(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】スペーサ及びウェハ平坦化システムを有するパッドコンディショナ
(51)【国際特許分類】
B24B 53/017 20120101AFI20230224BHJP
B24B 37/12 20120101ALI20230224BHJP
B24B 37/10 20120101ALI20230224BHJP
B24B 53/12 20060101ALI20230224BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B24B53/017 A
B24B37/12 D
B24B37/10
B24B53/12 Z
H01L21/304 622M
(21)【出願番号】P 2019533320
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(86)【国際出願番号】 IB2017058053
(87)【国際公開番号】W WO2018116122
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-16
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】リン,イ-シャン
(72)【発明者】
【氏名】トゥ,ポー チェン
(72)【発明者】
【氏名】シャンティ,ノア オー.
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-034519(JP,A)
【文献】特表2015-524358(JP,A)
【文献】特開2002-208575(JP,A)
【文献】特表2014-510645(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0070756(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/017
B24B 37/12
B24B 37/10
B24B 53/12
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッドコンディショナであって、
露出領域と複数の取り付け領域とを有する表面を含むキャリアと、
前記キャリアの前記表面の前記取り付け領域上に配置された少なくとも1つの砥粒要素であって、それぞれが遠位端を有する複数の研磨作用部を含む作用面を有する前記少なくとも1つの砥粒要素と、
前記キャリアの前記表面上に配置され、前記露出領域の少なくとも一部を覆うスペーサであって、前記スペーサは、第1の表面と前記第1の表面の反対側の第2の表面とを有し、前記第2の表面は、前記キャリアの前記表面に隣接し、前記少なくとも1つの砥粒要素がコンディショニング対象のパッドの縁部から外れた場合に前記パッドの研磨面に接触する、前記スペーサと、を備え、
前記スペーサは傾斜縁を更に含み、前記傾斜縁と前記キャリアの前記表面との間の角度(A)は10度~80度であり、
前記傾斜縁は前記第1の表面から前記第2の表面へ前記スペーサの半径方向外側に延びており、
前記少なくとも1つの砥粒要素の最も高い研磨作用部の前記遠位端と前記キャリアの前記表面との間の距離(D1)は、前記スペーサの前記第1の表面と前記キャリアの前記表面との間の距離(D2)よりも大きい、パッドコンディショナ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの砥粒要素は、金属母材中の超砥粒グリット、少なくとも85重量%の量のセラミック材料を含むセラミック体、及びダイヤモンドコーティングを含むセラミック体のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のパッドコンディショナ。
【請求項3】
パッドコンディショナ用のスペーサであって、前記パッドコンディショナは、複数の取り付け領域と露出領域とを有する表面を有するキャリアと、前記取り付け領域上に配置された少なくとも1つの砥粒要素であって、それぞれが遠位端を有する複数の研磨作用部を有する前記少なくとも1つの砥粒要素と、を含み、前記スペーサは、第1の表面と、前記第1の表面の反対側の第2の表面であって、前記キャリアに隣接する第2の表面とを含み、前記少なくとも1つの砥粒要素がコンディショニング対象のパッドの縁部から外れた場合に前記パッドの研磨面に接触し、前記スペーサは傾斜縁を更に含み、前記傾斜縁と前記キャリアの前記表面との間の角度(A)は10度~80度であり、
前記傾斜縁は前記第1の表面から前記第2の表面へ前記スペーサの半径方向外側に延びており、前記砥粒要素の最も高い特徴部の前記遠位端と前記キャリアの前記表面との間の距離(D1)は、前記スペーサの前記第1の表面と前記キャリアの前記表面との間の距離(D2)よりも大きい、スペーサ。
【請求項4】
ウェハ化学機械平坦化システムであって、
プラテンと、
