(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】回転機械の異常及び異常予兆の検出方法
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20230224BHJP
【FI】
G01M99/00 A
(21)【出願番号】P 2020191962
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390003333
【氏名又は名称】新晃工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】國廣 治之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 智彦
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-109566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機、タービン、圧縮機、発電機、モーター、空気調和機のファンモーターなどの回転機械から発生する騒音又は振動を測定する測定器を備え、測定器で測定した回転機械から発生する騒音又は振動によって、回転機械で発生する異常及び異常予兆を検出する回転機械の異常及び異常予兆の検出方法であって、
測定器で回転機械から発生する騒音又は振動を測定する測定工程と、
測定した騒音又は振動に対して高速フーリエ変換を行って、時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムを作成するスペクトログラム作成工程と、
作成したスペクトログラムと正常時のスペクトログラムとを対比し、作成したスペクトログラムに、正常時のスペクトログラムにない異常シグナルが現れているか否かにより、回転機械で異常及び異常予兆が発生しているか否かを判定する異常判定工程と、
を有し、
作成したスペクトログラムを用いて、回転機械の回転速度が変化している
回転機械が始動して回転速度が上がり回転速度が一定の定常運転時までの間の回転機械の運転開始時、又は回転機械の回転速度が一定の定常運転時から回転速度が下がり回転が停止するまでの間の回転機械の運転停止時において、正常時のスペクトログラムでの周波数毎の振幅と比べて大きな周波数毎の振幅が、
その周波数が回転機械の回転速度の変化に比例して現れる異常シグナルを検出することを特徴とする回転機械の異常及び異常予兆の検出方法。
【請求項2】
請求項
1に記載された回転機械の異常及び異常予兆の検出方法において、
時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムは、周波数毎の振幅の大きさを色の違いで表示することを特徴とする回転機械の異常及び異常予兆の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械で発生する異常及び異常予兆を検出する回転機械の異常及び異常予兆の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械としては、送風機、タービン、圧縮機、発電機、モーターなどが知られている。この回転機械は、各種の装置に搭載されている。例えば、空気調和機においては、回転機械としてファンモーターを搭載している。この空気調和機のファンモーター(回転機械)では、深刻な故障が起こる前に、異常を調べることが重要で、そのため、定期的にファンモーターの異常を調べる機械診断を行っている。なお、空気調和機のファンモーターに限らず、その他の回転機械においても、異常を調べる機械診断を行うことがある。
【0003】
空気調和機において、ファンモーターの異常を調べる機械診断は、例えば、ファンモーターの騒音又は振動をマイクロホン又は振動計などで測定し、測定したファンモーターの騒音又は振動を、高速フーリエ変換(FFT)を行って周波数分析し、周波数成分に対する振動を求める。この求めた周波数成分に対する振動において、予め設定した異常振動の閾値を超えた振動が現れているか否かによって、空気調和機におけるファンモーターの異常を調べる。
【0004】
ところが、従来の機械診断では、ファンモーターの異常を見つけ出すことができない場合がある。
空気調和機において、インバータで駆動制御されるファンモーターでは、インバータの設定キャリア周波数(PWM制御方式インバータのパルス幅変調周期を決定する周波数)が2kHz以上の高周波数域になることから、正常運転時においても、インバータの設定キャリア周波数に起因する騒音及び振動が発生する。
【0005】
そのため、機械診断で求めた周波数成分に対する振動において、ファンモーターの異常による振動とインバータの設定キャリア周波数に起因する振動とが異なる周波数のところで別々に現れるのであれば、ファンモーターの異常を見つけ出すことができる。しかしながら、ファンモーターの異常による振動とインバータの設定キャリア周波数に起因する振動とが同じ周波数のところで現れると、ファンモーターの異常による振動がわからなくなる。
