(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 63/00 20060101AFI20230224BHJP
D04H 1/541 20120101ALI20230224BHJP
D04H 1/4382 20120101ALI20230224BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B01D63/00 510
D04H1/541
D04H1/4382
B01D69/10
(21)【出願番号】P 2020109515
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光男
(72)【発明者】
【氏名】江角 真一
(72)【発明者】
【氏名】下里 瑞菜
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-123896(JP,A)
【文献】特開2010-194478(JP,A)
【文献】特開2017-144419(JP,A)
【文献】特開2013-169520(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125583(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110453377(CN,A)
【文献】国際公開第2016/148038(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/004462(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C02F 3/12
D04H 1/541
D04H 1/4382
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主体繊維及びバインダー繊維を含有してなる不織布である膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体において、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有し、バインダー繊維として結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維を含有し、主体繊維の繊維径が25μm以下であり、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体におけるCD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%以上であり、8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m以上であることを特徴とする膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体。
【請求項2】
主体繊維及びバインダー繊維を含有してなる不織布であり、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有し、バインダー繊維として結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維を含有し、主体繊維の繊維径が25μm以下であり、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体におけるCD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%以上であり、8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m以上である膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の製造方法において、不織布に熱カレンダー処理を施す工程を含み、熱カレンダー処理において、加熱金属ロールを抱かない状態で不織布をニップすることを特徴とする膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の製造方法。
【請求項3】
主体繊維及びバインダー繊維を含有してなる不織布であり、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有し、バインダー繊維として結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維を含有し、主体繊維の繊維径が25μm以下であり、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体におけるCD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%以上であり、8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m以上である膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の製造方法において、不織布に熱カレンダー処理を施す工程を含み、熱カレンダー処理において、非加熱ロールを抱いてから不織布をニップすることを特徴とする膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液濾過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造等の分野で、半透膜が広く用いられている。半透膜としては、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂等の多孔質性樹脂で構成されている。しかし、これら多孔質性樹脂単体では機械的強度に劣るため、不織布や織布などの繊維基材からなる半透膜用支持体の片面に半透膜が設けられた複合体の形態である「濾過膜」が使用されている。濾過膜は、半透膜用支持体上に、原料となる高分子材料を溶かした溶液である塗布液を塗布し、ゲル化させて、多孔質性樹脂である微多孔膜を形成させることによって製造することができる。半透膜用支持体には、塗布液が裏抜けしにくいことが求められる。
【0003】
半透膜や濾過膜の使用形態の一つに、膜分離活性汚泥処理法(Membrane Bioreactor、MBR)が挙げられる。膜分離活性汚泥処理法は、有機性汚水の処理に際し、処理水質が安定していることや、維持管理が容易なことから、広く普及している。膜分離活性汚泥処理法では、汚水中の夾雑物を除去した後、生物処理槽(曝気槽)で活性汚泥によって汚水中の有機物質を分解除去し、生物処理槽に浸漬設置した浸漬型膜分離装置で混合液を固液分離し、透過した濾過液を処理水として放流する。
【0004】
また、濾過膜はモジュール化されて使用される。シート状の濾過膜における代表的なモジュールの一つである平膜型モジュールは、主に通水用の溝を設けた剛性の高いアクリロニトリル(Acrylonitrile)・ブタジエン(Butadiene)・スチレン(Styrene)共重合合成樹脂(ABS樹脂)板の両面に濾過膜を貼り付けた構造となっており、濾過膜を通過した清水が集水される仕組みとなっている。平膜型モジュールの一定の容積あたりの処理能力を高めるための手段としては膜の孔径を大きくして通水性を高めることが挙げられるが、汚水の分離性能が低下する場合や、膜の孔に汚水中の夾雑物が深く入り込み濾過性能を低下させる場合があった。
