1特定点に相当する。係合部材5の回転中心Oを通りかつ接触点1を通る線Ln13と、第1係合面51と第3係合面61との係合箇所に沿う線(つまり、境界の線)Ln11との成す角度θ1は90°未満の鋭角である。尚、第1係合面51と第3係合面61との境界の線を図示する上で、
図4では、第1係合面51と第3係合面61との境界の線を延長した部分を破線で示し、そこに、「Ln11」の符号を示している。以下、Ln21についても、同様に図示する。
【0082】
また、第2係合面52と第4係合面62との係合箇所において、最も下の点である接触点2は、第2特定点に相当する。係合部材5の回転中心Oを通りかつ接触点2を通る線Ln23と、第2係合面52と第4係合面62との係合箇所に沿う線(つまり、境界の線)Ln21との成す角度θ2は90°未満の鋭角である。
【0083】
この構成の係合装置100は、係合部材5が反時計回り方向に回動しようとしても、
図4の拡大図に矢印で示すように、接触点1が第3係合面61に近づく方向に移動すると共に、接触点2も第4係合面62に近づく方向に移動する。係合装置100は、第1係合面51及び第3係合面61との間の摩擦、第2係合面52及び第4係合面62との摩擦に依らずに、係合部材5と被係合部材6との係合を維持することができる。よって、この係合装置100は、パレット30の昇降中に、係合部材5と被係合部材6との係合が外れることを抑制することができる。係合部材5と被係合部材6との係合が外れない機械式駐車設備用の係合装置100が実現する。
【0084】
構成例1の係合装置100は、以下の条件1及び条件2の両方を満足している。
条件1:係合部材5の第1係合面51と被係合部材6の第3係合面61との係合箇所において、係合部材5の回転中心Oを通りかつ第1特定点を通る線Ln13と、第1係合面51と第3係合面61との境界の線Ln11とが成す角度θ1が90°未満の鋭角になる第1特定点が存在する。
条件2:係合部材5の第2係合面52と被係合部材6の第4係合面62との係合箇所において、係合部材5の回転中心Oを通りかつ第2特定点を通る線Ln23と、第2係合面52と第4係合面62との境界の線Ln21とが成す角度θ2が90°未満の鋭角になる第2特定点が存在する。
【0085】
構成例1の係合装置は、条件1及び条件2の両方を満足していればよく、
図4に示す係合装置100の形状に限定されるものではない。構成例1の係合装置は、以下のような構成を採用することも可能である。
【0086】
図4に示す係合装置は、第1係合面51と第3係合面61との係合箇所において、第1特定点(つまり、接触点1)が、第1係合面51と第3係合面61との係合箇所の最も下に位置している。図示は省略するが、第1特定点は、第1係合面51と第3係合面61との係合箇所の、いずれかの位置に含まれていればよい。尚、「第1係合面51と第3係合面61との係合箇所」は、第1係合面51と第3係合面61とが当接している箇所としてもよい。同様に、第2係合面52と第4係合面62との係合箇所において、第2特定点(つまり、接触点2)は、第2係合面52と第4係合面62との係合箇所の、いずれかの位置に含まれていればよい。「第2係合面52と第4係合面62との係合箇所」は、第2係合面52と第4係合面62とが当接している箇所としてもよい。
【0087】
また、第1特定点は一つのみに限らず、第1係合面51と第3係合面61との係合箇所において、複数、存在していてもよい。第2特定点も、第2係合面52と第4係合面62との係合箇所において、複数、存在していてもよい。
【0088】
さらに、第1係合面51及び第3係合面61は平面に限定されない。同様に、第2係合面52及び第4係合面62は平面に限定されない。
【0089】
<係合装置の構成例2>
前述の通り、条件1及び条件2の両方の条件を満足する係合装置100は、係合部材5と被係合部材6とが係合状態を維持する。ところが、本願発明者らがさらに検討を行ったところ、所定の条件を満足するのであれば、前記の条件1又は条件2の一方を満足するだけでも、係合部材5と被係合部材6とが係合状態を維持することがわかった。以下、このことについて図面を参照しながら説明をする。
【0090】
図5は、構成例2に係る係合装置101を示している。
図5の一点鎖線は、係合部材5が被係合部材6に係合している状態を示している。
