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特許7232915熱硬化性樹脂組成物、並びにそれを含むプリプレグ、金属箔張積層板および印刷回路基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、並びにそれを含むプリプレグ、金属箔張積層板および印刷回路基板
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20230224BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20230224BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230224BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
C08G59/40
B32B5/28 A
B32B15/08 105Z
C08J5/04 CEZ
C08J5/04 CFC
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021537036
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 CN2019077162
(87)【国際公開番号】W WO2020155291
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】201910090656.X
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514309583
【氏名又は名称】廣東生益科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENGYI TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 振文
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107245239(CN,A)
【文献】国際公開第2020/045408(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/004273(WO,A1)
【文献】特開2009-120667(JP,A)
【文献】特開平4-243863(JP,A)
【文献】特開2005-314656(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104725781(CN,A)
【文献】特表2016-536403(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109265654(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00 ~ 59/72
B32B 5/00 ~ 5/32
B32B 15/00 ~ 15/20
C08J 5/00 ~ 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂の組合せまたはビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂のプレポリマー、エポキシ樹脂、および活性エステルを含む熱硬化性樹脂組成物であって
前記熱硬化性樹脂組成物は、リン含有難燃剤をさらに含んでもよく、
前記熱硬化性樹脂組成物は、重量部で、
ビスマレイミド樹脂15~50重量部、
ベンゾオキサジン樹脂15~30重量部、
エポキシ樹脂15~30重量部、
活性エステル2~20重量部、および
リン含有難燃剤0~10重量部、
または
ビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂のプレポリマー30~80重量部、
エポキシ樹脂15~30重量部、
活性エステル2~20重量部、および
リン含有難燃剤0~10重量部、を含み、
前記ビスマレイミド樹脂のモノマーは、式Iで表される構造を有する、ことを特徴とす
る前記熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
(ただし、R は、置換または非置換のC1~C4のアルキル基であり、R は、C3以
上のアルキル基である。)
【請求項2】
は、置換または非置換のC3~C4のアルキル基である、ことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ベンゾオキサジン樹脂は、アリル基含有ベンゾオキサジン樹脂である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
記エポキシ樹脂は、ノンハロゲン・ノンリンエポキシ樹脂であり、ビフェニルエポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、フェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂または多官能基エポキシ樹脂から選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
記活性エステルは、式IIで表される構造を有する活性エステルおよび/または式III
で表される構造を有する活性エステルを含み、
【化2】
ただし、Xは、フェニル基またはナフチル基であり、R、Rは、それぞれ独立して水素原子またはメチル基から選ばれ、kは、0または1であり、nの平均値は、0.2~2であり、
【化3】
