(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ブラインからリチウムを回収するプロセス
(51)【国際特許分類】
C01D 15/04 20060101AFI20230224BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20230224BHJP
B01D 61/22 20060101ALI20230224BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20230224BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20230224BHJP
B01J 39/02 20060101ALI20230224BHJP
B01J 39/10 20060101ALI20230224BHJP
B01J 45/00 20060101ALI20230224BHJP
B01J 47/15 20170101ALI20230224BHJP
B01J 49/53 20170101ALI20230224BHJP
B01J 49/85 20170101ALI20230224BHJP
【FI】
C01D15/04
B01D61/14 500
B01D61/22
C02F1/44 D
C02F1/42 B
B01J39/02
B01J39/10
B01J45/00
B01J47/15
B01J49/53
B01J49/85
(21)【出願番号】P 2020555269
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 CA2018000240
(87)【国際公開番号】W WO2019126862
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-10-28
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520232840
【氏名又は名称】スタンダード リチウム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,クレイグ,ジョンストン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/020090(WO,A1)
【文献】特開2015-059059(JP,A)
【文献】Ramesh Chitrakar et al.,Dalton Trans.,2014年,43,pp.8933-8939
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D 15/04
B01D 61/14
B01D 61/22
C02F 1/44
C02F 1/42
B01J 39/02
B01J 39/10
B01J 45/00
B01J 47/15
B01J 49/53
B01J 49/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム含有ブラインからリチウムイオンを回収するプロセスであって、前記プロセスは、
第1のリアクタ(4)において前記リチウム含有ブラインをリチウムイオンふるいと接触させ、前記リチウムイオンふるいを含むリチウムイオン錯体を形成することと、
固液分離装置を用いて、前記リチウムイオンふるいを含む前記リチウムイオン錯体を前記ブラインから分離することと、
第2のリアクタ(22)において脱錯化する前に、前記リチウムイオンふるいを含む前記リチウムイオン錯体を水と接触させることと、
前記第2のリアクタ(22)において前記リチウムイオンふるいからリチウムイオンを脱錯化して、前記リチウムイオンふるいから分離された酸性リチウム塩溶出液を形成することと、
固液分離装置を用いて前記酸性リチウム塩溶出液から前記リチウムイオンふるいを分離することと、
前記第2のリアクタ(22)において脱錯化した後、前記リチウムイオンふるいを水と接触させて、再生リチウムイオンふるいおよび希酸水洗浄液を得ることと、
を含み、
前記リチウムイオンふるいは、チタンまたはニオブの酸化物を含
み、
前記プロセスは、連続的に実施される、
プロセス。
【請求項2】
前記脱錯化は酸を用いた溶離により行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記酸の濃度は、前記酸の添加によって一定値に維持される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記酸の濃度は0.1M~0.5Mである、請求項2または3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記酸の濃度は約0.2M~約0.4Mである、請求項2から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記酸の濃度は約0.2Mである、請求項2から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第1のリアクタ(4)内のpHは、アルカリの添加によって一定値に維持される、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記pHは4より大きく9未満の一定値に維持される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1のリアクタ内の前記pHは、6より大きく8未満である、請求項7から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記リチウムイオンふるいの90%超が40μm未満の平均粒径を有し、前記リチウムイオンふるいの90%超が0.4μmより大きい平均粒径を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記リチウムイオンふるいの粒子の90体積%超が、直径100μm未満かつ直径0.5μm超である、請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記リチウムイオンふるいの粒子の90体積%超が直径0.5μm超である、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記リチウムイオンふるいがメタチタン酸を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記再生リチウムイオンふるいを前記第1のリアクタ(4)に加えることと、
をさらに含む、請求項1から
13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記希酸水洗浄液および追加の濃酸を前記第2のリアクタ(22)に加えることをさらに含む、請求項
14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記酸の前記濃度は、前記溶液の電気伝導率の測定によって一定値に維持される、請求項3から
15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記リチウムイオンふるいを含む前記リチウムイオン錯体と前記酸との平均接触時間は1時間未満である、請求項2から
16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記第1のリアクタ(4)は限外濾過膜または精密濾過膜を備える、請求項1から
17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記第1のリアクタ(4)の内容物を撹拌するために空気が使用される、請求項1から
18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記リチウムイオンふるいの濃度は50g/Lより大きい、請求項1から
