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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】封止材、及び建築部材構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/02 20060101AFI20230224BHJP
   E06B 7/23 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
E06B7/02
E06B7/23 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019065916
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165167
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】中島 奈央子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 菜穂
(72)【発明者】
【氏名】杉田 敬太郎
(72)【発明者】
【氏名】花岡 郁哉
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-124755(JP,U)
【文献】国際公開第2017/199950(WO,A1)
【文献】特開2013-131416(JP,A)
【文献】特開2017-031627(JP,A)
【文献】特開平01-048955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00-7/36
B60J 10/00-10/90
B60R 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通している中空部を有する封止性の基部と、
前記中空部内に設けられる封止性の膨張体であって、周辺環境に応じて膨張又は収縮する前記膨張体と、を備え、
前記膨張体は、収縮した場合に前記中空部を開くことにより、前記中空部を通過可能にし、膨張した場合に前記中空部を閉じることにより、前記中空部を通過不可能にし、
前記膨張体は、当該膨張体の周辺の気温、湿度、水の少なくとも1個に応じて膨張又は収縮し、
前記膨張体は、水を吸収していない場合に収縮して前記中空部を開くことにより、空気を前記中空部に対して通過可能にし、水を吸収して膨張した場合に前記中空部を閉じることにより、水を前記中空部に対して通過不可能にする、
封止材。
【請求項2】
前記膨張体は、少なくとも吸水ポリマーを含む、
請求項に記載の封止材。
【請求項3】
建築物に関する第1空間と第2空間とを相互に区画する区画部と、
請求項1又は2に記載の封止材であって、前記区画部の周囲に設けられている前記封止材と、を備え、
前記封止材は、前記膨張体が収縮した場合に前記中空部を開くことにより、前記第1空間と前記第2空間の間を通過可能にし、前記膨張体が膨張した場合に前記中空部を閉じることにより、前記第1空間と前記第2空間の間を通過不可能にする、
建築部材構造。
【請求項4】
前記区画部は、前記建築物の内部の空間及び外部の空間を相互に区画するもの、又は、前記建築物の内部の少なくとも2個の空間を相互に区画するものである、
請求項に記載の建築部材構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止材、及び建築部材構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の窓枠にシール材が設けられていた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-14619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のシール材を含めて、一般的なシール材は、例えば、ゴム等の止水性の材料にて形成されているので、空気を通すことができず、はめ殺しの窓等に適用した場合、通気することが困難となる可能性があった。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みなされたもので、通過可能又は通過不可能を切り替え可能な封止材及び当該封止材を適用した建築部材構造を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の封止材は、貫通している中空部を有する封止性の基部と、前記中空部内に設けられる封止性の膨張体であって、周辺環境に応じて膨張又は収縮する前記膨張体と、を備え、前記膨張体は、収縮した場合に前記中空部を開くことにより、前記中空部を通過可能にし、膨張した場合に前記中空部を閉じることにより、前記中空部を通過不可能にし、前記膨張体は、当該膨張体の周辺の気温、湿度、水の少なくとも1個に応じて膨張又は収縮し、前記膨張体は、水を吸収していない場合に収縮して前記中空部を開くことにより、空気を前記中空部に対して通過可能にし、水を吸収して膨張した場合に前記中空部を閉じることにより、水を前記中空部に対して通過不可能にする。
