(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】侵入検知システム
(51)【国際特許分類】
G08B 13/186 20060101AFI20230224BHJP
G08B 13/196 20060101ALI20230224BHJP
G01V 8/16 20060101ALI20230224BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20230224BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
G08B13/186
G08B13/196
G01V8/16
G02B6/00 B
H04N7/18 D
(21)【出願番号】P 2019010974
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】592031318
【氏名又は名称】富士古河E&C株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 実
(72)【発明者】
【氏名】中峠 史朗
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-053888(JP,A)
【文献】特開平05-022755(JP,A)
【文献】特開2018-148538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V1/00-99/00
G02B6/00
6/02
6/245-6/25
6/46-6/54
G08B13/00-15/02
23/00-31/00
H04B10/00-10/90
H04J14/00-14/08
H04L41/00-43/55
H04N5/222-5/257
7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視区域における侵入検知システムであって、
監視カメラと、
前記監視カメラの映像を伝送する映像伝送光ファイバと、
前記映像伝送光ファイバと接続され、映像信号を受信する映像受信部と、
を具備し、
侵入検知用光ファイバとして、前記映像伝送光ファイバが前記監視区域に配設されて、前記映像伝送光ファイバへの荷重又は前記映像伝送光ファイバの変
形によって生じる映像信号の乱れ
又は減
衰を、前記映像受信部で検知することで、前記監視区域内への侵入検知を行
い、これにより、侵入検知系統は、映像伝送系統と共通の光信号を用いて構成されることを特徴とする侵入検知システム。
【請求項2】
前記監視カメラは、光給電によって動作することを特徴とする請求項1記載の侵入検知システム。
【請求項3】
監視区域における侵入検知システムであって、
監視カメラと、
前記監視カメラへ光給電を行う光給電光ファイバと、
前記監視カメラの映像を伝送する映像伝送光ファイバと、
前記映像伝送光ファイバと接続され、映像信号を受信する映像受信部と、
を具備し、
侵入検知用光ファイバとして、前記光給電光ファイバが前記監視区域に配設されて、前記光給電光ファイバへの荷重又は前記光給電光ファイバの変
形によって、前記監視カメラへの給電の乱れ
又は減
衰を生じさせ、前記監視カメラに生じる撮像動作の異常又は機能低減による前記映像伝送光ファイバからの映像信号の乱れ
又は減
衰を前記映像受信部で検知することで、前記監視区域内への侵入検知を行
い、これにより、侵入検知系統は、光給電系統と共通の光信号を用いて構成されることを特徴とする侵入検知システム。
【請求項4】
前記光給電光ファイバと前記映像伝送光ファイバとは同一の光ファイバであり、前記監視カメラへは給電用の光が伝送されるとともに、前記監視カメラからの戻りには映像信号が伝送されることを特徴とする請求項3に記載の侵入検知システム。
【請求項5】
前記監視区域は複数の領域に区分され、それぞれの領域ごとに前記監視カメラと、前記侵入検知用光ファイバとが配設され、
一の前記領域に配設された前記侵入検知用光ファイバと、他の前記領域を撮影する前記監視カメラとが接続され、前記侵入検知用光ファイバによる検知領域と、当該侵入検知用光ファイバと接続される前記監視カメラの撮像領域とが異なることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の侵入検知システム。
