(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】半導体装置及びそれを用いた整流素子、オルタネータ
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230224BHJP
H02M 7/21 20060101ALI20230224BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20230224BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20230224BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20230224BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230224BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20230224BHJP
H01L 29/866 20060101ALI20230224BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
H01L29/78 652N
H02M7/21 A
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L29/78 657A
H01L29/78 653C
H01L29/78 652P
H01L29/90 D
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/78 652S
H01L23/48 G
H01L23/48 F
(21)【出願番号】P 2019193215
(22)【出願日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白石 正樹
(72)【発明者】
【氏名】坂野 順一
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-033144(JP,A)
【文献】特開2007-110002(JP,A)
【文献】特開2016-162948(JP,A)
【文献】特開2019-129656(JP,A)
【文献】特表2011-507468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/866
H01L 29/06
H01L 27/06
H01L 27/088
H01L 21/329
H01L 21/8234
H02M 7/21
H01L 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツェナーダイオード内蔵MOSFETを備える半導体装置において、
MOSFETが動作するアクティブ領域と、
前記アクティブ領域よりも外側に配置され、チップ周辺部の耐圧を保持する周辺領域と、を備え、
前記アクティブ領域は、チップ中心部を含む第1の領域と、前記第1の領域よりも外側に配置される第2の領域と、を有し、
前記第1の領域の耐圧は、前記第2の領域の耐圧及び前記周辺領域の耐圧よりも低いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1の領域の耐圧は、前記半導体装置にサージが発生し、前記第1の領域の温度が上昇し、前記第2の領域の温度よりも高くなった場合であっても、前記第2の領域の耐圧及び前記周辺領域の耐圧よりも低いことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1の領域及び前記第2の領域には複数の単位セルが配列されており、
前記第1の領域の単位セルの各々にはツェナーダイオードが設けられており、
前記ツェナーダイオードの耐圧は、前記第2の領域の耐圧及び前記周辺領域の耐圧よりも低いことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に形成され、前記第1半導体層より不純物濃度の低い第1導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層上に形成された第2導電型の第3半導体層と、
前記第3半導体層を貫通し、前記第2半導体層に到達するトレンチゲートと、
前記第3半導体層上に形成された第1導電型の第4半導体層と、
前記第4半導体層を貫通し、前記第3半導体層に到達するコンタクトと、を有し、