【0007】
請求項2に記載の封止材は、請求項1に記載の封止材において、前記膨張体は、少なくとも吸水ポリマーを含む。
【0008】
請求項3に記載の建築部材構造は、建築物に関する第1空間と第2空間とを相互に区画する区画部と、請求項1又は2に記載の封止材であって、前記区画部の周囲に設けられている前記封止材と、を備え、前記封止材は、前記膨張体が収縮した場合に前記中空部を開くことにより、前記第1空間と前記第2空間の間を通過可能にし、前記膨張体が膨張した場合に前記中空部を閉じることにより、前記第1空間と前記第2空間の間を通過不可能にする。
【0009】
請求項4に記載の建築部材構造は、請求項3に記載の建築部材構造において、前記区画部は、前記建築物の内部の空間及び外部の空間を相互に区画するもの、又は、前記建築物の内部の少なくとも2個の空間を相互に区画するものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の封止材によれば、膨張体は、収縮した場合に中空部を開くことにより、中空部を通過可能にし、膨張した場合に中空部を閉じることにより、中空部を通過不可能にすることにより、例えば、通過可能又は通過不可能を切り替え可能な封止材を提供することが可能となる。
また、水を吸収していない場合に収縮して中空部を開くことにより、空気を中空部に対して通過可能にし、水を吸収して膨張した場合に中空部を閉じることにより、水を中空部に対して通過不可能にすることにより、例えば、通気性及び止水性を有する封止材を提供することが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の封止材によれば、膨張体は少なくとも吸水ポリマーを含むことにより、例えば、吸水及び排水を繰り返し行うことができるので、封止材の性能を比較的長期間にわたって維持することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の建築部材構造によれば、封止材は、膨張体が収縮した場合に中空部を開くことにより、第1空間と第2空間の間を通過可能にし、膨張体が膨張した場合に中空部を閉じることにより、第1空間と第2空間の間を通過不可能にすることにより、例えば、第1空間と第2空間との間で通過可能又は通過不可能を切り替え可能な建築部材構造を提供することが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の建築部材構造によれば、区画部は、建築物の内部の空間及び外部の空間を相互に区画するもの、又は、建築物の内部の少なくとも2個の空間を相互に区画するものであることにより、例えば、建築物の内部の空間及び外部の空間の間、又は、築物の内部の少なくとも2個の空間の間で通過可能又は通過不可能を切り替え可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施の形態に係る窓構造の断面図である。
図2】止水材の斜視図である。
図3】膨張性材料が膨張していない状態の止水材の一部の断面図である。
図4】膨張性材料が膨張した状態の止水材の一部の断面図である。
図5】晴れている場合について説明するための窓構造の断面図である。
図6】雨が降り始めた場合について説明するための窓構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る封止材及び建築部材構造の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、封止材及び建築部材構造に関する。
【0023】
ここで、「封止材」とは、通過可能又は通過不可能を切り替え可能なものであり、例えば、基部、及び膨張体を備えるものであり、また、任意の対象物(例えば、建築部材構造、あるいは、当該建築部材構造以外の任意のもの)に適用されるもの等を含む概念である。また、封止材を用いて通過可能又は通過不可能にする通過対象は任意であるが、例えば、水、空気、音、匂い、又は光等を通過対象としてもよい。