【請求項6】
前記映像受信部には、受光レベルが調整された光可変減衰器が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の侵入検知システム。
【請求項7】
前記映像受信部は、前記監視カメラからの映像送信時に予め映像信号に埋め込まれた特定のコードの検出結果に基づいて、侵入検知の判定を行うことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の侵入検知システム。
【請求項8】
前記映像伝送光ファイバは、2系統設けられ、一方の系統は、前記侵入検知用光ファイバを兼ね、他方の系統は、前記監視カメラと前記映像受信部とを直接つないでおり、
前記映像受信部は、前記2系統を経由した映像信号を比較して、侵入検知の判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の侵入検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警戒区域或いは侵入禁止区域等の侵入が制限された区域に、人、動物、車両等が侵入したことを検知する侵入検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、侵入が制限された区域に立設された複数のポールや支柱等の支持物に、光ファイバをセンサとして線状若しくは面状に配策し、その光ファイバにおける伝送状態を検出することにより侵入者を検知する侵入検知システムが知られている。
【0003】
このような侵入検知システムは、監視区域の支柱等に光ファイバが配策され、光ファイバの両端には、光送受信器が接続される。侵入者が存在すると、当該光ファイバの光伝送損失が増大するため、光送受信器によって、受光レベルを監視することにより、侵入者の有無を監視するものである。
【0004】
このような侵入検知システムとしては、一部に光損失発生部が配置されたものが提案されている。例えば、侵入者等によって支持物の間に配策された光ファイバに荷重がかけられると、光損失発生部によって光ファイバの一部に局所的な変形や荷重が付加される。このように光ファイバの伝送損失を増加させて、送光レベルと受光レベルとの差を大きくすることで、感度良く監視区域への侵入を検知することができる(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-53888号公報
【文献】特開平3-194505号公報
【文献】特開平5-233969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の方法では、侵入検知のために、光ファイバの光の送受信器が必要となり、システムが複雑である。例えば、多くの場合、従来の侵入検知システムには監視カメラが併設されており、侵入者を検知した際の映像を記録することが可能である。このため、監視カメラ用にも、電源ケーブルや映像伝送用のケーブルが必要となる。
【0007】
通常、これらの映像や光ファイバセンサによる監視は、監視区域から離れた場所の管理施設で管理されることが多い。このため、従来の侵入検知システムでは、管理施設と監視区域との間に、侵入検知用の光ファイバや監視カメラの映像伝送用のケーブルなど、多くのケーブル類を敷設する必要がある。なお、映像信号などは無線伝送による方法もあるが、無線送受信器が別途必要となるなど、使用機器が増加する。このため、侵入検知システムのコスト増の要因となり、敷設工期やメンテナンス工期の増大などの問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、シンプルな構成で、侵入検知を行うことができると共に、監視映像の伝送も可能である侵入検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達するために本発明は、監視区域における侵入検知システムであって、監視カメラと、前記監視カメラの映像を伝送する映像伝送光ファイバと、前記映像伝送光ファイバと接続され、映像信号を受信する映像受信部と、を具備し、侵入検知用光ファイバとして、前記映像伝送光ファイバが前記監視区域に配設されて、前記映像伝送光ファイバへの荷重又は前記映像伝送光ファイバの変形によって生じる映像信号の乱れ又は減衰を、前記映像受信部で検知することで、前記監視区域内への侵入検知を行い、これにより、侵入検知系統は、映像伝送系統と共通の光信号を用いて構成されることを特徴とする侵入検知システムである。
