(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】繊維吹付け用結合材および吹付け材
(51)【国際特許分類】
C04B 28/26 20060101AFI20230224BHJP
E04B 1/88 20060101ALI20230224BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20230224BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20230224BHJP
C04B 14/46 20060101ALI20230224BHJP
D06M 11/79 20060101ALI20230224BHJP
D06M 101/00 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
C04B28/26
E04B1/88 Z
E04B1/94 T
C04B18/14 A
C04B14/46
D06M11/79
D06M101:00
(21)【出願番号】P 2019021044
(22)【出願日】2019-02-07
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】常藤 光
(72)【発明者】
【氏名】谷辺 徹
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-176950(JP,A)
【文献】特開2000-143328(JP,A)
【文献】特公昭48-040851(JP,B1)
【文献】特開平07-247154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 28/26
E04B 1/88
E04B 1/94
C04B 18/14
C04B 14/46
D06M 11/79
D06M 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸アルカリ1質量%以上45質量%以下と、セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO
2含有無機質粉末1質量%以上60質量%以下と、水35質量%以上98質量%以下とを含有
し、セメントの含有割合がSiO
2
含有無機質粉末の質量に対し10質量%以下である繊維吹付け用結合材。
【請求項2】
水の含有率が40質量%以上98質量%以下である請求項1記載の繊維吹付け用結合材。
【請求項3】
水の含有率が60質量%以上98質量%以下である請求項1又は2記載の繊維吹付け用結合材。
【請求項4】
吹付ける繊維がロックウールである請求項1~3のいずれかに記載の繊維吹付け用結合材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の繊維吹付け用結合材と繊維とを主成分として含有する吹付け材。
【請求項6】
請求項4に記載の繊維吹付け用結合材とロックウールとを主成分として含有するロックウール吹付け材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維吹付け用結合材および吹付け材に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の部材に耐火性、防火性、吸音性又は断熱性等を付与する目的で、ロックウール等の繊維、及びセメントペースト等の結合材からなるロックウール吹付け材等の吹付け材が吹付けられている。この吹付け材の代表的なものであるロックウール吹付け材は、ロックウール、セメント及び水からなり、耐火性、施工性等の点で優れていることから広く使用されている(例えば特許文献1参照)。セメントは安価で優れた無機質結合材であるが、原料の石灰岩を高温で分解し更に二酸化珪素原料、酸化アルミニウム原料、酸化鉄原料等と高温で反応させ製造するため、製造時に温室効果ガスの代表である二酸化炭素を多く発生させてしまう。このため、セメントを主成分としない無機質結合材を用いた吹付け材及びそのための無機質結合材が望まれる。
【0003】
特定組成の岩綿繊維(ロックウール)の結合材として、リンケイ酸塩、アルカリケイ酸塩(例えば、水ガラス)、ジオポリマー類、コロイドシリカ又はコロイドアルミナを用いることができることの開示がされている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
ところで、結合材を繊維に噴射し合流させ吹付け材として吹付け材層を形成するときに、結合材を加圧した空気とともに噴射させる技術がある(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-348978号公報
【文献】特表2012-532830号公報
