IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナージン テクノロジー コーポレーション リミテッドの特許一覧

特許7232817量子ドット組成物、量子ドット発光材料、その製造方法及びそれを含有する発光デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】量子ドット組成物、量子ドット発光材料、その製造方法及びそれを含有する発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20230224BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20230224BHJP
   C09K 11/88 20060101ALI20230224BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20230224BHJP
   C08G 59/06 20060101ALI20230224BHJP
   C08F 283/00 20060101ALI20230224BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20230224BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20230224BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/02 Z
C09K11/88
B01J13/00 A
C08G59/06
C08F283/00
B82Y20/00
B82Y40/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020510563
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 CN2018098223
(87)【国際公開番号】W WO2019042068
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】201710758363.5
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519271746
【氏名又は名称】ナージン テクノロジー コーポレーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NAJING TECHNOLOGY CORPORATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ロン
(72)【発明者】
【氏名】ルブ,メンビン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ハイリン
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,フェイ
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-536641(JP,A)
【文献】特開2009-084350(JP,A)
【文献】特開2018-101000(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117095(WO,A1)
【文献】特開2018-101013(JP,A)
【文献】特開2018-120058(JP,A)
【文献】特開2018-119042(JP,A)
【文献】特表2013-525243(JP,A)
【文献】国際公開第2016/151933(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/100329(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/100327(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09K 11/02
C09K 11/88
B01J 13/00
C08G 59/06
C08F 283/00
B82Y 20/00
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロエマルション及び前記マイクロエマルションを分散させる高分子前駆体とを含み、前記マイクロエマルションは、量子ドットと、前記量子ドットを分散させる分散媒体と、前記分散媒体を包み込む乳化剤と、を含み
前記分散媒体が溶剤であり、前記量子ドットが親水性量子ドットであり、前記溶剤が極性有機溶剤であり、前記乳化剤が油中水型乳化剤であり、前記高分子前駆体が親油性高分子前駆体であ
前記極性有機溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、2-ブタノン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及び1,4-ジオキサンからなる群から選ばれた1種以上である、ことを特徴とする量子ドット組成物。
【請求項2】
前記親油性高分子前駆体が硬化した後、親油性高分子マトリックスを形成し、前記親油性高分子マトリックスは、親油性シリコーン樹脂、親油性エポキシ樹脂、親油性アクリル酸樹脂、及び親油性ポリウレタン樹脂からなる群から選ばれた1種以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の量子ドット組成物。
【請求項3】
前記油中水型乳化剤のHLB値の範囲は、3~6である、ことを特徴とする請求項1に記載の量子ドット組成物。
【請求項4】
前記油中水型乳化剤は、プロピレングリコールモノステアレート、グリセリンモノステアレート、ヒドロキシラノリン、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタンモノオレアート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタンモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、ジエチレングリコール脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、ジエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンモノステアレート、及びポリオキシエチレンソルビトールミツロウ誘導体からなる群から選ばれた1種以上である、ことを特徴とする請求項に記載の量子ドット組成物。
【請求項5】
前記量子ドット組成物において、前記量子ドットの質量と前記高分子前駆体の質量との比は、1~20:100である、請求項1に記載の量子ドット組成物。
【請求項6】
前記乳化剤の質量と前記高分子前駆体の質量との比は、0.1~10:100である、ことを特徴とする請求項に記載の量子ドット組成物。
【請求項7】
前記乳化剤の質量と前記分散媒体及び前記量子ドットの質量の合計との比は、10~30:100である、ことを特徴とする請求項に記載の量子ドット組成物。
【請求項8】
前記高分子前駆体は、プレポリマー、希釈モノマー、及び非強制的に選択される第3の硬化剤を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の量子ドット組成物。
【請求項9】
量子ドット発光材料の製造方法であって、
請求項1乃至のうちのいずれか一項に記載の量子ドット組成物における量子ドット、分散媒体、乳化剤及び高分子前駆体を混合し、混合物を得ることと、
前記混合物を硬化させ、前記量子ドット発光材料を得ることと、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
