IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社コロナの特許一覧

<>
  • 特許-加湿装置 図1
  • 特許-加湿装置 図2
  • 特許-加湿装置 図3
  • 特許-加湿装置 図4
  • 特許-加湿装置 図5
  • 特許-加湿装置 図6
  • 特許-加湿装置 図7
  • 特許-加湿装置 図8
  • 特許-加湿装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】加湿装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/00 20060101AFI20230224BHJP
   F24F 6/16 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
F24F6/00 E
F24F6/00 D
F24F6/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019233316
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021103010
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】太田 智
(72)【発明者】
【氏名】小川 洸太
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 靖
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋之
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-166709(JP,A)
【文献】特開2007-167785(JP,A)
【文献】特開2018-4122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00
F24F 6/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具本体内に設置され水を貯める貯水室と、
前記貯水室内の水を加熱する加熱ヒータと、
前記貯水室内の水から加湿空気を発生させる加湿空気発生手段と、
当該加湿空気発生手段で発生した加湿空気を前記器具本体外へ送風する送風ファンと、
所定の電流値を印加することで金属イオンを水中へ溶出する電極と、
前記加湿空気発生手段により発生させた加湿空気を前記送風ファンで送風する運転中に、前記加熱ヒータを駆動させるヒータ有りモードと駆動させないヒータ無しモードとに応じて前記加熱ヒータの駆動状態を切り替える加熱ヒータ制御手段と、
前記電極へ前記所定の電流値を印加させ前記貯水室内の水に金属イオンを含んだ水を供給する制御部と、を備え、
前記貯水室内の水に含まれる金属イオン濃度を可変させる濃度可変手段を有し、
前記制御部は、前記ヒータ有りモードが設定された場合、前記ヒータ無しモードが設定された場合と比較して、前記濃度可変手段により水中に溶出する金属イオン濃度を高めることを特徴とする加湿装置。
【請求項2】
前記電極は、前記貯水室に接続され水を供給する給水管の途中に設置され、
前記濃度可変手段は、前記給水管から前記貯水室内へ供給される水に含まれる金属イオン濃度を可変させることで、前記貯水室内の水に含まれる金属イオン濃度を調節することを特徴とする請求項1記載の加湿装置。
【請求項3】
前記濃度可変手段は、前記電極へ印加する所定の電流値を変化させて前記貯水室内の水に含まれる金属イオン濃度を調節するものであり、
前記制御部は、前記貯水室内への給水時に前記ヒータ有りモードが設定されている場合、前記ヒータ無しモードが設定された場合と比較して、前記濃度可変手段により前記電極へ印加する前記所定の電流値を高めることを特徴とする請求項1または2記載の加湿装置。
【請求項4】
前記加湿空気発生手段は、前記貯水室内に下端を水没させ回転により水を汲み上げて飛散させる筒状の回転体と、当該回転体を回転駆動させるミストモータと、前記回転体の回転により飛散された水が衝突する衝突体と、で構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の空気清浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯水室内の水から加湿空気を発生させて送風する加湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものでは、器具本体内に水を貯める貯水室と、当該貯水室内に水を加熱する加熱ヒータとを設置し、貯水室内に設置された加湿空気発生手段により加湿空気を発生させ、送風ファンの駆動により器具本体外へ加湿空気を送風することで室内を加湿する加湿装置において、加熱ヒータを駆動させ貯水室内の水を加熱するヒータ有りモードと、加熱ヒータを駆動させないヒータ無しモードとを備え、検知した室内湿度、またはユーザーが選択した加湿モードに応じて各モードを切り替えるものがあった。(例えば、特許文献1)
