(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】作動装置及び吊戸装置
(51)【国際特許分類】
E06B 7/21 20060101AFI20230227BHJP
【FI】
E06B7/21
(21)【出願番号】P 2022044345
(22)【出願日】2022-03-18
【審査請求日】2022-09-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592166126
【氏名又は名称】株式会社中尾製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片渕 郁哉
(72)【発明者】
【氏名】村岡 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】山下 英吾
(72)【発明者】
【氏名】太田 吉英
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-256917(JP,A)
【文献】特開平09-177447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/16-7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール部材と該シール部材を昇降させる昇降機構とを有するシール装置が下端部に設けられ、左右方向に延びる壁の開口の前側において左右方向に移動することによって上記開口を開閉する吊戸を閉位置に向かって移動させる際に、上記吊戸が上記閉位置に至る直前の位置にあるときに上記昇降機構と当接して上記シール部材を下降させる作動装置であって、
上記昇降機構に当接して上記シール部材を昇降させる当接部と、
上記当接部の互いに交差する第1及び第2水平方向の各位置の変更が可能なように上記当接部を支持する支持部材とを備えている
ことを特徴とする作動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作動装置において、
上記第1水平方向は、上記吊戸の厚さ方向である前後方向であり、
上記第2水平方向は、上記吊戸の移動方向である左右方向である
ことを特徴とする作動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の作動装置において、
上記支持部材は、
床面上に上記第1水平方向の位置の変更が可能なように設置される第1部材と、
上記第1部材に上記第2水平方向の位置の変更が可能なように取り付けられて上記当接部を支持する第2部材とを有している
ことを特徴とする作動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の作動装置において、
上記第1部材は、
上記床面に平行な水平板部と、
上記水平板部に連続し、上方に延びる鉛直板部とを有し、
上記鉛直板部には、上記第1水平方向に長い第1長孔が形成され、
上記第1長孔に挿通され、上記開口の戸尻側の端部を区画する方立部材に締結された第1ねじ部材により、上記方立部材に上記第1水平方向の位置の変更が可能なように取り付けられ、
上記第2部材は、
上記水平板部上に上記第2水平方向の位置の変更が可能なように取り付けられる板状の基板部と、
上記基板部の前側に連続し、上記吊戸が上記直前の位置にあるときに上記当接部が上記昇降機構と当接する位置で上記当接部を支持する支持部とを有している
ことを特徴とする作動装置。
【請求項5】
請求項4に記載の作動装置において、
上記第2部材の上記基板部には、上記第2水平方向に長い第2長孔が形成され、
上記第2部材は、上記第2長孔に挿通されて上記第1部材の上記水平板部に締結される第2ねじ部材により、上記第1部材に上記第2水平方向の位置の変更が可能なように取り付けられている
ことを特徴とする作動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の作動装置において、
上記第1部材の上記水平板部には、真円板状の頭部と該頭部の外周縁部において下方に延びる雄ねじ部とを有する第3ねじ部材の上記雄ねじ部と螺合するねじ孔が形成され、
上記第2部材の上記基板部には、上記第3ねじ部材の上記頭部が嵌まる上記第1水平方向に長い第3長孔が形成され、
上記第3ねじ部材の上記頭部を上記雄ねじ部の中心線を回転軸として偏心回転させると、上記第3ねじ部材の上記頭部が、上記第3長孔内で上記第1水平方向に移動しながら上記第2部材の上記第3長孔を区画する周壁を押すことにより、上記第2部材の上記第1部材に対する上記第2水平方向の位置が変更されるように構成されている
ことを特徴とする作動装置。
【請求項7】
左右方向に延びる壁の開口の前側において左右方向に移動することによって上記開口を開閉する吊戸と、
上記吊戸の下端部に設けられ、上記吊戸の下端部に沿って左右方向に延びるシール部材と、該シール部材を上記吊戸の内部に収納される上方位置と下端部
が床面に当接する下方位置との間で昇降させる昇降機構とを有するシール装置と、
上記吊戸を閉位置に向かって移動させる際に、上記吊戸が上記閉位置に至る直前の位置にあるときに上記昇降機構と当接して上記シール部材を下降させる作動装置とを備えた吊戸装置であって、
上記作動装置は、請求項1~6のいずれか1つに記載の作動装置である
ことを特徴とする吊戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊戸の下端部に昇降可能に設けられて吊戸の下端面と床面との隙間を閉塞するシール部材の昇降機構の作動装置、及びそれを備えた吊戸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吊戸の下端部に昇降可能なシール部材を有するシール装置を設け、吊戸が開口を閉塞する閉位置にあるときにシール部材で吊戸の下端面と床面との隙間を閉塞することとした吊戸装置が提案されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された吊戸装置は、シール部材と該シール部材の昇降機構とを有する上記シール装置と、昇降機構を作動させるための作動装置とを備えている。作動装置は、床面に固定された取り付け板部と、該取り付け板部から上向きに折れ曲がって延びる垂直板部と、該垂直板部に高さ調整可能に外嵌された突起体とから構成されている。