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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】自己照明式顕微手術用カニューレ装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20230224BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
A61B17/34
A61F9/007 130E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020504702
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 IB2018055081
(87)【国際公開番号】W WO2019030587
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】62/542,902
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ワイ.チョン
(72)【発明者】
【氏名】マーク ハリソン ファーリー
(72)【発明者】
【氏名】ポール アール.ハレン
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-537835(JP,A)
【文献】特開2010-253273(JP,A)
【文献】米国特許第5312362(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0215078(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0282160(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0107508(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/02
A61B 17/34
A61F 9/00 ― 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術用のカニューレ装置であって、
外科用器具の進入用に構成されたチューブと、
前記チューブの近位端におけるハブと、
封止要素と、
を備え、
前記封止要素は、前記封止要素が弛緩状態にある場合に前記チューブを通る通路を封止するように構成され、前記封止要素は第1の自己照明材料を含み
前記第1の自己照明材料は、前記カニューレ装置を自己照明させる第1の燐光体であ、カニューレ装置。
【請求項2】
前記ハブは第2の自己照明材料を含む、請求項1に記載のカニューレ装置。
【請求項3】
前記ハブには第2の燐光体が組み込まれている、請求項1に記載のカニューレ装置。
【請求項4】
前記第1の燐光体は前記封止要素に組み込まれている、請求項1に記載のカニューレ装置。
【請求項5】
外科手術用のカニューレ装置のセットであって、
外科用器具の進入用に構成された第1のチューブ、及び前記第1のチューブの近位端にある第1のハブを備える第1のカニューレ装置と、
外科用器具の進入用に構成された第2のチューブ、及び前記第2のチューブの近位端にある第2のハブを備える第2のカニューレ装置と、を備え、
前記第1のチューブは前記第2のチューブとは異なるサイズを有し、
前記第1のカニューレ装置は自己照明式であり、第1の色の光を放出するように構成され、
前記第2のカニューレ装置は自己照明式であり、第2の色の光を発するように構成され、前記第2の色は前記第1の色とは異なり、
前記第1のカニューレ装置は、第1の自己照明材料を含み、前記第1の自己照明材料は、前記第1のカニューレ装置を自己照明させる第1の燐光体であり、
前記第1の燐光体は前記第1のハブに組み込まれており、
前記第2のカニューレ装置は、第2の自己照明材料を含み、前記第2の自己照明材料は、前記第2のカニューレ装置を自己照明させる第2の燐光体であり、
前記第2の燐光体は前記第2のハブに組み込まれている、カニューレ装置のセット。
【請求項6】
前記第1のカニューレ装置は封止要素を更に備え、前記封止要素は、前記封止要素が弛緩状態にある場合に前記第1のチューブを通る通路を封止するように構成され、前記第1のカニューレ装置は、さらに他の自己照明材料を含み、前記さらに他の自己照明材料は、前記第1のカニューレ装置を自己照明させて前記封止要素に組み込まれた燐光体である、請求項5に記載のカニューレ装置のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年8月9日に出願された、Joshua Anderson,James Y.Chon,Mark Harrison Farley及びPaul R.Hallenを発明者とする、「Self-Illuminating Microsurgical Cannula Device」と題する、米国仮特許出願第62/542,902号明細書の優先権の利益を主張し、これらが本明細書に十分に且つ完全に記述されている如く、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、顕微外科手術中に器具の挿入を促進するためのカニューレ、及び関連する使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの様々な種類の眼科疾患は、ヒトの眼内に顕微手術器具を挿入することを含む顕微外科手術で治療することができる。