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特許7233063自己免疫疾患の治療に対する有効性予測用バイオマーカー、診断キット及び治療用用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】自己免疫疾患の治療に対する有効性予測用バイオマーカー、診断キット及び治療用用途
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20230227BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20230227BHJP
   A61K 35/32 20150101ALI20230227BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230227BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230227BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 5/16 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230227BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20230227BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230227BHJP
   C12Q 1/6881 20180101ALI20230227BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20230227BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230227BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
A61K35/28
A61K35/32
A61K38/17
A61K39/395 D
A61K39/395 U
A61K45/00
A61P1/02
A61P1/04
A61P5/14
A61P5/16
A61P7/06
A61P9/00
A61P11/06
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/14
A61P19/02
A61P19/08
A61P21/00
A61P21/04
A61P25/00
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P29/02
A61P37/02
A61P37/06
A61P37/08
C12N5/0775
C12Q1/686 Z
C12Q1/6881 Z
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
G01N33/53 D
G01N33/53 M
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021519517
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 KR2019007121
(87)【国際公開番号】W WO2019240507
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】10-2018-0069263
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520493429
【氏名又は名称】コアステム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CORESTEM CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】520493430
【氏名又は名称】忠北大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】CHUNGBUK NATIONAL UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】ギム ギョンスク
(72)【発明者】
【氏名】ハン サンベ
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/210749(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/074758(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/188403(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0289640(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0016117(KR,A)
【文献】特表2016-504324(JP,A)
【文献】Erin Collins, Gary Gilkeson,Hematopoetic and mesenchymal stem cell transplantation in the treatment of refractory systemic lupus erythematosus - Where are we now?,Clinical Immunology,2013年,Vol.148,pp.328-334
【文献】Weiguo Sui et al.,Hematopoietic and mesenchymal stem cell transplantation for severe and refractory systemic lupus erythematosus,Clinical Immunology,2013年,Vol.148,pp.186-197
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/15
G01N 33/48 - 33/98
C12N 5/0775
C12Q 1/6881
C12Q 1/686
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケモカイン受容体であるCXCR3又はそのmRNA発現レベルを測定する製剤を含むことを特徴とする、間葉系幹細胞の自己免疫疾患の治療に対する有効性予測用組成物。
【請求項2】
前記自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス又はそれによる合併症であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
