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特許7232940スラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】スラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/115 20060101AFI20230224BHJP
   B22D 11/124 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B22D11/115 K
B22D11/115 F
B22D11/124 J
B22D11/124 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021573545
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 CN2020095358
(87)【国際公開番号】W WO2020249004
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】201910504269.6
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】温 宏 權
(72)【発明者】
【氏名】周 月 明
(72)【発明者】
【氏名】呉 存 有
(72)【発明者】
【氏名】胡 超
(72)【発明者】
【氏名】金 小 禮
(72)【発明者】
【氏名】趙 顯 久
(72)【発明者】
【氏名】王 春 鋒
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104107891(CN,A)
【文献】米国特許第04741383(US,A)
【文献】特表2018-518369(JP,A)
【文献】特開2010-214392(JP,A)
【文献】特開平01-044251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/115
B22D 11/124
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁力撹拌装置本体と、開口調節部と、二次冷却部とを含み;
電磁力撹拌装置本体は、保護ケース(3)と、相順制御部と、保護ケース(3)内に設置される鉄心(4)および電磁コイル(5)とを含み、開口調節部は、シリンダー(7)と、固定座(8)と、可動ジョイント軸(12)と、複数のケイ素鋼板セット挿入片(13)とを含み;数のケイ素鋼板セット挿入片(13)は、ケイ素鋼板セット挿入片(13)が可動ジョイント軸(12)を中心に回転できるように、順に可動ジョイント軸(12)で連結されることによって可動ジョイントになり、一つまたは複数の可動ジョイントは、鉄心(4)と連結されて閉鎖環状構造を構成し;鉄心(4)には電磁コイル(5)が巻回され、電磁コイル(5)は、相順制御部によって閉鎖環状構造内で交番磁場を発生させ、鋳片(1)が閉鎖環状構造の交番磁場の中を通過し;シリンダー(7)のピストン端が、電磁力撹拌装置本体に連結されることによって、可動ジョイントを開閉させ、シリンダー(7)が固定座(8)によって電磁力撹拌装置本体の外側に固定され;二次冷却部は、冷却水入口(9)と、一つまたは複数の冷却水噴出口(10)とを含み、冷却水入口(9)は保護ケース(3)の外側端に設置され、一つまたは複数の冷却水噴出口(10)は、鋳片(1)に向いてそれぞれ間隔を空けて保護ケース(3)の内側端に設置され、冷却水が冷却水入口(9)を介して保護ケース(3)内に入り、電磁コイル(5)および鉄心(4)を完全に浸し、そして一つまたは複数の冷却水噴出口(10)によって鋳片(1)の表面に噴射される、ことを特徴とするスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置。
【請求項2】