例えば、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症、糖尿病性硝子体出血、黄斑円孔、網膜剥離、網膜上膜、サイトメガロウイルス(CMV)網膜炎、及び他の多くの眼科疾患などの疾患を治療するために、硝子体網膜手術が実施される場合がある。硝子体切除手術は、眼から硝子体液の全部又は一部を除去することを伴う。そのような硝子体網膜手術では、器具は通常、毛様体扁平部を通して眼の後眼房内に挿入される。他の眼科顕微外科手術では、器具を眼内の他の場所に挿入することを伴う場合がある。
【0004】
後区手術に関しては、使用できる器具には、例えば、組織を切除又は断片化するための硝子体切除プローブ、レーザープローブ、又は超音波断片化器(ultrasonic fragmenter)が含まれる。各器具は、注入液を手術部位に供給するための、又は流体及び切除/断片化された組織を部位から回収若しくは吸引するための、長い気圧(空気圧)ライン、及び/又は電源ケーブル、光ケーブル、若しくはフレキシブルチューブによって制御コンソールに接続されてもよい。器具の切除、注入、及び吸引機能は、手術器具(例えば、往復運動又は回転する切断刃又は超音波振動針)に電力を供給するだけでなく、注入液の流れを制御し、流体及び切除/断片化された組織を吸引するための真空源(大気に対する)も提供し得る、コンソールによって制御されてもよい。コンソールの機能は、例えば、足で操作するスイッチ又は比例制御の使用を通じて、外科医によって手動で制御されてもよい。
【0005】
眼科顕微外科手術では、外科医は器具を複数回挿入及び引き抜くか、又は複数の器具を挿入及び引き抜く必要があり得る。器具が切開部位に直接接触すると、器具の挿入、操作、及び引き抜きにより、眼に外傷が生じる可能性がある。複数の切開を行う必要性を最小限に抑えるため、器具の簡単な挿入と引き出しを提供するため、切開部位での外傷の可能性を減らすため、及び治癒を促進するために、外科医は眼内に1つ以上のカニューレを挿入する場合があり、各カニューレは器具を眼内に入れる通路又は入口として機能する。典型的なカニューレは、ハブが取り付けられた小型のチューブである。チューブは眼内に挿入され、ハブはチューブの眼内への進入を限定し、チューブが眼に完全に入ることを防止するストッパとして機能する。カニューレを所定位置に保つために、ハブを眼に縫合する場合がある。カニューレにより、外科医はチューブを通して1つ以上の顕微手術器具を眼に挿入することが可能になる。カニューレの例は、米国特許第8,343,106号明細書及び米国特許第8,679,064号明細書に開示されており、その開示は本明細書に参考として組み込まれる。
【0006】
典型的には、眼への切開のサイズを最小化するために、使用する器具に適した最小サイズのカニューレを使用することが望ましい。切開のサイズに応じて、切開は、結果として生じる創傷を実質的に自己治癒させるのに十分に小さい場合があり、それにより、縫合などの追加の手順を使用して切開を閉じる必要がなくなる。
【0007】
例えば、複数の器具を同時に使用することが望まれる場合は、複数のカニューレを挿入してもよい。場合によっては、例えば異なるサイズの器具を同時に使用することが望まれる場合は、異なるサイズのカニューレを同時に使用することが望ましい場合がある。
【0008】
どの器具がどのカニューレに対応するかを識別することを手助けするために、これまでは、カニューレが色分けされ、色がカニューレに関連付けられたサイズを示していた。例えば、23ゲージのカニューレが第1の色(例えば橙色)のハブを有してもよく、25ゲージのカニューレが第2の色(例えば青色又は青緑色)のハブを有してもよく、27ゲージのカニューレが第3の色(例えば紫色)のハブを有してもよい。このようにして、カニューレが眼内に配置された後、外科医が特定のサイズの器具を眼内に挿入することを望んだ場合、外科医は、器具を挿入する適切なカニューレを決定するために、カニューレのサイズを色で識別できる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、顕微外科手術中に器具の挿入を促進するための改善されたカニューレに関する。
【0010】
