(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ステッピングモータ制御装置、時計およびステッピングモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
G04C 3/14 20060101AFI20230224BHJP
H02P 8/02 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
G04C3/14 X
H02P8/02
(21)【出願番号】P 2019058268
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】佐久本 和実
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸祐
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-16376(JP,A)
【文献】特開2017-96950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 3/14
H02P 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指針を時計回りに回転させる正転方向及び前記指針を前記正転方向とは反対の方向である逆転方向に回転させるロータと、駆動電流が流されることにより磁束を発生させるコイルと、前記コイルが発生させる磁束を前記ロータに与えるステータと、を備えるステッピングモータを制御するためのステッピングモータ制御装置であって、
前記コイルに誘起される電圧の状態に基づいて、前記磁束による力以外の外力が前記ロータに加わったことを検出する外力検出部と、
前記コイルに誘起される電圧の状態に基づいて、前記外力による前記ロータの回転方向が前記正転方向であるか前記逆転方向であるかを検出する回転方向検出部と、
前記ロータに前記外力が加わったことを前記外力検出部が検出した場合に、
前記正転方向に駆動する駆動電流と前記逆転方向に駆動する駆動電流とのうち、前記回転方向検出部が検出する回転方向に一致する方向に前記ロータを回転させる駆動電流を前記コイルに供給する駆動制御部と、
を備えるステッピングモータ制御装置。
【請求項2】
前記回転方向検出部は、
前記コイルの両端のいずれかに誘起される電圧の出現順序に基づいて、前記外力による前記ロータの回転方向が前記正転方向であるか前記逆転方向であるかを検出する
請求項
1に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項3】
前記回転方向検出部は、
前記コイルに誘起される電圧の出現時間幅に基づいて、前記外力による前記ロータの回転方向が前記正転方向であるか前記逆転方向であるかを検出する
請求項
2に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項4】
前記ロータは、少なくともN極とS極との2極に着磁され、
前記ステータの基準方向と前記ロータの磁極の方向との相対位置関係にさらに基づいて、前記外力によって回転した前記ロータの磁極の方向を検出する回転位置検出部
をさらに備え、
前記駆動制御部は、
前記回転位置検出部によって検出された前記ロータの磁極の方向に基づいて、前記コイルに供給する駆動電流の状態を制御する
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項5】
前記駆動制御部が前記駆動電流を前記コイルに供給した後に、前記ロータを回転させる検査電流を前記コイルに供給する検査電流供給部
をさらに備え、
前記回転位置検出部は、前記検査電流供給部によって前記検査電流が前記コイルに供給された後に、前記コイルに誘起される電圧の状態に基づいて前記ロータの磁極の回転位置検出する
を備える請求項
4に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置と、
前記ステッピングモータと、
前記指針と
を備える時計。
【請求項7】
指針を時計回りに回転させる正転方向及び前記指針を前記正転方向とは反対の方向である逆転方向に回転させるロータと、駆動電流が流されることにより磁束を発生させるコイルと、前記コイルが発生させる磁束を前記ロータに与えるステータと、を備えるステッピングモータの制御方法であって、
前記コイルに誘起される電圧の状態に基づいて、前記磁束による力以外の外力が前記ロータに加わったことを検出する外力検出工程と、
前記コイルに誘起される電圧の状態に基づいて、前記外力による前記ロータの回転方向が前記正転方向であるか前記逆転方向であるかを検出する回転方向検出工程と、
前記ロータに前記外力が加わったことが前記外力検出工程において検出された場合に、
前記正転方向に駆動する駆動電流と前記逆転方向に駆動する駆動電流とのうち、前記回転方向検出工程において検出される回転方向に一致する方向に前記ロータを回転させる駆動電流を前記コイルに供給する駆動制御工程と、
を有するステッピングモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ステッピングモータ制御装置、時計およびステッピングモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
時計の指針駆動などに用いられるステッピングモータを駆動する場合において、落下の衝撃などの外力がステッピングモータのロータに加わる場合がある。この場合、外力によってロータの回転位置が変化することにより、ロータの回転位置が本来の制御位置からずれることがあった。これに関し、特許文献1には、ロータに外力が加わった場合に、ロータに制動力を与えて、ロータの回転を抑止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来技術によると、制動力が十分に得られない場合があるという課題があった。
上述した課題に鑑み、本発明の実施形態は、ステッピングモータの回転制御において、ロータを回転させる外力を受けた場合のロータの回転位置の補正の精度を向上させることができるステッピングモータ制御装置、時計およびステッピングモータ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置は、指針を時計回りに回転させる正転方向及び前記指針を前記正転方向とは反対の方向である逆転方向に回転させるロータと、駆動電流が流されることにより磁束を発生させるコイルと、前記コイルが発生させる磁束を前記ロータに与えるステータと、を備えるステッピングモータを制御するためのステッピングモータ制御装置であって、前記コイルに誘起される電圧の状態に基づいて、前記磁束による力以外の外力が前記ロータに加わったことを検出する外力検出部と、前記コイルに誘起される電圧の状態に基づいて、前記外力による前記ロータの回転方向が前記正転方向であるか前記逆転方向であるかを検出する回転方向検出部と、前記ロータに前記外力が加わったことを前記外力検出部が検出した場合に、前記正転方向に駆動する駆動電流と前記逆転方向に駆動する駆動電流とのうち、前記回転方向検出部が検出する回転方向に一致する方向に前記ロータを回転させる駆動電流を前記コイルに供給する駆動制御部と、を備える。
【0006】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置は、前記コイルに誘起される電圧の状態に基づいて、前記外力による前記ロータの回転方向が前記正転方向であるか前記逆転方向であるかを検出する回転方向検出部をさらに備え、前記駆動制御部は、前記正転方向に駆動する駆動電流と前記逆転方向に駆動する駆動電流とのうち、前記回転方向検出部が検出する回転方向に一致する方向に前記ロータを回転させる駆動電流を前記コイルに供給する。
【0007】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記回転方向検出部は、前記コイルの両端のいずれかに誘起される電圧の出現順序に基づいて、前記外力による前記ロータの回転方向が前記正転方向であるか前記逆転方向であるかを検出する。
