(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】還元剤供給装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
F01N3/08 B
(21)【出願番号】P 2019033831
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千葉 訓弘
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/013596(WO,A1)
【文献】特開2012-52868(JP,A)
【文献】特開2016-109086(JP,A)
【文献】特開2002-89453(JP,A)
【文献】特開2017-172377(JP,A)
【文献】特開2017-89389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管に取り付けられた還元触媒の上流側に還元剤を供給する還元剤噴射弁と、
前記還元剤が収容される貯蔵タンクと、
前記貯蔵タンクから前記還元剤を汲み出して前記還元剤噴射弁に圧送するポンプユニットと、
前記ポンプユニットに組み込まれ
、前記還元剤を加熱する加熱装置と、
前記還元剤にかかる圧力を検出する圧力検出部と、
前記還元剤にかかる圧力に基づいて前記還元剤の沸点を算出し、前記沸点よりも所定温度だけ低い温度である上限温度を算出する上限温度算出部と、
前記還元剤の温度を検出する還元剤温度検出部と、
前記還元剤の温度が前記上限温度よりも高い場合、前記加熱装置による前記還元剤の加熱を止める加熱制御部と、
を備えることを特徴とする還元剤供給装置。
【請求項2】
前記還元剤にかかる圧力は、前記貯蔵タンク内の前記還元剤にかかる圧力であることを特徴とする請求項1記載の還元剤供給装置。
【請求項3】
前記還元剤にかかる圧力は、前記貯蔵タンク内の前記還元剤にかかる大気圧であることを特徴とする請求項2記載の還元剤供給装置。
【請求項4】
前記還元剤にかかる圧力は、前記ポンプユニット内に設けられた加圧室内の還元剤にか
かる圧力であることを特徴とする請求項1記載の還元剤供給装置。
【請求項5】
前記加圧室に作用する電磁力を発生させるコイルへの通電電流に基づいて、前記加圧室内の還元剤にかかる圧力を算出することを特徴とする請求項4記載の還元剤供給装置。
【請求項6】
排気管に取り付けられた還元触媒の上流側に還元剤を供給する還元剤噴射弁と、前記還元剤が収容される貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクから前記還元剤を汲み出して前記還元剤噴射弁に圧送するポンプユニットと、前記ポンプユニットに組み込まれ
、前記還元剤を加熱する加熱装置とを有する還元剤供給装置の制御方法であって、
前記還元剤にかかる圧力を検出するステップと、
前記還元剤にかかる圧力に基づいて前記還元剤の沸点を算出し、前記沸点よりも所定温度だけ低い温度である上限温度を算出するステップと、
前記還元剤の温度を検出するステップと、
前記還元剤の温度が前記上限温度よりも高いか否かを判定し、前記還元剤の温度が前記上限温度よりも高い場合、前記加熱装置による前記還元剤の加熱を止めるステップと、
を備えることを特徴とする還元剤供給装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路に還元剤を供給するための還元剤供給装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガス中には、環境に影響を与えるおそれのある窒素酸化物(以下、「NOx」と称する。)が含まれている。このNOxを浄化するために用いられる排気浄化装置として、排気通路に配設された触媒の上流側に尿素水溶液等の還元剤を噴射供給し、触媒中で排気ガス中のNOxを還元反応させる排気浄化装置が知られている。
【0003】
このような排気浄化装置では、排気通路内に還元剤を添加するための還元剤添加装置が備えられている。この還元剤添加装置において、尿素水溶液を還元剤として用いる場合、還元剤が寒冷時に凍結するおそれがあることから、還元剤の供給系に加熱手段が備えられる場合ある。例えば、加熱手段として電熱ヒータを用いて、外気温度及び/または還元剤温度に応じてそれらの電熱ヒータに外部から通電し及びその通電を遮断し還元剤の凍結を防止する適宜な温度範囲を維持する排気浄化装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、還元剤を無条件に加熱すると還元剤の温度が沸点を超えてしまい気化し、これが圧力ダンパとなって還元剤を正常に圧送できなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、還元剤の加熱を適切に制御することができる還元剤供給装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る還元剤供給装置は排気管に取り付けられた還元触媒の上流側に還元剤を供給する還元剤噴射弁と、前記還元剤が収容される貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクから前記還元剤を汲み出して前記還元剤噴射弁に圧送するポンプユニットと、前記ポンプユニットに組み込まれた加熱装置と、前記還元剤にかかる圧力を検出する圧力検出部と、前記還元剤にかかる圧力に基づいて前記加熱装置を制御する加熱制御部と、を備えることを特徴とする還元剤供給装置である。
