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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20230224BHJP
   C10M 101/02 20060101ALI20230224BHJP
   C10M 107/50 20060101ALI20230224BHJP
   C10M 105/06 20060101ALI20230224BHJP
   C10M 105/38 20060101ALI20230224BHJP
   C10M 107/34 20060101ALI20230224BHJP
   C10M 107/24 20060101ALI20230224BHJP
   C10M 107/02 20060101ALI20230224BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230224BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
C09K5/04 F
C09K5/04 A
C09K5/04 E
C10M101/02
C10M107/50
C10M105/06
C10M105/38
C10M107/34
C10M107/24
C10M107/02
F25B1/00 396U
F25B1/00 396Z
C10N40:30
【請求項の数】 54
(21)【出願番号】P 2019561256
(86)(22)【出願日】2018-05-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 GB2018051344
(87)【国際公開番号】W WO2018211283
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】1707909.6
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516030797
【氏名又は名称】メキシケム フロー エセ・ア・デ・セ・ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ロウ
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-508597(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156190(WO,A1)
【文献】特開平10-168436(JP,A)
【文献】特開平04-350471(JP,A)
【文献】国際公開第2014/134821(WO,A1)
【文献】特表2016-531177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00-5/20
C10M 101/00-177/00
C10N 10/00- 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(i)10~45重量%の1,1-ジフルオロエテン(フッ化ビニリデン、R-1132a)と、
(ii)5~70重量%の二酸化炭素(CO、R-744)と、
(iii)5~30重量%のペンタフルオロエタン(R-125)と、
(iv)1~50重量%のトリフルオロメタン(R-23)と、
を含み、前記組成物が3700未満のGWPを有する、組成物。
【請求項2】
15~40重量%のR-1132aを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
20~40重量%のR-1132aを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
10~70重量%の二酸化炭素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
25~70重量%の二酸化炭素を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
25~35重量%のR-1132aと、35~50重量%の二酸化炭素と、5~15重量%のR-23と、5~30重量%のR-125と、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
25~30重量%のR-1132aと、35~50重量%の二酸化炭素と、10~25重量%のR-125と、5~20重量%のR-23と、を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記R-1132aが50モル%未満の量で存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
R-1132aが30モル%未満の量で存在する、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
上記成分から本質的になる、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
共沸性または疑似共沸性である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、R-1132a単独よりも可燃性が低い、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、R-1132a単独と比較して、
a.より高い可燃限界、
b.より高い発火エネルギー、および/または
c.より低い火炎速度
を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