ただし、Laは、フェニル基またはナフチル基であり、(Y)のうちのYは、メチル基、水素原子またはエステル基から選ばれ、qは、1、2または3であり、jは、1~10の整数であり、mは、1~10の整数である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
記リン含有難燃剤は、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスフィンフェナントレン-10-オキシド、2,6-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィノベンゼン、10-フェニル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスフィンフェナントレン-10-オキシドまたはホスファゼンのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せである、ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤0.01~1重量部をさらに含み、
記硬化促進剤は、イミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン、トリフェニルホスフ
ィン、三フッ化ホウ素モノエチルアミンまたはオクタン酸亜鉛のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せであことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
熱硬化性樹脂組成物は、フィラー5~300重量部をさらに含ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
記フィラーのメジアン径が0.01~50μmであことを特徴とする請求項8に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
記フィラーは、有機フィラーまたは無機フィラーから選ばれる、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記フィラーは、表面処理された無機フィラーであり、
記表面処理された表面処理剤は、シランカップリング剤、シリコーンオリゴマーまたはチタネートカップリング剤から選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組合せであことを特徴とする請求項8又は9に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
機フィラーを100重量部として、前記表面処理剤の用量が0.1~5.0重量部であことを特徴とする請求項11に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
記無機フィラーは、熔融シリカ、結晶型シリカ、球状シリカ、中空シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、タルク、窒化アルミニウム、窒化硼素、炭化珪素、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ベーマイト、炭酸カルシウム、珪酸カルシウムまたはマイカのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せであことを特徴とする請求項10に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
記有機フィラーは、ポリ四弗化エチレン、ポリフェニレンスルフィドまたはポリエーテルスルホンから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組合せである、ことを特徴とする請求項10に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を溶剤に溶解させるか、または分散させることにより得られる、ことを特徴とする樹脂接着液。
【請求項16】
補強材、および含浸し乾燥して前記補強材に付着された請求項1~14のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を含む、ことを特徴とするプリプレグ。
【請求項17】
1枚または少なくとも2枚の重ね合わせた請求項16に記載のプリプレグを含む、ことを特徴とする積層板。
【請求項18】
1枚または少なくとも2枚の重ね合わせた請求項16に記載のプリプレグと、前記プリプレグの外側の一方側または両側に被覆された金属箔と、を含むことを特徴とする金属箔張積層板。
【請求項19】
少なくとも1枚の請求項16に記載のプリプレグを含む、ことを特徴とする印刷回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅張板の技術分野に属し、熱硬化性樹脂組成物、並びにそれを含むプリプレグ、金属箔張積層板および印刷回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子製品情報処理の高速化および多機能化に伴い、使用頻度がますます高まり、誘電率(Dk)および誘電損失値(Df)がますます低くなることが求められている。そのため、Dk/Dfを低下させることは、基板経営者が追っかけているホットスポットとなってきた。低Dkおよび低Dfを実現するために、スチレン-無水マレイン酸オリゴマー(SMA)などの各種の低極性樹脂が広く用いられている。SMAは、基板に対して優れている誘電性能および耐熱性などを付与することができるが、吸水率が高く、熱膨張係数(CTE)が大きいという問題が存在する。
【0003】
