(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】コージエライト含有セラミック体、バッチ組成物混合物、及びコージエライト含有セラミック体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 38/06 20060101AFI20230224BHJP
C04B 35/195 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
C04B38/06 D
C04B35/195
(21)【出願番号】P 2021526794
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 US2019060012
(87)【国際公開番号】W WO2020101968
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-07-16
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】クチボトラ,ハサヴァハナ サルマ
(72)【発明者】
【氏名】タナー,キャメロン ウェイン
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-509066(JP,A)
【文献】国際公開第2005/094967(WO,A1)
【文献】特開2015-051921(JP,A)
【文献】国際公開第2017/100340(WO,A1)
【文献】特表2009-536603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00-38/10
C04B 35/195
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質セラミック体であって、
コージエライトの主結晶相、並びに、(15.4、34.1、及び50.5)、(12.2、34.1、及び53.7)、(13.3、31.2、及び55.5)、及び(16.6、31.1、及び52.3)で規定されるフィールド内にあるMgO、Al
2O
3、及びSiO
2に関する相対酸化物質量パーセント基準での組成物;
%P≧50%;及び
d
f≦0.50
を含み、ここで、
%Pは体積による平均バルク気孔率であり、d
f=(d
50-d
10)/d
50であり、d
50は前記多孔質セラミック体のメジアン細孔径である、
多孔質セラミック体。
【請求項2】
MgO、Al
2O
3、及びSiO
2に関する相対酸化物質量パーセント基準での前記組成物が、(13.5、34.1、及び52.4)、(12.2、34.1、及び53.7)、(13.3、31.2、及び55.5)及び(14.7、31.2、及び54.2)で規定されるフィールド内にある、請求項1に記載の多孔質セラミック体。
【請求項3】
前記コージエライトの結晶相とインディアライトの結晶相との合計質量パーセントが、85質量%~97質量%の範囲である、請求項1に記載の多孔質セラミック体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容全体がここに参照することによって本願に援用される、2018年11月16日出願の米国仮特許出願第62/768,532号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示の例示的な実施形態は、コージエライト含有セラミック体、より詳細には、エンジン排気の後処理用途などに有用な多孔質コージエライトハニカム体に関する。
【背景技術】
【0003】
ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)及びガソリン微粒子フィルタ(GPF)は、幾つかのチャネルを塞いで閉塞されたハニカム体を形成することにより、多孔質セラミックハニカム体から製造することができる。入口端及び/又は出口端のセルの一部はプラグで塞ぐことができる。チャネルの一部は出口端で塞がれうるが、入口端では塞がれず、一方、別の部分は入口端で塞がれうるが、出口端では塞がれない。
【0004】
動作中、排ガスは、微粒子フィルタのセラミックハニカム体の多孔質壁を通って流れる。多孔質壁を通る流路に沿って、排ガスからの微粒子がハニカム体によって保持される。したがって、煤粒子などの微粒子は、排ガスから濾過される。ハニカム体の煤層を再生サイクルで燃焼させることができるため、フィルタを復元させることができる。
【0005】
この背景技術のセクションで開示される上記情報は、本開示の理解を高めるためだけのものであり、したがって、先行技術のいかなる部分も形成しない情報、又は先行技術が当業者に示唆する可能性のある情報を含んでいる可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本開示は、比較的高い平均バルク気孔率及び比較的狭い細孔径分布をさらに含む、非化学量論的コージエライトの主結晶相を含む多孔質セラミック体を開示する。
【0007】
好ましくは、セラミック体は、コージエライトの主結晶相を含み、任意選択的に、無機物の総量に基づいて酸化物基準でP2O5をさらに含むことができ、該セラミック体は、好ましくは、比較的高い平均バルク気孔率及び比較的狭い細孔径分布を含む。
【0008】
別の態様では、本開示は、比較的高い平均バルク気孔率及び比較的狭い細孔径分布を有する非化学量論的コージエライト含有結晶構造を備えたセラミック体の製造に有用なバッチ組成物混合物を開示する。
【0009】
別の態様では、本開示は、比較的高い平均バルク気孔率及び比較的狭い細孔径分布を含むコージエライト含有結晶構造を備えたセラミック体の製造方法を開示する。
【0010】
本開示の追加の特徴は、以下の説明に記載され、一部には、その説明から明らかになるか、あるいは本明細書に開示される実施形態の実施によって習得されうる。
【0011】
本明細書に開示される幾つかの実施形態は、多孔質セラミックハニカム体であって、主コージエライト結晶相を含み、かつ、(15.4、34.1、及び50.5)、(12.2、34.1、及び53.7)、(13.3、31.2、及び55.5)、及び(16.6、31.1、及び52.3)で規定されるフィールド内にあり;%P≧50%;及び、df≦0.50である(ここで、%Pは体積による平均バルク気孔率であり、df=(d50-d10)/d50である)、MgO、Al2O3、及びSiO2に関する相対酸化物質量パーセント基準での組成物を有する多孔質セラミック体を含む。「相対酸化物質量パーセント基準」は、MgO、Al2O3、及びSiO2の組合せに対してのみ、決定される。
【0012】
幾つかの実施形態では、多孔質セラミックハニカム体であって、コージエライトの主結晶相と、無機物の総量に基づいて0.1質量%から5.0質量%の間のP2O5を含み;%P≧50%;及び、df≦0.50である(ここで、%Pは体積による平均バルク気孔率であり、df=(d50-d10)/d50である)組成物とを含む、多孔質セラミックハニカム体が開示される。
【0013】
幾つかの実施形態では、コージエライト含有セラミック体の形成に有用なバッチ組成物混合物が開示される。これらの実施形態の幾つかでは、バッチ組成物混合物は、MgO、Al2O3、及びSiO2に関する相対酸化物質量基準の相対質量パーセントで表した、マグネシア源、アルミナ源、及びシリカ源を含み、これらは、(15.4、34.1、及び50.5)、(12.2、34.1、及び53.7)、(13.3、31.2、及び55.5)、及び(16.6、31.1、及び52.3)で規定されるフィールド内にある。
【0014】
さらに別の態様では、コージエライト含有セラミック体の形成に有用なバッチ組成物混合物が開示される。バッチ組成物混合物は、酸化物基準の質量パーセントで表して、0.1%質量%~5.0%質量%のマグネシア源、アルミナ源、シリカ源、及び任意選択的に酸化リン源と、(15.4、34.1、及び50.5)、(12.2、34.1、及び53.7)、(13.3、31.2、及び55.5)、及び(16.6、31.1、及び52.3)で規定されるフィールド内にある、MgO、Al2O3、及びSiO2に関する相対酸化物質量パーセント基準で表して、及び95%質量%~99.9%質量%のMgO、Al2O3、及びSiO2とを含む。
【0015】
さらに別の態様では、コージエライト含有多孔質セラミック体の製造方法が、本明細書に開示される。該方法は、次を含む無機成分を提供する工程:12.2質量%~16.6質量%の範囲のマグネシア源、31.1質量%~34.1質量%の範囲のアルミナ源、50.5質量%~55.5質量%の範囲のシリカ源、ここで、マグネシア源、アルミナ源、シリカ源の各々の質量%は、すべて、存在する無機物の総重量の100%に基づいている;無機成分を、有機結合剤、24質量%SApf~58質量%SApfの範囲の細孔形成剤、及び液体ビヒクルと一緒に混合してバッチ組成物混合物を形成する工程、を含む。形成剤の量は、質量%SApf単位での無機物の総重量の100%に対する重量による上乗せ添加として与えられ、結合剤及び液体ビヒクルは、質量%SA単位での無機物及び細孔形成剤の質量の100%に対する上乗せ添加として添加される。バッチ組成物は、未焼成体へと成形され、かつ、該未焼成体を、合計質量パーセントが少なくとも85質量%のコージエライト及びインディアライトを含む結晶相と、(15.4、34.1、及び50.5)、(12.2、34.1、及び53.7)、(13.3、31.2、及び55.5)、及び(16.6、31.1、及び52.3)で規定されるフィールド内にある、MgO、Al2O3、及びSiO2に関して相対酸化物質量パーセント基準で表したMgO、Al2O3、及びSiO2組成物とを含む多孔質セラミック体へと変換するのに効果的な条件下で焼成されうる。
【0016】
前述の概要及び後述する詳細な説明はいずれも、多数の例を提供し、本開示のさらなる説明を提供することを意図しているものと理解されたい。
【0017】
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成し、例示的な実施形態を示し、説明とともに、本開示の原理を説明する働きをする。図面は、必ずしも縮尺どおりには描かれていない。同様の参照番号は、同じ又は実質的に類似した部分を示すために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本開示の1つ以上の実施形態による、コージエライト及びインディアライトの結晶構造化セラミック材料を含むハニカム体として具現化されるセラミック体の斜視図
【
図1B】本開示の1つ以上の実施形態による、例示的な壁及び外皮構造を示す
図1Aのセラミックハニカム体の一部の拡大した端面の概略図
【
図1C】本開示の1つ以上の実施形態による、コージエライト及びインディアライトの結晶構造化セラミック材料を含む閉塞されたハニカム体として具現化されるセラミック体の斜視図
【
図2】本開示の1つ以上の実施形態による、未焼成ハニカム体の押し出しを示す押出機の部分断面側面図
【
図3】本開示の1つ以上の実施形態による、フィールド内のMgO:Al
2O
3:SiO
2の相対酸化物重量比の3成分系プロット(合計100%のMgO、Al
2O
3、及びSiO
2に基づく)を示す図
【
