(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20230224BHJP
F01N 3/00 20060101ALI20230224BHJP
F01N 1/12 20060101ALI20230224BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20230224BHJP
F01N 5/02 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
F01N3/24 N
F01N3/00 F
F01N1/12
F01N13/08 B
F01N5/02 G
F01N13/08 A
(21)【出願番号】P 2019237978
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 祥紀
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-143968(JP,A)
【文献】特開2015-117623(JP,A)
【文献】特開2012-082742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/24
F01N 3/00
F01N 1/12
F01N 13/08
F01N 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気を浄化する柱状の部材である排気浄化ユニット及び前記排気浄化ユニットを内包する筒状の部材であるケースを備える排気浄化部と、
前記ケースの上流側の端部に接続されて前記排気浄化ユニットへ前記排気を供給する流路を画定する排気供給部と、
を備える排気浄化装置であって、
前記排気供給部は、
前記排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を取り囲む環状の流路である第1空間を画定する部材である第1部と、
前記第1部の上流側の端部に接続されて前記第1空間へ前記排気を供給する
単一の流路である第2空間を画定する部材である第2部と、
前記ケースの上流側の前記端部と前記第1部との間に配設されて前記ケースの上流側の前記端部を塞ぐと共に前記第1空間から前記排気浄化ユニットへ前記排気を供給する流路である第3空間を画定する部材である第3部と、
を備え、
前記第1部の前記第3部側には前記第1空間に沿って延在し且つ前記第1空間と前記第3空間とを連通するスリットが形成されており、
前記スリットは前記第1直線を中心とする円形の形状を有し、
前記第1部は、前記第1空間の横断面積が上流側から下流側へ進むにつれて小さくなるように構成されている、
排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載された排気浄化装置であって、
前記スリットは、前記第1部の前記第3部側であり且つ前記第1直線側である位置に形成されている、
排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された排気浄化装置であって、
前記第1部は、前記第1空間の横断面の面積重心と前記第1直線との距離Rに対する前記第1空間の横断面積Aの比率であるA/R比が上流側から下流側へ進むにつれて小さくなるように構成されている、
排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載された排気浄化装置であって、
前記第3空間における前記排気の流れ方向及び/又は流速分布を変化させるように構成された部材及び/又は機構である風向調整手段を更に備える、
排気浄化装置。
【請求項5】
請求項4に記載された排気浄化装置であって、
前記第3部は、前記第3空間の前記スリットよりも前記第1直線側の領域に開口するように形成された開口部を更に備え、
前記排気供給部は、前記開口部を介して前記第2空間と前記第3空間とを連通する前記排気の流路である第4空間を画定する部材である第4部を更に備える、
排気浄化装置。
【請求項6】
請求項5に記載された排気浄化装置であって、
前記第4部は、前記第4空間に流れる前記排気の流量を増減するように構成された流量調整機構を更に備える、
排気浄化装置。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6の何れか1項に記載された排気浄化装置であって、
前記第3部は、前記第3部の内壁面の前記スリットよりも前記第1直線側の領域において前記排気浄化ユニット側に向かって突設された筒状の部材である内側風向調整部材を更に備える、
排気浄化装置。
【請求項8】
請求項7に記載された排気浄化装置であって、
前記第3部は、前記第3部の内壁面の前記スリットよりも前記第1直線側の領域において前記排気浄化ユニット側に向かって突出する突起を更に備え、
前記内側風向調整部材は、前記突起の側面によって構成されている、
排気浄化装置。
【請求項9】
請求項4乃至請求項8の何れか1項に記載された排気浄化装置であって、
前記第3部は、少なくとも前記スリットの下流側に隣接する領域に設けられた複数のフィンを更に備え、
前記フィンは、前記スリットから前記第3空間へ流れ込む前記排気に接触して前記排気の向きを前記第1直線に平行であり且つ前記排気浄化ユニットへ向かう向きに近付けるように構成されている、
排気浄化装置。
【請求項10】
請求項9に記載された排気浄化装置であって、
前記スリットから前記第3空間へ流れ込む前記排気に接触する前記フィンの面は、前記第1直線に平行な平面、前記第1直線に対して傾斜している平面、又は上流側から下流側へ進むにつれて前記第1直線に対する傾斜角が小さくなるように構成された曲面の何れかである、
排気浄化装置。
【請求項11】
請求項4乃至請求項10の何れか1項に記載された排気浄化装置であって、
前記第3部は、前記第3部の内壁面の前記スリットよりも前記第1直線の反対側の領域において前記排気浄化ユニット側に向かって突設された筒状の部材である外側風向調整部材を更に備える、
排気浄化装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載された排気浄化装置であって、
前記排気供給部は、前記内燃機関の冷媒の流路である第5空間を画定する部材である第5部を更に備え、
前記第5部は、少なくとも前記第1空間に流れる前記排気と前記第5空間に流れる前記冷媒との間における熱交換が可能であるように構成されている、
排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置に関する。より具体的には、本発明は、内燃機関の回転速度の高低に拘わらず(即ち、内燃機関から排出される排気の流速の高低に拘わらず)排気浄化触媒及び/又はフィルタ等の排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりを十分に均一化することが可能な排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジン及びディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気には、例えば一酸化炭素(CO)、未燃焼炭化水素(HC:HydroCarbon)、窒素酸化物(NOx)及び煤等からなる粒子状物質(PM)等の特定物質が含まれる。そこで、地球環境保護等の観点から、例えば酸化触媒(OC:Oxidation Catalyst)、三元触媒(TWC:Three-Way Catalyst)及び選択触媒還元脱硝装置(SCR:Selective Catalytic Reduction)等の排気浄化触媒並びにPMを捕集するガソリンパティキュレートフィルタ(GPF:Gasoline Particulate Filter)及びディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)等のフィルタ等の排気処理ユニットを含む排気処理装置を内燃機関の排気流路に介装して、これらの特定物質を除去することが広く行われている。
【0003】
ところで、上述したOC、TWC及びSCR等の排気浄化触媒が所定の活性化温度に到達していない場合、当該排気浄化触媒は十分な触媒作用を発揮することができず、排気浄化機能が低下する。例えば、冷間時における内燃機関の始動(冷間始動)を行った場合及びハイブリッド車両等において内燃機関の稼働頻度が低い場合等、排気浄化触媒の温度が十分に高まっていない場合においては、排気浄化触媒の温度が活性化温度に到達していないために所期の排気浄化機能を発揮することが困難となる虞がある。従って、環境保護の観点からは、内燃機関の排気ポートの直近に排気浄化触媒を配置して、排気浄化触媒の温度を活性化温度へと迅速に到達させ、所期の排気浄化機能を発揮させることが好ましい。