前記硬化は、熱硬化及び/又はUV硬化である、ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記熱硬化は、80℃~150℃の条件下で15~150min硬化することである、ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記UV硬化のエネルギーは、500~5000mj/cmである、ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記混合は、超音波混合又は機械的撹拌混合である、ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料溶液の分野に関し、具体的には、量子ドット組成物、量子ドット発光材料、その製造方法及びそれを含有する発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドットが、サイズが非常に小さく、1~10nmであることがほとんどであり、比表面積が非常に大きく、表面に不対電子及び不飽和ダングリング・ボンドが多く存在するため、化学性質が極めて不安定であり、酸素分子及び水分子に非常に敏感である。量子ドットの表面に不対電子及び不飽和ダングリング・ボンドが多く存在するため、コア・シェル構造を設計することにより、量子ドットの安定性を向上させる一方、量子ドットの表面にて配位子の修飾により量子ドットの安定性を向上させる。シェル層と配位子の種類及び厚さは、量子ドットの安定性に重要な影響を及ぼす。
【0003】
量子ドット材料は、合成中、一般的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、n-オクタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロエタン、ジクロロメタン等を含む有機溶剤を選択して分散することが多く、それで清澄で透明な量子ドット溶液を形成する。量子ドット粉末又は量子ドット吸着ミクロスフェアについても相関する報告があり、遠心沈殿方法により抽出してから、シリカ等の無機粒子又は多孔質材料により覆って吸着して形成される。
【0004】
量子ドットの応用過程において、量子ドットは、単独で使用されることができず、高分子前駆体に分散しなければならない。量子ドット自体の特性を考慮し、高分子前駆体は、以下の特性を有するものでなければならない。(1)量子ドット材料と良好な相溶性を有し、量子ドットを消光させない。(2)良好なバリア性を有し、水や酸素に対して良好なバリア性を有する。(3)光又は熱の作用により液体から固体に硬化可能である。
【0005】
今まで、量子ドットを分散させる高分子前駆体についていろいろ報告されているが、下記いくつかの種類にまとめられる。(1)量子ドットの表面をシロキサンで変性させ、シリコーン材料を高分子前駆体として選択して、主としてLEDチップのIn-situパッケージに用いられる。(2)多孔質材料により量子ドットを吸着させるか、或いは、量子ドットをエポキシ樹脂で覆ってミクロスフェアに製造する。(3)アクリレートモノマーを高分子前駆体として選択する。(4)相分離構造を形成し、即ち、疎水系(アクリレート樹脂)を用いて量子ドットを分散させ、外層を親水系(エポキシ樹脂)で酸素から断絶し、巨視的に相分離構造を形成する。
【0006】
以上の高分子マトリックスと量子ドットとの相溶性に一定の問題があり、程度は異なるが、量子ドットの効率の減衰に繋がる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、従来技術における量子ドット発光材料は老化し安定しない問題を解決するように、量子ドット組成物、量子ドット発光材料、その製造方法及びそれを含有する発光デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、マイクロエマルション、及びマイクロエマルションを分散させる高分子前駆体を含み、マイクロエマルションは、量子ドットと、量子ドットを溶解する溶解媒体と、溶解媒体を包み込む乳化剤とを含む量子ドット組成物を提供する。
【0009】
さらに、溶解媒体は、溶剤又は反応性モノマーから選ばれる。
【0010】
さらに、溶解媒体が溶剤であり、量子ドットが油溶性量子ドットであり、溶剤が非極性有機溶剤であり、乳化剤が水中油型乳化剤であり、高分子前駆体が水溶性高分子前駆体であり、好ましくは、非極性有機溶剤は、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、n-オクタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、及び四塩化炭素から選ばれた1種以上である。
【0011】
さらに、溶解媒体が溶剤であり、量子ドットが水溶性量子ドットであり、溶剤が極性有機溶剤であり、乳化剤が油中水型乳化剤であり、高分子前駆体が油溶性高分子前駆体であり、好ましくは、極性有機溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、2-ブタノン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及び1,4-ジオキサンから選ばれた1種以上である。
【0012】
さらに、溶解媒体が反応性モノマーであり、量子ドットが油溶性量子ドットであり、反応性モノマーが油溶性モノマーであり、マイクロエマルションにはさらに非強制的に選択される第1の硬化剤が含まれており、乳化剤が水中油型乳化剤であり、高分子前駆体が水溶性高分子前駆体であり、好ましくは、油溶性モノマーは、メチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフラニルアクリレート、ドコシルアクリレート、メタクリル酸メチル、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸グリシジル、イソボルニルメタクリレート、及びステアリン酸メタクリレートから選ばれた1種以上である。
【0013】
さらに、溶解媒体が反応性モノマーであり、量子ドットが水溶性量子ドットであり、反応性モノマーが水溶性モノマーであり、マイクロエマルションにはさらに非強制的に選択される第2の硬化剤が含まれており、乳化剤が油中水型乳化剤であり、高分子前駆体が油溶性高分子前駆体であり、好ましくは、水溶性モノマーは、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸、メタクリル酸、N-メチロールアクリルアミド、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、N,N-ジメチルアクリルアミド、及び水溶性エポキシ樹脂から選ばれた1種以上である。
【0014】
さらに、水溶性高分子前駆体が硬化した後、水溶性高分子マトリックスを形成し、水溶性高分子マトリックスは、水溶性シリコーン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性アクリル酸樹脂、及び水溶性ポリウレタン樹脂から選ばれた1種以上である。
【0015】
さらに、水中油型乳化剤のHLB値の範囲は、8~18であり、好ましくは、水中油型乳化剤は、オレイン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールラノリン誘導体、ポリオキシエチレンオキシプロピレンステアレート、ポリオキシエチレンセチルアルコール、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリオキシエチレン脂肪アルコール、ポリオキシエチレンオレイルアルコール、ポリオキシエチレンステアリルアルコール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、ポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、ポリオキシエチレン植物油、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンモノオレエート、ヘキサエチレングリコールモノステアレート、及びポリオキシプロピレンステアレートから選ばれた1種以上である。
【0016】
さらに、油溶性高分子前駆体が硬化した後、油溶性高分子マトリックスを形成し、油溶性高分子マトリックスは、油溶性シリコーン樹脂、油溶性エポキシ樹脂、油溶性アクリル酸樹脂、及び油溶性ポリウレタン樹脂から選ばれた1種以上である。
【0017】