前記電磁力撹拌装置本体の撹拌電流周波数f1が2-15Hzである、ことを特徴とする請求項1に記載のスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置。
【請求項3】
前記相順制御部は、水冷ケーブル(6)と、相変換回路と、ヒューズFUと、断路器QSとを含み;水冷ケーブル(6)は、第一撹拌電流入力線L1と、第二撹拌電流入力線L2と、第三撹拌電流入力線L3とを含み、第一撹拌電流入力線L1、第二撹拌電流入力線L2および第三撹拌電流入力線L3の片方の端に、三相電源が外付けられ、第一撹拌電流入力線L1、第二撹拌電流入力線L2および第三撹拌電流入力線L3のもう片方の端が、それぞれ断路器QSおよびヒューズFUによって相変換回路を介して電磁コイル(5)に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置。
【請求項4】
前記相変換回路は、第一接触器KM1と、第二接触器KM2と、交番電圧u1と、変圧器Tと、第一ダイオードD1と、第二ダイオードD2と、抵抗器Rとを含み、交番電圧u1が変圧器Tの一次側に接続され、第一ダイオードD1および第二ダイオードD2の正極がそれぞれ変圧器Tの二次側の出力端に接続され、第一ダイオードD1の負極が第一接触器KM1および抵抗器Rを介して変圧器Tの二次側の出力端に接続され、第二ダイオードD2の負極が第二接触器KM2および抵抗器Rを介して変圧器Tの二次側の出力端に接続され;第一接触器KM1と第二接触器KM2が電磁コイル(5)に接続され、第一接触器KM1の電磁コイル(5)に接続される相順と第二接触器KM2の電磁コイル(5)に接続される相順とは逆であり、第一接触器KM1および第二接触器KM2の通断が、それぞれ相変換回路に制御される、ことを特徴とする請求項3に記載のスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置。
【請求項5】
前記交番電圧u1の周波数f2が0.1-1Hzである、ことを特徴とする請求項4に記載のスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置。
【請求項6】
前記相順制御部は、さらにサーマルリレーFRを含み、第一接触器KM1と第二接触器KM2はそれぞれサーマルリレーFRを介して電磁コイル(5)に接続される、ことを特徴とする請求項3に記載のスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置。
【請求項7】
前記保護ケース(3)の歯先端の両側が内側に凹む円弧状構造であり、保護ケース(3)の歯先端が両セグメントロール(2)の間で鋳片(1)方向に延在し、保護ケース(3)の円弧状構造がセグメントロール(2)の外形と一致する、ことを特徴とする請求項1に記載のスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置。
【請求項8】
心(4)と保護ケース(3)との接続部に止水リング(11)が設置されている、ことを特徴とする請求項1に記載のスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置。
【請求項9】
以下の工程:
工程1:鋳片(1)の厚さに基づき、シリンダー(7)で可動ジョイント軸(12)を中心にケイ素鋼板セット挿入片(13)を回転させることによって、閉鎖環状構造の開口度を調節すること;
工程2:相順制御部が相変換回路を通電させ、鉄心(4)に巻回される電磁コイル(5)に閉鎖環状構造内で周期的に変わる磁場を発生させ、溶鋼に対し正逆交互の電磁力撹拌を行うこと;
工程3:冷却水が冷却水入口(9)を介して保護ケース(3)内に入り、電磁コイル(5)および鉄心(4)を完全に浸し、そして一つまたは複数の冷却水噴出口(10)によって鋳片(1)の表面に噴射されること、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置を利用する電磁力撹拌方法。
【請求項10】
前記工程2は、さらに以下のサブ工程:
工程2.1:相変換回路の第一ダイオードD1が正方向に通電し、正の半サイクルの相変換電流が相順制御部の第一接触器KM1を通り、第一接触器KM1が通電し、作動すること;
工程2.2:鉄心(4)に巻回される電磁コイル(5)が磁場を発生させ、三相電源がU-V-Wの相順で電磁力撹拌コイル(5)に接続され、溶鋼に対し正方向での電磁力撹拌を行うこと;
工程2.3:相変換回路の第二ダイオードD2が正方向に通電し、負の半サイクルの相変換電流が相順制御部の第二接触器KM2を通り、第二接触器KM2が通電し、作動すること;
工程2.4:鉄心(4)に巻回される電磁コイル(5)が磁場を発生させ、三相電源がW-V-Uの相順で電磁力撹拌コイル(5)に接続され、溶鋼に対し逆方向での電磁力撹拌を行うこと;
工程2.5:第一ダイオードD1と第二ダイオードD2が相変換回路の交番電圧u1によって交互に通電し、第一接触器KM1と第二接触器KM2とを交互に通断させ、三相電源の相順を交互に変換させ、電磁力撹拌方向を周期的に変えること、
を含む、ことを特徴とする請求項9に記載のスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連鋳技術分野に用いる電磁力撹拌装置および方法、特にスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造過程において、等軸晶率は鋳片のクオリティーや性能を決める主要な指標であり、通常20~40%の範囲内にある。等軸晶率が低すぎると、スラブ凝固の間やその後の圧延時に、粒間割れが発生しやすい;また、柱状晶を中心とした鋼の凝固方式には、深刻な中心成分の偏析が伴うことが多く、これらの問題が、鋳片内部のクオリティーや使用性能の向上を著しく妨害している。実践によって証明されたように、高炭素鋼、ケイ素鋼、ステンレス鋼などの連鋳には、鋳片内部の柱状晶の凝固成長過程を中断し、固液界面の前縁にある結晶核の数を増やし、核形成の促進、結晶粒の微細化、偏析の減少などのために、二次冷却帯での電磁力撹拌、または凝固末端での液芯の軽圧下がよく行われる。
【0003】
現在、代表的な連鋳二次冷却帯に用いる電磁力撹拌技術(S-EMS)には、以下のものが含まれる:(a)対極式撹拌、例えば、米国特許US19870014097に開示された挿入対極式電磁力撹拌器;(b)ロール式撹拌、例えば、米国特許US20060299624に開示されたロール式電磁力撹拌器および中国発明特許ZL200710085940.5に開示された電磁力撹拌ロール;(c)箱式撹拌、例えば、日本特許JP20050117052に開示されたリニア電磁力撹拌器。これらの撹拌器の内部構造は銅コイル巻線とケイ素鋼板積層鉄心からなり、撹拌器が鋳片の広い辺に沿って鋳造機の扇形部のセグメントロールの間もしくは後ろに横方向に配置され、電磁場の近接効果により、鋳片内で一定の方向に沿って伝送する進行波の撹拌電磁力を誘起し、鋳片の内部にある溶鋼の方向性流動を駆動する。鋳片の両側にあるセグメントロール(ロール径が通常150mm程度)の存在により、二次冷却帯における撹拌磁場発生装置と鋳片との間の距離は一般的に大きく、箱式撹拌器と鋳片との距離は一般的に200mm以上であり、それにリニア撹拌器の鉄心両端に磁場漏れが発生し、電磁力撹拌の効率が低く、実際の効果が限られている。ロール式撹拌では、撹拌ロールと鋳片がお互いに接触できるが、撹拌ロール内部のキャビティサイズの制限やロールジャケットによる磁場の遮蔽作用により、鋳片内部に発生する撹拌磁場の強度は実際にはそれほど高くない。
【0004】
ここ数年で、連鋳技術分野には、薄スラブ連鋳圧延技術(CSP、ESP等)が新たに現れ、その鋳片の厚さが小さく(60~90mm)、引張速度が高い(4~6m/min)ため、従来の連鋳とは大きく異なる:柱状晶がさらに発達し、等軸晶率がより低くなるため、二次冷却帯における電磁力撹拌能力に対する要求が急激に高まり、鋳片のクオリティーを保つため、二次冷却帯に用いる新しい効率的な電磁力撹拌技術が切実に求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、磁場損失が少なく、撹拌効率が高く、撹拌器開口度がオンライン調節可能で、撹拌方向が交互に変換可能で、スラブ連鋳のクオリティーおよび性能の改善を実現できる、スラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のように実現される:
電磁力撹拌装置本体と、開口調節部と、二次冷却部とを含む;電磁力撹拌装置本体は、保護ケースと、相順制御部と、保護ケース内に設置される鉄心および電磁コイルとを含み、開口調節部は、シリンダーと、固定座と、可動ジョイント軸と、一つまたは複数のケイ素鋼板セット挿入片とを含む;一つまたは複数のケイ素鋼板セット挿入片は、ケイ素鋼板セット挿入片が可動ジョイント軸を中心に回転できるように、順に可動ジョイント軸で連結されることによって可動ジョイントになり、一つまたは複数の可動ジョイントは、鉄心と連結されて閉鎖環状構造を構成する;鉄心には電磁コイルが巻回され、電磁コイルは、相順制御部によって閉鎖環状構造内で交番磁場を発生させ、鋳片が閉鎖環状構造の交番磁場の中を通過する;シリンダーのピストン端が、電磁力撹拌装置本体に連結されることによって、可動ジョイントを開閉させ、シリンダーが固定座によって電磁力撹拌装置本体の外側に固定される;二次冷却部は、冷却水入口と、一つまたは複数の冷却水噴出口とを含み、冷却水入口は保護ケースの外側端に設置され、一つまたは複数の冷却水噴出口は、鋳片に向いてそれぞれ間隔を空けて保護ケースの内側端に設置され、冷却水が冷却水入口を介して保護ケース内に入り、電磁コイルおよび鉄心を完全に浸し、そして一つまたは複数の冷却水噴出口によって鋳片の表面に噴射される、スラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置。
【0007】
前記電磁力撹拌装置本体の撹拌電流周波数が2-15Hzである。
前記相順制御部は、水冷ケーブルと、相変換回路と、ヒューズと、断路器とを含む;水冷ケーブルは、第一撹拌電流入力線と、第二撹拌電流入力線と、第三撹拌電流入力線とを含み、第一撹拌電流入力線、第二撹拌電流入力線および第三撹拌電流入力線の片方の端に三相電源が外付けられ、第一撹拌電流入力線、第二撹拌電流入力線および第三撹拌電流入力線のもう片方の端がそれぞれ断路器とヒューズによって相変換回路を介して電磁コイルに接続される。
【0008】
前記相変換回路は、第一接触器と、第二接触器と、交番電圧と、変圧器と、第一ダイオードと、第二ダイオードと、抵抗器とを含み、交番電圧が変圧器の一次側に接続され、第一ダイオードおよび第二ダイオードの正極がそれぞれ変圧器の二次側の出力端に接続され、第一ダイオードの負極が第一接触器を介して変圧器の二次側の出力端に接続され、第二ダイオードの負極が第二接触器および抵抗器を介して変圧器の二次側の出力端に接続される;第一接触器と第二接触器が電磁コイルに接続され、第一接触器の電磁コイルに接続される相順と第二接触器の電磁コイルに接続される相順が逆であり、第一接触器と第二接触器の通断がそれぞれ相変換回路によって制御される。
【0009】
前記交番電圧の周波数が0.1-1Hzである。
前記相順制御部は、さらにサーマルリレーを含み、第一接触器と第二接触器がそれぞれサーマルリレーを介して電磁コイルに接続される。
【0010】
前記保護ケースの歯先端の両側が内側に凹む円弧状構造であり、保護ケースの歯先端が両セグメントロールの間で鋳片方向に延在し、保護ケースの円弧状構造がセグメントロールの外形と一致する。
【0011】
前記一対の鉄心の両端と保護ケースとの接続部に止水リングが設置されている。
スラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌方法は以下の工程を含む:
工程1:鋳片の厚さに基づき、シリンダーで可動ジョイント軸を中心にケイ素鋼板セット挿入片を回転させることによって、閉鎖環状構造の開口度を調節する;
工程2:相順制御部が相変換回路を通電させ、鉄心に巻回される電磁コイルに閉鎖環状構造内で周期的に変わる磁場を発生させ、溶鋼に対し正逆交互の電磁力撹拌を行う;