【0003】
また、貯水室内に設置されたフィルタに送風することで加湿空気を送風する気化式の加湿装置において、貯水室内に設置された電極へ定電流値を印加することで、一定濃度の金属イオンを水中へ溶出させ貯水室周辺のぬめりを抑制するものがあった。(例えば、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6060023号公報
【文献】特開2009-2612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来のものでは、特許文献1のヒータ有りモードとヒータ無しモードとを備えた加湿装置に特許文献2の電極により金属イオンを貯水室へ溶出する構成を適用し、一定濃度の金属イオンを貯水室内へ溶出した場合、所定時間経過後における水中の金属イオン濃度を測定した所、ヒータ有りモードの方がヒータ無しモードと比較して金属イオン濃度が低くなることを本出願人は知見した。
【0006】
よって、貯水室内にある水の加熱有無に関わらず、貯水室に供給する金属イオンの濃度を同一値にすると、貯水室内の水を加熱するヒータ有りモードを実施した場合、貯水室内にある水の金属イオン濃度を目標とする所定値に保持できず、貯水室周辺のぬめりを抑制できなくなることから、改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は貯水室内にある水の加熱有無に関わらず、水の金属イオン濃度を目標とする所定値に保持可能な加湿装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、器具本体内に設置され水を貯める貯水室と、
前記貯水室内の水を加熱する加熱ヒータと、
前記貯水室内の水から加湿空気を発生させる加湿空気発生手段と、
当該加湿空気発生手段で発生した加湿空気を前記器具本体外へ送風する送風ファンと、
所定の電流値を印加することで金属イオンを水中へ溶出する電極と、
前記加湿空気発生手段により発生させた加湿空気を前記送風ファンで送風する運転中に、前記加熱ヒータを駆動させるヒータ有りモードと駆動させないヒータ無しモードとに応じて前記加熱ヒータの駆動状態を切り替える加熱ヒータ制御手段と、
前記電極へ前記所定の電流値を印加させ前記貯水室内の水に金属イオンを含んだ水を供給する制御部と、を備え、
前記貯水室内の水に含まれる金属イオン濃度を可変させる濃度可変手段を有し、
前記制御部は、前記ヒータ有りモードが設定された場合、前記ヒータ無しモードが設定された場合と比較して、前記濃度可変手段により水中に溶出する金属イオン濃度を高めることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2では、前記電極は、前記貯水室に接続され水を供給する給水管の途中に設置され、
前記濃度可変手段は、前記給水管から前記貯水室内へ供給される水に含まれる金属イオン濃度を可変させることで、前記貯水室内の水に含まれる金属イオン濃度を調節することを特徴としている。
【0010】
また、請求項3では、前記濃度可変手段は、前記電極へ印加する所定の電流値を変化させて前記貯水室内の水に含まれる金属イオン濃度を調節するものであり、
前記制御部は、前記貯水室内への給水時に前記ヒータ有りモードが設定されている場合、前記ヒータ無しモードが設定された場合と比較して、前記濃度可変手段により前記電極へ印加する前記所定の電流値を高めることを特徴としている。
【0011】
また、請求項4では、前記加湿空気発生手段は、前記貯水室内に下端を水没させ回転により水を汲み上げて飛散させる筒状の回転体と、当該回転体を回転駆動させるミストモータと、前記回転体の回転により飛散された水が衝突する衝突体と、で構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、貯水室の水を加熱する加熱ヒータを駆動させるヒータ有りモードが設定された場合、加熱ヒータを駆動させないヒータ無しモードが設定された場合と比較して、濃度可変手段により水中に溶出する金属イオン濃度を高めるので、貯水室内の水を加熱する場合であっても、貯水室内を目標とする金属イオン濃度に保持することができるため、水の加熱有無に関わらず貯水室付近のぬめりを確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の一実施形態の外観を説明する斜視図である。