前記プラテン上に配置され、研磨面を有するパッドと、
パッドコンディショナと、を備え、前記パッドコンディショナは、
露出領域と複数の取り付け領域とを有する表面を含むキャリアと、
前記キャリアの前記表面の前記取り付け領域上に配置された少なくとも1つの砥粒要素であって、前記少なくとも1つの砥粒要素は、前記パッドに面する作用面であって、それぞれが遠位端を有する複数の研磨作用部を含む作用面を有する、前記少なくとも1つの砥粒要素と、
前記キャリアの表面上に配置され、前記露出領域の少なくとも一部を覆うスペーサであって、前記スペーサは第1の表面と前記第1の表面の反対側の第2の表面とを有し、前記第2の表面は前記キャリアの前記表面に隣接し、前記少なくとも1つの砥粒要素が前記パッドの縁部から外れた場合に前記パッドの研磨面に接触する、前記スペーサと、を含み、
前記スペーサは傾斜縁を更に含み、前記傾斜縁と前記キャリアの前記表面との間の角度(A)は10度~80度であり、
前記傾斜縁は前記第1の表面から前記第2の表面へ前記スペーサの半径方向外側に延びており、
前記砥粒要素の最も高い研磨作用部の前記遠位端は前記パッドの前記研磨面と接触しており、前記スペーサの前記第1の表面及び前記パッドの前記研磨面は、それらの間にギャップ(G)を有する、ウェハ化学機械平坦化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハ化学機械平坦化システムに対するパッドコンディショナのスペーサ、このようなスペーサを有するパッドコンディショナ、及びこのようなスペーサを有するパッドコンディショナを有するウェハ化学機械平坦化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化学機械平坦化(chemical mechanical planarization、CMP)はウェハ表面を平滑化するためのプロセスである。適切な研磨能力を得るために、パッドの表面を、パッドコンディショナがパッド表面上でパッド中心とパッドの縁との間を掃引することによってリフレッシュする。
【0003】
CMPプロセスではダイヤモンドディスクパッドコンディショナが広く用いられている。しかし、ダイヤモンドディスクのダイヤモンドグリットが均一に埋め込まれていないと、CMP動作中にウェハ損傷が生じる。このような問題を解決するために、新しいタイプの化学気相成長法(chemical vapor deposition、CVD)パッドコンディショナが開発された(米国特許出願公開第20150209932(A1)号(Duy K Lehuuら)、同第20150087212(A1)号(Patrick Doeringら)、同第20160074993(A1)号(Joseph Smithら)、同第20160121454(A1)号(Jun Ho Songら)、同第20090224370(A1)号(David E.Slutz)、同第20110250826(A1)号(So Young Yoonら)、及び米国特許第5921856(A)号(Jerry W.Zimmer))。
【発明の概要】
【0004】
ダイヤモンドディスクパッドコンディショナと比べて、CVDパッドコンディショナはいくつかの優位点を示す。例えば、ディスク寿命が長く、ウェハ欠陥率が低く、パッド摩耗レートが低く、ディスク一貫性が高い。しかし新しいタイプのパッドコンディショナのパッド表面上での掃引距離は、ダイヤモンドディスクパッドコンディショナの場合よりも短い。言い換えれば、新しいタイプのパッドコンディショナの掃引距離は、砥粒要素の数及び位置に制限される。
【0005】
問題を解決するために、本発明では、化学機械平坦化プロセスにおいて適用されるCVDパッドコンディショナ用のスペーサを提供することを目的とする。本発明のパッドコンディショナにより、パッドコンディショナがパッドの縁上でスピンするときのパッド縁損傷(例えば、巻き上がる)を回避することができる。また、パッド直径を越えて掃引するパッドコンディショナ部分に起因して、パッド上に残る要素に対する下向きの力が増えることによって、より深い侵入深さ及びパッド縁付近の摩擦が生じることを、軽減することができる。
【0006】
一実施形態では、本発明は、キャリアと、少なくとも1つの砥粒要素と、スペーサとを含むパッドコンディショナである。キャリアは露出領域と複数の取り付け領域とを有する表面を含む。砥粒要素はキャリアの表面の取り付け領域上に配置され、作用面を有する少なくとも1つの砥粒要素は、それぞれが遠位端を有する複数の特徴部を含む。スペーサはキャリアの表面上に配置され、露出領域の少なくとも一部を覆っており、スペーサは第1の表面と第1の表面の反対側の第2の表面とを有し、第2の表面はキャリアの表面に隣接している。少なくとも1つの砥粒要素の最も高い特徴部の遠位端とキャリアの表面との間の距離(D1)は、スペーサの第1の表面とキャリアの表面との間の距離(D2)よりも大きい。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、キャリアと少なくとも1つの砥粒要素とを含むパッドコンディショナ上に配置されたスペーサである。パッドコンディショナのキャリアは、複数の取り付け領域と露出領域とを有する表面を含む。砥粒要素は、キャリアの表面の取り付け領域上に配置されて、複数の特徴部を含む。スペーサは、互いに反対側の第1の表面及び第2の表面を含み、第2の表面はキャリアに隣接している。砥粒要素の最も高い特徴部の遠位端とキャリアの表面との間の距離(D1)は、スペーサの第1の表面とキャリアの表面との間の距離(D2)よりも大きい。