19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記限外濾過膜または前記精密濾過膜を通過する流速は、30kPa未満の膜貫通圧で30LMHより大きい、請求項
18から
20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記リチウム含有ブラインを前記リチウムイオンふるいと接触させる前に、1μm未満の平均粒径を有するリチウムイオンふるいを除去することをさらに含む、請求項1から
21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記第2のリアクタ(22)において前記リチウムイオンふるいから前記リチウムイオンを脱錯化する前に、前記リチウムイオンふるいを含む前記リチウムイオン錯体を90重量%未満の含水量に脱水することをさらに含む、請求項
14から
22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記第1のリアクタ(4)に加える前に、前記再生リチウムイオンふるいを脱水することをさらに含む、請求項
14から
23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記リチウムイオンふるいを水と接触させることは、前記再生リチウムイオンふるいを前記第1のリアクタ(4)に加える前に、前記リチウムイオンふるいから脱錯化された前記リチウムイオンの50%超が前記リチウムイオンふるいから洗浄されるように、前記リチウムイオンふるいを十分な水と接触させることを含む、請求項
14から
24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記リチウムイオンふるいを水と接触させることは、前記再生リチウムイオンふるいを前記第1のリアクタ(4)に加える前に、前記リチウムイオンふるいから脱錯化された前記リチウムイオンの50%超が前記リチウムイオンふるいから洗浄されるように、前記リチウムイオンふるいを1つ以上の向流段で水と接触させることを含む、請求項
14から
25のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、または水酸化カルシウムを含む、請求項7から
26のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
前記酸が塩酸または硫酸を含む、請求項2から
27のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項29】
前記リチウムイオンふるいの濃度は100g/Lより大きい、請求項1から
28のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月27日に出願された米国仮出願番号62/610,575号明細書に対する利益を主張し、その内容全体は参照により組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、概して、ブラインからイオンを回収する方法に関し、より詳細には、ブラインからリチウムイオンを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
主に電気自動車や、風力、太陽光および潮力源を含む再生可能エネルギーシステムに関連する定置用電力貯蔵用のリチウムイオン電池の使用に対する最近の関心の結果として、リチウムの需要は大幅に増加し、すぐに供給を上回る可能性がある。海水、ブライン、地熱流体および大陸の塩湖など、さまざまな供給源で入手可能なリチウムは、大量に供給される可能性がある。本明細書で使用される場合、「ブライン」は、これらの様々なリチウム含有溶液を指す。しかしながら、これらの資源中のリチウム濃度は通常非常に低いため、今日まで、蒸発による広範囲の濃縮なしにこれらの供給源からリチウムを回収する実行可能な方法はほとんどなかった。さらに、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの他の金属イオンの濃度がはるかに高いと、リチウムの回収が妨げられる。
【0004】
イオン交換は、水溶液から低濃度の金属イオンを回収するための周知の技術である。しかしながら、スルホン酸官能基を有する強酸カチオン交換樹脂およびイミノ二酢酸基を有するキレート樹脂などの従来のイオン交換樹脂は、存在する可能性のあるカルシウムおよびマグネシウムなどの多価イオンをより優先する。ナトリウムやカリウムなどの他の1価イオンとリチウムの選択性は類似している可能性があるが、通常ブラインに著しく過剰に存在するこれらの競争力のある1価イオンの存在により、リチウムの回収が不可能になる。
【0005】
マンガン、チタン、または他の酸化物に基づくイオンふるいなどの無機イオン交換媒体は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムおよびカリウムなどの競合イオンが高濃度に存在するブラインからリチウムを回収するために潜在的に有用であることが確認されている。これらの材料は、リチウムイオンふるい(LIS)と呼ばれ得る。LIS交換サイトは非常に狭く、Li+(0.074nm)よりもイオン半径が大きいNa+(0.102nm)、K+(0.138nm)、およびCa2+(0.100nm)は、交換サイトに入れないため、LISはリチウムに対する高い選択性を示す。Mg2+(0.072nm)イオンのイオン半径はLi+のイオン半径と類似しているが、マグネシウムイオンが交換サイトに入るのを可能にするためにはマグネシウムイオンの脱水に大量のエネルギーが必要であり、その結果、Mg2+に対する選択性が維持される。
【0006】
ただし、LISにはいくつかの欠点がある。第1に、それらは本質的に弱酸性であり、結果として、より低いpHレベルでは能力が減少する。第2に、一部の成分は酸に溶解するため、酸性溶液では安定しない。劣化すると、リチウムを吸着する能力が失われるため、頻繁に交換する必要がある。LISの交換には、かなりのコストがかかる。さらに、従来のカラムに取り付けた場合、劣化したLISの除去および交換は困難で時間がかかる。最後に、LISは微粉末として合成されるため、圧力降下が大きいため、従来のイオン交換樹脂とは異なり、固定床では使用できない。例えば、造粒、発泡、膜、繊維、および磁化によって形態を改善するために、多くの試みがなされてきた。しかし、これらの粉末がより大きな形状に凝集化されると、結合剤による細孔および活性交換サイトの閉塞の結果として反応速度が著しく損なわれ、通常、粒径が大きくなると、表体積/質量に対する面積の比が低下する。
【0007】
したがって、上記の欠点を克服するリチウムイオンふるいを使用してブラインからリチウムを回収する方法を改善する必要が依然としてある。
【発明の概要】
【0008】
一態様において、本発明は、第1の混合または撹拌リアクタ内でリチウム含有ブラインをリチウムイオンふるいと接触させ、リチウムイオンふるいを含むリチウムイオン錯体を形成することと、第2の混合または撹拌リアクタ内でリチウムイオンふるいからリチウムイオンを脱錯化して、リチウムイオンふるいおよび酸性リチウム塩溶出液を形成することと、によってリチウム含有ブラインからリチウムイオンを回収するプロセスを提供する。
【0009】
一実施形態において、第1の混合または撹拌リアクタ内でリチウム含有ブラインをリチウムイオンふるいと接触させ、リチウムイオンふるいを含むリチウムイオン錯体を形成することを含む、リチウム含有ブラインからリチウムイオンを回収するプロセスを提供する。次に、このプロセスは、第2の混合または撹拌リアクタ内でリチウムイオンふるいからリチウムイオンを脱錯化して、リチウムイオンふるいから分離された酸性リチウム塩溶出液を形成するステップを含む。リチウムイオンふるいは、チタンまたはニオブの酸化物(例えば、メタチタン酸またはニオブ酸リチウム)を含み得る。