CXCR3の発現レベル又はそのmRNA発現レベルを測定する製剤を含むことを特徴とする、間葉系幹細胞の自己免疫疾患の治療に対する有効性予測用キット。
【請求項4】
前記CXCR3の発現レベルを測定する製剤は、CXCR3に特異的に結合する抗体であり、CXCR3のmRNA発現レベルを測定する製剤は、それに特異的に結合するプライマー、プローブ又はアンチセンスヌクレオチドであることを特徴とする、請求項3に記載の有効性予測用キット。
【請求項5】
腎臓において発現されたケモカインCXCL10発現レベルを測定する製剤を含む自己免疫疾患の治療予後予測用組成物であって、
前記自己免疫疾患の治療は、CXCR3を含む間葉系幹細胞を用いた治療であることを特徴とする、組成物。
【請求項6】
前記CXCL10を発現する腎臓において、CXCL10は、CXCR3を含む間葉系幹細胞が腎臓に浸潤されるように誘導することを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス又はそれによる合併症であることを特徴とする、請求項5~請求項6のうちいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
間葉系幹細胞(MSC)から発現されるケモカイン受容体であるCXCR3の発現量を測定して、自己免疫疾患の治療に対する間葉系幹細胞の有効性を予測するための情報提供方法。
【請求項9】
前記CXCR3又はそのmRNA発現がないか、野生型間葉系幹細胞より低い場合、治療有効性がないか低いことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ケモカイン受容体であるCXCR3の発現量を測定して、自己免疫疾患に有効な治療効果を示す間葉系幹細胞をスクリーニングする方法。
【請求項11】
請求項10によってスクリーニングされた間葉系幹細胞を含む自己免疫疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物。
【請求項12】
請求項10によってスクリーニングされた間葉系幹細胞を含む薬剤学的組成物をヒトを除く個体に投与又は服用させるステップを含む自己免疫疾患の予防又は治療方法。
【請求項13】
自己免疫疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物の製造における請求項10によってスクリーニングされた間葉系幹細胞の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年6月15日に出願された大韓民国特許出願第10-2018-0069263号に基づく優先権の利益を主張し、前記明細書全体は、本出願の参考文献である。
【0002】
本発明は、自己免疫疾患の治療に対する有効性予測用バイオマーカー、診断キット及び治療用用途に関する。
【背景技術】
【0003】
全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus、SLE)は、多発性機能不全を同伴した全身性自己免疫疾患(systemic autoimmune disease)であって、免疫複合体の沈着と炎症細胞の浸潤を特徴とする。
【0004】
ループス腎炎(lupus nephritis)は、SLE患者の60%で発生し、罹患率(morbidity)と死亡率(mortality)を増加させる主要原因である。間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells、MSCs)は、溶解性因子及び接触依存的方式(soluble factor-and contact-dependent manners)によりT細胞、B細胞、樹脂状細胞、NK細胞を抑制することができ、Treg細胞を増進させるので、SLEの有望な代替療法として研究されて来た。
【0005】
生体内で効能を発揮するために、MSCは、炎症部位に効率的に浸潤する。炎症がある腎臓(nephritic kidney)ではケモカインが生成され、MSCは、ケモカイン受容体を発現する。CCL2、CCL3、CCL5、CXCL10、CXCL12、CXCL13、CX3CL1は、ループスモデル動物とSLE患者の炎症性の腎臓(nephritic kidney)から発現され、炎症細胞の腎臓浸潤を増加させる。また、骨髓由来のMSCは、CCR2、CCR5、CXCR3及びCXCR4を発現するが、ケモカイン反応性と関連してMSCが炎症組織にどのように浸潤するかに対してはほとんど知られていなかった。いくつかの論文は、MSCがCXCL12-CXCR4軸(axis)を用いて炎症組織に浸潤することを示している。しかし、今まで炎症を起こした腎臓へのMSC浸潤に対するCXCL10-CXCR3軸(axis)の役目に対する報告はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Yang D、Sun S、Wang Z、Zhu P、Yang Z and Zhang B.Stromal cell-derived factor-1 receptor CXCR4-overexpressing bone marrow mesenchymal stem cells accelerate wound healing by migrating into skin injury areas。Cellular reprogramming。2013;15:206-15
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、自己免疫疾患の治療に対する有効性予測用バイオマーカー、診断キット及び治療用用途を提供する。より詳しくは、本発明は、ケモカイン受容体であるCXCR3を含む間葉系幹細胞(MSC)の自己免疫疾患の治療に対する有効性予測用バイオマーカー;ケモカインCXCL10を含む自己免疫疾患の治療予後予測用バイオマーカー;前記バイオマーカーの発現を測定できる製剤を含む診断キット;及びケモカイン受容体であるCXCR3の発現量が増加された間葉系幹細胞を含む自己免疫疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ケモカイン受容体であるCXCR3を含む間葉系幹細胞の自己免疫疾患の治療に対する有効性予測用バイオマーカー組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、CXCR3の発現レベル又はそのmRNA発現レベルを測定する製剤を含む、間葉系幹細胞の自己免疫疾患の治療に対する有効性予測用キットを提供する。
【0010】
