(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】抗生物質を含まないコクシジウム症の予防又は制御のための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/012 20060101AFI20230224BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230224BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20230224BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230224BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230224BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230224BHJP
A61P 33/02 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
A61K39/012
A61K9/08
A61K47/08
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/18
A61P33/02 173
(21)【出願番号】P 2019560067
(86)(22)【出願日】2018-01-24
(86)【国際出願番号】 US2018015102
(87)【国際公開番号】W WO2018140533
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-22
(32)【優先日】2017-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519246375
【氏名又は名称】ヒューベファーマ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HUVEPHARMA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファンネスティール、メアリー アン
(72)【発明者】
【氏名】アルブレヒト、ジェニファー
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-099019(JP,A)
【文献】特表2011-521955(JP,A)
【文献】米国特許第07229615(US,B2)
【文献】Veterinarni Medicina,2008年,Vol.53,pp.207-213
【文献】J Exp Med.,1970年,Vol.132, No.4,pp.636-662
【文献】ACTA VET. BRNO.,1987年,Vol.56,pp.141-149
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コクシジウム症の予防又は制御のための組成物であって、コクシジウム症を引き起こすことが知られている
、エイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)、エイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)及びエイメリア・テネラ(Eimeria tenella)から選択される原生動物の少なくとも1つの種の生存可能な胞子形成オーシストを含み、前記組成物が抗生物質を含まず、重クロム酸カリウム、アルカリ金属重クロム酸塩、重クロム酸イオン又は他の重クロム酸塩を含まず、組成物中の微生物増殖が少なくとも12ヶ月間阻害されるように0.006%~0.008%の濃度のホルマリンを含む、上記組成物。
【請求項2】
0.007%の濃度のホルマリンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
エイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)、エイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)及びエイメリア・テネラ(Eimeria tenella)の生存可能な胞子形成オーシストを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
希釈剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
希釈剤が水を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
水性希釈剤が0.5×リン酸緩衝生理食塩水を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
緩衝液をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記緩衝液が、リン酸緩衝液、重炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液及びトリス緩衝液からなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
緩衝液が6.8~7.8のpHを制御する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
コクシジウム症の予防又は制御のための組成物を調製する方法であって、以下を含む方法:
コクシジウム症を引き起こすことが知られている
、エイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)、エイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)及びエイメリア・テネラ(Eimeria tenella)から選択される原生動物の少なくとも1種の生存可能なオーシストを単離する;
前記単離された生存可能なオーシストを、重クロム酸カリウム、アルカリ金属重クロム酸塩、重クロム酸イオン又は他の重クロム酸塩を含まない胞子形成培地中で胞子形成して、生存可能な胞子形成オーシストを得る;
前記生存可能な胞子形成オーシストを消毒して、生存可能な消毒された胞子形成オーシストを得る;及び
前記生存可能な消毒された胞子形成オーシストを含む組成物を調製する、ここでこの組成物はホルマリンを最終濃度0.006%~0.008%で及び希釈剤をさらに含み、抗生物質を含まない。
【請求項11】
ホルマリン最終濃度が0.007%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記生存可能な胞子形成オーシストが、エイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)、エイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)及びエイメリア・テネラ(Eimeria tenella)の胞子形成オーシストを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
希釈剤が水を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記水性希釈剤が、0.5×リン酸緩衝生理食塩水を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
希釈剤が緩衝液をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記緩衝液が、リン酸緩衝液、重炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液及びトリス緩衝液からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
緩衝液が6.8~7.8のpHを制御する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
コクシジウム症は、腸粘膜がコクシジア亜綱の原生動物によって侵入及び損傷される様々な動物の疾患である。コクシジウム症の経済的影響は、鳥の集中的な収容が疾患の蔓延を広げてしまう家禽産業において特に深刻であり得る。コクシジウム原生動物による感染症は、ほとんどの場合、種特異的である。しかし、多数の種が単一の宿主に感染することができる。例えば、ニワトリに感染するコクシジウム原生動物には7種があり、そのうち6種は中程度から重度の病原性であると考えられている。
【背景技術】
【0002】
コクシジウム寄生虫の生活環は複雑である。例えば、エイメリア(Eimeria)属、イソスポラ(Isospora)属、シストイソスポラ(Cystoisospora)属、又はクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)属の原生動物は典型的にはそれらのライフサイクルを完了するために単一の宿主のみを必要とするが、シストイソスポラ(Cystoisospora)は中間宿主を利用し得る。自然条件下では、ライフサイクルが環境から胞子形成されたオーシスト(胞子形成オーシスト、胞子形成接合子嚢)を摂取することから始まる。胞子形成オーシストが感受性動物によって摂取されると、胞子形成オーシストの壁が破壊されて、内部にスポロシストが放出される。家禽において、スポロシストの放出は、砂嚢における胞子形成オーシストの機械的破壊の結果である。スポロシスト内には、生物の感染段階であるスポロゾイトが存在する。家禽において、スポロシストコートの分解及びスポロゾイトの放出は、小腸におけるキモトリプシン及び胆汁酸塩の作用を介して生化学的に達成される。放出されると、スポロゾイトは、腸粘膜又は他の位置の上皮細胞に侵入する。感染部位は、関与する種の特徴である。例えば、エイメリア(Eimeria)属ではE.tenellaが盲腸に局在し;E.necatrixが小腸の前方及び中央部分に見出され;E.acervulina及びE.praecoxが小腸の上半分に存在し;E.brunettiが下部小腸、直腸、盲腸、及びクロアカ(総排泄腔)に存在し;E.mitisは下部小腸に見出され;一方、E.maximaはこれらの生理学的位置のいずれにも見出すことができる。