図5の実線は、係合部材5が、被係合部材6に係合している状態から下向きに回転した後の状態を示している。
【0091】
図5の係合装置101は、
図4の係合装置100とは形状が異なる。係合部材5の第1係合面51は、垂直方向に対して傾いている。また、被係合部材6の第3係合面61も、垂直方向に対して傾いている。
【0092】
より詳細に、
図5の係合装置101は、チェーン81に対して相対的に近くに位置している係合部材5の第1係合面51と被係合部材6の第3係合面61との係合箇所において、係合部材5の回転中心Oを通りかつ接触点1を通る線Ln13と、第1係合面51と第3係合面61との境界の線Ln11とが成す角度θ1は、90°未満の鋭角である。一方、チェーン81に対して相対的に遠くに位置している係合部材5の第2係合面52と被係合部材6の第4係合面62との係合箇所において、係合部材5の回転中心Oを通りかつ接触点2を通る線Ln23と、第2係合面52と第4係合面62との境界の線Ln21とが成す角度θ2は、90°以上の鈍角である。
【0093】
係合部材5が反時計回り方向に回転しようとしたときに、接触点1は第3係合面61に近づこうとする。一方、接触点2は、係合部材5が反時計回り方向に回転しようとしたときに、第4係合面62から離れようとする。
図5の係合装置101は、前述した条件1のみを満足する。しかしながら、この係合装置101は、係合部材5と被係合部材6との係合状態を維持することができる。
【0094】
係合部材5が、被係合部材6に対して相対的に、角度φだけ回転したと仮定したときに、第1係合面51が第3係合面61に対し水平方向に近づく量(近づく距離)と、第2係合面52が第4係合面62に対し水平方向に離れる量(離れる距離)とを、計算上で比較する。接触点1が近づく量の方が、接触点2が離れる量よりも大きいと、第1係合面51及び第3係合面61は係合状態を維持し、そのことにより、係合部材5の回転が規制され、その結果、第2係合面52及び第4係合面62も、係合状態を維持することになるから、係合部材5と被係合部材6との係合が外れることが抑制される。
【0095】
係合部材5と被係合部材6とが係合状態を維持する条件を、
図5~7を参照しながら説明する。尚、
図5~
図7に示す角度φは、理解を容易にするために大きく描いている。係合部材5は、図示されている程には回転しない。係合装置101を設計する際には、角度φを、例えば0.001°程度に設定して、以下の演算を行ってもよい。こうすれば、係合部材5を、実質的に回転しないように設計することができる。
【0096】
図5には、以下の演算の前提となるXY座標系を示している。つまり、係合部材5の回転中心Oを原点とし、
図5の左向きにX座標の正、上向きにY座標の正とする。
【0097】
第1係合面51と第3係合面と61との係合箇所における接触点1(x1,y1)は、係合部材5の回転時に、第3係合面61に近づく距離が最も長い点である。また、第2係合面52と第4係合面62との係合箇所における接触点2(x2,y2)は、係合部材5の回転時に、第4係合面62から離れる距離が最も短い点である。
【0098】
図6に接触点1の付近を拡大して示すように、接触点1と回転中心Oとの距離をL1とし、第1係合面51及び第3係合面61の係合箇所の、垂直方向に対する角度をα1とする。角度θ1は、前述したように、係合部材5の回転中心Oを通りかつ接触点1を通る線Ln13と、第1係合面51と第3係合面61との境界の線Ln11とが成す角度であり、θ1<90°である。
【0099】
回転前の接触点1の座標(x1,y1)は、L1、θ1、及びα1により、
x1=L1sin(θ1-α1), y1=L1cos(θ1-α1)
で表すことができる。
【0100】
また、係合部材5がφだけ回転したと仮定して、回転後の接触点1の座標(x1’,y1’)は、L1、θ1、α1及びφにより、
x1’=L1sin(θ1-α1+φ), y1’=L1cos(θ1-α1+φ)
で表すことができる。
【0101】
図6に示すように、第1係合面51が、静止している第3係合面61に対し、水平方向に相対的に移動する量A1は、
A1={x1+|y1’-y1|tan(α1)}-x1’
となる。尚、A1<0のときに、第1係合面51は第3係合面61に近づく方向に移動する。A1>0であれば、第1係合面51は第3係合面61から離れる方向に移動する。尚、