図4A】本開示の1つ以上の実施形態による、コージエライト及びインディアライトの結晶構造化セラミック材料を含む例示的な多孔質セラミック体(例えば、実施例E3A)の多孔質壁の研磨断面の代表的な顕微鏡写真
【
図4B】本開示の1つ以上の実施形態による、ドーパントMg
3Al
2Si
6O
18の添加パーセントに対する細孔径(d
50及びd
10)のプロット
【
図4C】本開示の1つ以上の実施形態による、ドーパントMg
3Al
2Si
6O
18の添加パーセントに対するd
fのプロット
【
図4D】化学量論的コージエライトを本開示の幾つかの例と比較したときの小さい細孔画分及び比較的高いメジアン細孔径の減少を示す、メジアン細孔径に対する微分細孔容積(ml/gm)のプロット
【
図5】本開示の1つ以上の実施形態による、コージエライト及びインディアライト結晶構造化されたセラミック材料を含むセラミック体の製造方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、例示的な実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下にさらに十分に説明される。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が網羅されており、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。図面では、特徴及び構成要素の寸法及び相対寸法は、明確にするために誇張されている場合があり、したがって、一定の縮尺で描かれていない場合がある。図面中の同様の参照番号は、同じ又は類似の要素を示しうる。
【0020】
要素が別の要素の「上に」あるか、若しくは、別の要素に「接続」又は別の要素に「結合」されていると呼ばれる場合には、それは、他方の要素の上に直接あるか、又は他方の要素に直接接続されていてよく、あるいは、介在する要素又は相互接続要素が存在していてもよいものと理解されたい。対照的に、要素が別の要素の「上に直接」あるか、若しくは、別の要素に「直接接続」又は別の要素に「直接結合」されていると呼ばれる場合には、介在する要素は存在しない。
【0021】
本明細書に開示されるハニカム体は、好ましくは、過酷な環境において化学的に耐久性があり、900℃を超えるような高温に耐えることができ、熱衝撃耐性があり、かつ比較的強靱で頑丈である。
【0022】
さらには、本明細書に開示されるフィルタ及びハニカム体は、さらに好ましくは、燃料経済性の改善に役立ち、さらになお好ましくは、同時に、二酸化炭素及び他の燃焼副産物の排出の低減にも役立つ。
【0023】
好ましくは、本明細書に開示される多孔質セラミックハニカムは、狭い細孔径分布を有する。本明細書に開示される多孔質セラミック材料、多孔質セラミックハニカム、及びフィルタは、GPF用途に適している。比較的低い熱容量を有するコージエライトが好ましい。また、コージエライトのより低い熱膨張係数は、改善された耐熱衝撃性を与えることができ、幾つかの実施形態では、例えば、GPFが素早く着火して低温始動排出を所望のレベル未満に保持することができるように、例えばGPFに三元触媒(TWC)機能を統合することによって触媒材料をホスティングするのに適している。
【0024】
本開示は、多孔質コージエライトをベースとした材料の微細構造が、GPF適用空間などにおいて背圧と濾過効率との有利な組合せを提供できるようにする、新しい組成物、バッチ混合物、及びハニカム体の製造方法を提供する。
【0025】
好ましくは、本明細書に開示される多孔質セラミック体は、低いdfと高い平均バルク気孔率(%P)とを組み合わせた、微細構造を有する主コージエライト相を含む多孔質コージエライト含有体であり、高いd50を提供することができる。改良されたコージエライト含有セラミック材料は、GPF及びDPF用途、特に壁触媒含有ウォッシュコートを用いた用途において、既知のコージエライト、AT、及びSiC材料よりも予想外の優れた性能を提供することができる。
【0026】
一組の実施形態では、本開示は、コージエライトを含有する主結晶相、体積による比較的高い平均バルク気孔率(例えば、%P≧50%)、及び比較的狭い細孔径分布(例えば、df≦0.50)を含む多孔質セラミック体(例えば、多孔質セラミックハニカム体)を提供する。参考までに、dfは、(d50-d10)/d50として定義され、メジアン細孔径d50未満の細孔径分布の相対的な幅の尺度である。dfが小さいほど、メジアン細孔径d50未満のサイズを有する細孔の細孔径分布が密であることを示す。気孔率及び細孔径は、既知の水銀ポロシメトリ技法によって測定することができる。
【0027】
幾つかの実施形態では、多孔質セラミックハニカム体は、例えば、幾つかの実施形態では8μm≦d50≦22μmなど、比較的高いメジアン細孔径(d50≧8μm)を含みうる。幾つかの実施形態では、コージエライトを含有する多孔質セラミックハニカム体は、25℃~800℃の間で測定して、熱膨張係数(CTE)を15×10-7/℃以下に下げることができ、幾つかの実施形態では4×10-7/℃≦CTE≦15×10-7/℃のCTEを提供する微小亀裂をさらに含む。
【0028】
幾つかの実施形態では、セラミック組成物材料は、酸化リン(P2O5)などのドーパントを含むことができ、該ドーパントの1つの機能は、好ましくは幾つかの微細な細孔を満たし、次いで冷却すると結晶化する安定した液体が反応焼結プロセス中に生成するのを助けることでありうる。幾つかの実施形態では、多孔質セラミック体は、好ましくは、コージエライトの結晶構造を有する材料を、58質量%以上(例えば、58%~85%)含む。多孔質セラミック体はまた、インディアライトの結晶構造を有する材料も、12質量%以上(例えば、12質量%~32質量%)含みうる。幾つかの実施形態では、多孔質セラミック体は、コージエライト及びインディアライトの結晶構造を有する材料を、85質量%超、又はそれ以上(例えば、85質量%~97質量%)含みうる。
【0029】
幾つかの実施形態では、ドーパントは、化学量論的コージエライトのMgO:Al2O3:SiO2の2:2:5の理想的な比からMg3Al2Si6O18又はMg3Al5P3O18の方に向かって、それぞれ、5%~22%及び2%~14%の量だけ移動するように機能する。したがって、セラミック材料の組成物は、非化学量論的コージエライトを含む。
【0030】
本開示の幾つかの実施形態では、多孔質セラミック体は非化学量論的コージエライトを含み、これは、化学量論的コージエライトと比較して1つ以上の利点を提供することができる。例えば、多孔質セラミック体の細孔径分布は、名目上化学量論的なコージエライト組成に基づく細孔径分布よりも狭くすることができる。結果として、本明細書に開示される多孔質セラミック体の幾つかの実施形態から、優れたガス流動透過性、優れたウォッシュコート適合性(とりわけTWC及びSCR触媒との)、より高い濾過効率、及び/又は強化された選択性を有するフィルタ及び/又は基材を生成することが可能である。さらには、幾つかの実施形態では、より微細な無機原料を使用して、多孔質セラミック体内に同じ又はより大きいメジアン細孔径を生成することができる。液相は、未焼成体の焼結中に形成することができ、また、無機粒子間のより微細な空間を埋めることができ、その結果、例えば、焼成時に得られるメジアン細孔径が、バッチ組成物に用いられる可燃性細孔形成剤の粒径をより反映するようになる。加えて、幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるハニカム体又は本明細書に開示される多孔質セラミック材料からなるハニカム体は、バッチにおけるより微細な無機粒子の使用などに起因して、押し出しによってより薄い壁を含むように製造されうる。さらには、幾つかの実施形態では、焼成サイクルの最高温度浸漬段階などにおいて形成される液相の生成は、好ましくは適度に低い温度、より短い浸漬時間、又はそれらの組合せであっても、非化学量論的コージエライトを形成するための反応を加速するのに役立ちうる。
【0031】
定義
コージエライト-次の系列式を有するシクロケイ酸アルミニウムマグネシウム:(Mg,Fe)2Al3(Si5AlO18)~(Fe,Mg)2Al3(Si5AlO18)。鉄及びニッケルが少量、すなわち、4質量%未満で存在しうる。幾つかの実施形態では、コージエライト相は、鉄を含まない、又はニッケルを含まない、若しくは鉄及びニッケルを含まない。コージエライト結晶は、好ましくは、1つの結晶軸に沿って負の熱膨張を有し、焼結したセラミック材料に低い平均熱膨張係数を与える。
【0032】
インディアライト-コージエライトの六方二形(hexagonal dimorph)である高温多形アルミノケイ酸塩相。ベリルと同構造であり、(Si、Al)6O18環にAlがランダムに分布している。インディアライトは、組成的にコージエライトに類似しており、また、1つの結晶軸に沿って負の熱膨張も有している。インディアライトは、ゆっくりとコージエライトへと変換することができ、インディアライトは約1250℃未満で準安定である。鉄及びニッケルが少量、すなわち、4質量%未満で存在しうる。幾つかの実施形態では、インディアライト相は、鉄を含まない、又はニッケルを含まない、若しくは鉄及びニッケルを含まない。
【0033】
スピネル-少量の溶存鉄及び/又は他の不純物を含みうる、硬い結晶相材料MgAl2O4。
【0034】
サフィリン-硬い結晶性アルミノケイ酸マグネシウム。
【0035】
頑火輝石-少量の溶存鉄及び/又は他の不純物を含みうる、輝石族の斜方晶系材料MgSiO3。
【0036】
ムライト-結晶性アルミノケイ酸塩相材料。
【0037】
クリストバライト-シリカの高温多形。これは、石英(SiO2)と同じ化学式を有するが、結晶構造が異なることを意味する。
【0038】
非晶質相-典型的には、主にシリカと、少量のアルミナ、マグネシア、チタニア、並びにナトリウム、カルシウム、鉄、及びニッケルの酸化物不純物を含むガラス。
【0039】
これより、本開示のさまざまな実施形態を、本明細書に開示及び記載される表、及び
図1A~5を参照して説明する。幾つかの実施形態では、多孔質セラミック体100は、
図1A及び1Bに示されるハニカム体として具現化されうる。ハニカム体として具現化されるセラミック体100は、多孔質セラミック体100の軸方向長さに沿って第1の端部103(例えば、入口端)から第2の端部105(例えば、出口端)まで延びるチャネル104のハニカムを形成する、交差する多孔質壁102のマトリクスを含みうる。幾つかの実施形態では、チャネル104は、互いに平行である。各セルの壁102によって輪郭が描かれ、画成される横断面のチャネル形状は、
図1A及び1Bに示されるように正方形でありうる。横断面において、セル密度、又は平均セル密度を測定又は計算することができ、例えば、1平方インチあたりのセル数、又は1平方センチメートルあたりのセル数など、面積あたりのセルの数のセル密度(又は、チャネル密度)を決定することが可能である。他の横断面チャネル形状は、長方形(非正方形)、三角形、八角形、六角形、ひし形、円形、他の多角形形状、前述の組合せなどを含む。さらには、さまざまなセル(及び、したがってチャネル)は、丸みを帯びた隅部(図示されるように)、面取りされた隅部、四角い隅部、又はそれらの組合せを含みうる。
【0040】
ハニカム体として構成された場合の多孔質セラミック体100は、0.002インチ~0.016インチ(0.05mm~0.41mm-
