(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】管継手の水圧試験装置及び水圧試験方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/04 20060101AFI20230224BHJP
F16L 21/00 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
G01M3/04 G
F16L21/00 Z
(21)【出願番号】P 2018239907
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤田 弘司
(72)【発明者】
【氏名】小仲 正純
(72)【発明者】
【氏名】吉田 義徳
(72)【発明者】
【氏名】冨田 直岐
【審査官】奥野 尭也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-048041(JP,U)
【文献】特開昭54-108923(JP,A)
【文献】特開平10-267782(JP,A)
【文献】中国実用新案第202580450(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0053439(KR,A)
【文献】実開昭62-014354(JP,U)
【文献】実開昭53-031318(JP,U)
【文献】実開昭61-190089(JP,U)
【文献】実開平05-003789(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第106949324(CN,A)
【文献】特開平11-153289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
F16L 21/00-21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の鋳鉄管(P1)の受口(1)内に他の鋳鉄管(P2)の挿し口(2)が挿入されているとともに、前記受口(1)の内周面と挿し口(2)の外周面との間の円環状空間(a)にゴム輪(3)が介在されて、前記挿し口先端面(2a)と前記受口(1)の奥端面(1a)とを近接し得る管継手において、
上記挿し口先端面(2a)と上記受口(1)の奥端面(1a)との間の全周に介設され
る止水リング(11)と、その止水リング(11)又は前記挿し口(2)にその内側から上記円環状空間(a)に貫通する充水加圧・空気抜き孔(12、13)と、を有し、
上記
止水リング(11)は、その円環部分が上記充水加圧・空気抜き孔(12、13)を有する場合その充水加圧・空気抜き孔(12、13)を除いて中身の詰まった断面を有する弾性材からなり、上記充水加圧・空気抜き孔(12、13)が上記挿し口(2)にある場合はその円環部分全周が中身の詰まった断面を有する弾性材からなって、上記挿し口(2)を受口(1)に挿し込むことによって、前記挿し口先端面(2a)と受口(1)の奥端面(1a)との間に密着しており、その密着した状態で上記充水加圧・空気抜き孔(12、13)から水(w)を注入して、上記円環状空間(a)内に充水して水圧試験を行うことを特徴とする管継手の水圧試験装置。
【請求項2】
上記止水リング(11)の上記円環状空間(a)側に上記挿し口先端部外周面に接する脱落防止用鍔(18)が設けられ、その脱落防止用鍔(18)によって止水リング(11)が挿し口先端部外周面に嵌っていることを特徴とする請求項1に記載の管継手の水圧試験装置。
【請求項3】
上記止水リング(11)の上記挿し口先端面(2a)と上記受口(1)の奥端面(1a)側の少なくも一方全周に突条(19)を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の管継手の水圧試験装置。
【請求項4】
上記止水リング(11)の内側全周に円環状のサポート(31)を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の管継手の水圧試験装置。
【請求項5】
一の鋳鉄管(P1)の受口(1)内に他の鋳鉄管(P2)の挿し口(2)が挿入されているとともに、前記受口(1)の内周面と挿し口(2)の外周面との間の円環状空間(a)にゴム輪(3)が介在されて、前記挿し口先端面(2a)と前記受口(1)の奥端面(1a)とを近接し得る管継手において、
上記挿し口先端面(2a)と上記受口(1)の奥端面(1a)との間の全周