眼科外科手術中は、室内照明が薄暗いことがよくある。眼内に挿入されたカニューレを見ることが難しい場合があり、カニューレの異なる色を区別することが困難な場合がある。これまでは、器具の交換中に、外科医は顕微鏡の照明を再びオンにして、器具の挿入をガイドするのに十分な視覚的コントラストをもたらす必要がしばしばあった。
【0011】
本開示による例示的実施形態では、カニューレ装置は自己照明式として提供される。自己照明は、カニューレ装置の製造に使用される燐光性顔料などの、カニューレ装置内の燐光体によって提供され得る。カニューレ装置は、カニューレチューブ、及びハブ、並びに任意選択的に封止要素を備える。燐光体又は燐光性顔料は、ハブ、チューブ、又は封止要素のうちの1つ以上に提供されてもよい。燐光体又は燐光性顔料は、カニューレチューブのサイズに関連付けられたカニューレ装置の色分けに対応してもよい。
【0012】
例示的な方法では、第1のカニューレ装置は、第1のカニューレ装置内のハブ、チューブ、又は封止要素内に、燐光体又は燐光性顔料などの自己照明機構が設けられている。燐光体又は燐光性顔料は、第1のカニューレ装置のサイズに関連付けられた第1のカニューレ装置の色分けに対応してもよい。第1のカニューレ装置は、眼内への1つ以上の器具用の通路を提供するチューブを用いて眼内に挿入される。第2のカニューレ装置は、第2のカニューレ装置のハブ、チューブ、又は封止要素内の燐光体又は燐光性顔料などの自己照明機構を備えてもよい。燐光体又は燐光性顔料は、第2のカニューレ装置のサイズに関連する、第2のカニューレ装置の色分けに対応してもよく、第2のカニューレ装置のチューブのサイズは、第1のカニューレ装置のチューブのサイズとは異なり、第2のカニューレ装置の色は、第1のカニューレ装置の色とは異なる。第2のカニューレ装置は、眼内への1つ以上の器具用の通路を提供するチューブを用いて眼内に挿入される。
【0013】
前述の概要及び以下の詳細な説明は、本質的に例示的且つ説明的であり、本開示の範囲を限定することなく本開示の理解を提供することを意図している。この点で、当業者には、本開示の付加的な態様、特徴、及び利点は添付の図面及び以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0014】
添付図面は、本明細書中に開示される装置及び方法の実現形態を示し、明細書と共に、本開示の原理を説明する役割を担う。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態による、カニューレチューブ、及び自己照明式の色分けされたオーバーキャップ又はハブを示す。
図2A】一緒に組み立てられた図1のカニューレチューブ及びハブを備えるカニューレ装置を示す。
図2B】異なるサイズのカニューレチューブ及び異なる色分けを有する、図2Aのカニューレ装置に類似したカニューレ装置を示す。
図2C】異なるサイズのカニューレチューブ及び異なる色分けを有する、図2A及び図2Bのカニューレ装置に類似したカニューレ装置を示す。
図3A】自己照明式の色分けがエラストマー封止内にある、図2Aのカニューレ装置に類似したカニューレ装置を示す。
図3B】異なるサイズのカニューレチューブ及び異なる色分けを有する、図3Aのカニューレ装置に類似したカニューレ装置を示す。
図3C】異なるサイズのカニューレチューブ及び異なる色分けを有する、図3A及び図3Bのカニューレ装置に類似したカニューレ装置を示す。
図4】トロカール挿入器上の図2Aのカニューレ装置を示す。
図5】自己照明式カニューレを使用する方法の実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明を参照することにより、添付図面をよりよく理解することができる。
【0017】
ここで、本開示の原理の理解を促進する目的で、図面に示す実現形態に言及し、特定の用語を使用してそれら実現形態を説明する。しかしながら、本開示の範囲を限定する意図はないと理解されるであろう。記載される装置、器具、方法の任意の変更及び更なる修正、並びに本開示の原理の任意の更なる適用は、本開示に関係する当業者は通常想到するであろうと十分に考えられる。特に、1つの実現形態に関して記載される特徴、構成要素、及び/又は工程は、本開示の他の実現形態に関して記載される特徴、構成要素、及び/又は工程と組み合わせてもよいと十分に考えられる。簡略化のため、場合によっては、同じ又は類似の部分を参照するために、図面全体を通して同じ参照番号が使用される。
【0018】