図1B参照)、又はさらには、幾つかの実施形態では0.004~0.012インチ(0.10mm~0.30mm)の範囲の壁102の横断壁厚Twを有する工程を含みうる。さらには、交差する多孔質壁102は、ハニカム体100全体にわたって実質的に一定の厚さでありうるか、又は任意選択的に、異なる厚さを含みうる。例えば、交差する多孔質壁102の壁厚twは、最後の1~5本のチャネルなど、多孔質セラミック体100の外皮106により近接して、外皮106の近くに、より厚い多孔質壁102のハローを提供することができ、それによって、構造の強度及びその取り扱いを改善することができる。外皮106は、例えば、壁102の横断壁厚Twの厚さの1から5倍の厚さtsを含みうる。
【0041】
幾つかの実施形態では、多孔質セラミック体は、
図1Cに示されるように、閉塞されたセラミックハニカム体100Pとして具現化されうる。例えば、示される閉塞されたセラミックハニカム体100Pは、ディーゼルエンジン用途(DPFとして)又はガソリンエンジン用途(GPFとして)の微粒子フィルタ内に含まれうる。閉塞されたセラミックハニカム体100Pでは、ハニカム体100のチャネル104のうちのある特定のものは、その端部又はその近くに閉塞材料107で形成されたプラグ107を用いて塞ぐことができる。
図1Cの図示される実施形態では、チャネル104Lの幾つかは、例えば、米国特許第6,843,822号;同第6,696,132号;同第7,247,184号;及び同第7,601,194号の各明細書に記載されるような他のより小さいチャネル104Sより大きい油圧面積を有することができる。より小さいチャネル104Sは、入口端103又はその近くに形成されたプラグ107を含みうる。より大きいチャネル104Lは、出口端103(図示せず)又はその近くに形成された同様のプラグ(プラグ107に似た)を含みうる。他の実施形態では、閉塞されたセラミックハニカム体100Pは、例えば、米国特許第4,329,162号;同第6,849,181号;同第8,236,083号;及び同第8,512,433号の各明細書に開示されるものなど、同じサイズの入口チャネル及び出口チャネルを含みうる。例えば、米国特許第4,417,908号;同第8,844,752号;同第8,673,064号;及び同第9,757,675号の各明細書に開示されるような他のフィルタ閉塞パターンが可能である。チャネル104のすべてが閉塞されてもよく、あるいは任意選択的に、チャネルの幾つかが閉塞されていなくてもよい。例えば、小さいチャネル104Sの一部のみ(すべてではない)が閉塞されてもよい。同様に、大きいチャネル104Lの一部のみ(すべてではない)が閉塞されてもよい。幾つかの実施形態では、チャネルは、それぞれの入口端及び出口端に、オフセットされた市松模様のパターンで閉塞される。微粒子を含んだ排ガスは、大きいチャネル104Lに入り、プラグ107によって各チャネル104Lから直接出ることを阻止され、ガスは、微粒子を捕捉する多孔質壁102を通過するように強制される。オフセットされた市松模様の閉塞パターンは、低い圧力損失及び高い濾過効率のために入口及び出口チャネルの数を最大化することができるが、本開示のハニカム本体によれば、他の閉塞セルの配置が可能である。
【0042】
セル密度
多孔質セラミック体100は、
図1Aのフロースルーハニカム体(基材)又は
図1Cの閉塞されたハニカム体100Pとして構成される場合、例えば、15.5セル/cm
2 ~93セル/cm
2(100cpsi~600cpsi)の範囲の平均セル密度(チャネル密度と交換可能に用いられる)を有しうる。他のセル密度も使用することができる。セラミック体100の例示的な幾何学形状は、400/8の多孔質セラミックハニカム体として本明細書に定義される約8ミル(0.20mm)の横断壁厚Twを伴う400cpsi(62セル/cm
2)の平均セル密度CD、又は400/6の多孔質セラミックハニカム体として定義される、400cpsi(62セル/cm
2)の平均セル密度CDと約6ミル(0.15mm)の横断壁厚Twとを有しうる。多孔質セラミック体100の他の幾何学形状は、例えば、100/17、200/12、200/19、270/19、300/8、200/8、及び350/12の平均セル密度CD/横断壁厚Twの組合せを含みうる。セル密度CD及び横断壁厚Twの他の適切な組合せを使用することもできる。
【0043】
セラミック体100(及び閉塞されたハニカム体100P)の最も外側の断面形状は、円形(
図1A及び1Cに示される)、楕円系、長円形、三角形、又は三葉の形状、レーストラックの形状、正方形、長方形の断面の外形、五角形、六角形、八角形、又は他の多角形の凸形状など、横断面における任意の所望の外形のものでありうる。しかしながら、ハニカム体100及び閉塞されたハニカム体100Pは、これらの断面形状に限定されない。他の断面形状を使用することもできる。本明細書で用いられる多孔質セラミック体100は、多孔質セラミックハニカム体100、並びに閉塞されたセラミックハニカム体100Pを含むが、これらに限定されない。
【0044】
%P
本開示の多孔質セラミック体100の例示的な実施形態は、開放気孔率及び相互接続された気孔率を含む比較的高レベルの総バルク気孔率(%P)を含みうる。例えば、50倍の倍率で示された
図4Aに示されている多孔質壁102の顕微鏡写真を参照されたい。ここで、壁の黒い領域は気孔率であり、灰色の領域は非化学量論的なコージエライト及びインディアライトである。例えば、本明細書に記載される組成物の多孔質セラミック体100は、水銀圧入ポロシメトリで決定して、%P≧50%、%P≧55%、%P≧60%、又はさらには%P≧65%である、平均バルク気孔率%Pを含みうる。幾つかの実施形態では、平均バルク気孔率%Pは、50%≦%P≦72%、55%≦%P≦72%、60%≦%P≦72%、又はさらには65%≦%P≦72%の範囲でありうる。本開示の多孔質セラミック体100におけるこのような範囲の%Pは、十分な全体的強度及び熱衝撃耐性(TSR)を提供しつつ、微粒子フィルタ(DPF及びGPF用途)のための閉塞されたハニカム体100Pとして使用したときに、低い背圧を提供することができる。
【0045】
比較的高い平均バルク気孔率%Pに加えて、本開示の多孔質セラミック体100はまた、比較的狭い細孔径分布も含みうる。狭い細孔径分布は、幾つかの実施形態では、比較的微細な細孔径又は比較的大きい細孔径の最小化されたパーセンテージ、若しくは比較的微細な細孔径及び比較的大きい細孔径の両方の最小化されたパーセンテージによって立証することができる。このような狭い細孔径分布は、TWC又はSCR触媒などの触媒含有ウォッシュコートでコーティングされた場合でさえ、比較的低い背圧を提供するという利点を有する。さらには、狭い細孔径分布は、セラミック体100がディーゼル(DPF)及び/又はガソリンエンジン排気濾過(GPF)用途で利用される場合、低い煤負荷圧力損失並びに優れた煤捕捉効率を提供するために有益でありうる。
【0046】
この目的のために、相対的な細孔径分布は、Washburnの方程式を使用した水銀圧入ポロシメトリによって決定される。例えば、d50という量は、細孔容積に基づいた(マイクロメートル単位で測定した)メジアン細孔径を表す。したがって、d50は、多孔質セラミック体100の開放気孔率の50%が水銀によって侵入されているメジアン細孔径である。d90という量は、細孔容積の90%が、その直径がd90の値よりも小さい細孔で構成される細孔径である;したがって、d90は、多孔質セラミック体の開放気孔率の10体積%が水銀によって侵入されている細孔径に等しい。さらには、d10という量は、細孔容積の10%が、その直径がd10の値よりも小さい細孔で構成される細孔径である;したがって、d10は、多孔質セラミック体の開放気孔率の90体積%が水銀によって侵入されている細孔径に等しい。d10及びd90の値もまた、マイクロメートル単位で表される。
【0047】
d50
本開示の一態様によれば、多孔質セラミック体100の多孔質壁102は、焼成後に、d50≧8.0μm、d50≧10.0μm、d50≧12.0μm、d50≧14.0μm、d50≧16.0μm、又はさらには、幾つかの実施形態ではd50≧18.0μmのメジアン細孔径(d50)を含みうる。さらには、多孔質セラミック体100の多孔質壁102は、焼成後に、次の範囲のメジアン細孔径(d50)を含みうる:8μm≦d50≦22μm、10μm≦d50≦20μm、さらには、幾つかの実施形態では、12μm≦d50≦17μm。
【0048】
df
多孔質セラミック体100の開放されている、相互接続された気孔率の細孔径分布のより低い細孔画分(d50以下)の狭さは、d因子(df)を含むものとして特徴付けることができ、ここで、df=(d50-d10)/d50である。セラミック体100の例示的な実施形態では、dfは、df≦0.50、df≦0.40、df≦0.35、df≦0.30、さらには、幾つかの実施形態ではdf≦0.25でありうる。
【0049】
非化学量論的コージエライト含有多孔質セラミック体100の非常に狭い細孔径分布の実施形態は、df≦0.24、又はさらにはdf≦0.22のd因子を有することができる。幾つかの実施形態では、多孔質セラミック体100の多孔質壁102は、焼成後に、0.20≦df≦0.50;0.20≦df≦0.30、0.20≦df≦0.25、又はさらには、幾つかの実施形態では0.20≦df≦0.22であるdfを含みうる。
【0050】
db
細孔径分布(d10からd90)のより広い細孔画分の狭さの相対的尺度は、多孔質セラミック体100の開放されている、相互接続された気孔率の細孔径分布のパラメータであるd幅(db)によって特徴付けることができる。例えば、多孔質セラミック体100の開放されている、相互接続された気孔率の細孔径分布のdbは、db≦1.20、db≦1.00、db≦0.90であってよく、ここで、db=[(d90-d10)/d50]である。非化学量論的コージエライト含有多孔質セラミック体100の非常に狭い細孔径分布の実施形態は、db≦0.80、又はさらにはdb≦0.70を有することができる。幾つかの実施形態では、多孔質セラミック体100の多孔質壁102は、焼成後に、0.58≦db≦1.20;0.58≦db≦1.00、0.58≦db≦0.90、0.58≦dB≦0.80、又はさらには、幾つかの実施形態では0.58≦dB≦0.70であるdbを含みうる。
【0051】
CTE
非化学量論的セラミック材料を含む多孔質セラミック体100の熱膨張係数(CTE)は非常に低いことが発見された。例示的な実施形態によれば、本発明の非化学量論的コージエライト含有セラミック材料は、優れた耐熱衝撃性(TSR)をもたらす低い熱膨張係数を示すことが発見された。当業者によって認識されるように、TSRは、熱膨張係数(CTE)に反比例する。すなわち、熱膨張が小さい多孔質セラミック体100は、より高いTSRも有することができ、したがって、例えば、ディーゼル及びガソリン排気濾過用途(例えば、DPF及びGPF用途)で遭遇する比較的広い温度変動を耐え抜くことができる。
【0052】