に止水リング(11)を介在し
、その止水リング(11)は、円環部分が下記充水加圧・空気抜き孔(12、13)を有する場合その充水加圧・空気抜き孔(12、13)を除いて中身の詰まった断面を有する弾性材からなり、上記充水加圧・空気抜き孔(12、13)が上記挿し口(2)にある場合はその円環部分全周が中身の詰まった断面を有する弾性材からなって、前記挿し口(2)をさらに差し込んでその挿し口先端面(2a)と受口奥端面(1a)に前記止水リング(11)を密着し、前記止水リング(11)又は前記挿し口(2)の内側から上記円環状空間(a)に貫通する
前記充水加圧・空気抜き孔(12、13)を介し水(w)を注入して、前記円環状空間(a)内に充水して水圧試験を行うことを特徴とする管継手の水圧試験方法。
【請求項6】
上記止水リング(11)の上記円環状空間(a)側に挿し口先端部外周面に接する脱落防止用鍔(18)を設けて、その鍔(18)によって止水リング(11)を挿し口先端部外周面に嵌めることを特徴とする請求項5に記載の管継手の水圧試験方法。
【請求項7】
上記止水リング(11)の上記挿し口先端面(2a)と上記受口(1)の奥端面(1a)側の少なくも一方全周に突条(19)を設けたことを特徴とする請求項5又は6に記載の管継手の水圧試験方法。
【請求項8】
上記止水リング(11)の内側に円環状のサポート(31)を設けたことを特徴とする請求項5乃至7の何れか一つに記載の管継手の水圧試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一の鋳鉄管の受口内に他の鋳鉄管の挿し口が挿入された管継手の水圧試験装置及び水圧試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ダクタイル鋳鉄管で管路を構築するには、一の鋳鉄管の受口内に他の鋳鉄管の挿し口を挿入するとともに、前記受口の内周面と挿し口の外周面との間の円環状空間にゴム輪を介在した構造が一般的である(本願
図1、
図4等参照)。
この管路を構築した際、その挿し口を受口に挿し入れた継手部(止水部)は、その健全性を確認するため、継手に水圧を負荷する試験(水圧試験)が実施される。
【0003】
その水圧の負荷方法としては、例えば、呼び径:900未満の小径継手の場合、管路に水を充満させて(充水させて)継手に水圧を負荷する方法がとられている。一方、呼び径:900以上の管路は作業員が管内に入れることから、テストバンドを管内面から継手部に押さえ付けて、継手毎に水圧を負荷する試験が実施されることが多い(特許文献1参照)。このテストバンドを使用する場合、試験水圧は0.5MPaとすることが一般的である。
【0004】
また、挿し口先端面と受口奥端面との間にチューブを介設し、そのチューブに水を注入してチューブを前記挿し口先端面と受口奥端面とに圧着して(密に接しさせて)その両面間を閉塞し、受口の内周面と挿し口の外周面との間の円環状空間をチューブとゴム輪とによって密封し、その密封空間に水を注入して水圧をかける水圧試験も実施されている(特許文献2第1図、第2図参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭55-147643号公報
【文献】実開昭56-48041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
管路に水を充満させる水圧試験は、呼び径が大きい管路においては大量の水を必要とすることから、採用しづらい。
テストバンドによる水圧試験は、管の内面から半径方向外側に向かってテストバンドを押さえる構造であり(特許文献1図面参照)、直管と異形管との継手部は、接合する管の挿し口内面と受口内面との内径の相違からその間に段差が生じ易いため、テストバンドでその挿し口内面と受口内面とをうまく押さえられない場合が生じている。
また、チューブによる水圧は、テストバンドの水圧試験に比べれば、その構成が簡単であり、装置も小型とし得るが、チューブ内への水注入によって密封するため、その密封が十分に行われない場合が多い。
【0007】
この発明は、以上の実状の下、チューブによる水圧試験の欠点を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
管継手には、挿し口が受口に対して所要長さ移動し得る(出し入れし得る)K形、T形、US(R方式)形、PII形等があり、これらの管継手は、管継手を構成した所定の位置では、挿し口を受口内に挿し込んで、挿し口先端面と受口の奥端面とを接近(近接)させる構造である。
