(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ウォータージェットを用いたコンクリート構造物等の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20230224BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20230224BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20230224BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20230224BHJP
E01D 22/00 20060101ALN20230224BHJP
E01C 23/09 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
E04G23/08 E
E04G21/16
B26F3/00 M
E04G23/02 Z
E01D22/00 A
E01C23/09 Z
(21)【出願番号】P 2019030617
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】596105208
【氏名又は名称】第一カッター興業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304032712
【氏名又は名称】ステラ技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 啓助
(72)【発明者】
【氏名】倉田 正一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 健治
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-322098(JP,A)
【文献】国際公開第2017/156581(WO,A1)
【文献】中国実用新案第2806399(CN,Y)
【文献】特開2006-334736(JP,A)
【文献】特開2002-119897(JP,A)
【文献】特開2012-002047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
E04G 21/16
B26F 3/00
E04G 23/02
E01D 22/00
E01C 23/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物又は鋼構造物の施工面に沿ってウォータージェット走行用のレールを敷設し、前記レール上にウォータージェットを走行装置により自走可能に取り付けて、前記レール上で前記ウォータージェットを自走させながら、前記ウォータージェットから超高圧水を前記施工面に向けて噴射させて施工を行うウォータージェットを用いたコンクリート構造物等の施工方法において、
前記レールを前記レールの敷設位置に前記ウォータージェット、前記走行装置とともに支持可能に、前記レールの取付面の所定の複数箇所に、基板、及び前記基板の周囲に設けられるパッドと、前記基板上に配設され、前記パッドで包囲される吸着エリアのエアを排出する真空ポンプ、前記真空ポンプに電源を供給するためのバッテリ、及び前記真空ポンプをオン・オフするスイッチとを有してなる複数の電動式の真空吸着パッドを取り付け、前記レールを前記各真空吸着パッドを介して、前記各真空吸着パッドの前記スイッチのワンタッチ操作で着脱可能に敷設
し、
前記各真空吸着パッドの前記基板上に前記基板と平行に取付板を設けるとともに前記取付板に取付ボルトを直角に立設し、前記レールにはH形鋼を用い、前記H形鋼の下部フランジにボルト挿通孔を前記取付ボルトの外径よりも大径に穿設して、前記各真空吸着パッドの前記取付板上に前記レールを前記取付面側から載せながら前記取付板の前記取付ボルトを前記レールの前記ボルト挿通孔に通し、前記ボルト挿通孔内で前記取付ボルトの挿通方向を変えながら、前記レールの取付面と前記各真空吸着パッドの前記取付板との間の角度を調整し、調整後の角度位置で、前記取付ボルトに前記レールの前記ボルト挿通孔の上下の位置でナットを締結することにより、前記レールと前記各真空吸着パッドとを固定して、前記レールの取付面に前記各真空吸着パッドを前記各真空吸着パッドの取付角度を調節可能に取り付ける、
ことを特徴とするウォータージェットを用いたコンクリート構造物等の施工方法。
【請求項2】
ウォータージェット走行用のレールを一つのレールにより構成し、前記レールの取付面の所定の複数箇所に複数の電動式の真空吸着パッドを取り付けて、前記レールを施工面のX方向又はY方向に沿って前記各真空吸着パッドを介して敷設し、ウォータージェットを前記レール上で直接走行装置により前記施工面のX方向又はY方向に自走させる請求項1に記載のウォータージェットを用いたコンクリート構造物等の施工方法。
【請求項3】
ウォータージェット走行用のレールを一対のレール及び前記一対のレール間に掛け渡されるウォータージェット取付架台により構成し、前記一対のレールの取付面の所定の複数箇所に複数の電動式の真空吸着パッドを取り付けて、前記各レールを施工面のX方向又はY方向に沿って前記各真空吸着パッドを介して敷設し、前記各レール上に前記ウォータージェット取付架台を走行装置により自走可能に取り付けるとともに、前記ウォータージェット取付架台にウォータージェットを固定して取り付けて、前記ウォータージェットを前記各レール上で前記ウォータージェット取付架台を介して前記施工面のX方向又はY方向に自走させる請求項
1に記載のウォータージェットを用いたコンクリート構造物等の施工方法。
【請求項4】