【0005】
平膜型モジュールの一定の容積あたりの処理能力を高める手段として、コルゲート加工(波紋加工)された濾過膜が開示されている(特許文献1~3)。しかし、これまで使用されてきた半透膜用支持体は、コルゲート加工されずにフラットな状態で使用することが前提であったため、コルゲート加工をすると、切れや割れが発生する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許公開第108525525号明細書
【文献】中国特許公開第106512748号明細書
【文献】中国特許公開第108079796号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、半透膜の原料である塗布液が裏抜けしにくく、平膜型モジュールの一定の容積あたりの処理能力を高める手段として濾過膜をコルゲート加工する際に、切れや割れの発生を抑制することができる膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記発明を見出した。
【0009】
(1)主体繊維及びバインダー繊維を含有してなる不織布である膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体において、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有し、バインダー繊維として結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維を含有し、主体繊維の繊維径が25μm以下であり、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体におけるCD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%以上であり、8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m以上であることを特徴とする膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体。
【0010】
(2)主体繊維及びバインダー繊維を含有してなる不織布であり、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有し、バインダー繊維として結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維を含有し、主体繊維の繊維径が25μm以下であり、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体におけるCD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%以上であり、8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m以上である膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の製造方法において、不織布に熱カレンダー処理を施す工程を含み、熱カレンダー処理において、加熱金属ロールを抱かない状態で不織布をニップすることを特徴とする膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の製造方法。
【0011】
(3)主体繊維及びバインダー繊維を含有してなる不織布であり、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有し、バインダー繊維として結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維を含有し、主体繊維の繊維径が25μm以下であり、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体におけるCD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%以上であり、8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m以上である膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の製造方法において、不織布に熱カレンダー処理を施す工程を含み、熱カレンダー処理において、非加熱ロールを抱いてから不織布をニップすることを特徴とする膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
コルゲート加工するためには、MD方向に一定間隔で一定深さの溝を有する2本のロールの凹凸間に膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体を通過させる。主体繊維及びバインダー繊維を含有してなる不織布であり、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有し、バインダー繊維として結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維を含有し、主体繊維の繊維径が25μm以下であり、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体におけるCD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%以上であり、8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m以上であることによって、半透膜の原料である塗布液が裏抜けしにくく、コルゲート加工の際に、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体に切れや割れが発生することを抑制できる。また、不織布が加熱金属ロールを抱かない状態で不織布をニップするか、又は、非加熱ロールを抱いてから不織布をニップする膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の製造方法によって、コルゲート加工の際に、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体に切れや割れが発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の評価において、半透膜用支持体のCD方向にコルゲート加工した時に切れや割れが発生しなかった半透膜用支持体の写真である。
【
図2】膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の評価において、半透膜用支持体のCD方向にコルゲート加工した時に切れや割れが発生した半透膜用支持体の写真である。
【