現在、一般的な銅箔張積層板は、低Dkおよび低Dfを実現するか、或いは高Tおよび低CTEを実現することができるものの、業界では、高Tおよび低CTE、低Dkおよび低Dfを同時に満たすだけでなく、HDIを満たし、パッケージ適用さえも満たす銅張板などがよく見られていない。現在、基板のような銅張板の出現および適用が急速に進んでいるが、電子産業の発展過程で銅張板材料の性能の向上に対するニーズを満たすために、このような基板のT、CTE、弾性率など、ひいてはDk/Dfをさらに向上する必要がある。
【0004】
CN104725781Aでは、樹脂組成物、並びにそれを用いるプリプレグおよび積層板が開示されている。前記樹脂組成物は、各成分の重量パーセントで、アミン変性ビスマレイミド(BMI)15~55%、ベンゾオキサジン樹脂10~45%およびエポキシ樹脂0~75%を含む。銅張板の誘電性能および耐熱性が改善されるものの、組成物のT、誘電率および誘電損失などの性能には依然として改善の余地がある。CN104845363では、ノンハロゲン樹脂組成物およびその使用が開示されている。有機固形分の重量部で、該ノンハロゲン樹脂組成物は、(A)アリル変性ベンゾオキサジン樹脂40~80重量部、(B)炭化水素樹脂10~20重量部、(C)アリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂10~40重量部、(D)アリル変性ビスマレイミド樹脂10~20重量部、(E)開始剤0.01~3重量部、(F)フィラー10~100重量部および(G)リン含有難燃剤0~80重量部を含む。該発明では、最後に得た積層板は、低いDkとDf、および良い難燃効果を有するが、一部の成分を自分で製造する必要があるので、コストが高く、製造方法が複雑である。そして、最後に得た積層板のガラス転移温度TおよびCTEなどには、依然として向上の余地がある。CN107459650Aでは、変性ビスマレイミド樹脂プレポリマーおよびその製造方法が開示されている。熔融プロセスにより、アリル化合物、アミノフェニルアセチレンおよびベンゾオキサジンを用いてビスマレイミドに対して共重合・鎖延長・強化変性を行い、得た変性ビスマレイミド樹脂プレポリマーは高い耐熱性を有するが、変性過程で、材料の誘電性能および誘電損失性能が考えられていない。
【0005】
そのため、最後に製造された銅張板が高いガラス転移温度を有しながら、低い低誘電率および誘電損率、低い熱膨張係数を有することを確保するために、如何に新の組成物を開発するかは、当該分野における早急な解決の待たれる問題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、並びにそれを含むプリプレグ、金属箔張積層板および印刷回路基板を提供することを目的とする。本発明に係る樹脂組成物により製造された金属箔張積層板は、高いガラス転移温度、低い熱膨張係数、高い高温弾性率、高い剥離強度、低い誘電率、低い誘電損率を有するとともに、耐熱性が良く、プロセス加工性が良い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的を達成するために、本発明は、以下の技術案を講じた。
【0008】
第1態様としては、本発明は、ビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂の組合せまたはビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂のプレポリマー、エポキシ樹脂および活性エステルを含む熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0009】
本発明では、ビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂の組合せまたはビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂のプレポリマー、および活性エステルが共に樹脂硬化物に添加される。ビスマレイミドの添加により、樹脂組成物体系のガラス転移温度を顕著に向上させ、ベンゾオキサジン樹脂の添加により、樹脂組成物の耐熱性および電気性能を向上させることができる。それと同時に、樹脂組成物に活性エステルが添加されることにより、ビスマレイミドおよびベンゾオキサジン樹脂の添加に起因して体系の誘電性能が大きくなるという欠陥を中和することができ、活性エステルの添加により、樹脂組成物の誘電性能、特に誘電損率を低下させることができる。そのため、三者が共に役割を果たすことにより、最後に得た樹脂組成物が高いガラス転移温度および高い耐熱性を有するとともに、低い誘電率および低い誘電損率を有する。
【0010】
それと同時に、本発明では、一定量のエポキシ樹脂が添加されることで、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂および活性エステルによりもたらした他の性能の不足を平衡するとともに、一定の程度で樹脂組成物の粘着性を向上させることができる。
【0011】
好ましくは、前記ビスマレイミド樹脂のモノマーは、式Iで表される構造を有する。
【化1】
【0012】
ただし、Rは、置換または非置換のC1~C4のアルキル基であり、Rは、C3以上のアルキル基である。
【0013】
好ましくは、Rは、置換または非置換のC3~C4のアルキル基である。
【0014】
C1~C4のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などであってもよい。
【0015】
C3以上のアルキル基は、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基