【0006】
図8は、ファンモーターでの周波数成分に対する振動の図表である。
例えば、インバータの設定キャリア周波数が6kHzの場合、図示のように、機械診断で求めた周波数成分に対する振動において、インバータの設定キャリア周波数に起因する振動(図表中にFで示す)が約6kHzのところで現れるようになる。このとき、ファンモーターの異常による振動(図表中にEで示す)が約6kHzのところで現れた場合、それぞれの振動が同じ周波数のところで重なり合うように現れることで、ファンモーターの異常による振動がわからなくなり、ファンモーターの異常を見つけ出すことができない。
これにより、空気調和機のファンモーターにおいて、深刻な故障が起こるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、回転機械において、深刻な故障が起こるのを防止するため、回転機械で発生する異常及び異常予兆を確実に検出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、送風機、タービン、圧縮機、発電機、モーター、空気調和機のファンモーターなどの回転機械から発生する騒音又は振動を測定する測定器を備え、測定器で測定した回転機械から発生する騒音又は振動によって、回転機械で発生する異常及び異常予兆を検出する回転機械の異常及び異常予兆の検出方法であって、測定器で回転機械から発生する騒音又は振動を測定する測定工程と、測定した騒音又は振動に対して高速フーリエ変換を行って、時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムを作成するスペクトログラム作成工程と、作成したスペクトログラムと正常時のスペクトログラムとを対比し、作成したスペクトログラムに、正常時のスペクトログラムにない異常シグナルが現れているか否かにより、回転機械で異常及び異常予兆が発生しているか否かを判定する異常判定工程と、を有し、作成したスペクトログラムを用いて、回転機械の回転速度が変化している回転機械が始動して回転速度が上がり回転速度が一定の定常運転時までの間の回転機械の運転開始時、又は回転機械の回転速度が一定の定常運転時から回転速度が下がり回転が停止するまでの間の回転機械の運転停止時において、正常時のスペクトログラムでの周波数毎の振幅と比べて大きな周波数毎の振幅が、その周波数が回転機械の回転速度の変化に比例して現れる異常シグナルを検出する回転機械の異常及び異常予兆の検出方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転機械から発生する騒音又は振動を測定器で測定し、この回転機械から発生する騒音又は振動によって、時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムを作成し、この作成したスペクトログラムにおいて異常シグナルが現れているか否かにより、回転機械で異常及び異常予兆が発生しているか否かを判定する。これにより、回転機械での異常及び異常予兆を確実に検出することができ、回転機械において、深刻な故障が起こるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の回転機械の異常及び異常予兆の検出方法において用いる機器のブロック図である。
【
図3】空気調和機のファンモーターの異常及び異常予兆を検出する方法のフロー図である。
【
図4】作成した時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムを示す図である。
【
図5】
図4のスペクトログラムを模式的に示す図である。
【
図6】正常時の時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムを示す図である。
【
図7】
図6のスペクトログラムを模式的に示す図である。
【
図8】ファンモーターでの周波数成分に対する振動の図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の回転機械の異常及び異常予兆の検出方法の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る回転機械の異常及び異常予兆の検出方法は、回転機械で発生する異常及び異常予兆を検出する方法であり、回転機械は、送風機、タービン、圧縮機、発電機、モーターなどである。
以下の説明は、一例として、回転機械である空気調和機1のファンモーター2について行うものである。つまり、本実施形態は、空気調和機1のファンモーター2の異常及び異常予兆を検出する方法であるが、その他の回転機械の異常及び異常予兆を検出する方法でもよい。
【0012】
図1は、空気調和機1のブロック図である。
