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特許7232843生体試料中の分析物および/またはタンパク質を測定するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】生体試料中の分析物および/またはタンパク質を測定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/52 20060101AFI20230224BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230224BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20230224BHJP
   G01N 33/70 20060101ALI20230224BHJP
   G01N 33/62 20060101ALI20230224BHJP
   G01N 33/98 20060101ALI20230224BHJP
   G01N 33/92 20060101ALI20230224BHJP
   G01N 33/84 20060101ALI20230224BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20230224BHJP
   G01N 21/82 20060101ALI20230224BHJP
   C12Q 1/26 20060101ALI20230224BHJP
   C12Q 1/42 20060101ALI20230224BHJP
   C12Q 1/46 20060101ALI20230224BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALI20230224BHJP
   C12Q 1/54 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
G01N33/52 A
G01N33/68
G01N33/483 C
G01N33/70
G01N33/62 A
G01N33/98
G01N33/92 A
G01N33/84
G01N21/78 Z
G01N21/82
C12Q1/26
C12Q1/42
C12Q1/46
C12Q1/48 Z
C12Q1/54
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020557144
(86)(22)【出願日】2019-01-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 US2019012890
(87)【国際公開番号】W WO2019139980
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2022-01-07
(31)【優先権主張番号】62/615,242
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】300004500
【氏名又は名称】アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IDEXX Laboratories, Inc.
【住所又は居所原語表記】One IDEXX Drive, Westbrook, Maine 04092, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】ドハティ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】カースペル,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ファラス,ジョシ
(72)【発明者】
【氏名】イエラミッリ,マーシー ヴイエスエヌ
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-504731(JP,A)
【文献】特開2016-076914(JP,A)
【文献】米国特許第05527708(US,A)
【文献】米国特許第05194390(US,A)
【文献】特開昭62-166899(JP,A)
【文献】特開2009-186479(JP,A)
【文献】特開昭61-122568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C12Q 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の分析物または総タンパク質の濃度を測定する方法であって、
試料と比色試薬とを接触させて、処理された試料を得ること;
処理された試料に、開口部を含むカメラの焦点を合わせること;
試料から所定の量の光を集めるのに十分な期間開口部を開くこと;
期間を測定すること;および
期間と試料中の分析物または総タンパク質の濃度とを相関させること
を含む方法。
【請求項2】
比色試薬およびタンパク質沈殿試薬と接触させて、タンパク質沈殿物を含む処理された試料を得ること
らびに
処理された試料の画像をカメラによって生成し;
画像におけるタンパク質沈殿物に相関するピクセルの数を測定し;
ピクセルの数と検量線とを相関させて、試料中の総タンパク質の濃度を得ることによって、総タンパク質の濃度を判定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分析物は、カルシウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオン、ナトリウムイオン、グルコース、ラクテート、クレアチニン、クレアチン、尿素、尿酸、エタノール、アルブミン、アルカリホスファターゼ、コレステロール、ピルベート、β-ヒドロキシブチレート、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
比色試薬は2,4,6-トリニトロフェノールおよび塩基である;または比色試薬は、メチル3,5-ジニトロベンゾエート、3,5-ジニトロ安息香酸、もしくは3,5-ジニトロベンゾイルクロリド、および塩基もしくは塩基性バッファーである;または比色試薬は3,5-ジニトロベンゾイルクロリドを含む;または比色試薬は、第2銅イオン、ヒドロペルオキシド、および酸化色素を含む試薬システムであり、任意にここで
比色試薬は、グルコースオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、アルカリ性銅酒石酸、アルカリ性フェリシアン化物、およびホースラディッシュペルオキシダーゼのうちの1つまたは複数である、または
比色試薬はブロモクレゾールグリーンである、または
比色試薬は、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート(BCIP)およ
びニトロブルーテトラゾリウム(NBT)を含む試薬システムである、または
比色試薬は、ピロカテコールバイオレット、塩化ベンゼトニウム、およびピロガロール
レッドを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
試料は尿試料である、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項6】
処理された試料から集められた所定の量の光を使用して、処理された試料の画像を生成
することをさらに含む、請求項3からのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
処理された試料は、処理された試料を含むスライドから撮像され、任意に
画像は白黒画像である、請求項6に記載の方法
【請求項8】
処理された試料の画像をユーザインタフェースに表示することをさらに含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
所定の量の光は、既知の濃度の分析物または総タンパク質を有する標準試料を使用して
、1つ、2つ、または3つの経験的実験を独立して実施することによって得られ得る、請
求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項10】
所定の量の光は一定である、または
所定の量の光はカメラのユーザによって選択され、任意に
カメラはフィルタを含み、さらに任意に
フィルタは、比色試薬と試料との間の反応により生じる色の波長域に対応する波長を通過させるように構成されている、請求項1から9のいずれかに記載の方法
【請求項11】
カメラは自動露出機能を含み、開口部が開いている期間を測定することは、自動露出機
能を使用して期間を判定することを含む、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
カメラはセンサを含み、試料から所定の量の光を集めるのに十分な期間開口部を開くこ
とは、
開口部を開くこと;
カメラによって集められた光の量をセンサによって検出すること;
カメラによって集められた光の量が所定の量の光と実質的に等価であるかどうかを判定
すること;および
所定の量の光がカメラによって集められていることを判定した後に開口部を閉じること
を含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
カメラはセンサを含み、試料から所定の量の光を集めるのに十分な期間開口部を開くこ
とは、
ある期間開口部を開いて、処理された試料からある量の光を集めること;
開口部を閉じること;
処理された試料から集められた光の量をセンサによって測定すること;
処理された試料から集められた光の量が所定の量の光と実質的に等価であるかどうかを
判定すること;
試料から受け取られた光の量が所定の量の光と実質的に等価でない場合には、第2の期
間開口部を開くことであって、前記第2の期間は第1の期間とは異なること;および
開口部が開いている第2の期間と所定の量の光とを相関させて、試料中の分析物または
総タンパク質の濃度を得ること
を含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
分析物はクレアチニンであり、および任意に
少なくとも試料中のクレアチニンの濃度および試料中の総タンパク質の濃度に基づいて、試料のタンパク質:クレアチニン比を判定することをさらに含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法
【請求項15】
少なくとも試料中の分析物、総タンパク質、またはその組み合わせの濃度に基づいて、
健康判定を行うことをさらに含む、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月9日に出願した米国仮特許出願第62/615,242号の優先権の恩典を主張するものであり、それは参照によりその全体として本明細書によって組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、生体試料中の分析物および/または総タンパク質を測定するための方法に関する。より特に、本開示は、1種または複数種の比色試薬を単独でまたはタンパク質沈殿試薬との組み合わせで使用して、分析物および/または総タンパク質を測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
