(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】芳香送達用処理膜
(51)【国際特許分類】
B01D 61/36 20060101AFI20230224BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20230224BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20230224BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20230224BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20230224BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20230224BHJP
B01D 71/08 20060101ALI20230224BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20230224BHJP
B01D 71/40 20060101ALI20230224BHJP
B01D 71/44 20060101ALI20230224BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20230224BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20230224BHJP
B01D 71/58 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B01D61/36
B01D69/00
B01D69/02
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/02
B01D71/08
B01D71/26
B01D71/40
B01D71/44
B01D71/52
B01D71/56
B01D71/58
(21)【出願番号】P 2020512569
(86)(22)【出願日】2017-11-13
(86)【国際出願番号】 US2017061295
(87)【国際公開番号】W WO2019045760
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-04-21
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】パリネロ, ルチアーノ エム.
(72)【発明者】
【氏名】グオ, チュンフイ
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-527865(JP,A)
【文献】国際公開第2009/065092(WO,A1)
【文献】特表2016-535674(JP,A)
【文献】特表2012-523304(JP,A)
【文献】国際公開第2015/050784(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
A61L9/00-9/22
B01J4/00、7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1側面および前記第1側面の反対側の第2側面を含む微孔性膜であって、前記膜は、ポリオレフィンを含む熱可塑性有機ポリマーを含み、前記膜は、前記膜全体に実質的に連通する相互接続孔のネットワークを規定する、微孔性膜;
細かく分けられた実質的に非水溶性の粒子状充填剤であって、前記膜全体に分布し、前記膜および前記粒子状充填剤の総重量に基づいて前記膜の10~90重量パーセントを構成し、ここで、前記粒子状充填剤は、粒子状シリカを含むケイ酸質粒子を含む、粒子状充填剤;および
前記第1側面の少なくとも一部を覆う第1の疎水性/疎油性材料を含み、
ここで、前記ポリオレフィンは、前記膜および前記粒子状充填剤の総重量に基づいて、前記膜の少なくとも2重量パーセントを含み、
ここで、前記膜は最大0.2μmの平均細孔径を有し、
ここで、前記第1の疎水性/疎油性材料は、少なくとも1つのフルオロアルキル基を含む、
匂いのある有機蒸気
に対して透過性
を有する処理された微孔性膜。
【請求項2】
前記第1の疎水性/疎油性材料は、コポリマーを含有するフルオロアルキル基を含む、請求項1に記載の処理された膜。
【請求項3】
前記第1側面の少なくとも一部は、AATCC試験方法118-2007に基づいて、少なくとも6の油評価を示す、請求項1に記載の処理された膜。
【請求項4】
前記第1側面の少なくとも一部は、少なくとも105°の水接触角を示す、請求項1に記載の処理された膜。
【請求項5】
前記膜は、0.4g/cm
3~1.0g/cm
3の密度を有する、請求項1に記載の処理された膜。
【請求項6】
前記第2側面の少なくとも一部の上に第2の疎水性/疎油性材料をさらに含む、請求項1に記載の処理された膜。
【請求項7】
前記第2側面の少なくとも一部の上に親水性コーティングをさらに含む、請求項1に記載の処理された膜。
【請求項8】
前記親水性コーティングが、ポリオキサゾリン、ポリ(エチレングルコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)に基づくトリブロックコポリマー、ポリアミド、酸化ポリエチレンまたはその誘導体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコールまたはその誘導体、ポリプロピレンオキシドまたはその誘導体、ポリ(エチレングリコール)とポリエチレンオキシドのコポリマー、ポリビニルアルコール、セルロースまたはその誘導体、コラーゲン、ポリペプチド、グアー、ペクチン、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリルアミド、多糖類、双性イオン性ポリマー、高分子両性電解質、およびポリエチレンイミンのうち、1またはそれを超えるものを含む、請求項7に記載の処理された膜。
【請求項9】
前記第1側面または前記第2側面は揮発性材料接触面を含み、前記第1側面および前記第2側面の他方は蒸気放出面を含み、前記処理膜は、芳香送達デバイスの前記蒸気放出面から匂いのある蒸気を放出するように構成される、請求項1に記載の処理された膜。
【請求項10】
第1側面および前記第1側面の反対側の第2側面を含む微孔性膜を提供することであって、前記膜は、ポリオレフィンを含む熱可塑性有機ポリマーを含み、前記膜は、実質的に前記膜全体に連通する相互接続孔のネットワークを規定し、前記膜は、前記膜全体に分布する細かく分けられた粒子状充填剤を有し、ここで、前記粒子状充填剤は、粒子状シリカを含むケイ酸質粒子を含む、微孔性膜を提供すること;および
前記第1側面の少なくとも一部の上に第1の疎水性/疎油性材料を塗布すること、
を含み、
ここで、前記第1の疎水性/疎油性材料は、少なくとも1つのフルオロアルキル基を含む、
匂いのある有機蒸気
に対して透過性
を有する処理された微孔性膜の調製方法。
【請求項11】
前記第1側面の少なくとも一部の上に前記第1の疎水性/疎油性材料を塗布する前に、前記第1側面の少なくとも一部の上に第1の親水性コーティングを塗布することをさらに含む、請求項10に記載の調製方法。
【請求項12】
前記第1の親水性コーティングが、ポリオキサゾリン、ポリ(エチレングルコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)に基づくトリブロックコポリマー、ポリアミド、酸化ポリエチレンまたはその誘導体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコールまたはその誘導体、ポリプロピレンオキシドまたはその誘導体、ポリ(エチレングリコール)とポリエチレンオキシドのコポリマー、ポリビニルアルコール、セルロースまたはその誘導体、コラーゲン、ポリペプチド、グアー、ペクチン、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリルアミド、多糖類、双性イオン性ポリマー、高分子両性電解質、およびポリエチレンイミンのうち、少なくとも1つを含む、請求項11に記載の調製方法。
【請求項13】
前記第1側面の少なくとも一部の上に前記第1の疎水性/疎油性材料を塗布する前に、前記第1の親水性コーティングを含む前記膜を乾燥させることをさらに含む、請求項11に記載の調製方法。
【請求項14】
前記第1の疎水性/疎油性材料が、ドローダウン法を使用して前記第1側面の一部の上に塗布される、請求項10に記載の調製方法。
【請求項15】
前記膜の前記第2側面の少なくとも一部の上に第2の親水性コーティングを塗布することをさらに含む、請求項10に記載の調製方法。
【請求項16】
前記膜の前記第2側面の少なくとも一部の上に第2の疎水性/疎油性材料を塗布することをさらに含む、請求項10に記載の調製方法。
【請求項17】
前記第1の疎水性/疎油性材料は、少なくとも1つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物を含む、請求項1に記載の処理された膜。
【請求項18】
前記粒子状充填剤は、炭酸カルシウムをさらに含む、請求項1に記載の処理された膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年9月1日に出願された米国仮特許出願第62/553,350号および2017年11月10日に出願された米国実用特許出願第15/809,255号に基づく優先権を主張しており、その両方の全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
発明の分野
本発明は、処理された蒸気透過性微孔性膜および処理された蒸気透過性微孔性膜を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
芳香送達デバイスは、多くの場合、芳香油などの芳香を、時間の経過とともに、均一に放出する蒸気透過性微孔性膜を含む。この膜は、液体状の芳香油と接触する揮発性材料接触面を含む。この揮発性材料接触面の反対側は、蒸気状の芳香油を放出するための蒸気放出面である。この芳香送達デバイスは、上記揮発性液体を蒸発すること、およびこの膜を通過することにより動作する。蒸発した油は、上記膜の上記蒸気放出面で大気に放出される。
【0004】
蒸気透過性微孔性膜を含む公知の芳香送達デバイスによって提起される課題は、制限された空気流条件下での芳香油の「発汗」を防ぐことである。発汗は、揮発性芳香油が膜の蒸気放出面に液体状で集まるときに生じる。これは、芳香送達デバイスが、芳香油を芳香送達デバイス周囲の領域に漏出させるおそれがある。例えば、発汗により、芳香送達デバイスから液体の芳香油が家庭用家具または自動車の内装面上に漏れるおそれがある。
【0005】
蒸気透過性微孔性膜を含む公知の芳香送達デバイスによって提起される別の課題は、芳香送達デバイスの耐用年数の初めから終わりまでの均一な芳香送達である。芳香油の放出速度が遅すぎると、芳香が感知されない場合があり、周囲の空気をさっぱりさせることができない場合がある。に、上記芳香油の放出速度が速すぎると、芳香が強烈になる場合があり、芳香油が高速で消費されると芳香送達デバイスの耐用年数が短くなる場合がある。
【0006】
したがって、当上記技術分野において、芳香送達デバイスからの液状油の発汗を防ぐ芳香送達デバイスが求められている。さらに、芳香送達デバイスの耐用年数の初めから終わりまでの均一で適切な量の上記芳香を放出する芳香送達デバイスの開発もまた、望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明は、第1側面および上記第1側面の反対側の第2側面を有し、実質的に水に不溶性の微孔性膜を含む、処理された蒸気透過性微孔性膜に関する。この膜は、ポリオレフィンを有する熱可塑性有機ポリマーを含む。この膜は、実質的に膜全体に連通する相互接続孔のネットワークを規定する。実質的に非水溶性の細かく分けられた微粒子状充填剤は、この膜全体に分布し、この膜および上記粒子状充填剤の総重量に基づいて上記膜の10~90重量パーセントを構成する。第1の疎水性/疎油性材料は、上記第1側面の少なくとも一部の上に位置している。上記ポリオレフィンは、上記膜および上記粒子状充填剤の総重量に基づいて、上記膜の少なくとも2重量パーセントを含む。上記膜は、最大0.2μmの平均細孔径を有する。
【0008】
本発明はまた、処理された蒸気透過性微孔性膜を調製する方法に関する。この方法は、第1側面およびこの第1側面の反対側の第2側面を有する実質的に非水溶性の微孔性膜を提供することを含み、この膜はポリオレフィンを有する熱可塑性有機ポリマーを含み、この膜は実質的に膜全体に連通する相互接続孔のネットワークを規定し、この膜は、この膜全体に分散した実質的に非水溶性の細かく分けられた微粒子状充填剤を有すること;および、上記第1側面の少なくとも一部の上に第1の疎水性/疎油性材料を塗布することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の処理された蒸気透過性微孔性膜の非限定的な例を示す。
【0010】
【
図2】
図2は、本発明の処理された蒸気透過性微孔性膜の別の非限定的な例を示す。
【0011】
【
図3】
図3は、本発明の処理された蒸気透過性微孔性膜の別の非限定的な例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の説明
以下の詳細な説明の目的のために、本発明は、そうでないことを明示的に指定されている場合を除き、種々の代替の変形形態および一連の工程を想定し得ることを理解すべきである。さらに、任意の実施例以外、または特に明記しない限り、例えば、明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量を表すすべての数字は、用語「約」によって、すべての場合おいて変更されることを理解されるべきである。したがって、そうでないことが明示して示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。控えめに言っても、また、および均等論の適用を本特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、通常の丸め手法を適用することにより、少なくとも解釈されるべきである。