さらに、油中水型乳化剤のHLB値の範囲は、3~6であり、好ましくは、油中水型乳化剤は、プロピレングリコールモノステアレート、グリセリンモノステアレート、ヒドロキシラノリン、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタンモノオレアート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタンモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、ジエチレングリコール脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、ジエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンモノステアレート、及びポリオキシエチレンソルビトールミツロウ誘導体から選ばれた1種以上である。
【0018】
さらに、量子ドット組成物において、量子ドットの質量と高分子前駆体の質量との比は1~20:100であり、好ましくは、乳化剤の質量と高分子前駆体の質量との比は0.1~10:100である。
【0019】
さらに、乳化剤の質量と溶解媒体及び量子ドットの質量の合計との比は、10~30:100である。
【0020】
さらに、高分子前駆体は、プレポリマー、希釈モノマー、及び非強制的に選択される第3の硬化剤を含む。
【0021】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、量子ドット発光材料を提供し、量子ドット発光材料は、上述したいずれかの量子ドット組成物から製造されてなる。
【0022】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、量子ドット発光材料を提供し、量子ドット発光材料は、高分子マトリックス及び高分子マトリックス間に分散するマイクロエマルションを含み、マイクロエマルションは、量子ドットと、量子ドットを溶解する溶解媒体と、溶解媒体を包み込む乳化剤とを含む。
【0023】
さらに、溶解媒体は、溶剤又は反応性モノマーから選ばれる。
【0024】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、量子ドット発光材料を提供し、量子ドット発光材料は、高分子マトリックス及び高分子マトリックス間に分散するマイクロエマルションを含み、マイクロエマルションは、量子ドットと、量子ドットを分散させるポリマーと、ポリマーを包み込む乳化剤とを含み、ポリマーは、反応性モノマーの重合により形成される。
【0025】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、量子ドット発光材料を提供し、量子ドット発光材料は、高分子マトリックス及び高分子マトリックス間に分散するミクロ孔を含み、ミクロ孔に量子ドットが含まれている。
【0026】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、量子ドット発光材料を含む発光デバイスを提供し、量子ドット発光材料は、上述したいずれかの量子ドット発光材料である。
【0027】
さらに、発光デバイスは、量子ドット・フィルム又は量子ドット・チューブである。
【0028】
本発明の他の一態様によれば、量子ドット発光材料の製造方法を提供し、該製造方法は、上述したいずれかの量子ドット組成物における量子ドット、量子ドットを溶解する溶解媒体、乳化剤及び高分子前駆体を混合し、混合物を得ることと、混合物を硬化させ、量子ドット発光材料を得ることと、を含む。
【0029】
さらに、硬化は、熱硬化及び/又はUV硬化であり、好ましくは、熱硬化は、80℃~150℃の条件下で15~150min硬化することであり、好ましくは、UV硬化のエネルギーは、500~5000mj/cmである。
【0030】
さらに、混合は、超音波混合又は機械的撹拌混合である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の技術的構成を応用すると、本願に提供される量子ドット組成物は、まず量子ドットを溶解媒体に溶解させ、さらに量子ドットが溶解されている溶解媒体を高分子前駆体に添加する。乳化剤が、両親媒性を有し、一端に高分子前駆体が接続され、他端に溶解媒体が接続されるので、乳化剤の乳化作用により、量子ドットが溶解されている溶解媒体にマイクロエマルションを形成させる。量子ドットと高分子前駆体との接触を効果的に回避し、これにより、量子ドットがマイクロエマルションの内部に存在し、安定して高分子前駆体に分散することが確保され、従って、形成された量子ドット発光材料の発光効率及び量子ドットの老化安定性を向上させる。本願の溶解とは、量子ドットが溶解媒体に安定して均一に分布し、析出もないし沈殿もなく、効率を長時間にわたって安定して保持できることをいう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本願の一部を構成する明細書図面は、本発明をさらに理解するためのものであり、本発明における模式的実施例及びその説明は本発明を説明するものであり、本発明を不当に限定するものではない。図面において、
【0033】
図1】本発明の1つの好適な実施例によるマイクロエマルションを含有する量子ドット組成物のミクロ構造模式図を示している。
図2a-2b】本発明の1つの好適な実施例による量子ドットマイクロエマルションの硬化後の電子顕微鏡図であり、図2aは一つのマイクロエマルションの電子顕微鏡図を示し、図2bは、マイクロエマルションが高分子マトリックスに分散する様子の電子顕微鏡図である。
【0034】
上記の図面には下記の符号を含む。
【0035】
1…量子ドット、2…溶解媒体、3…乳化剤、4…高分子前駆体、10…マイクロエマルション、11…高分子マトリックス。
【発明を実施するための形態】
【0036】
なお、衝突しない限り、本願の実施例及び実施例中の構成要件を組み合わせることができる。以下、実施例を結合して本発明を詳しく説明する。
【0037】
本願における「高分子前駆体」とは、加熱又は光照射等の硬化形態により一定の分子量を有する架橋高分子(一般的には、分子量が5000を超えたものを高分子と呼ぶ)に変化される物質を意味し、通常、プレポリマー、希釈モノマー、及び非強制的に選択される硬化剤を含む混合物である。
【0038】
HLB値(Hydrophile-Lipophile Balance Number):親水親油バランス値といい、水油度ともいう。HLB=親水基の親水性/親油基の親油性であり、HLB値が大きいほど、親水性が強いことを示し、HLB値が小さいほど、親油性が強いことを示す。
【0039】
背景技術欄に言及されたように、従来の量子ドット発光材料について、量子ドットと高分子マトリックスは相溶性が相対的に悪いため、ある程度、量子ドットの発光効率を損なう。従来技術におけるこのような状況を改善するために、本願の代表的な実施形態において、量子ドット組成物を提供し、図1に示すように、この量子ドット組成物は、マイクロエマルション及びマイクロエマルションを分散させる高分子前駆体4を含み、マイクロエマルションは、量子ドット1と、量子ドットを溶解する溶解媒体2と、溶解媒体を包み込む乳化剤3とを含む。本願におけるマイクロエマルションとは、サイズがナノ又はミクロンレベルのミクロ構造を意味し、該ミクロ構造は、油と水の2相で乳化剤の作用により形成される。
【0040】
本願に提供される量子ドット組成物において、量子ドット1は、溶解している方式で溶解媒体2に存在し、乳化剤3は、溶解媒体2を包み、溶解媒体2と高分子前駆体4との界面に位置し、一端が溶解媒体に親和性を持ち、他端が高分子前駆体に親和性を持ち、量子ドットが溶解されている溶解媒体は、マイクロエマルションの形態で高分子前駆体に比較的に均一に分散し、かつ、量子ドットがマイクロエマルションの内部に安全に位置し、さらに、高分子前駆体と量子ドットとの接触に起因する量子効率の低下の問題を回避する。具体的には、溶解媒体と高分子前駆体は、全く逆な水/油に対する溶解性を有する。溶解媒体が水溶性である場合、これに応じて高分子前駆体が油溶性である。また、溶解媒体が油溶性である場合、これに応じて高分子前駆体が水溶性である。乳化剤が、両親媒性を有し、一端に高分子前駆体が接続され、他端に溶解媒体が接続される(乳化剤の接続は、化学結合による接続ではなく、基間の吸引力に頼る)ので、乳化剤の乳化作用により、量子ドットが溶解されている溶解媒体にマイクロエマルションを形成させる。量子ドットと高分子前駆体との接触を効果的に回避し、これにより、量子ドットがマイクロエマルションの内部に存在し、安定的に高分子前駆体に分散することが確保され、さらに、形成された量子ドット発光材料の発光効率及び量子ドットの老化安定性を向上させる。本願の溶解とは、量子ドットが溶解媒体に安定的に且つ均一に分布し、析出もないし沈殿もなく、効率を長時間にわたって安定的に保持できることをいう。本願の量子ドットの表面に保護配位子を有し、該保護配位子は、量子ドットの溶解性に重要な影響を与える。
