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  • 特許-エンジン冷却システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】エンジン冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F01P 7/08 20060101AFI20230224BHJP
   F01P 5/04 20060101ALI20230224BHJP
   F01M 5/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
F01P7/08 G
F01P5/04 D
F01M5/00 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019529524
(86)(22)【出願日】2017-12-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2017081197
(87)【国際公開番号】W WO2018100163
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】102016000122590
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】マリオッティ,ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】フレスキ,ジャコモ
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特公昭43-001455(JP,B1)
【文献】英国特許出願公告第01444422(GB,A)
【文献】実開昭51-147834(JP,U)
【文献】特開2016-044656(JP,A)
【文献】特開2010-229825(JP,A)
【文献】実開平03-032120(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 7/08
F01P 5/04
F01M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチ(11)を用いて、作動シャフト(4)の遠位端部に固定された冷却ファン(8)を備え、
前記作動シャフト(4)が、その内部に、前記クラッチ(11)の作動手段を収容したハウジング(12)を備え、
前記作動手段が、エンジン内を循環する流体温度に感応するものである
内燃機関用冷却システムであって、
前記作動手段が、温度が上昇した時に容量を増やす熱膨張性材料を有し、かつ、第一スプリング(19)を介して前記クラッチ(11)を作動させるように構成され、
前記第一スプリング(19)が、前記ハウジング(12)内に配置され、かつ、前記作動手段と前記クラッチ(11)との間に介在され、
前記クラッチ(11)を作動させるために、前記クラッチ(11)を非作動位置から作動位置へ変位するようにし、
前記第一スプリング(19)の遠位端部が、クラッチ(11)の第一クラッチ要素(20)に接続され、前記第一クラッチ要素(20)がそれに面する第二クラッチ要素(22)に作用し、前記第一クラッチ要素(20)と第二クラッチ要素(22)との間にクラッチ離脱スプリング(21)を設け、
前記作動シャフトが、冷却すべきエンジンのクランクシャフト(4)と一致し、
前記クランクシャフト(4)が、前記ハウジング(12)において前記流体を循環させるための少なくとも一つのダクト(13)を有し、
エンジンを循環する前記流体が、エンジンの潤滑油であり、
前記エンジンが空冷エンジンである
ことを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記作動手段が、ワックス作動装置(14)から成る
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記作動手段(14)が、内部が熱膨張性材料(16)で満たされたタンク(15)を有し、
熱膨張性材料(16)の膨張が、タンク(15)の範囲内でのピストン(17)の並進を決定し、
ピストン(17)が前記クラッチ(11)を作動する作動ロッド(18)に接続されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却システム。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の冷却システムを備えたオートバイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトを用いて回転状態におかれるシャフトによって、又は、クランクシャフト自身によって冷却ファンが制御される、例えば、スクータの、例えば、空冷式エンジンのようなエンジン冷却システムに関する。
【0002】
しかしながら、これは、クランクシャフトによって直接的又は間接的に制御されるファンを用いて冷却されるラジエターが設けられた、液体動作型、即ち、水冷式の冷却システムに対しても類似の解決手段が採用され得ることを意味している。