【0013】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載の数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、任意の数値はそれらの試験測定それぞれにおいて見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0014】
また、本明細書で列挙された任意の数値範囲は、そこに包括されるすべての部分範囲を含むことを意図していると理解されるべきである。例えば、「1から10」の範囲は、列挙された最小値1と列挙された最大値10の間(ならびに1および10を含む)、つまり1と等しいまたは1を超える最小値および10と等しいまたは10未満の最大値を有するすべての部分範囲を含むことを意図される。
【0015】
本出願では、特に明記しない限り、単数形の使用は複数形を含み、また複数形は単数形を包含する。また、本出願では、特定の場合に「および/または」が明示的に使用されていても、特に明記しない限り、「または」の使用は「および/または」を意味する。さらに、本出願では、特に明記しない限り、「a」または「an」の使用は、「少なくとも1つ(at least one)」を意味する。例えば、油評価(「an」 oil rating)、フルオロポリマー(「a」 fluoropolymer)などは、これらのアイテムの1つまたは複数を指すものである。また、本明細書で使用される用語「ポリマー」は、プレポリマー、オリゴマー、およびホモポリマーとコポリマーの両方を指すことを意味する。用語「樹脂」は、「ポリマー」と同じ意味で使用される。
【0016】
本明細書で使用される「含む(comprising)」という接続用語(および、例えば「含む(containing)」および「含む(including)」などの他の同等の用語)は、「オープンエンド(open-ended)」であり、本発明にとって不可欠な、組成物、方法、およびこれらの各構成要素に関して使用されるが、不特定事項の含有に対しては開かれている。「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、所定の実施形態に必要な構成要素を指し、その実施形態の特性または機能特性に実質的に影響を及ぼさない構成要素の存在を許容する。「からなる(consisting of)」という用語は、実施形態のその説明に記載されていない任意のその他の構成要素を排除する組成物および方法を指す。
【0017】
図1~
図3を参照すると、処理された蒸気透過性微孔性膜10(以下「処理膜」)は、第1側面14と、第1側面14の反対側の第2側面16とを有する微孔膜12を含む。この膜は、ポリオレフィンを含む熱可塑性有機ポリマーを含む。この膜は、実質的に膜12全体に連通する相互接続孔のネットワークを規定する。細かく分けられた微粒子状充填剤は、この膜12全体に分布していてもよい。第1の疎水性/疎油性材料18は、第1側面14の少なくとも一部の上を覆ってもよい。
微孔性膜
【0018】
膜12は、熱可塑性有機ポリマーを含むことができる。いくつかの実施例では、この熱可塑性有機ポリマーは、実質的に非水溶性の熱可塑性有機ポリマーであってもよい。実質的に非水溶性とは、25℃純水中での溶解度が50mg/L未満を意味する。
【0019】
膜12の使用に適した上記ポリマーの種類は、非常に多い。一般に、フィルム、シート、ストリップまたはウェブへ、押出し加工、カレンダー加工、プレス加工、または圧延することができる、実質的に非水溶性の熱可塑性有機ポリマーを使用することができる。このポリマーは、単一ポリマーであっても、ポリマーの混合物であってもよい。このポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、アタクチックポリマー、アイソタクチックポリマー、シンジオタクチックポリマー、線状ポリマー、または分岐ポリマーであってもよい。ポリマーの混合物が使用される場合、混合物は均質であっても、2またはそれを超えるポリマー相を含んでもよい。
【0020】
好適な実質的に非水溶性の熱可塑性有機ポリマーの例としては、熱可塑性ポリオレフィンが挙げられる。このポリオレフィンは、粒子状充填剤を含むこの膜12の総重量に基づいて、この膜12の少なくとも2重量パーセント、例えば、少なくとも5重量パーセント、少なくとも10重量パーセント、少なくとも15重量パーセント、少なくとも25重量パーセント、少なくとも35重量パーセント、少なくとも45重量パーセント、少なくとも55重量パーセント、少なくとも65重量パーセント、少なくとも75重量パーセント、または少なくとも85重量パーセント、を含んでもよい。上記ポリオレフィンは、粒子状充填剤を含む膜12の総重量に基づいて、膜12の最大95重量パーセント、例えば、最大85重量パーセント、最大75重量パーセント、最大65重量パーセント、最大55重量パーセント、最大45重量パーセント、最大35重量パーセント、25重量パーセント、または最大15重量パーセントを構成してもよい。上記ポリオレフィンは、粒子状充填剤を含む膜12の総重量に基づいて、膜12の2~95重量パーセントを構成してもよい。好適な実質的非水溶性有機ポリマーのクラスの他の例としては、ポリ(ハロ置換オレフィン)、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリ(ハロゲン化ビニル)、ポリ(ハロゲン化ビニリデン)、ポリスチレン、ポリ(ビニルエステル)、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリイミド、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリアクリレート、およびポリメタクリレートが挙げられる。選択してもよい実質的に非水溶性の熱可塑性有機ポリマーから想到されるハイブリッドの種類としては、例えば、熱可塑性ポリ(ウレタン-尿素)、ポリ(エステル-アミド)、ポリ(シラン-シロキサン)、およびポリ(エーテル-エステル)が挙げられる。好適な実質的に非水溶性の熱可塑性有機ポリマーのさらなる例としては、熱可塑性高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン(アタクチック、アイソタクチック、またはシンジオタクチック)、ポリ(塩化ビニル)、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンとアクリル酸のコポリマー、エチレンとメタクリル酸のコポリマー、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデンと酢酸ビニルのコポリマー、塩化ビニリデンと塩化ビニルのコポリマー、エチレンとプロピレンのコポリマー、エチレンとブテンのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリ(オメガアミノウンデカン酸)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(イプシロン-カプロラクタム)、およびポリ(メチルメタクリレート)が挙げられる。これらの種類の詳細説明および実質的に非水溶性の熱可塑性有機ポリマーの例は、網羅的なものではなく、説明の目的のためにのみ提供するものである。
【0021】
実質的に非水溶性の熱可塑性有機ポリマーは、特に、例えば、ポリ(塩化ビニル)、塩化ビニルのコポリマー、またはそれらの混合物を含んでもよい。一実施形態では、上記非水溶性熱可塑性有機ポリマーは、以下から選択される超高分子量ポリオレフィンを含む:超高分子量ポリオレフィン、例えば、少なくとも10デシリットル/グラムの固有粘度を有する本質的に線状の超高分子量ポリオレフィン;または、超高分子量ポリプロピレン、例えば、少なくとも6デシリットル/グラムの固有粘度を有する本質的に線状の超高分子量ポリプロピレン;またはそれらの混合物。特定の実施形態において、上記非水溶性熱可塑性有機ポリマーは、少なくとも18デシリットル/グラムの固有粘度を有する超高分子量ポリエチレン、例えば線状超高分子量ポリエチレンを含む。
【0022】
超高分子量ポリエチレン(ultrahigh molecular weight polyethylene :UHMWPE)は、無限の分子量を有する熱硬化性ポリマーではないが、技術的には熱可塑性樹脂として分類される。ただし、分子は実質的に非常に長い鎖であるため、UHMWPEは加熱すると軟化するが、通常の熱可塑性樹脂の方法では溶融液体として流動しない。それらがUHMWPEに与える非常に長い鎖および特有の特性は、このポリマーを使用して作製された膜12の望ましい特性に大いに貢献し得る。
【0023】
先に示したように、上記UHMWPEの固有粘度は少なくとも約10デシリットル/グラムである。通常、上記固有粘度は少なくとも約14デシリットル/グラムである。多くの場合、上記固有粘度は少なくとも約18デシリットル/グラムである。多くの場合、上記固有粘度は少なくとも約19デシリットル/グラムである。上記固有粘度の上限に特別な制限はないが、上記固有粘度はしばしば約10から約39デシリットル/グラムの範囲、例えば約14から約39デシリットル/グラムの範囲である。場合によっては、上記UHMWPEの上記固有粘度は、約18~約39デシリットル/グラム、または約18~約32デシリットル/グラムの範囲である。
【0024】
UHMWPEの公称分子量は、次の方程式に従ってポリマーの固有粘度に実験的に関連する:
M(UHMWPE)=5.3×104[Η]1.37
ここで、M(UHMWPE)は公称分子量、[Η]はデシリットル/グラムで表される上記UHMWポリエチレンの固有粘度である。
【0025】
本明細書で使用する場合、固有粘度は、UHMWPEのいくつかの希釈溶液の減少した粘度または内部粘度をゼロ濃度と推定することによって決定され、上記溶媒は、新しく蒸留して得たデカヒドロナフタレンであり、これに0.2パーセントの3,5-ジ-TERT-ブチル-4-ヒドロキシヒドロケイ皮酸、ネオペンタンテトライルエステル[CAS登録NO.6683-19-8]を添加した。上記UHMWPEの減少した粘度または内部粘度は、ASTM D 4020-81の一般的な手順に従って、ウッベローデ(Ubbelohde)NO.1粘度計を使用して135℃で得られた相対粘度から確認されるが、異なる濃度のいくつかの希釈溶液が使用される。ASTM D 4020-81は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0026】
特定の一実施例では、上記マトリックスは、固有粘度が少なくとも10デシリットル/グラムの実質的に線状の超高分子量ポリエチレン、ならびに、ASTM D 1238-86 条件E メルトインデックスが50グラム/10分未満およびASTM D 1238-86 条件F メルトインデックスが少なくとも0.1グラム/10分である低分子量ポリエチレン(lower molecular weight polyethylene:LMWPE)との混合物を含む。LMWPEの上記公称分子量は、UHMWPEの分子量のものよりも小さい。LMWPEは熱可塑性であり、多くの異なる種類が公知である。分類の1つの方法は、ASTM D 1248-84(1989年に再承認)に従って、グラム/立方センチメートルで表され、小数第3位に丸められた密度によるもので、次のように要約される。
【表1】
これらのポリエチレンのいずれかまたはすべてを、本発明のLMWPEとして使用してもよい。通常、HDPEはMDPEまたはLDPEよりも線状になる傾向があるため、幾つかの適用のためには、HDPEを使用してもよい。ASTM D 1248-84(1989年再承認)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0027】
種々のLMWPEを製造するプロセスは周知であり、記録により十分立証されている。これらのプロセスとしては、高圧プロセス、Phillips Petroleum Companyプロセス、Standard Oil Company(インディアナ州)プロセス、およびチーグラー法が挙げられる。
【0028】
LMWPEの上記ASTM D 1238-86 条件E(つまり、190℃および2.16キログラム負荷) メルトインデックスは、約50グラム/10分未満である。多くの場合、上記条件E メルトインデックスは約25グラム/10分未満である。通常は、条件E メルトインデックスは約15グラム/10分未満である。
【0029】
LMWPEの上記ASTM D 1238-86 条件F(つまり、190℃および21.6キログラム負荷) メルトインデックスは少なくとも0.1グラム/10分である。多くの場合、上記条件F メルトインデックスは少なくとも約0.5グラム/10分である。通常は、条件F メルトインデックスは少なくとも約1.0グラム/10分である。ASTM D 1238-86は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0030】
十分なUHMWPEおよびLMWPEが、それらの特性を膜12に付与するために、上記マトリックス中に存在しなければならない。他の熱可塑性有機ポリマーも、それらの存在が膜12の特性に有害な方でに物質的な影響を与えない限り、上記マトリックスに存在してもよい。1またはそれを超える他の熱可塑性ポリマーが上記マトリックスに存在してもよい。存在し得る他の熱可塑性ポリマーの量は、このようなポリマーの性質に依存する。必要に応じて存在してもよい熱可塑性有機ポリマーの例としては、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、エチレンとアクリル酸のコポリマー、およびエチレンとメタクリル酸のコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。所望であれば、カルボキシル含有コポリマーのカルボキシル基の全部または一部をナトリウム、亜鉛などで中和してもよい。