不燃性である、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
蒸発器または凝縮器内での温度勾配が10K未満である、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
蒸発器または凝縮器内での温度勾配が7K未満である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
臨界温度が0℃よりも高い、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
臨界温度が10℃よりも高い、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
体積冷却能力が、同等のサイクル条件でR-23の体積冷却能力の少なくとも90%である、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
体積冷却能力が、同等のサイクル条件でR-23の体積冷却能力の少なくとも95%である、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
サイクル効率(成績係数、COP)が、置換する既存の冷媒流体よりも少なくとも95%および/または5%以内である、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
圧縮機吐出温度が、同等のサイクル条件で、R-23の圧縮機吐出温度の15K以内である、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
潤滑剤と、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物と、を含む、組成物。
【請求項24】
前記潤滑剤が、鉱油、シリコーン油、ポリアルキルベンゼン(PAB)、ポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリアルキレングリコールエステル(PAGエステル)、ポリビニルエーテル(PVE)、ポリ(アルファ-オレフィン)およびそれらの組み合わせから選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記潤滑剤がPAGまたはPOEから選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物がペンタンをさらに含む、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項27】
安定剤と、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物と、を含む、組成物。
【請求項28】
前記安定剤が、ジエン系化合物、ホスフェート、フェノール化合物およびエポキシド、ならびにそれらの混合物から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
難燃剤と、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物と、を含む、組成物。
【請求項30】
前記難燃剤が、トリ-(2-クロロエチル)-ホスフェート、(クロロプロピル)ホスフェート、トリ-(2,3-ジブロモプロピル)-ホスフェート、トリ-(1,3-ジクロロプロピル)-ホスフェート、リン酸二アンモニウム、様々なハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、アルミニウム三水和物、ポリ塩化ビニル、フッ素化ヨードカーボン、フッ素化ブロモカーボン、トリフルオロヨードメタン、ペルフルオロアルキルアミン、ブロモフルオロアルキルアミンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物を含む、熱伝達装置。
【請求項32】
前記熱伝達装置が冷却装置である、請求項31に記載の熱伝達装置。
【請求項33】
前記熱伝達装置が、超低温冷却システムを含む、請求項31または32に記載の熱伝達装置。
【請求項34】
前記超低温冷却システムが、ブラストフリーザーである、請求項33に記載の熱伝達装置。
【請求項35】
前記熱伝達装置がカスケードシステムを含む、請求項31~34のいずれか一項に記載の熱伝達装置。
【請求項36】
物品を冷却する方法であって、請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物を凝縮することと、その後、冷却される前記物品の近くで前記組成物を蒸発させることと、を含む、方法。
【請求項37】
物品を加熱する方法であって、加熱される前記物品の近くで、請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物を凝縮することと、その後、前記組成物を蒸発させることと、を含む、方法。
【請求項38】
バイオマスから物質を抽出する方法であって、バイオマスを請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物を含む溶媒と接触させることと、前記溶媒から前記物質を分離することと、を含む、方法。
【請求項39】
物品を洗浄する方法であって、前記物品を請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物を含む溶媒と接触させることを含む、方法。
【請求項40】
