(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】建物の下地構造
(51)【国際特許分類】
E04B 9/00 20060101AFI20230224BHJP
E04B 9/22 20060101ALI20230224BHJP
E04B 9/30 20060101ALI20230224BHJP
E04B 2/82 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
E04B9/00 R
E04B9/22 E
E04B9/30 A
E04B2/82 501T
(21)【出願番号】P 2019055756
(22)【出願日】2019-03-23
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】井上 陽介
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115509(JP,A)
【文献】実開平04-073123(JP,U)
【文献】特開2000-336810(JP,A)
【文献】特開2007-211409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00
E04B 9/22
E04B 9/30
E04B 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火材に被覆された梁と、
前記梁の下方に設けられる壁下地と、
前記壁下地に対して水平方向に離間して設けられる天井下地と、
前記壁下地と前記天井下地とを繋ぐように設けられる繋ぎ部材と、
前記繋ぎ部材を介して前記天井下地に取り付けられる天井板材と、
前記繋ぎ部材を介して前記壁下地に取り付けられる壁板材と、
を具備
し、
前記繋ぎ部材は、
下方へ向けて開放された枠状の壁側繋ぎ部を有し、
前記壁板材の上端部は、
前記壁側繋ぎ部に収容される、
建物の下地構造。
【請求項2】
前記壁側繋ぎ部の一部は、
前記壁下地と前記壁板材との間に挟持される、
請求項1に記載の建物の下地構造。
【請求項3】
前記繋ぎ部材は、
前記壁側繋ぎ部の上端部よりも下方に接続されると共に水平方向に延びるように設けられた天井側繋ぎ部を有し、
前記天井板材は、
前記天井側繋ぎ部を介して前記天井下地に取り付けられる、
請求項1又は請求項2に記載の建物の下地構造。
【請求項4】
前記天井側繋ぎ部の一部は、
前記天井下地と前記天井板材との間に挟持される、
請求項3に記載の建物の下地構造。
【請求項5】
前記壁下地は、
前記壁板材が取り付けられる側と反対側の面に、当該壁下地の上側と下側とを連通するように形成された凹部を有する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の建物の下地構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の下地構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の下地構造の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1の建物の下地構造においては、耐火材に被覆された鉄骨梁の下方に離間した位置であって、かつ、壁面材の近傍となる位置に、天井下地材が設けられる。天井下地材の下側面には、天井板が固定される。こうして、前記下地構造においては、耐火性を有すると共に、天井下地材が鉄骨梁の耐火材に接触するのを抑制しつつ、天井板を設けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の建物の下地構造においては、天井下地材が鉄骨梁の下方に離間した位置に設けられるため、天井高が低くなるという問題があった。また仮に、天井高を高くするため、天井下地材の高さを高くすると共に、鉄骨梁との干渉を回避するように当該天井下地材を鉄骨梁から水平方向に離間した位置に設けた場合には、天井板の壁面材側の端部を天井下地材に固定することができず、ひいては当該天井下地材に固定された天井板(特に、壁面材側の端部)がガタつき易くなるという問題があった。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、天井高を高くすることができると共に、天井下地に取り付けられた天井板がガタつくのを抑制することができる建物の下地構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、耐火材に被覆された梁と、前記梁の下方に設けられる壁下地と、前記壁下地に対して水平方向に離間して設けられる天井下地と、前記壁下地と前記天井下地とを繋ぐように設けられる繋ぎ部材と、前記繋ぎ部材を介して前記天井下地に取り付けられる天井板材と、前記繋ぎ部材を介して前記壁下地に取り付けられる壁板材と、を具備し、前記繋ぎ部材は、下方へ向けて開放された枠状の壁側繋ぎ部を有し、前記壁板材の上端部は、前記壁側繋ぎ部に収容されるものである。