【0031】
いくつかの例では、上記UHMWPEおよび上記LMWPEは、合わせて、上記マトリックスの上記ポリマーの少なくとも約65重量パーセントを構成する。いくつかの例では、上記UHMWPEおよび上記LMWPEは、合わせて、上記マトリックスの上記ポリマーの少なくとも約85重量パーセントを構成する。いくつかの例では、他の熱可塑性有機ポリマーが実質的に存在しないため、上記UHMWPEおよび上記LMWPEは、合わせて、上記マトリックスの上記ポリマーの実質的に100重量パーセントを構成する。いくつかの例では、上記UHMWPEは実質的に上記マトリックスの上記ポリマーのすべてを構成する(例えば、LMWPEを組成に含まない)。
【0032】
上記UHMWPEは、上記マトリックスの上記ポリマーの少なくとも1重量パーセントを構成してもよい。上記UHMWPEおよび上記LMWPEは、合わせて、膜12の上記マトリックスの上記ポリマーの100重量パーセントを構成する場合、上記UHMWPEは、上記マトリックスの上記ポリマーの40重量パーセントまたはそれを超える、例えば、上記マトリックスの上記ポリマーの45重量パーセント、または48重量パーセントまたはそれを超える、または50重量パーセントまたはそれを超える、または55重量パーセントまたはそれを超える、を構成し得る。また、上記UHMWPEは、上記マトリックスの上記ポリマーの99重量パーセントまたはそれ未満、例えば、上記マトリックスの上記ポリマーの80重量パーセントまたはそれ未満、または70重量パーセントまたはそれ未満、または65重量パーセントまたはそれ未満、または60重量パーセントまたはそれ未満、を構成し得る。上記マトリックスの上記ポリマーを含むUHMWPEの上記レベルは、列挙された値を含むこれらの値のいずれかの間の範囲であり得る
【0033】
同様に、上記UHMWPEおよび上記LMWPEは、合わせて、膜12の上記マトリックスの上記ポリマーの100重量パーセントを構成する場合、上記LMWPEは上記マトリックスの上記ポリマーの1重量パーセントまたはそれを超える、例えば、上記マトリックスの上記ポリマーの5重量パーセントまたはそれを超える、または10重量パーセントまたはそれを超える、または15重量パーセントまたはそれを超える、または20重量パーセントまたはそれを超える、または25重量パーセントまたはそれを超える、または30重量パーセントまたはそれを超える、または35重量パーセントまたはそれを超える、または40重量パーセントまたはそれを超える、または45重量パーセントまたはそれを超える、または50重量パーセントまたはそれを超える、または55重量パーセントまたはそれを超える、を構成してもよい。また、上記LMWPEは、上記マトリックスの上記ポリマーの70重量パーセントまたはそれ未満、例えば、上記マトリックスのポリマーの65重量パーセントまたはそれ未満、または60重量パーセントまたはそれ未満、または55重量パーセントまたはそれ未満、または50重量パーセントまたはそれ未満、または45重量パーセントまたはそれ未満、を構成してもよい。上記LMWPEの上記レベルは、列挙された値を含むこれらの値のいずれかの間の範囲であり得る。
【0034】
本発明の前述の膜12のいずれにおいても、上記LMWPEは高密度ポリエチレンを含み得ることに留意すべきである。
【0035】
膜12は、後述するように、全体に分布する細かく分けられた微粒子状充填剤を含んでもよい。膜12は、少量の他の材料を含んでもよい。少量とは、膜12、粒子状充填剤、および他の材料の総重量に基づいて、10重量パーセントまたはそれ未満であり得る。加工に使用される上記他の材料は、潤滑剤、加工可塑剤、有機抽出液、水などであってよい。熱、紫外線および寸法安定性などの特定の目的のために導入されたさらなる他の材料は、膜12、粒子状充填剤、およびその他の材料の総重量に基づいて、例えば、15重量パーセントまたはそれ未満の少量で膜12において、必要に応じて存在してもよい。このようなさらなる材料の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、カットしたガラス繊維ストランドなどの強化繊維などが挙げられるが、これらに限定されない。1またはそれを超える特別な目的に適用される充填剤および任意のコーティング、印刷インク、または含浸剤を除く、膜12の残りは、本質的に熱可塑性有機ポリマーである。
細かく分けれらた微粒子状充填剤
【0036】
前述のように、膜12は、膜12全体に分布する細かく分けられた微粒子状充填剤を含んでもよい。一実施例において、上記粒子状充填剤は、粒子状シリカを含むケイ酸質粒子を含む。上記粒子状充填剤は、有機粒子状材料および/または無機粒子状材料を含んでもよい。上記粒子状充填剤は着色されていてもいなくてもよい。例えば、上記粒子状充填剤は、ケイ酸質または粘土の粒子状材料などの白色またはオフホワイトの充填剤材料であってもよい。
【0037】
上記粒子状充填剤は、実質的に非水溶性の充填剤粒子であってもよい。実質的に非水溶性とは、25℃純水中での溶解度が50mg/L未満を意味する。
【0038】
細かく分けられた実質的に非水溶性の充填剤粒子は、膜12、上記充填剤粒子、および上記他の材料(膜12に塗布されたコーティングを除く)の10~90重量パーセントを構成し得る。例えば、このような充填剤粒子は、膜12、上記充填剤粒子、および上記他の材料(膜12に塗布されたコーティングを除く)の20~90重量パーセント、例えば、30パーセント~70パーセント、40パーセント~60パーセントを構成し得る。
【0039】
上記細かく分けられた微粒子状充填剤は、最終粒子、最終粒子の凝集体、またはその両方の組み合わせの形態であり得る。膜12の調製に使用される粒子状充填剤の少なくとも約90重量パーセントは、0.04マイクロメートルという小さな粒子径を測定できるレーザー回折粒度分布計、Beckman CoultonのLS230の使用により決定した、1から100マイクロメートルなど、0.5から約200マイクロメートルの範囲で粗粒子サイズを有し得る。上記粒子状充填剤の少なくとも90重量パーセントは、5~40、例えば10~30マイクロメートルの範囲で粗粒子サイズを有し得る。膜12を調製するために使用される成分の加工中に、上記粒子状充填材の凝集体のサイズを小さくしてもよい。したがって、膜12内の粗粒子サイズの分布は、未加工の充填剤自体よりも小さくなり得る。
【0040】
本発明の膜12に使用し得る好適な有機および無機粒子状充填剤の非限定的な例としては、米国特許第6,387,519号明細書の第9欄第4行から第13欄第62行に記載されるものが挙げられ、その引用部分は参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
本発明の特定の実施形態において、上記粒子状充填材料はケイ酸質材料を含む。上記微孔質材料の調製に使用できるケイ酸質充填剤の非限定的な例としては、シリカ、マイカ、モンモリロナイト、カオリナイト、Southern Clay Products(テキサス州ゴンザレス)から入手可能なクロイサイトなどのナノクレイ、タルク、珪藻土、バーミキュライト、天然および合成ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、ポリケイ酸アルミニウム、アルミナシリカゲルおよびガラス粒子が挙げられる。上記ケイ酸質充填剤に加えて、他の細かく分けられた実質的に非水溶性の充填剤も必要に応じて使用してもよい。このような任意の粒子状充填剤の非限定的な例としては、カーボンブラック、活性炭、グラファイト、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アンチモン、ジルコニア、マグネシア、アルミナ、二硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウムが挙げられる。このような任意の充填剤のいくつかは、発色性充填剤であり、使用される量に応じて、上記微孔性材料に色相または色を追加してもよい。非限定的な実施形態において、ケイ酸質充填剤は、シリカおよび前述の粘土のいずれかを含んでもよい。シリカの非限定的な例としては、沈降シリカ、シリカゲル、ヒュームドシリカ、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
シリカゲルは、一般に、可溶性金属ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムの水溶液を酸による低pHにおいて酸性化することにより商業的に製造される。二酸化炭素は使用可能であるが、用いられる上記酸は、一般に硫酸または塩酸などの強鉱酸である。粘度が低い間は、ゲル相と周囲の液相の密度に本質的に差がないため、ゲル相は沈殿しない、つまり沈降しない。結果として、シリカゲルは、コロイド状非晶質シリカの連続粒子の非沈殿性、凝集性、剛性の三次元ネットワークと表現してもよい。細分化の状態は、大きな固体の塊から極微小の粒子まで、およびほぼ無水のシリカから、シリカ重量部あたり100部程度の水を含む柔らかいゼラチン状の塊までの水和の程度におよぶ。
【0043】
沈降シリカは、一般に、可溶性金属ケイ酸塩、通常ケイ酸ナトリウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液、および、シリカのコロイド粒子が弱アルカリ性溶液中で成長し、結果として生じる可溶性アルカリ金属塩のアルカリ金属イオンによって凝固するように、酸を組み合わせることにより商業的に製造される。用いられ得る酸としては、鉱酸を含むが、これらに限定されない。用いられ得る酸の非限定的な例としては、塩酸および硫酸が挙げられるが、沈降シリカを製造するために二酸化炭素もまた用いることができる。凝固剤の不存在下では、シリカはどのpHであっても、溶液から沈降しない。非限定的な実施形態において、シリカの沈降をもたらすために使用される凝固剤は、コロイドシリカ粒子の形成中に製造される可溶性アルカリ金属塩であってもよく、または可溶性無機塩または有機塩などの添加電解質であってもよく、または両方の組み合わせでもよい。
【0044】
上記微孔質材料を調製するために、使用されるケイ質充填剤として、多くの異なる沈降シリカを用いることができる。沈降シリカは周知の市販の材料であり、これらを製造するプロセスは、米国特許第2,940,830号明細書および米国特許第4,681,750号明細書を含む多くの米国特許に詳細に記載されている。上記微孔性材料を調製するために使用される沈降シリカの平均極大粒子径(極大粒子が凝集しているかどうかに関係なく)は、透過型電子顕微鏡検査により決定した、一般に0.1マイクロメートル未満、例えば0.05マイクロメートル未満または0.03マイクロメートル未満である。沈降シリカは、PPG Industries,Inc.(ペンシルバニア州ピッツバーグ)から多くのグレードおよび形態で入手できる。これらのシリカは、HI-SIL登録商標として販売されている。
【0045】
本発明の目的のために、上記細かく分けられた微粒子状ケイ酸質充填剤は、上記粒子状充填剤材料の少なくとも50重量パーセント、例えば、少なくとも65または少なくとも75重量パーセント、または少なくとも90重量パーセントを構成することができる。上記ケイ酸質充填剤は、上記粒子状充填剤の50~90重量パーセント、例えば60~80重量パーセントを構成してもよく、または上記ケイ酸質充填剤は、実質的にすべての上記粒子状充填材を(90重量パーセントを超えて)構成してもよい。
【0046】
上記粒子状充填剤、例えば、上記ケイ酸質充填剤は、通常、表面積が大きく、これにより、上記充填剤は、本発明の上記微孔性材料を製造するために使用される上記加工可塑剤組成物を多く支持することができる。高表面積充填剤は、非常に小さい粒径の材料、高度気孔性を有する材料、またはこのような特性の両方を示す材料である。上記粒子状充填剤、例えば、上記ケイ酸質充填剤粒子の表面積は、ASTM D 1993-91に準拠したBrunauer、Emmett、Teller(BET)方法により決定した、1グラムあたり20~1000平方メートル、例えば、1グラムあたり25~400平方メートル、または1グラムあたり40~200平方メートルの範囲であり得る。上記BET表面積は、Micromeritics TriStar 3000(商標)機器を使用して行われた窒素収着等温線測定から、5つの相対圧力点をフィッティングすることによって決定する。FlowPrep-060(商標)ステーションを使用して、サンプル調製中に熱と連続的なガスフローを提供することができる。窒素収着の前に、流動窒素(PS)で1時間、160℃に加熱してシリカサンプルを乾燥させる。使用される任意の非ケイ酸質充填剤粒子の上記表面積もまた、これらの範囲の1つ内でもよい。上記充填剤粒子は、実質的に非水溶性であってもよく、上記微孔性材料を調製するために使用される任意の有機加工液にも実質的に不溶性であってもよい。実質的に非水溶性とは、25℃純水中での溶解度が50mg/L未満を意味する。有機加工液に実質的に不溶というのは、有機加工液での溶解度が50mg/L未満を意味する。これは、上記微孔性材料内の上記粒子状充填剤の保持を促進してもよい。
【0047】
膜12はまた、実質的に膜12全体に連通する相互接続孔のネットワークを含んでもよい。コーティングなし、印刷インクなし、含浸剤なしベースでは、本明細書でさらに記載されるプロセスによって作製される場合、細孔は通常、膜12の総容量に基づいて、35~95容量パーセントを構成する。上記細孔は、上記微孔性材料の総容量に基づいて、膜12の60~75容量パーセントを構成してもよい。本明細書で使用される場合、上記容量パーセントとして表される膜12の気孔率(空隙率としても知られる)は、以下の方程式に従って決定される:
気孔性=100[1-d1/d2]
ここで、d1は、上記サンプルの密度であり、上記サンプルの重量と上記サンプルの寸法の測定から確認されたサンプルの容量から決定される。また、d2は上記サンプルの固体部分の密度であり、上記サンプルの重量と上記サンプルの固体部分の容量から決定される。上記微孔性材料の上記固体部分の上記容量は、Quantachromeステレオピクノメーター(Quantachrome Instruments(Boynton Beach、フロリダ州))を使用して、機器に付属の取扱説明書に従って決定される。