【0004】
ところが、内燃機関の周辺において排気浄化装置が占めることが可能な空間には自ずと限りがあり、レイアウト上の都合により内燃機関から排出される排気の流路(排気経路)の軸方向に対して排気浄化触媒の軸方向が概ね直角となるように配置されることが多い。即ち、内燃機関の排気ポートと排気浄化触媒との間の排気経路には概ね直角に屈曲した部分(屈曲部)が存在することが多い。このように屈曲した排気経路を流れる流体は、より大きい曲率半径を有する壁面に沿って偏って流れる傾向があることが知られている。このため、排気浄化触媒の上流側の端面(前端面)に対して排気が均一に当たらず、排気浄化触媒の温度を均一に上昇させることが困難となる等の問題に繋がる虞がある。
【0005】
また、上述したGPF及びDPF等のフィルタにおいても、フィルタの前端面への排気の当たりが不均一となると、例えばフィルタの局所的な詰まりが生ずる等の問題に繋がる虞がある。そこで、当該技術分野においては、排気浄化触媒及び/又はフィルタ等の排気浄化ユニットの直前(上流側の近傍)において排気を旋回させる構造を設けることにより排気浄化ユニットの前端面に排気を均一に当てることを可能とする様々な技術が提案されている。
【0006】
例えば、多気筒エンジンの一端側の気筒側から下方にある排気浄化装置へと排気を導くように構成された排気マニホルドの集合管に円弧状の凹部を設けることが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。これによれば、当該凹部において排気の流れを屈曲させて当該凹部の下流側において排気を旋回させることにより、排気の流れを均一化して排気浄化装置内の触媒への排気の当たりの均一性を向上させることができる。しかしながら、内燃機関の回転速度が高い場合においては、排気の流量が大きく、上記凹部において屈曲された排気の流速が高いため、上記凹部の下流側において排気が十分に旋回することができないまま触媒に到達してしまい、触媒への排気の当たりが不均一になってしまう虞がある。
【0007】
また、排気浄化触媒を備える円筒状の排気浄化触媒装置の上端部に向かって湾曲して延びる排気管本体部と、排気管本体部と上端部とを接続する排気管導入部とを備える排気管構造において、排気管本体部の排気流入口の中心を排気浄化触媒装置の中心軸線からオフセットして配置し且つ排気管本体部の排気流出口を排気管導入部の外周側に接続することが提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。これによれば、排気管導入部と排気浄化触媒装置の上端面との間の空間において排気を旋回させることにより、排気の偏流を十分に抑制して排気浄化触媒を速やかに昇温することができる。しかしながら、この場合もまた、内燃機関の回転速度が高い場合においては、排気の流量が大きく、排気管本体部から排気管導入部へと流入する排気の流速が高いため、上記空間において排気が十分に旋回することができないまま触媒に到達してしまい、触媒への排気の当たりが不均一になってしまう虞がある。
【0008】
以上のように、従来技術に係る排気浄化装置においては、内燃機関の回転速度の高低に拘わらず(即ち、内燃機関から排出される排気の流速の高低に拘わらず)排気浄化触媒及び/又はフィルタ等の排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりを十分に均一化することが可能な技術は未だに確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許6500967号公報
【文献】特許6537606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、当該技術分野においては、内燃機関の回転速度の高低に拘わらず(即ち、内燃機関から排出される排気の流速の高低に拘わらず)排気浄化触媒及び/又はフィルタ等の排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりを十分に均一化することが可能な排気浄化装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑み、本発明に係る排気浄化装置(以降、「本発明装置」と称呼される場合がある。)は、排気浄化部と、排気供給部と、を備える排気浄化装置である。排気浄化部は、内燃機関から排出される排気を浄化する柱状の部材である排気浄化ユニット及び排気浄化ユニットを内包する筒状の部材であるケースを備える。排気供給部は、排気浄化部のケースの上流側の端部に接続されて排気浄化ユニットへ排気を供給する流路を画定する。
【0012】
排気供給部は、以下に列挙する第1部乃至第3部を備える。第1部は、排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を取り囲む環状の流路である第1空間を画定する部材である。第2部は、第1部の上流側の端部に接続されて第1空間へ排気を供給する流路である第2空間を画定する部材である。第3部は、排気浄化部のケースの上流側の端部と第1部との間に配設されて当該ケースの上流側の端部を塞ぐと共に第1空間から排気浄化ユニットへ排気を供給する流路である第3空間を画定する部材である。
【0013】
更に、第1部の第3部側には第1空間に沿って延在し且つ第1空間と第3空間とを連通するスリットが形成されている。加えて、第1部は、第1空間の横断面積が上流側から下流側へ進むにつれて小さくなるように構成されている。尚、第1空間の横断面積の詳細については後述する。
【発明の効果】
【0014】
上記のように、本発明装置においては、排気浄化ユニットの軸を含む直線を取り囲む環状の第1空間に沿って延在し且つ第1空間と第3空間とを連通するスリットを介して排気浄化ユニットへ排気が供給される。第1空間の横断面積は上流側から下流側へ進むにつれて小さくなるように構成されているので、スリットを介して第1空間から第3空間へと流れ込む排気の流速分布が均一化される。従って、本発明装置によれば、内燃機関の回転速度の高低に拘わらず(即ち、内燃機関から排出される排気の流速の高低に拘わらず)排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりを十分に均一化することができる。
【0015】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る排気浄化装置(第1装置)の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図2】
図1に例示する第1装置が備える排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を含む平面により切断した第1装置を切断面側から観察した状態を例示する模式図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る排気浄化装置(第2装置)の変形例2-1の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図4】
図3に例示する変形例2-1に係る第2装置を
図3とは異なる角度から観察した場合における模式的な斜視図である。
【
図5】
図3に例示する変形例2-1に係る第2装置が備える排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を含む平面により切断した第2装置を切断面側から観察した状態を例示する模式図である。
【
図6】第1装置においてスリットを介して第1空間から第3空間へと流れ込む排気の少なくとも一部がスリットから第1直線L1へと向かって流れる様子を示す模式的な断面図である。
【
図7】変形例2-2に係る第2装置が備える排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を含む平面により切断した第2装置を切断面側から観察した状態を例示する模式図である。
【
図8】変形例2-3に係る第2装置が備える排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を含む平面により切断した第2装置を切断面側から観察した状態を例示する模式図である。