【0008】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記回転方向検出部は、前記コイルに誘起される電圧の出現時間幅に基づいて、前記外力による前記ロータの回転方向が前記正転方向であるか前記逆転方向であるかを検出する。
【0009】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記ロータは、少なくともN極とS極との2極に着磁され、前記ステータの基準方向と前記ロータの磁極の方向との相対位置関係にさらに基づいて、前記外力によって回転した前記ロータの磁極の方向を検出する回転位置検出部をさらに備え、前記駆動制御部は、前記回転位置検出部によって検出された前記ロータの磁極の方向に基づいて、前記コイルに供給する駆動電流の状態を制御する。
【0010】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置は、前記駆動制御部が前記駆動電流を前記コイルに供給した後に、前記ロータを回転させる検査電流を前記コイルに供給する検査電流供給部をさらに備え、前記回転位置検出部は、前記検査電流供給部によって前記検査電流が前記コイルに供給された後に、前記コイルに誘起される電圧の状態に基づいて前記ロータの磁極の回転位置を検出する。
【0011】
本発明の一態様に係る時計は、上述のステッピングモータ制御装置と、前記ステッピングモータと、前記指針とを備える。
【0012】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御方法は、指針を時計回りに回転させる正転方向及び前記指針を前記正転方向とは反対の方向である逆転方向に回転させるロータと、駆動電流が流されることにより磁束を発生させるコイルと、前記コイルが発生させる磁束を前記ロータに与えるステータと、を備えるステッピングモータの制御方法であって、前記コイルに誘起される電圧の状態に基づいて、前記磁束による力以外の外力が前記ロータに加わったことを検出する外力検出工程と、前記コイルに誘起される電圧の状態に基づいて、前記外力による前記ロータの回転方向が前記正転方向であるか前記逆転方向であるかを検出する回転方向検出工程と、前記ロータに前記外力が加わったことが前記外力検出工程において検出された場合に、前記正転方向に駆動する駆動電流と前記逆転方向に駆動する駆動電流とのうち、前記回転方向検出工程において検出される回転方向に一致する方向に前記ロータを回転させる駆動電流を前記コイルに供給する駆動制御工程と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、ロータを回転させる外力を受けた場合のロータの回転位置の補正の精度を向上させることができるステッピングモータ制御装置、時計およびステッピングモータ制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る時計の構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係るモータ駆動回路及びステッピングモータの一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係るロータを回転させる場合にコイルの二つの端子それぞれに発生する信号及びこれらの信号を発生させるためにトランジスタのゲートに入力されるゲート信号の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係るロータが
図2に示した状態から正転方向に1ステップ回転し、自由振動している状態の一例を示す図である。
【
図5】
図4に示した場合における駆動パルス、誘起電圧及び補正駆動パルスと、これら三つの信号を発生させるためにトランジスタのゲートに入力されるゲート信号の一例である。
【
図6】
図2に示した状態からロータを正転方向に1ステップ回転させた後、ロータを正転方向に1ステップ回転させる衝撃が実施形態に係る時計に加えられた場合の一例を示す図である。
【
図7】
図6に示した場合においてトランジスタのゲートに入力されるゲート信号及びコイルの二つの端子それぞれに発生する誘起電圧の一例を示す図である。
【
図8】
図2に示した状態からロータを正転方向に1ステップ回転させた後、ロータを逆転方向に1ステップ回転させる衝撃が実施形態に係る時計に加えられた場合の一例を示す図である。
【
図9】
図8に示した場合においてコイルの二つの端子それぞれに発生する誘起電圧の一例を示す図である。
【
図10】本実施形態の針飛び回転方向検出回路による回転方向の検出パターンの一例を示す図である。
【
図11】本実施形態における正転衝撃の場合のロータの挙動の一例を示す図である。
【
図12】本実施形態における逆転衝撃の場合のロータの挙動の一例を示す図である。
【
図13】本実施形態のステッピングモータ制御装置の動作の一例を示す図である。
【
図14】本実施形態のロータに正転方向の外力が加わった状態の一例を示す図である。
【
図15】本実施形態のロータに正転方向の外力が加わった場合の波形の一例を示す図である。
【
図16】本実施形態のロータに逆転方向の外力が加わった状態の一例を示す図である。
【
図17】本実施形態のロータに逆転方向の外力が加わった場合の波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図を参照しながら、実施形態に係る時計1の一例について説明する。
図1は、実施形態に係る時計の構成の一例を示す図である。
【0016】
[時計1の機能構成]
時計1は、ステッピングモータ制御装置100と、ステッピングモータ151と、時計ケース152と、アナログ表示部153と、ムーブメント154と、指針155とを備える。
【0017】
時計ケース152は、ステッピングモータ制御装置100と、ステッピングモータ151と、アナログ表示部153と、ムーブメント154と、指針155とを収納している筐体である。
【0018】
アナログ表示部153は、目盛りが刻まれた文字盤である。ムーブメント154は、時計1の各部を駆動させるための機械式の機構である。指針155は、時針、分針、秒針その他の針を含む。
【0019】
ステッピングモータ制御装置100は、発振回路101と、分周回路102と、制御回路103と、主駆動パルス発生回路104と、補正駆動パルス発生回路105と、モータ駆動回路106と、回転検出回路113と、回転補正回路116と、針飛び補正駆動パルス発生回路117と、針飛び抑制パルス発生回路118と、極性チェックパルス発生回路119と、極性検出回路120と、針飛び検出回路121と、針飛び回転方向検出回路122とを備える。
【0020】
発振回路101は、所定の周波数を有する信号を発生させて分周回路102に送信する。分周回路102は、発振回路101から受信した信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生させて制御回路103に送信する。制御回路103は、分周回路102から受信した時計信号等に基づいて、時計1の各部に制御信号を送信し、これらの動作を制御する。
【0021】
主駆動パルス発生回路104は、制御回路103から受信した制御信号に基づいて、ステッピングモータ151を駆動する駆動電流Idrvを発生させてモータ駆動回路106に出力する。以下の説明において、ステッピングモータ151を駆動する駆動電流Idrvを主駆動パルスとも記載する。主駆動パルスは、後述するステッピングモータ151のロータ202を1ステップ、すなわち180度正転方向に回転させるために出力される櫛歯状の電圧パルスである。
以下の説明において、指針155を時計周りに回転させる場合のロータ202の回転方向を正転方向ともいう。また、指針155を反時計周りに回転させる場合のロータ202の回転方向を逆転方向ともいう。
【0022】