【0048】
膜12の上記細孔の上記容量平均直径は、Autoscan水銀細孔計(Quantachrome Instruments(Boynton Beach、フロリダ州)を使用して、機器に付属の操作マニュアルに従って決定される。単一のスキャンの容量平均細孔半径は、上記細孔計によって自動的に決定される。上記細孔計の操作では、上記高圧範囲(絶対圧138キロパスカルから絶対圧227メガパスカル)でスキャンが行われる。合計侵入容量の2パーセントまたはそれ未満が上記高圧範囲の下限(絶対圧138~250キロパスカル)で発生する場合、上記容量平均細孔直径は、上記細孔計によって決定される容量平均細孔半径の2倍と見なされる。さもなければ、追加のスキャンが、上記低圧力範囲(絶対圧7~165キロパスカル)で行われ、容量平均細孔直径が次の式に従って計算される。
d=2[v1r1/w1+v2r2/w2]/[v1/w1+v2/w2]
ここで、dは、容量平均細孔直径である;v1は、高圧範囲で侵入した水銀の総容量である;v2は、低圧範囲で侵入した水銀の総容量である;r1は、高圧スキャンから決定される容量平均細孔半径である;r2は、低圧スキャンから決定される体積平均細孔半径である;w3は、高圧スキャンを実施したサンプルの重量である;w2は、低圧スキャンを実施したサンプルの重量である。
【0049】
一般に、コーティングなし、印刷インクなし、含浸剤なしベースでは、膜12の上記細孔の容量平均直径(平均細孔径)は、最大0.5マイクロメートル、例えば、最大0.3マイクロメートル、または最大0.2マイクロメートルであってもよい。上記細孔の上記平均直径は、少なくとも0.02マイクロメートル、例えば、少なくとも0.04マイクロメートル、または少なくとも0.05マイクロメートルであってもよい。これに基づいて、上記細孔の容量平均直径は、列挙された値を含むこれらの値のいずれかの間の範囲であり得る。例えば、膜12の細孔の容量平均直径は、0.02~0.15マイクロメートル、または0.02~0.1マイクロメートル、または0.02~0.075マイクロメートルの範囲であってもよく、いずれの場合も、列挙された値を含む。
【0050】
上述の手順により容量平均細孔直径を決定する過程において、検出される最大細孔半径もまた決定してもよい。これは、実行されている場合、低圧範囲スキャンから取得され、それ以外の場合は、高圧範囲スキャンから取得される。上記微孔性材料の上記最大孔直径は通常、上記最大孔半径の2倍である。
【0051】
コーティング、印刷、および含浸プロセスにより、膜12の上記細孔の少なくとも一部が充填され得る。さらに、このようなプロセスは、膜12を不可逆的に圧縮してもよい。したがって、気孔性、上記細孔の容量平均直径、および最大細孔直径に関する上記パラメータは、1またはそれを超えるこれらのプロセスを適用する前の膜12について決定される。
【0052】
上記細かく分けられた微粒子状充填剤および/または他の材料(膜12に塗布されたコーティングを除く)を含む膜12は、0.4g/cm3から1.0g/cm3の間の密度を有し得る。上記密度は、列挙された値を含む、上記の値のいずれかの間の範囲であり得る。本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、膜12の上記密度は、上記微孔性材料のサンプルの重量および容量を測定することにより決定される。
【0053】
膜12の上記気孔性は、サンプルを通る空気流の割合によって測定し得るものであり、本明細書ではガーレー(Gurley)気孔性として測定および報告する。細かく分けられた微粒子状充填材および/または他の材料(膜12に塗布されたコーティングを除く)を含む膜12のガーレー気孔性は、15秒を超えてもよく、例えば、100秒を超える、200秒を超える、300秒、400秒を超える、または500秒を超えてもよい。ガーレー気孔性は、GPI Gurley Precision Instruments(ニューヨーク州トロイ)のガーレー透気度試験機、4340モデルを使用して決定される。報告されたガーレー気孔性は、サンプルを通る空気流の割合またはサンプルを通る空気流に対するその抵抗性の測定であった。上記測定単位は「ガーレー秒」であり、水4.88インチの圧力差(12.2×102Pa)を使用して、空気100ccを1インチ平方(6.4×10-4m2)の領域に通す時間を秒単位で表す。値が小さいほど、空気流の抵抗が小さい(より多くの空気が自由に通過できる)。上記測定は、上記マニュアル「MODEL 4340 Automatic Densometer and Smoothness Tester Instruction Manual」に記載されている手順を使用して、完了した。TAPPI方法のT 460 om-06-紙の空気抵抗もまた、上記測定の上記基本原理について参照してもよい。
微孔性膜の製造
【0054】
膜12を製造するために、多数の技術的に認められたプロセスが使用され得る。例えば、膜12は、実質的に均一な混合物が得られるまで、充填剤粒子、熱可塑性有機ポリマー粉末、加工可塑剤および少量の潤滑剤および酸化防止剤を一緒に混合することにより調製され得る。上記混合物の形成に使用されるポリマー粉末に対する上記粒子状充填剤の重量比は、製造される膜12の重量比と本質的に同じであってもよい。上記混合物は、追加の加工可塑剤とともに、スクリュー押出機の加熱バレルに導入されてもよい。上記押出機の末端に取り付けられているのは、シート押出ダイであってもよい。上記ダイによって形成された連続シートは、上記ダイから出る上記連続シートよりも薄い厚さの連続シートを形成するように協働する一対の加熱カレンダーロールに引き込むことなく、送られ得る。上記プロセスのこの時点で上記連続シートに存在する加工可塑剤の上記レベルは、変動してもよく、上記膜の上記密度に影響を与えてもよい。例えば、本明細書で以下に説明する抽出前に、上記連続シートに存在する加工可塑剤のレベルは、連続シートの30重量パーセントまたはそれを超える、例えば、抽出前の40重量パーセントまたはそれを超える、または、45パーセントまたはそれを超えるであってもよい。また、抽出前の上記連続シートに存在する加工可塑剤の量は、上記連続シートの70重量パーセントまたはそれ未満、例えば、抽出前の65パーセントまたはそれ未満、または60パーセントまたはそれ未満、または57パーセントまたはそれ未満であってもよい。抽出前の上記プロセスのこの時点で上記連続シートに存在する加工可塑剤のレベルは、列挙された値を含むこれらの値のいずれかの間の範囲であり得る。一実施形態では、加工可塑剤の量は、57~62重量パーセントまで変動してよく、および別の実施形態では、57重量パーセント未満でもよい。
【0055】
次に、上記カレンダーからの上記連続シートは、上記加工可塑剤の良溶媒、有機ポリマーの貧溶媒、および上記加工可塑剤よりも揮発性の高い有機液体での抽出により、上記加工可塑剤が実質的に除去される最初の抽出ゾーンへ移動し得る。上記加工可塑剤および上記有機抽出液は、両方とも実質的に水と不混和性であってもよい。次に、上記連続シートは、残留有機抽出液が、蒸気および/または水によって実質的に除去される第2の抽出ゾーンへ移動し得る。次に、上記連続シートは、残留水および残留有機抽出液の実質的な除去のため、強制空気乾燥機を通過してもよい。上記乾燥機から、膜12である上記連続シートを巻き取りロールへ移動してもよい。
【0056】
上記加工可塑剤は、室温で液体であってもよく、パラフィン油、ナフテン油、または芳香油などのプロセス油であってもよい。適切なプロセス油には、ASTM D 2226-82の要件を満たすものが含まれる。タイプ103および104。膜12を製造するのに、ASTM D 97-66(1978年に再承認)による流動点が220℃未満のプロセス油を使用してもよい。膜12を調製するのに有用な加工可塑剤は、米国特許第5,326,391号明細書、第10欄、26行目から50行目でさらに詳細に議論されており、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
膜12を調製するために使用される加工可塑剤組成物は、60℃で膜12のポリオレフィンに対してほとんど溶媒和作用を有さず、100℃程度の高温でわずかな溶媒和作用のみを有し得る。上記加工可塑剤組成物は、室温で液体であってもよい。使用できるプロセス油の非限定的な例としては、ナフテン系原油から得られた溶剤精製および水素化処理された油であるSHELLFLEX(登録商標)412油、SHELLFLEX(登録商標)371油(Shell Oil Co.(テキサス州ヒューストン))、白い鉱油であるARCOprimex(登録商標)400油(Atlantic Richfield Co.(カリフォルニア州ラパルマ))、およびKAYDOL(登録商標)油(Witco Corp.(コネチカット州グリニッジ))が挙げられる。加工可塑剤の他の非限定的な例としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、およびフタル酸ジトリデシル等のフタル酸エステル可塑剤が挙げられる。膜12を調製するのに、前述の加工可塑剤のいずれかの混合物を使用してよい。
【0058】
膜12を調製するのに使用され得る多くの有機抽出液がある。好適な有機抽出液の例としては、米国特許第5,326,391号明細書、第10欄、51行目から57行目に記載されており、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
抽出流体組成物としては、塩素化炭化水素および/またはフッ素化炭化水素などのハロゲン化炭化水素が挙げられる。特に、上記抽出流体組成物は、ハロゲン化炭化水素を含み、かつ4~9(Jcm3)1/2の範囲の計算溶解度パラメータークーロン項(δclb)を有してもよい。膜12の製造に使用する抽出流体組成物として適切なハロゲン化炭化水素の非限定的な例としては、トランス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、および/または1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンから選択されるハロゲン化炭化水素の1またはそれを超える共沸混合物が挙げられる。このような材料は、VERTREL MCA(1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-ジヒドロデカフルオロペンタン、およびトランス-1,2-ジクロロエチレンの二元共沸混合物:62%/38%)、およびVERTREL CCA(1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-ジヒドロデカフルオルペンタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオルブタン、およびトランス-1,2-ジクロロエチレンの三元共沸混合物:33%/28%/39%)として市販されており、いずれもMicroCare Corporation(コネチカット州ニューブリテン)から入手可能である。
【0060】
膜12の残留加工可塑剤含有量は、膜12の総重量に基づいて10重量パーセント未満であってもよく、この量は、同一または異なる有機抽出液を使用して、追加の抽出によりさらに減少してもよい。上記残留加工可塑剤含有量は、膜12の総重量に基づいて5重量パーセント未満であってよく、この量は、追加の抽出によりさらに減少してもよい。
【0061】
膜12はまた、米国特許第2,772,322号明細書、米国特許第3,696,061号明細書、および/または米国特許第3,862,030号明細書の一般的な原理および手順に従って製造されてもよい。これらの原理と手順は、上記マトリックスの上記ポリマーが、主にポリ(塩化ビニル)または重合塩化ビニルの大部分を含むコポリマーである場合に、特に適用可能である。
【0062】
上述したプロセスによって製造された膜12は、必要に応じで引き伸ばされてもよい。膜12の伸張は、上記材料の空隙率の増加、および増加領域の形成または分子配向の増加の両方がもたらされる可能性がある。当上記技術分野で知られているように、引張強度、引張弾性率、ヤング率などを含む分子配向熱可塑性有機ポリマーの物理的特性の多くは、例えば、分子配向がほとんどまたは全くない対応する熱可塑性有機ポリマーのものとは、かなり異なる。上記のような上記加工可塑剤を実質的に除去した後、延伸を完了してもよい。
【0063】
種々のタイプの伸張装置およびプロセスが当業者に周知であり、膜12の伸張を完了するのに使用され得る。膜12の延伸は、米国特許第5,326,391号明細書の第11欄第45行から第13欄第13行にさらに詳細に記載されており、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
処理された微孔性膜
【0064】
次の材料を膜12に塗布して、処理膜10を形成し得る。いくつかの例において、膜12の第1側面14のみが上記材料を受ける。いくつかの例において、膜12の第2側面16のみが上記材料を受ける。いくつかの例において、膜12の第1側面14および第2側面16の両方が上記材料を受ける。疎水性/疎油性材料、親水性コーティング層、またはこれらの何らかの組み合わせを膜12に塗布してもよい。
A.第1の疎水性/疎油性材料
【0065】
図1~
図3を参照すると、第1の疎水性/疎油性材料18を膜12に塗布してもよい。第1の疎水性/疎油性材料18は、膜12の第1側面14(
図1~
図3のように)および/または膜12の第2側面16に塗布してもよい。
【0066】
上記第1の疎水性/疎油性材料18は、疎水性であってもよい。疎水性とは、第1の疎水性/疎油性材料18が塗布される膜12の上記側面(第1側面14または第2側面16など)が、Kruss Drop Shape Analysisを使用して、少なくとも90°の水接触角を示すことを意味する。第1の疎水性/疎油性材料18が塗布される膜12の側面は、少なくとも105°、例えば、少なくとも110°、少なくとも115°、少なくとも120°、少なくとも125°、少なくとも130°、少なくとも135°、少なくとも140°、または少なくとも150°の水接触角を示してもよい。