などであってもよい。
【0016】
本発明は、上記構造のビスマレイミド樹脂を用いることにより、C、Hの割合を向上させ、空間緻密性を低減させ、さらに最後に得た樹脂組成物の誘電率および誘電損率を低下させることができる。
【0017】
好ましくは、前記樹脂組成物は、リン含有難燃剤をさらに含む。
【0018】
好ましくは、前記樹脂組成物は、重量部で、
ビスマレイミド樹脂15~50重量部、
ベンゾオキサジン樹脂15~30重量部、
エポキシ樹脂15~30重量部、
活性エステル2~20重量部、および
リン含有難燃剤0~10重量部を含む。
【0019】
或いは、ビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂のプレポリマー30~80重量部、
エポキシ樹脂15~30重量部、
活性エステル2~20重量部、および
リン含有難燃剤0~10重量部を含む。
【0020】
好ましくは、前記樹脂組成物は、ビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂のプレポリマー、エポキシ樹脂、活性エステルおよびリン含有難燃剤を含む。
【0021】
本発明は、ビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂のプレポリマーを添加成分として用いると、最後に得た樹脂組成物の熱膨張係数がより低く、且つ粘着プロセス加工性がより良い。
【0022】
本発明では、前記ビスマレイミド樹脂は、15~50重量部、例えば20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部などである。
【0023】
本発明では、前記ビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂のプレポリマーは、30~80重量部、例えば35重量部、40重量部、45重量部、50重量部、55重量部、60重量部、65重量部、70重量部、75重量部などである。
【0024】
本発明では、前記ベンゾオキサジン樹脂は、15~30重量部、例えば18重量部、20重量部、22重量部、24重量部、26重量部、28重量部などである。
【0025】
好ましくは、前記ベンゾオキサジン樹脂は、アリル基含有ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン樹脂、ジアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノールフタリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン樹脂またはビスフェノロレン型ベンゾオキサジン樹脂のうちのいずれか1種または少なくとも2種を含む組合せであり、好ましくはアリル基含有ベンゾオキサジン樹脂である。
【0026】
本発明は、アリル基含有ベンゾオキサジン樹脂を添加成分として用いることにより、最後に得た銅張板または積層板の強靭性、誘電性能をさらに向上させることができ、加工過程でプロセスを制御することに有利である。
【0027】
本発明では、前記エポキシ樹脂は、15~30重量部、例えば18重量部、20重量部
、22重量部、24重量部、26重量部、28重量部などである。
【0028】
好ましくは、前記エポキシ樹脂は、ノンハロゲン・ノンリンエポキシ樹脂であり、ビフェニルエポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、フェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂または多官能基エポキシ樹脂から選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の混合物であり、好ましくはビフェニルエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂またはナフトール型エポキシ樹脂のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せであり、より好ましくはビフェニルエポキシ樹脂である。
【0029】
本発明では、前記活性エステルは、2~20重量部、例えば4重量部、8重量部、10重量部、12重量部、15重量部、16重量部、18重量部などである。
【0030】
好ましくは、前記活性エステルは、式IIで表される構造を有する活性エステルおよび/または式IIIで表される構造を有する活性エステルを含む。
【化2】
【0031】
ただし、Xは、フェニル基またはナフチル基であり、R、Rは、それぞれ独立して水素原子またはメチル基から選ばれ、kは、0または1であり、nの平均値は、0.2~2、例えば0.3、0.5、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.5、1.8などである。
【化3】
【0032】
ただし、Laは、フェニル基またはナフチル基であり、(Y)のうちのYは、メチル基、水素原子またはエステル基から選ばれ、qは、1、2または3であり、jは、1~10の整数、例えば2、3、4、5、6、7、8、9などであり、mは、1~10の整数、例えば2、3、4、5、6、7、8、9などである。
【0033】
本発明では、前記リン含有難燃剤は、0~10重量部、例えば1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部などである。
【0034】