ウォータージェット走行用のレールを一対のレール及び前記一対のレール間に掛け渡されるガイドレールにより構成し、前記一対のレールの取付面の所定の複数箇所に複数の電動式の真空吸着パッドを取り付けて、前記各レールを施工面のX方向又はY方向に沿って前記各真空吸着パッドを介して敷設し、前記各レール上に前記ガイドレールを走行装置により自走可能に取り付けるとともに、前記ガイドレールにウォータージェットを走行装置により自走可能に取り付けて、前記ウォータージェットを前記各レール上で前記ガイドレールを介して前記施工面のX方向又はY方向に自走させながら、前記ガイドレール上で前記施工面のY方向又はX方向に自走させる請求項
1に記載のウォータージェットを用いたコンクリート構造物等の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォータージェットを用いてコンクリート構造物や鋼構造物の壁面等の施工面にはつり、切削、切断、クリーニングなどの各種の施工を行うウォータージェットを用いたコンクリート構造物等の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物、道路、トンネルや橋など、各種のコンクリート構造物の補修や改装、改造の際には、コンクリートのはつり工事を伴う。従来は、このはつり工事を削岩機やブレーカなどを利用して機械的な衝撃を与えて行っていたが、はつり作業時に騒音や振動が発生するといった問題があるため、これに代わり、騒音や振動の対策が容易なウォータージェットを利用した手法が必須の工法として定着しつつある。この種のウォータージェットを用いたコンクリート構造物等の施工方法が特許文献1、2により提案されている。
【0003】
特許文献1は壁面のはつり工法に関するもので、この工法では、はつりを行う壁面に対して直接に、所定軌間のレール軌道の長手方向に沿って、所定の間隔を隔ててアンカーボルトを用いてブラケットを敷設し、複数本の一対のI型鋼レールを、所定の軌間を形成するようにボルトによってブラケットにボルト連結で固定して長いレール軌道を形成し、ウォータージェット噴射装置を、油圧を用いて一対のI型鋼レールに沿って走行させ、ウォータージェット噴射装置の可動ノズル部を、油圧を用いて所定軌間のI型鋼レールの間に跨る一対のビームに沿って往復動させ、且つ、可動ノズル部のビームに沿う往動又は復動の切り替わり時にウォータージェット噴射装置をI型鋼レールに沿って所定ピッチ分走行させることを繰り返す。このようにすることで、レール軌道を敷設する方式でありながら、はつり壁面への直接敷設によって、軌道レール敷設用の常設足場を必要とせず、且つ、レール軌道の簡単な移設により、はつり面積を容易に拡張することができる。
【0004】
特許文献2はウォータージェット切断方法に関するもので、この方法では、箱型の吸着支持装置に走行装置を取り付け、この走行装置にウォータージェットを取り付けたものを用い、吸着支持装置を構造物の切断位置に合わせてこの吸着支持装置の内部からブロアーにより空気を吸引することにより吸着させ、この吸着支持装置上で走行装置によりウォータージェットを駆動して、ウォータージェットで構造物の切断位置を切断する。このようにすることで、ウォータージェットの取り付けや取り外しが容易になり、切断工事前の段取り時間を短くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-2047号公報
【文献】特開平1-222899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2によるコンクリート構造物等の施工方法では、次のような問題がある。
(1)上記特許文献1について
上記特許文献1のはつり工法は、一対のY方向レールに移動可能に架設されるX方向ガイドレールにウォータージェットを取り付けて、ウォータージェットを施工面上でX-Y方向に駆動し施工面のはつりを行う形式になっており、一般的に実施されている。
この種のはつり工法では、上記特許文献1のはつり工法でも「はつりを行う壁面に対して直接に、所定軌間のレール軌道の長手方向に沿って、所定の間隔を隔ててアンカーボルトを用いてブラケットを敷設し、複数本の一対のI型鋼レールを、所定の軌間を形成するようにボルトによってブラケットにボルト連結で固定して長いレール軌道を形成する」と明示されているとおり、一対のY方向レールを施工面にアンカーボルトを介して取り付けるため、施工面の除却箇所以外のところに損傷を与えてしまい、また、例えば耐火材のようなポーラスで脆いものの場合、アンカーによる固定ができない。また、鋼構造物の場合、施工面にガイドレールをアンカーに代えて溶接により固定する場合があるが、この場合でも、施工面の除却箇所以外のところに損傷を与えてしまい、好ましくない。このようにガイドレールを固定する対象物が脆い場合、或いはアンカーの使用許可が得られない場合は、仮設足場にウォータージェットを取り付けて控えを取ったり、重機にウォータージェットを取り付けたりすることで対応せざるを得ない。しかしながら、前者の場合は、仮設足場の搬入、組み立てによるタイムロスが生じ、後者の場合、重機を設置するためのスペースが必要で作業場が限定される、という問題がある。ウォータージェットを用いた作業では、ウォータージェットの設置作業を簡素化し、ウォータージェットの設置によるタイムロスを低減することが望まれており、新たな解決策が求められる。
【0007】
(2)上記特許文献2について