この発明は、その構造における挿し口先端面と受口の奥端面とを接近させる点に着目し、上記課題を達成するため、前記挿し口先端面と受口の奥端面との間を閉塞する止水リングを挿し口先端面と受口の奥端面との間に介在するとともに、その止水リングを介在して挿し口を受口に挿し入れ、挿し口先端面と受口の奥端面との間に止水リングを密に接しさせて上記円環状空間を密封して、その空間に水を注入して水圧試験を行うようにしたのである。
このようにすれば、挿し口の挿し込み力で密封性が担保されるため、その密封性も確実であり、大がかりな装置も必要はない。
【0009】
この発明に係る管継手の水圧試験装置の具体的な構成としては、一の鋳鉄管の受口内に他の鋳鉄管の挿し口が挿入されているとともに、受口の内周面と挿し口の外周面との間の円環状空間にゴム輪が介在されて、挿し口先端面と受口の奥端面とを近接し得る管継手において、前記挿し口先端面と前記受口の奥端面との間の全周に介設される止水リングと、その止水リング又は挿し口にその内側から円環状空間に貫通する充水加圧・空気抜き孔と、を有し、前記止水リングは、その円環部分が前記充水加圧・空気抜き孔を有する場合その充水加圧・空気抜き孔を除いて中身の詰まった断面を有する弾性材からなり、前記充水加圧・空気抜き孔が前記挿し口にある場合はその円環部分全周が中身の詰まった断面を有する弾性材からなって、挿し口を受口に挿し込むことによって、挿し口先端面と受口の奥端面との間に密着しており、その密着した状態で充水加圧・空気抜き孔から水を注入して、円環状空間内に充水して水圧試験を行う構成を採用することができる。
【0010】
この構成において、上記止水リングの円環状空間側に挿し口先端部外周面に接する脱落防止用鍔を設ければ、挿し口の先端に止水リングを取り付けて挿し口を受口に挿し込む際、挿し口から止水リングが外れることが防止されるため、その挿し入れを円滑に行うことができる。また、水圧負荷時、止水リングが水圧によって管の内面側に押し出される力が生じても、脱落防止用鍔が挿し口の外周面に当接することによって止水リングに対する前記押し出し力に抗する。
脱落防止用鍔は止水リングの全周に設けることが好ましい。脱落防止用鍔が全周にあれば、止水リングを挿し口先端部に嵌めることができてその取り付け状態が安定する。また、水圧負荷時、止水リングが水圧によって管の内面側に押し出される力が生じても、脱落防止用鍔の一部が挿し口先端面と受口奥端面の間に入り込んでセルフシール効果を発揮する。このため、管軸方向の圧縮力(挿し込み力)を増加しなくても高水圧の試験水を負荷できる。
【0011】
また、上記止水リングの挿し口先端面と受口の奥端面側の少なくも一方全周に突条を設けることができる。このようにすれば、突条に押圧力が集中するため、止水リングと挿し口先端面と受口奥端面との面圧が高くなって止水性が向上する。この面圧が高くなることは、管軸方向の圧縮力(挿し込み力)を小さくすることができる。
【0012】
上記充水加圧・空気抜き孔は別々の位置に形成する。その両孔は挿し口又は止水リングの中心に対して対称位置、好ましくは、充水・加圧孔は最下側、空気抜き孔は最上側とする。
また、充水加圧・空気抜き孔を挿し口に形成すれば、止水リングに充水加圧・空気抜き孔を形成しないため、構造が簡単となり、止水リングの厚み等を考慮する必要がない等の製作性が向上する。
【0013】
上記止水リングの内側全周に円環状のサポートを設ければ、水圧によって止水リングが管内面側に逸脱することを防げる。また、円環状のサポートを挿し口先端面と受口奥端面に挟む大きさとすれば、止水リングが挿し口に不動となって、挿し口先端面と受口の奥端面との間からの止水リングの逸脱が防止されると共に、水圧負荷によって、止水リングの挿し口先端面と受口の奥端面に対する面圧が増加してセルフシール効果を期待することができる。
【0014】
この発明に係る管継手の水圧試験方法の具体的な構成としては、一の鋳鉄管の受口内に他の鋳鉄管の挿し口が挿入されているとともに、前記受口の内周面と挿し口の外周面との間の円環状空間にゴム輪が介在されて、前記挿し口先端面と受口の奥端面とを近接し得る管継手において、前記挿し口先端面と受口の奥端面との間の全周に止水リングを介在し、その止水リングは、円環部分が後記充水加圧・空気抜き孔を有する場合はその充水加圧・空気抜き孔を除いて中身の詰まった断面を有する弾性材からなり、前記充水加圧・空気抜き孔が前記挿し口にある場合はその円環部分全周が中身の詰まった断面を有する弾性材からなって、挿し口をさらに差し込んでその挿し口先端面と受口奥端面に止水リングを密着し(密に接しさせ)、止水リング又は挿し口の内側から円環状空間に貫通する前記充水加圧・空気抜き孔を介し水を注入して、前記円環状空間内に充水して水圧試験を行う構成を採用することができる。