【文献】実公昭55-054755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2記載のアルカリケイ酸塩(珪酸アルカリ)をロックウールの結合材として、ロックウール吹付け材の半乾式工法による吹付工法に汎用的に用いられている装置を用いて、結合材の噴射に圧縮空気を用いずに吹付け材層を製造しようと試みたところ、うまく結合材を噴射することができずに、結合材とロックウール(繊維)が均一に混ざらずに均質な吹付け材層が形成されない場合があること、更に、吹付け施工時に発生する粉塵量が多い場合があることが判明した。
従って、本発明の課題は、セメントを主成分とせずにセメント以外の無機質結合材を用いた結合材と繊維とを主成分とする吹付け材層の形成において、結合材の噴射に圧縮空気を用いなくとも均質な吹付け材層が形成できる繊維吹付け用結合材および吹付け材を提供することにある。
また、セメントを主成分とせずにセメント以外の無機質結合材を用いた結合材と繊維とを主成分とする吹付け材層の形成において、吹付け施工時に発生する粉塵量が少ない繊維吹付け用結合材および吹付け材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、セメント以外の無機質結合材として珪酸アルカリに加えてセメント及び珪酸アルカリ以外のSiO2含有無機質粉末を配合して繊維吹付け用結合材を製造し、繊維とともに吹付工法により吹付け材層を形成し種々検討したところ、結合材中の水の含有率を35質量%以上にすれば、圧縮空気を用いずに係る結合材を噴射することができ、繊維と結合材とが均一に混合することができ、均質な吹付け材層が形成でき、さらに粉塵量も抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔6〕を提供するものである。
【0009】
〔1〕珪酸アルカリ1質量%以上45質量%以下と、セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO2含有無機質粉末1質量%以上60質量%以下と、水35質量%以上98質量%以下とを含有する繊維吹付け用結合材。
〔2〕水の含有率が40質量%以上98質量%以下である〔1〕記載の繊維吹付け用結合材。
〔3〕水の含有率が60質量%以上98質量%以下である〔1〕又は〔2〕記載の繊維吹付け用結合材。
〔4〕吹付ける繊維がロックウールである〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の繊維吹付け用結合材。
〔5〕〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の繊維吹付け用結合材と繊維とを主成分として含有する吹付け材。
〔6〕〔4〕記載の繊維吹付け用結合材と繊維とを主成分として含有するロックウール吹付け材。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セメントを主成分とせずにセメント以外の無機質結合材を用いた結合材と繊維とを主成分とする吹付け材層の形成において、結合材の噴射に圧縮空気を用いなくとも均質な吹付け材層が形成できる繊維吹付け用結合材および吹付け材が提供できる。
また、セメントを主成分とせずにセメント以外の無機質結合材を用いた結合材と繊維とを主成分とする吹付け材層の形成において、吹付け施工時に発生する粉塵量が少ない繊維吹付け用結合材および吹付け材が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の繊維吹付け用結合材は、珪酸アルカリ1質量%以上45質量%以下と、セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO2含有無機質粉末1質量%以上60質量%以下と、水35質量%以上98質量%以下とを含有することを特徴とする。
ここで、本発明の繊維吹付け用結合材中の水の含有率(CW)は、下記式(1)のように本発明の繊維吹付け用結合材中に含有する水の質量(MW)を繊維吹付け用結合材の質量(MB)で除した値をパーセント表示で表したものであるが、このときの繊維吹付け用結合材に含有する水の質量(MW)には、大気中の水分の影響でSiO2含有無機質粉末に含まれる水の質量等のように無視できる程小さい場合はこれを考慮しなくともよい。また、繊維吹付け用結合材に用いられる珪酸アルカリ等の他の成分中に含まれる水は、ここでいう水の質量に換算する。
【0012】
(数1)
CW(質量%)=MW÷MB×100 ・・・・ (1)
【0013】
本発明の繊維吹付け用結合材中の水の含有率(CW)が35質量%以上であると、結合材の噴射に圧縮空気を用いなくとも、半乾式工法による吹付けロックウールで使用している吹付け装置を用いて当該結合材を噴射し、ロックウール等の繊維と合流させ均質な吹付け材層を形成することができる。ここで、均質とは、吹付けに用いる繊維が吹付けロックウールで用いるロックウール(ロックウール粒状綿)のように繊維が塊状(粒状)の場合は、繊維塊の表面に結合材がほぼ均等に付き一部が繊維塊の内部に浸透し、繊維塊と繊維塊の間に結合材が存在する状態をいう。