【0041】
1つの好適な実施例において、上記溶解媒体は、溶剤又は反応性モノマーである。量子ドットの溶解性に応じて適切な溶解媒体を選択し、量子ドットは有機溶剤に溶解することができれば、反応性モノマーに溶解することもできる。ここでの反応性モノマーは、硬化剤によって硬化条件下で重合反応が発生でき、形成されたポリマーが、硬化後に形成された量子ドット発光材料に存在する。または、硬化反応が発生せずに、液体の反応性モノマーとして、硬化後に形成された量子ドット発光材料に存在してもよい。
【0042】
量子ドットの性質によって、異なる溶解媒体及び異なる高分子前駆体を選択して異なる量子ドット組成物が形成できる。1つの好適な実施例において、量子ドットが油溶性量子ドットであり、溶剤が非極性有機溶剤であり、乳化剤が水中油型乳化剤であり、高分子前駆体が水溶性高分子前駆体である。非極性有機溶剤は、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、n-オクタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、及び四塩化炭素から選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0043】
上記好適な実施例において、量子ドットは油溶性量子ドットであり、似ているもの同士は溶け合う原理によれば、該量子ドットの溶解媒体は、非極性の有機溶剤であり、上記非極性有機溶剤は、油溶性の量子ドットを有効的に溶解することができる。水中油型乳化剤は両親媒性を有し、外側に対して親水性を有し、水溶性高分子前駆体とよく溶け合うことができる一方、内側に対して親油性を有し、油溶性の非極性有機溶剤及びその分散している量子ドットを包み込むことができるため、乳化剤を橋のように水溶性高分子前駆体と溶解媒体を有する組成物を形成できる、かつ、乳化剤が該溶解媒体を包み込んでマイクロエマルションを形成する。包み込むとは、乳化剤が溶解媒体と高分子前駆体の界面にあるが、量子ドットが溶解媒体に存在することを意味し、量子ドットが高い安定性を有する。該組成物において、マイクロエマルションが存在するため、高分子前駆体における活性化基と量子ドットとの接触チャンスを少なくなり、さらに、活性化基による量子ドットの破壊を低減し、量子ドットの発光効率及びその老化安定性を向上させる。
【0044】
1つの好適な実施例において、量子ドットの溶解媒体が溶剤であり、量子ドットが水溶性量子ドットであり、溶剤が極性有機溶剤であり、乳化剤が油中水型乳化剤であり、高分子前駆体が油溶性高分子前駆体である。極性有機溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、2-ブタノン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及び1,4-ジオキサンから選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0045】
同様に、似ているもの同士は溶け合う原理によれば、量子ドットが水溶性量子ドットである場合に、溶剤が極性有機溶剤であり、上記極性有機溶剤は、水溶性の量子ドットを有効的に溶解することができる。油中水型乳化剤は、同様に両親媒性であり、内側に対して親水性を有し、極性有機溶剤とよく溶け合うことができる一方、外側に対して親油性を有し、油溶性高分子前駆体とよく溶け合うことができるため、高分子前駆体に均一に分散し、かつ、乳化剤の作用により形成されたマイクロエマルションは、量子ドットと高分子前駆体を有効的に隔離し、その活性化基による量子ドットの破壊、例えば、量子ドットの表面の保護配位子の破壊を低減し、量子ドットの発光効率及びその老化安定性を向上させる。
【0046】
量子ドットを溶解する溶解媒体が異なるにつれ、形成された量子ドット組成物も異なっていく。1つの好適な実施例において、溶解媒体が反応性モノマーであり、量子ドットが油溶性量子ドットであり、反応性モノマーが油溶性モノマーであり、マイクロエマルションにはさらに非強制的に選択される第1の硬化剤が含まれており、乳化剤が水中油型乳化剤であり、高分子前駆体が水溶性高分子前駆体である。油溶性モノマーは、メチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフラニルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ドコシルアクリレート、メタクリル酸メチル、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸グリシジル、イソボルニルメタクリレート、及びステアリン酸メタクリレートから選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0047】
上記好適な実施例において、溶解媒体が反応性モノマーである場合に、マイクロエマルションに硬化剤は含んでもよい。量子ドット発光材料を製造する時に、硬化剤が必須なものである(しかし、本願の量子ドット組成物は、硬化剤を含有しなくてもよく、製造時にニーズに応じて適切な種類の硬化剤を添加してもよい)が、高分子前駆体に分散した硬化剤は、その性質の差異によってマイクロエマルションに入る可能性もある。このため、反応性モノマーの溶解媒体自身に硬化剤が含まれている場合でも、高分子前駆体に添加された硬化剤が、反応性モノマーを含むマイクロエマルションに浸み込んでいる場合でも、硬化剤が含有される場合に、硬化中に、反応性モノマーは重合してポリマーになる。なお、ここで、反応性モノマーも活性化基を含むものであるが、その極性が量子ドットの表面の保護配位子の極性に近いため、量子ドットへの破壊、例えば、蛍光が消光されてしまうことを最小限に抑えることができ、量子ドットを完全に溶解できる。反応性モノマーの硬化と高分子前駆体の硬化条件が異なっていてもよく、反応性モノマー自身が硬化し量子ドットを覆って、量子ドットミクロスフェアを形成する。
【0048】
量子ドットが油溶性量子ドットである場合に、反応性モノマーは油溶性モノマーであり、上記油溶性モノマーは、油溶性の量子ドットを有効的に溶解することができる。水中油型乳化剤を用いれば、内側に対して油溶性量子ドット及び油溶性モノマーと良好な相溶性を有するとともに、外側に対して水溶性高分子前駆体と良好な相溶性を有するため、相溶性が良い量子ドット組成物は形成し、かつ該組成物における量子ドットは発光効率が高く、老化安定性が良い。
【0049】
他の好適な実施例において、溶解媒体が反応性モノマーであり、量子ドットが水溶性量子ドットであり、反応性モノマーが水溶性モノマーであり、マイクロエマルションにはさらに非強制的に選択される第2の硬化剤が含まれており、乳化剤が油中水型乳化剤であり、高分子前駆体が油溶性高分子前駆体である。水溶性モノマーは、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸、メタクリル酸、N-メチロールアクリルアミド、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、N,N-ジメチルアクリルアミド、及び水溶性エポキシ樹脂から選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0050】
上記好適な実施例において、量子ドットが水溶性量子ドットであり、反応性モノマーが水溶性モノマーであり、油中水型乳化剤を用いれば、内側に対して水溶性モノマーと良好な相溶性を有するとともに、外側に対して油溶性高分子前駆体と良好な相溶性を有するため、相溶性が良い量子ドット組成物は形成し、かつ該組成物における量子ドットは発光効率が高く、老化安定性が良い。上記水溶性モノマーは、水溶性の量子ドットを有効的に溶解することができる。硬化剤の存在形態が上記と同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0051】
上述した複数の好適な実施例において、水溶性高分子前駆体が硬化した後、水溶性高分子マトリックスを形成し、具体的な水溶性高分子マトリックスは、水溶性高分子前駆体の種類によって適切に決定できる。1つの好適な実施例において、水溶性高分子前駆体が硬化した後、水溶性高分子マトリックスを形成し、水溶性高分子マトリックスは、水溶性シリコーン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性アクリル酸樹脂、及び水溶性ポリウレタン樹脂から選ばれた1種以上である。これらの水溶性高分子マトリックスは、適用範囲が広く、良好な水バリア性や酸素バリア性及び耐候性を有し、老化性能が優れている。