上記特許文献2の方法では、箱型の吸着支持装置に走行装置を取り付け、この走行装置にウォータージェットを取り付けて、吸着支持装置を構造物の切断位置に吸着させて、この吸着支持装置上で走行装置によりウォータージェットを駆動するようにしているため、上記特許文献2に記載のとおり、装置全体を小型にし、(一般の)走行装置が持ち込めないような狭い場所での作業に限定されており、これを例えばウォータージェットを施工面上でX-Y方向に駆動して施工面のはつりを行うなどの施工に利用しようとすると、使用するレールの長さは長くなり長くなる分だけ吸着支持装置は大型化し、吸着支持装置が大きくなれば空気の吸引量も増大してブロアーもまた大型化し、全体が大掛かりな装置にならざるを得ない、さらに、走行装置やウォータージェットから延びる配線や配管の他に、吸着支持装置から延びる大きな配管が増えることから、ウォータージェットの設置作業は付帯設備の搬入、搬出作業とともに煩雑にならざるを得ない。
【0008】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種のウォータージェットを用いたコンクリート構造物等の施工方法において、ウォータージェットを各種の施工面に従来のようなアンカーボルトや箱型の吸着支持装置を用いることなしに確実にしかも簡易、迅速に取り付けることができ、施工面にウォータージェットを用いた本来の施工を円滑に実施できるようにすること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、
コンクリート構造物又は鋼構造物の施工面に沿ってウォータージェット走行用のレールを敷設し、前記レール上にウォータージェットを走行装置により自走可能に取り付けて、前記レール上で前記ウォータージェットを自走させながら、前記ウォータージェットから超高圧水を前記施工面に向けて噴射させて施工を行うウォータージェットを用いたコンクリート構造物等の施工方法において、
前記レールを前記レールの敷設位置に前記ウォータージェット、前記走行装置とともに支持可能に、前記レールの取付面の所定の複数箇所に、基板、及び前記基板の周囲に設けられるパッドと、前記基板上に配設され、前記パッドで包囲される吸着エリアのエアを排出する真空ポンプ、前記真空ポンプに電源を供給するためのバッテリ、及び前記真空ポンプをオン・オフするスイッチとを有してなる複数の電動式の真空吸着パッドを取り付け、前記レールを前記各真空吸着パッドを介して、前記各真空吸着パッドの前記スイッチのワンタッチ操作で着脱可能に敷設し、
前記各真空吸着パッドの前記基板上に前記基板と平行に取付板を設けるとともに前記取付板に取付ボルトを直角に立設し、前記レールにはH形鋼を用い、前記H形鋼の下部フランジにボルト挿通孔を前記取付ボルトの外径よりも大径に穿設して、前記各真空吸着パッドの前記取付板上に前記レールを前記取付面側から載せながら前記取付板の前記取付ボルトを前記レールの前記ボルト挿通孔に通し、前記ボルト挿通孔内で前記取付ボルトの挿通方向を変えながら、前記レールの取付面と前記各真空吸着パッドの前記取付板との間の角度を調整し、調整後の角度位置で、前記取付ボルトに前記レールの前記ボルト挿通孔の上下の位置でナットを締結することにより、前記レールと前記各真空吸着パッドとを固定して、前記レールの取付面に前記各真空吸着パッドを前記各真空吸着パッドの取付角度を調節可能に取り付ける、
ことを要旨とする。
【0011】
この方法では、ウォータージェットによる施工面への施工種別(はつり、切削、切断、クリーニングなど)に応じて、ウォータージェットに次のような自走形式を採ることができる。
(1)ウォータージェット走行用のレールを一つのレールにより構成し、前記レールの取付面の所定の複数箇所に複数の電動式の真空吸着パッドを取り付けて、前記レールを施工面のX方向又はY方向に沿って前記各真空吸着パッドを介して敷設し、ウォータージェットを前記レール上で直接走行装置により前記施工面のX方向又はY方向に自走させる。
(2)ウォータージェット走行用のレールを一対のレール及び前記一対のレール間に掛け渡されるウォータージェット取付架台により構成し、前記一対のレールの取付面の所定の複数箇所に複数の電動式の真空吸着パッドを取り付けて、前記各レールを施工面のX方向又はY方向に沿って前記各真空吸着パッドを介して敷設し、前記各レール上に前記ウォータージェット取付架台を走行装置により自走可能に取り付けるとともに、前記ウォータージェット取付架台にウォータージェットを固定して取り付けて、前記ウォータージェットを前記各レール上で前記ウォータージェット取付架台を介して前記施工面のX方向又はY方向に自走させる。
(3)ウォータージェット走行用のレールを一対のレール及び前記一対のレール間に掛け渡されるガイドレールにより構成し、前記一対のレールの取付面の所定の複数箇所に複数の電動式の真空吸着パッドを取り付けて、前記各レールを施工面のX方向又はY方向に沿って前記各真空吸着パッドを介して敷設し、前記各レール上に前記ガイドレールを走行装置により自走可能に取り付けるとともに、前記ガイドレールにウォータージェットを走行装置により自走可能に取り付けて、前記ウォータージェットを前記各レール上で前記ガイドレールを介して前記施工面のX方向又はY方向に自走させながら、前記ガイドレール上で前記施工面のY方向又はX方向に自走させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のウォータージェットを用いたコンクリート構造物等の施工方法によれば、レールをレールの敷設位置にウォータージェット、走行装置とともに支持可能に、レールの取付面の所定の複数箇所に、複数の電動式の真空吸着パッドを取り付け、レールを各真空吸着パッドを介して、各真空吸着パッドのスイッチのワンタッチ操作で着脱可能に敷設するようにしたので、従来のようなアンカーボルトや箱型の吸着支持装置を用いることなしに確実にしかも簡易、迅速に取り付けることができ、施工面にウォータージェットを用いた本来の施工を円滑に実施することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