好ましくは、前記リン含有難燃剤は、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスフィンフェナントレン-10-オキシド、2,6-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィノベンゼン、10-フェニル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスフィンフェナントレン-10-オキシドまたはホスファゼンのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せである。
【0035】
好ましくは、前記樹脂組成物は、さらに、硬化促進剤を0.01~1重量部、例えば0.02重量部、0.05重量部、0.1重量部、0.5重量部、0.8重量部など含む。
【0036】
好ましくは、前記硬化促進剤は、イミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン、トリフェニルホスフィン、三フッ化ホウ素モノエチルアミンまたはオクタン酸亜鉛のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せである。
【0037】
好ましくは、前記樹脂組成物は、さらにフィラーを5~300重量部、例えば10重量部、15重量部、20重量部、50重量部、80重量部、100重量部、150重量部、180重量部、250重量部、280重量部など含む。
【0038】
好ましくは、前記フィラーのメジアン径は、0.01~50μm、例えば0.02μm、0.05μm、0.15μm、0.2μm、0.5μm、0.8μm、1μm、1.5μm、2μm、5μm、8μm、10μm、15μm、25μm、30μm、40μm、45μmなどであり、より好ましくは0.01~20μmであり、さらに好ましくは0.1~10μmである。
【0039】
好ましくは、前記フィラーは、有機フィラーまたは無機フィラーから選ばれ、より好ましくは無機フィラーであり、さらに好ましくは表面処理された無機フィラーであり、最も好ましくは表面処理されたシリカである。
【0040】
好ましくは、前記表面処理された表面処理剤は、シランカップリング剤、シリコーンオリゴマーまたはチタネートカップリング剤から選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組合せである。
【0041】
好ましくは、無機フィラーを100重量部として、前記表面処理剤の用量は、0.1~5.0重量部、例えば0.2重量部、0.5重量部、0.8重量部、1.0重量部、1.2重量部、1.5重量部、2.0重量部、2.5重量部、3.5重量部、4重量部、4.5重量部などであり、より好ましくは0.5~3.0重量部であり、さらに好ましくは0.75~2.0重量部である。
【0042】
好ましくは、前記無機フィラーは、非金属酸化物、金属窒化物、非金属窒化物、無機水和物または無機塩から選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組合せであり、より好ましくは熔融シリカ、結晶型シリカ、球状シリカ、中空シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、タルク、窒化アルミニウム、窒化硼素、炭化珪素、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ベーマイト、炭酸カルシウム、珪酸カルシウムまたはマイカのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せである。
【0043】
好ましくは、前記有機フィラーは、ポリ四弗化エチレン、ポリフェニレンスルフィドまたはポリエーテルスルホンから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組合せである。
【0044】
本発明に記載される「含む」とは、前記成分以外、他の成分を含んでもよい。これらの他の成分は、前記樹脂組成物に対して異なる特性を付与する。それ以外、本発明に記載される「含む」は、クローズドの「である」または「…からなる」に差し替えられてもよい。
【0045】
例えば、前記樹脂組成物は、各種の添加剤をさらに含んでもよい。具体例として、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤または潤滑剤などが挙げられてもよい。それらの各種の添加剤は、独立して用いられてもよいし、2種または2種以上で組み合わせて用いられてもよい。
【0046】
第2態様としては、本発明は、第1の態様に記載の熱硬化性樹脂組成物を溶剤に溶解させるかまたは分散させることにより得られる樹脂接着液を提供する。
【0047】
第3態様としては、本発明は、補強材、および含浸し乾燥して前記補強材に付着された第1の態様に記載の熱硬化性樹脂組成物を含むプリプレグを提供する。
【0048】
第4態様としては、本発明は、1枚または少なくとも2枚の重ね合わせた第3態様に記載のプリプレグを含む積層板を提供する。
【0049】
第5態様としては、本発明は、1枚または少なくとも2枚の重ね合わせた第3態様に記載のプリプレグと、前記プリプレグの外側の一方側または両側に被覆された金属箔と、を含む金属箔張積層板を提供する。
【0050】
第6態様としては、本発明は、少なくとも1枚の第3態様に記載のプリプレグを含む印刷回路基板を提供する。
【発明の効果】
【0051】
従来技術と比べると、本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0052】