前記ツェナーダイオードは、前記第2半導体層と前記第3半導体層の接合部の中心部に設けられることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記第2半導体層と第3半導体層の接合部の中心部近傍の前記第2半導体層内に、第1半導体型の第5半導体層を有し、
前記第2半導体層と第3半導体層の接合部の中心部近傍の前記第3半導体層内に、第2導電型の第6半導体層を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記第5半導体層の不純物濃度は前記第2半導体層の不純物濃度よりも高く、前記第6半導体層の不純物濃度は前記第3半導体層の不純物濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体装置を覆う保護膜を有し、
前記第1の領域は、前記保護膜に設けられた開口部内に配置されることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置において、
前記第1の領域は、前記開口部内に設けられた配線用の銅端子の直下にのみ配置されることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
オルタネータに用いられる整流素子において、
上面視で略円形の外周部と前記外周部内に収まる略円形の台座を有する第1の外部電極と、
前記台座上に配置され、樹脂封止された内部パッケージと、
前記内部パッケージを挟んで前記第1の外部電極とは反対側に配置された第2の外部電極と、
を備え、
前記内部パッケージ内に、半導体装置と、
前記半導体装置のドレイン電極とソース電極の電圧または電流が入力され、当該入力された電圧または電流に基づいて、前記半導体装置のゲートを駆動する制御ICチップと、
前記制御ICチップに電源を供給するコンデンサと、
前記ドレイン電極と接続されたドレインフレームと、
前記ソース電極と接続された銅ブロックと、を有し、
前記ドレインフレーム及び前記銅ブロックの表面は前記樹脂に封止されることなく、前記内部パッケージ表面に露出しており、
前記ドレインフレーム及び前記銅ブロックのいずれか一方と前記第1の外部電極とが接合材を用いて電気的に接続され、
前記ドレインフレーム及び前記銅ブロックの他方と前記第2の外部電極とが接合材を用いて電気的に接続されており、
前記半導体装置は、請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体装置であることを特徴とする整流素子。
【請求項10】
請求項9に記載の整流素子を備えることを特徴とするオルタネータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の構造に係り、特に、車載用オルタネータ(交流発電機)などに搭載され、高い信頼性が要求される電力制御用半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車にて発電を行うオルタネータ(交流発電機)には、発電した交流電圧を整流して直流電圧に変換し、バッテリを充電する整流回路が設けられている。この整流回路に用いられる整流素子としては、これまでダイオードが用いられてきた。
【0003】
ダイオードを用いた整流素子は、例えば、特許文献1に示されるように、ダイオードチップの上面の端子をリード電極に接続し、ダイオードチップの下面の端子をベース電極に接続する。ベース電極から成るパッケージの外形は円形をしており、その円形のパッケージをオルタネータの電極板に半田もしくは圧入によって固定して用いる。
【0004】
円形のパッケージを用いることで、電極の回転軸方向の位置を合わせることなしにダイオードをオルタネータの電極板に固定することができ、オルタネータの整流部の組み立てが容易になる。オルタネータ一台当たり6個もしくは12個もの多数の整流素子をオルタネータの電極板に固定する必要があり、容易に整流素子をオルタネータに固定できることは、オルタネータの組み立て工程の簡素化、低コスト化に重要である。
【0005】
しかしながら、ダイオードは安価ではあるが、順方向電圧降下があり、損失が大きい。これに対して、近年ではダイオードに代わり、MOSFETがオルタネータ用の整流素子として使われ始めている。MOSFETを同期整流することにより、順方向電圧降下がなく0Vから順方向電流が立ち上がり、損失が少ない整流素子を実現可能である。
【0006】