【0010】
脱錯化は、酸を用いた溶離によって行われ得る。酸の濃度は、酸の添加により一定値に維持され得る。酸の濃度は、0.1M~0.5M、または約0.2M~約0.4M、あるいは約0.2Mであってよい。酸の濃度は、溶液の電気伝導率を測定することによって一定値に維持されてよい。リチウムイオンふるいを含むリチウムイオン錯体と酸との平均接触時間は1時間未満であってもよい。酸は塩酸または硫酸であってもよい。
【0011】
第1のリアクタのpHは、アルカリの添加によって一定値に維持され得る。pHは、4より大きく9未満、または6より大きく8未満の一定値に維持され得る。アルカリは、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、または水酸化カルシウムであり得る。
【0012】
リチウムイオンふるいの90%超が40μm未満の平均粒径を有してもよく、リチウムイオンふるいの90%超が0.4μmより大きい平均粒径を有してもよい。リチウムイオンふるいの粒子の90体積%超は、直径100μm未満かつ直径0.5μm超であってもよい。リチウムイオンふるいの粒子の90体積%超が直径0.5μm超であってもよい。このプロセスは、リチウム含有ブラインをリチウムイオンふるいと接触させる前に、1μm未満の平均粒径を有するリチウムイオンふるいを除去するステップをさらに含んでもよい。
【0013】
このプロセスは、固液分離装置を用いて、リチウムイオンふるいを含むリチウムイオン錯体をブラインから分離するステップと、リチウムイオンふるいを含むリチウムイオン錯体を水と接触させてから、第2のリアクタ内で脱錯化するステップと、をさらに含んでもよい。このプロセスはまた、固液分離装置を用いて酸性リチウム塩溶出液からリチウムイオンふるいを分離するステップと、第2のリアクタ内で脱錯化した後、リチウムイオンふるいを水と接触させて、再生リチウムイオンふるいおよび希酸水洗浄液を得るステップと、再生リチウムイオンふるいを第1のリアクタに加えるステップと、をさらに含んでもよい。このプロセスは、第2のリアクタ内でリチウムイオンふるいからリチウムイオンを脱錯化する前に、リチウムイオンふるいを含むリチウムイオン錯体を90重量%未満の含水量に脱水するステップをさらに含んでもよい。このプロセスはまた、再生リチウムイオンふるいを第1のリアクタに加える前に、再生リチウムイオンふるいを脱水するステップをさらに含んでもよい。リチウムイオンふるいを水と接触させるステップは、再生リチウムイオンふるいを第1のリアクタに加える前に、リチウムイオンふるいから脱錯化されたリチウムイオンの50%超がリチウムイオンふるいから洗浄されるように、リチウムイオンふるいを十分な水と接触させるステップをさらに含んでもよい。リチウムイオンふるいを水と接触させるステップは、再生リチウムイオンふるいを第1のリアクタに加える前に、リチウムイオンふるいから脱錯化されたリチウムイオンの50%超がリチウムイオンふるいから洗浄されるように、リチウムイオンふるいを1つ以上の向流段で水と接触させるステップを含んでもよい。このプロセスはまた、希酸水洗浄液および追加の濃酸を第2のリアクタに加えるステップをさらに含んでもよい。
【0014】
第1のリアクタは、限外濾過膜または精密濾過膜を備えてもよい。第1のリアクタの内容物を撹拌するために空気または他のガスが使用されてもよい。限外濾過膜または精密濾過膜を通過する流速は、30kPa未満の膜貫通圧で30LMHより大きくてもよい。
【0015】
リチウムイオンふるいの濃度は、50g/Lより高いか、または100g/Lより高くてもよい。
【0016】
本発明のさらなる適用範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、本発明の精神および範囲内の様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者に明らかになるため、例示としてのみ与えられていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、以下に与えられる詳細な説明と、例示としてのみ与えられ、したがって本発明を限定するものではない添付の図面から、より完全に理解されるであろう。図面において、同様の参照番号は、様々な図において同様の特徴を示すために使用される。
【0018】
【
図1】本プロセスのための例示的なリチウム抽出システムの概略図である。
【0019】
【
図2】pHの関数としての金属イオン吸着量を示すグラフである。
【0020】
【
図3】塩酸濃度の関数として、溶離されたリチウムの量および抽出されたチタンの量を示すグラフである。
【0021】
【
図4】スラリー中での数時間の空気撹拌後に得られたメタチタン酸リチウムイオンふるいのサンプルの例示的なLIS粒子サイズ分布を示すグラフである。
【0022】
【
図5】本プロセスのための代替のリチウム抽出システムの概略図である。
【0023】
【
図6】例示的な抽出試行の時間の関数としてのリチウム濃度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上述の欠点の結果、リチウムイオンふるいは、これまで工業規模でのブラインからのリチウムの回収に広く適用されていなかった。本発明はこれらの欠点を克服し、ブラインからリチウムを選択的に回収するためのリチウムイオンふるいの使用をより商業的に実現可能にする。
【0025】
従来のイオン交換樹脂の平均粒径は、典型的には約400~1250マイクロメートルである。RECOFLO(登録商標)短床イオン交換プロセスは、大規模な産業用途で使用される最も微細な粒子と通常見なされているものを利用する。これらの粒子は、通常、100~200マイクロメートルの平均粒径を有する。
【0026】
比較すると、本発明で利用されるリチウムイオンふるいは、好ましくは粉末形態である。粉末の平均粒子サイズは必ずしも制限される必要はない。しかしながら、平均粒子サイズは、好ましくは約100μm未満、より好ましくは10~100μm、さらにより好ましくは20~100μm、さらにより好ましくは20~95μmである。例えば、リチウムイオンふるい粒子の90%超(体積による)は、直径100μm未満かつ直径0.5μm超であってもよい。同じまたは異なる実施形態において、リチウムイオンふるい粒子の90%超(体積による)は、直径0.5μm超であってもよい。これらの材料は粉末として合成されるため、造粒のコストが回避される。さらに、そのような粉末によって提供されるより大きな表面積は、イオン交換プロセスの反応速度を大幅に改善する。
【0027】
さまざまなリチウムイオンふるいは潜在的にリチウムの回収に役立つ。例示的なLISは、マンガンおよびチタンの酸化物を含むが、これらに限定されない。具体的には、例示的なLISは、チタンの酸化物、好ましくはメタチタン酸(MTA)を含み得る。しかしながら、本発明は、酸化マンガンおよびニオブ酸リチウム(すなわち、ニオブ酸)などの他の種類のリチウムイオンふるい媒体にも等しく適用可能である。リチウムイオンふるいは、チタン、ニオブ、またはマンガンの酸化物に加えて、ドープ剤を含んでもよい。しかしながら、リチウムイオンふるいの含有量は、主にチタン、ニオブ、またはマンガンの酸化物であろう。
【0028】
本発明の一実施形態において、粉末リチウムイオンふるい媒体は、撹拌タンクリアクタ(STRまたはリアクタ)においてリチウム含有ブラインと接触させることができる。例えば、リアクタは、リチウムイオンふるいと共に処理される液体を含むタンクであり得る。リチウムイオンふるいは、ミキサーによって、またはリチウムイオンふるいとブラインとの間の密接な接触を提供する上昇する液体またはガス気泡流による流動化によって、懸濁液中に維持され得る。リアクタ内のブラインのpHは、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、および水酸化カルシウムなどのアルカリを加えることにより、一定レベルに維持することができる。例えば、リアクタ内のブラインのpHは、5より高く9未満に維持することができる。