【0003】
ひとたび宿主動物の細胞内に入ると、スポロゾイトは、シゾントとも呼ばれる多核のメロントに発達する。メロントの各核はメロゾイトと呼ばれる感染体に発達し、新しい細胞に入り、このプロセスを繰り返す。様々な数の無性生殖の後、メロゾイトは、小配偶子母細胞又は大配偶子のいずれかに発達する。小配偶子母細胞は多くの小配偶子に発達し、大配偶子を受精させる。次に、得られた接合子の周囲に抵抗性被覆が形成される。被嚢された接合子は、オーシストと呼ばれ、糞中に無胞子化されて放出される。感染した鳥は、数日から数週間、糞中にオーシストを放出することがある。温度及び水分の適切な条件下では、オーシスト(接合子嚢)は胞子形成のプロセスを通して感染性になる。次いで、感受性の鳥は正常な害虫駆除活性又は地上/同腹仔採餌を介して胞子形成オーシストを摂取し、このサイクルはそれ自体を繰り返す。生存可能な胞子形成オーシストの摂取は、感染症の唯一の自然の手段である。
【0004】
コクシジウム原生動物による感染症は免疫をもたらし、その結果、一群のメンバーが免疫になるにつれて、疾患の発生率は経時的に減少する。コクシジウム感染のこの自己制限的性質は、ニワトリ及び他の家禽において広く知られている。しかし、付与される免疫は、コクシジウム原生動物の別の種の導入が新たな疾患の発生をもたらすように種特異的である。
【0005】
コクシジウム原生動物のオーシスト壁は、オーシスト生存のための非常に効果的なバリアを提供する。オーシストは宿主外で何週間も生存することがある。実験室では、無傷のオーシストが極端なpH、界面活性剤、タンパク質分解酵素、解糖酵素、及び脂肪分解酵素、機械的破壊、並びに次亜塩素酸ナトリウム及び重クロム酸ナトリウムなどの化学物質に耐性である。
【0006】
家禽におけるコクシジウム症を制御するために、現在、2つの方法が使用されている。第1は、化学療法による制御である。家禽におけるコクシジウム症の制御のために、多くの薬物が利用可能である。疾患を引き起こす種の数のために、単一の薬物がいくつかの種に対して有効であり得るが、すべての種に対して有効である薬物は非常に少ない。例えば、現代のブロイラーニワトリ生産では、コクシジウム症を制御するための薬物(複数)の投与が日常的である。コクシジウム症に対する予防的投薬の費用は、かなりの生産コストを占める。
【0007】
さらに、コクシジウムによる薬剤耐性の発達は、疾患を制御するための化学療法の有効性に対する重大な制限である。米国、南米及び欧州での調査は、コクシジウムにおける広範な薬物耐性を明らかにした。薬剤耐性は遺伝学的現象であるので、いったん確立されると、薬剤耐性は、自然選択圧及び遺伝学的ドリフトによって低下するまで、長年にわたって集団中に残存し得る。
【0008】
食品製造に使用される動物における薬物の使用もまた、一般の人々によるますます多くの注目を集めている。消費者は、食品中の薬物残留物の可能性にますます関心を持っている。これは、家禽産業において、コクシジウム症を制御するための薬物の使用を減少させる圧力を生じる。
【0009】
コクシジウム症に対する鳥のワクチン接種は、化学療法の代替法である。ワクチン接種の利点は抗コクシジウム薬を投与する必要性を大幅に低減又は排除することができ、したがって家禽生産者に対する薬物コストを低減し、薬物耐性株の開発を防止し、薬物残留物に関する消費者の懸念を軽減することができることである。
【0010】
コクシジウム原生動物に対して家禽を免疫するために、多くの方法が開発されてきた。ほとんどの方法は、完全毒性株又は弱毒株のいずれかである生きた原生動物の投与に基づいている。ほとんどの共通投与経路は経口であるが、他の経路も使用されている。エドガー(Edgar)の米国特許第3,147,186号は、直接口内に、又は生存可能なE.テネラ胞子形成オーシストの飼料若しくは水を介してのいずれかでの経口投与によるニワトリのワクチン接種を教示する。Davisらの米国特許第4,544,548号は、抗コクシジウム剤の同時投与の有無にかかわらず、少数の胞子形成オーシストの連続投与によるワクチン接種方法を教示している。
【0011】
スポロシストの弱毒化株の経口投与もまた、コクシジウム症に対する免疫を付与するために利用されてきた。Shirley、米国特許第4,438,097号; McDonald、米国特許第5,055,292号;及びSchmatzら、PCT公開番号WO 94/16725。減衰の代替法はJenkins et al., Avian Dis.,37(1):74-82(1993)に開示されており、これは、メロゴンの発達を防止するためにガンマ線で処置されたスポロゾイトの経口投与を教示している。
【0012】
さらに、非経口ワクチン接種経路が使用されており、これは、嚢胞外スポロゾイトの皮下又は腹腔内注射(Bhogal、米国特許第4,808,404号;Bhogalら、米国特許第5,068,104号)及びオーシスト又はスポロシストのいずれかの卵内注射(Evansら、PCT公開番号WO96/40233;Watkinsら、Poul.Sci.,74(10):1597‐602(1995))を含んでいる。Sharma,J.Parasitol.,50(4):509-517(1964)は、生存オーシスト又はオーシスト、スポロシスト及びスポロゾイトの混合物の静脈内、腹腔内、筋肉内又は皮下注射を含む不成功の免疫試験を報告した。Thaxtonの米国特許第5,311,841号は、卵黄嚢注射による新たに孵化したヒヨコへのオーシスト又はスポロゾイトの投与によるコクシジウム類に対するワクチン接種の方法を教示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
生エイメリア(Eimeria)オーシストを使用するコクシジウム症ワクチンの製造は、オーシストを消毒する工程を含む。例えば、次亜塩素酸ナトリウムは消毒を達成するために使用されてきたが、エイメリアが単離される糞便中の非常に大きな微生物バイオバーデン(bioburden)のために、いくらかの残留バイオバーデンが存在し得る。米国では、ニワトリの経口ワクチン中の残留バイオバーデンが用量当たり1コロニー形成単位(CFU)を超えてはならない。ワクチン製剤中の微生物のバイオバーデンを確認するために、抗生物質がコクシジウム症ワクチンに使用されてきた。しかし、家畜における抗生物質の使用に関する懸念がある。さらに、抗生物質で治療されていない家畜に対する消費者の強い需要が増大している。
【0014】
従って、抗生物質をコクシジウムワクチン製剤に添加する必要性を排除し、一方で、長期間の保存にわたって、製剤内で微生物バイオバーデンをチェックし続けることは、非常に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
コクシジウム症は、特に家禽産業において顕著な経済的影響を有する動物の疾患である。多くの家禽の手術では、胞子形成オーシストを含むワクチンを用いて、鳥をコクシジウム症に対してワクチン接種する。胞子形成されたコクシジウムオーシスト(胞子形成コクシジウムオーシスト)の保存のための現在の方法は微生物のバイオバーデンを制御するために、添加された抗生物質を使用する。本発明は、抗生物質を使用せずに微生物のバイオバーデンが阻害される、コクシジウムワクチン製剤を含む胞子形成コクシジウムオーシストの貯蔵のための組成物及び方法を提供する。本発明の組成物及び方法において、最適濃度のホルマリンを生存可能な胞子形成コクシジウムオーシストの組成物に添加し、その結果、胞子形成オーシストの生存率に有意な影響を及ぼさずに、微生物増殖が少なくとも12ヶ月間阻害される。
【0016】
したがって、一態様では、本発明がコクシジウム症を引き起こすことが知られている原生動物の少なくとも1つの種の生存可能な胞子形成オーシストを含む、コクシジウム症の予防又は制御のための組成物に関し、前記組成物は抗生物質を含まず、0.006%~0.008%の濃度でホルマリンを含み、組成物中の微生物増殖が少なくとも12ヶ月間阻害される。一実施形態では、組成物が約0.007%の濃度のホルマリンを含む。本方法の別の実施形態では、ホルマリンの最終濃度は0.007%である。一実施形態では、組成物はまた、重クロム酸カリウムを含まない。一実施形態では、オーシストが少なくとも1000オーシスト/ml、又は5000オーシスト/ml又は10,000オーシスト/mlの濃度で組成物中に存在する。
【0017】
一実施形態では、生存可能な胞子形成オーシストがエイメリアオーシストである。例えば、一実施形態では、組成物がエイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)、エイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)及びエイメリア・テネラ(Eimeria tenella)の生存胞子形成オーシストを含む。コクシジウム症を引き起こすことが知られている他の種の原生動物由来の他の適切なオーシストは、本明細書に記載されている。一実施形態では、胞子形成オーシストは野生型オーシストである。別の実施形態では、胞子形成オーシストは弱毒化オーシストである。
【0018】
一実施形態では、組成物が水などの希釈剤をさらに含む。一実施形態では、水性希釈剤が0.5×リン酸緩衝生理食塩水を含む。他の実施形態では、希釈剤がリン酸緩衝液、重炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液又はトリス緩衝液などの緩衝液を含む。一実施形態では、緩衝液がpHを約6.8~約7.8に制御する。