水溶液または微粒子固体マトリックスから材料を抽出する方法であって、前記水溶液または前記微粒子固体マトリックスを請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物を含む溶媒と接触させることと、前記溶媒から前記材料を分離することと、を含む、方法。
【請求項41】
熱伝達装置を改造する方法であって、既存の熱伝達組成物を除去するステップと、請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物を導入するステップと、を含む、方法。
【請求項42】
前記熱伝達装置が、冷却装置である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記冷却装置が、超低温冷却システムである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記冷却システムが、コンパートメントを-60℃未満に冷却する、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記冷却システムが、コンパートメントを-70℃未満に冷却する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
既存の化合物または組成物を含む製品の動作から生じる環境影響を低減する方法であって、前記既存の化合物または組成物を、請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物に少なくとも部分的に置換することを含む、方法。
【請求項47】
温室効果ガス排出権を生み出す方法であって、(i)既存の化合物または組成物を、請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物に置換することであって、請求項1~30のいずれか一項に記載の前記組成物が前記既存の化合物または組成物よりも低いGWPを有する、置換することと、(ii)前記置換ステップに対して温室効果ガス排出権を取得することと、を含む、方法。
【請求項48】
本発明の前記組成物の使用が、前記既存の化合物または組成物の使用によって達成されるものよりも、低い総等価温暖化影響および/または低いライフサイクル炭素排出量をもたらす、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
空調、冷却、熱伝達、気体誘電体、火炎抑制、溶媒、洗浄剤、局所麻酔剤、および膨張用途の分野の製品に対して実施される、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記製品が、熱伝達装置または溶媒から選択される、請求項46または49に記載の方法。
【請求項51】
前記製品が、熱伝達装置である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記熱伝達装置が、超低温冷却システムである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記既存の化合物または組成物が、熱伝達組成物である、請求項46~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記既存の化合物または組成物が、前記熱伝達組成物がR-508A、R-508B、R-23およびR-13B1から選択される冷媒である、請求項53に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、好ましくは、熱伝達組成物、特に、R-23、R-13B1、R-508AまたはR-508Bなどの既存の冷媒の代替品として適し得る超低温熱伝達組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
先行公開文献の列挙もしくは考察または本明細書におけるいかなる背景技術も、文献もしくは背景技術が技術水準の一部であるか、または技術常識であることの認識として必ずしも解釈されるべきではない。
【0003】
例えばヒートポンプおよび空調システムなどの機械式冷却システムおよび関連熱伝達装置がよく知られている。そのようなシステムでは、冷媒液は低圧で蒸発し、周囲のゾーンから熱を奪う。次に、生成された蒸気は圧縮されて凝縮器に送られ、そこで凝縮されて第2のゾーンに熱が放出される。凝縮液は膨張弁を介して蒸発器に戻され、そうしてサイクルが完了する。蒸気を圧縮して液体を汲み上げるのに必要な機械的エネルギーは、例えば、電気モーターまたは内燃機関によって提供される。
【0004】
「ブラストフリーザー」という装置は、密閉されたコンパートメント内の凍結される製品を、再循環する低温空気と接触させることにより、食品または医薬品を急速冷凍するために使用される。
【0005】
従来の食品急速冷凍では、単段冷却システムを利用して、約-18~約-30℃の温度まで急速に冷却する。これに使用される典型的な冷媒は、R-404A(44重量%のペンタフルオロエタン(R-125)、52重量%の1,1,1-トリフルオロエタン(R-143a)および4重量%の1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a))が考えられる。
【0006】
より低い冷却温度を使用すると、長距離にわたって高価値の魚介類(例えば、ウニ、メカジキ、マグロ)の海上輸送が可能になることがわかっている。いくつかの海運会社は、約-60℃の温度を維持できる冷蔵輸送コンテナシステム(「リーファー」)を提供している。これらのカスケードシステムでは、トリフルオロメタン(R-23)を使用した低温冷却ループがコンテナの空気を-60℃に冷却し、その熱を第2の高温冷却ループ(R-134aまたはR-404Aを使用)に放出する。高温段は、周囲の空気へ熱を放出する。これらのシステムはうまく機能するが、R-23のGWPは14,800と非常に高い。したがって、この用途でR-23と置換することができる、より低いGWPを有する低可燃性または不燃性の流体を使用することが望ましいと考えられる。