【0010】
この場合、前記監視カメラは、光給電によって動作してもよい。
【0011】
また、本発明は、監視区域における侵入検知システムであって、監視カメラと、前記監視カメラへ光給電を行う光給電光ファイバと、前記監視カメラの映像を伝送する映像伝送光ファイバと、前記映像伝送光ファイバと接続され、映像信号を受信する映像受信部と、を具備し、侵入検知用光ファイバとして、前記光給電光ファイバが前記監視区域に配設されて、前記光給電光ファイバへの荷重又は前記光給電光ファイバの変形によって、前記監視カメラへの給電の乱れ又は減衰を生じさせ、前記監視カメラに生じる撮像動作の異常又は機能低減による前記映像伝送光ファイバからの映像信号の乱れ又は減衰を前記映像受信部で検知することで、前記監視区域内への侵入検知を行い、これにより、侵入検知系統は、光給電系統と共通の光信号を用いて構成されることを特徴とする侵入検知システムであってもよい。
【0012】
この場合、前記光給電光ファイバと前記映像伝送光ファイバとは同一の光ファイバであり、前記監視カメラへは給電用の光が伝送されるとともに、前記監視カメラからの戻りには映像信号が伝送されてもよい。
【0013】
前記監視区域は複数の領域に区分され、それぞれの領域ごとに前記監視カメラと、前記侵入検知用光ファイバとが配設され、一の前記領域に配設された前記侵入検知用光ファイバと、他の前記領域を撮影する前記監視カメラとが接続され、前記侵入検知用光ファイバによる検知領域と、当該侵入検知用光ファイバと接続される前記監視カメラの撮像領域とが異なることが望ましい。
前記映像受信部には、受光レベルが調整された光可変減衰器が設けられてもよい。前記映像受信部は、前記監視カメラからの映像送信時に予め映像信号に埋め込まれた特定のコードの検出結果に基づいて、侵入検知の判定を行ってもよい。前記映像伝送光ファイバは、2系統設けられ、一方の系統は、前記侵入検知用光ファイバを兼ね、他方の系統は、前記監視カメラと前記映像受信部とを直接つないでおり、前記映像受信部は、前記2系統を経由した映像信号を比較して、侵入検知の判定を行ってもよい。
【0014】
本発明によれば、監視カメラの映像伝送光ファイバを侵入検知用光ファイバとして利用し、映像信号の乱れ、減衰又は無信号化によって監視区域への侵入を検知することで、侵入検知用光ファイバのために別途の光送受信器や別途の光ファイバが不要である。このため、シンプルな構成の侵入検知システムを得ることができる。
【0015】
この際、監視カメラが光給電で動作すれば、映像伝送光ファイバと同系統の光ファイバを給電用に用いることもできるため、監視カメラへの電源設備や配線が不要となり、よりシンプルな侵入検知システムを得ることができる。
【0016】
また、本発明では、映像信号の乱れ、減衰又は無信号化を起こさせるために、映像伝送光ファイバ自体を侵入検知用光ファイバとして用いなくても、監視カメラが光給電によるものであれば、光給電光ファイバを侵入検知用光ファイバとして用いてもよい。この場合でも、給電用の光が伝送損失によって減衰等することで、監視カメラの動作が安定せず、安定した撮像と映像の伝送が困難となる。このため、映像信号の乱れ、減衰又は無信号化によって監視区域への侵入を検知することができる。
【0017】
また、この場合には、同一の光ファイバで給電と映像伝送とを行うこともできる。例えば、多心の光ファイバを用いる場合には、一部の光ファイバ心線を給電用に用い、他の光ファイバ心線を映像伝送に用いてもよい。また、一つの光ファイバ心線に光を多重して伝送することで、監視カメラに向かっては給電用の光の波長で光が伝送され、監視カメラからの戻りには、映像伝送用の波長で光を伝送することも可能である。
【0018】
なお、この場合には、侵入検知用光ファイバに荷重がかけられると、光給電用光ファイバと映像伝送用光ファイバの両方に光の伝送損失が増大するため、上述のように、より確実に映像信号の乱れや減衰によって監視区域への侵入を検知することができる。
【0019】