【0052】
上記複数の好適な実施例において、乳化剤としては、実際のニーズに応じて、適切な水中油型乳化剤又は油中水型乳化剤を選択でき、その具体的な種類は、本願において特に制限されない。1つの好適な実施例において、水中油型乳化剤のHLB値の範囲は、8~18である。水中油型乳化剤は、オレイン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールラノリン誘導体、ポリオキシエチレンオキシプロピレンステアレート、ポリオキシエチレンセチルアルコール、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリオキシエチレン脂肪アルコール、ポリオキシエチレンオレイルアルコール、ポリオキシエチレンステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、ポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、ポリオキシエチレン植物油、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンモノオレエート、ヘキサエチレングリコールモノステアレート、及びポリオキシプロピレンステアレートから選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0053】
HLB値が大きいほど、親水性が強くなることを示し、HLB値が小さいほど、親油性が強くなることを示す。HLB値の範囲が8~18である水中油型乳化剤は、油溶性量子ドット及びその溶解媒体をマイクロエマルションに効果的に形成させることができ、水溶性高分子前駆体と油溶性量子ドットを有効的に隔離し、水溶性高分子前駆体による油溶性量子ドットの破壊を低減する。上述した好ましい具体的な種類の水中油型乳化剤は、適用範囲が広く、マイクロエマルションを効果的で迅速に形成でき、かつマイクロエマルションが安定しており、乳化性能が優れている。
【0054】
上記複数の好適な実施例において、油溶性高分子前駆体が硬化した後、油溶性高分子マトリックスを形成し、油溶性高分子マトリックスの具体的な種類は、従来の高分子マトリックスから適切に選択できる。他の好適な実施例において、油溶性高分子前駆体が硬化した後、油溶性高分子マトリックスを形成し、油溶性高分子マトリックスは、油溶性シリコーン樹脂、油溶性エポキシ樹脂、油溶性アクリル酸樹脂、及び油溶性ポリウレタン樹脂から選ばれた1種以上である。これらの油溶性高分子マトリックスは、適用範囲が広く、良好な水バリア性や酸素バリア性及び耐候性を有し、老化性能が優れている。
【0055】
上記複数の好適な実施例において、油中水型乳化剤は、実際のニーズに応じて最適化して選択してもよい。1つの好適な実施例において、油中水型乳化剤のHLB値の範囲は、3~6である。油中水型乳化剤は、プロピレングリコールモノステアレート、グリセリンモノステアレート、ヒドロキシラノリン、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタンモノオレアート、プロピレングリコールモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、ジエチレングリコール脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、及びポリオキシエチレンソルビトールミツロウ誘導体から選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0056】
上記実施例において、HLB値の範囲が3~6である油中水型乳化剤は、水溶性量子ドット及びその溶解媒体をマイクロエマルションに効果的に形成させることができ、油溶性高分子前駆体と水溶性量子ドットを有効的に隔離し、油溶性高分子前駆体による水溶性量子ドットの破壊を低減する。上述した好ましい具体的な種類の油中水型乳化剤は、適用範囲が広く、マイクロエマルションを効果的で迅速に形成でき、マイクロエマルションが安定しており、乳化性能が優れている。
【0057】
本願の上記量子ドット組成物において、量子ドットの使用量と高分子前駆体の使用量との比は、発光材料の発光需求によって適切に決定できる。1つの好適な実施例では、上記量子ドット組成物において、量子ドットが溶解されている溶解媒体における量子ドットの質量と高分子前駆体の質量との比は、1~20:100である。乳化剤の質量と高分子前駆体の質量との比は、0.1~10:100であることが好ましい。この割合であれば、マイクロエマルションを有効的に形成できる。
【0058】
上記量子ドット組成物において、乳化剤は、マイクロエマルションを形成して量子ドットと高分子前駆体を隔離する役割を担う。このため、乳化剤の使用量も量子ドットの量の変化につれて変化する。1つの好適な実施例において、乳化剤の質量と量子ドット及び溶解媒体の質量の合計との比は、10~30:100である。両者の質量の比を該範囲内に抑えることで、乳化剤の乳化効果を効果的に発揮し、安定性を有するマイクロエマルションが形成できる。
【0059】
上記量子ドット組成物において、第1又は第2又は第3の硬化剤は、光ラジカル硬化剤、光カチオン硬化剤、及び/又は、熱硬化剤であり、かつ第1又は第2又は第3の硬化剤が同一であってもよい。
【0060】
上記光ラジカル硬化剤の具体的な種類は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(光開始剤184)、2-メチル-1-[4-メチルチオフェニル]-2-モルホリニル-1-プロパノン(光開始剤907)、2-ヒドロキシ-メチルフェニルプロパン-1-オン(光開始剤1173)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(光開始剤TPO)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(光開始剤819)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4'-モルホリノブチロフェノン(光開始剤369)、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン(光開始剤651)、ベンゾフェノン(光開始剤BP)、及びメチルベンゾイルホルメート(光開始剤MBF)のいずれか1種又は複数種を含むが、これに限られない。
【0061】
光カチオン硬化剤の具体的な種類は、4,4'-ジメチルジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、シクロプロピルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロりん酸塩、ジフェニルヨードニウムヒ酸塩、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリフェニルスルホニウムブロミド、及びトリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファートのいずれか1種又は複数種を含むが、これに限られない。
【0062】
熱硬化剤の具体的な種類は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンポリアミン、ジプロピレントリアミン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ヒドロキシエチルエチレンジアミン、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ピロメリット酸二無水物、2-メチルイミダゾール、及び2-エチルイミダゾールのいずれか1種又は複数種を含むが、これに限られない。上述した硬化剤は、適用性が広く、硬化速度が速く、硬化効率が高い等のメリットを有し、これらを組み合わせて使用すると一定の相乗効果を有し、性能が良好な硬化物を得る。
【0063】