(1)本発明では、ビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂の組合せまたはビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂のプレポリマーおよび活性エステルが共に樹脂硬化物に添加される。ビスマレイミドの添加により、樹脂組成物体系のガラス転移温度を顕著に向上させ、ベンゾオキサジン樹脂の添加により、樹脂組成物の耐熱性および電気性能を向上させながら、樹脂組成物に活性エステルを添加することにより、ビスマレイミドおよびベンゾオキサジン樹脂の添加に起因して体系の誘電性能が大きくなるという欠陥を中和することができ、活性エステルの添加により、樹脂組成物の誘電性能、特に誘電損率を低下させることができる。そのため、三者が共に役割を果たすことにより、最後に得た樹脂組成物は、高いガラス転移温度、高い耐熱性を有するとともに、低い誘電率、および低い誘電損率を有する。
【0053】
(2)本発明は、ビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂のプレポリマーを添加成分として用いる場合、最後に得た樹脂組成物の熱膨張係数がより低く、粘着プロセス加工性がより良い。
【0054】
(3)本発明に係る樹脂組成物により製造された銅張板は、高いガラス転移温度、低い熱膨張係数、相対的に高い高温弾性率、高い剥離強度、低い誘電率、低い誘電損率を有するとともに、耐熱性が良く、プロセス加工性が良い。とりわけ、ガラス転移温度が最高230℃以上、熱膨張係数が最低1.8%、誘電率(1GHz)が最低3.81、誘電損失(1GHz)が最低0.0045に達することができる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下は、具体的な実施形態により、本発明の技術案についてさらに説明する。当業者であれば、前記実施例は、本発明に対する理解を助けるためのものに過ぎず、本発明を具体的に限定すると見なすべきではない。
【0056】
以下の実施例および比較例に係る材料および型番の情報は、以下の通りである。
【0057】
(A)ビスマレイミド樹脂
A-1:3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノ-5,5’-ジイソプロピルジフェニルメタンビスマレイミド(東材科学技術製D937)。具体的な構造は以下の通りである。
【化4】

A-2:4,4’-ジアミノ-3,3’,5,5’-テトライソプロピルジフェニルメタンビスマレイミド(東材科学技術製)。具体的な構造は以下の通りである。
【化5】

A-3:2,2’-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(日本KI chemical製BMI-80)。具体的な構造は以下の通りである。
【化6】

A-4:ジフェニルメタンビスマレイミド(湖北洪湖双馬樹脂工場製BMI~01)。具体的な構造は以下の通りである。
【化7】
【0058】
(B)ベンゾオキサジン樹脂
B-1:アリル基含有ベンゾオキサジン樹脂(東材製D148)
B-2:アリル基含有ベンゾオキサジン樹脂(科龍製5031)
B-3:非アリル基ベンゾオキサジン(Huntaman製DCPD型ベンゾオキサジン樹脂8260)
【0059】
(C)エポキシ樹脂
C-1:DCPD型エポキシ樹脂(HP-7200H、日本DIC製)
C-2:ビフェニル型エポキシ樹脂(NC-3000L、日本化薬製)
C-3:ナフタレン環含有エポキシ樹脂(NC-7300L、日本化薬製)
【0060】
(D)活性エステル
D-1:DCPD型活性エステル(8000、日本DIC製)
D-2:DCPD改良型活性エステル(8000L、日本DIC製)
D-3:ナフタレン環含有活性エステル(8150、日本DIC製)
【0061】
(E)リン含有難燃剤
E-1:アリル基含有ホスファゼン(SPV-100、日本大塚化学製)
E-2:添加型リン含有難燃剤(OP930、ドイツクラリアント製)
E-3:リン含有フェノール(XZ-92741、アメリカOlin製)
【0062】
(F)硬化促進剤:ジメチルイミダゾール(2-MI、日本四国化成製)
【0063】
(G)フィラー
G-1:球状シリカ(SC2050、日本admateches製)
G-2:角型シリカ、525(シベルコ製)。
【0064】
実施例1~4
表1に示される成分で、熱硬化性樹脂組成物(原料用量の単位がいずれも重量部である)を調製し、下記積層板の製造方法により金属箔張積層板サンプルを製造した。
【0065】
(1)DMF溶液中に、ビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂を130~160℃で0.5~8h反応させて、ビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂のプレポリマーを得た。そして、他の成分を添加し、均一に混合して、樹脂接着液を得た。
【0066】
(2)樹脂接着液で2116電子レベルガラス布を浸漬し、溶剤をオーブン乾燥して除去し、半硬化の状態までにオーブン乾燥させて、樹脂含有量が適切なプリプレグを得た。そして、一定数量のプリプレグを重ね合わせ、上下においてそれぞれ1枚の銅張板専用の電解銅箔を入れた後、ホットプレスで220℃/90minの条件下で硬化および積層を行って銅張板を得た。
【0067】
実施例5~10
表1に示される成分で、熱硬化性樹脂組成物(原料用量の単位がいずれも重量部である)を調製し、下記積層板の製造方法により銅箔張積層板サンプルを製造した。
【0068】
(1)配合量のビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂および活性エステルなどの成分をDMF溶液中に均一に混合して樹脂接着液を得た。
【0069】