いくつかの健康状態をスクリーニングするために、赤血球もしくは白血球、カルシウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオン、ナトリウムイオン、グルコース、ラクテート、クレアチニン、クレアチン、尿素、尿酸、エタノール、アルブミン、アルカリホスファターゼ、コレステロール、ピルベート、β-ヒドロキシブチレート、アラニンアミノトランスフェラーゼ(aminotrasferase)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ(cetylcholinesterase)など、1種または複数種の分析物の量について生体試料を分析することがしばしば必要である。特定の分析物を測定することに加えて、試料に存在する総タンパク質の量を測定することも有用であり得る。例えば、総タンパク質を測定することは、腎疾患または急性腎臓傷害の診断において有用であり得る。生体試料中の特定の分析物および総タンパク質の濃度についての分析は、典型的には、分析のために試料を実験室に送付することを要する。これは、試料の取り扱いの増加、実験室結果の長い所要時間、特別な輸送要件、および保管時間の増加をもたらし、これは今度は、試料中の細菌混入および/または細菌異常増殖、主要タンパク質のレベルの変化、形態(cast)および細胞の分解、結晶の崩壊または形成、試料のpHの変化、試料の匂いの増加、ならびに試料に対する他の悪影響につながり得る。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明者らは、効率的で、正確で、かつ対費用効果の高い、生体試料および他の試料中の分析物濃度、総タンパク質含有量、またはその組み合わせを測定し得るポイントオブケアアッセイの必要性を明らかにした。
【0005】
本開示の1つの態様は、試料中の分析物または総タンパク質の濃度を測定する方法を提供する。方法は、試料と比色試薬とを接触させて、処理された試料を得ることを含む。方法は、処理された試料に、開口部を含むカメラの焦点を合わせること、試料から所定の量の光を集めるのに十分な期間開口部を開くこと、および開口部が開いている期間を測定することをさらに含む。次いで、開口部が開いている期間を、試料中の分析物または総タンパク質の濃度と相関させる。ある特定の実施形態において、この方法は、分析物の濃度を測定する。ある特定の実施形態において、この方法は、総タンパク質の濃度を測定する。
【0006】
本開示の、試料中の分析物または総タンパク質の濃度を測定する方法についての別の態様において、方法は、試料と比色試薬とを接触させて、処理された試料を得ることを含む。方法は、処理された試料に、開口部を含むカメラの焦点を合わせること;所定の期間開口部を開くことであって、前記開口部のサイズは試料から所定の量の光を集めるのに十分であること;および開口部のサイズを測定することをさらに含む。次いで、開口部のサイズを、試料中の分析物または総タンパク質の濃度と相関させる。ある特定の実施形態において、この方法は、分析物の濃度を測定する。ある特定の実施形態において、この方法は、総タンパク質の濃度を測定する。
【0007】
本開示の1つの態様は、試料中の総タンパク質の濃度を測定する方法を提供する。方法は、試料とタンパク質沈殿試薬とを接触させて、タンパク質沈殿物を含む処理された試料を得ることを含む。方法は、処理された試料の画像をカメラによって生成すること、および画像におけるタンパク質沈殿物に相関するピクセルの数を測定することをさらに含む。次いで、ピクセルの数を検量線に相関させて、試料中の総タンパク質の濃度を得る。
【0008】
本開示の別の態様は、試料中の分析物および総タンパク質の濃度を測定する方法を提供する。方法は、試料と比色試薬およびタンパク質沈殿試薬とを接触させて、タンパク質沈殿物を含む処理された試料を得ることを含む。方法は、処理された試料に、開口部を含むカメラの焦点を合わせ;処理された試料から所定の量の光を集めるのに十分な期間開口部を開き;開口部が開いている期間を測定し;開口部が開いている期間と試料中の分析物の濃度とを相関させることによって、処理された試料中の分析物の濃度を判定することをさらに含む。方法は、処理された試料の画像をカメラによって生成し;画像におけるタンパク質沈殿物に相関するピクセルの数を測定し;ピクセルの数と検量線とを相関させて、試料中の総タンパク質の濃度を得ることによって、総タンパク質の濃度を判定することをさらに含む。
【0009】
本開示の、試料中の分析物および総タンパク質の濃度を測定する方法についての別の態様において、方法は、試料と比色試薬およびタンパク質沈殿試薬とを接触させて、タンパク質沈殿物を含む処理された試料を得ることを含む。方法は、処理された試料に、開口部を含むカメラの焦点を合わせ;所定の期間開口部を開き、前記開口部のサイズは試料から所定の量の光を集めるのに十分であり;開口部のサイズを測定し;開口部のサイズと試料中の分析物の濃度とを相関させることによって、処理された試料中の分析物の濃度を判定することをさらに含む。方法は、処理された試料の画像をカメラによって生成し;画像におけるタンパク質沈殿物に相関するピクセルの数を測定し;ピクセルの数と検量線とを相関させて、試料中の総タンパク質の濃度を得ることによって、総タンパク質の濃度を判定することをさらに含む。
【0010】
本開示の、試料中の分析物および総タンパク質の濃度を測定する方法についての別の態様において、方法は、試料と比色試薬およびタンパク質沈殿試薬とを接触させて、タンパク質沈殿物を含む処理された試料を得ることを含む。方法は、処理された試料にカメラの焦点を合わせ;開口部を開いて試料からある量の光を集め;集められた量の光の強度を測定し;集められた光の強度と試料中の分析物の濃度とを相関させることによって、処理された試料中の分析物の濃度を判定することをさらに含む。方法は、処理された試料の画像をカメラによって生成し;画像におけるタンパク質沈殿物に相関するピクセルの数を測定し;ピクセルの数と検量線とを相関させて、試料中の総タンパク質の濃度を得ることによって、総タンパク質の濃度を判定することをさらに含む。
【0011】
本開示の方法についてのある特定の実施形態において、分析物は、カルシウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオン、ナトリウムイオン、グルコース、ラクテート、クレアチニン、クレアチン、尿素、尿酸、エタノール、アルブミン、アルカリホスファターゼ、コレステロール、ピルベート、β-ヒドロキシブチレート、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼから選択され得る。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、分析物は、クレアチニン、グルコース、アルブミン、またはアルカリホスファターゼであり得る。
【0012】
本開示の方法についてのある特定の実施形態において、比色試薬は、2,4,6-トリニトロフェノールおよび塩基であり得る。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、比色試薬は、メチル3,5-ジニトロベンゾエート、3,5-ジニトロ安息香酸、または3,5-ジニトロベンゾイルクロリド、および塩基または塩基性バッファーである。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、比色試薬は、第2銅イオン、ヒドロペルオキシド、および酸化色素を含む試薬システムである。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、比色試薬は3,5-ジニトロベンゾイルクロリドを含む。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、比色試薬は、グルコースオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、アルカリ性銅酒石酸(tartarate)、アルカリ性フェリシアン化物、およびホースラディッシュペルオキシダーゼのうちの1つまたは複数であり得る。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、比色試薬はブロモクレゾールグリーンであり得る。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、比色試薬は、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート(BCIP)およびニトロブルーテトラゾリウム(NBT)を含む試薬システムであり得る。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、比色試薬は、ピロカテコールバイオレット、塩化ベンゼトニウム、またはピロガロールレッドを含み得る。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、比色試薬はピロカテコールバイオレットを含み得る。
【0013】
本開示の方法についてのある特定の実施形態において、比色試薬は、イムノアッセイに適した1種または複数種の試薬を含み得る。例えば、比色試薬は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または酵素増幅イムノアッセイ技法(EIMT)に適した、1種または複数種の分析物特異的抗体および/または酵素を含み得る。
【0014】
本開示の方法についてのある特定の実施形態において、タンパク質沈殿試薬は、1種もしくは複数種の水混和性溶媒(アルコール、例えばイソプロパノール、メタノール、またはエタノール、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、またはシクロヘキサノン、テトラヒドロフランなど)であり得る;またはタンパク質沈殿試薬は、塩(硫酸アンモニウム、または多価金属イオンを含む塩など)である;またはタンパク質沈殿試薬は、トリクロロ酢酸、もしくはトリクロロ酢酸およびアセトンである;またはタンパク質沈殿試薬は、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコールおよびデキストランなど、非イオン性親水性ポリマー)である。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、タンパク質沈殿試薬は水性界面活性剤であり得る。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、水性界面活性剤は、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムであり得る。
【0015】
本開示の方法についてのある特定の実施形態において、試料は尿試料であり得る。
【0016】
ある特定の実施形態において、本開示の方法は、処理された試料から集められた所定の量の光を使用して、処理された試料の画像を生成することをさらに含み得る。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、処理された試料は、処理された試料を含むスライドから撮像され得る。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、画像は白黒画像であり得る。
【0017】
ある特定の実施形態において、本開示の方法は、処理された試料の画像をユーザインタフェースに表示することをさらに含み得る。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、所定の量の光は、処理された試料の画像からタンパク質沈殿物の量を測定するのに十分であり得る。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、所定の量の光は一定であり得る。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、所定の量の光は、カメラのユーザによって選択され得る。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、カメラはフィルタを含み得る。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、フィルタは、比色試薬と試料との間の反応により生じる色の波長域に対応する波長を通過させるように構成され得る。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、カメラは自動露出機能を含み得、開口部が開いている期間を測定することは、自動露出機能を使用して期間を判定することを含む。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、判定は、開口部サイズおよび所定の量の光のうちの少なくとも一方に基づいてなされ得る。