図3】熱カレンダー処理において、加熱金属ロールを抱いてから不織布をニップする方法の図である。
【
図4】熱カレンダー処理において、加熱金属ロールを抱かない状態で不織布をニップする方法の図である。
【
図5】熱カレンダー処理において、非加熱ロールを抱いてから不織布をニップする方法の図である。
【
図6】膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の切れ評価に使用したバンド締め付け治具の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体」を「半透膜用支持体」と略記する場合がある。また、「結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維」を「結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維」と略記する場合がある。
【0015】
本発明において、濾過膜とは、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の片面である塗布面に、半透膜の原料となる塗布液が塗布され、水処理用の半透膜が形成され、半透膜用支持体の片面に半透膜が設けられた複合体の形態を有する。半透膜の原料としては、例えば、塩化ビニル樹脂(PVC)系、ポリスルホン(PS)系、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系、ポリエチレン(PE)系、酢酸セルロース(CA)系、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ポリビニルアルコール(PVA)系、ポリイミド(PI)系等の種々の高分子材料が用いられる。特に、膜分離活性汚泥処理用半透膜では、PVC系、PVDF系が利用されるようになってきている。半透膜用支持体上に、原料となる高分子材料を溶かした溶液である塗布液を塗布し、ゲル化させて、多孔質性樹脂である微多孔膜を形成させる。以下では、このように半透膜用支持体上に半透膜を塗布形成する処理は「製膜」と称される。
【0016】
濾過膜はモジュール化されて使用される。シート状の濾過膜における代表的なモジュールとして、平膜型モジュールが挙げられる。平膜型モジュールでは、半透膜用支持体における塗布面の反対面である裏面(非塗布面)をフレーム材接着面として、ポリプロピレンやアクリロニトリル(Acrylonitrile)・ブタジエン(Butadiene)・スチレン(Styrene)共重合合成樹脂(ABS樹脂)等の樹脂からなるフレーム材に、濾過膜を接着・固定して用いられる。フレーム材への接着・固定には加熱融着処理、超音波融着処理等が行われるのが一般的である。
【0017】
通常、半透膜が製膜された膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体はそのままフレーム材に接着・固定して用いられるが、本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、製膜した後にコルゲート加工して用いられる。コルゲート加工することによって、同一形状のフレーム材により大きな面積の濾過膜を貼ることが可能となり、平膜型モジュールの一定の容積あたりの膜面積が増大することにより、汚水の分離性能を低下することなく、通水性を高めることができ、処理能力を高めことができる。また、製膜後の濾過膜をコルゲート加工しても良いし、製膜する前に半透膜用支持体のみにコルゲート加工を行い、その後にコルゲート加工した半透膜用支持体の片面である塗布面に、半透膜の原料となる塗布液を塗布して製膜しても良く、同様に効果が期待できる。
【0018】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、主体繊維及びバインダー繊維を含有してなる不織布であり、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有し、バインダー繊維として結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維を含有し、主体繊維の繊維径が25μm以下であり、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体におけるCD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%以上であり、8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m以上であることを特徴とする。
【0019】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有する。また、不織布がバインダー繊維を含有しているため、バインダー繊維が湿式抄造法で不織布を製造する際の乾燥工程や熱カレンダー処理工程によって結着し、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の機械的強度を向上させる。主体繊維は不織布を製造する際の乾燥工程や熱カレンダー処理工程で溶融せず、主体繊維として、半透膜用支持体の骨格を形成する。該延伸ポリエステル繊維としては、主たる繰り返し単位がアルキレンテレフタレートであるポリエステルが挙げられるが、耐熱性の高いポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0020】
主体繊維の断面形状は円形が好ましい。ただし、T型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も、裏抜け防止や、塗布面平滑性のために、他の特性を阻害しない範囲内で含有できる。
【0021】
主体繊維の繊維径は、25μm以下であり、2~25μmが好ましく、5~23μmがより好ましく、7~20μmがさらに好ましい。主体繊維の繊維径が25μmを超える繊維を使用した場合には、抄紙の際の繊維分散が悪くなり、半透膜用支持体の地合が不均一となり、塗布液が裏抜けしやすくなる。半透膜用支持体の強度が不十分となる場合があるため、主体繊維の繊維径は2μm以上であることが好ましい。
【0022】
主体繊維の繊維長は、特に限定しないが、好ましくは5~20mmであり、より好ましく6~15mmであり、さらに好ましくは7~15mmである。主体繊維の繊維長が5mm未満の場合には、半透膜用支持体のCD方向の引張強度(以下、CD強度と略することがある)が低下し、CD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%以上にならない場合や、8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m以上とならない場合があり、コルゲート加工時に切れや割れが発生し、半透膜の製膜性を損なう場合がある。