【0024】
「基部」とは、封止材の本体となる部分であり、具体的には、貫通している中空部を有する封止性のものであり、例えば、中空部以外では前述の各通過対象のうちの1個以上が通過不可能となるものである。「中空部」とは、基部を貫通している空間であり、例えば、緩やかな壁面構造(一例としては、ジャイロイド構造に対応する構造等)を有する空間であり、また、1個のみ設けられるもの、あるいは、複数設けられるもの等を含む概念である。そして、例えば、前述の各通過対象のうちの1個以上は、基部における中空部を介して通過可能又は通過不可能となるものの、基部における中空部以外を介して通過不可能となる。
【0025】
「膨張体」とは、中空部内に設けられる封止性のものであって、周辺環境に応じて膨張又は収縮するものであり、具体的には、収縮した場合に中空部を開くことにより、中空部を通過可能にし、膨張した場合に中空部を閉じることにより、中空部を通過不可能にするものである。なお、「封止性」とは、例えば、通過不可能とする機能を有することであり、一例としては、前述の各通過対象のうちの1個以上を通過不可能とする機能等を含む概念である。
【0026】
また、「膨張体」とは、例えば、膨張体の周辺の気温、湿度、日射、紫外線、水、風、又は塵埃のうちの少なくとも1個に応じて膨張又は収縮するもの等を含む概念であり、また、収縮した場合に中空部を開くことにより、水、空気、音、匂い、又は光のうちの少なくとも1個を中空部に対して通過可能にし、膨張した場合に中空部を閉じることにより、水、空気、音、匂い、又は光のうちの少なくとも1個を中空部に対して通過不可能にするもの等を含む概念である。
【0027】
また、「膨張体」とは、例えば、水を吸収していない場合に収縮して中空部を開くことにより、空気を中空部に対して通過可能にし、水を吸収して膨張した場合に中空部を閉じることにより、水を中空部に対して通過不可能にするもの等を含む概念である。
【0028】
この「膨張体」としては任意のものを用いることができるが、例えば、自身の作用にて膨張又は収縮するものや、あるいは、他者からの作用(例えば、空気を出し入れする作用等)にて膨張又は収縮するものを用いることができ、一例としては、吸水ポリマーを用いることができ、又は、風船やゴムチューブの如き弾性を有するもの等を用いることもでき、あるいは、内部の空気が温められることによって膨張するような任意の材料を用いることもできる。
【0029】
「建築部材構造」とは、封止材が適用される構造であり、具体的には、建築物に適用されるものであり、例えば、区画部、及び封止材を備えるものであり、一例としては、窓構造、外壁構造、カーテンウォール構造、及び区画間仕切壁材等を含む概念である。
【0030】
「区画部」とは、建築物に関する第1空間と第2空間とを相互に区画するものであり、例えば、建築物の内部の空間及び外部の空間を相互に区画するもの、又は、建築物の内部の少なくとも2個の空間を相互に区画するもの等を含む概念である。
【0031】
そして、この建築部材構造における「封止材」は、例えば、区画部の周囲に設けられ、また、膨張体が収縮した場合に中空部を開くことにより、第1空間と第2空間の間を通過可能にし、膨張体が膨張した場合に中空部を閉じることにより、第1空間と第2空間の間を通過不可能にする。
【0032】
そして、以下に示す実施の形態では、「封止材」が通気性及び止水性を有する止水材であり、当該止水材を、開閉不可能なはめ殺しの窓構造に適用する場合を例示して説明する。なお、「通気性」とは、気体を通す性能であり、例えば、空気を通す性能等を含む概念である。「止水性」とは、少なくとも液体を通さない性能であり、例えば、水を通さない性能等を含む概念である。
【0033】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0034】
(構成)
まず、本実施の形態に係る窓構造の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る窓構造の断面図である。
【0035】
なお、以下の説明では、図1に示すX―Y―Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、X方向が垂直方向であり、X方向及びY方向が垂直方向に対して直交する水平方向であるものとして、例えば、+Z方向を上側と称し、-Z方向を下側と称して説明する(他の図でも同様とする)。
【0036】
(構成-窓構造)