図2】同実施形態の概略構成図である。
図3】同実施形態のイオン溶出ユニットを説明する正面視断面図である。
図4】同実施形態の操作部を説明する図である。
図5】同実施形態の制御ブロック図である。
図6】同実施形態の運転開始から終了までの動作を説明するフローチャートである。
図7】同実施形態の各加湿レベル、風量レベル別の制御内容を説明する図である。
図8】同実施形態の各加湿レベルで電極に印加する定電流値と銀イオン濃度の関係を説明する図である。
図9】同実施形態のミスト運転における給水動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この発明の一実施形態におけるイオン溶出ユニットを用いた加湿装置を説明する。
図1を参照する。1は器具本体、2は器具本体1上部に器具本体1の前面と平行な位置関係となるように形成され複数のルーバー3が設置された送風口、4は器具本体1の正面上部を構成する上面パネル、5は器具本体1の正面下部を構成する下面パネル、6は複数のスイッチが備えられ各種操作指令を行う操作部、7は図示しないブレーカーを隠すブレーカーカバー、8は器具本体1の底面及び前面下方に形成され室内空気を器具本体1内に取り込む吸入口である。
【0015】
図2を参照する。10は器具本体1内の略中段高さ位置にあって所定量の水を貯水する貯水室であり、この貯水室10内には、水に下端を水没させ駆動軸11に軸支された筒状の回転体12が備えられている。
【0016】
前記回転体12は、中空逆円錐形で上方に向かって円周が徐々に拡大するものであり、駆動軸11に接続され回転体12を回転駆動させるミストモータ13を駆動させ、回転体12が回転することによる回転の遠心力で貯水室10の水を汲み上げ、回転体12の外壁および内壁を伝わせて水を押し上げて、回転体12の外壁を伝わせて押し上げた水を周囲に飛散させると共に、回転体12の内壁を伝わせて押し上げた水を回転体12の上端に形成された複数の図示しない飛散口から外周方向へ飛散させる。
【0017】
14は回転体12の上部外周に所定間隔を離間させて位置し回転体12と共に回転する円筒状の多孔体で、該多孔体14には、その全周壁に多数のスリットや金網やパンチングメタル等から成る衝突体としての多孔部15が設置されている。
【0018】
前記ミスト発生部を構成するミストモータ13を駆動させ、回転体12を回転させたことで発生する遠心力で貯水室10内の水を汲み上げると共に空気を飛散させ、多孔部15を通過した水滴が破砕されることで、水を微細化して粒径がナノメートル(nm)サイズのミスト(以下、微細ミスト)が多量に生成されると共に、比較的粒径の大きな水滴(以下、大径水滴)とが生成され、水の微細化によるレナード効果によって微細ミストに負イオンが帯電し、大径水滴に正イオンが帯電した状態となる。
そして、回転体12、ミストモータ13、及び衝突体としての多孔部15で加湿空気発生手段が構成される。
【0019】
20は下面パネル5内に設置され所定の回転数で駆動することで室内の乾燥空気を吸引して器具本体1の上部方向へ送風する送風ファン、21は当該送風ファン20下流側にあり送風が通過する送風経路であり、器具本体1の下部から吸い込まれた乾燥空気が前記送風経路21を通過して器具本体1の上部へ案内され、貯水室10の上部にありミストモータ13が載置された風洞22を介して貯水室10内へ流入する。
【0020】
なお、前記送風経路21は筐体で外部と区画された形態に限られず、例えば、ホース等による専用の区画壁により流路を形成したものであってもよい。
【0021】
23は貯水室10の上方の他端に風路が鉛直上向きとなるよう接続され貯水室10内で発生した微細ミスト及び大径水滴を含む加湿空気が内部を流通する気水分離風路、24は当該気水分離風路23内の途中に複数設置され鉛直上方へ傾斜する傾斜面を備えたバッフル板であり、気水分離風路23内の上段、中段、下段にそれぞれ設置されている。
【0022】
25は気水分離風路23の壁面を貫通し送風経路21を流通する空気の一部が流入可能なバイパス流入口であり、バイパス流入口25から気水分離風路23内へ空気が流入することで、貯水室10から上昇してきた加湿空気の風量を増大させ、送風口2から室内へ送風される加湿空気の送風量を上昇させることができる。
【0023】
30は貯水室10内に設置され貯水を加熱する加熱ヒータであり、貯水室10の外壁に設置され貯水温度を検知する貯水温度センサ31で検知される温度が所定温度となるよう、ON/OFF状態が適宜切り替えられる。
【0024】