したがって、例示的な実施形態では、本明細書に記載されるように、コージエライト及びインディアライトを含むセラミック相組成物を含む本開示の多孔質セラミック体100は、例えば、膨張計で測定して、少なくとも一方向に比較的低い熱膨張係数(CTE)を示しうる。特に、CTEは、すべて25℃~800℃の温度範囲にわたって測定して、CTE≦15×10-7/℃、CTE≦12×10-7/℃、CTE≦10×10-7/℃、幾つかの実施形態では、CTE≦8×10-7/℃を含みうる。非化学量論的コージエライト含有多孔質セラミック体100の幾つかの実施形態は、すべて25℃~800℃の温度範囲にわたって測定して、CTE≦6×10-7/℃、又はさらにはCTE≦5×10-7/℃などの非常に低いCTEを示しうる。幾つかの実施形態では、25℃~800℃の温度範囲にわたるCTEは、4×10-7/℃≦CTE≦15×10-7/℃;4×10-7/℃≦CTE≦10×10-7/℃;4×10-7/℃≦CTE≦8×10-7/℃、又はさらには4×10-7/℃≦CTE≦6×10-7/℃の範囲でありうる。
【0053】
多孔質セラミック体100は、微小亀裂を含む微小亀裂体としてさらに特徴付けることができる。微小亀裂のレベルは、微小亀裂インデックスnb3によって特徴付けることができる。多孔質セラミック体100の1つ以上の実施形態は、微小亀裂インデックスnb3≧0.10を含みうる。幾つかのさらなる実施形態では、微小亀裂インデックスnb3は、nb3≧0.20、nb3≧0.30、又はさらにはnb3≧0.40でありうる。微小亀裂インデックスnb3は、0.10≦nb3≦0.43、0.20≦nb3≦0.43、又はさらには、幾つかの高度に微小亀裂した実施形態では0.30≦nb3≦0.43の範囲でありうる。
【0054】
組合せ
前述の比較的高い平均バルク気孔率(%P)、比較的高いメジアン細孔径(d50)、比較的低いdf及び/又は比較的低いdb、及び比較的低いCTE(25℃~800℃)の組合せを備えた多孔質セラミック体100は、有用な濾過効率及びTSRを維持して、本開示の多孔質セラミック体100を排気濾過用途、とりわけGPF用途で効果的に使用することを可能にしつつ、低いクリーン圧力損失及び煤負荷圧力損失を提供することができる。
【0055】
多孔質セラミック体100の特に効果的な例は、本明細書に記載されるものなど、非化学量論的コージエライトを含むセラミック組成物を含むことができ、さらに、P%≧55%の多孔質壁102の平均バルク気孔率(%P)、d50≧9.0μmのメジアン細孔径(d50)(d50は多孔質セラミック体100のメジアン細孔径である)、df≦0.40(df=((d50-d10)/d50)である)、及び25℃から800℃で測定して、CTE≦13×10-7/℃を含むことができる。幾つかの実施形態では、多孔質セラミック体100は、本明細書に記載されるものなど、非化学量論的コージエライトを含むセラミック組成物材料を含むことができ、55%≦P%≦72%の多孔質壁102の平均バルク気孔率(%P)、8.0μm≦d50≦22.0μmのメジアン細孔径(d50)、0.20≦df≦0.50、及び25℃から800℃で測定して、4×10-7/℃≦CTE≦14×10-7/℃をさらに含みうる。
【0056】
本開示のある特定の他の例示的な実施形態は、本明細書に記載されるものなど、非化学量論的コージエライトを含むセラミック組成物を含むことができ、さらに、%P≧60%;d50≧10μm;df≦0.25;及び、25℃から800℃の間で測定して、CTE≦10×10-7/℃を達成することができる。さらには、高気孔率用途のためのある特定の他の例示的な実施形態は、%P≧65%;d50≧12μm;df≦0.22;及び、25℃から800℃の間で測定して、CTE≦10×10-7/℃を達成することができる。
【0057】
上に簡単に要約したように、本開示の例示的な実施形態は、非化学量論的コージエライトとインディアライトとの組合せで構成される主結晶相を含むセラミック複合材料を含む多孔質セラミック体100を提供する。特に、セラミック体100は、コージエライト及びインディアライトを含む結晶相の合計が少なくとも85質量%であり、スピネル、サフィリン、頑火輝石、ムライト、クリストバライト、及び非晶質相などの他の相を含みうる。他の結晶相が存在していてもよい。
【0058】
組成物
より詳細には、幾つかの実施形態では、多孔質セラミック体100は、非化学量論的コージエライトの主結晶相と、存在する無機物の総量に基づいて、0.1質量%~5.0質量%のP2O5などのドーパントを含む組成物とを含みうる。幾つかの実施形態では、組成物は、存在する無機物の総量に基づいて、1.0質量%~3.0質量%のP2O5を含みうる。さらなる実施形態では、組成物は、多孔質セラミック体100に存在する無機物の総量に基づいて、1.0質量%~2.0質量%のP2O5を含みうる。
【0059】
組成物は、
図3の3成分
図300に示されるように、相対酸化物質量基準で表した、MgO、Al
2O
3、及びSiO
2を含む。組成物は、本明細書では、概ね長方形の、又はわずかに菱形のフィールド形状を含みうる、(15.4、34.1、及び50.5)、(12.2、34.1、及び53.7)、(13.3、31.2、及び55.5)、及び(16.6、31.1、及び52.3)によって規定される隅部境界(端点)と、端点間の直線とを有する3成分
図300のフィールド350内に存在するMgO、Al
2O
3、及びSiO
2に関する「相対的」酸化物質量パーセント基準を使用して、3成分
図300上で定義される。このフィールド350は、化学量論的コージエライトである組成範囲外であると見なされ、化学量論的コージエライトは、3成分
図300の点352として
図3に示されている。理解されるように、フィールド350内の任意の点についてのMgO、Al
2O
3、及びSiO
2の各々の「相対的」酸化物質量パーセントは、合計100%になる。「相対的」という用語は、MgO、Al
2O
3、及びSiO
2の群内で相互にのみ相対的であることを意味する。組成物は、P
2O
5など、酸化物質量パーセントで表されるが、存在する無機物の総重量に基づく、他の酸化物を含みうる。次に、MgO、Al
2O
3、及びSiO
2の酸化物重量、並びにP
2O
5など、組成物中の任意の他の酸化物も合計で100%になる。
【0060】
幾つかの実施形態では、組成物は、フィールド350のサブフィールドである3成分
図300の第1のサブフィールド354内に存在するMgO、Al
2O
3、及びSiO
2に関する「相対的」酸化物質量パーセント基準で定義することができ、第1のサブフィールド354の隅部境界(端点)は、(13.5、34.1、及び52.4)、(12.2、34.1、及び53.7)、(13.3、31.2、及び55.5)及び(14.7、31.2、及び54.2)によって規定される。第1のサブフィールド354は、相対的酸化物質量基準で、より高濃度のアルミナ及びシリカを含む概ね長方形のフィールド形状を含みうる。この第1のサブフィールド354内の組成物は、10×10
-7/℃未満のCTE(25℃~800℃)及びd
f<0.25を含みうる。
【0061】
幾つかの実施形態では、組成物は、フィールド350のサブフィールドである3成分
図300の第2のサブフィールド356内に存在するMgO、Al
2O
3、及びSiO
2に関する「相対的」酸化物質量パーセント基準でさらに定義することができ、ここで、第2のサブフィールド356は、(15.4、34.1、及び50.5)、(14.3、34.1、及び51.6)、(14.5、31.7、及び53.9)、(14.7、31.2、及び54.2)、並びに(16.6、31.1、及び52.3)によって規定される隅部境界(端点)を含む。第2のサブフィールド356は、相対的酸化物質量基準で、より低濃度のアルミナ及びシリカを含む、概ね5面(不規則な五角形)の形状を含みうる。この第2のサブフィールド356内の組成物は、所与のd
fにおいて、さらに低いCTEを含みうる。
【0062】
本明細書で表される質量パーセント、並びに存在するさまざまな相の識別は、リートベルト解析法によって達成され、また、相対酸化物質量パーセントが、存在するMgO、Al2O3、及びSiO2の合計の100%のパーセンテージとしてのみ表されることを除き、セラミック体100に存在する無機物の総重量の100質量%のパーセンテージとして表される。
【0063】
多孔質セラミック体100は、5質量%~24質量%のMg
3Al
2Si
6O
18の凝集酸化物基準で提供されるドーパントをさらに含むことができる。
図4B及び4Cに見られるように、ドーパントとしてMg
3Al
2Si
6O
18を添加すると、メジアン細孔径d
50及びd
10(
図4A)が大幅に増加し、d
f(
図4C)が減少し、いずれも、微粒子フィルタにとって非常に望ましい属性である。
図4Dは、メジアン細孔径(μm)に対する微分細孔容積(ml/gm)のプロットを示している。このプロットは、化学量論的コージエライト352と比較して、幾つかの実施形態(例えば、E14及びE15)がより狭い全体的な細孔径分布(例えば、より低いd
b)をもたらし、特に、化学量論的コージエライト352の小さい細孔(d
50未満)の低い画分を劇的に低減することができることを示している。例えば、
図4Dに示される化学量論的コージエライトの低画分異常460は、示される二峰性の形状をもたらし、本開示による非化学量論的コージエライトを含む実施形態において実質的に低減することができる。例えば、E14及びE15には、それぞれ、20質量%のMg
3Al
2Si
6O
18及び3.8%のMg
3Al
5P
3O
18がドープされる。機構の観点から、このドーパント添加の結果として、焼成サイクルの浸漬段階中に大量の液相が形成され、毛細管力に起因して液体が移動し、より微細な細孔を満たすと考えられる。したがって、結果として、より狭い細孔径分布が生じるが、感知できるほどの気孔率の損失はない。例えば、3.8質量%のMg
3Al
5P
3O
18を添加すると、結果的に、d
fが約28%低下しうる。20質量%のMg
3Al
2Si
6O
18を添加すると、結果的に、d
fが約44%低下しうる。同等の%Pは、化学量論的コージエライトと比較して、実質的に保持されるか、又はわずかに低下するのみである。したがって、凝集酸化物基準の多孔質セラミック体100の組成物は、それ自体が酸化物基準で5質量%~24質量%の溶解Mg
3Al
2Si
6O
18又は1~9質量%の溶解Mg
3Al
5P
3O
18で構成される、85質量%~95質量%のコージエライト及びインディアライト相材料を含むことができる。他のリン含有固溶体は、任意選択的に又は追加的に存在しうる。
【0064】
他の実施形態では、ドーパントは酸化リン(P2O5)でありうる。酸化リン(P2O5)。酸化リン(P2O5)は、本明細書で指定された量でバッチ組成物に添加することができ、Mg2Al4Si5O18中、Mg3Al5P3O18、Mg2Al5Si3PO18、Mg3Al3Si4PO18、又はこれらの任意の組合せとして、多孔質セラミック体100内の固溶体中に存在することができる。酸化リン(P2O5)は、バッチ内に存在する無機物の総重量に基づいて、0.1質量%~5質量%で提供されうる。また、多孔質セラミック体100は、例えば、凝集酸化物基準で、1質量%~9質量%のMg3Al5P3O18、1質量%~14質量%のMg2Al5Si3PO18、1質量%~8質量%のMg3Al3Si4PO18、又は前述の任意の組合せと、85質量%~99質量%のMg2Al4Si5O18との組成物を含みうる。
【0065】
i-比