また、監視区域を複数の領域に区分して、それぞれの領域ごとに監視カメラと侵入検知用光ファイバとを配設し、監視カメラで撮影を行う領域と、監視カメラに接続された侵入検知用光ファイバが配策された領域とを異なるようにすることで、映像信号の乱れや減衰が生じた監視領域を、他の監視カメラで確実に撮影することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シンプルな構成で、侵入検知を行うことができると共に、監視映像の伝送も可能である侵入検知システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】(a)、(b)は、光損失発生部15の動作を示す図。
【
図4】監視領域11a~11cと監視カメラ3a~3cの配置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、侵入検知システム1を示す概略図ある。侵入検知システム1は、監視区域11における侵入者等を検知するもので、主に、監視カメラ3、映像受信部7、侵入検知用光ファイバ13、光損失発生部15等から構成される。
【0023】
監視区域11の外周には、複数の支持部17a、17bなどを有するフェンスが設置される。支持部17a、17bは、ポールや柱などの構造体である。なお、支持部17a、17bは、3本以上であってもよい。支持部17a、17b(フェンス)には、侵入検知用光ファイバ13が蛇行するように配設される。
【0024】
図2は、侵入検知用光ファイバ13の一例を示す図である。侵入検知用光ファイバ13としては、例えば、図示したように自己支持型の光ファイバケーブルが用いられる。侵入検知用光ファイバ13は、支持線部19とケーブル部21とが連結部29を介して連結されている。連結部29を切断することで、支持線部19とケーブル部21とを容易に分離することができる。
【0025】
支持線部19には、例えば鋼線である支持線23が配置される。また、ケーブル部21には、複数の光ファイバ心線27とテンションメンバ25が配置される。支持線23、光ファイバ心線27及びテンションメンバ25は、一括して外被31で被覆される。なお、光ファイバ心線27は、図示したように4心である場合には限られず、2~3心であってもよく、4心以上であってもよい。また、侵入検知用光ファイバ13は、多心でなくてもよく、単心であってもよい。
【0026】
図1に示すように、支持部17aには、複数のローラ33が配置される。侵入検知用光ファイバ13は、ローラ33近傍で支持線部19とケーブル部21とに分離され、支持線部19の一端は、ローラ33を介して後述するワイヤ19aと接続される。すなわち、ケーブル部21はローラ33にはかけられず、ローラ33によって屈曲することがない。
【0027】
一方、支持部17bには、複数の固定部35が配置される。侵入検知用光ファイバ13は、固定部35近傍で支持線部19とケーブル部21とに分離され、支持線部19の他端は、固定部35と接続される。すなわち、支持部17a、17b間においては、支持線部19とケーブル部21とが一体で配設されるが、支持部17a、17b近傍において、支持線部19とケーブル部21とが分離されて、ケーブル部21は多少の弛みを持って配置される。このため、支持部17a、17bの間に侵入検知用光ファイバ13をある程度のテンションで蛇行配置しても、屈曲部においては支持線部19のみが張力を負担し、ケーブル部21には、蛇行配置等における強い屈曲が付与されることがない。
【0028】
また、支持部17aの一部には、必要に応じて光損失発生部15が配置される。
図3(a)は、光損失発生部15を示す概略図である。光損失発生部15は、主に、ばね37、本体部38、可動体39、ピン41等から構成される。
【0029】
支持部17aには、本体部38が固定される。本体部38には、可動体39が本体部38に対してスライド動作可能に配置される。可動体39には、ばね37に接続される。可動体39は、通常時には、ばね37によって下方に引き寄せられた位置で保持される。
【0030】
可動体39には、ばね37とは逆側にワイヤ19aの一端が接続される。ワイヤ19aは、前述した、支持部17a、17b間に配設された侵入検知用光ファイバ13の支持線部19と接続される。例えば、図示した例では、支持部17a、17b間に配設された4本の支持線部19と接続される。
【0031】
可動体39の先端部には、突起部43が形成される。また、本体部38には、突起部43とずれた位置にピン41が配置される。ピン41と可動体39の間には、可動体39の上部を横切るように、ケーブル部21が配置される。通常時には、可動体39とピン41との間には隙間が形成され、ケーブル部21は隙間に配置されるため、ケーブル部21には力は付与されておらず、ケーブル部21は、本体部38を横切るように略まっすぐに配置される。