工程3:冷却水が冷却水入口を介して保護ケース内に入り、電磁コイルおよび鉄心を完全に浸し、そして一つまたは複数の冷却水噴出口によって鋳片の表面に噴射される。
【0012】
前記工程2は、さらに以下のサブ工程を含む:
工程2.1:相変換回路の第一ダイオードが正方向に通電し、正の半サイクルの相変換電流が相順制御部の第一接触器を通り、第一接触器が通電し、作動する;
工程2.2:鉄心に巻回される電磁コイルが磁場を発生させ、三相電源がU-V-Wの相順で電磁力撹拌コイルに接続され、溶鋼に対し正方向での電磁力撹拌を行う;
工程2.3:相変換回路の第二ダイオードが正方向に通電し、負の半サイクルの相変換電流が相順制御部の第二接触器を通り、第二接触器が通電し、作動する;
工程2.4:鉄心に巻回される電磁コイルが磁場を発生させ、三相電源がW-V-Uの相順で電磁力撹拌コイルに接続され、溶鋼に対し逆方向での電磁力撹拌を行う;
工程2.5:第一ダイオードと第二ダイオードが相変換回路の交番電圧によって交互に通電し、第一接触器と第二接触器とを交互に通断させ、三相電源の相順を交互に変換させ、電磁力撹拌方向を周期的に変える。
【0013】
本発明は、従来の技術と比べて、以下の利点を有する:
1、本発明は、閉鎖環状の電磁力撹拌器を利用することで、従来の開放式撹拌装置における大きい磁場漏れや、低い撹拌効率などの問題を解決し、また環状電磁力撹拌器の開口度がオンライン調節可能であるため、二次冷却帯において厚さや規格の異なるスラブに対する電磁力撹拌の効果を最大限に改善した。
【0014】
2、本発明は、撹拌電流の相順を自動制御することで、進行波電磁力撹拌の方向を一定の周波数で周期的に交互変換させ、この電磁力の駆動下で、溶鋼を交互に方向変換できるように水平環状に流させることによって、撹拌器の撹拌方向の単一さや、高速の連鋳に向かないなどの従来の問題を解決し、シェル内の溶鋼が凝固界面の前縁を洗う能力を高め、単一且つ一定方向での循環流が凝固シェルを長期に洗うことによる悪影響を避け、結晶粒を微細化し、等軸晶率を高め、中心偏析を改善し、鋳片の内部クオリティーや使用性能を改善するとの目的を達成した。
【0015】
3、本発明の装置は構造が簡単で、多様な機能を有するため、鋼の連鋳過程、特に高速連鋳において良好な応用価値があり、将来性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明によるスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置の断面図である;
図2図2は、本発明によるスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置における閉鎖環状構造の正面図である;
図3図3は、図2の部分拡大図である;
図4図4は、本発明によるスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置における相順制御部の回路図である;
図5図5は、本発明によるスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置における相変換回路の回路図である;
図6図6は、本発明によるスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌方法のフローチャットである; 図の中では、1鋳片、2セグメントロール、3保護ケース、4鉄心、41溝、5電磁コイル、6水冷ケーブル、7シリンダー、8固定フレーム、9冷却水入口、10冷却水噴出口、11止水リング、12可動ジョイント軸、13ケイ素鋼板セット挿入片、QS断路器、FUヒューズ、KM1第一接触器、KM2第二接触器、FRサーマルリレー、D1第一ダイオード、D2第二ダイオード、T変圧器、R抵抗器、L1第一撹拌電流入力線、L2第二撹拌電流入力線、L3撹拌電流入力線、u1交番電圧。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面および具体的な実施例に基づき、本発明について更なる説明を行う。
