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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】圧力検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 23/28 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
G01L23/28
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023012051
(22)【出願日】2023-01-30
【審査請求日】2023-01-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐二郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和生
(72)【発明者】
【氏名】小畑 元樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 宏史
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0275696(US,A1)
【文献】特表2010-509574(JP,A)
【文献】実開平2-20128(JP,U)
【文献】実公昭47-37665(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に設けられた孔に装着可能な胴体と、当該胴体の一端側に設けられ、当該内燃機関からの流体の圧力を受ける受圧部材と、当該胴体の当該一端側の先端にて当該受圧部材に配置され、当該流体の温度を低減させながら当該流体を当該受圧部材に供給する温度低減部材とを備え、
前記受圧部材は、圧力を受けて変位する受圧部と、当該受圧部材と接合または一体化された、内周面を有する第1部材と接合または一体化された受圧支持部とを含み、
前記温度低減部材は、前記第1部材と、前記内周面に対向する外周面を有する第2部材とを含み、
前記第1部材の内周面に形成された雌ねじと、前記第2部材の外周面に形成された雄ねじとが螺合していることを特徴とする、
圧力検出装置。
【請求項2】
前記第1部材と前記受圧支持部とが一体に成形されていることを特徴とする、
請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項3】
前記第2部材には、前記流体を前記受圧部に供給可能にする複数の連通孔が設けられていることを特徴とする、
請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項4】
前記第1部材に螺合された前記第2部材が、前記受圧部材に接触しない位置に配置されることを特徴とする、
請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項5】
前記第1部材に螺合された前記第2部材を固定する固定機構が設けられていることを特徴とする、
請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項6】
前記固定機構が、前記第1部材と前記第2部材との螺合部に形成されたねじ穴と、当該ねじ穴に螺合されるねじとの組み合わせであることを特徴とする、
請求項5に記載の圧力検出装置。
【請求項7】
前記ねじ穴は、前記第1部材および前記第2部材の軸方向に形成されており、
前記第1部材には、前記ねじ穴に螺入された前記ねじの頭部の一部と嵌合する切欠き部が設けられていることを特徴とする、
請求項6に記載の圧力検出装置。
【請求項8】
前記ねじの頭部の形状が円筒状であることを特徴とする、
請求項7に記載の圧力検出装置。
【請求項9】
前記ねじ穴は、前記第1部材および前記第2部材の軸方向に直交する向きに形成されていることを特徴とする、
請求項6に記載の圧力検出装置。
【請求項10】
前記ねじ穴に螺入された前記ねじの頭部が、当該ねじ穴の入口から外部に突出していないことを特徴とする、
請求項9に記載の圧力検出装置。
【請求項11】
前記第2部材の先端面には、1以上の直線の溝が設けられていることを特徴とする、
請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項12】
前記第2部材は、複数の部材に分割可能とし、分割された当該複数の部材を組み立て可能とすることを特徴とする、
請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項13】
分割された前記複数の部材の各々には、組み立ての際に嵌合される凹部および凸部が設けられている、
請求項12に記載の圧力検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関からの流体の圧力を検出する装置が知られている(例えば、特許文献1)。このような装置が一定期間使用されると、流体の温度を低減させて受圧部材に供給する温度低減部材に不完全燃焼生成物が堆積する。不完全燃焼生成物の堆積は、正確な圧力測定を妨げる要因になるため、温度低減部材に付着した不完全燃焼生成物を定期的に除去する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-056119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、温度低減部材と受圧部材とがレーザ溶接等により接合されていたり、一体に成形されていたりすることで、温度低減部材と受圧部材とが強固に接続されている状態では、温度低減部材から不完全燃焼生成物を除去することが困難である。
【0005】
本発明は、温度低減部材と受圧部材とが強固に接続されている状態であっても、温度低減部材に付着した不完全燃焼生成物を容易に除去できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明の圧力検出装置は、内燃機関に設けられた孔に装着可能な胴体と、当該胴体の一端側に設けられ、当該内燃機関からの流体の圧力を受ける受圧部材と、当該胴体の当該一端側の先端にて当該受圧部材に配置され、当該流体の温度を低減させながら当該流体を当該受圧部材に供給する温度低減部材とを備え、前記受圧部材は、圧力を受けて変位する受圧部と、当該受圧部材と接合または一体化された、内周面を有する第1部材と接合または一体化された受圧支持部とを含み、前記温度低減部材は、前記第1部材と、前記内周面に対向する外周面を有する第2部材とを含み、前記第1部材の内周面に形成された雌ねじと、前記第2部材の外周面に形成された雄ねじとが螺合していることを特徴とする、圧力検出装置である。
ここで、前記第1部材と前記受圧支持部とが一体に成形されていてもよい。
また、前記第2部材には、前記流体を前記受圧部に供給可能にする複数の連通孔が設けられていてもよい。
また、前記第1部材に螺合された前記第2部材が、前記受圧部材に接触しない位置に配置されていてもよい。
また、前記第1部材に螺合された前記第2部材を固定する固定機構が設けられていてもよい。
また、前記固定機構が、前記第1部材と前記第2部材との螺合部に形成されたねじ穴と、当該ねじ穴に螺合されるねじとの組み合わせであってもよい。
また、前記ねじ穴は、前記第1部材および前記第2部材の軸方向に形成されており、前記第1部材には、前記ねじ穴に螺入された前記ねじの頭部の一部と嵌合する切欠き部が設けられていてもよい。
また、前記ねじの頭部の形状が円筒状であってもよい。
また、前記ねじ穴は、前記第1部材および前記第2部材の軸方向に直交する向きに形成されていてもよい。
また、前記ねじ穴に螺入された前記ねじの頭部が、当該ねじ穴の入口から外部に突出していなくてもよい。
また、前記第2部材の先端面には、1以上の直線の溝が設けられていてもよい。
また、前記第2部材は、複数の部材に分割可能とし、分割された当該複数の部材を組み立て可能としてもよい。