【
図9】変形例2-4に係る第2装置が備える排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を含む平面により切断した第2装置を切断面側から観察した状態を例示する模式図である。
【
図10】
図9に例示する変形例2-4に係る第2装置の切断面を所定の仰角にて排気浄化ユニット側から観察した状態を例示する模式図である。
【
図11】
図9及び
図10に例示する変形例2-4に係る第2装置を第1直線に平行な方向において第1部側から観察した状態を例示する模式図である。
【
図12】変形例2-5に係る第2装置が備える排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を含む平面により切断した第3装置を切断面側から観察した状態を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
《第1実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態に係る排気浄化装置(以降、「第1装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0018】
〈構成〉
第1装置は、排気浄化部と、排気供給部と、を備える排気浄化装置である。排気浄化部は、内燃機関から排出される排気を浄化する柱状の部材である排気浄化ユニット及び排気浄化ユニットを内包する筒状の部材であるケースを備える。排気処理ユニットの具体例としては、例えば酸化触媒(OC)、三元触媒(TWC)及び選択触媒還元脱硝装置(SCR)等の排気浄化触媒並びにPMを捕集するガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)及びディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)等のフィルタ等を挙げることができる。
【0019】
ケースの具体的な構成は、排気浄化ユニットを内部に収容し且つ内燃機関から排出される排気を排気浄化ユニットに導き且つ排気浄化装置としての使用環境及び使用条件に耐えることが可能である限り、特に限定されない。具体的には、ケースは、例えばステンレス鋼等の金属材料からなる管状部材(パイプ)によって構成されていてもよく、或いはプレス成型された複数の部材を重ね合わせる製法(所謂「モナカ製法」)によって構成されていてもよい。
【0020】
尚、排気浄化ユニットをケースの内部に固定するための具体的な手法は、排気浄化ユニットをケースの内部の所定の位置に固定し且つ排気浄化装置としての使用環境及び使用条件に耐えることが可能である限り、特に限定されない。このような手法の具体例としては、例えば、圧縮に対する反発としての復元力を作用することが可能であり且つ十分な耐熱性を有する材料からなる緩衝材である保持部材(マット)を排気浄化ユニットとケースとの間に挟圧保持し、保持部材の復元力によって排気浄化ユニットをケースの内部の所定の位置に保持・固定する手法等を挙げることができる。
【0021】
上記のように排気浄化ユニットとケースとの間に保持部材(マット)を挟圧保持し、保持部材の復元力によって排気浄化ユニットをケースの内部の所定の位置に保持するための手法は特に限定されない。このような手法の具体例としては、例えば圧入工法及びサイジング工法等を挙げることができる。圧入工法とは、例えば、排気浄化ユニットの外周面の少なくとも一部の領域に保持部材が巻回又は固定されてなる集成体を、保持部材の圧縮を伴いつつ、ケースの内部の所定の位置に(きつく)挿入することにより、保持部材の復元力によって排気浄化ユニットを保持する工法である。一方、サイジング工法とは、例えば、排気浄化ユニットの外周面の少なくとも一部の領域に保持部材が巻回又は固定されてなる集成体を、保持部材の圧縮を実質的に伴わずに、ケースの内部の所定の位置に(緩く)挿入した後に、ケースの保持部材に対向する領域の少なくとも一部を所定の径まで縮径させる縮径加工を行うことにより、保持部材の復元力によって排気浄化ユニットを保持する工法である。
【0022】
尚、上記のような保持部材を構成する材料の具体例としては、例えばアルミナ系繊維及びアルミナ-シリカ系繊維等の無機繊維及びこのような無機繊維にバインダとしての樹脂を加えたものを挙げることができる。バインダとして使用される樹脂の具体例としては、例えば、アクリルゴム、ニトリルゴム、ポリビニルアルコール及びアクリル樹脂等を挙げることができる。
【0023】
排気供給部は、排気浄化部のケースの上流側の端部に接続されて排気浄化ユニットへ排気を供給する流路を画定する。排気供給部の具体的な構成は、後述する要件を満足し且つ内燃機関から排出される排気を排気浄化部に導き且つ排気浄化装置としての使用環境及び使用条件に耐えることが可能である限り、特に限定されない。具体的には、ケースは、例えばステンレス鋼等の金属材料からなる管状部材(パイプ)によって構成されていてもよく、或いはプレス成型された複数の部材を重ね合わせる製法(所謂「モナカ製法」)によって形成されていてもよく、或いは鋳造によって形成されていてもよい。
【0024】
排気供給部は、以下に列挙する第1部乃至第3部を備える。第1部は、排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を取り囲む環状の流路である第1空間を画定する部材である。第2部は、第1部の上流側の端部に接続されて第1空間へ排気を供給する流路である第2空間を画定する部材である。第3部は、排気浄化部のケースの上流側の端部と第1部との間に配設されて当該ケースの上流側の端部を塞ぐと共に第1空間から排気浄化ユニットへ排気を供給する流路である第3空間を画定する部材である。
【0025】
即ち、排気供給部においては、内燃機関から排出された排気が、第2部によって画定される第2空間を経由して第1部へと導かれ、第1部によって画定される環状の流路である第1空間へと流れ込み、第3部によって画定される第3空間を経由して排気浄化ユニットへと導かれる。第1空間は、第1直線を取り囲む環状の流路である限り特に限定されず、例えば、第1直線の周りを1回だけ取り囲む環状の流路であってもよく、或いは第1直線の周りを複数回に亘って取り囲む渦巻き状又は螺旋状の流路であってもよい。
【0026】
尚、第1空間の下流側の先端は、第3空間と連通していてもよく、或いは第3空間と連通していなくてもよい。換言すれば、第1部の下流側の先端は、第1空間と第3空間とを連通する開口を有していてもよく、或いは閉じられていてもよい。排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりを均一化する観点からは、典型的には、第1部の下流側の先端は閉じられている。
【0027】
更に、第1装置においては、(環状の流路である)第1空間に沿って延在し且つ第1空間と第3空間とを連通するスリットが第1部の第3部側に形成されている。より好ましくは、当該スリットは、第1部の第3部側であり且つ第1直線側である位置に形成されている。上記のようにして第1空間へと流れ込んだ排気は、上記スリットを経由して第1空間から第3部によって画定される第3空間へと流れ込む。当該スリットの具体的な構成は、第1空間に沿って延在し、第1空間と第3空間とを連通し、第1部の第3部側に形成されている限り、特に限定されない。
【0028】
但し、当該スリットを通過する排気の圧力損失が過剰に大きくならない程度の開口面積を当該スリットが有するように、当該スリットの幅及び/又は長さを定めることが好ましい。また、当該スリットの幅は、当該スリットの全長に亘って一定であってもよく、当該スリットの長手方向における位置によって異なっていてもよく、或いは当該スリットの長手方向に沿って変化していてもよい。
【0029】
更に、排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりを均一化する観点からは、典型的には、上記スリットは、第1直線を中心とする点対称な形状を有する。具体的には、例えば排気浄化ユニットが円柱状の形状を有する場合、当該スリットは当該排気浄化ユニットと同軸状に配置された円形の形状を有することができる。また、例えば排気浄化ユニットが楕円柱状の形状を有する場合、当該スリットは当該排気浄化ユニットと同軸状に配置された楕円形の形状を有することができる。更に、例えば排気浄化ユニットが多角柱状の形状を有する場合、当該スリットは、当該排気浄化ユニットと同軸状に配置された多角形の形状を有していてもよく、或いは、当該排気浄化ユニットと同軸状に配置された円形又は楕円形の形状を有していてもよい。