【0007】
また、医薬品業界では、参照により本明細書に援用する、2016年4月19日、CRC Pressによって発行されたLouis Rey編集の参考研究論文「Freeze-Drying/Lyophilization of Pharmaceutical and Biological Products,Third Edition」で説明されているように、低温での急速凍結を使用して、有効成分およびその他の生物由来の材料を凍結および保存している。具体例には、インスリン、ワクチン、組織サンプルが含まれるが、これらに限定されない。これらのシステムで使用される従来の冷媒には、ブロモトリフルオロメタン(R-13B1)、R-23、R-508A(39%のR-23、61%のR-116)およびR-508B(46%のR-23、56%のR-116)が含まれ、動作温度の範囲は約-60℃~約-90℃である。
【0008】
R-23(およびカスケードシステムで使用される他の低温冷媒)の実現可能な代替品を開発する際に考慮する必要がある、以下の冷媒および用途の特性がいくつかある。
・低可燃性
・適切な動作温度
・R-23と同様の動作圧力
・冷媒としての性能(例えば、冷却能力、エネルギー効率)
・冷媒の最小温度勾配
・低地球温暖化係数(GWP)
【0009】
したがって、適切な冷媒の設計には、実現可能な代替品に達するために、組成物および成分の、情報に基づいた複数の選択をすることが含まれる。
【0010】
不燃性を評価する1つの方法は、ASHRAE Standard34:2016に規定されている可燃性分析方法論を適用することである。それには、潜在的に可燃性の最悪組成を特定するために、冷媒混合物に適用すべき漏洩シナリオの範囲が規定されている。
【0011】
流体を既存の機器の改造または変換用の流体として使用する場合、または(例えば、本質的に不変のR-23システム設計を使用する)新しい機器への「ドロップイン」として使用する場合、既存の設計は、不燃性流体の使用に基づいたものであろうことから、不燃性が非常に望ましい。特に、大規模システムおよび海上輸送(リーファー)用途では、あらゆる状況(漏洩を含む)において不燃性が非常に望ましい。
【0012】
流体の特性として許容できるほど低い毒性を有することも有利である。
【0013】
体積能力(所定サイズの圧縮機で達成可能な冷却力の指標)およびエネルギー効率は、熱伝達特性を備えたあらゆる組成物の重要な考慮事項である。これは、低温段でのいかなる非効率もカスケードの最上段の圧縮機の電力消費を増加させるため、カスケード動作において特に当てはまる。
【0014】
R-170(エタン)はGWPが非常に低く、冷却性能が許容範囲であり、毒性が低いが、その高い可燃性により用途が制限される。例えば、安全規制により、機器内の冷媒の最大充填量が制限される場合がある。
【0015】
R-744(二酸化炭素)は不燃性であるが、動作温度がR-744の三重点である-56.7℃未満であるため、低温カスケードシステムの下段で単独で使用することはできない。これは、システムの低圧セクションで固体二酸化炭素(ドライアイス)が形成され、閉塞、制御不良、および非効率的な動作が発生する可能性があることを意味する。
【0016】
R-1132a(1,1-ジフルオロエテン、フッ化ビニリデンとしても知られている)もまた、GWPが低く、毒性が許容範囲である。R-1132aの可燃性は、エタンと比較して低いが、それでもASHRAE可燃性クラス2(「弱燃性」)である。純粋なR-1132aの熱力学的エネルギー効率は、R-508の熱力学的エネルギー効率に近く、R-23の熱力学的エネルギー効率よりも優れているが、その冷却能力は、R-508およびR-23と比較して低い。
【発明の開示】
【0017】
したがって、GWPが低いなどの改善された特性を有し、さらに許容範囲の冷却性能、燃焼特性および毒性を有する代替冷媒を提供する必要がある。また、ほとんどまたはまったく変更を加えずに、冷却装置などの既存の装置で使用できる代替冷媒を提供する必要もある。
【0018】
本発明は、1,1-ジフルオロエテン(フッ化ビニリデン、R-1132a)と、二酸化炭素(CO、R-744)と、ペンタフルオロエタン(R-125)と、トリフルオロメタン(R-23)およびヘキサフルオロエタン(R-116)のうちの1つ以上と、を含む組成物を提供することにより、上記および他の欠陥に対処する。
【0019】
本発明は、冷媒、好ましくは急速冷凍装置での使用に適した低温冷媒としての本発明の組成物の使用も提供する。冷媒として本発明の組成物を使用することにより到達される温度は、-60℃以下、例えば-70℃以下、好ましくは-80℃以下、さらには-90℃以下であってもよい。
【0020】
驚くべきことに、本発明の組成物は、適切な燃焼特性、R-23と同様の動作圧力、R-23と同等またはそれ以上の冷却性能、望ましい温度勾配および低GWPの組み合わせを示すことがわかった。
【0021】
本発明の組成物は、約1~約90重量%、例えば約1~約80重量%、約1~約70重量%、または約1~約60重量%のR-1132aを含んでもよい。好ましくは、組成物は、約1~約50重量%、例えば約5~約45重量%、約10~約45重量%、約15~約40重量%のR-1132aを含んでもよい。有利には、組成物は、約20~約40重量%のR-1132a、好ましくは約25~約35重量%のR-1132aを含んでもよい。
【0022】