一具体例で、CXCR3の発現レベルを測定する製剤は、CXCR3に特異的に結合する抗体であり、CXCR3のmRNA発現レベルを測定する製剤は、それに特異的に結合するプライマー、プローブ又はアンチセンスヌクレオチドであってもよい。また、前記キットは、RT-PCRキット、競争的RP-PCRキット、リアルタイムRT-PCRキット、定量的RT-PCRキット又はDNAチップキットであってもよい。
【0011】
前記抗体、プライマー、プローブ又はアンチセンスヌクレオチドは、本発明が属する技術分野で公知にされた技術を用いて作製できることは自明である。
【0012】
前記キットにおいて、CXCR3又はそのmRNA発現がないか、野生型間葉系幹細胞より低い場合、治療有効性がないか低いことが予測できる。このように、バイオマーカーであるCXCR3又はそのmRNA発現を測定することによって、間葉系幹細胞の自己免疫疾患の治療に対する有効性を予測することができる。
【0013】
前記自己免疫疾患は、ループス(全身性エリテマトーデス)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、全身性進行性硬化症(Progressive systemic sclerosis、Scleroderma)、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症(alopecia areata)、乾癬、天疱瘡、喘息、アフタ性口内炎、慢性甲状腺炎、炎症性腸炎、ベーチェット病(Behcet’s disease)、クローン病、皮膚筋炎(dermatomyositis)、多発性筋炎(polymyositis)、多発性硬化症(multiple sclerosis)自己免疫性溶血性貧血(Autoimmune hemolytic anemia)、自己免疫性脳脊髓炎、重症筋無力症(Myasthenia gravis)、グレーブス病(Grave’s disease)、結節性多発動脈炎(Polyarteritis nodosa)、強直性脊椎炎(Ankylosing spondylitis)、線維筋痛症(Fibromyalgia syndrome)及び側頭動脈炎(Temporal arteritis)で構成された群から選択され得、特に、全身性エリテマトーデス又はそれによる合併症であってもよい。
【0014】
前記合併症は、腎臓損傷(kidney damage)、頭痛、めまい、行動変化(behavior changes)、視力問題(vision problem)脳卒中、発作、貧血、出血、血液凝固、血管炎(vasculitis)、胸膜炎(pleurisy)、肺炎、心膜炎(pericarditis)、心血管疾患、心臓発作、関節炎、関節痛及び筋肉痛からなる群より選択される一つ以上を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0015】
また、本発明は、ケモカインCXCL10を含む自己免疫疾患の治療予後予測用バイオマーカー組成物を提供する。
【0016】
一具体例で、自己免疫疾患の治療は、CXCR3を含む間葉系幹細胞を用いた治療であってもよい。また、CXCL10は、腎臓から発現されることが好ましい。前記CXCL10を発現する腎臓で、CXCL10は、CXCR3を含む間葉系幹細胞が腎臓に浸潤されるように誘導できる。
【0017】
また、本発明は、CXCL10の発現レベルを測定する製剤を含む自己免疫疾患の治療予後予測用キットを提供する。
【0018】
一具体例で、CXCL10の発現レベルを測定する製剤は、CXCR3に特異的に結合する抗体であってもよい。前記抗体は、本発明が属する技術分野で公知にされた技術を用いて作製することができることは自明である。
【0019】
本発明の一部具体例では、CXCR3及び/又はCXCL10の発現レベルを測定することでのみ記載したが、そのmRNA発現を測定するによってそれぞれのバイオマーカーの発現レベルを測定することが含まれることは自明である。
【0020】
また、本発明は、間葉系幹細胞(MSC)から発現されるケモカイン受容体であるCXCR3の発現量又はそのmRNA発現レベルを測定して自己免疫疾患の治療に対する間葉系幹細胞の有効性を予測するための情報提供方法を提供する。
【0021】
前記バイオマーカーレベルを測定する方法は、逆転写酵素重合反応(RT-PCR)、競争的逆転写酵素重合酵素反応(competitive RT-PCR)、リアルタイム逆転写酵素重合酵素反応(real time quantitative RT-PCR)、定量的重合酵素反応(quantitative RT-PCR)、RNase保護分析法(RNase protection method)、ノーザンブロッティング(Nothern blotting)又はDNAチップ方法(DNA chip technology)、免疫組織化学染色法(immunohistochemical staining)、免疫沈澱分析法(immunoprecipitation assay)、補体固定分析法(complement Fixation Assay)又は免疫蛍光法(immunofluorescence)などを含む。
【0022】
一具体例で、前記自己免疫疾患は、特に、全身性エリテマトーデス又はそれによる合併症であってもよい。
【0023】
また、本発明は、ケモカイン受容体であるCXCR3の発現量又はそのmRNA発現量を測定して自己免疫疾患に有効な治療効果を示す間葉系幹細胞をスクリーニングする方法を提供する。
【0024】
前記スクリーニング方法により選別された間葉系幹細胞の場合、自己免疫疾患の予防又は治療活性に優れる。したがって、前記方法によってスクリーニングされた間葉系幹細胞を含む自己免疫疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供することができる。
【0025】
また、本発明は、前記方法によってスクリーニングされた間葉系幹細胞を含む薬剤学的組成物を個体に投与又は服用させるステップを含む自己免疫疾患の予防又は治療方法を提供することができる。
【0026】
また、本発明は、前記方法によってスクリーニングされた間葉系幹細胞を含む薬剤学的組成物の自己免疫疾患の予防又は治療用途を提供することができる。
【0027】
また、本発明は、1)間葉系幹細胞のケモカイン受容体であるCXCR3自体;又は2)CXCR3の発現量を増加させる製剤;を含む、自己免疫疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0028】
また、本発明は、間葉系幹細胞のケモカイン受容体であるCXCR3;又はCXCR3の発現量を増加させる製剤;を含む薬剤学的組成物を個体に投与又は服用させるステップを含む自己免疫疾患の予防又は治療方法を提供することができる。
【0029】