【0018】
本開示の方法についてのある特定の実施形態において、カメラはセンサを含み得、試料から所定の量の光を集めるのに十分な期間開口部を開くことは、開口部を開くこと;カメラによって集められた光の量をセンサによって検出すること;カメラによって集められた光の量が所定の量の光と実質的に等価であるかどうかを判定すること;および、所定の量の光がカメラによって集められていることを判定した後に開口部を閉じることを含む。
【0019】
本開示の方法についてのある特定の実施形態において、カメラはセンサを含み得、試料から所定の量の光を集めるのに十分な期間開口部を開くことは、ある期間開口部を開いて、処理された試料からある量の光を集めること;開口部を閉じること;処理された試料から集められた光の量をセンサによって測定すること;処理された試料から集められた光の量が所定の量の光と実質的に等価であるかどうかを判定すること;試料から受け取られた光の量が所定の量の光と実質的に等価でない場合には、第2の期間開口部を開くことであって、前記第2の期間は第1の期間とは異なること;および、開口部が開いている第2の期間と所定の量の光とを相関させて、試料中の分析物または総タンパク質の濃度を得ることを含む。
【0020】
本開示の方法についてのある特定の実施形態において、カメラは自動露出機能を含み得、開口部のサイズを測定することは、自動露出機能を使用して開口部のサイズを判定することを含む。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、判定は、期間および所定の量の光のうちの少なくとも一方に基づいてなされ得る。
【0021】
本開示の方法についてのある特定の実施形態において、カメラはセンサを含み得、ある期間開口部を開くことは、開口部を開いて試料からある量の光を集めることであって、前記開口部は第1の開口部サイズを含むこと;開口部を閉じること;処理された試料から集められた光の量をセンサによって測定すること;試料から集められた光の量が所定の量の光と実質的に等価であるかどうかを判定すること;試料から受け取られた光の量が所定の量の光と実質的に等価でない場合には、第2の期間開口部を開くことであって、前記開口部は第2の開口部サイズを有し、前記第2の開口部サイズは第1の開口部サイズとは異なること;および、開口部の第2の開口部サイズと所定の量の光とを相関させて、試料中の分析物または総タンパク質の濃度を得ることを含む。ある特定の実施形態において、本開示の方法は、少なくとも試料中のクレアチニンの濃度および試料中の総タンパク質の濃度に基づいて、試料のタンパク質:クレアチニン比を判定することをさらに含み得る。
【0022】
ある特定の実施形態において、本開示の方法は、少なくとも試料中の分析物および/または総タンパク質の濃度に基づいて、健康判定を行うことをさらに含み得る。
【0023】
前述の概要は、単なる例示的なものであり、決して限定的であることを意図されるわけではない。上で記載される例示的な態様、実施形態、および特質に加えて、図および以下の詳細な説明を参照することにより、さらなる態様、実施形態、および特質が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示の1つの実施形態に従った方法のフローチャートである。
図2】本開示の一実施形態に従った、試料から光を集めるための開口部を開いたカメラの部分的概略図である。
図3A】本開示の方法に従って調製された6つの試料アリコートの写真である。試料調製に用いられた比色技法が、試料アリコートの上に記されている。図において、Pro=総タンパク質、およびCre=クレアチニン。
図3B】本開示の方法に従った、カメラによって生成された一連の実験画像である。各画像に対応するシャッター速度が、画像の上に表示されている。
図4A】本開示の方法に従った一連の調製された試料の写真を示している。
図4B】実験試料中のクレアチニンの量と、本開示の方法に従って測定されたシャッター速度との間の関係性を示した相関曲線である。
図5】本開示の一実施形態に従った方法のフローチャートである。
図6A】本開示の方法に従った、カメラによって生成された一連の実験画像であり、調製された試料中の沈殿したタンパク質の量を示している。
図6B】実験試料中のタンパク質の量と、本開示の方法に従って測定されたタンパク質沈殿物との間の関係性を示した相関曲線である。
図7】本開示の一実施形態に従った、カメラおよび調製された試料を示した略図である。
図8A】実験試料中のグルコースの量と、試料から所定の量の光を集めるために要される期間との間の関係性を示した相関曲線である。
図8B】実験試料中のアルブミンの量と、試料から所定の量の光を集めるために要される期間との間の関係性を示した相関曲線である。
図8C】実験試料中のアルカリホスファターゼの量と、試料から所定の量の光を集めるために要される期間との間の関係性を示した相関曲線である。
図9】本開示の方法に従って処理された、種々のクレアチニン濃度を有する試料の画像を提供している。
図10】実験試料中のタンパク質の量と、本開示の方法に従って測定されたシャッター速度との間の関係性を示したグラフである。
図11A図11Aは、本開示の一実施形態に従って、多変数二次方程式を使用して試料中のタンパク質の量を判定する略図である。図11Bは、試料中のタンパク質の量と、複数の機器でのスライディングウィンドウ標準偏差画像特質との間の関係性についてのプロットである。図11Cは、試料中のタンパク質の量と、複数の機器での平均輪郭面積画像特質との間の関係性についてのプロットである。図11Dは、単一の機器で2つの画像特質を使用した、本開示の一実施形態に従った多変数二次回帰についての直線性プロットである。
図11B】同上。
図11C】同上。
図11D】同上。
図12A図12Aは、本開示の一実施形態に従って、人工ニューラルネットワークを使用して試料中のタンパク質の量を判定する略図である。図12Bは、人工ニューラルネットワークの構造の略図である。xは画像特質1であり、xは画像特質2であり、xは画像特質nである。図12Cは、試料中のタンパク質の量と、複数の機器でのヒストグラムスライディングウィンドウ標準偏差画像特質との間の関係性についてのプロットである。図12Dは、複数の機器で1つの画像特質を使用した、本開示の一実施形態に従ったニューラルネットワークのトレーニングについての直線性プロットである。
図12B】同上。
図12C】同上。
図12D】同上。
【発明を実施するための形態】
【0025】
概して、開示される材料、方法、および装置は、生体試料中の分析物および/または総タンパク質の濃度を測定することに改善を提供する。具体的には、本開示のある特定の実施形態において、多重試験法、大掛かりな試料取り扱い、輸送、および保管を排除する、単一の試料、単一の画像、および/または単一のアッセイを使用して、生体試料中の分析物および/または総タンパク質を測定する。測定は、臨床において適時に実施され得、それは、伝統的な方法と比較して、試料によりわずかな変化をもたらし得る。例えば、伝統的な方法に従って分析される試料と比較して、本開示の方法に従って分析される試料は、より少ない細菌混入および/または細菌異常増殖、主要タンパク質のレベルの最小限の変化または変化なし、円柱および細胞のより少ない分解、結晶のより少ない崩壊または形成、ならびにpH、外観、および/または匂いの最小限の変化または変化なしを有し得る。
【0026】
本明細書において使用される「生体試料」という用語は、概して、全血、血漿、血清、脳脊髄液などの髄液、リンパ液、腹部体液(腹水)、皮膚の外部面、気道、腸管、および泌尿生殖路、涙液、唾液、尿、血液細胞、腫瘍、臓器、組織、ならびにインビトロ細胞培養構成成分の試料を含むがそれらに限定されない、ヒトまたは動物由来の組織または体液の試料を指す。
【0027】
本明細書において使用するとき、「総タンパク質」という用語は、任意のサイズのタンパク質フラグメントを含めた、試料中の全タンパク質を指す。
【0028】
本開示の方法についての様々な態様において、試料容量は、約10μL~約500μL;例えば約10μL~約300μL、または約10μL~約200μL、または約10μL~約100μL、または約50μL~約300μL、または約50μL~約200μL、または約100μL~約500μL、または約100μL~約300μL、または約100μL~約200μLである。一部の態様において、本開示の方法は、分析物、総タンパク質、およびその組み合わせを測定するために、伝統的な方法よりも少ない試料容量を要する。
【0029】
本開示の方法は、生体試料と、分析物を判定するための比色試薬、および/または総タンパク質を判定するための比色試薬もしくはタンパク質沈殿試薬とを接触させることによって、処理された試料を創出することを含む。試料中の分析物および/または総タンパク質の濃度に応じて、比色試薬と分析物および/または総タンパク質との間の反応は、溶液を様々な程度に変色させ得る。カメラを使用して、カメラの開口部を通して試料からある量の光を集めることによって、処理された試料の画像を撮影し得、集められる光の量は試料の色を指し示す。
【0030】
ある特定の実施形態において、カメラ(または、カメラと結び付けられたセンサ)は、試料の色にかかわらず、所定の量の光を集める。集められる所定の光の量を、例えば1つ、2つ、3つ、またはそれを上回る数の経験的実験によって実験的に判定して、試料中の分析物または総タンパク質の1つまたは複数の濃度に相関する、所定の量の光に対する1つまたは複数の値を得ることができる。所定の量の光は、カメラが許容し得る最大量の光よりも多くてはならず、最小量の光よりも少なくてはならない。
【0031】
カメラによって集められる光の量は、露出時間、開口部サイズ、およびカメラの他の特質に依存し得る。例えば、CMOS光センサおよび10×の倍率を有する対物レンズおよび0.28の開口数を有するPL-D725MU-T USB 3.0カメラ(PixelLINK)を使用して得られる、1mg/mLの濃度のアルブミンを含有する試料からの所定の量の光は、約170ms~約180msの露出時間を用いて集められ得る。この時間は、他の集光機器のセンサ上に光を集めるためにカメラの開口部が開いている時間の量を表す。それゆえ、所定の量の光は、光(例えば、光子)の量を直接的に表す値ではなく、カメラの露出時間またはシャッター速度によって規定され得る。
【0032】
別の例では、CMOS光センサおよび10×の倍率を有する対物レンズおよび0.28の開口数を有するPL-D725MU-T USB 3.0カメラ(PixelLINK)を使用して得られる、1mMの濃度のグルコースを含有する試料からの所定の量の光は、約130msおよび140msの露出時間を用いて集められ得る。別の例では、上で記載されるPL-D725MU-T USB 3.0カメラを使用して得られる、1μg/mLの濃度のアルカリホスファターゼを含有する試料に対する所定の量の光は、約135ms~約145msの域内の露出時間を用いて集められ得る。
【0033】
各試料から所定の(すなわち、個別の)量の光を集めることによって、カメラは、試料の色に関係なく、実質的に同じ露出または輝度を有する1つまたは複数の画像を作り出し得る。したがって、カメラ設定(例えば、シャッター速度および/または開口部サイズ)を画像間で様々に変えて、処理された試料の各画像において所定のレベルの露出を達成し得る。これらのカメラ設定は、処理された試料の光学特性(例えば、処理された試料の比色強度)を示すように調節され得る。例えば、開口部サイズが一定に保たれる場合、所望の露出レベルに到達するために要されるシャッター速度は、処理された試料の比色強度に応じて様々に異なり得る。次いで、シャッター速度を測定し得、試料中の分析物および/または総タンパク質の濃度に相関させ得る。逆に、シャッター速度が一定に保たれる場合、所定の露出レベルに到達するために要される開口部サイズを測定し得、試料中の分析物および/または総タンパク質の濃度に相関させ得る。所定のレベルの露出を有する画像を生成することによって、カメラは、処理された試料の比色強度に関係なく、試料の臨床上有用な画像を作り出すように構成され得る。ある特定の実施形態において、方法を使用して、分析物の濃度および/または総タンパク質の濃度を測定し得、分析物の濃度は第1の比色試薬で判定され、総タンパク質の濃度は第2の比色試薬で判定され得る。