また、分割された前記複数の部材の各々には、組み立ての際に嵌合される凹部および凸部が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、温度低減部材と受圧部材とが強固に接続されている状態であっても、温度低減部材に付着した不完全燃焼生成物を容易に除去できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る圧力検出装置の側面図である。
図2】圧力検出装置を内燃機関に装着した状態を示す概略構成図である。
図3】圧力検出装置の断面図(図1のIII-III断面図)である。
図4】圧力検出装置の先端側(図3のIV領域)の拡大断面図である。
図5】(A)は、圧力検出装置の緩衝部材に不完全燃焼生成物が堆積した状態を示す図である。(B)は、圧力検出装置から第2緩衝部材を取り外したときの状態を示す図である。
図6】第1緩衝部材に螺合された第2緩衝部材を第1緩衝部材に固定するねじを有する緩衝部材の外観構成の一例を示す斜視図である。
図7】(A)は、図6の緩衝部材を半径方向に切った断面の斜視図である。(B)は、図6の緩衝部材を半径方向に切った断面図である。(C)乃至(F)は、ねじの頭部の形状のバリエーションを示す図である。
図8】(A)は、第1緩衝部材に螺合された第2緩衝部材を第1緩衝部材に固定するねじを有する緩衝部材の外観構成の一例を示す斜視図である。(B)は、(A)の緩衝部材の外観構成の一例を示す正面図である。(C)は、(A)の緩衝部材を半径方向に切った断面図である。
図9】(A)および(B)は、治具を用いて第2緩衝部材を回転させることを可能にする緩衝部材の外観構成の一例を示す斜視図である。
図10】(A)および(B)は、複数の部材に分割可能とし、分割された複数の部材を組み立て可能とする第2緩衝部材の外観構成の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[圧力検出装置の構成]
図1は、本実施の形態に係る圧力検出装置1の側面図である。図2は、圧力検出装置1を内燃機関10に装着した状態を示す概略構成図である。図3は、圧力検出装置1の断面図(図1のIII-III断面図)である。図4は、圧力検出装置1の先端側(図3のIV領域)の拡大断面図である。
【0010】
本実施の形態に係る圧力検出装置1は、内燃機関10における燃焼室C内の圧力(燃焼圧)を検出する装置である。圧力検出装置1が燃焼室C内の圧力を検出すると、検出された圧力に基づいて、制御装置(図示せず)による内燃機関10の動作の制御が行われる。圧力検出装置1と、制御装置とは、接続ケーブル90を介して電気的に接続されている。
【0011】
圧力検出装置1は、全体として筒状を呈するとともに外部に露出するように設けられた筐体部30と、圧力を検出するための各種機構を含み、略全体が筐体部30の内部に収容されるとともに一部が外部に露出するように設けられた検出機構部40と、筐体部30の外周面に取り付けられたシール部70と、筐体部30の一端側(図1においては筐体部30の左側)に取り付けられた緩衝部材80とを有している。
【0012】
ここで、圧力検出装置1による圧力の検出対象となる内燃機関10の構成について説明する。内燃機関10は、内部にシリンダが形成されたシリンダブロック11と、シリンダ内を往復運動するピストン12と、シリンダブロック11に締結されてピストン12等とともに燃焼室Cを構成するシリンダヘッド13とを有している。また、シリンダヘッド13には、燃焼室Cと外部とを連通する連通孔13aが設けられている。連通孔13aは、その中間に段差部13cと、段差部13cより燃焼室C側に位置する段差部13bとを備え、段差部13bより燃焼室C側であり内径が小さな小径部と、段差部13bより外側かつ段差部13cより燃焼室C側であり小径部より内径の大きな中経部と、段差部13cより外部側であり中径部より内径の大きな大径部からなる。そして、この連通孔13aに圧力検出装置1の先端側を挿入するとともに、圧力検出装置1をシリンダヘッド13に固定することで、内燃機関10に対して圧力検出装置1を取り付けている。ここで、内燃機関10を構成するシリンダブロック11、ピストン12およびシリンダヘッド13は、鋳鉄やアルミニウム等、導電性を有する金属材料で構成されている。
【0013】
このような構成の内燃機関10に対し、圧力検出装置1は、図1における左側(緩衝部材80側)が燃焼室C(図2では下側)を向くとともに、図1における右側(接続ケーブル90側)が外部(図2では上側)を向くように取り付けられる。なお、以下の説明では、図1において、図中左に向かう側を圧力検出装置1の「先端側」と呼び、図中右に向かう側を圧力検出装置1の「後端側」と呼ぶ。また、中心線に沿った軸の方向を「軸方向」と呼ぶ。また、圧力検出装置1の径を示す方向を「半径方向」と呼ぶ。また、半径方向と呼ぶ場合、図1等に一点鎖線で示す圧力検出装置1の中心線に向かう方向を「内側」と呼び、中心線から離れる方向を「外側」と呼ぶ。また、本実施の形態では、「先端側」が「一端側」に、「後端側」が「他端側」に、それぞれ対応している。
【0014】
(筐体部の構成)
胴体の一例としての筐体部30は、先端外部筐体31と、先端外部筐体31の先端側に取り付けられたダイアフラムヘッド32と、先端外部筐体31の後端側に取り付けられた中間外部筐体33と、中間外部筐体33の後端側に取り付けられた後端外部筐体34とを備えている。また、筐体部30は、先端外部筐体31の内側であってダイアフラムヘッド32の後端側に取り付けられた第1内部筐体35と、先端外部筐体31の内側であって第1内部筐体35の後端側に取り付けられた第2内部筐体36とをさらに備えている。
【0015】
〔先端外部筐体〕
先端外部筐体31は、中空構造を有し且つ全体として筒状を呈する部材である。先端外部筐体31は、導電性を有するとともに耐熱性および耐酸性が高いステンレス鋼等の金属材料によって構成されている。このような金属材料としては、例えば析出硬化系のステンレス鋼として知られるSUS630や、例えばオーステナイト系の耐熱鋼(耐熱合金)として知られるSUH660を例示することができる。ただし、要求される特性を満たすものであれば、これ以外の各種金属または各種合金(各種ステンレス鋼、各種耐熱鋼あるいは各種耐熱合金)等を採用することができる。
【0016】
先端外部筐体31は、シリンダヘッド13の連通孔13aに挿入される部分の外径が、連通孔13aの燃焼室C側の小径部の内径に略一致する一定であり、後端側に連通孔13aの内径よりも大きい外径を有する張り出し部311が設けられている。圧力検出装置1がシリンダヘッド13に装着されると、先端外部筐体31の張り出し部311は、連通孔13a内の段差部13cに、第1シール部材71を介して突き当たる。張り出し部311の先端側の面を座面312と呼ぶ。
【0017】
ここで、先端外部筐体31の外周面には雄ねじ(図示せず)が形成されている。また、図2に示すシリンダヘッド13に設けられた連通孔13aの内壁には、先端外部筐体31に設けられた上記の雄ねじと螺合可能な雌ねじ(図示せず)が設けられている。なお、連通孔13aのうち、上述した雌ねじが設けられている部位よりも先端側となる領域には、圧力検出装置1の先端(緩衝部材80)が突き当たる段差部(図示せず)が設けられている。
【0018】
〔ダイアフラムヘッド〕
受圧部材の一例としてのダイアフラムヘッド32は、全体として円盤状を呈する部材である。ダイアフラムヘッド32は、導電性を有するとともに耐熱性および耐酸性が高いステンレス等の金属材料によって構成されている。このような金属材料としては、例えば析出硬化系のステンレス鋼として知られるSUS630や、例えばオーステナイト系の耐熱鋼(耐熱合金)として知られるSUH660を例示することができる。ただし、要求される特性を満たすものであれば、これ以外の各種金属または各種合金(各種ステンレス鋼、各種耐熱鋼あるいは各種耐熱合金等)を採用することができる。なお、この例では、ダイアフラムヘッド32を、先端外部筐体31と同じ材料(例えばSUS630)で構成している。
【0019】
ダイアフラムヘッド32は、先端側における中央部に、受圧部の一例として、外部(燃焼室C側)に露出することで圧力に応じた変位を生じる、圧力膜32aおよび表面中央凹部32bを有している。また、ダイアフラムヘッド32は、圧力膜32aの裏側となる裏面を環状に切り欠くことによって形成された裏面環状凹部32cと、裏面環状凹部32cの存在により、結果として圧力膜32aの中央部(表面中央凹部32bの形成部位)から後端側に突出する裏面中央凸部32dとを有している。