【0010】
請求項2においては、前記壁側繋ぎ部の一部は、前記壁下地と前記壁板材との間に挟持されるものである。
【0011】
請求項3においては、前記繋ぎ部材は、前記壁側繋ぎ部の上端部よりも下方に接続されると共に水平方向に延びるように設けられた天井側繋ぎ部を有し、前記天井板材は、前記天井側繋ぎ部を介して前記天井下地に取り付けられるものである。
【0012】
請求項4においては、前記天井側繋ぎ部の一部は、前記天井下地と前記天井板材との間に挟持されるものである。
【0013】
請求項5においては、前記壁下地は、前記壁板材が取り付けられる側と反対側の面に、当該壁下地の上側と下側とを連通するように形成された凹部を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、天井高を高くすることができると共に、天井下地に取り付けられた天井板材がガタつくのを抑制することができる。また、壁板材がガタつくのを抑制することができる。
【0017】
請求項2においては、壁下地に対して繋ぎ部材をずれ難くすることができる。
【0018】
請求項3においては、壁板材を天井板材よりも高く配置することができ、天井下地に取り付けられた天井板材がガタつくのを効果的に抑制することができる。
【0019】
請求項4においては、天井下地に対して繋ぎ部材をずれ難くすることができる。
【0020】
請求項5においては、凹部に他の部材を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る下地構造を有する住宅の一部を示す断面模式図。
【
図4】(a)繋ぎ部材を示す斜視図。(b)同じく、正面図。
【
図5】(a)壁板材及び天井板材を取り付ける様子を示す図。(b)
図5(a)の続きを示す図。(c)
図5(b)の続きを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図中の矢印に基づいて、前後方向、上下方向及び屋内外方向を定義して説明を行う。
【0023】
まず、
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る下地構造を有する住宅1について簡単に説明する。なお、本実施形態において、前記下地構造とは、後述するように、住宅1の壁体2及び天井3の両方の下地構造を含んでいる。
【0024】
図1に示す住宅1は、人(居住者)が居住するための、複数階(本実施形態においては、2階)立ての建築物である。住宅1は、主要な構造に鉄骨(例えば、後述する鉄骨梁10)が用いられた鉄骨系住宅である。なお、
図1は、住宅1のうち、2階部分の壁体2及び天井3の一部を示している。壁体2は、屋内空間と屋外空間とを仕切るものである。天井3は、屋内空間において居住空間(室内)と屋根裏空間とを仕切るものである。
【0025】
以下では、
図1から
図4を用いて、本発明の一実施形態に係る壁体2及び天井3の下地構造について説明する。
【0026】
図1に示すように、壁体2及び天井3の下地構造は、主として鉄骨梁10、パネルフレーム20、断熱板材30、壁下地40、配線50、壁板材60、天井下地70、天井板材80、防湿シート90及び繋ぎ部材100を具備する。
【0027】
図1に示す鉄骨梁10は、金属製のH形鋼である。鉄骨梁10は、後述する外壁面材4の近傍に設けられる。鉄骨梁10は、外壁面材4の面方向に沿うように配置される。
図1に示す鉄骨梁10においては、長手方向を前後方向(
図1の紙面手前側から奥側)へ向けて配置される。鉄骨梁10は、上フランジ(不図示)と下フランジ11とを有する。上フランジと下フランジ11との間には、断熱材12が設けられる。また、鉄骨梁10は、耐火材13を有する。
【0028】
図1及び