【0030】
加えて、第1装置においては、第1空間の横断面積が上流側から下流側へ進むにつれて小さくなるように第1部が構成されている。ここでいう「第1空間の横断面積」とは文字通り「第1空間の横断面」の面積であり、「横断面」とは当業者に周知であるように「物体をその延長方向と直角をなす平面に沿って切った切口」である(例えば、株式会社岩波書店によって発行された「広辞苑 第四版」等を参照。)。従って、「第1空間の横断面」は排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を含む平面に沿って切断された第1空間の切口であり、「第1空間の横断面積」は当該「切口」の面積である。このように第1空間の横断面が上流側から下流側へ進むにつれて小さくなることにより、第1空間の横断面積が上流側から下流側まで一定である場合に比べて、上記スリットを経由して第1空間から第3空間へと流れ込む排気の流量分布をより均一なものとすることができる。
【0031】
また、前述した従来技術に係る排気浄化装置(以降、「従来装置」と称呼される場合がある。)においては、排気浄化ユニットの上流側の空間において排気を旋回させることにより排気の流れを均一化して排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりを均一化する。しかしながら、このような従来装置においては、前述したように、内燃機関の回転速度が高い(排気の流速が高い)場合において排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりが不均一となる問題が生ずる虞がある。
【0032】
これに対し、上述したような構成を有する第1装置によれば、従来装置に比べて、内燃機関の回転速度の高低に拘わらず(即ち、内燃機関から排出される排気の流速の高低に拘わらず)排気浄化触媒及び/又はフィルタ等の排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりをより均一化することができる。
【0033】
より好ましくは、第1空間の横断面の面積重心と第1直線との距離Rに対する第1空間の横断面積Aの比率であるA/R比が上流側から下流側へ進むにつれて小さくなるように第1部が構成されている。この場合、上流側から下流側へ進むにつれて一定の割合でA/R比が小さくなるように第1部が構成されていてもよい(A/R比の減少率が一定)。或いは、排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりをより均一化することが可能である限りにおいて、A/R比の減少率は必ずしも一定でなくてもよい。例えば、排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線の周りに上流側から下流側へと回転する角度の増加量に対するA/R比の減少量の比が一定であるように第1部が構成されていてもよい。或いは、例えば、第1直線を互いに挟んで向かい合う(即ち、180°ずれた位置において対向する)2つの箇所におけるA/R比の比率が常に一定であるように第1部が構成されていてもよい。
【0034】
尚、第1装置は、内燃機関から排出される排気を浄化する柱状の部材である排気浄化ユニット及び排気浄化ユニットを内包する筒状の部材であるケースを備える排気浄化装置である。従って、内燃機関から排出される排気の流路における内燃機関よりも下流側である限り、如何なる箇所に配置されていてもよい。例えば、第1装置は、内燃機関の排気系(例えば、排気マニホルド等)の下流側に隣接して配置されていてもよく、或いは他の装置(例えば、他の排気浄化装置等)の下流側に隣接して配置されていてもよい。
【0035】
また、排気供給部は、必ずしも排気浄化部と一体的に構成されている必要は無く、例えば、排気供給部よりも上流側に位置する排気の流路(例えば、内燃機関の排気系及び他の排気浄化装置等)と排気浄化部とを接続するアダプタとして構成されていてもよい。或いは、排気供給部は、排気供給部よりも上流側に位置する排気の流路と一体的に構成されていてもよい。更に、排気供給部の第3空間を画定する第3部の少なくとも一部(例えば側壁等)は、例えば、排気浄化部のケースの上流側の部分(例えばテーパ部等)によって構成されていてもよい。具体的には、例えば、排気供給部の第1部及び第2部は内燃機関が備えるシリンダヘッドと一体的に構成され、排気供給部の第3部は上記のように排気浄化部のケースの上流側の部分によって構成されていてもよい。このような構成は、例えば、複雑な形状を有する排気供給部の第1部及び第2部と内燃機関が備えるシリンダヘッドとを鋳造によって一体的且つ容易に成形することができる。
【0036】
以下、図面を参照しながら、第1装置の1つの具体例について、より詳細に説明する。
図1は、第1装置の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
図2は、
図1に例示する第1装置101が備える排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線L1を含む平面により切断した第1装置101を切断面側から観察した状態を例示する模式図である。
図1及び
図2に例示する第1装置101は、排気浄化部10と、排気供給部20と、を備える排気浄化装置である。
【0037】
排気浄化部10は、図示しない内燃機関から排出される排気を浄化する柱状の部材である排気浄化ユニット11及び排気浄化ユニット11を内包する筒状の部材であるケース12を備える。第1装置101が備える排気浄化ユニット11は、円柱状の形状を有する。また、第1装置101においては、排気浄化ユニット11とケース12との間に挟圧保持された保持部材13の復元力により、排気浄化ユニット11がケース12の内部の所定の位置に保持・固定されている。
【0038】
排気供給部20は、排気浄化部10のケース12の上流側の端部に接続されて排気浄化ユニット11へ排気を供給する流路を画定する。排気供給部20は、以下に列挙する第1部21、第2部22及び第3部23を備える。
【0039】
第1部21は、排気浄化ユニット11の軸を含む直線である第1直線L1を取り囲む環状の流路である第1空間を画定する部材である。第1装置101が備える第1部21によって画定される第1空間は、第1直線L1の周りを1回だけ取り囲む環状の流路である。このような第1空間を画定する第1部21は、第1空間を画定する管状の部材によって構成されており、環状の流路である第1空間の形状に対応する環状の外形を有する。
【0040】
第2部22は、第1部21の上流側の端部に接続されて第1空間へ排気を供給する流路である第2空間を画定する部材である。第1装置101が備える第2部22の上流側の端部には、更に上流側に位置する排気の流路(例えば、図示しない内燃機関の排気管等)と接続するためのフランジ22fが形成されている。一方、第2部22の下流側の端部は、第1部21の上流側の端部に気密に接続されている。これにより、第2部22は、図示しない内燃機関から排出される排気を、第2空間を経由して第1空間へと供給することができる。
【0041】
第3部23は、排気浄化部10のケース12の上流側の端部と第1部21との間に配設されてケース12の上流側の端部を塞ぐと共に第1空間から排気浄化ユニット11へ排気を供給する流路である第3空間を画定する部材である。第1装置101が備える第3部23によって画定される第3空間は、第1部21側の頂面と排気浄化ユニット11側の底面とを有する略円錐台状の形状を有する流路である。このような第3空間を画定する第3部23は、第3空間の第1部21側の頂面及び第3空間の側面を画定する板状の部材によって構成されており、略円錐台状の流路である第3空間の形状に対応する略円錐台状の外形を有する。
【0042】
但し、第3部23の構成は、排気浄化部10のケース12の上流側の端部と第1部21との間に配設されてケース12の上流側の端部を塞ぐと共に第1空間から排気浄化ユニット11へ排気を供給する流路である第3空間を画定することが可能である限り上記に限定されない。従って、第3空間の形状もまた、第1空間から排気浄化ユニット11へ排気を供給することが可能である限り上記に限定されない。
【0043】