【0008】
前記還元剤にかかる圧力は、前記貯蔵タンク内の前記還元剤にかかる圧力であることが好ましい。
【0009】
前記還元剤にかかる圧力は、前記貯蔵タンク内の前記還元剤にかかる大気圧であることが好ましい。
【0010】
前記還元剤にかかる圧力は、前記ポンプユニット内に設けられた加圧室内の還元剤にかかる圧力であることであることが好ましい。
【0011】
前記加圧室に作用する電磁力を発生させるコイルへの通電電流に基づいて、前記加圧室内の還元剤にかかる圧力を算出することが好ましい。
【0012】
本発明に係る還元剤供給装置の制御方法は、排気管に取り付けられた還元触媒の上流側に還元剤を供給する還元剤噴射弁と、前記還元剤が収容される貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクから前記還元剤を汲み出して前記還元剤噴射弁に圧送するポンプユニットと、前記ポンプユニットに組み込まれた加熱装置とを有する還元剤供給装置の制御方法であって、前記還元剤にかかる圧力を検出するステップと、前記還元剤にかかる圧力に基づいて前記加熱装置を制御するステップと、を備えることを特徴とする還元剤供給装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排気管に取り付けられた還元触媒の上流側に還元剤を供給する還元剤供給装置において、還元剤の加熱を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る還元剤供給装置を備えた排気浄化装置の構成例を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る還元剤供給装置のポンプユニット部分の模式図である。
【
図3】同実施形態に係る還元剤供給装置の第1ポンプ部分の模式図である。
【
図4】同実施形態に係る還元剤供給装置の電子制御装置に備えられた構成のうち、還元剤の凍結を防止する制御に関連する部分を機能的なブロックで表した図である。
【
図5】同実施形態に係る還元剤供給装置において還元剤の凍結を防止する制御を表したフローチャートである。
【
図6】本発明の変形例に係る還元剤供給装置の電子制御装置に備えられた構成のうち、還元剤の凍結を防止する制御に関連する部分を機能的なブロックで表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照して、本発明の還元剤供給装置及びその制御方法に関する実施の形態について具体的に説明する。尚、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては、特に説明がない限り同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る還元剤供給装置及び還元剤供給装置の制御方法について説明する。
【0017】
1.排気浄化装置の全体構成
図1は、還元剤供給装置20を備える排気浄化装置10の全体構成の一例を説明するために示す模式図である。
この排気浄化装置10は、排気中のNOxを浄化するための装置であり、ディーゼルエンジン等の内燃機関1の排気通路11に設けられている。排気浄化装置10は、排気通路11の途中に介装された還元触媒13と、還元触媒13よりも上流側の排気通路11内に還元剤を供給するための還元剤供給装置20とを備えている。
【0018】
還元触媒13は、排気中のNOxの還元反応を促進する機能を有する触媒であり、還元剤から生成される還元成分を吸着するとともに、触媒に流れ込む排気中のNOxを還元成分によって選択的に還元するものとなっている。還元剤供給装置20は、還元剤として尿素水溶液が用いられるものであり、尿素水溶液が排気通路11中で分解されることにより還元成分としてのアンモニアが生成されるようになっている。
【0019】
2.還元剤供給装置
図1に示すように、還元剤供給装置20は、還元剤が収容される貯蔵部としての貯蔵タンク21と、還元剤を排気通路11内に噴射するための還元剤噴射弁25と、貯蔵タンク21の底面に取り付けられるとともに貯蔵タンク21内の還元剤を還元剤噴射弁25に圧送するポンプユニット30と、ポンプユニット30と還元剤噴射弁25を接続する供給通路23と、還元剤噴射弁25やポンプユニット30等と電気的に接続されておりこれらを電子制御する電子制御装置(ECU)100とを備えている。