【0020】
さらに、ダイアフラムヘッド32は、圧力膜32aの周縁部後端側に裏面環状凸部32eと、圧力膜32aの全周縁から先端側に突出した、受圧支持部の一例としての表面環状凸部32gとを有している。表面環状凸部32gは、裏面環状凸部32eの反対側(表側)に位置している。表面環状凸部32gは、後述する緩衝部材80の第1緩衝部材81の一部と接合または第1緩衝部材81と一体に成形されている。なお、別の観点からみれば、ダイアフラムヘッド32の先端側は、その中央部を円形状に切り欠くことによって形成された表面環状凸部32gおよび圧力膜32aと、圧力膜32aの中央部をさらに切り欠くことによって形成された表面中央凹部32bとを有しているもの、とみなすこともできる。
【0021】
ダイアフラムヘッド32は、先端外部筐体31における先端側の開口部を塞ぐように設けられている。より具体的に説明すると、ダイアフラムヘッド32の裏面環状凸部32eに、先端外部筐体31の先端側の一部が突き当たっている。そして、ダイアフラムヘッド32と先端外部筐体31との境界部には、外周面の一周にわたってレーザ溶接が施されている。本実施の形態のダイアフラムヘッド32は、最も薄手となる裏面環状凹部32cの周辺が外力に応じて変位することにより、ばねとして機能するようになっている。そして、ダイアフラムヘッド32は、燃焼室C等から圧力(外圧)を受けることに伴い振動するようになっている。
【0022】
〔中間外部筐体〕
中間外部筐体33は、中空構造を有し且つ全体として筒状を呈する部材である。中間外部筐体33は、導電性を有するとともに耐熱性および耐酸性が高いステンレス等の金属材料で構成されている。このような金属材料としては、例えばフェライト系のステンレス鋼として知られるSUS430LXを例示することができる。ただし、要求される特性を満たすものであれば、これ以外の各種金属または各種合金(各種ステンレス鋼、各種耐熱鋼あるいは各種耐熱合金)等を採用することができる。なお、この例では、中間外部筐体33を、先端外部筐体31とは異なる材料(例えばSUS430LX)で構成している。中間外部筐体33の先端側は、先端外部筐体31の後端側にはめ込まれるようになっている。そして、中間外部筐体33と先端外部筐体31との境界部には、外周面の一周にわたってレーザ溶接が施されている。
【0023】
〔後端外部筐体〕
後端外部筐体34は、中空構造を有し且つ全体として筒状を呈する部材である。後端外部筐体34は、導電性を有するとともに耐熱性および耐酸性が高いステンレス等の金属材料で構成されている。このような金属材料としては、例えばフェライト系のステンレス鋼として知られるSUS430LXを例示することができる。ただし、要求される特性を満たすものであれば、これ以外の各種金属または各種合金(各種ステンレス鋼、各種耐熱鋼あるいは各種耐熱合金等)を採用することができる。なお、この例では、後端外部筐体34を、中間外部筐体33と同じ材料(例えばSUS430LX)で構成している。後端外部筐体34の先端側は、中間外部筐体33の後端側にはめ込まれるようになっている。そして、後端外部筐体34と中間外部筐体33との境界部には、外周面の一周にわたってレーザ溶接が施されている。
【0024】
(検出機構部の構成)
検出機構部40は、伝導部材47と、保持部材48と、第2コイルバネ54と、第1収容部材55と、第2収容部材56と、回路内蔵部材57と、接続部材58と、閉塞部材59と、第3絶縁部材60とを備えている。また、検出機構部40は、圧電縦効果の圧電作用を示す圧電体を備える圧電素子41と、導電性を有する金属材料によって構成されている先端電極部材42、後端電極部材44、および支持部材53と、絶縁性を有するセラミックス材料によって構成されている先端絶縁部材43、後端絶縁部材45、第1絶縁部材51、および第2絶縁部材52とを備えている。
【0025】
また、検出機構部40は、軸方向に伸縮する第1コイルバネ46と、最も薄手となる先端側の側部が外力に応じて伸縮することでばねとして機能する加圧部材49と、先端電極部材42、圧電素子41、後端電極部材44および後端絶縁部材45を、自身の内側に収容し且つ接触しながら固定することで、自身とともにこれらを一体化(モジュール化)する機能を有する絶縁チューブ50とを備えている。
【0026】
〔伝導部材〕
伝導部材47は、全体として棒状を呈する部材であり、先端外部筐体31の内側に配置されている。伝導部材47は、導電性を有する真ちゅう等の金属材料によって構成されており、その表面には金めっきが施されている。伝導部材47は、最も先端側に位置する先端棒状部471と、先端棒状部の後端側に位置する中間棒状部472と、中間棒状部の後端側に位置する後端棒状部473とを有している。また、伝導部材47では、先端棒状部471、中間棒状部472および後端棒状部473の順で、外径が大きくなっている。
【0027】
〔保持部材〕
保持部材48は、中空構造を有し且つ全体として筒状を呈する部材である。保持部材48は、絶縁性を有するPPS(Polyphenylenesulfide:ポリフェニレンサルファイド)あるいはPPT(Polypropylene Terephthalate:ポリプロピレンテレフタレート)等の合成樹脂材料によって構成されている。保持部材48は、最も先端側に位置する先端部と、先端部の後端側に位置する中間部と、中間部の後端側に位置する後端部とを有している。保持部材48では、先端部、中間部および後端部の順で、外径が大きくなっている。保持部材48は、先端外部筐体31の内側と中間外部筐体33の内側とに跨がって配置されている。そして、保持部材48の内部には、上記伝導部材47が収容され、保持されている。
【0028】
〔第2コイルバネ〕
第2コイルバネ54は、全体として螺旋状を呈する部材であって、中心線方向に伸縮するようになっている。第2コイルバネ54は、導電性を有するとともに耐熱性が高いリン青銅等の金属材料によって構成されており、その表面には金めっきが施されている。なお、この例では、第2コイルバネ54を、第1コイルバネと同じ材料(例えばリン青銅)で構成している。第2コイルバネ54は、先端外部筐体31の内側に配置されている。
【0029】
〔第1収容部材〕
第1収容部材55は、中空構造を有し且つ全体として筒状を呈する部材である。第1収容部材55は、導電性を有する真ちゅうやステンレス等の金属材料によって構成されており、その表面には金めっきが施されている。第1収容部材55は、先端外部筐体31の内側に配置されている。
【0030】
〔第2収容部材〕
第2収容部材56は、中空構造を有し且つ全体として筒状を呈する部材である。第2収容部材56は、上記第1収容部材55と同様に、導電性を有する真ちゅうやステンレス等の金属材料によって構成されており、その表面には金めっきが施されている。第2収容部材56は、先端外部筐体31の内側と中間外部筐体33の内側とに跨がって配置されている。
【0031】
〔回路内蔵部材〕
回路内蔵部材57は、図3に示すように、圧電素子41が出力する微弱な電荷による電気信号に、電子回路を用いた各種処理を施す回路基板571と、回路基板571を内部に収容することで回路基板571を封止する封止部572とを備えている。回路内蔵部材57は、中間外部筐体33の内側であって、後端側の一部を除くほぼ全域が、第2収容部材56の内側に配置されている。特に、回路基板571は、その全域が第2収容部材56の内側に配置されている。また、回路内蔵部材57の先端側は、保持部材48の後端側に設けられた凹部にはめ込まれるようになっている。そして、回路内蔵部材57の先端側に設けられた金属板(電極端子)が、伝導部材47の後端側と接続するようになっている。また、回路内蔵部材57の外周面に設けられた金属板(電極端子)が、第2収容部材56の内周面と接触するようになっている。
【0032】
〔接続部材〕