特許文献1では、吊戸を閉じると、吊戸が開口を閉塞する閉位置に至る直前に作動部材の突起体が昇降機構の回転体に当接して回転体を所定の方向へ回転させることにより、シール部材が床面に当接するまで下降して吊戸の下端面と床面との隙間が閉塞される。逆に、閉位置にある吊戸を開けると、作動部材の突起体が逆方向へ回転してシール部材が上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記作動装置では、昇降機構を作動させる突起体の上下方向の位置は調整可能であるが、水平方向の位置は調整できなかった。そのため、作動装置を、作動部材の突起体が昇降機構の回転体に適切に当接する所望の位置に精度良く配置して固定する必要があり、設置作業を容易に行えなかった。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、設置作業を容易に行える作動装置及びそれを備えた吊戸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、昇降機構に当接してシール部材を下降させる当接部を、互いに交差する第1及び第2水平方向における各位置の変更が可能なように構成することとした。
【0008】
具体的には、第1の発明は、シール部材と該シール部材を昇降させる昇降機構とを有するシール装置が下端部に設けられ、左右方向に延びる壁の開口の前側において左右方向に移動することによって上記開口を開閉する吊戸を閉位置に向かって移動させる際に、上記吊戸が上記閉位置に至る直前の位置にあるときに上記昇降機構と当接して上記シール部材を下降させる作動装置を前提とするものである。
【0009】
そして、第1の発明は、上記昇降機構に当接して上記シール部材を昇降させる当接部と、上記当接部の互いに交差する第1及び第2水平方向の各位置の変更が可能なように上記当接部を支持する支持部材とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
第1の発明では、当接部が互いに交差する第1及び第2水平方向における各位置の変更が可能なように構成されている。このような構成によれば、作動装置の設置後であっても当接部の水平方向の位置を変更することができるため、作動装置を最初から精度良く設置する必要がなく、容易に作動装置を当接部が昇降機構に当接してシール部材を昇降させる適切な位置に設置することができる。従って、第1の発明によれば、設置作業を容易に行える作動装置を提供することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記第1水平方向は、上記吊戸の厚さ方向である前後方向であり、上記第2水平方向は、上記吊戸の移動方向である左右方向であることを特徴とするものである。
【0012】
第2の発明では、当接部が吊戸の厚さ方向と吊戸の移動方向とにおける各位置の変更が可能なように構成されている。このような構成によれば、当接部の水平位置の調整を容易に行うことができる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、上記支持部材は、床面上に上記第1水平方向の位置の変更が可能なように設置される第1部材と、上記第1部材に上記第2水平方向の位置の変更が可能なように取り付けられて上記当接部を支持する第2部材とを有していることを特徴とするものである。
【0014】
第3の発明では、当接部を支持する支持部材を、2つの部材で構成し、一方の第1部材を床面上に第1水平方向の位置の変更が可能なように設置し、他方の当接部を支持する第2部材を第1部材に第2水平方向の位置の変更が可能なように取り付けることとしている。このように支持部材を2つの部材で構成することにより、当接部の水平位置の調整が容易な支持部材を容易に構成することができる。
【0015】
第4の発明は、第3の発明において、上記第1部材は、上記床面に平行な水平板部と、上記水平板部に連続し、上方に延びる鉛直板部とを有し、上記鉛直板部には、上記第1水平方向に長い第1長孔が形成され、上記第1長孔に挿通され、上記開口の戸尻側の端部を区画する方立部材に締結された第1ねじ部材により、上記方立部材に上記第1水平方向の位置の変更が可能なように取り付けられ、上記第2部材は、上記水平板部上に上記第2水平方向の位置の変更が可能なように取り付けられる板状の基板部と、上記基板部の前側に連続し、上記吊戸が上記直前の位置にあるときに上記当接部が上記昇降機構と当接する位置で上記当接部を支持する支持部とを有していることを特徴とするものである。
【0016】
第4の発明では、第1部材を水平板部と鉛直板部とを有するように構成し、鉛直板部に形成された第1水平方向に長い第1長孔に挿通された第1ねじ部材を方立部材にねじ込むことにより、第1部材を方立部材に第1水平方向の位置の変更が可能なように取り付けることとしている。このような構成によれば、第1ねじ部材を緩めて第1部材を第1水平方向にずらすだけで、当接部の第1水平方向における位置調整を容易に行うことができる。また、上記構成によれば、作動装置のねじ止め箇所を吊戸の後方の方立部材とすることにより、吊戸の直下の床面にねじ止めされる従来の作動装置のように工具が吊戸に干渉してねじ止め作業が行い難くなることがなく、ねじ止め作業を容易に行うことができる。さらに、従来の作動装置のように床面にねじ止めされないので、床の材質がねじ止め可能なものに限定されず、床の材質の選択の幅が広がる。
【0017】
また、第4の発明では、第2部材を、第1部材の水平板部上に第2水平方向の位置の変更が可能なように取り付けられる基板部と、当接部が昇降機構と当接する適切な位置に配置されるように基板部の前側に連続する支持部とを有するように構成している。このような構成によれば、作動装置を床面ではなく、吊戸より後方の方立部材に取り付けることとしても、当接部を昇降機構と当接する適切な位置に配置することができる。また、上記構成によれば、吊戸の後方で第2部材を第2水平方向にずらすことにより、当接部の第2水平方向の位置調整を行うことができるため、吊戸が邪魔にならない位置で当接部の位置調整作業を行うことができる。
【0018】
第5の発明は、第4の発明において、上記第2部材の上記基板部には、上記第2水平方向に長い第2長孔が形成され、上記第2部材は、上記第2長孔に挿通されて上記第1部材の上記水平板部に締結される第2ねじ部材により、上記第1部材に上記第2水平方向の位置の変更が可能なように取り付けられていることを特徴とするものである。
【0019】