また、本発明は、間葉系幹細胞のケモカイン受容体であるCXCR3;又はCXCR3の発現量を増加させる製剤;を含む薬剤学的組成物の自己免疫疾患の予防又は治療用途を提供することができる。
【0030】
一具体例において、CXCR3の発現量を増加させる製剤は、CXCR3に特異的に結合する抗体であってもよい。前記抗体の場合、その誘導体、又はその生物学的等価物が含まれると判断されなければならず、抗体、その誘導体、又はその生物学的等価物は、本発明が属する技術分野で公知にされた技術を用いて作製することができることは自明である。前記抗体の誘導体及びその生物学的等価物は、CXCR3の発現量を増加させるためにCXCR3に特異的に結合する抗体の等価的活性を示すことを言い、アミノ酸配列の変更、結実、添付などによる変異又は各種置換体を含む。
【0031】
また、本発明は、ケモカイン受容体であるCXCR3の発現量が野生型に比べて増加された間葉系幹細胞を有効成分で含む、自己免疫疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0032】
また、本発明は、ケモカイン受容体であるCXCR3の発現量が野生型に比べて増加された間葉系幹細胞を有効成分で含む薬剤学的組成物を個体に投与又は服用させるステップを含む自己免疫疾患の予防又は治療方法を提供することができる。
【0033】
また、本発明は、ケモカイン受容体であるCXCR3の発現量が野生型に比べて増加された間葉系幹細胞を有効成分で含む薬剤学的組成物の自己免疫疾患の予防又は治療用途を提供することができる。
【0034】
一具体例で、前記CXCR3の発現量が野生型に比べて増加された間葉系幹細胞は、(i)CD105、CD29、CD44、CD73及びCD90で構成された群から選択される最小1種の表面抗原に対して陽性の免疫学的特性;及び(ii)CD34、CD45及びHLA-DRで構成された群から選択される最小1種の表面抗原に対して陰性の免疫学的特性を有する。
【0035】
前記自己免疫疾患は、ループス(全身性エリテマトーデス)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、全身性進行性硬化症(Progressive systemic sclerosis、Scleroderma)、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症(alopecia areata)、乾癬、天疱瘡、喘息、アフタ性口内炎、慢性甲状腺炎、炎症性腸炎、ベーチェット病(Behcet’s disease)、クローン病、皮膚筋炎(dermatomyositis)、多発性筋炎(polymyositis)、多発性硬化症(multiple sclerosis)自己免疫性溶血性貧血(Autoimmune hemolytic anemia)、自己免疫性脳脊髓炎、重症筋無力症(Myasthenia gravis)、グレーブス病(Grave’s disease)、結節性多発動脈炎(Polyarteritis nodosa)、強直性脊椎炎(Ankylosing spondylitis)、線維筋痛症(Fibromyalgia syndrome)及び側頭動脈炎(Temporal arteritis)で構成された群から選択され得、特に、全身性エリテマトーデス又はそれによる合併症であってもよい。
【0036】
本発明の組成物が薬剤学的組成物で製造される場合、本発明の薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容される担体を含むことができる。本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイル、食塩水、PBS(phosphate buffered saline)又は培地などを含むが、これに限定されるものではない。
【0037】
本発明の薬剤学的組成物は、経口投与、局所(頬側、舌下、皮膚又は眼球)投与、経皮性投与又は非経口(皮下、皮内、筋肉内、血管内又は関節内)投与することができ、好ましくは、非経口投与方式、より好ましくは、血管内投与することができる。
【0038】
本発明の薬剤学的組成物の適合する投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって多様に処方され得る。本発明の薬剤学的組成物の一般的な投与量は、成人を基準として1日当たり10-1010細胞である。
【0039】
また、本発明は、ケモカイン受容体であるCXCR3の発現量が野生型に比べて増加された間葉系幹細胞の自己免疫疾患の予防又は治療用薬剤学的製剤を製造するための用途を提供する。
【0040】
また、本発明は、1)間葉系幹細胞(MSC)から発現されるケモカイン受容体であるCXCR3又はそのmRNAの発現量を測定するステップ;及び
2)ケモカイン受容体であるCXCR3の発現量が野生型に比べて増加された間葉系幹細胞を自己免疫疾患の治療が必要な個人に投与するステップを含む自己免疫疾患の治療方法を提供する。
【0041】
一具体例で、前記CXCR3の発現量が野生型に比べて増加された間葉系幹細胞は、(i)CD105、CD29、CD44、CD73及びCD90で構成された群から選択される最小1種の表面抗原に対して陽性の免疫学的特性;及び(ii)CD34、CD45及びHLA-DRで構成された群から選択される最小1種の表面抗原に対して陰性の免疫学的特性を有する。
【0042】
前記(i)CD105、CD29、CD44、CD73及びCD90で構成された群から選択される最小1種の表面抗原に対して陽性の免疫学的特性;及び(ii)CD34、CD45及びHLA-DRから構成された群より選択される最小1種の表面抗原に対して陰性の免疫学的特性を有する間葉系幹細胞は、本出願人であるコアステムの大韓民国出願第10-2014-0097129号に詳しく記載されており、前記出願の内容は、本願の参照として挿入される。
【発明の効果】
【0043】
本発明によると、自己免疫疾患の治療に対する有効性予測用バイオマーカー、診断キット及び治療用用途を提供することができる。特に、本発明は、ケモカイン受容体であるCXCR3を含む間葉系幹細胞(MSC)の自己免疫疾患の治療に対する有効性予測用バイオマーカー;ケモカインCXCL10を含む自己免疫疾患の治療予後予測用バイオマーカー;前記バイオマーカーの発現を測定できる製剤を含む診断キット;及びケモカイン受容体であるCXCR3の発現量が増加された間葉系幹細胞を含む自己免疫疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供することができる。特に、本発明は、MSC浸潤に対するCXCL10-CXCR3軸(axis)の役目を明確に糾明することができるので、自己免疫疾患、特に、全身性エリテマトーデスの予防又は治療効果を示すかそれを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1a-e】図1は、MRL.FaslprマウスにMSCs又はシクロホスファミド(cyclophosphamide、CP)を12週齢で一回静脈注射した後、生存率(図1の(a))、体重(図1の(b))、anti-dsDNA IgGレベル(図1の(c))及び総IgGレベル(図1の(d))を測定した結果を示すグラフである。WT:wild type、CXCR3:CXCR3が欠乏されたタイプ(*p<0.01 versus control)。