更に、第1装置101が備える第1部21の第3部23側であり且つ第1直線L1側である位置には、第1空間に沿って延在し且つ第1空間と第3空間とを連通するスリット21sが形成されている。第1装置101において、排気浄化ユニット11は上述したように円柱状の形状を有し、スリット21sは第1直線L1を中心とする円形の形状を有する。即ち、スリット21sは排気浄化ユニット11と同軸状に配置された円形の形状を有する。
【0044】
加えて、第1部21は、第1空間の横断面積が上流側から下流側へ進むにつれて小さくなるように構成されている。第1装置101においては、第1空間の横断面の面積重心と第1直線L1との距離Rに対する第1空間の横断面積Aの比率であるA/R比が上流側から下流側へ進むにつれて小さくなるように第1部21が構成されている。
【0045】
上記のように第1空間の横断面が上流側から下流側へ進むにつれて小さくなることにより、第1空間の横断面積が上流側から下流側まで一定である場合に比べて、スリットを経由して第1空間から第3空間へと流れ込む排気の流量分布をより均一なものとすることができる。また、このような構成によれば、前述した従来技術に係る排気浄化装置において生ずるような内燃機関の回転速度が高い(排気の流速が高い)場合における排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりが不均一となる問題を低減することができる。
【0046】
〈効果〉
以上のように、第1装置によれば、従来装置に比べて、内燃機関の回転速度の高低に拘わらず(即ち、内燃機関から排出される排気の流速の高低に拘わらず)排気浄化触媒及び/又はフィルタ等の排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりをより均一化することができる。
【0047】
《第2実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第2実施形態に係る排気浄化装置(以降、「第2装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0048】
上述したように、第1装置においては、(環状の流路である)第1空間に沿って延在し且つ第1空間と第3空間とを連通するスリットが第1部の第3部側に形成されており、第1空間の横断面積が上流側から下流側へ進むにつれて小さくなるように第1部が構成されている。従って、第1装置によれば、従来装置に比べて、内燃機関の回転速度の高低に拘わらず(即ち、内燃機関から排出される排気の流速の高低に拘わらず)排気浄化触媒及び/又はフィルタ等の排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりをより均一化することができる。
【0049】
しかしながら、排気浄化ユニットの前端面へと供給される排気は、上記スリットを経由して第1空間から第3空間へと流れ込む。従って、排気浄化ユニットの前端面へと供給される排気の少なくとも一部は、上記スリットの形状に対応する環状の形状を有する領域に集中的に流れる傾向がある。また、例えば第3空間を画定する側壁によるコアンダ効果及び/又は環状の流路である第1空間から第3空間へと流れ込む排気の旋回に伴う遠心力等の作用により、排気浄化ユニットの前端面へと供給される排気の少なくとも一部は、第3空間を画定する側壁に沿って下流側へと流れる傾向がある。更に、これらのような傾向は、内燃機関の回転速度が高いほど(即ち、内燃機関から排出される排気の流速が高いほど)強くなる傾向がある。
【0050】
従って、排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりを均一化する観点からは、第3空間における排気の流れ方向及び/又は流速分布を変化させることが可能な手段を更に設けて、排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりをより積極的に均一化することが好ましい。
【0051】
〈構成〉
そこで、第2装置は、上述した第1装置であって、第3空間における排気の流れ方向及び/又は流速分布を変化させるように構成された部材及び/又は機構である風向調整手段を更に備える、排気浄化装置である。
【0052】
風向調整手段の構成は、第3空間における排気の流れ方向及び/又は流速分布を変化させて排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりをより均一化することが可能である限り特に限定されない。風向調整手段の具体的な構成については、幾つかの変形例を例示しながら以下に詳細に説明する。
【0053】
〈変形例2-1〉
上述したように、排気浄化ユニットの前端面へと供給される排気の少なくとも一部は、上記スリットの形状に対応する環状の形状を有する領域に集中的に流れたり、第3空間を画定する側壁に沿って下流側へと流れたりする傾向がある。その結果、排気浄化ユニットの前端面の中央領域に対して供給される排気の量が相対的に少なくなり、排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりが不均一となる虞がある。その結果、例えば、前述したように、排気浄化触媒の温度を均一に上昇させることが困難となったりフィルタの局所的な詰まりが生じたりする虞がある。
【0054】
そこで、変形例2-1に係る第2装置においては、第3空間の上記スリットよりも第1直線側の領域に開口するように形成された開口部を第3部が更に備える。換言すれば、第3部が備える開口部は、環状のスリットの内側の領域において第3空間に開口している。加えて、上記開口部を介して第2空間と第3空間とを連通する排気の流路である第4空間を画定する部材である第4部を排気供給部が更に備える。即ち、変形例2-1に係る第2装置が備える風向調整手段は、第3空間の上記スリットよりも第1直線側の領域に開口する開口部を介して第2空間と第3空間とを連通する排気の流路である第4空間を画定する部材である第4部を含む。
【0055】
図3は、変形例2-1に係る第2装置の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
図4は、
図3に例示する変形例2-1に係る第2装置を
図3とは異なる角度から観察した場合における模式的な斜視図である。
図5は、
図3に例示する変形例2-1に係る第2装置が備える排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を含む平面により切断した第2装置を切断面側から観察した状態を例示する模式図である。
【0056】
図3乃至
図5に例示する変形例2-1に係る第2装置102aは、第3空間のスリット21sよりも第1直線L1側の領域に開口するように形成された開口部23aを第3部23が更に備え、開口部23aを介して第2空間と第3空間とを連通する排気の流路である第4空間を画定する部材である第4部24を排気供給部20が更に備える点を除き、
図1及び
図2に例示した第1装置101と同様の構成を有する。
【0057】
第2装置102aにおいては、第2空間へ流れ込んだ排気の一部は第1部21によって画定される第1空間を経由してスリット21sから第3空間へと導かれ、残りの排気は第4部24によって画定される第4空間を経由して開口部23aから第3空間へと導かれる。従って、このような開口部23a及び第4部24を備えない場合に比べて、排気浄化ユニット11の前端面の中央領域に対して供給される排気の量が増大し、排気浄化ユニット11の前端面への排気の当たりがより均一となる。その結果、例えば、前述したように、排気浄化触媒の温度を均一に上昇させることが困難となったりフィルタの局所的な詰まりが生じたりする問題を低減することができる。
【0058】
尚、開口部23aは、例えば、
図5の(a)に例示するように第3空間に開口する単純な穴であってもよく、或いは
図5の(b)に例示するように第3空間において開口部23aの周縁部から排気浄化ユニット11の前端面に向かって突設されたノズルを備えていてもよい。また、後者の場合、ノズルは、排気浄化ユニット11の前端面に近付くほど横断面が小さくなる所謂「コンバージェント型」であっても、排気浄化ユニット11の前端面に近付くほど横断面が大きくなる所謂「ダイバージェント型」であっても、一定の横断面を有する直管型(ストレート型)であってもよい。更に、ノズルは、コンバージェント型の部分、ダイバージェント型の部分及び直管型の部分からなる群より選ばれる2つ以上の部分の組み合わせによって構成されていてもよい。
【0059】