接続部材58は、全体として柱状を呈する部材である。接続部材58は、絶縁性を有するPPSあるいはPPT等の合成樹脂材料によって構成された基材と、導電性を有する銅等の金属材料で構成された配線および端子等を含んでいる。接続部材58は、中間外部筐体33の内側と後端外部筐体34の内側とに跨がって配置されている。なお、接続部材58のうち、中間外部筐体33あるいは後端外部筐体34と対峙する部位(外周面)は、合成樹脂材料で構成されており、この部位に金属材料を露出させないようにしている。接続部材58の先端側には、回路内蔵部材57の後端側が対峙しており、回路内蔵部材57に設けられた金属板(電極端子)が、接続部材58に設けられた端子にはめ込まれるようになっている。また、接続部材58の後端側には、接続ケーブル90を構成する電源線91、信号線92および接地線93(これらの詳細は後述する)の先端側に露出するそれぞれの導体部が挿入されている。そして、中間外部筐体33と接続部材58とは、圧入(しまりばめ)により一体化している。
【0033】
〔閉塞部材〕
閉塞部材59は、全体として柱状を呈する部材である。ただし、閉塞部材59には、中心線方向に沿って3つの貫通孔が形成されている。閉塞部材59は、絶縁性を有するゴム材料で構成されている。閉塞部材59は、その先端側が後端外部筐体34の内側に配置され、その後端側が後端外部筐体34の後端よりも外側に飛び出している。閉塞部材59の先端側は、接続部材58の後端側と対峙している。また、閉塞部材59に設けられた3つの貫通孔には、上述した電源線91、信号線92および接地線93が挿入されている。そして、後端外部筐体34と閉塞部材59とは、圧入(しまりばめ)により一体化している。
【0034】
〔第3絶縁部材〕
第3絶縁部材60は、中空構造を有し且つ全体として筒状を呈する部材である。ただし、第3絶縁部材60は、先端側に設けられた円筒状の部位と、後端側に設けられた円環状部の部位とを一体化した構造を有している。第3絶縁部材60は、絶縁性を有するPPS等の合成樹脂材料によって構成されている。第3絶縁部材60は、先端外部筐体31の内側と中間外部筐体33の内側とに跨がって配置されている。
【0035】
(シール部の構成)
シール部70は、図1に示すように、相対的に先端側に位置する第1シール部材71と、相対的に後端側に位置する第2シール部材72とを備えている。
【0036】
〔第1シール部材〕
第1シール部材71は、全体として環状を呈する部材であり、この例では、断面が四角形状を呈する角リングで構成されている。第1シール部材71は、耐熱性および耐酸性が高い、表面に錫めっきを施した銅材によって構成されている。そして、第1シール部材71は、筐体部30を構成する先端外部筐体31の外周面に取り付けられている。さらに詳しくは、第1シール部材71は、張り出し部311の座面312に接するように、先端外部筐体31の外周面に取り付けられる。座面312は張り出し部311の先端側の面であるので、第1シール部材71が取りつけられた状態で圧力検出装置1がシリンダヘッド13に装着されると、座面312は第1シール部材71を挟んで連通孔13aの段差部13cに対向する。
【0037】
〔第2シール部材〕
第2シール部材72は、全体として環状を呈する部材であり、この例では、断面が円形状を呈するOリングで構成されている。第2シール部材72は、機械的な復元性が高いフッ素ゴム等の合成ゴム材料によって構成されている。そして、第2シール部材72は、筐体部30を構成する後端外部筐体34の外周面に取り付けられている。この第2シール部材72は、内燃機関10の外部から水等が侵入することを防止するシール部材の役割を持つとともに、内燃機関10の動作時や取付環境の振動等に伴って圧力検出装置1が振動し、シリンダヘッド13における連通孔13aの内面に衝突するのを防止する防振部材としての役割も持つ。そのため、第2シール部材72には、機械的な復元性が高い材料の中でも特に、復元性の耐熱特性が高く、振動抑制の機能が長寿命であるフッ素ゴム材料が適している。
【0038】
(緩衝部材の構成)
温度低減部材の一例としての緩衝部材80は、全体として円柱状を呈する部材であり、圧力検出装置1の先端に配置されている。緩衝部材80は、第1部材の一例としての第1緩衝部材81と、第1部材に着脱可能な態様で接合された第2部材の一例としての第2緩衝部材82とで構成された部材である。圧力検出装置1がシリンダヘッド13に装着されると、緩衝部材80は、連通孔13a内の段差部13bに突き当たる。より具体的には、緩衝部材80のうち後述する第1緩衝部材81の表面811が連通孔13a内の段差部13bに突き当たる。
【0039】
〔第1緩衝部材〕
第1緩衝部材81は、全体として中空円筒状を呈する壁からなる部材である。第1緩衝部材81の先端側には、環状を呈する表面811を有しており、第1緩衝部材81の後端側には、環状を呈する裏面812を有している。また、第1緩衝部材81は、外周面813と、雌ねじが形成された内周面814とを有する。内周面814は、内周面814に形成された雌ねじより先端側であり表面811と接続される一端に、雌ねじの内径より内径が大きな切り欠き部8141を有している。
【0040】
第1緩衝部材81は、導電性を有するとともに耐熱性がダイアフラムヘッド32よりも高い金属材料(超耐熱合金)によって構成されている。このような金属材料としては、例えば鉄基合金系であって、ガンマプライム析出強化型超耐熱合金の一種を例示することができる。ただし、要求される特性を満たすものであれば、これ以外の各種超耐熱合金を採用することができる。そして、使用可能な超耐熱合金としては、マトリックス強化型超耐熱合金、炭化物析出強化型超耐熱合金、ガンマプライム析出強化型超耐熱合金を挙げることができる。なお、使用可能な超耐熱合金については、鉄基合金系、ニッケル基合金系、コバルト合金系のいずれであってもよい。また、第1緩衝部材81は、ベリリウム銅合金(JIS C172、以下、BeCu)のような高熱伝導率を有する銅合金材料で構成されても良い。BeCu以外に、アドミラルティ黄銅(JIS C4430)、アルミニウム黄銅(JIS C6870)、ネーバル黄銅(JIS C4640)等が選択できる。
【0041】
〔第2緩衝部材〕
第2緩衝部材82は、全体として円柱状を呈する部材である。第2緩衝部材82の先端側には、円形状を呈する表面821を有し、後端側には、円形状を呈する裏面822を有している。また、第2緩衝部材82は、雄ねじが形成された外周面823を有している。なお、第2緩衝部材82の外周面823には、外周面823に形成された雄ねじよりも外形が大きいつば部8231を有している。つば部8231は、後述する外周面823に設けられた雄ねじ構造のねじ頭として機能する。第2緩衝部材82には、先端側となる表面821から後端側となる裏面822まで貫通する円柱状の貫通孔824が複数形成されている。貫通孔824は、燃焼室C内で発生した燃焼ガス(流体の一例)を通過させることでダイアフラムヘッド32の圧力膜32aに供給する連通孔の一例である。
【0042】
第2緩衝部材82は、第1緩衝部材81と同様に、導電性を有するとともに耐熱性がダイアフラムヘッド32よりも高い金属材料(超耐熱合金)によって構成されている。このような金属材料としては、例えば鉄基合金系であって、ガンマプライム析出強化型超耐熱合金の一種を例示することができる。ただし、要求される特性を満たすものであれば、これ以外の各種超耐熱合金を採用することができる。そして、使用可能な超耐熱合金としては、マトリックス強化型超耐熱合金、炭化物析出強化型超耐熱合金、ガンマプライム析出強化型超耐熱合金を挙げることができる。なお、使用可能な超耐熱合金については、鉄基合金系、ニッケル基合金系、コバルト合金系のいずれであってもよい。また、第2緩衝部材82は、ベリリウム銅合金(JIS C172、以下、BeCu)のような高熱伝導率を有する銅合金材料で構成されても良い。BeCu以外に、アドミラルティ黄銅(JIS C4430)、アルミニウム黄銅(JIS C6870)、ネーバル黄銅(JIS C4640)等が選択できる。第1緩衝部材81を構成する材質と、第2緩衝部材82を構成する材質とは、同一であってもよいし、同一でなくてもよい。
【0043】
〔第2緩衝部材の着脱〕
上述のように、緩衝部材80を構成する第1緩衝部材81および第2緩衝部材82のうち、第1緩衝部材81の内周面814には雌ねじが形成され、これに螺合する雄ねじが第2緩衝部材82の外周面823に形成されている。このねじ機構が、第1緩衝部材81から第2緩衝部材82を分割することと、分割した状態の第2緩衝部材82を再び第1緩衝部材81に螺合させること(すなわち、着脱)を可能にしている。