本開示の例示的な実施形態によれば、多孔質セラミック体100は、軸方向のI-比及び横方向のI-比によって定義することができるコージエライト相の好ましい結晶学的テクスチャを示す。軸方向のi-比及び横方向のi-比は、示された回折ピークのリートベルトデコンボリューションピーク強度として定義される。軸方向のi-比については、X線回折(XRD)ピーク強度は、多孔質セラミック体100の多孔質壁102に垂直に測定した。横方向のi-比については、XRDピーク強度は、壁面又はわずかに研磨されたハニカム壁面上で測定した。リートベルトデコンボリューションを使用して、存在する他の相の重複するピークの寄与からコージエライトのピーク強度を抽出することができる。本開示の例示的な実施形態では、セラミック体のコージエライト相は、0.40~0.63の軸方向のi-比及び0.78~0.90の横方向のi-比を含む。幾つかの実施形態では、軸方向のi-比は、0.50以下、又はさらには0.45以下でありうる。
【0066】
押出法
本開示の例示的な実施形態はまた、ある特定の無機粉末原料、細孔形成剤を含む粉末有機材料、液体ビヒクル(例えば、水)、及び1つ以上の加工助剤を含むバッチ組成物混合物から、コージエライト及びインディアライト含有セラミック体を製造する方法も提供する。該方法は、マグネシアの供給源、アルミナの供給源、シリカの供給源、及び場合によっては酸化リンなど、無機供給源材料を含む無機バッチ組成物混合物を提供することを含む。供給源は、本明細書に概説されるように、選択された粒径及び分布(例えば、dp
50及びdp
b)、並びに質量パーセント(質量%)を含みうる。次に、無機バッチ組成物粉末は、有機結合剤、細孔形成剤などの有機粉末材料;液体ビヒクル;及び、可塑剤及び潤滑剤からなる群より選択される1つ以上の加工助剤とともに混合及び/又は混練して、可塑化バッチ組成物混合物210を形成することができる。可塑化バッチ組成物混合物210は、ハニカム未焼成体などの未焼成体100G(
図2参照)へと成形又は他の方法で形成することができる。次に、未焼成体100Gを乾燥させ、その後、未焼成体100Gを本明細書に記載される特性を含む前述のコージエライト-インディアライト結晶組成物を含む多孔質セラミック体100へと変換するのに効果的な条件下で焼成することができる。
【0067】
例えば、可塑化バッチ組成物は、押出法によって、未焼成体100Gへと形成されうる。例えば、
図2は、押出機200(例えば、連続二軸押出機)の例示的な実施形態の断面側面図を示している。押出機200は、その中に形成されたチャンバ214を含むバレル212を備えている。バレル212は、モノリシックとすることができ、あるいはそれは、長手方向215(例えば、矢印で示される方向)に連続して接続された複数のバレルセグメントから形成することができる。チャンバ214は、バレル212を通って、上流側215Uと下流側215Dとの間に長手方向215に延びる。バレル212の上流側215Uには、ホッパー又は他の材料供給構造を含むことができる材料供給ポート216が、バッチ組成物混合物210を押出機200に供給するために提供されうる。ハニカム押出ダイ218を含むカートリッジアセンブリ217を、バッチ混合物210を未焼成体100Gなどの所望の形状に押出すために、下流側215Dに設けることができる。ハニカム押出ダイ218は、可塑化バッチ組成物混合物210がハニカム押出ダイ218に到達する前に、安定したプラグタイプの流れ前面の形成を容易にするために、概ね開いた空洞、スクリーン220、ホモジナイザ222などの他の構造を先行させることができる。
【0068】
図2にさらに示されるように、一対の押出機スクリュ224をバレル212に回転可能に取り付けることができる。スクリュ224は、示されるように、互いにほぼ平行に配置することができるが、任意選択的に、互いに対してさまざまな角度で配置することができる。スクリュ224はまた、同じ又は異なる方向にスクリュ224を回転させるために、バレル212の外側に配置された駆動機構223に結合することができる。両方のスクリュ224は、示されるように、単一の駆動機構223、又は個々の駆動機構(図示せず)に結合することができるものと理解されたい。スクリュ224は、バッチ組成物混合物210を、ポンピング及び長手方向215でのさらなる混合作用を伴って、チャンバ214を通して移動させるように動作する。スクリュ224をそれらの端部で及び/又はそれらの長さに沿って支持するために、さらなる支持構造が提供されうる。このような支持構造は、バッチ組成物混合物210がそこを通って流れることを可能にするために、その中に穿孔又は孔を含みうる。
【0069】
図2はさらに、未焼成体100Gがそこから押し出されている押出機200を示している。押出機カートリッジ217は、ハニカム押出ダイ218及び外皮形成マスク226などの押出ハードウェアを含みうる。未焼成体100Gは、押出機200から押し出され、幾つかの実施形態では、複数の壁102のマトリクスを取り囲む外皮106もまた、押し出し中に複数の壁102とともに形成され、編み合わせられる。次に、ハニカム体100Gは、切断要素228である長さに切断することができ、トレイ230上に提供することができる。トレイ230は、例えば、米国特許第9,440,373号;同第9,085,089号;同第8,407,915号の各明細書に記載されるようなものでありうる。
【0070】
切断は、ワイヤ切断、帯鋸又は往復式鋸などの鋸切断、若しくは他の切断方法によって達成することができる。トレイ232は、例えば、米国特許第9,335,093号、同第9,038,284号、同第7,596,885号、及び同第6,259,078号の各明細書に記載されるように、乾燥機に提供することができる。
【0071】
RF乾燥、マイクロ波乾燥、オーブン乾燥、又はそれらの組合せなど、任意の適切な乾燥方法を使用することができる。幾つかの実施形態では、未焼成体100Gは、乾燥後などにログから切断することができ、そこから複数のハニカム体が提供される。乾燥後、未焼成体100Gは、未焼成体100Gをコージエライト、インディアライト、及び他の通常は幾つかの二次結晶相を含む多孔質セラミック体100へと変換するのに効果的な条件下で焼成されうる。コージエライト、インディアライトを含む多孔質セラミック体100を製造するのに有効な条件を提供する焼成サイクルは、使用する組成物及び部品サイズに応じて、1340℃から1425℃の間のピーク浸漬温度で約5~約20時間以上でありうる。
【0072】
バッチ組成物
別の態様によれば、そこからコージエライト及びインディアライトを含む多孔質セラミック体100が形成されるバッチ組成物を提供することができる。バッチ組成物混合物は、マグネシア源、アルミナ源、シリカ源、任意選択的にリン源、及び細孔形成剤(例えば、デンプン及び/又はグラファイト)を含む無機原料成分を含みうる。適切な粒径(dp10、dp50、dp90)、粒径分布(dpf)、及び粒子分布幅(dpb)は、以下の表1に記載されているとおりでありうる。
【0073】
【0074】
この目的のために、本明細書で言及されるように、すべての粒径は、特性が供給業者によって定義された、分散性アルミナ(アルミニウム一水和物-AlOOH)を除き、レーザ回折技術及びMicrotrac粒径分析器によって測定される。
【0075】
マグネシア源
例えば、マグネシア源は、例として、限定はしないが、コージエライト-インディアライト結晶相組成物の形成に有用なマグネシウムの酸化物を提供することができる任意の適切な化合物でありうる。例えば、マグネシア源は、タルク源、又は水酸化マグネシウム、又はそれらの組合せとして選択することができる。例えば、タルク源は、か焼された又はか焼されていないタルクでありうる。任意選択的に、マグネシア源は、MgO、Mg(OH)2、MgCO3、MgAl2O4、Mg2SiO4、及びMgSiO3のうちの1つ以上でありうる。あるいは、マグネシア源は、フォルステライト、カンラン石、緑泥石、又は蛇紋石のうちの1つ以上から選択されうる。マグネシア源は、タルクの場合、約6μm~約25μmの範囲のメジアン粒径(dp50)を有することができ、dpb≦2.2を有することができ、ここで、dpbは粒子幅因子であり、(dp90-dp10)/dp50である。マグネシア源は、バッチ組成物混合物210中に存在するマグネシア、アルミナ、及びシリカ無機物の総重量の100%に基づいて、約12質量%~17質量%の相対質量パーセントを構成しうる。
【0076】
アルミナ源
アルミナ源は、例えば、限定はしないが、コージエライト-インディアライト結晶組成物の形成に有用なアルミニウムの酸化物を提供することができる任意の適切な化合物でありうる。アルミナ源は、例えば、か焼されたアルミナ(アルファアルミナ)、コランダム、Al(OH)3などの水酸化アルミニウム(又は、アルミナ水和物)、コロイド懸濁液を形成することができるベーマイト(AlOOH)などの分散性アルミナ、ダイアスポア、又はガンマアルミナ又はローアルミナなどの遷移アルミナなど、アルミナ形成源から選択することができる。あるいは、アルミナ源は、アルミニウムと、例えばMgAl2O4、ムライト、カオリン又はか焼カオリンなどの粘土、ハロイサイト粘土(Al2Si2O5(OH)4)、アタパルジャイト粘土(Mg,Al)2Si4O10(OH)・4(H2O))、パイロフィライト(Al2Si4O10(OH)2)、カイヤナイト(Al2SiO5)、亜塩素酸アルミニウム(Al(ClO2)3)などの別の金属酸化物又は元素との化合物でありうる。
【0077】
幾つかの実施形態では、アルミナ源のメジアン粒径(dp50)は、約7.0μm以下であってよく、例えば、約0.5μm~約7.0μmの範囲でありうる。アルミナ源は、バッチ組成物混合物210中に存在するマグネシア、アルミナ、及びシリカ無機物の総重量の100%に基づいて、約31質量%~34質量%の相対酸化物質量パーセントを構成しうる。幾つかの実施形態では、アルミナ源は、それぞれ、バッチ組成物混合物中の無機物の総重量に基づいて、17質量%~22質量%のアルミナ;及び、14質量%~18質量%の範囲のアルミナ水和物の組合せを含みうる。
【0078】
シリカ源
シリカ源は、例えば、限定はしないが、コージエライト-インディアライト結晶組成物の形成に有用なシリカの酸化物を提供することができる任意の適切な化合物でありうる。シリカ源は、例えば、石英、隠微晶質石英、溶融シリカ、珪藻土シリカ、低アルカリゼオライト、コロイドシリカ、及びそれらの組合せなどのシリカ源から選択することができる。加えて、シリカ源は、例えば、タルク、粉砕又は微粒子コージエライト、カオリン粘土、パイロフィライト(Al2Si4O10(OH)2)、カイヤナイト(Al2SiO5)を含む、マグネシウム及び/又はアルミニウムを含む化合物として提供することもできる。実施形態では、シリカ源のメジアン粒径(dp50)は、約0.5μm~約6μmの範囲でありうる。シリカ源は、バッチ組成物混合物210中に存在するマグネシア、アルミナ、及びシリカ無機物の総重量の100%に基づいて、約52質量%~56質量%の相対酸化物質量パーセントを構成しうる。
【0079】
リン源
酸化リン源は、例えば、限定はしないが、酸化リンを提供することができる任意の適切な化合物でありうる。酸化リン源は、例えば、メタリン酸アルミニウム(Al(PO3)3、ベルリナイトとも呼ばれるリン酸アルミニウム、バリサイトとも呼ばれるリン酸アルミニウム二水和物、リン酸三マグネシウムなどのリン酸マグネシウム、又はリン酸マグネシウムの水和物から選択することができる。表1に示されるメジアン粒径(d50)及び/又は粒径分布を有する酸化リン粉末を使用することができる。例えば、酸化リン源は、例として、約10μm~20μmのメジアン粒径を有することができる。さらには、酸化リン源は、幅因子dpb≦2.5を含む粒径分布を有することができ、ここで、dpb=(dp90-dp10)/dp50である。