空気調和機1は、図示のように、還気ダクト11などに接続する吸入口3を備えるとともに、給気ダクト12に接続する吹出口4を備える。空気調和機1の内部には、例えば、吸入口3から吹出口4に向かって、フィルター5、熱交換器であるコイル(加熱コイルと冷却コイル)7、加湿器8、ファン6及びファンモーター2をそれぞれ備える。ファンモーター2はインバータ(図示せず)で駆動制御している。この空気調和機1では、吸入口3から入った空気が、フィルター5、コイル7、加湿器8、ファン6を経て、吹出口4から吹き出す。
【0013】
次に、本実施形態の空気調和機1のファンモーター2(回転機械)の異常及び異常予兆を検出する方法について、図面を参照して説明する。
(機器の構成)
図2は、空気調和機1のファンモーター2の異常及び異常予兆の検出方法において用いる機器のブロック図である。
空気調和機1のファンモーター2の異常及び異常予兆の検出方法において用いる機器は、図示のように、空気調和機1のファンモーター2に隣接して備える測定器15と、ファンモーター2を駆動制御するインバータ16と、測定器15より測定データを受け取るとともに、インバータ16より信号を受け取る処理装置17を備える。
【0014】
測定器15は、騒音又は振動を測定する音響センサ又は振動センサであり、処理装置17からの指令に基づいて測定を開始又は終了するとともに、測定した騒音の値や振動の値を測定データとして処理装置17に送信する。
【0015】
処理装置17は、各種のプログラムを格納し、このプログラムを用いて処理を行うコンピュータであり、ここでは測定器15からの測定データと、インバータ16から、当該インバータ16で駆動制御するファンモーター2に送信する運転開始信号、運転停止信号、回転数設定信号を受け取る。
【0016】
処理装置17では、測定器15より送信されてくる測定データに対して既存のプログラムを用いて高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を行って周波数分析し、時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPAを作成し、これを記憶する。
【0017】
また、処理装置17では、正常時の時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPBも作成し、これを記憶する。この正常時の時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPBは、ファンモーター2に異常がないとき(正常時)、予め測定器15で測定し、この測定データに基づいて高速フーリエ変換(FFT)を行って周波数分析して作成した時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPBである。
【0018】
また、処理装置17は表示部18を備えている。この表示部18には、作成した時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPAを表示する。また、表示部18には、正常時の時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPBも表示できる。
表示部18では、作成したスペクトログラムSPAと正常時のスペクトログラムSPBを並べて2画面で表示する。なお、表示部18は、画面の切り換えが可能で、画面の切り換えは、2画面の表示から作成したスペクトログラムSPAあるいは正常時のスペクトログラムSPBのどちらか一方の1画面の表示に切り換え、また1画面の表示から2画面の表示に切り換えることができる。
【0019】
(異常及び異常予兆を検出する方法)
図3は、空気調和機のファンモーターの異常及び異常予兆を検出する方法のフロー図である。
空気調和機1のファンモーター2の異常及び異常予兆を検出する方法は、図示のように、ファンモーター2から発生する騒音又は振動を測定する測定工程(S1)と、時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPAを作成するスペクトログラム作成工程(S2)と、ファンモーター2で異常及び異常予兆が発生しているか否かを判定する異常判定工程(S3)とを有する。
【0020】
ファンモーター2から発生する騒音又は振動を測定する測定工程(S1)は、ファンモーター2に隣接して備えた測定器15でファンモーター2から発生する騒音又は振動を測定する。
【0021】
即ち、ファンモーター2を駆動制御するインバータ16より処理装置17にファンモーター2の運転開始信号を送信する(S1-1)。
処理装置17は、この運転開始信号に基づいて、測定器15に測定開始の信号を送信する(S1-2)。
測定器15は、測定開始の信号に基づいて、測定を開始する(S1-3)。この測定器15での測定は、ファンモーター2が始動して回転速度が上がる加速運転時から回転速度が一定の定常運転時までの間に、ファンモーター2から発生する騒音又は振動を測定する。