【0023】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、バインダー繊維として、結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維を含有する。結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の鞘部は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールである共重合ポリエステル、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールとε-カプロラクトンである共重合ポリエステル、ジカルボン酸成分がテレフタル酸とイソフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールである共重合ポリエステルが好適に使用できる。半透膜用支持体が、結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維を含有することにより、不織布(原紙)の製造及びその後の熱カレンダー処理を終えた後でも、芯鞘型ポリエステル複合繊維の芯部が溶融せずに、繊維形状を維持することから、半透膜用支持体の引張強度を高めることができ、また、コルゲート加工時に切れや割れを発生しにくくすることができる。
【0024】
本発明において、「結晶性」とは、繊維の温度を溶解状態の温度まで高めた後に、温度を下げていった場合、溶融状態では分子運動しながら絡み合っているが、温度を下げていくことで分子運動がゆっくり収まりながら、結晶化温度にて部分的に整列し、結晶化する特性を有することをいう。
【0025】
結晶性の有無を確認する方法としては、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、装置名:DSC8500)を用いて、昇温速度10℃/分で、0℃から芯鞘型ポリエステル複合繊維の鞘部の融点を超えるまで昇温した後に、連続して冷却速度10℃/分で、0℃まで冷却し、結晶化による発熱ピークの有無を確認し、発熱ピークが観察された場合、結晶性であると判断する。また、発熱ピークのピーク温度を結晶化温度とする。
【0026】
鞘部の融点の測定は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、装置名:DSC8500)を用いて、昇温速度10℃/分で、0℃から300℃まで昇温させた際の結晶融解による吸熱ピークを観察し、そのピーク温度を融点とする。
【0027】
鞘部のガラス転移点の測定は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、装置名:DSC8500)を用いて、昇温速度10℃/分で、0℃から芯鞘型ポリエステル複合繊維の鞘部の融点を超えるまで昇温して10分間保った後に、連続して急冷で0℃まで冷却した後に、連続して昇温速度20℃/分で、0℃から芯鞘型ポリエステル複合繊維の鞘部の融点を超えるまで昇温してDSC曲線を描き、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度(中間点ガラス転移温度)をISO 11357-2(2013)又はJIS K7121:1987に記載の方法で測定した。
【0028】
本発明において、結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の芯部は、主たる繰り返し単位がアルキレンテレフタレートであるポリエステルであり、耐熱性の高いポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0029】
本発明において、結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の断面形状は特に限定しないが、円形が好ましい。また、芯部と鞘部の比率は、芯/鞘体積比で30/70~70/30が好ましく、40/60~60/40がより好ましい。
【0030】
本発明において、結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の配合率は、全繊維に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、25質量%以下であることが特に好ましく、20質量%以下であっても良い。結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の配合率が5質量%未満の場合、CD強度測定時の8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m以上とならず、割れや切れが発生するおそれがある。一方、40質量%を超えると、半透膜用支持体の表面が皮膜化しやすく、加熱融着処理や超音波融着処理などで溶融したフレーム材が半透膜用支持体に食い込みにくくなることによって、半透膜用支持体とフレーム材の接着強度が低下する場合がある。
【0031】
本発明において、バインダー繊維の一部として未延伸ポリエステル繊維を含有することが好ましい。芯鞘型ポリエステル複合繊維は、湿式抄造法で不織布を製造する際の乾燥工程や熱カレンダー処理工程にて芯部は溶融せずに鞘部のみが溶融する。そのため、鞘部の溶融部分のみでは半透膜支持体の空隙を小さくする能力が不足し、塗布液の裏抜けを起こすおそれがある。そのため、空隙を小さくして塗布液の裏抜けを抑制する能力をコントロールするために、熱カレンダー処理工程で繊維全体が溶融する未延伸ポリエステル繊維を併用することが好ましい。
【0032】
未延伸ポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びそれを主体とした共重合体などのポリエステルを紡糸速度800~1,200m/分で紡糸した未延伸繊維が挙げられる。これらの未延伸ポリエステル繊維が熱カレンダー処理によって熱圧融着されることにより、強度の高い半透膜用支持体を得ることができる。
【0033】
未延伸ポリエステル繊維の配合率は、全繊維に対して、0~40質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは10~30質量%である。40質量%を超えると、半透膜用支持体の表面が皮膜化しやすく、加熱融着処理や超音波融着処理などで溶融したフレーム材が半透膜用支持体に食い込みにくくなることによって、半透膜用支持体とフレーム材の接着強度が低下する場合がある。未延伸ポリエステル繊維は必須成分ではないが、塗布液の裏抜けを抑制する効果を得るためには、配合率が10質量%以上であることが好ましい。
【0034】
本発明のバインダー繊維の配合率は、全繊維に対して20~50質量%であることが好ましく、より好ましくは25~40質量%である。50質量%を超えると、半透膜用支持体の表面が皮膜化しやすく、加熱融着処理や超音波融着処理などで溶融したフレーム材が半透膜用支持体に食い込みにくくなることによって、半透膜用支持体とフレーム材の接着強度が低下する場合がある。また、20質量%未満である場合、CD強度測定時の8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m以上とならない場合がある。
【0035】
本発明において、バインダー繊維の繊維径は2~25μmが好ましく、5~23μmがより好ましく、7~20μmがさらに好ましい。繊維径が2μm未満のバインダー繊維を使用した場合には、半透膜用支持体の強度が不十分となる場合がある。一方、繊維径が25μmを超えるバインダー繊維を使用した場合には、抄紙の際の繊維分散が悪くなり、半透膜用支持体の地合が不均一となりやすく、半透膜の製膜性を損なう場合がある。