【0080】
細孔形成剤
比較的高い平均バルク気孔率(%P≧50%)を達成するために、バッチ組成物混合物210は、平均バルク気孔率及び場合によっては多孔質セラミック体の細孔径分布100の調整を助ける細孔形成剤を含むことができる。細孔形成剤は、未焼成体100Gの乾燥及び/又は加熱中に蒸発するか、又は燃焼によって気化して、所望の高い平均バルク気孔率を得て、これにより多孔質セラミック体100内に所望する粗いメジアン細孔径(d50)をさらに含むことができる、一過性の材料である。適切な細孔形成剤は、炭素;グラファイト;デンプン;木、殻、又はナッツ粉;ポリエチレンビーズなどのポリマーなど、及び前述の組合せを含むことができるが、これに限定されない。デンプンは、コーンスターチ、エンドウデンプン、米デンプン、サゴデンプン、ジャガイモデンプンなどを含みうる。デンプンは、架橋していてもよい(XLデンプン)。ジャガイモデンプンなどのある特定の細孔形成剤を使用する場合、比較的粗い(より大きいdp50)タルク、アルミナ、及び/又はシリカ源の組合せを利用して、dfを下げることができる。
【0081】
多孔質セラミック体100における比較的高い気孔率と比較的大きいd50との有用な組合せの提供を助ける例示的な実施形態は、デンプンとグラファイトとの組合せを含みうる。例えば、細孔形成剤は、XLエンドウデンプンを単独で又はグラファイトと組み合わせて、若しくは、XLコーンスターチを単独で又はグラファイトと組み合わせて含みうる。細孔形成剤は、バッチ組成物混合物210中に存在する無機物の総重量の100%に対する上乗せ添加(SA)に基づいて、約24質量%SApf~約58質量%SApf、又はさらには約27質量%SApf~約55質量%SApfの量でバッチ組成物混合物210に提供することができる。バッチ組成物混合物210中に存在する無機物の質量の100%に基づいて、20質量%SApf~約47質量%SApfの間のXLデンプンと、5質量%SApf~約15質量%SApfの間のグラファイトとの組合せを含む実施形態は、濾過用途にとって有用な高い平均バルク気孔率%Pとメジアン細孔径(d50)との優れた組合せを提供することができる。XLエンドウデンプン及びXLコーンスターチと、グラファイトとの組合せは、特に効果的でありうる。細孔形成剤の量は、wi×質量%SA/100として計算され、ここで、wiは無機原料の総重量である。
【0082】
デンプンは、約10μm~50μmの範囲、他の実施形態では、約15μm~30μmの範囲のメジアン粒径(dp50)を有することができる。グラファイトは、幾つかの実施形態では、約5μm~10μmの範囲のメジアン粒径(dp50)を有することができる。
【0083】
有機結合剤
バッチ組成物混合物210は有機結合剤を含みうる。有機結合剤は、例えば、セルロース含有結合剤でありうる。幾つかの実施形態では、セルロース含有結合剤は、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、それらの混合物などでありうるが、これらに限定されない。メチルセルロース及び/又はメチルセルロース誘導体は、バッチ組成物混合物210で使用するための有機結合剤としてとりわけ適しており、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが優れた選択肢である。セルロースエーテルの供給源は、DOW(登録商標)CHEMICAL CO.社から入手可能なMETHOCEL(商標)セルロース製品である。
【0084】
下記表2A~2Eに開示されているものなどのバッチ組成物混合物210の幾つかの実施形態は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含みうる。セルロースエーテル結合剤の他の組合せは、異なる分子量を有するセルロースエーテルを含みうる。あるいは、セルロースエーテルの組合せは、異なる疎水性基を有するセルロースエーテル、異なる濃度の同じ疎水性基を有するセルロースエーテル、又は他のセルロースエーテルの組合せを含みうる。異なる疎水性基は、非限定的な例として、ヒドロキシエチル又はヒドロキシプロピルでありうる。有機結合剤は、幾つかの実施形態では、ヒドロキシエチルメチルセルロース結合剤とヒドロキシプロピルメチルセルロース結合剤との組合せでありうる。有機結合剤の他の適切な組合せを使用することができる。
【0085】
有機結合剤は、約2.0質量%SA~8.0質量%SA、又はさらには約3.0質量%SA~約6.0質量%SAの量でバッチ組成物に提供することができ、ここで、SAは、バッチ組成物混合物210中に存在する無機物及び細孔形成剤の総重量の100%に対する上乗せ添加に基づいている。
【0086】
加工助剤
さらには、バッチ組成物混合物210は、可塑剤、界面活性剤、及び/又は油潤滑剤などの他の加工助剤を含みうる。加工助剤として使用することができる界面活性剤の非限定的な例は、C8~C22脂肪酸、及び/又はそれらの誘導体である。これらの脂肪酸とともに使用することができる追加の界面活性剤成分は、C8~C22脂肪酸エステル、C8~C22 脂肪族アルコール、及びこれらの組合せである。例示的な界面活性剤は、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、及びパルミチン酸、並びにそれらの誘導体、トール油、ラウリル硫酸アンモニウムと組み合わせたステアリン酸、及びこれらのすべての組合せである。例示的な実施形態では、界面活性剤は、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、トール油、又は前述の組合せである。幾つかの実施形態では、加工助剤の量は、図示される実施形態では、約0.25質量%SA~約2質量%SA、及び約0.5質量%SA~1.5質量%SAの範囲でありうる。
【0087】
成形助剤として使用することができる油潤滑剤の非限定的な例は、軽油、コーン油、高分子量ポリブテン、ポリオールエステル、軽油とワックスエマルジョンとのブレンド、コーン油中のパラフィンワックスのブレンド、又はこれらとオレフィンの組合せを含みうる。幾つかの実施形態では、油潤滑剤の量は、約0質量%SA~約2質量%SAでありうる。幾つかの実施形態では、潤滑剤は使用されない。
【0088】
液体ビヒクル
1つ以上の実施形態では、バッチ組成物混合物210は、液体ビヒクルを含み、これは、バッチ内に存在する無機物及び細孔形成剤の重量の100%に対する上乗せ添加として液体ビヒクルのパーセンテージLV%で提供されうる。バッチ組成物混合物210中のLV%は、バッチ組成物混合物210中に存在する無機物と細孔形成剤とを合わせた総重量の100%に対して、上乗せ添加で約15質量%≦LV%≦50質量%の量で混合物に添加することができる。
【0089】
使用中、液体ビヒクルは、有機結合剤が溶解するための媒体を提供し、したがって、バッチ組成物混合物210に可塑性を提供し、かつ、その中の無機粒子の湿潤を提供する。液体ビヒクルは、水又は水混和性溶媒などの水性ベースの液体でありうる。一実装形態では、液体ビヒクルは、脱イオン水などの水であるが、アルコール(例えば、メタノール又はエタノール)などの他の溶媒は、単独で、又は水と組み合わせて使用することができる。
【0090】
処理
無機バッチ粉末成分、有機結合剤、及び細孔形成剤は、液体ビヒクル及び1つ以上の加工助剤と緊密にブレンドして、未焼成体100Gへと成形されたときに可塑化バッチ組成物混合物210に塑性成形性及び未焼成強度を与えることができる。成形が押し出しによって行われる場合、最も典型的には、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び/又はそれらの組合せなどのセルロースエーテル結合剤は、一時的な有機結合剤として機能する。トール油及び/又はオレイン酸は、適切な加工助剤として役立ちうる。無機バッチ成分、有機結合剤、及び細孔形成剤は、通常、乾燥形態で一緒に混合され、次に、液体ビヒクル(例えば、水)及び1つ以上の加工助剤と混合される。液体ビヒクルLV%(例えば、水)の量は、バッチ組成物混合物ごとに異なる場合があり、したがって、特定のバッチ組成物混合物の押出し性を事前に試験し、必要に応じてLV%を調整することによって決定することができ、押し出しのための適切な可塑性と最適な取り扱い特性を達成する。
【0091】
押出ダイを介した押し出しによる可塑化バッチ組成物混合物210からの未焼成体100Gの形成及び成形に加えて、他の適切な成形方法を使用することができる。例えば、一軸又は等方圧プレス、鋳造、及び射出成形を使用して、未焼成体100Gを形成することができる。例えば、多孔質セラミック体100がハニカム体として具体化される場合、例えば、触媒コンバータフロースルー基材(例えば、触媒基材)又は微粒子ウォールフローフィルタ用途での使用のための閉塞ハニカム体100Gとして使用するために具体化される場合には、押し出しを使用することができる。得られた未焼成体100Gは、乾燥させた後、ガス又は電気窯などの炉内において、未焼成体100Gを多孔質セラミック体100へと変換するのに効果的な条件下で焼成することができる。焼成後、多孔質セラミック体100は、本明細書で論じられるように閉塞されて、閉塞されたセラミック体100Pを形成することができる。
【0092】
焼成
1つ以上の実施形態では、未焼成体100Gをセラミック体100へと変換するのに効果的な焼成条件は、未焼成体100Gを1,340℃~1,425℃の範囲の最高浸漬温度に加熱し、次に、コージエライト-インディアライト-擬板チタン石結晶相複合構造を生成するのに十分な浸漬時間の間、最高浸漬温度で保持することを含みうる。最高浸漬温度は、未焼成体100Gを、コージエライト及びインディアライト結晶相を含むセラミック体100へと変換するのに十分な浸漬時間の間、維持される。浸漬時間は、例えば、約6時間~約24時間でありうる。浸漬時間の前に、適切にゆっくりとした加熱ランプアップを行い、その後、加熱時に乾燥未焼成体100G又は冷却時に多孔質セラミック体100に熱衝撃及び亀裂が生じないように十分に遅い速度で冷却する。
【0093】
閉塞化
ウォールフロー微粒子フィルタ用途(例えば、DPF又はGPF)で使用するための閉塞されたハニカム体100Pを得るために、当技術分野で知られているように、入口端103において、多孔質セラミックハニカム体を含む多孔質セラミック体100のチャネルの一部を閉塞させることができる。閉塞はチャネル104の端部又はその近くであってよく、プラグは約3mm~20mmの深さまでであってよいが、この深さは変動しうる。幾つかの実施形態では、出口端105のチャネル104の一部は閉塞されるが入口端103(例えば、入口チャネル)では閉塞されず、入口端103のチャネル104の別の部分は塞栓されるが、出口端105(例えば、出口チャネル)では閉塞されない。したがって、完全に閉塞された実施形態では、各チャネル104は、一端でのみ閉塞される。
【0094】
