(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ロボットプログラム評価装置、ロボットプログラム評価方法及びロボットプログラム評価プログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20230224BHJP
B25J 9/10 20060101ALI20230224BHJP
G05B 19/4069 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B25J9/22 A
B25J9/10 A
G05B19/4069
(21)【出願番号】P 2019090957
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】東 美樹
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-210223(JP,A)
【文献】特開平10-143218(JP,A)
【文献】特開2007-203380(JP,A)
【文献】特開2013-244550(JP,A)
【文献】特開2014-137644(JP,A)
【文献】特開2016-091053(JP,A)
【文献】特開2019-042875(JP,A)
【文献】国際公開第2002/066210(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011079117(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/10-19/04
G05B 19/18-19/423
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの複数の軸を駆動して作業を行うロボットの動作プログラムを作成する際、作業点間の前記ロボットの姿勢変化を含むパス動作を評価するロボットプログラム評価装置であって、
前記ロボットアームの先端作業位置である現在の作業点の姿勢から次の作業点の姿勢に直接動作する最短パス動作に対する各軸の変化量絶対値に対応する各動作時間のうちの最大動作時間である基準最大動作時間を算出するとともに、前記現在の作業点から前記次の作業点までの間に、姿勢が設定された1以上の中継作業点を経由する被評価対象パス動作を形成し、前記中継作業点によって被評価対象パス動作が分割された複数の分割パス動作毎に各軸の変化量絶対値に対応する各動作時間のうちの最大動作時間を求め、各分割パスの最大動作時間の和を比較最大動作時間として算出し、前記基準最大動作時間と前記比較最大動作時間との大小関係の大きさを前記被評価対象パス動作の評価値として出力することを特徴とするロボットプログラム作成装置。
【請求項2】
前記評価値は、前記比較最大動作時間に対する前記基準最大動作時間の割合を百分率で示したものであることを特徴とする請求項1に記載のロボットプログラム評価装置。
【請求項3】
前記評価値、前記最短パス動作の各軸の動作時間、及び分割パス動作の各軸の動作時間を表示するとともに、少なくとも各軸の最大動作時間を強調表示することを特徴とする請求項1又は2に記載のロボットプログラム評価装置。
【請求項4】
ロボットアームの複数の軸を駆動して作業を行うロボットの動作プログラムを作成する際、作業点間の前記ロボットの姿勢変化を含むパス動作を評価するロボットプログラム評価方法であって、
前記ロボットアームの先端作業位置である現在の作業点の姿勢から次の作業点の姿勢に直接動作する最短パス動作に対する各軸の変化量絶対値に対応する各動作時間のうちの最大動作時間である基準最大動作時間を算出する基準演算ステップと、
前記現在の作業点から前記次の作業点までの間に、姿勢が設定された1以上の中継作業点を経由する被評価対象パス動作を形成し、前記中継作業点によって被評価対象パス動作が分割された複数の分割パス動作毎に各軸の変化量絶対値に対応する各動作時間のうちの最大動作時間を求め、各分割パスの最大動作時間の和を比較最大動作時間として算出する比較対象演算ステップと、
前記基準最大動作時間と前記比較最大動作時間との大小関係の大きさを前記被評価対象パス動作の評価値として出力する評価ステップと
を含むことを特徴とするロボットプログラム評価方法。
【請求項5】