【0008】
更に他の実施形態では、本発明は、プラテンと、プラテン上に配置されて研磨面を有するパッドと、パッドコンディショナとを含むウェハ化学機械平坦化システムである。パッドコンディショナは、キャリアと、少なくとも1つの砥粒要素と、スペーサとを含む。キャリアは露出領域と複数の取り付け領域とを有する表面を含み、砥粒要素はキャリアの表面の取り付け領域上に配置されている。少なくとも1つの砥粒要素は、パッドに面する作用面であって、それぞれが遠位端を有する複数の特徴部を含む作用面を含む。スペーサはキャリアの表面上に配置されて、露出領域の少なくとも一部を覆っており、スペーサは、互いに反対側の第1の表面及び第2の表面を有し、第2の表面はキャリア表面に隣接している。砥粒要素の最も高い特徴部の遠位端はパッドの研磨面と接触しており、スペーサの第1の表面及びパッドの研磨面は、それらの間にギャップ(G)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態によるパッドコンディショナの概略図である。
【0010】
【0011】
【0012】
【
図4】本発明の一実施形態によるウェハ化学機械平坦化システムの概略図である。
【0013】
【
図5】本発明の第2の実施形態によるパッドコンディショナの平面図である。
【0014】
【
図6】本発明の第3の実施形態によるパッドコンディショナの平面図である。
【0015】
【
図7】本発明の第4の実施形態によるパッドコンディショナの平面図である。
【0016】
【
図8】本発明の第5の実施形態によるパッドコンディショナの平面図である。
【0017】
【
図9】本発明の第6の実施形態によるパッドコンディショナの平面図である。
【0018】
【
図10】本発明の第7の実施形態によるパッドコンディショナの平面図である。
【0019】
【
図11(a)】比較例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【
図11(b)】比較例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【
図11(c)】比較例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【
図11(d)】比較例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【
図11(e)】比較例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【
図11(f)】比較例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【
図11(g)】比較例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【
図11(h)】比較例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【0020】
【
図12(a)】実施例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【
図12(b)】実施例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【
図12(c)】実施例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【
図12(d)】実施例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【
図12(e)】実施例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【
図12(f)】実施例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【
図12(g)】実施例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【
図12(h)】実施例1についての、異なる位置におけるディスクの傾斜度を示す図である。
【0021】
【
図13】比較例1及び実施例1の傾斜度の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、添付の図面一式を用いて詳細に説明する。しかし、本発明は図面によって限定されず、他の形態で具体化してもよい。以下の説明の全体にわたって、同じ参照数字を用いて同じ又は同様の要素を示す。