【0003】
この冷却システムは、冷却空気を吸い込むために設けられたファンと、内燃機関を始動するためにバッテリを充電し、かつ、オートバイが、所謂、ハイブリット推進式である時に駆動トルクを供給することが可能である発電エンジンとの両方がクランクシャフトに固定されたオートバイ用エンジンに効果的に使用され得る。
【0004】
内燃機関の軸線は、オートバイの長手方向に対して横方向であり、地面に対して水平に配置され、かつ、オートバイが直線に沿って前進している時に、固定された、即ち、操舵されない後輪の回転面によって実質的に画定される垂直面に対して直交している。
【0005】
有利には、エンジン用の冷却空気を吸い込むファンは、ファンを回転するクランクシャフトの一端に直接固定されるか、又は、クランクシャフトに隣接して平行であり、クランクシャフトによって回転駆動される別のシャフトに直接固定され得る。
【背景技術】
【0006】
それを通して空気を吸い込むラジエターガードの位置決めは、ラジエターを空気流に正面から当てるのではなく、接線方向に当てる。冷却空気は、その後、ファンによって吸い込まれる。ファンの軸線は、オートバイの前進運動から決められる空気流に対して実質的に直交している。従って、ファンは、エンジンの冷却要求を実行するための所定のヘッドを有することが求められる。
【0007】
ファンが、例えば、常用電気モータを用いたクランクシャフトの回転を通して独立して作動されない公知の例では、ファンの回転状態は、冷却要求に直接依存せずに、エンジンの回転状態によって決められる。
【0008】
しかしながら、エンジンは、例えば、始動段階において、又は、特に寒冷な気候において、そのクランクシャフトの回転状態に依存しない冷却要求を有する場合があることは明らかである。
【0009】
それにも拘わらず、このような状況において、ファンは、停止も減速もされず、ファンは、クランクシャフトの回転状態だけに依存して、所定のヘッドで空気流を吸い込み続けることになるため、如何なる利点も得ることができないばかりか、エンジンの燃料消費を不本意に増加させる。
【0010】
このような問題点は、冷却ファンの回転と、冷却されるエンジンの状態との間の直接的な相関関係をもって冷却ファンを回転させているときは何時でも生じ、従って、例えば、温度センサによって制御される別個の作動を与えないときは何時でも生じることが留意される。
【発明の概要】
【0011】
本発明の根底にある技術的課題は、従来技術を参照して説明した問題点を取り除くことができるエンジン冷却システムを提供することにある。
【0012】
このような問題点は、添付の特許請求の範囲の請求項1に特定されているような冷却システムによって解決される。
【0013】
特定の空冷式内燃機関の場合、シャフトは、一つ又は複数の専用ダクトを用いて、エンジンの潤滑油によって濡らされており、その結果、この場合でも、ファン係合と、エンジンの内部温度との間の直接的な相関関係が成り立つ。
【0014】
さらに、エンジンは、潤滑油循環ポンプの付加的なエネルギーセーブを可能にすることによって、短時間で、それ自身の動作温度に達することができる。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、前記動作手段は、温度が上昇するとそれ自身の体積を増加させるワックスのような熱膨張性材料を含み、その結果、ファンと係合させてクラッチを動作させることができる。特に、この材料は、好ましくはワックスであり得、ワックス作動装置を用いて活性化が実行される。
【0016】
本発明による冷却システムの主な利点は、エンジン内部温度の上昇にのみ依存した、受動的方法でファンを作動させ、低い温度では、ファンを回転させずに、燃費を最適化させることを可能にすることにある。
【0017】
以下、添付図面を参照して、限定的でなく、例として提供される好ましい実施例に従って、本発明を説明していく。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による冷却システムが組み込まれたオートバイの内燃機関の一部の部分断面斜視図である。
図2図1の冷却システムの詳細の部分断面斜視図である。
図3図2の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照すると、推進ユニット1(図1)が部分的に示されている。この実施例では、この推進ユニット1は空冷式単気筒内燃機関を備えている。図面には、ピストンロッド2及びそのクランク3が示されており、前記クランク3は、不図示の動力伝達装置に動力を伝達するクランクシャフト4に連結されている
【0020】
クランクシャフト4は、図示された構成要素と反対方向に突出しており、該クランクシャフト4は、各固定子巻線7を備えた電気モータ6に固定されている。
【0021】
クランクシャフト4は、オートバイの長手方向に対して横方向であり、地面に対して水平であり、かつ、オートバイが直線に従って前進する時に、固定された、即ち、操舵されない後輪の回転面によって実質的に画定される垂直面に対して直交している。
【0022】