本発明の組成物は、約1~約90重量%、例えば約1~約80重量%、約5~約70重量%、または約10~約60重量%の二酸化炭素を含んでもよい。好ましくは、組成物は、約25~約60重量%、例えば約30~約55重量%、さらにより好ましくは約35~約50重量%の二酸化炭素を含んでもよい。
【0023】
本発明の組成物は、驚くべきことに、システム内にドライアイスを形成することなく、-56.7℃(二酸化炭素の三重点)未満で動作することができる。
【0024】
本発明の組成物は、約1~約90重量%、例えば約1~約80重量%、約1~約70重量%または約1~約60重量%のR-125を含んでもよい。好ましくは、組成物は、約1~約50重量%、例えば約5~約45重量%、約5~約30重量%、さらには約10~約25重量%を含む。
【0025】
本発明の組成物は、約1~約90重量%、例えば約1~約80重量%、約1~約70重量%、または約1~約60重量%の第4の成分を含んでもよい。好ましくは、本発明の組成物は、約1~約50重量%の第4の成分を含んでもよい。
【0026】
一実施形態では、第4の成分はR-23を含む、またはR-23である。したがって、本発明の好ましい組成物は、R-1132a、CO、R-125およびR-23を含む。
【0027】
好ましい実施形態では、約20~約40重量%のR-1132aと、約30~約60重量%の二酸化炭素と、約1~約20重量%のR-23と、約1~約35重量%のR-125と、を含む組成物が提供される。
【0028】
有利には、約25~約35重量%のR-1132aと、約35~約50重量%の二酸化炭素と、約5~約15重量%のR-23と、約5~約30重量%のR-125と、を含む組成物が提供される。
【0029】
好ましい実施形態では、約25~約30重量%のR-1132aと、約35~約50重量%の二酸化炭素と、約10~約25重量%のR-125と、約5~約20重量%のR-23と、を含む組成物が提供される。
【0030】
別の実施形態では、第4の成分はR-116を含む、またはR-116である。したがって、本発明の好ましい組成物は、R-1132a、CO、R-125およびR-116を含む。
【0031】
好ましい実施形態では、約30~約60重量%の二酸化炭素と、約10~約40重量%のR-1132aと、約5~約30重量%のR-125と、約1~約20重量%のR-116と、を含む組成物が提供される。
【0032】
本発明の好ましい組成物は、約35~約55重量%の二酸化炭素と、約15~約35重量%のR-1132aと、約10~約30重量%のR-125と、約1~約15重量%のR-116と、を含む。
【0033】
有利には、約25~約35重量%(例えば約30%)のR-1132aと、約40~約50重量%(例えば約45%)の二酸化炭素と、約15~約25重量%(例えば約20%)のR-125と、約1~約15重量%(例えば約5%)のR-116と、を含む組成物が提供される。
【0034】
好ましくは、R-1132aは50モル%未満の量で存在する。上述したASHRAE分別分析では、シリンダーからの蒸気漏洩中に液体および蒸気の組成物を評価する必要があり、2つのレベルの冷媒充填量(最大充填量の15%と90%)および-40℃~+60℃の温度範囲で実施する必要がある。50モル%未満、好ましくは30モル%未満のR-1132aを含む組成物は、分別分析に従えば弱燃性、または好ましくは不燃性の組成物となる。
【0035】
ASHRAE分別分析は本質的に保守的である。R-23と同様、本発明の混合物は、通常、周囲温度に近い臨界温度を有する。これは、システムが動作しておらず、周囲温度まで暖まっている場合、混合物がその臨界温度を超えている可能性があることを意味する。この場合、均質な超臨界流体として存在する。したがって、漏洩は、分別された蒸気ではなく、バルク組成物のものである考えられる。したがって、バルク流体が不燃性である場合、組成物は、可燃性雰囲気を生成する重大なリスクなしにさまざまな用途に使用できるであろう。
【0036】
一実施形態では、組成物は、上記成分から本質的になってもよい。
【0037】
「から本質的になる」という用語は、本発明の組成物が他の成分、特に、熱伝達組成物で使用されることが知られている更なる(ヒドロ)(フルオロ)化合物(例えば、(ヒドロ)(フルオロ)アルカンまたは(ヒドロ)(フルオロ)アルケン)を実質的に含まないことを意味する。「からなる」という用語は、「から本質的になる」の意味に含まれる。
【0038】
一実施形態では、本発明の組成物は、熱伝達特性を有するいかなる成分(特定される成分を除く)も実質的に有しない。例えば、本発明の組成物は、いかなる他のヒドロフルオロカーボン化合物も実質的に有しなくてもよい。
【0039】
「実質的に含まない」および「実質的に有しない」とは、本発明の組成物が組成物の総重量に基づいて0.5重量%以下、好ましくは0.1%以下の上記成分を含むという意味を含む。
【0040】
本発明の組成物は、共沸性または疑似共沸性、好ましくは共沸性であってもよい。
【0041】
共沸性組成物とは、気液平衡において両方の相で同じ組成を有し、その沸点が純粋な成分の沸点よりも低い組成物の意味を含む。本発明の共沸性組成物はすべて、理想性からの正のずれを示すことが見出されている。疑似共沸性組成物は、相当温度で測定したときに沸点が低いほうの純粋な成分の蒸気圧よりも蒸気圧が高いが、平衡蒸気組成が液体組成と異なる場合がある液体組成物の意味を含む。
【0042】
本明細書に記載された化学物質はすべて市販されている。例えば、フルオロケミカルはApollo Scientific(英国)から入手でき、二酸化炭素はLinde AGなどの液化ガス供給会社から入手できる。
【0043】