【0019】
別の局面において、本発明はコクシジウム症の予防又は制御のための組成物を調製する方法に関し、この方法は以下を含む:
コクシジウム症を引き起こすことが知られている原生動物の少なくとも1種の生存可能な胞子形成オーシストの組成物を調製する、ここでこの組成物は希釈剤をさらに含み、抗生物質を含まない;及び
ホルマリンを組成物に最終濃度0.006%~0.008%まで添加する;
ここで、組成物中の微生物増殖は、少なくとも12ヶ月間阻害される。
【0020】
本方法の一実施形態では、ホルマリンの最終濃度は約0.007%である。本方法の別の実施形態では、ホルマリンの最終濃度は0.007%である。一実施形態では、組成物はまた、重クロム酸カリウムを含まない。一実施形態では、オーシストが少なくとも1000オーシスト/ml、又は5000オーシスト/ml又は10,000オーシスト/mlの濃度で組成物中に存在する。
【0021】
一実施形態では、生存可能な胞子形成オーシストがエイメリアオーシストである。例えば、1つの実施形態において、この方法は、エイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)、エイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)及びエイメリア・テネラ(Eimeria tenella)の生存可能な胞子形成オーシストを含む組成物を調製する工程を包含する。コクシジウム症を引き起こすことが知られている他の種の原生動物由来の他の適切なオーシストは、本明細書に記載されている。一実施形態では、胞子形成オーシストは野生型オーシストである。別の実施形態では、胞子形成オーシストは弱毒化オーシストである。
【0022】
本方法の一実施形態では、希釈剤は水である。一実施形態では、水性希釈剤が0.5×リン酸緩衝生理食塩水を含む。他の実施形態では、希釈剤がリン酸緩衝液、重炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液又はトリス緩衝液などの緩衝液を含む。一実施形態では、緩衝液がpHを約6.8~約7.8に制御する。
【0023】
コクシジウム症の制御又は予防のためのコクシジウムワクチン製剤に関する上記の組成物及び方法に加えて、本発明はまた、生存可能な胞子形成オーシストの長期保存のための組成物及び方法を提供し、次いで、これらは、ワクチン組成物の調製において使用され得る。
【0024】
したがって、別の態様では本発明が胞子形成コクシジウムオーシストの貯蔵のための組成物に関し、組成物はコクシジウム症を引き起こすことが知られている原生動物の少なくとも1つの種の生存可能な胞子形成オーシストを含み、組成物は抗生物質を含まず、組成物中の微生物増殖が少なくとも12ヶ月間阻害されるように0.01%~0.025%の濃度でホルマリンを含む。一実施形態では、組成物はまた、重クロム酸カリウムを含まない。一実施形態では、オーシストが少なくとも1000オーシスト/ml、又は5000オーシスト/ml又は10,000オーシスト/mlの濃度で組成物中に存在する。
【0025】
一実施形態では、組成物がエイメリア(Eimeria)種由来の生存可能な胞子形成オーシストを含む。例えば、一実施形態では、組成物がエイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)の生存可能な胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物がエイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)の生存可能な胞子形成オーシストを含む。さらに別の実施形態では、組成物がエイメリア・テネラ(Eimeria tenella)の生存可能な胞子形成オーシストを含む。コクシジウム症を引き起こすことが知られている他の種の原生動物由来の他の適切なオーシストは、本明細書に記載されている。一実施形態では、胞子形成オーシストは野生型オーシストである。別の実施形態では、胞子形成オーシストは弱毒化オーシストである。
【0026】
一実施形態では、組成物が0.01%の濃度のホルマリンを含む。別の実施形態では、組成物が0.025%の濃度でホルマリンを含む。
【0027】
さらに別の局面において、本発明は胞子形成コクシジウムオーシストの貯蔵のための組成物を調製する方法に関し、この方法は以下を含む:
コクシジウム症を引き起こすことが知られている原生動物の少なくとも1つの種の生存可能な胞子形成オーシストの懸濁液を調製する、ここで懸濁液に抗生物質を加えない;及び
ホルマリンを懸濁液に最終濃度0.01%~0.025%まで添加して、組成物中の微生物増殖が少なくとも12ヶ月間阻害されるようにする。
【0028】
一実施形態では、懸濁液はまた、重クロム酸カリウムを含まない。一実施形態では、オーシストが少なくとも1000オーシスト/ml、又は5000オーシスト/ml又は10,000オーシスト/mlの濃度で懸濁液中に存在する。
【0029】
本方法の一実施形態では、懸濁液がエイメリア種由来の生存可能な胞子形成オーシストを含む。例えば、一実施形態では、懸濁液がエイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)の生存可能な胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、懸濁液がエイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)の生存可能な胞子形成オーシストを含む。さらに別の実施形態では、懸濁液がエイメリア・テネラ(Eimeria tenella)の生存可能な胞子形成オーシストを含む。コクシジウム症を引き起こすことが知られている他の種の原生動物由来の他の適切なオーシストは、本明細書に記載されている。一実施形態では、胞子形成オーシストは野生型オーシストである。別の実施形態では、胞子形成オーシストは弱毒化オーシストである。
【0030】
本方法の一実施形態では、懸濁液中のホルマリンの最終濃度は0.01%である。本方法の別の実施形態では、懸濁液中のホルマリンの最終濃度は0.025%である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
以下の詳細な説明は、当業者が本発明を実施するのを助けるために提供される。そうであっても、この詳細な説明は、本発明の開示の精神又は範囲から逸脱することなく、本明細書で論じられる実施形態の修正及び変形を当業者が行うことができるので、本発明を過度に限定すると解釈されるべきではない。
【0032】
本出願において引用された全ての刊行物、特許、特許出願、データベース、及び他の参考文献はあたかも個々の刊行物、特許、特許出願、データベース、又は他の参考文献の各々が参照することにより取り込まれるように、明確にかつ個々に示されているかのように、その全体が参照することにより取り込まれている。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「ホルムアルデヒド」及び「ホルマリン」は、化学式H2COのアルデヒドを指すために交換可能に使用される。典型的にはホルムアルデヒドは気体の形態での化合物を指すために当業界で使用され、一方ホルマリンは典型的にはホルムアルデヒドの水への溶液を指すために当業界で使用される。
【0034】
本明細書で使用されるように、パーセント濃度に関する「約」という用語(例えば、「約0.025%」又は「約0.007%」)は記載された数値からのわずかな変動、例えば、記載された数値より高い又は低い25%以下の変動を包含することが意図される。
【0035】
本発明は長い貯蔵寿命(例えば、少なくとも12ヶ月)を有する、コクシジウム症ワクチンを含む胞子形成コクシジウムオーシストの組成物中の添加された抗生物質の除去を提供する。本発明の組成物及び方法では、抗生物質ではなく、最適濃度のホルマリンを用いて微生物増殖を阻害し、それによってコクシジウム症ワクチンの抗生物質を含まない製剤を提供する。本発明の組成物及び方法において、出発バイオバーデンが低いように消毒された胞子形成コクシジウムオーシストは、在庫製剤及びワクチン製剤の調製において使用され、ここで、最適濃度のホルマリンが(抗生物質を使用するのではなく)オーシストに添加され、それによって、胞子形成オーシストの生存性を有意に阻害することなく、長期間にわたり微生物増殖を阻害する。
【0036】
実施例において実証されるように、ホルマリンは、オーシスト生存率に有意に影響を与えることなく微生物増殖を阻害する能力において、試験された他の化合物のパネルよりも有効であることが実証された。さらに、実施例において実証されるように、約0.01~0.025%の濃度範囲のホルマリンは、少なくとも12ヶ月間保存された胞子形成エイメリア(Eimeria)オーシストの在庫製剤において、オーシスト生存率に有意に影響を及ぼすことなく、微生物増殖を阻害するのに最適に有効であることが見出された。さらに、実施例において実証されるように、ホルマリンの約0.006~0.008%、例えば約0.007%、好ましくは0.007%の濃度範囲が、少なくとも12ヶ月間保存された胞子形成エイメリアオーシストのワクチン製剤において、オーシスト生存率に有意に影響を及ぼすことなく、微生物増殖を阻害するのに最適に有効であることが見出された。
【0037】
したがって、一態様では、本発明が胞子形成コクシジウムオーシスト、例えばコクシジウムワクチンの配合に使用することができる在庫製剤の長期貯蔵のための組成物に関する。このような在庫製剤は代表的にはコクシジウムオーシストの単一株を含み、ワクチンの配合のために使用され得る。従って、別の局面において、本発明は、コクシジウムワクチン製剤に関する。このようなワクチン製剤は代表的には胞子形成コクシジウムオーシストの複数の株を含み、さらなる成分(例えば、希釈剤、緩衝液など)を含み得る。さらに別の局面において、本発明は胞子形成コクシジウムオーシスト組成物(例えば、在庫製剤)及びワクチン製剤を調製する方法に関する。