例えば、特許文献2には、従来の2端子である円形パッケージにMOSFETとそれを制御する制御IC、制御ICに電源を供給するコンデンサを搭載し、MOSFETのソース・ドレイン間の電圧でMOSFETのオン・オフを自律的に判定して、従来と同形のパッケージを用いたまま、低損失化できるオルタネータ向け整流素子が示されている。
【0007】
また、オルタネータでは、発電動作時にオルタネータの出力端子やバッテリの端子が外れるロードダンプと呼ばれる現象が生じたときに、発電で生じるエネルギーを内部で消費して、オルタネータの出力端子に高電圧が出力しないようにする必要がある。そのため、特許文献2には、MOSFETと並列にツェナーダイオードを搭載し、ロードダンプ時に発生するサージエネルギーをツェナーダイオードで消費する整流素子も示されている。
【0008】
サージエネルギーを消費するためにツェナーダイオードをMOSFETと並列に搭載すると、その分MOSFETの搭載面積が小さくなるため、オルタネータの高出力化が制限される。そこで、例えば、特許文献3には、MOSFETのアクティブ領域内に、サージ発生時にアバランシェするMOSFETより降伏電圧の低いツェナーダイオードを設けた、ツェナーダイオード内蔵MOSFETを搭載することでサージ耐量を確保しつつ、オルタネータの高出力化ができると示されている。
【0009】
また、特許文献4には、ショットキ接合とpn接合を備える半導体装置であって、pn接合部の降伏電圧を、ショットキ接合及びガードリング部のpn接合より低くすることで、サージ耐量を確保できると示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平10-215552号公報
【文献】特開2015-116053号公報
【文献】特開2019-033144号公報
【文献】特開2012-174878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図11および
図12に、従来の代表的なツェナーダイオード内蔵MOSFETの断面構造とサージ発生時のアバランシェ電流を示す。
【0012】
上記特許文献3や特許文献4では、アクティブ領域内に降伏電圧の低い構造を設けることで、サージ耐量を確保できる構造を示しているが、実際の構造においては、
図11に示すようにアクティブ領域は周辺領域の保護膜242の下部にまで設けられており、サージが発生した際には、
図12に示すように保護膜242の下部にあるアクティブ領域でもアバランシェ電流が発生する。
【0013】
アバランシェ電流は、保護膜242の開口部に接続されたメッキ層240や半田層241、銅ブロック250を介して流れるため、保護膜242の開口部周辺にアバランシェ電流が集中し、温度が上昇し破壊するという課題がある。
【0014】
一方、保護膜242の開口部の下部にのみアクティブ領域を設ける構造にすると、アクティブ領域の面積が小さくなるためMOSFETのオン抵抗が高くなるという課題がある。
【0015】
図3に、後述する本発明のツェナーダイオード内蔵MOSFETの平面構造を示す。
図3に示すように、搭載する銅ブロック250の加工上の制約から銅ブロック250並びに保護膜242の開口部が長方形(矩形)の形状である場合、特にパッド(ゲートパッド261及びソースセンスパッド262)の横の部分で保護膜242の下部にあるアクティブ領域が大きくなり、電流集中や保護膜下のアクティブ領域を削除した際のオン抵抗増大の課題がより顕著になる。
【0016】
そこで、本発明の目的は、ツェナーダイオード内蔵MOSFETを備える半導体装置において、サージ耐量向上と低オン抵抗を両立可能な半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明は、ツェナーダイオード内蔵MOSFETを備える半導体装置において、MOSFETが動作するアクティブ領域と、前記アクティブ領域よりも外側に配置され、チップ周辺部の耐圧を保持する周辺領域と、を備え、前記アクティブ領域は、チップ中心部を含む第1の領域と、前記第1の領域よりも外側に配置される第2の領域と、を有し、前記第1の領域の耐圧は、前記第2の領域の耐圧及び前記周辺領域の耐圧よりも低いことを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、オルタネータに用いられる整流素子において、上面視で略円形の外周部と前記外周部内に収まる略円形の台座を有する第1の外部電極と、前記台座上に配置され、樹脂封止された内部パッケージと、前記内部パッケージを挟んで前記第1の外部電極とは反対側に配置された第2の外部電極と、を備え、前記内部パッケージ内に、半導体装置と、前記半導体装置のドレイン電極とソース電極の電圧または電流が入力され、当該入力された電圧または電流に基づいて、前記半導体装置のゲートを駆動する制御ICチップと、前記制御ICチップに電源を供給するコンデンサと、前記ドレイン電極と接続されたドレインフレームと、前記ソース電極と接続された銅ブロックと、を有し、前記ドレインフレーム及び前記銅ブロックの表面は前記樹脂に封止されることなく、前記内部パッケージ表面に露出しており、前記ドレインフレーム及び前記銅ブロックのいずれか一方と前記第1の外部電極とが接合材を用いて電気的に接続され、前記ドレインフレーム及び前記銅ブロックの他方と前記第2の外部電極とが接合材を用いて電気的に接続されており、前記半導体装置は、上記の半導体装置であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記の整流素子を備えることを特徴とするオルタネータである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ツェナーダイオード内蔵MOSFETを備える半導体装置において、サージ耐量向上と低オン抵抗を両立可能な半導体装置を実現することができる。
【0021】
これにより、ツェナーダイオード内蔵MOSFETを備える半導体装置、及びそれを用いた整流素子やオルタネータ(交流発電機)の信頼性向上と高性能化(低損失化)が図れる。
【0022】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例1に係るツェナーダイオード内蔵MOSFETの断面構造を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るツェナーダイオード内蔵MOSFETのサージ発生時のアバランシェ電流を示す図である。
【
図3】本発明の実施例1に係るツェナーダイオード内蔵MOSFETの平面構造を示す図である。
【
図4】本発明の実施例2に係るツェナーダイオード内蔵MOSFETの断面構造を示す図である。
【
図5】本発明の実施例2に係るツェナーダイオード内蔵MOSFETのサージ発生時のアバランシェ電流を示す図である。
【
図6】本発明の実施例3に係るオルタネータ用整流素子の上面図である。
【
図9】本発明の実施例3に係るオルタネータ用整流素子の回路図である。
【
図10】本発明の実施例3に係るオルタネータの回路図である。
【
図11】従来のツェナーダイオード内蔵MOSFETの断面構造を示す図である。
【
図12】従来のツェナーダイオード内蔵MOSFETのサージ発生時のアバランシェ電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0025】
図1から
図3を参照して、本発明の実施例1に係るツェナーダイオード内蔵MOSFETについて説明する。
図1は、本実施例のツェナーダイオード内蔵MOSFETの断面構造を示す。
図2は、サージが発生した際のアバランシェ電流を示す。
図3は、本実施例のツェナーダイオード内蔵MOSFETのチップ平面図を示しており、
図1及び
図2は、
図3のA-A’断面図に相当する。
【0026】
図1に示すように、本実施例のツェナーダイオード内蔵MOSFETは、MOSFETのアクティブ領域とその外側に周辺領域を有している。アクティブ領域は、ドレイン電極221上にn+基板201、n-エピ層202があり、n-エピ層202上にp型チャネル層203が形成されている。さらに、半導体表面からp型チャネル層203を貫き、n-エピ層202層に到達するトレンチゲート210が形成されており、トレンチゲート210はゲート酸化膜211とトレンチ内に充填されたポリシリコン電極212で構成されている。
【0027】
半導体表面には、n+ソース層204が形成されており、n+ソース層204を貫きチャネル層203に到達するコンタクト用のトレンチ213が形成されており、トレンチ213の直下には、p+コンタクト層205が形成されている。半導体層の表面には、トレンチ213及び層間絶縁膜214を介してソース電極220が設けられている。
【0028】
アクティブ領域には、アクティブ領域内周部とその外側にアクティブ領域外周部がある。アクティブ領域内周部には、トレンチ213の下部にツェナーダイオード230が設けられており、アクティブ領域外周部には、トレンチ213の下部にツェナーダイオードが設けられていない。アクティブ領域内周部では、ソース電極220の上にメッキ層240があり、半田層241を介して銅ブロック250が接続されている。一方、アクティブ領域外周部では、ソース電極220の上に周辺領域にまで延伸(延在)する保護膜242が設けられている。