【0036】
本発明において、バインダー繊維の繊維長は、好ましくは3~20mmであり、より好ましくは4~15mmであり、さらに好ましくは5~10mmである。繊維長が3mm未満の場合には、半透膜用支持体の強度が低下する場合があり、20mmを超える場合には、繊維分散性が低下しやすく、半透膜用支持体の地合が不均一となりやすく、半透膜の製膜性を損なう場合がある。
【0037】
本発明において、繊維径とは、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体断面の走査型電子顕微鏡観察により、無作為に選んだ50本の繊維断面の面積を計測し、真円に換算した時の繊維の直径である。
【0038】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体においては、必要に応じて、前記した主体繊維及びバインダー繊維以外の繊維を加えても良い。具体的には、合成繊維としては、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニリデン、塩化ビニル樹脂、ベンゾエート、ポリクラール(polychlal)、フェノール系などの繊維が挙げられる。天然繊維としては、皮膜の少ない麻パルプ、コットンリンター、リント;再生繊維としては、リヨセル繊維、レーヨン、キュプラ;半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックス(promix);無機繊維としては、アルミナ繊維、アルミナ・シリカ繊維、ロックウール、ガラス繊維、マイクロガラス繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナウィスカ、ホウ酸アルミウィスカなどの繊維が挙げられる。上記の繊維の他に、植物繊維として、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプ、藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプなどの木本類や草本類を使用することもできる。また、上記の繊維は、通液性、通気性を阻害しない範囲であれば、フィブリル化されていてもなんら差し支えない。さらに、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維等も使用することができる。また、断面形状がT型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も含有できる。
【0039】
本発明において、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体におけるCD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%以上であり、好ましくは8.1%以上であり、より好ましくは8.3%以上である。8.0%未満の場合、コルゲート加工の際に、半透膜用支持体に切れや割れが発生する場合がある。
【0040】
本発明において、CD強度測定時の8.0%伸び時の荷重は1.6kN/m以上であり、好ましくは1.7kN/m以上であり、より好ましくは1.8kN/m以上である。1.6kN/m未満の場合、コルゲート加工の際に、半透膜用支持体に切れや割れが発生する場合がある。
【0041】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の坪量は、30~150g/m2が好ましく、40~120g/m2がより好ましく、50~100g/m2がさらに好ましい。30g/m2未満の場合には、半透膜用支持体の強度が不十分となる場合がある。また、150g/m2を超えた場合には、通液抵抗が高くなる場合や、半透膜用支持体の厚さが増して、規定量の半透膜を収納するには、ユニットを大型化する必要が発生する。
【0042】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の厚さは、50~300μmであることが好ましく、70~270μmであることがより好ましく、80~250μmであることがさらに好ましい。厚さが300μmを超えると、ユニットに組み込める半透膜の面積が小さくなってしまい、結果として、半透膜のライフが短くなってしまうことがある。一方、厚さが50μm未満の場合には、十分な強度が得られない場合がある。
【0043】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、密度が0.30~0.90g/cm3であることが好ましく、0.35~0.88g/cm3がより好ましく、0.40~0.86g/cm3がさらに好ましい。密度が0.30g/cm3未満の場合には、半透膜を半透膜用支持体上に設ける際に、塗布液の半透膜用支持体への染み込みが大きくなってしまい、半透膜の均一性を損なう場合や、CD強度が不足してCD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%以上にならない場合や、またCD強度測定時の8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m以上とならない場合があり、コルゲート加工時に切れや割れが発生し、半透膜の製膜性を損なう場合がある。一方、密度が0.90g/cm3よりも大きい場合には、半透膜用支持体の空隙が少なく、塗布液の塗布時に浸透不足によって半透膜用支持体と半透膜の接着強度が低下する場合があるとともに、半透膜用支持体内部が密になるために、半透膜用支持体のフレキシブル性が低下し、コルゲート加工時に切れや割れが発生する場合がある。密度を調整する手段としては、熱カレンダー加工する際に用いるロールの材質、硬度、余熱の付与方法、加工速度、加熱金属ロールの温度、ニップする際の圧力、ニップする前に加熱金属ロールを抱いたパス方法にするか、抱かないパス方法にするか等をコントロールする等が挙げられる。
【0044】
半透膜用支持体に半透膜を設けてなる濾過膜の透過流束を好ましい値にするためには、半透膜用支持体のフラジール通気度を好ましい範囲に合わせることが望ましい。本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体において、フラジール通気度は、2.0~30.0cm3/cm2・sであることが好ましく、より好ましくは3.0~25.0cm3/cm2・sであり、さらに好ましくは4.0~20.0cm3/cm2・sである。フラジール通気度を調整する方法としては、坪量、主体繊維の繊維径、バインダー繊維の種類、バインダー繊維の配合率を変えること等で達成できる。
【0045】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体に係わる不織布は、乾式法、又は湿式抄造法により製造することができる。本発明では、不織布が湿式抄造法によって形成された湿式不織布であることが好ましい。
【0046】