【0029】
イオン交換反応が完了した後、リチウム枯渇(すなわち、不用)ブラインは、様々な手段によってリチウムイオンふるいから分離され、リアクタから除去され得る。例えば、ブライン/リチウムイオンふるいスラリー(すなわち、担持リチウムイオンふるい)は、次のステップに進む前に、残留ブラインを除去するために、追加の撹拌リアクタ内で水と接触され得る。リチウムイオンふるいの粒子サイズが約10ミクロンより大きい場合、重力沈降を使用できる。粒子サイズが10ミクロン未満の場合は、回転ドラム式真空フィルタやベルトフィルタなどの濾過装置を使用できる。粒子サイズが1ミクロン未満の場合、膜濾過を使用できる。これらの固液分離装置の組み合わせを有利に使用することができる。可能な固液分離装置の一例は、遠心分離機であり得る。
【0030】
不用のブラインを除去した後、リアクタに含まれるリチウムイオンふるいを溶離液と接触させることができる。この溶離液は、とりわけ、塩酸(HCl)または硫酸(H2SO4)などの酸であり得る。例えば、酸は、約0.1M~約0.5Mの範囲の濃度で添加されてもよい。特定の理論に束縛されることを意図することなく、酸は、LISからリチウムを溶離(脱錯化)し、したがって、濃縮されたリチウム塩生成溶液を生成し、LISを再生すると考えられている。本明細書で使用される場合、「錯体」は、結合して1つの大きなイオンまたは分子を生成する個々の原子群、イオン、または分子の組み合わせである。本明細書で使用される場合、「脱錯化」は、大きなイオンまたは分子から個々の原子群、イオン、または分子を分離する作用である。他の金属よりもリチウムへのリチウムイオンふるいの選択性のために、他の金属に対するリチウムの比率は、供給ブラインよりも生成溶液中でかなり高くなる場合がある。
【0031】
リチウムイオンふるいを再生した後、リチウムイオンふるいを再利用して、より多くのブラインを処理し、より多くのリチウムを抽出できる。
【0032】
本発明の実施形態において、プロセスは連続的に行われ得る。このような連続プロセスでは、2つのリアクタ段が必要になり得る。ブラインは、担持段に連続的に供給されてもよく、担持段において連続的に混合されるスラリーとしてリチウムイオンふるいがブラインと接触する。次に、リチウムイオンふるいによる吸着を介して、リチウムイオンがブラインから除去され、不用のブラインとリチウム担持LISとをもたらし得る。次に、不用のブラインは、リチウム担持リチウムイオンふるいから分離され、リアクタから除去され得る。ブラインから分離されたリチウム担持リチウムイオンふるいは、溶離段に送られ得る。
【0033】
溶離液は、連続的に溶離段に供給されてもよく、担持段から除去されたリチウム担持リチウムイオンふるいは、連続的に混合されたスラリーとして溶離液と接触されてもよい。リチウムイオンふるいと液体とは分離され、この分離された液体(つまり、溶出液)がリチウム塩生成物溶液である。
【0034】
溶離段を出るリチウムイオンふるいのリチウム含有量はかなり減少しており、リチウムイオンふるいは再利用のために担持段にリサイクルすることができる。このようにして、リチウムイオンふるいを複数回再利用することができ、プロセスを連続的に操作することができる。
【0035】
一実施形態において、
図1に示すように、追加の段を利用することができる。具体的には、供給ブラインは、ライン2を通って、担持段の一部として、リチウムイオンふるいを含む第1の撹拌リアクタ4に流入する。リチウムイオンふるいは、ミキサー6によって懸濁液中に維持される。ブライン/リチウムイオンふるいスラリーは、ライン8からのNaOHの添加により、一定のpHに維持される。ブラインが担持されたリチウムイオンふるいは、洗浄段の一部として、ライン10を通って追加の撹拌リアクタ12に流入する。不用のブラインは、担持リチウムイオンふるいから分離され、ライン14を通って流れる。ブラインが担持されたリチウムイオンふるいは、ミキサー16によって懸濁液中に維持される。洗浄段では、担持リチウムイオンふるいを、ライン18を介して水と接触させて、リチウムイオンふるいからブラインを洗浄し、これは供給ブライン中に存在する不純物イオンとの、リチウム塩生成物のクロスコンタミネーションを低減すると考えられている。洗浄および担持されたリチウムイオンふるいは、溶離段の一部として、ライン20を通って第2の撹拌リアクタ22に流入する。洗浄水は、洗浄および担持されたリチウムイオンふるいから分離され、ライン24を通って流れ、第1の撹拌リアクタ4に戻る。洗浄および担持されたリチウムイオンふるいは、ミキサー26によって懸濁液中に維持される。溶離段において、洗浄および担持されたリチウムイオンふるいは、ライン28を介してHClと接触し、リチウムイオンふるいからリチウムイオンを溶離する。第2の撹拌リアクタ22内の酸の濃度は、ライン28を介してHClを添加することにより一定値に維持される。再生されたリチウムイオンふるいは、ライン30を通って、酸洗浄段の一部として別の撹拌リアクタ32に流入する。LiCl生成物としてのリチウムイオンは、再生されたリチウムイオンふるいから分離され、ライン34を通って流れる。再生されたリチウムイオンふるいは、ミキサー36によって懸濁液中に維持される。酸洗浄段において、ライン38を介して水を追加することにより、残留酸がリチウムイオンふるいから洗浄され、その結果、リチウムイオンふるいがリサイクルされ、回収されたリチウムが担持段にリサイクルされないときに、担持段において供給ブラインは酸性化されない。洗浄および再生されたリチウムイオンふるいは、ライン40を通って第1の撹拌リアクタ4に戻され、担持段で再び使用される。希酸洗浄液は、洗浄および再生されたリチウムイオンふるいから分離され、ライン44を通って流れ、溶離段で追加の濃酸とともに使用される。
【0036】
一実施形態において、いくつかの担持段を直列で利用し、向流で操作することができる。ブラインは、第1の担持段で最初に処理することができる。まだいくらかの残留リチウムを含んでいる第1の担持段からの処理されたブラインは、リチウムイオンふるいとの接触がブラインのリチウム含有量をさらに減少させる第2の担持段に送られてもよい。いくらかのリチウムを含むが、利用可能なさらなるリチウム容量を依然として有する、第2の担持段からのリチウムイオンふるいは、第1の担持段に送られてもよい。次いで、第1の担持段からの担持リチウムイオンふるいは、溶離段に送られてもよい。これにより、不用のブラインのリチウム含有量をさらに低減することができる。不用のブラインのリチウム含有量をさらに低減するために、このように追加の担持段を利用することができる。
【0037】
担持リチウムイオンふるいは、いくつかの溶離段で同様に処理でき、これにより、リチウムイオンふるいが向流で溶出液の流れに送られる。これにより、リチウムイオンふるいのリチウム含有量をさらに低減することができ、溶出液(すなわち、リチウム生成物)中のリチウム濃度を高めることができる。
【0038】
ブラインからリチウムイオンふるいへのリチウムイオンの吸着の交換反応は、式(1)に示されている。
LIS.H+Li+→LIS.Li+H+(1)
式中、LIS.Hは新しく再生された水素型のリチウムイオンふるいを表し、LIS.Liは担持リチウム型のリチウムイオンふるいを表す。
【0039】
反応が進むと、水素イオンがブラインに放出され、ブラインのpHが低下する。リチウムイオンふるいの活性成分は、例えば、メタチタン酸(MTA)などのチタンの酸化物であり得る。MTAは弱酸であるため、水素イオンに対し高い親和性を有する。その結果、水素イオンが利用可能な低pHでは、MTAは水素イオンをリチウムに容易に交換できない場合がある。リチウムイオンふるいはまた、少量のドープ剤をさらに含んでもよい。
【0040】