【0020】
図2は、ポンプユニット30の構造の一例を説明するために示す模式図であり、
図3は後述する第1ポンプ31を説明するために示す模式図である。
【0021】
ポンプユニット30内には、貯蔵タンク21内の還元剤を汲み出し還元剤噴射弁25方向に圧送する第1ポンプ31と、貯蔵タンク21方向に戻す第2ポンプ41とを備えている。
【0022】
第1ポンプ31は、電磁駆動タイプのピストンポンプであり、シリンダ33と、ピストン35と、コイル37と、スプリング39とを備えている。ピストン35はシリンダ33内に摺動自在に保持されており、シリンダ33内にはピストン35によって画成された加圧室36が形成されている。ピストン35は加圧室36の体積が小さくなる方向にスプリング39によって付勢されている。また、コイル37は電子制御装置100と電気的に接続されており、電子制御装置100によってコイル37が通電されると、コイル37の発生する電磁力により、ピストン35はスプリング39の付勢力と逆方向に、すなわち加圧室36の体積が大きくなる方向に移動する。
【0023】
第2ポンプ41も、第1ポンプ31と同様の電磁駆動タイプのピストンポンプであり、第1ポンプ31と同様の構成を備えており、電子制御装置100によって電子制御される。尚、第1ポンプ31および第2ポンプ41は、ピストンポンプに限られるものではなく、例えばダイヤフラム式のポンプであってもよい。
【0024】
第1ポンプ31の加圧室36は貯蔵タンク21と第1通路51を介して連通している。第1通路51の途中には第1逆止弁61が設けられている。第1逆止弁61は還元剤が貯蔵タンク21から第1ポンプ31の方向にのみ流れるように機能する。
【0025】
また、第1ポンプ31の加圧室36は第2通路52を介して供給通路23と連通している。第2通路52の途中には第2逆止弁62が設けられている。第2逆止弁62は還元剤が第1ポンプ31から供給通路23の方向にのみ流れるように機能する。
【0026】
第2逆止弁62と供給通路23との間の第2通路52には、第3通路53との分岐点82が設けられている。第3通路53は第2ポンプ41の加圧室と連通しており、第3通路53の途中には第3逆止弁63が設けられている。第3逆止弁63は還元剤が分岐点82から第2ポンプ41の方向にのみ流れるように機能する。
【0027】
また、第2ポンプ41の加圧室は貯蔵タンク21と第4通路54を介して連通している。第4通路54の途中には第4逆止弁64が設けられている。第4逆止弁64は還元剤が第2ポンプ41から貯蔵タンク21の方向にのみ流れるように機能する。
【0028】
第1ポンプ31において、コイル37が非通電状態から通電状態に切り替わると、ピストン35がスプリング39に抗して加圧室36の体積を大きくする方向に移動し、貯蔵タンク内の還元剤が第1通路51を介して加圧室36内に流入する。次にコイル37が通電状態から非通電状態に切り替わると、スプリング39によって付勢されたピストン35が加圧室36内の還元剤を圧縮し、加圧室36内の還元剤は、第2通路52および供給通路23を通って還元剤噴射弁25に圧送される。
【0029】
電子制御装置100は、コイル37に流れる通電電流Icを測定することにより、第1ポンプ31の加圧室36内の圧力Ppを算出することができる。例えば通電電流Ic、通電電流Icの時間微分値または通電電流Icの時間積分値と加圧室内の圧力Ppの関係は予め実験等によってデータ化し電子制御装置に記憶しておくことにより、通電電流Icから第1ポンプ31の加圧室36内の圧力Ppを算出することができる。電子制御装置100は、当該還元剤の圧力に基づいて、コイル37や還元剤噴射弁25への通電を制御することにより、適量の還元剤を還元触媒13に供給することができる。
【0030】
電子制御装置100は、第1ポンプ31と同様に第2ポンプ41の作動を制御し、供給通路23や還元剤噴射弁25に残留する還元剤を貯蔵タンク21に戻すことができる。
【0031】
また、ポンプユニット30は加熱部である電熱ヒータ71を備えている。電熱ヒータ71は電子制御装置100と接続されており、通電されることにより発熱する。電熱ヒータ71は、例えば、貯蔵タンク21の底部と第1ポンプ31との間に配置され、貯蔵タンク21およびポンプユニット30内の還元剤の凍結を防ぐよう構成されている。
【0032】
還元剤供給装置20は、さらに還元剤温度センサ22と、外気温度センサ29と、大気圧センサ27とを備えている。
【0033】
還元剤温度センサ22は、貯蔵タンク21内の還元剤の温度を検出する。外気温度センサ29は還元剤供給装置20またはその近傍に設けられ、大気の温度を検出する。大気圧センサ27は還元剤供給装置20またはその近傍に設けられ大気圧を検出する。