湿式抄造法では、まず、繊維を均一に水中に分散させ、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を通り、最終の繊維濃度を0.01~0.50質量%に調整されたスラリーが抄紙機で抄き上げられ、湿紙が得られる。工程中で、分散剤、消泡剤、親水剤、帯電防止剤、高分子粘剤、離型剤、抗菌剤、殺菌剤等の薬品を添加する場合もある。
【0047】
抄紙機としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー等の抄紙網が単独で設置されている抄紙機、同種又は異種の2種以上の抄紙網がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機等を使用することができる。また、本発明の半透膜用支持体が2層以上の多層構造の場合には、各々の抄紙機で抄き上げた湿紙を積層する抄き合わせ法や、一方の層を形成した後に、該層上に繊維を分散したスラリーを流延して積層とする方法のいずれでも良い。繊維を分散したスラリーを流延する際に、先に形成した層は湿紙状態であっても、乾燥状態であってもいずれでも良い。また、2枚以上の層を熱融着させて、多層構造の不織布とすることもできる。
【0048】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体において、不織布が多層構造である場合、各層の繊維配合が同一である多層構造であっても良く、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体内の厚さ方向での液体の浸透性を制御する目的で、各層の繊維配合が異なっている多層構造であっても良い。多層構造の場合、各層の坪量が下がることにより、スラリーの繊維濃度を下げることができるため、不織布の地合が良くなり、その結果、塗布面の平滑性や均一性が向上する。また、各層の地合が不均一であった場合でも、積層することで補填できる。さらに、抄紙速度を上げることができ、操業性が向上する。
【0049】
抄紙網で製造された湿紙を、ヤンキードライヤー、エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等で乾燥することにより、不織布(原紙)を得る。湿紙の乾燥の際に、ヤンキードライヤー等の熱ロールに密着させて熱圧乾燥させることによって、密着させた面の平滑性が向上する。熱圧乾燥とは、タッチロール等で熱ロールに湿紙を押しつけて乾燥させることをいう。熱ロールの表面温度は、100~180℃が好ましく、100~160℃がより好ましく、110~160℃がさらに好ましい。圧力は、好ましくは5~100kN/m、より好ましくは10~80kN/mである。
【0050】
本発明において、不織布(原紙)には、熱カレンダー処理がさらに施される。主体繊維及びバインダー繊維を含有してなる不織布であり、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有し、バインダー繊維として結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維を含有し、主体繊維の繊維径が25μm以下であり、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体におけるCD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%以上であり、8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m以上である膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体を製造するためには、不織布が加熱金属ロールを抱かない状態で不織布をニップするか、非加熱ロールを抱いてから不織布をニップすることが好ましい。
【0051】
熱カレンダー処理においては、金属ロール-金属ロール、金属ロール-弾性ロール、金属ロール-コットンロール、金属ロール-シリコンロール、金属ロール-バイトンロールなどのロール構成のカレンダーユニットを単独、又は組み合わせて用いることができる。カレンダーユニットの少なくとも一方の金属ロールが加熱され、そのロール間を加圧しながら通過させること(別名:ニップ)により熱カレンダー処理を行う。本発明においては、密度を最適な値にコントロールするために過剰な熱量を付与させないように、金属ロール-弾性ロール、金属ロール-コットンロール、金属ロール-バイトンロールの組み合わせのカレンダーユニットを用いることが好ましい。
【0052】
熱カレンダー処理において、不織布をロール間でニップする方法として、<1>加熱金属ロールを抱いてからニップする方法、<2>加熱金属ロールを抱かない状態で、ニップする方法、<3>非加熱ロールを抱いてからニップする方法がある。本発明の半透膜用支持体を得るためには、<1>~<3>のいずれの方法でも良いが、バインダー繊維の過剰な溶融による高密度化を抑制し、伸び率及び8.0%伸び時の荷重を本発明における好適な範囲にコントロールすることができやすいことから、<2>又は<3>の方法が好ましい。
【0053】
図3~
図5は、熱カレンダー処理において、不織布をロール間でニップする方法を示した図である。
図3は、<1>加熱金属ロールを抱いてからニップする方法を示し、
図4は、<2>加熱金属ロールを抱かない状態で、ニップする方法を示し、
図5は、<3>非加熱ロールを抱いてからニップする方法を示している。
【0054】
熱カレンダー処理時の金属ロール温度は、バインダー繊維の融点に対して、好ましくは-40℃以上であり、より好ましくは-30℃以上である。金属ロール温度が、バインダー繊維の融点に対して-40℃未満の場合、半透膜用支持体の強度が充分に得られない場合がある。本発明において、融点とは固体が融解しはじめる時の温度である。融点の測定は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、装置名:DSC8500)を用いて、昇温速度10℃/分で、0℃から300℃まで昇温させた際の結晶融解による吸熱ピークを観察し、そのピーク温度を融点とする。
【0055】
熱カレンダー処理時のニップのニップ圧力は、好ましくは19~120kN/mであり、より好ましくは30~100kN/mである。加工速度は、好ましくは5~150m/minであり、より好ましくは10~80m/minである。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0057】
≪主体繊維≫
延伸PET繊維1:ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径7μm、繊維長3mmの延伸ポリエステル繊維。
【0058】
延伸PET繊維2:ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径7μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維。
【0059】
延伸PET繊維3:ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径7μm、繊維長10mmの延伸ポリエステル繊維。
【0060】