【0067】
第1の疎水性/疎油性材料18は、疎油性であってもよい。疎油性とは、第1の疎水性/疎油性材料18が塗布される膜12の側面が、AATCC試験方法118-2007に基づいて、少なくとも6、例えば少なくとも7または少なくとも8の油評価を示すことを意味する。
【0068】
第1の疎水性/疎油性材料18は、疎水性および疎油性であってもよい。
【0069】
いくつかの例では、第1の疎水性/疎油性材料18は、膜12上にコーティングを形成してもよい。他の例では、第1の疎水性/疎油性材料18は、膜12上にコーティングを形成しなくてもよく、代わりに膜12の表面処理でもよい。この状況において、表面処理とは、膜12の疎水性/疎油性領域を形成するために、第1の疎水性/疎油性材料18が膜12(膜12全体に分散したケイ酸質充填剤など)と化学反応することを意味する。
【0070】
第1の疎水性/疎油性材料18は、少なくとも1つのフルオロアルキル基を含んでもよく、および/または少なくとも1つのフルオロアルキル基を含むポリマーを含んでもよい。第1の疎水性/疎油性材料18は、フルオロアルキル基含有コポリマーであってもよい。第1の疎水性/疎油性材料18は、フッ素化ポリマーを有するポリアクリレートコポリマーであってもよい。1つの非限定的な例において、第1の疎水性/疎油性材料18は、ダイキン工業株式会社(大阪、日本)から入手可能な商標名ユニダインで販売されている製品を含んでよい。第1の疎水性/疎油性材料18は、上記フルオロアルキル基含有ポリマー、または参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,013,732号明細書または米国特許第8,551,895号明細書に記載のコポリマーのいずれかを含んでもよい。第1の疎水性/疎油性材料18は、上記ポリマーの側鎖または末端にいくらかのフッ素化を含むポリマーを含むことができ、上記ポリマーの骨格はフッ素基を実質的に含まない(過フッ素化ポリマーと区別可能)。
【0071】
第1の疎水性/疎油性材料18は、少なくとも1つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物を含んでもよい。少なくとも1つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物を含む第1の疎水性/疎油性材料18は、充填剤との縮合反応によって、膜12(例えば、上記ケイ酸質充填剤)と相互作用してもよく、膜12の疎水性/疎油性領域を形成してもよい。少なくとも1つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物の非限定的な例としては、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン(以下の式Iを参照)、または(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリメトキシシランが挙げられる。
【化1】
【0072】
図1に示すように、第1の疎水性/疎油性材料18は、第2側面16上に材料を塗布せずに、膜12の第1側面14上に塗布してもよい。あるいは、第1の疎水性/疎油性材料18を膜12の第1側面14上に塗布すると同時に、材料がまた第2側面16に塗布されてもよい(
図2および
図3を参照)。追加の材料は、第1の疎水性/疎油性材料18の上または下に塗布してもよい。いくつかの例において、第1の疎水性/疎油性材料18は、膜12の第1側面14および/または第2側面16と直接接触する。第1の疎水性/疎油性材料18は、スプレー塗布、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スクリーン印刷、および/または、ドクターブレードまたはドローダウンバーを用いたドローダウンコーティングの技術などの任意の適切な方法を使用して、膜12の第1側面14および/または第2側面16に塗布してもよい。1つの非限定的な実施形態において、膜12の第2側面16ではなく第1側面14のみが、第1の疎水性/疎油性材料18でコーティングされるように、第1の疎水性/疎油性材料18は、ドローダウン法を用いて膜12の第1側面14に塗布される。
B.第2の疎水性/疎油性材料
【0073】
図3を参照すると、上記膜は第2の疎水性/疎油性材料22でコーティングされてもよい。第2の疎水性/疎油性材料22は、膜12の第1側面14および/または膜12の第2側面16に塗布されてもよい(
図3に示されるように)。
【0074】
第2の疎水性/疎油性材料22は、疎水性であってもよい。第2の疎水性/疎油性材料22が塗布される膜12の上記側面(第1側面14または第2側面16など)は、少なくとも105°、例えば、少なくとも110°、少なくとも115°、少なくとも120°、少なくとも125°、少なくとも130°、少なくとも135°、少なくとも140°、または少なくとも150°のの水接触角を示してもよい。
【0075】
第2の疎水性/疎油性材料22は、前述の第1の疎水性/疎油性材料18の任意の上記材料から選択してもよい。
【0076】
図3に示すように、第2の疎水性/疎油性材料22は、第1の疎水性/疎油性材料18が塗布された第1側面14とは反対の膜12の第2側面16上に塗布してもよい。第2側面16上の上記第2疎水性/疎油性材料22は、第1側面14上の第1の疎水性/疎油性材料18と同一の疎水性/疎油性材料、または異なる疎水性/疎油性材料であってもよい。追加の材料は、第2の疎水性/疎油性材料22の上または下に塗布してもよい。いくつかの例において、第2の疎水性/疎油性材料22は、膜12の第1側面14および/または第2側面16と直接接触する。
【0077】
第2の疎水性/疎油性材料22は、スプレー塗布、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スクリーン印刷、および/または、ドクターブレードまたはドローダウンバーによるテクニックなどのドローダウンコーティングなどの任意の適切な方法を使用して、膜12の第1側面14および/または第2側面16に塗布してもよい。1つの非限定的な実施形態において、膜12の第1側面14ではなく第2側面16のみが、第2の疎水性/疎油性材料22でコーティングされるように、第2の疎水性/疎油性材料22は、ドローダウン法を用いて膜12の第2側面16に塗布される。
C.親水性コーティング層
【0078】
図2に示されるように、膜12は、少なくとも1つの親水性コーティング20でコーティングされてもよい。親水性コーティング20は、上記膜の第1側面14および/または膜12の第2側面16に塗布されてもよい(
図2に示されるように)。
【0079】
親水性コーティング20は親水性であってもよい。親水性とは、親水性コーティング20が塗布された膜12の上記側面が、Kruss Drop Shape Analysisを使用して、少なくとも90°未満の水接触角を示すことを意味する。親水性コーティング20が塗布される膜12の側面は、少なくとも85°未満、例えば、80°未満、70°未満、60°未満、50°未満、未満40°、30°未満、20°未満、または10°未満の水接触角を示してもよい。
【0080】
いくつかの非限定的な実施形態において、親水性コーティング20としては、ポリオキサゾリン、ポリ(エチレングルコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)に基づくトリブロックコポリマー、ポリアミド、酸化ポリエチレンまたはその誘導体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコールまたはその誘導体、ポリプロピレンオキシドまたはその誘導体、ポリ(エチレングリコール)とポリエチレンオキシドのコポリマー、ポリビニルアルコール、セルロースまたはその誘導体、コラーゲン、ポリペプチド、グアー、ペクチン、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリルアミド、多糖類、双性イオン性ポリマー、高分子両性電解質、およびポリエチレンイミンのうち、1またはそれを超えるものが挙げられる。
【0081】
図2に示すように、親水性コーティング20は、第1の疎水性/疎油性材料18が塗布された第1側面14とは反対の膜12の第2側面16上に塗布してもよい。追加の材料は、親水性コーティング20の上または下に塗布してもよい。いくつかの例において、親水性コーティング20は、膜12の第1側面14および/または第2側面16と直接接触する。
【0082】
親水性コーティング20は、スプレー塗布、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スクリーン印刷、および/または、ドクターブレードまたはドローダウンバーを用いたドローダウンコーティングの技術などの任意の適切な方法を使用して、膜12の第1側面14および/または第2側面16に塗布してもよい。いくつかの例において、膜12の第1側面14ではなく第2側面16のみが、親水性コーティング20でコーティングされるように、親水性コーティング20は、ドローダウン法を用いて膜12の第2側面16に塗布される。
【0083】
いくつかの例において、膜12は前処理されてもよい(第1の疎水性/疎油性材料18、第2の疎水性/疎油性材料22、または他の親水性コーティング20などの、任意の他の材料が膜12に塗布される前に)。上記前処理剤は、膜12へのコーティングとして塗布されてもよく、上記前処理剤は、前述のような、親水性コーティングであってもよい。上記前処理剤は、疎水性/疎油性材料または他の親水性コーティングなど、次に塗布される材料の均一性を改善してもよい。
【0084】
上記親水性前処理剤は、任意の適切な方法を使用して、膜12に塗布してもよい。一つの実施例において、膜12は、上記親水性前処理剤を含む浴に浸漬される。上記親水性前処理剤は、スプレー塗布、カーテンコーティング、スロットダイコーティング、スクリーン印刷、および/またはドクターブレードまたはドローダウンバーを用いたドローダウンコーティングの技術などの他の技術関連の方法を使用して、塗布してもよい。上記親水性前処理剤は、第1側面14、第2側面16、または膜12全体に塗布されてもよい。上記親水性前処理剤が塗布された後、上記前処理膜12は、次の材料を任意で塗布する前に乾燥してもよい。
揮発性材料
【0085】
該膜12は揮発性材料を通過させてもよい。第1側面14が揮発性材料接触面14となるように、上記揮発性材料は、リザーバー内で膜12の第1側面14上にあってもよい。第2側面16は、リザーバー内の揮発性材料と接触していない蒸気放出面16であってもよく、上記揮発性材料が気体状または蒸気形態で環境に放出される側である。
【0086】
揮発性材料は、気体状または蒸気状に変換可能な、すなわち、例えば、熱および/または攪拌の形で追加のまたは補足的なエネルギーを与えられずに、周囲の室温および圧力で、蒸発可能な、任意の材料でもあってもよい。上記揮発性材料は、有機揮発性材料を含んでもよく、上記有機揮発性材料としては、溶媒ベースの材料を含む揮発性材料、または溶媒ベースの材料中に分散される揮発性材料が挙げられる。上記揮発性材料は、液体状および/または固体状でもよく、天然に存在するか、または合成的に形成されてもよく。固体状の場合、揮発性材料は、中間の液体状を通過することなく、固体状から蒸気状に昇華する場合がある。上記揮発性材料は、必要に応じて、例えば担体のような不揮発性材料を組み合わせるまたは配合してもよく、例えば、水および/または不揮発性溶媒である。固体揮発性材料の場合、上記不揮発性担体は、上記固体揮発性材料が保持される形態である、多孔性無機材料のような多孔性材料内であってもよい。また、上記固体揮発性材料は半固体ゲルの形態であってもよい。
【0087】
上記揮発性材料は、天然または合成の香油などの芳香材料であってもよい。選択され得る上記液体揮発性材料からの香油の例としては、ベルガモット、ビターオレンジ、レモン、マンダリン、キャラウェイ、スギの葉、クローブの葉、セダーウッド、ゼラニウム、ラベンダー、オレンジ、オリガナム、プチグレン、ヌマヒノキ、パチョリ、ネロリ(neroili)、純バラ、およびこれらの組み合わせの油が含まれるが、これらに限定されない。選択され得る上記揮発性材料からの固体芳香材料の例としては、バニリン、エチルバニリン、クマリン、トナリド、カロン、ヘリオトロピン(heliotropene)、ジャコウキシロール、セドロール、ジャコウケトンベンゾフェノン、ラズベリーケトン、メチルナフチルケトンベータ、フェニルサリチル酸エチル、ベルトール、マルトール、メープルラクトン、酢酸プロオイゲノール(proeugenol acetate)、エベミル、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
揮発性材料が、膜12の揮発性材料接触面14から蒸気放出面16へ移動するとき、上記揮発性材料、は液体、蒸気およびこれらの組み合わせから選択される形態であると考えられている。さらに、上記揮発性材料は、少なくとも部分的に、膜12全体に実質的に連通する相互接続孔のネットワークを通って移動すると考えられている。揮発性材料の上記移動は、15℃~40℃、例えば、15または18℃~30または35℃の温度で、環境大気圧で生じてもよい。
【0089】
膜12の揮発性材料移動速度は、以下の説明に従って決定してもよい。酢酸ベンジル、ジプロピレングリコール、酢酸メチルエーテル、リモネン、または他の同様の材料(ここでは、酢酸ベンジルを使用されるであろう)などの、2ミリリットルのモデル揮発性材料を含有するのに十分な内部容量を有するテストリザーバーは、無色の熱可塑性ポリマーから作製した。上記リザーバーの内部寸法は、約4センチメートルの開口面の縁の円形の直径、および1センチメートル未満の深さにより規定した。上記開放面を使用して、上記揮発性材料移動速度を決定した。上記テストリザーバーが平らになっている状態で(上記開口面を上向きにして)、約2ミリリットルの酢酸ベンジルを上記テストリザーバーに投入した。酢酸ベンジルを上記テストリザーバーに投入し、6~18ミル(mil)の厚さを有する微孔性材料のシートを、上記テストリザーバーの上記開口面/側面上に配置し、上記微孔性シートの上記揮発性材料接触面の12.5cm2は、上記リザーバーの上記内部に露出した。充填した組立品全体の初期重量を得るために、上記テストリザーバーを秤量した。