【0034】
したがって、本開示の方法は、試料と比色試薬とを接触させて、処理された試料を得ること;処理された試料に、開口部を含むカメラの焦点を合わせること;試料から所定の量の光を集めるのに十分な期間開口部を開くこと;期間測定すること;および、期間と試料中の分析物または総タンパク質の濃度とを相関させることを含む。本開示の別の方法は、試料と比色試薬とを接触させて、処理された試料を得ること;処理された試料に、開口部を含むカメラの焦点を合わせること;所定の期間開口部を開くことであって、前記開口部のサイズは、所定の期間中に試料から所定の量の光を集めるのに十分であること;開口部のサイズを測定すること;および、開口部のサイズと試料中の分析物または総タンパク質の濃度とを相関させることを含む。期間または開口部のサイズと分析物または総タンパク質の濃度とを相関させることは、時間または開口部サイズと検量線とを比較することによって達成され得る。検量線は、試料中の分析物または総タンパク質の一連の濃度に対する、時間の量またはカメラの開口部のサイズを表し得る。
【0035】
試料の色の強度の結果として分析物またはタンパク質の濃度を測定することに加えてまたはそれに代わるものとして、本開示の方法は、試料とタンパク質沈殿試薬とを接触させて、タンパク質沈殿物を含む処理された試料を得ることによる、試料中の総タンパク質の濃度の測定を含む。タンパク質沈殿試薬との反応後、タンパク質沈殿物は目に見え得る。総タンパク質濃度は、処理された試料の画像をカメラによって生成し、そのような画像を分析することによって測定され得る。画像分析は、例えば、タンパク質沈殿物に(例えば、タンパク質沈殿球、またはタンパク質沈殿物からなる画像のエリアに)相関するピクセルの数を測定することを含み得る。次いで、ピクセルの数を、ピクセルとタンパク質濃度との間の相関を反映する検量線と比較して、試料中の総タンパク質の濃度を得ることができる。この試験法は、伝統的な試験よりも迅速に実施され得、より大きなダイナミックレンジを可能にし得、分析のコストを減少させ得、ならびに/またはより少ない試薬および材料を使用し得る。本開示の一部の実施形態において、総タンパク質は、別の分析物の測定なしで、カメラ画像を使用して測定される。
【0036】
本開示の方法を使用して、生体試料に存在し得る以下の化合物:カルシウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオン、ナトリウムイオン、グルコース、ラクテート、クレアチニン、クレアチン、尿素、尿酸、エタノール、アルブミン、アルカリホスファターゼ、コレステロール、ピルベート、β-ヒドロキシブチレート、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼ、のうちの1つまたは複数を含むがそれらに限定されない、数々の分析物の濃度を測定し得る。一部の実施形態において、分析物は、クレアチニン、グルコース、アルブミン、およびアルカリホスファターゼのうちの1つまたは複数から選択され得る。
【0037】
前述のように、本開示の方法は、図1のフローチャートにおける方法100のステップ101によって表されるように、試料と比色試薬とを接触させて、処理された試料を得ることを含む。比色試薬は、所望の適用および測定される対象となる分析物のタイプに基づいて選択され得る。例えば、クレアチニンを測定するための比色試薬には、(1)2,4,6-トリニトロフェノールおよび塩基性バッファーの塩基、(2)メチル3,5-ジニトロベンゾエート、3,5-ジニトロ安息香酸、または3,5-ジニトロベンゾイルクロリド、および塩基または塩基性バッファー、ならびに(3)第2銅イオン、ヒドロペルオキシド、および酸化色素を含む試薬システム、のうちの1つまたは複数が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、グルコースを測定するための比色試薬には、グルコースオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、アルカリ性銅酒石酸、アルカリ性フェリシアン化物、およびホースラディッシュペルオキシダーゼのうちの1つまたは複数が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、アルブミンを測定するための比色試薬にはブロモクレゾールグリーンが含まれるが、それに限定されるわけではない。例えば、アルカリホスファターゼを測定するための比色試薬には、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート(BCIP)およびニトロブルーテトラゾリウム(NBT)システムが含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、総タンパク質を測定するための比色試薬には、ピロカテコールバイオレット、塩化ベンゼトニウム、およびピロガロールレッドが含まれるが、それらに限定されるわけではない。本開示の方法についてのある特定の実施形態において、比色試薬は、イムノアッセイに適した1種または複数種の試薬を含み得る。例えば、比色試薬は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または酵素増幅イムノアッセイ技法(EIMT)に適した、1種または複数種の分析物特異的抗体および/または酵素を含み得る。
【0038】
本開示のある特定の実施形態において、比色試薬は、2種以上の構成要素(例えば、2,4,6-トリニトロフェノールに加えて塩基または塩基性バッファーなど)を含み得る。そのような構成要素は、ある特定の実施形態において、別個におよび逐次的に試料に添加され得る。例えば、試料をまず塩基と接触させ得、それに続いて2,4,6-トリニトロフェノールと接触させる。ある特定の実施形態において、比色試薬の構成要素を同時に試料と接触させ得る。例えば、3,5-ジニトロ安息香酸または3,5-ジニトロベンゾイルクロリドを、試料と接触させる前に塩基性バッファー中に溶解させ得る。
【0039】
本開示の方法において使用される比色試薬は、所望の適用および測定される対象となる分析物のタイプに基づいて特定の容量で添加され得る。例えば、比色試薬容量は、約1μL~約500μL;例えば、約1μL~約300μL、または約1μL~約200μL、または約1μL~約100μL、または約1μL~約50μL、または約50μL~約300μL、または約50μL~約200μL、または約100μL~約500μL、または約100μL~約300μL、または約100μL~約200μLである。
【0040】
本開示の方法における使用のためのタンパク質沈殿試薬は、所望の適用に基づいて、およびタンパク質濃度についても分析される試料において測定される対象となる分析物のタイプに基づいても選択され得る(例えば、タンパク質沈殿剤は、この試薬と分析物および比色試薬の反応との間の干渉を低下させるように選択され得る)。例えば、タンパク質沈殿試薬には、水混和性溶媒(アルコール、例えばイソプロパノール、メタノール、またはエタノール、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、またはシクロヘキサノン、テトラヒドロフランなど)、塩(硫酸アンモニウム、または多価金属イオンを含む塩など)、トリクロロ酢酸(単独でまたはアセトンとの組み合わせで)、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコールおよびデキストランなど、非イオン性親水性ポリマー)、水性界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、およびその任意の組み合わせのうちの1種または複数種が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0041】
タンパク質沈殿試薬は、所望の適用に基づいて特定の容量で添加され得る。例えば、本開示の方法についてのある特定の実施形態において、タンパク質沈殿試薬の容量は、約1μL~約500μL;例えば、約1μL~約300μL、または約1μL~約200μL、または約1μL~約100μL、または約1μL~約50μL、または約50μL~約300μL、または約50μL~約200μL、または約100μL~約500μL、または約100μL~約300μL、または約100μL~約200μLである。
【0042】
前述のように、本開示の方法は、図1に示される方法100のステップ102によって表されるように、処理された試料に、開口部を含むカメラの焦点を合わせることを含む。カメラは、開いている場合に、処理された試料から光を集め得る開口部を有する(すなわち、試料の画像を撮影する)任意の機器であり得る。カメラは、多様なイメージングシステムを含み得る。ある特定の実施形態において、カメラは、カートリッジまたはスライド内に浮かんだ生体試料を撮像するように構成された卓上イメージングプラットフォームを含み得る。特定の実施形態において、カメラは、尿または血液堆積物分析計、例えばSEDIVUE(商標)DX(商標)Urine Sediment Analyzer(IDEXX Laboratories,Inc.、Westbrook、ME)と結び付けられ得る。そのような実施形態において、処理された試料は、システムの入り口部分に配置されたカートリッジ内に直接的にピペットで入れられ得るまたは別様に分配され得る。他の実施形態において、処理された試料は、処理された試料を含むスライドから撮像され得、方法は、イメージングシステムの入り口部分に、処理された試料を含むスライド、カートリッジ、または別の容器を挿入することを含み得る。
【0043】
ある特定の他の実施形態において、カメラは、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話、または別の携帯機器であり得、処理された試料にカメラの焦点を合わせることは、カメラを試料と対面するように置くことを含み得る。携帯機器が使用される場合、スタンド、三脚、骨組み、または他の支持物は、処理された試料に対して特定の位置にカメラを置いて、試料を撮像する(すなわち、試料から所定の量の光を集める)ように構成され得る。そのようなカメラの焦点を合わせることは、処理された試料がカメラの焦点域内にあるように、カメラのユーザインタフェースを介して焦点を手動で制御することを含み得る。付加的にまたは代替的に、カメラの焦点を合わせることは、カメラの自動焦点機能を使用して、処理された試料に焦点を合わせることを含み得る。カメラのそのような自動焦点機能は、センサを使用して、処理された試料とカメラとの間の距離を検出し得、処理された試料がカメラの焦点域内にあるようにカメラの焦点を調整し得る。
【0044】
前述のように、本開示の方法は、図1における方法100のステップ103によって表されるように、試料から所定の量の光を集めるのに十分な期間開口部を開くことを含む。図2は、試料290から光260を受け取るための開口部220および光センサ230を特質とする、例としてのカメラ210の簡略図をさらに図解している。開口部220が開いている場合、試料290からの光260はカメラ210に入り得、それによって光センサ230に接触する。センサに接触した光を使用して、試料290の視覚特徴を分析し得る、試料の画像を作り出し得る、または他の何らかのタイプの処理を実施し得る。
【0045】
開口部220は任意の開きを含み得、それを通してカメラ210はある期間光260を集めて、試料の色もしくは光強度を判定し得る、または調製された試料290の画像を生成し得る。例えば、開口部220は、カメラ210のシャッターを含み得、それは試料290からの光360に光センサ230をある期間(すなわち、シャッター速度に対応する時間)露出する。開口部220のサイズは、開口部が開くたびにそれが実質的に同じであるように固定され得る、例えばカメラ210のメーカーによって設定され得る。例えば、開口数220は、約0.025~約0.5、または約0.03~約0.5、または約0.025~約0.25、または約0.03~約0.25、または約0.03~約0.5、または約0.05~約0.25、または約0.05~約0.5、または約0.1~約0.25、または約0.1~約0.5の域内にあり得る。