第5の発明では、第2部材の基板部に形成された第2水平方向に長い第2長孔に挿通された第2ねじ部材を第1部材にねじ込むことにより、第2部材を第1部材に第2水平方向の位置の変更が可能なように取り付けることとしている。このような構成によれば、第2ねじ部材を緩めて第2部材を第2水平方向にずらすだけで、当接部の第2水平方向における位置調整を容易に行うことができる。
【0020】
第6の発明は、第5の発明において、上記第1部材の上記水平板部には、真円板状の頭部と該頭部の外周縁部において下方に延びる雄ねじ部とを有する第3ねじ部材の上記雄ねじ部と螺合するねじ孔が形成され、上記第2部材の上記基板部には、上記第3ねじ部材の上記頭部が嵌まる上記第1水平方向に長い第3長孔が形成され、上記第3ねじ部材の上記頭部を上記雄ねじ部の中心線を回転軸として偏心回転させると、上記第3ねじ部材の上記頭部が、上記第3長孔内で上記第1水平方向に移動しながら上記第2部材の上記第3長孔を区画する周壁を押すことにより、上記第2部材の上記第1部材に対する上記第2水平方向の位置が変更されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
第6の発明では、真円板状の頭部と、該頭部の外周縁部において下方に延びて第1部材の水平板部に形成されたねじ孔と螺合する雄ねじ部とを有する第3ねじ部材を、頭部が第2部材の基板部に形成された第1水平方向に長い第3長孔に嵌まるように設けられている。このような構成によれば、第3ねじ部材の頭部を雄ねじ部の中心線を回転軸として偏心回転させるだけで、第3ねじ部材の頭部が第3長孔内で第1水平方向に移動しながら第2部材の第3長孔を区画する周壁を押すことにより、第2部材の第1部材に対する第2水平方向の位置を容易に変更することができる。つまり、第6の発明によれば、第2ねじ部材を緩めて第3ねじ部材の頭部を偏心回転させるだけで、当接部の第2水平方向における位置調整を容易に行うことができる。
【0022】
第7の発明は、左右方向に延びる壁の開口の前側において左右方向に移動することによって上記開口を開閉する吊戸と、上記吊戸の下端部に設けられ、上記吊戸の下端部に沿って左右方向に延びるシール部材と、該シール部材を上記吊戸の内部に収納される上方位置と下端部が床面に当接する下方位置との間で昇降させる昇降機構とを有するシール装置と、上記吊戸を閉位置に向かって移動させる際に、上記吊戸が上記閉位置に至る直前の位置にあるときに上記昇降機構と当接して上記シール部材を下降させる作動装置とを備えた吊戸装置であって、上記作動装置は、第1~第6のいずれか1つの発明に係る作動装置であることを特徴とするものである。
【0023】
第7の発明では、第1~第6の発明に係る作動装置を備えているため、設置作業を容易に行える第1~第6の発明と同様の効果を有する作動装置を備えた吊戸装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した如く、本発明によると、昇降機構に当接してシール部材を下降させる当接部の互いに交差する第1水平方向及び第2水平方向における各位置を変更可能に構成することとしたため、設置作業を容易に行える作動装置及びそれを備えた吊戸装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る作動装置を備えた吊戸装置の正面図である。
【
図2】
図2は、
図1の吊戸装置の吊戸が下降開始位置にあるときにおける吊戸装置の下端部を拡大して示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の吊戸装置の下端部の一部を切り欠いて示す右側面図である。
【
図4】
図4は、
図2の吊戸装置の一部を切り欠いて示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図1の作動装置のみを拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0027】
《発明の実施形態1》
-吊戸装置の構成-
図1は、本発明の実施形態1に係る作動装置50を備えた吊戸装置100の正面図である。以下では、説明の便宜上、
図1の左側、右側、上側、下側を、それぞれ「左」、「右」、「上」、「下」として説明する。また、
図1の紙面直交方向において手前側を「前」、奥側を「後」として説明する。
【0028】
図1に示すように、吊戸装置100は、建物の壁Wに形成された正面視において矩形状の切り欠き部1に施工される。吊戸装置100は、建具枠10と、控え壁20と、吊戸30と、シール装置40と、作動装置50とを備えている。切り欠き部1に建具枠10と控え壁20とを施工することにより、吊戸30によって開閉される開口2が区画される。
【0029】
[建具枠]
建具枠10は、左縦枠11と、右縦枠12と、鴨居13と、方立部材14とを有している。左縦枠11及び右縦枠12は、上下方向に平行に延びる木製の板状部材によって構成されている。左縦枠11は、幅(前後方向の長さ)が切り欠き部1の奥行と同程度の長さとなるように形成されている。右縦枠12は、幅が切り欠き部1の奥行よりも控え壁20の厚さ分だけ短い長さとなるように形成されている。
【0030】
鴨居13は、左右方向に水平に延びる木製の板状部材によって構成されている。鴨居13は、左縦枠11及び右縦枠12の上端部を連結するように左縦枠11及び右縦枠12に取り付けられている。鴨居13は、開口2に対面する左側部分13aの幅(前後方向の長さ)が切り欠き部1の奥行と同程度の長さとなり、開口2の右側にあって開口2に対面しない右側部分13bの幅が切り欠き部1の奥行よりも控え壁20の厚さ分だけ短い長さとなるように形成されている。
【0031】
方立部材14は、左縦枠11及び右縦枠12に平行に上下方向に延びる木製の板状部材によって構成されている。方立部材14は、幅(前後方向の長さ)が切り欠き部1の奥行よりも短く控え壁20の厚さ以上の長さとなるように形成されている。方立部材14は、上端部の右側面を鴨居13の右側部分13bの左端面に当接させた状態で鴨居13に取り付けられている。
【0032】
建具枠10は、左縦枠11と右縦枠12と鴨居13と方立部材14とを組み立てた状態で、壁Wの切り欠き部1に施工される。
【0033】
[控え壁]
控え壁20は、方立部材14と鴨居13の右側部分13bと右縦枠12と床面Fとによって囲まれる部分に構築されている。控え壁20は、いかなる構成であってもよいが、例えば、複数の芯材を格子状に組んだ下地の前後にパネル材を貼り付け、壁紙等で化粧することによって構成することができる。このように建具枠10と控え壁20を切り欠き部1に施工することにより、壁Wには、建具枠10の左縦枠11と鴨居13の左側部分13aと方立部材14と床面Fとによって矩形状に区画される開口2が形成される。