図6では、角度φが大きいため、第1係合面51は第3係合面61と干渉しているように描かれている。
【0102】
また、
図7に接触点2の付近を拡大して示すように、接触点2と回転中心Oとの距離をL2とし、第2係合面52及び第4係合面62の係合箇所の、垂直方向に対する傾きをα2とする。角度θ2は、前述したように、係合部材5の回転中心Oを通りかつ接触点2を通る線Ln23と、第2係合面52と第4係合面62との境界の線Ln21とが成す角度であり、ここでは、θ2>90°である。
【0103】
回転前の接触点2の座標(x2,y2)は、L2、θ2、及びα2により、
x2=L2sin(θ2-α2), y2=L2cos(θ2-α2)
で表すことができる。
【0104】
また、係合部材5がφだけ回転したと仮定して、回転後の接触点2の座標(x2’,y2’)は、L2、θ2、α2及びφにより、
x2’=L2sin(θ2-α2-φ), y2’=L2cos(θ2-α2-φ)
で表すことができる。
【0105】
図7に示すように、第2係合面52が、静止している第4係合面62に対し、水平方向に相対的に移動する量A2は、
A2=x2-{x2’+|y2’-y2|tan(α2+φ)}
となる。尚、A2<0のときに、第2係合面52は第4係合面62から離れる方向に移動する。A2>0であれば、第2係合面52は第4係合面62に近づく方向に移動する。
【0106】
従って、接触点1が近づく量の方が、接触点2が離れる量よりも大きくなるのは、
A1<A2
を満足するときである。
図5に示す構成例2の係合装置101は、この関係式A1<A2を満足している。
【0107】
関係式A1<A2を満足するように、係合装置の第1係合面51、第2係合面52、第3係合面61及び第4係合面62を構成すれば、係合部材5と被係合部材6との係合状態が外れることを抑制された係合装置を設計することができる。
【0108】
尚、図示は省略するが、
図5~
図7とは逆に、第1係合面51と第3係合面61との係合箇所において、接触点1の角度θ1が鈍角でかつ、第2係合面52と第4係合面62との係合箇所において、接触点2の角度θ2が鋭角である係合装置も、前記の関係式A1<A2を満足するように、第1係合面51、第2係合面52、第3係合面61及び第4係合面62を構成すれば、係合部材5と被係合部材6とは係合状態が外れることを抑制することができる。
【0109】
尚、
図4に示す構成例1の係合装置100は、第1係合面51と第3係合面61との係合箇所における接触点1の角度θ1が鋭角でかつ、第2係合面52と第4係合面62との係合箇所における接触点2の角度θ2が鋭角である。この係合装置100は、前記の関係式A1<A2を、必ず満足する(A1が負になり、A2が正になるため)。
【0110】
逆に、第1係合面51と第3係合面61との係合箇所における接触点1の角度θ1が鈍角でかつ、第2係合面52と第4係合面62との係合箇所における接触点2の角度θ2が鈍角である係合装置は、前記の関係式A1<A2を満足することがない(A1が正になり、A2が負になるため)。
【0111】
尚、前述した関係式A1<A2を満足する係合装置は、構成例2の範疇に含まれる。構成例2の係合装置は、
図5に示す係合装置101の形状に限定されるものではない。例えば、第1係合面及び第3係合面は平面に限定されない。同様に、第2係合面及び第4係合面は平面に限定されない。
【0112】
(係合部材と被係合部材とが適切に係合するための構成)
前述した構成例1及び構成例2の係合装置100、101は、係合部材5と被係合部材6とが係合をすれば、チェーン81に固定された係合部材5が回転しようとしても、係合部材5と被係合部材6とは係合状態を維持する。しかしながら、構成例1及び構成例2の係合装置100、101においても、パレット30の昇降中に、係合部材5と被係合部材6との係合が外れてしまう場合があることに、本願発明者らは気づいた。本願発明者らが、その原因について検討をした結果、係合部材5と被係合部材6との係合は、以下の原因により外れてしまうことがわかった。
【0113】
つまり、
図1及び