【0044】
第1緩衝部材81と第2緩衝部材82とが螺合した状態において、第1緩衝部材81の表面811は第2緩衝部材82の表面821より先端側に位置するよう構成され、緩衝部材80の先端側となる表面のうち、第2緩衝部材82により形成される中央部分は、円形状且つ凹状を呈し、第1緩衝部材81により形成される周縁部分は、全周にわたって環状且つ凸部を呈している。また、緩衝部材80の後端側となる裏面のうち、第2緩衝部材82により形成される中央部分は、円形状且つ凹状を呈し、第1緩衝部材81により形成される周縁部分は、全周にわたって環状且つ凸部を呈している。
【0045】
なお、図示しないが、第1緩衝部材81と第2緩衝部材82とが螺合された緩衝部材80の先端側の表面において第2緩衝部材82により形成される中央部分が、凹状を呈しない構成、つまり、緩衝部材80の先端側となる表面の中央部分と周縁部分とが同一平面上となる構成、または、中央部分が凸部を呈し、周縁部分が凹状を呈する構成としても良い。ここで、第1緩衝部材81と第2緩衝部材82とが螺合された緩衝部材80の先端側の表面において第2緩衝部材82により形成される中央部分が、凹状を呈する構成とするか、同一平面上とするか、あるいは凸状を呈する構成とするかについては、第1緩衝部材81に螺合された第2緩衝部材82の軸方向の位置により決定される。すなわち、第1緩衝部材81にねじ込まれた第2緩衝部材82を、軸方向のどの位置で固定するのかにより決定される。第1緩衝部材81にねじ込まれた第2緩衝部材82の固定については後述する。
【0046】
(緩衝部材とダイアフラムヘッドとの関係)
本実施の形態では、緩衝部材80の第1緩衝部材81の後端側の裏面812と、ダイアフラムヘッド32における表面環状凸部32gとを突き当てた状態で、これら裏面812と表面環状凸部32gとの境界部に対し、外周面の一周にわたってレーザ溶接を施すことで、これらを一体化している。したがって、この例では、ダイアフラムヘッド32と第1緩衝部材81とが接触した状態で固定(溶接)されている。ただし、緩衝部材80を構成する第2緩衝部材82の後端側の裏面822と、ダイアフラムヘッド32の先端側に設けられた圧力膜32aおよび表面中央凹部32bとは、空間を隔てて対峙している。
【0047】
圧力検出装置1においては、緩衝部材80の第2緩衝部材82の裏面822と、ダイアフラムヘッド32の圧力膜32aおよび表面中央凹部32bとを所定の間隔をもって対峙させる。このため、第1緩衝部材81には、切り欠き部8141が設けられており、第2緩衝部材82には、つば部8231が設けられている。このような構成により、第1緩衝部材81に第2緩衝部材82を螺入していくと、つば部8231が切り欠き部8141に突き当たり、第2緩衝部材82の螺入の進行を制限することになる。これにより、ダイアフラムヘッド32と第2緩衝部材82とが所定の間隔をもって対峙させることができる。その結果、第2緩衝部材82がダイアフラムヘッド32に接触することで生じ得るダイアフラムヘッド32の機能の低下が防止される。
【0048】
そして、圧力検出装置1をシリンダヘッド13に装着した状態で、第1緩衝部材81は、連通孔13aの内壁に接触している。また、圧力検出装置1の先端外部筐体31に設けられた雄ねじを連通孔13aの雌ねじにねじ込むことにより、先端外部筐体31の側壁と、連通孔13aの内壁とが接触している。また、第1緩衝部材81と第2緩衝部材82とが螺合された緩衝部材80の先端側の表面において第2緩衝部材82により形成される中央部分が凹状を呈しない構成とした場合においても、先端外部筐体31の側壁と、連通孔13aの内壁とが接触する。
【0049】
ここで、緩衝部材80を構成する材料と、ダイアフラムヘッド32を構成する材料との関係について説明する。本実施の形態では、緩衝部材80およびダイアフラムヘッド32が、ともに合金材料で構成される。ただし、緩衝部材80とダイアフラムヘッド32とは、異なる合金材料で構成される。また、緩衝部材80およびダイアフラムヘッド32には、鉄基合金(鋼)を用いることが望ましい。ダイアフラムヘッド32については、Crを10.5%以上含むステンレス鋼を用いることが望ましい。一方、緩衝部材80については、ステンレス鋼ではない鉄基合金(超耐熱合金)を用いることが望ましい。また、緩衝部材80に銅合金を用いてもよい。
【0050】
また、緩衝部材80を構成する合金材料については、熱膨張率が、ダイアフラムヘッド32を構成する合金材料と近いことが望ましく、熱膨張率が一致していることがより望ましい。また、緩衝部材80を構成する合金材料に銅合金のような高熱伝導率を有する材料を用いることにより、熱膨張率の一致性が得られ難くなるが、代わりに燃焼ガスの急峻な温度変化に対する高応答な吸熱特性を示すことが期待される。
【0051】
[接続ケーブルの構成]
接続ケーブル90は、図1に示すように、撚り合わせられた電源線91、信号線92および接地線93と、これら電源線91、信号線92および接地線93の外周を覆う被覆部材(図示せず)とを備えている。ここで、電源線91、信号線92および接地線93は、それぞれ、錫メッキ軟銅撚り線で構成された導体部と、電子線等を用いて架橋構造を強化してなるポリエチレン(架橋ポリエチレン)等で構成されるとともに導体部の外周を被覆して絶縁する絶縁部とを有している。また、被覆部材は、絶縁性を有するゴム材料または樹脂材料で構成されている。なお、接続ケーブル90には、必要に応じて、電源線91、信号線92および接地線93を遮へいする遮へい体を設けてもかまわない。
【0052】
[内燃機関に対する圧力検出装置の取付手順]
ここで、図2を用いて、上述の構成を有する圧力検出装置1を内燃機関10に取り付ける際の手順について説明する。まず、内燃機関10のシリンダヘッド13に設けられた連通孔13aに、内燃機関10の外部から、その先端側、すなわち緩衝部材80側を対峙させるように、圧力検出装置1を配置する。これに続いて、連通孔13aの内部に、圧力検出装置1の先端側を挿入していく。
【0053】
次に、内燃機関10のシリンダヘッド13に対し、圧力検出装置1を、軸方向に対し右回りに回転させる。なお、この操作は、トルクレンチを介して行うことが望ましい。これに伴って、シリンダヘッド13における連通孔13aの内周面に設けられた雌ねじと、圧力検出装置1における先端外部筐体31の外周面に設けられた雄ねじとが噛み合うようになり、シリンダヘッド13に対して圧力検出装置1がねじ込まれていく。その結果、圧力検出装置1の先端側に設けられた緩衝部材80は、内燃機関10に設けられた燃焼室Cに向かって移動していく。
【0054】
また、このようなねじ込みに伴い、圧力検出装置1に設けられた緩衝部材80のうち、第1緩衝部材81の先端側の表面811が、内燃機関10におけるシリンダヘッド13の連通孔13a内に設けられた段差部13bに突き当たる。また、圧力検出装置1に設けられた先端外部筐体31の張り出し部311の座面312は、連通孔13a内の段差部13cに、第1シール部材71を介して突き当たる。これに伴い、圧力検出装置1は、基本的にこれ以上ねじ込めない状態となるが、トルクレンチを用いて増し締めを行うことにより、圧力検出装置1およびシリンダヘッド13には、軸方向に沿って予め定められた軸力(締結軸力)が加えられた状態となる。
【0055】
なお、本実施の形態の圧力検出装置1において、第1シール部材71は、緩衝部材80よりも弾性が大きい材料で構成されているため、段差部13cと圧力検出装置1とが突き当たると変形する。このため、圧力検出装置1の連通孔13aに対する位置は、段差部13bと緩衝部材80との突き当りにより決定される。また、第1緩衝部材81と第2緩衝部材82とが螺合した状態において、緩衝部材80は、第1緩衝部材81の表面811が第2緩衝部材82の表面821より先端側に位置するよう構成されている。このため、連通孔13aに接触する緩衝部材80は、第1緩衝部材81のみである。したがって、緩衝部材80を構成する第2緩衝部材82には、圧力検出装置1を内燃機関10に取り付けるための軸力がかからない。また、シリンダヘッド13に段差を設けない構成とした場合は、張り出し部311の座面312と、ねじ部とで軸力が加えられた状態になる。以上により、内燃機関10に対する圧力検出装置1の取り付け、換言すれば、シリンダヘッド13に対する圧力検出装置1の締結が完了する。