【0034】
[吊戸]
吊戸30は、鴨居13に左右方向にスライド移動可能に吊り下げ支持されている。具体的には、吊戸30の上端部には、吊り車装置(図示省略)が取り付けられ、この吊車装置が、鴨居13の下端面に形成された左側部分13aから右側部分13bに亘って左右方向に延びるレール溝(図示省略)内に設けられた吊り下げ用ガイドレール(図示省略)にスライド可能に係合することにより、鴨居13に左右方向にスライド移動可能に吊り下げ支持されている。
【0035】
吊戸30の左端部(戸先側の端部)の前後面には、引手31,31が取り付けられている。吊戸30は、開口2の前側において左端面(戸先側の端面)が左縦枠11に当接する閉位置まで移動すると、右端部(戸尻側の端部)が方立部材14と前後方向に重なる幅に形成されている。吊戸30は、閉位置において開口2をほぼ閉塞する(吊戸30は鴨居13や床面Fと摺接しないように鴨居13と床面Fとの間に若干の隙間が形成される)高さに形成されている。吊戸30は、左端面が左縦枠11に当接する閉位置から右端面(戸尻側の端面)が右縦枠12に当接する全開位置までスライド移動可能に構成されている。
【0036】
[シール装置]
シール装置40は、吊戸30が閉位置にあるときに、吊戸30の下端面と床面Fとの隙間を塞ぐように吊戸30の下端部に設けられている。具体的には、
図2及び
図3に示すように、吊戸30の下端部には、左右方向の一端から他端まで延びる断面コ字状の凹溝32が吊戸30の下端面において開口するように形成され、シール装置40はこの凹溝32内に設けられている。シール装置40は、ケーシング41と、カバープレート42,43と、シール部材44と、昇降機構45とを有している。
【0037】
ケーシング41は、断面コ字状の長尺部材であり、吊戸30の下端部に形成された凹溝32に、吊戸30の下端面とケーシング41の下端面とが面一(同一レベル)となるように内嵌されている。ケーシング41の素材はいかなるものであってもよいが、例えば、断面コ字状の合成樹脂成形品としてもよい。
【0038】
カバープレート42,43は、吊戸30の凹溝32の断面よりも大きい板状部材によって構成されている。カバープレート42,43は、ケーシング41が内嵌された吊戸30の凹溝32の左右の端部を閉塞するように、吊戸30の下端部の左右の端面に固定されている。本実施形態1では、吊戸30の下端部の左端面と右端面とにはカバープレート42,43が嵌まるプレート溝33,34が形成され、カバープレート42,43は、左端面が吊戸30の左端面と面一となり、右端面が吊戸30の右端面と面一となるようにプレート溝33,34に内嵌されている。カバープレート42,43の素材はいかなるものであってもよいが、例えば、金属板等で形成することができる。
【0039】
シール部材44は、左右方向に長く延びる断面コ字状の長尺部材である。シール部材44は、左右方向の長さが、ケーシング41の左右方向の長さよりも短く、開口2の幅(左縦枠11と方立部材14との対向距離)よりも長くなるように形成されている。シール部材44は、それぞれ鉛直方向に延びて前後に平行に配置される2つの鉛直面部44a,44aと、水平方向に延びて2つの鉛直面部44a,44aを上端部で連結する水平面部44bとを有している。シール部材44の素材は、可撓性を有する素材であればいかなるものであってもよいが、本実施形態1では、合成樹脂を射出成形することにより、2つの鉛直面部44a,44aと水平面部44bとが一体に形成されている。シール部材44は、ケーシング41内に設けられ、昇降機構45により、ケーシング41内に全体が収容される上方位置と下端部が床面Fに当接する下方位置との間で昇降可能に吊り下げ支持されている。
【0040】
昇降機構45は、回動部材46と、ラック部材47と、移動部材48と、吊下機構49とを有し、作動装置50と当接することにより、シール部材44を上方位置と下方位置との間で昇降させる。
【0041】
回動部材46は、ケーシング41内の戸尻側の端部に設けられている。回動部材46は、ケーシング41内において前後方向に延びるピン46aに回動可能に支持されている。回動部材46は、ピニオンギア部46bと、閉ガイド部46cと、開ガイド部46dとを有している。ピニオンギア部46bは、円形状の歯車体の一部分(中心角90度程度の部分)からなる。閉ガイド部46cは、ピニオンギア部46bの周方向の一端部から径方向に直行する方向に延びるように形成され、開ガイド部46dは、ピニオンギア部46bの周方向の他端部から径方向に直行する方向に延びるように形成されている。
【0042】
回動部材46は、後述する作動装置50の当接部51に閉ガイド部46cが当接すると、閉ガイド部46cの先端が上昇し、開ガイド部46dの先端が下降する閉方向(
図2では反時計回り)に回動する。一方、回動部材46は、後述する作動装置50の当接部51に開ガイド部46dが当接すると、開ガイド部46dの先端が上昇し、上記閉方向とは逆向きの開方向(
図2では時計回り)に回動する。
【0043】
ラック部材47は、ケーシング41内の戸尻側の端部において回動部材46の上方に設けられている。ラック部材47は、左右方向に延びる帯板状部材からなり、回動部材46のピニオンギア部46bの歯と噛み合う歯が形成されている。ラック部材47は、回動部材46が閉方向に回動すると左側(戸先側)へ水平移動し、回動部材46が開方向に回動すると戸尻側へ水平移動する。
【0044】
移動部材48は、左右方向に延びる帯板部材からなり、ケーシング41内のラック部材47の左側(戸先側)に設けられている。移動部材48は、ラック部材47に連動して水平移動するように、右側(戸尻側)の端部がラック部材47の左側(戸先側)の端部に連結されている。移動部材48は、回動部材46が閉方向に回動するとラック部材47と共に戸先側へ水平移動し、回動部材46が開方向に回動するとラック部材47と共に戸尻側へ水平移動する。
【0045】