32は貯水室10内に設置されフロートが上下することで水位を検知する水位センサであり、貯水室10内の水位が低下して所定水位以下になったらOFF信号を出力し、水位が上昇して所定水位以上になったらON信号を出力し、更に水位が上昇して貯水室10内が満水となったら満水信号を出力する。
【0025】
40は貯水室10側面に接続され貯水室10内に市水を給水する給水管であり、該給水管40の配管途中には、電磁弁を開閉して貯水室10内への給水を制御する給水弁41と、給水圧を所定値まで減圧し一定流量で貯水室10内へ給水可能とする減圧弁42と、イオン溶出ユニット43と、が備えられている。
【0026】
イオン溶出ユニット43について詳述する。
図3を参照する。イオン溶出ユニット43は、ティーズ形状のケース44と、当該ケース44内にあり流入口45aから流出口45bまで通水する通水流路45と、当該通水流路45に配置され対向する2枚の銀板で構成された電極46と、前記通水流路45の外側に位置し前記電極46の端部と一端側が接続し他端側がケース44外に突出する端子47と、で構成されている。
【0027】
前記端子47の他端側に接続された図示しないリード線を介して所定の定電流が電極46に印加されることで、電極46から金属イオンである銀イオンが水中に溶出する。銀イオンが溶出した水が貯水室10内に供給されることで、貯水室10内の銀イオン濃度を目標とする所定値に保持することができる。
【0028】
図2を参照する。50は貯水室10底部に接続され貯水室10内の水を器具本体1外部に排水する硬質塩化ビニル管で構成された排水管であり、該排水管50の配管途中には、電磁弁を開閉して貯水室10内の水の排水を制御する排水切り替え手段としての排水弁51が備えられている。
【0029】
60は送風口2の上壁面に設置され送風口2から室内へ向けて送風される加湿空気の温度を検知する送風温度センサ、61は送風ファン20の近傍に設置され器具本体1の下部から吸い込まれた室内空気の温度を検知する吸気温度センサ、62は前記吸気温度センサ61の近傍に設置され器具本体1が設置された室内の湿度を検知する湿度センサであり、各センサで検知された温度や湿度に基づいて、ミストモータ13や送風ファン20の回転数を変化させ、加熱ヒータ30のON/OFF状態を切り替える。
【0030】
図4を参照する。操作部6には、ミスト運転の開始及び停止を指示する運転スイッチ70と、加熱ヒータ30のON/OFF状態を切り替えて貯水室10内の貯水温度を調節し所定時間あたりの加湿量を変化させる3段階の加湿レベルと、湿度センサ62で検知された湿度が予め設定された湿度となるよう前記加湿レベルを変化させるオートモードとから設定可能な加湿スイッチ71と、ミストモータ13と送風ファン20との回転数の大小を設定可能な三段階の風量レベルと、湿度センサ62で設定された湿度が予め設定された湿度となるよう前記風量レベルを変化させるオードモードとから設定可能な風量スイッチ72と、が備えられている。
【0031】
また、操作部6の各スイッチ上部には各スイッチに対応したランプが備えられており、運転スイッチ70が操作されたら点灯する運転ランプ73と、ミスト運転が所定時間以上継続したら開始する除菌運転時に点灯する除菌ランプ74と、加湿スイッチ71で設定された加湿レベルを1から3の数値とオートモードを示すAで表示する加湿レベルランプ75と、風量スイッチ72で設定された風量レベルを1から3の数値とオートモードを示すAで表示する風量レベルランプ76と、が備えられている。
【0032】
図5を参照する。80は各センサで検知された検知値、及び操作部6上に備えられた各スイッチでの設定内容に基づき、運転内容や弁の開閉を制御するマイコンで構成された制御部であり、ミストモータ13を所定の回転数で駆動させるミストモータ制御手段81と、送風ファン20を所定の回転数で駆動させる送風ファン制御手段82と、加熱ヒータ30のON/OFF状態を切り替えて貯水室10内の水温を調節する加熱ヒータ制御手段83と、電極46へ印加する定電流値を制御し電極46から溶出する銀イオンの濃度を調節する濃度可変手段84と、が備えられている。
【0033】
(一連の運転動作の説明)
次に、この一実施形態での運転開始から終了までの動作について説明する。
図6を参照する。まず、操作部6の運転スイッチ70が操作されたら、制御部80は、排水弁51を開放して貯水室10内の水を排水する。水位センサ32でOFF信号が検知されたら、給水弁41を開放して貯水室10内を水で洗い流すクリーニング動作を行い、所定時間経過したら排水弁51を閉止する。排水弁閉止の後、イオン溶出ユニット43内にある電極46へ定電流を印加することで銀イオンを溶出し、給水管40を介して貯水室10へ銀イオンを含んだ水を流入させる。そして、水位センサ32でON信号が検知されたら、所定量の水が貯水室10内に供給されたとして給水弁41を閉止し、電極46への定電流印加を停止する水入替モードを行う(ステップS101)。