延伸PET繊維4:ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径13μm、繊維長10mmの延伸ポリエステル繊維。
【0061】
延伸PET繊維5:ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径25μm、繊維長10mmの延伸ポリエステル繊維。
【0062】
延伸PET繊維6:ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径30μm、繊維長10mmの延伸ポリエステル繊維。
【0063】
≪バインダー繊維≫
芯鞘PET繊維1:芯部がポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)であり、鞘部において、ジカルボン酸成分がテレフタル酸とイソフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールであり、融点が153℃、結晶化温度が89℃、ガラス転移点が40℃である結晶性の共重合ポリエステルである、繊維径15μm、繊維長5mmの芯鞘型ポリエステル複合繊維(帝人社製TJ04BN(登録商標))を、芯鞘PET繊維1とした。
【0064】
芯鞘PET繊維2:芯部がポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)であり、鞘部において、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールとε-カプロラクトンであり、融点が159℃、結晶化温度が125℃、ガラス転移点が34℃である結晶性の共重合ポリエステルである、繊維径15μm、繊維長5mmの芯鞘型ポリエステル複合繊維(ユニチカ社製キャスベン(登録商標)7080)を、芯鞘PET繊維2とした。
【0065】
芯鞘PET繊維3:芯部がポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)であり、鞘部において、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールであり、融点が180℃、結晶化温度が126℃、ガラス転移点が50℃である結晶性の共重合ポリエステルである、繊維径15μm、繊維長5mmの芯鞘型ポリエステル複合繊維(ユニチカ社製キャスベン(登録商標)8080)を、芯鞘PET繊維3とした。
【0066】
芯鞘PET繊維4:芯部がポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)であり、鞘部がポリエチレン(PE、融点:130℃)である、繊維径13μm、繊維長5mmの芯鞘型ポリエステル複合繊維(ユニチカ社製メルティ(登録商標)6080)を、芯鞘PET繊維4とした。
【0067】
芯鞘PET繊維5:芯部がポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)であり、鞘部はジカルボン酸成分がテレフタル酸とイソフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとジエチレングリコールであり、融点が無く、ガラス転移点が67℃である非結晶性の共重合ポリエステルである、繊維径15μm、繊維長5mmの芯鞘型ポリエステル複合繊維(ユニチカ社製メルティ(登録商標)4080)を、芯鞘PET繊維5とした。
【0068】
芯鞘PET繊維6:芯部がポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)であり、鞘部はジカルボン酸成分がテレフタル酸とイソフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとジエチレングリコールであり、融点が無く、ガラス転移点が67℃である非結晶性の共重合ポリエステルである、繊維径15μm、繊維長5mmの芯鞘型ポリエステル複合繊維(帝人社製TJ04CN(登録商標))を、芯鞘PET繊維6とした。
【0069】
未延伸PET繊維1:繊維径11μm、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維。
【0070】
未延伸PET繊維2:繊維径11μm、繊維長20mmの未延伸ポリエステル繊維。
【0071】
主体繊維及び未延伸PET繊維の融点並びに芯鞘型ポリエステル複合繊維における鞘部の融点、結晶化温度及びガラス転移点、芯/鞘体積比を表1に記載した。実施例1~33及び比較例1~21の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体を、以下の条件で製造した。
【0072】
(原紙の製造)
2m3の分散タンクに水を投入後、表1に示す原料配合量(質量部)で配合した繊維を、分散濃度0.2質量%で5分間分散して、円網抄紙機で湿紙を形成し、その後、表面温度155℃のヤンキードライヤーにて熱圧乾燥し、表1に示す坪量を目標にして、幅500mmの湿式不織布(原紙1~18)を得た。
【0073】
【0074】
(熱カレンダー処理)
得られた原紙に対して、金属ロール-ショアD硬度92の弾性ロールのカレンダーユニットにて、表2に記載する条件で熱カレンダー処理を行い、実施例1~33及び比較例1~21の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体を得た。なお、熱カレンダー処理のニップする方法は、<1>加熱金属ロールを抱いてからニップする方法(
図3)、<2>加熱金属ロールを抱かない状態で、ニップする方法(
図4)、<3>非加熱ロールを抱いてからニップする方法(
図5)である。また、1回目の処理で金属ロールに当たった面が、2回目の処理で弾性ロールに当たるように処理し、1回目の処理で金属ロールに当たった面を塗布面とし、2回目の処理で金属ロールに当たった面を非塗布面とした。
【0075】
【0076】
実施例1~33及び比較例1~21で得られた膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体に対して、以下の測定及び評価を行い、結果を表3及び4に示した。
【0077】
[坪量]
JIS P8124:2011に準拠して、坪量を測定した。
【0078】
[膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の厚さと密度]
半透膜用支持体の厚さと密度は、JIS P8118:2014に準拠して測定した。
【0079】
[膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の伸び率]
半透膜用支持体の伸びは次の方法で測定した。半透膜用支持体を15mm幅、長さ320mmに断裁したサンプルを5枚準備する。MD方向が幅となり、CD方向が長さである。オリエンテック社製引張試験装置STB-1225Sを用いてチャック間250mm、引張速度100mm/分でサンプルの引張強度を測定し、最大荷重点の伸び率を測定する。5枚計測した結果の平均値を示す。
【0080】
[膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の8.0%伸び時の荷重]