補正駆動パルス発生回路105は、制御回路103から受信した制御信号に基づいて、ステッピングモータ151を駆動する補正駆動電流Icrを発生させてモータ駆動回路106に出力する。以下の説明において、ステッピングモータ151を駆動する補正駆動電流Icrを補正駆動パルスとも記載する。補正駆動パルスは、後述するステッピングモータ151のロータ202が主駆動パルスにより正転方向に回転しなかった場合に出力される電圧パルスであり、主駆動パルスよりもデューティ比が大きいため、主駆動パルスよりもエネルギーが大きい。補正駆動パルスは、主駆動パルスに比べて大きなトルクによってステッピングモータ151を駆動する。
【0023】
[モータ駆動回路106及びステッピングモータ151の構成]
図2は、実施形態に係るモータ駆動回路及びステッピングモータの一例を示す図である。モータ駆動回路106は、トランジスタTP1と、トランジスタTP2と、トランジスタTP3と、トランジスタTP4と、トランジスタTN1と、トランジスタTN2と、検出抵抗Rs1と、検出抵抗Rs2と、端子ОUT1と、端子ОUT2とを備える。
【0024】
トランジスタTP1、トランジスタTP2、トランジスタTP3及びトランジスタTP4は、PチャネルのMОSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であり、ローレベルのゲート信号を受信するとオンになり、ハイレベルのゲート信号を受信するとオフになる。また、トランジスタTN1及びトランジスタTN2は、NチャネルのMОSFETであり、ローレベルのゲート信号を受信するとオフになり、ハイレベルのゲート信号を受信するとオンになる。なお、ハイレベルの電位は、モータ駆動回路106の電源電圧であるVDDと等しい電位である。また、ローレベルの電位は、0V又は基準電圧であるVSSと等しい電位である。
【0025】
トランジスタTP1、トランジスタTP2、トランジスタTP3及びトランジスタTP4のソースは、互いに電気的に接続されており、モータ駆動回路106の電源電圧であるVDDが供給される。トランジスタTP3のドレインは、検出抵抗Rs1の一端に電気的に接続されている。また、トランジスタTP1のドレイン、トランジスタTN1のドレイン及び検出抵抗Rs1の他端は、端子ОUT1に電気的に接続されている。トランジスタTP4のドレインは、検出抵抗Rs2の一端に電気的に接続されている。また、トランジスタTP2のドレイン、トランジスタTN2のドレイン及び検出抵抗Rs2の他端は、端子ОUT2に電気的に接続されている。トランジスタTN1及びトランジスタTN2のソースは、互いに電気的に接続されており、0V又は基準電圧であるVSSが供給される。また、端子ОUT1及び端子ОUT2は、図示されていないコンパレータの入力端子に接続されている。さらに、このコンパレータの基準入力端子には、後述する基準電圧Vcompが入力される。
【0026】
[ステッピングモータ151の構成]
ステッピングモータ151は、ステータ201と、ロータ202と、ロータ収納用貫通孔203と、内ノッチ204と、内ノッチ205と、外ノッチ206と、外ノッチ207と、磁心208と、コイル209とを備える。
【0027】
磁心208は、磁性材料で作製されている棒状の部材であり、ステータ201の両端と接合されている。
【0028】
コイル209は、磁心208に巻き付けられており、端子ОUT1に一端が接続されており、端子ОUT2に他端が接続されている。コイル209は、駆動電流Idrvが流されることにより磁束を発生させる。
【0029】
なお、コイル209の端子ОUT1は、第1コンパレータ(不図示)の入力端子に接続されている。第1コンパレータの基準電圧入力端子には、基準電圧Vcompが供給される。第1コンパレータは、入力端子に印加される端子ОUT1(又は端子ОUT2)の電圧と、基準電圧Vcompとの比較結果を出力する。端子ОUT2は、第2コンパレータ(不図示)の入力端子に接続されている。第2コンパレータの構成は、第1コンパレータと同様であるため、説明を省略する。
【0030】
ステータ201は、U字状に湾曲しており、磁性材料で作製されている部材である。ステータ201は、コイル209が発生させる磁束をロータ202に与える。
【0031】
ロータ202は、円柱状に形成されており、ステータ201に形成されたロータ収納用貫通孔203に対して回転可能な状態で挿入されている。また、ロータ202は、着磁されているため、N極及びS極を有する。以下の説明において、ロータ202のS極からN極に向かう軸を磁極軸Aとも称し、磁極軸AのS極からN極へ向かう方向を磁極軸Aの正の方向(又は単に磁極軸Aの方向)とも称する。
ロータ202は、正転方向に回転することにより輪列を介して指針155を時計周りに回転させ、逆転方向に回転することにより輪列を介して指針155を反時計周りに回転させる。すなわち、ロータ202は、指針155を時計回りに回転させる正転方向及び指針155を正転方向とは反対の方向である逆転方向に回転させる。
【0032】
内ノッチ204及び内ノッチ205は、ロータ収納用貫通孔203の壁面に形成された切り欠きであり、ステータ201に対するロータ202の停止位置を決定している。すなわち、例えば、
図2に示すように、ロータ202は、コイル209が励磁されていない場合、磁極軸が内ノッチ204と内ノッチ205とを結ぶ線分と直交する位置で静止する。
【0033】
外ノッチ206及び外ノッチ207は、それぞれ湾曲しているステータ201の内側及び外側に形成されている切り欠きであり、ロータ収納用貫通孔203との間に過飽和部を形成している。ここで、過飽和部は、ロータ202の磁束により磁気飽和せず、コイル209が励磁されたときに磁気飽和して磁気抵抗が大きくなる部分である。
【0034】
[ステッピングモータ151の駆動波形の一例]
図3は、実施形態に係るロータを回転させる場合にコイルの二つの端子それぞれに発生する信号及びこれらの信号を発生させるためにトランジスタのゲートに入力されるゲート信号の一例を示す図である。
【0035】
モータ駆動回路106は、ロータ202の磁極軸Aが内ノッチ204と内ノッチ205とを結ぶ線分と直交した状態で静止している場合において、例えば、トランジスタTP1、トランジスタTP2、トランジスタTP3、トランジスタTP4、トランジスタTN1及びトランジスタTN2に対してゲート信号を出力する。ここで、同図のTP1は、トランジスタTP1のゲート信号を、TP2は、トランジスタTP2のゲート信号を、TP3は、トランジスタTP3のゲート信号を、TP4は、トランジスタTP4のゲート信号をそれぞれ示す。また、TN1は、トランジスタTN1のゲート信号を、TN2は、トランジスタTN2のゲート信号をそれぞれ示す。
【0036】
モータ駆動回路106は、ロータ202の停止位置における磁極軸Aの方向に応じて、コイル209に供給する駆動電流Idrvの方向を反転させることにより、ロータ202を一定の方向(例えば、正転方向)に回転させる。
【0037】
一例として正転方向の駆動について説明する。モータ駆動回路106が駆動パルスをコイル209の第1端子OUT1と第2端子OUT2との間に供給すると、ステータ201には、磁束が発生する。これにより、可飽和部210、211が飽和して磁気抵抗が大きくなり、その後、ステータ201に生じる磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は、
図2の反時計回りに180度回転し、安定的に停止する。この約180度の回転により、時計1の指針155は規定量のひと目盛り分を移動することができる。当該規定量の動作を1ステップと称する場合もある。当該規定量の動作となるように、ロータ202と指針155との間には適当な減速比を備える輪列が適宜配置されている。本実施形態の一例では、1ステップの動作によって指針155が1秒分移動する。
【0038】
ロータ202が
図2の状態にある場合に、モータ駆動回路106が
図3の時刻t1~時刻t2に示す駆動パルスをコイル209の第1端子OUT1と第2端子OUT2との間に供給すると、ステータ201には磁束が発生する。この磁束によりロータ202は、
図2の反時計回りに180度回転し、安定的に停止する。
また、ロータ202が
図2の状態から略180度回転した状態にある場合に、モータ駆動回路106が