窓構造100は、建築部材構造であって、建物の所定箇所に開閉不可能に固定されているはめ殺しの窓構造であり、図1に示すように、室内の空間と室外の空間を区画するものであり、例えば、窓ガラス1、下側窓枠部2、上側窓枠部3、及び止水材4を備える。なお、ここでの、室内の空間又は室外の空間のうちの一方の空間が「第1空間」に相当し、また、他方の空間が「第2空間」に相当する。
【0037】
(構成-窓構造-窓ガラス)
窓ガラス1は、区画部であって、室内と室外を区画する区画手段である。この窓ガラス1の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、透明のガラスによって形成されているものであり、また、矩形のものであり、また、端部(つまり、周縁に対応する部分)が各窓枠部にて支持されているものである。なお、図1では、窓ガラス1の下端部(-Z方向)が下側窓枠部2にて支持され、また、窓ガラス1の上端部(+Z方向)が上側窓枠部3にて支持されている状態が図示されているが、窓ガラスの両側端部もこれらの各窓枠部と同様な構成の不図示の両側窓枠部に支持されていることとする。
【0038】
(構成-窓構造-下側窓枠部)
下側窓枠部2は、窓ガラス1の下側(-Z方向)に設けられている枠部材である。この下側窓枠部2の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、下側収容部21を備えるものであり、また、断面視コ字形状のものであり、また、少なくとも止水性を有する任意の材料で形成されているものである。
【0039】
(構成-窓構造-下側窓枠部-下側収容部)
下側収容部21は、窓ガラス1の下端部(-Z方向)及び止水材4を収容する凹部であり、また、窓ガラス1の下端部(-Z方向)が下側窓枠部2の内面(下側収容部21側の面)から離れて収容される部分であり、また、下側空間22が設けられる部分である。下側空間22は、例えば、窓ガラス1の外周側において、窓ガラス1の下端部(-Z方向)及び止水材4と、下側窓枠部2との間に設けられる空間である。
【0040】
(構成-窓構造-上側窓枠部)
上側窓枠部3は、窓ガラス1の上側(+Z方向)に設けられている枠部材である。この上側窓枠部3の具体的な種類や構成は任意であるが、下側窓枠部2と同様であり、例えば、上側収容部31を備えるものであり、また、断面視コ字形状のものであり、また、少なくとも止水性を有する任意の材料で形成されているものである。
【0041】
(構成-窓構造-上側窓枠部-上側収容部)
上側収容部31は、窓ガラス1の上端部(+Z方向)及び止水材4を収容する凹部であり、また、窓ガラス1の上端部(+Z方向)が上側窓枠部3の内面(上側収容部31側の面)から離れて収容される部分であり、また、上側空間32が設けられる部分である。上側空間32は、例えば、窓ガラス1の外周側において、窓ガラス1の上端部(+Z方向)及び止水材4と、上側窓枠部3との間に設けられる空間である。
【0042】
(構成-窓構造-止水材)
図2は、止水材の斜視図であり、図3は、膨張性材料が膨張していない状態の止水材の一部の断面図であり、図4は、膨張性材料が膨張した状態の止水材の一部の断面図である。なお、図3は、図2のA-A断面図である。また、図2図4の中空部411については、実際にはあらゆる方向に沿って設けられており、内部構造も任意であるが、ここでは、説明の便宜上、中空部411が垂直方向(Z軸方向)に貫通している場合が例示されている。
【0043】
図1の止水材4は、封止材であって、室内と室外との間で通気可能としたり止水したりするものである。なお、止水材4は、窓構造100の各窓枠部に設けられるが、各窓枠部に設けられる当該止水材4の構成は相互に同様であるので、下側窓枠部2に設けられている止水材4を代表して説明する。この止水材4の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、下側窓枠部2の下側収容部21の内部に設けられるものであり、また、窓ガラス1の両側に設けられるものであり、また、下側窓枠部2の室内側の面(+X方向)又は室外側の面(-X方向)と窓ガラス1との間に設けられるものである。この止水材4は、例えば、図2及び図3の基部41、及び図3の膨張性材料42を備える。
【0044】
(構成-窓構造-止水材-基部)
基部41は、前述したように、止水材4の本体となる部分である。この基部41の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、貫通している複数の中空部411を有する止水性のものであり、例えば、樹脂材等を用いて形成されるものである。
【0045】
(構成-窓構造-止水材-基部-中空部)