【0056】
[圧力検出装置による圧力検出動作]
続いて、圧力検出装置1による圧力検出動作について説明する。内燃機関10が動作しているとき、ダイアフラムヘッド32の圧力膜32aに、燃焼室C内で発生した圧力(燃焼圧)が付与される。ここで、本実施の形態の圧力検出装置1では、ダイアフラムヘッド32の先端側に緩衝部材80が設けられており、燃焼室C内で発生した燃焼ガスは、緩衝部材80の第2緩衝部材82に設けられた貫通孔824を通ってから、ダイアフラムヘッド32の受圧部(圧力膜32aおよび表面中央凹部32b)に到達することになる。言い換えれば、緩衝部材80は、燃焼ガスを受け、この燃焼ガスが貫通孔824を通過することで温度を低下させ、温度の低下した燃焼ガスをダイアフラムヘッド32に供給する。
【0057】
すると、ダイアフラムヘッド32では、受圧部で受けた圧力が裏側の裏面中央凸部32dに伝達され、さらに裏面中央凸部32dから先端絶縁部材43を介して先端電極部材42へと伝達される。そして、先端電極部材42に伝達された圧力は、先端電極部材42と後端電極部材44とに挟まれた圧電素子41に作用し、圧電素子41では、受けた圧力に応じた電荷が生じる。圧電素子41に生じた電荷は、先端電極部材42または後端電極部材44から伝導部材47または第2コイルバネ54等の各導電性部材を介して、回路基板571に電荷信号として供給される。回路基板571に供給された電荷信号は、回路基板571に実装された処理回路(図示せず)にて各種処理が施されることで出力信号とされる。そして、回路基板571から出力された出力信号は、接続部材58の配線および端子と接続ケーブル90とを介して、制御装置に送信される。
【0058】
燃焼室C内で発生した燃焼ガスは、緩衝部材80の第2緩衝部材82に設けられた貫通孔824を通過する間に、緩衝部材80によって熱が奪われるため、緩衝部材80を通過した後の燃焼ガスは、通過する前の燃焼ガスよりも、温度が低下している。具体的には、圧力検出装置1に緩衝部材80を設けない場合と比較して、ダイアフラムヘッド32の受圧部に到達する燃焼ガスの温度を、例えば100℃以上低下させることができる。
【0059】
[デポジットの堆積について]
図5(A)は、圧力検出装置1の緩衝部材80に不完全燃焼生成物(以下、「デポジット」と呼ぶ。)が堆積した状態を示す図である。図5(B)は、圧力検出装置1から第2緩衝部材82を取り外したときの状態を示す図である。
圧力検出装置1が一定期間使用されると、緩衝部材80やダイアフラムヘッド32の受圧部(圧力膜32aおよび表面中央凹部32b)の表面にデポジット1000が堆積する。特に、燃焼室C内で発生した燃焼ガスが通過する貫通孔824およびその周囲にはデポジットが堆積しやすい。デポジット1000は、堆積すると圧力検出装置1による正確な圧力測定を妨げる要因になるため、作業者により定期的に除去される。
【0060】
本実施の形態に係る圧力検出装置1は、上述のように、デポジット1000が堆積しやすい貫通孔824を有する第2緩衝部材82を着脱できる。このため、作業者は、定期的に圧力検出装置1から第2緩衝部材82のみを取り外す。具体的には、作業者は、第1緩衝部材81に螺合している第2緩衝部材82を、周方向のうちねじが緩む方向に回転させることで取り外し、第2緩衝部材82に付着しているデポジット1000を洗い流す。その後、作業者は、デポジットが除去された第2緩衝部材82を圧力検出装置1に取り付ける。具体的には、作業者は、第1緩衝部材81の内周面814の雌ねじに、第2緩衝部材82の外周面823の雄ねじを合わせて、第2緩衝部材82を、周方向のうちねじが締まる方向に回転させることで螺合させる。その後、作業者は、上述した要領で圧力検出装置1をシリンダヘッド13に装着する。
【0061】
[変形例1]
圧力検出装置1の使用態様によっては、緩衝部材80において、第1緩衝部材81に螺合された第2緩衝部材82が何らかの理由により、周方向のうちねじが緩む方向に意図せぬ回転が生じる場合がある。この場合、第1緩衝部材81に対する第2緩衝部材82の軸方向の位置がずれるため、結果的に、第1緩衝部材81から第2緩衝部材82が脱落するおそれがある。このため、緩衝部材80には、第1緩衝部材81に螺合された第2緩衝部材82を固定するための固定機構が設けられていてもよい。
【0062】
図6は、第1緩衝部材81に螺合された第2緩衝部材82を第1緩衝部材81に固定するねじ83を有する緩衝部材80の外観構成の一例を示す斜視図である。図7(A)は、図6の緩衝部材80を半径方向に切った断面の斜視図である。なお、図6では、ねじ83を2つ備えた例を記載しているが、図7(A)では、説明をわかりやすくするために、2つのねじ83のうち1つを図示していない。図7(B)は、図6の緩衝部材80を半径方向に切った断面図である。
図6および図7(A)および(B)に示す緩衝部材80には、第1緩衝部材81に螺合された第2緩衝部材82を固定するための固定機構の一例として、第1緩衝部材81と第2緩衝部材82との螺合部に形成されたねじ穴と、そのねじ穴に螺入されたねじ83との組み合わせが設けられている。
【0063】
ねじ83を螺合するねじ穴は、第1緩衝部材81および第2緩衝部材82の軸方向に形成されている。具体的には、第1緩衝部材81の先端側の表面811および内周面814の各々の一部と、第2緩衝部材82の一部とを含む部分に、軸方向に延びるねじ穴が形成されている。このうち、第1緩衝部材81側に形成されたねじ穴の部分は、ねじ穴に螺入されたねじ83の頭部831の一部と嵌合する切欠き部815を形成している。
【0064】
第1緩衝部材81と第2緩衝部材82とが螺合する部分に、第2緩衝部材82を固定するねじ83が螺入されると、ねじ83の頭部831の一部が切欠き部815に嵌合され、ねじ83のねじ部832が第1緩衝部材81および第2緩衝部材82を跨ぐように配置される。これにより、切欠き部815に嵌合されたねじ83の頭部831および第1緩衝部材81および第2緩衝部材82を跨ぐように配置されたねじ部832が、第2緩衝部材82の意図せぬ周方向の回転を抑制するくさびの役割を果たすことになる。その結果、第2緩衝部材82の軸方向の位置が変わったり、第2緩衝部材82が脱落したりすることが抑制される。なお、図6に示す例においては、ねじ83とねじ83を螺合するねじ穴により構成された固定機構を、中心線を挟み対向した位置に2つ配置している。固定機構は、この例のように2つに限らず、1つまたは2つ以上の複数個設けてもよい。固定機構を複数設ける場合には、第2緩衝部材82の中心軸に対し、対称となるよう配置することが好ましく、例えば、固定機構を3つ設ける場合は、中心軸を中心として緩衝部材80の周方向に120度の間隔で、それぞれの固定機構を配置する。また、固定機構を4つ設ける場合は、中心軸を中心として緩衝部材80の周方向に90度の間隔で、それぞれの固定機構を配置する。
【0065】
図7(C)乃至(F)は、ねじ83の頭部831の形状のバリエーションを示す図である。
上述の図7(A)および(B)に示すねじ83は、全体として円筒状を呈し、頭部831が円盤状を呈するねじである。ただし、第1緩衝部材81に螺合された第2緩衝部材82を固定するための固定機構として要求される特性を満たすものであれば、これ以外の形状のねじを採用することができる。
【0066】
例えば、図7(C)および(D)には、頭部831が円筒状を呈するねじ83の外観構成の一例を示す平面図および正面図がそれぞれ示されている。また、図7(E)および(F)には、頭部831の形状がねじ83の長手方向に対し傾斜する辺を有するねじ83の外観構成の一例を示す平面図および正面図がそれぞれ示されている。頭部831が円筒状を呈するねじ83を固定機構として採用した場合、頭部831の形状が円筒状であるため、ねじ83の頭部831の形状がねじ83の長手方向に対し傾斜する辺を有する場合よりも、燃焼ガスがねじ穴に侵入することを抑制し、ねじ83の固着を防止できる。
【0067】
[変形例2]
図8(A)は、第1緩衝部材81に螺合された第2緩衝部材82を第1緩衝部材81に固定するねじ84を有する緩衝部材80の外観構成の一例を示す斜視図である。図8(B)は、図8(A)の緩衝部材80の外観構成の一例を示す正面図である。図8(C)は、図8(A)の緩衝部材80を半径方向に切った断面図である。