ロボットアームの複数の軸を駆動して作業を行うロボットの動作プログラムを作成する際、作業点間の前記ロボットの姿勢変化を含むパス動作を評価するロボットプログラム評価プログラムであって、
前記ロボットアームの先端作業位置である現在の作業点の姿勢から次の作業点の姿勢に直接動作する最短パス動作に対する各軸の変化量絶対値に対応する各動作時間のうちの最大動作時間である基準最大動作時間を算出する基準演算手順と、
前記現在の作業点から前記次の作業点までの間に、姿勢が設定された1以上の中継作業点を経由する被評価対象パス動作を形成し、前記中継作業点によって被評価対象パス動作が分割された複数の分割パス動作毎に各軸の変化量絶対値に対応する各動作時間のうちの最大動作時間を求め、各分割パスの最大動作時間の和を比較最大動作時間として算出する比較対象演算手順と、
前記基準最大動作時間と前記比較最大動作時間との大小関係の大きさを前記被評価対象パス動作の評価値として出力する評価手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とするロボットプログラム評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉領域が存在する場合における作業点間のパス動作を時間に関して評価することができるロボットプログラム評価装置、ロボットプログラム評価方法及びロボットプログラム評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
溶接などの作業をロボットが行うためには、ロボット動作プログラムが必要である。このロボット動作プログラムは、ロボットラインに配置されたワークに対して、溶接位置などの作業位置及び姿勢をロボットで教示する実機ティーチング作業を行って作成される。しかし、この実機ティーチング作業では、生産ラインが停止し、ティーチングスキルが必要になるという課題があった。さらに、実機ティーチング作業では、ロボットに近づくので安全を確保する必要がある。このため、ロボット動作プログラムを作成する場合、コンピュータを用いたオフラインティーチングシステムが用いられることが多い。
【0003】
なお、特許文献1には、移動経路の指定区間の教示データに基づいて、指定区間におけるロボットの所定の軸の角速度の変化を評価する評価関数が設定され、ロボット所定軸の角速度の変化が最小となる評価関数の値が得られるように、指定区間における姿勢角の教示データを補正するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、溶接ガンを用いた複数点のスポット溶接などを行わせる場合、ロボットアームの先端位置を現在の作業点から次の作業点に移動させるパス動作が行われる。そして、このパス動作には、現在の作業点のロボットアームの姿勢を次の作業点のロボットアーム姿勢に動作させる必要がある。
【0006】
このパス動作を行う場合、現在の作業点から次の作業点までの間に、ワークと干渉する干渉領域が存在する場合、この干渉領域を回避した迂回動作を行わせる必要がある。干渉領域が存在しない場合、ロボットアームの先端位置は現在の作業点から次の作業点まで直接移動させればよく、現在の作業点でのロボットアームの姿勢と次の作業点でのロボットアームの姿勢とは既に決定されているので、ロボットアームの各軸の駆動は一意に決定される。
【0007】
一方、干渉領域が存在する場合、現在の作業点と次の作業点との間に、ロボットアームの先端位置の移動経路を定義する1以上の中継作業点を設定してロボットアームが干渉領域を回避するパス動作を行わせる。また、各中継作業点ではロボットアームの姿勢が設定される。この中継作業点と、中継作業点におけるロボットアームの姿勢とは、自由に設定することができる。特に、多軸のロボットアームの姿勢は自由度が高い。このため、どのようなパス動作が最適なのかを判断することは難しいという課題があった。特に、ロボットアームの各軸の動作角速度は異なり、ロボットアームの姿勢変化を完了する時間は、動作完了時間が遅い1つの軸に影響される。