【0038】
オーシスト在庫製剤
本発明は例えば、ワクチン組成物の調製において使用され得る、生存可能な胞子形成コクシジウムオーシストの長期保存のための組成物及び方法を提供する。このような組成物は、本明細書では在庫製剤と呼ばれ、当技術分野ではバルクロット又は抗原ロットとも呼ばれる。本発明の在庫製剤は抗生物質を使用することなく、低い微生物バイオバーデン(例えば、1~10CFU/ml以下)での長期保存(例えば、少なくとも12ヶ月)を可能にする。
【0039】
一実施形態では本発明が胞子形成コクシジウムオーシストの貯蔵のための組成物を提供し、組成物はコクシジウム症を引き起こすことが知られている原生動物の少なくとも1つの種の生存可能な胞子形成オーシストを含み、組成物は抗生物質を含まず、組成物中の微生物増殖が少なくとも12ヶ月間阻害されるように0.01%~0.025%の濃度でホルマリンを含む。一実施形態では、組成物はまた、重クロム酸カリウムを含まない。生存可能な胞子形成オーシストは組成物に添加された場合に低い開始バイオバーデン(例えば、1~10CFU/ml以下)を有するように、(例えば、以下にさらに記載されるように)消毒される。
【0040】
典型的には本発明の在庫製剤組成物が単一のコクシジウム株を含むが、代替実施形態では複数の株を在庫製剤組成物に含めることができる。一実施形態では、オーシストが家禽においてコクシジウム症を引き起こすことが知られている原生動物の少なくとも1つの種のものである。別の実施形態では、オーシストがニワトリにおいてコクシジウム症を引き起こすことが知られている原生動物の少なくとも1つの種のものである。別の実施形態では、オーシストが七面鳥においてコクシジウム症を引き起こすことが知られている原生動物の少なくとも1つの種のものである。
【0041】
一実施形態では、組成物がニワトリにおいてコクシジウム症を引き起こすエイメリア種由来の生存可能な胞子形成オーシストを含む。一実施形態では、組成物が単一のエイメリア種の胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物が2つ以上のエイメリア種(例えば、2、3、4、5又はそれ以上の種)の胞子形成オーシストを含む。一実施形態では、組成物がエイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)の生存可能な胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物がエイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)の生存可能な野生型胞子形成オーシストを含む。さらに別の実施形態では、組成物がエイメリア・テネラ(Eimeria tenella)の生存可能な胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物がエイメリア・ネカトリックス(Eimeria necatrix)の生存可能な胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物がエイメリア・ミバチ(Eimeria mivati)の生存可能な胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物がエイメリア・ミティス(Eimeria mitis)の生存可能な胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物がエイメリア・プラエコックス(Eimeria praecox)の生存可能な胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物がエイメリア・ブルネッティ(Eimeria brunetti)の生存可能な胞子形成オーシストを含む。一実施形態では、組成物が前述のエイメリア株のいずれかの生存可能な野生型胞子形成オーシストを含む。さらに他の実施形態では、組成物が前述のエイメリア株のいずれかの生存可能な弱毒化胞子形成オーシストを含む。
【0042】
別の実施形態では、組成物が七面鳥においてコクシジウム症を引き起こすエイメリア種由来の生存可能な胞子形成オーシストを含む。一実施形態では、組成物が単一のエイメリア種の胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物が2つ以上のエイメリア種(例えば、2、3、4、5又はそれ以上の種)の胞子形成オーシストを含む。一実施形態では、組成物がEimeria meleagrimitisの生存可能な胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物がEimeria adenoeidesの生存可能な胞子形成オーシストを含む。さらに別の実施形態では、組成物がEimeria gallopavonisの生存可能な胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物がEimeria dispersaの生存可能な胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物がEimeria meleagridisの生存可能な胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物がEimeria innocuaの生存可能な胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物がEimeria subrotundaの生存可能な胞子形成オーシストを含む。一実施形態では、組成物が前述のエイメリア株のいずれかの生存可能な野生型胞子形成オーシストを含む。さらに他の実施形態では、組成物が前述のエイメリア株のいずれかの生存可能な弱毒化胞子形成オーシストを含む。
【0043】
別の実施形態では、胞子形成オーシストがコクシジウム属イソスポラ(Isospora)のものである。別の実施形態では、胞子形成オーシストがコクシジウム属シストイソスポラ(Cystoisospora)のものである。別の実施形態では、胞子形成オーシストがコクシジウム属Cryptosporidiumのものである。一実施形態では、組成物が前述の株のいずれかの生存可能な野生型胞子形成オーシストを含む。他の実施形態では、組成物が前述の株のいずれかの生存可能な弱毒化胞子形成オーシストを含む。
【0044】
一実施形態では、組成物が約0.01%の濃度のホルマリンを含む。一実施形態では、組成物が0.01%の濃度のホルマリンを含む。一実施形態では、組成物が約0.015%の濃度のホルマリンを含む。一実施形態では、組成物が0.015%の濃度のホルマリンを含む。一実施形態では、組成物が約0.020%の濃度のホルマリンを含む。一実施形態では、組成物が0.020%の濃度のホルマリンを含む。一実施形態では、組成物が約0.025%の濃度のホルマリンを含む。別の実施形態では、組成物が0.025%の濃度でホルマリンを含む。
【0045】
様々な実施形態において、生存可能な胞子形成オーシストは、少なくとも50オーシスト/ml又は100オーシスト/ml又は200オーシスト/ml又は500オーシスト/ml又は1000オーシスト/ml又は5000オーシスト/ml又は10,000オーシスト/mlの濃度で組成物中に存在する。
【0046】
別の局面において、本発明は、胞子形成コクシジウムオーシストの貯蔵のための組成物を調製する方法を提供し、該方法は以下を含む:
コクシジウム症を引き起こすことが知られている原生動物の少なくとも1つの種の生存可能な胞子形成オーシストの懸濁液を調製する、ここで懸濁液に抗生物質を加えない;及び
ホルマリンを懸濁液に最終濃度0.01%~0.025%まで添加して、組成物中の微生物増殖が少なくとも12ヶ月間阻害されるようにする。
【0047】
本方法に使用するのに適したオーシスト種は、組成物に関して上記に記載したものである。
【0048】
ホルマリンの適切な最終濃度には、組成物に関して上述したものが含まれる。
【0049】
一実施形態では、懸濁液はまた、重クロム酸カリウムを含まない。
【0050】
懸濁液中で使用される生存可能な胞子形成オーシストは上記の方法で使用される場合、低い開始バイオバーデン(例えば、1~10CFU/ml以下)を有するように、(例えば、以下にさらに記載されるように)消毒される。
【0051】
懸濁液中のホルマリンの最終濃度は0.01%~0.025%であるが、当業者はより高い濃度のホルマリンをこの方法で使用し、次いで、0.01%~0.025%の最終濃度のホルマリンが長期貯蔵組成物について達成されるように希釈することができることを容易に理解するであろう。
【0052】
ワクチン製剤
本発明の在庫製剤は、例えば家禽におけるコクシジウム症の予防又は制御のためのワクチンの調製に使用することができる。したがって、別の実施形態では、本発明がコクシジウム症を引き起こすことが知られている原生動物の少なくとも1つの種の生存可能な胞子形成オーシストを含むコクシジウム症の予防又は制御のための組成物を提供し、前記組成物は抗生物質を含まず、0.006%~0.008%の濃度でホルマリンを含み、組成物中の微生物増殖が少なくとも12ヶ月間阻害される。一実施形態では、組成物が約0.007%の濃度のホルマリンを含む。さらに別の実施形態では、組成物が0.007%の濃度のホルマリンを含む。一実施形態では、組成物はまた、重クロム酸カリウムを含まない。生存可能な胞子形成オーシストは組成物に添加された場合に低い開始バイオバーデン(例えば、1~10CFU/ml以下)を有するように、(例えば、以下にさらに記載されるように)消毒される。