図8(A)乃至(C)に示す緩衝部材80には、第1緩衝部材81に螺合された第2緩衝部材82を固定するための固定機構の一例として、第1緩衝部材81と第2緩衝部材82との螺合部に形成されたねじ穴と、そのねじ穴に螺入されたねじ84との組み合わせが設けられている。
【0068】
ねじ84を螺合するねじ穴は、第1緩衝部材81および第2緩衝部材82の軸方向に対して直交する向きに形成されている。具体的には、第1緩衝部材81の外周面813および内周面814の各々の一部と、第2緩衝部材82の外周面823の一部とを含む部分に、軸方向の半径方向に延びるねじ穴816が形成されている。このうち、第1緩衝部材81の内周面814に形成されたねじ穴816の一部は、ねじ穴816に螺入されたねじ84の一部と嵌合する切欠き部817を形成している。また、第2緩衝部材82側に形成されたねじ穴816の一部は、ねじ穴816に螺入されたねじ84の一部と嵌合する切欠き部825を形成している。
【0069】
なお、図8に示す例においては、ねじ84とねじ84を螺合するねじ穴816により構成された固定機構を、中心線と平行であり中心線を含む所定の面を挟み対向した位置に2つ配置しているが、固定機構は、この例のように2つに限らず、1つまたは2つ以上の複数個設けてもよい。例えば、固定機構を3つ設ける場合は、第1緩衝部材81の外周面813を周方向に3分割した位置に、ねじ穴816をそれぞれ設ける。また、固定機構を4つ設ける場合は、第1緩衝部材81の外周面813を周方向に4分割した位置にねじ穴816をそれぞれ設けて、固定機構を配置するのが好ましい。
【0070】
第1緩衝部材81と第2緩衝部材82とが螺合する部分に、第2緩衝部材82を固定するねじ84が螺入されると、ねじ84の一部が、第1緩衝部材81側の切欠き部817と、第2緩衝部材82側の切欠き部825とに嵌合される。これにより、第1緩衝部材81側の切欠き部817と、第2緩衝部材82側の切欠き部825とに嵌合されたねじ84の一部が、第2緩衝部材82の意図せぬ周方向の回転を抑制するくさびの役割を果たすことになる。その結果、第2緩衝部材82に意図せぬ周方向の回転が生じて脱落することが抑制される。また、軸方向に対して直交する向きにねじ穴816を設けた場合、上述の図6の例のように軸方向にねじ穴を設けた場合に比べて、内燃機関10の燃焼室Cから離れた位置にねじ穴816が設けられることになるので、燃焼室Cからの燃焼ガスにねじ穴が直接曝されることがなく、ねじ84の熱膨張と熱収縮の繰り返しに起因する変形や破損のリスクや、デポジットのねじ穴816への堆積が抑制される。
【0071】
また、図8(A)乃至(C)に示すねじ84は、頭部と胴体部とが明確に区別されない円筒状を呈するいわゆるイモねじである。ねじ84は、長手方向の一端側に、六角レンチ等の治具を嵌合させる面841を有し、長手方向の他端側に面842を有する。また、ねじ84は、外周面843を有する。なお、外周面843には雄ねじ(図示せず)が形成されている。また、ねじ穴816の内壁には、外周面843に設けられた上記の雄ねじと螺合可能な雌ねじ(図示せず)が形成されている。
【0072】
また、ねじ84は、全体がねじ穴816に螺入されており、ねじ穴816の入口から外部に突出している部分はない。このため、圧力検出装置1を内燃機関10に装着する際、第1緩衝部材81の外周面813から突出したねじの頭部が、内燃機関10の連通孔13aの内壁を傷付けることが防がれる。また、図8の例は、第1緩衝部材81の外周面813にねじ穴816が設けられているため、上述の図6乃至7に示す変形例1のような頭部を有するねじを用いた例に比べて、ねじ84とねじ穴816とのシール性の点で不利にするリスクがあるが、ねじ84として、径の小さいイモねじを採用することで、シール性のリスクを小さくすることができる。
【0073】
[変形例3]
上述のように、本実施の形態によれば、第2緩衝部材82が着脱可能になるため、第2緩衝部材82に付着したデポジットを効率良く除去できる。ただし、状況によっては、第2緩衝部材82に付着したデポジットが堆積して固着してしまい、周方向のうちねじが緩む方向に第2緩衝部材82をうまく回転させられないことがある。
【0074】
図9(A)および(B)は、治具を用いて第2緩衝部材82を回転させることを可能にする緩衝部材80の外観構成の一例を示す斜視図である。
図9(A)および(B)に示す緩衝部材80の第2緩衝部材82の先端側の表面821には、半径方向に延びる直線状の溝826が、直交するように2本設けられている。溝826は、マイナスドライバ等の治具900を嵌合可能とする。作業者は、治具900を用いて、溝826が露出するまでデポジットを掻き出し、露出した溝826に治具900を嵌合させる。これにより、第2緩衝部材82を周方向に回転させやすくすることができる。
【0075】
[変形例4]
上述のように、本実施の形態によれば、第2緩衝部材82が着脱可能になるため、第2緩衝部材82に付着したデポジットを効率良く除去できる。ただし、第1緩衝部材81から第2緩衝部材82を取り外した場合であっても、状況によっては貫通孔824にデポジットが詰まり、洗浄してもうまく除去できないことがある。
【0076】
図10(A)および(B)は、複数の部材に分割可能とし、分割された複数の部材を組み立て可能とする第2緩衝部材82の外観構成の一例を示す斜視図である。
図10(A)には、複数の部材が組み合わされることで形成された第2緩衝部材82が示されている。図10(B)には、複数の部材に分割された状態の第2緩衝部材82が示されている。
図10(A)に示す第2緩衝部材82は、組み合わせ可能な部材82-1乃至82-4で形成されている。具体的には、部材82-1は、接合面827を介して部材82-2および82-4と組み合わされており、部材82-2は、接合面827を介して部材82-1および82-3と組み合わされている。また、部材82-3は、接合面827を介して部材82-2および82-4と組み合わされており、部材82-4は、接合面827を介して部材82-1および82-3と組み合わされている。これらの組み合わせの結果として、第2緩衝部材82が形成されている。
【0077】
接合面827は、部材82-1乃至82-4の各々を形成する面のうち、組み立ての際に嵌合される凹部827aおよび凸部827bが設けられている面である。分割された複数の部材を組み立てる際、凹部827aと凸部827bとを嵌合させることで、ズレを生じさせることなく組み立てることができる。また、複数の部材の配置を考慮することなく組み立てることもできる。
【0078】
このように、図10(A)に示す第2緩衝部材82は、部材82-1乃至82-4に分割できるので、第2緩衝部材82に付着したデポジットの除去が容易化される。また、分割された部材82-1乃至82-4を、接合面827を介して組み立てることができるので、部材82-1乃至82-4に分割してデポジットを除去した後、部材82-1乃至82-4を組み立てて、再び第2緩衝部材82として使用できる。また、部材82-1乃至82-4の各々は、同一形状とすることができる。この場合、組み立ての際、組み立ての相手を考慮する必要がなくなる。また、破損等に伴う交換も容易になる。
【0079】
以上まとめると、本発明が適用される圧力検出装置1は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
すなわち、本発明が適用される圧力検出装置1は、内燃機関10に設けられた連通孔13aに装着可能な胴体(筐体部30)と、胴体の一端側に設けられ、内燃機関10からの流体(燃焼ガス)の圧力を受ける受圧部材(ダイアフラムヘッド32)と、胴体の一端側の先端にて受圧部材に配置され、流体の温度を低減させながら流体を受圧部材に供給する温度低減部材(緩衝部材80)とを備え、受圧部材は、圧力を受けて変位する受圧部(圧力膜(表面)32aおよび表面中央凹部32b)と、受圧部材と接合または一体化された、内周面814を有する第1部材(第1緩衝部材81)と螺合または一体に成形された受圧支持部(表面環状凸部32g)とを含み、温度低減部材は、第1部材と、内周面814に対向する外周面823を有する第2部材(第2緩衝部材82)とを含み、第1部材の内周面814に形成された雌ねじと、第2部材の外周面823に形成された雄ねじとが螺合していることを特徴とする、圧力検出装置である。