図2a-e】図2は、CXCR3を発現する間葉系幹細胞の腎臓浸潤を分析した図である。図2の(a)は、C57BL/6マウスに由来するMSC(H-2)をMRL.Faslprマウス(H-2)に静脈注射して24時間後に脾臓を分離し、抗-マウスMHC-I(H-2)抗体(anti-mouse MHC-I(H-2)antibody)を用いて染色した後、アイレット(islet)当たりH-2陽性MSCの数を計数したものを示す。図2の(b)は、8週齢又は22週齢のMRL.Faslprマウスの腎臓から総RNAを分離した後、CXCL10及びCXCL12の遺伝子発現レベルをリアルタイムPCRで測定した結果である。*p<0.01 versus control。図2の(c)は、フローサイトメトリー(flow cytometry)を用いてCMTMR-標識MSC(CMTMR-labeled MSCs)及びCMFDA-標識内皮細胞(CMFDA-labeled endothelial cells)の結合速度(binding rates)を分析した結果を示す(n=3)。接合率(conjugation ratio)は、CMFDA/CMTPX二重陽性反応(double-positive events)のポーション(portion)で計算された。*p<0.01。図2の(d)は、MSCを100ng/mlのCXCL10で24時間の間処理した後、MMP-2、MMP-9及びTIMP-1の遺伝子発現レベルをリアルタイムPCRで測定した結果を示す。*p<0.01。図2の(e)は、MSCを100ng/mlのCXCL10で24時間の間処理した後、リアルタイムPCRを用いてα4インテグリン、β1インテグリン及びCD44の遺伝子発現程度を測定した結果を示す。*p<0.01。
図3a-f】図3は、CXCR3MSCの免疫抑制能力を分析した結果である。図3の(a)は、WT及びCXCR3マウスから生成されたMSCから総RNA及びタンパク質を分離し、CCR5、CCR7、CXCR3及びCXCR4のレベルをRT-PCR(real-time PCR)及びウェスタンブロット(WB)により測定した結果を示す。図3の(b)は、MSC移動(MSC migration)を分析した結果を示す。MSC移動は、8μm気孔フィルタ(Costar、Corning、Cambridge、MA、USA)のあるトランスウェルプレートを用いてトランスウェルアッセイ(transwell assay)で確認した。上部ウェルを37℃で2時間の間0.1%ゼラチン(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)でコーティングした後、200μlの培地での2X10MSC(2×10MSCs in 200ml of medium)を上部ウェルにローディングし、下部ウェルには、10% FBS及び100ng/ml CXCL10(R&Dシステム、Minneapolis、MN、USA)を含有する500μlの培地を添加した後、24時間後、フィルタ上部の非移動細胞を除去して膜を10%ホルマリンで固定させた後、フィルタの下側に移動したMSCsを0.5%水晶紫色で10分間染色し、移動されたMSCの数を倒立光学顕微鏡(inverted light microscope)で計数した。*p<0.01。図3の(c)は、96ウェルプレート(well plate)にMSCを0.03-0.3×10 cells/wellで添加し、T細胞を1×10 cells/wellで添加し、コンカナバリンA(concanavalin A)を1μg/mlで添加して72時間の間培養した後、培地に蓄積されたIFN-γのレベルをELISAキットを用いて測定した結果を示す。*p<0.01。図3の(d)は、96ウェルプレートにMSCを0.03-0.3×10 cells/wellで添加し、B細胞を1×10 cells/wellで添加し、リポ多糖(lipopolysaccharide)を1μg/mlで添加して72時間の間培養した後、培地に蓄積されたIgMのレベルをELISAキットを用いて測定した結果を示す。*p<0.01。図3の(e)及び図3の(f)は、MSC培養20日目に新しい培地に交替し、24時間後に培地から可溶性因子のレベルを測定した結果を示す。Griess試薬でNOレベルを測定し、ELISAキット(R&D systems、Minneapolis、MN、USA)を用いてTGF-βとPGE2のレベルを測定した。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。本発明の目的、特定、長所は、以下の実施例を通じて容易に理解される。本発明は、ここで説明する実施例に限定されず、他の形態で具体化され得る。ここで紹介される実施例は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有した者に本発明の思想が十分に伝達されるようにするために提供されるものである。したがって、以下の実施例によって本発明が制限されてはいけない。
【0046】
<実施例>
[材料及び方法]
(間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells))
マウスMSCは、6~8週齢のC57BL/6マウス(Orient Bio、京畿道所在)又はCXCR3(B6.129P2-Cxcr3tmlDgen/J)マウス(Jackson Laboratory、Bar Harbor、ME、USA)の脛骨(tibiae)及び大腿骨(femurs)のBM(Bone marrow)細胞から収得した(CXCR3は、CXCR3が欠乏された形態を示す)。BM細胞は、10%ウシ胎児血清(PBS、fetal bovine serum)、2mM L-グルタミン(L-glutamine)及びペニシリン/ストレプトマイシン(penicillin/streptomycin)を含むα-MEM培地で37℃、5% CO条件で培養した。非付着性細胞(non-adherent cells)を1日目に除去し、付着細胞を3日ごとに培地を補充(medium replenishment)して培養した後、17日から20日の間に用いた。全ての動物実験は、忠北大学校動物実験倫理委員会の承認を受けて承認された指針によって実行された。
【0047】
(MRL.Faslprマウスモデル)