図1は、トロカールカニューレ101、及びオーバーキャップ又はハブ103の実施形態を示す。カニューレ101は、眼内に挿入されて、手術中に器具の挿入及び取り出しを促進するように構成されてもよい。カニューレ101は、眼内に(例えば、強膜、結膜などを通して)延びることができるチューブ又はシャフト105を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カニューレ101は、ハブ103とは別個に製造され、その後、ハブ103に取り付けられてもよい。例えば、カニューレ101は、ハブ103の対応するスロット109に係合するように構成された1つ以上のタブ107を含んでもよい(例えば、図1に示すカニューレ101は、ハブ103内の4つの対応するスロット109に係合する4つのタブ107を含む)。他の取り付けも考えられる。例えば、カニューレ101はスロットを含んでもよく、ハブ103はタブを含んでもよい。いくつかの実施形態では、カニューレ101は、接着剤、熱接着などを介してハブ103に取り付けられてもよい。他の実施形態では、カニューレ101は、ハブ103と一体として製造されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、封止要素111がハブ103に結合されてもよく、又はカニューレ101を通る通路を選択的に封止するように配置されてもよい(例えば、封止要素111は、シャフト105とハブ109との間に少なくとも部分的に配置されてもよい)。封止要素111は、エラストマー(例えば、シリコーン)で作られてもよい。図1に示すように、封止要素111の表面がハブ103上に露出していてもよい。いくつかの実施形態では、外科用ツール又は器具が通過してカニューレ101内に入ることを可能にするように、封止要素111の露出した表面は1つ以上のスリット113を含んでもよい。封止要素111の弛緩状態では、すなわち、外科用器具(又は排出口又は他の要素)がない場合は、封止要素111のスリット113は閉じられて、封止要素111を通る流体の流れを阻止し、それによりカニューレ101を通る流体通路を封止する。外科用器具(又は排出口又は他の要素)がスリット113を貫通してもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、ハブ103に対する封止要素111の回転を阻止するために、封止要素111をハブ103に取り付けてもよい。例えば、封止要素111は、ハブ103内の窪み及び1つ以上の穴の中にオーバーモールドされてもよい。いくつかの実施形態では、封止要素111は、ハブ103とは別個に形成され、ハブ103のカニューレ101への組み立て中にハブ103とカニューレ101との間に挿入されたシリコンウェハを含んでもよい。そのような場合、封止要素111は、摩擦嵌めを介してハブ103及びカニューレ101に取り付けられてもよい。他の取り付けも考えられる(例えば、接着剤)。
【0021】
図2Aは、入口ポート、又はハブ103に固定されたカニューレ101を備えるカニューレ装置の実施形態を示す(例えば、対応するスロット109にタブ107が係合した後)。いくつかの実施形態では、タブ/スロットインタフェースは、カニューレ101に対するハブ103の回転を防止してもよい(例えば、カニューレ101の眼内への挿入中に)。いくつかの実施形態では、タブ107は、ハブ103をカニューレ101に恒久的に保持させるように構成されてもよい(そのため、カニューレ101及び/又はハブ103の一部を破壊することなくハブ103をカニューレ101から取り外すことはできない)。例えば、タブ107(及びカニューレ101)はステンレス鋼で作られてもよく、ハブ103はプラスチック(例えばポリカーボネート)で作られてもよい。他の材料も考えられる。ハブ103とカニューレ101との間の恒久的な保持は、手術(例えば、硝子体網膜手術)中にカニューレ101からハブ103が意図せずに外れることを防ぎ得る。
【0022】
図2Aで分かるように、図2Aに示すような、及び他の実施形態に従って本明細書で開示されるようなカニューレ装置は、チューブの近位端にハブを有する小型チューブを備える。チューブは眼内に挿入され、ハブはチューブの眼内への進入を限定し、チューブが眼に完全に入ることを防止するストッパとして機能する。カニューレを所定位置に保つために、ハブを眼に縫合する場合がある。
【0023】
図2Aに示すような、及び他の実施形態に従って本明細書で開示されるようなカニューレ装置は、異なるサイズのチューブを有する異なるサイズで提供され、それにより異なるサイズの器具を収容してもよい。眼科外科手術に好適なカニューレのサイズの例として、例えば、20ゲージ、23ゲージ、25ゲージ、27ゲージなどが挙げられる。図2Aのカニューレ101は、例えば23ゲージのカニューレであってもよい。
【0024】
カニューレのサイズの識別を手助けし、どの器具がどのカニューレに対応するかを判断することを支援するために、カニューレ装置は、カニューレに関連付けられたサイズを示す色で色分けされてもよい。例えば、23ゲージのカニューレが第1の色を有してもよく、25ゲージのカニューレが第2の色を有してもよく、27ゲージのカニューレが第3の色を有してもよい。色分けは、ハブ、封止要素、及び/又はチューブを含む、カニューレ装置の任意の視認できる部分にあってもよい。色分けを使用することにより、カニューレが眼内に配置された後、外科医は、器具を挿入する適切なカニューレを決定するために、カニューレのサイズを色で識別できる。
【0025】