図2に例示する機械式駐車設備1や、特許文献1に記載されている機械式駐車設備は、チェーン81に固定された係合部材5を支持するためのガイドレール(例えば特許文献2に記載されているようなガイドレール)を備えていない。係合部材5の重心の位置がチェーン81に対して水平方向にずれているため、係合部材5には下向きのモーメントが作用する。チェーン81に付与されている張力がモーメントに対抗することによって、係合部材5は水平に姿勢を保持しようとするものの、チェーン81に付与する張力を無限大にしない限り、力学的に係合部材5の姿勢を水平にすることはできない。よって、被係合部材6に係合する前の係合部材5は必ず微小に傾き、係合部材5の自重と張力の関係から、例えば1~5°程度は下向き(つまり、
図4等における反時計回り方向)に傾いている。
【0114】
係合部材5は、停止したパレット30の被係合部材6に対し、下から上に向かって相対的に移動をすることにより係合する。係合前の係合部材5が下向きに傾いていると、係合部材5と被係合部材6との角度の違いによって、係合部材5と被係合部材6とが正しく係合しない恐れがある。
【0115】
構成例1及び構成例2の係合装置100、101は、第1特定点の角度θ1が鋭角となるように、第1係合面51と第3係合面61との係合箇所を構成している。しかしながら、係合部材5と被係合部材6とが、角度がずれて係合してしまうと、第1特定点の角度θ1が鈍角になる場合がある。また、第2特定点の角度θ2が鋭角となるように、第2係合面52と第4係合面62との係合箇所を構成していても、係合部材5と被係合部材6とが、角度がずれて係合してしまうと、第2特定点の角度θ2が鈍角になる場合がある。そうすると、構成例1及び構成例2の係合装置100、101であっても、外力等によって係合部材5が回転したときに、係合部材5と被係合部材6との係合が外れてしまうのである。
【0116】
図8に示す係合装置102は、係合部材5と被係合部材6とが適切に係合するように構成された係合装置の一例である。
【0117】
この係合装置102は、係合部材5の開口部53が、被係合部材6と係合してない状態のときには、上向きに(つまり、
図8における時計回り方向に)傾いている。
【0118】
図8の一点鎖線は、係合部材5の開口部53が傾いていない状態を示している。開口部53が傾いていない状態とは、
図8に示しているように、水平に維持されているパレット30の被係合部材6の第3係合面61及び第4係合面62の向きと、係合部材5の第1係合面51及び第2係合面52の向きとが一致することを意味する。
【0119】
図8に実線で示す係合部材5は、第1係合面51及び第2係合面52の向きが、被係合部材6の第3係合面61及び第4係合面62の向きとは異なっている。具体的に、第1係合面51及び第2係合面52は、
図8における時計回り方向に所定の角度θ3だけ傾いている。角度θ3は、5°程度に設定してもよい。
【0120】
つまり、係合部材5は、被係合部材6と係合していない状態において、第1係合面51及び第2係合面52が、第3係合面61及び第4係合面62に対し、係合部材5が上向きに回転する方向に、所定の角度分θ3だけ傾いている。
【0121】
尚、
図8は、チェーン81が真っ直ぐに張られている状態を示しており、係合部材5は下向きに回転していない。
【0122】
この構成により、係合部材5は、被係合部材6と係合していないときに、その自重により下向きに回転すると、開口部53の角度が、被係合部材6の進入部63の角度に一致するようになる。その結果、係合部材5と被係合部材6とは、適切に係合するようになる。
【0123】
または、係合部材5が自重により下向きに回転せずに、開口部53の角度が上向きに回転している状態のときには、被係合部材6の進入部63が係合部材5の開口部53に進入する際に、進入部63の一部が、第1係合面51や、第2係合面52や、案内面54と接触をし、それに伴い係合部材5が下向きに回転しながら、係合部材5と被係合部材6とが係合するようになる。その結果、第1係合面51と第3係合面61とが適切に係合しかつ、第2係合面52と第4係合面62とが適切に係合をした状態になって、係合部材5と被係合部材6との係合が完了する。
【0124】
つまり、いずれにおいても、係合部材5と被係合部材6とが係合する際に、両者が適切に係合する。
【0125】
図8の係合装置102は、