【0014】
本発明における繊維吹付け用結合材中の水の含有率(CW)が40質量%以上であると、結合材の噴射に圧縮空気を用いなくとも噴射された結合材が霧状となるため、より均質な吹付け材層を形成することができることから好ましい。また、水の含有率(CW)が47質量%超、特に60質量%以上であると吹付け施工時に発生する粉塵の量が少ないことから好ましく、水の含有率(CW)が70質量%以上であると粉塵の発生量がより少ないことからより好ましく、水の含有率(CW)は75質量%以上が粉塵の発生量の点で最も好ましい。また、水の含有率(CW)の上限値は他の成分の含有量の点から、98質量%である。つまり、水の含有率(CW)は98質量%以下が好ましい。98質量%を超えると、他の成分の含有量が不足し、壁面や天井面に形成した吹付け材層が硬化、乾燥後に、形状を維持できない虞がある。吹付け材層の硬化、乾燥後における形状維持の点から、水の含有率(CW)は96質量%以下がより好ましく、95質量%以下が最も好ましい。
【0015】
本発明において、繊維とは、結合材とともに吹付け施工できるものであれば特に限定されず、例えば、ロックウール、グラスウール、セラミックスウール、セルローズファイバー等の綿状繊維が耐火性、防火性、吸音性又は断熱性の点で好ましく、不燃性であること且つ錆の発生が無いことから、ロックウール、グラスウール又はセラミックスウールがより好ましく、結合材との安定性の点でロックウールが最も好ましい。
本発明において、ロックウールとは、溶融炉で溶融された岩石や高炉スラグ等を主体とする材料が、急冷されながら、繊維化された素材(鉱物繊維)である。例えば、高炉スラグを主体とする材料より製造されたスラグウールなども含まれる。
【0016】
本発明に用いる珪酸アルカリとしては、メタ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸ナトリウム、水ガラス等の珪酸ナトリウム又は珪酸ナトリウム水溶液、珪酸リチウム又は珪酸リチウム水溶液、珪酸カリウム又は珪酸カリウム水溶液、或いはこれらの2種以上の混合物が好ましい。
【0017】
本発明の繊維吹付け用結合材中の珪酸アルカリ含有率は、結合材としての機能を発揮する観点及び吹付け施工時(吹付け材層の形成時)における良好な可使時間を得るという観点から、1質量%以上45質量%以下である。ここで、珪酸アルカリの含有量は、水溶液を用いたとして珪酸アルカリ自体の量である。また、珪酸アルカリの含有率は無機質結合材の硬化性の観点から、2質量%以上が好ましく、5質量%以上が好ましい。また、流動性を保持できる時間を長くできるという観点から40質量%以下が好ましく、38質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。
【0018】
本発明に用いるセメント及び珪酸アルカリ以外のSiO2含有無機質粉末(以下、「SiO2含有無機質粉末」ということがある。)とは、セメント及び珪酸アルカリ以外で主な化学組成としてSiO2を含有する無機質粉末のことをいい、例えば、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、メタカオリン、シリカフューム、火山灰、火成岩粉末、火成岩焼成物の粉末、下水汚泥スラグ焼成物の粉末、都市ごみ溶融スラグの粉末等が好ましい例として挙げられる。SiO2含有無機質粉末としては、ブレーン比表面積が2000cm2/g以上のものが結合材の硬化が早いことから好ましく、より好ましくは2500cm2/g以上のものを用いる。また、本発明に用いるSiO2含有無機質粉末のブレーン比表面積の上限値としては、結合材の流動性を保持できる時間を長く取れることから、12000cm2/g以下が好ましく、より好ましくは10000cm2/g以下とする。
【0019】
これらのSiO2含有無機質粉末の繊維吹付け結合材中の含有率は、結合材としての機能を発揮する観点及び吹付け施工時(吹付け材層の形成時)における良好な可使時間を得るという観点から1質量%以上60質量%以下である。また、SiO2含有無機質粉末の含有量は、無機質結合材の硬化性の観点から2質量%以上が好ましく、5質量%以上が好ましい。また、コンシステンシーの観点から55質量%以下が好ましく、53質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0020】
本発明の繊維吹付け用結合材には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ又はその水溶液を添加してもよい。
【0021】