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、干渉領域が存在する場合における作業点間のパス動作を時間に関して評価することができるロボットプログラム評価装置、ロボットプログラム評価方法及びロボットプログラム評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、ロボットアームの複数の軸を駆動して作業を行うロボットの動作プログラムを作成する際、作業点間の前記ロボットの姿勢変化を含むパス動作を評価するロボットプログラム評価装置であって、前記ロボットアームの先端作業位置である現在の作業点の姿勢から次の作業点の姿勢に直接動作する最短パス動作に対する各軸の変化量絶対値に対応する各動作時間のうちの最大動作時間である基準最大動作時間を算出するとともに、前記現在の作業点から前記次の作業点までの間に、姿勢が設定された1以上の中継作業点を経由する被評価対象パス動作を形成し、前記中継作業点によって被評価対象パス動作が分割された複数の分割パス動作毎に各軸の変化量絶対値に対応する各動作時間のうちの最大動作時間を求め、各分割パスの最大動作時間の和を比較最大動作時間として算出し、前記基準最大動作時間と前記比較最大動作時間との大小関係の大きさを前記被評価対象パス動作の評価値として出力することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記評価値は、前記比較最大動作時間に対する前記基準最大動作時間の割合を百分率で示したものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記評価値、前記最短パス動作の各軸の動作時間、及び分割パス動作の各軸の動作時間を表示するとともに、少なくとも各軸の最大動作時間を強調表示することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、ロボットアームの複数の軸を駆動して作業を行うロボットの動作プログラムを作成する際、作業点間の前記ロボットの姿勢変化を含むパス動作を評価するロボットプログラム評価方法であって、前記ロボットアームの先端作業位置である現在の作業点の姿勢から次の作業点の姿勢に直接動作する最短パス動作に対する各軸の変化量絶対値に対応する各動作時間のうちの最大動作時間である基準最大動作時間を算出する基準演算ステップと、前記現在の作業点から前記次の作業点までの間に、姿勢が設定された1以上の中継作業点を経由する被評価対象パス動作を形成し、前記中継作業点によって被評価対象パス動作が分割された複数の分割パス動作毎に各軸の変化量絶対値に対応する各動作時間のうちの最大動作時間を求め、各分割パスの最大動作時間の和を比較最大動作時間として算出する比較対象演算ステップと、前記基準最大動作時間と前記比較最大動作時間との大小関係の大きさを前記被評価対象パス動作の評価値として出力する評価ステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、ロボットアームの複数の軸を駆動して作業を行うロボットの動作プログラムを作成する際、作業点間の前記ロボットの姿勢変化を含むパス動作を評価するロボットプログラム評価プログラムであって、前記ロボットアームの先端作業位置である現在の作業点の姿勢から次の作業点の姿勢に直接動作する最短パス動作に対する各軸の変化量絶対値に対応する各動作時間のうちの最大動作時間である基準最大動作時間を算出する基準演算手順と、前記現在の作業点から前記次の作業点までの間に、姿勢が設定された1以上の中継作業点を経由する被評価対象パス動作を形成し、前記中継作業点によって被評価対象パス動作が分割された複数の分割パス動作毎に各軸の変化量絶対値に対応する各動作時間のうちの最大動作時間を求め、各分割パスの最大動作時間の和を比較最大動作時間として算出する比較対象演算手順と、前記基準最大動作時間と前記比較最大動作時間との大小関係の大きさを前記被評価対象パス動作の評価値として出力する評価手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、干渉領域が存在する場合における作業点間のパス動作を時間に関して評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施の形態に係るロボットプログラム評価装置によって作成された動作プログラムによって制御されるロボットシステムの概要構成を示す図である。
【
図2】
図2は、ロボットプログラム評価装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、パス動作評価部によるパス動作評価処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、ロボットアームの各軸の最大軸速度及び最大単位動作時間を示す図である。