開口部23aの大きさ及び形状並びに(開口部23aがノズルを備える場合における)ノズルの形状(例えば、横断面積及び長さ等)は、例えば、想定される内燃機関の回転速度(排気の流量)等に応じて適宜定めることができる。
【0060】
好ましくは、第4部は、第4空間に流れる排気の流量を増減するように構成された流量調整機構を更に備える。流量調整機構の構成は、第4空間に流れる排気の流量を増減することが可能である限り特に限定されない。例えば、流量調整機構は、第4空間に介装された弁(例えば、開閉弁及び流量制御弁等)であってもよく、或いは第2空間から第4空間が分岐する箇所に設けられた三方弁であってもよい。
【0061】
上記のような流量調整機構によれば、第1部21によって画定される第1空間を経由してスリット21sから第3空間へと導かれる排気の流量と第4部24によって画定される第4空間を経由して開口部23aから第3空間へと導かれる排気の流量との比を調整することができる。従って、例えば、その時々の内燃機関の回転速度(即ち、内燃機関から排出される排気の流速)に応じて、流量調整機構を制御して、スリット21sから第3空間へと導かれる排気の流量と開口部23aから第3空間へと導かれる排気の流量との比を調整することができる。その結果、このような流量調整機構を備えない場合に比べて、排気浄化ユニット11の前端面への排気の当たりを更に均一化することができる。
【0062】
より好ましくは、流量調整機構は、スリット21sから第3空間へと導かれる排気の流量に対する開口部23aから第3空間へと導かれる排気の流量の比を、100:0から0:100の範囲内において連続的又は段階的に変更することができるように構成されている。このような構成によれば、例えば、スリット21sから第3空間へと導かれる排気のみによって排気浄化ユニット11の前端面への排気の当たりを均一化することが可能である場合は第4空間に流れる排気の流量を0(ゼロ)とし、スリット21sから第3空間へと導かれる排気のみによっては排気浄化ユニット11の前端面の中央領域に対して供給される排気の量が相対的に少なく排気浄化ユニット11の前端面への排気の当たりが不均一となる場合は第4空間に流れる排気の流量を増大させて、排気浄化ユニット11の前端面への排気の当たりを均一化することができる。また、例えば内燃機関の冷間始動時等、排気浄化触媒の温度を活性化温度に迅速に到達させる必要がある場合は、第4空間に流れる排気の流量を増大させて、排気浄化触媒の中央領域の温度を急速に上昇させることができる。
【0063】
〈変形例2-2〉
上述したように、第1装置においては、(環状の流路である)第1空間に沿って延在し且つ第1空間と第3空間とを連通するスリットが第1部の第3部側に形成されている。より好ましくは、当該スリットは、第1部の第3部側であり且つ第1直線側である位置に形成されている。
【0064】
従って、例えば
図6の(a)及び(b)に例示するように、スリット21sを介して第1空間から第3空間へと流れ込む排気の少なくとも一部の流れのベクトルは、スリット21sから第1直線L1へと向かう成分を含む(太い実線によって描かれた矢印を参照)。このようにスリット21sから第1直線L1に向かって流れる排気は、やがては第1直線L1の近傍において互いに衝突した後に、排気浄化ユニット11の前端面へと導かれる。
【0065】
しかしながら、排気浄化ユニットの前端面へと排気を効率的に導く観点からは、スリット21sを介して第1空間から第3空間へと流れ込む排気の流れの向きを第1直線L1に平行であり且つ排気浄化ユニット11の前端面へ向かう向きに近付けることが好ましい。
【0066】
そこで、変形例2-2に係る第2装置は、上述した変形例2-1に係る第2装置を始めとする第2装置であって、第3部の内壁面のスリットよりも第1直線側の領域において排気浄化ユニット側に向かって突設された筒状の部材である内側風向調整部材を第3部が更に備える、排気浄化装置である。換言すれば、第3部が備える内側風向調整部材は、第3空間を画定する内壁面の環状のスリットよりも内側の領域において排気浄化ユニット11の前端面に向かって突出する筒状の部材である。即ち、変形例2-2に係る第2装置が備える風向調整手段は、第3部の内壁面のスリットよりも第1直線側の領域において排気浄化ユニット側に向かって突設された筒状の部材である内側風向調整部材を含む。
【0067】
内側風向調整部材の構成は、第3部の内壁面のスリットよりも第1直線側の領域において排気浄化ユニット側に向かって突設された筒状の部材である限り、特に限定されない。内側風向調整部材は、コンバージェント型であっても、ダイバージェント型であっても、直管型(ストレート型)であってもよい。更に、内側風向調整部材は、コンバージェント型の部分、ダイバージェント型の部分及び直管型の部分からなる群より選ばれる2つ以上の部分の組み合わせによって構成されていてもよい。
【0068】
図7は、変形例2-2に係る第2装置が備える排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を含む平面により切断した第2装置を切断面側から観察した状態を例示する模式図である。
図7に例示する変形例2-2に係る第2装置102bは、第3部23の内壁面のスリット21sよりも第1直線L1側の領域において排気浄化ユニット11側に向かって突設された筒状の部材である内側風向調整部材23diを第3部23が更に備える点を除き、
図2に例示した第1装置101と同様の構成を有する。
【0069】
より詳しくは、
図7の(a)に例示する変形例2-2に係る第2装置102bは、直管型の筒状の部材によって構成される内側風向調整部材23diを第3部23が更に備える。一方、
図7の(b)に例示する変形例2-2に係る第2装置102bは、排気浄化ユニット11の前端面に近付くほど横断面が小さくなるコンバージェント型であって排気浄化ユニット11の前端面に近付くほど側壁の傾斜角が第1直線L1に平行な角度に近付く筒状の部材によって構成される内側風向調整部材23diを第3部23が更に備える。換言すれば、
図7の(b)に例示する第2装置102bが備えるコンバージェント型の内側風向調整部材23diは、第1直線L1を含む平面による断面において、排気浄化ユニット11の前端面に近付くにつれて第1直線L1に対する傾斜角が小さくなる曲線である。
【0070】
上記のような構成を有する第2装置102bにおいては、スリット21sを介して第1空間から第3空間へと流れ込む排気のうち第1直線L1へと向かう排気は、内側風向調整部材23diに接触し、排気浄化ユニット11の前端面へ向かう向きに偏向される(太い実線によって描かれた矢印を参照)。その結果、第2装置102bによれば、スリット21sを介して第1空間から第3空間へと流れ込む排気の流れの向きを第1直線L1に平行であり且つ排気浄化ユニット11の前端面へ向かう向きに近付けて、排気浄化ユニット11の前端面へと排気を効率的に導くことができる。
【0071】
〈変形例2-3〉
ところで、上述した内側風向調整部材23diの排気浄化ユニット11の前端面側の先端は塞がっていてもよい。換言すれば、内側風向調整部材23diは、第3部23の内壁面のスリット21sよりも第1直線L1側の領域において排気浄化ユニット11側に向かって突出する有底筒状の部材によって構成された突起の側面によって構成されていてもよい。
【0072】
そこで、変形例2-3に係る第2装置は、上述した変形例2-2に係る第2装置であって、第3部の内壁面の上記スリットよりも第1直線側の領域において排気浄化ユニット側に向かって突出する突起を第3部が更に備え、当該突起の側面によって内側風向調整部材が構成されている、排気浄化装置である。即ち、変形例2-3に係る第2装置が備える風向調整手段は、第3部の内壁面の上記スリットよりも第1直線側の領域において排気浄化ユニット側に向かって突出する突起の側面によって構成された内側風向調整部材を含む。
【0073】
図8は、変形例2-3に係る第2装置が備える排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を含む平面により切断した第2装置を切断面側から観察した状態を例示する模式図である。
図8の(a)に例示する変形例2-3に係る第2装置102cは、第3部23の内壁面のスリット21sよりも第1直線L1側の領域において排気浄化ユニット11側に向かって突出する突起23pの側面によって内側風向調整部材23diが構成されている点を除き、
図7の(b)に例示した変形例2-2に係る第2装置102bと同様の構成を有する。
【0074】