図4に示す係合装置100と同様に、係合部材5の第1係合面51と被係合部材6の第3係合面61との係合箇所において、係合部材5の回転中心Oを通りかつ第1特定点を通る線Ln13と、第1係合面51と第3係合面61との境界の線とが成す角度θ1が90°未満の鋭角になる第1特定点を有すると共に、係合部材5の第2係合面52と被係合部材6の第4係合面62との係合箇所において、係合部材5の回転中心Oを通りかつ第2特定点を通る線Ln23と、第2係合面52と第4係合面62との境界の線とが成す角度θ2が90°未満の鋭角になる第2特定点を有している。
【0126】
そのため、係合部材5と被係合部材6とが適切に係合すれば、パレット30の昇降中に、係合部材5と被係合部材6の係合が外れることを抑制することができる。係合部材5と被係合部材6とを適切に係合させる構成と、係合部材5と被係合部材6との係合が外れることを抑制する構成と、を組み合わせると、パレット30の昇降中に、係合部材5と被係合部材6との係合が外れることを、さらに効果的に抑制することができる。
【0127】
尚、図示は省略するが、係合部材5と被係合部材6とを適切に係合させる構成と、前述した関係式A1<A2を満足させる構成とを組み合わせるようにしてもよい。また、係合部材5と被係合部材6とを適切に係合させる構成は、必ずしも、係合部材5と被係合部材6との係合が外れることを抑制する構成と、を組み合わせる必要はない。
【0128】
図9は、係合部材5と被係合部材6とを適切に係合させる、第2の構成例を示している。
図9の係合装置103の係合部材5は、開口部53を上向きに回転させるのではなく、係合部材5の全体を上向きに回転させた状態で、チェーン81に対し固定するよう構成されている。具体的には、係合部材5のフランジ部55に設けた、上下二つの取付孔56の位置を、水平方向にずらしている。これにより、係合部材5の開口部53は、
図8の係合部材5と同様に、パレット30の被係合部材6に対し相対的に、時計回り方向に所定の角度θ3だけ回転する。
【0129】
つまり、係合部材5は、被係合部材6と係合していない状態において、第1係合面51及び第2係合面52が、第3係合面61及び第4係合面62に対し、係合部材5が上向きに回転する方向に、所定の角度分θ3だけ傾いている。
【0130】
この係合部材5を有する係合装置103も、
図8の係合装置102と同様に、係合部材5と被係合部材6とが適切に係合するようになる。
【0131】
尚、
図9の係合装置103は、
図4に示す係合装置100と同様に、係合部材5の第1係合面51と被係合部材6の第3係合面61との係合箇所において、係合部材5の回転中心Oを通りかつ第1特定点を通る線Ln13と、第1係合面51と第3係合面61との境界の線とが成す角度θ1が90°未満の鋭角になる第1特定点を有すると共に、係合部材5の第2係合面52と被係合部材6の第4係合面62との係合箇所において、係合部材5の回転中心Oを通りかつ第2特定点を通る線Ln23と、第2係合面52と第4係合面62との境界の線とが成す角度θ2が90°未満の鋭角になる第2特定点を有している。
【0132】
そのため、係合部材5と被係合部材6とが適切に係合すれば、パレット30の昇降中に、係合部材5と被係合部材6の係合が外れることを抑制することができる。
【0133】
尚、図示は省略するが、
図9に示す係合部材5と被係合部材6とを適切に係合させる構成と、前述した関係式A1<A2を満足させる構成とを組み合わせるようにしてもよい。また、
図9に示す係合部材5と被係合部材6とを適切に係合させる構成は、必ずしも、係合部材5と被係合部材6との係合が外れることを抑制する構成と、を組み合わせる必要はない。
【0134】
図8又は
図9に示す構成は、係合部材5と被係合部材6との係合が外れることを抑制する構成と組み合わせなくても、係合部材5と被係合部材6とを適切に係合させることが可能になるという利点がある。係合部材5と被係合部材6とが適切に係合する結果、係合部材5と被係合部材6との係合が外れることが抑制される。また、チェーン81に取り付けた係合部材5を、被係合部材6に対して適切に係合させることができるため、機械式駐車設備1は、特許文献2に記載されているようなガイドレールを省略することが可能になる。
【0135】
(係合装置の変形例)
図10は、係合装置104の変形例を示している。
図10の係合部材5は、チェーン81に近い第1係合面51が、垂直方向に対して傾斜していると共に、チェーン81から離れた第2係合面52が、垂直方向に沿っている。開口部53は、被係合部材6の進入方向(つまり、上下方向)について広がっている。第2係合面52の上側には、案内面54が形成されている。