さらに、この施工方法によれば、各真空吸着パッドの基板上に基板と平行に取付板を設けるとともに取付板に取付ボルトを直角に立設し、レールにはH形鋼を用い、H形鋼の下部フランジにボルト挿通孔を取付ボルトの外径よりも大径に穿設して、各真空吸着パッドの取付板上にレールを取付面側から載せながら取付板の取付ボルトをレールのボルト挿通孔に通し、ボルト挿通孔内で取付ボルトの挿通方向を変えながら、レールの取付面と各真空吸着パッドの取付板との間の角度を調整し、調整後の角度位置で、取付ボルトにレールのボルト挿通孔の上下の位置でナットを締結することにより、レールと各真空吸着パッドとを固定して、レールの取付面に各真空吸着パッドを各真空吸着パッドの取付角度を調節可能に取り付けるようにしたので、レールに取り付けた真空吸着パッドを壁面の凹凸部に(例えば斜めの状態に)固定する場合であっても、レールの取付面と真空吸着パッドとの間の取付角度を調整することで、レールを壁面全体に対して略平行に敷設することができる、という本発明独自の顕著な利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態によるウォータージェットを用いたコンクリート構造物等の施工方法として、ウォータージェットをコンクリート構造物の施工面(壁面)上で、一対のY方向レール、これらY方向レールに移動可能に架け渡しされるX方向ガイドレール、及び走行装置により、X-Y方向に駆動させて施工面のはつりを行うはつり工法を示す図
【
図2】同工法に用いるY方向レール及びY方向レールに取り付けた電動式の真空吸着パッドを示す図
【
図3】同工法での手順の一部、特に、この工法で使用する機器機材を施工面(壁面)に取り付ける手順を示す図
【
図4】同工法での手順の一部、特に、レールの取付面に真空吸着パッドをこの真空吸着パッドの取付角度を調節しながら取り付ける手順を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
【0015】
このコンクリート構造物等の施工方法(以下、単に、この方法という場合がある。)は、コンクリート構造物又は鋼構造物(これらを総称してコンクリート構造物等という。)の施工面に沿ってウォータージェット走行用のレールを敷設し、レール上にウォータージェットを走行装置により自走可能に取り付けて、レール上でウォータージェットを自走させながら、ウォータージェットから超高圧水を施工面に向けて噴射させて施工を行うもので、この施工方法では、特に、レールをレールの敷設位置にウォータージェット、走行装置とともに支持可能に、レールの取付面の所定の複数箇所に、基板、及び基板の周囲に設けられるパッドと、基板上に配設され、パッドで包囲される吸着エリアのエアを排出する真空ポンプ、真空ポンプに電源を供給するためのバッテリ、及び真空ポンプをオン・オフするスイッチとを有してなる複数の電動式の真空吸着パッドを取り付け、レールを各真空吸着パッドを介して、各真空吸着パッドのスイッチのワンタッチ操作で着脱可能に敷設するものとした。
【0016】
図1にこのウォータージェットを用いたコンクリート構造物等の施工方法として、ウォータージェットJをコンクリート構造物の施工面P上で、一対のY方向レールR1、これらY方向レールR1に移動可能に架け渡しされるX方向ガイドレールR2、及び走行装置Dにより、X-Y方向に駆動させて施工面Pのはつりを行うはつり工法を例示している。
図2にこの工法に用いるY方向レールR1及びY方向レールR1に取り付けた電動式の真空吸着パッドAを示し、
図3にこの工法での手順の一部、特に、この工法で使用する機器機材を施工面(壁面)に取り付ける手順を示し、
図4にこの工法での手順の一部、特に、Y方向レールR1の取付面に真空吸着パッドAをこの真空吸着パッドAの取付角度を調節しながら取り付ける手順を示している。なお、この場合、施工面Pは横方向(X方向)に長い壁面(垂直面)になっている。以下、このはつり工法の説明の中で、施工面Pを壁面Pという。
【0017】
まずここで、このはつり工法において使用する機器、機材について説明する。このはつり工法では、
図1に示すように、一対のY方向レールR1、複数の電動式の真空吸着パッドA、X方向ガイドレールR2、走行装置D、及びウォータージェットJを使用する。
【0018】
一対のY方向レールR1は、
図2に示すように、所定長のH型鋼を用いる。これらY方向レールR1にはそれぞれ、壁面Pへの設置時に壁面Pに向けられる下部フランジF1の両端でウェブを境に両側に張り出す下部フランジF1の各部に複数のボルト挿通孔10が穿設される。この点については後述する。
【0019】
電動式の真空吸着パッドAはステラ技研株式会社製のタコパッド(登録商標)を用いる。この真空吸着パッドAは、
図2に示すように、金属製又は樹脂製の円盤状の基板21と、基板21の外周に沿って設けられ、基板21の内側面(吸着側の面)側に吸着エリアを画成する軟性弾性体からなるパッド22と、基板21の外側面(吸着側の面とは反対側の面)に設置される箱形のケース23内に内蔵の、真空ポンプ、真空ポンプを駆動する電動モータ、電動モータの電源となるバッテリ、ケース23の外側面に配置され、バッテリと電動モータとの接続をオン・オフするボタン式のスイッチ24(
図4参照)、吸着エリア内の真空を破壊するためのボタン式の真空破壊弁25(
図4参照)とを備えて、全体として略ハット形に構成される。
【0020】