本発明において、高炉スラグ粉末が含まれる場合において、繊維としてロックウールを用い且つロックウールの質量(MRW)に対する繊維吹付け用結合材の質量(MB)の比率(MB/MRW)が1.0よりも大きい場合においても、硬化後にロックウールの一部が溶け硬化物が痩せることが起こり難くするために、酸化物換算の総アルカリ量(M2O)に対する高炉スラグ粉末の質量(BS)の質量比(BS/M2O)を6以上とすることが好ましい。硬化後にロックウールの一部が溶け硬化物が痩せることがより起こり難いことから、BS/M2Oを8以上とすることがより好ましく、10以上とすることが更に好ましい。また、BS/M2Oは、コンシステンシーの観点から25以下が好ましく、22以下がより好ましく、21以下がさらに好ましい。
【0022】
繊維吹付け用結合材中の酸化物換算の総アルカリ量(M2O)は、水酸化アルカリ又はその水溶液が添加されている場合は、これらに含まれるアルカリ量も珪酸アルカリに含まれるアルカリ量に合わせて求める。
本発明の繊維吹付け用結合材に含有するアルカリの酸化物換算の総含有率、即ち酸化物換算の総アルカリ量(M2O)は、繊維としてロックウールを用い且つロックウールの質量(MRW)に対する繊維吹付け用結合材の質量(MB)の比率(MB/MRW)が1.0よりも大きい場合においても、硬化後にロックウールの一部が溶け硬化物が痩せることが起こり難いことから、8質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましい。また、総アルカリ量は、硬化性、バインダーとしての強度の点から、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましい。
【0023】
本発明の繊維吹付け用結合材に含まれる珪酸アルカリ中のSiO2換算の質量に対するSiO2含有無機質粉末の質量の比率が0.5~20の範囲が結合材の反応性が高いことから好ましく、より好ましくは当該比率が1.0~16、更に2~10が好ましい。
【0024】
本発明の繊維吹付け用結合材は、珪酸アルカリと、セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO2含有無機質粉末と、水とを主成分として含有する無機質結合材であるが、これらの他に、他の無機質成分、有機質成分を含有してもよい。この他の無機質成分として、SiO2含有無機質粉末の質量に対し10質量%以下含有させてもよく、この場合のセメントは主にSiO2含有無機質粉末の刺激剤として作用する。原材料の製造により発生する二酸化炭素の発生量が少ないことから、本発明の繊維吹付け用結合材におけるセメントの含有割合をSiO2含有無機質粉末の質量に対し5質量%以下とすることがより好ましく、2質量%以下とすることが更に好ましい。
【0025】
本発明の吹付け材は、前記の繊維吹付け用結合材と繊維とを含有する。ここで云う繊維は前記のものと同じで、綿状繊維が耐火性、防火性、吸音性又は断熱性の点で好ましく、不燃性であること且つ錆の発生が無いことから、ロックウール、グラスウール又はセラミックスウールがより好ましく、結合材との安定性の点でロックウールが最も好ましい。また、本発明のロックウール吹付け材は、前記の繊維吹付け用結合材とロックウールとを含有する。
【0026】
本発明の吹付け材(ロックウール吹付け材)に含まれる前記繊維吹付け用結合材と繊維(ロックウール)との含有割合は、繊維(ロックウール)の質量(MF(MRW))に対する繊維吹付け用結合材の質量(MB)の割合(MB/MF(MB/MRW))を1.0~6.0とすることが、硬化時間を短くでき且つ硬化体後の耐火性、防火性、吸音性又は断熱性等のロックウール組成物としての機能が優れることから好ましく、(MB/MF(MB/MRW))を1.2~4.0とすることがより好ましく、1.5~3.0とすることが更に好ましい。
【0027】
本発明の吹付け材(ロックウール吹付け材)には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、前記の成分以外のもの、例えば炭酸ナトリウム,硫酸ナトリウム等のアルカリ金属塩を含む各種のセメント用・モルタル用又はコンクリート用混和材料のうち上記以外のもの、その他の成分(添加剤)が含まれていてもよい。
【0028】
本発明の吹付け材(ロックウール吹付け材)は、ロックウール吹付工法における半乾式工法と同様な吹付工法で製造することが好ましい。この場合、半乾式工法のロックウール吹付工法におけるセメントペーストの代わりに、前記の繊維吹付け用結合材を用い、繊維がロックウール以外の場合は、ロックウールの代わりに当該繊維を用いる。圧送ホース内を圧送させた繊維(ロックウール)を、圧送ホースに連通した吹付けノズルの吐出口から吐出させ、これに上記の繊維吹付け用結合材を噴霧することで、本発明のロックウール組成物を製造することができる。
【0029】