【0053】
典型的には、本発明のワクチン組成物が複数のコクシジウム株(例えば、2、3、4、5又はそれ以上の株)を含む。一実施形態では、オーシストが家禽においてコクシジウム症を引き起こすことが知られている原生動物の少なくとも1つの種のものである。別の実施形態では、オーシストがニワトリにおいてコクシジウム症を引き起こすことが知られている原生動物の少なくとも1つの種のものである。別の実施形態では、オーシストが七面鳥においてコクシジウム症を引き起こすことが知られている原生動物の少なくとも1つの種のものである。
【0054】
一実施形態では、組成物がニワトリにおいてコクシジウム症を引き起こすエイメリア種由来の生存可能な胞子形成オーシストを含む。一実施形態では、組成物がニワトリにおいてコクシジウム症を引き起こす3つ以上のエイメリア種由来の生存可能な胞子形成オーシストを含む。一実施形態では、組成物がエイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)、エイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)及びエイメリア・テネラ(Eimeria tenella)の生存可能な胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物がエイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)、エイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)、エイメリア・テネラ(Eimeria tenella)、Eimeria necatrix、Eimeria mivati、Eimeria mitis、Eimeria praecox及びEimeria brunettiからなる群より選択される複数(例えば、2、3、4、5又はそれ以上)のエイメリア株の生存可能な胞子形成オーシストを含む。一実施形態では、組成物が前述のエイメリア株のいずれかの生存可能な野生型胞子形成オーシスト(例えば、前述のエイメリア株の2、3、4、5又はそれ以上の野生型形態のオーシスト)を含む。さらに他の実施形態では、組成物が前述のエイメリア株のいずれかの生存可能な弱毒化胞子形成オーシスト(例えば、前述のエイメリア株の2、3、4、5又はそれ以上の弱毒化形態のオーシスト)を含む。
【0055】
別の実施形態では、組成物が七面鳥においてコクシジウム症を引き起こすエイメリア種由来の生存可能な胞子形成オーシストを含む。一実施形態では、組成物が七面鳥においてコクシジウム症を引き起こす3つ以上のエイメリア種由来の生存可能な胞子形成オーシストを含む。別の実施形態では、組成物がEimeria meleagrimitis、Eimeria adenoeides、Eimeria gallopavonis、Eimeria dispersa、Eimeria meleagridis、Eimeria innocua及びEimeria subrotundaからなる群から選択される複数(例えば、2、3、4、5又はそれ以上)のエイメリア株の生存可能な胞子形成オーシストを含む。一実施形態では、組成物が前述のエイメリア株のいずれかの生存可能な野生型胞子形成オーシスト(例えば、前述のエイメリア株の2、3、4、5又はそれ以上の野生型形態のオーシスト)を含む。さらに他の実施形態では、組成物が前述のエイメリア株のいずれかの生存可能な弱毒化胞子形成オーシスト(例えば、前述のエイメリア株の2、3、4、5又はそれ以上の弱毒化形態のオーシスト)を含む。
【0056】
別の実施形態では、胞子形成オーシストがコクシジウム属イソスポラ(Isospora)のものである。別の実施形態では、胞子形成オーシストがコクシジウム属シストイソスポラ(Cystoisospora)のものである。別の実施形態では、胞子形成オーシストがコクシジウム属Cryptosporidiumのものである。一実施形態では、組成物が前述の株のいずれかの生存可能な野生型胞子形成オーシストを含む。他の実施形態では、組成物が前述の株のいずれかの生存可能な弱毒化胞子形成オーシストを含む。
【0057】
一実施形態では、組成物が水などの希釈剤をさらに含む。一実施形態では、水性希釈剤が0.5×リン酸緩衝生理食塩水を含む。他の実施形態では、希釈剤がリン酸緩衝液、重炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液又はトリス緩衝液などの緩衝液を含む。一実施形態では、緩衝液がpHを約6.8~約7.8に制御する。
【0058】
さらなる実施形態において、濃縮ワクチンは投与前に、例えば、10ミリリットル~約250ミリリットルに希釈され得る。別の実施形態では、濃縮ワクチンが投与前に約10ミリリットル~約2.5リットルに希釈することができる。
【0059】
様々な実施形態において、生存可能な胞子形成オーシストは、少なくとも50オーシスト/ml又は100オーシスト/ml又は200オーシスト/ml又は500オーシスト/ml又は1000オーシスト/ml又は5000オーシスト/ml又は10,000オーシスト/mlの濃度でワクチン中に存在する。さらに他の実施形態において、生存可能な胞子形成オーシストはワクチン中に、50~200オーシスト/用量又は50~500オーシスト/用量又は少なくとも50オーシスト/用量又は少なくとも100オーシスト/用量又は少なくとも200オーシスト/用量の濃度で存在する。
【0060】
ワクチン組成物は経口(例えば、食物又は水への添加による);局所(例えば、噴霧);非経口経路(例えば、皮下、筋肉内又は腹腔内注射);経口あたり又は卵黄嚢内注射を介することを含むが、これらに限定されない、種々の経路を通して、動物に投与され得る。ワクチン組成物はまた、例えば、米国特許番号6,495,146;6,500,438;6,627,205;及び7,018,640に記載されるように、in ovoで(すなわち、生きている発育中の胚を含む鳥卵に)投与され得る。
【0061】
別の態様では、本発明がコクシジウム症を引き起こすことが知られている少なくとも1種の原生動物の生存可能な胞子形成オーシストを含む、コクシジウム症の予防又は制御のための組成物を含むキットであって、前記組成物が抗生物質を含まず、0.006%~0.008%の濃度でホルマリンを含み、組成物中の微生物増殖が少なくとも12ヶ月間阻害される、キット、及び動物への前記組成物の投与のための説明を提供する。一実施形態では、組成物が約0.007%の濃度のホルマリンを含む。さらに別の実施形態では、組成物が0.007%の濃度のホルマリンを含む。
【0062】
さらに別の局面において、本発明は、コクシジウム症の予防又は制御のための組成物を調製する方法を提供し、該方法は以下を含む:
コクシジウム症を引き起こすことが知られている原生動物の少なくとも1つの種の生存可能な胞子形成オーシストの組成物を調製する、ここで組成物が抗生物質を含まない;及び
ホルマリンを組成物に最終濃度0.006%~0.008%になるように添加する;
ここで、組成物中の微生物増殖は、少なくとも12ヶ月間阻害される。
【0063】
本方法の一実施形態では、ホルマリンの最終濃度は約0.007%である。本方法の別の実施形態では、ホルマリンの最終濃度は0.007%である。
【0064】
一実施形態では、組成物はまた、重クロム酸カリウムを含まない。
【0065】
本方法において使用される生存可能な胞子形成オーシストは組成物に添加された場合に低い開始バイオバーデン(例えば、1~10CFU/ml以下)を有するように、(例えば、以下にさらに記載されるように)消毒される。
【0066】
一実施形態では、組成物が0.01%~0.025%の濃度でホルマリンを含有するコクシジウムオーシストの1つ又は複数の在庫製剤から作製され、在庫製剤は組成物中のホルマリンの最終濃度が0.006%~0.008%(例えば、約0.007%又は0.007%)に低下するように希釈される。
【0067】
本方法に使用するのに適したオーシスト種は、組成物に関して上記に記載したものである。
【0068】
本方法で使用するのに適した希釈剤及び緩衝剤には、組成物に関して上述したものが含まれる。
【0069】
消毒胞子形成コクシジウムオーシストの生産
本発明の組成物及び方法は、コクシジウム症の制御又は予防のための抗生物質を含まない製剤を作製するために、消毒された胞子形成コクシジウムオーシストを使用する。コクシジウムオーシストを単離し、胞子形成し、そして消毒するための方法は当該分野で十分に確立されている(例えば、米国特許第7,846,685号に記載されるように)。投与経路にかかわらず、コクシジウム症ワクチンの生産のための手順は全く同様である。簡単に言えば、コクシジウム原生動物は、宿主動物をコクシジウム原生動物の単一種で感染させることによって産生される。これらの「種子在庫」は多くの場合、天然でクローン性であり、すなわち、目的の種のみの存在を確実にするために、単一の生物に由来する。種子在庫は野生型であってもよく、すなわち、野生から単離されてもよく、又は早発性又は弱毒化株であってもよい。次いで、原生動物を宿主中で複製させ、その後、原生動物を動物から、通常は排泄物から回収する。弱毒化株の使用は、典型的には宿主動物から放出されたオーシストをより少なくする。次いで、塩浮選及び遠心分離などの周知の技術によって、原生動物を排泄物から分離する。
【0070】
本発明の実施において使用されるオシストは、様々なソースから得ることができる。例えば、オーシストは、宿主動物に単一種のコクシジウム原生動物を接種することによって得ることができる。使用されるコクシジウム原生動物は天然ではクローン性であり得、すなわち、単一の前駆体に由来し得るか、又はポリクローナルであり得る。本組成物のオーシストは、野生型オーシストに由来する。接種は、宿主動物における原生動物の複製を可能にする任意の手段によることができる。最も一般的な接種経路は経口であるが、他の適切な経路を用いてもよい。経口投与される場合、原生動物は、好ましくは胞子形成オーシストステージにある。投与は、胃管栄養法によって、又は給餌及び/又は水を通して行うことができる。接種はまた、宿主動物をコクシジウム原生動物で汚染された環境に曝露することによって達成され得る。あるいは、オーシストが天然に存在する感染症を有する動物から得ることができる。