図2に示す耐火材13は、耐火性及び柔軟性を有する部材である。耐火材13は、例えばロックウールにより構成される。耐火材13は、鉄骨梁10に対して屋内側から屋外側に巻き付けられる。具体的には、耐火材13の大部分(下端部よりも上側部分)は、鉄骨梁10の屋内側に設けられ、当該鉄骨梁10に当接される。耐火材13の下端部は、屋外側へ向けて屈曲される。このように、耐火材13は、鉄骨梁10の少なくとも一部分を被覆する。なお以下では、耐火材13の屈曲された部分を「屈曲部13a」と称する。屈曲部13aは、概ね下フランジ11(より詳細には、下フランジ11の屋内側半分)の下方に配置される。屈曲部13aの上側面は、下フランジ11の下側面に当接される。
【0029】
図1に示すパネルフレーム20は、屋内外方向視で四角枠状のフレームである。パネルフレーム20は、例えば溝型鋼により構成される。パネルフレーム20の内側には、断熱材21が設けられる。パネルフレーム20は、鉄骨梁10の下方に設けられる。パネルフレーム20の上側面は、鉄骨梁10(より詳細には、下フランジ11の屋外側半分)の下側面に当接される。パネルフレーム20は、ボルト22により鉄骨梁10の下フランジ11と固定される。パネルフレーム20の上端部の屋内側側面は、耐火材13の屈曲部13aの屋外側側面に当接される。
【0030】
図1に示す断熱板材30は、断熱性を有する平板状の部材である。断熱板材30は、例えばグラスウールボードにより構成される。断熱板材30は、その板面を屋内外方向へ向けて設けられる。断熱板材30の屋内側側面は、パネルフレーム20の屋外側側面に当接される。断熱板材30の上端部は、パネルフレーム20の上端部と略同一の高さに位置する。これにより、壁体2において、断熱板材30と耐火材13とが上下方向において連続するように(上下方向において断熱板材30と耐火材13との間に隙間が生じないように)構成される。断熱板材30の屋外方には、屋外に露出する外壁面材4が設けられる。
【0031】
図1から
図3に示す壁下地40は、後述する壁板材60が取り付けられる部材である。なお
図3は、壁体2及び天井3の下地構造の一部の構造(より詳細には、壁下地40、壁板材60、天井下地70、天井板材80及び繋ぎ部材100等の組み付け構造)を示すものであり、便宜上一部の部材の図示を省略している。壁下地40は、鉄骨梁10の下方に設けられる。より詳細には、壁下地40は、鉄骨梁10に被覆された耐火材13の屈曲部13aの下方に設けられる。こうして、壁下地40は、正面視で屋内外方向において鉄骨梁10の内側に位置するように設けられる。壁下地40の上側面は、耐火材13の屈曲部13aの下側面に当接される。また、壁下地40の屋外側側面は、パネルフレーム20(
図1においては、パネルフレーム20の内側に設けられた断熱材21)の屋内側側面に当接される。壁下地40は、横胴縁41と、間柱42と、を有する。
【0032】
横胴縁41は、長手方向を横(前後)方向へ向けて配置される。横胴縁41は、複数設けられ、上下方向に互いに適宜の間隔をあけて配置される。
【0033】
間柱42は、複数の横胴縁41の屋外方に設けられる。壁板材60は、長手方向を縦(上下)方向へ向けて配置され、複数の横胴縁41と互いに固定される。間柱42は、複数設けられ、前後方向に互いに適宜の間隔をあけて配置される。
【0034】
こうして、壁下地40は、複数の横胴縁41と複数の間柱42とにより屋内外方向視で格子状に形成される。また、壁下地40には、前後方向に互いに隣り合う間柱42と複数の横胴縁41とにより、平面視で屋外側が開放された略矩形状の凹部43が区画される(
図3参照)。換言すれば、凹部43は、壁下地40の屋外側側面が屋内側へ向けて凹むように形成される。凹部43は、壁下地40の上側と下側とを連通するように形成される。凹部43には、配線50が設けられる。
【0035】
図1から
図3に示す配線50は、室内に電気を供給するための電気配線である。なお
図1及び
図3においては、便宜上、配線50を太破線により図示している。配線50は、天井3から壁体2へ亘るように設けられる。配線50の一側(天井3側の部分)は、後述する天井下地70の上方に設けられた断熱材72に載置される。配線50の中途部(一側と他側との間)は、耐火材13と断熱材72との間や、耐火材13と天井下地70との間、耐火材13及び壁下地40(壁下地40の上側面)と後述する繋ぎ部材100との間等を通るように配置される。配線50の他側(壁体2側)は、壁下地40の凹部43内に設けられる。
【0036】