【0015】
この構成において、上記止水リングの円環状空間に挿し口先端部外周面に接する脱落防止用鍔を設けたり、
上記止水リングの円環状空間側に挿し口先端部外周面に接する脱落防止用鍔を設けたり、
その脱落防止用鍔が止水リングの全周に設けられてその鍔によって止水リングが挿し口先端部外周面に嵌っている構成としたり、
上記止水リングの挿し口先端面と受口の奥端面側の少なくも一方全周に突条を設けたり、
することができる。
また、上記止水リングの内側全周に円環状のサポートを設けたりすることもできて、同様に、上記作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、以上のように構成して、挿し口の挿し込み力で円環状空間の密封性を担保するようにしたので、その密封性も確実であり、大がかりな装置も必要はない。また、接合する管同士の内径が異なっても、挿し口先端面と受口奥端面の間に止水リングを介在するので、内径の相違に関係なく止水リングを密に接して介在することができて、止水が確実な水圧試験が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明に係る管継手の水圧試験装置の一実施形態の要部断面図
【
図2】同実施形態の止水リング部分の一部省略側面図
【
図3】
図2の切断図であり、(a)はA-A線、(b)はB-B線
【
図6】同実施形態の止水リング部分の一部省略側面図
【
図7】
図6の切断図であり、(a)はA-A線、(b)はB-B線、(c)は(a)の変形例
【
図10】同実施形態の切断図であり、(a)は
図6におけるA-A線、(b)は同B-B線
【
図11】同さらに他の実施形態の止水リング部分の一部省略側面図
【
図12】
図11の切断図であり、(a)はA-A線、(b)はB-B線
【
図18】同実施形態の止水リング部分の一部省略側面図
【
図20】同実施形態の止水リング部分の一部省略側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明に係る管継手の水圧試験装置の一実施形態を
図1~
図3に示す。この実施形態はK形の管継手であって、一のダクタイル鋳鉄管P1の受口1内に他のダクタイル鋳鉄管P2(以下、P1とP2を総称して適宜にPとする。)の挿し口2を挿入し、その受口1の内周面と挿し口2の外周面との間の円環状空間aにゴム輪3を介在させ、挿し口2の外周に円環状の押輪4を取り付けて、その押輪4でゴム輪3を空間a内に押し込んで固定した構成である。
そのゴム輪3の押し込みは、受口1のフランジ5から押輪4にT字ボルト6を挿通し、そのボルト6にナット7をねじ込んで行う。そのねじ込み度合いによって押し込み度合いを調整する。鋳鉄管P(P1、P2)はその内周面にモルタルライニングやエポキシ樹脂等からなる防食層8が形成されている。
【0019】
この発明は、このような管継手において、ゴム輪3による空間aの水密性を試験する水圧試験に係わるものであり、挿し口2の先端面2aと受口1の奥端面1aとの間に断面ほぼ長方形(
図3(b)参照)の円環状の合成ゴム等からなる弾性を有す
る止水リング11を介在し、
その止水リング11は、その円環部分が充水加圧・空気抜き孔12、13を除いて中身の詰まった断面を有する点が特徴である。その
中身の詰まったとは、完全な無垢状態を言うのではなく、圧縮されることによって水密性を維持し得る程度の気泡を有するものも含まれる。
止水リング11は、中心に対して対称の最上下位置に貫通孔12、13が形成されて、その上側貫通孔12が
上記空気抜き用(排気管)、下側貫通孔13が充水・加圧用(充水管)である。
【0020】
両貫通孔12、13の外側端は座ぐり14(
図3(a)参照)がなされて水wが円環状空間aに円滑に流出入し、空気が円滑に流出入するようになっている。また、両貫通孔12、13の内側端は円状に膨出して止水部15となっている。この止水部15は、止水リング11と一体に形成しても別部材を接着や溶着等によって一体としても良い。さらに、両貫通孔12,13には、バルブ16を介して可撓性パイプ(配管)9が接続可能となっている。貫通孔12、13は、現場において形成しても良いが、予め、工場などにおいて、止水リング11に形成しておくことが好ましい。配管9は貫通孔12、13内に途中まで挿入した又は貫通したものとし得る。