【0071】
宿主動物(例えば、エイメリア種)の経口接種後、接種された動物から糞尿を接種された宿主動物から回収する。オーシストは、篩分け、遠心分離、及び密度浮選を含む単離技術の組み合わせを使用して、糞尿から分離される。次いで、単離されたオーシストを、温度、溶存酸素の飽和パーセント、pH、及び胞子形成培地中での撹拌などの因子を制御する特定の規定された条件下で胞子形成する。次いで、胞子形成オーシストを胞子形成培地から分離し、消毒する。胞子形成オーシストは、胞子形成培地から分離され、消毒された後、希釈剤又は希釈剤及び緩衝液と組み合わされてワクチンを形成する。次いで、チャレンジ後性能改善組成物を添加することもできる。このような組成物は、チャレンジ後の性能の低下を改善する。改善は、滑液包の成長及び外観のような因子において見られ得る。
【0072】
宿主動物が有機体を放出し始めると、原生動物を収集することができる。最も一般的には原生動物は糞便から収集されるが、それらはまた、腸内容物及び/又は掻き取り物、並びに汚染された寝具から収集され得る。一旦収集されると、オーシスト懸濁液中の糞便含有量を減少させることが、胞子形成するオーシストの数を増加させるので、オーシストは好ましくは外来の糞便物質から単離される(Smith及びRuff、Poultry Sci.54:2083、1975)。オーシストを単離するための好ましい方法は、ふるい分けによるものである。しかし、原生動物を単離するためのいくつかの方法が当技術分野で知られており、本発明を実施する際に使用することができる。オーシストの単離のためのいくつかの方法のレビューは、Ryleyら(Parasitology 73:311‐326,1976)に見出され得る。
【0073】
落下物からオーシストを分離するための別の方法は、オーシストが懸濁液の上部に浮遊するように、典型的には約1.2の比重を有する十分な比重の溶液を使用する浮選(フローテーション)を含む。一般に、これらの溶液は、比重を所望の値まで増大させるために糖(例えば、ショ糖)、ZnSO4、又はNaClが添加された水から構成される。有用な溶液には、58%(w/v)ショ糖、37%(w/v)ZnSO4X7H2O及び飽和NaCl溶液を含む溶液が含まれ、これらはすべて約1.09~約1.2の比重を有する。同等の比重を有し、オーシストに有害でない他の溶液も使用することができる。
【0074】
単離の浮選法では、例えば、ガーゼ、篩、又はチーズクロスを通して、希釈された収集された糞尿を濾過して、望ましくない糞便物質の大きな粒子を除去する予備工程が含まれてもよい。採取したオーシストを浮選液と混合した後、オーシストスラリーを遠心分離し、オーシストを上清の表面から又は上清中から除去することができる。遠心分離工程は、先の遠心分離工程で使用されたものと同様の比重を有する浮選培地中に捕捉された上清を再懸濁することによって、オーシストをさらに精製することを数回繰り返すことができ、再び遠心分離される。この工程は、所望のレベルの純度に達するまで繰り返すことができる。
【0075】
当該分野で利用可能なオーシストの単離のための別の方法は、勾配遠心分離を含む。使用される勾配は、不連続であっても連続であってもよい。コクシジウムオーシストの典型的な勾配の例は、0~50%ショ糖である。この方法では、オーシストを含有する物質を勾配の上に置き、次いでオーシスト含有物質を勾配と共に遠心分離する。遠心分離後、オーシストを含む層を回収する。このプロセスは、得られるオーシスト製剤の純度を増加させるために繰り返され得る。浮選の場合と同様に、この方法は、好ましくは収集された糞尿の濾過に先行する。
【0076】
オーシスト単離のさらなる方法には、ガラスビーズカラム(Ryleyら、Parasitology、73:311-326、1976)及び重炭酸塩エーテル法(Smith及びRuff、Poultry Sci.54:2081-2086、1975)の使用が含まれる。ガラスカラム法では、糞便物質の水性懸濁液を、ガラスビーズと洗浄剤、例えば5% Tween 80との混合物に添加する。次いで、この混合物をガラスビーズのカラムに適用し、オーシストを通過させ、一方、望ましくない糞便物質の大部分はカラム中に保持される。次いで、流出液を遠心分離によって濃縮することができる。
【0077】
重炭酸塩エーテル法では、感染したニワトリからの糞を、例えばチーズクロスを通してひずませ、固体画分を廃棄しながら液体画分を捕捉する。次いで、液体画分を遠心分離によって濃縮する。固体画分を回収し、上清を廃棄する。次いで、回収した固体画分を1%重炭酸ナトリウム溶液に再懸濁する。再懸濁された固体画分(ここでは懸濁液中)に、次いで、重炭酸ナトリウムの1%溶液の容量にほぼ等しい容量のエーテルを添加する。次いで、混合物を遠心分離する。デブリプラグ及び上澄液を廃棄し、一方、沈殿物を水中に再懸濁することによって洗浄する。次いで、この懸濁液を遠心分離し、上清を廃棄する。次いで、沈殿物は、使用のために回収される。(Smith and Ruff, Poultry Sci.54:2081-2086, 1975).
【0078】
オーシストを精製及び濃縮する別の方法は米国特許第7,846,685号に記載されるように、最初の精製工程から得られた水性画分を、ハイドロサイクロンを用いた固相/液相遠心分離に供することを含む。
【0079】
上記のオーシストを単離、濃縮、及び精製するための種々の方法は、互いに組み合わせて、又は本発明の好ましい実施形態と組み合わせて使用され得る。使用される方法にかかわらず、単離、濃縮、及び精製が大きいほど、胞子形成スイート中の胞子形成パーセントは大きくなる。
【0080】
採取時には、原生動物はライフサイクルの非感染性オーシストステージにある。感染性になり、したがってワクチンとして有用になるためには、オーシストは胞子形成を受けるように誘導されなければならない。コクシジウムオーシストを胞子形成する方法は、当該分野で十分に確立されている。コクシジウムオーシストを胞子形成するための当該分野で公知の任意の適切な方法は、本発明の組成物及び方法において使用するための胞子形成オーシストを得るために使用され得る。
【0081】
胞子形成は任意の適切な容器中で行われ得るが、しかし、胞子形成培地のこれらのパラメーターをモニターすることに加えて、温度、溶存酸素、pH、及び混合をベストコントロールするために、発酵容器が好ましい。胞子形成容器の容量はバッチサイズによって変化し、当業者によって適切に選択され得る。好ましい発酵槽は、New Brunswick BioFlow(New Brunswick Scientific Company, Edison, NJから入手可能)である。
【0082】
胞子形成は、オーシストを酸化チャレンジに供することによって達成される。この工程において、オーシストは胞子形成を促進するのに有効であるが、オーシストの死をもたらさない酸化剤と接触される。典型的には、酸化剤が重クロム酸塩源以外の主要な酸化剤を含む。好ましくは、胞子形成媒体が重クロム酸カリウム、アルカリ金属重クロム酸塩、重クロム酸イオン又は他の重クロム酸塩を実質的に含まない。
【0083】
胞子形成は濃縮されたオーシストを発酵容器中に沈着させ、オーシストを水性培地中で酸素又は次亜塩素酸ナトリウムのような酸化剤と接触させることにより酸化チャレンジに供し、ここで培地中の溶存酸素の飽和度パーセントを好ましいレベルに維持し、酸又は塩基の代替添加によりpHを好ましいレベルの間に制御し、懸濁液をほぼ均質に混合し、温度を好ましい時間にわたって好ましい温度の間にすることにより達成することができる。胞子形成プロセス中に消泡剤を添加することができる。
【0084】
胞子形成に使用される1つの適切な酸化剤は酸素である。酸素は、空気の形態で、又は純粋な酸素として添加することができる。胞子形成に使用される別の適切な酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウムである。
【0085】
胞子形成の間、水性媒体中の溶存酸素含量の飽和度パーセントは、典型的には飽和の少なくとも30%~50%に維持される。溶存酸素の飽和度パーセントは胞子形成オーシストの一貫したより高い収率を達成するために、空気又は分子状酸素を供給することによって制御される。
【0086】
溶存酸素の飽和度パーセントは、上記範囲を満たすのに十分な速度で混合物に空気をバブリングすることによって維持することができる。純粋な酸素は必要なパーセントの溶存酸素を維持するために、混合物を通してバブリングされてもよい。酸素の流れが発泡を引き起こすほど急速でないように注意すべきである。所望であれば、消泡剤、例えば、Antifoam A(Sigma‐Aldrich,St.Louis,Moから入手可能)を添加してもよい。酸素は実用的ないずれかの手段によって添加される。酸素は、より少ない流量が必要とされる場合、例えば、好ましい溶存酸素飽和度パーセントを維持するために、酸素消費がピーク胞子形成に対して比較的低い場合、両方の空気を添加することによって添加されてもよい。一方、必要性がより大きい場合、例えば、酸素消費が最大である場合、分子状酸素を添加することができる。酸素は、好ましくは材料1リットル当たり約0.1~約2.0リットルのガス、より好ましくは材料1リットル当たり約0.3~約0.5リットルのガスの流量で添加される。より少ない酸素が必要とされる場合、添加されるガスは空気からなり、より多くの酸素が必要とされる場合、分子状酸素からなるので、流量は、溶存酸素の好ましい飽和度パーセントを維持する必要性がより大きいにもかかわらず、一定に維持されてもよい。好ましい発酵槽はほぼ一定の流量を制御しながら、必要に応じて空気の添加から分子状酸素に自動的に変換する。