【0032】
これに対し、侵入者が侵入検知用光ファイバ13を超えて、侵入が制限された領域に入ろうとして、
図1に示した支持部17a、17b間の侵入検知用光ファイバ13に荷重や曲げ力が加わると、ローラ33を介して、ワイヤ19aが上方に引っ張られる。
【0033】
図3(b)は、ワイヤ19aが上方に引っ張られた状態を示す図である。侵入検知用光ファイバ13に荷重や曲げ力が加わり、ワイヤ19aが上方(図中矢印B)に引っ張られると、可動体39が、ばね37に対抗して上方に移動する(図中矢印C)。この際、可動体39は、ケーブル部21を上方に押し上げる。前述したように、可動体39の先端には突起部43が配置され、突起部43とはずれた位置にピン41が配置されるため、ケーブル部21は、突起部43とピン41との間で屈曲される。
【0034】
このように、ケーブル部21が強く屈曲すると、ケーブル部21を伝送していた光の伝送損失が大きくなる。このケーブル部21の伝送損失を監視することで、侵入を検知することができる。なお、光損失発生部15は、図示した例には限られず、監視区域に配設された侵入検知用光ファイバ13が、荷重や曲げ力を受けた際に、ケーブル部21の伝送損失を増加可能な構造であれば、あらゆる構成を適用可能である。また、侵入検知用光ファイバ13に荷重や曲げ力が加わった際に生じる伝送損失をそのまま検知可能であれば、伝送損失を増加させるための光損失発生部15は必ずしも必要ではない。
【0035】
ここで、本実施形態では、監視カメラ3の映像を伝送する映像伝送光ファイバ5が侵入検知用光ファイバ13を兼ねる。したがって、侵入検知用光ファイバ13の一端は、監視カメラ3に接続され、侵入検知用光ファイバ13として、映像伝送光ファイバ5が監視区域11に配設される。
【0036】
侵入検知用光ファイバ13(映像伝送光ファイバ5)の他端は、監視カメラ3からの映像信号を受信する映像受信部7と接続される。すなわち、監視カメラ3で撮影された映像は、映像伝送光ファイバ5を介して映像受信部7へ伝送される(
図1の矢印A)。
【0037】
なお、映像受信部7は、受信した映像をモニタ等の表示部に表示することが可能であり、必要に応じて、映像信号を記憶部に記憶することが可能である。また、監視カメラ3は、常時映像を取得してもよく、所定の間隔で動画や静止画を取得してもよい。また、常時映像を取得しつつ、所定の期間が経過した映像は自動的に消去し、侵入者が発見された際の映像は、消去されずに残すようにしてもよい。また、映像受信部7には、必要に応じて光可変減衰器(光アッテネータ)が配置されてもよい。光可変減衰器によって、侵入検知用光ファイバ13(映像伝送光ファイバ5)での光損失発生状態のレベルや映像受信部7における受光レベルの調整が可能であり、より最適な侵入検知判断を行うことができる。
【0038】
映像受信部7は、例えば監視区域11から離れた管理施設に配置され、他の監視区域の映像等を一括して管理可能である。なお、本実施形態では監視カメラ3を動作させる電源9は、管理施設とは異なる場所(例えば太陽光発電や蓄電池)に配置されてもよく、または、管理施設に電源9が配置され、管理施設から監視カメラ3へ給電してもよい。
【0039】
前述したように、侵入検知用光ファイバ13に所定以上の外力が付与されると、侵入検知用光ファイバ13の光伝送損失が大きくなる。本実施形態では、監視カメラ3の映像を伝送する映像伝送光ファイバ5が侵入検知用光ファイバ13を兼ねるため、映像伝送光ファイバ5への荷重又は映像伝送光ファイバ5の変形若しくは断線によって、映像信号の乱れ、減衰又は無信号化が生じることとなる。
【0040】
映像受信部7は、映像信号の乱れ又は減衰を検知可能である。例えば、映像信号がデジタル信号である場合には、映像受信部7は信号のレベル(強度)やブロックノイズなどを検知することができる。このため、映像受信部7に配置された制御部は、映像信号の乱れ又は減衰が所定以上である場合に、監視区域へ侵入者が侵入したと判断する。
【0041】