【0029】
アクティブ領域内周部に設けられているツェナーダイオード230は、p型チャネル層203より高濃度のp層206とn-エピ層202より高濃度のn層207の接合からなり、ツェナーダイオード230が設けられているアクティブ領域内周部の耐圧は、ツェナーダイオードが設けられていないアクティブ領域外周部や周辺領域の耐圧に比べて低くなっている。
【0030】
また、ツェナーダイオード230は、トレンチ213の下部で、なおかつ、p型チャネル層203の中央部に設けられているため、ツェナーダイオードがアバランシェした際に流れる電流が、p+コンタクト層205に流れやすく、n+ソース層204の下部を通る電流を少なくすることができるため、寄生npnトランジスタの動作を防止でき、高いアバランシェ耐量を実現できる。
【0031】
また、周辺領域には、深いp層208があり、電圧印可時に空乏層を外周へ広げ耐圧を確保することができる。また、深いp層208を覆う位置までソース電極220が延伸(延在)しており、フィールドプレートの役割を果たし、深いp層208端部での電界を緩和する。
【0032】
チップ端部にはn+のフィールドストップ層(チャネルストッパ層)209及びガードリング222があり、欠陥が多くライフタイムが短いチップ端部まで空乏層が到達するのを防止し、耐圧を保持する。
【0033】
アクティブ領域内周部のツェナーダイオード230の耐圧は、アクティブ領域外周部や周辺領域の耐圧よりも低く設定するが、サージ発生時は、ツェナーダイオード230がアバランシェし電流が流れることで温度が上昇し、ツェナーダイオード230の耐圧が上昇する。
【0034】
一方、アクティブ領域外周部や周辺領域はアバランシェ電流が流れないため、アクティブ領域内周部よりも温度上昇が小さくなるが、その際でも確実にツェナーダイオード230でサージエネルギーを吸収できるように、温度が上昇した際でも、アクティブ領域外周部や周辺領域よりツェナーダイオード230の耐圧が低くなるように設定する。
【0035】
図1に示すように、アクティブ領域内周部のみにツェナーダイオード230を設けるには、コンタクト用のトレンチ213を形成後、ツェナーダイオード230を構成するp層206とn層207をイオン打ち込みで形成する際に、アクティブ領域外周部や周辺領域をホトマスクで覆うことで、アクティブ領域内周部のみに選択的にツェナーダイオード230を形成することができる。
【0036】
以上説明した本実施例のツェナーダイオード内蔵MOSFETは、言い換えると、MOSFETが動作するアクティブ領域と、アクティブ領域よりも外側に配置され、チップ周辺部の耐圧を保持する周辺領域と、を備えており、アクティブ領域は、チップ中心部を含む第1の領域(アクティブ領域内周部)と、第1の領域(アクティブ領域内周部)よりも外側に配置される第2の領域(アクティブ領域外周部)と、を有し、第1の領域(アクティブ領域内周部)の耐圧は、第2の領域(アクティブ領域外周部)の耐圧及び周辺領域の耐圧よりも低くなるように形成されている。
【0037】
また、第1の領域(アクティブ領域内周部)の耐圧は、ツェナーダイオード内蔵MOSFET(半導体装置)にサージが発生し、第1の領域(アクティブ領域内周部)の温度が上昇し、第2の領域(アクティブ領域外周部)の温度よりも高くなった場合であっても、第2の領域(アクティブ領域外周部)の耐圧及び周辺領域の耐圧よりも低くなるように形成されている。
【0038】
また、第1の領域(アクティブ領域内周部)及び第2の領域(アクティブ領域外周部)には複数の単位セル(トレンチゲート210)が配列されており、第1の領域(アクティブ領域内周部)の単位セル(トレンチゲート210)の各々にはツェナーダイオード230が設けられており、ツェナーダイオード230の耐圧は、第2の領域(アクティブ領域外周部)の耐圧及び周辺領域の耐圧よりも低くなるように形成されている。
【0039】
本実施例によるサージ耐量向上の効果を
図2で説明する。
図2は、
図1に示すツェナーダイオード内蔵MOSFETの構造において、サージが発生した際のアバランシェ電流を概念的に示している。上述したように、アクティブ領域内周部(保護膜開口部)には、ツェナーダイオード230が設けられているため、アクティブ領域外周部や周辺領域に対して耐圧が低くなり、アバランシェ電流はアクティブ領域内周部にのみ流れる。