本発明のスラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌装置は、電磁力撹拌装置本体と、開口調節部と、二次冷却部とを含む;図1および図2において、電磁力撹拌装置本体は、保護ケース3と、相順制御部と、保護ケース3内に設置される鉄心4および電磁コイル5とを含み、図3において、開口調節部は、シリンダー7と、固定座8と、可動ジョイント軸12と、一つまたは複数のケイ素鋼板セット挿入片13とを含む;一つまたは複数のケイ素鋼板セット挿入片13は、可動ジョイント軸12を中心にケイ素鋼板セット挿入片13が一定の角度で回転できるように、順に可動ジョイント軸12で連結されることによって可動ジョイントになり、一つまたは複数の可動ジョイントは、鉄心4と連結されることによって閉鎖環状構造を構成し、好ましくは、ケイ素鋼板セット挿入片13が円弧状の構造を有し、繋ぐことによって円弧状の可動ジョイントを形成し、可動ジョイントは、三対設けることができ、それがケイ素鋼板セット挿入片13の回転によって閉鎖環状構造の開口度を制御することができる;鉄心4には電磁コイル5が巻回され、電磁コイル5が相順制御部によって閉鎖環状構造内で交番磁場を発生させ、交番磁場が閉鎖環状構造内で効率的に伝送できるため、磁場漏れまたは損失が減らされ、進行波磁場の電磁力撹拌効率が向上され、鋳片1が閉鎖環状構造の交番磁場中を通り、溶鋼の進行波電磁力撹拌を実現する;シリンダー7のピストン端が、電磁力撹拌装置本体と接続し、可動ジョイントを開閉させ、シリンダー7が固定座8によって電磁力撹拌装置本体の外側に固定され、好ましくは、シリンダー7は液圧シリンダーなどの伸縮構造を採用してもよく、伸縮によって閉鎖環状構造の開口度のオンライン調節を実現する;二次冷却部は、冷却水入口9と一つまたは複数の冷却水噴出口10とを含み、冷却水入口9は、保護ケース3の外側端に設置され、一つまたは複数の冷却水噴出口10は、鋳片1に向いてそれぞれ間隔を空けて保護ケース3の内側端に設置され、冷却水が冷却水入口9を介して保護ケース3内に入り、電磁コイル5および鉄心4を完全に浸し、冷却を行い、そして一つまたは複数の冷却水噴出口10によって鋳片1の表面に噴射されることで、鋳片1に対する補足的に二次冷却作用を果たし、冷却水が流し、順に保護ケース3、鉄心4、コイル5および鋳片1を冷却し、冷却水の流路が循環しない「断路」状態にあるため、セグメントロール2の間に電磁力撹拌装置本体が装着されたことによる二次冷却帯の元の冷却水ノズルに対する干渉や影響を避け、ある程度元の冷却水ノズルに代わり、鋳片に対して二次冷却機能を果たす。
【0018】
前記交番磁場の磁場強度が10000-30000A・N、好ましくは15000A・Nである。引張速度の影響を考えると、溶鋼の循環流が空間的に見ればスパイラルの形であり、引張速度が速いほど、溶鋼流のスパイラルのピッチが大きくなる。そのため、引張速度の高い連鋳では、従来の電磁力撹拌に比べ、撹拌電流周波数をある程度高くとすべき、前記電磁力撹拌装置本体の撹拌電流周波数f1が2-15Hz、好ましくは8Hzである。
【0019】
図4において、前記相順制御部は、水冷ケーブル6と、相変換回路と、ヒューズFUと、断路器QSとを含む;水冷ケーブル6は、第一撹拌電流入力線L1と、第二撹拌電流入力線L2と、第三撹拌電流入力線L3とを含み、第一撹拌電流入力線L1、第二撹拌電流入力線L2および第三撹拌電流入力線L3の片方の端に三相電源が外付けられ、第一撹拌電流入力線L1、第二撹拌電流入力線L2および第三撹拌電流入力線L3のもう片方の端がそれぞれ断路器QSとヒューズFUによって相変換回路を介して電磁コイル5に接続される。
【0020】
図5において、前記相変換回路は、第一接触器KM1と、第二接触器KM2と、交番電圧u1と、変圧器Tと、第一ダイオードD1と、第二ダイオードD2と、抵抗器Rとを含み、第一ダイオードD1および第二ダイオードD2の正極がそれぞれ変圧器Tの二次側の出力端に接続され、第一ダイオードD1の負極が第一接触器KM1および抵抗器Rを介して変圧器Tの二次側の出力端に接続され、第二ダイオードD2の負極が第二接触器KM2および抵抗器Rを介して変圧器Tの二次側の出力端に接続される;第一接触器KM1と第二接触器KM2が電磁コイル5に接続され、第一接触器KM1の電磁コイル5に接続される相順と第二接触器KM2の電磁コイル5に接続される相順とは逆であり、第一接触器KM1および第二接触器KM2の通断が、それぞれ相変換回路に制御される。