【0034】
3.電子制御装置
電子制御装置100は公知のマイクロコンピュータ、RAMおよびROM等から構成されている。
図4は、電子制御装置100に備えられた構成のうち、還元剤の凍結を防止する制御に関連する部分を機能的なブロックで表した図であり、電子制御装置100が外気温度検出部110と、外気温度判断部111と、還元剤温度検出部112と、圧力検出部114と、上限温度算出部116と、記憶部120と、加熱制御部130とを備えていることが記載されている。具体的に、これらの各部は、マイクロコンピュータによるプログラムの実行によって実現されるものである。
【0035】
外気温度検出部110は、外気温度センサ29の信号である外気温度Taを受信し、外気温度判断部111に送る。
【0036】
外気温度判断部111は記憶部120から閾値温度Tthを読み出し、外気温度Taが閾値温度Tthよりも低いか否かを判断し、その結果を加熱制御部130に送る。還元剤が32.5%の尿素水溶液の場合、凝固点が-11℃なので、閾値温度Tthは-11℃またはこれよりも高い温度に設定される。
【0037】
加熱制御部130は、外気温度判断部111において外気温度Taが閾値温度Tthよりも低いと判断された場合には、還元剤の凍結のおそれがあるので、電熱ヒータ71に通電する。
【0038】
圧力検出部114は、大気圧センサ27の信号である大気圧Paを受信し、上限温度算出部116に送る。
【0039】
上限温度算出部116は、大気圧Paを基に還元剤の沸点を算出し、還元剤を加熱する場合の上限温度Tmaxを還元剤の沸点を基にさらに算出する。大気圧Paと還元剤の沸点の関係を予めマップ等にして記憶部120に入れておくことにより、これを読み出し、大気圧Paから還元剤の沸点を算出することができる。また、上限温度Tmaxは、電熱ヒータ71の加熱時に還元剤が沸点に達しないように、沸点から余裕をもった温度として算出される。例えば、還元剤の沸点が98℃の場合、10℃低い温度である88℃を上限温度Tmaxとすることができる。上限温度算出部116は、上限温度Tmaxを加熱制御部130に送る。
【0040】
還元剤温度検出部112は、還元剤温度センサ22の信号である還元剤温度Tuを受信し、加熱制御部130に送る。
【0041】
加熱制御部130は、電熱ヒータ71に通電後,還元剤温度Tuが上限温度Tmaxを超えた場合に電熱ヒータ71の通電を止める。
【0042】
以上のように、本願発明の還元剤供給装置によれば、還元剤が凍結するおそれがある場合に電熱ヒータ71で加熱し、還元剤の温度が、大気圧を考慮に入れた上限温度Tmaxを超えた場合に電熱ヒータ71の加熱を止めるので、還元剤の温度が沸点に到達することがなく、還元剤の沸騰で発生した蒸気により、ポンプユニット30にて還元剤の圧送が困難になることを回避することができる。
【0043】
4.還元剤供給装置の制御方法
次に、上述した電子制御装置100によって実行される還元剤供給装置の制御方法のうち、還元剤の凍結を防止する制御方法について
図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0044】
まずステップS10で、外気温度検出部110が外気温度Taを検出する。
【0045】
次にステップS20で、外気温度判断部111は、外気温度Taが閾値温度Tthよりも低いか否かを判断する。外気温度Taが閾値温度Tthよりも低い場合には、ステップS30に進み、外気温度Taが閾値温度Tth以上の場合には、還元剤が凍結するおそれが無いのでステップS80に進み本フローを終了する。尚、電熱ヒータ71が既に通電状態にある時にはステップS80において電熱ヒータ71を非通電状態にする。
【0046】
次にステップS30で、加熱制御部130は電熱ヒータ71を通電状態にする。尚、電熱ヒータ71が既に通電状態の場合には、通電状態を継続する。
【0047】
次にステップS40で、圧力検出部114が大気圧Paを検出する。
【0048】
次にステップS50で、上限温度算出部116が大気圧Paを基に還元剤の沸点を算出し、算出された還元剤の沸点を基に還元剤を加熱する場合の還元剤の上限温度Tmaxをさらに算出する。予め記憶部120に入力されている大気圧Paと還元剤の沸点との関係を示すマップ等から還元剤の沸点を算出することができる。また、上限温度Tmaxは、電熱ヒータ71の加熱時に還元剤が沸点に達しないように、沸点から余裕をもった温度として算出される。例えば還元剤の沸点が98℃の場合、10℃低い温度である88℃を上限温度Tmaxとすることができる。
【0049】
次にステップS60で、還元剤温度検出部112が還元剤温度Tuを検出する。
【0050】
次にステップS70で、加熱制御部130は、還元剤の温度Tuが上限温度Tmax以下であるか否かを判断する。還元剤の温度Tuが上限温度Tmax以下の場合にはステップS10に戻り、還元剤の温度Tuが上限温度Tmaxより高い場合にはステップS80に進む。