【0023】
ここで
図1を参照して、化学機械平坦化(CMP)プロセス用のパッドコンディショナ1は、キャリア10と、少なくとも1つの砥粒要素12と、スペーサ14とを含む。キャリア10は、露出領域103と複数の取り付け領域105とを含む表面101を含む。この実施形態では、キャリア10は円形状であり、取り付け領域105はキャリア10の周囲の周りに等しい間隔で離間されている。
【0024】
砥粒要素12はキャリア10の表面101の取り付け領域103上に接着剤を介して配置されているが、キャリア10の取り付け領域103に砥粒要素12を固定するための方法は限定されない。砥粒要素12は、キャリア10の周囲の周りに等しい間隔で離間されている。この実施形態では、キャリア10上に5つの砥粒要素が取り付けられており、つまり砥粒要素12はキャリア10の周囲の周りに等しく72度で間隔をあけて離間されている。しかし、砥粒要素12の数は限定されず、異なる要件に従って調整することができる。他の実施形態では、わずか1つの砥粒要素を含んでいてもよいし、又は16もの砥粒要素を含んでいてもよい。
【0025】
砥粒要素12のうちの少なくとも1つは、複数の特徴部123が形成された作用面121を含む。この実施形態では、砥粒要素12はそれぞれ、作用面121上に形成された複数の特徴部123を有する(
図2及び
図3)。特徴部123はそれぞれ遠位端125を有し、砥粒要素12の最も高い特徴部123の遠位端125及びキャリア10の表面101は、それらの間に距離D1を有する。特徴部123は高精度な形状の特徴部であり、機械加工若しくは微細加工、ウォータージェット切断、射出成形、押出成形、微細複製、又はセラミック金型プレスなどの方法から形成することができる。しかし、特徴部123の形状は高精度な形状に限定されず、特徴部の形状は異なる研磨要件に従って変更することができる。本発明のいくつかの実施形態では、砥粒要素12には以下が含まれていてもよい。金属母材中の超砥粒グリット、少なくとも85重量%の量のセラミック材料を含むセラミック体、及びダイヤモンドコーティングを含むセラミック体。超砥粒グリットの例は立方晶窒化ホウ素(CBN)及びCVDダイヤモンドである。キャリア10及び砥粒要素12の詳細は、米国特許出願公開第20150209932(A1)号(Duy K.Lehuuら)に記載されている。なおこの文献は、本明細書において参照により組み込まれている。
【0026】
キャリア10及び砥粒要素12に加えて、パッドコンディショナ1はスペーサ14を備える。スペーサ14はキャリア10の表面101上に配置されて、露出領域103の少なくとも一部を覆っている。スペーサ14は、互いに反対側の第1の表面141及び第2の表面143を含んでおり、スペーサ14の第2の表面143はキャリアの表面101に隣接している(
図2に示す)。スペーサ14の第2の表面143は、例えば、3M(商標)VHB(商標)テープ又は3M(商標)SCOTCH-WELD(商標)エポキシ接着剤であるが、これらに限定されない接着剤を介してキャリア10に固定することができる。例えば、スペーサはキャリアと一体化することができる。キャリア10の表面101の露出領域103に対するスペーサ14の被覆率は、1.7%~100%の範囲であってもよい。
【0027】
この実施形態では、スペーサ14は5葉型の形状であり、周囲に複数の凹部145があって砥粒要素12を収容している。しかし、スペーサ14の形状は限定されない。
図5に示すように、スペーサ24は複数の開口部241を含んでいてもよく、各開口部241には砥粒要素12の1つが組み込まれている。スペーサ24の周囲は実質的に、キャリア10の外縁と位置合わせされているため、キャリア10の表面101の露出領域103に対するスペーサ24の被覆率は約100%である。
【0028】
図5~
図8を参照されたい。いくつかの他の実施形態では、スペーサ34、44、54は実質的に円形状又はリング状であり、キャリア10の周囲の内側に同心円状にキャリア上に配置されている。
図6に示すように、スペーサ34は砥粒要素12とほぼ同じサイズであり、キャリア10の中心に配置されている。言い換えれば、スペーサ34の中心はキャリア10の中心と位置が合っている。この実施形態では、キャリア10の直径は約107.95mmであり、砥粒要素12の直径は約13.6mmであり、したがって、キャリア10の露出領域103に対するスペーサ34の被覆率は約1.7%である。
【0029】
いくつかの他の実施形態では、スペーサをリング状とすることができる。
図7を参照されたい。スペーサ44は円環状であり、キャリア10上に同心円状にキャリア10の周囲の内側に配置されている。砥粒要素12はスペーサ44の内縁の内側に配置され、スペーサの外縁はキャリア10の周囲の内側にある。しかしリングのサイズは限定されず、例えば、
図8に示すように、円環状のスペーサ54は