さらにこの真空吸着パッドAについて補足する。パッド22は先端を2重にしたスカート状で、基端側にドーナツ状の平坦部を連続的に形成されて、この平坦部が基板21の吸着エリア側となる内側面に接触される。平坦部の内側には円盤状のゴムシートが設けられるとともに、吸着エリア側には金属製や樹脂製など、ゴムシートより剛性の高い材質からなる円盤状の押さえ板が設けられ、この押さえ板と基板21との間にパッド22の平坦部とゴムシートとを挟み込まれて、ビスによって三者が一体化される。真空ポンプはダイヤフラムを有し、電動モータによってこのダイヤフラムを駆動して真空を形成するもので、ポンプ内の真空形成室内と外部とを、それぞれチェック弁機構を介して接続する排気パイプと、吸気パイプとを有する。吸気パイプには継手が接続されて、この継手を基板21にゴムシートを貫通して形成した真空引き孔に連結する。このようにして真空ポンプは、スイッチ24のオン操作で電動モータを駆動すると、吸着エリア内のエアを、真空引き孔、継手及び吸気パイプを介して吸引し、排気パイプから外部へ排気して、吸着エリア内を真空に保つ。基板21にはまた、ゴムシートを貫通して真空破壊孔が形成され、真空破壊孔に真空破壊弁25が設けられる。この真空破壊弁25は、真空破壊孔を開閉する弁部と、この弁部の中央に起立させたロッド部と、このロッド部の弁部とは反対側端部に設けたバネ受け部とを有し、ロッド部を、真空破壊孔に貫通し、基板21の外側面側に、圧縮バネを設け、この圧縮バネのバネ力によって、通常、弁部が真空破壊孔を閉じるようになっている。このようにして真空破壊弁25が閉弁状態で吸着エリア内が真空のときに、バネ受け部をバネ力に抗して吸着エリア側へ押し込むと、弁部が真空破壊孔から離れて真空破壊が起こる。なお、 この真空吸着パッドAでは、基板21を直径120[mm]のアルミ板で構成し、6[V]のバッテリ、真空ポンプ、電動モータなどを設けて、全重量が約500[g]になっている。かくして、この真空吸着パッドAを壁面Pに押し付けながらスイッチ24をオンすると、真空ポンプが駆動されて、吸着エリア内のエアが排出され、吸着エリア内の真空度が上がるに従って、パッド22の先端が外側に向かってスカート状に広がり、壁面Pに密着し、真空吸着パッドAは壁面Pに固定される。通常、吸着中はスイッチ24をオン状態にしておく。また、既述のとおり、パッド22が軟性弾性体で構成されているので、通常のゴム部材で構成した場合に比べて柔軟性が高く、モルタルの凹凸や、タイルの目地などにもパッド22の先端が入り込んで密着し、高シール性を十分に保持される。さらに、先端を二重にしたことによって、基端側の腰の強さを確保しながら、先端側の柔軟性が高められて高いシール性を発揮する。また、この真空吸着パッドAの固定位置を移動する際は、スイッチ24をオフにして真空破壊弁25で開弁し、吸着エリア内の真空を破壊することで、パッド22を壁面Pから簡単に取り外すことができ、この真空吸着パッドAを速やかに移動することができる。
【0021】
このような真空吸着パッドAを複数個ずつ、
図2に示すように、各Y方向レールR1に取り付ける。この場合、一対のY方向レールR1を壁面Pの敷設位置にX方向ガイドレールR2、走行装置D及びウォータージェットJとともに支持可能に、各Y方向レールR1の取付面に必要な数の電動式の真空吸着パッドAを取り付ける。ここでは、各Y方向レールR1の下部フランジF1の両端にそれぞれ、電動式の真空吸着パッドAを1台ずつ合計2台取り付ける。また、この場合、各Y方向レールR1に取り付けた各真空吸着パッドAを壁面Pの凹凸部に(例えば斜めの状態に)固定しても、各Y方向レールR1を壁面P全体に対して略平行に敷設できるように、各真空吸着パッドAを各Y方向レールR1の取付面に各真空吸着パッドAの取付角度を任意に調節可能に取り付けることが望ましい。そこで、
図4に示すように、各真空吸着パッドAの基板21上に基板21と平行に取付板26を設けるとともにこの取付板26に複数の取付ボルト27を直角に立設し、Y方向レールR1に用いたH形鋼の下部フランジF1に複数のボルト挿通孔10を各取付ボルト27の外径よりも大径に穿設して、各真空吸着パッドAの取付板26上に各Y方向レールR1を取付面側から載せながら取付板26の各取付ボルト27を各Y方向レールR2の各ボルト挿通孔10に通し、各ボルト挿通孔10内で各取付ボルト27の挿通方向を変えながら、Y方向レールR1の取付面と真空吸着パッドAの取付板26との間の角度を調整し、調整後の角度位置で、各取付ボルト27に下部フランジF1の各ボルト挿通孔10の上下の位置でナット11を締結することにより、各Y方向レールR1と各真空吸着パッドAとを固定する。この場合、取付板26は縦方向、横方向の寸法が共にY方向レールR1の幅よりも大きい四角形のプレートで、この取付板26の横方向(X方向と同じ方向)の中央を境にその両側でY方向レールR1側に設けるボルト挿通孔10の位置と相互に対応するように所定の位置にボルト取付孔270を2箇所ずつ合計4箇所穿ち、これらのボルト取付孔270に4本の全ねじの取付ボルト27を通して、各ボルト取付孔270に通した各取付ボルト27に各ボルト取付孔270の上下の位置でナット271を締め込むことにより固定して、取付板26に4本の取付ボルト27を(取付板26に対して)直角に立ち上げて取り付け、この取付板26を真空吸着パッドAの基板21上でケース23の周囲に複数の支持脚29を立設してこれら支持脚29を介して支持固定し、基板21上のケース23の直上に基板21と平行に配置する。このような取付板26を備えた真空吸着パッドAを2個、各Y方向レールR1の下部フランジF1の両端に取り付ける。各Y方向レールR1には下部フランジF1の両端でウェブを境に両側に突出する下部フランジF1の各部に、各真空吸着パッドAの取付板26側の各取付ボルト27の位置と相互に対応するように、各取付ボルト27の外径よりも所定寸法だけ大きい径のボルト挿通孔10を2箇所ずつ合計4箇所(両端合わせて8箇所)に穿つ。このようにして各真空吸着パッドAの取付板26上に各Y方向レールR1を取付面側から載せながら取付板26の4本の取付ボルト27を各Y方向レールR1の4箇所のボルト挿通孔10に通し、各ボルト挿通孔10内で各取付ボルト27の挿通方向を変化させながら、各Y方向レールR1の取付面に対して各真空吸着パッドAの取付板26の取付角度を調節しながら、各ボルト挿通孔10に通した各取付ボルト27に下部フランジF1の各ボルト挿通孔10の上下の位置でナット11を締め込み、Y方向レールR1の取付面に真空吸着パッドAを固定する。このようにして各Y方向レールR1の取付面の両端に一つずつ真空吸着パッドAを各真空吸着パッドAの取付角度を調節可能に取り付ける。なお、この真空吸着パッドAのY方向レールR1のへの取り付け、及び取付角度の調節は施工現場で行ってもよいが、施工現場へ機器機材を搬入する前に予め実施しておくことが望ましい。