従来の装置では、外科手術室の照明が薄暗いので、外科医がカニューレ装置及び/又はその色を見ることは困難な場合がある。これにより、外科医は、器具交換のためにカニューレ装置を見るために顕微鏡ライト又は他のライトをオンにする必要が生じる場合があり、これは望ましくない場合がある。例えば、これにより、外科医の目は、より明るい光に調節され、次に顕微鏡ライト又は他のライトがオフになった時に再調節される必要が生じて、手術中に時間を要する場合がある。
【0026】
本明細書に記載される例示的実施形態によると、カニューレ装置は自己照明式であってもよい(例えば、少なくとも部分的に自己照明材料で作られている)。自己照明材料は、例えば、燐光性顔料を含有する材料であってもよい。自己照明は、外科医がカニューレ装置の位置を見ることを手助けすることができ、外科医が任意の色分けを見て、それによりカニューレ装置のサイズを識別することを手助けすることができる。
【0027】
図2Aの例示的実施形態では、ハブ103は、例えば燐光性であることにより、自己照明式であってもよい。ハブ103の色分けに使用される顔料は、燐光性顔料であってもよい。図2Aのカニューレ装置は、第1の色(例えば、橙色)で色分けされており、カニューレのサイズが、例えば23ゲージであることを示している。
【0028】
図2Bは、異なるサイズのカニューレチューブ及び異なる色分けを有する、図2Aのカニューレ装置に類似したカニューレ装置を示す。図2Bの例示的実施形態では、ハブ103はまた、例えば燐光性であることにより、自己照明式である。図2Aと同様に、ハブ103の色分けに使用される顔料は燐光性顔料であってもよい。図2Bのカニューレ装置は、第2の色(例えば、青色又は青緑色)で色分けされており、カニューレのサイズが、例えば25ゲージであることを示している。
【0029】
図2Cは、異なるサイズのカニューレチューブ及び異なる色分けを有する、図2A及び図2Bのカニューレ装置に類似したカニューレ装置を示す。図2Cの例示的実施形態では、ハブ103はまた、例えば燐光性であることにより、自己照明式である。図2A及び図2Bと同様に、ハブ103の色分けに使用される顔料は燐光性顔料であってもよい。図2Cのカニューレ装置は、第3の色(例えば、紫色)で色分けされており、カニューレのサイズが、例えば27ゲージであることを示している。
【0030】
図3A図3B、及び図3Cは、図2A図2B、及び図2Cに示すカニューレ装置と同様のカニューレ装置を示すが、自己照明式の色分けがエラストマー封止要素111内にある。図3A図3B、及び図3Cの各々では、封止要素111は、燐光性であることにより自己照明式である。封止要素111の色分けに使用される顔料は、燐光性顔料であってもよい。図3Aのカニューレ装置は、第1の色(例えば、橙色)で色分けされており、カニューレのサイズが、例えば23ゲージであることを示している。図3Bのカニューレ装置は、第2の色(例えば、青色又は青緑色)で色分けされており、カニューレのサイズが、例えば25ゲージであることを示している。図2Cのカニューレ装置は、第3の色(例えば、紫色)で色分けされており、カニューレのサイズが、例えば27ゲージであることを示している。
【0031】
自己照明機構は、ハブ、封止要素、及び/又はチューブを含む、カニューレ装置の任意の視認できる部分に組み込まれてもよい。自己照明は「蓄光(glow-in-the-dark)」効果を提供し、それによりカニューレ装置は薄暗い又は暗い外科手術室内で視認できる。この機構により、アクティブ照明なしでカニューレ装置のインサイチュー可視化、カニューレ装置への器具の挿入の容易さ、及び/又はゲージサイズを確認するためのカニューレ装置の色分けの確認が促進され得る。
【0032】
自己照明機構が、燐光性である、カニューレ装置の全て又は一部によって提供される例示的実施形態では、燐光は、カニューレ装置の眼内への通常の外科的挿入中の顕微鏡照明下で、その発光動作状態に励起されてもよい。代替として、カニューレ装置が燐光をより多く発するようにするために、別個の光を使用することができる。顕微鏡又は別の方法による活性化の後、カニューレ装置の燐光は、顕微鏡照明又は他の照明がオフになった後に視認できる柔らかい光を発する。燐光は、カニューレのサイズを示すゲージ固有の色の光であってもよい。
【0033】
自己照明機構により、大きなコスト又は複雑さを伴うことなく、手術効率が向上する。この機構により、外科医が内部に配置されたカニューレ装置を見るために、手術中に顕微鏡照明をオンにする必要性が低減される。
【0034】