なお、このような映像信号の乱れや減衰を検知可能な機器やソフトウェアは、従来、テレビやモニタなどで使用されている公知のものを適用可能である。例えば、映像信号の光の強度によって減衰や無信号を検出可能であり、または、映像送信時に予め映像信号に埋め込まれた特定のコードを受信器側で検出して、検出異常が所定の時間連続で発生した場合に映像信号の乱れが発生したと判断することができる。また、映像伝送光ファイバ5を2系統配置して、一方を侵入検知用光ファイバ13として使用し、他方を直接映像受信部7に接続し、両者の映像信号を比較して、映像信号の減衰を判断することもできる。いずれにしても、映像伝送光ファイバ5への荷重又は映像伝送光ファイバ5の変形若しくは断線によって生じる映像信号の乱れ、減衰又は無信号化を、映像受信部7で検知することで、監視区域11内への侵入検知を行うことができる。
【0042】
次に、本実施形態にかかる侵入検知システム1の利用形態について説明する。
図4は、監視領域11a~11cにおける監視状態を示す概念図である。監視区域は、複数の監視領域11a~11cに区分され、それぞれの監視領域11a~11cごとに監視カメラ3a~3cと、侵入検知用光ファイバ13とが配設される。
【0043】
監視カメラ3aは、監視領域11aに配設された侵入検知用光ファイバ13(映像伝送光ファイバ5)と接続され、監視カメラ3bは、監視領域11bに配設された侵入検知用光ファイバ13(映像伝送光ファイバ5)と接続され、監視カメラ3cは、監視領域11cに配設された侵入検知用光ファイバ13(映像伝送光ファイバ5)とそれぞれ接続される。すなわち、それぞれの監視領域11a~11cの侵入検知システムは独立している。
【0044】
一方、監視領域11aの侵入検知が可能な監視カメラ3aの映像信号は、隣の監視領域11bにおける監視映像である。同様に、監視領域11bの侵入検知が可能な監視カメラ3bの映像信号は、隣の監視領域11cにおける監視映像である。すなわち、一の監視領域に配設された侵入検知用光ファイバ13と、他の監視領域を撮影する監視カメラ3とが接続され、侵入検知用光ファイバ13による検知領域と、当該侵入検知用光ファイバ13と接続される監視カメラ3の撮像領域とが異なる。
【0045】
例えば、監視領域11bに侵入者があった場合には、監視領域11bに配設される侵入検知用光ファイバ13と接続される監視カメラ3bの映像が乱れることとなる。このため、監視カメラ3bで監視領域11bを撮影したのでは、肝心な侵入者の撮影画像が乱れたり、場合によっては映像が途切れてしまう場合がある。これに対し、監視領域11bの映像を、他の監視領域11aの監視カメラ3aで撮影することで、映像信号の乱れや減衰(無信号化)せずに映像を伝送することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、侵入検知用光ファイバ13として映像伝送光ファイバ5を用いることで、侵入検知系統と映像伝送系統とを一本化することができ、それぞれ別個に光ファイバ等を配設する必要がない。すなわち、従来の侵入検知システムのように、侵入検知系統と、監視カメラの映像伝送系統とを別個に配設する必要がなく、侵入検知用の光送受信器も不要となる。このため、シンプルな構成の侵入検知システム1を得ることができる。この結果、構築のための工期が短縮することができ、コストも低減可能である。
【0047】
また、監視区域11を複数の監視領域に分割して、それぞれの監視領域ごとに侵入を検知するようにし、各領域に配設される映像伝送光ファイバ5と接続される監視カメラ3で他の監視領域の映像を撮影することで、侵入者による伝送損失によって侵入者の映像の乱れ等を避けることができる。このため、確実に、必要な映像を取得することができる。
【0048】
次に、第2の実施形態について説明する。
図5は、第2の実施形態にかかる侵入検知システム1aを示す概略図である。なお、以下の説明において、侵入検知システム1と同様の機能を奏する構成については、
図1~
図4と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0049】
侵入検知システム1aは、侵入検知システム1とほぼ同様の構成であるが、監視カメラ3が光給電により動作し、光給電光ファイバ5aが侵入検知用光ファイバ13として利用される点で異なる。すなわち、侵入検知システム1aでは、映像伝送光ファイバ5は、侵入検知用光ファイバ13としては使用されず、監視区域11には配設が不要である。
【0050】