【0022】
X方向ガイドレールR2は、
図3に示すように、各Y方向レールR1間にレール部材として配置可能な所定長の角型鋼管などの鋼材を用いる。
【0023】
走行装置Dは、
図3に示すように、X方向ガイドレールR2の両端に設けられ、一対のY方向レールR1にH形鋼の上部フランジF2を両側から複数のガイドローラ30で挟持してスライド可能に取り付けられる一対のY方向スライダー3、各Y方向スライダー3にY方向に回転可能に軸支され、図示されない作動連結軸を介して連結される一対のスプロケット31、一方のY方向スライダー3に設置され、一方のスプロケット31に作動連結される電動式又は油圧式のモータ32、各Y方向レールR1に沿って配置され、各Y方向スライダー3の各スプロケット31に噛合される一対のチェーン33、X方向ガイドレールR2を両側面から複数のガイドローラ40(
図1参照)で挟持してスライド可能に係合されるX方向スライダー4、X方向スライダー4にX方向に回転可能に軸支されるスプロケット41、X方向スライダー4に設置され、スプロケット41に作動連結される電動式又は油圧式のモータ42、X方向ガイドレールR2に沿って配置され、X方向スライダー4のスプロケット41に噛合される1本のチェーン43、Y方向スライダー3及びX方向スライダー4の各モータ32、42及びX方向スライダー4に搭載されるウォータージェットJに各別のケーブル51、52(
図1参照)を介して接続されるコントロールボックス5(
図1参照)、発電機6(
図1参照)などで構成され、常態としてX方向スライダー4がX方向ガイドレールR2に(X方向ガイドレールR2上を)往復動可能に組み付けられる。
【0024】
ウォータージェットJは、超高圧水を噴出するノズル71、このノズル71を支持する架台72などで構成され、常態として架台72がX方向スライダー4に連結されて、ノズル71がX方向スライダー4に搭載される。このノズル71に超高圧ホース73(
図1参照)を介して施工現場に設置されるウォータージェットポンプ74(
図1参照)が接続される。
【0025】
続いて、はつり工法について説明する。このはつり工法では、ウォータージェットJによる本来の施工であるはつり作業に入る前の準備として、
図3(1)、(2)に示すように、まず、壁面Pの施工範囲に合わせて、壁面Pに一対のY方向レールR1の敷設位置を墨出しし、各Y方向レールR1を複数の真空吸着パッドAを介して壁面Pの各Y方向レールR1の敷設位置に設置する。このはつり工法の場合、横方向(X方向)に長い壁面Pに一端側から順次はつり作業を進めていくので、壁面Pを一端側から他端側に向けて複数の作業範囲に分けて、各作業範囲毎に左右両側所定の位置に(一対のY方向レールR1を相互に所定の間隔をあけて配置可能に)Y方向(壁面Pの垂直方向)に向けて各Y方向レールR1の敷設位置の墨出しを行い、これに沿って2本のY方向レールR1を各真空吸着パッドAを介して配置し、各真空吸着パッドAのスイッチ24のワンタッチ操作により、すなわち、スイッチ24のオン操作により、ケース23内の真空ポンプを駆動して、吸着エリア内のエアを排出し、パッド22を壁面Pに密着固定して、各Y方向レールR1を壁面Pに着脱可能に敷設する。
【0026】
なお、各Y方向レールR1に取り付けた各真空吸着パッドAを壁面Pの凹凸部に(例えば斜めの状態に)固定する必要がある場合は、
図4に示すように、各真空吸着パッドAを各Y方向レールR1に取り付ける際に、又は各真空吸着パッドAを各Y方向レールR1に取り付けた後でも、真空吸着パッドAの取付板26上にY方向レールR1を取付面側から載せて取付板26の各取付ボルト27をY方向レールR1の各ボルト挿通孔10に通した状態から、各ボルト挿通孔10内で各取付ボルト27の挿通方向を変えながら、Y方向レールR1の取付面と真空吸着パッドAの取付板26との間の角度を(Y方向レールR1が壁面Pに対してほぼ平行となるように)調整し、調整後の角度位置で、各取付ボルト27に下部フランジF1の上下の位置でナット11を締め込むことにより、各Y方向レールR1と各真空吸着パッドAとを固定することで、各Y方向レールAを壁面P全体に対して略平行に敷設する。
【0027】
次いで、
図3に示すように、一対のY方向レールR1に走行装置D、ウォータージェットJを搭載したX方向ガイドレールR2を組み立てる。この組み立てでは、各Y方向レールR1間にX方向スライダー4を組み込まれたX方向ガイドレールR2を架け渡し、このX方向ガイドレールR2両端の各X方向スライダー4のガイドローラ30で各Y方向レールR1を挟持して、X方向ガイドレールR2を一対のY方向レールR1上に走行可能に取り付ける。これにより、X方向ガイドレールR2に搭載されたウォータージェットJ(ノズル71)が壁面Pに向けられる。そして、
図1に示すように、この壁面Pの付近に搬入設置された発電機6、コントロールボックス(制御装置)5と各Y方向スライダー3及びX方向スライダー4の各モータ32、42、ウォータージェットJとを各別のケーブル51、52を介して接続し、トラックなどの荷台に搭載して施工現場付近に搬入設置したウォータージェットポンプ74とウォータージェットJ(ノズル71)とを超高圧ホース73を介して接続する。これにより、本来のはつり作業の前の準備を完了する。
【0028】
そして、はつり作業を開始する。
図1、