実際の生産において、製造される発光デバイスの性能要求によって、上記量子ドット組成物には、その性能を向上させるための成分がさらに含まれていてもよく、これにより、発光デバイスにおける量子ドットの発光効率及び発光安定性をさらに向上させる。本発明の他の好適な実施例において、上記量子ドット組成物には、添加剤がさらに含まれていてもよく、該添加剤は、光拡散粒子及び/又は酸化防止剤である。光拡散粒子としては、通常の光拡散材料を選択すればよく、本発明において、TiO、Zr、ZnO、Al、BaSO、CaCO、SiO、及びシリコーン類のいずれか1種又は複数種を含むが、これに限られない。光拡散粒子は、量子ドットの発光効率を有効的に向上させることができ、一方、酸化防止剤は、酸化防止に寄与し、量子ドット発光材料の安定性を向上させる。上述した種類の光拡散粒子は、良好な光拡散効果を有し、量子ドット発光材料の出光効率を有効的に向上させることができる。
【0064】
酸化防止剤は、4-ヒドロキシドデカン酸アニリド、N,N’-ヘキサメチン基ビス-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド、4,4-ジ-tert-オクチルジフェニルアミン、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)、β(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル(酸化防止剤1076)、テトラキス[β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトール(酸化防止剤1010)、三[2.4-ジ-tert-ブチルフェニル]ホスファイト(酸化防止剤168)、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)ペンタエリスリトールジホスファイト(酸化防止剤626)、及びジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(酸化防止剤618)のいずれか1種又は複数種を含むが、これに限られない。上述した種類の酸化防止剤は、良好な酸化防止効果を有し、高分子マトリックスの黄変及び分解等の現象を効果的に抑制できる。そして、ヒンダードフェノール系と亜リン酸エステル系酸化防止剤を配合して使用すると、一定の相乗効果を達成でき、より良好な酸化防止効果を有する。
【0065】
本願の上述した量子ドット組成物において、高分子前駆体とは、形成された高分子マトリックスが硬化される前の成分の混合物であり、具体的には、プレポリマー、希釈モノマー、及び非強制的に選択される第3の硬化剤を含む。ここでの高分子前駆体は、市販されているものを購入したものであることができ、硬化剤を含むか否かは、市販されているものによって異なる。当該高分子前駆体に硬化剤が含まれていない場合、該高分子前駆体を用いて量子ドット発光材料を製造する時には、適切な硬化剤及び硬化条件を選択して硬化できる。
【0066】
本願の第2の代表的な実施形態において、量子ドット発光材料を提供し、該量子ドット発光材料は、上述したいずれかの量子ドット組成物から製造されてなる。本願の上記量子ドット組成物から製造された発光材料は、発光効率が高く、かつ老化安定性が良いメリットを有する。
【0067】
本願の第3の代表的な実施形態において、量子ドット発光材料を提供し、該量子ドット発光材料は、高分子マトリックス11及び高分子マトリックス間に分散するマイクロエマルション10(図2a又は図2bに示す如き)を含み、マイクロエマルションは、乳化剤及び乳化剤で包み込まれた、量子ドットが溶解されている溶解媒体を含む。
【0068】
溶解媒体は、溶剤又は反応性モノマーから選ばれることが好ましい。溶解媒体が溶剤である場合、発光材料は、以降の使用において溶解媒体が徐々に揮発していく可能性があるが、発光材料の安定性に影響しない。
【0069】
本願の第4の代表的な実施形態において、量子ドット発光材料を提供し、該量子ドット発光材料は、高分子マトリックス11、及び高分子マトリックス間に分散するマイクロエマルション10(図2a又は図2bに示す如き)を含み、マイクロエマルションは、量子ドットと、量子ドットを分散させるポリマーと、ポリマーを包み込む乳化剤とを含み、該ポリマーは、反応性モノマーの重合により形成されたものである。
【0070】
本願の第5の代表的な実施形態において、量子ドット発光材料を提供し、該量子ドット発光材料は、高分子マトリックス、及び高分子マトリックス間に分散するミクロ孔を含み、ミクロ孔には量子ドットが含まれている。溶解媒体が溶剤である量子ドット組成物を用いて量子ドット発光材料を製造する際に、高分子前駆体を制御することで、硬化過程において、溶剤の揮発を低減し、高分子前駆体が高分子マトリックスに硬化し終わってから、溶剤をすべて揮発させるように制御すると、この時、高分子マトリックスの内部に複数のミクロ孔が形成され、量子ドットがミクロ孔内に残留する。揮発又は硬化過程には、不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましく、これにより、空気が高分子マトリックスの内部に入って量子ドットに影響することを回避する。
【0071】
上記好適な実施形態に提供される量子ドット発光材料は、乳化剤で包み込まれて形成されたマイクロエマルションにより、硬化前の高分子前駆体における活性化基による量子ドットの破壊を効果的に低減でき、これにより、量子ドットの発光効率及びその老化安定性を向上させる。上記溶解媒体は、溶剤又は反応性モノマーから選ばれることが好ましい。
【0072】
本願の第6の代表的な実施形態において、発光デバイスを提供し、該発光デバイスは、量子ドット発光材料を含み、量子ドット発光材料は、上述したいずれかの量子ドット発光材料である。該発光デバイスは、発光効率が高く、かつ老化安定性が良いメリットを有する。発光デバイスは、エレクトロルミネセンス・デバイス又はフォトルミネセンス・デバイスであることができ、量子ドットの具体的な発光色は、実際の応用需要に応じて合理的に選択できる。量子ドットは、赤色量子ドット、緑色量子ドット、及び青色量子ドットからなる群から選ばれた1種以上であることができる。赤色量子ドット及び緑色量子ドットを含む量子ドット・フォトルミネセンス・デバイスは、表示分野に用いられることができ、青色LED光の照射下では、赤色及び緑色量子ドットは、青色光を吸収して赤色光及び緑色光に変換させることができ、吸収されていない青色光と一緒にRGB白光フィールドを形成する。赤色及び緑色量子ドットの半値幅が小さいため、従来の液晶表示に比べると、量子ドットによる表示製品の色域が高く、色の飽和度が高い。
【0073】
上記量子ドット発光デバイスは、実際のニーズに応じて、量子ドット・フィルム又は量子ドット・チューブであることができる。量子ドット発光材料を形成する反応物が基板にて硬化成膜すれば、量子ドット・フィルムが形成できる。具体的な応用環境において、量子ドット・フィルムよりも上層又は下層には、さらに、ポリマー膜層により形成された水分及び酸素バリア膜又は保護膜を有するか、或いは、量子ドット・フィルムとポリマー膜層との間には、さらに、他の層、例えば、水分及び酸素バリア用の金属酸化物層を有してもよい。量子ドット組成物がチューブの内腔に硬化して、量子ドット発光材料を形成することにより、量子ドット・チューブ製品を得て、両者はいずれもバックライト・システムを表示する光変換デバイスに用いられることができる。上記量子ドット・フィルム又は量子ドット・チューブは、発光効率が高く、かつその老化安定性が良いメリットを有する。
【0074】
本願の第7の代表的な実施形態において、量子ドット発光材料の製造方法を提供し、該製造方法は、上述したいずれかの量子ドット組成物における、量子ドットを分散させた溶解媒体、乳化剤及び高分子前駆体を混合し、混合物を得ることと、混合物を硬化させ、量子ドット発光材料を得ることと、を含む。該混合物の製造時における各材料の添加順番は制限されるものではないが、量子ドット、溶解媒体及び乳化剤を同時に高分子前駆体に添加することが好ましく、これにより、量子ドットと高分子前駆体との接触時間を短くにする。
【0075】
上記量子ドット発光材料の製造方法において、組成物に乳化剤を添加することで、溶解媒体が乳化剤と有効的に溶け合うことができるため、乳化剤が溶解媒体を被包し個々のマイクロエマルションとなる、量子ドットが各マイクロエマルションに位置し、製造過程における量子ドットと高分子前駆体における活性化基との接触チャンスを少なくになり、活性化基による量子ドットの破壊を回避し、これにより、上記製造された量子ドット発光材料の発光効率を向上させ、かつ、マイクロエマルションの形成により、該量子ドット発光材料の老化安定性が向上される。