上述の如く凹部43内の配線50は、当該凹部43内を上方から下方へと延びるように配置される。すなわち、凹部43内の配線50は、正面視で屋内外方向において壁下地40の内側に配置される。配線50の他側端部(下側端部)は、例えば室内の床面近傍に配設されたコンセント(不図示)と接続される。このように、壁体2内においては、配線50が壁下地40の凹部43に設けられるため、配線50を配置するためのスペースを別途確保する必要がなく、当該壁体2のコンパクト化を図ることができる。
【0037】
図1から
図3に示す壁板材60は、屋内(室内)に露出する壁紙が貼付される平板状の部材である。壁板材60は、例えば石膏ボードにより構成される。壁板材60は、その板面を屋内外方向へ向けて設けられる。壁板材60は、釘等の固定部材を用いて、後述する繋ぎ部材100を介して壁下地40に固定される。
【0038】
図1から
図3に示す天井下地70は、後述する天井板材80が取り付けられる部材である。天井下地70は、野縁71を有する。野縁71は、複数設けられる。複数の野縁71は、それぞれ互いに適宜の間隔をあけて、長手方向を前後方向又は屋内外方向へ向けて配置される。こうして、天井下地70は、複数の野縁71により平面視で格子状に形成される。
【0039】
また、天井下地70は、鉄骨梁10よりも屋内方に設けられる。より詳細には、天井下地70は、鉄骨梁10の耐火材13の屈曲部13aの屋内方に設けられる。天井下地70の屋外側側面は、耐火材13の屈曲部13aの屋内側側面に当接される。こうして、天井下地70は、壁下地40に対して所定幅(具体的には、壁板材60及び耐火材13の厚み幅分)だけ、屋内外方向(水平方向)に離間して設けられる。天井下地70の上端面は、耐火材13の屈曲部13aの上端面よりも高さが若干高く位置し、鉄骨梁10の下フランジ11と略同一の高さに位置する。また、天井下地70の下端面は、屈曲部13aの下側面や、壁下地40の上端面よりも下方に位置する。天井下地70の上方には、断熱材72が水平方向に延びるように設けられる。
【0040】
このように、天井下地70は、壁下地40に対して所定幅だけ水平方向に離間して設けられるため、鉄骨梁10と干渉することなく、高さを比較的高くすることができる。
【0041】
図1から
図3に示す天井板材80は、屋内(室内)に露出するクロス(壁紙)が貼付される平板状の部材である。天井板材80は、例えば石膏ボードにより構成される。天井板材80は、その板面を上下方向へ向けて設けられる。天井板材80は、釘等の固定部材を用いて、後述する繋ぎ部材100を介して天井下地70に固定される。
【0042】
図1及び
図2に示す防湿シート90は、水分を透過し難いシート状の部材である。なお
図1においては、便宜上、防湿シート90を太実線により図示している。防湿シート90は、例えばポリエチレンシートやプラスチックシート等の適宜の材質により構成される。防湿シート90は可撓性を有する。防湿シート90は、釘等の固定部材を用いて下方から天井下地70に固定される。防湿シート90は、平面視で天井3の全ての領域に亘るように(具体的には、天井板材80の全ての領域を上方から覆うように)配置される(不図示)。なお、防湿シート90は、
図2に示す点Pよりも屋外側の部分(以下では「屋外側の部分90a」と称する)が天井板材80から屋外方にはみ出すように設けられる。
【0043】
防湿シート90のうち、屋外側の部分90aは、後述する繋ぎ部材100により下方から支持される。こうして、屋外側の部分90aは、天井下地70に固定された部分から垂れ下がることなく、繋ぎ部材100により上方に持ち上げられる。持ち上げられた屋外側の部分90aは、耐火材13に下方から当接される。
【0044】
図1から
図4に示す繋ぎ部材100は、壁下地40と天井下地70とを繋ぐ部材である。繋ぎ部材100は、例えば鋼板が適宜屈曲されることにより形成される。繋ぎ部材100は、
図3に示すように、複数設けられる。
【0045】
まず、
図4を用いて、1つの繋ぎ部材100の構成について詳細に説明する。
図4に示すように、繋ぎ部材100は、壁側繋ぎ部110と、天井側繋ぎ部120と、を有する。
【0046】
壁側繋ぎ部110は、繋ぎ部材100のうち屋外側に形成される部分である。壁側繋ぎ部110は、外側板部111と、内側板部112と、天板部113と、を有する。
【0047】
外側板部111は、壁側繋ぎ部110のうち最も屋外側に形成される部分である。外側板部111は、その板面を屋内外方向へ向けた略平板状に形成される。
【0048】