【0046】
開口部サイズが一定である本開示の実施形態において、開口部220を通してカメラ210によって集められる光260の量は、開口部が開いている期間に主に依存し得る。代替的な実施形態において、開口部220のサイズは、開口部を介したカメラ210への光260のより高いまたはより低い流速を可能にするように調整可能であり得、開口部を開くことは、開口部のサイズを選択するまたは決定することを含み得る。開口部サイズは、例えばカメラのユーザインタフェースを通して、カメラ210のユーザによって手動で選択され得る。代替的に、開口部サイズは、カメラの自動露出(「オート露出」)機能によりカメラ210によって決定され得る。
【0047】
所定の量の光260を集めるのに十分な期間開口部220を開くことにより、カメラは試料の画像を撮影することが可能になり得る。方法は、処理された試料から集められた光の、所定の量などの量を使用して、調製された試料290の画像を生成することを含み得る。カメラ210によって生成される画像には、フルカラー画像、白黒画像、または処理された試料中の分析物および/もしくはタンパク質の測定に適した他の任意の画像が含まれ得る。代替的に、画像は、電荷結合素子(CCD)、アクティブピクセルセンサ(APS)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、Foveon X3センサ、または別のセンサなど、光センサ230によってデジタルで作り出され得る。そのような実施形態において、方法は、光センサ230上の集められた光260を検出すること、および/または入射光を電気信号に変換することを含み得る。一部の例では、そのような光センサ230は、入射光260を検出し得、それを、撮像されている調製された試料上の個別の点を表す一連のピクセルとして記録し得る。そのようなピクセルは、特定の波長または波長域の光に対して選択的に高感度であり得る。例えば、ピクセルは、それぞれ緑、赤、および青の色に対応する波長の光を選択的に集めるピクセルに細分され得る。代替的に、そのようなピクセルは、センサが高感度である波長の域におけるすべての集められた光に対して高感度であり得る(すなわち、白黒画像を作り出す)。光センサ230は、カメラ210の各ピクセルによって集められた光の波長および/または量を測定し得、それをカメラのメモリまたはデータ記憶に値の配列として記憶する。特定の例において、各ピクセルは、集められた光260の量、平均強度、輝度、色彩、またはピクセルにおける入射光の別の特性に対応する数値を含み得る。方法は、カメラと通信しているユーザインタフェース上に処理された試料の画像を表示することをさらに含み得る。付加的にまたは代替的に、画像および/または関連情報は、サーバ、携帯電話、コンピュータ、または別の外部機器など、遠隔コンピュータ機器に送信され得る。
【0048】
本明細書において記載されるように、光の所定の量とは、所定の輝度または露出を有する画像を作り出す、カメラによって集められた光の量を表す。光の所定の量は、カメラの光センサ上の入射光の量、入射光を電気信号に変換することによって作り出された電圧、作り出された画像の輝度もしくは光学特性に従って、または他の何らかの手段によって特定され得る。カメラ210によって集められる対象となる光260の所定の量は、開口部220が開くたびに均一な露出および/または輝度の画像が作り出されるように一定であり得る。光260の所定の量は、カメラまたはイメージングシステムの様々な要素によって影響され得る。例えば、光の所定の量は、カメラのレンズ、開口部、光センサ、または他の要素に関連し得る。光260の所定の量は、処理された試料290の臨床上有用な画像を作り出すために要される光の量に基づいて選択され得る。
【0049】
タンパク質沈殿物の量を測定する実施形態において、光260の所定の量は、タンパク質沈殿物に(例えば、タンパク質沈殿球、またはタンパク質沈殿物からなる画像のエリアに)相関するピクセルの数をカウントし、かつ/またはプログラム、アルゴリズム、もしくは他の何らかの手段を使用して画像を処理することによって、処理された試料の画像からタンパク質沈殿物の量を測定する(例えば、処理された試料の画像の視覚検査によって)のに十分であり得る。別の実施形態において、光260の所定の量は、処理された試料290の画像の輝度ヒストグラムに基づき、カメラ210によって生成された画像における所望のレベルの露出、輝度、コントラスト、または強度に基づいて決定され得る。
【0050】
光260の所定の量は、カメラ210のユーザインタフェースを通してカメラ210のユーザによって選択され得、方法は、光の所定の量を入力することを含み得る。光260の所定の量は、画像の明瞭性を確保するおよび/または画像の後処理を容易にするようにユーザによって選択され得るまたは調整され得る。付加的にまたは代替的に、最適なまたは別様に臨床上有用な露出レベルは、カメラ210の自動露出(「オート露出」)機能を使用して決定され得る。そのようなオート露出機能は、調製された試料290についての情報および/またはカメラ210の設定を使用するアルゴリズムを使用して、カメラが臨床上有用な画像を作り出すために集めるべき光260の量を決定し得る。光260の所定の量は、例えば、調製された試料290の平均輝度、調製された試料の輝度ヒストグラム、調製された試料の高照度および低照度の識別および/もしくはバランス、または他の何らかの方法に基づいて決定され得る。
【0051】
所与の試料に対して、開口部220を通してカメラ210によって集められた光260の量(すなわち、カメラによって作り出された画像の露出レベル)は、一般的に、2つのカメラ設定:開口部220のサイズおよび開口部が開いている期間、によって影響される。処理された試料290の光学特性に応じて、試料から所定の量の光を集めるために、より大きなもしくはより小さな開口部サイズ、および/または開口部220のより長いもしくはより短い開きが要され得る。例えば、一方の試料がもう一方よりも暗い場合、同じ量の光260を集めるために、より明るい試料と比較して、より大きな開口部サイズおよび/またはより長いシャッター速度を要するであろう。
【0052】
1つの実施形態において、本開示の方法は、図1における方法100のステップ104によって表されるように、所定の量の光を集めるために開口部が開いている期間を測定することを含む。一部の実施形態において、処理された試料の画像を生成する前に、カメラのオート露出機能を使用して様々なカメラ設定を決定し得る。自動露出機能が、試料の光学特性を使用して最適な露出レベルを決定し得るのと同様の様式で、オート露出機能を用いて、所定の露出レベルを達成する適当なカメラ設定も決定し得る。一部の実施形態において、オート露出機能は、カメラの光センサを使用して、処理された試料の光学特性を評価し、開口部を開く前に、カメラの適当なシャッター速度を決定する。オート露出機能は、開口部が開いているべき期間を決定する際に、所定の量の光および/または開口部サイズに関する情報も使用し得る。
【0053】
本開示の別の実施形態において、カメラは、集められた光をリアルタイムで測定するセンサを含み得、それによりカメラは、所定の量の光が集められている場合に開口部を閉じることによって能動的に応答し得る。したがって、そのような実施形態は、(i)開口部を開くこと;(ii)カメラによって集められた光の量をセンサによって検出すること;(iii)カメラによって集められた光の量が所定の量の光と実質的に等価であるかどうかを判定すること;および(iv)所定の量の光がカメラによって集められていることを判定した後に開口部を閉じることを含み得る。加えて、センサは、特定の適用に適用可能な任意の域の波長に対して高感度または選択的に高感度であり得る。そのようなセンサは、開口部に入る光の量を連続的に測定し得る、または開口部を開いた後に複数の個別の時点で開口部を通して集められた光の量を測定して、光の集められた量の間欠的な測定を行い得る。所定の量の光が開口部を通して集められているとセンサが判定した場合、センサは、コントローラ、スイッチ、機械的構成要素、またはカメラの別の要素によって開口部を閉じるように構成され得る。
【0054】
さらに別の実施形態において、開口部は複数回開かれ得る(すなわち、複数の画像を生成する)。これは、カメラがオート露出機能を欠いている、または別様に、開口部の最初の開きの間に所定の量の光を集めるために要される期間もしくは開口部サイズを決定することができない場合に特に望ましくあり得る。特定の実施形態において、カメラは、その開口部を開いて試料の予備的な第1の画像を撮影し得、次いで、第1の画像についての情報を使用して、第2のまたは後続の画像のためのカメラ設定を調整し得る。そのような実施形態において、開口部を開くことは、ある期間開口部を開いて、処理された試料からある量の光を集めること;処理された試料から集められた光の量を測定すること;処理された試料から集められた光の量が所定の量の光と実質的に等価であるかどうかを判定すること;試料から受け取られた光の量が所定の量の光と実質的に等価でない場合には、第2の期間開口部を開くことであって、前記第2の期間は第1の期間とは異なること;および、開口部が開いている第2の期間と所定の量の光とを相関させて、試料中の分析物または総タンパク質の濃度を得ることを含み得る。第2の期間は、開口部の第1の開きの間に試料から集められた光の量の分析に基づいて決定され得る。例えば、カメラは、開口部が開いている期間と、処理された試料から集められた光の量とを相関させるアルゴリズムを使用し得、方法は、第1の期間および光の第1の集められた量に基づいて、カメラが試料から所定の量の光を集めるのを可能にするであろう第2の期間を決定することをさらに含み得る。
【0055】
一部の実施形態において、カメラは反復手法を使用して、所定の量の光を集め得る。そのような場合、開口部は複数回開かれ得、各連続期間は以前の期間とは異なる。開口部が開いている期間は、所定の量の時間(すなわち、反復「ステップ」)によって反復的に増加し得るまたは減少し得る。付加的にまたは代替的に、アルゴリズムを使用して、開口部が開いている期間の反復変化の大きさおよび/または方向を判定し得る。これは、カメラによって撮影された連続画像が、所定の量の光に集結するのを可能にし得る。
【0056】
付加的にまたは代替的に、カメラは、異なる期間何度も開口部を開いて、ある域の露出レベルで画像を撮影し得る。カメラによって作り出された複数の画像は、後処理を受けて、画像が所定の量の光を用いて作り出されたかを判定し得る。そのような実施形態において、開口部が開いている期間を測定することは、複数の画像の輝度、色、または別の特徴を測定すること、および所定の露出レベルに最も近接して等しい画像(例えば、所定の量の光の収集を介して作り出された画像)を複数の画像から選択することを含み得る。次いで、この画像と関連付けされた開口部が開いている期間を使用して、シャッター速度と、試料中の分析物または総タンパク質の濃度とを相関させ得る。
【0057】
測定された期間を使用して、処理された試料中の分析物または総タンパク質の濃度を定量し得る。一部の実施形態において、測定された期間は、ディスプレイまたはカメラのユーザインタフェースに表示され得る。他の実施形態において、測定された期間および/またはシャッター速度は、コンピュータ機器、メモリ、遠隔コンピュータ、サーバ、または例えばさらなる分析、処理、もしくは相関のための別のシステムに送られ得る。
【0058】
一部の実施形態において、本開示の方法は、開口部が開いている期間と所定の量の光とを相関させて、試料中の分析物または総タンパク質の濃度を得ることをさらに含む。1つのそのような実施形態が、図1における方法100のステップ105に例示されている。ステップ101と関連して以前に記載されているように、試料を比色試薬と接触させて、処理された試料を得ることができ、それは、試料に存在する標的分析物または総タンパク質の濃度に応じて様々な程度の色彩を呈し得る。例えば、クレアチニンなしで比色試薬を含有する3つの試料、ならびに比色試薬および2000mg/dLのタンパク質および1000mg/dLのクレアチニンを含有する3つの処理された試料を示している。本開示の方法を使用して、処理された試料中のクレアチニンまたは総タンパク質の濃度は、例えば処理された試料の画像を撮影することにより、試料の色彩、輝度、色度(chromacity)、強度、不透明度、または試料の別の光学特性を測定することによって概算され得る。