【0034】
ステップS101の水入替モードが終了したら、制御部80は、貯水温度センサ31で検知される貯水温度が室温と同値になるまで加熱ヒータ制御手段83で加熱ヒータ30をON状態にして、ミストモータ13及び送風ファン20が所定の回転数となるようミストモータ制御手段81及び送風ファン制御手段82で制御する立ち上げ動作を実行する立ち上げモードを行う(ステップS102)。
【0035】
ステップS102の立ち上げモードが終了したら、制御部80は、設定された加湿レベルと風量レベルとに基づいてミストモータ13と送風ファン20とが所定の回転数で駆動するようミストモータ制御手段81と送風ファン制御手段82とで回転数を制御し、加熱ヒータ30のON/OFF状態を加熱ヒータ制御手段83で切り替えて制御して、加湿レベルと風量レベルとに合わせた所定の温度範囲内にするミスト運転を実行する通常運転モードを行う(ステップS103)。
【0036】
この通常運転モード時、貯水室10内の水位が低下し水位センサ32でOFF信号が検知されたら、制御部80は、給水弁41を開放すると共にイオン溶出ユニット43内にある電極46へ所定の定電流値を印加し、貯水室10内に所定濃度の銀イオンを含んだ水を供給する。これにより、貯水室10内の水への抗菌作用が働き、貯水室10周辺でのぬめり発生を抑制することができる。
【0037】
ステップS103の通常運転モード中に運転スイッチ70が操作され運転終了の指示があったか、所定の運転継続時間が経過したと判断したら、制御部80は、ミストモータ13を停止させてから排水弁51を開弁して貯水室10内の水を排水し、所定時間経過したら給水弁41を開放すると共にイオン溶出ユニット43内にある電極46へ定電流を印加し、貯水室10内を洗浄してから排水弁51を閉止して貯水室10内に所定量だけ貯水する水入替運転を行う。
その後、加熱ヒータ30をON状態にして水を加熱することで除菌を行う除菌運転を所定時間行い、所定時間経過後に貯水室10内を冷却する冷却運転を実行し、貯水温度が所定温度以下になったら排水弁51を開放して排水するクリーニングモードを行う(ステップS104)。
【0038】
ステップS104のクリーニングモードが終了したら、制御部80は、送風ファン20が所定の回転数(例えば、800rpm)で駆動するよう送風ファン制御手段82で制御し、貯水室10や送風経路21に送風して乾燥させることで菌の増殖を防止する乾燥モードを行い(ステップS105)、送風ファン20の駆動時間が所定時間(例えば、3時間)をカウントしたか判断し、3時間カウントしたら、送風ファン20を停止させて運転を終了する。
【0039】
(各加湿レベル、風量レベルにおける制御内容の説明)
次に、前記ミスト運転時における各加湿レベル、風量レベルにおける制御内容について説明する。
図7を参照する。加湿レベル1の状態では、加熱ヒータ30を常時OFF状態にして貯水室10内にある水の加熱は行わず、加湿レベル2の状態では、送風温度センサ60で検知される送風温度が吸気温度センサ61で検知される吸気温度から第1所定値(ここでは2℃)を引いた値となるよう、加熱ヒータ30のON/OFF状態を切り替え、加湿レベル3の状態では、送風温度センサ60で検知される送風温度が吸気温度センサ61で検知される吸気温度に第2所定値(ここでは1℃)を足した値となるよう、加熱ヒータ30のON/OFF状態を切り替える。
【0040】
前記加湿レベルの制御により、加湿レベルの上昇に伴って送風温度が上昇し、貯水室10で発生する加湿空気中に含まれる水分の割合が増加することから、加湿対象となる室内の加湿量を調節できる。よって、加湿レベルがオートモードに設定されたら、湿度センサ62で検知された湿度に応じて加湿レベルを変化させることで、室内湿度を所定の湿度(ここでは、50%RH)付近に保持することができる。
【0041】
加湿レベルがオートモードに設定された場合の具体的な制御内容は、湿度センサ62で検知された湿度について、40%RH未満であれば、加湿レベルを3に設定し、40%RH以上60%RH以下の範囲であれば加湿レベルを2に設定し、60%RHを超えていれば加湿レベルを1に設定する。
【0042】
更に、送風温度が吸気温度近傍となるよう加熱ヒータ30のON/OFF状態を切り替えることから、室内の温度を大幅に変えることなく湿度を変化させることができるため、温風や冷風が使用者に当たることでの不快感を与えることがない。
【0043】
つまり、加湿レベル1はヒータ無しモードであり、加湿レベル2、及び3はヒータ有りモードである。
【0044】