図3の時刻t3~時刻t4に示す駆動パルス(つまり、時刻t1~時刻t2の駆動パルスとは逆極性の駆動パルス)をコイル209の第1端子OUT1と第2端子OUT2との間に供給すると、ステータ201には、時刻t1~時刻t2において発生した磁束とは逆向きの磁束が発生する。これにより、可飽和部210、211が先ず飽和し、その後、ステータ201に生じる磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は、
図2の反時計回りに180度回転し、安定的に停止する。
このように、コイル209に対して極性の異なる信号(交番信号)を供給することによって、ロータ202は、
図2の反時計回りに略180度ずつ連続的に回転する。
【0039】
[ロータ回転検出とロータ停止時の補正駆動パルス出力]
次に、回転検出回路113によるロータ202の回転検出の仕組みについて
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、実施形態に係るロータが
図2に示した状態から正転方向に1ステップ回転し、自由振動している状態の一例を示す図である。
図5は、
図4に示した場合における駆動パルス、誘起電圧及び補正駆動パルスと、これら三つの信号を発生させるためにトランジスタのゲートに入力されるゲート信号の一例である。以下の説明では、
図4に示したX方向とY方向により区切られた第I象限、第II象限、第III象限及び第IV象限を使用する。また、
図4に示すように、第I象限及び第II象限によって構成される領域と第III象限及び第IV象限によって構成される領域との境界(図中のX軸)には、水平磁極が位置している。
【0040】
モータ駆動回路106は、
図3の時刻t1~時刻t2に示したゲート信号と同様のゲート信号を出力することにより、端子ОUT2に
図5に示した駆動パルスP1を出力する。これにより、VDD、トランジスタTP1、端子ОUT1、コイル209、端子ОUT2、トランジスタTN2、VSSの経路で駆動電流が流れ、コイル209に磁束が発生する。ロータ202のN極及びS極が当該磁束によりステータ201に発生したN極及びS極それぞれと反発することにより、ロータ202は、
図4に示した軌跡r1、軌跡r2及び軌跡r3で示すように、θ
0方向からθ
1方向に回転する。
【0041】
軌跡r1は、ロータ202がN極をθ0の方向に向けている状態から内ノッチ205により形成されている磁気的ポテンシャルの最大点を超え、第II象限と第III象限との境界に到達する様子を表している。また、駆動パルスP1は、ロータ202が軌跡r1で表される回転を続けている間、出力される。軌跡r2は、ロータ202のN極が第II象限と第III象限との境界に位置している状態からロータ202がN極をθ1の方向に向けている状態を経て、時計周りの角速度がゼロになるまで回転する様子を表している。軌跡r3は、時計周りの角速度がゼロになった後、ロータ202が反時計周りに回転する様子を表している。ロータ202は、この後も運動エネルギーが尽きるまで時計周り方向への回転と反時計周り方向への回転とを繰り返す。
【0042】
モータ駆動回路106は、ロータ202が軌跡r2又は軌跡r3上で表される回転を続けている間、例えば、トランジスタTP1、トランジスタTP2、トランジスタTP3、トランジスタTP4、トランジスタTN1及びトランジスタTN2に対して
図5に示したゲート信号を出力する。
【0043】
これにより、トランジスタTP1及びトランジスタTP4は、ローレベルのゲート信号を受信してオンになる。トランジスタTP3は、ハイレベルのゲート信号を受信してオフになる。トランジスタTN1及びトランジスタTN2は、ローレベルのゲート信号を受信してオフになる。そして、トランジスタTP2は、櫛歯状のゲート信号を受信してオンとオフとを繰り返す。また、この櫛歯状のゲート信号は、チョッパ信号と呼ばれる。
【0044】
この場合、
図5に示すように、端子ОUT1の電圧がハイレベルとなり、ロータ202が軌跡r2で表される回転を続けている間、端子ОUT2にハイレベルよりも高いスパイク状の電圧応答が出力される。このスパイク状の電圧応答は、
図5に示されており、駆動電流と同一の方向に流れる誘起電流Irs1をチョッパ信号により増幅して検出することにより得られた応答であり、電圧の大きさがトランジスタTP2の寄生ダイオードにより一定以下に制限されている。なお、チョッパ信号により信号を増幅する処理は、チョッパ増幅と呼ばれる。
【0045】
また、
図5に示すように、ロータ202が軌跡r3で表される回転を続けている間、端子ОUT2にハイレベルよりも低いスパイク状の電圧応答が出力される。これらのスパイク状の電圧応答は、
図5に示されており、駆動電流と反対の方向に流れる誘起電流Irs2をチョッパ信号により増幅して検出することにより得られた応答である。回転検出回路113は、これらのスパイク状の電圧応答の絶対値が基準電圧Vcompを超えている場合(不図示)、ロータ202が1ステップ回転したと判定する。つまり、ロータ202が落下等の衝撃により正転方向又は逆転方向に回転することなく、正転方向へ正常に回転した場合、駆動パルスが一回出力される度に絶対値が基準電圧Vcompを超えるスパイク状の電圧応答が一回検出される。一方、回転検出回路113は、
図5に示すように、これらのスパイク状の電圧応答の絶対値が基準電圧Vcomp以下である場合、ロータ202が回転していないと判定する。
なお、ここで言う基準電圧Vcompは、例えば、
図5に示すように、0V又は基準電圧であるVSSと等しい電位である。
【0046】
ロータ202が回転していると判定された場合、制御回路103は、通常通りの制御を続ける。一方、ロータ202が回転していないと判定された場合、制御回路103は、補正駆動パルス発生回路105及びモータ駆動回路106を制御し、例えば、
図5に示した補正駆動パルスP2又は補正駆動パルスPrを端子ОUT2に出力させる。
【0047】
具体的には、モータ駆動回路106は、例えば、トランジスタTP1、トランジスタTP2、トランジスタTP3、トランジスタTP4、トランジスタTN1及びトランジスタTN2に対して
図5に示したゲート信号を出力する。これにより、トランジスタTP1は、ローレベルのゲート信号を受信してオンになる。トランジスタTP2、トランジスタTP3及びトランジスタTP4は、ハイレベルのゲート信号を受信してオフになる。トランジスタTN1は、ローレベルのゲート信号を受信してオフになる。トランジスタTN2は、ハイレベルのゲート信号を受信してオンになる。この場合、
図5に示すように、端子ОUT1の電圧がハイレベルとなり、端子ОUT2に補正駆動パルスP2が出力される。
【0048】
或いは、モータ駆動回路106は、例えば、トランジスタTP1、トランジスタTP2、トランジスタTP3、トランジスタTP4、トランジスタTN1及びトランジスタTN2に対して
図5に示したゲート信号を出力する。これにより、トランジスタTP1は、ローレベルのゲート信号を受信してオンになる。トランジスタTP3及びトランジスタTP4は、ハイレベルのゲート信号を受信してオフになる。トランジスタTN1は、ローレベルのゲート信号を受信してオフになる。トランジスタTP2及びトランジスタTN2は、櫛歯状のゲート信号を受信してオンとオフとを繰り返す。この場合、
図5に示すように、端子ОUT1の電圧がハイレベルとなり、端子ОUT2に櫛歯状の補正駆動パルスPrが出力される。
【0049】
[被衝撃時の針飛び検出]
図6は、
図2に示した状態からロータを正転方向に1ステップ回転させた後、ロータを正転方向に1ステップ回転させる衝撃が実施形態に係る時計に加えられた場合の一例を示す図である。
図7は、
図6に示した場合においてトランジスタのゲートに入力されるゲート信号及びコイルの二つの端子それぞれに発生する誘起電圧の一例を示す図である。
以下の説明において、時計1に加えられた外力(例えば、落下による衝撃力)によってロータ202が回転することを、針飛びとも称する。針飛び検出回路121は、時計1に加えられた外力によるロータ202の回転を検出する。
【0050】
モータ駆動回路106は、例えば、トランジスタTP1、トランジスタTP2、トランジスタTP3、トランジスタTP4、トランジスタTN1及びトランジスタTN2に対して
図7に示したゲート信号を出力する。
【0051】