【0021】
前記交番電圧u1の周波数f2が0.1-1Hz、好ましくは0.2Hzである。
前記相順制御部は、さらにサーマルリレーFRを含み、第一接触器KM1と第二接触器KM2がそれぞれサーマルリレーFRを介して電磁コイル5に接続され、過負荷保護の機能を果たす。
【0022】
図1において、前記保護ケース3の歯先端の両側が内側に凹む円弧状構造であり、保護ケース3の歯先端が両セグメントロール2の間で鋳片1方向に延在し、保護ケース3の円弧状構造がセグメントロール2の外形と一致することで、電磁力撹拌装置本体、特に磁極頭部を鋳片1の表面にできるだけ近づけることができ、電磁力撹拌装置本体と鋳片1との間の空隙内での撹拌電磁場の減衰や損失を低減できる。好ましくは、保護ケース3が非磁性のステンレス材からなり、電磁コイル5が高導電性の銅管の巻回によって作られ、冷却水が電磁コイル5自身の冷却をさらに強化することができる。
【0023】
前記鉄心4の内側に、磁場の分布を均一にするため、一つまたは複数の溝41が間隔を空けて設置され、電磁コイル5が鉄心4の溝41内に巻回される。
【0024】
前記一対の鉄心4の両端と保護ケース3との接続部に止水リング11が設けられているため、冷却水が鉄心4と電磁コイル5の範囲内で流れ、水漏れが生じない。
【0025】
図6においては、スラブ連鋳における二次冷却帯に用いる電磁力撹拌方法は以下の工程を含む:
工程1:鋳片1の厚さに基づき、シリンダー7で可動ジョイント軸12を中心にケイ素鋼板セット挿入片13を回転させることによって、閉環構造の開口度を調節する。
【0026】
工程2:相順制御部が相変換回路を通電させ、鉄心4に巻回される電磁コイル5に鋳片1内で周期的に変わる磁場を発生させ、溶鋼に対し正逆交互の電磁力撹拌を行う。
【0027】
工程3:冷却水が冷却水入口9を介して保護ケース3内に入り、電磁コイル5および鉄心4を完全に浸し、そして一つまたは複数の冷却水噴出口10によって鋳片1の表面に噴射される。
【0028】
工程2.1:第一ダイオードD1が正方向に通電し、正の半サイクルの相変換電流が第一接触器KM1を通り、第一接触器KM1が通電し、作動する。
【0029】
工程2.2:鉄心4に巻回される電磁コイル5が磁場を発生させ、三相電源がU-V-Wの相順で電磁力撹拌コイル5に接続され、溶鋼に対し正方向での電磁力撹拌を行う。
【0030】
工程2.3:第二ダイオードD2が正方向に通電し、負の半サイクルの相変換電流が第二接触器KM2を通り、第二接触器KM2が通電し、作動する。
【0031】
工程2.4:鉄心4に巻回される電磁コイル5が磁場を発生させ、三相電源がW-V-Uの相順で電磁力撹拌コイル5に接続され、溶鋼に対し逆方向での電磁力撹拌を行う。
【0032】
工程2.5:第一ダイオードD1と第二ダイオードD2が交番電圧u1によって交互に通電し、第一接触器KM1と第二接触器KM2とを交互に通断させることで、三相電源の相順を一定の周波数で交互に変換させることができ、それによって電磁力撹拌方向を周期的に変えることができる。
【0033】
実施例:
薄スラブの高速連鋳では、好ましくは、電磁力撹拌装置が鋳造機の扇形部0#部で鋳型出口近辺の位置に設置される。二次冷却帯における冷却水ノズルの噴射冷却により、この時の連鋳シェルの厚さが約10~20mmで、未凝固分率が60~80%で、凝固シェルがすでに鋳片1内部の溶鋼の収納に十分な強度を持ち、広い辺の外側で電磁力撹拌してもブレークアウトのリスクに過度に恐れる必要がない;また、液芯の未凝分率が大きく、溶鋼の量が十分で、柱状結晶が成長し始め、二次冷却帯において一定の強度での電磁力撹拌を与えるには適している。撹拌電流強度が800Aで、鋳片1の液芯は、電磁力撹拌装置本体によって生じた大きさが均等で方向が逆である二つの電磁力の交互の駆動により、水平な環状流動が形成される。