また、前記風量レベルの制御について詳述すると、風量レベル1の状態ではミストモータ13を400rpm、送風ファン20を1000rpmの回転数で駆動させ、風量レベル2の状態ではミストモータ13を600rpm、送風ファン20を1200rpmの回転数で駆動させ、風量レベル3の状態ではミストモータ13を800rpm、送風ファン20を1400rpmの回転数で駆動させる。
【0045】
前記風量レベルの制御により、風量レベルが上昇すると室内に送風される加湿空気の加湿量が増加し、室内の湿度を増加させることができることから、加湿対象となる室内の加湿量を調節できる。よって、風量レベルがオートモードに設定されたら、湿度センサ62で検知された湿度に応じて風量レベルを変化させることで、室内湿度を所定の湿度(ここでは、50%RH)付近に保持することができる。
【0046】
風量レベルがオートモードに設定された場合の具体的な制御内容は、湿度センサ62で検知された湿度について、40%RH未満であれば、風量レベルを3に設定し、40%RH以上60%RH以下の範囲であれば風量レベルを2に設定し、60%RHを超えていれば風量レベルを1に設定する。
【0047】
(銀イオン濃度の減少傾向についての説明)
次に、ミスト運転時における各加湿レベルでの銀イオン濃度の減少傾向について説明する。
本出願人は、加熱ヒータ30をOFF状態で固定する加湿レベル1と、加熱ヒータ30のON/OFF状態を切り換える加湿レベル2、または3とを、貯水室10内の銀イオン濃度を同一にし、風量レベルを同一値に固定して比較した。この結果、所定経過時間後における貯水室10内の銀イオン濃度は、加湿レベル1より加湿レベル2、または3の方が低くなることを本出願人は知見した。
【0048】
図8を参照する。そこで、ミスト運転時に加湿レベル1が設定された場合は、電極46へ印加する定電流値を所定の電流値である12mAにして貯水室10内に供給される水の銀イオン濃度を0.22ppmとし、加湿レベル2、または3が設定された場合は、電極46へ印加する定電流値を14mAにして貯水室10内に供給される水の銀イオン濃度を0.25ppmとした。これにより、加湿レベル1が設定された場合より、加湿レベル2、または3が設定された場合の方が高い銀イオン濃度の水を貯水室10内に供給するため、貯水室10内の銀イオン濃度について設定された加湿レベルに関わらず、目標とする所定値に保持することができる。
【0049】
(ミスト運転時における給水動作の説明)
次に、前記ステップS103のミスト運転時における給水動作について説明する。
図9を参照する。前記ステップS102から前記ステップS103へ遷移しミスト運転を開始したら、制御部80は、水位センサ32での検知結果がOFF状態で貯水室10が給水開始水位となっているか判断し(S201)、給水開始水位になっていると判断したら、給水弁41を開放して貯水室10内への給水を開始する(S202)。
【0050】
前記ステップS202で貯水室10内への給水を開始したら、制御部80は、現在設定されている加湿レベルが1かを判断し(S203)、加湿レベル1が設定されていれば、濃度可変手段84により電極46へ印加する定電流値を12mAに設定して印加を開始し(S204)、加湿レベルが2、または3が設定されていれば、濃度可変手段84により電極46へ印加する定電流値を14mAに設定して印加を開始する(S205)。
【0051】
前記ステップS204、または前記ステップS205で所定の定電流値を電極46へ印加したら、制御部80は、水位センサ32での検知結果がON状態に切り替わり貯水室10の給水停止水位になったかを判断し(S206)、給水停止水位になっていると判断したら、給水弁41を閉止して貯水室10内への給水を停止すると共に、電極46への定電流値の印加を停止する(S207)。
【0052】
また、前記ステップS206で水位センサ32での検知結果がOFF状態のままであり、給水停止水位になっていなければ、制御部80は、前記ステップS203の判断を繰り返す。
【0053】
前記ステップS201で水位センサ32での検知結果がON状態で給水開始水位ではなかったか、前記ステップS207での処理を完了したら、制御部80は、運転スイッチ70が操作されたか、所定の運転継続時間が経過し運転終了指示が出されたか判断し(S208)、運転終了指示が出されたと判断したら、通常運転モードから前記S104のクリーニングモードへ遷移してミスト運転を終了させ、運転終了指示が出されていないと判断したら、前記S101の判断を繰り返す。
【0054】
このように、設定された加湿レベルに応じて電極46へ印加する定電流値を可変させることで、貯水室10内にある水の加熱有無に応じて貯水室10内へ給水される水の銀イオン濃度を調節し、水の加熱有無に関わらず貯水室10内の水の銀イオン濃度を目標とする所定値に保持することができるので、貯水室10周辺のぬめり発生を確実に抑制することができる。