モータ6は、単なる電流発生器であり得、電流を内燃機関に供給し、かつ、電流をサービス部材に供給し、及び/又はバッテリに給電することを可能にする。さらに、この電気モータは、始動装置として動作することができ、かつ、バッテリを充電し、内燃機関を始動し、オートバイが、所謂、ハイブリッド推進型である場合に、駆動トルクを供給することを可能にする発電エンジンとして動作し得る。
【0023】
この実施例では、推進ユニットは、冷却システムを有し、冷却システムは、クランクシャフト4に直接固定された冷却ファン8を備え、クランクシャフト4は、ファン作動用のシャフトとして動作される。ファン8は、オートバイの一側に配置されラジエターに面し、ラジエターは保護ガードを介して空気流を受ける。
【0024】
ファンは、クランクシャフトに関する様々な作動シャフトに固定され得、それにより、クランクシャフトに対してファンをオフセットして回転させることができる。
【0025】
ファン8は、吸引口10を有するケース9に収容されている。ファン8は、以下に説明するクラッチ11によってクランクシャフト4の一端に固定される。
【0026】
クランクシャフト4は、長手方向ハウジング12を備え、この長手方向ハウジング12は、内燃機関から、そこにファン8が固定される端部まで延びており、言い換えれば、クランクシャフト4のエンジンからファン8まで延びる部分は中空である。このようなハウジング12は、エンジン内を循環する流体の温度を感知し得る、クラッチ11を作動する手段を有する。
【0027】
特に、クランクシャフト4は、エンジンの近くに、前記ハウジング12で前記流体を循環させるダクトを有する。
【0028】
この実施例では、二つのバイパスダクト13が、クランクシャフトの両側に対称的に設けられており、両方共、エンジンの潤滑システムに浸漬され、エンジンの温度に依存する温度の潤滑油で満たされる。
【0029】
オイル、即ち、クランクシャフト内で循環する液体は、上述した作動手段に接触するように配置されており、作動手段は、この実施例では、ワックス作動装置14で構成されている。ワックス作動装置14は、その内部に、熱膨張性材料16、好ましくは、ワックスで満たされたタンク15を有する。
【0030】
この材料16の膨張により、スプリング19、特にコイルスプリングの力に対抗して、作動ロッド18に接続されたピストン17の並進運動が生じる。スプリング19は、前記ハウジング12の内部のクラッチ11とロッド18の遠位端との間に配置されている。
【0031】
特に、スプリング19は、ワックス作動装置14及びプラグ11との間に介装されている。この構成により、クランプ11への負荷を調整することが可能になり、従って、ファンに伝達されるトルクを比例的に調整することが可能になる。第一スプリング19の遠位端部は、クラッチ11の第一クラッチ要素20に接続されており、第一クラッチ要素20は、それに面する第二摩擦要素22に作用する。前記クラッチ要素20及び22の間に、第二クラッチスプリング21が設けられている。
【0032】
詳細には、ワックス作動装置14が作動する時、温度に応じて、クラッチは、非作動位置と作動位置との間で動かされる。詳細には、第一スプリング19を圧縮し、クラッチ11に作用するロッド18上での並進運動を実行する。
【0033】
従って、第一スプリング19は、クラッチ20及び22に対する負荷校正機能を実行し、ファントルクを比例的に調整することを可能にする。この方法により、ファントルクは、温度に従って調整される。
【0034】
温度が低い場合、ファンは動作しない。温度が閾値を超えて上昇すると、作動装置14が作動され、ファンは作動するが、スプリング19による減衰のために中間速度で作動する。温度が一定値に達すると、伝達トルクは最大になる。
【0035】
第一スプリング19は、また、作動ロッド18を余剰動作を可能になり、リザーバ15内の圧力が、破壊限界を超えることを防止する。
【0036】
第二クラッチ要素22は、ベアリング25を貸して、第三クラッチ要素23に接続されており、第三クラッチ要素23は、ファン8のハブ、即ち、ファン8の中心部分に接続されている。この接続により、ネジ24によってハブに固定されたファン8の回転を実現するようになる。
【0037】
上述の観点から、エンジンが冷えている時に、膨張性材料16の容量は、スプリング19及びクラッチ21の離脱スプリングによって伝達される力の影響によって、ピストン17及びロッド18が引っ込められるような量になる。クラッチ要素20及び23は、それらの間で分離され、ファン8は回転されない。
【0038】
エンジンの温度が所定の閾値を超えて上昇すると、オイルが膨張材料16を加熱し、スプリング19と反対方向に、ピストン17及びロッド18が並進移動される。クラッチ11内で、離脱スプリング21の力に抗して、クラッチ要素20及び23が互いに押し付け合い、ハブ23がファン8を回転させる。
【0039】
しかしながら、作動手段は、他の形態、例えば、硬質熱膨張性材料又はさらに別の材料に基づく形態であり得る。
【0040】
当業者であれば、追加条件の要求を満たすために、上述した冷却システムに対して、幾つかの追加の改良及び変更を加えることができるが、これらは全て、添付した特許請求の範囲によって定義された発明の保護範囲内で構成される。
図1
図2
図3