【0040】
アクティブ領域内周部の上部には保護膜242がないため、アバランシェ電流は保護膜開口部端部に集中することなく、メッキ層240や半田層241、銅ブロック250に流れる。電流集中が無いため、電流集中による温度上昇が抑制できサージ耐量を確保できる。一方、通常動作時には、アクティブ領域外周部もアクティブ領域として動作するため、オン抵抗が増大することもない。
【0041】
図3は、本実施例のツェナーダイオード内蔵MOSFETのチップ平面図を示す。ツェナーダイオード内蔵MOSFETチップ103は、ゲートパッド261及びソースセンスパッド262を有する長方形(矩形)の形状をしている。ソース電極220と電気的に接続する銅ブロック250が保護膜242の開口部に半田層241を介して接続されている。銅ブロック25の加工の容易性から、銅ブロック250や保護膜242の開口部は図のような長方形(矩形)の形状をしている。
【0042】
アクティブ領域260は、
図3の点線で示すように配置されており、特にパッド(ゲートパッド261及びソースセンスパッド262)の横の領域では、保護膜242下のアクティブ領域が広く、アバランシェ時の電流が保護膜242の開口部の端部に集中するが、本実施例では、保護膜242下のアクティブ領域外周部にはツェナーダイオードを設けていないので、電流集中を防止することができる。
【実施例2】
【0043】
図4及び
図5を参照して、本発明の実施例2に係るツェナーダイオード内蔵MOSFETについて説明する。
図4は、本実施例のツェナーダイオード内蔵MOSFETの断面構造を示す。
図5は、サージが発生した際のアバランシェ電流を示す。
【0044】
図4に示すように、本実施例のツェナーダイオード内蔵MOSFETの特徴は、ツェナーダイオード230が設けられているアクティブ領域内周部が銅ブロック250の下部に設けられている点である。つまり、第1の領域(アクティブ領域内周部)は、保護膜242の開口部内に設けられた配線用の銅端子(銅ブロック250)の直下にのみ配置されている。
【0045】
言い換えると、実施例1(
図1)では、保護膜242の開口部で、なおかつ、銅ブロック250が設けられていない領域にもツェナーダイオード230が設けられているが、本実施例(
図4)では、保護膜242の開口部で、なおかつ、銅ブロック250が設けられていない領域にはツェナーダイオード230が設けられていない。
【0046】
図5に示すように、サージが発生するとアバランシェ電流が銅ブロック250に向けて直線的に流れることでより半田層241の端部や銅ブロック250の端部での電流集中を抑制でき、サージ耐量の向上ができる。
【実施例3】
【0047】
図6から
図10を参照して、本発明の実施例3に係るオルタネータ用整流素子とオルタネータ(交流発電機)について説明する。
【0048】
図6は、実施例1或いは実施例2で説明した本発明のツェナーダイオード内蔵MOSFETを搭載するオルタネータ用整流素子100の上面図を示す。
図7は整流素子100のB-B’断面、
図8は整流素子100のC-C’断面をそれぞれ示す。また、
図9は、整流素子100の回路図を示し、
図10は、整流素子100を搭載するオルタネータ(交流発電機)の回路図を示す。
【0049】
本実施例の整流素子100は、
図6から
図8に示すように、円形の外周部を有するベース電極101、ベース電極101上に設けられた台座102、台座102上に設けられた長方形(矩形)の内部パッケージ300を有している。
【0050】
内部パッケージ300は、ツェナーダイオード内蔵MOSFETチップ103と、制御ICチップ104と、コンデンサ105と、ツェナーダイオード内蔵MOSFETチップ103の上に載せられた銅ブロック250と、ツェナーダイオード内蔵MOSFETチップ103を載せているドレインフレーム302と、制御ICチップ104とコンデンサ105を載せているリードフレーム303及び304を有しており、それら全体は樹脂305で覆われている。
【0051】
銅ブロック250の上面、及びドレインフレーム302の下面は樹脂305で覆われることなく内部パッケージ300の表面に露出している。銅ブロック250の上面は、接合材306を介してリード電極107に接続され、ドレインフレーム302の下面は、接合材306を介して台座102に接続される。また、制御ICチップ104とコンデンサ105の低電圧側が同じリードフレーム303に接続され、コンデンサ105の高電圧側はリードフレーム304に接続される。
【0052】