【0076】
上記製造方法において、量子ドットを分散させる溶解媒体及び高分子前駆体が異なるにつれ、その硬化方式も異なっていく。1つの好適な実施例において、上記硬化は、熱硬化及び/又はUV硬化である。熱硬化は、80℃~150℃の条件下で15~150min硬化することであることが好ましい。UV硬化のエネルギーは、500~5000mj/cmであることが好ましい。
【0077】
上記量子ドット組成物における溶解媒体が溶剤であり、かつ高分子前駆体に対して熱硬化しかできない場合に、熱硬化時にマイクロエマルションにおける溶剤の揮発をできるだけ低減し、これにより、マイクロエマルションの存在を保持するため、適切な硬化温度を選択することは必要である。高分子前駆体の硬化が完了した後、量子ドットに影響する活性化基は、ほとんど反応完了したため、高分子マトリックスが形成された後、高分子マトリックスは量子ドットの安定性にあまり影響しないので、この時、溶剤の揮発を継続しても、量子ドットに悪影響を与えることがない。高分子前駆体が完全に硬化した後、わざと溶剤を完全に揮発させることあるいは使用中に溶剤の自然揮発することも、発光材料の性質に悪影響を与えることがない。上記量子ドット組成物における溶解媒体が溶剤であり、かつ高分子前駆体に熱硬化の必要がない場合に、熱を少し発生する紫外線硬化方式を選択して硬化させることができる。溶解媒体が反応性モノマーである場合に、高分子前駆体に対して熱硬化を選択してもよいし、紫外線硬化を選択してもよい。
【0078】
なお、ここで、量子ドット組成物において、反応性モノマーの溶解媒体に硬化剤が含まれていない場合(硬化剤がないことが好ましく、これにより、量子ドットに対する影響を低減する)、高分子前駆体に溶解した硬化剤はマイクロエマルションにしみ込む可能性が低い。マイクロエマルションにしみ込まない場合、或いは硬化条件が適切ではない場合、硬化過程では、高分子前駆体だけが硬化し高分子マトリックスになり、マイクロエマルションは変わらない。例えば、高分子前駆体における硬化剤が紫外線硬化剤で、反応性モノマーが熱硬化剤であるため、硬化剤がマイクロエマルションに入っても、硬化条件は紫外線の照射下で硬化することであり、反応性モノマーは相変わらず硬化しない。
【0079】
上記製造方法において、マイクロエマルションをより速くかつよりよく形成するために、上記混合ステップでは、超音波混合又は機械的高速撹拌混合(例えば、撹拌装置の撹拌性能によって、撹拌速度を1000rpm以上に設定する)を利用して、均一に混合して、大きさがより均一なマイクロエマルションを形成し、かつマイクロエマルションをより速く形成することは、量子ドットと高分子前駆体との接触時間の低減に寄与する。
【0080】
量子ドットを分散させる溶解媒体が有機溶剤である場合、熱硬化の温度及び/又は時間を制御するか、或いは、UV硬化を利用することで、マイクロエマルションにおける有機溶剤を完全に揮発させることなく、即ち、有機溶剤で量子ドットを分散た場合、マイクロエマルション内では液体の形態で存在する。この時、マイクロエマルションは硬化するはずがない。一方、量子ドットを分散させる溶解媒体が反応性モノマーである場合、マイクロエマルション内の反応性モノマーが硬化条件に達していなければ、液体の形態で存在する。硬化条件に達した時にポリマーを形成し、発光材料内に形成した量子ドットミクロスフェアの形態で存在してもよい。つまり、量子ドット発光材料において、反応性モノマーが硬化してもよいし、硬化しなくてもよい。硬化するか否かは、硬化条件によって決められ、製造過程中の硬化は主として高分子前駆体を対象として行われる。
【0081】
本願の前文に言及された量子ドット組成物、量子ドット発光材料及び量子ドット発光デバイスにおいて、量子ドットが単一型量子ドット又はドープ型量子ドットであり、好ましくは、前記ドープ型量子ドットは、コア・シェル構造量子ドット又は合金構造量子ドットである。マイクロエマルションに複数の量子ドットを有し、各量子ドットの発光スペクトルの中心波長が同一であってもよいし、異なってもよい。
【0082】
以下、具体的な実施例を結合して本願の有益な効果をさらに説明する。
【0083】
(実施例1)
高分子前駆体(硬化前の原料は、プレポリマー、希釈剤、及び硬化剤を含む)を用意し、乳化剤を用意し、CdSe/CdS量子ドット溶液(量子ドットと溶解媒体とを混合したもの)を用意し、乳化剤及び量子ドット溶液を高分子前駆体に添加し、1000rpmで、20minにてマイクロエマルションを有する混合物を形成した。上記混合物を硬化させ、量子ドット発光材料を得った。
【0084】
混合物における各原料を表1に示し、各原料間の使用量の比及び具体的な反応条件を表2に示す。
【0085】
(実施例2~8)
実施例2~実施例8は、実施例1と同様なステップにより、表1及び表2に示すような製造パラメータ及び条件で製造した。
【0086】
(比較例1及び2)
乳化剤がないが、他のパラメータや条件を表1及び表2に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
備考:実施例9の量子ドット発光材料をさらに120℃で45min加熱することで、マイクロエマルションにおける溶剤を揮発させ切ってミクロ孔を形成する。
【0090】
検出:
上述した各実施例及び比較例で製造された量子ドット発光材料の性能を検出し、具体的な検出方法は、以下のようなものであり、検出結果を表3に示す。
【0091】
量子ドットの発光効率の検出方法:450nmの青色LEDライトをバックライト光源として利用し、積分球により青色バックライトのスペクトル及び量子ドット発光材料を透過したスペクトルをそれぞれテストし、スペクトログラムの積分面積を用いて量子ドットの発光効率を算出する。
【0092】
量子ドットの発光効率=量子ドットが発射したピーク面積/(青色バックライトのピーク面積-量子ドット発光材料を透過した吸収されていない青色ピークの面積)*100%。
【0093】
発光安定性の検出方法:発光安定性のテスト方法は、主として、高温での青光による光照射(70℃、0.5W/cm)、高温高湿(65℃/95%の相対湿度)及び高温保存(85℃)等の老化条件下で、量子ドット発光材料の効率の変化を検出することを含む。
【0094】
【表3】
【0095】
備考:以上の効率は相対効率であり、比較例1の効率を100%とし、他の効率は同比率で対応したものである。
【0096】
以上の説明から分かるように、本発明の上述した実施例は、以下のような技術効果を達成している。溶剤又は高分子(反応性モノマー)を選択して量子ドットを分散させ、量子ドット溶液又は量子ドット反応モノマー混合物の形態で高分子マトリックスに添加し、量子ドット溶液及び量子ドット反応モノマー混合物は高分子マトリックスと溶け合わないため、乳化剤の作用により量子ドットマイクロエマルションが生じ、量子ドットマイクロエマルションが形成され、量子ドットがマイクロエマルションの溶解媒体に集中することにより、量子ドットと高分子前駆体との接触を低減し、量子ドットの発光効率及び老化安定性を向上させる。
【0097】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定することは意図していない。当業者であれば、本発明に様々な変更や変形が可能である。本発明の思想や原則内の如何なる修正、均等の置き換え、改良なども、本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
本発明の態様として、例えば以下の項の態様を挙げることができる。
[項1]
マイクロエマルション及び前記マイクロエマルションを分散させる高分子前駆体とを含み、前記マイクロエマルションは、量子ドットと、前記量子ドットを溶解する溶解媒体及びと、前記溶解媒体を包み込む乳化剤と、を含む、ことを特徴とする量子ドット組成物。
[項2]
前記溶解媒体は、溶剤又は反応性モノマーから選ばれる、ことを特徴とする項1に記載の量子ドット組成物。
[項3]
前記溶解媒体が溶剤であり、前記量子ドットが油溶性量子ドットであり、前記溶剤が無極性有機溶剤であり、前記乳化剤が水中油型乳化剤であり、前記高分子前駆体が水溶性高分子前駆体であり、