吊下機構49は、ケーシング41内の3箇所に設けられている。吊下機構49は、吊下部材49aと、ガイド部材49bとで構成される。吊下部材49aは、左右方向に延びる可撓性を有する帯板部材によって構成されている。吊下部材49aは、戸尻側の基端部が移動部材48の下面に固定され、先端部がシール部材44の水平面部44bの上面に固定されている。ガイド部材49bは、ケーシング41内において前後方向に延び、吊下部材49aの長手方向の中途部を支持する。吊下部材49aは、可撓性を有する帯板部材で構成されているため、基端部からガイド部材49bに支持される中途部までは、水平方向に延びるが、中途部から先端部にかけてはガイド部材49bの上面及び戸先側側面に沿って湾曲し、先端が下向きとなるように垂れ下がる。
【0046】
吊下機構49では、移動部材48が戸先側へ水平移動すると、吊下部材49aも連動して戸先側へ移動し、吊下部材49aのガイド部材49bによる支持位置が基端側にずれ、吊下部材49aのガイド部材49bから垂れ下がる部分の長さが長くなる。これにより、吊下部材49aの先端部が下降し、吊下部材49aの先端部に固定されたシール部材44が下降する。一方、移動部材48が戸尻側へ水平移動すると、吊下部材49aも連動して戸尻側へ移動し、吊下部材49aのガイド部材49bによる支持位置が先端側にずれ、吊下部材49aのガイド部材49bから垂れ下がる部分の長さが短くなる。これにより、吊下部材49aの先端部が上昇し、吊下部材49aの先端部に固定されたシール部材44が上昇する。
【0047】
[作動装置]
図4~
図8に示すように、作動装置50は、吊戸30の開閉動作に伴って、昇降機構45の回動部材46に当接してシール部材44を昇降させる当接部51と、当接部51を支持する支持部材52とを備えている。
【0048】
当接部51は、
図5に示す正面視において、上側部分が上方に突出する三角形状、下側部分が略矩形状の合成樹脂成形品によって構成されている。当接部51の後面側には、後述する支持部材52の第2部材54の支持先端部58bが嵌まる溝51aが形成されている。また、
図5に示すように、当接部51には、上側部分から下側部分に亘るように上下方向に延びる貫通孔51bが形成されている。当接部51は、貫通孔51bに挿通されたボルトねじ59により、支持部材52の第2部材54の支持先端部58bに高さ調節可能に取り付けられている。
【0049】
支持部材52は、当接部51を前後方向(第1水平方向)と左右方向(第2水平方向)の位置の変更が可能なように支持するように構成されている。具体的には、支持部材52は、床面F上に前後方向の位置の変更が可能なように設置される第1部材53と、該第1部材53に左右方向の位置の変更が可能なように取り付けられて当接部51を支持する第2部材54とを有している。支持部材52は、このような第1部材53と第2部材54とを有することにより、当接部51を前後方向及び左右方向の位置の変更が可能なように支持する。支持部材52の素材は強度を有するものであればいかなるものであってもよいが、例えば、金属板等を折り曲げることにより形成される。以下、第1部材53及び第2部材54の構成について詳述する。
【0050】
第1部材53は、床面Fに平行な水平板部55と、該水平板部55の左右方向の一端部に連続し、上方に延びる鉛直板部56とを有し、断面略L字状に形成されている。水平板部55及び鉛直板部56は、共に矩形状に形成されている。
【0051】
水平板部55には、第2部材54を第1部材53に取り付けるための2本のボルトねじ62,62(第2ねじ部材)が螺合する2つのねじ孔55a,55aが形成されている。2つのねじ孔55a,55aは、水平板部55の左右方向の中央付近に前後に間隔を空けて形成されている。
【0052】
また、水平板部55には、第2部材54の取付後、第2部材54を第1部材53に対して左右方向に移動させるためのカム部材となる偏心ねじ(第3ねじ部材)63の雄ねじ部と螺合するねじ孔55bが形成されている。ねじ孔55bは、ねじ孔55aよりも大径で、水平板部55の左右方向の中央付近において2つのねじ孔55a,55aの中間に形成されている。
【0053】
さらに、水平板部55には、後述する第2部材54の基板部57の4つの突起57c,…,57cがそれぞれスライド可能に嵌まる4つの長孔55c,…,55cが形成されている。4つの長孔55c,…,55cは、それぞれ左右方向の長さが前後方向の長さに比べて長いものであり、左右方向及び前後方向にそれぞれ2つ並ぶように設けられている。4つの長孔55c,…,55cは、それぞれ対応する突起57cがスライド可能に嵌まるように、左右方向の長さが突起57cの直径よりも僅かに長く形成されている。
【0054】
鉛直板部56には、第1部材53を方立部材14に取り付けるための2本のねじ釘61,61(第1ねじ部材)の雄ねじ部がそれぞれ前後方向にスライド可能に挿通される2つの長孔(第1長孔)56a,56aが形成されている。2つの長孔56a,56aは、それぞれ前後方向の長さが上下方向の長さに比べて長いものであり、鉛直板部56の上下方向の中央よりも上側の位置に前後に間隔を空けて形成されている。2つの長孔56a,56aは、それぞれ対応するねじ釘61の雄ねじ部がスライド可能に嵌まる一方、頭部が通過しないように、前後方向の長さがねじ釘61の雄ねじ部の外径よりも僅かに長く、頭部の直径よりも短くなるように形成されている。
【0055】
第2部材54は、第1部材53の水平板部55上に左右方向の位置の変更が可能なように取り付けられる板状の基板部57と、該基板部57の前側に連続し、左右方向に延びて戸尻側の端部において当接部51を支持する支持部58とを有している。
【0056】
基板部57は、左右方向の長さが第1部材53の水平板部55の左右方向の長さよりも短く、前後方向の長さが第1部材53の水平板部55の前後方向の長さと略等しい矩形状に形成されている。
【0057】
基板部57には、第2部材54を第1部材53に取り付けるための2本のボルトねじ62,62(第2ねじ部材)の雄ねじ部が挿通される2つの長孔(第2長孔)57a,57aが形成されている。2つの長孔57a,57aは、それぞれ左右方向の長さが前後方向の長さに比べて長いものであり、基板部57の左右方向の中央部分に前後に間隔を空けて形成されている。2つの長孔57a,57aは、それぞれ対応するボルトねじ62の雄ねじ部がスライド可能に嵌まる一方、頭部が通過しないように、前後方向の長さがボルトねじ62の雄ねじ部の外径よりも僅かに長く、頭部の直径よりも短くなるように形成されている。
【0058】
また、基板部57には、第2部材54の取付後、第2部材54を第1部材53に対して左右方向に移動させるためのカム部材となる偏心ねじ(第3ねじ部材)63の頭部が嵌まる長孔(第3長孔)57bが形成されている。長孔57bは、前後方向の長さが左右方向の長さに比べて長いものであり、基板部57の前後方向及び左右方向の中央(2つの長孔57a,57aの間)に形成されている。長孔57bは、偏心ねじ63の頭部がスライド可能に嵌まるように、左右方向の長さが偏心ねじ63の直径よりも僅かに長く形成されている。