幾つかの実施形態では、閉塞構成は、所与の面の1つおきのチャネル104が格子パターン、すなわち、市松模様に閉塞されるように、提供されうる。しかしながら、他の閉塞パターンが可能であり、部分フィルタの実施形態など、チャネル104のすべてがプラグを含むわけではない場合がある。幾つかのチャネル104は、プラグを含まなくてもよく、すなわち、閉塞されていなくてもよく、したがって、フロースルーチャネルを構成する場合がある。適切な非限定的な閉塞材料及び閉塞プロセスは、例えば、米国特許第4,329,162号;同第4,557,773号;同第6,673,300号;同第7,744,669号;及び同第7,922,951号の各明細書に記載されている。他の適切な閉塞方法、パターン、及びプラグタイプを使用することができる。
【0095】
例示的なバッチ組成物混合物
本開示の例示的な実施形態は、ある特定のバッチ組成物混合物に関して以下にさらに説明されるが、これらは例示のみであり、限定することは意図されていない。下記表2A~2Eは、本明細書に記載されるコージエライト-インディアライトセラミック材料を含む多孔質セラミック体100の形成に有用なバッチ組成物混合物210の幾つかの例(E1A~E26)を提供している。特に、本明細書に記載される実施形態による例示的なバッチ混合物210は、粉末微粒子供給源材料でありうる、マグネシア源、アルミナ源、シリカ源、及び任意選択的にリン源を含む無機成分を含みうる。表2A~2Eは、各例の公称酸化物の化学的性質、並びにドーパントの化学的性質及び量も示している。
【0096】
バッチ組成物混合物は、バッチ組成物混合物210の無機物の総重量の100%に基づいて、上乗せ添加SApfで提供される細孔形成剤をさらに含む。幾つかの実施形態では、細孔形成剤は、XLデンプン単独で、又はグラファイトと組み合わせて提供される。例示的なデンプンは、表1に示されるように、及び/又は本明細書に別の方法で記載されるように、メジアン粒径(dp50)及び粒径分布dpf及びdpbを有することができる。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
以下の表3A~3Fは、処理の詳細、微細構造の形状及び特性、並びに、表1からの原料を利用するバッチ組成物混合物210及び表2A~2Eに定義されるバッチ組成物混合物210から製造される例示的なセラミック体E1A~E26A(焼成後)の質量パーセント(質量%)での相画分としてのさまざまな相組成物を示している。
【0103】
表2A~2Eのバッチ組成物混合物の例E1~E26に直接対応する、表3A~3Fのセラミック体組成物の例E1A~E26Aの各々を、ハニカム未焼成体100Gを押し出すことによって製造した。これらのハニカム未焼成体100Gは、表2A~2Eからのさまざまな列挙されたバッチ材料混合物から製造され、次いで、リストされた焼成条件で電気炉内で焼成される。例示的な最高浸漬温度(℃)と時間(hr)単位での浸漬時間が示されている。
【0104】
さまざまな供給源についての計算された酸化物の質量パーセントが示されており、これらの酸化物質量パーセントは、焼成セラミック材料において同じであるため、表3A~3Fでは繰り返していない。コージエライト-インディアライトセラミック材料中に存在するさまざまな相の相画分が示されている。例えば、E2Aは、コージエライト、インディアライト、スピネル、サフィリン、頑火輝石、ムライト、クリストバライト、及び非晶質相を含む。すべての例E1A~E26Aの相画分は、リートベルト解析法及びX線回折によって決定された。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
セラミック体100の細孔径分布は、Micrometrics社から入手可能なAutopore(登録商標)IV9520水銀ポロシメータを使用する水銀圧入ポロシメトリによって測定された。測定システムでは、水銀が試料に広がる臨界圧力に達するまで、水銀がより狭い細孔に浸透し、増加する容積の気孔率を満たすように、圧力が増加する。
【0112】
4℃/分の速度で室温から1,000℃まで加熱し、その後、室温(25℃)に冷却する間、約0.25インチ×0.25インチ×2インチ(0.64×0.64×5.1cm)の寸法の棒状の試料の熱膨張を測定した。報告されたデータについて、試験した棒の長軸は、ハニカムチャネル104の方向に向けられ、したがって、ハニカム体100の軸方向に熱膨張を提供した。25℃~800℃の平均熱膨張係数は、L(800℃)~L(25℃)/775℃として定義される。
【0113】
5インチ×1インチ×0.5インチ(12.7×2.54×1.27cm)の寸法、及びハニカムチャネル104の方向に向けられた長軸を有する棒状の試料を使用して、音響共振による弾性率(E)を測定した。試料を1200℃に加熱し、冷却して室温に戻した。各温度について、弾性率は共振周波数から直接導出され、ASTM C1198-01を参照して試料の形状及び重量に対して正規化された。
【0114】
図4Aは、例E3Aの研磨された焼成製品の走査型電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真を示しており、コージエライト相とインディアライト相の相分布の拡大を濃い灰色で示し、気孔率を黒で示している。セラミック体100中に存在する相は、X線回折(XRD)によって識別した。X’Celerator高速検出器を備えたPhillips X’Pert回折システムを利用した。高解像度スペクトルは通常、15°~100°(2θ)で取得した。リートベルト解析を、相のパーセンテージの定量化に使用した。
【0115】
図5は、コージエライト含有セラミック体100の製造方法を示している。方法500は、ブロック502において、マグネシア源、アルミナ源、シリカ源、及び任意選択的にリン源を含む無機原料を提供する工程を含む。方法500は、ブロック504において、無機成分を、有機結合剤、24質量%SA
pf~58質量%SA
pfの範囲の細孔形成剤、及び液体ビヒクルと一緒に混合して、バッチ組成物混合物を形成する工程をさらに含み、ここで、質量%SA
pfは、無機物の総重量の100%に基づいた上乗せ添加による細孔形成剤の質量パーセント添加である。
【0116】
方法500は、ブロック506において、バッチ組成物混合物(バッチ組成物混合物210)を未焼成体(例えば、未焼成体100G)へと成形する工程をさらに含む。バッチ組成物混合物210を未焼成体100Gへと成形する工程は、押出ダイ218を通してバッチ組成物混合物210を押し出し、未焼成体100Gを形成することを含みうる。任意選択的に、成形は、任意の他の適切な方法によるものでありうる。未焼成体100Gは、本明細書に記載されるように、ブロック508内で押し出された後に乾燥されうる。
【0117】
方法500は、ブロック510において、未焼成体(例えば、未焼成体100G)を、合計質量パーセントが少なくとも85質量%のコージエライトとインディアライトの結晶相を含み、かつ、(15.4、34.1、及び50.5)、(12.2、34.1、及び53.7)、(13.3、31.2、及び55.5)、及び(16.6、31.1、及び52.3)で規定されるフィールド内にあるMgO、Al2O3、及びSiO2に関する相対酸化物質量パーセント基準で表した組成物を含む多孔質セラミック体(例えば、多孔質セラミック体100)へと変換するのに効果的な条件下で、該未焼成体(例えば、未焼成体100G)を焼成する工程をさらに含む。
【0118】
幾つかの実施形態では、未焼成体(例えば、未焼成体100G)を多孔質セラミック体100へと変換するのに効果的な焼成条件は、未焼成体100を1340℃~1425℃の範囲のピーク浸漬温度に加熱し、未焼成体100Gをセラミック体100へと変換するのに十分な浸漬時間の間、浸漬温度を維持することを含みうる。その後、多孔質セラミック体100は、亀裂を回避するのに十分に遅い速度で冷却することができる。とりわけ細孔形成剤が燃え尽きる間、亀裂が回避されるように、浸漬の前に十分に遅い速度で傾斜を付けることができる。
【0119】
本開示の範囲から逸脱することなく、本開示のさまざまな実施形態に対してさまざまな修正及び変形がなされうることは、当業者にとって明白であろう。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内にある限り、開示される実施形態の修正及び変形を包含することが意図されている。
【0120】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0121】
実施形態1
多孔質セラミック体であって、
コージエライトの主結晶相、並びに、(15.4、34.1、及び50.5)、(12.2、34.1、及び53.7)、(13.3、31.2、及び55.5)、及び(16.6、31.1、及び52.3)で規定されるフィールド内にあるMgO、Al2O3、及びSiO2に関する相対酸化物質量パーセント基準での組成物;
%P≧50%;及び
df≦0.50
を含み、ここで、
%Pは体積による平均バルク気孔率であり、df=(d50-d10)/d50であり、d50は前記多孔質セラミック体のメジアン細孔径である、
多孔質セラミック体。
【0122】
実施形態2
MgO、Al2O3、及びSiO2に関する相対酸化物質量パーセント基準での前記組成物が、(13.5、34.1、及び52.4)、(12.2、34.1、及び53.7)、(13.3、31.2、及び55.5)及び(14.7、31.2、及び54.2)で規定されるフィールド内にある、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0123】
実施形態3
MgO、Al2O3、及びSiO2に関する相対酸化物質量パーセント基準での前記組成物が、(15.4、34.1、及び50.5)、(14.3、34.1、及び51.6)、(14.5、31.7、及び53.9)、(14.7、31.2、及び54.2)、及び(16.6、31.1、及び52.3)で規定されるフィールド内にある、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0124】
実施形態4
前記組成物が、無機物の総重量に基づいて、0.1質量%~5.0質量%のP2O5を含む、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0125】
実施形態5
前記組成物が、前記無機物の総重量に基づいて、1.0質量%~3.0質量%のP2O5を含む、実施形態4に記載の多孔質セラミック体。
【0126】
実施形態6
前記組成物が、前記無機物の総重量に基づいて、1.0質量%~2.0質量%のP2O5を含む、実施形態4に記載の多孔質セラミック体。
【0127】
実施形態7
凝集酸化物基準での前記組成物が、5質量%~24質量%のMg3Al2Si6O18及び76質量%~95質量%のMg2Al4Si5O18である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0128】
実施形態8
前記組成物が、Mg2Al4Si5O18と、Mg3Al5P3O18、Mg2Al5Si3PO18、Mg3Al3Si4PO18、又はこれらの任意の組合せとの固溶体を含む、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0129】
実施形態9
前記組成物が、前記多孔質セラミック体中に固溶体を含み、該固溶体が、
Mg2Al4Si5O18中に、1質量%~9質量%のMg3Al5P3O18、1質量%~14質量%のMg2Al5Si3PO18、1質量%~8質量%のMg3Al3Si4PO18、又はそれらの組合せ