本明細書で使用される場合、特許請求の範囲を含む本明細書の組成物について言及されるすべてのパーセント量は、特に明記しない限り、組成物の総重量に基づく重量によるものである。
【0044】
重量%での成分量の数値に関連して使用される「約」という用語は、±0.5重量%、例えば±0.2重量%または±0.1重量%の意味を含む。
【0045】
疑義を避けるため、本明細書に記載された本発明の組成物中の成分量の範囲について記載された上限値および下限値は、結果として得られる範囲が本発明の最も広い範囲内にある限り、任意の方法で置き換えることができると理解されたい。
【0046】
本発明の組成物は、オゾン破壊係数がゼロである。
【0047】
GWPは、可燃性、性能、および動作温度範囲に関する他の制約を尊重しながら、できるだけ低くすることが望ましい。
【0048】
組成物は、7,400未満、例えば、5,000未満、4,000未満、または好ましくは3,700未満のGWPを有する。組成物は、有利には、3,000未満、2,500未満、2,000未満、1,500未満、さらには1,000未満のGWPを有する。
【0049】
通常、本発明の組成物は、R-1132aと比較した場合、可燃性の危険性が低減されている。
【0050】
可燃性は、2004年付の付録34頁による試験方法論を用いたASTM Standard E-681を組み込んだASHRAE Standard34:2016に従って決定でき、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0051】
いくつかの実施形態において、組成物は、R-1132a単独と比較して、(a)より高い可燃下限界、(b)より高い発火エネルギー(自然発火エネルギーまたは熱分解と称されることもある)、または(c)より低い火炎速度のうちの1つ以上を有する。好ましくは、本発明の組成物は、23℃での可燃下限界、60℃での可燃下限界、23℃または60℃での燃焼範囲の幅、自然発火温度(熱分解温度)、乾燥空気中での最小発火エネルギー、または火炎速度のうちの1つ以上において、R-1132aと比較して可燃性が低い。可燃限界は、ASHRAE Standard34:2016に規定された方法に従って決定され、自然発火温度は、ASTM E659-78の方法によって500mlガラスフラスコ中で決定される。
【0052】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は不燃性である。例えば、本発明の組成物は、ASHRAE方法論を用いて60℃の試験温度で不燃性である。有利には、約-40℃~60℃の任意の温度で本発明の組成物と平衡状態で存在する蒸気の混合物も不燃性である。
【0053】
一部の用途では、ASHRAE方法論により配合物を不燃性と分類する必要がない場合があり、例えば、冷却装置の充填物を周囲に漏洩させて可燃性混合物を作ることが物理的に不可能な場合、その用途で使用するのに安全になるように、空気中での可燃限界が十分に低くなる流体を開発することが可能である。
【0054】
一実施形態では、本発明の組成物は、ASHRAE分類法に従って、不燃性(クラス1)または10cm/s未満の火炎速度を有する微燃性流体(クラス2L)を示す、1または2Lに分類できる可燃性を有する。
【0055】
温度勾配はシステム内で管理でき、約10K未満の勾配は許容範囲であり、性能への影響はわずかである。約10Kを超える勾配は、熱交換器が勾配影響に対応するように設計されていない限り、予想される性能の低下を引き起こす可能性がある。
【0056】
本発明の組成物は、好ましくは、蒸発器または凝縮器内での温度勾配が約10K未満、さらにより好ましくは約7K未満、例えば約5K未満(例えば3K未満)である。「温度勾配」とは、非共沸性混合冷媒の蒸発または凝縮の過程で起きる温度変化に与えられる用語である。
【0057】
熱伝達組成物の臨界温度は、予想される最大凝縮器温度よりも高くなければならない。これは、通常、臨界温度に近づくとサイクル効率が低下するためである。これが起こると、冷媒の潜熱が減少するため、気体冷媒を冷却することにより、凝縮器での熱放出がさらに行われ、これには、伝達される単位熱量当たりの面積がより多く必要となる。R-508Bの臨界温度は、約11℃であり、R-23の臨界温度は約26℃である。
【0058】
一態様では、本発明の組成物は、臨界温度が約0℃よりも高い、好ましくは約10℃よりも高い、より好ましくは約25℃よりも高い。
【0059】
本発明の組成物は、通常、同等のサイクル条件でR-23の体積冷却能力の少なくとも85%である体積冷却能力を有する。好ましくは、本発明の組成物は、R-23の体積冷却能力の少なくとも90%、例えばR-23の体積冷却能力の約95%~約120%(例えば約96%~約115%)である体積冷却能力を有する。
【0060】
本発明の組成物は、冷媒として使用する場合、通常、蒸発圧力を大気圧より高く維持しながら、-60℃以下、好ましくは-70℃以下、例えば-80℃以下の温度に達することができる。
【0061】
一実施形態では、本発明の組成物のサイクル効率(成績係数、COP)は、置換する既存の冷媒流体(例えば、R-23)の少なくとも95%および/または約5%以内である。
【0062】
好都合には、本発明の組成物の圧縮機吐出温度は、置換する既存の冷媒流体の約15K以内、好ましくは約10K、さらには約5K以内である。
【0063】
本発明の組成物は、通常、装置、例えば低温冷却装置の既存の設計での使用に適しており、確立されたHFC冷媒とともに現在使用されているすべての種類の潤滑剤と適合する。それらは、適切な添加剤の使用により、鉱油に対して任意に安定化または相溶化されてもよい。
【0064】