【0087】
pHレベルは、好ましくは約7.0~約7.7、より好ましくは7.2~約7.5に維持され、さらに好ましくは約7.4に維持される。胞子形成培地のpHレベルは、酸又は塩基を添加することによって制御される。好ましい実施形態において、水酸化ナトリウム(5N)又は硫酸(5N)のいずれかが、代替的に、pHを7.4付近に維持するために必要に応じて胞子形成培地に添加される。発酵容器を使用する場合、酸及び/又は塩基は、発酵槽上の発酵容器の自動的に制御される蠕動ポンプを使用することによって添加され得る。
【0088】
胞子形成培地の温度は、胞子形成を通して制御される。オーシストは、約43℃、好ましくは約15℃~約38℃、より好ましくは約20℃~30℃、さらに好ましくは約28℃±1℃までの凍結を実質的に回避する温度で胞子形成容器内に配置される。胞子形成の速度は温度依存性であり、その結果、胞子形成に必要な時間は一般に、より高い温度でより短くなることは、当業者に明らかである。
【0089】
胞子形成プロセスを通して、胞子形成培地を混合する。胞子形成培地をほぼ均質な状態に混合するために、任意の適切な混合方法を使用することができる。混合の正確な方法は、使用される容器に依存して変化する。例えば、ボトル又はフラスコが使用される場合、混合は、振盪機、又は磁気撹拌機若しくは機械撹拌機の使用によって達成され得る。バット又は発酵槽が使用される場合、機械的撹拌機(例えば、パドル撹拌機)が好ましい。
【0090】
胞子形成は12~18時間以内に実質的に完了するが、約72時間に先立つ胞子形成オーシストの除去は生存率を減少させる。従って、胞子形成オーシストは好ましくは胞子形成オーシストのより安定な集団を提供するために、好ましい期間、上記の胞子形成条件下で維持される。オーシストは胞子形成を生じさせるために、好ましくは約72~120時間、より好ましくは72~110時間、さらに好ましくは72~96時間、上記条件に維持される。
【0091】
胞子形成のモニタリングは、実施者が生存可能な胞子形成オーシストのより高い収率に到達するのを助けるのであろう。任意選択で、胞子形成は、オーシストの顕微鏡検査によって確認することができる。
【0092】
胞子形成に続いて、胞子形成オーシストを胞子形成容器から取り出し、胞子形成培地を含まないように洗浄し、任意の適切な方法、好ましくは濾過によって濃縮する。全消毒プロセスは一般に、2つの段階で行われる:(1)汚染物質を最初に非無菌的に除去することができ;続いて(2)無菌条件下で行われる胞子形成オーシスト培地の消毒。このプロセスの目的は胞子形成オーシストを収集し、汚染物質を濾過することである。さらなる目的は、好ましくは濾過によってオーシストを濃縮することである。しかし、遠心分離を用いて胞子形成オーシストを濃縮することもできる。さらなる目的は消毒剤、好ましくは次亜塩素酸ナトリウム(胞子形成オーシストを無傷のままにする)で懸濁液を消毒し、次いで消毒剤を除去し、次いで胞子形成オーシストを濃縮することである。
【0093】
一実施形態では、胞子形成培地からの胞子形成オーシストの分離がボトル遠心分離、デカンタ遠心分離、又はハイドロサイクロンなどによる遠心分離に基づく分離によって達成することができる。バッチサイズの体積は遠心分離に基づく分離の様式を決定し、当業者によって決定され得る。遠心分離に基づく分離方法のいずれか1つからの固体画分を回収する。遠心分離ユニットに装填されたオーシストの約5%超が無価値画分、この実施形態では液体画分中にある場合、前記画分は、固体画分と混合され、遠心分離ユニットを通して再循環される。次いで、回収された固体は、好ましくは濾過によって、より好ましくは接線流濾過によって、消毒に適した量に希釈される。
【0094】
胞子形成オーシストは当該分野で公知の方法(例えば、濾過(例えば、米国特許第7,846,685号に記載されるような))によって濃縮され得る。胞子形成オーシストが濃縮されると、それらは、重クロム酸アルカリ金属塩、可溶性重クロム酸塩部分、重クロム酸イオン、又は重クロム酸カリウム以外の化学消毒薬又は消毒薬によって消毒することができる。消毒プロセスは、無菌環境で行われる。好ましい実施形態では、胞子形成オーシストを濃縮するために使用される濾過装置内で消毒が達成される。別の実施形態では、胞子形成オーシストを含む保持液をフィルターから洗浄することができ、濾過装置とは別の容器内で消毒が達成される。胞子形成オーシストを消毒するために使用される任意の濾過ユニットは、消毒されていない胞子形成オーシストを添加する前に消毒されるべきである。一実施形態では、濾過ユニットがオートクレーブ処理によって滅菌される。別の実施形態では、濾過ユニットが約250℃の蒸気を約20psiで少なくとも約30分間システムに通すことによって滅菌される。さらに別の代替実施形態ではユニットがシステムを5%の次亜塩素酸ナトリウムで少なくとも約10分間処理することによって化学的に滅菌され、次亜塩素酸ナトリウムは少なくとも約5重量%の利用可能な塩素を含有する。
【0095】
胞子形成オーシストを消毒するために使用される薬剤は好ましくは細菌及びウイルスを殺すが、胞子形成オーシストを殺さないものである。好ましくは、使用される消毒剤が感染性嚢疾患ウイルス(IBDV)、ニワトリ貧血(CAV)ウイルス、及び関連細菌を殺す。
【0096】
好ましい実施形態において、使用される消毒剤は、次亜塩素酸ナトリウムである。使用される消毒剤の濃度は、消毒を達成するために選択される薬剤によって変化する。より好ましい実施形態では次亜塩素酸ナトリウムが好ましくは約1%~約10%の範囲、より好ましくは約2%~約5%の範囲の濃度で使用され、パーセントは利用可能な塩素の重量パーセントを表す。胞子形成オーシストが消毒剤に曝される時間は、消毒剤の濃度及び胞子形成オーシストのバッチの量のような因子に依存して変化する。一実施形態では、胞子形成オーシストが約5%の次亜塩素酸ナトリウムで、約2~約20分、より好ましくは約5~約18分、最も好ましくは約10分間処理され、ここで、パーセントは利用可能な塩素の重量パーセントを表す。
【0097】
本発明の目的のために、胞子形成オーシスト及び胞子形成オーシストを含有する組成物は、オーシストを含有する液体のサンプルが検出可能な量の生きた細菌又は真菌、IBDウイルス又はCAVウイルスを有さない場合、消毒されているとみなされる。生きた細菌又は真菌、IBDウイルス又はCAVウイルスの検出は当該分野で公知の任意の方法(例えば、米国特許第7,846,685号に記載されるような)によって達成され得る。
【0098】
消毒された胞子形成オーシストは、好ましくは室温と、凍結を実質的に回避する低温との間の任意の温度で保存される。好ましい実施形態では、胞子形成オーシストが約1℃~約10℃、より好ましくは約2℃~約7℃、最も好ましい実施形態では約4℃~約5℃で保存される。代替の実施形態では、胞子形成オーシストが20℃~約30℃、より好ましくは22℃~約27℃、最も好ましくは約25℃の温度で保存される。
【0099】
必ずしも必要ではないが、胞子形成オーシストが保存される希釈剤に緩衝剤を添加してもよい。緩衝液は、無菌水の使用よりも生存率を延長するので、貯蔵組成物に利用される。リン酸緩衝液、重炭酸緩衝液、クエン酸及びトリス緩衝液を含むが、これらに限定されない、多くの適切な緩衝液が、当該分野で公知である。1つの好ましい態様において、希釈剤は0.5XPBSを含む。好ましい実施形態では、最終的にコクシジウム症の予防のためのワクチンとして消費者によって使用される容器に移すのに適した胞子形成オーシストの濃度をもたらす量の緩衝液が使用される。
【0100】
さらに別の実施形態では、貯蔵目的に使用される希釈剤がチャレンジ後の性能の低下を改善する組成物、及び胞子形成オーシストを懸濁状態に維持する増粘剤を含む。適切な増粘剤には、デンプン、ガム、多糖類、及びそれらの混合物が含まれる。チャレンジ後の性能の低下を改善するための適切な組成物としては、サイトカイン、成長因子、ケモカイン、マイトジェン及びアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。チャレンジ後の性能を改善するためのこのような組成物は当業者に周知であり、そして例えば、Plotkin及びOrenstein, Vaccines, Third Ed., W.B.Saunders,1999; Roittら、Immunology, Fifth Ed., Mosby,1998;並びにBrostoffら、Clinical Immunology, Gower Medical Publishing,1991に見出され得る。チャレンジ後の性能を改善するための組成物の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:Alum(リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウム)、フロイントアジュバント、リン酸カルシウム、水酸化ベリリウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、サポニン、ポリアニオン(例えば、ポリA:U、Quil A、イヌリン、リポ多糖エンドトキシン、リポソーム、リゾレシチン、ザイモサン、プロピオニバクテリア、マイコバクテリア、及びサイトカイン(例えば、インターロイキン‐1、インターロイキン‐2、インターロイキン‐4、インターロイキン‐6、インターロイキン‐12、インターフェロン‐α、インターフェロン‐γ、顆粒球コロニー刺激因子)。1つの好ましい実施形態において、希釈剤は、用量(乾燥重量)あたり10μg~100μg、より好ましくは用量(乾燥重量)あたり約50μgのプロピオニバクテリウム・アクネス(P.acnes)を含む。好ましい濃度は、約3.0~約5.0ミリグラム/ミリリットルのワクチン、最も好ましくは約4.2ミリグラム/ミリリリットルである。