上記のような構成を有する変形例2-3に係る第2装置102cにおいても、上述した第2装置102bと同様に、スリット21sを介して第1空間から第3空間へと流れ込む排気のうち第1直線L1へと向かう排気は、突起23pの側面である内側風向調整部材23diに接触し、排気浄化ユニット11の前端面へ向かう向きに偏向される。その結果、第2装置102cによっても、スリット21sを介して第1空間から第3空間へと流れ込む排気の流れの向きを第1直線L1に平行であり且つ排気浄化ユニット11の前端面へ向かう向きに近付けて、排気浄化ユニット11の前端面へと排気を効率的に導くことができる。
【0075】
尚、上記のような構成を有する変形例2-3に係る第2装置においても、前述した変形例2-1に係る第2装置と同様に、第3空間のスリットよりも第1直線側の領域に開口するように形成された開口部を第3部が更に備え、開口部を介して第2空間と第3空間とを連通する排気の流路である第4空間を画定する部材である第4部を更に備えていてもよい。
図8の(b)は、このような構成を有する変形例2-3に係る第2装置が備える排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を含む平面により切断した第2装置を切断面側から観察した状態を例示する模式図である。
【0076】
図8の(b)に例示する変形例2-3に係る第2装置102cにおいては、第3空間のスリット21sよりも第1直線L1側の領域において排気浄化ユニット11側に向かって突出する突起23pを備え、突起23pの頂面において開口部23aが開口しており、開口部23aを介して第2空間と第3空間とを連通する排気の流路である第4空間が第4部24によって画定されている。このような構成を有する変形例2-3に係る第2装置102cにおいては、突起23pの側面によって構成される内側風向調整部材23diと第4部24との併用により、スリット21sを介して第1空間から第3空間へと流れ込む排気の流れの向きを第1直線L1に平行であり且つ排気浄化ユニット11の前端面へ向かう向きにより効果的に近付けて、排気浄化ユニット11の前端面へと排気を更に効率的に導くことができる(太い実線によって描かれた矢印を参照)。
【0077】
〈変形例2-4〉
ところで、上述したように、環状の流路である第1空間から第3空間へと流れ込む排気の旋回に伴う遠心力の作用により、排気浄化ユニットの前端面へと供給される排気の少なくとも一部は、第3空間を画定する側壁に沿って下流側へと流れる傾向がある。更に、これらのような傾向は、内燃機関の回転速度が高いほど(即ち、内燃機関から排出される排気の流速が高いほど)強くなる傾向がある。
【0078】
従って、排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりを均一化する観点からは、第1空間から第3空間へと流れ込む排気の旋回を抑制して、当該排気の流れの向きを第1直線L1に平行であり且つ排気浄化ユニット11の前端面へ向かう向きに近付けることが好ましい。
【0079】
そこで、変形例2-4に係る第2装置は、上述した変形例2-1乃至変形例2-3に係る第2装置を始めとする第2装置であって、少なくとも上記スリットの下流側に隣接する領域に設けられた複数のフィンを更に備える、排気浄化装置である。更に、上記フィンは、上記スリットから第3空間へ流れ込む排気に接触して当該排気の向きを第1直線に平行であり且つ排気浄化ユニットへ向かう向きに近付けるように構成されている。即ち、変形例2-4に係る第2装置が備える風向調整手段は、少なくとも上記スリットの下流側に隣接する領域に設けられ且つ上記スリットから第3空間へ流れ込む排気に接触して当該排気の向きを第1直線に平行であり且つ排気浄化ユニットへ向かう向きに近付けるように構成された複数のフィンを含む。
【0080】
上記フィンの構成は、スリットから第3空間へ流れ込む排気に接触して当該排気の向きを第1直線に平行であり且つ排気浄化ユニットへ向かう向きに近付けることが可能である限り、特に限定されない。上記フィンの具体的な構成(例えば、個数、個々のフィンの大きさ、及びフィンが配設される領域等)は、例えば、想定される内燃機関の回転速度(排気の流量)、第1空間の環状の形状の半径、及びスリットの幅等に応じて適宜定めることができる。
【0081】
例えば、スリットから第3空間へ流れ込む排気に接触する上記フィンの面は、第1直線に平行な平面であってもよい。換言すれば、上記フィンは、第1直線に平行な平板状の部材によって構成されていてもよい。或いは、スリットから第3空間へ流れ込む排気に接触する上記フィンの面は、第1直線に対して傾斜している平面であってもよい。換言すれば、上記フィンは、第1直線に対して所定の角度をなす平板状の部材によって構成されていてもよい。この場合、スリットから第3空間へ流れ込む排気に接触する上記フィンの面は、上記フィンを構成する平板状の部材の2つの主面のうち排気浄化ユニットの前端面に対向する側の面である。
【0082】
或いは、スリットから第3空間へ流れ込む排気に接触する上記フィンの面は、上流側から下流側へ進むにつれて第1直線に対する傾斜角が小さくなるように構成された曲面であってもよい。この場合、スリットから第3空間へ流れ込む排気に接触する上記フィンの面は、上記フィンを構成する平板状の部材の2つの主面のうち排気浄化ユニットの前端面に対向する側の凹面である。
【0083】
図9は、変形例2-4に係る第2装置が備える排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を含む平面により切断した第2装置を切断面側から観察した状態を例示する模式図である。
図10は、
図9に例示する変形例2-4に係る第2装置の切断面を所定の仰角にて排気浄化ユニット側から観察した状態を例示する模式図である。
図11は、
図9及び
図10に例示する変形例2-4に係る第2装置を第1直線に平行な方向において第1部側から観察した状態を例示する模式図である。尚、
図11においては、変形例2-4に係る第2装置の構成についての理解を容易にすることを目的として、本来であれば外部からは観察されないスリットが太い実線によって示されている。
【0084】
図9乃至
図11に例示する変形例2-4に係る第2装置102dは、スリット21sの内部及びスリット21sの下流側に隣接する領域に設けられた複数のフィン23fを更に備える点を除き、
図8の(a)に例示した変形例2-3に係る第2装置102cと同様の構成を有する。フィン23fは、スリット21sから第3空間へ流れ込む排気に接触して当該排気の向きを第1直線L1に平行であり且つ排気浄化ユニット11へ向かう向きに近付けるように構成されている。
【0085】
より詳しくは、
図9乃至
図11に例示する第2装置102dが備えるフィン23fは、30°の間隔を空けて第1直線L1に対して軸対称に配設された第1直線L1に平行な12枚の平板状の部材によって構成されている。即ち、第2装置102dにおいては、スリット21sから第3空間へ流れ込む排気に接触するフィン23fの面は、第1直線L1に平行な平面である。
【0086】
上記のような構成を有する第2装置102dにおいては、環状の流路である第1空間から第3空間へと流れ込む排気の旋回がフィン23fとの接触により抑制され、旋回に伴う遠心力の作用により第3空間を画定する側壁に沿って下流側へと排気が流れる傾向を低減することができる。その結果、スリット21sを介して第1空間から第3空間へと流れ込む排気の流れの向きを第1直線L1に平行であり且つ排気浄化ユニット11の前端面へ向かう向きにより効果的に近付けて、排気浄化ユニット11の前端面へと排気を更に効率的に導くことができる(太い実線によって描かれた矢印を参照)。
【0087】
〈変形例2-5〉
ところで、上述したように、排気浄化ユニットの前端面へと供給される排気は、上記スリットを経由して環状の流路である第1空間から第3空間へと流れ込む。従って、排気浄化ユニットの前端面へと供給される排気の少なくとも一部は、例えば第3空間を画定する側壁によるコアンダ効果及び/又は環状の流路である第1空間から第3空間へと流れ込む排気の旋回に伴う遠心力等の作用により、排気浄化ユニットの前端面へと供給される排気の少なくとも一部は、第3空間を画定する側壁に沿って下流側へと流れる傾向がある。更に、これらのような傾向は、内燃機関の回転速度が高いほど(即ち、内燃機関から排出される排気の流速が高いほど)強くなる傾向がある。
【0088】