好ましくは、本発明の組成物は、熱伝達装置で使用される場合、潤滑剤と組み合わされる。
【0065】
好都合には、潤滑剤は、鉱油、シリコーン油、ポリアルキルベンゼン(PAB)、ポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリアルキレングリコールエステル(PAGエステル)、ポリビニルエーテル(PVE)、ポリ(アルファ-オレフィン)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。PAGおよびPOE(特に後者)は、現在、本発明の組成物に好ましい潤滑剤である。
【0066】
有利には、潤滑剤は安定剤をさらに含む。潤滑剤は、好ましくはペンタン(例えば、n-ペンタンまたはイソペンタン)をさらに含んでもよい。ペンタンは、冷媒充填物(例えば、ペンタン、潤滑剤および熱伝達組成物を含む組成物)の約1~約10重量%、例えば約2~約6重量%の量で存在してもよい。
【0067】
好ましくは、安定剤は、ジエン系化合物、ホスフェート、フェノール化合物およびエポキシド、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0068】
好都合には、本発明の組成物は、難燃剤と組み合わせてもよい。
【0069】
有利には、難燃剤は、トリ-(2-クロロエチル)-ホスフェート、(クロロプロピル)ホスフェート、トリ-(2,3-ジブロモプロピル)-ホスフェート、トリ-(1,3-ジクロロプロピル)-ホスフェート、リン酸二アンモニウム、様々なハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、アルミニウム三水和物、ポリ塩化ビニル、フッ素化ヨードカーボン、フッ素化ブロモカーボン、トリフルオロヨードメタン、ペルフルオロアルキルアミン、ブロモフルオロアルキルアミンおよびそれらの混合物からなる群から選択される
【0070】
一実施形態では、本発明は、本発明の組成物を含む熱伝達装置を提供する。
【0071】
好ましくは、熱伝達装置は、冷却装置である。
【0072】
好都合には、熱伝達装置は、ブラストフリーザーなどの超低温冷却システムである。
【0073】
有利には、熱伝達装置は、カスケードシステムを含む。
【0074】
本発明はまた、本明細書に記載の熱伝達装置における本発明の組成物の使用を提供する。
【0075】
本発明のさらなる態様によれば、物品を冷却する方法であって、本発明の組成物を凝縮することと、その後、冷却される物品の近くで当該組成物を蒸発させることと、を含む方法が提供される。
【0076】
本発明の別の態様によれば、物品を加熱する方法であって、加熱される物品の近くで本発明の組成物を凝縮することと、その後、当該組成物を蒸発させることと、を含む方法が提供される。
【0077】
本発明のさらなる態様によれば、バイオマスから物質を抽出する方法であって、バイオマスを本発明の組成物を含む溶媒と接触させることと、溶媒から物質を分離することと、を含む方法が提供される。
【0078】
本発明の別の態様によれば、物品を洗浄方法する方法であって、物品を本発明の組成物を含む溶媒と接触させることを含む方法が提供される。
【0079】
本発明のさらなる態様によれば、水溶液から材料を抽出する方法であって、水溶液を本発明の組成物を含む溶媒と接触させることと、溶媒から材料を分離することと、を含む方法が提供される。
【0080】
本発明の別の態様によれば、微粒子固体マトリックスから材料を抽出する方法であって、微粒子固体マトリックスを本発明の組成物を含む溶媒と接触させることと、溶媒から材料を分離することと、を含む方法が提供される。
【0081】
本発明の別の態様によれば、熱伝達装置を改造する方法であって、既存の熱伝達流体を除去するステップと、本発明の組成物を導入するステップと、を含む方法が提供される。好ましくは、熱伝達装置は冷却装置であり、より好ましくは、装置はブラストフリーザーなどの超低温冷却システムである。好ましくは、冷却システムは、コンパートメントを約-55℃未満、好ましくは約-60℃未満、より好ましくは約-85℃未満、さらには-90℃未満に冷却する。
【0082】
有利には、本方法は、温室効果ガス(例えば、二酸化炭素)排出権の割当を取得するステップをさらに含む。
【0083】
上述の改造方法によると、既存の熱伝達流体は、本発明の組成物を導入する前に、熱伝達装置から完全に除去することができる。既存の熱伝達流体はまた、熱伝達装置から部分的に除去した後、本発明の組成物を導入することもできる。
【0084】
本発明の組成物はまた、単に、望ましい割合でR-1132a、二酸化炭素、R-125および第4の成分(および潤滑剤、安定剤または追加の難燃剤などのさらなる成分)を混合することによって調製してもよい。次いで、組成物を熱伝達装置に添加する(または本明細書に定義する任意の他の方法で使用する)ことができる。
【0085】
本発明のさらなる態様では、既存の化合物または組成物を含む製品の動作から生じる環境影響を低減する方法であって、既存の化合物または組成物を本発明の組成物に少なくとも部分的に置換することを含む方法が提供される。好ましくは、この方法は、温室効果ガス排出権の割当を取得するステップを含む。
【0086】
環境影響とは、製品の動作による温室温暖化ガスの発生および排出を含む。
【0087】
上述のように、この環境影響には、漏洩または他の損失による重大な環境影響を与える化合物または組成物の排出だけでなく、装置が動作中に消費するエネルギーから生じる二酸化炭素の排出も含まれるとみなすことができる。このような環境影響は、総等価温暖化影響(TEWI)として知られる指標によって定量化してもよい。この指標は、例えばスーパーマーケットの冷却システムなどの特定の固定された冷却装置および空調装置の環境影響の定量化に使用されてきた(例えば、http://en.wikipedia.org/wiki/Total_equivalent_warming_impactを参照)。