【0101】
本発明のさらなる実施形態において、消毒された胞子形成オーシストは、酸化剤を含む組成物中に保存される。酸化剤は胞子形成媒体中で、好ましくは0.5Vより大きい、より好ましくは0.75~3.0Vの間、最も好ましくは約1.0~2.0Vの間の還元電位を有する。滅菌水中に存在する酸素もまた、酸化剤として使用することができる。滅菌水又は任意の他の酸化剤が使用される場合、追加の酸素又は空気は、貯蔵組成物に組み込まれない。他の適切な酸化剤の例としては、水性臭素、二酸化塩素、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、過塩素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、及び次亜塩素酸(hydrochlorous acid)が挙げられるが、これらには限定されず、これらはそれぞれ、約1.09V、1.64V、1.78V、1.49V、1.37V、1.49V、及び1.63Vの還元電位を有する。添加される酸化剤の必要量は使用される薬剤及び原生動物の種によって変化し、当業者によって経験的に決定され得る。エイメリア属の原生動物については、胞子形成オーシスト懸濁液に一旦添加される酸化剤の好ましい濃度が、過塩素酸カリウムについては約0.1~約0.75重量%、過マンガン酸カリウムについては約0.5~約2.9重量%、次亜塩素酸ナトリウムについては約0.001~約0.1重量%、次亜塩素酸(hydrochlorous acid)については約1ppm~約5ppmを含む。
【実施例】
【0102】
例
以下の実施例は、本発明の適用の例示を提供することを意図する。以下の実施例は、本発明の範囲を完全に規定又は他の方法で限定することを意図するものではない。
【0103】
実施例1:エイメリアオーシスト試料中の微生物バイオバーデンの阻害
様々な濃度でのホルマリンの添加
エイメリアオーシストサンプル中の微生物バイオバーデンのレベルに対するホルマリンの異なる濃度の影響を調べるために選択されたモデルは、Bacillus subtilis及びPenicillium chrysogenumを利用した。これらの生物の各々の培養物を調製し、10~100又は1~10cfu/mLのいずれかを含むストックに希釈した。低レベルの生物(0~10cfu/mL)はオーシストの消毒後に検出されるバイオバーデンの量のより典型的なものであり、したがって、これが防腐剤の標的である。防腐剤を、多くのエイメリアオーシストの消毒後に所望の濃度で添加した
【0104】
エイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)オーシストのアリコートを消毒後、ゲンタマイシン及びアムホテリシンBの添加前に除去した。オーシストをB.subtilis及びP.chrysogenumで1~10cfu/mL又は10~100cfu/mLの濃度でスパイクした。ホルマリンを、以下の表1の処置群の説明に従って、0.01%又は0.025%のいずれかの最終濃度まで添加した。次いで、各処置群のバイアルを2~7℃で保存し、生物の目に見える増殖について1年まで毎月観察した。目に見える微生物増殖に関して観察された結果を表1に要約する。
表1。12ヵ月間の保存後のE.acervulinaオーシストにおけるホルマリンによる微生物増殖の阻害
【表1】
G=増殖;NG=増殖なし。
【0105】
結果は、ホルマリンを0.025%の濃度でオーシストに添加した場合、1~10cfu/mL及び10~100cfu/mLの両方で、B.subtilis及びP.chrysogenumの目に見える増殖が冷蔵温度で12ヶ月まで保存した場合に阻害されることを実証した。0.010%の濃度で添加したホルマリンは~1~10cfu/mLのB.subtilis及びP.chrysogenumの目に見える増殖を阻害したが、10~100cfu/mLでは阻害しなかった。
【0106】
従って、全体として、これらの研究は0.025%ホルマリンが1~10又は10~100cfu/mLのいずれかで微生物バイオバーデンを阻害するのに最も有効な濃度であることが見出されたが、0.01%ホルマリンというより低い濃度は1~10cfu/mLで微生物バイオバーデンを阻害するのに同様に有効であった。
【0107】
実施例2:コクシジウム症ワクチンにおける微生物バイオバーデンの阻害
ホルマリンの添加による調製
この実施例では、E.acervulina、E.maxima及びE.tenellaオーシストを含有するがゲンタマイシン及びアンホテリシンBを欠くADVENT(登録商標)コクシジウム症ワクチンの抗生物質フリーバージョン(本明細書ではAF ADVENTと呼ぶ)を調製し、次いで、1~10又は10~100CFU/mlのいずれかでB.subtilis及びP.chrysogenumでスパイクした。次に、ホルマリンを、以下の表2の処置群の説明に従って、0.0028%又は0.0071%のいずれかの最終濃度まで添加した。次いで、各処置群のバイアルを2~7℃で保存し、生物の目に見える増殖について1年まで毎月観察した。目に見える微生物増殖に関して観察された結果を表2に要約する。
表2。12ヶ月間の保存後のAF ADVENTにおけるホルマリンによる微生物増殖の阻害
【表2】
G=増殖;NG=増殖なし。
【0108】
全ての処置群は、12ヶ月のインキュベーション後に肉眼的増殖の存在について観察された。B.subtilis及びP.chrysogenumを、0.0028%ホルマリンを含有するワクチンに添加した場合、目に見える増殖が観察された。しかし、0.0071%の最終ホルマリン濃度では、バイオバーデンが約10~100cfu/mLのB.subtilis及びP.chrysogenumの場合にのみ目に見える増殖が観察されたが、約1~10cfu/mLのバイオバーデンでは観察されなかった。1~10cfu/mLのバイオバーデンはオーシストの消毒後に検出されるバイオバーデンの量の典型であるので、これらの結果は最終ワクチン製剤中の0.0071%の最終ホルマリン濃度が微生物バイオバーデンの阻害に有効であることを実証する。
【0109】
実施例3:ホルマリンがオーシスト生存率に及ぼす影響
各エイメリア種(E.acervulina, E.maxima及びE.tenella)のオーシストロット及びワクチンを用いて、オーシスト生存率に対するホルマリンの効果を調べた。生存率は最初にホルマリンを添加する前に、次いで2~7℃で1年間貯蔵した後に測定した。結果を以下の表3に要約する。
表3。12ヵ月間保存後のエイメリアオーシストロット及びワクチンの生存率
【表3】
【0110】
結果は貯蔵1年後、0.010%以下の濃度のホルマリンはオーシスト生存率に悪影響を及ぼさないことを実証した。0.025%のホルマリン添加は、長期保存後のE.acervulinaオーシストのみの生存率に影響を及ぼした。
【0111】
別の研究は、より高い濃度のホルマリンの使用が0.025%以下の使用と比較して、オーシストに対する毒性の増加をもたらし、それによって、オーシスト生存率を維持するために0.025%以下の濃度が好ましい可能性を示すことを実証した。これらの研究からの例示的な結果を以下の表4に示す:
表4。ホルマリンの高濃度がオーシスト生存率に及ぼす影響
【表4】
*ホルマリン0%で保存した同じロットのオーシストと比較して
【0112】
ワクチン製剤において、0.0028%又は0.0071%ホルマリンのいずれかの最終濃度の存在は、オーシスト生存率に影響しなかった。
【0113】
実施例4:オーシスト生存率に対する追加の消毒剤の効果
この実施例では、追加の消毒剤化合物を、ホルマリンと比較して、エイメリアオーシストサンプル中の微生物増殖を阻害するそれらの能力について試験した。B.subtilis及びP.chrysogenumを用いてE.maximaオーシストをスパイクし、いくつかの消毒剤の最小阻害濃度を測定した。次いで、消毒剤をE.maximaオーシストに添加し、オーシストを2~7℃で6ヶ月間保存した。オーシストを生存率についてアッセイし、消毒剤による生存率の減少を、0.5×PBSのみで保存した同じロットのオーシストと比較することによって計算した。例示的な結果を以下の表5に要約する。
表5。2~7℃で6ヶ月間保管した後のオーシスト生存率に対する最小阻害濃度での消毒剤の影響
【表5】
*消毒剤0%で保存した同じロットのオーシストと比較して
【0114】
結果は、試験した他の消毒剤化合物がホルマリンよりも有意に大きな程度でオーシスト生存率に影響を及ぼすことを実証したが、それによって、オーシスト生存率に有意に影響を及ぼさないが、微生物バイオバーデンを阻害するホルマリンの有利な特性を実証した。
【0115】
本発明の詳細な説明及び上記の実施例に照らして、本発明のいくつかの態様が達成されることを理解することができる。
【0116】
本発明は、他の当業者に本発明、その原則、及びその実用的な用途を理解させるために、例示及び例として詳細に説明されていることを理解されたい。本発明の特定の配合物及びプロセスは提示された特定の実施形態の説明に限定されず、むしろ、説明及び実施例は以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物の観点から見られるべきである。上記の例及び説明のいくつかは本発明が機能し得る方法についてのいくつかの結論を含むが、本発明者らはそれらの結論及び機能によって拘束されることを意図せず、それらを可能な説明としてのみ述べる。
【0117】
さらに、記載された本発明の特定の実施形態は、本発明を網羅的な又は限定するものとして意図されておらず、多くの代替、修正、及び変形が前述の実施例及び詳細な説明に照らして当業者に明らかであることが理解されるべきである。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲の精神及び範囲内にある、そのような代替、修正、及び変形のすべてを包含することが意図される。