MRL.Faslprマウスは、Jackson Laboratory(Bar Harbor、Maine、USA)から購入した。マウスは、12時間の明暗周期(12h light/dark cycle)下で21~24℃及び40~60%の相対湿度条件の特定病源菌がない状態で保管された。MRL.FaslprマウスにPBS(リン酸塩緩衝生理食塩水、コントロール、n=6)、シクロホスファミド(cyclophosphamide、50mg/kg、n=6)、野生型(wild-type)MSC(1×10 cells/injection、n=6)及びCXCR3MSCs(1×10 cells/injection、n=6)を12週で一回腹腔内注射した。生存率と体重は毎週測定した。Sigma-Aldrich、Alpha Diagnostic International(San Antonio、TX、USA)及びeBioscience(San Diego、CA、USA)から購入したELISAキットを用いて尿(urine)でのタンパク質レベルと、血清での抗-dsDNA IgG及び総IgGを測定した。免疫化学染色(immunohistochemistry)のために、18週齢のMRL.Faslprマウス(H-2)にMSC(H-2)を1×10cells/injectionで静脈注射した。24時間後、腎臓に浸潤したMSCの数は、マウスMHC-1(H-2)に対する一次マウス抗体(primary mouse antibody against mouse MHC-1(H-2D))と、HRP(horseradish peroxidase;Vector Laboratories、Burlingame、CA、USA)と接合された二次抗体(secondary antibody)の抗-マウス(anti-mouse)IgGを用いて決定し、ヘマトキシリン(hematoxylin)で対照染色(counter-staine)した。
【0048】
(リアルタイム-PCR)
トリゾール試薬(TRIZOL Reagent、Thermo Fisher Scientific)を用いて脾臓細胞からtotal RNAを分離した。分光光度計を用いてRNAを定量して1mg/mlの濃度で-80℃で保管した。cDNAは、RTキット(Bioneer、大田、韓国)を用いて3μg総RNA(total RNA)から合成した。CCR5、CCR7、CXCR3、CXCR4、iNOS、TGF-β及びCOX-2に対するmRNAの発現レベルをPCRで分析した。用いられたプライマー配列は、次の通りである:CCR5、センス、5‘-GCT GAA GAG CGT GAC TGA TA-3’(配列番号1)、アンチセンス、5’-GAG GAC TGC ATG TAT AAT GA-3’(配列番号2);CCR7、センス、5’-ACA GCG GCC TCC AGA AGA ACA GCG G-3’(配列番号3);アンチセンス、5’-TGA CGT CAT AGG CAA TGT TGA GCT G-3’(配列番号4);CXCR3、センス、5’-GTA CAC GCA GAG CAG TGC G-3’(配列番号5)、アンチセンス、5’-GAA CGT CAA GTG CTA GAT GCC TCG-3’(配列番号6);CXCR4、センス、5’-GGC TGT AGA GCG AGT GTT GC-3’(配列番号7)、アンチセンス、5’-GTA GAG GTT GAC AGT GTA GAT-3’(配列番号8);iNOS、センス、5’-CCT TCC GAA GTT TCT GGC AGC AGC-3’(配列番号9)、アンチセンス、5’-GGC TGT CAG AGC CTC GGG CTT TGG G-3’(配列番号10);TGF-β、センス、5’-TGA CGT CAC TGG AGT TGT AC-3’(配列番号11)、アンチセンス、5’-GGT TCA TGT CAT GGA TGG TG-3’(配列番号12);COX-2、センス、5’-GGA GAG ACT ATC AAG ATA GT-3’(配列番号13)、アンチセンス、5’-ATG GTC AGT AGA CTT TTA CA-3’(配列番号14);β-actin、センス、5’-TGG AAT CCT GTG GCA TCC ATG AAA C-3’(配列番号15)及びアンチセンス5’-TAA AAC GCA GCT CAG TAA CAG TCC G-3(配列番号16)’を含む。PCR産物は、1%アガロースゲルから分離し、5μg/ml臭化エチジウム(ethidium bromide)で染色した。
【0049】
SYBR Green Master Mix(Qiagen、Hilden、GER)とSteponeplusリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems、CA、USA)を用いて定量的PCR(quantitative PCR)を実行した。用いられたプライマー配列は、次の通りである;CXCL10、センス、5’-GGC TGG TCA CCT TTC AGA AG-3’(配列番号17)、アンチセンス、5’-ATG GAT GGA CAG CAG AGA GC-3’(配列番号18);CXCL12、センス、5’-GAG CCA ACG TCA AGC ATC TG-3’(配列番号19)、アンチセンス、5’-CGG GTC AAT GCA CAC TTG TC-3’(配列番号20);MMP-2、センス、5’-CAA GTT CCC CGG CGA TGT C-3’(配列番号21)、アンチセンス、5’-TTC TGG TCA AGG TCA CCT GTC-3’(配列番号22);MMP-9、センス、5’-CTG GAC AGC CAG ACA CTA AAG-3’(配列番号23)、アンチセンス、5’-CTC GCG GCA AGT CTT CAG AG-3’(配列番号24);TIMP-1、センス、5’-TTA TCC CAT TGG GGC ATT TA-3’(配列番号25)、アンチセンス、5’-TTG CTG CCT TTG ACT GAT TG-3’(配列番号26);インテグリンα4、センス、5’-CTC CCT CAA GAT GAT AAG TTG TTC AA’(配列番号27)、アンチセンス、5’-TGT GCA AAT GTA CAC TCT CTT CCA-3’(配列番号28);インテグリンβ1、センス、5’-GGC TGA AGA TTA CCC TAT’(配列番号29)、アンチセンス、5’-CAT TCA TCA AAT CCG TTC-3’(配列番号30);CD44、センス、5’-GAC CGG TTA CCA TAA CTA TTG TC’(配列番号31)、アンチセンス、5’-CAT CGA TGT CTT CTT GGT GTG-3’(配列番号32)。各サンプルの相対的mRNA量は、ハウスキーピング遺伝子(housekeeping gene)であるβ-actinのCt(threshold cycle)と比較した臨界周期(threshold cycle、Ct)を基準に計算された。