図2は、pHの関数としての金属イオン吸着量を示す。リチウムの吸着はpHが約6.5を下回ると大幅に減少し、pHが約4を下回るとリチウムはほとんど吸着されないことが分かる。リチウムの担持が進むと、ブラインのpHが低下する。pHが約4に低下すると、リチウムのさらなる吸着は起こり得ない。
【0041】
この現象は、従来の高分子弱酸カチオン交換樹脂で観察される現象に似ている。この問題に対処するための従来のアプローチは、イオン交換樹脂を水酸化ナトリウムで事前に中和して、交換体をナトリウム型に変換し、これにより、担持中に溶液のpHが一定に保たれる。ただし、ナトリウムイオンが大きすぎてリチウムイオンふるいに入り込むことができないため、このアプローチはリチウムイオンふるいでは機能しないだろう。
【0042】
一実施形態において、処理の前に、ブラインに、NaOH、または炭酸ナトリウムもしくは水酸化アンモニウムなどの別の塩基を添加することによって、ブラインをLISと接触させる前に、pHが調整され得る。このような前処理により初期pHが上昇し、その結果、最終的なpHがリチウムの吸着を妨げるほど低くならない。しかしながら、このアプローチの欠点は、
図2に示されるように、pHレベルが高くなると、リチウムイオンふるいによって吸着されるナトリウムイオンの量が増加することである。さらに、pHが8を超えると、水酸化マグネシウムが溶液から沈殿することがある。
【0043】
一実施形態において、担持リアクタ内のブライン/リチウムイオンふるいスラリーは、ナトリウムの吸着を最小限にしながらリチウムの吸着を最大にするようにpHを維持するために、NaOHなどのアルカリで中和されてもよい。pHは一般に、約5より大きく約9未満、好ましくは6より大きく8未満であり得る。リチウムイオンふるいがMTAである場合、pHは好ましくは6~7である。
【0044】
式(2)によって示されるように、リチウムは、典型的には、塩酸などの酸でLISから溶離され、同時にリチウムイオンふるいを再生し、リチウム生成物を生成する。リチウムイオンふるいは、この反応によって酸を効果的に中和する。
LIS.Li+H+→LIS.H+Li+(2)
【0045】
図3に示されるように、HClの濃度が増加するにつれて、リチウムイオンふるいから溶離されるリチウムの量が増加する。最適な溶離効率のために、酸濃度は少なくとも0.2M(
図3でmol・dm
-3として定義)にすることができる。好ましくは、酸濃度は約0.2Mである。
【0046】
しかしながら、
図3に示されるように、0.2Mを超える酸濃度では、リチウムイオンふるいから抽出されるチタンの量が増加し、それによりリチウムイオンふるいが劣化し、その有効寿命が短くなる。酸濃度が約0.4Mを超えると、過剰な量のチタンが抽出され、寿命が極端に短くなる。
【0047】
リチウムイオンふるいのこのような劣化を最小限に抑える1つの方法は、LISと酸との間の接触時間を最小限に抑えることである。一実施形態において、リチウムイオンふるいは粉末状であるため、イオン交換プロセスの反応速度は非常に速く、上記の式(2)の交換反応は、ほぼ1時間未満で完了する。一実施形態において、LISと溶離酸との間の接触時間は1時間未満である。したがって、リチウムは本質的に完全にリチウムイオンふるいから除去され、リチウムイオンふるいの劣化は最小限に抑えられる。
【0048】
さらに、リチウムイオンふるい粒子の粒子サイズは、本明細書に記載されるシステムの設計において役割を担う。
図4は、スラリー中での数時間の空気撹拌後に得られたメタチタン酸リチウムイオンふるいのサンプルの典型的な粒子サイズ分布を示す。有効粒子サイズ(d
10)は約0.5μmで、材料の90%(体積による)は0.4~40μmの範囲にある。有効サイズとは、重量または体積ベースで、粒子全体の10%がその直径よりも小さく、粒子全体の90%がその直径よりも大きい粒子の直径である。この材料の有効サイズは約0.5μmである。粗い材料は重力によって1時間未満で水スラリーから沈殿する可能性があるが、微細な粒子は1日後でも簡単に沈殿しない。特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、より大きなリチウムイオンふるい粒子は、合成プロセス中に焼結することにより生成される微粒子の凝集体であると考えられている。その結果、大きな粒子はプロセス液との混合中に機械的摩滅の影響を受けやすくなるため、時間の経過とともに微粒子の割合が増加する。結果として、重力沈殿によるプロセス液体からのリチウムイオンふるいの分離は理想的ではない。
【0049】
膜は廃水処理用のバイオリアクタにおいてますます使用されている。典型的な膜バイオリアクタ(MBR)では、中空繊維、管状または平面板の形態の、0.1μm未満の孔径の精密濾過膜または限外濾過膜が、廃水およびバイオソリッド(生物固体)の懸濁液に浸漬される。濾過/処理された透明な廃水は、真空によって膜を通過する。廃水/バイオソリッドのスラリーは、通常、エアスパージングによって撹拌される。空気撹拌は、バイオソリッドへの酸素の移動を促進し、膜表面にバイオソリッドが蓄積することによる膜ファウリングを防ぐ。
【0050】
膜バイオリアクタでは、懸濁固形物濃度は典型的には30g/L未満、より典型的には10~15g/Lである。結果として生じるより高い非ニュートン流体粘度により酸素移動が妨げられるため、より高い懸濁濃度は使用されない。さらに、より高い懸濁固形物濃度は、膜流速を低減し、および/または膜貫通圧を増加する。膜バイオリアクタにおける浸漬膜の典型的な流速は、単位時間当たり単位面積当たり10~30リットルである(この単位は通常「LMH」と省略される)。
【0051】
一実施形態において、浸漬限外濾過膜または精密濾過膜プロセスを、本発明では、リチウムイオンふるいを処理液体から分離する手段として使用することができる。膜の孔径は通常約1μm未満で、最小のリチウムイオンふるい粒子よりも小さいため、ほぼ100%の固形物分離が実現できる。本発明では、酸素移動は問題ではない。ただし、水中曝気(空気撹拌)は必要なスラリーの混合を提供し、上昇する気泡は膜の表面を洗い流して膜ファウリングを低減し、機械的混合と比較してLIS粒子の摩滅および剪断を低減する。
【0052】
ここで説明する実施形態は、MBRなどの典型的な浸漬膜用途からの大きな逸脱である。リチウムイオンふるい粒子は、かなり高い流速を達成しながら、はるかに高い懸濁固形物濃度の処理を可能にする。従来のMBR用途で得られる流速は、膜貫通圧が10~30KPaで、総懸濁固形物(TSS)レベルが30g/L未満の場合、通常30LMH未満である。対照的に、本発明では、20KPaの膜貫通圧で300LMHもの高い流速が、100g/Lを超えるTSSレベルで、リチウムイオンふるいを用いて得られた。
【0053】
本発明によれば、懸濁固形物濃度は、約50g/Lより高く、好ましくは100g/Lより高くてもよい。特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、所定のリチウムイオンふるい-液体接触時間を達成するために必要なリアクタ容量を減らすため、リアクタ内のより高い固形物濃度が有利であると考えられる。
【0054】
固定床イオン交換システムでは、酸性溶離液は、床を通過するときに酸濃度が低くなり、上記の式(2)によって提供される反応によって中和される。溶離効率を維持するため、リチウムイオンふるいと接触する酸濃度を0.2Mより高く維持するために、床に入る酸の濃度は、0.2Mよりかなり高くてもよい。その結果、固定床においてリチウムイオンふるいが再生される場合は、床の入口端に向かうリチウムイオンふるいは、より濃縮された酸によって極度に分解される。
【0055】
本発明によれば、リチウムイオンふるいは、リチウムイオンふるいが均一な濃度で酸と接触する反応容器中でスラリーとして再生され得る。酸濃度は、約0.2M~約0.4M、好ましくは約0.2Mの濃度に維持することができる。この濃度は、濃度を望ましい範囲(例えば0.2M)に維持するために、適切な手段によってリアクタ内の液体の酸濃度を連続的に測定し、濃縮酸を必要に応じて加えることによって維持され得る。溶離液の導電率は、主に酸濃度と塩濃度の影響をほとんど受けないため、導電率コントローラを使用できる。このような導電率コントローラはシンプルで信頼性が高く、リアルタイムで酸濃度を表示する。例えば、0.2M塩酸の比導電率は80mS/cmであるが、0.2M塩化リチウムの比導電率はわずか15mS/cmである。