従って、排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりを均一化する観点からは、第3空間における排気の流れ方向及び/又は流速分布を変化させることが可能な手段を更に設けて、排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりをより積極的に均一化することが好ましい。
【0089】
そこで、変形例2-5に係る第2装置は、上述した変形例2-1乃至変形例2-4に係る第2装置を始めとする第2装置であって、第3部の内壁面の上記スリットよりも第1直線の反対側の領域において排気浄化ユニット側に向かって突設された筒状の部材である外側風向調整部材を第3部が更に備える、排気浄化装置である。換言すれば、第3部が備える外側風向調整部材は、第3空間を画定する内壁面の環状のスリットよりも外側の領域において排気浄化ユニット11の前端面に向かって突出する筒状の部材である。即ち、変形例2-5に係る第2装置が備える風向調整手段は、第3部の内壁面の上記スリットよりも第1直線の反対側の領域において排気浄化ユニット側に向かって突設された筒状の部材である外側風向調整部材を含む。
【0090】
外側風向調整部材の構成は、第3部の内壁面のスリットよりも第1直線の反対側の領域において排気浄化ユニット側に向かって突設された筒状の部材である限り、特に限定されない。外側風向調整部材は、コンバージェント型であっても、ダイバージェント型であっても、直管型(ストレート型)であってもよい。更に、外側風向調整部材は、コンバージェント型の部分、ダイバージェント型の部分及び直管型の部分からなる群より選ばれる2つ以上の部分の組み合わせによって構成されていてもよい。
【0091】
但し、排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりを均一化する観点からは、上記スリットを経由して環状の流路である第1空間から第3空間へと流れ込んだ排気が、排気浄化ユニットの前端面における特定の領域(例えば、中央領域)に集中したり上記スリットの形状に対応する環状の形状を有する領域に集中したりするのではなく、排気浄化ユニットの前端面の全体に出来る限り均一に供給されることが好ましい。
【0092】
従って、好ましくは、外側風向調整部材の少なくとも排気浄化ユニット側の端部近傍の部分は、排気浄化ユニットの前端面に近付くほど横断面が大きくなるダイバージェント型の部材によって構成されている。より好ましくは、外側風向調整部材は、排気浄化ユニット側の端部近傍の部分がダイバージェント型の部材によって構成されており且つその他の部分が直管型の部材によって構成されている所謂「裾広がり型」の部材によって構成されている。
【0093】
図12は、変形例2-5に係る第2装置が備える排気浄化ユニットの軸を含む直線である第1直線を含む平面により切断した第2装置を切断面側から観察した状態を例示する模式図である。
図12に例示する変形例2-5に係る第2装置102eは、第3部23の内壁面のスリット21sよりも第1直線L1の反対側の領域において排気浄化ユニット11側に向かって突設された筒状の部材である外側風向調整部材23doを第3部23が更に備える点を除き、
図8の(a)に例示した第2装置102cと同様の構成を有する。
【0094】
より詳しくは、
図12に例示する変形例2-5に係る第2装置102eが備える外側風向調整部材23doは、排気浄化ユニット11側の端部近傍の部分がダイバージェント型の部材によって構成されており且つその他の部分が直管型の部材によって構成されている裾広がり型の部材によって構成されている。
【0095】
上記のような構成を有する第2装置102eにおいては、スリット21sを介して第1空間から第3空間へと流れ込む排気のうち第3空間を画定する第3部23の側壁に沿って下流側へと流れようとする排気は、先ず、外側風向調整部材23doの基端側(図における上側)の直管型の部分に接触し、排気浄化ユニット11の前端面へ向かう向き(第1直線L1に平行な向き)へと偏向される。当該排気は、次に、外側風向調整部材23doの先端側(図における下側)のダイバージェント型の部分に接触し、排気浄化ユニットの前端面の全体に均一に広がるように偏向される(太い実線によって描かれた矢印を参照)。その結果、第2装置102eによれば、スリット21sを介して第1空間から第3空間へと流れ込む排気の流れの向きを第1直線L1に平行であり且つ排気浄化ユニット11の前端面へ向かう向きにより効果的に近付けて、排気浄化ユニット11の前端面へと排気を更に効率的に導くことができる。
【0096】
〈効果〉
以上、種々の変形例を示しつつ本発明の第2実施形態に係る排気浄化装置(第2装置)について詳細に説明してきた。上記説明から明らかであるように、第2装置によれば、第3空間における排気の流れ方向及び/又は流速分布を風向調整手段によって変化させることにより、排気浄化ユニットの前端面への排気の当たりをより積極的に均一化することができる。
【0097】
《第3実施形態》
以下、本発明の第3実施形態に係る排気浄化装置(以降、「第3装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0098】
本明細書の冒頭において述べたように、環境保護の観点からは、排気浄化触媒の温度を活性化温度へと迅速に到達させて、所期の排気浄化機能を迅速に発揮させ始めることが好ましい。一方、例えば全負荷状態(WOT)等の高負荷状態においては、高温の排気により排気浄化触媒及び/又はフィルタ等の排気浄化ユニットが過度に加熱されて、例えば排気浄化ユニットの劣化が早まる等の問題に繋がる虞がある。また、省エネルギの観点からは、内燃機関からの排熱エネルギを回収して、例えば、寒冷時における内燃機関の暖機時間を短縮したり、キャビンスペース等の暖房効率を改善したりすることが好ましい。
【0099】
〈構成〉
そこで、第3装置は、上述した第1装置及び種々の変形例を含む第2装置を始めとする本発明装置であって、内燃機関の冷媒の流路である第5空間を画定する部材である第5部を排気供給部が更に備える、排気浄化装置である。第5部は、少なくとも第1空間に流れる排気と第5空間に流れる冷媒との間における熱交換が可能であるように構成されている。
【0100】
上記冷媒は、典型的には所謂「冷却水」であるが、内燃機関を冷却するための冷媒である限り、特に限定されない。例えば、内燃機関が油冷式の冷却機構を備える場合における冷媒は油である。また、第5部の構成は、少なくとも第1空間に流れる排気と第5空間に流れる冷媒との間における熱交換が可能である限り、特に限定されない。典型的には、第5部は、少なくとも第1空間を画定する第1部の隔壁に冷媒が接触するように冷媒の流路を画定する部材である。この場合、第1部の隔壁を介して第1空間に流れる排気と第5空間に流れる冷媒との間における熱交換が行われる。
【0101】
尚、排気と冷媒との間の熱交換は、必ずしも第1空間に流れる排気と冷媒との熱交換に限定されるものではなく、例えば、第2空間及び/又は第3空間に流れる排気と冷媒との熱交換も可能であるように第5部が構成されていてもよい。
【0102】
〈効果〉
以上のように、第3装置は、第5部によって画定される第5空間に流れる冷媒と少なくとも第1空間に流れる排気との間における熱交換が可能であるように構成された第5部を備える。従って、例えば高負荷状態における極めて高温の排気によって排気浄化ユニットが過度に加熱される虞がある場合においても、上記熱交換によって排気の温度を下げ、例えば排気浄化ユニットの劣化が早まる等の問題を低減することができる。また、第5部を所謂「ヒートコレクタ」として利用することにより、内燃機関からの排熱エネルギを回収して、例えば、寒冷時における内燃機関の暖機時間を短縮したり、キャビンスペース等の暖房効率を改善したりすることができる。
【0103】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び変形例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び変形例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0104】
10…排気浄化部、11…排気浄化ユニット、12…ケース、13…保持部材、20…排気供給部、21…第1部、21s…スリット、22…第2部、22f…フランジ、23…第3部、23a…開口部、23di…内側風向調整部材、23do…外側風向調整部材、23f…フィン、23p…突起、24…第4部、101,102a,102b,102c,102d,102e…排気浄化装置。