【0088】
環境影響はさらに、化合物または組成物の合成および製造から生じる温室効果ガスの排出を含むとみなしてもよい。この場合、製造時排出量がエネルギー消費および直接損失効果に加えられ、ライフサイクル炭素排出量(LCCP、例えばhttp://www.sae.org/events/aars/presentations/2007papasavva.pdfを参照)として知られる指標が得られる。LCCPの使用は、自動車空調システムの環境影響を評価する際に一般的である。
【0089】
排出権は、地球温暖化の一因となる汚染物質の排出を削減するために付与され、例えば、預託、取引または売却してもよい。それらは通常、二酸化炭素の換算量で表される。したがって、1kgのR-23の排出が回避された場合、CO換算で1x14,800=14,800kgの排出権が付与される。
【0090】
本発明の別の実施形態において、温室効果ガス排出権を生み出す方法であって、(i)既存の化合物または組成物を本発明の組成物に置換することであって、本発明の組成物が既存の化合物または組成物よりも低いGWPを有する、置換することと、(ii)上記置換ステップに対して温室効果ガス排出権を取得することと、を含む方法が提供される。
【0091】
好ましい実施形態では、本発明の組成物の使用により、既存の化合物または組成物の使用によって達成されるものよりも、低い総等価温暖化影響および/または低いライフサイクル炭素排出量を有する装置をもたらす。
【0092】
これらの方法は、例えば、空調、冷却(例えば、低温および中温冷却)、熱伝達、気体誘電体、火炎抑制、溶媒(例えば、フレーバーおよびフレグランス用のキャリア)、洗浄剤、局所麻酔剤、および膨張用途の分野における任意の適切な製品に対して実施されてもよい。好ましくは、分野は、超低温冷却である。
【0093】
適切な製品の例としては、熱伝達装置、溶媒および機械的動力発生装置があげられる。好ましい実施形態では、製品は、冷却装置または超低温冷却システムなどの熱伝達装置である。
【0094】
既存の化合物または組成物は、置換する本発明の組成物よりも高いGWPおよび/またはTEWIおよび/またはLCCPによって測定されるような環境影響を有している。既存の化合物または組成物は、ペルフルオロカーボン化合物、ヒドロフルオロカーボン化合物、クロロフルオロカーボン化合物、もしくはヒドロクロロフルオロカーボン化合物などのフルオロカーボン化合物を含んでもよく、またはフッ素化オレフィンを含んでもよい。
【0095】
好ましくは、既存の化合物または組成物は、冷媒などの熱伝達化合物または熱伝達組成物である。置換できる冷媒の例としては、R-508A、R-508B、R-23およびR-13B1などのULT冷媒が挙げられる。
【0096】
環境影響を低減するために、任意の量の既存の化合物または組成物が置換されてもよい。これは、置換される既存の化合物または組成物の環境影響、および本発明の置換組成物の環境影響に依存し得る。好ましくは、製品中の既存の化合物または組成物は、本発明の組成物によって完全に置換される。
【0097】
本発明を以下の非限定的実施例により説明する。
【実施例
【0098】
R-1132a、R-744、R-125およびR-23の組成物
本発明の4元組成物の性能をモデル化し、結果を以下の表に示す。表には、GWP、凝縮器勾配および蒸発器勾配、R-23に対する能力およびCOP、吐出温度差および凝縮器圧力差が示されている、表は、特に指定がない限り、重量パーセントとして内容を示す。
【0099】
モデル化で使用されるサイクル条件は、表1のとおりである。
【表1】
【0100】
混合物の計算に使用される熱力学的モデルは、3次状態方程式を使用して気相をモデル化し、ギブズ自由エネルギー相関(ウィルソン式)を使用して、液相および成分蒸気圧の温度相関をモデル化する。流体の2成分相互作用パラメータは、入手可能な場合、測定された相平衡データと相関があった。
【0101】
R-23の体積能力よりも大幅に高い体積能力を有する多くの組成物が特定されており、流体特性を利用する新しいシステム設計に、より適している可能性がある。
【表2A】
【表2B】
【0102】
R-1132a、R-744、R-125、およびR-116の組成物
本発明の4元組成物の性能をモデル化し、結果を以下の表に示す。表には、GWP、凝縮器勾配および蒸発器勾配、R-23に対する能力およびCOP、吐出温度差および凝縮器圧力差、蒸気および液体の最大VDF、R-1132aのモルパーセントが示されている。表は、特に指定がない限り、重量パーセントとして内容を示す。
【0103】
使用される条件は、表1に記載されているとおりである。
【表3A】
【表3B】
【0104】
要約すると、本発明の組成物は、(i)低可燃性または不燃性であり、(ii)既存の超低温冷媒(例えば、R-23)と比較してGWPが低く、(iii)例えば、低勾配および/または冷却能力および/またはエネルギー効率の点で、既存の超低温冷媒(例えばR-23)と比較して、適切な動作温度および圧力において、冷却性能が同等または向上されているなど、予想外の有利な特性の組み合わせを示す。
【0105】
本発明の所与の態様、特徴、またはパラメータの優先度および選択肢は、文脈に別段の指示がない限り、本発明の全ての他の態様、特徴、およびパラメータに関するありとあらゆる優先度および選択肢と組み合わせて開示されている通りであるとみなされるべきである。
【0106】
本発明は、特許請求の範囲によって定義される。