【0056】
リチウムイオンふるいの酸溶離によって生成される最終的なリチウム塩生成物中の、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムなどの不純物を最小限に抑えるために、担持リチウムイオンふるいを水と混合し、次いで水を分離することによって、担持後、かつ酸溶離の前に、残留供給ブラインをリチウムイオンふるいから除去できる。別の実施形態において、残留供給ブラインは、担持リチウムイオンふるいを適切なフィルタによって直接濾過することにより除去することができる。本発明によれば、リチウムイオンふるいの好ましい粒径は、0.4~40μmの範囲である。この範囲の固体粒子は、孔径が1μm未満の膜の代わりに、目開きが10μmを超える織物ろ布などの濾過材を使用する従来の固液分離装置を使用して、濾過および脱水できる。したがって、供給ブラインの大部分は、担持リチウムイオンふるいから分離される。次いで、脱水されたリチウムイオンふるいをフィルタ上で直接洗浄して、水中でリチウムイオンふるいをリスラリーする必要なしに、リチウムイオンふるいから残留ブラインを除去することができる。例示的な種類のフィルタには、水平ベルト真空および圧力フィルタ、回転ドラム真空および回転ディスク真空および圧力フィルタ、圧力フィルタプレス、ならびに遠心分離機が含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
上記のように、酸によるリチウムイオンふるいからのリチウムの溶離は、酸性リチウム塩溶液を生じる。リチウムイオンふるいは、好ましくは、再生されたリチウムイオンふるいによって回収されたリチウムが担持リアクタに戻るのを最小限に抑えるために、酸性リチウム塩溶出液から分離される。担持リチウムイオンふるいから供給ブラインを分離するために使用されるのと同様のアプローチを利用することができる。したがって、再生されたリチウムイオンふるいを水と混合し、次いで水を分離することができる。あるいは、リチウムイオンふるいは、適切なフィルタ、好ましくは水洗機能を備えたフィルタによって濾過されてもよい。
【0058】
再生リアクタに移されるリチウムイオンふるいの含水量を最小限に抑えるように注意する必要がある。過剰量の水がリチウムイオンふるいを伴って再生リアクタに入ると、回収されたリチウム塩溶出液は希釈されすぎる。同様に、リチウムは、再生リアクタから取り出される担持リチウムイオンふるいに同伴する液体と共に回収する必要がある。
【0059】
以下の実施例1に示されるように、メタチタン酸リチウムイオンふるいの作業能力は、リチウムイオンふるいの単位グラム当たり約0.01gのリチウムであり得る。乾燥基準でのリチウムイオンふるいの流速は、100gリチウムイオンふるい/回収されたLiのグラムとなる。担持リアクタ内のスラリーが100g/Lの懸濁固形物濃度(つまり、重量で約90%の水分と約10%の固形物重量、100グラムのリチウムイオンふるいあたり1リットルの水)を含み、このスラリーが再生リアクタに直接移された場合、(1gのリチウムイオンふるい/0.01gのLi/100g/Lのリチウムイオンふるい)=回収されたリチウムの単位グラム当たり1.0リットルの水をもたらすであろう。濃酸中の水を無視すると、溶出液中のリチウム濃度は1g/lになる。
【0060】
再生リアクタ内の懸濁固形物濃度も100g/Lに維持され、この濃度で取り出される場合、再生リチウムイオンふるいに同伴するリチウムの量は(1リットル/gLi×1g/L Li)=1g Li/g Liが回収されるであろう。つまり、リチウムイオンふるいから溶離したリチウムは、すべてリチウムイオンふるいと共に取り出される。このリチウムイオンふるいが次いで担持リアクタに直接リサイクルされた場合、正味のリチウムは回収されない。
【0061】
再生リチウムイオンふるいスラリーは、洗浄リアクタで水と混合して、リチウムイオンふるいを担持リアクタにリサイクルする前にリチウム値を回復することができる。リチウムイオンふるいからリチウムの90%を分離するには、回収されたリチウムの単位グラムあたり9リットルの水が必要になる。次に、洗浄リアクタ内の希釈された液体は、例えば、重力または膜によって分離され得る。その場合、リチウムの濃度はわずか0.1g/lである。しかし、この濃度は低すぎて実用的ではない。したがって、リチウムイオンふるいは、含水量が90%未満になるまでかなり脱水する必要がある。
【0062】
例えば、担持リチウムイオンふるいスラリーが50%の水分に脱水された場合(つまり、1リットルの水/1000gリチウムイオンふるい)、リチウムイオンふるいは、(1リットルの水/1000gリチウムイオンふるい)/(0.01g Li/gリチウムイオンふるい)=回収されたLiの単位グラムあたり0.1リットルの水のみを運ぶ。濃酸中の水を無視すると、溶出液中のリチウム濃度は10g/リットルになる。
【0063】
さらに、再生リチウムイオンふるいは、再生リアクタから除去されるときに脱水する必要がある。そうでなければ、回収されたリチウムの大部分は、リチウムイオンふるいと共に担持リアクタに戻されてリサイクルされる。再生されたリチウムイオンふるいが高度に脱水される場合でも、リチウムイオンふるいに同伴する水分に失われたリチウムは問題となる可能性がある。例えば、再生されたリチウムイオンふるいが50重量%の含水量(つまり、リチウムイオンふるい1000gあたり1リットルの水)に脱水される場合、リチウムイオンふるいに同伴するリチウムの量は(1リットル/1000gリチウムイオンふるい)/(0.01g Li/gリチウムイオンふるい)×10g Li/1L)=1g Li/回収されたLiのグラムとなるであろう。つまり、リチウムイオンふるいから溶離したリチウムは、すべてリチウムイオンふるいとともに取り出される。このリチウムイオンふるいが次いで担持リアクタにリサイクルされた場合、正味のリチウムは回収されない。
【0064】
したがって、脱水されたリチウムイオンふるいに同伴する液体からリチウムが回収されるべきである。例えば、再生されたリチウムイオンふるいは水で洗浄されてもよい。その後、リチウムは洗浄水中に回収される。洗浄水の量は、ほとんどのリチウムを回収するのに十分でなければならないが、回収されたリチウム塩溶液を過度に希釈するほどであるべきではない。これを達成する1つの方法は、リチウムイオンふるいを水中でリスラリーし、その後、スラリーからリチウムイオンふるいを再濾過することである。リチウムイオンふるいからリチウムの90%を洗浄するには、リチウムイオンふるい内の同伴液体1mLあたり約9mLの水が必要であり、これらの条件下で、1g/Lのリチウムを含むリチウム塩溶液を回収できる。
【0065】
2つ以上の向流洗浄を利用することにより、洗浄水の量を減らすことができ、同時にリチウム濃度を高めることができる。したがって、第1の洗浄段から回収された脱水されたリチウムイオンふるいは、第2の洗浄段で再び水にリスラリーされ、その後、再び脱水される。第2段脱水装置から回収された洗浄水は、新しい水の代わりに第1の洗浄段で利用される。2つの向流洗浄段では、90%のリチウム回収に必要な水の量を、同伴液体1mLあたり約9mLの水から同伴液体1mLあたり約3mLの水に減らすことができ、回収されたリチウムの濃度を1g/Lから約3g/Lに増やすことができる。
【0066】