これにより、トランジスタTP3及びトランジスタTP4は、ローレベルのゲート信号を受信してオンになる。また、トランジスタTN1及びトランジスタTN2は、ローレベルのゲート信号を受信してオフになる。さらに、トランジスタTP1及びトランジスタTP2は、周期的なゲート信号を受信してオンとオフとを繰り返す。この周期的なゲート信号は、チョッパ信号と呼ばれる。また、例えば、
図7に示すように、この周期的なゲート信号は、周期が244マイクロ秒であり、1周期当たりでハイレベルとなっている時間が30.5マイクロ秒である。
【0052】
トランジスタTP1及びトランジスタTP2がオンとなっている間、
図7に示した第1誘起電流Irs3及び第2誘起電流Irs4は、トランジスタTP1、端子ОUT1、コイル209、端子ОUT2、トランジスタTP2を通る第1経路を流れる。一方、トランジスタTP1及びトランジスタTP2がオフとなっている間、
図7に示した第1誘起電流Irs3及び第2誘起電流Irs4は、トランジスタTP3、検出抵抗Rs1、端子ОUT1、コイル209、端子ОUT2、検出抵抗Rs2、トランジスタTP4を通る第2経路を流れる。
【0053】
トランジスタTP1及びトランジスタTP2がオンからオフに切り替わる瞬間、すなわち第1誘起電流Irs3又は第2誘起電流Irs4が流れる経路が第1経路から第2経路に切り替わる瞬間に経路内のインピーダンスが大きくなる。これにより、
図7に示すように、端子ОUT1及び端子ОUT2にスパイク状の電圧応答が出力される。
【0054】
針飛び検出回路121は、これらのスパイク状の電圧応答の絶対値が基準電圧Vcompを超えている場合、時計1に加えられた落下等の衝撃によりロータ202が回転したと判定し、これらのスパイク状の電圧応答の絶対値が基準電圧Vcomp以下である場合、当該衝撃によりロータ202が回転していないと判定する。なお、ここで言う基準電圧Vcompは、例えば、
図7に示すように、0V又は基準電圧であるVSSとモータ駆動回路106の電源電圧であるVDDとの間の任意の電圧である。
【0055】
すなわち、針飛び検出回路121(外力検出部)は、コイル209に誘起される電圧の状態に基づいて、磁束による力以外の外力がロータ202に加わったことを検出する。
【0056】
針飛び回転方向検出回路122は、ロータ202が回転した方向を判定する。具体的には、針飛び回転方向検出回路122は、第1誘起電圧の絶対値が第2誘起電圧の絶対値よりも先に所定の閾値を超えた場合、ロータ202が衝撃で正転方向に回転したと判定する。また、針飛び回転方向検出回路122は、第2誘起電圧の絶対値が第1誘起電圧の絶対値よりも先に所定の閾値を超えた場合、ロータ202が衝撃で逆転方向に回転したと判定する。ここで、第1誘起電圧は、
図6に示した第1誘起電流Irs3をコイル209に流す電圧である。第2誘起電圧は、
図6に示した第2誘起電流Irs4をコイル209に流す電圧である。また、第1誘起電流Irs3は、駆動電流と同一の方向に流れる電流である。第2誘起電流Irs4は、駆動電流と反対の方向に流れる電流である。
【0057】
すなわち、針飛び回転方向検出回路122(回転方向検出部)は、コイル209に誘起される電圧の状態に基づいて、外力によるロータ202の回転方向が正転方向であるか逆転方向であるかを検出する。
【0058】
図6の軌跡r4は、ロータ202がN極をθ
1の方向に向けている状態から第IV象限と第I象限との境界まで正転方向に回転する様子を表している。この場合、
図2に示した駆動電流Idrvと同一の方向に第1誘起電流Irs3が流れる。第1誘起電流Irs3に対応している第1誘起電圧は、
図7に示すように、ハイレベルよりも低いスパイク状の電圧応答として端子ОUT1に出力され、ハイレベルよりも高いスパイク状の電圧応答として端子ОUT2に出力される。また、端子ОUT1に出力された第1誘起電圧は、
図7に示すように、一部が基準電圧Vcompを超えている。なお、端子ОUT2に出力された第1誘起電圧は、トランジスタTP2の寄生ダイオードにより一定以下に制限されている。
【0059】
図6の軌跡r5は、ロータ202がN極を第IV象限と第I象限との境界の方向に向けている状態からロータ202がN極をθ
0の方向に向けている状態を経て、外ノッチ206の手前まで回転する様子を表している。この場合、
図2に示した駆動電流Idrvと反対の方向に第2誘起電流Irs4が流れる。第2誘起電流Irs4に対応している第2誘起電圧は、
図7に示すように、ハイレベルよりも低いスパイク状の電圧応答として端子ОUT2に出力され、ハイレベルよりも高いスパイク状の電圧応答として端子ОUT1に出力される。また、端子ОUT2に出力された第2誘起電圧は、
図7に示すように、一部が基準電圧Vcompを超えている。なお、端子ОUT1に出力された第2誘起電圧は、トランジスタTP1の寄生ダイオードにより一定以下に制限されている。
【0060】
図6の軌跡r6は、反時計周りの角速度がゼロになった後、ロータ202が時計周りに回転する様子を表している。この場合、ロータ202が
図6に示した軌跡r4で表される回転状態にある場合と同様に、
図2に示した駆動電流Idrvと同一の方向に第1誘起電流Irs3が流れる。第1誘起電流Irs3に対応している第1誘起電圧は、
図7に示すように、ハイレベルよりも低いスパイク状の電圧応答として端子ОUT1に出力され、ハイレベルよりも高いスパイク状の電圧応答として端子ОUT2に出力される。また、端子ОUT1に出力された第1誘起電圧は、
図7に示すように、一部が基準電圧Vcompを超えている。なお、端子ОUT2に出力された第1誘起電圧は、トランジスタTP2の寄生ダイオードにより一定以下に制限されている。
【0061】
このように、
図2に示した状態からロータを正転方向に1ステップ回転させた後、ロータを正転方向に1ステップ回転させる衝撃が実施形態に係る時計に加えられた場合、初めに絶対値が基準電圧Vcompを超える第1誘起電圧が端子ОUT1に出力され、次に絶対値が基準電圧Vcompを超える第2誘起電圧が端子ОUT2に出力され、再度絶対値が基準電圧Vcompを超える第1誘起電圧が端子ОUT1に出力される。針飛び回転方向検出回路122は、基準電圧Vcompを超える第1誘起電圧が端子ОUT1に出力された場合に、正転方向への針飛びの衝撃を受けたと判定する。なお、針飛び回転方向検出回路122は、基準電圧Vcompを超える第1誘起電圧が端子ОUT1に出力されたことに基づいて、正転方向への針飛びの衝撃を受けたと判定してもよいし、上記のような一連の出力全てに基づいて、正転方向への針飛びの衝撃を受けたと判定してもよい。
【0062】
図8は、
図2に示した状態からロータを正転方向に1ステップ回転させた後、ロータを逆転方向に1ステップ回転させる衝撃が実施形態に係る時計に加えられた場合の一例を示す図である。
図9は、
図8に示した場合においてコイルの二つの端子それぞれに発生する誘起電圧の一例を示す図である。
【0063】
モータ駆動回路106は、例えば、トランジスタTP1、トランジスタTP2、トランジスタTP3、トランジスタTP4、トランジスタTN1及びトランジスタTN2に対して
図7に示したゲート信号と同様のゲート信号を出力する。これにより、これら六つのトランジスタは、
図6及び
図7を参照しながら説明した場合と同様に動作する。また、針飛び検出回路121は、
図6及び
図7を参照しながら説明した場合と同様の方法で時計1に加えられた落下等の衝撃によりロータ202が回転したか否かを判定する。
【0064】
針飛び回転方向検出回路122は、ロータ202が回転した方向を判定する。
図8の軌跡r7は、ロータ202がN極をθ
1の方向に向けている状態から第III象限と第II象限との境界まで逆転方向に回転する様子を表している。この場合、
図2に示した駆動電流Idrvと反対の方向に第2誘起電流Irs4が流れる。第2誘起電流Irs4に対応している第2誘起電圧は、
図9に示すように、ハイレベルよりも低いスパイク状の電圧応答として端子ОUT2に出力され、ハイレベルよりも高いスパイク状の電圧応答として端子ОUT1に出力される。また、端子ОUT2に出力された第2誘起電圧は、