【0059】
このような長孔57bが形成された基板部57と偏心ねじ63とで、偏心ねじ63を偏心回転させるだけで第2部材54の第1部材53に対する左右方向の位置が自動的に変更されるカム機構が構成されている。第2部材54が第1部材53に左右方向にスライド可能なように、2本のボルトねじ62,62(第2ねじ部材)を緩めた上で、偏心ねじ63を偏心回転させると、偏心ねじ63の頭部が、長孔57b内で前後方向に移動しながら長孔57bを取り囲む周壁を押すことにより、第2部材54が左右方向に移動することとなる。
【0060】
また、基板部57には、第1部材53の水平板部55の4つの長孔55c,…,55cにそれぞれスライド可能に嵌まる4つの突起57c,…,57cが形成されている。4つの突起57c,…,57cは、本実施形態1では、プレス加工により、それぞれ基板部57の一部分を下方に押し出すことによって形成されている。そのため、本実施形態1では、基板部57の上面には、4つの突起57c,…,57cに対応する4つの凹部が形成されている。4つの突起57c,…,57cは、4つの長孔55c,…,55cに対応するように、基板部57において左右方向及び前後方向にそれぞれ2つ並ぶように設けられている。
【0061】
支持部58は、基板部57の前側に連続する略S字状の延伸部58aと、延伸部58aの前端部に連続して上方に延びる支持先端部58bとを有している。
【0062】
延伸部58aは、基板部57の前端から前側へ延びた後、右側(戸尻側)へ延び、その後、さらに前側へ延びるS字状の板状片部である。延伸部58aの基板部57に連続する後端部は、前側に向かう程低くなるように傾斜し、後端部以外の部分は、下面が床面Fに当接するように設けられる。延伸部58aは、方立部材14に取り付けられる第1部材53の水平板部55上に設けられる吊戸30よりも後側に位置する基板部57と、当接部51を支持するために前後方向において吊戸30と重なる位置に配置される支持先端部58bとを繋ぐために、基板部57の前端から前側へ吊戸30の下方の位置まで延びた後、右側(戸尻側)へ方立部材14と前後方向に重なる位置まで延び、その後、さらに前側へ昇降機構45の下方の位置まで延びている。
【0063】
支持先端部58bは、上側部分が上方に突出する三角形状、下側部分が略矩形状の板状片部であり、当接部51の後面側に形成された溝51aに嵌まる大きさに形成されている。支持先端部58bの上側部分には、当接部51を支持先端部58bに固定するためのボルトねじ59と螺合するねじ孔58cが形成されている。
【0064】
-作動装置の当接部の位置調整方法-
作動装置50は、当接部51が、支持部材52により、水平面内において直交する第1水平方向及び第2水平方向における各位置を変更可能に支持されている。なお、本実施形態1では、第1水平方向は、吊戸30の厚さ方向である前後方向であり、第2水平方向は、吊戸30の移動方向である左右方向である。
【0065】
支持部材52では、第1部材53が、方立部材14に、前後方向の位置の変更が可能なように取り付けられる。具体的には、第1部材53は、鉛直板部56に形成された前後方向に長い長孔56aに雄ねじ部が挿通されたねじ釘61を方立部材14にねじ込むことで方立部材14に取り付けられる。そのため、第1部材53を方立部材14に取り付ける際に、ねじ釘61の先端部だけを方立部材14にねじ込み、ねじ釘61を締め付ける前に、支持部材52を前後方向にずらすことにより、容易に当接部51を前後方向において適切な位置(昇降機構45の回動部材46と適切に当接する位置)に配置することができる。また、設置後もねじ釘61を僅かに緩め、支持部材52を前後方向にずらすことにより、容易に当接部51の前後方向の位置を調整することができる。
【0066】
また、支持部材52では、第2部材54が、第1部材53に、左右方向の位置の変更が可能なように取り付けられる。具体的には、第2部材54は、基板部57に形成された左右方向に長い長孔57aに雄ねじ部が挿通されたボルトねじ62を第1部材53の水平板部55のねじ孔55aにねじ込むことで第1部材53に取り付けられる。そのため、ボルトねじ62を緩め、第2部材54を左右方向にずらすことにより、容易に当接部51を左右方向において適切な位置(昇降機構45の回動部材46と適切に当接する位置)に配置することができる。
【0067】
なお、上述したように、長孔57bが形成された基板部57と偏心ねじ63とで、偏心ねじ63を偏心回転させるだけで第2部材54の第1部材53に対する左右方向の位置が自動的に変更されるカム機構が構成されている。そのため、ボルトねじ62を緩めた後、第2部材54を手でずらすのではなく、偏心ねじ63をスクリュードライバ等を用いて偏心回転させるだけで、偏心ねじ63の頭部が長孔57b内で前後方向に移動しながら長孔57bを取り囲む周壁を押すことにより、第2部材54の第1部材53に対する左右方向の位置をずらすことができる。
【0068】
さらに、当接部51は、支持部材52に、上下方向の位置の変更が可能なように取り付けられる。具体的には、当接部51は、支持部材52の第2部材54の支持先端部58bに外嵌された状態で、上下方向に延びる貫通孔51bに前側からボルトねじ59の雄ねじ部を挿通し、支持部材52の第2部材54の支持先端部58bに形成されたねじ孔58cにねじ込むことで支持部材52に取り付けられる。そのため、ボルトねじ59を緩め、当接部51を上下方向にずらすことにより、容易に当接部51を上下方向において適切な位置(昇降機構45の回動部材46と適切に当接する位置)に配置することができる。
【0069】
-作動装置の設置調整手順-
作動装置50は、建具枠10及び控え壁20を設置した後、シール装置40を下端部に取り付けた吊戸30の吊り車装置を鴨居13に設けられた吊り下げ用ガイドレールに係合させた後に設置される。作動装置50は、支持部材52の第2部材54を第1部材53に取り付け、当接部51を第2部材54の支持先端部58bに取り付けた状態で設置される。
【0070】