さらなる実施形態において、スラリーは、水平真空ベルトフィルタなどの装置によって脱水されてもよい。脱水されたリチウムイオンふるいケークは、フィルタ上で直接洗浄できる。フィルタ上で1つ以上の向流洗浄段を使用できる。別の選択肢として、遠心分離機を使用することができる。遠心分離機を使用する場合、固形物を水中でリスラリーし、次いで遠心分離機で脱水することができる。複数の洗浄段を使用する場合、第1の遠心分離機からの脱水された固形物を再び水でリスラリーし、次に第2の遠心分離機で脱水することができる。第2の遠心分離機からの濃縮液を、第1の遠心分離機に供給する固形物をスラリー化するための水として使用することができる。この方法で追加の遠心分離機を利用して、多段向流固体洗浄を効果的に行うことができる。
【0067】
リチウムイオンふるいの粒径が小さすぎると、このような脱水が困難になる。実際、粒子の大部分が直径10マイクロメートルより大きくても、直径10マイクロメートルよりはるかに小さい粒子が存在すると、脱水が困難になる。特に、イオンふるいの平均粒径が0.1μm以下の場合、実質的に脱水が不可能になる。
【0068】
本発明の別の実施形態において、1~10マイクロメートル未満の直径を有する微粒子を除去するために、乾燥リチウムイオンふるいは、空気分級機などの適切な装置によって分級され得、または湿式リチウムイオンふるいは、湿式ふるいによって分級され得る。そうすることによって、処理される液体からのリチウムイオンふるいの分離が促進される。細かい粒子を除去すると、濾過率が大幅に向上し、濾過媒体の目詰まりが回避され、より低い含水量のフィルタケークが生成される。この方法で微粒子を除去することにより、水平ベルト真空および圧力フィルタ、回転ドラム真空および回転ディスク真空および圧力フィルタ、圧力フィルタプレス、遠心分離機などの従来の固液分離装置をより効果的に使用することができる。
【0069】
回収されたリチウム塩生成物の純度を最大にするために、供給ブラインは、担持リチウムイオンふるいから効率的に分離する必要がある。例えば、電池グレードの炭酸リチウムの純度要件は非常に厳しい。担持リチウムイオンふるいと共に保持された残留供給ブラインは、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどの供給ブライン中の不純物で生成物を汚染する。ブライン中のこれらの不純物の濃度はリチウムよりもはるかに高いので、最小量のブラインキャリーオーバでも問題がある。実際、担持リチウムイオンふるいに対する同伴ブラインからの不純物の寄与は、ほとんどの場合、リチウムイオンふるいに実際に交換された不純物の量よりも潜在的に大きい。石灰/ソーダやイオン交換軟水化などの追加のプロセスを使用して、回収されたリチウム溶液を精製することができるが、これらの追加のプロセス段には、追加の資金および稼働費用が掛かる。しかし、担持リチウムイオンふるいを再生リアクタに送る前に効率的に脱水および洗浄することで、これらのコストのかかるプロセスの必要性を最小限に抑えることができる。上述のように、効率的な脱水は、リチウムイオンふるいに直径1~10マイクロメートル未満のかなりの量の粒子がない場合、従来の固液分離装置で達成できる。さらに、多段向流洗浄を採用することにより、洗浄水の必要量を減らすことができる。
【0070】
以下、本発明を例示的な実施形態を参照して説明するが、これらは例示としてのみ理解され、本出願の範囲を限定することを意図するものではない。
【0071】
(実施例)
本発明の一実施形態によるプロセスを実証するために、試験ユニットが構築された。試験ユニットの概略図を
図5に示す。
【0072】
試験ユニットは6つのリアクタ(R1~R6)から成り、各リアクタには空気撹拌ディフューザが装備され、6つのリアクタのうちの5つには浸漬膜モジュールが装備されていた。リチウムイオンふるいの酸再生に使用されるリアクタR4には、膜が装備されなかった。各リアクタの作業容量は、約1.1リットルの作業容量を有するリアクタR4を除いて、約5リットルであった。
【0073】
リチウムイオンふるいとしてチタン酸リチウム(LTO)を使用した。LTOは、水酸化リチウムを二酸化チタンと約2.2:1のモル比で、700℃の温度で4時間反応させることによって合成された。上述の
図4は、この例で使用されるLTOの粒径分布を提供する。合成から生成された最初のLTOは、0.2N HClで16時間LTOを酸洗いすることによってメタチタン酸(HTO)に変換され、その後、生成されたHTOを水で洗浄した。リアクタR1およびリアクタR2には、最初にLISの100g/L水性スラリーが投入され、残りのリアクタには、最初に500g/LのLISスラリーが投入された。リチウムイオンふるいは、蠕動ポンプによってスラリーとしてリアクタからリアクタに運ばれた。リチウムイオンふるいスラリーの流速は、固形物移動速度が乾燥重量ベースで約100g/時になるように調整された。
【0074】
膜モジュールは、Sumitomo Electric Corporation製のラボスケール浸漬型POREFLON(商標)ユニットで、それぞれ有効膜面積は0.1m2であった。蠕動ポンプを使用して真空により膜を通して液体を引き出した。真空を40kPa未満に維持した。
【0075】
リチウム含有ブラインは、アーカンソー州南部のSmackover層から得られたブラインから構成され、以下の表1に示すような組成であった。プロセスに従ってブラインからリチウムを抽出した後、ブラインを塩化リチウムで再強化し、プロセスにリサイクルした。その結果、供給ブラインのリチウム濃度は、受け取った当初のブラインよりも幾分高かった。ナトリウムおよびカリウムの濃度は、公表されているブライン分析に基づいて推定された。
【0076】
担持リアクタであるリアクタR1は、pH7.8が維持されるように1N NaOHの添加を自動的に制御するpH制御装置を備えていた。したがって、イオン交換反応によって生成された酸は絶えず中和された。供給ブラインをリアクタR1に導入し、HTOと接触させた。HTOは、500g/LのスラリーとしてリアクタR6からリアクタR1に供給された。リアクタR6からの濃縮スラリーと供給ブラインとの混合の結果として、リアクタR1におけるリチウムイオンふるいの固形物濃度は、約100g/Lであった。HTOがブラインからリチウムイオンを抽出すると、HTOは部分的にLTOに変換された。リチウム枯渇(すなわち、不用)ブラインがポンプによって膜を通して引き込まれた。
【0077】
担持リチウムイオンふるい(すなわち、LTO)は、ブラインスラリーとしてリアクタR1から取り出され、ブライン洗浄リアクタであるリアクタR2に送られた。残留ブラインがLTOから洗い流されるように、水がリアクタR2に供給された。洗浄水は、別の浸漬膜モジュールを通してリアクタR2から取り出された。
【0078】
担持/洗浄されたLISは、水スラリーとしてリアクタR2から取り出され、濃縮器リアクタであるリアクタR3に送られた。リアクタR3から別の浸漬膜モジュールを通して水を取り出し、リアクタR3の固形物濃度を約500g/Lに増加させた。
【0079】
約500g/Lの固形物濃度で担持/洗浄されたLISの濃縮されたスラリーをリアクタR3から取り出し、再生リアクタであるリアクタR4に送った。リアクタR4のリチウムイオンふるいを、約0.2Nの濃度で塩酸と接触させた。リアクタR4のリチウムイオンふるい固形物濃度は、約500g/Lであった。150mS/cmの導電率設定点に5N HClを添加することにより、導電率コントローラによって酸濃度を監視し、一定レベルに維持した。リチウムイオンふるいを酸と接触させると、LTO型からHTO型に変換され、塩化リチウムと共に約0.2N塩酸のリチウムイオンふるいスラリーが生じる。リアクタR4は膜を備えておらず、HCl/塩化リチウムのリチウムイオンふるいスラリーはリアクタR5に単に溢れるだけであった。
【0080】
リアクタR5は、2つの向流式酸洗浄リアクタの最初のものであった。HCl/塩化リチウムの大部分はリアクタR5のリチウムイオンふるいから洗い流され、残留HCl/塩化リチウムの大部分はリアクタR6のリチウムイオンふるいから洗い流された。約500g/Lの固形物濃度である、リアクタR5内のリチウムイオンふるいを、リアクタR6からの洗浄水と接触させた。酸洗浄水は、別の浸漬膜モジュールを通してリアクタR5から取り出された。リアクタR5から取り出された酸洗浄水は、プロセスから回収された塩化リチウム生成物を構成した。約500g/Lの濃度のリチウムイオンふるいのスラリーがリアクタR5から取り出され、リアクタR6に送られた。