【0050】
(ウエスタンブロット(Western blot))
細胞溶解物(cell lysates)を準備して界面活性剤-不溶性物質(detergent-insoluble materials)を除去した後、同量のタンパク質を10% SDS-PAGEに分画して純粋な(pure)ニトロセルローズ膜に移した。膜を5%ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin、BSA)を含有するTBS/Tween 20(TTBS)で1時間の間ブロッキングした後、5% BSAを含有するTTBS内の1次抗体の適切な希釈液と共に2時間の間インキュベーションした。
【0051】
ブロット(blot)をビオチン標識二次抗体(biotinylated secondary antibody)と共に1時間の間培養した後、HRP-結合されたストレプトアビジン(HRP-conjugated streptavidin)で1時間の間インキュベーションした。シグナルは、ECL(enhanced chemiluminescence;Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ、USA)により検出された。CCR5、CCR7、CXCR3及びCXCR4に対する抗-マウス抗体は、Cell Signaling Technology(Danvers、MA、USA)から購入した。
【0052】
(免疫組織化学(Immunohistochemistry/migrationassay))
20週齢のMRL.FaslprマウスにMSCsを静脈注射した(1×10 cell/injection)。24時間後に腎臓をMRL.Faslprマウスから分離して4%ホルマリンで固定させてPBSに浸した。エタノールとキシレンで脱水させた後、組織をパラフィンに挿入して4μm切片(section)に切った後、抗原賦活化(antigen retrieval)のために切片をマイクロウエーブオーブン(650W、20分)で加熱した後、3%過酸化水素(3% hydrogen peroxide)で内因性ペルオキシダーゼ活性(endogenous peroxidase activity)を遮断させた。その後、切片を1次抗体と共にインキュベーションした(マウスMHC-1 H-2Db(diluted 1:100;Abcam、Cambridge、UK)に対するマウス抗体、4℃で一晩恒温処理)。その後、全ての切片をHRP(horseradish peroxidase;Vector Laboratories、Burlingame、CA、USA)と接合された2次抗体の抗-マウスIgGと共に室温で1時間の間インキュベーションした。2-成分(two-component)高感度DAB(diaminobenzidine)発色基質(chromogenic substrate、Vector Laboratories、Burlingame、CA、USA)を用いて10時間の間シグナルを成長(develop)させてヘマトキシリン(hematoxylin)でカウンター染色した。
【0053】
(セルバインティングアッセイ(Cell binding assay))
内皮細胞(endothelial cells、1×10 cells/ml)は、37℃で10分間無血清培地(serum-free medium)で0.5μM CMFDA(Life Technologies)及び5μM CMTPX(Thermo Fisher Scientific)を含むMSCで標識した。染色した後、細胞を10% FBSを含有する培養培地で2回洗浄した。MSCs(1×10)と内皮細胞(1×10)を12×75mmポリスチレンチューブ(BD Biosciences)で混合して800rpmで1分間遠心分離した後、ペレットを37℃で10分間培養した。その後、細胞混合物を柔らかに懸濁させてフローサイトメトリー(flow cytometry)で分析した。接合率(conjugation ratio)は、CMFDA/CMTPX二重陽性反応(double-positive events)のポーション(portion)で計算された。
【0054】
(統計分析)
データは、試験管内(in vitro)又は生体内(in vivo、6匹マウス)で実行された3回以上の独立的な実験の平均±SEMを示す。p値は、GraphPad Prism Software(San Diego、CA、USA)の一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用いて計算した。
【0055】
[実験結果]
(CXCR3MSCの治療活性(therapeutic activity)分析)
まず、MRL.FaslprマウスモテルでCXCR3MSC(CXCR3が欠乏されたMSC)の治療活性(therapeutic activity)を確認した。WT MSC(wild type MSC)は、マウス生存期間を著しく延長させた:WT MSCを受けたマウスの66%は、22週まで生存したが、対照群マウスは、16%のみ生存した(図1の(a))。一方、CXCR3MSCを受けたマウスの場合、ただ33%のみ生存した(図1の(a))。MSCは、体重に影響を及ぼさないことが確認された(図1の(b))。WT MSCは、anti-dsDNA(図1の(c))と総IgG抗体(図1の(d))の血清レベル及び蛋白尿レベル(図1の(e))を減少させたが、CXCR3MSCは、減少させなかった。陽性対照群(positive compound)で用いられるシクロホスファミド(Cyclophosphamide)も疾病を緩和させた。このようなデータは、CXCR3MSCがMRL.Faslprマウスでループス症状を好転させないことを示す。
【0056】
(MSCの腎臓浸潤の分析)
図2は、CXCR3を発現する間葉系幹細胞の腎臓浸潤効果を分析した図である。WT MSCsは、CXCR3MSC細胞より炎症のある腎臓によく移動(ホーミング)することが確認された(図2の(a))。22週齢のMRL.Faslprマウスの腎臓は、8週齢に比べてCXCL10を高く発見させたが、二つのマウスが全て同様にCXCL12を発現させた(図2の(b))。このようなデータは、炎症性腎臓がCXCL10を高く発現させ得、これは腎臓に対するMSC誘導を増加させ得ることを示唆する。次に、CXCL10がMSC浸潤をどのように増加させるかに対して分析した。CXCL10は、WT MSCと内皮細胞の接合を増加させたが、これは腎臓へのMSC浸潤のために重要な段階である。しかし、CXCR3MSCは、内皮細胞との接合を増加させなかった(図2の(c))。また、CXCL10は、間質移動(interstitial migration)に重要な酵素であるMMP-2とMMP-9の発現を増加(図2の(d))させたが、MSCによるα4/β1インテグリン(integrin)とCD44の発現には影響を及ぼさなかった(図2の(e))。このような結果は、CXCL10が炎症性腎臓(nephritic kidney)でのMSC浸潤を向上させる重要なケモカインであることを示唆する。