製造に使用される材料中に好適な燐光体を組み込んで材料を自己照明するようにさせることにより、カニューレ装置の所望の部分を燐光性にできる。例えば、燐光体を、ハブを作製するために使用されるプラスチックに混ぜて、及び/又は封止要素を作製するために使用されるエラストマー(例えば、シリコーン)に混ぜてもよい。燐光体の例には、硫化亜鉛及びアルミン酸ストロンチウムが含まれる。燐光体は、顕微鏡からの光又は部屋内の光などの通常の光で励起することができ、結果として生じるグローは、外科手術の持続時間に対して十分に長く続くことができる。燐光体は、エネルギーが供給されると光を吸収し、光が消えるか又は薄暗くなると蓄積されたエネルギーを放出して光る。燐光体は、活性化された後に所望の色の可視光を放つように選択できる。燐光性顔料及び/又はドーパントの使用は、所望の照明を放つために選択することができる。
【0035】
図4は、トロカール挿入器501上の自己照明式カニューレ装置の実施形態を示す。いくつかの実施形態では、トロカール挿入器501は、ハンドル505に取り付けられたトロカール刃503を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ハンドル505はプラスチックで作られてもよく、刃503はステンレス鋼で作られてもよい。他の材料も考えられる。トロカール刃503は、カニューレ装置のシャフト105の端部を越えて延びてもよく、カニューレ101の挿入のために、眼に刺す(例えば、強膜を貫通して硝子体の中に至る穴を穿刺する)ための1つ以上の鋭利な縁部を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カニューレ装置のガイドスロット115の中にガイド507が嵌合し、カニューレ装置を眼内に挿入する間に、ハンドル505に対するカニューレ装置の回転を阻止してもよい。いくつかの実施形態では、トロカール挿入器501がカニューレ装置から引き出された場合にガイド507がカニューレ装置を眼から引き出さないように、ガイド507はガイドスロット115に解放可能に係合してもよい。例えば、ガイド507は、カニューレ101が眼内にある時に眼によってカニューレ101の外側に加えられる摩擦力よりも小さい摩擦力で、ガイドスロット115と摩擦係合してもよい。
【0036】
図5は、自己照明式カニューレを使用する方法の実施形態のフローチャートを示す。フローチャートで提供される要素は例示に過ぎない。提供されている様々な要素を省略してもよく、付加的な要素を追加してもよく、及び/又は様々な要素を以下に示すものとは異なる順序で実行してもよい。
【0037】
501において、外科用器具の進入用に構成されたチューブと、チューブの近位端にあるハブとを備えるカニューレ装置を使用してもよい。カニューレ装置は、カニューレ装置の視覚化を促進する光を発する自己照明材料(例えば、燐光体)を含んでもよい。例えば、ハブは自己照明材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カニューレ装置は、封止要素が弛緩状態にある場合にチューブを通る通路を封止するように構成された封止要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、封止要素は自己照明材料を含んでもよい。
【0038】
503において、外科用器具の外科的進入のために、カニューレ装置は所望の位置に挿入されてもよい。
【0039】
505において、カニューレ装置を照明して、燐光体を活性化させて活性状態にする。燐光体は、活性状態にある場合に、カニューレ装置のサイズに対応する色分けされた光を発してもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、507において、第2のカニューレ装置が使用されてもよい(ここで、前述のカニューレ装置は第1のカニューレ装置である)。第2のカニューレ装置は、第2の外科用器具の進入用に構成されたチューブを含んでもよく、チューブの近位端にはハブを有する。第2のカニューレ装置もまた、自己照明式であってもよい。いくつかの実施形態では、第1及び第2のカニューレ装置は異なるサイズであってもよい。
【0041】
509において、第2の外科用器具の外科的進入のために、第2のカニューレ装置は所望の位置に挿入されてもよい。
【0042】
511において、第2のカニューレ装置を挿入した後、第2のカニューレ装置は、第2のカニューレ装置の視覚化を促進する光を発してもよい。いくつかの実施形態では、第1のカニューレ装置は、第1のカニューレ装置のサイズに対応する第1の色の光を発してもよく、第2のカニューレ装置は、第2のカニューレ装置のサイズに対応する第2の色の光を発してもよい。いくつかの実施形態では、第2の色は第1の色とは異なっていてもよい。
【0043】
当業者であれば、本開示に包含される実現形態は上述の特定の例示的な実現形態に限定されないことを理解するであろう。この点に関して、例示的な実現形態を示し記載してきたが、前述の開示において、広範な修正、変更、及び置換が考えられる。本開示の範囲から逸脱しない範囲で、前述の内容に対しこのような変更を施してもよいことが理解される。従って、添付の特許請求の範囲は広く且つ本開示に合致するように解釈されることが適切である。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5