なお、オルタネータ用整流素子には、電流方向が異なる正座構造と逆座構造があり、
図6で示した整流素子100は正座構造である。逆座構造は、図示はしないが、内部パッケージ300の構成は共通で、銅ブロック250が台座102に、ドレインフレーム302がリード電極107にそれぞれ接続される。
【0053】
図9は、整流素子100の回路構成を示す。
図9に示す回路では、L端子がベース電極101、H端子がリード電極107である。ツェナーダイオード内蔵MOSFETチップ103、制御ICチップ104、コンデンサ105が、
図9のような接続で配線される。
【0054】
制御ICチップ104は、コンパレータ116、ゲートドライバ117、ダイオード118で構成される。コンパレータ116の一方の入力端子はH端子に接続され、コンパレータ116の他方の入力端子はL端子に接続され、コンパレータ116の出力端子はゲートドライバ117の入力端子に接続され、ゲートドライバ117の出力端子はツェナーダイオード内蔵MOSFETチップ103のゲート電極に接続される。
【0055】
また、コンデンサ105の高電圧側端子110(
図8参照)は、コンパレータ116の電源端子とゲートドライバ117の電源端子に接続され、コンデンサ105の低電圧側端子111(
図8参照)は、L端子に接続される。更に、コンデンサ105とH端子の間にコンデンサ105の電荷の逆流防止用のダイオード118が挿入される。
【0056】
図9に図示した回路は、次のように動作する。H端子の電圧がL端子の電圧より低くなると、コンパレータ116は高電圧(若しくは低電圧)の信号を出力し、その信号が入力されたゲートドライバ117がツェナーダイオード内蔵MOSFETチップ103のゲート電極の電圧を上げてツェナーダイオード内蔵MOSFETチップ103をオン状態にする。
【0057】
逆に、H端子の電圧がL端子の電圧より高くなると、コンパレータ116は低電圧(若しくは高電圧)の信号を出力し、その信号が入力されたゲートドライバ117がツェナーダイオード内蔵MOSFETチップ103のゲート電極の電圧を下げてツェナーダイオード内蔵MOSFETチップ103をオフ状態にする。
【0058】
すなわち、H端子とL端子の電圧の大小関係から、ツェナーダイオード内蔵MOSFETチップ103を自律的にオン・オフする。コンデンサ105はコンパレータ116とゲートドライバ117に電源電圧を供給する。
【0059】
図10は、本発明のツェナーダイオード内蔵MOSFET103を搭載した整流素子100をオルタネータ(交流発電機)に適用した例を示す。オルタネータは、発電機で交流電力(電圧)を発生し、その交流電力(電圧)を整流装置で整流し、直流電力(電圧)を生成して出力するものである。
【0060】
図10では、整流素子100を6個用いた3相全波整流の回路構成(400)を示す。正座の整流素子100が3個と、図示はしていないが逆座の整流素子3個と、バッテリ401が備えられている。
【0061】
図10に示すように、正座の整流素子と逆座の整流素子が直列に接続され、それぞれの接続点が3相交流のU相、V相、W相に接続されており、発電機からの交流を直流に変換し、バッテリ401に直流電力(電圧)を出力する。
【0062】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
100…(オルタネータ用)整流素子
101…ベース電極
102…台座
103…ツェナーダイオード内蔵MOSFETチップ
104…制御ICチップ
105…コンデンサ
107…リード電極
108…樹脂
109…接合材
110…コンデンサの高電圧側端子
111…コンデンサの低電圧側端子
115…ボンディングワイヤ
116…コンパレータ
117…ゲートドライバ
118…ダイオード
201…n+基板
202…n-エピ層
203…p型チャネル層
204…n+ソース層
205…p+コンタクト層
206…p層
207…n層
208…深いp層
209…フィールドストップ層(チャネルストッパ層)
210…トレンチゲート
211…ゲート酸化膜
212…ポリシリコン電極
213…トレンチ
214…層間絶縁膜
220…ソース電極
221…ドレイン電極
222…ガードリング
230…ツェナーダイオード(ZD)
240…メッキ層
241…半田層
242…保護膜
250…銅ブロック
260…アクティブ領域
261…ゲートパッド
262…ソースセンスパッド
300…内部パッケージ
302…ドレインフレーム
303,304…リードフレーム
305…樹脂
306…接合材
400…3相全波整流回路
401…バッテリ