【0057】
(CXCR3-/-MSCの免疫抑制能力の分析)
CXCR3-/-MSC腎臓浸潤能力の欠陷にもかかわらずWT MSCと類似した表現型を示した。MSCのマーカーとして知られたCD34及びMHC-IIを発現するが、CD73及Sca-1は発現しなかった。RT-PCR、Real-time PCRとWB(Western blot)を用いて分析した結果、WT MSCsは、CCR5、CXCR3、CXCR4を発現したが、CXCR3-/-MSCは、CXCR3を発現せず、CCR5とCXCR4は、発現することが確認された(図3の(a))。また、CXCR3-/-MSCは、トランスウェル分析でCXCL10側に移動しなかった(図3の(b))。しかし、CXCR3-/-MSCは、WT MSCと同様にT細胞のIFN-γ生産とB細胞のIgM生産を抑制した(図3の(c)、図3の(d))。WT MSCと同様に、CXCR3-/-MSCは、iNOS、TGF-β及びCOX-2 mRNAを発現(図3の(e)し、NO、TGF-β及びPGEを生産した(図3の(f))。このような結果は、CXCR3-/-MSCsがCXCL10に移動しないことを除いては、WT MSCと類似した表現型(phenotypes)及び免疫抑制能力(immunosuppressive capacity)を有していることを示唆する。
【0058】
MSCの腎臓浸潤は、多段階過程である:一番目の段階は、血管系を通じて炎症部位に伝達されるMSCの全身投与(systemic administration)である。二番目の段階は、血液中のMSCの捕獲(capture)、圧延(rolling)、内皮細胞接着(adhesion to the endothelium)及び内皮細胞透過(transendothelial migration)で構成される。最後段階は、間質移動(interstitial migration)である。白血球の圧延(rolling)及び付着(adhesion)は、L-セレクチン(L-selectin)、VLA-4及びLFA-1に依存するが、MSCの場合はそうではないかも知れない。炎症組織の内皮細胞がE-セレクチン、P-セレクチン、VCAM-1及びICAM-1を発現し、MSCは、CD44及びα4β1インテグリンを発現し、これらの相互作用によってMSCが内皮細胞に堅固に付着され得ると報告されたことがある。私たちのデータによると、MSCは、CXCL10刺激がない場合にもCD44とVLA-4をよく発現したが、これは、内皮細胞に結合するMSCがCXCL10に独立的に作用することを意味することができる。また他のCXCL10-非依存的機序(CXCL10-independent mechanism)として、白血球より大きいMSCは、マイクロキャピラリー(microcapillaries)で非特異的に抑留され得る。CXCL10がMSCと内皮細胞の接合を増加させる方法を明確にするためにはもっと多くの研究が必要である。
【0059】
ループス性マウス(lupus-prone mice)とSLE患者の炎症性腎臓(nephritic kidney)は、CCL2、CCL3、CCL5、CXCL10、CXCL12、CXCL13及びCX3CL1を高く発現するが、これは、炎症性腎臓に炎症細胞の移動を誘導する。SLE患者の場合、腎臓にCXCR3T細胞が多く、血液には少ない。CXCL10は、SLE患者で最も多く増加し、腎臓でCXCR3免疫細胞と同一な地域に分布する。炎症性腎臓(nephritic kidney)に対する免疫細胞浸潤に対してはよく知られているが、MSC浸潤ではほとんど知られなかった。MSCは、CCR2、CCR5、CXCR3及びCXCR4を発現すると知られている。そのうち、CCR2とCXCR4は、心臓と皮膚へのMSC浸潤に対する調節因子としてよく知られている。しかし、MSCが炎症のある腎臓に移動するためにCXCR3が必要であるかは知られていない。本実験データでは、腎臓炎の腎臓へのMSC浸潤においてCXCR3の重要な役目を示す。CXCR3-欠乏(CXCR3-deficient)MSCは、WT MSCよりMRL.Faslprマウスで内皮細胞に対する結合力が少なく、MMP9発現が少なく、炎症性腎臓への浸潤が少なく、結果的に、ループス症状の改善効果が低いと確認された。ただし、CXCR3-欠乏MSCは、WT MSCと類似した増殖及び免疫抑制能力を示した。
【0060】
本発明は、診断分類(diagnosis classification)及び進行性ループス腎炎(progression lupus nephritis)に対する非侵襲的バイオマーカー(non-invasive biomarkers)の開発に影響を及ぼし得る。SLE患者で非活性LN(lupus nephritis)に緩和(remission)されながら尿(urine)CXCL10は減少される。これは、治療後SLE患者のLN改善をモニタリングするにおいて良いバイオマーカーであることを示唆する。CXCR3に対するMSCの遺伝子組換えは、SLE患者の治療効能を向上させることにおいて有望な戦略である。損傷された部位に対するMSCの浸潤過程を理解することは、MSCの治療効能を向上させるツール(tool)を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によると、自己免疫疾患の治療に対する有効性予測用バイオマーカー、診断キット及び治療用用途を提供することができる。特に、本発明は、ケモカイン受容体であるCXCR3を含む間葉系幹細胞(MSC)の自己免疫疾患の治療に対する有効性予測用バイオマーカー;ケモカインCXCL10を含む自己免疫疾患の治療予後予測用バイオマーカー;前記バイオマーカーの発現を測定できる製剤を含む診断キット;及びケモカイン受容体であるCXCR3の発現量が増加された間葉系幹細胞を含む自己免疫疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供することができる。特に、本発明は、MSC浸潤に対するCXCL10-CXCR3軸(axis)の役目を明確に糾明することができるので、自己免疫疾患、特に、全身性エリテマトーデスの予防又は治療効果を示すかこれを改善することができる。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
【配列表】
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