【0090】
上記揮発性材料移動速度は、無制限フロー条件を使用して測定してもよい。次に、上記無制限フロー条件において、酢酸ベンジルを含有し、微孔性材料のシートで取り囲まれた上記テストリザーバーを、約5フィート[1.52メートル](高さ)×5フィート[1.52メートル](幅)×2フィート[0.61メートル](深さ)の寸法を有する実験用化学換気フード内に直立させて配置した。上記テストリザーバーを直立させた状態で、酢酸ベンジルを上記微孔性シートの上記揮発性材料接触表面の少なくとも一部と直接接触させた。上記換気フードの上記ガラスドアを引き下げ、上記フードを通る上記空気流を調整して、1時間あたりにフードが8転回(turns)(または回転(turnovers))となるようにした。特に指定がない限り、上記フード内の温度は25℃±5℃を維持した。上記換気フード内は、周囲湿度であった。上記フード内で、定期的に上記テストリザーバーを秤量した。酢酸ベンジルの計算された重量損失は、経過時間および上記テストリザーバーの内部に露出した微孔性シートの表面積を組み合わせて、微孔性シートの揮発性移動速度をmg/(hour*cm2)単位で決定するために使用した。
【0091】
上記揮発性材料移動速度は、有制限フロー条件を使用して測定してもよい。次に、上記有制限フロー条件において、酢酸ベンジルを含有し、微孔性材料のシートで取り囲まれた上記テストリザーバーを、11インチ[0.28メートル](高さ)×19インチ[0.48メートル](幅)×11インチ[0.28メートル](深さ)のおよその寸法を有するHDPE密閉式の箱内に配置した。上記容器は、11インチ[0.28メートル]×19インチ[0.48メートル]の厚紙シートで囲み、ダクトテープを巻きつけた。酢酸ベンジルの計算された重量損失は、経過時間および上記テストリザーバーの内部に露出した微孔性シートの表面積を組み合わせて、微孔性シートの揮発性移動速度をmg/(hour*cm2)単位で決定するために使用した。
【0092】
上記無制限フロー条件下において、本発明による膜12の上記揮発性材料移動速度(上記モデル揮発性材料として酢酸ベンジルを使用)は、0.7mg/(hour*cm2)またはそれ未満、または0.6mg/(hour*cm2)またはそれ未満、または0.55mg/(hour*cm2)またはそれ未満、または0.50mg/(hour*cm2)またはそれ未満であってもよい。膜12の上記揮発性材料移動速度は、0.02mg/(hour*cm2)またはそれを超える、または0.04mg/(hour*cm2)またはそれを超える、0.30mg/(hour*cm2)またはそれを超える、または0.35mg/(hour*cm2)またはそれを超えるであってもよい。膜12の上記揮発性材料移動速度は、これらの上限値と下限値の任意の組み合わせの間の範囲であってもよい。例えば、膜12の上記揮発性材料移動速度は、0.04~0.6mg/(hour*cm2)、または0.2~0.6mg/(hour*cm2)、または0.30~0.55mg/(hour*cm2)であってもよく、いずれの場合も、列挙された値を含む。
【0093】
上記有制限フロー条件下において、本発明による膜12の上記揮発性材料移動速度(上記モデル揮発性材料として酢酸ベンジルを使用)は、0.1mg/(hour*cm2)またはそれ未満、または0.08mg/(hour*cm2)またはそれ未満、または0.06mg/(hour*cm2)またはそれ未満、または0.05mg/(hour*cm2)またはそれ未満であってもよい。膜12の上記揮発性材料移動速度は、0.02mg/(hour*cm2)またはそれを超える、または0.03mg/(hour*cm2)またはそれを超える、0.04mg/(hour*cm2)またはそれを超える、または0.05mg/(hour*cm2)またはそれを超えるであってもよい。上記膜の上記揮発性材料移動速度は、これらの上限値と下限値の任意の組み合わせの間の範囲であってもよい。例えば、膜12の上記揮発性材料移動速度は、0.02~0.1mg/(hour*cm2)、または0.03~0.08mg/(hour*cm2)、または0.04~0.06mg/(hour*cm2)であってもよく、いずれの場合も、列挙された値を含む。
【0094】
蒸気放出面16は、液体状の揮発性材料を実質的に含まなくてもよい。これは、次の手順(例:発汗評価(sweat rating)を使用)で決定される。少なくとも14日間、24時間ごとに、各組立品の外膜表面の液体の蓄積を視覚的に検査した。上記発汗評価には、「0」は液体の蓄積なし、「1」は基板上のみに液体が蓄積している、「2」は基板とホルダーのリングガスケットに液体が蓄積している、および「3」は基板、シール、およびホルダーの底部金属リップに液体が蓄積していることを意味する番号方式を使用した。経時的な全評価の平均を使用して、平均発汗評価を決定した。
処理された微孔性膜の適用
【0095】
図1~
図3に示される処理膜10は、芳香送達デバイスで使用するために構成されてもよい。上記芳香送達デバイスは、リザーバーが含有する(前述のような)匂いのある揮発性材料を含んでもよい。(第1の疎水性/疎油性材料18を有する)処理膜10の揮発性材料接触面14は、液体または固体状の揮発性材料と接触していてもよい。上記処理膜の蒸気放出面16は、コーティングされていなくてもよく(
図1)、親水性コーティング20を有していてもよく(
図2)、または第2の疎水性/疎油性材料22を有していてもよい(
図3)。他の実施形態(
図1~
図3には示されていない)では、処理膜10の揮発性材料接触面14は、未処理であってもよく、親水性コーティング20を有してもよく、または疎水性/疎油性材料18を有してもよく、一方で蒸気放出面16が疎水性/疎油性材料18を有することが理解されよう。このようにして、処理膜10の片側(揮発性材料接触面14または蒸気放出面16)は、疎水性/疎油性材料18を有し、一方で揮発性材料接触面14および蒸気放出面16の他方は、必要に応じて、未処理である、親水性コーティング20を有する、または疎水性/疎油性材料18を有する。
【0096】
上記芳香送達デバイスは、第1および第2表面を有する取り外し可能なキャップ層を含んでもよい。膜12および揮発性材料が上記キャップ層のすぐ下にあるように、膜12の蒸気放出面16および上記キャップ層の上記第2表面との間に接着層を置くことができる。上記取り外し可能なキャップは、膜12からの除去を容易にするために、必要に応じて、つまみを含む剥離シールであってもよく、これにより、膜12が露出して、上記揮発性物質の上記蒸発放出を活性化する。上記キャップ層は、金属箔、ポリマーフィルム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの層を含んでもよい。例えば、上記キャップ層は、金属化または「箔状」に見えるように、印刷またはコーティングされた少なくとも1つのポリマーフィルムを含んでもよい。所望の特性が得られるという条件で、任意の公知の金属箔を使用してもよい。好適なポリマーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ(エチレンテレフタレート)フィルム、ポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリ(エステル/ウレタン)フィルム、またはポリ(ビニルアルコール)フィルムが挙げられるが、これらに限定されない。上記所望の特性が得られるという条件で、任意の好適なポリマーフィルムを使用してもよい。上記キャップ層としては、金属化ポリマーフィルムを単独で、または金属箔層、ポリマーフィルム層、もしくはその両方の組み合わせが挙げられる。上記キャップ層は、任意の組み合わせで1つの層またはそれを超える層を含んでもよい。
【0097】
上記接着剤層は、上記キャップ層の取り外し可能性を維持しながら、上記消費者による活性化までデバイスを密閉状態に保つのに十分な粘着性を提供する限り、任意の公知の接着剤を含んでもよい。特定の実施形態において、上記接着剤層としては、当技術分野で公知の任意のPSA材料などの感圧接着剤(「PSA」)が挙げられる。好適なPSA材料としては、ゴム系接着剤、ブロックコポリマー接着剤、ポリイソブテン系接着剤、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ビニル系接着剤、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0098】
上記芳香送達デバイスの処理膜10は、揮発性材料接触面14上の上記揮発性材料が処理膜10を貫通すると、上記処理膜の蒸気放出側16から匂いのある蒸気を放出するように構成され得る。上記蒸気放出側16は、揮発性液体を実質的に含まなくてもよい。上記処理膜12は、所望の速度で匂いのある蒸気を放出するために、すでに列挙した範囲内にある揮発性材料移動速度を有してもよい。
【0099】
処理膜10はまた、液液分離または固液分離における使用のために構成し得る。一つの実施例において、処理膜10は、油水分離のために使用されてもよい。他の実施例において、処理膜10は、膜蒸留またはガス抜きで使用されてもよい。
処理された微孔性膜の調製方法
【0100】
処理膜10は、任意の好適な方法を用いて調製し得る。
【0101】
1つの非限定的な実施形態によれば、処理膜10は、第1側面14および第2側面16を有する膜12を提供することにより調製し得る。膜12は、ポリオレフィンを含む前述の熱可塑性有機ポリマーから作製されてもよい。膜12は、膜12全体に実質的に連通する相互接続孔のネットワークを規定してもよい。膜12は、膜12全体に分布する前述の粒子状充填剤を含んでもよい。
【0102】
膜12は、前述の親水性組成物を使用するなど、必要に応じて前処理してもよい。上記前処理剤は、任意の方法を用いて塗布することができ、また、一実施形態において、膜12は上記前処理剤に浸漬される。上記前処理膜12は、上記前処理剤を塗布した後、さらなる材料を塗布する前に乾燥してもよい。
【0103】
第1の疎水性/疎油性材料18は、膜12(前処理済みまたは未処理)の第1側面14および/または第2側面16の少なくとも一部に塗布されてもよい。第1の疎水性/疎油性材料18は、任意の方法を用いて塗布することができ、一つの実施形態において、ドローダウン法を用いて第1側面14のみに塗布する。別の実施例において、第1の疎水性/疎油性材料18は、膜12を第1の疎水性/疎油性材料18に浸漬することにより塗布してもよい。
【0104】
親水性コーティング20は、膜12(前処理済みまたは未処理)の第1側面14および/または第2側面16の少なくとも一部に塗布されてもよい。親水性コーティング20は、任意の方法を用いて塗布することができ、一つの実施例において、ドローダウン法を用いて第2側面16のみに塗布する。
【0105】
第2の疎水性/疎油性材料22は、膜12(前処理済みまたは未処理)の第1側面14および/または第2側面16の少なくとも一部に塗布されてもよい。第2の疎水性/疎油性材料22は、任意の方法を用いて塗布することができ、一つの実施例において、ドローダウン法を用いて第2側面14のみに塗布する。別の実施例において、第2の疎水性/疎油性材料22は、膜12を第2の疎水性/疎油性材料22に浸漬することにより塗布してもよい。第1の疎水性/疎油性材料18は、第2の疎水性/疎油性材料22と同一であっても異なっていてもよい。
【0106】
以下の実施例は、本発明の一般的な原理を示すために提示される。本発明は、提示された特定の実施例に限定されると考えるべきではない。実施例中の部およびパーセントはすべて、特に明記しない限り重量当たりである。
【実施例】
【0107】
実施例1~3
充填剤入り微孔性膜の調製
充填剤入り微孔性膜の組成を以下の表2に示す。
【表2】
工程1 混合調製
【0108】
表2に明記した乾燥成分は、1つの高強度チョッパー型混合ブレードを備えたFM-130D Littlefordプラウブレードミキサー内に量り取った。上記乾燥成分は、プラウブレードのみを使用して15秒間予備混合した。次に、上記プロセス油が、プラウブレードのみが回転している上記ミキサーの上部にあるスプレーノズルを通るハンドポンプによって、45~60秒ポンプで送られた。上記高強度チョッパーブレードを、上記プラウブレードとともにオンにし、また上記混合物を30秒間混合した。上記ミキサーを停止し、ミキサーの内側をこそげ取り、すべての成分が確実に均一に混合されるようにした。上記高強度チョッパーおよびプラウブレードの両方をオンにして、上記ミキサーを再びオンにし、また上記混合物をさらに30秒間混合した。得られた混合物は、工程2に記載されているように押し出された。
工程2 押出、カレンダー加工、抽出
【0109】
実施例1~3の上記混合物を、供給、押出を含む押出システム、および以下に記載するカレンダー加工システムを用いて、押し出して、最終のシート状にカレンダー加工した。質量計量供給システム(K-Ironモデル番号K2MLT35D5)における重量測定の損失を使用して、各混合物を27mmツインスクリュー押出機(モデルNo.はLeistritz Micro-27ggであった)に供給した。上記押出機バレルには、8つの温度ゾーンおよびシート押出ダイへの加熱アダプターが含まれていた。上記押出混合物の供給口は、第1温度ゾーンの直前に設置した。大気ベントは、第3温度ゾーンに設置した。真空ベントは、第7温度ゾーンに設置した。
【0110】
上記混合物を90g/分の速度で押出機へ供給した。追加のプロセス油もまた、第1温度ゾーンへ注入して、上記押し出されたシートにおける所望の総油含有量を達成した。上記押出機から排出される押出シート(押出物)が含有する上記油は、本明細書では「押出物油重量パーセント」と呼ばれる。
【0111】
上記バレルからの押出物は、1.5ミリメートルの排出口を備えた15センチメートル幅のシートMasterflex(登録商標)ダイに排出された。上記押出し溶融温度は203~210℃であり、スループットは1時間当たり7.5キログラムだった。
【0112】