半透膜用支持体の伸び率の測定データから8.0%伸び時の荷重(N/m)を読む。5枚計測した結果の平均値を示す。半透膜用支持体の伸び率が8.0%未満の場合、データは0とする。
【0081】
[膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の切れ評価]
半透膜用支持体の割れ又は切れの発生を評価する切れ評価は次の方法で行った。半透膜用支持体を15mm幅(MD方向)、長さ200mm(CD方向)に断裁したサンプルを5枚準備する。溝深さ3mmの金属歯車と表面に深さ3mmの溝を彫ったプレートを有するバンド締め付け治具(
図6)(SHOKO KIKO CO.LTD製、TYPE No.90)を用いて、サンプルの一端を固定して歯車とプレート間にサンプルを挟み、コルゲート加工を行い、以下の評価基準にてサンプルの割れ又は切れの度合を評価した。
図1は、コルゲート加工した時に切れや割れが発生しなかった半透膜用支持体の写真である。
図2は、切れや割れが発生した半透膜用支持体の写真である。
【0082】
評価基準
◎:5枚すべてに全く割れや切れが無く、非常に良好なレベル。
○:5枚中の1枚に、エッジ部に5mm未満の割れ目又は切れ目が見られた。良好なレベル。
△:5枚中の2枚に、エッジ部に5mm未満の割れ目又は切れ目が見られた。使用可能なレベル。
×:5枚中の3~5枚に、エッジ部に5mm未満の割れ目又は切れ目が見られたか、5枚中の1枚以上にエッジ部に5mm以上の割れ目又は切れ目が見られたか、又は完全な割れ又は切れが見られた。使用不可レベル。
【0083】
[半透膜の裏抜け]
一定のクリアランスを有する定速塗工装置(商品名:TQC全自動フィルムアプリケーター、コーテック社)を用いて、台紙(三菱製紙社製、商品名:PPC用紙N)上に半透膜用支持体を載せ、半透膜用支持体の塗布面にマジックインキ(登録商標)で着色したポリフッ化ビニリデン(PVDF)のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液(塗布液、濃度:20質量%)を塗布した。塗布済みの半透膜用支持体を塗布直後に除き、半透膜用支持体を貫通して台紙に付着した半透膜の状態を観察し、以下の評価基準にて「半透膜の裏抜け」を評価した。
【0084】
評価基準
○:全く裏抜けが無く、良好なレベル。
△:一部に裏抜けが見られるが使用可能なレベル。
×:全面に裏抜けが見られ、使用不可レベル。
【0085】
【0086】
【0087】
実施例1~実施例33の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、主体繊維及びバインダー繊維を含有してなる不織布であり、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有し、バインダー繊維として結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維を含有し、主体繊維の繊維径が25μm以下であり、CD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%以上であり、8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m以上であるため、切れ評価と膜の裏抜け評価が使用可能なレベル以上であった。
【0088】
実施例1~実施例3を比較すると、熱カレンダー加工時のニップ方法が<2>である実施例2と<3>である実施例3は、<1>である実施例1と比較して、切れの評価が良好であった。同様に、実施例4と比較して、実施例5及び実施例6は切れの評価が良好であり、実施例7と比較して、実施例8及び実施例9は切れの評価が良好であった。
【0089】
主体繊維として、繊維長が10mmの主体繊維と繊維長が5mmの主体繊維を含有した実施例10は、繊維長が5mmの主体繊維のみを含有した実施例1と比較して、切れの評価が良好であった。また、主体繊維として、繊維長10mmの主体繊維のみを含有した実施例14及び実施例15は、繊維長が10mmの主体繊維と繊維長が5mmの主体繊維を含有した実施例11及び実施例12と比較して切れの評価が良好であった。
【0090】
主体繊維の繊維径が13μmで繊維長が10mmである実施例16~実施例18は、主体繊維の繊維径が7μmで繊維長が10mmである実施例13~実施例15と同様に切れの評価が良好であった。主体繊維の繊維径が25μmで繊維長が10mmである実施例19~実施例21は、主体繊維の繊維径が13μmで繊維長が10mmである実施例16~実施例18と同様に切れ評価が良好であったが、膜の裏抜け評価が、使用可能なレベルであるが、実施例16~実施例18より劣っていた。
【0091】
比較例1~比較例15の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維を含有していないため、CD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%未満であり、8.0%伸び時の荷重が0N/mであり、切れ評価は使用不可なレベルであった。比較例16~比較例18の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、CD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%以上であり、8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m以上であるため、切れ評価は良好なレベル以上であったが、主体繊維の繊維径が30μmと太いため、膜の裏抜け評価が使用不可レベルであった。比較例19~比較例21の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維を5質量%含有しているが、バインダー繊維の配合率が15質量%と少なかったため、CD強度測定時の最大荷重点の伸び率が8.0%以上であったが、8.0%伸び時の荷重が1.6kN/m未満であり、切れ評価は使用不可レベルであった。
【0092】
結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の配合率が5質量%である実施例23及び実施例24と比較して、結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の配合率が10質量%である実施例17及び実施例18は、8.0%伸び時の荷重が高く、切れ評価が良好であった。結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の配合率が20質量%である実施例25~27及び30質量%である実施例28~30は、10質量%である実施例16~18と同様に、切れ評価が良好であった。結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の配合率が40質量%である実施例31~33と比較して、配合率が30質量%の実施例28~30は、膜の裏抜け評価が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体及びその製造方法は、膜分離活性汚泥処理法による汚水処理の分野で利用することができる。