図9に示すように、一部が基準電圧Vcompを超えているが、軌跡r7の角度範囲が狭いため、基準電圧Vcompを超えている範囲が狭くなっている。なお、端子ОUT1に出力された第2誘起電圧は、トランジスタTP1の寄生ダイオードにより一定以下に制限されている。
【0065】
図8の軌跡r8は、ロータ202がN極を第III象限と第II象限との境界の方向に向けている状態からロータ202がN極をθ
0の方向に向けている状態を経て、時計周りの角速度がゼロになるまで回転する様子を表している。この場合、
図2に示した駆動電流Idrvと同一の方向に第1誘起電流Irs3が流れる。第1誘起電流Irs3に対応している第1誘起電圧は、
図9に示すように、ハイレベルよりも低いスパイク状の電圧応答として端子ОUT1に出力され、ハイレベルよりも高いスパイク状の電圧応答として端子ОUT2に出力される。また、端子ОUT1に出力された第1誘起電圧は、
図9に示すように、一部が基準電圧Vcompを超えている。なお、端子ОUT2に出力された第1誘起電圧は、トランジスタTP2の寄生ダイオードにより一定以下に制限されている。
【0066】
図8の軌跡r9は、時計周りの角速度がゼロになった後、ロータ202が反時計周りに回転する様子を表している。この場合、ロータ202が
図8に示した軌跡r7で表される回転状態にある場合と同様に、
図2に示した駆動電流Idrvと反対の方向に第2誘起電流Irs4が流れる。第2誘起電流Irs4に対応している第2誘起電圧は、
図9に示すように、ハイレベルよりも低いスパイク状の電圧応答として端子ОUT2に出力され、ハイレベルよりも高いスパイク状の電圧応答として端子ОUT1に出力される。また、
図9に示すように、第2端子OUT2の第2誘起電圧はVcompを超えず、第1端子OUT1に出力された第2誘起電圧は、トランジスタTP1の寄生ダイオードにより一定以下に制限される。
【0067】
このように、
図2に示した状態からロータを正転方向に1ステップ回転させた後、ロータを逆転方向に1ステップ回転させる衝撃が実施形態に係る時計に加えられた場合、初めに絶対値が基準電圧Vcompを超える第2誘起電圧が端子ОUT2に出力され、次に絶対値が基準電圧Vcompを超える第1誘起電圧が端子ОUT1に出力され、その後には第2誘起電圧の絶対値が基準電圧Vcompを超えない。針飛び回転方向検出回路122は、基準電圧Vcompを超える第2誘起電圧が端子ОUT2に出力された場合に、逆転方向への針飛びの衝撃を受けたと判定する。なお、針飛び回転方向検出回路122は、基準電圧Vcompを超える第2誘起電圧が端子ОUT2に出力されたことに基づいて、逆転方向への針飛びの衝撃を受けたと判定してもよいし、上記のような一連の出力全てに基づいて、逆転方向への針飛びの衝撃を受けたと判定してもよい。
【0068】
図10は、本実施形態の針飛び回転方向検出回路122による回転方向の検出パターンの一例を示す図である。針飛び回転方向検出回路122は、端子ОUT1に生じる誘起電圧及び端子ОUT2に生じる誘起電圧のそれぞれの出現パターンに基づいて、ロータ202の回転方向を検出する。
誘起電圧の出現パターンは、ロータ202の回転位置(つまり、磁極軸Aの方向)と、外力によるロータ202の回転方向との相対関係により変化する。
図10(A)~(D)に誘起電圧の出現パターンの一例を示す。
図10(A)には、磁極軸Aが第I象限から第III象限の方向である場合に、外力により正転方向にロータ202が回転した場合の誘起電圧の出現パターンを示す。
図10(B)には、磁極軸Aが第I象限から第III象限の方向である場合に、外力により逆転方向にロータ202が回転した場合の誘起電圧の出現パターンを示す。
図10(C)には、磁極軸Aが第III象限から第I象限の方向である場合に、外力により正転方向にロータ202が回転した場合の誘起電圧の出現パターンを示す。
図10(D)には、磁極軸Aが第III象限から第I象限の方向である場合に、外力により逆転方向にロータ202が回転した場合の誘起電圧の出現パターンを示す。
【0069】
針飛び回転方向検出回路122は、誘起電圧の出現順序に基づいて、又は誘起電圧の出現時間幅に基づいて、ロータ202の回転方向を検出する。針飛び回転方向検出回路122による回転方向の検出の具体例について説明する。
【0070】
[針飛び回転方向の検出(その1:誘起電圧の出現順序に基づく検出)]
針飛び回転方向検出回路122(回転方向検出部)は、コイル209の両端のいずれかに誘起される電圧の出現順序に基づいて、外力によるロータ202の回転方向が正転方向であるか逆転方向であるかを検出する。
図10(A)に示す一例の場合、範囲r21において、端子ОUT1に負の大きな誘起電圧が生じ、端子ОUT2に正の誘起電圧が生じる。範囲r22において、端子ОUT1に正の誘起電圧が生じ、端子ОUT2に負の大きな誘起電圧が生じる。範囲r23において、端子ОUT1に負の大きな誘起電圧が生じ、端子ОUT2に正の誘起電圧が生じる。
針飛び回転方向検出回路122は、
図10(A)に示す誘起電圧の出現順序を検出した場合には、ロータ202の回転方向が正転方向であると検出する。
また、
図10(B)に示す一例の場合、範囲r21において、端子ОUT1に正の誘起電圧が生じ、端子ОUT2に負の大きな誘起電圧が生じる。範囲r22において、端子ОUT1に負の大きな誘起電圧が生じ、端子ОUT2に正の誘起電圧が生じる。
針飛び回転方向検出回路122は、
図10(B)に示す誘起電圧の出現順序を検出した場合には、ロータ202の回転方向が逆転方向であると検出する。
【0071】
[針飛び回転方向の検出(その2:誘起電圧の出現時間幅に基づく検出)]
針飛び回転方向検出回路122(回転方向検出部)は、コイル209に誘起される電圧の出現時間幅に基づいて、外力によるロータ202の回転方向が正転方向であるか逆転方向であるかを検出する。
例えば、針飛び回転方向検出回路122は、範囲r21(つまり、端子ОUT1に負の大きな誘起電圧が生じ、端子ОUT2に正の誘起電圧が生じる範囲)の時間幅が比較的長時間であるか又は比較的短時間であるかによって、ロータ202の回転方向を算出する。
図10(A)に示す一例の場合、範囲r21の時間幅が比較的長時間である。この場合、針飛び回転方向検出回路122は、ロータ202の回転方向が正転方向であると検出する。
図10(B)に示す一例の場合、範囲r21の時間幅が比較的短時間である。この場合、針飛び回転方向検出回路122は、ロータ202の回転方向が逆転方向であると検出する。
【0072】
[外力を受けた場合の針飛び補正駆動パルスの出力]
針飛び補正駆動パルス発生回路117(駆動制御部)は、ロータ202に外力が加わったことを針飛び検出回路121(外力検出部)が検出した場合に、ロータ202を回転させる駆動電流Idrvをコイル209に供給する。
ロータ202が外力によって正転方向に回転した場合を一例にして説明する。この一例の場合、針飛び補正駆動パルス発生回路117は、ロータ202を正転方向に回転させる駆動電流Idrvをコイル209に供給する。つまり、針飛び補正駆動パルス発生回路117は、外力によるロータ202の回転方向と一致する方向にロータ202を回転させる駆動電流Idrvを供給する。
【0073】
また、針飛び補正駆動パルス発生回路117は、針飛び回転方向検出回路122がロータ202の回転方向を検出する場合には、検出された回転方向と一致する方向にロータ202を回転させる駆動電流Idrvをコイル209に供給してもよい。すなわち、針飛び補正駆動パルス発生回路117(駆動制御部)は、正転方向に駆動する駆動電流Idrvと逆転方向に駆動する駆動電流Idrvとのうち、針飛び回転方向検出回路122(回転方向検出部)が検出する回転方向に一致する方向にロータ202を回転させる駆動電流Idrvをコイル209に供給する。
このように構成された針飛び補正駆動パルス発生回路117によれば、外力によるロータ202の回転方向が正転方向と逆転方向とのいずれであっても、ロータ202の回転方向に一致する方向にロータ202を回転させる駆動電流Idrvを供給することができる。
【0074】
[外力を受けた場合の針飛び抑制パルスの出力]
なお、上述では針飛びが検出された場合、外力によるロータ202の回転方向と同一方向にロータ202を回転させる駆動電流Idrvをコイル209に供給するとして説明したが、これに限られない。