上記カレンダー加工プロセスは、1つのニップポイントおよび1つの冷却ロールを備えた3ロール垂直カレンダースタックを用いて行った。上記ロールはそれぞれクロム表面を有していた。ロール寸法は、長さ約41cm、直径14cmだった。上記トップロールの温度は、135℃~140℃に維持した。上記中間ロールの温度は、140℃~145℃に維持した。上記底部ロールは、温度を10~21℃に維持した冷却ロールだった。上記押出物をカレンダー加工してシート状にし、底部の水冷ロールを通過させて、巻き取った。
【0113】
最大幅25.4cm、長さ305cmにカットされたシートのサンプルを巻き上げて、それからキャニスターに入れ、そして温液1,1,2-トリクロロエチレンに約7~8時間さらして、シートサンプルから油を抽出した。その後、上記抽出されたシートを風乾し、以下に記載された試験方法を実施した。
実施例4~7および比較例8~13
コーティングされた微孔性膜の調製
工程1.コーティング溶液の調製
【0114】
親水性コーティング組成物2A:ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、(20g、重量平均分子量(Mw)~50,000)を4000mLビーカーで穏やかにかきまぜながら冷水(910g)に分散させた。上記混合物を4時間撹拌し、続いてPLURONIC(登録商標)17R2(10g、BASF(ルートウィヒスハーフェン、ドイツ)から入手可能なブロックコポリマー界面活性剤)、および2-ブトキシエタノール(60g)を添加し、その後、得られた溶液をさらに30分間撹拌した。
【0115】
親水性コーティング組成物2B:SELVOL(登録商標)325(4g、Sekisui Specialty Chemicals America(テキサス州ダラス)から入手可能なポリビニルアルコール)を、電気攪拌モーターで駆動される1インチ(2.54cm)パドル攪拌棒を使用して、穏やかに攪拌しながら、300mLビーカーで冷水(96g)に分散させた。上記混合物を190°F(87.8℃)まで加熱し、それから完全に溶解するまで約25分間攪拌した。上記得られた溶液を撹拌しながら室温まで冷却した。
【0116】
疎水性/疎油性コーティング組成物2C:UNIDYNE(登録商標)8112(15g、Daikin America,Inc.(ニューヨーク州オレンジバーグ)から入手可能))を穏やかに攪拌しながら、400mLビーカーで冷水(85g)に分散させた。
工程2.コーティング手順
【0117】
すべての膜を、任意のコーティング組成物で処理する前に、8.5×11インチ[0.22×0.28m]のシートにカットした。実施例4~7は、疎水性/疎油性組成物2Cを含む。実施例5~7では、疎水性/疎油性組成物2Cの塗布前に、親水性組成物2Aで最初に処理した。実施例4~6では、片面のみを疎水性/疎油性組成物2Cでコーティングしたが、実施例7では、両面をコーティングした。
【0118】
実施例5~7において、表3に示すように、親水性組成物2Aをパート1で調製した上記膜に直接塗布した。8.5×11インチ[0.22×0.28m]の上記シートを組成物2Aに5分間浸漬し、その後、上記シートを外した。そうして、余分な溶液を落とした。次に、上記コーティングされた微孔性材料を、乾燥中にフィルムが収縮するのを防ぐため、ガスケットが取り付けられたアルミニウムフレームに締め付けて固定した。次に、フレームに入れた上記膜を、95℃のオーブンで15分間乾燥させた。
【0119】
次に、上記処理済みの実施例5~7の上記膜と同様に、実施例4でも疎水性/疎油性組成物2Cで処理した。実施例4において、表3に示す上記膜は、前処理なしでコーティングした。実施例5~7において、上記疎水性/疎油性組成物を、上記の前もって処理した膜に塗布した。いずれの場合も、8.5×11インチ[0.22×0.28m]の上記シートを汚れのないガラス表面に置いて、それから短辺に沿ってテープで貼り付けた。
【0120】
組成物2Cは、直接上記微孔質基板へ、または示されている場合は、組成物2Aで処理された上記微孔質基板に塗布した。上記シートを置く前に、各基板の風袋の重さを計った。上記シートの側面Aを汚れのないガラス表面上で上向きにして、テープを使用して、上記シートの上隅を上記ガラスへ接着した。透明な10ミル厚の11インチ(0.28m)×3インチ(0.08m)のポリエステル片を、上記シートの上記上端と重なるように置いて、テープで上記ガラス表面に貼り付けた。Diversified Enterprises製のワイヤを巻きつけた測定棒No.3をポリエステルの上端付近に配置した。10~20mL量のコーティングは、使い捨てピペットを用いて、上記測定棒に直接隣接して接触するビーズストリップ(幅およそ1/4インチ(0.64cm))として、堆積した。
【0121】
上記棒は、ほぼ一定の速度で、上記シートに対して引き下げた。上記得られた湿ったシートを上記ガラス表面から外して、すぐに前に風袋引きをした天びんに載せて秤量し、次に、強制空気オーブンに入れ、95℃で2分間乾燥させた。上記乾燥したシートをオーブンから取り出し、実施例5についてのみ側面Bで同じコーティング手順を繰り返した。
【0122】
上記比較例は、コーティングしないままか、または親水性コーティングのみでコーティングした。比較例11および比較例12は、両方とも上記のように組成物2Aで処理した。比較例12は、側面Aを追加の親水性溶液2Bでコーティングし、それは上記組成物2Cについて記載されているのと同じ方法で塗布した。比較例13では、超疎水性組成物と融合したPVDF膜を準備した。この材料は、MilliporeSigma(マサチューセッツ州ビレリカ)から入手可能であり、DURAPEL(登録商標)GVSP)として市販されている。
パート3.膜の物性試験
【0123】
上記膜、処理膜、および比較の未処理膜はそれぞれ、下記のように物性を試験することで特性決定した。
【0124】
ガーレー気孔性:この試験は、乾燥した膜サンプルで実施した。
気孔性は、GPI Gurley Precision Instruments(ニューヨーク州トロイ)のガーレー透気度試験機、4340モデルを使用して決定された。上記報告された気孔性は、サンプルを通る空気流の割合またはサンプルを通る空気流に対するその抵抗性の度合であった。上記度合の単位は「ガーレー秒」であり、水4.88インチの圧力差を使用して、空気100ccを1インチ平方の領域に通す時間を秒単位で表す。値が小さいほど、空気流の抵抗が小さい(例えば、より高い多孔性なら、より多くの空気が自由に通過できる)。上記測定は、上記マニュアル「MODEL 4340 Automatic Densometer and Smoothness Tester Instruction Manual」に記載されている手順を使用して、完了した。TAPPI方法のT 460 om-06-Air Resistance of Paperもまた、上記測定の上記基本原理について参照することができる。
【0125】
密度:上記実施例の上記密度は、各サンプルから切り出された4.5×5インチ(11.43cm×12.7cm)の2つの標本の平均重量を、これら標本の上記平均容量で割ることによって決定した。
【0126】
細孔径:上記微孔性材料の上記細孔の上記容量平均直径は、Autoscan水銀細孔計(Quantachrome Instruments(Boynton Beach、フロリダ州)を使用して、機器に付属の操作マニュアルに従って決定した。単一のスキャンの容量平均細孔半径は、上記細孔計によって自動的に決定された。上記細孔計の操作では、上記高圧範囲(絶対圧138キロパスカルから絶対圧227メガパスカル)でスキャンが行われた。合計侵入容量の2パーセントまたはそれ未満が上記高圧範囲の下限(絶対圧138~250キロパスカル)で発生した場合、上記容量平均細孔直径は、上記細孔計によって決定される容量平均細孔径の2倍と見なした。さもなければ、追加のスキャンが、上記低圧力範囲(絶対圧7~165キロパスカル)で行われ、容量平均細孔直径が次の式に従って計算された。
d=2[v1r1/w1+v2r2/w2]/[v1/w1+v2/w2]
ここで、dは、容量平均細孔直径である;v1は、高圧範囲で侵入した水銀の総容量である;v2は、低圧範囲で侵入した水銀の総容量である;r1は、高圧スキャンから決定される容量平均細孔半径である;r2は、低圧スキャンから決定される体積平均細孔半径である;w1は、高圧スキャンを実施したサンプルの重量である;w2は、低圧スキャンを実施したサンプルの重量である。
【0127】
接触角:AST Products,Inc.(マサチューセッツ州ビルリカ)から入手可能なVCA 2500XEビデオ接触角システム上で、1マイクロリットルの超純水を用いて、測定した。すべてのサンプルで、接触角は側面A上にて測定した。
【0128】
油評価: AATCC試験方法118-2007で測定した。側面Aと側面Bが異なる場合、油評価は側面A上にて測定した。
【表3】
パート4.揮発性材料移動速度と発汗評価試験
パート4A:試験装置の組立て
【0129】
上記膜の蒸発速度と性能試験に使用するホルダー組立品は、リングガスケット付きのフロントクランプ、バッククランプ、テストリザーバーカップ、および4本のネジで構成した。上記テストリザーバーカップは、透明な熱可塑性ポリマーで作製し、およそ4センチメートルの上記開口面の上記縁の円形の直径および1センチメートル未満の深さにより規定した内部寸法を有する。上記開放面を使用して、上記揮発性材料移動速度を決定した。
【0130】
上記ホルダー組立品の各クランプには、上記テストリザーバーカップを収容し、それから試験中に上記膜を露出させる開口部を提供するための、直径1.5インチ(3.8cm)の円形開口部があった。試験中に膜を配置するとき、上記ホルダー組立品の上記バッククランプをコルクリングの上部に配置した。上記テストリザーバーカップを上記バッククランプ内に配置し、芳香組成物をシミュレートするために使用される、下記の酢酸ベンジル量を充填した。表4において、「フル」試験は、2mLの酢酸ベンジルを上記リザーバーに配置したことを示す。「クォーター」試験は、0.5mLの酢酸ベンジルの上記リザーバー内の配置を示した。直径がおよそ2インチ(5.1cm)のディスクを上記膜シートから切り取り、上記リザーバーカップの上記縁の上に直接重ねて配置して接触させて、上記微孔性シートの上記表面(関心のある側)の12.5cm2が上記リザーバーの上記内部に露出するようにした。コーティングされた微孔性シートを使用した場合、側面Bが上記リザーバーの内部に露出した実施例5Bを除いて、側面Aが上記リザーバーの内部に露出するように上記膜を配向した。
【0131】
上記ホルダーの上記フロントクランプを組立品全体に慎重に配置し、ネジ穴を整列させ、上記膜ディスクを乱さないようにした。上記ネジを取り付けて、漏れを防ぐのに十分に締めた。リングガスケットにより密閉した。テストする各膜について、5つの複製を組み立てた。
パート4B:揮発性材料移動速度試験
【0132】
上記チャージした組立品全体の初期重量を得るために、上記ホルダー組立品を秤量した。次に、上記膜を垂直に配向させ、かつ酢酸ベンジルが上記試験膜の少なくとも一部と直接接触するように、上記組立品を直立させた。直立(垂直に配向した)組立品は、25°±5℃に維持された上記空気流によって、以下に明示する環境に配置した。環境内は周囲湿度とした。上記テストリザーバーは、最小限の14日間、24時間ごとに秤量した。全期間にわたって酢酸ベンジルの計算された重量損失を、経過時間および上記テストリザーバーの内部に露出した微孔性シートの表面積を組み合わせて、微孔性シートの揮発性材料移動速度をmg/(hour
*cm
2)単位で決定するために使用した。表4において上記組立品全体における複製の平均蒸発速度(mg/hr)を決定した。上記平均蒸発速度は、次の式によって、揮発性材料移動速度に変換した。
【数1】
【0133】
表4において報告した値は、上記試験期間全体にわたる5つのサンプルすべての平均である。
空気流条件
【0134】
実施例は、おおよその寸法が5フィート(1.52m)(高さ)×5(1.52m)フィート(幅)×2(0.61m)フィート(深さ)の実験用化学換気フードに配置された「無制限」条件下で、試験した。上記換気フードの上記ガラスドアを引き下げ、上記フードを通る上記空気流を調整して、1時間あたりにフード容積が8転回(turns)(または回転(turnovers))となるようにした。
【0135】
実施例は、おおよその寸法が11インチ(0.28m)(高さ)×19インチ(0.48m)(幅)×11インチ(0.28m)(深さ)の寸法を有するHDPE密閉式の箱内に配置した「有制限」条件下で、試験した。上記容器は、11×19インチ[0.28×0.48m]の厚紙シートで囲み、ダクトテープを巻きつけた。
パート4C:発汗評価
【0136】
上記揮発性材料移動速度試験と同時に、少なくとも14日間、24時間ごとに、各組立品の上記外膜表面の液体の蓄積を視覚的に検査した。上記発汗評価には、「0」は液体の蓄積なし、「1」は上記基板上のみに液体が蓄積している、「2」は上記基板と上記ホルダーの上記リングガスケットに液体が蓄積している、および「3」は上記基板、シール、および上記ホルダーの底部金属リップに液体が蓄積していることを意味する番号方式を使用した。5つの複製すべての経時的なすべての評価の平均を使用して、以下の表4に報告した平均発汗評価を決定した。
【表4】
【0137】
本発明は、次の条項の技術内容をさらに含む。
【0138】
項1:第1側面および上記第1側面の反対側の第2側面を含む微孔性膜であって、上記膜は、ポリオレフィンを含む熱可塑性有機ポリマーを含み、上記膜は、実質的に上記膜全体に連通する相互接続孔のネットワークを規定する、微孔性膜;細かく分けられた実質的に非水溶性の粒子状充填剤であって、上記膜全体に分布し、上記膜および上記粒子状充填剤の総重量に基づいて上記膜の10~90重量パーセントを構成する、粒子状充填剤;および、上記第1側面の少なくとも一部を覆う第1の疎水性/疎油性材料を含み、上記ポリオレフィンは、上記膜および上記粒子状充填剤の総重量に基づいて、上記膜の少なくとも2重量パーセントを含み、上記膜は最大0.2μmの平均細孔径を有する、処理された蒸気透過性微孔性膜。
【0139】
項2:上記第1の疎水性/疎油性材料は、少なくとも1つのフルオロアルキル基を含む、項1に記載の処理された蒸気透過性微孔性膜。