【0059】
本開示のある特定の実施形態において、作り出される画像の光学特性があらかじめ定められている場合(例えば、均一な量の光を集めて各画像を作り出す)、そのような画像を作り出す様々なカメラ設定を調節することにより、ユーザは、試料中の分析物または総タンパク質の濃度を概算することが可能となり得る。例えば、画像の色彩が試料中の分析物または総タンパク質の濃度を指し示す、様々な色彩の画像を撮影するために同一のカメラ設定を使用する代わりに、種々の試料について同一の画像が撮影され得、同一の画像を達成するために使用されるカメラ設定は、分析物または総タンパク質の濃度を指し示し得る。1つの例において、画像露出(すなわち、試料から集められる光の量)は一定のままであり得、一方でシャッター速度は調節される。シャッター速度によって反映される、開口部が開いている期間を測定することを使用して、処理された試料中の分析物または総タンパク質の濃度を判定し得る。
【0060】
図3Bは、図3Aに示される6つの試料から所定の量の光を集めることによって生成された6つの画像を示している。図3Aの試料を表す各画像は、図3Bにおける対応する位置に位置する(すなわち、図3Bにおける左上の画像は、図3Aにおける左上の試料に対応する、等)。図に示されるように、カメラによって作り出された6つの画像は、試料に見られる色彩の差にもかかわらず、実質的に同じ色、輝度、および/または露出のように見える。これは、元の試料の色に関係なく、同一の色および/または露出の画像を作り出すために、カメラが各画像に対して異なる期間(図に示されるように、568、436、252、782、1224、および598ミリ秒)開口部を開くことに起因する。
【0061】
当業者であれば、開口部が開いている期間は、カメラおよび撮像される対象となる処理された試料の特徴に応じて様々に異なるであろうことを認識するであろう。例えば、本開示の方法についてのある特定の実施形態において、期間は、約0.1ms~約10秒、例えば約0.1ms~約5s、または約0.1ms~約1s、または約1ms~約10s、または約1ms~約5s、または約10ms~約10s、または約10ms~約5s、または約100ms~約10s、または約100ms~約1sの域内にあり得る。
【0062】
図4Aは、比色試薬および0~2000mg/dLに及ぶ既知の量のクレアチニンを含む別の一連の処理された試料に対して、カメラによって生成された試料の画像を示している。図3Bにおける画像のように、これらの画像は、試料から所定の量の光を集め、ゆえに実質的に同じ色および/または露出の画像を作り出すことによって撮影された。画像において明らかなように、より多くの分析物(この場合、クレアチニン)を含有する試料はより暗く、それゆえ、所定の量の光を集めるために、より長い期間開口部が開かれることを要する。試料中の分析物の量と、カメラが試料から所定の量の光を集めるシャッター速度との間の関係性を反映する検量線を表す図4Bに図解されるように、カメラによって測定されたシャッター速度は、試料中のクレアチニンの量と相関し得る。
【0063】
一部の実施形態において、開口部が開いている期間と所定の量の光とを相関させることは、回帰分析を行うことを含み得る。そのような実施形態では、予備的な試験が行われ得、既知の濃度の分析物とシャッター速度との間または総タンパク質とシャッター速度との間の実験的関係性がプロットされ得る。回帰直線を使用して、2つの変数に関する回帰関数を概算し得、それにより、後続の実験データは回帰関数に基づいて解釈され得る。そのような実施形態において、開口部が開いている期間と所定の量の光とを相関させて、試料中の分析物または総タンパク質の濃度を得ることは、回帰関数を使用して、試料中の分析物または総タンパク質の濃度を概算することを含み得る。
【0064】
他の実施形態において、コンピュータ機器のメモリ、コントローラ、プロセッサ、サーバ、またはカメラと結び付けられた別のコンピュータユニットは、分析物または総タンパク質の濃度を得るための、シャッター速度と所定の量の光とを関連付けするデータ(例えば、記憶された回帰関数)を含み得る。そのような実施形態において、開口部が開いている期間と所定の量の光とを相関させることは、コンピュータ機器によって分析物または総タンパク質の濃度を判定することを含み得る。そのような判定は、分析物の種類、比色試薬の種類、および/または開口部が開いている測定された期間のうちの少なくとも1つに基づいてなされ得る。そのような判定は、タンパク質含有量、比色試薬の種類、および/または開口部が開いている測定された期間に基づいてもなされ得る。分析物または総タンパク質の濃度の判定後、量は、ディスプレイまたはカメラのユーザインタフェースまたはカメラと結び付けられた機器に表示され得る。他の実施形態において、分析物または総タンパク質の濃度は、コンピュータ機器、プロセッサ、カメラのメモリ、コンピュータ機器のメモリ、または遠隔コンピュータに、サーバ、またはさらなる分析、処理、もしくは診断のための別のシステムに送られ得る。
【0065】
図に表される方法100を参照して上で解説されるように、一部の実施形態において、カメラの開口部のサイズは一定に保たれ得、開口部を開くことは、所定の量の光を集めるのに十分な期間開口部を開くことを含み得る。次いで、調製された試料中の分析物または総タンパク質の濃度を測定することは、所定の量の光を集めるために開口部が開いている期間を測定することを含み得る。次いで、測定された期間と所定の量の光とを相関させて、試料中の分析物、総タンパク質の濃度を得ることができる。
【0066】
別の実施形態において、開口部が開いている期間(すなわち、シャッター速度)は一定のままであり得る。そのような実施形態において、開口部のサイズは各画像によって様々に異なり得、開口部のサイズを測定して、試料中の分析物または総タンパク質の濃度を判定し得る。例えば、期間は、約0.1ms~約10秒、例えば約0.1ms~約5s、または約0.1ms~約1s、または約1ms~約10s、または約1ms~約5s、または約10ms~約10s、または約10ms~約5s、または約100ms~約10s、または約100ms~約1sに及び得る。これらの実施形態において、開口数が、例えば約0.01~約0.99、約0.055~0.9、または約0.1~0.5である場合、所定の量の光は。
【0067】
図5は、試料中の分析物の濃度および/または総タンパク質濃度を測定するための、そのような方法500のフローチャートを例示している。
【0068】
以前に記載されるように、方法500のステップ501および502は、方法100のステップ101および102と類似したステップを含み得る。一部の実施形態において、試料と比色試薬とを接触させるステップ(101、501)、およびカメラの焦点を合わせるステップ(102、502)は、方法100においてと実質的に同じに実施され得る。方法500は、個別の期間開口部を開くことであって、前記開口部サイズを試料中の分析物または総タンパク質の濃度に関連付けすることをさらに含み得る。例えば、ステップ503は、所定の期間開口部を開くことであって、前記開口部のサイズは試料から所定の量の光を集めるのに十分であることを含む。次いで、開口部が開いている期間中にカメラが所定の量の光を集めるのを可能にする開口部サイズは、ステップ504に表されるように測定され得る。
【0069】
最適な開口部サイズ(すなわち、カメラが所定の期間に所定の量の光を集めるのを可能にする開口部サイズ)は、シャッター速度に関して以前に記載されるように、自動露出機能によって決定され得る。そのような実施形態において、ある期間開口部を開くことは、自動露出機能を使用して、開口部のサイズが、試料から所定の量の光を集めるのに十分であるように開口部を開くことを含み得る。したがって、開口部のサイズを測定することは、自動露出機能を使用して開口部のサイズを決定することを含み得る。以前に記載されるように、そのような判定は、処理された試料の光学特性、ならびに/または期間および所定の量の光のうちの少なくとも一方に基づき得る。
【0070】
付加的にまたは代替的に、開口部サイズを測定することを伴う方法は、複数の画像を撮影して、所定の量の光を集めることを含み得る。一部の実施形態において、カメラはセンサを含み得、方法は、(i)開口部を開いて試料からある量の光を集めることであって、前記開口部は第1の開口部サイズを含むこと;(ii)開口部を閉じること;(iii)処理された試料から集められた光の量をセンサによって測定すること;(iv)試料から集められた光の量が所定の量の光と実質的に等価であるかどうかを判定すること;(v)試料から受け取られた光の量が所定の量の光と実質的に等価でない場合には、第2の期間開口部を開くことであって、前記開口部は第2の開口部サイズを有し、前記第2の開口部サイズは第1の開口部サイズとは異なること;および(vi)開口部の第2の開口部サイズと、試料中の分析物または総タンパク質の濃度とを相関させることを含み得る。そのような手法は、アルゴリズム、反復手法、シャッター速度との関連で記載される方法のいずれか、または他の何らかの工程を使用して、開口部の第1の開きを使用して第2のまたは後続の開口部の開きを指揮し得る。
【0071】
方法500は、ステップ505に表されるように、開口部のサイズと試料中の分析物または総タンパク質の濃度とを相関させることを含み得る。開口部のサイズと分析物または総タンパク質の量とを相関させることは、測定された開口部サイズと検量線とを比較して、分析物または総タンパク質の量を概算することを含み得る。そのような検量線は、既知の分量の分析物または総タンパク質を含有する一連の試料を撮像し、既知の濃度に対して各試料の測定された開口部サイズをプロットすることによって生成され得る。以前に記載されるように、回帰直線を使用して、2つの変数に関する回帰関数を概算し得、それにより、後続の実験データは、例えば測定された開口部サイズおよび分析物または総タンパク質の濃度に関する回帰関数に基づいて解釈され得る。
【0072】
一部の実施形態において、方法100および500は、試料中の分析物および総タンパク質の両方の濃度を判定することを含み得る。試料中の総タンパク質の量は、試料の画像、例えば分析物の濃度の測定のために光がカメラによって集められる場合に生成される画像、の分析を通して概算され得る。この工程は、処理された試料の画像をカメラによって生成するステップ(ステップ106および506);画像におけるタンパク質沈殿物に相関するピクセルの数を測定するステップ(ステップ107および507);およびピクセルの数と検量線とを相関させて、試料中の総タンパク質の濃度を得るステップ(ステップ108および508)を含み得る。
【0073】
1つの実施形態において、タンパク質沈殿物の量を測定することは、カメラによって生成された処理された試料の画像の視覚分析を行うことを含む。処理された試料の画像は、例えばカメラの開口部を開いてあらかじめ定められた量の光を集める場合、方法の以前のことの間に生成され得る。以前に記載されるように、画像は、光を集め、カメラの光センサを使用してそれを画像として記録することによって生成され得る。
【0074】
タンパク質沈殿物の画像は、試料中のタンパク質の濃度に応じて、画像において様々な量で出現し得る沈殿したタンパク質の小球を含み得る。図6Aは、0~1000mg/dLのタンパク質を含有する処理された試料の実験画像を示している。図6Aに見られるように、タンパク質は肉眼で可視であり得、別様に均一な露出または色彩の画像における中断として現れ得る。一部の実施形態において、図6Aに見られる画像など、タンパク質沈殿物の画像は、分析物の濃度を測定するために使用される同じ画像(すなわち、試料から所定の量の光を集める場合に作り出される画像)であり得る。付加的にまたは代替的に、タンパク質定量のために別個の画像が生成され得、方法は、開口部を開いて、処理された試料から第2の量の光を集めること、および/または処理された試料の画像を生成することを含み得る。
【0075】