例えば、針飛び抑制パルス発生回路118は、針飛びが検出された場合、外力によるロータ202の回転方向に一致しない方向(つまり、逆方向)にロータ202を回転させる制動電流Ibrkをコイル209に供給してもよい。
【0075】
[外力による針飛び発生後の補正制御]
以下では、針飛び補正駆動パルス発生回路117は、針飛び回転方向検出回路122が検出したロータ202の回転方向と一致する方向にロータ202を回転させる駆動電流Idrvを供給するものとして説明する。
また、以下の説明では、針飛び回転方向検出回路122が検出したロータ202の回転方向(すなわち、外力によるロータ202の回転方向)が正転方向である場合を「正転衝撃」と、逆転方向である場合を「逆転衝撃」とも記載する。
【0076】
図11は、本実施形態における正転衝撃の場合のロータ202の挙動の一例を示す図である。針飛び補正駆動パルス発生回路117は、針飛び補正駆動パルス発生回路117が正転衝撃を検出した場合、正転方向の駆動電流Idrvを供給する(
図11(A))。
正転方向の駆動電流Idrvが供給されると、ロータ202は、外力による回転力と、駆動電流Idrvによる回転力との相対関係により、1ステップぶん正転方向に回転する(
図11(B1))か、反動によってロータ202が駆動電流Idrvの供給前の位置に戻り、ロータ202の回転位置が駆動電流Idrvの供給前の位置から変化しない(
図11(B2))かのいずれかの状態となる。
【0077】
図12は、本実施形態における逆転衝撃の場合のロータ202の挙動の一例を示す図である。針飛び補正駆動パルス発生回路117は、針飛び補正駆動パルス発生回路117が逆転衝撃を検出した場合、逆転方向の駆動電流Idrvを供給する(
図12(A))。なお、ロータ202を逆転させる場合には、針飛び補正駆動パルス発生回路117は、ロータ202の磁極軸Aの方向と、水平磁極との相対位置関係により、コイル209に供給される駆動電流Idrvの方向を変化させる。
逆転方向の駆動電流Idrvが供給されると、ロータ202は、外力による回転力と、駆動電流Idrvによる回転力との相対関係により、1ステップぶん逆転方向に回転する(
図12(B1))か、反動によってロータ202が駆動電流Idrvの供給前の位置に戻り、ロータ202の回転位置が駆動電流Idrvの供給前の位置から変化しない(
図12(B2))か、のいずれかの状態となる。
【0078】
[針飛び発生後の極性検出]
図11に戻り、駆動電流Idrvによってロータ202が1ステップぶん正転方向に回転した(
図11(B1))か、ロータ202の回転位置が変化しなかった(
図11(B2))かの検出について説明する。針飛び回転方向検出回路122は、針飛び発生後のロータ202の磁極軸Aの方向を検出する。
【0079】
針飛び回転方向検出回路122は、ステータ201の基準方向とロータ202の磁極の回転位置との相対位置関係にさらに基づいて、外力によるロータ202の回転方向が正転方向であるか逆転方向であるかを検出する。
【0080】
また、極性チェックパルス発生回路119(検査電流供給部)は、針飛び補正駆動パルス発生回路117(駆動制御部)が駆動電流Idrvをコイル209に供給した後に、ロータ202を回転させる極性チェックパルス(検査電流Ichk)をコイル209に供給する。
【0081】
具体的には、極性検出回路120(回転位置検出部)は、極性チェックパルス発生回路119(検査電流供給部)によって検査電流Ichkがコイル209に供給された後に、コイル209に生じる誘起電圧の発生パターンに基づいてロータ202の磁極の回転位置を検出する。
例えば、極性検出回路120は、正転衝撃の場合において、
図11(D1)に示す誘起電圧を検出した場合には、ロータ202が1ステップぶん正転方向に回転したと検出する。また、極性検出回路120は、正転衝撃の場合において、
図11(D2)に示す誘起電圧を検出した場合には、ロータ202の回転位置が変化しなかったと検出する。
また、極性検出回路120は、逆転衝撃の場合において、
図12(D1)に示す誘起電圧を検出した場合には、ロータ202が1ステップぶん逆転方向に回転したと検出する。また、極性検出回路120は、逆転衝撃の場合において、
図12(D2)に示す誘起電圧を検出した場合には、ロータ202の回転位置が変化しなかったと検出する。
【0082】
[針飛び発生後の指針位置の補正制御]
回転補正回路116は、針飛びの発生状況に応じて、コイル209に供給する駆動電流Idrvの状態を制御することにより、針飛び発生後の指針155の回転位置を補正する。回転補正回路116による指針155の回転位置の補正方式の一例を次に示す。
【0083】
(1)回転補正回路116は、コイル209に逆転方向の駆動電流Idrvを供給して、指針155の回転位置を逆転方向に移動させる。
(2)回転補正回路116は、コイル209に正転方向の駆動電流Idrvを供給する処理を停止させて、指針155の回転位置を保持する。
(3)回転補正回路116は、コイル209に正転方向の駆動電流Idrvを供給する処理を停止させない。つまり、回転補正回路116は、針飛びが生じなかった場合と同様の制御により、駆動電流Idrvを供給する。
【0084】
[針飛び発生後の補正制御(その1:正転方向に1ステップの針飛びが発生した場合)]
図11(C1)に示すように、正転方向に1ステップの針飛びが発生した場合、指針155の位置には1ステップぶんの進みが生じる。この場合、回転補正回路116は、上述の(1)~(3)のいずれかの補正方式によって、指針155の回転位置を補正する。
なお、正転方向に1ステップの針飛びが発生した場合には、針飛びが発生していないことを前提にした駆動電流Idrvがコイル209に供給されたとしても、ロータ202の磁極軸Aと、コイル209の磁束による磁界の方向とが略一致しているため、ロータ202が回転しない。したがって、回転補正回路116が、コイル209に駆動電流Idrvを供給する処理を停止させずに、駆動電流Idrvを供給したとしても、ロータ202が回転しない。この結果として、指針155の針飛びが解消される。
【0085】
[針飛び発生後の補正制御(その2:逆転方向に1ステップの針飛びが発生した場合)]
図12(C1)に示すように、逆転方向に1ステップの針飛びが発生した場合、指針155の位置には1ステップぶんの遅れが生じる。この場合、回転補正回路116は、正転方向の駆動電流Idrvを供給して、指針155の回転位置を補正する。
【0086】
[針飛び発生後の補正制御(その3:針飛びが生じなかった場合)]
図11(C2)又は
図12(C2)に示すように、ロータ202の回転位置が駆動電流Idrvの供給前の位置に戻り、結果として針飛びが発生しなかった場合には、指針155の位置は外力によって変化していない。この場合、回転補正回路116は、上述の(3)の補正方式によって、指針155の回転位置を補正する。
【0087】
なお、
図12(B1)または
図12(B2)に示すように、逆転方向の針飛びが検出された場合、極性チェックパルスの出力に代えて、外力によるロータ202の回転方向と逆方向にロータ202を回転させる制動電流Ibrkをコイル209に供給してもよい。
図12(B1)において制動電流Ibrkをコイル209に供給すると、ロータ202が回転移動して
図12(A)の状態に戻る。
図12(B2)において制動電流Ibrkをコイル209に供給すると、
図12(B2)はもともと
図12(A)の状態と同じ状態なので、ロータ202は回転移動しない。すなわち、
図12(B1)の状態において制動電流Ibrkをコイル209に供給しても、
図12(B2)の状態において制動電流Ibrkをコイル209に供給しても、その結果としては同じ状態(
図12(A))となる。なお、このような制動電流Ibrkの供給は、補正制御も兼ねる。
【0088】
[ステッピングモータ制御装置100の動作の一例]
図13は、本実施形態のステッピングモータ制御装置100の動作の一例を示す図である。
(ステップS10)針飛び検出回路121は、ロータ202に外力が加わったこと(例えば、落下による衝撃)を検出する。