まず、吊戸30を下端が上端よりも前側に位置するように傾け、作動装置50の当接部51をシール装置40のケーシング41内の回動部材46の閉ガイド部46cよりも左側の位置に挿入する。そして、当接部51をシール装置40に挿入したまま吊戸30を垂直に戻し、作動装置50を床面F上に載置する。そして、必要に応じて、当接部51の上下方向の位置を調整する。具体的には、ボルトねじ59を緩め、当接部51を上下方向にずらすことにより、当接部51を上下方向において適切な位置(昇降機構45の回動部材46と適切に当接する位置)に配置した後、ボルトねじ59を締め付ける。
【0071】
次に、当接部51をシール装置40に挿入したまま、作動装置50を左右方向に移動させて支持部材52の第1部材53の鉛直板部56が方立部材14に当接する位置に配置する。そして、鉛直板部56に形成された前後方向に長い長孔56aにねじ釘61の雄ねじ部を挿通させ、方立部材14にねじ込むことで作動装置50を方立部材14に取り付ける。このとき、上述したように、ねじ釘61の先端部だけを方立部材14にねじ込んで仮固定した後、支持部材52を前後方向にずらして当接部51を前後方向において適切な位置(昇降機構45の回動部材46と適切に当接する位置)に配置する。そして、当接部51を前後方向において適切な位置に配置した後、ねじ釘61を締め付けることで、作動装置50を方立部材14に固定する。これにより、作動装置50が床面F上に設置される。
【0072】
また、作動装置50の設置後、必要に応じて、当接部51の左右方向の位置を調整する。具体的には、ボルトねじ62を緩め、偏心ねじ63をスクリュードライバ等を用いて偏心回転させて第2部材54を左右方向にずらすことにより、当接部51を左右方向において適切な位置(昇降機構45の回動部材46と適切に当接する位置)に配置した後、ボルトねじ62を締め付ける。
【0073】
以上の設置調整手順により、作動装置50が、当接部51が昇降機構45の回動部材46と適切に当接する適切な位置に設置される。
【0074】
-シール装置の動作-
次に、シール装置40の動作について説明する。
【0075】
シール装置40のシール部材44は、吊戸30が
図2に示す下降開始位置よりも右側にあるときには、ケーシング41内に全体が収容される上方位置に位置付けられ、吊戸30が閉位置(吊戸30の左端面が左縦枠11に当接する)にあるときには、下端部が床面Fに当接する下方位置に位置付けられる。シール部材44は、吊戸30が下降開始位置から閉位置まで移動する間に、昇降機構45によって駆動され、上方位置から下方位置へ下降する。逆に、シール部材44は、吊戸30が閉位置から下降開始位置まで移動する間に、昇降機構45によって駆動され、下方位置から上方位置へ上昇する。
【0076】
なお、吊戸30の下降開始位置は、吊戸30を閉位置に向かって移動させる際に、吊戸30が閉位置に至る直前の位置であり、作動装置50の当接部51がシール装置40の昇降機構45の回動部材46の閉ガイド部46cに当接する位置である。
【0077】
具体的には、吊戸30を開いた状態から閉じる(下降開始位置よりも右側の位置から閉位置に向かって移動させる)と、吊戸30が下降開始位置(閉位置に至る直前の位置)にあるときに、作動装置50の当接部51が回動部材46の閉ガイド部46cに左側から当接し、回動部材46が閉ガイド部46cの先端が上昇する閉方向(
図2では反時計回り)に回動する。回動部材46が閉方向に回動すると、ラック部材47が左側(戸先側)へ水平移動し、これに連動して移動部材48も左側へ水平移動する。移動部材48が左側へ水平移動すると、吊下部材49aが連動して左側(戸先側)へ移動し、吊下部材49aのガイド部材49bによる支持位置が基端側にずれ、吊下部材49aのガイド部材49bから垂れ下がる部分の長さが長くなる。これにより、吊下部材49aの先端部が下降し、吊下部材49aの先端部に固定されたシール部材44が下降し、下方位置に至る。
【0078】
逆に、吊戸30を閉じた状態から開く(閉位置から下降開始位置よりも右側の位置へ移動させる)と、すぐに作動装置50の当接部51が回動部材46の開ガイド部46dに右側から当接し、回動部材46が開ガイド部46dの先端が上昇する開方向(
図2では時計回り)に回動する。回動部材46が開方向に回動すると、ラック部材47が右側(戸尻側)へ水平移動し、これに連動して移動部材48も右側へ水平移動する。移動部材48が右側へ水平移動すると、吊下部材49aが連動して右側(戸尻側)へ移動し、吊下部材49aのガイド部材49bによる支持位置が先端側にずれ、吊下部材49aのガイド部材49bから垂れ下がる部分の長さが短くなる。これにより、吊下部材49aの先端部が上昇し、吊下部材49aの先端部に固定されたシール部材44が上昇し、上方位置に至る。
【0079】
以上のように、シール装置40は、吊戸30の閉動作又は開動作に伴い、作動装置50の当接部51が昇降機構45の回動部材46の閉ガイド部46c又は開ガイド部46dに当接することにより、シール部材44が下降又は上昇し、吊戸30が閉位置にあるときには吊戸30の下端面と床面Fとの隙間を塞ぎ、吊戸30が開位置にあるときには、シール部材44を含む全てが吊戸30の下端部に収容された状態となる。
【0080】
-実施形態1の効果-
本実施形態1の作動装置50では、当接部51が互いに交差する第1水平方向(前後方向)及び第2水平方向(左右方向)における各位置の変更が可能なように構成されている。このような構成によれば、作動装置50の設置後であっても当接部51の水平方向の位置を変更することができるため、作動装置50を最初から精度良く設置する必要がなく、容易に作動装置50を当接部51が昇降機構45に当接してシール部材44を昇降させる適切な位置に設置することができる。従って、本実施形態1によれば、設置作業を容易に行える作動装置50を提供することができる。
【0081】
また、本実施形態1の作動装置50では、当接部51が吊戸30の厚さ方向(前後方向)と吊戸30の移動方向(左右方向)とにおける各位置の変更が可能なように構成されている。このような構成によれば、当接部51の水平位置の調整を容易に行うことができる。
【0082】
また、本実施形態1の作動装置50では、当接部51を支持する支持部材52を、2つの部材53,54で構成し、一方の第1部材53を床面F上に第1水平方向(前後方向)の位置の変更が可能なように設置し、他方の当接部51を支持する第2部材54を第1部材53に第2水平方向(左右方向)の位置の変更が可能なように取り付けることとしている。このように支持部材52を2つの部材53,54で構成することにより、当接部51の水平位置の調整が容易な支持部材52を容易に構成することができる。
【0083】