測定器15で測定した騒音の値又は振動の値は、測定データとして処理装置17に送信する(S1-4)。
【0022】
時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPAを作成するスペクトログラム作成工程(S2)は、測定器15で測定した騒音又は振動に対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を行って、時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPAを作成する。
【0023】
即ち、処理装置17において、測定器15より送信された測定データ(騒音の値又は振動の値)に対して、既存のプログラムを用いて高速フーリエ変換(FFT)を行って周波数分析し、時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPAを作成する(S2-1)。
次に、処理装置17において、作成した時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPAを記憶する(S2-2)。
【0024】
ファンモーター2で異常及び異常予兆が発生しているか否かを判定する異常判定工程(S3)は、前工程で作成した時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPAと、正常時の時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPBとを対比し、ファンモーター2で異常及び異常予兆が発生しているか否かを判定する。
【0025】
即ち、処理装置17において、作成した時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPAと、予め記憶している正常時の時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPBとを、表示部18に並べて2画面で表示する(S3-1)。
【0026】
次に、表示部18に表示した作成したスペクトログラムSPAと正常時のスペクトログラムSPBとを対比する(S3-2)。この対比は作業担当者が行う。つまり、作業担当者が表示部18に表示した作成したスペクトログラムSPAと正常時のスペクトログラムSPBとを見て行う。
【0027】
作成したスペクトログラムSPAと正常時のスペクトログラムSPBとを対比したとき、作成したスペクトログラムSPAに、正常時のスペクトログラムSPBにない異常シグナルK(
図4参照)が現れているか否かにより、ファンモーター2で異常及び異常予兆が発生しているか否かを、作業担当者が判定する(S3-3)。つまり、作成したスペクトログラムSPAにおいて異常シグナルKが現れていると(異常シグナルKを検出すると)、ファンモーター2で異常及び異常予兆が発生していると判定し、異常シグナルKが現れていないと、ファンモーター2で異常及び異常予兆が発生していないと判定する。
【0028】
この作成したスペクトログラムSPAにおいて現れる異常シグナルKについて、図面を参照して説明する。なお、この場合のインバータ16の設定キャリア周波数を6kHzとする。
図4は、作成した時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPAを示す図であり、
図5は、
図4のスペクトログラムSPAを模式的に示す図である。
図6は、正常時の時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPBを示す図であり、
図7は、
図6のスペクトログラムSPBを模式的に示す図である。
【0029】
図4、
図5で示す作成した時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPAと、
図6、
図7で示す正常時の時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPBは、横軸が時間を表し、縦軸が周波数を表し、各地点の色が周波数毎の振幅の大きさを表している。この各地点の色は、例えば、図中において、青色(B)、緑色(G)、黄色(Y)、赤色(R)で示し、振幅が小さいものが青色(B)、振幅が大きくなるにしたがって、緑色(G)、黄色(Y)、赤色(R)となる。このように周波数毎の振幅の大きさを色で表すことで、異常シグナルKが現れているか否かを容易に認識することができ、つまり、異常シグナルKの検出が容易になる。
また、スペクトログラムSPA,SPBは、
図5と
図7の模式的に示す図において、青色(B)から緑色(G)、緑色(G)から黄色(Y)、黄色(Y)から赤色(R)のように色が変わる際、図示のような境界線がはっきり現れるようにしているが、実際は境界線がはっきり現れるのではなく、色が徐々に変わるようになるものである。