(2)樹脂接着液で2116電子レベルガラス布を浸漬し、溶剤をオーブン乾燥して除去し、半硬化の状態までにオーブン乾燥させて、樹脂含有量が適切なプリプレグを得た。そして、一定数量のプリプレグを重ね合わせ、上下においてそれぞれ1枚の銅張板専用の電解銅箔を入れた後、ホットプレスで220℃/90minの条件下で硬化および積層を行って銅張板を得た。
【0070】
比較例1~14
表2および表3に示される成分で、熱硬化性樹脂組成物(原料用量の単位がいずれも重量部である)を調製し、実施例5~10における前記積層板の製造方法により銅箔張積層板サンプルを製造した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
性能テスト
実施例1~10および比較例1~14に係る銅箔張積層板に対して、性能テストを行った。テスト方法は、以下の通りである。
【0075】
(1)ガラス転移温度(T):DMAテストにより、IPC-TM-650 2.4.24に規定されるDMAテスト方法に基づいて測定した。
【0076】
(2)弾性率:DMAテストにより、IPC-TM-650 2.4.24に規定されるDMAテスト方法に基づいて測定した。
【0077】
(3)熱膨張係数(CTE):IPC-TM-650 2.4.24 Cに規定されるCTEテスト方法に基づいて測定した。
【0078】
(4)誘電率(Dk)および誘電損率(Df):プレート静電容量法により、IPC-
TM-650 2.5.5.9の方法に基づいて1GHz下での誘電率、誘電損率を測定した。
【0079】
(5)耐剥離強度:IPC-TM-650 2.4.8に規定される耐剥離強度テスト方法に基づいて測定した。
【0080】
(6)耐熱分解時間(T-288):TMA装置を用いて、IPC-TM-650 2.4.24.1に規定されるT-288テスト方法に基づいて測定した。
【0081】
(7)PCT:IPC標準方法により測定した。テスト条件は、105KPa/60min、288℃極限である。
【0082】
(8)2116粘着プロセス:プリプレグの見掛けを観察し、サンプリングし、秤量して、単位面積重量を得た。それに基づいて比較して、プリプレグの見掛けと単位面積重量を容易に調節・制御するか否かを評価した。とりわけ、
優れた:単位面積重量が標準±4g/m内にあった。見掛けがスムーズであり、目視可能な欠陥がなかった。
一般的:単位面積重量が標準±4g/m内にあった、見掛けが比較的にスムーズであり、目視可能な欠陥がなかった。
悪い:単位面積重量が標準±4g/m内になかった、見掛けにタレまたはバブルなどの目視可能な欠陥があった。
【0083】
実施例1~8および比較例1~14に係る積層板のテスト結果を表4~7に示す。
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
【0088】
実施例および性能テストの結果から分かるように、本発明に係る樹脂組成物により製造された銅張板は、高いガラス転移温度、低い熱膨張係数、高い高温弾性率、相対的に高い剥離強度、相対的に低い誘電率および誘電損率を有するとともに、耐熱性が良く、プロセス加工性がよい。とりわけ、ガラス転移温度が最高230℃以上、熱膨張係数が最低1.8%、誘電率(1GHz)が最低3.81、誘電損失(1GHz)が最低0.0045に達することができる。
【0089】
実施例1と実施例4との比較から分かるように、式IにおけるRが置換または非置換のC3~C4のアルキル基である場合、最後に得た銅張板のガラス転移温度がより高く、相対的に低い誘電率および誘電損率を取得することができる。
【0090】
実施例2では、樹脂組成物については、まずビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂にプレポリマーを生成させて、他の成分と混合させてプリプレグを製造することが用いられた。実施例5では、直接的にビスマレイミド樹脂およびベンゾオキサジン樹脂と他の成分とを混合させることが用いられた。実施例2と実施例5との比較から分かるように、本発明では、ビスマレイミド樹脂とベンゾオキサジン樹脂のプレポリマーを用いることにより、最後に得た銅張板がより低い熱膨張係数を有するとともに、粘着プロセス加工性がより良い。
【0091】
実施例2と実施例8~10との比較から分かるように、本発明では、式Iで表される構造を有するビスマレイミドとアリル基含有ベンゾオキサジン樹脂を組み合わせて用いることが好ましい。その際に、最後に得た銅張板は、より良い綜合性能を有する。
【0092】
実施例5と比較例1~6との比較から分かるように、本発明では、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂および活性エステルが共に役割を果たして、相乗効果を達成することで、最後に得た銅張板は高いガラス転移温度、低い誘電率および低い誘電損率を有しながら、他の性能も優れているため、その三者のうちどちらかが欠けても駄目である。
【0093】
実施例5~7と比較例7~14との比較から分かるように、本発明では、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂および活性エステルの添加量をいずれも本
発明の範囲内に制御する必要があり、本発明の範囲超えまたは未満である場合、本発明の有益な効果を得ることができない。
【0094】
本発明では、上述した実施例により本発明に係る熱硬化性樹脂組成物、並びにそれを含むプリプレグ、金属箔張積層板および印刷回路基板を説明したが、本発明は上記詳細な方法に限定されず、すなわち本発明を上記詳細な方法に依存して実施しなければならないわけではないことを出願人より声明する。当業者であれば、本発明に対するあらゆる改良、本発明の製品の各原料に対する等価置換及び補助成分の添加、具体的な形態に対する選択などは、すべて本発明の保護範囲と開示範囲に属することを理解すべきである。