中空部411は、基部41を貫通している空間であり、例えば、垂直方向(Z軸方向)に沿って貫通している空間である。
【0046】
(構成-窓構造-止水材-膨張性材料)
図3の膨張性材料42は、膨張体であって、中空部411の内部に設けられる止水性の材料である。この膨張性材料42の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、吸水していない場合に収縮して中空部411を開くことにより、空気を中空部411を通して通過可能にし、また、吸水して膨張した場合に中空部411を閉じることにより、水を中空部411に対して通過不可能とするものである。また、膨張性材料42は、例えば、収縮した場合に、図3に示すように、中空部411よりも小径となるサイズのものであり、また、膨張した場合に、図4に示すように、中空部411を塞ぐ体積増加率又は膨張率を有するものである。
【0047】
そしてこのように、膨張性材料42が膨張していない場合に中空部411よりも小径となっているので、図3の閉塞可能空間412が形成されることになる。閉塞可能空間412は、例えば、膨張していない場合の膨張性材料42と基部41の内壁との間に形成される空間である。
【0048】
また、膨張性材料42は、例えば、膨張していない場合に、任意の手法(例えば、中空部411自体が実際には入り組んだ複雑な形状であることとし、当該形状を利用して中空部411の内部に引っ掛けて固定する手法、あるいは、中空部411の内壁から多数の樹脂繊維が毛羽だっていることとし、この樹脂繊維に引っ掛けて固定する手法、又は、接着剤を用いて接着により固定する手法等)で中空部411の内部の所定位置に固定して設けられるものであり、また、吸水ポリマーにて形成されているものである。
【0049】
(通気と止水)
次に、このように構成された窓構造100での通気と止水について説明する。ここでは、図1の室外の天気が晴れている場合と、雨が降り始めた場合とを例示して説明する。
【0050】
(通気と止水-晴れている場合)
図5は、晴れている場合について説明するための窓構造の断面図である。天気が晴れている場合、膨張性材料42に対して水(例えば、雨水)が供給されないので、図3に示すように、当該膨張性材料42は吸水しないで膨張せずに、閉塞可能空間412が形成される。このため、止水材4は、中空部411の閉塞可能空間412を介して通気可能となる。
【0051】
従って、例えば、図5の窓構造100の下部(-Z方向)において、室外側(-X方向)の止水材4の図3の閉塞可能空間412、図5の下側空間22、及び室内側(+X方向)の止水材4を介して図3の閉塞可能空間412を介して、室内と室外とが通気可能となる。また、図5の窓構造100の上部(+Z方向)においても、同様にして、室内と室外とが通気可能となる。そして、例えば、図5の矢印で示すように空気を通過させて、通気可能とすることが可能となる。なお、ここでの図5で示した矢印は一例であり、これらとは異なる方向に空気を通過させることも可能となる(図6も同様である)。
【0052】
(通気と止水-雨が降り始めた場合)
図6は、雨が降り始めた場合について説明するための窓構造の断面図である。雨が降り始めた場合において、窓構造100の下部(-Z方向)の室外側(-X方向)の止水材4に雨が降った場合、雨水が図3の上側(+Z方向)から中空部411の内部に進入し、膨張性材料42に対して供給されるので、図4に示すように、当該膨張性材料42は吸水して膨張し、図3の閉塞可能空間412を塞ぐことになる。このため、止水材4は、中空部411の閉塞可能空間412が塞がれるために止水することになる。
【0053】
従って、例えば、図6の窓構造100の下部(-Z方向)において、窓構造100の下部(-Z方向)の室外側(-X方向)の止水材4の図4の中空部411が膨張性材料42にて塞がれるので、室内と室外との間において止水されることになる。なお、この場合、当該窓構造100の下部(-Z方向)では通気不可能となるものの、当該窓構造100の上部(+Z方向)の止水材4に雨水が供給されていない場合、当該窓構造100の上部側(+Z方向)では、例えば、図6の矢印で示すように空気を通過させて、通気可能とすることが可能となる。
【0054】
そして、この後、雨が止んで、図4の膨張性材料42が徐々に乾燥して吸水量が減少するに従って当該膨張性材料42が収縮することになり、図3に示す閉塞可能空間412が再度形成され、当該窓構造100の下部側(-Z方向)で再度通気可能となる。