好ましくは、前記無極性有機溶剤は、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、n-オクタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、及び四塩化炭素からなる群から選ばれた1種以上である、ことを特徴とする項2に記載の量子ドット組成物。
[項4]
前記溶解媒体が溶剤であり、前記量子ドットが水溶性量子ドットであり、前記溶剤が極性有機溶剤であり、前記乳化剤が油中水型乳化剤であり、前記高分子前駆体が油溶性高分子前駆体であり、
好ましくは、前記極性有機溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、2-ブタノン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及び1,4-ジオキサンからなる群から選ばれた1種以上である、ことを特徴とする項2に記載の量子ドット組成物。
[項5]
前記溶解媒体が反応性モノマーであり、前記量子ドットが油溶性量子ドットであり、前記反応性モノマーが油溶性モノマーであり、前記マイクロエマルションにはさらに非強制的に選択される第1の硬化剤が含まれており、前記乳化剤が水中油型乳化剤であり、前記高分子前駆体が水溶性高分子前駆体であり、
好ましくは、前記油溶性モノマーは、メチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフラニルアクリレート、ドコシルアクリレート、メタクリル酸メチル、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸グリシジル、イソボルニルメタクリレート、及びステアリン酸メタクリレートからなる群から選ばれた1種以上である、ことを特徴とする項2に記載の量子ドット組成物。
[項6]
前記溶解媒体が反応性モノマーであり、前記量子ドットが水溶性量子ドットであり、前記反応性モノマーが水溶性モノマーであり、前記マイクロエマルションにはさらに非強制的に選択される第2の硬化剤が含まれており、前記乳化剤が油中水型乳化剤であり、前記高分子前駆体が油溶性高分子前駆体であり、
好ましくは、前記水溶性モノマーは、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸、メタクリル酸、N-メチロールアクリルアミド、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、N,N-ジメチルアクリルアミド、及び水溶性エポキシ樹脂からなる群から選ばれた1種以上である、ことを特徴とする項2に記載の量子ドット組成物。
[項7]
前記水溶性高分子前駆体が硬化した後、水溶性高分子マトリックスを形成し、前記水溶性高分子マトリックスは、水溶性シリコーン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性アクリル酸樹脂、及び水溶性ポリウレタン樹脂からなる群から選ばれた1種以上である、ことを特徴とする項3又は5に記載の量子ドット組成物。
[項8]
前記水中油型乳化剤のHLB値の範囲は、8~18であり、
好ましくは、前記水中油型乳化剤は、オレイン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールラノリン誘導体、ポリオキシエチレンオキシプロピレンステアレート、ポリオキシエチレンセチルアルコール、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリオキシエチレン脂肪アルコール、ポリオキシエチレンオレイルアルコール、ポリオキシエチレンステアリルアルコール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、ポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、ポリオキシエチレン植物油、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンモノオレエート、ヘキサエチレングリコールモノステアレート及ポリオキシプロピレンステアレートからなる群から選ばれた1種以上である、ことを特徴とする項3又は5に記載の量子ドット組成物。
[項9]
前記油溶性高分子前駆体が硬化した後、油溶性高分子マトリックスを形成し、前記油溶性高分子マトリックスは、油溶性シリコーン樹脂、油溶性エポキシ樹脂、油溶性アクリル酸樹脂、及び油溶性ポリウレタン樹脂からなる群から選ばれた1種以上である、ことを特徴とする項4又は6に記載の量子ドット組成物。
[項10]
前記油中水型乳化剤のHLB値の範囲は、3~6であり、
好ましくは、前記油中水型乳化剤は、プロピレングリコールモノステアレート、グリセリンモノステアレート、ヒドロキシラノリン、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタンモノオレアート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタンモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、ジエチレングリコール脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、ジエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンモノステアレート、及びポリオキシエチレンソルビトールミツロウ誘導体からなる群から選ばれた1種以上である、ことを特徴とする項4又は6に記載の量子ドット組成物。
[項11]
前記量子ドット組成物において、前記量子ドットの質量と前記高分子前駆体の質量との比は、1~20:100であり、
好ましくは、前記乳化剤の質量と前記高分子前駆体の質量との比は、0.1~10:100である、ことを特徴とする項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の量子ドット組成物。
[項12]
前記乳化剤の質量と前記溶解媒体及び前記量子ドットの質量の合計との比は、10~30:100である、ことを特徴とする項11に記載の量子ドット組成物。
[項13]
前記高分子前駆体は、プレポリマー、希釈モノマー、及び非強制的に選択される第3の硬化剤を含む、ことを特徴とする項1に記載の量子ドット組成物。
[項14]
項1乃至13のうちのいずれか一項に記載の量子ドット組成物から製造されてなる、ことを特徴とする量子ドット発光材料。
[項15]
高分子マトリックス、及び前記高分子マトリックス間に分散するマイクロエマルションを含み、前記マイクロエマルションは、量子ドット、前記量子ドットを溶解する溶解媒体、及び前記溶解媒体を包み込む乳化剤を含む、ことを特徴とする量子ドット発光材料。
[項16]
前記溶解媒体は、溶剤又は反応性モノマーから選ばれる、ことを特徴とする項15に記載の量子ドット発光材料。
[項17]
高分子マトリックス、及び前記高分子マトリックス間に分散するマイクロエマルションを含み、前記マイクロエマルションは、量子ドットと、前記量子ドットを分散させるポリマーと、前記ポリマーを包み込む乳化剤とを含み、前記ポリマーは、反応性モノマーの重合により形成される、ことを特徴とする量子ドット発光材料。
[項18]
高分子マトリックス及び高分子マトリックス間に分散するミクロ孔を含み、前記ミクロ孔に量子ドットが含まれている、ことを特徴とする量子ドット発光材料。
[項19]
量子ドット発光材料を含む発光デバイスであって、前記量子ドット発光材料は、項14乃至18のうちのいずれか一項に記載の量子ドット発光材料である、ことを特徴とする発光デバイス。
[項20]
前記発光デバイスは、量子ドットフィルム又は量子ドットチューブである、ことを特徴とする項19に記載の発光デバイス。
[項21]
量子ドット発光材料の製造方法であって、
項1乃至13のうちのいずれか一項に記載の量子ドット組成物における量子ドット、溶解媒体、乳化剤及び高分子前駆体を混合し、混合物を得ることと、
前記混合物を硬化させ、前記量子ドット発光材料を得ることと、
を含むことを特徴とする製造方法。
[項22]
前記硬化は、熱硬化及び/又はUV硬化であり、
好ましくは、前記熱硬化は、80℃~150℃の条件下で15~150min硬化することであり、
好ましくは、前記UV硬化のエネルギーは、500~5000mj/cm である、ことを特徴とする項21に記載の製造方法。
[項23]
前記混合は、超音波混合又は機械的撹拌混合である、ことを特徴とする項21に記載の製造方法。
図1
図2a-2b】