図7のそれよりも小さく、スペーサ54の外縁の直径は、砥粒要素が配設される円の直径よりも小さい。
【0030】
更にいくつかの他の実施形態では、スペーサ64、74は複数のリブ641、741を含む。
図9及び
図10に示すように、スペーサ64は複数のリブ641を含み、リブ641、741のそれぞれは、キャリア10の周囲の周りに等しい間隔で離間され、1つの砥粒要素12が、隣接する2つのリブ641の間に配置される。言い換えれば、リブ641は放射状に配設されている。リブの形状は限定されず、例えば、矩形形状(
図9に示す)又は三角形(
図10に示す)とすることができる。また、リブ641は互いに離れていることもできるし(
図9に示す)又は互いに接触していることもできる(
図10に示す)。
【0031】
これらの実施形態により、キャリアの表面の露出領域に対するスペーサの被覆率は、1.7%~100%の範囲であることを理解されたい。例えば、1.7%、5.0%、10.0%、15.0%、20.0%、25.0%、30.0%、35.0%、40.0%、45.0%、50.0%、55.0%、60.0%、65.0%、70.0%、75.0%、80.0%、85.0%、90.0%、90.0%、100.0%、又は1.7%~100.0%のパーセンテージのいずれかである。
【0032】
ここで
図2を参照して、スペーサ14は傾斜縁147を更に含み、傾斜縁147とキャリア10の表面101との間の角度Aは10~80度の範囲である。別の実施形態では、角度Aは30~60度の範囲である。他の実施形態では、角度Aは約45度である。スペーサ14には厚さがあり、言い換えれば、キャリア10の表面101上にスペーサ14が配置されたときに、第1の表面141とキャリア10の表面101との間には距離D2が存在する。距離D2はおよそ2.9mm~3.5mmの範囲である。砥粒要素12の研磨能力に対するスペーサ14の影響を回避するために、スペーサ14の第1の表面141とキャリア10の表面101との間の距離D2は、砥粒要素12の作用面121上の最も高い特徴部123の遠位端125の間の距離D1よりも小さい。いくつかの実施形態では、距離D1とD2との差は0.2mm~0.7mmの範囲である。例えば、距離D1とD2との差は0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、又は0.2mm~0.7mmの数のいずれかとすることができる。
【0033】
スペーサ14は、CMPプロセスで用いる種々の種類のスラリーに対して耐久性があり、スラリー、パッド、又はパッドコンディショナ自体と相互作用しない材料で作製することができる。例えば、スペーサ14の材料は、ポリマー、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド(PA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリ(プロピレンイミン)(PI)、液晶プラスチック(LCP)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、多環芳香族樹脂(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)又はポリ(アミドイミド)(PAI)、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂(UF)、ポリウレタン(PU)、又はエポキシ樹脂から選択することができるがこれらに限定されない。他の実施形態では、スペーサ14の材料はセラミック例えばサファイア又はガラスを含むことができる。本発明の他の態様では、スペーサはブラシ材料例えばBRUSHLON製品(3M Company,USA)であってもよい。全般的に、パッドを研磨するときの下向きの力は約4~10ポンドであってもよく、15ポンドという大きさであってもよい。したがって、こうして、スペーサ14の硬度は好ましくは、これらの力に耐えるほど十分に硬くて、支持機能をもたらし、パッドコンディショナがパッド直径を越えて掃引した場合にパッドコンディショナのアンバランスを回避する。
【0034】
スペーサを有するパッドコンディショナ1を、ウェハ化学機械平坦化(CMP)システムにおいて適用することができる。
図4に示すように、ウェハ化学機械平坦化システム8は、プラテン81と、パッド82と、パッドコンディショナ1とを含む。パッド82はプラテン80上に配置され、研磨面821を含む。パッドコンディショナ1は
図1のそれと同様であり、ここでは重複して説明しない。ウェハ化学機械平坦化システム8において、キャリア10の表面101はパッド82の研磨面821に面し、表面101は研磨面821と実質的に平行である。砥粒要素12の特徴部123はパッド82の研磨面821と接触して、研磨面821をコンディショニングする。砥粒要素12の最も高い特徴部123の遠位端125及びパッド82の研磨面821は、それらの間にギャップGを有する。いくつかの実施形態では、ギャップGは0.2mm以上だが0.7mm以下である。例えば、ギャップGは0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、又は0.2mm~0.7mmの数のいずれかとすることができる。