方法は、タンパク質沈殿物の画像を処理することを含み得る。一部の実施形態において、タンパク質沈殿物の画像は、後処理を受けて、画像の明瞭性を増加させ得る、コントラストを増加させ得る、焦点を増加させ得る、またはタンパク質の定量を容易にし得る。例えば、カメラを、コントローラ、プロセッサ、メモリ、または他の構成要素を含むコンピュータ機器に連動させ得るまたは通信し得る。後処理は、コンピュータ機器で画像処理プログラムを使用すること、またはコンピュータ機器のメモリに記憶された指示を実行することを含み得る。付加的にまたは代替的に、画像の態様は、カメラのユーザインタフェースまたは結び付けられたコンピュータ機器と交流することによって、カメラのユーザによって手動で調整され得る。
【0076】
一部の場合において、視覚分析を使用して、試料中のタンパク質沈殿物の量を定量し得る。1つの実施形態において、方法は、カメラによって作り出された画像の肉眼分析を行って、試料中のタンパク質沈殿物の濃度を測定することを含み得る。例えば、方法のユーザは、画像を見得、沈殿したタンパク質の小球をカウントし得、タンパク質沈殿物を含む画像のエリアを概算し得る、または他の何らかの肉眼分析を行い得る。
【0077】
一部の実施形態において、アルゴリズム、プログラム、またはソフトウェアを使用して、処理された試料中のタンパク質沈殿物を定量し得る。一部の実施形態において、カメラに連動したまたは通信しているコンピュータ機器は、指示(例えば、コンピュータ機器のメモリに記憶された指示)を実行して、処理された試料中のタンパク質沈殿物の量を測定する。そのような指示をコンピュータ機器のプロセッサによって実行して、肉眼技法に関連して上で記載される測定の一部分を自動化し得る。例えば、指示は、処理された試料の画像におけるタンパク質沈殿物に相関する(例えば、タンパク質沈殿球、またはタンパク質沈殿物からなる画像のエリアに対応する)ピクセルの数を測定するまたは判定することによって、処理された試料中のタンパク質沈殿物の量を測定するように構成され得る。付加的にまたは代替的に、指示は、コンピュータ機器に、タンパク質沈殿物を含む処理された試料の画像のエリアを測定することによって、処理された試料中のタンパク質沈殿物の量を測定させ得る。タンパク質沈殿物を含むエリアを測定することは、タンパク質沈殿物に関連する画像のピクセルの数を判定することを含み得る。タンパク質沈殿物と画像のバックグラウンドとを区別することは、ピクセルと関連付けされた数値を分析することを含み得る。例えば、画像における各ピクセルは、集められた光の量、強度のレベル、輝度、色彩、グレースケール、またはピクセルの別の光学特性に対応する値を含み得る(例えば、8ビット画像におけるピクセルは、0~255の数によって表され得、0は黒に対応し、0は白に対応する)。特定の例において、閾値は、閾値よりも高い値を有するピクセルがタンパク質沈殿物を含むと見なされ、一方で閾値よりも低い値を有するものがバックグラウンドと見なされるように設定され得る。そのような場合において、タンパク質沈殿物に関連するピクセルの数を判定することは、ある閾値を上回るまたは下回るピクセルの数を判定することを含み得る。
【0078】
付加的にまたは代替的に、沈殿したタンパク質は、作り出された画像の均質性を判定することによって測定され得る。より不均質な(すなわち、より均質でない)画像は、より多くの量の沈殿したタンパク質を表し得、一方で均質な画像は、より少ない量のタンパク質を示し得る。そのような例において、画像の均質性は、画像における各ピクセルと関連付けされた数値(例えば、以前に記載されるように、集められた光と関連付けされた値)を分析することによって判定され得る。特定の例において、画像の均質性を判定することは、画像における各ピクセルと関連付けされた値の標準偏差を算出することであって、より高い標準偏差ほど、より高い量の沈殿したタンパク質の結果であり得る(逆もまた同様)ことを含み得る。
【0079】
図6Bは、試料中のタンパク質の濃度と、処理された試料の画像におけるタンパク質沈殿物の測定された量との間の関係性についてのプロットを示している。図6Bにおいて言及される「応答」とは、以前に記載される工程によって判定される、画像の均質性に関する。処理された試料中のタンパク質沈殿物の量は、画像の均質性(すなわち、応答)を算出し、均質性を、撮像された試料中のタンパク質の量に相関させる画像分析ソフトウェアを使用して判定された。一部の場合において、処理された試料中のタンパク質沈殿物の量を、試料中のタンパク質の濃度に相関させることは、回帰分析を行うことを含み得る。そのような場合では、予備的な試験が行われ得、既知の濃度のタンパク質と試料の画像における沈殿物との間の実験的関係性がプロットされ得る。回帰直線を使用して、2つの変数に関する回帰関数を概算し得、それにより、後続の実験データは回帰関数に基づいて解釈され得る。そのような実施形態において、処理された試料中のタンパク質沈殿物の量を、試料中のタンパク質の量に相関させることは、回帰関数を使用して、試料中のタンパク質の量を概算することを含み得る。
【0080】
本開示の一部の実施形態において、処理された試料中のタンパク質沈殿物の量を、試料中のタンパク質の量に相関させることは、図11Aに提供される多変数二次方程式を使用する。タンパク質沈殿物の多重画像を、ステップ1において試料内の種々の位置から得る。次いでステップ2において、画像を、画像内のタンパク質沈殿物の特質を抽出する多数の画像処理パイプラインにより処理する。ある特定の実施形態において、画像処理パイプラインは、センサノイズ補正、コントラストおよびエッジ増強、エッジおよび輪郭検出、輪郭面積(contour area)、フーリエ変換、ならびに/または標準偏差を含み得る。画像処理パイプラインにより抽出された特質を、以下のような多変数二次方程式を使用して、ステップ3においてタンパク質に相関させる。
【0081】
【数1】
式中、xは画像特質1であり、xは画像特質2であり、xは画像特質nである。図11Bは、複数の機器での試料中のタンパク質の濃度と、スライディングウィンドウ標準偏差画像特質との間の関係性についてのプロットを示しており;図11Cは、複数の機器での試料中のタンパク質の濃度と、平均輪郭面積画像特質との間の関係性についてのプロットを示している。図11Dは、2つの画像特質に対して多変数二次回帰を実施した後の、単一の機器に対する直線性プロットを示している。
【0082】
本開示の一部の実施形態において、処理された試料中のタンパク質沈殿物の量を、試料中のタンパク質の量に相関させることは、図12Aに提供される人工ニューラルネットワークを使用する。タンパク質沈殿物の多重画像を、ステップ1において試料内の種々の位置から得る。次いでステップ2において、画像を、画像内のタンパク質沈殿物の特質を抽出する多数の画像処理パイプラインにより処理する。ある特定の実施形態において、画像処理パイプラインは、センサノイズ補正、コントラスト増強、および/またはフーリエ変換のヒストグラム、および/または標準偏差を含み得る。画像処理パイプラインにより抽出された特質を、人工ニューラルネットワークを使用して、ステップ3においてタンパク質に相関させる。人工ニューラルネットワークの構造は、図12Bに提供されている(式中、xは画像特質1であり、xは画像特質2であり、xは画像特質nである)。図12Cは、複数の機器での試料中のタンパク質の濃度と、ヒストグラムスライディングウィンドウ標準偏差画像特質との間の関係性についてのプロットを示しており;図12Dは、画像特質についてニューラルネットワークをトレーニングした後の、複数の機器に対する直線性プロットを示している。
【0083】
他の場合において、コンピュータ機器、コントローラ、プロセッサ、サーバ、またはカメラと結び付けられた別のコンピュータユニットは、処理された試料中のタンパク質沈殿物の濃度と試料中のタンパク質の量とを関連付けするデータを含み得る。そのような実施形態において、画像におけるタンパク質沈殿物の量と試料中のタンパク質の量とを相関させることは、コンピュータ機器によってタンパク質の量を判定することを含み得る。そのような判定は、画像においてカウントされたタンパク質沈殿物に相関するピクセルの数、画像における沈殿したタンパク質からなる測定されたエリアのうちの少なくとも一方に基づいてなされ得る。タンパク質の濃度の判定後、方法100および500は、ディスプレイまたはカメラのユーザインタフェースまたはカメラと結び付けられた機器に濃度を表示することを含み得る。他の実施形態において、タンパク質の濃度は、コンピュータ機器、プロセッサ、カメラのメモリ、または遠隔コンピュータに、サーバ、またはさらなる分析、処理、もしくは診断のための別のシステムに送られ得る。
【0084】
一部の実施形態において、方法100および500は、少なくとも試料中の分析物および/またはタンパク質の判定された濃度に基づいて、ユーザの健康状態についての判定を行うことをさらに含む。一部の場合において、カメラと通信しているコンピュータ機器(例えば、コンピュータ、サーバ、プロセッサ、またはコントローラ)は、分析物および/またはタンパク質の判定された濃度を使用して、健康状態を判定し得る、疾患を診断し得る、リスク因子を表現し得る、または患者の健康についての他の何らかの情報を付与し得る。1つの実施形態において、タンパク質および分析物の量の関係性(例えば、比率)は、健康状態を指し示し得、健康状態を判定することは、分析物およびクレアチニンの関係性が、閾値レベルよりも高いまたは低いかどうかを判定することを含み得る。特定の実施形態において、分析物はクレアチニンであり得、方法100および500は、試料の尿タンパク質:クレアチニン比(「UPC比」)を判定することを含み得る。そのような場合において、健康状態(例えば、タンパク尿症)を診断することは、UPC比が閾値を上回るまたは下回るかどうかを判定することを含み得る。他の健康状態および分析は、当業者によって想定される。
【0085】
図1および6に例示される例としての方法100および500は、例示的で非限定的な例として意図される。本明細書において記載されるステップ(steps and steps)は、逐次的にまたは並行して行われ得る。さらに、様々な1つおよび複数のステップは、本明細書において記載されるのとは異なる順序で行われ得、一部のステップは省略され得、スキップされ得、および/または繰り返され得る。当業者に明白であろうように、方法の付加的なまたは代替的な要素、およびシステムの付加的なまたは代替的な構成要素が予想される。
【0086】
図7は、本開示の例としての実施形態に従った、システム700、例えば方法100または500のいずれかにおいて使用されるシステムの図解である。システム700は、カメラ710、マルチウェル試料プレート720、コンピュータ機器730(プロセッサ740およびメモリ750を含む)、およびサーバ760を含み得る。マルチウェルプレート720は、マルチウェル722を含み得る。
【0087】
カメラ710は、電荷結合素子(CCD)、アクティブピクセルセンサ(APS)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、FOVEON X3(登録商標)センサ、または別のセンサなど、1つまたは複数の光センサを含み得る。当業者によって理解されるように、そのような光センサは、所与の適用のための関心対象の任意の域の波長に対して高感度であり得る。1つの実施形態において、光センサは、可視スペクトルまたは可視スペクトルの一部分に対応する波長の域(すなわち、約190nm~700nmの波長)に対して高感度であり得る。付加的にまたは代替的に、光センサは、赤外域および/または紫外域における波長に対して高感度または選択的に高感度であり得る。1つの実施形態において、光センサは、調製された試料から反射した、放たれた、または送られた波長に対応する波長の域、例えば調製された試料の、それが比色試薬と反応した後の色に対応する波長、フルオロフォアの発光スペクトルに対応する波長、または別の域の波長に対して選択的に高感度であり得る。そのような光センサは、黒/白の光センサでもあり得、それにより、実質的にすべての入ってくる光が検出され、波長にかかわらずセンサが高感度である域において同じく記録される。
【0088】