内側板部112は、壁側繋ぎ部110のうち最も屋内側に形成される部分である。内側板部112は、その板面を屋内外方向へ向けた略平板状に形成される。内側板部112は、外側板部111から屋内方に離間して設けられる。外側板部111と内側板部112との間の幅は、壁板材60の厚さ(屋内外方向の幅)と略同一に形成される。内側板部112の上端部は、外側板部111の上端部と略同一の高さに位置する。内側板部112の下端部は、外側板部111の下端部よりも上方に位置する。
【0049】
天板部113は、外側板部111と内側板部112とを連結する部分である。天板部113は、その板面を上下方向へ向けた略平板状に形成される。天板部113の屋外側端部は、外側板部111の上端部と接続される。天板部113の屋内側端部は、内側板部112の上端部と接続される。
【0050】
こうして、壁側繋ぎ部110は、外側板部111、内側板部112及び天板部113により、後述する天井側繋ぎ部120よりも上方に凹んだ溝状に形成される。換言すれば、壁側繋ぎ部110は、下方へ向けて開放されると共に、正面視で一辺(屋外側の辺)が他の辺(屋内側の辺、及び、上側の辺)よりも長く延びた四角枠状に形成される。
【0051】
天井側繋ぎ部120は、繋ぎ部材100のうち屋内側に形成される部分である。天井側繋ぎ部120は、その板面を上下方向へ向けた略平板状に形成される。天井側繋ぎ部120の屋外側端部は、壁側繋ぎ部110の内側板部112の下端部に接続される。すなわち、天井側繋ぎ部120の屋外側端部は、壁側繋ぎ部110の上端部よりも低い位置で当該壁側繋ぎ部110に接続される。天井側繋ぎ部120は、内側板部112の下端部から屋内側(水平方向)に延びるように設けられる。
【0052】
次に、
図1から
図3を用いて、繋ぎ部材100と他の部材との組み付けの構成について詳細に説明する。
【0053】
繋ぎ部材100は、上述の如く複数設けられる。複数の繋ぎ部材100は、
図3に示すように、前後方向に1つずつ並べられる。隣り合う繋ぎ部材100は、互いに密着するように(互いの間に隙間が生じないように)配置される。繋ぎ部材100は、天井下地70に固定される。具体的には、壁側繋ぎ部110を屋外方へ向けて壁下地40に対して突き当てた状態で、天井側繋ぎ部120が釘等の固定部材を用いて下方から天井下地70に固定される。なお、天井側繋ぎ部120は、天井下地70との間に防湿シート90を挟持している。
【0054】
また、
図1及び
図2に示すように、繋ぎ部材100の壁側繋ぎ部110は、鉄骨梁10の下方に設けられる。より詳細には、壁側繋ぎ部110の天板部113は、鉄骨梁10に被覆された耐火材13の屈曲部13aの下方に設けられる。壁側繋ぎ部110の天板部113は、正面視で屋内外方向において鉄骨梁10の内側に位置するように設けられる。壁側繋ぎ部110の天板部113の上側面は、耐火材13の屈曲部13aの下側面に当接される。また、壁側繋ぎ部110の外側板部111の屋外側側面は、壁下地40の屋内側側面に当接される。壁側繋ぎ部110は、耐火材13及び壁下地40との間に防湿シート90を挟持している。
【0055】
このように、繋ぎ部材100は、天井側繋ぎ部120において天井下地70と固定されると共に壁側繋ぎ部110において壁下地40と当接されることによって、当該天井下地70と壁下地40とを繋ぐように構成される。具体的には、繋ぎ部材100は、壁下地40に対して突き当てた状態で天井下地70に固定されるため、互いに水平方向に離間した状態であっても、当該天井下地70と壁下地40との相対的な位置関係を比較的安定させることができる。すなわち、繋ぎ部材100は、天井下地70と壁下地40との相対的な位置を概ね一定にすることができ、ひいては相対的な位置が変化するのを抑制することができる。
【0056】
ここで、仮に天井下地70と壁下地40とが互いに水平方向に近接した状態に配置された場合(具体的には、例えば、天井下地70が、耐火材13や鉄骨梁10と上下方向に並ぶように配置される程度に、壁下地40と近接した状態に配置された場合)、天井下地70は、耐火材13や鉄骨梁10と干渉するため、高さを高くすることができない。しかし、本実施形態では、上述の如く、天井下地70と壁下地40とを互いに水平方向に離間した状態で配置することができるため、天井下地70を、鉄骨梁10等と干渉することなく、高さを比較的高くすることができる。こうして、天井高を高くすることができる。
【0057】