【0035】
図4を参照されたい。パッドコンディショナ1がパッド82の縁にわたって掃引されるときに(例えば、砥粒要素12のうちの1つがパッドの縁を越えて進むときに)、パッドコンディショナ1のスペーサ14は、パッドコンディショナ1を支持してパッドコンディショナ1のバランスを保ち、パッド82に対するパッドコンディショナ1の傾斜を軽減することができる。したがって、振動に起因して生じるパッドの縁82の揺れ及びえぐりを抑えることができる。加えて、パッドコンディショナ1の掃引がパッド82の中心に戻ったときに、スペーサ14の傾斜縁147によってパッド82の縁の損傷を防ぐことができる。本発明のパッドコンディショナはまた、CMP性能(例えば、材料除去率)がウェハ表面にわたって一様となるように、パッドの縁をコンディショニングすることができる。
【0036】
本発明を以下の実施例を用いて更に説明する。
【実施例】
【0037】
比較例1:TRIZACT B25-2910-5S2ディスク(3M Company,St.Paul,MN,US)を、AMAT REFLEXIONツール(Applied Materials,Inc.,Santa Clara,CA,US)上に配置した。このディスクにはスペーサはなかった。パッドはJSR CMP 9006-FPJパッド(JSR Corporation,Tokyo,JP)であった。ディスクをパッドの縁(外半径方向掃引位置)の付近に配置し(ステップ1)、そしてディスクを、6ポンドの下向きの力で接触するまで下げた(ステップ2)。ディスクの写真を取って傾斜の記録を取った(ステップ3)。ディスクを上げてパッドから離し、ディスク位置を外側に向けて増加させて傾斜の記録を取った(ステップ4)。ステップ3及び4を繰り返して傾斜の記録を取った。
【0038】
実施例1:ディスク、ツール、及びパッドは、本発明のスペーサをディスクにVHBテープ(3M Company,St.Paul,MN,US)を介して取り付けたことを除き、比較例1のものと同じであった。スペーサは、PMMAで形成された5葉型形状のスペーサであった。スペーサの厚さは3mmであり、各円弧の弦長は47.2mmであった。比較例1に関して前述したステップ3及び4を繰り返して、傾斜を記録した。
【0039】
結果を
図11~
図13に示す。少なくとも1つの要素がパッドによって支持されない点までディスクが広がったときに、スペーサがない比較例で多少の傾斜が明らかだった(
図11(f)~(h))。スペーサがある場合、傾斜量は実質的に低減されている(
図12及び
図13)。
【0040】
本発明を特定の実施形態に言及して詳細に説明してきたが、他の変形形態も可能である。したがって、添付の請求項の趣旨及び範囲が本明細書の説明及び図面に限定されることはない。当然のことながら、説明で用いた用語は特定の変形形態又は実施形態を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
なお、以上の各実施形態に加えて以下の態様について付記する。
(付記1)
パッドコンディショナであって、
露出領域と複数の取り付け領域とを有する表面を含むキャリアと、
前記キャリアの前記表面の前記取り付け領域上に配置された少なくとも1つの砥粒要素であって、それぞれが遠位端を有する複数の特徴部を含む作用面を有する前記少なくとも1つの砥粒要素と、
前記キャリアの前記表面上に配置され、前記露出領域の少なくとも一部を覆うスペーサであって、前記スペーサは、第1の表面と前記第1の表面の反対側の第2の表面とを有し、前記第2の表面は、前記キャリアの前記表面に隣接する、前記スペーサと、を備え、
前記少なくとも1つの砥粒要素の最も高い特徴部の前記遠位端と前記キャリアの前記表面との間の距離(D1)は、前記スペーサの前記第1の表面と前記キャリアの前記表面との間の距離(D2)よりも大きい、パッドコンディショナ。
(付記2)
前記少なくとも1つの砥粒要素は、金属母材中の超砥粒グリット、少なくとも85重量%の量のセラミック材料を含むセラミック体、及びダイヤモンドコーティングを含むセラミック体のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のパッドコンディショナ。
(付記3)
前記砥粒要素の前記複数の特徴部は高精度な形状の特徴部である、請求項1に記載のパッドコンディショナ。
(付記4)
前記砥粒要素は前記キャリアの周囲の周りに等しい間隔で離間されている、請求項1に記載のパッドコンディショナ。
(付記5)
前記砥粒要素は前記キャリアの周囲の周りに等しく72度で間隔をあけて離間されている、請求項4に記載のパッドコンディショナ。
(付記6)
前記キャリアの前記表面の前記露出領域に対する前記スペーサの被覆率は1.7%~100%である、請求項1に記載のパッドコンディショナ。