【0021】
この実施形態は以上の構成であり、水圧試験は、まず、一のダクタイル鋳鉄管P1の受口1内に他のダクタイル鋳鉄管P2の挿し口2を挿入する際、挿し口先端面2aと受口1の奥端面1aとの間の全周に止水リング11を介在して(挟み込んで)、密封空間aを形成する。その挿入は、レバーブロック等により、受口1と挿し口2に管軸方向の引き込み力を付与して行う(
図1矢印参照)。このとき、止水リング11の挿し口先端面2a及び受口1の奥端面1aへの面圧は、水圧試験で必要となる0.5MPa以上となるようにする。
【0022】
つぎに、密封区間aが形成されれば、下側の充水・加圧用貫通孔13に水配管(パイプ)9を接続し、前記密封空間aに試験用水wを送り込む(充水する)とともに、上側の空気抜き用貫通孔12から密封空間a内の空気を排出する。
密封空間aに水が充満すれば、空気抜き用貫通孔12側のバルブ16を締めて、試験水圧である0.5MPaの水圧を負荷し、継手部(ゴム輪3で止水されている部分:空間a)からの漏水の有無を検査する。漏水があれば、その個所を確認して修理し、一方、漏水がなければ、検査(試験)は修了する。
【0023】
漏水がなく、又は修理後の再検査において漏水がなければ、バルブ16を開放して水wを排出後、止水リング11を挿し口先端面2aと受口1の奥端面1aとの間から取り外す。この止水リング11の取り外しは、受口1と挿し口2を管軸方向に引き離して行うことが好ましく、取り外しすれば、挿し口2を挿し込んで挿し口先端面2aと受口1の奥端面1aとを所要の間隔とする。
【0024】
図4はT形継手の管継手の場合であり、この継手は、受口1内にゴム輪3を装填した状態で、挿し口2を受口1に挿入する。そのとき、上記実施形態と同様に、挿し口先端面2aと受口奥端面1aの間に止水リング11を介在する。
その状態で、上記と同様にして水圧試験を行う。
【0025】
図5~
図10には、上記各実施形態において、上記空間a側において止水リング11の挿し口先端部外周面に接する脱落防止用鍔18を設けた各実施形態を示す。
この鍔18は、一部でも良いが、全周に設けることが好ましい。その全周の場合、突片を一定間隔で設けたり、全周に連続的に(全周に亘って)設けたりすることができる。一定間隔は等間隔が好ましい。これらの場合、鍔18によって止水リング11が挿し口2の外周面に嵌れば、挿し口2から止水リング11が外れ難いため、止水リング11を挿し口2に嵌めた(取り付けた)状態で挿し口2を受口1に挿入する際、止水リング11が外れることがない。このため、挿入作業が円滑である。
【0026】
図5~
図8に示す実施形態は、止水リング11の空間a側に座ぐり14を有する場合であり(
図7(a)参照)、
図9、
図10は、座ぐり14を無くして貫通孔12、13をその軸上で空間aに開口したものである。
図5、
図8の実施形態においても、
図7(c)に示すように、貫通孔12、13をその軸上で空間aに開口したものとすることができる。挿し口2の先端外周面はカットされている場合が多い(
図9のテーパ面2b参照)。その場合は、そのテーパ面2bに添うように、鍔18の内側面は傾斜面18aとすることが好ましい(
図10参照)。この傾斜面18aは
図8に示す実施形態においても採用できる。
【0027】
図11、
図12に示す実施形態は、止水リング11の挿し口先端面2aと受口1の奥端面1a側の少なくも一方全周に突条19を設けたものであり、この実施形態においては、両側面に断面半円状の突条19を設けている。
このように突条19を設けると、上記挿し口先端面2aと受口奥端面1aが止水リング11を介して圧接した際、突条19に押圧力が集中するため、止水リング11と挿し口先端面2a及び受口奥端面1aとの面圧が高くなって止水性が向上する。
【0028】
図13、
図14に示す実施形態は、止水リング11には貫通孔12、13を設けず、挿し口2にそれぞれ貫通孔12、13を設けたもので、
止水リング11はその円環部分全周が中身の詰まった断面を有するものである。この場合、貫通孔12、13と配管(パイプ)9の間にはゴム等によるシール部17aを設ける。また、空気抜き用貫通孔12は挿し口2の最上側、充水・加圧貫通孔13は同最下側とする。
この場合も、同様に、貫通孔12、13において、充水・加圧するとともに、空気抜きして、水圧試験を行う。
【0029】