【
図5】
図5は、最短パス動作における作業点の姿勢、各軸の変化量絶対値、及び動作時間を示す図である。
【
図6】
図6は、被評価対象パス動作における作業点及び中継作業点の姿勢、各軸の変化量絶対値、及び動作時間を示す図である。
【
図7】
図7は、パス動作の各軸の動作時間及び評価値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係るロボットプログラム評価装置、ロボットプログラム評価方法及びロボットプログラム評価プログラムについて説明する。
【0017】
<ロボットの構成>
図1は、本実施の形態に係るロボットプログラム評価装置によって作成された動作プログラム4によって制御されるロボットシステム1の概要構成を示す図である。なお、本実施の形態では、ロボットシステムとして溶接作業を行うロボットシステム1を例にあげて説明する。ロボットシステム1は、被作業対象としての車体100の被溶接点である作業点P1,P2に対してスポット溶接を行う。
【0018】
図1に示すように、ロボットシステム1は、ロボット2と制御装置3とを有する。ロボット2は、例えば6軸のロボットアーム5を有する。ロボットアーム5の先端位置には、溶接ガン6が設けられる。制御装置3は、動作プログラム4によってロボット2による車体100に対する溶接作業を制御する。
【0019】
ロボット2は、ロボットアーム5の姿勢を変化させてロボットアーム5の先端位置を待機位置から作業点P1に進入させ、作業点P1における姿勢を保持して作業点P1を挟み込み、溶接ガン6によって電気溶接などによって溶接作業を行う。その後、ロボット2は、次の作業点P2に移動し、作業点P2における姿勢を保持して作業点P2を挟み込み、溶接ガン6によって溶接作業を行う。その後、ロボットアーム5を待機位置に移動させ、次の車体100が搬送されると、上記の動作をサイクルとして繰り返す。
【0020】
ここで、作業点P1,P2間に干渉領域101が存在する場合、ロボット2は、干渉領域101への干渉を回避するため、ロボットアーム5の先端位置が中継作業点P10を経由するように制御する。中継作業点P10では、ロボットアーム5の先端位置が中継作業点P10となるように姿勢も制御される。
【0021】
なお、干渉領域101が存在しない場合、ロボット2は、ロボットアーム5の先端位置が作業点P1から最短距離で作業点P2に移動するパス動作L0を行う。このパス動作では、作業点P1の姿勢から作業点P2の姿勢に変化するように、ロボットアーム5の各軸が制御される。
【0022】
干渉領域101が存在する場合、ロボット2は、ロボットアーム5の先端位置が作業点P1から中継作業点P10に移動する分割パスL1のパス動作と、ロボットアーム5の先端位置が中継作業点P10から作業点P2に移動する分割パスL2のパス動作とを行う。この分割パスL1のパス動作では、作業点P1の姿勢から中継作業点P10の姿勢に変化するように、ロボットアーム5の各軸が制御される。また、分割パスL2のパス動作では、中継作業点P10の姿勢から作業点P2の姿勢に変化するように、ロボットアーム5の各軸が制御される。なお、中継作業点P10は、干渉領域101の形状等に応じて1以上設けられる。
【0023】
<ロボットプログラム評価装置の構成>
図2は、ロボットプログラム評価装置10の構成を示す機能ブロック図である。なお、本実施の形態では、動作プログラム4をオフラインで作成するロボットオフラインプログラムシステムが適用される。ロボットプログラム評価装置10は、動作プログラム4のパス動作を評価する機能を有するが、動作プログラム4をオフラインで作成する機能も有する。
【0024】
図2に示すように、ロボットプログラム評価装置10は、入力部20、表示部30、通信部40、記憶部50及び制御部60を有する。
【0025】
入力部20は、キーボード又はマウス等の入力デバイスであり、表示部30は、液晶パネル等の表示デバイスであり、通信部40は、制御装置3を含む他の装置と通信接続するための通信インタフェース部である。
【0026】
記憶部50は、ハードディスク装置や不揮発性メモリ等からなる記憶デバイスであり、CADデータ51、ロボットソフトウェア52及び動作プログラム4を記憶する。CADデータ51は、作業点P1,P2を含む車体101の3次元データである。ロボットソフトウェア52は、制御装置3に組み込まれて動作プログラム4を実行制御するオペレーティングシステムなどのソフトウェアと同一のソフトウェアである。