また、上述の如く四角枠状に形成された壁側繋ぎ部110の内側には、壁板材60の上端部が収容される。壁板材60の上端部は、壁側繋ぎ部110の天板部113に下方から当接される。また、壁板材60の屋外側側面及び屋内側側面は、それぞれ壁側繋ぎ部110の外側板部111及び内側板部112に当該壁側繋ぎ部110の内側から当接される。こうして、壁板材60の上端部は、壁側繋ぎ部110によって上方及び屋内外方向への移動が規制される。このように、繋ぎ部材100の壁側繋ぎ部110の内側に壁板材60の上端部が収容されると、当該壁板材60の上端部がガタつくのを抑制することができる。
【0058】
なお、壁板材60は、上述の如く、釘等の固定部材を用いて壁下地40に固定される。こうして、繋ぎ部材100(より詳細には、壁側繋ぎ部110の外側板部111)は、壁板材60と壁下地40とにより挟持される。こうして、本実施形態のように、繋ぎ部材100を(天井下地70及び壁下地40のうち)天井下地70にのみ固定した場合、すなわち繋ぎ部材100と壁下地40とが釘等の固定部材を用いて互いに固定されていない場合であっても、当該繋ぎ部材100が壁下地40に対してずれるのを効果的に抑制することができる。
【0059】
また、繋ぎ部材100の天井側繋ぎ部120の下方には、天井板材80が配置される。天井板材80の上側面は、繋ぎ部材100の天井側繋ぎ部120の下側面に当接される。また、天井板材80の屋外側側面は、(繋ぎ部材100の壁側繋ぎ部110に収容された)壁板材60の上端部の屋内側側面に当接される。このように、天井板材80の上側面及び屋外側側面を他の部材に当接(より詳細には、面接触)させることにより、天井板材80の屋外側の端部の上方及び屋外方への移動を規制することができる。このように、繋ぎ部材100の天井側繋ぎ部120の下方に天井板材80を配置させることにより、当該天井板材80の屋外側の端部がガタつくのを抑制することができる。
【0060】
また、天井板材80は、上述の如く、釘等の固定部材を用いて天井下地70に固定される。こうして、繋ぎ部材100(より詳細には、天井側繋ぎ部120)は、天井板材80と天井下地70とにより挟持される。こうして、繋ぎ部材100を天井下地70に釘等の固定部材を用いて固定するだけでなく、天井側繋ぎ部120を天井板材80と天井下地70とにより挟んだ状態で支持することによって、当該繋ぎ部材100が天井下地70に対してずれるのを効果的に抑制することができる。
【0061】
次に、
図5を用いて、繋ぎ部材100に対して、壁板材60及び天井板材80を取り付ける態様について説明する。
【0062】
まず、
図5(a)に示すように、壁板材60の上端部を屋外方へ向けて傾けると共に、当該壁板材60の上端部を繋ぎ部材100の壁側繋ぎ部110に突き当てた状態に配置する。次に、
図5(b)に示すように、壁板材60の上端部を、壁側繋ぎ部110の外側板部111、内側板部112及び天板部113により囲まれた空間に押し込むと同時に、壁板材60の下端部を床面側へ向けて移動させる。すなわち、壁板材60を上端部近傍を概ね中心として正面視で時計回りに回動させる。こうして、壁板材60は、上端部が壁側繋ぎ部110に収容されると共に、当該壁板材60の板面を屋内外方向へ向けて配置される。これにより、壁板材60の上端面を壁側繋ぎ部110の天板部113の下側面に当接させると共に、壁板材60の下端面を床面と(概ね)当接させることができる。
【0063】
次に、
図5(c)に示すように、天井板材80を壁板材60に突き当てるように移動させる。こうして、天井板材80の屋外側側面を壁板材60の屋内側側面に当接させることができる。
【0064】
このような取り付け態様により、繋ぎ部材100、壁板材60及び天井板材80を互いに漏れなく当接させることができ、天井下地70に取り付けられた天井板材80や、壁下地40に取り付けられた壁板材60がガタつくのを効果的に抑制することができる。
【0065】
以上のように、一実施形態に係る住宅1の下地構造においては、
耐火材13に被覆された鉄骨梁10と、
前記鉄骨梁10の下方に設けられる壁下地40と、
前記壁下地40に対して水平方向に離間して設けられる天井下地70と、
前記壁下地40と前記天井下地70とを繋ぐように設けられる繋ぎ部材100と、
前記繋ぎ部材100を介して前記天井下地70に取り付けられる天井板材80と、
を具備するものである。
【0066】