【0140】
項3:上記第1の疎水性/疎油性材料は、コポリマーを含有するフルオロアルキル基を含む、項1または2に記載の処理された蒸気透過性微孔性膜。
【0141】
項4:上記第1側面の少なくとも一部は、AATCC試験方法118-2007に基づいて、少なくとも6の油評価を示す、項1~3のいずれかに記載の処理された蒸気透過性微孔性膜。
【0142】
項5:上記第1側面の少なくとも一部は、少なくとも105°の水接触角を示す、項1~4のいずれかに記載の処理された蒸気透過性微孔性膜。
【0143】
項6:上記粒子状充填剤は、粒子状シリカを含むケイ酸質粒子を含む項1~5のいずれかに記載の処理された蒸気透過性微孔性膜。
【0144】
項7:上記膜は、0.4g/cm3~1.0g/cm3の密度を有する、項1~6のいずれかに記載の処理された蒸気透過性微孔性膜。
【0145】
項8:上記第2側面の少なくとも一部の上に第2の疎水性/疎油性材料をさらに含む、項1~7のいずれかに記載の処理された蒸気透過性微孔性膜。
【0146】
項9:上記第2側面の少なくとも一部の上に親水性コーティングをさらに含む、項1~8のいずれかに記載の処理された蒸気透過性微孔性膜。
【0147】
項10:上記親水性コーティングが、ポリオキサゾリン、ポリ(エチレングルコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)に基づくトリブロックコポリマー、ポリアミド、酸化ポリエチレンまたはその誘導体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコールまたはその誘導体、ポリプロピレンオキシドまたはその誘導体、ポリ(エチレングリコール)とポリエチレンオキシドのコポリマー、ポリビニルアルコール、セルロースまたはその誘導体、コラーゲン、ポリペプチド、グアー、ペクチン、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリルアミド、多糖類、双性イオン性ポリマー、高分子両性電解質、およびポリエチレンイミンのうち、1またはそれを超えるものを含む、項9に記載の処理された蒸気透過性微孔性膜。
【0148】
項11:上記第1側面または上記第2側面は揮発性材料接触面を含み、上記第1側面および上記第2側面の他方は蒸気放出面を含み、上記処理膜は、芳香送達デバイスの上記蒸気放出面から匂いのある蒸気を放出するように構成される、項1~10のいずれかに記載の処理された蒸気透過性微孔性膜。
【0149】
項12:処理された蒸気透過性微孔性膜の調製方法であって、第1側面および上記第1側面の反対側の第2側面を含む微孔性膜を提供すること、上記膜はポリオレフィンを含む熱可塑性有機ポリマーを含み、上記膜は上記膜全体に実質的に連通する相互接続孔のネットワークを規定して、上記膜は、上記膜全体に分散した、細かく分けられた粒子状充填剤を有する;および、上記第1側面の少なくとも一部の上に第1の疎水性/疎油性材料を塗布すること、を含む調製方法。
【0150】
項13:上記第1側面の少なくとも一部の上に上記第1の疎水性/疎油性材料を塗布する前に、上記第1側面の少なくとも一部の上に第1の親水性コーティングを塗布することをさらに含む、項12に記載の調製方法。
【0151】
項14:上記第1の親水性コーティングが、ポリオキサゾリン、ポリ(エチレングルコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)に基づくトリブロックコポリマー、ポリアミド、酸化ポリエチレンまたはその誘導体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコールまたはその誘導体、ポリプロピレンオキシドまたはその誘導体、ポリ(エチレングリコール)とポリエチレンオキシドのコポリマー、ポリビニルアルコール、セルロースまたはその誘導体、コラーゲン、ポリペプチド、グアー、ペクチン、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリルアミド、多糖類、双性イオン性ポリマー、高分子両性電解質、およびポリエチレンイミンのうち、少なくとも1つを含む、項13に記載の調製方法。
【0152】
項15:上記第1側面の少なくとも一部の上に上記第1の疎水性/疎油性材料を塗布する前に、上記第1の親水性コーティングを含む上記膜を乾燥させることをさらに含む、項13または14に記載の調製方法。
【0153】
項16:上記第1の疎水性/疎油性材料が、ドローダウン法を使用して上記第1側面の一部の上に塗布される、項12~15のいずれかに記載の調製方法。
【0154】
項17:上記膜の上記第2側面の少なくとも一部の上に第2の親水性コーティングを塗布することをさらに含む、項12~16のいずれかに記載の調製方法。
【0155】
項18:上記膜の上記第2側面の少なくとも一部の上に第2の疎水性/疎油性材料を塗布することをさらに含む、項12~17のいずれかに記載の調製方法。
【0156】
項19:上記第1の疎水性/疎油性材料は、少なくとも1つのフルオロアルキル基を含む、項12~18のいずれかに記載の調製方法。
【0157】
項20:上記粒子状充填剤は、粒子状シリカを含むケイ酸質粒子を含む、項12~19のいずれかに記載の調製方法。
【0158】
項21:上記第1の疎水性/疎油性材料は、少なくとも1つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物を含む、項1~11のいずれかに記載の処理された蒸気透過性微孔性膜。
【0159】
項22:上記第1の疎水性/疎油性材料は、コポリマーを含有するフルオロアルキル基を含む、項12~20のいずれかに記載の調製方法。
【0160】
項23:上記第1側面は、AATCC試験方法118-2007に基づいて、少なくとも6の油評価を示す、項12~20または22のいずれかに記載の調製方法。
【0161】
項24:上記第1側面は、少なくとも105°の水接触角を示す、項12~20、22、または23のいずれかに記載の調製方法。
【0162】
項25:上記粒子状充填剤が、上記膜および上記粒子状充填剤の総重量に基づいて、上記膜の10から90重量パーセントを構成する、項12~20または22~24のいずれかに記載の調製方法。
【0163】
項26:上記膜は、0.4g/cm3~1.0g/cm3の密度を有する、項12~20または22~25のいずれかに記載の調製方法。
【0164】
項27:上記親水性コーティングが、ポリオキサゾリン、ポリ(エチレングルコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)に基づくトリブロックコポリマー、ポリエチレンイミン、ポリアミド、酸化ポリエチレンまたはその誘導体、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコールの誘導体、ポリプロピレンオキシドまたはその誘導体、ポリ(エチレングリコール)とポリエチレンオキシドのコポリマー、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアセテート、セルロースまたはその誘導体、コラーゲン、ポリペプチド、グアー、ペクチン、ポリイミド、ポリペプチド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、多糖類、双性イオン性ポリマー、高分子両性電解質、およびポリエチレンイミンのうち、1またはそれを超えるものを含む、項17-20または22~26のいずれかに記載の調製方法。
【0165】
項28:第1側面が揮発性材料接触面を含み、第2側面が蒸気放出面を含み、上記処理膜は、芳香送達デバイスの上記蒸気放出面から匂いのある蒸気を放出するように構成されている、項12~20または22~27のいずれかに記載の調製方法。
【0166】
項29:上記粒子状充填剤は、炭酸カルシウムをさらに含む、項6~11、または21のいずれかに記載の処理された蒸気透過性微孔性膜。
【0167】
本発明の特定の実施形態を説明目的で上述したが、添付の特許請求の範囲で定義された本発明から逸脱することなく、本発明の上記詳細の多数の変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
第1側面および前記第1側面の反対側の第2側面を含む微孔性膜であって、前記膜は、ポリオレフィンを含む熱可塑性有機ポリマーを含み、前記膜は、前記膜全体に実質的に連通する相互接続孔のネットワークを規定する、微孔性膜;
細かく分けられた実質的に非水溶性の粒子状充填剤であって、前記膜全体に分布し、前記膜および前記粒子状充填剤の総重量に基づいて前記膜の10~90重量パーセントを構成する粒子状充填剤;および
前記第1側面の少なくとも一部を覆う第1の疎水性/疎油性材料を含み、
前記ポリオレフィンは、前記膜および前記粒子状充填剤の総重量に基づいて、前記膜の少なくとも2重量パーセントを含み、
前記膜は最大0.2μmの平均細孔径を有する、
処理された蒸気透過性微孔性膜。
(項2)
前記第1の疎水性/疎油性材料は、少なくとも1つのフルオロアルキル基を含む、上記項1に記載の処理された蒸気透過性微孔性膜。
(項3)
前記第1の疎水性/疎油性材料は、コポリマーを含有するフルオロアルキル基を含む、上記項1に記載の処理された膜。
(項4)
前記第1側面の少なくとも一部は、AATCC試験方法118-2007に基づいて、少なくとも6の油評価を示す、上記項1に記載の処理された膜。
(項5)
前記第1側面の少なくとも一部は、少なくとも105°の水接触角を示す、上記項1に記載の処理された膜。
(項6)
前記粒子状充填剤は、粒子状シリカを含むケイ酸質粒子を含む、上記項1に記載の処理された膜。
(項7)
前記膜は、0.4g/cm
3
~1.0g/cm
3
の密度を有する、上記項1に記載の処理された膜。
(項8)
前記第2側面の少なくとも一部の上に第2の疎水性/疎油性材料をさらに含む、上記項1に記載の処理された膜。
(項9)
前記第2側面の少なくとも一部の上に親水性コーティングをさらに含む、上記項1に記載の処理された膜。
(項10)
前記親水性コーティングが、ポリオキサゾリン、ポリ(エチレングルコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)に基づくトリブロックコポリマー、ポリアミド、酸化ポリエチレンまたはその誘導体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコールまたはその誘導体、ポリプロピレンオキシドまたはその誘導体、ポリ(エチレングリコール)とポリエチレンオキシドのコポリマー、ポリビニルアルコール、セルロースまたはその誘導体、コラーゲン、ポリペプチド、グアー、ペクチン、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリルアミド、多糖類、双性イオン性ポリマー、高分子両性電解質、およびポリエチレンイミンのうち、1またはそれを超えるものを含む、上記項9に記載の処理された膜。
(項11)
前記第1側面または前記第2側面は揮発性材料接触面を含み、前記第1側面および前記第2側面の他方は蒸気放出面を含み、前記処理膜は、芳香送達デバイスの前記蒸気放出面から匂いのある蒸気を放出するように構成される、上記項1に記載の処理された膜。
(項12)
第1側面および前記第1側面の反対側の第2側面を含む微孔性膜を提供することであって、前記膜は、ポリオレフィンを含む熱可塑性有機ポリマーを含み、前記膜は、実質的に前記膜全体に連通する相互接続孔のネットワークを規定し、前記膜は、前記膜全体に分布する細かく分けられた粒子状充填剤を有する、微孔性膜を提供すること;および
前記第1側面の少なくとも一部の上に第1の疎水性/疎油性材料を塗布すること、
を含む、処理された蒸気透過性微孔性膜の調製方法。
(項13)
前記第1側面の少なくとも一部の上に前記第1の疎水性/疎油性材料を塗布する前に、前記第1側面の少なくとも一部の上に第1の親水性コーティングを塗布することをさらに含む、上記項12に記載の調製方法。
(項14)
前記第1の親水性コーティングが、ポリオキサゾリン、ポリ(エチレングルコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)に基づくトリブロックコポリマー、ポリアミド、酸化ポリエチレンまたはその誘導体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコールまたはその誘導体、ポリプロピレンオキシドまたはその誘導体、ポリ(エチレングリコール)とポリエチレンオキシドのコポリマー、ポリビニルアルコール、セルロースまたはその誘導体、コラーゲン、ポリペプチド、グアー、ペクチン、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリルアミド、多糖類、双性イオン性ポリマー、高分子両性電解質、およびポリエチレンイミンのうち、少なくとも1つを含む、上記項13に記載の調製方法。
(項15)
前記第1側面の少なくとも一部の上に前記第1の疎水性/疎油性材料を塗布する前に、前記第1の親水性コーティングを含む前記膜を乾燥させることをさらに含む、上記項13に記載の調製方法。
(項16)
前記第1の疎水性/疎油性材料が、ドローダウン法を使用して前記第1側面の一部の上に塗布される、上記項12に記載の調製方法。
(項17)
前記膜の前記第2側面の少なくとも一部の上に第2の親水性コーティングを塗布することをさらに含む、上記項12に記載の調製方法。
(項18)
前記膜の前記第2側面の少なくとも一部の上に第2の疎水性/疎油性材料を塗布することをさらに含む、上記項12に記載の調製方法。
(項19)
前記第1の疎水性/疎油性材料は、少なくとも1つのフルオロアルキル基を含む、上記項12に記載の調製方法。
(項20)
前記粒子状充填剤は、粒子状シリカを含むケイ酸質粒子を含む、上記項12に記載の調製方法。
(項21)
前記第1の疎水性/疎油性材料は、少なくとも1つのフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物を含む、上記項1に記載の処理された膜。
(項22)
前記粒子状充填剤は、炭酸カルシウムをさらに含む、上記項6に記載の処理された膜。