【0081】
リアクタR6に加えられた新しい水は、リチウムイオンふるいから残留HCl/塩化リチウムのほとんどを洗浄した。洗浄水は、別の浸漬膜モジュールを通してリアクタR6から取り出され、リアクタR5に送られた。それにより、リアクタR6の洗浄水中の塩化リチウムの濃度は、リアクタR4のリチウム濃度の10%未満に減少した。リチウムイオンふるい/洗浄水スラリーをリアクタR6から取り出し、リアクタR1に戻し、そこで再利用して供給ブラインからリチウムを抽出した。
【0082】
連続12時間の試験運転が行われた。不用のブラインと生成物の一定分量をサンプリングし、1時間ごとに分析した。運転中の不用ブラインと生成物の濃度を示すグラフを
図6に示す。表1にまとめた結果は、10時間の動作後に採取した1時間の複合サンプルからのものである。リチウム濃度は244mg/Lから61mg/Lに減少し、75%の回収率となった。担持リアクタ内の液体滞留時間は約1時間であった。
【0083】
リチウム生成物には、4,300mg/Lのリチウム濃度が含まれていた。ブラインから実際に抽出されたリチウム(957mg/h)よりも多くのリチウム(2,322mg/h)が生成物から除去された。特定の理論に拘束されるつもりはないが、差(1,365mg/h)は、HClでの最初の酸洗い中にLTOから完全に除去されなかった、リチウムイオンふるい上の残留リチウムであると考えられる。ブラインから実際に抽出されたリチウムに基づいて、リチウムイオンふるい容量は9.6mg/gであった。ストリップリアクタでの液体滞留時間は2.2時間であった。担持されて回収されたリチウムに基づくと、リチウム濃度係数は約10倍であった。
【0084】
供給ブラインには22,000mg/Lのカルシウム濃度が含まれていたが、生成物には1,400mg/Lのカルシウム濃度しか含まれていなかった。供給物におけるリチウムに対するカルシウムの比は90であった。生成物におけるその比率は0.33であった。しかし、実際にはブラインから抽出されたのは生成物中のリチウムの約半分だけであった。ブラインから抽出された生成物中のリチウムのみを考慮すると、生成物中のLiに対するCaの比率は0.62であり、これは濃縮係数90/0.62=145を表す。
【0085】
供給ブラインには43,000mg/Lの推定ナトリウム濃度が含まれていたが、生成物にはナトリウム濃度が9,770mg/Lしか含まれていなかった。供給物中のリチウムに対するナトリウムの比は176であった。生成物中のその比率は2.3であった。ブラインから抽出された生成物中のリチウムのみを考慮すると、生成物中のLiに対するNaの比率は4.3であり、これは176/4.3=41の濃縮係数を表す。
【0086】
供給ブラインには、2,170mg/Lのマグネシウム濃度が含まれていたが、生成物には76mg/Lのマグネシウム濃度しか含まれていなかった。供給物中のリチウムに対するマグネシウムの比率は8.9であった。生成物中のその比率は0.018であった。ブラインから抽出された生成物中のリチウムのみを考慮すると、生成物中のLiに対するMgの比率は0.034であり、これは8.9/.034=262の濃縮係数を表す。
【0087】
したがって、本明細書に記載されるシステムおよび方法は、高濃度のカルシウム、ナトリウム、およびマグネシウムを含むブラインからリチウムを選択的に回収する能力を有する。
【0088】
この例では、ブライン洗浄リアクタが1つだけ使用されたため、一部のブラインは、担持リチウムイオンふるいの再生リアクタに移動し、したがって、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムの一部が担持リチウムイオンふるいの再生リアクタに運ばれた。特定の理論に拘束されるつもりはないが、第2のブライン洗浄リアクタを含めることにより結果が改善され得ると考えられている。さらに、上記のように、添加pHを6~7に下げると、リチウム容量を大幅に低下させることなく、リチウムイオンふるいに担持されるナトリウムの量を減らすことができる。
【0089】
「垂直」、「水平」などの用語への本明細書での言及は、参照枠を確立するために、限定ではなく例として行われる。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明を説明するために、他の様々な参照枠を使用できることが理解される。また、本発明の特徴は、図面において必ずしも一定の縮尺で示されているわけではないことも理解される。さらに、「構成される(composed of)」、「含む(includes)」、「有している(having)」、「有する(has)」、「と共に(with)」、またはそれらの変形が、詳細な説明または特許請求の範囲で使用され、そのような用語は「含む(comprising)」という用語と同様の方法で包括的かつ制限のないことが意図される。
【0090】
「約」、「およそ」、および「実質的に」などの、近似の言語によって変更された用語への本明細書での言及は、指定された正確な値に限定されない。近似の言語は、値の測定に使用される機器の精度に対応する場合があり、特に機器の精度に依存しない限り、指定された値の+/-10%を示す場合がある。
【0091】
別の機能に「接続」または「結合」された機能は、他の機能に直接接続または結合されてもよく、代わりに、1つまたは複数の介在機能が存在してもよい。介在する機能がない場合、機能は別の機能に「直接接続」または「直接結合」され得る。機能は、少なくとも1つの介在機能が存在する場合、別の機能に「間接的に接続」または「間接的に結合」され得る。別の機能に「接触する」または「接触する」機能は、他の機能に直接または直接接触していてもよく、代わりに、1つまたは複数の介在機能が存在してもよい。機能は、介在する機能がない場合、別の機能と「直接接する(directly on)」または「直接接触(direct contact)」していてもよい。機能は、少なくとも1つの介在機能が存在する場合、別の機能と「間接的に接する(indirectly on)」または「間接接触(indirect contact)」していてもよい。
【0092】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことを意図している。本明細書で使用される場合、「備える(comprises)」および/または「備える(comprising)」という用語は、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の機能、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しないことがさらに理解されよう。
【0093】
本発明を様々な実施形態の説明によって例示し、これらの実施形態をかなり詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に制限またはいずれにしろ限定することは出願人の意図ではない。追加の利点および修正は、当業者には容易に明らかになるであろう。したがって、より広い態様における本発明は、特定の詳細、代表的な装置および方法、ならびに図示および説明される例示的な例に限定されない。当業者が特許請求された発明を製造および使用することを完全に可能にするために、出願人は、様々な詳細な実施形態の利点および欠点の両方に関する情報を提供した。当業者は、いくつかの用途において、上で詳述された特定の実施形態の不利益が、完全に回避され得るか、または特許請求される本発明によって提供される全体的な利点によって補われ得ることを理解する。したがって、出願人の一般的な発明概念の精神または範囲から逸脱することなく、上記の詳細な教示からの逸脱が行われる可能性がある。