(付記7)
前記スペーサは前記キャリアの周囲の内側に同心円状に配置されている、請求項5に記載のパッドコンディショナ。
(付記8)
前記スペーサは複数のリブを更に含み、前記リブはそれぞれ前記キャリアの周囲の周りに等しい間隔で離間されている、請求項5に記載のパッドコンディショナ。
(付記9)
前記スペーサは傾斜縁を更に含み、前記傾斜縁と前記キャリアの前記表面との間の角度(A)は10度~80度である、請求項1に記載のパッドコンディショナ。
(付記10)
前記傾斜縁と前記キャリアの前記表面との間の前記角度(A)は30度~60度である、請求項9に記載のパッドコンディショナ。
(付記11)
前記傾斜縁と前記キャリアの前記表面との間の前記角度(A)は45度である、請求項10に記載のパッドコンディショナ。
(付記12)
D1とD2との差は0.2mm以上である、請求項1に記載のパッドコンディショナ。
(付記13)
前記スペーサの材料はポリマーである、請求項1に記載のパッドコンディショナ。
(付記14)
前記スペーサ及び前記砥粒要素は前記キャリア上に接着剤を介して取り付けられている、請求項1に記載のパッドコンディショナ。
(付記15)
パッドコンディショナ用のスペーサであって、前記パッドコンディショナは、複数の取り付け領域と露出領域とを有する表面を有するキャリアと、前記取り付け領域上に配置された少なくとも1つの砥粒要素であって、それぞれが遠位端を有する複数の特徴部を有する前記少なくとも1つの砥粒要素と、を含み、前記スペーサは、第1の表面と、前記第1の表面の反対側の第2の表面であって、前記キャリアに隣接する第2の表面とを含み、前記砥粒要素の最も高い特徴部の前記遠位端と前記キャリアの前記表面との間の距離(D1)は、前記スペーサの前記第1の表面と前記キャリアの前記表面との間の距離(D2)よりも大きい、スペーサ。
(付記16)
前記キャリアの前記表面の前記露出領域に対する前記スペーサの被覆率は1.7%~100%である、請求項15に記載のスペーサ。
(付記17)
前記スペーサは傾斜縁を更に含み、前記傾斜縁と前記キャリアの前記表面との間の前記角度(A)は10度~80度である、請求項15に記載のスペーサ。
(付記18)
D1とD2との差は0.2mm以上である、請求項15に記載のスペーサ。
(付記19)
前記スペーサの材料はポリマーである、請求項15に記載のスペーサ。
(付記20)
ウェハ化学機械平坦化システムであって、
プラテンと、
前記プラテン上に配置され、研磨面を有するパッドと、
パッドコンディショナと、を備え、前記パッドコンディショナは、
露出領域と複数の取り付け領域とを有する表面を含むキャリアと、
前記キャリアの前記表面の前記取り付け領域上に配置された少なくとも1つの砥粒要素であって、前記少なくとも1つの砥粒要素は、前記パッドに面する作用面であって、それぞれが遠位端を有する複数の特徴部を含む作用面を有する、前記少なくとも1つの砥粒要素と、
前記キャリアの表面上に配置され、前記露出領域の少なくとも一部を覆うスペーサであって、前記スペーサは第1の表面と前記第1の表面の反対側の第2の表面とを有し、前記第2の表面は前記キャリアの前記表面に隣接する、前記スペーサと、を含み、
前記砥粒要素の最も高い特徴部の前記遠位端は前記パッドの前記研磨面と接触しており、前記スペーサの前記第1の表面及び前記パッドの前記研磨面は、それらの間にギャップ(G)を有する、ウェハ化学機械平坦化システム。
(付記21)
前記砥粒要素の前記複数の特徴部は高精度な形状の特徴部である、請求項20に記載のウェハ化学機械平坦化システム。
(付記22)
前記パッドコンディショナの前記砥粒要素は前記キャリアの周囲の周りに等しい間隔で離間されている、請求項20に記載のウェハ化学機械平坦化システム。
(付記23)
前記パッドコンディショナの前記スペーサは前記キャリアの周囲の内側に同心円状に配置されている、請求項22に記載のウェハ化学機械平坦化システム。
(付記24)
前記パッドコンディショナの前記スペーサは複数のリブを更に含み、前記リブはそれぞれ前記キャリアの周囲の周りに等しい間隔で離間されている、請求項22に記載のウェハ化学機械平坦化システム。
(付記25)
前記パッドコンディショナの前記キャリアの前記表面の前記露出領域に対する前記スペーサの被覆率は1.7%~100%である、請求項20に記載のウェハ化学機械平坦化システム。
(付記26)
前記パッドコンディショナの前記スペーサは傾斜縁を更に含み、前記傾斜縁と前記キャリアの前記表面との間の前記角度(A)は10度~80度である、請求項20に記載のウェハ化学機械平坦化システム。
(付記27)
前記ギャップ(G)は0.2mm以上である、請求項20に記載のウェハ化学機械平坦化システム。
(付記28)
前記スペーサの材料はポリマーである、請求項20に記載のウェハ化学機械平坦化システム。
(付記29)
前記スペーサは前記キャリア上に接着剤を介して取り付けられている、請求項20に記載のウェハ化学機械平坦化システム。