また、本実施形態1の作動装置50では、第1部材53を水平板部55と鉛直板部56とを有するように構成し、鉛直板部56に形成された第1水平方向(前後方向)に長い長孔56aに挿通されたねじ釘61を方立部材14にねじ込むことにより、第1部材53を方立部材14に第1水平方向(前後方向)の位置の変更が可能なように取り付けることとしている。このような構成によれば、ねじ釘61を緩めて第1部材53を第1水平方向(前後方向)にずらすだけで、当接部51の第1水平方向(前後方向)における位置調整を容易に行うことができる。また、上記構成によれば、作動装置50のねじ止め箇所を吊戸30の後方の方立部材14とすることにより、吊戸30の直下の床面Fにねじ止めされる従来の作動装置のように工具が吊戸に干渉してねじ止め作業が行い難くなることがなく、ねじ止め作業を容易に行うことができる。さらに、従来の作動装置のように床面Fにねじ止めされないので、床の材質がねじ止め可能なものに限定されず、床の材質の選択の幅が広がる。
【0084】
また、本実施形態1の作動装置50では、第2部材54を、第1部材53の水平板部55上に第2水平方向(左右方向)の位置の変更が可能なように取り付けられる基板部57と、当接部51が昇降機構45と当接する適切な位置に配置されるように基板部57の前側に連続する支持部58とを有するように構成している。このような構成によれば、作動装置50を床面Fではなく、吊戸30より後方の方立部材14に取り付けることとしても、当接部51を昇降機構45と当接する適切な位置に配置することができる。また、上記構成によれば、吊戸30の後方で第2部材54を第2水平方向(左右方向)にずらすことにより、当接部51の第2水平方向(左右方向)の位置調整を行うことができるため、吊戸30が邪魔にならない位置で当接部51の位置調整作業を行うことができる。
【0085】
また、本実施形態1の作動装置50では、第2部材54の基板部57に形成された第2水平方向(水平方向)に長い長孔57aに挿通されたボルトねじ62を第1部材53にねじ込むことにより、第2部材54を第1部材53に第2水平方向(水平方向)の位置の変更が可能なように取り付けることとしている。このような構成によれば、ボルトねじ62を緩めて第2部材54を第2水平方向(水平方向)にずらすだけで、当接部51の第2水平方向(水平方向)における位置調整を容易に行うことができる。
【0086】
また、本実施形態1の作動装置50では、真円板状の頭部と、該頭部の外周縁部において下方に延びて第1部材53の水平板部55に形成されたねじ孔55bと螺合する雄ねじ部とを有する偏心ねじ63を、頭部が第2部材54の基板部57に形成された第1水平方向(前後方向)に長い長孔57bに嵌まるように設けられている。このような構成によれば、偏心ねじ63の頭部を雄ねじ部の中心線を回転軸として偏心回転させるだけで、偏心ねじ63の頭部が長孔57b内で第1水平方向(前後方向)に移動しながら第2部材54の長孔57bを区画する周壁を押すことにより、第2部材54の第1部材53に対する第2水平方向(左右方向)の位置を容易に変更することができる。つまり、本実施形態1の作動装置50によれば、ボルトねじ62を緩めて偏心ねじ63の頭部を偏心回転させるだけで、当接部51の第2水平方向(水平方向)における位置調整を容易に行うことができる。
【0087】
また、本実施形態1によれば、作動装置50を備えているため、設置作業を容易に行える上記のような効果を奏する作動装置50を備えた吊戸装置100を提供することができる。
【0088】
《その他の実施形態》
上記実施形態1では、第1水平方向を吊戸30の厚さ方向(前後方向)、第2水平方向を吊戸30の移動方向(左右方向)としていたが、第1水平方向と第2水平方向とは同一の水平面内で互いに交差する方向であればいかなる方向であってもよい。
【0089】
また、上記実施形態1では、当接部51を支持部材52と別体に構成していたが、当接部51は、支持部材52と一体に形成されるものであってもよい。
【0090】
また、上記実施形態1では、長孔57bが形成された基板部57と偏心ねじ63とで、偏心ねじ63を偏心回転させるだけで第2部材54の第1部材53に対する左右方向の位置が自動的に変更されるカム機構を構成していたが、カム機構(長孔57b及び偏心ねじ63)は設けられていなくてもよい。その場合、手動で第2部材54の第1部材53に対する左右方向の位置を変更すればよい。
【0091】
また、上記実施形態1では、第2部材54の基板部57に4つの突起57c,…,57cを設け、第1部材53の水平板部55に上記4つの突起57c,…,57cがそれぞれスライド可能に嵌まる4つの長孔55c,…,55cを形成していたが、4つの突起57c,…,57cと4つの長孔55c,…,55cとを設けないこととしてもよい。
【0092】
また、上記実施形態1では、作動装置50を、壁Wの切り欠き部1内に施工される控え壁20を備えた吊戸装置100に適用していたが、作動装置50が適用可能な吊戸装置100はこれに限られない。単に、壁Wに開口2が形成され、開口2の前側が吊戸30によって開閉する吊戸装置100に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、吊戸の下端部に昇降可能に設けられて吊戸の下端面と床面との隙間を閉塞するシール部材の昇降機構の作動装置、及びそれを備えた吊戸装置に有用である。
【符号の説明】
【0094】
2 開口
14 方立部材
30 吊戸
40 シール装置
44 シール部材
45 昇降機構
50 作動装置
51 当接部
52 支持部材
53 第1部材
54 第2部材
56 鉛直板部
56a 長孔(第1長孔)
57 基板部
57a 長孔(第2長孔)
57b 長孔(第3長孔)
58 支持部
58a 延伸部
58b 支持先端部
61 ねじ釘(第1ねじ部材)
62 ボルトねじ(第2ねじ部材)
63 偏心ねじ(第3ねじ部材)
100 吊戸装置
【要約】
【課題】設置作業を容易に行える作動装置及びそれを備えた吊戸装置を提供する。
【解決手段】作動装置50は、シール部材44と昇降機構45とを有するシール装置40が下端部に設けられた吊戸30を閉位置に向かって移動させる際に、吊戸30が閉位置に至る直前の位置にあるときに昇降機構45と当接してシール部材44を下降させるものである。作動装置50は、昇降機構45に当接してシール部材44を昇降させる当接部51と、当接部51の互いに交差する第1及び第2水平方向の各位置の変更が可能なように当接部51を支持する支持部材52とを備えている。
【選択図】
図3