内燃機関10からの流体を受圧部材に供給する温度低減部材が、受圧部材と接合または一体に成形された第1部材と、第1部材に螺合された第2部材とで構成されているため、第2部材の着脱が可能になる。これにより、温度低減部材に付着したデポジット1000の除去を容易化できる。また、第1部材に第2部材を螺合させたときに第2部材に軸力がかからない構成では、第2部材の着脱が圧力検出装置と内燃機関とのシール性に与える影響を低減化できる。
【0080】
ここで、第1部材と受圧支持部とが一体に成形されていてもよい。
第1部材と受圧部材とが一体に成形されているので、第1部材と受圧部材とのシール性が高まる。
【0081】
また、第2部材には、流体を受圧部に供給可能にする複数の連通孔(貫通孔824)が設けられていてもよい。
ねじ機構により着脱可能な第2部材の連通孔にデポジット1000が堆積しやすくなるため、第2部材を取り外して洗浄等することでデポジットを効率よく除去できる。
【0082】
また、第1部材に螺合された第2部材が、受圧部材に接触しない位置に配置されていてもよい。
第1部材に螺合された第2部材が、受圧部材に接触しない位置で固定されるので、第2部材が受圧部材に接触することで生じ得る受圧部材の機能の低下を防ぐことができる。
【0083】
また、第1部材に螺合された第2部材を固定する固定機構が設けられていてもよい。
第1部材に螺合された第2部材が固定されるので、第2部材の意図せぬ脱落を防ぐことができる。
【0084】
また、固定機構が、第1部材と第2部材との螺合部に形成されたねじ穴と、ねじ穴に螺合されるねじ(例えば、ねじ83、84)との組み合わせであってもよい。
第1部材と第2部材との螺合部に、第2部材を固定するためのねじが螺入されるので、第2部材の意図せぬ回転によって第2部材が脱落することを抑制できる。
【0085】
また、ねじ穴は、第1部材および第2部材の軸方向に形成されており、第1部材には、ねじ穴に螺入されたねじ(例えば、ねじ83)の頭部831の一部と嵌合する切欠き部が設けられていてもよい。
第1部材に、固定機構のねじの頭部831の一部と嵌合する切欠き部が設けられているので、第2部材の意図せぬ回転によって第2部材が脱落することを抑制できる。
【0086】
また、ねじの頭部831の形状が円筒状(例えば、図7(C)および(D)のねじ83)であってもよい。
固定機構としてのねじの頭部831の形状が円筒状であるため、ねじの頭部831の形状がねじの長手方向に対し傾斜する辺を有する場合(例えば、図7(E)および(F)のねじ83)よりも、供給される流体がねじ穴に侵入することを抑制できる。
【0087】
また、ねじ穴は、第1部材および第2部材の軸方向に直交する向きに形成されていてもよい(例えば、図8(A)のねじ穴816)。
第1部材および第2部材の軸方向に直交する向きに固定機構のねじ穴が設けられているので、第1部材および第2部材の軸方向にねじ穴を設ける場合(例えば、図6のねじ83が螺入されたねじ穴)に比べて、内燃機関の燃焼室から離れた位置にねじ穴が設けられる。このため、ねじの熱膨張と熱収縮の繰り返しに起因する変形や破損のリスクや、デポジットのねじ穴への堆積を抑制できる。
【0088】
また、ねじ穴に螺入されたねじの頭部(例えば、図8(A)のねじ84の一部)が、ねじ穴(例えば、図8(A)のねじ穴816)の入口から外部に突出していなくてもよい。
固定機構のねじ穴に螺入されたねじの頭部が、ねじ穴の入口から外部に突出していないため、圧力検出装置を内燃機関に装着する際、ねじの頭部が内燃機関の孔の内壁を傷付けることを防ぐことができる。
【0089】
また、第2部材の先端面には、1以上の直線の溝826が設けられていてもよい。
デポジット1000が付着しやすい第2部材の先端面に直線の溝826が設けられているため、溝826に治具900を挿入することで、デポジット1000を掻き出し易くすることができる。
【0090】
また、第2部材は、複数の部材(例えば、部材82-1乃至82-4)に分割可能とし、分割された複数の部材を組み立て可能としてもよい。
第2部材を複数の部材に分割できるので、第2部材に付着したデポジット1000の除去が容易化される。また、分割された複数の部材を組み立てることができるので、複数の部材に分割してデポジット1000を除去した後、組み立て直して再び第2部材として使用できる。
【0091】
また、分割された複数の部材の各々には、組み立ての際に嵌合される凹部および凸部(例えば、図10(A)の接合面827)が設けられていてもよい。
分割された複数の部材を組み立てる際、凹部と凸部とを嵌合させることで、ズレを生じさせることなく組み立てることができる。また、複数の部材の配置を考慮することなく組み立てることもできる。
【0092】
[その他]
上述の形態では、緩衝部材80の第2緩衝部材82に円柱状の貫通孔824を19箇所設けられているが、これに限られるものではない。すなわち、緩衝部材80を燃焼ガスが通過することで、この燃焼ガスの温度を低減できるものであれば、貫通孔824の形状、数、寸法および配置等については、適宜変更してかまわない。
【0093】
また、図6には、ねじ83としてのプラスねじが、中心線を介して対向する位置に2箇所に配置されているが、これに限られるものではない。すなわち、固定機構として機能するねじ83であれば、形状、寸法、配置等については、適宜変更してかまわない。例えば、プラスねじではなく、六角穴付きのイモねじであってもよい。六角穴付きのイモねじとした場合、ねじの頭部径を小さくできる。
【0094】
また、図10には、4分割された第2緩衝部材82が示されているが、これに限られるものではない。すなわち、複数に分割し、組み立てることができればよいので、n分割(nは2以上の整数値)された第2緩衝部材82を採用できる。
【0095】
また、上述の実施の形態では、第1緩衝部材81と第2緩衝部材82とが螺合された緩衝部材80の後端側の裏面において第2緩衝部材82により形成される中央部分が凹状を呈する構成となっているが、これに限られるものではない。すなわち、第1緩衝部材81と第2緩衝部材82とが螺合された緩衝部材80の後端側の裏面において第2緩衝部材82により形成される中央部分が凹状を呈しない構成、つまり、緩衝部材80の後端側となる表面の中央部分と周縁部分とが同一平面上となるよう構成しても良い。
【0096】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態には限定されない。本発明の技術思想の範囲から逸脱しない様々な変更や構成の代替は、本発明に含まれる。上述の実施の形態では、圧力検出装置1の検出機構部40に圧電素子41を採用した場合を記載したが、検出機構部40の構成については、従来から知られている種々の態様の検出機構に置き換えが可能である。例えば、圧電素子41の代わりに歪ゲージ等を用いてもよい。歪ゲージを利用する場合は、上述の実施の形態に加え、歪ゲージに供給する電源の通電経路を圧力検出装置に設ける必要がある。
【符号の説明】
【0097】
1…圧力検出装置、10…内燃機関、32…ダイアフラムヘッド、80…緩衝部材、81…第1緩衝部材、82…第2緩衝部材、82-1乃至82-4…部材、83,84…ねじ、814…内周面、815…切欠き部,816…ねじ穴、823…外周面、824…貫通孔、825…切欠き部、826…溝、827…接合面、900…治具、1000…デポジット
【要約】
【課題】温度低減部材と受圧部材とのシール性が高められている状態であっても、温度低減部材に付着した不完全燃焼生成物を容易に除去できるようにする。
【解決手段】内燃機関に設けられた連通孔に装着可能な筐体部と、その一端側に設けられ、内燃機関からの燃焼ガスの圧力を受けるダイアフラムヘッド32と、ダイアフラムヘッド32に配置され、燃焼ガスの温度を低減させながら燃焼ガスをダイアフラムヘッド32に供給する緩衝部材80とを備える圧力検出装置1において、緩衝部材80の第1緩衝部材81に形成された雌ねじと、緩衝部材80の第2緩衝部材82に形成された雄ねじとが螺合している。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10