本発明の吹付け材(ロックウール吹付け材)は、ロックウールとセメントペーストとを主成分とするロックウール組成物(吹付けロックウール)の代替物として用いることができる。即ち、耐火被覆材、吸音性被覆材(吸音材)又は断熱性被覆材(断熱材、保温材)として用いることができる。特に、含有する繊維がロックウール、グラスウール又はセラミックスウール等の無機質繊維の場合は、本発明の吹付け材は、主成分としては可燃性の材料が含まれていないことから、可燃性材料の含有量を抑える又は可燃性材料の含有させないことで、不燃性被覆材とすることができる。
【実施例】
【0030】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0031】
珪酸アルカリ、セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO2含有無機質粉末及び水を用い、表1に示す配合割合で繊維吹付け用結合材を作製した。用いた材料を以下に示した。表1中の「%」は「質量%」を意味する。
【0032】
(使用材料)
(1)珪酸アルカリ1:2号水ガラス(SiO2;31.41質量%,Na2O;12.29質量%,H2O;56.30質量%),記号;WG1
(2)珪酸アルカリ2:3号水ガラス(SiO2;28.93質量%,Na2O;9.34質量%,H2O;61.73質量%),記号;WG2
(3)SiO2含有無機質粉末1:高炉スラグ粉末(高炉スラグ微粉末4000,ブレーン比表面積;4130cm2/g),記号;PW1
(4)SiO2含有無機質粉末2:フライアッシュ(JIS規格II種適合品,ブレーン比表面積;3730cm2/g),記号;PW2
(5)水:佐倉市上水
【0033】
【0034】
作製した繊維吹付け用結合材を次の項目について評価試験を行った。その結果を表2に示した。また、吹付け試験において使用した繊維は、次の繊維を使用した。
(1)繊維1:ロックウール粒状綿(太平洋マテリアル社製),記号;FB1
【0035】
(評価試験)
(1)噴射試験
ロックウール吹付け材の半乾式工法による吹付工法に汎用的に用いられている装置であるセンターガンと呼ばれる特許文献3の第1図及び第2図に示されるような吹付けガン(ノズル)(但し、空気用パイプはない。)により、主材料吐出パイプ(繊維吐出パイプ)の中心付近に配設されている液体用パイプ(結合材用パイプ)より、圧縮空気を用いずに作製した繊維吹付け用結合材を噴射し、結合材の噴射状況を評価した。
噴射された結合材が小さな粒状とならず略円錐状に広がることなく噴射したものを「不良」(記号:×)、噴射された結合材が霧状とはならなかったものの小さな粒状で略円錐状に広がり噴射できたものを「良好」(記号:○)、噴射された結合材が霧状となったものを「優良」(記号:◎)と評価した。
【0036】
(2)吹付け試験
噴射試験と同じ装置を用い、ブロワーにより粒状の繊維をセンターガンの主材料吐出パイプに圧送し当該主材料吐出パイプの先端より噴射し、作製した繊維吹付け用結合材をセンターガンの液体用パイプより噴射することで、繊維と繊維吹付け用結合材とを合流混合させ吹付け材とした上で、鉛直に立てた合板に吹付け、その時の粉塵の発生状況及び1週間後に硬化後の状況を確認した。
吹付け材を吹付けた位置から約0.5m離れた位置において吹付けにより生じた粉塵が目視により殆んど確認できなかった場合を粉塵抑制性「優良」(記号:◎)、吹付け材を吹付けた位置から約0.5m離れた位置において吹付けにより生じた粉塵が目視により確認できるが吹付けた位置から約1m離れた位置においては吹付けにより生じた粉塵が目視により殆んど確認できなかった場合を粉塵抑制性「良」(記号:○)、吹付け材を吹付けた位置から約1m離れた位置において吹付けにより生じた粉塵が目視により確認できた場合を粉塵抑制性「やや良」(記号:△)と評価した。
【0037】
また、吹付け1週間後に吹付け材をカッターで切断しその断面を観察した結果、粒状繊維の周囲を繊維吹付け用結合材が覆いカッターで切断したときに吹付け材層がしっかりしており崩れなかった場合を吹付け材層の均質性「良好」(記号:○)、粒状繊維同士が繊維吹付け用結合材を介さずに接している箇所が多くみられ、カッターで切断したときに吹付け材層が崩れた場合を「不良」(記号:×)と評価した。
【0038】
【0039】
作製した繊維吹付け用結合材のうち実施例に当たるもの(配合No.2~11)は、噴射試験において、噴射された結合材が霧状又は小さな粒状で略円錐状に広がり噴射でき、水の含有率(CW)が40質量%以上である配合No.4~11の繊維吹付け用結合材は、噴射試験において、噴射された結合材が霧状で略円錐状に広がり噴射できた。また、水の含有率(CW)が60質量%以上、更には70質量%以上、特には75質量%以上であると吹付け施工時に発生する粉塵の量が少なく、粉塵抑制性に優れていた。
また、水の含有率(CW)が35質量%以上、更には40質量%以上、特には44質量%以上であると吹付け材が均質になり、カッターで切断したときに吹付け材層が崩れることなく、強固な吹付け材層が得られた。