【0136】
また、被係合部材6は、係合部材5の第1係合面51に係合する第3係合面61と、第2係合面52に係合する第4係合面62とを有している。第3係合面61は、垂直方向に対して傾斜している。第4係合面62は、垂直方向に沿っている。
【0137】
また、
図10の係合装置104も、係合部材5の第1係合面51と被係合部材6の第3係合面61との係合箇所において、係合部材5の回転中心Oを通りかつ第1特定点を通る線Ln13と、第1係合面51と第3係合面61との境界の線とが成す角度θ1が90°未満の鋭角になる第1特定点が存在すると共に、係合部材5の第2係合面52と被係合部材6の第4係合面62との係合箇所において、係合部材5の回転中心Oを通りかつ第2特定点を通る線Ln23と、第2係合面52と第4係合面62との境界の線とが成す角度θ2が90°未満の鋭角になる第2特定点が存在する。
【0138】
尚、
図10の係合装置104は、前述した関係式A1<A2を満足するように構成してもよい。
【0139】
図10の係合部材5はまた、
図8の係合部材5と同様に、開口部53を上向きに回転させている(一点鎖線参照)。この構成により、係合部材5と被係合部材6とは、適切に係合するようになる。
【0140】
尚、図示は省略するが、
図10に示す形状の係合部材5において、
図9に示すように、取付孔56の位置を、水平方向にずらして設けるようにしてもよい。
【0141】
図11は、係合装置105のさらに別の変形例を示している。
図11の係合装置105は、パレット30に取り付けた被係合部材6が、下向きに開口する開口部68を有するフック形状を有している。
図11の係合装置105は、
図4の係合装置100に対して、係合部材5の形状と、被係合部材6の形状とを入れ替えている。チェーン81に取り付けた係合部材5は、開口部68に進入する進入部58を有する形状である。この構成の係合装置105は、チェーン81に対し相対的に遠くに位置する係合部材5の第1係合面51と被係合部材6の第3係合面61との係合箇所において、係合部材5の回転中心Oを通りかつ第1特定点を通る線Ln13と、第1係合面51と第3係合面61との境界の線とが成す角度θ1が90°未満の鋭角になる第1特定点が存在すると共に、チェーン81に対し相対的に近くに位置する係合部材5の第2係合面52と被係合部材6の第4係合面62との係合箇所において、係合部材5の回転中心Oを通りかつ第2特定点を通る線Ln23と、第2係合面52と第4係合面62との境界の線とが成す角度θ2が90°未満の鋭角になる第2特定点が存在する、
尚、
図11の係合装置105は、例えば
図5の係合装置101と同様に、前述した関係式A1<A2を満足するように構成してもよい。
【0142】
また、
図11の係合部材5はまた、
図8の係合部材5と同様に、進入部58を上向きに回転させてもよい。この構成により、係合部材5と被係合部材6とは、適切に係合するようになる。尚、図示は省略するが、
図11に示す形状の係合部材5において、
図9に示すように、取付孔56の位置を、水平方向にずらして設けるようにしてもよい。
【0143】
(その他の実施形態)
ここに開示する係合装置は、
図1及び
図2に示す構成の以外の機械式駐車設備に適用することも可能である。例えば、チェーン81に固定した係合部材5の姿勢を水平に維持するためのガイドレールを設けてもよい。こうすることで、係合部材5が回転することが抑制される。前述したように、係合部材5は、被係合部材6との係合が外れることが抑制されているから、ここに開示する各係合装置とガイドレールとを組み合わせると、係合部材5からガイドレールにかかる力を減らすことができる。
【0144】
また、前記で説明をした各係合装置の特徴は、可能な範囲で、互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0145】
1 機械式駐車設備
100~105 係合装置
30 パレット
5 係合部材
51 第1係合面
52 第2係合面
53 開口部
58 進入部
6 被係合部材
61 第3係合面
62 第4係合面
63 進入部
68 開口部
80 昇降装置
81 チェーン(索状体)
V 自動車