【0055】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、膨張性材料42は、収縮した場合に中空部411を開くことにより、中空部411を通過可能にし、膨張した場合に中空部411を閉じることにより、中空部411を通過不可能にすることにより、例えば、通過可能又は通過不可能を切り替え可能な止水材4を提供することが可能となる。
【0056】
また、膨張性材料42の周辺の水に応じて膨張又は収縮することにより、例えば、通過可能又は通過不可能の切り替えに、周辺の水を反映することができるので、適切に切り替えることが可能となる。
【0057】
また、中空部411を開くことにより、少なくとも空気を中空部411に対して通過可能にし、中空部411を閉じることにより、少なくとも水及び空気を中空部411に対して通過不可能にすることにより、例えば、様々な対象を通過可能又は不可能とすることができるので、利便性を向上させることが可能となる。
【0058】
また、水を吸収していない場合に収縮して中空部411を開くことにより、空気を中空部411に対して通過可能にし、水を吸収して膨張した場合に中空部411を閉じることにより、水を中空部411に対して通過不可能にすることにより、例えば、通気性及び止水性を有する止水材4を提供することが可能となる。
【0059】
また、膨張性材料42が吸水ポリマーであることにより、例えば、吸水及び排水を繰り返し行うことができるので、止水材4の性能を比較的長期間にわたって維持することが可能となる。
【0060】
止水材4は、膨張性材料42が収縮した場合に中空部411を開くことにより、室外側の空間と室内側の空間の間を通過可能にし、膨張性材料42が膨張した場合に中空部411を閉じることにより、室外側の空間と室内側の空間の間を通過不可能にすることにより、例えば、室外側の空間と室内側の空間との間で通過可能又は通過不可能を切り替え可能な窓構造100を提供することが可能となる。
【0061】
また、窓ガラス1は、建築物の内部の空間及び外部の空間を相互に区画するものであることにより、例えば、建築物の内部の空間及び外部の空間の間で通過可能又は通過不可能を切り替えることが可能となる。
【0062】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0063】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏したりすることがある。
【0064】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0065】
(膨張性材料について)
また、上記実施の形態の図3の膨張性材料42として、吸水ポリマーを用いる場合を例示して説明したが、これに限らない。例えば、気温、湿度、日射、紫外線、水、風、又は塵埃のうちの少なくとも1個の量に応じて自身の作用で膨張又は収縮する任意の材料を膨張性材料42として用いてもよい。あるいは、膨張性材料42の代わりに、空気を出し入れすることが可能なゴムチューブを用いてもよい。この場合、窓構造100の周辺における室外側又は室内側の気温、湿度、日射、紫外線、水、風、又は塵埃のうちの少なくとも1個の量を検出するセンサ、及び前述のゴムチューブに対して空気を出し入れする装置を設けて、当該装置が、前述のセンサの検出値に応じて、ゴムチューブに対して空気を入れて当該ゴムチューブを膨張させたり、あるいは、ゴムチューブから空気を抜いて当該ゴムチューブを収縮させたりしてもよい。また、上記実施の形態の図3の基部41及び膨張性材料42として、水、空気、音、匂い、又は光のうちの少なくとも1個を通過不可能とすることができるものを用いてもよい。そして、このように構成した場合、気温、湿度、日射、紫外線、水、風、又は塵埃のうちの少なくとも1個に応じて、水、空気、音、匂い、又は光のうちの少なくとも1個を、通過可能にしたり、あるいは、通過不可能にしたりすることが可能となる。
【0066】
(着色について)
また、上記実施の形態の図3の基部41を透明に構成し、また、膨張性材料42を任意の色(例えば、赤色、青色、緑色等)に着色してもよい。このように構成した場合、窓構造100の意匠性を向上させることが可能となる。
【0067】
(付記)
付記1の封止材は、貫通している中空部を有する封止性の基部と、前記中空部内に設けられる封止性の膨張体であって、周辺環境に応じて膨張又は収縮する前記膨張体と、を備え、前記膨張体は、収縮した場合に前記中空部を開くことにより、前記中空部を通過可能にし、膨張した場合に前記中空部を閉じることにより、前記中空部を通過不可能にする。
【0068】