【0027】
制御部60は、ロボットプログラム評価装置10の全体を制御する制御部であり、プログラム作成部61、シミュレーション部62及びパス動作評価部63を有する。制御部60は、プログラム作成部61、シミュレーション部62及びパス動作評価部63にそれぞれ対応するプログラムを不揮発性メモリや磁気ディスク装置などの記憶装置に記憶しておき、これらのプログラムをメモリにロードして、CPUで実行することで、対応するプロセスを実行させることになる。
【0028】
プログラム作成部61は、動作プログラム4をオフラインで作成するプログラムである。プログラム作成部61は、CADデータ51を3次元表示し、この3次元表示された車体100に対して教師データを生成することによって、動作プログラム4を作成する。
【0029】
シミュレーション部62は、作成された動作プログラム4をロボットソフトウェア52上で動作させて、デバッグ処理や、制御誤差等の補正を行う。
【0030】
パス動作評価部63は、ロボットアーム5の複数の軸を駆動して作業を行うロボットの動作プログラム4を作成する際、作業点間のロボット2の姿勢変化を含むパス動作を評価する。
【0031】
パス動作評価部63は、ロボットアーム5の先端作業位置である現在の作業点の姿勢から次の作業点の姿勢に直接動作する最短パス動作に対する各軸の変化量絶対値に対応する各動作時間のうちの最大動作時間である基準最大動作時間を算出するとともに、現在の作業点から次の作業点までの間に、姿勢が設定された1以上の中継作業点を経由する被評価対象パス動作を形成し、中継作業点によって被評価対象パス動作が分割された複数の分割パス動作毎に各軸の変化量絶対値に対応する各動作時間のうちの最大動作時間を求め、各分割パスの最大動作時間の和を比較最大動作時間として算出し、基準最大動作時間と比較最大動作時間との大小関係の大きさを前記被評価対象パス動作の評価値として出力する。
【0032】
評価値は、例えば、比較最大動作時間に対する基準最大動作時間の割合を百分率で示される。この評価値は、値が大きいほど、パス動作の動作時間が短いため、パス動作の時間に関して適切であることを示すことになる。なお、基準最大動作時間に対する比較最大動作時間の割合を百分率で示してもよい。
【0033】
また、評価値、最短パス動作の各軸の動作時間、及び分割パス動作の各軸の動作時間は表示部30に表示され、その際、少なくとも各軸の最大動作時間が強調表示される。これにより、パス動作の動作時間に影響を与えている軸が特定され、パス動作の解析を容易に行うことができる。
【0034】
<パス動作評価処理>
次に、パス動作評価部63によるパス動作評価処理について説明する。
図3は、パス動作評価部63によるパス動作評価処理手順を示すフローチャートである。
図3に示すように、まず、パス動作評価部63は、最短パス動作時の各軸の変化量絶対値を算出する(ステップS101)。その後、算出した各軸の変化量絶対値に対応する動作時間の算出を行う(ステップS102)。さらに、算出した動作時間のうちの最大動作時間を基準最大動作時間として抽出する(ステップS103)。
【0035】
その後、迂回経路のパス動作である被評価対象パス動作時における分割パス動作毎の各軸の変化量絶対値を算出する(ステップS104)。その後、分割パス動作毎に各軸の変化量絶対値に対応する動作時間を算出する(ステップS105)。さらに、分割パス動作毎に、動作時間のうちの最大動作時間を抽出する(ステップS106)。その後、分割パス動作毎の最大動作時間の和である比較最大動作時間を算出する(ステップS107)。
【0036】
その後、比較最大動作時間に対する基準最大動作時間の割合を百分率で示した評価値を表示部30に出力する(ステップS108)。さらに、最短パス動作の各軸の動作時間、及び分割パス動作の各軸の動作時間を表示するとともに、少なくとも各軸の最大動作時間を強調表示し(ステップS109)、本処理を終了する。
【0037】
なお、評価対象の被評価対象パス動作が複数ある場合、ステップS104からS109までの処理を繰り返し行うことになる。
【0038】
<パス動作評価処理の一例>
図4は、ロボットアーム5の各軸の最大軸速度及び最大単位動作時間を示す図である。また、