(ステップS20)制御回路103は、針飛び検出回路121がロータ202に外力が加わったことを検出していない場合(ステップS20;NO)には、処理をステップS30に進める。制御回路103は、針飛び検出回路121がロータ202に外力が加わったことを検出した場合(ステップS20;YES)には、処理をステップS40に進める。
(ステップS30)ステッピングモータ制御装置100は、衝撃がない場合の通常制御を行う。
【0089】
(ステップS40)針飛び回転方向検出回路122は、外力による針飛びの回転方向(衝撃方向)を検出する。
【0090】
[正転衝撃の場合]
図14は、本実施形態のロータ202に正転方向の外力が加わった状態の一例を示す図である。
図15は、本実施形態のロータ202に正転方向の外力が加わった場合の波形の一例を示す図である。ロータ202に外力が加わり正転方向に回転する(
図14の軌跡r10)と、第1端子OUT1には正転衝撃を示す誘起電圧が生じる(
図15の電圧V10)。
【0091】
(ステップS50)制御回路103は、針飛び回転方向検出回路122が針飛びの回転方向が正転方向(つまり、正転衝撃)であると検出した場合(ステップS50;YES)には、処理をステップS60に進める。制御回路103は、針飛び回転方向検出回路122が針飛びの回転方向が逆転方向(つまり、逆転衝撃)であると検出した場合(ステップS50;NO)には、処理をステップS110に進める。
【0092】
(ステップS60)針飛び補正駆動パルス発生回路117は、正転方向の駆動電流Idrvをコイル209に供給する(
図15の駆動電流Idrv)。
(ステップS70)極性チェックパルス発生回路119は、極性チェックパルスを供給する(
図15の検査電流Ichk)。極性検出回路120は、コイル209に生じる誘起電圧の発生パターンに基づいてロータ202の磁極の回転位置を検出する。
(ステップS80)制御回路103は、極性検出回路120が1ステップの正転をしたと検出した場合(ステップS80;YES)には、処理をステップS100に進める。制御回路103は、極性検出回路120が1ステップの正転をしていない(つまり、ロータ202の回転位置が変化していない)と検出した場合(ステップS80;NO)には、処理をステップS90に進める。
(ステップS90)回転補正回路116は、ロータ202の回転位置が変化していない場合の制御を行う。
(ステップS100)回転補正回路116は、1ステップ正転時の制御を行う。
【0093】
[逆転衝撃の場合]
図16は、本実施形態のロータ202に逆転方向の外力が加わった状態の一例を示す図である。
図17は、本実施形態のロータ202に逆転方向の外力が加わった場合の波形の一例を示す図である。ロータ202に外力が加わり逆転方向に回転した場合(
図16の軌跡r11)、第2端子OUT2には逆転衝撃を示す誘起電圧が生じる(
図17の電圧V11)。
(ステップS110)針飛び補正駆動パルス発生回路117は、逆転方向の駆動電流Idrvをコイル209に供給する(
図17の駆動電流Idrv)。
(ステップS120)極性チェックパルス発生回路119は、極性チェックパルスを供給する(
図17の検査電流Ichk)。極性検出回路120は、コイル209に生じる誘起電圧の発生パターンに基づいてロータ202の磁極の回転位置を検出する。
(ステップS130)制御回路103は、極性検出回路120が1ステップの逆転をしたと検出した場合(ステップS130;YES)には、処理をステップS140に進める。制御回路103は、極性検出回路120が1ステップの逆転をしていない(つまり、ロータ202の回転位置が変化していない)と検出した場合(ステップS130;NO)には、処理を上述したステップS90に進める。
(ステップS140)回転補正回路116は、1ステップ逆転時の制御を行う。
【0094】
以上、実施形態に係るステッピングモータ制御装置100について説明した。ステッピングモータ制御装置100は、外力がロータ202を回転させようとした場合、ロータ202が外力によって回転される方向(例えば、正転衝撃であれば正転方向、逆転衝撃であれば逆転方向)にロータ202を駆動する。つまり、ステッピングモータ制御装置100は、外力がロータ202を回転させようとした場合に、ロータ202に駆動電流による磁界を与える。このように構成されることにより、ステッピングモータ制御装置100は、外力がロータ202に加わる際にロータ202を駆動しない場合に比べ、ロータ202の回転を安定化させることができる。したがって、本実施形態のステッピングモータ制御装置100によれば、外力を受けた場合の時刻の補正の精度を向上させることができる。
【0095】
ここで、従来技術によると、外力によってロータが回転される場合、ロータが外力によって回転される方向とは逆方向(例えば、正転衝撃であれば逆転方向、逆転衝撃であれば正転方向)にロータを駆動するものがある。このように外力によってロータが回転する方向とは逆方向に駆動(制動)する場合、例えば、ロータによって回転される指針の質量が比較的大きい場合などには、逆方向の駆動による制動力が不足することがあり、ロータが外力によって回転してしまうことを抑止することが困難であるという課題があった。
【0096】
また、上述のような従来技術によると、外力によるロータの回転を制動しきれずにロータが1ステップ回転してしまった場合には、次の駆動タイミングにおいてロータの磁極の方向と、駆動電流による磁束の方向とに不整合が生じ、ロータを回転させることができない場合が生じる。例えば、外力によってロータが逆方向に1ステップ回転した場合には、次の駆動タイミングでロータが正方向に回転せず、2ステップぶんのずれが生じてしまうという課題があった。
【0097】
本実施形態のステッピングモータ制御装置100は、ロータ202の回転方向と、回転停止時の回転位置(磁極軸Aの方向)とに基づいて、ロータ202に回転補正を与えるため、ステップのずれを抑止することができる。
すなわち、本実施形態の時計1は、ロータ202が衝撃で回転してしまった方向及び当該方向へ回転したステップの数を精度よく把握し、衝撃で正転方向に回転してしまった場合及び衝撃で逆転方向に回転してしまった場合のいずれについても高い精度で適切な時刻の補正を実行することができる。
【0098】
なお、上述した時計1が備える機能の全部又は一部は、プログラムとしてコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、このプログラムがコンピュータシステムにより実行されてもよい。コンピュータシステムは、OS、周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置、インターネット等のネットワーク上のサーバ等が備える揮発性メモリ(Random Access Memory:RAM)である。なお、揮発性メモリは、一定時間プログラムを保持する記録媒体の一例である。
【0099】
また、上述したプログラムは、伝送媒体、例えば、インターネット等のネットワーク、電話回線等の通信回線により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。
【0100】
また、上記プログラムは、上述した機能の全部又は一部を実現するプログラムであってもよい。なお、上述した機能の一部を実現するプログラムは、上述した機能をコンピュータシステムに予め記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるプログラム、いわゆる差分プログラムであってもよい。
【0101】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明したが、具体的な構成が上述した実施形態に限られるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1…時計、100…ステッピングモータ制御装置、101…発振回路、102…分周回路、103…制御回路、104…主駆動パルス発生回路、105…補正駆動パルス発生回路、106…モータ駆動回路、113…回転検出回路、116…回転補正回路、117…針飛び補正駆動パルス発生回路、118…針飛び抑制パルス発生回路、119…極性チェックパルス発生回路、120…極性検出回路、121…針飛び検出回路