付記2の封止材は、付記1に記載の封止材において、前記膨張体は、当該膨張体の周辺の気温、湿度、日射、紫外線、水、風、又は塵埃のうちの少なくとも1個に応じて膨張又は収縮する。
【0069】
付記3の封止材は、付記1又は2に記載の封止材において、前記膨張体は、収縮した場合に前記中空部を開くことにより、水、空気、音、匂い、又は光のうちの少なくとも1個を前記中空部に対して通過可能にし、膨張した場合に前記中空部を閉じることにより、水、空気、音、匂い、又は光のうちの少なくとも1個を前記中空部に対して通過不可能にする。
【0070】
付記4の封止材は、付記1から3の何れか一項に記載の封止材において、前記膨張体は、水を吸収していない場合に収縮して前記中空部を開くことにより、空気を前記中空部に対して通過可能にし、水を吸収して膨張した場合に前記中空部を閉じることにより、水を前記中空部に対して通過不可能にする。
【0071】
付記5の封止材は、付記4に記載の封止材において、前記膨張体は、少なくとも吸水ポリマーを含む。
【0072】
付記6の建築部材構造は、建築物に関する第1空間と第2空間とを相互に区画する区画部と、請求項1から5の何れか一項に記載の封止材であって、前記区画部の周囲に設けられている前記封止材と、を備え、前記封止材は、前記膨張体が収縮した場合に前記中空部を開くことにより、前記第1空間と前記第2空間の間を通過可能にし、前記膨張体が膨張した場合に前記中空部を閉じることにより、前記第1空間と前記第2空間の間を通過不可能にする。
【0073】
付記7の建築部材構造は、付記6に記載の建築部材構造において、前記区画部は、前記建築物の内部の空間及び外部の空間を相互に区画するもの、又は、前記建築物の内部の少なくとも2個の空間を相互に区画するものである。
【0074】
(付記の効果)
付記1に記載の封止材によれば、膨張体は、収縮した場合に中空部を開くことにより、中空部を通過可能にし、膨張した場合に中空部を閉じることにより、中空部を通過不可能にすることにより、例えば、通過可能又は通過不可能を切り替え可能な封止材を提供することが可能となる。
【0075】
付記2に記載の封止材によれば、膨張体の周辺の気温、湿度、日射、紫外線、水、風、又は塵埃のうちの少なくとも1個に応じて膨張又は収縮することにより、例えば、通過可能又は通過不可能の切り替えに、周辺の気温、湿度、日射、紫外線、水、風、又は塵埃を反映することができるので、適切に切り替えることが可能となる。
【0076】
付記3に記載の封止材によれば、中空部を開くことにより、水、空気、音、匂い、又は光のうちの少なくとも1個を中空部に対して通過可能にし、中空部を閉じることにより、水、空気、音、匂い、又は光のうちの少なくとも1個を中空部に対して通過不可能にすることにより、例えば、様々な対象を通過可能又は不可能とすることができるので、利便性を向上させることが可能となる。
【0077】
付記4に記載の封止材によれば、水を吸収していない場合に収縮して中空部を開くことにより、空気を中空部に対して通過可能にし、水を吸収して膨張した場合に中空部を閉じることにより、水を中空部に対して通過不可能にすることにより、例えば、通気性及び止水性を有する封止材を提供することが可能となる。
【0078】
付記5に記載の封止材によれば、膨張体は少なくとも吸水ポリマーを含むことにより、例えば、吸水及び排水を繰り返し行うことができるので、封止材の性能を比較的長期間にわたって維持することが可能となる。
【0079】
付記6に記載の建築部材構造によれば、封止材は、膨張体が収縮した場合に中空部を開くことにより、第1空間と第2空間の間を通過可能にし、膨張体が膨張した場合に中空部を閉じることにより、第1空間と第2空間の間を通過不可能にすることにより、例えば、第1空間と第2空間との間で通過可能又は通過不可能を切り替え可能な建築部材構造を提供することが可能となる。
【0080】
付記7に記載の建築部材構造によれば、区画部は、建築物の内部の空間及び外部の空間を相互に区画するもの、又は、建築物の内部の少なくとも2個の空間を相互に区画するものであることにより、例えば、建築物の内部の空間及び外部の空間の間、又は、築物の内部の少なくとも2個の空間の間で通過可能又は通過不可能を切り替え可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1 窓ガラス
2 下側窓枠部
3 上側窓枠部
4 止水材
21 下側収容部
22 下側空間
31 上側収容部
32 上側空間
41 基部
42 膨張性材料
100 窓構造
411 中空部
412 閉塞可能空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6