引張速度の影響を考慮すると、溶鋼の環状流動は、空間的にみると、実はスパイラルの形である。また、引張速度が高いほど、溶鋼流動のスパイラルピッチが大きくなる。そのため、引張速度の高い連鋳では、撹拌電流周波数を従来の電磁力撹拌より適当に高くとすべき、撹拌電流周波数はf1=8Hzである。二次冷却帯における鋳片凝固過程では、電磁力撹拌によって形成される溶鋼流動が、凝固シェル内部での固/液界面の前縁の結晶性ペースト状領域での樹枝晶を連続的に洗い、力学的機構によって成長するデンドライトを砕き、または高次デンドライトの根部のネッキング機構により、新たな結晶粒成長核を連続的に多数発生させ、最終鋳片1の等軸晶率を効果的に向上させ、デンドライト偏析やマクロ偏析などの鋳造欠陥を改善する。
【0034】
相順制御部では、第一撹拌電流入力線L1と、第二撹拌電流入力線L2と、第三撹拌電流入力線L3との相順が、接触器の制御によって自動的に変換する。接触器は、その内部での制御回路に制御され、第一接触器KM1内部の電磁コイルが通電(正の半サイクルの制御電圧)する時、コイル電流が磁場を発生させ、生じた磁場がその静的鉄心に電磁力を発生させ、その動的鉄心を吸引し、第一接触器KM1に接触動作をさせ、その三対の主接点が通電し、三相電源の相順がU1-V1-W1であるように電磁コイル5に接続され、溶鋼に対し「正方向」での電磁力撹拌を行う。第一接触器KM1の内部での電磁コイルがオフになると、電磁吸引力が消え、リリーフばねの作用下で接極子がリリーフされ、接点が復帰し、第一接触器KM1の主接点がオフになる。同時に、第二接触器KM2内部での電磁コイルが通電(負の半サイクルの制御電圧)し、同じ原理に基づき、その三対の主接点が電磁吸引力によって主回路を通電させ、三相電源の相順がW2-V2-U2であるように電磁コイル5に接続され、「逆方向」での電磁力撹拌が実現される。
【0035】
両接触器内部の電磁コイルの通断制御は、周波数がf2=0.1Hzである交番電圧u1を交番相変換することによって実現され、単方向の第一ダイオードD1が正方向に通電する時、正の半サイクルの相変換電流が第一接触器KM1を通り、第一接触器KM1が通電し、作動して、正方向の撹拌を実現する;正方向に5s撹拌した後、単方向の第二ダイオードD2が正方向に通電した後、負の半サイクルの相変換電流が第二接触器KM2を通り、第二接触器KM2が通電し、作動して、撹拌電流の相順がU1-V1-W1からW2-V2-U2へ自動的に変換し、進行波の撹拌磁場の伝送方向が逆方向になり、鋳片1内で誘起される電磁撹拌力も逆となり、それに伴って、溶鋼循環流の方向が変わり、逆方向での撹拌が実現される。逆方向で5s撹拌した後、電流の相変換によって正方向の撹拌に戻り、このように、第一接触器KM1と第二接触器KM2が交互に通断し、三相撹拌電流の相順が一定の周波数で交替変化でき、それに伴って、撹拌方向も周期的に変わり、溶鋼流動による固液界面での洗い効果が改善され、電磁力撹拌の効果が強化され、従来の単方向での撹拌方法の欠点が避けられた。
【0036】
鋳片1の規格が変更する場合、例えば鋳片1の厚さが80mmから60mmに減る時、電磁力撹拌装置本体の可動ジョイントにより、背面にあるシリンダー7の駆動の下で、鋳片1の広い面での電磁力撹拌装置本体が同時に鋳片方向に向かって10mm接近し、または自由側におけるシリンダー7の駆動のみで、自由側での撹拌装置本体の鉄心4および電磁コイル5を固定側に20mm移動させ、いずれにせよ、閉鎖環状構造の開口度が20mm縮み、鋳片1が依然として閉鎖環状構造の対称中心に位置し、空隙での撹拌磁場の損失を低減すると共に、二次冷却帯における電磁力撹拌装置本体の撹拌効率や効果を相対的に向上させた。
【0037】
以上は本発明の好ましい実施例に過ぎず、発明の保護範囲を限定するものではないため、本発明の主旨や原則以内において行われるいかなる修正や、均等置換、改良などが、本発明の保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6