【0051】
ステップS80では、加熱制御部130は電熱ヒータ71への通電を遮断し、非通電とし本フローを終了する。
【0052】
以上のように、本願発明の還元剤供給装置の制御方法によれば、還元剤が凍結するおそれがある場合に電熱ヒータ71で加熱し、還元剤の温度が、大気圧を考慮に入れた上限温度Tmaxを超えた場合に電熱ヒータ71の加熱を止めるので、還元剤の温度が沸点に到達することがなく、還元剤の沸騰で発生した蒸気により、ポンプユニット30にて還元剤の圧送が困難になることを回避することができる。
【0053】
5.還元剤供給装置の変形例
ここまで、本実施形態に係る還元剤供給装置20について説明したが、本実施形態に係る還元剤供給装置は種々の変形が可能である。以下、本発明に係る還元剤供給装置の変形例の一つを説明する。
【0054】
図6は、変形例に係る還元剤供給装置の電子制御装置100’ に備えられた構成のうち、還元剤の凍結を防止する制御に関連する部分を機能的なブロックで表した図である。
図6に示す電子制御装置100’ は、圧力検出部114に代えて最低圧力検出部114’ を有している点で
図4に示す電子制御装置100と異なる。最低圧力検出部114’ は、コイル37への通電電流Icを受信し、通電電流Ic、通電電流Icの時間微分値または通電電流Icの時間積分値から加圧室内の圧力Ppを算出する。通電電流Ic、通電電流Icの時間微分値または通電電流Icの時間積分値と加圧室内の圧力Ppの関係は予め実験等によってデータ化し記憶部120に記憶しておくことができる。尚、コイル37への通電電流Icは電子制御装置100’内で検出した値を用いることができる。
【0055】
最低圧力検出部114’ は所定期間加圧室内の圧力Ppを受信し、当該所定期間における最低圧力Pp_lowを上限温度算出部116に送る。
【0056】
前述の通り、第1ポンプ31の加圧室36内の圧力はピストン35の移動に伴って変動する。例えば、ピストン35が加圧室36を圧縮する方向に移動する場合には加圧室36内の圧力は上昇し、加圧室の体積が増加する方向にピストン35が移動する場合には加圧室36内の圧力は下降する。最低圧力検出部114’ は、この変動する圧力を算出し、所定期間における最低圧力Pp_lowを決定し、上限温度算出部116に送る。
【0057】
ここで所定期間とは、第1ポンプ31へ通電を開始した時点から、その後非通電とし、再び通電を開始する時点までの期間を所定期間としてもよいし、これら通電・非通電のサイクルを2回以上行う期間を所定期間としてもよい。
【0058】
また、最低圧力Pp_lowは所定期間における最も低い圧力であるが、所定期間における測定を複数回行い、それぞれの所定期間における最も低い圧力の平均値を最低圧力Pp_lowとしてもよい。
【0059】
上限温度算出部116は最低圧力Pp_lowを基に還元剤の沸点を算出し、還元剤を加熱する場合の上限温度Tmaxを還元剤の沸点を基に算出する。前述の電子制御装置100において大気圧Paから還元剤の沸点を算出する方法と同様の方法で、最低圧力Pp_lowから還元剤の沸点を算出することができる。
【0060】
以上のように、変形例に係る還元剤供給装置によれば、コイル37への通電電流Icから加圧室36内の最低圧力Pp_low、さらには還元剤の沸点が算出される。そして当該沸点に基づいて算出される上限温度Tmaxを超えないように電熱ヒータ71を制御することにより、加圧室36内の還元剤の沸騰を確実に避けることができ、還元剤の沸騰で発生した蒸気によりポンプユニット30にて還元剤の圧送が困難になることを回避することができる。尚、変形例においてはコイル37への通電電流Icから加圧室内の圧力Ppを算出したが、加圧室内に圧力センサを設け、当該圧力センサから加圧室内の圧力Ppを検出し、最低圧力Pp_lowを決定してもよい。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0062】
1 内燃機関、10 排気浄化装置、11 排気通路、13 還元触媒、20 還元剤供給装置、21 貯蔵タンク、22 還元剤温度センサ、23 供給通路、25 還元剤噴射弁、27 大気圧センサ、29 外気温度センサ、30 ポンプユニット、31 第1ポンプ、33 シリンダ、35 ピストン、36 加圧室、37 コイル、39 スプリング、41 第2ポンプ、51 第1通路、52 第2通路、53 第3通路、54 第4通路、61 第1逆止弁、62 第2逆止弁、63 第3逆止弁、64 第4逆止弁、71 電熱ヒータ、82 分岐点、100 電子制御装置、100’ 電子制御装置、110 外気温度検出部、111 外気温度判断部、112 還元剤温度検出部、114 圧力検出部、114’ 最低圧力検出部、116 上限温度算出部、120 記憶部、130 加熱制御部