を含む、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0130】
実施形態10
%P≧55%である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0131】
実施形態11
%P≧60%である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0132】
実施形態12
%P≧65%である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0133】
実施形態13
55%≦%P≦72%である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0134】
実施形態14
60%≦%P≦72%である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0135】
実施形態15
65%≦%P≦72%である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0136】
実施形態16
df≦0.40である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0137】
実施形態17
df≦0.35である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0138】
実施形態18
df≦0.30である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0139】
実施形態19
df≦0.25である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0140】
実施形態20
df≦0.22である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0141】
実施形態21
0.20≦df≦0.50である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0142】
実施形態22
0.20≦df≦0.30である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0143】
実施形態23
0.20≦df≦0.25である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0144】
実施形態24
Nb3≧0.10であり、式中、Nb3は微小亀裂インデックスである、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0145】
実施形態25
db≦1.2である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0146】
実施形態26
db≦0.80である、実施形態25に記載の多孔質セラミック体。
【0147】
実施形態27
db≦0.70である、実施形態25に記載の多孔質セラミック体。
【0148】
実施形態28
d50≧8μmである、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0149】
実施形態29
d50≦22μmである、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0150】
実施形態30
8μm≦d50≦22μmである、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0151】
実施形態31
10μm≦d50≦20μmである、実施形態30に記載の多孔質セラミック体。
【0152】
実施形態32
12μm≦d50≦17μmである、実施形態30に記載の多孔質セラミック体。
【0153】
実施形態33
CTE≦15×10-7/℃であり、ここで、CTEは25℃~800℃で測定した熱膨張係数である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0154】
実施形態34
CTE≦10×10-7/℃である、実施形態33に記載の多孔質セラミック体。
【0155】
実施形態35
CTE≦8×10-7/℃である、実施形態33に記載の多孔質セラミック体。
【0156】
実施形態36
CTE≦5×10-7/℃である、実施形態33に記載の多孔質セラミック体。
【0157】
実施形態37
4×10-7/℃≦CTE≦15×10-7/℃である、実施形態33に記載の多孔質セラミック体。
【0158】
実施形態38
%P≧55%;
d50≧9μm;
df≦0.40;及び
CTE≦13×10-7/℃であり、ここで、CTEは25℃~800℃で測定した前記多孔質セラミック体の熱膨張係数である、
実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0159】
実施形態39
%P≧60%;
d50≧10μm;
df≦0.25;及び
CTE≦10×10-7/℃であり、ここで、CTEは25℃~800℃で測定した前記多孔質セラミック体の熱膨張係数である、
実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0160】
実施形態40
%P≧65%;
d50≧12μm;
df≦0.22;及び
4×10-7/K≦CTE≦10×10-7/℃であり、ここで、CTEは25℃~800℃で測定した前記多孔質セラミック体の熱膨張係数である、
実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0161】
実施形態41
55%≦%P≦72%;
8μm≦d50≦22μm;
0.20≦df≦0.50;及び
4×10-7/K≦CTE≦14×10-7/℃である、
実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0162】
実施形態42
前記多孔質セラミック体がハニカム体である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0163】
実施形態43
前記ハニカム体が、交差する多孔質壁のマトリクスを含む、実施形態42に記載の多孔質セラミック体。
【0164】
実施形態44
前記多孔質壁が横断壁厚Twを有し、0.05mm≦Tw≦0.41mmである、実施形態43に記載の多孔質セラミック体。
【0165】
実施形態45
前記交差する多孔質壁のマトリクスが、チャネルを画成するセル内に配置され、横断面にセル密度(CD)を有し、15.5セル/cm2≦CD≦93セル/cm2である、実施形態43に記載の多孔質セラミック体。
【0166】
実施形態46
前記コージエライトの結晶相が、54質量%~77質量%の範囲にある、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0167】
実施形態47
前記インディアライトの結晶相が、16質量%~33質量%の範囲にある、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0168】
実施形態48
前記コージエライトの結晶相とインディアライトの結晶相との合計質量パーセントが、85質量%~97質量%の範囲である、実施形態1に記載の多孔質セラミック体。
【0169】
実施形態49
バッチ組成物混合物であって、
それぞれ、MgO、Al2O3、及びSiO2に関する酸化物基準の相対重量パーセントで表した場合に、(15.4、34.1、及び50.5)、(12.2、34.1、及び53.7)、(13.3、31.2、及び55.5)、及び(16.6、31.1、及び52.3)で規定されるフィールド内にある、マグネシア源、アルミナ源、及びシリカ源
を含む、バッチ組成物混合物。
【0170】
実施形態50
酸化物基準の質量パーセントで表した0.1%質量%~5.0%質量%の酸化リン源と、酸化物の質量パーセント基準で表した95%質量%~99.9%質量%のMgO、Al2O3、及びSiO2と、
をさらに含む、実施形態49に記載のバッチ組成物混合物。
【0171】
実施形態51
前記アルミナ源が、
17質量%~22質量%のアルミナ;及び
14質量%~18質量%の範囲のアルミナ水和物
を含み、
各々、前記バッチ組成物混合物中の無機物の総重量に基づいている、
実施形態49に記載のバッチ組成物混合物。
【0172】
実施形態52
24質量%SApf~58質量%SApfの範囲の細孔形成剤をさらに含み、ここで、質量%SApfは、前記バッチ組成物混合物中の無機物の総重量に基づいた、上乗せ添加による質量パーセントである、
実施形態49に記載のバッチ組成物混合物。
【0173】
実施形態53
前記細孔形成剤が、27質量%SApf~55質量%SApfの範囲で存在する、実施形態52に記載のバッチ組成物混合物。
【0174】
実施形態54
前記細孔形成剤が、20質量%SApf~52質量%SApfの範囲で存在する架橋したエンドウデンプンを含む、実施形態52に記載のバッチ組成物混合物。
【0175】
実施形態55
前記細孔形成剤が、20質量%SApf~47質量%SApfの範囲の架橋したエンドウデンプンと、5質量%SApf~15質量%SApfの範囲のグラファイトとを含む、実施形態52に記載のバッチ組成物混合物。
【0176】
実施形態56
前記細孔形成剤が、架橋したデンプンのみ、又は架橋したデンプンとグラファイトとの組合せを含む、実施形態52に記載のバッチ組成物混合物。
【0177】
実施形態57
多孔質セラミック体の製造方法であって、
マグネシア源、アルミナ源、シリカ源、及び任意選択的にリン源からなる無機成分を、有機結合剤、24質量%SApf~58質量%SApfの範囲の細孔形成剤、及び液体ビヒクルとともに混合して、バッチ組成物混合物を形成する工程(ここで、質量%SApfは無機物の総重量の100%に基づいた上乗せ添加による質量パーセントである);
前記バッチ組成物混合物を未焼成体へと成形する工程;及び
前記未焼成体を、合計質量パーセントが少なくとも85質量%のコージエライトとインディアライトの結晶相、並びに、(15.4、34.1、及び50.5)、(12.2、34.1、及び53.7)、(13.3、31.2、及び55.5)、及び(16.6、31.1、及び52.3)で規定されるフィールド内にある、それぞれ、MgO、Al2O3、及びSiO2に関する相対酸化物質量パーセント基準で表される組成物を含む前記多孔質セラミック体へと変換するのに効果的な条件下で、前記未焼成体を焼成する工程
を含む、方法。
【符号の説明】
【0178】
100 多孔質セラミック体
100G 未焼成体
100P 閉塞されたセラミックハニカム体
102 セルの壁
103 第1の端部
104 チャネル
105 第2の端部
106 外皮
107 プラグ/閉塞材料
200 押出機
210 可塑化バッチ組成物混合物
212 バレル
214 チャンバ
215U 長手方向上流側
215D 長手方向下流側
216 材料供給ポート
217 カートリッジアセンブリ
218 ハニカム押出ダイ
220 スクリーン
222 ホモジナイザ
223 駆動機構
224 押出機スクリュ
226 外皮形成マスク
228 切断要素
230 トレイ