【0030】
なお、これらのスペクトログラムSPA,SPBにおいて、周波数毎の振幅の大きさを色で表しているが、色の代わりに、周波数毎の振幅の大きさを数値化し、各地点において数値で周波数毎の振幅の大きさを表すようにしてもよい。
【0031】
異常シグナルKは、ファンモーター2の運転開始時の回転速度が上がる加速運転時、つまりファンモーター2の回転速度が上昇(変化)しているとき、作成したスペクトログラムSPAにおいて、正常時のスペクトログラムSPBでの周波数毎の振幅と比べて大きな周波数毎の振幅が、ファンモーター2の回転速度の上昇に比例して現れるようになるものである。
【0032】
即ち、ファンモーター2で異常及び異常予兆が発生している場合、
図4、
図5に示すように、作成したスペクトログラムでは、ファンモーター2の回転速度が上昇しているとき、大きな周波数毎の振幅(黄色(Y)及び赤色(R))がファンモーター2の回転速度の上昇に比例して現れる。つまり作成したスペクトログラムに異常シグナルKが現れる。一方、
図6、
図7に示すように、正常時のスペクトログラムでは、大きな周波数毎の振幅(黄色(Y)及び赤色(R))がファンモーター2の回転速度の上昇に比例して現れることはない。
【0033】
このように作成したスペクトログラムにおいて、大きな周波数毎の振幅がファンモーター2の回転速度の上昇に比例して現れたとき(異常シグナルKが現れたとき)、ファンモーター2で異常及び異常予兆が発生していると判定することができる。
【0034】
以上のように、測定器15で測定したファンモーター2から発生する騒音又は振動によって、時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPAを作成し、この作成したスペクトログラムSPAにおいて異常シグナルKが現れているか否かにより、ファンモーター2で異常及び異常予兆が発生しているか否かを判定する。これにより、ファンモーター2での異常及び異常予兆を確実に検出することができ、深刻な故障が起こるのを防止することができる。
【0035】
また、ファンモーター2の異常及び異常予兆の検出は、空気調和機1の運転開始、つまりファンモーター2の運転開始時に行うが、これを毎日行ってもよいし、1~2週間に1回というように必要に応じて行うようにしてもよい。
【0036】
また、異常及び異常予兆の検出をファンモーター2の運転開始時に行うのではなく、ファンモーター2の運転停止時に行うようにしてもよい。
即ち、処理装置17において、インバータ16よりファンモーター2の運転停止信号を受け取ると、これに基づいて測定器15に測定開始信号を送信し、測定器15で測定を開始する。この測定器15での測定は、ファンモーター2の回転速度が一定の定常運転時から回転速度が下がる回転が停止するまでの間に、ファンモーター2から発生する騒音又は振動を測定する。
【0037】
その後は、前述の実施形態と同様、測定器15で測定した騒音又は振動に対して高速フーリエ変換を行って、時間と周波数と周波数毎の振幅の3次元データのスペクトログラムSPAを作成し、作成したスペクトログラムSPAと、正常時のスペクトログラムSPBとを対比し、作成したスペクトログラムSPAにおいて異常シグナルKが現れているか否かにより、ファンモーター2で異常及び異常予兆が発生しているか否かを判定する。このときの異常シグナルKは、ファンモーター2の運転停止時、つまりファンモーター2の回転速度が下降(変化)しているとき、作成したスペクトログラムSPAにおいて、正常時のスペクトログラムSPBでの周波数毎の振幅と比べて大きな周波数毎の振幅が、ファンモーター2の回転速度の下降に比例して現れるようになるものである。
【0038】
また、異常及び異常予兆の検出は、ファンモーター2の運転開始時又は運転停止時に限らず、ファンモーター2の回転数が変化するとき(インバータ16よりファンモーター2に回転数設定信号が送信されたとき)に行うようにしてもよい。
【0039】
また、前述した実施形態では、異常判定工程(S3)において、作成したスペクトログラムSPAと正常時のスペクトログラムSPBとを対比するとき、この対比を作業担当者である人間が行っている。しかしながら、これに限らず、例えば、人工知能(AI:Artificial Intelligence)の技術を利用して、作成したスペクトログラムSPAと正常時のスペクトログラムSPBとを対比し、ファンモーター2で異常及び異常予兆が発生しているか否かを判定するようにしてもよい。これにより、作業担当者である人間が行うのと異なり、常時、異常及び異常予兆の検出を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…空気調和機、2…ファンモーター、3…吸入口、4…吹出口、5…フィルター、6…ファン、7…コイル、8…加湿器、11…還気ダクト、12…給気ダクト、15…測定器、16…インバータ、17…処理装置、18…表示部。