このような構成により、繋ぎ部材100により天井下地70と壁下地40との相対的な位置が変化するのを抑制することができる。また、繋ぎ部材100により天井下地70と壁下地40とを互いに水平方向に離間した状態で配置することができるため、鉄骨梁10等と干渉することなく天井下地70の高さを比較的高くすることができる。すなわち、前記下地構造の構成により、天井高を高くすることができると共に、天井下地70に取り付けられた天井板材80がガタつくのを抑制することができる。
【0067】
また、前記下地構造においては、
前記繋ぎ部材100を介して前記壁下地40に取り付けられる壁板材60を具備し、
前記繋ぎ部材100は、
下方へ向けて開放された枠状の壁側繋ぎ部110を有し、
前記壁板材60の上端部は、
前記壁側繋ぎ部110に収容されるものである。
【0068】
このような構成により、壁板材60の上端部は枠状の壁側繋ぎ部110によって上方及び屋内外方向への移動が規制されるため、当該壁板材60がガタつくのを抑制することができる。
【0069】
また、前記下地構造において、
前記壁側繋ぎ部110の一部(より詳細には、壁側繋ぎ部110の外側板部111)は、
前記壁下地40と前記壁板材60との間に挟持されるものである。
【0070】
このような構成により、壁下地40に対して繋ぎ部材100をずれ難くすることができる。
【0071】
また、前記下地構造において、
前記繋ぎ部材100は、
前記壁側繋ぎ部110の上端部よりも下方に接続されると共に水平方向に延びるように設けられた天井側繋ぎ部120を有し、
前記天井板材80は、
前記天井側繋ぎ部120を介して前記天井下地70に取り付けられるものである。
【0072】
このような構成により、壁板材60の上端部を天井板材80よりも高く配置することができる。こうして、天井板材80の上側面及び屋外側側面を他の部材に当接(より詳細には、面接触)させることができ、天井板材80がガタつくのを効果的に抑制することができる。また、壁板材60の上端部を天井板材80よりも高く配置することができるため、当該壁板材60の上端面を、繋ぎ部材100を介して耐火材13(屈曲部13a)の下端面に当接させることができる。このような構成により、壁体2においては、耐火材13と壁板材60(石膏ボード)とを上下方向において連続させる(上下方向において壁板材60と耐火材13との間に隙間が生じないようにする)ことができる。
【0073】
また、前記下地構造において、
前記天井側繋ぎ部120の一部(より詳細には、天井側繋ぎ部120の屋内側端部の近傍部分)は、
前記天井下地70と前記天井板材80との間に挟持されるものである。
【0074】
このような構成により、天井下地70に対して繋ぎ部材100をずれ難くすることができる。
【0075】
また、前記下地構造において、
前記壁下地40は、
当該壁下地40の屋外側側面(前記壁板材60が取り付けられる側と反対側の面)に、当該壁下地40の上側と下側とを連通するように形成された凹部43を有するものである。
【0076】
このような構成により、凹部43に他の部材(本実施形態においては、配線50)を配置することができる。こうして、壁体2のコンパクト化を図ることができる。
【0077】
なお、本実施形態に係る住宅1は、本発明に係る建物の一実施形態である。
【0078】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0079】
例えば、建物は、住宅1に限定するものでなく、オフィスビルや、病院、学校等であってもよい。また、天井3は、居住空間と屋根裏空間とを仕切るものではなく、居住空間(例えば1階部分とその上の2階部分)とを仕切るものであってもよい。
【0080】
また、梁は、鉄骨梁10に限定するものではなく、任意の梁を採用することができる。
【0081】
また、繋ぎ部材の構成は、繋ぎ部材100に限定するものではなく、任意の構成を採用することができる。また、繋ぎ部材100は、固定部材を用いて(天井下地70及び壁下地40のうち)天井下地70にのみ固定するものとしたが、壁下地40にのみ固定してもよく、また天井下地70及び壁下地40の両方に固定してもよい。また、繋ぎ部材は、繋ぎ部材100のように、外側板部111、内側板部112及び天板部113により囲まれた空間を必ずしも有さなくてもよい。
【0082】
また、壁下地40の凹部43に配置されるものは、配線50(電気配線)ではなく、光配線等の他の種類の配線であってもよく、また配線ではなく配管等であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 住宅
40 壁下地
60 壁板材
100 繋ぎ部材
110 壁側繋ぎ部