【0055】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0056】
貯水室10の水を加熱する加熱ヒータ30を駆動させるヒータ有りモードである加湿レベル2、または3が設定された場合、加熱ヒータ30を駆動させないヒータ無しモードである加湿レベル1が設定された場合と比較して、濃度可変手段84により水中に溶出する銀イオン濃度を高めるので、貯水室10内の水を加熱する場合であっても、貯水室10内を目標とする銀イオン濃度に保持することができるため、水の加熱有無に関わらず貯水室10付近のぬめり発生を確実に抑制することができる。
【0057】
また、電極46は、貯水室10に接続され水を供給する給水管40の途中に設置され、濃度可変手段84は、給水管40から貯水室10内へ供給される水に含まれる銀イオン濃度を可変させることで、貯水室10内の水に含まれる銀イオン濃度を調節するので、給水管40内を通過する水の流量が一定であることから、貯水室10内へ供給する水に含まれる銀イオン濃度を簡易に調節し、貯水室10内の銀イオン濃度を目標とする所定値に保持することができるため、水の加熱有無に関わらず貯水室10付近のぬめり発生を確実に抑制することができる。
【0058】
また、濃度可変手段84は、電極46へ印加する所定の電流値を変化させて貯水室10内の水に含まれる銀イオン濃度を調節するものであり、制御部80は、貯水室10内への給水時に加湿レベル2、または3が設定されている場合、加湿レベル1が設定された場合と比較して、濃度可変手段84により電極46へ印加する所定の電流値を高めるので、貯水室10内へ供給する水に含まれる銀イオン濃度を簡易に調節し、貯水室10内の銀イオン濃度を目標とする所定値に保持することができるため、水の加熱有無に関わらず貯水室10付近のぬめり発生を確実に抑制することができる。
【0059】
加湿空気発生手段は、貯水室10内に下端を水没させ回転により水を汲み上げて飛散させる筒状の回転体12と、当該回転体12を回転駆動させるミストモータ13と、回転体12の回転により飛散された水が衝突する多孔部15と、で構成されているので、銀イオンを含んだ水を貯水室10の周囲へ効果的に飛散させるため、水の加熱有無に関わらず貯水室10付近のぬめり発生を確実に抑制することができる。
また、貯水室10内に溶出した銀イオンは水の撹拌により減少することから、貯水室10内の水が回転体12により撹拌されるような加湿空気発生手段を用いた加湿装置において、貯水室10内へ給水する水中の銀イオン濃度を変更する制御は特に好適である。
【0060】
なお、本実施形態では給水管40の途中に電極46を内蔵したイオン溶出ユニット43を配置し、給水管40から貯水室10へ給水する水に所定濃度の銀イオンを含んだ水を供給する構成で説明したが、例えば、貯水室10内にイオン溶出ユニット43を設置し、電極46に定電流値を印加することで銀イオンを貯水室10の水中へ溶出する構成であってもよく、貯水室10内の水に含まれる銀イオン濃度を目標とする所定値に保持可能であれば、電極46の設置場所は限定されない。
【0061】
また、本実施形態では貯水室10内の水を回転体12で吸い上げて周囲に飛散させ、多孔部15で微細化したミストを乾燥空気に含ませることで加湿空気を発生させる加湿空気発生手段で説明したが、これに限らず、貯水室10内の水の加熱有無が切り替え可能なもので加湿空気が生成可能となる加湿装置であれば、本発明の作用効果が達成されることから、本発明の範疇となる。
【0062】
また、本実施形態では電極46に銀板を用いた内容で説明したが、これに限らず金属イオンを溶出可能な金属を用いていればよい。例えば、銅や亜鉛等を電極46として使用し、銅イオンや亜鉛イオンを水中に溶出して貯水室10内の水を清浄化することで、貯水室10周辺のぬめり発生を抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態ではイオン溶出ユニット43を加湿装置の給水管40途中に設置した内容で説明したが、これに限らず給湯器等の他の電気機器の配管途中にイオン溶出ユニット43を配置したものであってもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能なものである。
【符号の説明】
【0064】
1 器具本体
10 貯水室
12 回転体(加湿空気発生手段)
13 ミストモータ(加湿空気発生手段)
15 多孔部(加湿空気発生手段)
20 送風ファン
30 加熱ヒータ
40 給水管
46 電極
80 制御部
83 加熱ヒータ制御手段
84 濃度可変手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9