図5は、最短パス動作であるパス動作L0における作業点P1,P2の姿勢、各軸の変化量絶対値、及び動作時間を示す図である。また、
図6は、被評価対象パス動作であるパス動作L10における作業点P1,P2及び中継作業点P10の姿勢、各軸の変化量絶対値、及び動作時間を示す図である。また、
図7は、パス動作L0,分割パス動作L1,分割パス動作L2の各軸の動作時間及び評価値を示す図である。
【0039】
図4に示すように、ロボットアーム5の各軸の最大軸速度は異なり、最大軸速度によって最大単位動作時間も異なる。
【0040】
図5に示すように、最短パス動作の基準最大動作時間T0は、作業点P1,P2間の各軸の動作時間のうちの最大動作時間である4軸の0.85(sec)が抽出される。最短パス動作では、4軸の動作時間によってロボットアーム5全体の動作時間が決定される。
【0041】
一方、
図6に示すように、比較最大動作時間T10の算出では、まず、分割パス動作L1の各軸の動作時間のうちの最大動作時間である4軸の0.7(sec)が分割パス動作L1の最大動作時間T1として抽出される。また、分割パス動作L2の各軸の動作時間のうちの最大動作時間である1軸の0.6(sec)が分割パス動作L2の最大動作時間T2として抽出される。そして、最大動作時間T1と最大動作時間T2との和が比較最大動作時間T10として算出される。分割パス動作L1では、4軸の動作時間によってロボットアーム5全体の動作時間が決定され、分割パス動作L2では、1軸の動作時間によってロボットアーム5全体の動作時間が決定される。したがって、比較最大動作時間T10は、最大動作時間T1と最大動作時間T2との和、すなわち、1.3(sec)となる。
【0042】
図7に示すように、パス動作評価部63は、比較最大動作時間T10に対する基準最大動作時間T0の割合を百分率で示した評価値を算出する。評価値は、(0.85/1.3)×100=65.4(%)となる。評価値は、その値が大きいほど、パス動作の時間が短いため、適切なパス動作であると評価される。
【0043】
パス動作評価部63は、最短パス動作であるパス動作L0の各軸の動作時間、被評価対象パス動作であるパス動作L10の分割パス動作L1の各軸の動作時間、分割パス動作L2の動作時間、基準最大動作時間T0、比較最大動作時間T10、及び評価値を表示部30に表示する。この際、パス動作L0、分割パス動作L1、分割パス動作L1における基準最大動作時間T0,最大動作時間T1,最大動作時間T2が抽出された軸(4軸、4軸、1軸)とその動作時間が強調表示する。
【0044】
これにより、プログラム作成者は、評価値の値によって被評価対象パス動作L10を時間に関して評価することができ、また、強調表示によって、パス動作の動作時間を長くしているネックの軸を容易に見出すことができ、中継作業点P10の位置及び姿勢を調整して、さらに最適な被比較対象パス動作を作成することができる。
【0045】
なお、上記の実施の形態では、オフライン教示方式を採用したプログラム作成のシステムについて説明したが、実機ロボットを用いた手動教示方式を採用したプログラム作成のシステムについても適用することができる。この場合、パス動作評価部63は、制御装置3に搭載されることになる。
【0046】
また、上記の実施の形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のロボットプログラム評価装置、ロボットプログラム評価方法及びロボットプログラム評価プログラムは、ロボットアームの複数の軸を駆動して作業を行うロボットの動作プログラムを作成する際、作業点間の前記ロボットの姿勢変化を含むパス動作を評価する場合に有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 ロボットシステム
2 ロボット
3 制御装置
4 動作プログラム
5 ロボットアーム
6 溶接ガン
10 ロボットプログラム評価装置
20 入力部
30 表示部
40 通信部
50 記憶部
51 CADデータ
52 ロボットソフトウェア
60 制御部
61 プログラム作成部
62 シミュレーション部
63 パス動作評価部
100 車体
101 干渉領域
L0,L10 パス動作
L1,L2 分割パス動作
P1,P2 作業点
P10 中継作業点
T0 基準最大動作時間
T1,T2 最大動作時間
T10 比較最大動作時間