光給電光ファイバ5aは、監視区域11の支持部17a、17bに侵入検知用光ファイバ13として配設される。光給電光ファイバ5aの一端には光源9aが接続され、光給電光ファイバ5aの他端には監視カメラ3に接続される。すなわち、光源9aからの光は、光給電光ファイバ5aを介して監視カメラ3に伝送される(図中矢印D)。監視カメラ3は、光給電光ファイバ5aを伝送する光によって動作する。
【0051】
監視カメラ3により撮影された映像は、映像伝送光ファイバ5によって映像受信部7に伝送される(図中矢印A)。なお、映像受信部7と光源9aは、例えば管理施設等に配置される。
【0052】
前述したように、監視区域11に侵入者があると、侵入検知用光ファイバ13(光給電光ファイバ5a)への荷重又は侵入検知用光ファイバ13(光給電光ファイバ5a)の変形若しくは断線によって、光の伝送損失が大きくなる。このため、監視カメラ3への給電の乱れ、減衰又は無給電が生じる。このような監視カメラ3への給電の乱れや減衰等は、監視カメラ3の撮像動作の異常又は機能低減の要因となる。この結果、映像伝送光ファイバ5からの映像信号が減衰又は乱れるため、映像受信部7でこの映像信号が減衰、乱れ又は無信号化を検知することで、監視区域11内への侵入検知を行うことができる。
【0053】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、光給電によって監視カメラ3を動作させる場合には、光給電光ファイバ5aの光の伝送損失が大きくなった場合でも、監視カメラ3の動作が安定せず、映像伝送光ファイバ5により伝送される映像信号の減衰、乱れ又は無信号化を生じさせることができる。このため、映像信号の減衰、乱れ又は無信号化を映像受信部7で検知することで、監視区域11の侵入検知を行うことができる。
【0054】
次に、第3の実施形態について説明する。
図6は、第3の実施形態にかかる侵入検知システム1bを示す図である。侵入検知システム1bでは、光給電光ファイバ5aと映像伝送光ファイバ5とが同一の光ファイバで構成される。すなわち、本実施形態では、侵入検知用光ファイバ13として、監視カメラ3へは給電用の光が伝送されるとともに、監視カメラ3からの戻りには映像信号が伝送される。
【0055】
なお、同一の光ファイバで構成されるとは、多心の光ファイバケーブル(いわゆるマルチコアファイバを含む)を用いて、一部の光ファイバ心線を給電用として用い、他の光ファイバ心線を映像伝送用に使用してもよい。または、単一の光ファイバ心線に対して光を多重して伝送することで、監視カメラ3に向かっては給電用の光の波長で光が伝送され、監視カメラ3からの戻りには、映像伝送用の波長で光を伝送することも可能である。
【0056】
本実施形態では、監視区域11へ侵入者があった場合には、光給電の光の伝送損失の増大と、映像伝送信号の光の伝送損失の増大の両者によって、映像伝送信号の減衰、乱れ又は無信号化を生じさせることができる。このため、映像受信部7で映像信号の減衰、乱れ又は無信号化を検知することで、監視区域11への侵入を検知することができる。
【0057】
なお、図示した例では、映像受信部7と光源9aとが一体で示されているが、別体で構成して、光の合波や分波を行ってもよい。
【0058】
第3の実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、光給電によって監視カメラ3を動作させる場合には、光給電光ファイバ5aと映像伝送光ファイバ5を同一の光ファイバで構成することで、よりシンプルな構成の侵入検知システム1bを得ることができる。
【0059】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0060】
1、1a、1b………侵入検知システム
3、3a、3b、3c………監視カメラ
5………映像伝送光ファイバ
5a………光給電光ファイバ
7………映像受信部
9………電源
9a………光源
11………監視区域
11a、11b、11c………監視領域
13………侵入検知用光ファイバ
15………光損失発生部
17a、17b………支持部
19………支持線部
19a………ワイヤ
21………ケーブル部
23………支持線
25………テンションメンバ
27………光ファイバ心線
29………連結部
31………外被
33………ローラ
35………固定部
37………ばね
38………本体部
39………可動体
41………ピン
43………突起部