図15は、US形(R方式)継手の場合である。この管継手は、受口1内面にロックリング21を有し、挿し口2の外周面には突起22を有し、その突起22がロックリング21に係止することによってそれ以上の抜け出しが阻止され、挿し口先端面2aが受口奥端面1aに当接することによってそれ以上の挿し込みが防止される、伸縮離脱防止機能を有する。図中、23は押輪、24はスペーサ、25はロックリングサポータである。
【0030】
この管継手おいても、同図に示すように、挿し口先端面2aと受口奥端面1aの間に止水リング11を介在し、上記と同様にして、水圧試験を行う。
また、この実施形態においても、貫通孔12、13は、止水リング11に形成せずに、挿し口2に形成することができる。
【0031】
図16は、PII形又はPN形継手の場合である。この管継手は、ロックリング21が挿し口2外周面の挿し口溝22a内の軸方向移動範囲において受口1に対し挿し口2が抜き差し自在の伸縮離脱防止機能を有するものである。図中、25aはセットボルト、27は押輪、27aはゴム輪3を圧縮するためにネジ出しするボルトである。
この管継手においても、同図に示すように、挿し口先端面2aと受口奥端面1aの間に止水リング11を介在して、上記と同様にして、水圧試験を行う。
【0032】
以上の水圧試験において、
図17、
図18に示すように、止水リング11を断面円形とし(Oリング状とし)、その内面を円環状のサポート31によって押さえ、水圧によって止水リング11が内側に逸脱することを防ぐ構成とし得る。止水リング11は断面円形に限定されず、上記各実施形態の止水リング11においても、このサポート31を採用することができる。
また、止水リング11を断面四角状とし、管P内面に飛び出る形状とする場合、サポート31は、挿し口端面2aと受口奥端面1aの間に挟まず、管P内径より小さな外径とする。この場合でも、水圧による力は半径方向のため、サポート31がその水圧に抗して止水リング11の管P内面側への逸脱を防止する。
【0033】
サポート31は、
図18に示すように周囲に分割したものとして、その各分割片32は相互に連結・解体可能にボルト止めとするとともに、各分割片32毎、又は少なくとも一個所において、同図に示すように、サポート31から側方に突出する突片33にボルト34をねじ込み、そのボルト34の先端を挿し口2の内面に当てて、そのねじ込み量を調節することによってサポート31の高さを調節可能とする。また、各分割片32を個別に径方向に移動可能に支持し、その支持枠からのボルトの進退によって各分割片32を進退させて円環状サポート31が拡縮径可能とすることができる。
この管継手においても、
図17に示すように、挿し口先端面2aと受口奥端面1aの間に止水リング11を介在して、上記と同様にして、水圧試験を行う。
【0034】
図13、
図14に示す、止水リング11に貫通孔12、13を設けず、挿し口2にそれぞれ貫通孔12、13を設けた場合、例えば、
図19、
図20に示すように、油圧ジャッキ36でその突片36aによりシール部17aを外側に押圧して挿し口2内面に圧接することができる。このとき、油圧ジャッキ36とその付属機器は車輪付の車で移動自在とすることができる。この
図19、
図20の実施形態においても、挿し口2に貫通孔12、13を形成せずに、貫通孔12、13付の止水シール11を挿し口先端面2aと受口奥端面1aに介在したものとすることができる。この場合は、止水シール11を油圧ジャッキ36の突片36aで押圧する。
【0035】
図15、
図16、
図17の実施形態の各管継手においても、止水リング11に貫通孔(充水加圧・空気抜き孔)12、13を形成せず、挿し口2側に同貫通孔12、13を形成したものとすることができる。
【0036】
上記各実施形態は、K形管継手、T形管継手、US形(R方式)管継手、PII形管継手又はPN形管継手の場合であったが、この発明は、挿し口先端面と受口の奥端面とを近接し得る構造であれば、大きな伸びと離脱防止機能を有する種々の管継手にも採用することができる。
また、前記実施形態はダクタイル鋳鉄管であったが、他の鋳鉄管等でもこの発明を採用できることは言うまでもない。
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0037】
1 受口
1a 受口奥端面
2 挿し口
2a 挿し口先端面
3 ゴム輪
4 押輪
11 止水リング
12 空気抜き用孔(貫通孔、排気管)
13 充水・加圧用孔(貫通孔、充水管)
17a 充水・加圧用孔(充水管)及び空気抜き用孔(排気管)のシール部
18 脱落防止用鍔
21 ロックリング
22 ロックリング抜け止め用突起
22a 挿し口溝
31 円環状サポート
36 シール部押圧用油圧ジャッキ