図3(3)を参照すると、まず、コントロールボックス5の操作スイッチの操作により、壁面P上の一対のY方向レールR1上で一対のY方向スライダー3のモータ32を所定の回転速度で駆動して各Y方向スライダー3のスプロケット31を各Y方向レールR1に沿って配置されるチェーン33上で移動させ、一対のY方向レールR1上で各Y方向スライダー3をY方向に走行させて、X方向ガイドレールR2をはつり開始位置に近接する位置まで移動することにより、ウォータージェットJ(ノズル71)をはつり開始位置まで自走させる。これに続いて、コントロールボックス5の操作スイッチの操作により、X方向ガイドレールR2上でX方向スライダー4のモータ42を所定の回転速度で駆動させてX方向ガイドレールR2に沿って配置されるチェーン43上を移動させ、X方向ガイドレールR2上でX方向スライダー4をX方向に走行させることにより、ウォータージェットJ(ノズル71)をはつり開始地点まで自走させる。
【0029】
このはつり開始地点から、ウォータージェットポンプ74を駆動させて、ウォータージェットポンプ74から超高圧水を供給し、超高圧ホース73を介してノズル71へ送球し、ノズル71より超高圧水を噴出させる。同時に、コントロールボックス5を操作して、このコントロールボックス5のコントロールにより、X方向ガイドレールR2上でX方向スライダー4のモータ42を所定の回転速度で駆動させてX方向スライダー4のスプロケット41をX方向ガイドレールR2に沿って配置されるチェーン43上を移動させ、X方向ガイドレールR2上でX方向スライダー4をX方向に走行させることにより、ウォータージェットJ(ノズル71)をX方向に自走させ、ノズル71から噴出する超高圧水によりX方向ガイドレールR2に沿って壁面Pをはつっていく。このようにしてはつり開始位置で壁面Pのはつりが終わると、今度は、壁面P上の一対のY方向レールR1上で一対のY方向スライダー3のモータ32を所定の回転速度で駆動して各Y方向スライダー3のスプロケット31を各Y方向レールR1に沿って配置されるチェーン33上で移動させ、一対のY方向レールR上で各Y方向スライダー3をY方向に所定のピッチだけ走行させて、X方向ガイドレールR2を次のはつり位置に近接する位置まで移動することにより、ウォータージェットJ(ノズル71)を次のはつり位置まで自走させるとともに、X方向ガイドレールR2上でX方向スライダー4のモータ42を所定の回転速度で駆動させてX方向スライダー4のスプロケット41をX方向ガイドレールR2に沿って配置されるチェーン43上で移動させ、X方向ガイドレールR2上でX方向スライダー4をX方向に走行させることにより、ウォータージェットJ(ノズル71)を自走させ、ノズル71から噴出する超高圧水によりX方向ガイドレールR2に沿って壁面Pをはつっていく。このようにウォータージェットP(ノズル71)を一対のY方向レールR1間の壁面P全体又ははつりの必要な一部でX-Y方向に繰り返し自走させ、はつり作業を実施する。そして、この横に長い壁面Pの一端側の作業範囲ではつり作業が終了したら、この作業範囲から各Y方向レールR1を、走行装置D、ウォータージェットJを搭載したX方向ガイドレールR2とともに撤去し、これらの機器、機材をはつり作業を終えた作業範囲に隣接する次の作業範囲に設置する。この場合、各Y方向レールR1の各真空吸着パッドAのスイッチ24をオフにして真空破壊弁25で開弁させると、吸着エリア内の真空が破壊されて、パッド22を壁面Pから簡単に取り外すことができ、各Y方向レールR1を壁面Pのはつり作業を終了した作業範囲から速やかに撤去し移動することができる。各Y方向レールR1の撤去後、これらのY方向レールR1を次の作業範囲に、同様にして、各Y方向レールR1の各真空吸着パッドAを介して配置し、各真空吸着パッドAのスイッチ24のワンタッチ操作により、すなわち、スイッチ24のオン操作により、ケース23内の真空ポンプを駆動して、吸着エリア内のエアを排出し、パッド22を壁面Pに密着固定して、各Y方向レールRを壁面Pに着脱可能に敷設する。そして、同様にして、はつり作業を実施する。これを壁面Pの一端側の作業範囲から他端側の作業範囲へ順次繰り返す。
【0030】
このようにこのはつり工法によれば、一対のY方向レールR1をその敷設位置にX方向ガイドレールR2、走行装置D及びウォータージェットJとともに支持可能に、各Y方向レールR1の取付面の両端に、2つの電動式の真空吸着パッドAを取り付け、各Y方向レールR1を各真空吸着パッドAを介して、各真空吸着パッドAのスイッチ24のワンタッチ操作で着脱可能に敷設するので、従来のようなアンカーボルトや箱型の吸着支持装置を用いることなしに確実にしかも簡易、迅速に取り付けることができ、コンクリート構造物の壁面PにウォータージェットJを用いた本来のはつり施工を円滑に実施することができる。
【0031】
また、このはつり工法では、各真空吸着パッドAの基板21上に基板21と平行に取付板26を設けるとともにこの取付板26に複数の取付ボルト27を直角に立設し、Y方向レールR1に用いたH形鋼の下部フランジF1に複数のボルト挿通孔10を各取付ボルト27の外径よりも大径に穿設して、各真空吸着パッドAの取付板26上にY方向レールR1を取付面側から載せながら取付板26の各取付ボルト27を各Y方向レールR1の各ボルト挿通孔10に通し、各ボルト挿通孔10内で各取付ボルト27の挿通方向を変えながら、Y方向レールR1の取付面と真空吸着パッドAの取付板26との間の角度を調整し、調整後の角度位置で、各取付ボルト27に下部フランジF1の上下の位置でナット11を締結することにより、各Y方向レールR1と各真空吸着パッドAとを固定するようにしたので、各Y方向レールR1に取り付けた各真空吸着パッドAを壁面Pの凹凸部に(例えば斜めの状態に)固定する場合であっても、各Y方向レールR1の取付面と各真空吸着パッドAの取付板26との間の角度を調整して、各Y方向レールR1を壁面P全体に対して略平行に敷設することができる。
【0032】