カメラ710は、開口部712および1つまたは複数の光学フィルタ714も含み得る。光学フィルタは、ある特定の波長域内でのみ光を開口部712に通過させ得る。そのようなフィルタ714は、ある特定の波長または波長の域の光を選択的に通過させるまたは遮断するように構成され得、それにより、特定の波長または波長の域の光のみがカメラ710によって集められる。例えば、フィルタ714によって通過する波長の域は、処理された試料の反射率、発光、または透過率スペクトルに関連し得る。この域の波長は、比色試薬の色、または試料と比色試薬との間の反応によって作り出される産物の色に対応し得る。このように、所望の波長のみがカメラ710によって記録され得、それによりノイズまたは不要な画像内容が低下する。光学フィルタ714に対する付加的なまたは代替的な使用も考慮される。
【0089】
別の例としての実施形態において、分析物または総タンパク質は、試薬中の1種または複数種のフルオロフォアによって標的にされ得る。フルオロフォアは、第2の波長域内の放射によって励起した場合、第1の特異的な波長域内の光を放ち得る。ゆえに、そのような実施形態において、システム700は、第2の波長域内の光を放ってフルオロフォアを励起する励起源(例えば、レーザ)を付加的に含み得る。そのような場合において、フィルタは、処理された試料の発光スペクトルの外側にあるすべての波長を遮断するように構成され得る。
【0090】
図解されるように、カメラ710は、コンピュータ機器730に通信可能に連動される。そのような通信可能な連動は、様々な実施形態において、WiFiを使用して、BLUETOOTH(登録商標)を通じて、または有線インタフェース(例えば、USBケーブル)を介して実践され得る。代替的に、一部の実施形態において、カメラ710は、イーサネットインタフェースなどの有線接続を通じて、コンピュータ機器730に連動され得る。一部の実施形態において、カメラ710は、可動式コンピュータ機器(例えば、携帯電話)に取り付けられたまたは一体化したカメラであり得る。可動式コンピュータ機器は、公衆インターネットにアクセスして、コンピュータ機器730に画像(例えば、生体細胞の候補画像または標的画像)を送り得る。一部の実施形態において、カメラ710は、付加的にまたは代替的にサーバ760に通信可能に連動され得る。例えば、一部の実施形態において、カメラ710はサーバ760に画像を送り得、サーバ760は画像処理または分析(例えば、画像の後処理、試料中の分析物または総タンパク質の濃度についての判定)を実施し得、次いでサーバ760はコンピュータ機器730に結果として生じた情報を送り得る。
【0091】
図解されるように、コンピュータ機器730は、プロセッサ740およびメモリ750を含む。メモリ750は、それに記憶された指示752を含む。メモリ750は、揮発性メモリ(例えば、RAM)および/または非揮発性メモリ(例えば、ハードドライブ)を含み得る。メモリ750も、プロセッサ740に内部で通信可能に連動され得る。プロセッサ740は、メモリ750に記憶された指示752を実行する(例えば、様々な計算課題を実施する)ように構成され得る。付加的にまたは代替的に、メモリ750は、画像(例えば、カメラ710によって記録された)および画像に関する情報を記憶し得る。メモリ750は、試料中の分析物またはタンパク質の測定された濃度に関する情報をさらに記憶し得る。
【0092】
コンピュータ機器のメモリ750に記憶された指示752は、本明細書において記載される方法を実行するステップに関する指示を含み得る。例えば、指示725は、カメラが、処理された試料に焦点を合わせ、開口部712を開きおよび/もしくは閉じ、試料(例えば、マルチウェルプレートのウェル722の内側に位置する試料)の画像を生成し、開口部712が開いている期間を測定し、かつ/または開口部のサイズを測定するよう指示し得る。そのような指示725は、また、コンピュータ機器730に、定められた期間および/または開口部サイズを、試料中の分析物または総タンパク質の濃度に相関させ得る。付加的に、指示725は、カメラ710によって作り出された画像の処理に関連し得る。例えば、指示725は、コンピュータ機器730に、試料の画像を処理させ得、処理された試料中のタンパク質沈殿物の濃度を測定させ得、かつ/または処理された試料中のタンパク質沈殿物の濃度を、試料中のタンパク質の濃度に相関させ得る。
【実施例1】
【0093】
既知の分量のグルコース、アルブミン、およびアルカリホスファターゼを含有する処理された試料を、均一な輝度を有するように撮像した。画像の露出時間(すなわち、開口部が開いている期間、シャッター速度)をプロットして、露出時間と試料中の分析物の量との間の関係性(すなわち、検量線)を示した。
【0094】
処理された試料の画像を、CMOS光センサおよび単色の色空間を有するPL-D725MU-T USB 3.0カメラ(PixelLINK)によって撮影した。カメラは、10×の倍率を有する対物レンズおよび0.28の開口数を含んだ。対物レンズの焦点距離は20mmであり、約3.5μmの焦点の深度を有した。より長い焦点距離を有するチューブレンズを対物レンズに連動させて、カメラの倍率および焦点合わせを容易にした。チューブレンズは、200mmの焦点距離を有した。カメラの画像センサ上に画像の焦点を合わせるために、アダプタを使用して、最適な距離でレンズをカメラに連動させた。
【0095】
上で記載される方法に従って行われた測定が、図8A~Cに示されている。図8Aは、実験試料中のグルコースの量と所定の期間との間の関係性を示した検量線を図解している。この曲線は、陰性対照試料、1mMグルコース試料、および20mMグルコース試料を調製することによって得られた。陰性対照試料を固定するために、以下の試薬を使用した:590μLのD.I.水、10μLのホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、10μLグルコースオキシダーゼ、100μLの4-アミノアンチピリン、および95%エタノール中100μLの1,7-ジヒドロキシナフタレン。1mMグルコース試料を固定するために、以下の試薬を使用した:580μLのD.I.水、10μLのホースラディッシュペルオキシダーゼ、10μLグルコースオキシダーゼ、100μLの4-アミノアンチピリン、95%エタノール中100μLの1,7-ジヒドロキシナフタレン、および10μLのグルコース。20mMグルコース試料を固定するために、以下の試薬を使用した:380μLのD.I.水、10μLのホースラディッシュペルオキシダーゼ、10μLグルコースオキシダーゼ、100μLの4-アミノアンチピリン、95%エタノール中100μLの1,7-ジヒドロキシナフタレン、および200μLのグルコース。各スライドに、600μLの試料(陰性、1mM、および20mM)を添加し、撮像して、図8Aに図解される曲線を得た。
【0096】
図8Bは、実験試料中のアルブミンの量と所定の期間との間の関係性を示した相関曲線を図解している。この曲線は、陰性対照試料、1mg/mLアルブミン試料、および5mg/mLアルブミン試料を調製することによって得られた。陰性対照試料を固定するために、以下の試薬を使用した:880μLのPBSバッファー(pH4.2)および120μLのブロモクレゾールグリーン(pH4.2)。1mg/mLアルブミン試料を固定するために、以下の試薬を使用した:870μLのPBSバッファー(pH4.2)、120μLのブロモクレゾールグリーン(pH4.2)、および10μLのアルブミン。5mg/mLアルブミン試料を固定するために、以下の試薬を使用した:830μLのPBSバッファー(pH4.2)、120μLのブロモクレゾールグリーン(pH4.2)、および50μLのアルブミン。各スライドに、600μLの試料(陰性、1mg/mL、および5mg/mL)を添加し、撮像して、図8Bに図解される曲線を得た。
【0097】
図8Cは、実験試料中のアルカリホスファターゼの量と所定の期間との間の関係性を示した相関曲線を図解している。この曲線は、陰性対照試料、1μg/mLアルカリホスファターゼ試料、および10μg/mLアルカリホスファターゼ試料を調製することによって得られた。陰性対照試料を固定するために、以下の試薬を使用した:1mLのBCIP/NBT基質(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム)および1mLの1M HCl。1μg/mLアルカリホスファターゼ試料を固定するために、以下の試薬を使用した:990μLのBCIP/NBT基質、10μLのアルカリホスファターゼ、および反応を停止する1mLの1M HCl。10μg/mLアルカリホスファターゼ試料を固定するために、以下の試薬を使用した:900μLのBCIP/NBT基質、100μLのアルカリホスファターゼ、および反応を停止する1mLの1M HCl。各スライドに、600μLの試料(陰性、1μg/mL、および10μg/mL)を添加し、撮像して、図8Cに図解される曲線を得た。
【実施例2】
【0098】
165μLの尿試料を、300mMのホスフェートバッファー(pH12.4)中1485μLの3,5-ジニトロベンゾイルクロリドの溶液に添加して、処理された試料を得た。165μLの処理された試料の画像を、実施例1に記載されるカメラによって撮影した。
【0099】
図9は、ある量の、例えば0~1000mg/dLに及ぶクレアチニンを示した、カメラによって生成された試料の画像を提供している。
【0100】
別の165μLの尿試料を、2475μLのピロカテコールバイオレット試薬(脱イオン水中、0.28mMピロカテコールバイオレット、0.16mMモリブデン酸ナトリウム、120mMコハク酸、および1mMシュウ酸ナトリウム)の溶液に添加して、処理された試料を得た。165μLの処理された試料を、上で記載されるように撮像した。処理された試料のシャッター速度と、既知のタンパク質濃度に対してシャッター速度をプロットすることによって得られる検量線とを比較する。既知の量のタンパク質(例えば、0~500mg/dLに及ぶ)と、本開示の方法に従って測定されるシャッター速度との間の関係性の例となる相関が、図10に提供されている。
【0101】
本明細書を通じて、文脈上別様を要しない限り、「含む(comprise)」および「含む(include)」という単語、ならびに変形(例えば、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」)は、明記される構成要素、特質、要素、もしくはステップ、または構成要素、特質、要素、もしくはステップの群の内包を暗示するが、他のいかなる整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群の除外をも暗示するわけでないと理解されるであろう。
【0102】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用するとき、「a」、「an」、および「the」という単数形は、文脈上別様にはっきりと述べられていない限り、複数形の指示対象を含む。
【0103】
上で詳述される説明は、添付の図を参照して、開示されるシステム、機器、および方法の様々な特質および機能を記載する。様々な態様および実施形態が本明細書において開示されている一方で、他の態様および実施形態が明らかであろう。本明細書において開示される様々な態様および実施形態は、単なる例示のためのものであり、限定的であることを意図されるわけではなく、真の範囲は以下の特許請求の範囲によって示される。
【0104】
図において、類似の記号は、文脈上別様にはっきりと述べられていない限り、典型的には類似の構成要素を識別する。本明細書において記載されるおよび図における例としての実施形態は、限定的であることを意図されるわけではない。本明細書において提示される主題の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が使用され得、他の変化が加えられ得る。本明細書において概して記載されおよび図において例示されるように、本開示の態様は、多種多様の異なる構成で配列され得、置換され得、組み合わされ得、分離され得、および設計され得、そのすべては本明細書において明示的に企図されることが容易に理解されるであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D