なお、この実施の形態では、ウォータージェットJにより施工を行うコンクリート構造物の壁面PのX方向両側に、一対のY方向レールR1を、複数の電動式の真空吸着パッドAを介して、着脱可能に敷設し、一対のY方向レールR1間にX方向ガイドレールR2を一対のY方向スライダー3及び駆動装置を介してY方向に走行可能に取り付け、このX方向ガイドレールR2にX方向スライダー4及び駆動装置を介してウォータージェットJをX方向に走行可能に取り付けて、壁面P上でウォータージェットJをX-Y方向に自走させながらウォータージェットJから超高圧水を噴射させて、壁面Pにはつり施工を行うものとしたが、コンクリート構造物の壁面のY方向両側に、一対のX方向レールを、複数の電動式の真空吸着パッドを介して、着脱可能に敷設し、一対のX方向レール間にY方向ガイドレールを一対のX方向スライダー及び駆動装置を介してX方向に走行可能に取り付け、このY方向ガイドレールにY方向スライダー及び駆動装置を介してウォータージェットをY方向に走行可能に取り付けて、壁面上でウォータージェットをX-Y方向に自走させながらウォータージェットから超高圧水を噴射させて、壁面にはつり施工を行うようにしてもよい。
このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0033】
また、上記の各実施の形態とは異なる形式として、ウォータージェット走行用のレールを一つのレールにより構成し、レールの取付面の所定の複数箇所に複数の電動式の真空吸着パッドを取り付けて、レールを施工面のX方向又はY方向に沿って各真空吸着パッドを介して敷設し、ウォータージェットをこのレール上で直接走行装置により施工面のX方向又はY方向に自走させるものとしてもよい。
この場合、ウォータージェットにより施工を行うコンクリート構造物の壁面のX方向又はY方向に、X方向又はY方向レールを、複数の電動式の真空吸着パッドを介して、着脱可能に敷設し、このX方向又はY方向レール上にウォータージェットを直接走行装置により壁面のX方向又はY方向に走行可能に取り付け、ウォータージェットをX方向又はY方向レール上で壁面上のX方向又はY方向に自走させながらウォータージェットから超高圧水を噴射させて、壁面にはつり、切削、切断、クリーニングなど各種の施工を実施することができる。
このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0034】
さらに、上記の各実施の形態とは異なる形式として、ウォータージェット走行用のレールを一対のレール及び一対のレール間に掛け渡されるウォータージェット取付架台により構成し、一対のレールの取付面の所定の複数箇所に複数の電動式の真空吸着パッドを取り付けて、各レールを施工面のX方向又はY方向に沿って各真空吸着パッドを介して敷設し、各レール上にウォータージェット取付架台を走行装置により自走可能に取り付けるとともに、前記ウォータージェット取付架台にウォータージェットを固定して取り付けて、ウォータージェットを各レール上でウォータージェット取付架台を介して施工面のX方向又はY方向に自走させるものとしてもよい。
この場合、ウォータージェットにより施工を行うコンクリート構造物の壁面のX方向又はY方向両側に、一対のY方向又はX方向レールを、複数の電動式の真空吸着パッドを介して、着脱可能に敷設し、一対のY方向又はX方向レール間にウォータージェット取付架台を一対のY方向又はX方向スライダー及び駆動装置を介してY方向又はX方向に走行可能に取り付け、このウォータージェット取付架台にウォータージェットを固定して、壁面上でウォータージェットをY方向又はX方向に自走させながらウォータージェットから超高圧水を噴射させて、壁面にはつり、切削、切断、クリーニングなど各種の施工を実施することができる。
このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0035】
以上の各実施の形態は、コンクリート構造物の壁面のみならず、天面にも同様に適用することができ、また、鋼構造物の壁面や天面にも同様に適用することができる。
【0036】
以上説明したように、このウォータージェットを用いたコンクリート構造物等の施工方法によれば、レールをレールの敷設位置にウォータージェット、走行装置とともに支持可能に、レールの取付面の所定の複数箇所に、複数の電動式の真空吸着パッドを取り付け、レールを各真空吸着パッドを介して、各真空吸着パッドのスイッチのワンタッチ操作で着脱可能に敷設するようにしたので、従来のようなアンカーボルトや箱型の吸着支持装置を用いることなしに確実にしかも簡易、迅速に取り付けることができ、施工面にウォータージェットを用いた本来の施工を円滑に実施することができる。
【0037】
また、この方法によれば、レールの取付面に真空吸着パッドをこの真空吸着パッドの取付角度を調節可能に取り付けるようにしたので、レールに取り付けた真空吸着パッドを壁面の凹凸部に(例えば斜めの状態に)固定する場合であっても、レールの取付面と真空吸着パッドとの間の取付角度を調整することで、レールを壁面全体に対して略平行に敷設することができる。
【符号の説明】
【0038】
P コンクリート構造物の施工面(壁面(垂直面))
R1 Y方向レール
F1 下部フランジ
F2 上部フランジ
10 ボルト挿通孔
11 ナット
A 電動式の真空吸着パッド
21 基板
22 パッド
23 ケース
24 スイッチ
25 真空破壊弁
26 取付板
27 取付ボルト
270 ボルト取付孔
271 ナット
29 支持脚
R2 X方向ガイドレール
D 走行装置
3 Y方向スライダー
30 ガイドローラ
31 スプロケット
32 モータ
33 チェーン
4 X方向スライダー
41 スプロケット
42 モータ
43 チェーン
5 コントロールボックス
51、52 ケーブル
6 発電機
J ウォータージェット
71 ノズル
72 架台
73 超高圧ホース
74 ウォータージェットポンプ